JP2021105136A - トレッド用ゴム組成物およびタイヤ - Google Patents

トレッド用ゴム組成物およびタイヤ Download PDF

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Abstract

【課題】幅広い温度領域において優れたドライグリップ性能と良好な耐摩耗性とを両立したトレッド用ゴム組成物、ならびに該トレッド用ゴム組成物により構成されたトレッドを備えたタイヤを提供すること。【解決手段】スチレンブタジエンゴム80質量%を含有するゴム成分100質量部に対し、シリカを95質量部、軟化点が80℃以上かつ110℃未満の低軟化点固体樹脂、および軟化点が110〜170℃の高軟化点固体樹脂を含み、低軟化点固体樹脂と高軟化点固体樹脂との合計量がゴム成分100質量部に対して15質量部以上であり、低軟化点固体樹脂の高軟化点固体樹脂に対する質量比が1.1以上であるトレッド用ゴム組成物、ならびに上記トレッド用ゴム組成物で構成されるトレッドを備えるタイヤ。【選択図】なし

Description

本発明は、トレッド用ゴム組成物および該ゴム組成物により構成されたトレッドを備えたタイヤに関する。
タイヤのトレッドには、高温の広い温度領域において優れた操縦安定性を保つことが望まれている。特に、夏場のドライ路面では、時間帯や走行時間によっては路面温度が非常に高温となるため、例えば20〜120℃といった広い温度領域で、良好なグリップ性能やトラクション性能を保持できるタイヤが望まれている。
従来、高温路面での操縦安定性を向上させるために、トレッド用ゴム組成物に軟化剤としてオイルに加え、液状ポリマーを配合する試みや、樹脂を配合する処方が検討されている。また、低温路面での操縦安定性を向上させるためには、低温軟化剤を配合することが検討されている。
特許文献1には、所定量の粘着樹脂と所定量のキシレン系低温可塑剤とを含有するトレッド用ゴム組成物が記載されている。
特開2018−30993号公報
しかし、特許文献1のゴム組成物では、幅広い温度域での操縦安定性と耐摩耗性の両立については言及されていない。
そこで、本発明は、幅広い温度領域において優れたドライグリップ性能(トラクション性能)と良好な耐摩耗性とを両立したトレッド用ゴム組成物、ならびに該トレッド用ゴム組成物により構成されたトレッドを備えたタイヤを提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、所定量のスチレンブタジエンゴムを含むゴム成分100質量部に、所定量のシリカと、軟化点が80℃以上かつ110℃未満の低軟化点固体樹脂および軟化点が110〜170℃の高軟化点固体樹脂を、合計15質量部以上であり、低軟化点固体樹脂の高軟化点固体樹脂に対する質量比が1.1以上となるよう含有させてトレッド用ゴム組成物とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
[1]スチレンブタジエンゴムを80質量%以上、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは80〜95質量%、より好ましくは80〜90質量%、または、好ましくは85質量%以上、より好ましくは85〜100質量%、より好ましくは85〜95質量%、より好ましくは85〜90質量%含有するゴム成分100質量部に対し、
シリカを95質量部以上、好ましくは95〜150質量部、より好ましくは95〜140質量部、さらに好ましくは100〜130質量部、特に好ましくは110〜120質量部、
軟化点が80℃以上かつ110℃未満、好ましくは80〜105℃、より好ましくは80〜100℃の低軟化点固体樹脂、および
軟化点が110〜170℃、好ましくは115〜160℃、より好ましくは120〜150℃の高軟化点固体樹脂
を含み、
低軟化点固体樹脂と高軟化点固体樹脂との合計量がゴム成分100質量部に対して15質量部以上、好ましくは15〜50質量部、より好ましくは17〜45質量部、さらに好ましくは20〜45質量部であり、低軟化点固体樹脂の高軟化点固体樹脂に対する質量比が1.1以上、好ましくは1.1〜3.5、より好ましくは1.1〜3.0、さらに好ましくは1.2〜2.0、特に好ましくは1.3〜1.8であるトレッド用ゴム組成物、
[2]低軟化点固体樹脂がα−メチルスチレンおよび/またはスチレンを重合した芳香族ビニル重合体、非反応性アルキルフェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、インデン樹脂、テルペン樹脂およびロジン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である上記[1]記載のトレッド用ゴム組成物、
[3]高軟化点固体樹脂がクマロンインデン樹脂である上記[1]または[2]記載のトレッド用ゴム組成物、ならびに
[4]上記[1]〜[3]のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物で構成されるトレッドを備えるタイヤ
に関する。
スチレンブタジエンゴム80質量%以上を含有するゴム成分100質量部に対し、シリカを95質量部以上、軟化点が80℃以上かつ110℃未満の低軟化点固体樹脂、および軟化点が110〜170℃の高軟化点固体樹脂を含み、固体樹脂の合計量がゴム成分100質量部に対して15質量部以上であり、低軟化点固体樹脂の高軟化点固体樹脂に対する質量比が1.1以上である本発明のトレッド用ゴム組成物は、タイヤのトレッドに用いることにより、幅広い温度領域において優れたドライグリップ性能(トラクション性能)と良好な耐摩耗性を両立できるものとすることができる。
一の実施態様であるトレッド用ゴム組成物は、スチレンブタジエンゴムを80質量%以上含むゴム成分100質量部に、シリカを95質量部以上、軟化点が80℃以上かつ110℃未満の低軟化点固体樹脂、および軟化点が110〜170℃の高軟化点固体樹脂を含み、低軟化点固体樹脂と高軟化点固体樹脂との合計量がゴム成分100質量部に対して15質量部以上であり、低軟化点固体樹脂の高軟化点固体樹脂に対する質量比が1.1以上であることを特徴とし、これにより広範囲の温度領域においてドライグリップ性能(トラクション性能)を良好なものとすることができる。タイヤにおいては、走行時にタイヤのトレッド温度が高くなった際にゴム組成物内部で樹脂が軟化することでトレッドのトラクション性能がもたらされると考えられる。トレッドのトラクション応答をゴムの性質で表すと、ゴムが変形を受けた際に失うエネルギーロス(tanδ)で表すことができる。ゴムのtanδを上昇させる手法としては種々考えられるが、0℃付近のtanδについては、シリカを多量に配合し、ゴムの発熱点を増やすことが非常に有効である。また、シリカを配合することにより、シリカがトレッド表面で路面に対して引っ掛かり、より一層のトラクション応答の向上が期待される。さらに、ゴム組成物のうちゴム成分については、スチレンブタジエンゴムの比率を高くすることによりスチレン含有量およびビニル結合量の比率が増加し、ゴム組成物全体のガラス転移温度Tgを高くすることができる。それにより一般的な走行中におけるタイヤの温度域におけるトレッドのトラクション応答を良好なものとすることができる。一方、スチレンブタジエンゴムの比率を高くすると、良好な耐摩耗性を維持することが難しくなる傾向がある。このような様々な因子が関連し、スチレンブタジエンゴムを80質量%以上含むゴム成分100質量部に、シリカを95質量部以上含有するゴム組成物において、軟化点が80℃以上かつ110℃未満の低軟化点固体樹脂および軟化点が110〜170℃の高軟化点固体樹脂を、ゴム成分100質量部に対して合計15質量部以上であり、低軟化点固体樹脂の高軟化点固体樹脂に対する質量比が1.1以上となるよう含有させることにより、相乗的に広範囲の温度領域において、優れたドライグリップ性能(トラクション性能)を発揮することができ、さらには良好な耐摩耗性をも両立できるものと考えられる。
なお、本明細書において、「〜」を用いて数値範囲を示す場合、その両端の数値を含むものとする。
(ゴム成分)
一の実施形態において、ゴム成分は、スチレンブタジエンゴム(SBR)を80質量%以上含有する。その他、ゴム成分には、SBR以外に、例えば、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム、エポキシ化天然ゴム(ENR)、イソプレンゴム(IR)等を含有させることもできるが、SBRのみ、またはSBRおよびBRのみが好ましい。
(SBR)
SBRとしては特に限定はなく、溶液重合SBR(S−SBR)、乳化重合SBR(E−SBR)、これらの変性SBR(変性S−SBR、変性E−SBR)等が挙げられる。また、これらSBRの水素添加物(水素添加SBR)等も使用することができる。またSBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展品と、伸展油を加えない非油展品があり、このいずれも使用可能であるが、油展品が好ましい。これらSBRは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
変性SBRとしては、主鎖および/または末端が変性剤により変性されたものであってもよいし、例えば四塩化スズ、四塩化ケイ素等の多官能型の変性剤により変性されて一部に分岐構造を有するものであってもよい。なかでも特に、SBRは、主鎖および/または末端がシリカと相互作用する官能基を有する変性剤で変性されたものであることが好ましい。このような変性剤で変性され、シリカと相互作用する官能基を有する変性スチレンブタジエンゴムを用いることで、低燃費性とウェットグリップ性能とをさらにバランス良く改善できる。
上記シリカと相互作用する官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、炭化水素基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、低燃費性、ウェットグリップ性能の向上効果が高いという理由から、1級、2級または3級アミノ基(特に、グリシジルアミノ基)、エポキシ基、水酸基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシシリル基)、炭化水素基が好ましい。
本実施形態で使用できるS−SBRとしては、JSR(株)、日本ゼオン(株)、宇部興産(株)、旭化成(株)、ZSエラストマー(株)等によって製造販売されるS−SBRが挙げられる。
SBRのスチレン含有量は、グリップ性能の観点、操縦安定性の観点から、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。また、SBRのスチレン含有量は、温度依存性が減少し、温度変化に対する性能変化が小さくなり、走行中および後期の安定したグリップ性能と良好な耐摩耗性をより両立できるという理由から、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。なお、本明細書において、SBRのスチレン含有量は、1H−NMR測定により算出される。
SBRのビニル結合量は、シリカとの反応性の担保、ゴム強度や耐摩耗性の観点から15モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、25モル%以上がさらに好ましい。また、SBRのビニル結合量は、温度依存性の増大防止、グリップ性能、EB(耐久性)、耐摩耗性の観点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、SBRのビニル結合量(1,2−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定される。
SBRの重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性およびグリップ性能等の観点から20万以上が好ましく、30万以上がより好ましく、40万以上がさらに好ましく、50万以上が特に好ましい。また、Mwは、架橋均一性等の観点から、200万以下が好ましく、100万以下がより好ましい。なお、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に、標準ポリスチレン換算により求めることができる。
SBRのゴム成分中の含有量は、80質量%以上であるが、85質量%以上が好ましい。SBRのゴム成分中の含有量が、80質量%未満の場合は、グリップ性能に懸念が残る傾向がある。また、SBRのゴム成分中の含有量は、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。SBRのゴム成分中の含有量の上限は特に限定されるものではなく、SBRのみ、すなわち100質量%とすることも好ましい。なお、SBRとして油展品を用いる場合は、当該油展品に含まれる固形分としてのSBR自体の含有量をゴム成分中のSBRの含有量とする。
(BR)
BRとしては特に限定されるものではなく、例えば、シス1,4−結合含有率が50%未満のBR(ローシスBR)、シス1,4−結合含有率が90%以上のBR(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、変性BR(ハイシス変性BR、ローシス変性BR)等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。これらBRは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
変性BRとしては、リチウム開始剤により1,3−ブタジエンの重合を行ったのち、スズ化合物を添加することにより得られ、さらに変性BR分子の末端がスズ−炭素結合で結合されているもの(スズ変性BR)や、ブタジエンゴムの活性末端に縮合アルコキシシラン化合物を有するブタジエンゴム(シリカ用変性BR)等が挙げられる。このような変性BRとしては、例えば、ZSエラストマー(株)製のスズ変性BR、S変性ポリマー(シリカ用変性)等が挙げられる。
BRの重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性およびグリップ性能等の観点から40万以上が好ましく、45万以上がより好ましく、50万以上がさらに好ましい。また、Mwは、架橋均一性等の観点から、200万以下が好ましく、100万以下がより好ましい。なお、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に、標準ポリスチレン換算により求めることができる。
BRのゴム成分中の含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。BRのゴム成分中の含有量を、5質量%以上とすることにより、耐摩耗性が向上する傾向がある。また、BRのゴム成分中の含有量は、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。BRのゴム成分中の含有量を、20質量%以下とすることにより、グリップ性能が担保される傾向がある。
(シリカ)
一の実施形態では、シリカが使用される。シリカを配合することにより、低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能を向上できる。シリカとしては、特に限定されるものではなく、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)等、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。シリカは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。シリカとしては、例えば、エボニック・デグザ社、ソルベイ社、東ソー・シリカ(株)、(株)トクヤマ等によって製造販売されるシリカが挙げられる。
シリカのチッ素吸着比表面積(N2SA)は、90m2/g以上が好ましく、100m2/g以上がより好ましく、150m2/g以上がさらに好ましい。また、N2SAは、270m2/g以下が好ましく、250m2/g以下がより好ましく、230m2/g以下がさらに好ましい。なお、本明細書におけるシリカのN2SAは、ASTM D3037−93に準じてBET法で測定される値である。
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、95質量部以上であり、100質量部以上が好ましく、110質量部以上がより好ましい。シリカの含有量が95質量部未満であると、シリカを配合することによる低燃費性とグリップ特性の両立効果が十分に得られない傾向がある。シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、150質量部以下が好ましく、140質量部以下がより好ましく、130質量部以下がより好ましく、120質量部以下が特に好ましい。シリカの含有量が150質量部以下であると、シリカのゴムへの分散性が良好となることにより、低燃費性能および耐摩耗性能を確保できる傾向がある。
(低軟化点固体樹脂)
本明細書において低軟化点固体樹脂とは、80℃以上かつ110℃未満の軟化点を有する固体樹脂を意味し、具体的には、α−メチルスチレンおよび/またはスチレンを重合した芳香族ビニル重合体、非反応性アルキルフェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、インデン樹脂、テルペン樹脂およびロジン樹脂等が挙げられ、経済的で、加工しやすく、ウェットグリップ性能に優れているという理由から、α−メチルスチレンおよび/またはスチレンを重合した芳香族ビニル重合体が好ましい。また、ゴムとの相溶性に優れ、ウェットグリップ性能と低燃費性能を高度に両立させるため、非反応性アルキルフェノール樹脂が好ましい。なお、本明細書における樹脂の軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
α−メチルスチレンおよび/またはスチレンを重合した芳香族ビニル重合体としては、α−メチルスチレンもしくはスチレンの単独重合体またはα−メチルスチレンとスチレンとの共重合体が挙げられるが、α−メチルスチレンの単独重合体またはα−メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましく、α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体がさらに好ましい。芳香族ビニル重合体の具体例としては、例えば、アリゾナケミカル社製の芳香族ビニル系樹脂や、イーストマンケミカル社製の芳香族ビニル系樹脂等の市販品が好適に用いられる。
非反応性アルキルフェノール樹脂とは、鎖中のベンゼン環の水酸基のオルト位およびパラ位(特にパラ位)にアルキル鎖を有し、加硫時に架橋反応への寄与が小さいものをいう。なお、非反応性アルキルフェノール樹脂は、前記芳香族ビニル重合体とは別に配合される樹脂である。非反応性アルキルフェノール樹脂として具体的には、ストラクトール社やスケネクタディ社製の樹脂等が挙げられ、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
低軟化点固体樹脂の軟化点は80℃以上かつ110℃未満であるが、後述する高軟化点固体樹脂との併用効果を考慮すれば、80〜105℃であることが好ましく、80〜100℃であることがより好ましい。
(高軟化点固体樹脂)
本明細書において高軟化点固体樹脂とは、110〜170℃の軟化点を有する固体樹脂を意味し、具体的には、クマロンインデン樹脂、アルキルフェノールアセチレン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられ、クマロンインデン樹脂が特に好ましく用いられる。
クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成するモノマー成分として、クマロンおよびインデンを含む樹脂であり、クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエン等が挙げられる。クマロンインデン樹脂の具体例としては、JXTGエネルギー(株)製の樹脂や日塗化学(株)製の樹脂等が挙げられる。
アルキルフェノールアセチレン樹脂としては、p−t−ブチルフェノールとアセチレンとを縮合反応させて得られるp−t−ブチルフェノールアセチレン樹脂等が挙げられる。
テルペンフェノール樹脂は、テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料とする樹脂であり、テルペンフェノール樹脂の原料となるフェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノール等が挙げられる。
高軟化点固体樹脂の軟化点は110〜170℃であるが、上述の低軟化点固体樹脂との併用効果を考慮すれば、115℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、ウェットグリップ性能の低下防止の観点からは160℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。
低軟化点固体樹脂と高軟化点固体樹脂とを合わせた固体樹脂の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して15質量部以上であり、17質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましい。該固体樹脂の合計含有量が、ゴム成分100質量部に対して15質量部未満であると、ドライグリップ性能やトラクション性能の向上が十分でない傾向、ウェットグリップ性能の向上が十分でない傾向がある。また、該固体樹脂の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましい。該固体樹脂の合計含有量を、ゴム成分100質量部に対して50質量部以下とすることにより、低燃費性能の過度の低下を抑制する傾向、耐摩耗性を担保できる傾向がある。
さらに、低軟化点固体樹脂の高軟化点固体樹脂に対する質量比(低軟化点固体樹脂/高軟化点固体樹脂)は、1.1以上であり、1.2以上が好ましく、1.3以上がより好ましい。低軟化点固体樹脂の高軟化点固体樹脂に対する質量比が1.1未満であると、広い温度領域において優れたドライグリップ性能やトラクション性能が得られ難い傾向がある。また、低軟化点固体樹脂の高軟化点固体樹脂に対する質量比は、3.5以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、2.0以下がさらに好ましく、1.8以下が特に好ましい。低軟化点固体樹脂の高軟化点固体樹脂に対する質量比を3.5以下とすることにより、例えば、高速域での操縦安定性が担保される傾向がある。
一の実施形態に係るトレッド用ゴム組成物には、前記成分以外にも、従来ゴム工業で一般に使用される配合剤、例えば、シリカ以外の補強用充填剤、シランカップリング剤、オイル、各種老化防止剤、ワックス、加工助剤、軟化剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、硫黄等の加硫剤、各種加硫促進剤等を適宜含有することができる。
(その他の補強用充填剤)
シリカ以外の補強用充填剤としては、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、アルミナ、クレー、タルク等、従来からトレッド用ゴム組成物において用いられているものを配合することができる。
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては特に限定されず、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等、タイヤ工業において一般的なものを使用でき、具体的にはN110、N115、N120、N125、N134、N135、N219、N220、N231、N234、N293、N299、N326、N330、N339、N343、N347、N351、N356、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N660、N683、N754、N762、N765、N772、N774、N787、N907、N908、N990、N991等を好適に用いることができ、これ以外にも自社合成品等も好適に用いることができる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。カーボンブラックとしては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、日鉄カーボン(株)、コロンビアカーボン社等によって製造販売されるカーボンブラックが挙げられる。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、耐候性や補強性の観点から50m2/g以上が好ましく、80m2/g以上がより好ましい。また、カーボンブラックのN2SAは、低燃費性、分散性、破壊特性および耐久性の観点から250m2/g以下が好ましく、220m2/g以下がより好ましい。なお、本明細書におけるカーボンブラックのN2SAは、JIS K 6217−2「ゴム用カーボンブラック基本特性−第2部:比表面積の求め方−窒素吸着法−単点法」のA法に準じて測定される値である。
カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸油量は、十分な補強性の観点から、50ml/100g以上が好ましく、100ml/100g以上がより好ましい。また、カーボンブラックのDBPは、ウェットグリップ性能の観点から、200ml/100g以下が好ましく、150ml/100g以下がより好ましい。なお、カーボンブラックのDBPは、JIS K 6217−4:2001に準拠して測定される。
カーボンブラックのゴム成分100質量部に対する含有量は1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。カーボンブラックの含有量が1質量部以上であると、紫外線等により劣化しやすくなることを抑制できる傾向がある。また、カーボンブラックのゴム成分100質量部に対する含有量は200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましく、100質量部以下がより好ましい。カーボンブラックの含有量が200質量部以下であると、加工性および低燃費性を確保できる傾向がある。
(シランカップリング剤)
一の実施形態に係るトレッド用ゴム組成物は、シリカを含有するため、シランカップリング剤を併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができる。シランカップリング剤の具体例としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド等のスルフィド基を有するシランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、エボニック・デグザ社製のメルカプト基を有するシランカップリング剤、モメンティブ社製のメルカプト基を有するシランカップリング剤;3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、3−ヘキサノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリメトキシシラン等のチオエステル基を有するシランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するシランカップリング剤;3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシドキシ基を有するシランカップリング剤;3−ニトロプロピルトリメトキシシラン等のニトロ基を有するシランカップリング剤;3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤を含有させる場合のシリカ100質量部に対する含有量は、4質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、6質量部以上がさらに好ましい。シランカップリング剤のシリカ100質量部に対する含有量を4質量部以上とすることにより、低燃費性等の改善効果が得られやすい傾向がある。また、シランカップリング剤を含有させる場合のシリカ100質量部に対する含有量は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。シランカップリング剤のシリカ100質量部に対する含有量を20質量部以下とすることにより、ゴム強度、耐摩耗性の低下を抑えることができる傾向がある。
(オイル)
オイルとしては、例えば、アロマチックオイル、プロセスオイル、パラフィンオイル等の鉱物油等が挙げられる。なかでも、環境への負荷低減という理由からプロセスオイルを使用することが好ましい。
オイルを含有させる場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。また、オイルを含有させる場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、85質量部以下が好ましく、75質量部以下がより好ましく、65質量部以下がさらに好ましい。なお、オイルの含有量は油展で使用されたオイルの量も含むものである。
(老化防止剤)
老化防止剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミン系、キノリン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩等の老化防止剤を適宜選択して配合することができ、これらの老化防止剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、タイヤの経時劣化対策の観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.4質量部以上がより好ましい。また、老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、タイヤ表面へのブリードの抑制の観点から5.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以下がより好ましい。
(加工助剤)
加工助剤としては、例えば、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、アミドエステル、シリカ表面活性剤、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩とアミドエステルとの混合物、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、脂肪酸金属塩、アミドエステル、脂肪酸金属塩とアミドエステル若しくは脂肪酸アミドとの混合物が好ましく、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物が特に好ましい。具体的には、例えば、ストラクトール社製の脂肪酸石鹸系加工助剤が挙げられる。
加工助剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、生産性の確保の観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。また、加工助剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、耐摩耗性、破壊強度の観点から10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
(軟化剤)
軟化剤としては、液状ポリマー、低温可塑剤等が挙げられる。軟化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
液状ポリマーとしては、例えば、液状SBR、液状BR、液状IR、液状SIR等が挙げられる。
低温可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、トリス(2エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)、ビス(2エチルヘキシル)セバケート(DOS)等の液状成分が挙げられる。
軟化剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、特に限定されるものではないが、軟化剤として効果が十分に得られるという理由から、60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。
その他、ワックス、酸化亜鉛、ステアリン酸は、従来ゴム工業で使用されるものを用いることができる。
(加硫剤)
加硫剤は特に限定されるものではなく、ゴム工業において一般的なものを使用することができるが、硫黄原子を含むものが好ましく、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等が挙げられる。
加硫剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましい。また、加硫剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、3.0質量部以下が好ましく、2.5質量部以下がより好ましい。
(加硫促進剤)
加硫促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系もしくはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、キサンテート系加硫促進剤が挙げられ、これら2種を併用することがより好ましく、なかでも、スルフェンアミド系およびグアニジン系を併用することがより好ましい。
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、CBS(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)、TBBS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等が挙げられる。チアゾール系加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアゾリルジスルフィド等が挙げられる。チウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)等が挙げられる。グアニジン系加硫促進剤としては、ジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましい。また、加硫促進剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。加硫促進剤の含有量を上記範囲内とすることにより、破壊強度および伸びが確保できる傾向がある。
(トレッド用ゴム組成物の製造方法)
トレッド用ゴム組成物の製造方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、密閉式混練機等のゴム混練装置を用いて上記各成分のうち、加硫剤および加硫促進剤以外の成分を混練りし(混練工程1)、その後加硫剤および加硫促進剤を加えてさらに混練りして(混練工程2)未加硫のトレッド用ゴム組成物を得、その後加硫する(加硫工程)方法等により製造することができる。
例えば、混練工程1では、排出温度140〜170℃で1〜20分間混練りし、混練工程2では、80〜100℃になるまで1〜8分間混練りする。加硫工程では、例えば、150〜200℃で5〜30分間加硫する。
(タイヤ)
一の実施態様に係るタイヤは、上記トレッド用ゴム組成物により構成されるトレッドを備えるものであり、乗用車用タイヤ、乗用車用高性能タイヤ、トラックやバス等の重荷重用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ等タイヤ全般に用いることができる。なお、本明細書における高性能タイヤとは、グリップ性能に特に優れたタイヤであり、競技車両に使用する競技用タイヤをも含む概念である。
(タイヤの製造方法)
上記トレッド用ゴム組成物から構成されるトレッドを備えたタイヤは、上記トレッド用ゴム組成物を用いて、通常の方法により製造できる。すなわち、ゴム成分に対して上記各成分を必要に応じて配合した未加硫のゴム組成物を、トレッドの形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成型することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを製造することができる。
以下、本開示を実施例に基づいて説明するが、本開示はこれら実施例のみに限定されるものではない。
以下、実施例および比較例において用いた各種薬品をまとめて示す。
・SBR:後述の製造例1で製造したシリカ用変性SBR(S−SBR、スチレン含有量:40質量%、ビニル結合量:30モル%、重量平均分子量(Mw):90万、Tg:−27℃、ゴム固形分100質量部に対してオイル分25質量部を含む油展品(表では、SBRのゴム成分量を「SBR」の配合量として記載し、SBRのオイル分を下記オイル量と合計して「オイル」の配合量として記載する。))
・BR:後述の製造例2で製造した変性BR(ビニル結合量:12モル%、シス1,4−結合含有率:38%、Mw:50万)
・NR:TSR20
・シリカ:エボニック・デグザ(EVONIK-DEGUSSA)社製のVN3(N2SA:175m2/g)
・カーボンブラック:試作品(窒素吸着比表面積(N2SA)が180m2/g、DBP吸油量が117〜129ml/100gの微粒子カーボンブラック)
・低軟化点固体樹脂1:アリゾナケミカル社製のSylvares SA85(α−メチルスチレン/スチレン樹脂、軟化点:85℃)
・低軟化点固体樹脂2:住友ベークライト(株)製のDurez 19900(100%p−アルキルフェノール樹脂、軟化点:90℃)
・低軟化点固体樹脂3:スケネクタディ社製のSP1068(100%p−アルキルフェノール樹脂、軟化点:95℃)
・高軟化点固体樹脂1:日塗化学(株)製のニットレジン クマロン V120(クマロン、インデン、スチレンを主成分とする共重合樹脂、軟化点:120℃)
・高軟化点固体樹脂2:BASF社製のコレシン(アルキルフェノールアセチレン共重合体、軟化点:140℃)
・高軟化点固体樹脂3:ヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターT160(テルペンフェノール樹脂、軟化点:160℃)
・シランカップリング剤:エボニック・デグザ社製のSi266(ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
・オイル:ジャパンエナジー製のNC140
・ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
・老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
・ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
・硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
・加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ−G(CZ:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
・加硫促進剤2:住友化学工業(株)製のソクシールD(DPG:N,N’−ジフェニルグアニジン)
製造例1:変性SBRの製造
内容積10Lで、底部に入口、頭部に出口を有し、撹拌機およびジャケットを付けたオートクレーブを反応器として2基直列に連結し、ブタジエン、スチレン、シクロヘキサンを各々所定の比率で混合した。この混合溶液を、活性アルミナを充填した脱水カラムを経由し、不純物を除去するためにn−ブチルリチウムをスタティックミキサー中で混合した後、1基目の反応器底部より連続的に供給し、さらに極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを、重合開始剤としてn−ブチルリチウムを所定の速度でそれぞれ1基目の反応器底部より連続的に供給し、反応器内温を95℃に保持した。反応器頭部より重合体溶液を連続的に抜き出し、2基目の反応器へ供給した。2基目の反応器の温度を95℃に保ち、変性剤としてテトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(単量体)と、オリゴマー成分との混合物を所定の速度でシクロヘキサン1000倍希釈液として連続的に加えて変性反応を行なった。この重合体溶液を反応器から連続的に抜き出し、スタティックミキサーで連続的に酸化防止剤を添加し、さらにこの重合体溶液に重合体100質量部に対しジャパンエナジー製伸展油NC140を25質量部加えて混合した後、溶媒を除去し目的とする油展変性ジエン系重合体を得た。
製造例2:変性BRの製造
<末端変性剤Bの製造>
窒素雰囲気下、100mLメスフラスコに3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(アズマックス(株)社製)を23.6g入れ、さらに無水ヘキサン(関東化学(株)製)を加え全量を100mLにして変性剤Bを作製した。
<変性BRの製造>
十分に窒素置換した30L耐圧容器にn−ヘキサンを18L、ブタジエンを2000g、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を2mmolを加え、60℃に昇温した。次に、ブチルリチウムを10.3mL加えた後、50℃に昇温させ3時間撹拌した。次に、変性剤Bを11.5mL追加し30分間撹拌を行った。反応溶液にメタノール15mLおよび2,6−tert−ブチル−p−クレゾール0.1gを添加後、反応溶液を18Lのメタノールが入ったステンレス容器に入れて凝集体を回収した。得られた凝集体を24時間減圧乾燥させ、変性BRを得た。
実施例1〜17および比較例1〜6
表1または2に示す配合処方にしたがい、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を排出温度165℃になるまで15分間混練りし、混練物を得た。次に、2軸オープンロールを用いて、得られた混練物に硫黄および加硫促進剤を添加し、5分間、90℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で15分間プレス加硫することで、試験用ゴム組成物を作製した。
また、前記未加硫ゴム組成物を所定の形状の口金を備えた押し出し機でタイヤトレッドの形状に押し出し成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で15分間プレス加硫することにより、試験用タイヤ(サイズ:215/45R17)を製造した。
各実施例および比較例により得られた試験用タイヤについて、以下の評価を行った。その結果を表1または2に示す。
<ドライグリップ性能>
試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行を行った。その際に操舵時のコントロールの安定性を、テストドライバーが評価し、比較例1を100として指数表示をした。指数値が大きいほど操縦安定性能が高いことを示す。また、この評価は路面温度が異なる2条件で評価した(高温路面:55℃、低温路面:15℃)。高温路面での目標値を104以上、低温路面での目標値を98以上とした。
<耐摩耗性>
試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、8000kmの実車走行を行なった。タイヤトレッドゴムの残溝量を計測し(新品時8mm)、耐摩耗性を評価した。比較例1の残溝量を100として指数表示した。数値が大きいほど、耐摩耗性が高いことを示す。また、この評価は路面温度が異なる2条件で評価した(高温路面(夏場)、低温路面(冬場))。高温路面での目標値を90以上、低温路面での目標値を97以上とした。
(耐摩耗性指数)=(各配合の残存量)/(比較例1の残存量)×100
Figure 2021105136
Figure 2021105136
表1および2の結果より、SBRを80質量%以上含むゴム成分100質量部に、シリカを95質量部以上含有し、軟化点が80℃以上かつ110℃未満の低軟化点固体樹脂と軟化点が110〜170℃の高軟化点固体樹脂とを、前者の後者に対する質量比1.1以上で、ゴム成分100質量部に対して合計15質量部以上含有する実施例1〜17では、高軟化点固体樹脂を含まない比較例1や、低軟化点固体樹脂を含まない比較例2、高軟化点固体樹脂と低軟化点固体樹脂との合計量がゴム成分100質量部に対して15質量部に満たない比較例3、さらに、低軟化点固体樹脂の高軟化点固体樹脂に対する質量比が1.1未満である比較例4、SBRの含有量が少ない比較例5、シリカの含有量の少ない比較例6と比べて、いずれも目標値を満たす高温ドライグリップ性能および低温ドライグリップ性能を示すのみならず、良好な耐摩耗性をも両立できることが分かる。

Claims (4)

  1. スチレンブタジエンゴムを80質量%以上含有するゴム成分100質量部に対し、
    シリカを95質量部以上、
    軟化点が80℃以上かつ110℃未満の低軟化点固体樹脂、および
    軟化点が110〜170℃の高軟化点固体樹脂
    を含み、
    低軟化点固体樹脂と高軟化点固体樹脂との合計量がゴム成分100質量部に対して15質量部以上であり、低軟化点固体樹脂の高軟化点固体樹脂に対する質量比が1.1以上であるトレッド用ゴム組成物。
  2. 低軟化点固体樹脂がα−メチルスチレンおよび/またはスチレンを重合した芳香族ビニル重合体、非反応性アルキルフェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、インデン樹脂、テルペン樹脂およびロジン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載のトレッド用ゴム組成物。
  3. 高軟化点固体樹脂がクマロンインデン樹脂である請求項1または2記載のトレッド用ゴム組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のトレッド用ゴム組成物で構成されるトレッドを備えるタイヤ。
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