JP2021102993A - 摺動部材および摺動部材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】硬質粒子の粒子径の範囲に左右されず、加工量を抑制して、摺接面を容易に形成することができる摺動部材および摺動部材の製造方法を提供する。【解決手段】摺動部材基部(10d)の表面が、所定の凹部(13)と、所定の凸部(14、15)とを有し、所定の平均粒子径を有する摺接粒子(10b)の、凹部(13)から突出している部分の周囲には凸部(14、15)が形成されている、摺動部材(10)。【選択図】図2

Description

本発明は、摺動部材および摺動部材の製造方法に関する。
排水ポンプの一種として、先行待機運転ポンプが知られている。先行待機運転ポンプは、例えばゲリラ豪雨のような急激な水量の増加に対応すべく、予め無水状態で全速運転(先行待機運転)することや、気水混合状態での排水を行うことが可能となっている。このような先行待機運転ポンプに適用できる摺動部材およびその製造方法が、例えば特許文献1に開示されている。
特許文献1には、摺動部材基部および摺接粒子を備えたポンプ用軸・軸受構造が開示されている。当該摺接粒子は、摺動部材基部の表面に散在して固定されるとともに、摺動部材基部の表面から突出しており、被摺動部材に摺接することが記載されている。また、特許文献1には、電着又はスパークプラズマ焼結により、平均粒子径が10−500μmの摺接粒子を摺動部材基部の表面に直接固定することにより、摺動部材が製造されることが記載されている。
特開2016−211727号公報(2016年12月15日公開)
図10は、従来の方法で硬質粒子を基体に固定した様子を示す模式図であり、図10の(a)は、電着によって硬質粒子を基体に固定した様子を示す模式図であり、図10の(b)は、スパークプラズマ焼結によって硬質粒子を基体に固定した様子を示す模式図である。後述するように、図中、10aは基体、10bは硬質粒子、10cはメッキ層をそれぞれ表す。
図10の(a)に示すように、電着では、摺接粒子の原料である硬質粒子10bを基体10aの表面に固定し、メッキ層10cを形成するため、基体10aの表面上に、硬質粒子10bの下端部もしくは下面が載置される。スパークプラズマ焼結は、硬質粒子10bの粉末を加圧し、基体10aに押し込む方法である。
一方、硬質粒子10bは多数の粒子の集合体であり、粒度分布を有する。そのため、特許文献1に開示された方法で硬質粒子10bを基体10aに固定する場合、図10の(a)および(b)に示すように、硬質粒子10bの下端部もしくは下面は段差なく揃う。
しかし、被摺動部材に対向する硬質粒子10bの先端部は、段差を有することになる。例えば、図10では、点線から、点線の上に示されている硬質粒子10bの先端部までの高さは、各粒子によって異なっている。
硬質粒子10bの先端部は、対向する被摺動部材と摺接する摺接面を形成する面(以下、「被摺動部材と摺接する摺接面を形成する面」を「面A」と称する場合がある)を有するように加工される。
当該加工は、基体10aの表面からの高さが異なる硬質粒子10bの先端部が同一円周上に揃うように、上記先端部を加工することによって行われる。硬質粒子10bの先端部が同一円周上に揃うと、後述する図1に示すように、軸部材10の軸を中心とした円周面である摺接面12が形成される。上記面Aを有する硬質粒子は、摺接粒子と称される。
図10の(a)および(b)に示すように、硬質粒子10bの下端部もしくは下面が段差なく揃うように硬質粒子10bを固定した後、上記加工を行い、上記面Aを得るためには、硬質粒子10bの粒子径が所定の範囲内にあることが要求される。
これは、粒子径の範囲が広い硬質粒子10bを用いると、複数の硬質粒子10b間において、基体10aの表面から硬質粒子10bの先端部までの高さが、粒子によって大きく異なる状態となることによる。
上記高さが粒子によって大きく異なると、基体10aの表面から上記面Aまでの高さが揃うように上記面Aを形成する加工(硬質粒子10bの研削及び/又は研磨)工程が必要不可欠となる。また、それと共に、小さな硬質粒子10bに上記面Aを設け、かつ上記高さを揃えるために、大きな硬質粒子10bに対する研削量が必然的に多くなる。それゆえ、加工面と材料面との両方で効率が悪くなる。
特に、上記加工工程において研削量及び/又は研磨量が増大した場合、固定層(メッキ層10c)も共に研削されるため、大きな摺接粒子を固定する固定層の減少によって、大きな摺接粒子の耐剥離性が低下する恐れが生じる。
粒子径の範囲が広い硬質粒子を用いる場合と、粒子径の範囲が狭い硬質粒子を用いる場合とでは、前者の方が原料コスト的には有利である。しかし、加工面と材料面との両方で効率が悪いという前述した問題がある。
また、粒子径の範囲の狭い硬質粒子を用いる場合でも、下端部もしくは下面を段差なく揃えて基体10aに固定した場合は、何らかの段差が発生する。そのため、硬質粒子の先端部を揃えて基体10aに固定できれば、加工量を減ずることができるとの期待が多かった。
さらに、特許文献1においては、摺接粒子となる硬質粒子の平均粒子径が10−500μmのものを使用するが、摺接粒子をメッキで固定する場合、粒子径が100μm前後のものは問題がないが、粒子径が500μmに近くなるほど安定なメッキ層を得るのに多大な時間がかかるため、工業的に不利である。そのため、硬質粒子の固定にメッキが寄与する部分を減ずる方法への期待も多かった。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであって、その目的は、硬質粒子の粒子径の範囲に左右されず、加工量を抑制して、摺接面を容易に形成することができる摺動部材および摺動部材の製造方法を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る摺動部材、および、本発明の一実施形態に係る摺動部材の製造方法は以下の発明を包含する。
〔1〕被摺動部材に対して相対的に摺動する摺動部材であって、
摺動部材基部と、
上記摺動部材基部の表面に散在して固定されており、かつ、平均粒子径が50μm超500μm以下である硬質粒子の先端部が、上記被摺動部材と摺接する摺接面を形成する面を有している摺接粒子と、を備え、
上記摺動部材基部の表面は、上記摺接粒子の一部分を埋め込み可能に形成されてなる凹部と、上記凹部の周囲に、上記凹部を囲むように形成されてなる凸部とを有し、
上記摺接粒子は、上記凹部に埋め込まれている部分と、上記凹部から突出している部分とを有し、上記凹部から突出している部分の周囲には上記凸部が形成されている、摺動部材。
〔2〕上記摺動部材基部の表面は、上記凹部および上記凸部以外の部分であって、略水平な面を形成する水平部を有し、上記水平部から上記摺接粒子の先端までの高さは、上記水平部から上記凸部の先端までの高さよりも高い、〔1〕に記載の摺動部材。
〔3〕上記凸部の先端が、上記摺接粒子から離間しており、上記凸部の先端と、上記摺接粒子との間に空間を有する、〔1〕または〔2〕に記載の摺動部材。
〔4〕上記凸部の先端が、略水平な面を有する、〔1〕または〔2〕に記載の摺動部材。
〔5〕上記摺動部材基部が、基体と、上記基体の表面に形成された表面形成部とを備えている、〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の摺動部材。
〔6〕上記基体は、硬さがHv200kg/mm以下であり、上記表面形成部の硬さがHv400kg/mm以上である、〔5〕に記載の摺動部材。
〔7〕上記硬質粒子は、硬さが珪砂の硬さ以上であり、かつ、圧縮強度が200kg/mm以上である、〔1〕から〔6〕のいずれかに記載の摺動部材。
〔8〕上記硬質粒子は、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、窒化ケイ素、アルミナ、および、WCとW2Cとの複合材からなる群より選ばれる1種以上である、〔1〕から〔7〕のいずれかに記載の摺動部材。
〔9〕被摺動部材に対して相対的に摺動する摺動部材の製造方法であって、
平均粒子径が50μm超500μm以下である硬質粒子を、摺動部材基部の表面に散在するように固定する第1工程と、
500℃以下の環境下で、上記硬質粒子を、上記摺動部材基部の表面から上記硬質粒子の先端までの高さが略一定となるように、上記摺動部材基部に圧入させる第2工程と、
上記第2工程によって圧入された上記硬質粒子を加工し、上記被摺動部材と摺接する摺接面を形成する面を有する摺接粒子を得る第3工程とを含む、摺動部材の製造方法。
〔10〕上記第2工程において圧入機を用い、上記圧入機の加圧部と、上記硬質粒子との間に、上記摺動部材基部が備える基体よりも硬い金属膜を挟持して、上記硬質粒子を上記摺動部材基部に圧入させる、〔9〕に記載の摺動部材の製造方法。
〔11〕上記摺動部材基部が、基体と、上記基体の表面に形成された表面形成部とを備えており、
上記表面形成部を、上記第2工程の後に、メッキ、溶射または焼成によって形成する、〔9〕または〔10〕に記載の摺動部材の製造方法。
〔12〕上記摺動部材基部が、硬さがHv200kg/mm以下である基体を備えている、〔9〕から〔11〕のいずれかに記載の摺動部材の製造方法。
〔13〕上記摺動部材基部が、硬さがHv200kg/mm超である基体を備えており、上記第1工程が、上記硬質粒子を嵌入可能な凹部を、上記基体の表面に散在するように形成し、上記凹部に、硬さがHv200kg/mm以下である金属膜を形成し、上記硬質粒子を、上記金属膜に固定する工程である、〔9〕から〔11〕のいずれかに記載の摺動部材の製造方法。
〔14〕上記摺動部材基部が、硬さがHv200kg/mm超である基体を備えており、上記第1工程が、上記基体の表面に、硬さがHv200kg/mm以下である金属膜を、上記基体の表面に散在するようにパターニングし、上記硬質粒子を、上記金属膜に固定する工程である、〔9〕から〔11〕のいずれかに記載の摺動部材の製造方法。
本発明の一態様によれば、摺接粒子の原料である硬質粒子の粒径の範囲が広くても、摺接粒子による摺接面を容易に形成することができる摺動部材、およびその製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る軸・軸受構造の、軸方向に垂直な断面を示す断面概略図である。 図1に示す軸部材において丸囲みした部分を拡大した断面概略図である。 硬質粒子として球状粒子を基体に圧入させた軸部材の、軸方向に垂直な断面を示す、一粒子分の断面概略図である。 摺動部材基部の凸部の先端が略水平な面を有する軸部材の、軸方向に垂直な断面を示す、一粒子分の断面概略図である。 本発明の一実施形態に係る摺動部材の製造方法の第1工程において基体の表面に散在するように固定された硬質粒子を、第2工程において、圧入機を用いて基体に圧入させる様子を示した模式図である。 圧入機の加圧部と、硬質粒子との間に、摺動部材基部が備える基体よりも硬い金属膜を挟持して、上記硬質粒子を上記摺動部材基部に圧入させた状態を示す模式図である。 軸部材の軸方向に垂直な断面を示す断面概略図であり、硬質粒子を嵌入可能な凹部に形成した金属膜に、硬質粒子を固定した状態の一例を示す図である。 軸部材の軸方向に垂直な断面を示す断面概略図であり、基体の表面にパターニングした金属膜に、硬質粒子を固定した状態の一例を示すである。 摺動部材基部の凸部の先端が、摺接粒子との間に空間を有することを示すデジタル顕微鏡写真である。 従来の方法で硬質粒子を基体に固定した様子を示す模式図である。
本発明の一実施形態に関して以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態に関しても本発明の技術的範囲に含まれる。
〔実施の形態1.摺動部材〕
本発明の一実施形態に係る摺動部材は、被摺動部材に対して相対的に摺動する摺動部材であって、摺動部材基部と、上記摺動部材基部の表面に散在して固定されており、かつ、平均粒子径が50μm超500μm以下である硬質粒子の先端部が、上記被摺動部材と摺接する摺接面を形成する面を有している摺接粒子と、を備え、上記摺動部材基部の表面は、上記摺接粒子の一部分を埋め込み可能に形成されてなる凹部と、上記凹部の周囲に、上記凹部を囲むように形成されてなる凸部とを有し、上記摺接粒子は、上記凹部に埋め込まれている部分と、上記凹部から突出している部分とを有し、上記凹部から突出している部分の周囲には上記凸部が形成されている摺動部材である。
(1−1.摺動部材の一例としての軸部材)
被摺動部材に対して相対的に摺動する摺動部材の一例として、スラリー液を排出可能なポンプに用いられる回転機構における軸・軸受構造の軸部材について説明する。
なお、本実施形態では、摺動部材としての軸部材について説明するが、本発明の一実施形態に係る摺動部材は必ずしもこれに限らない。例えば、本発明の一実施形態に係る摺動部材は、軸部材に対して相対的に摺動する軸・軸受構造における軸受部材にも適用することができる。
また、例えば、本発明の一実施形態に係る摺動部材は、スラスト軸受のような、被摺動部材に対して相対的に平面で摺動する摺動部材にも適用することができる。
軸・軸受構造1Aにおける、本発明の一実施形態に係る摺動部材としての軸部材10の構成について、図1に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る軸・軸受構造1Aの、軸方向に垂直な断面を示す断面概略図である。
図1に示すように、軸・軸受構造1Aは、摺動部材としての軸部材10と、被摺動部材としての軸受部材11とからなっている。軸部材10は、円筒形状の軸スリーブである。なお、軸部材10は、軸スリーブに限定されるものではなく、軸であってもよい。一方、軸受部材11は、内部に軸部材10が収容される円筒形状を有しており、軸部材10を軸支する。
軸受部材11は、例えば、硬質のセラミックスまたは超硬合金等からなり、硬度が珪砂の硬度と同等以上であるため、スラリー液に含まれる珪砂等に対する耐摩耗性に優れる。さらに、硬質のセラミックスである共有結合性またはイオン結合性のセラミックスは、スラリー液中に稀に含まれる金属くず等の金属成分との親和性が小さいため、軸受部材11へのスラリー液に含まれる金属くず等の金属成分の付着を防ぎやすい。なお、軸受部材11の表面に、摩擦係数を低く、もしくは耐摩耗性を向上するための焼結体または膜を形成するような加工がされていても良い。
軸部材10は、図1に示すように、基体10aと、摺接粒子10bと、後述する表面形成部であるメッキ層10cとを備えている。基体10aとメッキ層10cとは、摺動部材基部10dを形成している。ただし、軸部材10は、少なくとも基体10aと、摺接粒子10bとを備えていればよい。この場合は、摺動部材基部10dは基体10aのみからなる。なお、図1では、摺接粒子10bのうち、一部のみを図示している。
(1−2.摺接粒子)
摺接粒子10bは、摺動部材基部10dの表面に散在して固定されている。つまり、摺接粒子10bは、摺動部材基部10dの表面に、互いに接触することなく固定されている。そして、摺接粒子10bは、平均粒子径が50μm超500μm以下である硬質粒子の先端部が、被摺動部材と摺接する摺接面を形成する面を有している粒子である。
摺動部材基部10dの表面に固定されている各摺接粒子10bは、それぞれ、軸受部材11と対向する面に摺接面を形成する面(上記面A)を有している。そのため、軸部材10の軸を中心とした円周面である摺接面12が形成され、摺接粒子10bは、摺接面12によって、軸受部材11と摺接する。
上記「硬質粒子」とは、摺接粒子10bの原料となる粒子である。なお、本明細書では、先端部が上記面Aを有している硬質粒子を摺接粒子と称するが、本明細書では、説明の都合上、硬質粒子についても符号10bを付して説明する場合がある。
硬質粒子は、硬さが珪砂の硬さ以上であり、かつ、圧縮強度が200kg/mm以上であることが好ましい。当該構成によれば、硬さが珪砂の硬さ以上であるため、珪砂を主成分とするスラリー粒子等による摺接粒子10bの摩耗を防止することができる。また、圧縮強度が200kg/mm以上であるため、後述する本発明の一実施形態に係る摺動部材の製造方法において摺動部材基部10dに圧入させやすい。
なお、圧縮強度とは、圧縮荷重に対して材料が持ちこたえることができる最大応力をいう。上記圧縮強度は、圧入時に硬質粒子が破損しにくいという観点から、250kg/mm以上であることがより好ましく、300kg/mm以上であることがさらに好ましい。
また、硬質粒子は、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、窒化ケイ素、アルミナ、および、WCとW2Cとの複合材からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
硬質粒子がダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、およびアルミナからなる群より選ばれる粒子である場合、圧縮強度の高い多面体粒子を入手しやすい。また、硬質粒子がダイヤモンド、窒化ケイ素、アルミナ、および、WCとW2Cとの複合材からなる群より選ばれる粒子である場合、圧縮強度の高い球状粒子を入手しやすい。
また、上記硬質粒子は、摩擦係数が低いため、摺接粒子10bと、軸受部材11との間に水等の潤滑剤が存在しない無潤滑条件下においても円滑に摺動することができる。さらに、摩擦係数が低いことにより、摩擦による熱の発生が抑えられ、軸・軸受構造1Aの耐久性を向上させることができる。
硬質粒子の「先端部」とは、摺動部材基部10dの表面に硬質粒子が固定された場合に、軸受部材11と対向する部位をいう。摺接粒子10bは、硬質粒子の先端部を加工することによって、先端部に、上記面Aが形成されてなる。
上記加工の方法としては、上記硬質粒子の先端部をダイヤモンドまたは炭化珪素等の砥石で研削すること、上記硬質粒子の先端部を放電加工すること、等の方法を用いることができる。当業者においては、本実施の形態における摺接粒子10bのような高硬度な材料を研削する方法として、適当なものを選択すればよい。
加工する場合、硬質粒子から除去する部分は、硬質粒子の平均粒子径の15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましく、2%以下であることが特に好ましい。
上記硬質粒子の平均粒子径は、50μm超、500μm以下である。
特許文献1には、基体10aの表面に摺接粒子10bを固定する方法として、電着、スパークプラズマ焼結が記載されている。前述したように、図10は、従来の方法で硬質粒子を基体に固定した様子を示す模式図であり、図10の(a)は、電着によって硬質粒子を基体に固定した様子を示す模式図であり、図10の(b)は、スパークプラズマ焼結によって硬質粒子を基体に固定した様子を示す模式図である。
前述したように、特許文献1に開示された方法で硬質粒子10bを基体10aに固定する場合、図10の(a)および(b)に示すように、硬質粒子の下端部もしくは下面は段差なく揃う。しかし、被摺動部材に対向する硬質粒子の先端部は、段差を有することになる。
平均粒子径が500μmに近い硬質粒子は、上記段差が非常に大きいため、上記面Aを作製する際の加工量が多くなる。また、上記段差が非常に大きい場合、上記面Aを作製するための加工ができない背の低い粒子、すなわち、基体10aの表面から硬質粒子10bの先端部までの高さが低い粒子も生成する。例えば、メッシュサイズが35/45のダイヤモンド粒子は、平均粒子径が500μmであるが、最大の粒子の粒子径は540μm、最小の粒子の粒子径は360μmである。
特許文献1に開示された方法によって上記ダイヤモンド粒子を基体10aに固定し、平均粒子径の25%を研削して上記面Aを形成するとき、最大の粒子は約165μm加工する必要があり、平均粒子径を有する粒子は125μm加工する必要がある。しかし、最小の粒子は加工されない状態となる。
なお、本願明細書において、「平均粒子径」は、レーザー回折式粒子径分布測定装置:株式会社島津製作所、SALD−2100により計測されるD50値である。
(1−3.摺動部材基部および摺動部材基部に固定された摺接粒子)
上記摺動部材基部の表面は、上記摺接粒子の一部分を埋め込み可能に形成されてなる凹部と、上記凹部の周囲に、上記凹部を囲むように形成されてなる凸部とを有する。
図2は、図1に示す軸部材10において丸囲みした部分αを拡大した断面概略図である。図2において、13は凹部、14,15は凸部、16,16’は水平部、17,18は凸部と摺接粒子との間の空間である。H1〜H5は図中に示す部分の高さを表している。水平部16,16’は、摺動部材基部10dにおいて略水平な面を形成している部分である。ただし、摺動部材基部10dは水平部16,16’を有さない場合もある。例えば、摺接粒子10b同士が狭い間隔で固定されている場合は、隣り合う摺接粒子10bの周囲に形成された凸部14同士が近接し、水平部16,16’が存在しない場合がある。
「上記摺接粒子の一部分を埋め込み可能に形成されてなる凹部」とは、例えば図2に示す凹部13のように、摺動部材基部10dの表面の一部分が陥入して形成されてなり、摺接粒子の全体ではなく一部分を嵌入させることができる部分である。
なお、メッキ層10cは、摺接粒子10bの一部分を凹部13に嵌入させた後に形成されるため、摺動部材基部10dが備える基体10aの表面のみが凹部13を形成している。凹部13は、例えば、別途詳述する本発明の一実施形態に係る摺動部材の製造方法によって、摺接粒子10bの原料である硬質粒子を基体10aに圧入させることによって形成することができる。
「上記凹部の周囲に、上記凹部を囲むように形成されてなる凸部」とは、例えば図2に示す凸部14,15のように、凹部13の周囲に、凹部13を被覆しないように形成されている部分をいう。
凸部14は、基体10aに凹部13を形成することに伴って、基体10aのうち、凹部13に近接する部分が隆起することによって形成される。凸部14は、例えば、本発明の一実施形態に係る摺動部材の製造方法によって、摺接粒子10bの原料である硬質粒子を基体10aに圧入させることによって形成することができる。凸部15は、凸部14が形成された基体10aの表面にメッキ層10cを形成することによって形成される。
図2に示すように、摺接粒子10bは、凹部13に埋め込まれている部分と、凹部13から突出している部分とを有し、凹部13から突出している部分の周囲には凸部14,15が形成されている。なお、凹部13から突出している部分とは、摺接粒子10bのうち、凹部13に埋め込まれていない部分をいう。例えば、摺接粒子10bのうち、図2に示した一点鎖線よりも上の部分(凹部13の起点から上の部分)である。
摺接粒子10bが凹部13に埋め込まれる深さは、上記硬質粒子の平均粒子径の50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。当該構成によれば、摺動部材基部10dによる摺接粒子10bの保持力を好適化することができる。
また、硬質粒子を加工する場合、硬質粒子から除去する部分は、前述したように、硬質粒子の平均粒子径の15%以下であることが好ましいため、摺接粒子10bが凹部13に埋め込まれる深さは、上記硬質粒子の平均粒子径の85%未満であることが好ましく、80%以下であることがより好ましい。
なお、「摺接粒子10bが凹部13に埋め込まれる深さ」とは、基体10aの凹部13の起点から、凹部13に嵌入している摺接粒子10bの最深部に垂線を下したときの当該垂線の長さ(例えば、図2におけるH5)をいう。
凸部14、15が形成されていることによって、摺接粒子10bは、凹部13から突出している部分の周囲が、凸部14、15に囲まれる。
また、凸部15は、凸部14の上に形成されたメッキ層10cであるため、水平部16のみにメッキ層10cが形成される場合と比較して、メッキ層10cの表面積が大きくなる。そのため、スラリー粒子の移動速度の抑制に寄与することができる。したがって、凸部15によって、スラリー粒子による摩耗に対するメッキ層10cの耐久性を向上させることができる。
ただし、軸部材10において、メッキ層10cは必ずしも形成されていなくてもよい。例えば、軸部材10をスラリー粒子による摩耗が生じないような用途(例えば乾式摺動)に用いる場合は、メッキ層10cが形成されていなくてもよい。よって、当該用途に用いる場合等は、凸部15は必ずしも形成されていなくてもよいが、この場合、摺接粒子10bを摺動部材基部10dに強固に固定するため、凸部14の先端は、後述する図4に示すように略水平な面を有することが好ましい。
上記摺動部材基部の表面は、上記凹部および上記凸部以外の部分であって、略水平な面を形成する水平部を有し、上記水平部から上記摺接粒子の先端までの高さは、上記水平部から上記凸部の先端までの高さよりも高いことが好ましい。
上記「略水平な面」とは、全く凹凸を有さない完全に平坦な面でなければならないということではなく、実用上水平と言える程度の面であればよいことを意味する。例えば、本発明の一実施形態に係る摺動部材の製造方法によって基体10aに硬質粒子を圧入させる場合、凹部および凸部が形成されず、基体10aにおいて圧入の影響を受けない部分は、略水平な面である。
図2に示すように、水平部16から摺接粒子10bの先端までの高さH1は、水平部16から凸部14の先端までの高さH2よりも高い。また、水平部16’から摺接粒子10bの先端までの高さH3は、水平部16’から凸部15の先端までの高さH4よりも高い。
なお、上述したように、摺動部材基部10dは水平部16,16’を備えていない場合もある。この場合は、摺接粒子10bの、凹部13から突出している部分の高さ(例えば、図2に示す一点鎖線より上の部分の高さであるH1)が、凸部14の高さ(図中H2)および凸部15の高さ(図中、一点鎖線から凸部15の先端までの高さ)よりも高いことが好ましい。
上記構成を備えることにより、摺接粒子10bは、凸部14、15によって摺動部材基部10dに強固に固定されるとともに、摺接面12を形成するための上記面Aが凸部14,15よりも高い位置にあるため、軸受部材11との摺動を円滑に行うことができる。
(1−4.摺動部材基部の形状等)
本発明の一実施形態に係る摺動部材において、上記摺動部材基部の表面が備える上記凸部の先端は、上記摺接粒子から離間しており、上記凸部の先端と、上記摺接粒子との間に空間を有することが好ましい。
図2に示す凸部14は、上述したように、例えば、本発明の一実施形態に係る摺動部材の製造方法により、硬質粒子を基体10aに圧入させることによって作製される。この際、凸部14の先端(図2に示す高さH2を示す部分)は、図2に示すように、摺接粒子10bとの間に空間17を有する。
また、図2に示す軸部材10では、メッキ層10cを形成しているため、凸部15の先端(図2に示す高さH4を示す部分)は、摺接粒子10bとの間に空間18を有する。
図3は、硬質粒子として球状粒子を基体10aに圧入させた軸部材10の、軸方向に垂直な断面を示す、一粒子分の断面概略図である。
ここで、球状粒子とは、角を有さない丸みを帯びた粒子を意図する。球状粒子は製造により真球からずれ、楕円形状等になる場合があるが、使用する球状粒子の直径不同および真球度は10μm以下であることが好ましい。よって、上記球状粒子の先端部を加工して作製した上記面Aの形状は、円形または楕円状となる。
図3に示すように球状粒子を圧入させた場合は、凸部14の基部は摺接粒子10bと接しているが、凸部14の先端は摺接粒子10bとの間に空間17を有している。図9は、凸部14の先端が、摺接粒子10bとの間に空間17を有することを示すデジタル顕微鏡写真(使用機器:キーエンス製VHX5000、倍率:200倍)である。
このように、摺接粒子10bの形状によって、空間の形状は異なり得るが、凸部14の先端が摺接粒子10bとの間に空間17を有した形状が形成される。
当該構成によれば、図2および図3に示すように、メッキ層10cが、上記空間を塞ぐように形成され、かつ、凸部15も形成されるため、水平部16のみにメッキ層10cを形成した場合と比べ、メッキ層10cの表面積が増加する。
したがって、メッキ層10cを剥離しにくくすることができ、スラリー粒子等に対するメッキ層10cの耐久性を向上させることができる。
また、上記凸部の先端は、略水平な面を有する態様であることも好ましい。図3に示す凸部14を、例えば圧入機によって押し込むことによって、凸部14の先端が、略水平な面を有するように変形させ、摺接粒子10bと密着させることができる。図4は、凸部14の先端が略水平な面を有する軸部材10の、軸方向に垂直な断面を示す、一粒子分の断面概略図である。
上記構成によれば、凸部14および凸部15と、摺接粒子10bとの間の空間は存在しないが、凸部14および凸部15が摺接粒子10bと密着し、摺接粒子10bをかしめたような態様となっているため、摺接粒子10bを摺動部材基部10dに強固に固定することができる。さらに、凸部15を有するメッキ層10cが形成されているため、スラリー粒子等に対する軸部材10の耐久性も向上させることができる。
本発明の一実施形態に係る摺動部材において、上記摺動部材基部は、基体と、上記基体の表面に形成された表面形成部とを備えていることが好ましい。上記表面形成部は、例えば、図1〜図4に示したメッキ層10cに該当する。
メッキ層10cは、硬質粒子を基体10aに圧入した後に作製すればよい。メッキ層10cを作製する方法としては、例えば、電解法によりニッケル系メッキ液中で通電する方法を挙げることができる。メッキ液としては、ニッケル以外の他の金属を含有するメッキ液、および/または合金を含有するメッキ液を用いてもよい。中でも、後述するように、メッキ層10cの硬さをHv400kg/mm以上とし得るメッキ液であることが好ましい。
上記構成によれば、既に述べたように、スラリー粒子に対する軸部材10の耐久性を向上させることができる。また、メッキ層10cが凸部15として形成された場合は、上述のように、凸部15によって摺接粒子10bをより強固に固定する効果をも奏することができる。
なお、表面形成部は、上記メッキ液を用いて形成したメッキ層に限られない。例えば、表面形成部はセラミックスコートであってもよい。セラミックスコートとしては、例えば、アルミナ系の物質を溶射して形成したコート、サーメットを溶射して形成したコート、アルミニウムアルコキシドを塗布し、焼成して形成したコートなどを用いることができる。また、上記メッキ液を用いて形成したメッキ層と、セラミックスコートとを共に表面形成部として用いることも可能である。
本発明の一実施形態に係る摺動部材において、上記基体は、硬さがHv200kg/mm以下であり、上記表面形成部の硬さがHv400kg/mm以上であることが好ましい。
基体10aの硬さがHv200kg/mm以下であれば、後述する本発明の一実施形態に係る摺動部材の製造方法において、上記硬質粒子を容易に圧入させることができる。上記硬さを有する基体10aの材質としては、例えば、SUS304、SUS304J1などを挙げることができる。
一方、基体10aの硬さがHv200kg/mm以下の場合、そのままではスラリー粒子による基体10aの摩耗が生じてしまうため、メッキ層10c(表面形成部)の硬さがHv400kg/mm以上であることが好ましい。上記硬さを有するメッキ層10cの材質としては、例えば、Ni−P、Ni−Bなどを挙げることができる。
基体10aの硬さは、易圧入性の観点から、Hv150kg/mm以下であることがより好ましい。また、メッキ層10cの硬さは、耐摩耗性の観点から、Hv600kg/mm以上であることがより好ましい。
また、基体10aは、圧入時に硬さがHv200kg/mm以下であり、圧入後、500℃以下の温度での熱処理によって硬化する基体であってもよい。この場合、基体10aが摺接粒子10bを固定する力を増すことができる。
ただし、軸部材10において、メッキ層10cは必ずしも形成されていなくてもよい。例えば、軸部材10をスラリー粒子による摩耗が生じないような用途(例えば乾式摺動)に用いる場合は、メッキ層10cが形成されていなくてもよいが、この場合、凸部14の先端は、前述したように、略水平な面を有することが好ましい。
(1−5.摺動部材における面密度等)
基体10aの表面の垂直方向から見たときの、摺接粒子10bが占める面積の割合である面密度は、20〜70%であることが好ましい。ここで、面密度が大きいことは、摺接粒子10b間の間隔が狭いことを意味し、反対に面密度が小さいことは、摺接粒子10b間の間隔が広いことを意味する。
上記面密度を20〜70%とすることにより、スラリー粒子を、隣接する摺接粒子10b間の領域である粒子間領域へと逃がしやすくなる。すなわち、軸部材10と軸受け部材11との間に侵入したスラリー粒子は、摺接粒子10bと軸受け部材11との間に挟み込まれるよりも、粒子間領域へと送り込まれやすくなる。
そして、スラリー粒子は、基体10aの外表面全体に形成されている粒子間領域を通過して、軸・軸受構造1Aの外部へと排出され得る。これにより、摺接粒子10bと軸受け部材11との間へのスラリー粒子の噛み込みによる、相手材である軸受け部材11の摩耗を抑制することができる。面密度は、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは55%以下である。
軸部材10は、上記粒子間領域に、摺接粒子10bと同一材料の粒子であって、摺接粒子10bよりも粒子径の小さい粒子を備えていてもよい。該粒子は、軸部材10を製造する際に、摺接粒子10bの原材料となる粉体の粒度分布に起因して不可避的に備えられる粒子である。
〔実施の形態2.摺動部材の製造方法〕
本発明の一実施形態に係る摺動部材の製造方法について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、既述の実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
(2−1.第1工程および第2工程)
本発明の一実施形態に係る摺動部材の製造方法は、被摺動部材に対して相対的に摺動する摺動部材の製造方法であって、平均粒子径が50μm超500μm以下である硬質粒子を、摺動部材基部の表面に散在するように固定する第1工程と、500℃以下の環境下で、上記硬質粒子を、上記摺動部材基部の表面から上記硬質粒子の先端までの高さが略一定となるように、上記摺動部材基部に圧入させる第2工程と、上記第2工程によって圧入された上記硬質粒子を加工し、上記被摺動部材と摺接する摺接面を形成する面を有する摺接粒子を得る第3工程とを含む。
上記第1工程では、基体10aの表面に上記硬質粒子を互いに接触しないように載置して、ニッケルメッキ等によって上記表面に上記硬質粒子を固定する方法;樹脂製のシートに、接着剤を上記硬質粒子が互いに接触しない間隔(例えば、φ0.3mmのパターンを0.5mm間隔で配置)で塗布し、接着剤を塗布した箇所に、上記硬質粒子を載置して固定し、得られたシートを基体10aの表面に貼付する方法;等によって、上記硬質粒子を基体10aの表面に散在するように固定する。
図5は、第1工程において基体10aの表面に散在するように固定された硬質粒子10bを、第2工程において、圧入機を用いて基体10aに圧入させる様子を示した模式図である。図5において、101は圧入機の圧入棒(加圧部)であり、104は圧入機の基部である。
図5の(a)に示すように、基体10aの表面の左端に固定された硬質粒子10bを圧入棒101(加圧部)によって基体10aに圧入させると、圧入棒101(加圧部)は基部104に当接するところまで降下し、それ以上は降下しない。そのため、図5の(b)に示すように、硬質粒子10bの先端の位置は、基部104の上面と水平な位置と一致する。
次に、圧入棒101(加圧部)を移動させて、図5の(a)の中央の硬質粒子10bを、圧入棒101(加圧部)によって圧入させる。このとき、初めに圧入させた硬質粒子10bの先端は、基部104の上面と揃っているため、初めに圧入させた硬質粒子10bも、基部104と共に、中央の硬質粒子10bを圧入させるためのガイドの役割を果たすことができる。
続いて、圧入棒101(加圧部)を移動させて、図5の(a)の右端の硬質粒子10bを、圧入棒101(加圧部)によって圧入させる。このような動作を繰り返すことによって、図5の(b)に示すように、基体10aの表面から硬質粒子10bの先端までの高さを、基体10aの表面から基部104の上面までの高さと一致させることができる。
このように、基体10aの表面から硬質粒子10bの先端までの高さが所望の高さとなるように、基部104の高さを調節し、圧入を行うことによって、硬質粒子を、摺動部材基部の表面から上記硬質粒子の先端までの高さが略一定となるように、上記摺動部材基部に圧入させることができる。
上記圧入は、500℃以下の環境下で行う。すなわち、圧入に供する硬質粒子10bおよび基体10aを500℃以下の雰囲気下に置き、上述したように圧入を行う。圧入は、作業性の観点から、300℃以下の環境下で行うことがより好ましく、200℃以下の環境下で行うことがさらに好ましい。
圧入棒101の材質としては、例えばハイスのSKH51等を用いることができる。圧入機は、上記第2工程を行い得るものであれば特に限定されない。後述する実施例では、直動するリニアガイドの上にロータリーインデックスが固定されている圧入機を用いた。
当該圧入機は、ロータリーインデックスによって基体10aを把持し、圧入棒101を用いて、基体10aの軸方向に一列分、圧入を行った後、上記ロータリーインデックスを微小回転させ、上記リニアガイドによって圧入位置を次の列に移動させ、さらなる圧入を行うことができる。
ただし、圧入の方法は、以上説明した方法に限られるものではない。例えば、基体10aにおける硬質粒子10bを圧入させたい部位に予め穴を開けておき、当該穴に硬質粒子10bを載置し、固定した後に圧入を行う方法等を挙げることができる。
硬度が高い基体10aに大きな硬質粒子10bを圧入させるときは、当該方法を取ることにより、圧入に必要な荷重を低減することができる。上記部位に穴を開ける方法としては、例えば、マシニングセンターによる機械加工、化学エッチング等の方法を挙げることができる。
(2−2.第3工程)
摺接粒子10bは、硬質粒子の先端部を加工することによって、先端部に、上記面Aが形成されてなる。上記先端部の加工は、前述したように、上記先端部を砥石で研削すること、上記先端部を放電加工すること、等の方法によって行うことができる。
(2−3.圧入機の加圧部と硬質粒子との間に金属膜を挟持して圧入を行う態様)
本発明の一実施形態に係る摺動部材の製造方法は、上記第2工程において圧入機を用い、上記圧入機の加圧部と、上記硬質粒子との間に、上記摺動部材基部が備える基体よりも硬い金属膜を挟持して、上記硬質粒子を上記摺動部材基部に圧入させる方法であってもよい。
図6は、上記金属膜を用いて硬質粒子を基体10aに圧入させた状態を示す模式図である。図6において、102は、基体10aよりも硬い金属膜である。図6に示した圧入棒(加圧部)101と、硬質粒子10bとの間に金属膜102を挟持し、500℃以下の環境下にて硬質粒子10bを基体10aに圧入させると、硬質粒子10bは、金属膜102および基体10aに圧入され、金属膜102に凸部103が生じ、基体10aに凸部14が生じる。
圧入を進め、図6に示すように、凸部103と凸部14とが接触するまで圧入させると、硬質粒子10bは、凹部13から突出している部分が、凸部14によって囲まれ、基体10aに強固に固定される。
金属膜102への硬質粒子10bの圧入深さは、基体10aへの圧入深さよりも浅いため、金属膜102は、硬質粒子10bから容易に剥離することができる。その結果、凹部13から硬質粒子10bの先端までの突出しを有する硬質粒子を基体10aに固定することができる。
例えば、硬質粒子10bとして、図6に示すように球状粒子を用いた場合、圧入棒(加圧部)101によって当該粒子を直接圧入させると、圧入棒(加圧部)101と球状粒子とが点接触の状態となるため、当該粒子が割れてしまう場合がある。金属膜102を用いて圧入させることによって、硬質粒子10bが金属膜102にも圧入されるため、面圧が分散される。したがって、上記構成によれば、球状粒子を用いた場合でも、粒子を破損させることなく圧入を行うことができる。
(2−4.表面形成部の形成)
本発明の一実施形態に係る摺動部材の製造方法は、上記摺動部材基部が、基体と、上記基体の表面に形成された表面形成部とを備えており、上記表面形成部を、上記第2工程の後に、メッキ、溶射または焼成によって形成する方法であってもよい。
上記表面形成部は、例えば、図1〜図4に示したメッキ層10cである。上記表面形成部をメッキによって形成する方法としては、例えば、上記第2工程を経た上記摺動部材基部に対し、電解法によりニッケル系メッキ液中で通電する方法を挙げることができる。
上記溶射としては、例えば、上記第2工程を経た上記摺動部材基部に対し、アルミナ系の物質を溶射すること、サーメットを溶射することを挙げることができる。
また、上記焼成としては、例えば、上記第2工程を経た上記摺動部材基部に対してアルミニウムアルコキシドを塗布し、塗布後のアルミニウムアルコキシドを焼成することにより、上記摺動部材基部にアルミニウムアルコキシドの皮膜を形成することを挙げることができる。
また、上記メッキ液を用いて形成したメッキ層と、セラミックスコートとを共に表面形成部として用いることも可能である。この場合、例えば、上記第2工程を経た上記摺動部材基部に対し、電解法によりニッケル系メッキ液中で通電を行い、当該通電の終了後、さらにアルミナ系の物質等の溶射を行うことにより、上記表面形成部を形成することができる。
(2−5.基体の硬さに応じた摺動部材の製造方法)
本発明の一実施形態に係る摺動部材の製造方法は、上記摺動部材基部が、硬さがHv200kg/mm以下である基体を備えていることが好ましい。基体10aの硬さがHv200kg/mm以下であれば、第2工程において、上記硬質粒子を容易に圧入させることができる。圧入の方法としては、例えば、上述した圧入機を用いる方法を挙げることができる。
上述したように、基体10aの硬さがHv200kg/mm以下である場合、スラリー粒子による基体10aの摩耗を防止するため、基体10aの表面に、硬さがHv400kg/mm以上であるメッキ層10c(表面形成部)を設けることが好ましい。メッキ層10cは、硬質粒子を基体10aに圧入させた後に作製すればよい。
本発明の一実施形態に係る摺動部材の製造方法は、上記摺動部材基部が、硬さがHv200kg/mm超である基体を備えており、上記第1工程が、上記硬質粒子を嵌入可能な凹部を、上記基体の表面に散在するように形成し、上記凹部に、硬さがHv200kg/mm以下である金属膜を形成し、上記硬質粒子を、上記金属膜に固定する工程であってもよい。
図7は、軸部材10の軸方向に垂直な断面を示す断面概略図であり、硬質粒子10bを嵌入可能な凹部13aに形成した金属膜10eに、硬質粒子10bを固定した状態の一例を示す。なお、図7には、一粒子分のみの上記状態を示している。凹部13aも、摺動部材基部10dの凹部である。
摺動部材基部10dが、硬さがHv200kg/mm超である基体10aを備える場合、その硬さゆえに、硬質粒子10bを基体10aの表面に直接圧入させることは困難である。
上記構成によれば、硬さがHv200kg/mm以下である金属膜10eに硬質粒子10bを圧入させるため、基体10aに圧入させる場合と比べ、格段に小さな労力で圧入を行うことができる。したがって、基体10aが硬い場合でも、本発明の一実施形態に係る摺動部材を容易に製造することができる。
「硬質粒子を嵌入可能な凹部」とは、硬質粒子を嵌入させたとき、硬質粒子の一部分が、表面の少なくとも一部分と接触することができる形状の凹部をいう。例えば、硬質粒子が多面体粒子である場合、硬質粒子の一つの面を凹部の底面に載置可能である矩形状の凹部(例えば図7に示す凹部13aの形状);硬質粒子が球状粒子である場合、凹部の表面が上記球状粒子の表面と面接触する半球状の凹部等を挙げることができる。
図7に示すように、凹部13aは、凹部13aに形成された金属膜10eに圧入された硬質粒子10bが、凹部13aから突出している部分を確保できるように形成される。凹部13aは、例えば、硬質粒子10bの平均粒子径よりも大きな孔径を有する。
なお、硬質粒子10bの平均粒子径よりも大きい粒子径を有する硬質粒子の中には、凹部13aに嵌入できないものもあり得るが、形成した凹部13aに嵌入することができる硬質粒子を用いれば足りる。凹部13aを形成する労力および金属膜10eの使用量を低減する観点から、上記孔径は、用いる硬質粒子10bの平均粒子径に比して大きすぎないことが好ましい。
凹部13aを形成する方法としては、例えば、マシニングセンターによる機械加工、化学エッチング等の方法を挙げることができる。また、金属膜10eの材質としては、例えば、ニッケルメッキ等を挙げることができる。
金属膜10eの形成方法としては、例えば電気メッキ、無電解メッキ等の方法を挙げることができる。金属膜10eの厚みは、上述したように、金属膜10eに圧入された硬質粒子10bが、凹部13aから突出している部分を確保できる厚みであればよい。硬質粒子10bを金属膜10eに圧入させる方法としては、例えば、上述した圧入機を用いた方法を用いることができる。
硬質粒子10bが凹部13aに埋め込まれる深さは、硬質粒子10bの平均粒子径の50%以上、70%以下であることが好ましい。
「硬質粒子10bが凹部13aに埋め込まれる深さ」とは、基体10aの凹部13aの起点から、金属膜10eに嵌入している硬質粒子10bの最深部に垂線を下したときの当該垂線の長さ(例えば、図7におけるH6)をいう。
金属膜10eは硬さがHv200kg/mm以下であるため、硬質粒子10bを金属膜10eに圧入させた後、さらにメッキ層10c(表面形成部)を設けることが好ましい。メッキ層10c(表面形成部)の硬さは、上述したように、Hv400kg/mm以上であることが好ましい。上記表面形成部は、前述した方法によって形成することができる。
本発明の一実施形態に係る摺動部材の製造方法は、硬さがHv200kg/mm超である基体を備えており、上記第1工程が、上記基体の表面に、硬さがHv200kg/mm以下である金属膜を、上記基体の表面に散在するようにパターニングし、上記硬質粒子を上記金属膜に固定する工程であってもよい。
図8は、軸部材10の軸方向に垂直な断面を示す断面概略図であり、基体10aの表面にパターニングした金属膜10fに、硬質粒子10bを固定した状態の一例を示す。なお、図8には、一粒子分のみの上記状態を示している。
摺動部材基部10dが、硬さがHv200kg/mm超である基体10aを備える場合、その硬さゆえに、硬質粒子10bを基体10aの表面に直接圧入させることは困難である。
上記構成によれば、硬さがHv200kg/mm以下である金属膜10fに硬質粒子10bを圧入させるため、基体10aに圧入させる場合と比べ、格段に小さな労力で圧入を行うことができる。したがって、基体10aが硬い場合でも、本発明の一実施形態に係る摺動部材を容易に製造することができる。
上記パターニングは、硬質粒子10bの一部分と接触可能な表面を有し、かつ、硬質粒子10bの一部分を圧入させることが可能な表面積および厚みを有する金属膜10fを、金属膜10f同士が互いに接触しないように基体10aの表面に形成することをいう。
金属膜10fの材質としては、例えば、ニッケルメッキ等を挙げることができる。また、金属膜10fを基体10aの表面に形成する方法としては、例えば電気メッキ、無電解メッキ等の方法を挙げることができる。
金属膜10fは、厚くなりすぎると軸部材10全体の厚みが大きくなるため、硬質粒子10bを圧入させるために用いる厚みに20〜30μmを加えた厚みであることが好ましい。硬質粒子10bを金属膜10fに圧入させる方法としては、例えば、上述した圧入機を用いた方法を用いることができる。
硬質粒子10bが金属膜10fに埋め込まれる深さは、硬質粒子10bの平均粒子径の50%以上、80%以下であることが好ましい。
「硬質粒子10bが金属膜10fに埋め込まれる深さ」とは、金属膜10fの水平部19から、金属膜10fに嵌入している硬質粒子10bの最深部に垂線を下したときの当該垂線の長さ(例えば、図8におけるH7)をいう。図8において、13bは、金属膜10fに形成された凹部である。この場合、金属膜10fも摺動部材基部10dを構成するため、凹部13bも、摺動部材基部10dの凹部に該当する。
金属膜10fは硬さがHv200kg/mm以下であるため、硬質粒子10bを金属膜10fに圧入させた後、さらにメッキ層10c(表面形成部)を設けることが好ましい。メッキ層10c(表面形成部)の硬さは、上述したように、Hv400kg/mm以上であることが好ましい。上記表面形成部は、前述した方法によって形成することができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明について、実施例および比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
〔製造例1〕
粒子径の範囲が302〜541μmであるダイヤモンド粒子を硬質粒子として用い、上記面Aを作製するために要する上記硬質粒子の研削量の相違を、本発明の一実施形態に係る摺動部材の製造方法を用いた場合と、従来の製造方法を用いた場合とで比較した。
266.9mm×97mmLの、透明な厚み0.2mmのPETフィルムに、0.6mmピッチで、φ0.4mmのパターンで接着剤(セメダイン(登録商標)スーパーX)を塗布した。
上記接着剤を塗布した部分に、メッシュサイズ35/50、平均粒子径が421.5μmであるダイヤモンド粒子(カスタムダイヤ製。以下、「粒子(1)」と称する)を塗布し、1時間後、未接着粒子を除去した。
上記粒子(1)は多面体粒子である硬質粒子であり、14面体形状を含んでいる。次に、上記樹脂シートをφ85mm×97mmLの基体(SUS304製)に、上記接着剤によって接着固定した。上記粒子(1)の粒子径の範囲等を表1に示す。
Figure 2021102993
続いて、圧入棒(ハイス、SKH51製、HRC60)を備えた圧入機を用い、25℃の環境下で、上記粒子(1)1個当たりに50〜60kgの荷重を負荷し、上記基体の表面から粒子(1)の先端までの高さ(突出し高さ)が100μmとなるように、粒子(1)を上記基体に圧入(冷間圧入)させた。
上記圧入機は、直動するリニアガイドの上にロータリーインデックスが固定されている。上記ロータリーインデックスによって上記基体を把持し、圧入棒を用いて、軸方向に一列分、圧入を行った。
次に、上記ロータリーインデックスを微小回転させ、上記リニアガイドで圧入位置を0.6mm移動させ、さらなる圧入を行った。以下、同じ動作を繰り返すことにより、上記基体に固定した粒子(1)全てを同じ条件で圧入させた。これにより、上記基体には、図2に示す凸部14に該当する凸部が形成された。
圧入完了後、上記基体の表面から粒子(1)の先端までの高さ(突出し高さ)は約100μmであった。なお、上記基体の表面は、図2の水平部16に該当する。
続いて、上記基体にニッケル−リンメッキを行った。メッキ完了後、形成されたメッキ層の表面から粒子(1)の先端までの高さ(突出し高さ)は80μmであった。これにより、上記基体には、図2に示す凸部15に該当する凸部が形成された。なお、上記メッキ層の表面は、図2の水平部16’に該当する。
次に、円筒研削盤を用いて、上記基体の外周に沿って、粒子(1)の先端部を研削し、上記面Aを作製した。研削量は42μmであった。上記メッキ層の表面から上記面Aまでの高さ(突出し高さ)は、38μmであった。当該突出し高さは、図2のH3に該当する。
〔製造例2〕
上記研削量を63μmとしたこと以外は、製造例1と同様にして、上記面Aを有する粒子(1)を得た。
〔比較製造例1〕
266.9mm×97mmL、厚み0.2mmのSUS304製のシートに、塩化鉄エッチングを用いて、0.6mmピッチで、φ0.4mmの穴を開けた。Φ85mmx97mmLの基体(SUS304製)の外周に上記シートを巻き、その穴に製造例1と同じ接着剤を充填した後、上記シートを取り除いた。
上記基体に、製造例1で用いた粒子(1)を塗布し、1時間後、未接着粒子を除去した。続いて、上記基体にニッケル−リンメッキを行った。メッキ完了後、形成されたメッキ層の表面から粒子(1)の先端までの高さ(突出し高さ)は80μmであった。
次に、円筒研削盤を用いて、上記基体の外周に沿って、粒子(1)の先端部を研削し、上記面Aを作製した。研削量は42μmであった。上記メッキ層の表面から上記面Aまでの高さ(突出し高さ)は、38μmであった。
〔比較製造例2〕
上記研削量を63μmとしたこと以外は、比較製造例1と同様にして、上記面Aを有する粒子(1)を得た。
〔実施例1、2および比較例1、2〕
製造例1、2および比較製造例1、2で製造した摺動部材について、以下の方法により、摺接粒子1個当たりの平均研削面積、摺接粒子1個当たりの平均研削量を算出した。
(1.摺接粒子1個当たりの平均研削面積の算出)
上記摺動部材の100mm×50mmの面から均等に8カ所、単位表面(1mm×1mm)を設定し、レーザー顕微鏡(製品名:VK-9700、キーエンス社製)を使い、各単位表面中の研削された摺動面積の総和と粒子個数とを調べた。それらの数値をもとに粒子(1)1個当たりの平均研削面積を算出した。
上記「研削された摺動面積」は、上記面Aの面積に該当する。つまり、上記「平均研削面積」は、各単位表面中に存在する摺接粒子が有する上記面Aの面積の平均値に該当する。
(2.研削量の評価)
製造例1、2および比較製造例1、2で製造した摺動部材の100mm×50mmの面について、硫酸を用いた化学エッチングにより固定層(メッキ層)であるニッケルを溶解し、粒子(1)を捕集した。
次に、研削前の粒子(1)と研削後の粒子(1)との質量差から、研削によって減じた体積を算出した。さらに、上記レーザー顕微鏡によって測定された単位面積当たりの粒子(1)の個数を用い、粒子(1)1個当たりの平均研削量を算出した。
上記1.で算出された粒子(1)1個当たりの平均研削面積、および上記2.で算出された粒子(1)1個当たりの平均研削量を表2に示す。なお、表中の「研削量(%)」とは、各製造例における研削量の、粒子(1)の平均粒子径に対する割合である。例えば、製造例1であれば、研削量が42μm、粒子(1)の平均粒子径が421.5μmであるから、上記「研削量(%)」は、42/421.5≒10%となる。
Figure 2021102993
製造例1および製造例2の製造方法は、本発明の一実施形態に係る摺動部材の製造方法であり、製造された摺動部材は、本発明の一実施形態に係る摺動部材である。実施例1と比較例1、実施例2と比較例2とを比べると、上記研削量(%)が同じであっても、粒子(1)1個当たりの平均研削面積および粒子(1)1個当たりの平均研削量は、実施例の方が大幅に小さい。
比較例1,2では、比較製造例1、2に示す方法を取っているため、図10に示すように、硬質粒子の下端部もしくは下面は段差なく揃い、先端部は段差がある状態で硬質粒子が基体に固定される。一方、実施例1,2では、製造例1,2に示す本発明の一実施形態に係る摺動部材の製造方法を取っているため、図5に示すように、硬質粒子の先端部が揃った状態で硬質粒子が基体に固定される。
表2に示す結果の差異は、この製造方法の相違に基づくと言える。すなわち、本発明の一実施形態に係る摺動部材の製造方法は、硬質粒子の粒子径の範囲に左右されず、加工量を抑制して、摺接面を容易に形成することができると言える。
〔実施例3〜5および比較例3〕
本実施例および比較例では、摺接粒子の固定方法と、摺動部材基部における摺接粒子の保持力との関係について検討した。
φ10mm×50mmLの基体(SUS304製)の端部における表面に、粒子径が400μmのダイヤモンド粒子(カスタムダイヤ製)を1個載置し、SKH51製(HRC60)の圧入棒で、上記基体の表面から上記ダイヤモンド粒子の先端までの高さ(突出し高さ)が80μmとなるように圧入した(実施例3)。
これにより、上記基体には、図2に示す凸部14に該当する凸部が形成された。なお、上記基体の表面は、図2の水平部16に該当する。
上記基体の表面から上記ダイヤモンド粒子の先端までの高さ(突出し高さ)が100μmとなるように圧入したこと以外は、実施例3と同様の方法によって、上記ダイヤモンド粒子を上記基体の端部における表面に圧入した。圧入後、Ni−Pメッキを施工した(実施例4)。
メッキ完了後、形成されたメッキ層の表面から上記ダイヤモンド粒子の先端までの高さ(突出し高さ)は80μmであった。
これにより、上記基体には、図2に示す凸部15に該当する凸部が形成された。なお、上記メッキ層の表面は、図2の水平部16’に該当する。
また、別途、φ10mm×50mmLの基体(SUS304製)の端部における表面に、実施例3で用いたのと同じダイヤモンド粒子を1個載置し、SKD11製(HRC42)の圧入棒を用いて、上記基体の表面から上記ダイヤモンド粒子の先端までの高さ(突出し高さ)が80μmとなるように圧入した(実施例5)。上記基体の表面は、図2の水平部16に該当する。
このとき、上記ダイヤモンド粒子は上記圧入棒にも少し圧入された。その結果、上記基体には、図2に示す凸部14のように凸部が生じ、上記ダイヤモンド粒子がかしめられ、上記基体に固定された。
さらに、別途、φ10mm×50mmLの基体(SUS304製)の端部における表面に、実施例3で用いたのと同じダイヤモンド粒子を1個載置した。次に、上記基体の表面から上記ダイヤモンド粒子の先端までの高さ(突出し高さ)が80μmとなるようにNiメッキ及びNi−Pメッキを施し、圧入を行わずに、上記ダイヤモンド粒子を上記基体に固定した(比較例3)。
次に、上記基体の外周に沿って、上記各ダイヤモンド粒子の先端部を研削した。比研削材は超硬G2として、研削速度85mm/minで研削を実施した。各基体について、ダイヤモンド粒子が脱落したときの研削抵抗を、砥石に組み込んだひずみゲージで測定し、得られた値を上記保持力とした。
実施例3で測定された研削抵抗を1としたとき、各ダイヤモンド粒子の研削抵抗は以下のとおりであった。
Figure 2021102993
表3に示すように、圧入を行わない比較例3では、摺動部材基部における硬質粒子の保持力は低く、上記面Aを作製しにくいことが明らかとなった。つまり、本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、硬質粒子を基体に強固に保持することができ、安定的に上記面Aを作製することができる。その結果、被摺動部材との安定な摺接が可能な摺接面を形成可能な摺動部材を提供することができる。
本発明は、無水状態での先行運転、土砂等を含むスラリーの気液混合状態での排水等の、軸・軸受構造にとって過酷な条件での運転を行う先行待機運転ポンプに特に好適に利用することができる。
1A・・・・軸・軸受構造
10・・・・軸部材(摺動部材)
10a・・・基体
10b・・・摺接粒子または硬質粒子
10c・・・メッキ層(表面形成部)
10d・・・摺動部材基部
11・・・・軸受部材(被摺動部材)
12・・・・摺接面
13、13a、13b・・・摺動部材基部の凹部
14、15・・・摺動部材基部の凸部
16、16’・・・摺動部材基部の水平部
17、18・・・摺動部材基部の凸部と摺接粒子との間の空間
19・・・・金属膜の水平部
101・・・圧入棒
102・・・基体よりも硬い金属膜
H1、H3・・・摺動部材基部の水平部から摺接粒子の先端までの高さ
H2、H4・・・摺動部材基部の水平部から摺動部材基部の凸部の先端までの高さ

Claims (14)

  1. 被摺動部材に対して相対的に摺動する摺動部材であって、
    摺動部材基部と、
    上記摺動部材基部の表面に散在して固定されており、かつ、平均粒子径が50μm超500μm以下である硬質粒子の先端部が、上記被摺動部材と摺接する摺接面を形成する面を有している摺接粒子と、を備え、
    上記摺動部材基部の表面は、上記摺接粒子の一部分を埋め込み可能に形成されてなる凹部と、上記凹部の周囲に、上記凹部を囲むように形成されてなる凸部とを有し、
    上記摺接粒子は、上記凹部に埋め込まれている部分と、上記凹部から突出している部分とを有し、上記凹部から突出している部分の周囲には上記凸部が形成されている、摺動部材。
  2. 上記摺動部材基部の表面は、上記凹部および上記凸部以外の部分であって、略水平な面を形成する水平部を有し、上記水平部から上記摺接粒子の先端までの高さは、上記水平部から上記凸部の先端までの高さよりも高い、請求項1に記載の摺動部材。
  3. 上記凸部の先端が、上記摺接粒子から離間しており、上記凸部の先端と、上記摺接粒子との間に空間を有する、請求項1または2に記載の摺動部材。
  4. 上記凸部の先端が、略水平な面を有する、請求項1または2に記載の摺動部材。
  5. 上記摺動部材基部が、基体と、上記基体の表面に形成された表面形成部とを備えている、請求項1から4のいずれか1項に記載の摺動部材。
  6. 上記基体は、硬さがHv200kg/mm以下であり、上記表面形成部の硬さがHv400kg/mm以上である、請求項5に記載の摺動部材。
  7. 上記硬質粒子は、硬さが珪砂の硬さ以上であり、かつ、圧縮強度が200kg/mm以上である、請求項1から6のいずれか1項に記載の摺動部材。
  8. 上記硬質粒子は、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、窒化ケイ素、アルミナ、および、WCとW2Cとの複合材からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1から7のいずれか1項に記載の摺動部材。
  9. 被摺動部材に対して相対的に摺動する摺動部材の製造方法であって、
    平均粒子径が50μm超500μm以下である硬質粒子を、摺動部材基部の表面に散在するように固定する第1工程と、
    500℃以下の環境下で、上記硬質粒子を、上記摺動部材基部の表面から上記硬質粒子の先端までの高さが略一定となるように、上記摺動部材基部に圧入させる第2工程と、
    上記第2工程によって圧入された上記硬質粒子を加工し、上記被摺動部材と摺接する摺接面を形成する面を有する摺接粒子を得る第3工程とを含む、摺動部材の製造方法。
  10. 上記第2工程において圧入機を用い、上記圧入機の加圧部と、上記硬質粒子との間に、上記摺動部材基部が備える基体よりも硬い金属膜を挟持して、上記硬質粒子を上記摺動部材基部に圧入させる、請求項9に記載の摺動部材の製造方法。
  11. 上記摺動部材基部が、基体と、上記基体の表面に形成された表面形成部とを備えており、
    上記表面形成部を、上記第2工程の後に、メッキ、溶射または焼成によって形成する、請求項9または10に記載の摺動部材の製造方法。
  12. 上記摺動部材基部が、硬さがHv200kg/mm以下である基体を備えている、請求項9から11のいずれか1項に記載の摺動部材の製造方法。
  13. 上記摺動部材基部が、硬さがHv200kg/mm超である基体を備えており、上記第1工程が、上記硬質粒子を嵌入可能な凹部を、上記基体の表面に散在するように形成し、上記凹部に、硬さがHv200kg/mm以下である金属膜を形成し、上記硬質粒子を、上記金属膜に固定する工程である、請求項9から11のいずれか1項に記載の摺動部材の製造方法。
  14. 上記摺動部材基部が、硬さがHv200kg/mm超である基体を備えており、上記第1工程が、上記基体の表面に、硬さがHv200kg/mm以下である金属膜を、上記基体の表面に散在するようにパターニングし、上記硬質粒子を、上記金属膜に固定する工程である、請求項9から11のいずれか1項に記載の摺動部材の製造方法。
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