JP2021103137A - ガスセンサ - Google Patents

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Abstract

【課題】ヒータ抵抗に流す電流量を環境温度に応じて自動的に変化させる。【解決手段】ガスセンサ1は、フィードバック回路F、センサ回路S1,S2及び制御回路10を含む。フィードバック回路Fは、サーミスタRd1を加熱するヒータ抵抗MH1と、出力信号V1に基づいてフィードバック出力Vmhを制御するアンプ回路A1とを含む。センサ回路S1,S2は、フィードバック出力Vmhに応じた電流によって、サーミスタRd2,Rd3を加熱するヒータ抵抗MH2,MH3を含む。制御回路10は、出力信号V1,V3と、出力信号V1,V2の差分に応じた補正値に基づいて、出力信号Voutを生成する。これにより、環境温度にかかわらずサーミスタRd1〜Rd3を一定の温度に加熱することができる。サーミスタRd1〜Rd3に特性差が存在する場合であっても、出力信号V1,V2の差分に応じた補正が行われる。【選択図】図1

Description

本発明は、雰囲気中に含まれるガスを検出するガスセンサに関し、特に、サーミスタを加熱するヒータ抵抗を備えたガスセンサに関する。
ガスセンサは、雰囲気中に含まれる測定対象ガスの濃度を検出するものであり、中でも、ヒータ抵抗によってサーミスタを加熱するタイプのガスセンサは小型化に優れている。例えば、特許文献1に記載されたガスセンサは、ヒータ抵抗によって加熱されるサーミスタと基準抵抗を直列に接続し、その接続点の電位に基づいて測定対象ガスの濃度を検出している。
特許文献1に記載されたガスセンサは、環境温度測定素子をさらに備えている。そして、環境温度測定素子によって得られた環境温度に応じて、ヒータ抵抗に流す電流量を微調整することにより、環境温度によらずサーミスタを一定の温度で加熱している。特許文献1に記載されたガスセンサにおいては、環境温度測定素子から出力される電圧値をA/D変換し、得られたデジタル値に基づいてヒータ抵抗に流す電流量を示す指示値を算出し、さらに指示値をD/A変換することによってヒータ抵抗に流す電流を生成している。
特開2017−9472号公報
しかしながら、特許文献1に記載された方式では、ヒータ抵抗に流す電流を高精度に制御するためにはA/DコンバータやD/Aコンバータのビット数を増やす必要があり、回路規模が大きくなるという問題があった。また、指示値の演算においても誤差が生じるため、ヒータ抵抗に流す電流を高精度に制御することは必ずしも容易ではなかった。しかも、A/D変換、演算、D/A変換には所定の時間が必要であることから、環境温度の変化に対する応答速度を高めることも容易ではなかった。
したがって、本発明は、ヒータ抵抗によってサーミスタを加熱するタイプのガスセンサにおいて、デジタル処理を行うことなく、ヒータ抵抗に流す電流量を環境温度に応じて自動的に変化させることを目的とする。
本発明によるガスセンサは、第1のサーミスタと、第1のサーミスタを第1の温度に加熱する第1のヒータ抵抗と、第1のサーミスタの抵抗値によって電位が変化する第1の接点の電位に基づいて、第1のヒータ抵抗に流す電流量を制御するアンプ回路とを含むフィードバック回路と、第2のサーミスタと、アンプ回路の出力に応じた電流によって、第2のサーミスタを第1の温度又はその近傍に加熱する第2のヒータ抵抗と含む第1のセンサ回路と、第3のサーミスタと、アンプ回路の出力に応じた電流によって、第3のサーミスタを第1の温度とは異なる第2の温度に加熱する第3のヒータ抵抗と含む第2のセンサ回路と、第1の接点の電位と、第2のサーミスタの抵抗値によって電位が変化する第2の接点の電位と、第3のサーミスタの抵抗値によって電位が変化する第3の接点の電位に基づいて、検出対象ガスの濃度を示す出力信号を生成する制御回路とを備え、制御回路は、第1及び第3の接点の電位と、第1の接点の電位と第2の接点の電位の差分に応じた補正値に基づいて、出力信号を生成することを特徴とする。
本発明によれば、アンプ回路の出力が第1のヒータ抵抗にフィードバックされることから、環境温度にかかわらず、第1のサーミスタを一定の温度に加熱することができる。そして、第2のサーミスタを加熱する第2のヒータ抵抗や、第3のサーミスタを加熱する第3のヒータ抵抗には、アンプ回路の出力に応じた電流が流れることから、第2及び第3のサーミスタについても、環境温度にかかわらず一定の温度に加熱される。これにより、互いに異なる温度に加熱される第2のサーミスタと第3のサーミスタの出力差に基づいて、検出対象ガスの濃度を判定することが可能となる。ここで、第1、第2及び第3のサーミスタに僅かな特性差が存在する場合であっても、ほぼ同じ温度に加熱される第1及び第2のサーミスタの出力差に応じた補正が行われることから、サーミスタの僅かな特性差に起因する測定誤差をキャンセルすることが可能となる。
本発明において、第1のセンサ回路は、アンプ回路の出力を受けて、第1のヒータ抵抗に流れる電流と同じ電流を第2のヒータ抵抗に供給するバッファ回路をさらに含むものであっても構わない。これによれば、第2のヒータ抵抗に第1のヒータ抵抗と同じ電流を流すことが可能となる。
本発明において、第1のセンサ回路は、アンプ回路の出力を受けて、第1のヒータ抵抗に流れる電流と異なる電流を第2のヒータ抵抗に供給するバッファ回路をさらに含むものであっても構わない。これによれば、第2のサーミスタの加熱温度が第1のサーミスタの加熱温度である第1の設定温度から僅かにずれることから、測定誤差のキャンセル動作が容易となる。
本発明において、第2のセンサ回路は、アンプ回路の出力を受けて、第1のヒータ抵抗に流れる電流よりも少ない電流を第3のヒータ抵抗に供給するアッテネータ回路をさらに含むものであっても構わない。これによれば、第3のヒータ抵抗に第1のヒータ抵抗よりも少ない電流を流すことが可能となる。
本発明において、制御回路は、第1、第2及び第3の接点の電位をそれぞれ第1、第2及び第3のデジタル値に変換するADコンバータと、第1、第2及び第3のデジタル値に基づいて出力信号を生成する演算回路を含み、演算回路は、第1のデジタル値と第2のデジタル値の差分値を算出し、差分値に係数を乗じることによって補正値を算出し、第1のデジタル値と補正値を加算することによって得られるリファレンス値と第3のデジタル値を比較することによって、出力信号を生成するものであっても構わない。これによれば、係数をあらかじめ適切な値に設定しておくことにより、デジタル処理によって検出対象ガスの濃度を正確に判定することが可能となる。
このように、本発明によるガスセンサによれば、デジタル処理を行うことなく、ヒータ抵抗に流す電流量を環境温度に応じて自動的に変化させることが可能となる。このため、回路規模を縮小しつつ、環境温度の変化に応じてヒータ抵抗に流す電流を高精度且つ高速に制御することが可能となる。しかも、第1、第2及び第3のサーミスタに僅かな特性差が存在する場合であっても、これに起因する測定誤差をキャンセルすることが可能となる。
図1は、本発明の第1の実施形態によるガスセンサ1の回路図である。 図2は、検出対象ガスがゼロ又は一定の基準濃度である場合における、環境温度と出力信号V1〜V3の関係の一例を示すグラフである。 図3は、検出対象ガスがゼロ又は一定の基準濃度である場合における、環境温度と出力信号V1〜V3の関係の第1の変形例を示すグラフである。 図4は、検出対象ガスがゼロ又は一定の基準濃度である場合における、環境温度と出力信号V1〜V3の関係の第2の変形例を示すグラフである。 図5は、検出対象ガスがゼロ又は一定の基準濃度である場合における、環境温度と出力信号V1〜V3の関係の第3の変形例を示すグラフである。 図6は、本発明の第2の実施形態によるガスセンサ2の回路図である。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態によるガスセンサ1の回路図である。
図1に示すように、第1の実施形態によるガスセンサ1は、フィードバック回路F、第1のセンサ回路S1、第2のセンサ回路S2及び制御回路10を備えている。このうち、フィードバック回路F、第1のセンサ回路S1及び第2のセンサ回路S2はアナログ回路であり、制御回路10はデジタル回路である。
フィードバック回路Fは、環境温度に応じたフィードバック出力Vmhを生成する回路であり、直列に接続された第1の基準抵抗R1及び第1のサーミスタRd1と、第1のサーミスタRd1を加熱する第1のヒータ抵抗MH1と、第1の基準抵抗R1と第1のサーミスタRd1の接点N1に現れる出力信号V1のレベルに基づいて、フィードバック出力Vmhを生成するアンプ回路A1とを含んでいる。アンプ回路A1は、定電圧源CVから供給される基準電位Vrefと出力信号V1を比較し、これらに基づいてフィードバック出力Vmhを生成する。フィードバック出力Vmhは、第1のヒータ抵抗MH1に供給されるとともに、第1及び第2のセンサ回路S1,S2にも供給される。
第1のサーミスタRd1は、温度によって抵抗値が変化する素子であれば特に限定されず、複合金属酸化物、アモルファスシリコン、ポリシリコン、ゲルマニウムなどの負の抵抗温度係数を持つ材料からなるサーミスタものであっても構わないし、正の抵抗温度係数を持つ材料からなるサーミスタものであっても構わない。但し、第1のサーミスタRd1は、測定対象ガスの濃度に応じた抵抗値の変化が小さいことが好ましく、少なくとも、センサ回路S2に含まれる第3のサーミスタRd3よりも、測定対象ガスの濃度に応じた抵抗値の変化が小さいことが求められる。図1に示す第1のサーミスタRd1とアンプ回路A1の接続関係は、第1のサーミスタRd1が負の抵抗温度係数を持つ材料からなる場合を示しており、この場合、図1に示すように、アンプ回路A1の非反転入力端子(+)に出力信号V1が入力され、反転入力端子(−)に基準電位Vrefが入力される。これに対し、第1のサーミスタRd1が正の抵抗温度係数を持つ材料からなる場合には、アンプ回路A1の非反転入力端子(+)に基準電位Vrefを入力し、反転入力端子(−)に出力信号V1を入力すればよい。
第1のヒータ抵抗MH1は、第1のサーミスタRd1をあらかじめ定められた第1の設定温度(例えば300℃)で加熱する。これにより、第1のサーミスタRd1の抵抗値は、第1の設定温度に対応する所定の値となる。第1の設定温度は、測定対象ガスの濃度によって第1のサーミスタRd1の抵抗値が大きく変化しない温度に設定される。例えば、測定対象ガスがCOガスである場合、第1の設定温度を300℃に設定すれば、COガスの濃度に応じた第1のサーミスタRd1の抵抗値の変化は僅かとなる。これは、300℃の環境下ではCOガスの熱伝導率は空気の熱伝導率とほとんど差がないからである。
そして、定電圧源CVから供給される基準電位Vrefは、第1のサーミスタRd1が第1の設定温度に正しく加熱された場合における出力信号V1と同じ電位に設定される。例えば、基準抵抗R1の抵抗値と、第1のサーミスタRd1が第1の設定温度に正しく加熱された場合の抵抗値が同じである場合、第1のサーミスタRd1が第1の設定温度に正しく加熱された場合における出力信号V1の電位は、電源電位Vccの半分(Vcc/2)となる。この場合、定電圧源CVからの基準電位VrefもVcc/2に設定される。
そして、環境温度の変化などに起因して、第1のサーミスタRd1の実際の加熱温度が第1の設定温度からずれた場合、基準電位Vrefと出力信号V1の間に差が生じ、これがアンプ回路A1によって増幅されることによりフィードバック出力Vmhが変化する。例えば、第1のサーミスタRd1の実際の加熱温度が第1の設定温度よりも低い場合には、第1のサーミスタRd1の加熱温度が第1の設定温度と一致するよう、フィードバック出力Vmhが上昇する。逆に、第1のサーミスタRd1の実際の加熱温度が第1の設定温度よりも高い場合には、第1のサーミスタRd1の加熱温度が第1の設定温度と一致するよう、フィードバック出力Vmhが低下する。このようなフィードバック制御により、第1のサーミスタRd1の実際の加熱温度は、環境温度にかかわらず、第1の設定温度と一致する。尚、アンプ回路A1の極性は、第1のサーミスタRd1が負の抵抗温度係数を有しているか、正の抵抗温度係数を有しているかに応じて定めればよい。
フィードバック出力Vmhは、第1のヒータ抵抗MH1だけでなく、第1及び第2のセンサ回路S1,S2にも供給される。
センサ回路S1は、フィードバック回路Fのコピー回路であり、直列に接続された第2の基準抵抗R2及び第2のサーミスタRd2と、第2のサーミスタRd2を加熱する第2のヒータ抵抗MH2と、第2のヒータ抵抗MH2に電流を流すバッファ回路A2を含んでいる。第2の基準抵抗R2の抵抗値は、第1の基準抵抗R1の抵抗値と同じである。第2のサーミスタRd2は、第1のサーミスタRd1と同じ構成を有する素子である。
バッファ回路A2は、フィードバック出力Vmhを受け、これに基づいて第2のヒータ抵抗MH2に第1のヒータ抵抗MH1に流れる電流と同じ電流又はほぼ同じ電流を流す。これにより、第2のサーミスタRd2は、第1のサーミスタRd1と同じ第1の設定温度(例えば300℃)またはその近傍に加熱される。つまり、環境温度の変化などに起因してフィードバック出力Vmhが変化すると、第2のヒータ抵抗MH2に流れる電流量も変化する。具体的には、環境温度の低下によって第1のヒータ抵抗MH1に流れる電流が増加すると、第2のヒータ抵抗MH2に流れる電流量も自動的に増加し、環境温度の上昇によって第1のヒータ抵抗MH1に流れる電流が減少すると、第2のヒータ抵抗MH2に流れる電流量も自動的に減少する。これにより、環境温度にかかわらず、第2のサーミスタRd2を第1の設定温度に正しく加熱することが可能となる。
その結果、第1のヒータ抵抗MH1に流れる電流と第2のヒータ抵抗MH2に流れる電流が同じである場合、第2の基準抵抗R2と第2のサーミスタRd2の接点N2に現れる出力信号V2のレベルは、理想的には、フィードバック回路Fの出力信号V1のレベルと一致するはずである。しかしながら、第1のサーミスタRd1と第2のサーミスタRd2の間に僅かな特性差が存在する場合には、出力信号V1とV2は必ずしも一致せず、両者間に僅かなレベル差が生じてしまう。このようなレベル差は、サーミスタの特性上、環境温度が基準温度(例えば室温)から離れるほど大きくなる。
センサ回路S2は、測定対象ガスの濃度に応じて出力信号V3を生成する回路であり、直列に接続された第3の基準抵抗R3及び第3のサーミスタRd3と、第3のサーミスタRd3を加熱する第3のヒータ抵抗MH3と、第3のヒータ抵抗MH3に電流を流すアッテネータ回路A3を含んでいる。第3の基準抵抗R3の抵抗値は、第1の基準抵抗R1の抵抗値と同じであっても構わない。第3のサーミスタRd3は、第1のサーミスタRd1と同じ構成を有していても構わない。
アッテネータ回路A3は、フィードバック出力Vmhを受け、これに基づいて第3のヒータ抵抗MH3に第1のヒータ抵抗MH1に流れる電流よりも少ない電流を流す。これにより、第3のサーミスタRd3は、第1のサーミスタRd1よりも低い第2の設定温度(例えば150℃)に加熱される。第2の設定温度は、測定対象ガスの濃度によって第3のサーミスタRd3の抵抗値が大きくする温度に設定される。例えば、測定対象ガスがCOガスである場合、第2の設定温度を150℃に設定すれば、COガスの濃度に応じて第3のサーミスタRd3の抵抗値が大きく変化する。これは、150℃の環境下ではCOガスの熱伝導率は空気の熱伝導率と大きく異なるからである。
そして、環境温度の変化などに起因してフィードバック出力Vmhが変化すると、第3のヒータ抵抗MH3に流れる電流量も変化する。つまり、環境温度の低下によって第1のヒータ抵抗MH1に流れる電流が増加すると、第3のヒータ抵抗MH3に流れる電流量も自動的に増加し、環境温度の上昇によって第1のヒータ抵抗MH1に流れる電流が減少すると、第3のヒータ抵抗MH3に流れる電流量も自動的に減少する。これにより、環境温度にかかわらず、第3のサーミスタRd3を第2の設定温度に正しく加熱することが可能となる。
その結果、第3の基準抵抗R3と第3のサーミスタRd3の接点N3に現れる出力信号V3のレベルは、測定対象ガスが存在しない場合、或いは、測定対象ガスの濃度が一定の基準濃度である場合、理想的には、第1のセンサ回路S1の出力信号V2のレベルと一致し、測定対象ガスが存在する場合、或いは、基準濃度とは異なる濃度である場合には、その濃度に応じて第1のセンサ回路S1の出力信号V2との間にレベル差が生じる。しかしながら、第2のサーミスタRd2と第3のサーミスタRd3の間に僅かな特性差が存在する場合には、測定対象ガスが存在しない場合、或いは、測定対象ガスの濃度が一定の基準濃度である場合であっても出力信号V2とV3のレベルは必ずしも一致せず、両者間に僅かなレベル差が生じてしまう。このようなレベル差は、サーミスタの特性上、環境温度が基準温度(例えば室温)から離れるほど大きくなる。
図1に示すように、出力信号V1〜V3は制御回路10に供給される。制御回路10は、出力信号V1〜V3をそれぞれ第1〜第3のデジタル値D1〜D3に変換するADコンバータAD1〜AD3と、デジタル値D1〜D3に基づいて出力信号Voutを生成する演算回路Cを有する。
演算回路Cは、減算処理部11、補正処理部12、加算処理部13及び減算処理部14を含んでいる。これらの処理部11〜14は、それぞれが異なるハードウェア資源からなるものであっても構わないし、共通のハードウェア資源が所定のプログラムを実行することによって実現されるものであっても構わない。
減算処理部11は、デジタル値D1からデジタル値D2を減算することによって差分値d1を算出する(d=D1−D2)。理想的にはd1=0であるが、上述の通り、第1のサーミスタRd1と第2のサーミスタRd2の間に僅かな特性差が存在する場合には、出力信号V1とV2の間に僅かなレベル差が生じ、その結果d1≠0となる。補正処理部12は、差分値d1に係数αを乗じることによって補正値d2を算出する。係数αは、第2のサーミスタRd2と第3のサーミスタRd3の特性比を示す値であり、実測の結果に基づいてあらかじめ適切な値に設定する。加算処理部13は、補正値d2とデジタル値D1を加算することによってリファレンス値rを算出する。そして、減算処理部14は、リファレンス値rからデジタル値D3を減算することによって出力信号Voutを算出する(Vout=r−D3)。
図2は、検出対象ガスがゼロ又は一定の基準濃度である場合における、環境温度と出力信号V1〜V3の関係の一例を示すグラフである。
サーミスタRd1〜Rd3は、基準温度T0(例えば室温)である場合に抵抗値が一致するよう設計されるため、図2に示すように、基準温度T0においては出力信号V1〜V3のレベルが一致する。そして、環境温度が基準温度から外れた場合であっても、上述の通り、フィードバック回路Fによってフィードバック出力Vmhが自動的に変化することから、出力信号V1のレベルは変化せず、例えば、基準電位Vrefのまま一定である。
理想的には、出力信号V2,V3についても、環境温度に関わらず基準電位Vrefのまま一定となるはずであるが、サーミスタRd1〜Rd3間に僅かな特性差が存在する場合、これが原因で環境温度に応じて出力信号V2,V3が変化してしまう。図2に示す例では、環境温度が基準温度T0と比べて高くなるほど、出力信号V2,V3のレベルが低下している。図2に示す例では、環境温度に応じた出力信号V2のレベル低下は比較的小さいものの、環境温度に応じた出力信号V3のレベル低下は大きい。これは、第1のセンサ回路S1がフィードバック回路Fのコピー回路であり、第2のサーミスタRd2については第1のサーミスタRd1と同じ温度(第1の設定温度)に加熱されるため、特性差に起因する誤差が生じにくい一方、第3のサーミスタRd3については第1のサーミスタRd1と異なる温度(第2の設定温度)に加熱されるため、特性差に起因する誤差が生じ易いからである。
そして、環境温度を基準温度T0とは異なるキャリブレーション温度T1に設定した状態で、出力信号V1〜V3をあらかじめ実測することによって、出力信号V1とV2の差分値d1(=V1−V2)と、出力信号V1とV3の差分値d2(=V1−V3)を測定し、その比に基づいて係数αを算出する(α=d2/d1)。係数αは、出力信号V1を基準とした場合における、環境温度に対する出力信号V2の傾きと出力信号V3の傾きの比を表している。
このようにして得られた係数αを補正処理部12に設定しておくことにより、実際の測定動作時において、出力信号V2,V3のオフセットをキャンセルすることができる。つまり、減算処理部11によって差分値d1を算出し、補正処理部12によって差分値d1に係数αを乗じると、これによって得られる補正値d2は、出力信号V1を基準とした出力信号V3の誤差を示すことになる。したがって、加算処理部13によって補正値d2とデジタル値D1を加算すれば、これによって得られるリファレンス値rは、デジタル値D3と一致する(r=D3)。つまり、検出対象ガスがゼロ又は一定の基準濃度であれば、環境温度に関わらず、デジタル値D3はリファレンス値rと一致することから、減算処理部14によって得られる出力信号Voutはゼロとなる。
これに対し、雰囲気中に検出対象ガスが存在し、或いは、基準濃度とは異なる濃度である場合、第1のセンサ回路S1の出力信号V2については実質的に変化しない一方、第2のセンサ回路S2の出力信号V3については検出対象ガスの濃度に応じて変化するため、その差が出力信号Voutとなって現れる。これにより、検出対象ガスの濃度を検出することが可能となる。
このように、本実施形態によるガスセンサ1は、サーミスタRd1〜Rd3に僅かな特性差が存在する場合であっても、これに起因するオフセットがキャンセルされることから、検出対象ガスの濃度を正確に検出することが可能となる。
ここで、環境温度と出力信号V1〜V3の関係は、図2に示す関係であるとは限らない。例えば、図3に示すように、環境温度が基準温度T0と比べて高くなるほど出力信号V2,V3のレベルが上昇するケースもあり、図4に示すように、環境温度が基準温度T0と比べて高くなるほど出力信号V2のレベルが低下し、出力信号V3のレベルが上昇するケースもあり、図5に示すように、環境温度が基準温度T0と比べて高くなるほど出力信号V2のレベルが上昇し、出力信号V3のレベルが低下するケースもある。これらのいずれの場合であっても、本実施形態によるガスセンサ1によればオフセットをキャンセルすることが可能となる。
尚、係数αの値が大きいと、出力信号V2に含まれるノイズ成分もα倍されてしまうため、測定誤差の増大につながる。これを防ぐためには、第2のヒータ抵抗MH2に流れる電流と第1のヒータ抵抗MH1に流れる電流が敢えて異なるようバッファ回路A2を設計することにより、第2のサーミスタRd2の加熱温度を第1のサーミスタRd1の加熱温度である第1の設定温度(例えば300℃)からずらすことが有効である。これによれば、差分値d1が大きくなることから、係数αを小さくすることが可能となる。第1のサーミスタRd1の加熱温度と第2のサーミスタRd2の加熱温度の差は、±1℃以下とすることが好ましい。
<第2の実施形態>
図6は、本発明の第2の実施形態によるガスセンサ2の回路図である。
図6に示すように、第2の実施形態によるガスセンサ2は、基準抵抗R1〜R3の代わりに定電流源CC1〜CC3が用いられている点において、第1の実施形態によるガスセンサ1と相違している。その他の基本的な構成は第1の実施形態によるガスセンサ1と同じであることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
第1の実施形態と同様、第1及び第2のサーミスタRd1,Rd2は、測定対象ガスの濃度に応じて抵抗値が変化しないことが理想であるが、実際には、測定対象ガスの濃度に応じて抵抗値が僅かに変化することがある。また、測定対象ガス以外のガスによっても、第1及び第2のサーミスタRd1,Rd2の抵抗値は変化し得る。このような抵抗値の変化は、フィードバック出力Vmhの変化となって現れるため、測定誤差の原因となる。しかしながら、第2の実施形態によるガスセンサ2においては、第1のサーミスタRd1に対して第1の定電流源CC1が直列に接続され、第2のサーミスタRd2に対して第2の定電流源CC2が直列に接続されていることから、測定対象ガスの濃度に応じて第1及び第2のサーミスタRd1,Rd2の抵抗値が変化しても、第1及び第2のサーミスタRd1,Rd2に流れる電流は変化しない。つまり、第1及び第2のサーミスタRd1,Rd2の自己発熱はほぼ一定であり、測定対象ガスの濃度に応じた自己発熱量の変化は極めて少ない。このため、測定対象ガスの濃度に応じた測定誤差は、最小限に抑えられる。
また、第3のサーミスタRd3は、測定対象ガスの濃度に応じて抵抗値が変化するものの、第2の実施形態によるガスセンサ2においては、第3のサーミスタRd3に対して第3の定電流源CC3が直列に接続されていることから、測定対象ガスの濃度に応じて第3のサーミスタRd3の抵抗値が変化しても、第3のサーミスタRd3に流れる電流は変化しない。つまり、第3のサーミスタRd3の自己発熱はほぼ一定であり、測定対象ガスの濃度に応じた自己発熱量の変化は極めて少ない。このため、第3のサーミスタRd3の自己発熱に起因する測定誤差はほとんど生じない。
このように、本実施形態においては、定電流源CC1〜CC3を用いていることから、自己発熱量の変化に起因する測定誤差を最小限に抑えることが可能となる。また、自己発熱の増大によってサーミスタRd1〜Rd3が想定以上に高温となることもないため、サーミスタRd1〜Rd3の経年変化を抑制することも可能となる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
例えば、上記実施形態では、制御回路10をデジタル回路によって構成しているが、本発明がこれに限定されるものではなく、制御回路10をアナログ回路によって構成しても構わない。
1,2 ガスセンサ
10 制御回路
11 減算処理部
12 補正処理部
13 加算処理部
14 減算処理部
A1 アンプ回路
A2 バッファ回路
A3 アッテネータ回路
AD1〜AD3 ADコンバータ
C 演算回路
CC1〜CC3 定電流源
CV 定電圧源
F フィードバック回路
MH1〜MH3 ヒータ抵抗
N1〜N3 接点
R1〜R3 基準抵抗
Rd1〜Rd3 サーミスタ
S1,S2 センサ回路

Claims (5)

  1. 第1のサーミスタと、前記第1のサーミスタを第1の温度に加熱する第1のヒータ抵抗と、前記第1のサーミスタの抵抗値によって変化する第1の出力信号に基づいて、前記第1のヒータ抵抗に流す電流量を制御するアンプ回路とを含むフィードバック回路と、
    第2のサーミスタと、前記アンプ回路の出力に応じた電流によって、前記第2のサーミスタを前記第1の温度又はその近傍に加熱する第2のヒータ抵抗と含む第1のセンサ回路と、
    第3のサーミスタと、前記アンプ回路の出力に応じた電流によって、前記第3のサーミスタを前記第1の温度とは異なる第2の温度に加熱する第3のヒータ抵抗と含む第2のセンサ回路と、
    前記第1の出力信号と、前記第2のサーミスタの抵抗値によって変化する第2の出力信号と、前記第3のサーミスタの抵抗値によって変化する第3の出力信号に基づいて、検出対象ガスの濃度を示す第4の出力信号を生成する制御回路と、を備え、
    前記制御回路は、第1及び第3の出力信号と、前記第1の出力信号と前記第2の出力信号の差分に応じた補正値に基づいて、前記第4の出力信号を生成することを特徴とするガスセンサ。
  2. 前記第1のセンサ回路は、前記アンプ回路の出力を受けて、前記第1のヒータ抵抗に流れる電流と同じ電流を前記第2のヒータ抵抗に供給するバッファ回路をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
  3. 前記第1のセンサ回路は、前記アンプ回路の出力を受けて、前記第1のヒータ抵抗に流れる電流と異なる電流を前記第2のヒータ抵抗に供給するバッファ回路をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
  4. 前記第2のセンサ回路は、前記アンプ回路の出力を受けて、前記第1のヒータ抵抗に流れる電流よりも少ない電流を前記第3のヒータ抵抗に供給するアッテネータ回路をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガスセンサ。
  5. 前記制御回路は、前記第1、第2及び第3の出力信号をそれぞれ第1、第2及び第3のデジタル値に変換するADコンバータと、前記第1、第2及び第3のデジタル値に基づいて前記出力信号を生成する演算回路を含み、
    前記演算回路は、前記第1のデジタル値と前記第2のデジタル値の差分値を算出し、前記差分値に係数を乗じることによって前記補正値を算出し、前記第1のデジタル値と前記補正値を加算することによって得られるリファレンス値と第3のデジタル値を比較することによって、前記出力信号を生成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のガスセンサ。
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