JP2021103946A - 焙煎米糠麹の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
まず、米糠を焙煎して焙煎米糠粉末を第一の工程で製造する。
前述の焙煎米糠粉末10質量部に対して、水分を3〜9質量部の割合で、添加混合し、前記焙煎米糠粉末を第二の工程で焙煎米糠粒子にする。(本発明では該第二の工程で得られた焙煎米糠を焙煎米糠粒子と呼ぶ。)
前記焙煎米糠粉末もしくは前記焙煎米糠粒子5〜8質量部に対して、0.02cm3〜3.38cm3の大きさである残部の固形物5〜2質量部を第三の工程で添加混合して、全体を10質量部とする。
前述の焙煎米糠粉末もしくは前記焙煎米糠粒子に第四の工程で麹菌を植え付ける。
上述の第二の工程から前述の第四の工程までを順序不同の工程でよく、これら第二の工程から第四の工程までを終了した後に、温度が20℃〜45℃、湿度が70%〜99%の範囲の環境下で24時間以上培養する。なお、順序不同の工程には、第二の工程から第四の工程を同時に行うことを含む。
以上の様に焙煎米糠麹を製造する方法を提供する。
そこで、その原因は製造用の容器の嵩が増すことにより、容器中の麹菌が植え付けられた焙煎米糠粉末もしくは焙煎米糠粒子が、上層部分のものに比較し下層になればなるほど酸素不足になることが原因であることを突き止めた。
手段1において、麹菌を植え付け培養する際に、空気が供給できる様に2、3mm角(0.02cm3)程度〜15mm角(3.38cm3)程度の固形物を混入させることにより、空気中の酸素の供給ができ、改善ができるようになった。同時に焙煎米糠粉末あるいは焙煎米糠粒子中に形の大きい固形物が入ることにより、焙煎米糠粉末あるいは焙煎米糠粒子間の所々に隙間を作り、空気が入り込むことになる。このような隙間の空気によって、麹菌の培養中に必要な酸素を供給することができるようになった。このことが、スケールアップした場合でも風味の改善が可能になり、酵素力価などの品質を安定させる。
(課題を解決するためのその他の手段)
本発明に使用する焙煎米糠麹の製造方法においては、原料として、玄米を精米した時に発生する米糠を使用する。すなわち、図1に示す米糠は、後述する本発明の焙煎米糠麹の利用方法の一つである炊飯方法において、玄米に近い栄養価を白米に付与できると考えている。たとえば、たんぱく質、脂質、ミネラル、食物繊維などが豊富な米糠を使用することが好ましい。このような米糠は、家畜の飼料、米油の原料、漬物用の糠などにも使用されているが、このような米糠を本発明で使用することである。
上述の焙煎米糠麹の製造方法における図1に示す焙煎工程を説明する。ご飯と共にそのまま喫食するので、雑菌を殺菌することが必要不可欠である。同時に、米糠由来のいやな臭いを香ばしさに変化させることが重要になる。この目的のために、フライパンなどの表面温度は、80℃以上、250℃以下とすることが風味向上に寄与するために好ましい。特に好ましいのは110℃以上、220℃以下、更に好ましくは140℃以上、180℃以下で焙煎を行うことが望ましい。上記に示した米糠の焙煎は、火力、電熱器など、焙煎が可能な方法であれば、どの熱源であってもよい。
次に図1に記載した固形物について説明する。製造工程中の焙煎米糠粉末層に空隙を確保するために、0.02cm3〜3.38cm3の固形物を、焙煎米糠粉末10質量部に対して、2〜10質量部を加える。0.02cm3未満の固形物の場合では、空隙の形成が促進されず、3.38cm3以上では、空隙が大きくなって、その空隙に焙煎米糠粉末が入ってしまうため、結果的に空隙を確保できない。また3.38cm3以上の固形物の場合にはもう一つ問題があり、それは、特許文献1の米糠麹の製造方法には、米糠重量あたりの表面積を増やして、麹菌の生育面積を確保し、結果的に酵素力価を高めるという効果があったのだが、3.38cm3以上の固形物では、その効果があがらず、むしろ減少してしまう。以上の理由から固形物の大きさは0.02cm3〜3.38cm3が望ましい。特に好ましいのは0.064cm3〜1.728cm3、さらに好ましくは、0.075cm3〜1cm3が望ましい。後述する直径6mmのダミービーズの体積は、0.113cm3である。
次に、焙煎米糠粉末に固形物を添加し、混合する工程を説明する。混合する順番や方法は問わない。ヘラや素手でも構わない。固形物が分散するように混合すれば良い。
次に、焙煎米糠粉末に水分を加える工程を説明する。図1に示すように、水分添加の目的は、粉体状態の焙煎米糠粉末を粉体状態よりも多少大きな塊にすることによって、麹菌の菌糸が成長するための足場を提供することと、カビにとって生育に必要な水分を付与することである。焙煎米糠への水分添加は、水道水を用い、焙煎米糠10質量部に対し、水道水を3〜9質量部の範囲で添加する。好ましい範囲は4〜7質量部の範囲である。前工程の焙煎によって、水分が抜ける。このため、加水量を多めにしている。9質量部を超えると、大きな塊(ほぼ5cm程度)になって、よい麹にならない。先行発明の米糠麹の特徴は、表面積を大きくすることによって、麹菌体量が増え、結果的に、酵素もたくさん作ることができる。大きな塊になると、同一重量あたりの表面積も小さく、麹菌体量も増えず、結果的に、酵素力の弱い麹になる。逆に水分が3質量部未満になると、先に述べたように、足場としての小さな塊ができにくくなること。それから麹菌が利用する水分が少なくて、麹菌体の成長が鈍くなり、結果的に酵素力の弱い麹になる。水分添加が3質量部以下、または9質量部以上でも、麹の生育は可能であるが、上記の理由で、徐々に弱い麹になってしまう。また4〜7質量部が好ましいのは、この水分添加量が、麹菌の足場となる小さな塊ができること。塊が小さい(ほぼ1mm程度)ため、同一重量当たりの表面積が大きくなること。当然水分添加3質量部より、水分が多いため、麹菌の生育に必要な水分が確保されていることが理由である。以上のような水分を添加しながら混合し、焙煎米糠粒子にする。
焙煎米糠を麹にするために使用する麹菌は、アスペルギルス(Aspergillus)属の糸状菌(カビ)、例えばアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus Oryzae)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)などが使用できる。またクモノスカビ(Monascus)属、例えば紅コウジカビ(Monascus purpureus)やクモノスカビ(Rizopus)、ケカビ(Mucor)属の糸状菌(カビ)も使用できる。並びに、これら糸状菌の自然変異株、人工的突然変異株、及び遺伝子操作による変異株から成る群から選択される少なくとも一種の麹菌を使用する。また複数同時に使用しても問題ない。
図1に示された焙煎米糠麹の製造は、たとえば、焙煎米糠粉末5〜8質量部に対して、固形物を5〜2質量部を添加して混合する。焙煎米糠粉末と固形物は全体としては10質量部になるようにする。例えば焙煎米糠粉末が5質量部なら固形物は5質量部を添加する。次に焙煎米糠粉末10質量部に対して水分を3〜9質量部の割合で添加して、水分が分散するように混合する。水分との混合によって、焙煎米糠粉末は、粉末同士が小さな塊となった焙煎米糠粒子となる。そこに、焙煎米糠粉末1質量部に対して1/5000質量部の粉状の麹菌を添加して、よく混合する。焙煎米糠粉末への固形物、水分、麹菌の添加の順番は問わない。これを35℃、90%の雰囲気に放置し、24時間後に一度攪拌し、引き続き同条件で、さらに24時間放置して完成される。
麹菌の植え付けは、粉状の麹菌を焙煎米糠に添加して、よく混合して行う。麹菌が焙煎米糠中に、よく分散されればよく、添加方法、添加回数は、限定されるものではない。また、植え付けのタイミングも、焙煎米糠への水分添加の前後も限定されるものではない。しかし、常識的な工程として、焙煎米糠に、水を添加してよく混合し、その後に、必要量の粉状の麹菌を3回程度に分けて、ヘラなどで混合しながら、添加する方法が望ましい。なお、麹菌の植え付けには、上記の粉状の麹菌のほかに、玄米に麹菌を繁殖させた麹菌もあるが、麹菌の形態は問わない。
最適な温度は35℃である。45℃を超えると、麹菌の生育に影響する。すなわち、暑くて「へばる」というイメージになる。低い方は、20℃以下でも、麹菌は生育するが、成長のスピードは、遅く、酵素も弱くなる。つまり、45℃以上では、酵素の弱い麹となり、20℃以下では、酵素が弱いばかりでなく、製造日数が伸びてしまい、製造コストが高くなってしまう。
次に、保存性および風味の向上を目的とした図1に示された乾燥工程は、熱風乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、真空凍結乾燥など、水分を減少させる効果が期待できる手法であれば、単独でも、組み合わせても構わない。いずれかの方法で焙煎米糠麹を乾燥する。
上記の乾燥工程に於いて、焙煎米糠麹の水分は、保存性の向上の観点から、ある程度低い方がのぞましいが、乾燥時間の増加は、コストの上昇につながり、また、過乾燥による食品成分の劣化、たとえば脂質の酸化が促進されるなどの問題もあり、一概に、低ければ良いという問題ではない。そこで、焙煎米糠麹の乾燥後の水分含有量としては、望ましくは、1%〜40%、より望ましいのは3%〜20%、さらにより望ましいのは5%〜10%である。また乾燥によって、次の分別工程を容易にする効果もある。
固形物と焙煎米糠麹が分別できれば方法は問わない。ただ、焙煎米糠麹の形状や性状等を考えると、篩を用いる方法が、簡便、効率的であり、適している。篩のメッシュサイズは固形物の大きさによる。基本的には固形物のサイズよりもメッシュサイズの細かい篩を使用する。篩による分別で、固形物が取り除かれた焙煎米糠麹となる。
次に、図1に示した乾燥焙煎米糠麹の粒度調整をする工程、すなわち粒径を均一にする工程を説明する。上記乾燥焙煎米糠麹を均一にする工程に於いて、使用される道具は、上記乾燥焙煎米糠麹より硬度が高いものであれば、形状等は問わないが、うどんやそば打ちで用いられる手延べ棒など、円柱状のものが、簡便で効率よく、粒径を均一にすることができる。工業的にはロールミルなどを使用することができる。
固形物を、デンプンを含む固形食材にした場合の製造方法を、図2を参照して説明する。固形食材には、実に様々なものを用いることが可能である。実質的には、すでに述べてきた大きさ、形、密度、デンプンや糖質を含むことなどの条件を満たせばよく、一般的には穀類、豆類、いも類、野菜類、果実類、種実類などが該当する。例えば、大豆、小豆、発芽玄米、大麦、赤米、はと麦、とうもろこし、サツマイモ、ジャガイモ、枝豆、かぼちゃ、ニンジン、りんご、なし、アーモンド、カシューナッツ、クルミなどを利用することができる。上記に挙げた固形食材のうち、りんご、なしなどは、果糖などの糖類が主成分である。またアーモンド、カシューナッツ、クルミなどは、デンプンは数%以下のため、デンプン供給の効果は期待できないが、食材であるため、ダミーと違い、分別工程が不要という点で、利用価値が大きい。
白米の炊飯方法について、図3に従って説明する。白米の炊飯方法は、一般家庭で行う方法と基本的に同じであるが、少し異なるのは、白米を水洗いし、炊飯に必要な水分を加えた後に、本発明で製造した乾燥焙煎米糠麹の粉末を投入混合して、ただ炊飯するだけである。それ以外に手を煩わせることはない。この炊飯方法では、焙煎米糠麹自体がもつデンプン質の糖化と焙煎米糠麹の酵素によって白米のデンプン質の糖化による甘味の増加および消化吸収の良い白米ご飯の提供が可能となる。
図3における水分の添加は、一般家庭で日常的に行われている方法と、なんら変わらない。すなわち、炊飯したい分量の白米を水道水でゴミや糠などを洗い落とす程度に洗い、白米の分量に見合った水分である水道水を加える。水道水が一般的だが、水道水以外に、浄化装置で浄化した水でもよいし、販売されているミネラルウォーターでもよい。要するに、飲料できる水分であれば、全く問題ない。
その後、図3に示される段階で、乾燥した焙煎米糠麹の栄養価を考慮した量を後述するように投入する。その後、白米と乾燥焙煎米糠麹と水分とをかき混ぜて、乾燥焙煎米糠麹を分散させることのほうが好ましが、その状態で放置しても構わない。すなわち、放置する時間を設けず、すぐに炊飯器のスイッチを入れても全く問題ない。白米を水洗いした後であれば、本発明の乾燥焙煎米糠麹を投入する順番は問わない。図3に示した順序は一例である。また、浸漬のために加える水の量も、常識的な範囲内で加減することは問わないが、一般的には炊飯に適切な量が望ましい。浸漬工程中に、本発明の乾燥焙煎米糠麹から酵素が溶け出し、時間と共に白米を徐々に糖化していく。時間が短ければ、糖化範囲が部分的になるし、時間が長ければ、糖化範囲が広がることになる。
(米糠の焙煎)
原料として、精白米を得るときに排出される米糠を使用した。その米糠を24cmのフライパンに約300gをとり、ガスコンロの強火で、木ベラでよくかき混ぜながら、約8分間、煙が少しでて、糠全体が、薄い茶色になるまで焙煎した。焙煎後は、そのまま別容器に移して、そのまま放置し、室温に戻ったところで、ビニールをかぶせ、次の工程(焙煎米糠麹の製造)まで、室温で保管した。色の程度は、元々の色を反映して、黄粉の色より茶色味が強い色になった。
包丁を使用し、約0.5cm角のサイコロ大になるようにカットした。薄皮もそのままにした。
蒸し器を使って、小豆は50分間、サツマイモは20分間蒸かした。その際の煮汁は取っておいて、製造工程中の水分添加時に水分とともに原料に加えてもいいのだが、実験例では使用しなかった。いずれもキッチンペーパー上で一晩おいて、水気を切った。
焙煎米糠粉末、いずれも蒸した小豆とサツマイモを、適当な容器に入れた。なお、小豆とサツマイモの質量については、今後、蒸し後の質量を意味するものとする。混合比は、焙煎米糠粉末5〜8質量部に対して、小豆とサツマイモともに1〜2.5質量部を加え、全体が10質量部になるようにした。小豆とサツマイモは常に1:1になるようにした。サツマイモは加えず、小豆のみの試験区も行った。具体的には、試験区1(焙煎米糠粉末5:小豆2.5:サツマイモ2.5)、試験区2(焙煎米糠粉末6.5:小豆1.75:サツマイモ1.75)、試験区3(焙煎米糠粉末8:小豆1:サツマイモ1)、試験区4(焙煎米糠粉末8:小豆2)とした。いずれも合計100gで実施した。試験区1〜4は、材料の混合には家庭用の電動撹拌機を利用した。また、固形食材による2つの効果、すなわち、焙煎米糠を収納した容器の層内での空隙の確保とデンプン供給の効果のうち、デンプン供給の効果を検証する目的で、固形食材の代わりにダミーを焙煎米糠粉末に添加する試験区も用意した。試験区5(焙煎米糠粉末5:ダミービーズ5)、試験区6(焙煎米糠粉末5:ダミー米5)とした。ダミー添加試験区の配合比は容積比とした。焙煎米糠は50gとした。焙煎米糠50gが170cm3だったので、いずれのダミーも170cm3を加えた。ダミーを入れた試験区5および試験区6は、電動撹拌機は使わず、ヘラを使って攪拌した。ダミービーズは、直径6mmの球状(ABS樹脂、株式会社大創産業製)を、ダミー米は白米を模した形状かつ白米と同程度の大きさのポリプロピレン樹脂(商品名「三井ポリプロ」、三井化学株式会社製)を用いた。ダミービーズの体積は0.113cm3、ダミー米は0.020cm3程度である。対照として先行特許の方法を試験区7とした。ダミービーズのABS樹脂は、実際の使用では想定していないが、実験例の使用方法においては、不要な溶出物の心配はない。
添加する水分は、水道水を使用した。添加量は、試験区1が20mL(焙煎米糠粉末重量に対して40%)、試験区2が28mL(同43%)、試験区3が36mL(同45%)、試験区4が42mL(同53%)とした。試験区5および試験区6は、いずれも30mL(同60%)とした。試験区7は70mL(同70%)とした。いずれの試験区も水分添加をしながら、攪拌した。
試験区1〜4および7は焙煎米糠粉末および固形食材の合計に対して1/5000量の粉状の麹菌を添加した。試験区5および試験区6は焙煎米糠粉末に対して1/5000量の粉状の麹菌を添加した。麹菌は、黄麹菌(アスペルギルス・オリゼー:Aspergillus Oryzae)であり、株式会社樋口松之助商店製の液化仕込用を用いた。この黄麹菌を添加後、さらによく混合した。
麹菌添加後、温度35℃、湿度90%の恒温恒湿器に入れて静置した。層の厚さはいずれの試験区も約1cmだった。24時間後に一度、かたまりをほぐすように混合し、再び温度35℃、湿度90%の恒温恒湿器で静置し、さらに24時間おいて、焙煎米糠麹を製造した。荒熱を取った後、ビニール袋に移して密封し、分析時まで冷凍保存した。
24時間後の各試験区の様子は、試験区1〜3に関しては、固形食材比率の高い試験区1の表面が最も麹菌が繁殖しており、全体的にやや白みがかっていた。その麹菌の繁殖の程度と白みがかっている程度は、試験区2、試験区3の順で、少なくなっていた。さらに、容器の底側についても試験区1が最も白みがかっており、試験区2、試験区3の順で、その程度は少なくなっていた。試験区4は、試験区2と試験区3の中間程度だった。ダミーの入った試験区5および6については、試験区1〜4でみられた麹菌の繁殖や、白みがかった様子などは、ダミーの影響か、あまり判別が付かなかったが、容器の底側は試験区1〜4と同様に麹菌が繁殖しており、白みがかっていた。試験区5と試験区6に見た目の差はなかった。対照の試験区7が最も麹菌の繁殖が少なかった。
実験例1で行った試験区1〜7の結果を受けて、あらためて以下の製造実験を行い、発明の効果を検証した。実験例1では、固形物の効果があり、その比率が高いほど、また、固形物が食材であるほど酵素力価が高い結果(後述)が得られたことから、固形物の比率を50%、また固形物としては固形食材を用いることとした。固形食材は前記同様に蒸し、配合比の質量は、蒸し後の質量を意味するのは、実験例1と同様である。具体的には、試験区8(焙煎米糠粉末:押麦=50:50)、試験区9(焙煎米糠粉末:丸麦=50:50)、試験区10(焙煎米糠粉末:雑穀=50:50)とし、いずれも全量100gとした。雑穀は、株式会社はくばく製の商品名「十六穀ごはん」を用いた。また、実験例1で確認できた効果がスケールアップした場合でも得られるのかを検証するために、1kgにスケールアップして試験を行った。具体的には、試験区11(焙煎米糠:小豆=500g:500g)とした。層の厚さは試験区8〜10は約1cm、試験区11は約3cmだった。水分添加量は、試験区8〜10がいずれも20mL(焙煎米糠に対して40%)、試験区11は180mL(同38%)とした。培養工程以降は、実験例1と同様に実施した。麹菌の繁殖の様子は、試験区8および試験区9は、同程度に白みがかっており、麹菌がよく繁殖していたが、それに比べると試験区10は、その程度がやや弱かった。試験区11はスケールアップしたため全体の見た目が変わってくるので比較が難しいのだが、印象としては、試験区10程度には繁殖していた。
(焙煎米糠麹の乾燥)
焙煎米糠麹を減圧乾燥法40℃で24時間乾燥した。
乾燥焙煎米糠麹は、粒径が不揃いなため、商品としての見栄えを考慮して、粒径の調整を行った。そばやうどんで使用する手延べ棒で1mm以下になるように、粉砕した。この際、とくに粒径を気にすることなく、大きな塊をつぶすようにするだけで、ほぼ均一な3mm以下の粒径になった。形態としては、顆粒状よりやや細かい粒状といった状態となる。
次に、顆粒状よりやや細かい粒状になった乾燥焙煎米糠麹を調理する方法について述べる。まず、白米1合を水洗いする。ここに先に製造した乾燥焙煎米糠麹の粉末を15g振りかける。ここで15gというのは、1合(150g)の約1割を意味している。そこに、白米1合に必要な水を加えて混合し、そのまま放置する。今回は、一般家庭で通常行われている方法、すなわち、前の晩に洗米して、水を加え、一晩おいて、翌朝、炊飯器のスイッチを入れることを想定し、21時に上記の操作で、白米が入った釜に水道水を目盛りに合わせていれ、本発明の乾燥焙煎米糠麹の粉末15gを添加し、翌朝6時に炊飯器のスイッチが入るようにセットした。炊飯は通常のモードにおいて約50分で炊きあがった。炊いている間、炊飯器から立ち上る湯気から、白米にはない、やや香ばしい香りがでていた。
炊きあがりの白米ご飯は、全体的に茶褐色になっており、一見、炊き込みご飯のようである。食べてみても玄米ご飯のような食べづらさや、食味の悪さは、一切感じられず、炊き込みご飯と違い、たとえば、納豆や、生卵などと一緒に食べても、白米の時と変わらず、違和感なく食べられた。
(焙煎米糠麹の酵素力価)
次にデータ取得方法および分析結果について記述する。
α−アミラーゼおよびグルコアミラーゼの2種類のデンプン分解系の酵素力価を、キッコーマンバイオケミファ株式会社のα−アミラーゼ測定キットおよび糖化力分別定量キットを用いて測定した。焙煎米糠麹の製造方法についての実験例1の試験区1〜7の結果を表1に、焙煎米糠麹の製造方法についての実験例2の試験区8〜11の結果を表2に示した。
焙煎米糠麹の香気成分をガスクロマトグラフ質量分析計で測定した。検体3gおよび純水1mLを専用バイアルに封入して分析を行った。
<ヘッドスペースサンプリング条件>
加熱温度:80 ℃ 加熱時間:30 min
<ガスクロマトグラフ条件>
分離カラム:DB−WAX[60 m × 0.25 mmID , 0.5μm, J&W Scientific製]
昇温条件:35 ℃(5分)→ 5 ℃/分 → 240 ℃(4分)
<質量分析条件>
イオン化法:電子イオン化(EI) 測定質量範囲:m/z 29〜350
本発明で使用する粉末状の焙煎米糠麹の栄養成分分析及び水分活性を測定した。栄養成分のうち、水分は70℃−減圧乾燥法により測定した。灰分は550℃−直接灰化法により測定した。たんぱく質はケルダール法により測定した。脂質は酸分解法により測定した。食物繊維はプロスキー法(酵素-重量法)で測定した。糖質は以下の計算で求めた。すなわち糖質=100−(水分+灰分+たんぱく質+脂質+食物繊維)によって算出した。エネルギーは計算で求めた。エネルギー換算係数は、たんぱく質:4、脂質:9、糖質:4、炭水化物:4、食物繊維:2としてそれぞれの分析値に乗じて計算した。ナトリウムは希酸抽出法により調製した試料について原子吸光分光光度計(株式会社島津製作所AA−6300)を用いて測定した。食塩相当量はナトリウムの分析値に2.54を乗じ、単位をg/100gに換算して表示した。水分活性(Aw)はrotronic ag製のAW−ラボを用いて測定した。ビタミンB1は、塩酸分解後に、タカジアスターゼで酵素処理したのち、蛍光検出-液体クロマトグラフ法により分析した。ビタミンB2は、B1と同様の前処理ののち、フェリシアン化カリウムを反応液に用いた蛍光検出-ポストカラム液体クロマトグラフ法により分析した。結果を表3に示した。参考に、玄米及び90%精白米の栄養成分分析値を第七訂日本食品標準成分表より抜粋して併記した。特徴的な点として。本発明の乾燥焙煎米糠麹単独では、食物繊維とビタミンB1、B2が、90%精白米はもとより、玄米よりも大幅に増えていることがわかる。
実験例で行った炊飯方法を行った場合、本発明の乾燥焙煎米糠麹が白米に付与する栄養素の寄与率について考えてみた。実験例では白米1合(150g)に対して本発明の乾燥焙煎米糠麹を15g(10%)添加したが、ここでも10:1で計算してある。結果を表4に示した。
(90%精白米と本発明の粉末状焙煎米糠麹を10:1で混合した場合の栄養成分の計算値およびその混合物の90%精白米と玄米に対する相対比率)
(1) 先行発明の製法に加え、米糠に固形物を加えて混合したのち、製造を開始することで、酵素力価が向上することが確認できた。またスケールアップした場合でも高品質の麹が製造できることが確認できた。
(2) さらに同じ固形物でも、デンプン質や糖質を有する固形食材を用いることで酵素力価が向上することおよび風味の改善が確認できた。
(3) デンプン質や糖質を含む固形食材としては、小豆、サツマイモ、麦などの穀物やイモ類を実験例で確認したが、その他、野菜類、種実類、果実類もデンプン質や糖質を有するので、ほぼ同様の効果が期待できる。
(4) 実験例において、本発明による焙煎米糠麹を用いた炊飯方法を示した。この方法により、栄養価が玄米に近くなったご飯が提供できた。
(5) 商品形態としては、様々なものが考えられる。先に示した炊飯方法以外にも、例えば、炊き込みご飯の素、漬物の素、甘酒、酵素入り野菜ジュース、菓子類などに含ませることにより、栄養価の高い食品になる効果が期待できる。
(6) 本発明は、焙煎米糠麹の製造方法を提供するものであるが、米糠の中でも栄養価の高い赤糠にも応用できる。赤糠には糠臭が特に強く感じられるため、製麹工程の前段階で焙煎処理を行っている。これにより糠臭がなくなり、黄な粉のような香りになる。焙煎工程は殺菌も兼ねているため、先行発明が殺菌を目的に使用していた乳酸水は必要なくなったのも大きな点である。
(1)米糠を焙煎してから麹にしたこと、米糠臭を著しく減少させたこと。
(2)焙煎米糠麹を乾燥して粉末状にしたことで、白米の分量(合)に合わせて、袋詰めが可能であること、および白米の粒に酵素力価を作用させやすくなること、
(3)白米を炊飯するとき、白米の量にあわせて、乾燥焙煎米糠麹を好みの量だけ添加することが可能であること、
(4)袋詰めした乾燥焙煎米糠麹で、携帯性が良くなること、
(5)袋詰めした乾燥焙煎米糠麹で、白米の炊飯以外の調理にも使用が可能であること、
(6)本発明の炊飯方法によれば、米糠臭がなく、玄米の栄養価を取り戻したように、おいしい白米ご飯にして食べられること、
以上のような効果を合わせ持っていることを付記する。
Claims (4)
- 米糠を焙煎して焙煎米糠粉末を製造する第一の工程と、
前記焙煎米糠粉末10質量部に対して、水分を3〜9質量部の割合で、添加混合し、前記焙煎米糠粉末を焙煎米糠粒子にする第二の工程と、
前記焙煎米糠粉末もしくは前記焙煎米糠粒子5〜8質量部に対して、0.02cm3〜3.38cm3の大きさである残部の固形物を5〜2質量部を添加混合して、全体を10質量部とする第三の工程と、
前記焙煎米糠粉末もしくは前記焙煎米糠粒子に麹菌を植え付ける第四の工程と、
前記第二の工程から前記第四の工程までを順序不同の工程とし、これら前記第二の工程から前記第四の工程までを終了した後、温度が20℃〜45℃、湿度が70%〜99%の範囲の環境下で24時間以上培養する第五の工程と、
を含む焙煎米糠麹の製造方法。 - 前記固形物がダミーである請求項1に記載の焙煎米糠麹の製造方法。
- 前記焙煎米糠粒子に粉末状の麹菌を植え付けて培養した後、前記ダミーである固形物を取り除く工程を追加した請求項2に記載の焙煎米糠麹の製造方法。
- 前記固形物がデンプンを含む食材である請求項1に記載の焙煎米糠麹の製造方法。
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