JP2018105364A - 軸・軸受構造および先行待機運転ポンプ - Google Patents

軸・軸受構造および先行待機運転ポンプ Download PDF

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Abstract

【課題】摺動性等に優れ、かつ、被摺動部材の偏摩耗を抑制することができる軸・軸受構造を提供する。【解決手段】被摺動部材と、摺動部材とを備え、上記摺動部材が、摺動部材基部と、上記摺動部材基部の表面に散在して固定されるとともに、上記被摺動部材に摺接する摺接粒子と、を備え、上記摺接粒子は、上記摺動部材基部の表面から突出しており、上記摺接粒子の平均粒子径が150μm以上である軸・軸受構造。【選択図】図9

Description

本発明は、軸および軸受を有する軸・軸受構造、特に、先行待機運転ポンプに好適に利用できる軸・軸受構造に関する。
排水ポンプの一種として、先行待機運転ポンプが知られている。先行待機運転ポンプは、例えばゲリラ豪雨のような急激な水量の増加に対応すべく、予め無水状態で全速運転(先行待機運転)することや、気水混合状態での排水を行うことが可能となっている。このような先行待機運転ポンプに適用できる摺動部材が、例えば特許文献1に開示されている。
特許文献1に記載の摺動部材は、被摺動部材に対して相対的に摺動する摺動部材であって、摺動部材基部と、上記摺動部材基部の表面に散在して固定されるとともに、上記被摺動部材に摺接する摺接粒子と、を備え、上記摺接粒子が、上記摺動部材基部の表面から突出しているという構成を備えている。
特開2016−211727号公報(2016年12月15日公開)
特許文献1に記載の摺動部材は、摺動する相手材との摩擦係数を改善し、基体の材料選択性を高めたものであり、特許文献1に記載の発明の従来技術が有していた課題を解決したものである。
一方、ポンプ内部を硬度の高い固体物と水とが混合したスラリー液(例えば土砂を含む水)が通過し、何らかの要因でスラリー液が摺接面に侵入した場合は別の問題が生じ得る。
特許文献1に記載の摺動部材では、通常は、摺動部材が備える摺接粒子が被摺動部材の内側表面全体に対して均一に摺動した状態、すなわち、摺接面が被摺動部材の内側表面と線接触した状態で摺動が行われる。しかし、上記固体物が被摺動部材の端部に損傷を与えた場合、摺接粒子が、被摺動部材の内側表面との均一な摺接状態を保てずに、被摺動部材の軸方向の端部の内側表面と接触した状態、いわゆる点接触が生じてしまう場合がある。点接触が生じると、それが常態化して被摺動部材の偏摩耗が生じ、異常な振動を発生させ、ポンプの運転継続が困難になる恐れがある。
また、特許文献1に記載の、摺接粒子を固定する摺動部材基部と、スラリー液とが激しく接触することによって摺動部材基部の摩耗が生じ、特許文献1に記載の摺動部材の運転可能時間に影響を与える可能性がある。これらの課題は、特許文献1に記載の発明では見出されていなかった新たな課題である。
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、スラリー液が摺接面および/または摺接粒子間に侵入した場合であっても、被摺動部材および摺動部材基部の摩耗を効果的に抑制することができる軸・軸受構造を提供することにある。
本願発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、摺接粒子の平均粒子径を所定の大きさとすることによって摺動部材基部の摩耗を抑制することができること、および、摺動部材基部の表面において摺接粒子を所定の位置に配置することによって被摺動部材の摩耗を抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本願発明は、以下の発明を包含する。
<1>被摺動部材と、上記被摺動部材に対して相対的に摺動する摺動部材とを備える軸・軸受構造であって、上記摺動部材は、摺動部材基部と、上記摺動部材基部の表面に散在して固定されるとともに、上記被摺動部材に摺接する摺接粒子と、を備え、上記摺接粒子は、上記摺動部材基部の表面から突出しており、上記摺接粒子の平均粒子径が150μm以上であることを特徴とする軸・軸受構造。
<2>上記摺動部材基部の表面の垂直方向から見たときの、上記摺接粒子が占める面積の割合である面密度が20〜70%であることを特徴とする<1>に記載の軸・軸受構造。
<3>上記摺動部材基部の表面の垂直方向から見たときに、上記摺接粒子が千鳥状に配置されていることを特徴とする<1>または<2>に記載の軸・軸受構造。
<4>上記摺接粒子が、上記摺動部材基部にロウ付けされていることを特徴とする<1>から<3>のいずれか1つに記載の軸・軸受構造。
<5>上記摺接粒子は、硬さが珪砂の硬さ以上であることを特徴とする<1>から<4>のいずれか1つに記載の軸・軸受構造。
<6>上記摺接粒子は、ダイヤモンド粒子、ダイヤモンドライクカーボン粒子、立方晶窒化ホウ素、ガラス状カーボン粒子、アルミナ粒子、炭化ホウ素粒子、炭化ケイ素粒子、炭化タングステン粒子、窒化ケイ素粒子および炭化モリブデン粒子のうちの少なくとも1種以上を含むことを特徴とする<1>から<5>のいずれか1つに記載の軸・軸受構造。
<7>上記摺接粒子の先端は、上記摺動部材基部を中心とする同一円周上に存在することを特徴とする<1>から<6>のいずれか1つに記載の軸・軸受構造。
<8><1>から<7>のいずれか1つに記載の軸・軸受構造を備えることを特徴とする先行待機運転ポンプ。
本発明の一態様によれば、摺動性が良く、基体の材料選択の幅が広く、被摺動部材の偏摩耗を抑制し、先行待機運転ポンプの運転を安定的に継続することができるという効果を奏する。
本発明の実施形態における軸・軸受構造の、軸方向に垂直な断面を示す断面概略図である。 本発明の実施形態における軸・軸受構造の、軸部材の摺接粒子が、基体上に電着された状態を示す断面図である。 実施例に示した、100時間のドライ試験を経た軸部材の摺接粒子(ダイヤモンド粒子)を外面側からレーザー顕微鏡で観察した結果を示す図である。 基体の表面の垂直方向から見たときに、摺接粒子が、上記表面に同じピッチで配置されている軸部材の一例を示す模式図である。 基体の表面の垂直方向から見たときに、摺接粒子が千鳥状に配置されている軸部材の一態様を示す模式図である。 基体の表面の垂直方向から見たときに、摺接粒子が千鳥状に配置されている軸部材の別の一態様を示す模式図である。 基体表面にニッケル電着して固定した平均粒子径150.1μmの単結晶ダイヤモンドの、軸方向に垂直な断面を示す模式図である。 基体表面にニッケル電着して固定した平均粒子径52.5μmの単結晶ダイヤモンドの、軸方向に垂直な断面を示す模式図である。 実施例1で用いた軸スリーブ、および、比較例1で用いた軸スリーブの突出し高さおよび面密度の変化をグラフ化した図である。 実施例1で用いた軸スリーブの突出し高さの結果および試験時間から、最小二乗法によって求めた検量線である。
〔1.軸・軸受構造〕
本発明の一態様に係る軸・軸受構造は、被摺動部材と、上記被摺動部材に対して相対的に摺動する摺動部材とを備える軸・軸受構造であって、上記摺動部材は、摺動部材基部と、上記摺動部材基部の表面に散在して固定されるとともに、上記被摺動部材に摺接する摺接粒子と、を備え、上記摺接粒子は、上記摺動部材基部の表面から突出しており、上記摺接粒子の平均粒子径が150μm以上であることを特徴としている。
上記構成によれば、被摺動部材は、摺接粒子の先端部と摺接し、摺動部材基部の表面とは摺接しない。これにより、摺動部材は、摩擦係数が低く、摩擦による熱の発生が抑えられ、耐久性に優れた部材となる。
また、摺接粒子が摺動部材基部の外表面上に散在しているため、摺接粒子間に摺接粒子が存在しない領域(粒子間領域)が形成される。そのため、摺動部材基部が温度の上昇によって熱膨張するとき、摺動部材基部の外表面上に固定されている摺接粒子は、該熱膨張に付随して移動することができる。換言すれば、摺接粒子は、摺動部材基部の熱膨張に付随して移動する。したがって、摺動部材基部と摺接粒子との熱膨張係数を合わせる必要が無く、摺動部材基部の材料の選択性が広い。
なお、スラリー液が粒子間領域に侵入することによって、スラリー液が被摺動部材と接触する機会を減少させることが可能となる。それゆえ、被摺動部材の摩耗の抑制を期待することができる。
さらに、上記摺接粒子の平均粒子径が150μm以上であり、比較的大きいため、スラリー液が摺動部材と被摺動部材との間に侵入した場合に、スラリー液の移動に対して上記摺接粒子が障壁となりやすい。それゆえ、スラリー液が粒子間領域を移動する速度を低下させることができ、スラリー液中の固体物が摺動部材基部と接触する頻度、および、摺動部材基部に与える力を低減することができるため、摺動部材基部の摩耗を抑制することができる。したがって、摺動部材基部における摺接粒子の固定能を長期に渡って維持することができる。
<摺動部材の構成>
まず、被摺動部材に対して相対的に摺動する摺動部材として、スラリー液を排出可能なポンプに用いられる回転機構における軸・軸受構造の軸部材について説明する。
本発明の一態様に係る軸・軸受構造1Aにおける、摺動部材としての軸部材10の構成を、図1〜6に基づいて説明する。図1は、本発明の一態様に係る軸・軸受構造1Aの、軸方向に垂直な断面を示す断面概略図である。
図1に示すように、軸・軸受構造1Aは、摺動部材としての軸部材10と、被摺動部材としての軸受部材11とからなっている。軸部材10は、円筒形状の軸スリーブである。なお、軸部材10は、軸スリーブに限定されるものではなく、軸であってもよい。
軸部材10は、図1に示すように、少なくとも、円筒形状の基体10aと、基体10aの外表面上に散在して固定された摺接粒子10bとを備える。また、摺接粒子10bが基体10aの外表面上に散在しているため、摺接粒子10b間に摺接粒子10bが存在しない領域(以下、粒子間領域)12が形成されている。なお、図1においては、基体10aの外表面全体に散在する摺接粒子10bのうち、一部のみを図示している。
軸部材10は、基体10aの外表面上に、摺接粒子10bを固定するための固定部材(図1では図示せず)を備えていてもよい。つまり、軸部材10の基部は、基体10aのみからなっていてもよいし、基体10aおよび固定部材からなっていてもよい。軸部材10の基部が基体10aのみからなる場合は、軸部材10の基部の表面は、基体10aの外表面となる。また、軸部材10の基部が基体10aおよび固定部材からなる場合は、軸部材10の基部の表面は、固定部材の外表面となる。
固定部材としては、例えば、電着による摺接粒子10bの固定に用いるニッケル膜等の金属膜、ロウ付けによる摺接粒子10bの固定に用いるロウ材等を挙げることができる。
さらに、軸部材10は、粒子間領域12に、摺接粒子10bと同一材料の粒子であって、摺接粒子10bよりも粒子径の小さい粒子を備えていてもよい。該粒子は、軸部材10を製造する際に、摺接粒子10bの原材料となる粉体の粒度分布に起因して不可避的に備えられる粒子である。
基体10aは、一般的に用いられる材質によって形成されており、例えば、Co系、Ni系の硬質合金等から成る。基体10aの硬さはHv600kg/mm以上であることが好ましく、Hv800kg/mm以上であることがより好ましく、Hv1000kg/mm以下であることが好ましい。スラリー液に含まれる固体物の主成分である珪砂の硬さがHv1000kg/mm程度であるので、その値に近い硬度、あるいはそれ以上の硬度を有することにより、上記固体物による基体10aの損傷を軽減または抑制することができる。また、基体10aの表面粗さRaは、1.0μm以下であることが好ましい。
一方、基体10aへの摺接粒子10bの固定が上記固定部材によって行われる場合は、基体10aを上記固定部材がコートするため、硬さがHv600kg/mm未満である基体10aも好ましく用いることができる。
摺接粒子10bは、基体10aの表面から突出し、かつ軸受部材11に摺接し、軸受部材11を荷重支持している。本発明の一態様に係る軸・軸受構造1Aは、スラリー液をも排出対象とする先行待機運転ポンプに用いられるため、摺接粒子10bの硬さは、珪砂の硬さ以上であることが好ましい。
摺接粒子10bは、ダイヤモンド粒子、ダイヤモンドライクカーボン粒子(Diamond-like Carbon粒子(以下、DLC粒子という))、立方晶窒化ホウ素、ガラス状カーボン粒子、アルミナ粒子、炭化ホウ素粒子、炭化ケイ素粒子、炭化タングステン粒子、窒化ケイ素粒子および炭化モリブデン粒子のうちの少なくとも1種以上を含む構成としてもよい。
上記構成によれば、上記各粒子の摩擦係数が低いので、上記各粒子のうちの少なくとも1種以上を摺接粒子として含む摺動部材は、被摺動部材との間に水等の潤滑剤が存在しない無潤滑条件下においても円滑に摺動することができる。さらに、摩擦係数が低いことにより、摩擦による熱の発生が抑えられ、材料の耐久性が向上する。
ここで、上記ダイヤモンド粒子には、ダイヤモンドの単結晶粒子、ダイヤモンド焼結体を粉砕した粒子も含まれる。また、上記DLC粒子には、バインダーを使用してDLC粉末を造粒したもの、およびDLC粉末の焼結体を粉砕した粒子も含まれる。
摺接粒子10bは、基体10aの外表面上に固定されていればよく、固定方法は特に限定されるものではない。例えば、電着、ロウ付け、スパークプラズマ焼結(Spark Plasma Sintering)(以下、SPSという)などの方法を用いることができる。
摺接粒子10bは、基体10aの外表面上に1粒子の厚さで散在している。すなわち、基体10a上に固定された摺接粒子10bの粒子の上に、別の摺接粒子10bが固定されていることはほとんど無い。基体10aの外表面上において、2つ以上の異なる摺接粒子10bが隣接している箇所があってもよい。ただし、隣接する異なる摺接粒子10b間は接合されていない。
図2は、軸部材10の摺接粒子10bが、基体10a上に電着された状態を示す断面図である。電着は周知の方法によって行うことができる。例えば、まず、基体10aの外表面上に、摺接粒子10bの粉末を配置することによって摺接粒子10bを付着させる。その後、ニッケル液中で通電することにより、基体10aの表面にニッケルメッキが施される。これによって、摺接粒子10bの一部分が固定部材であるニッケルメッキ膜20に埋め込まれ、基体10a上に固定される。
上記固定方法がロウ付けである場合、例えば、まず、基体10aの外表面上に、摺接粒子10bの粉末を配置することによって摺接粒子10bを付着させる。次に、摺接粒子10bをニッケルメッキ等によって点付固定する。その後、Ni-Cr-B-SiまたはCu-Ag-In-Ti等からなるロウ材粉末のペーストを塗布し、ロウ材の融点以上に加熱することにより、摺接粒子10bの一部分がロウ材に埋め込まれ、基体10a上に固定される。
また、上記固定方法がSPSである場合、例えば、まず、基体10aの外表面上に、摺接粒子10bの粉末を配置することによって摺接粒子10bを付着させる。その後、従来公知のSPS装置にて、例えば95℃、30MPaの条件下で加圧成形を行い、基体10a上に保持されなかった他の摺接粒子10bを降圧後に除去することによって、摺接粒子10bを基体10a上に固定することができる。
固定方法が電着である場合、摺接粒子10bを十分に固定し、安定した摺動を行うためには、摺接粒子10bの平均粒子径の50%以上がニッケルメッキ膜に埋め込まれることが好ましい。一方、ロウ付けの場合は、摺接粒子10bの平均粒子径の20%以上60%未満に相当する部分をロウ材に埋め込むことによって、摺接粒子10bを基体10a上に十分に固定することができる。
すなわち、ロウ付けは、摺接粒子10bのうち、基体10a上への固定のために用いられる部分を少なくしつつ、摺接粒子10bを基体10a上に強く固定することができるため好ましい。そこで、本発明の一態様に係る軸・軸受構造は、上記摺接粒子が、上記摺動部材基部にロウ付けされている構成としてもよい。当該構成によれば、高価な摺接粒子の使用量を少なくしつつ、所望の摺動性を得ることができる。
このように、摺接粒子10bが固定部材に埋め込まれる深さは、固定部材の種類によって異なるため、使用する固定部材の種類に応じて適宜変更すればよい。
各摺接粒子10bの先端、つまり、軸受部材11側の端部は、軸部材10の軸方向から見たときに、軸部材10の軸を中心とした同一円周上にあることが好ましい。すなわち、各摺接粒子10bの先端によって、図1に示すように、軸部材10の軸を中心とした円周面である摺接面13が形成されることが好ましい。該摺接面13は、軸部材10が回転するときに、被摺動部材である軸受部材11と摺接する。
上記構成によれば、軸部材10が回転する際に、軸受部材11と摺接するのは摺接粒子10bのみとなる。したがって、軸部材10は、摩擦係数が低く、摩擦による熱の発生が抑えられたものとなるため、耐久性が向上したものとなる。
さらに、摺接粒子10b間には、図1および図3に示すように、粒子間領域12が形成されている。図3は、後述する実施例に示した、100時間のドライ試験を経た軸部材10の摺接粒子10b(ダイヤモンド粒子)を外面側からレーザー顕微鏡で観察した結果を示す図である。粒子間領域12は、上述したように摺動部材基部の材料の選択性を広くする。また、スラリー液中の固体物を保持し、当該固体物による摺動部材基部および被摺動部材の損傷を防止すること等に重要な役割を果たす。
本発明の一態様に係る軸・軸受構造は、摺接粒子10bの平均粒子径が150μm以上である。平均粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置:株式会社島津製作所、SALD−2100により計測される値である。上述のように、摺接粒子10bの先端が、軸部材10の軸方向から見たときに、軸部材10の軸を中心とした同一円周上にあるようにするためには、通常、基体10aの表面に固定した摺接粒子10bの先端を後述する方法によって加工し、基体10aの表面から摺接粒子10bの先端までの高さ(つまり、基体10aの表面から摺接面13までの高さ)を揃えるが、本明細書における「摺接粒子の平均粒子径」とは、上記加工を行う前の摺接粒子の平均粒子径を意味する。
スラリー液中に含まれる固体物は、硬さがHv1000kg/mm程度であるので、スラリー液の移動速度が速いほど、上記固体物が軸部材10の基部に接触した場合、当該基部に与える力が大きくなり、当該基部を摩耗させやすくなる。
一方、本発明の一態様に係る軸・軸受構造は、上記平均粒子径が150μm以上と比較的大きいため、軸部材10と軸受部材11との間に侵入し、粒子間領域12を移動するスラリー液が摺接粒子10bに接触しやすい。スラリー液が摺接粒子10bに接触すると、スラリー液の移動速度が低下するため、軸部材10の基部に与える衝撃を和らげることができ、軸部材10の基部の摩耗を十分に抑制することができる。その結果、軸部材10の基部において、摺接粒子10bの固定代を大きく確保することができるため、摺接粒子10bを安定的に固定し、長期間使用することができる。
例えば、後述する実施例1では、平均粒子径が150.1μmである摺接粒子を用いた場合、平均粒子径が52.5μmである摺接粒子を用いた場合よりも、軸・軸受構造の運転時間の経過に伴う突出し高さの増加率が抑制される傾向が確認されている。したがって、摺接粒子10bの平均粒子径が150μm以上であるという構成を備えることによって、スラリー液が粒子間領域を移動する速度を低下させることができ、スラリー液中の固体物が摺動部材基部と接触する頻度、および、摺動部材基部に与える力を低減することができる。そのため、摺動部材基部の摩耗を抑制し、上記軸・軸受構造を備えた先行待機運転ポンプにスラリー液が侵入した場合でも安定した運転を継続することができると言える。
摺接粒子10bの平均粒子径は、150μm以上であればよい。一方、通常は、摺接粒子10bの平均粒子径を100としたとき、先端から30%程度を研削するが、摺接粒子10bの平均粒子径が大きい場合、摺接粒子10bの研削量(先端を加工する量)を多くして、摺接面13の面積を大きくすることができる。そのため、摺接粒子10bの平均粒子径は200μm以上であることが好ましく、250μm以上であることがさらに好ましい。
しかし、摺接粒子10bが大きくなりすぎると、研削による加工が困難となる傾向があるため、摺接粒子10bの平均粒子径は400μm以下が好ましく、より好ましくは300μm以下である。
基体10aの表面(基体10aが固定部材を備える場合は、固定部材の表面)から摺接粒子10bの先端までの平均高さは、スラリー液の移動速度を低下させるため、20μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、40μm以上であることがさらに好ましい。
また、上記平均高さは、大きくなりすぎると摺接粒子10bの固定強度が小さくなる傾向があるため、150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることがさらに好ましい。
基体10aの表面の垂直方向から見たときの、摺接粒子10bが占める面積の割合である面密度は、20〜70%であることが好ましい。つまり、本発明の一態様に係る軸・軸受構造は、上記摺動部材基部の表面の垂直方向から見たときの、上記摺接粒子が占める面積の割合である面密度が20〜70%である構成としてもよい。ここで、面密度が大きいことは、摺接粒子10b間の間隔が狭いことを意味し、反対に面密度が小さいことは、摺接粒子10b間の間隔が広いことを意味する。
面密度を20〜70%とすることにより、各摺接粒子に加わる負荷を適度に保ち、かつ、ポンプの排出対象となるスラリー液を粒子間領域12へと逃がしやすくなる。また、スラリー液中の固体物を粒子間領域12にとどめやすくなるため、当該固体物が軸受部材11に与える力を低減することができ、軸受部材11の摩耗を抑制することができる。
面密度が20%未満である場合、粒子間領域12が広くなるため、上記固体物を粒子間領域12にとどめにくくなる。そのため、面密度を30%以上、40%以上、または50%以上とすることがより好ましい。また、面密度が70%を超える場合には、摺接粒子の間隔が狭くなり、粒子間領域12に水を貯えにくくなる、もしくは貯えられた水が排出されにくくなる。そのため、より好ましくは60%以下とする。
摺接粒子10bは、基体10aの表面の垂直方向から見たときに、千鳥状に配置されていることが好ましい。つまり、本発明の一態様に係る軸・軸受構造は、上記摺動部材基部の表面の垂直方向から見たときに、上記摺接粒子が千鳥状に配置されている構成としてもよい。
図4は、基体10aの表面の垂直方向から見たときに、摺接粒子10bが、上記表面に同じピッチで配置されている軸部材10の一例を示す模式図である。図中、摺接粒子10bは簡略化のため、円形として表記している。
図4に示すように摺接粒子10bが配置されている場合、粒子間領域12は軸方向(図中に矢印で示した方向)に直線的に連通した状態になり得る。上述のように、摺接粒子10bの平均粒子径は150μm以上であるため、粒子間領域12に入ったスラリー液に対しては、摺接粒子10bが障壁となり、スラリー液の移動速度を低減することができる。
一方、図4に示す配置の場合、軸方向に、粒子間領域12が直線的に連通した、スラリー液が流れやすい流路が存在することになるため、上記障壁によって低減したスラリー液の移動速度が、軸・軸受構造1Aの摺動等によって再度上昇することが起こり得る。しかしながら、上記移動速度の上昇は、スラリー液中の固体物が軸受部材11に接触して衝撃を与え、軸受部材11を摩耗させる要因となり得るため、好ましくない。
図5は、摺接粒子10bが、基体10aの表面の垂直方向から見たときに、千鳥状に配置されている一態様を示す模式図である。換言すれば、図5は、基体10aの表面の垂直方向から見たときに、軸方向に垂直な方向(図中のx方向)に隣り合う摺接粒子10bの中心同士を結んだ直線の中心から、軸方向の端部まで垂線を下したときに、当該垂線が、少なくとも1つ以上の摺接粒子10bを横切るように、摺接粒子10bが配置されている軸部材10の一例を示す模式図である。
図5において、例えば、軸方向の一端部(図5に示す上側の短辺)に隣接し、x方向に隣り合う2つの摺接粒子10bの中心aと中心bとを結んだ直線の中心から、軸方向の他端部まで下した垂線は、他端部(図5に示す下側の短辺)に至るまでの間に、少なくとも1つ以上の他の摺接粒子10bを横切っている。同様に、中心bと中心cとを結んだ直線の中心から、軸方向の他端部まで下した垂線も、他端部に至るまでの間に、少なくとも1つ以上の他の摺接粒子10bを横切っている。
図5に示すように摺接粒子10bが配置されている場合、粒子間領域12におけるスラリー液の進路は、軸方向(図中に矢印で示した方向)に直線的とはならない。それゆえ、スラリー液が粒子間領域12を移動する速度を一層低減させることができ、スラリー液中の固体物を粒子間領域12にとどめやすい。
このように、本願明細書において、「千鳥状」とは、粒子間領域12が軸方向に直線的に連通した状態(例えば図4に示す状態)にはないことを意味する。つまり、スラリー液の移動方向(軸の回転方向。図4、5に示すy方向)と、粒子間領域12とが平行にならない状態であれば、「千鳥状」に該当する。
図6は、基体10aの表面の垂直方向から見たときに、摺接粒子10bが千鳥状に配置されている軸部材10の別の一態様を示す模式図である。図6に示すように摺接粒子10bが配置されている場合、摺接粒子10bはピッチをずらした状態で交互に配置されるため、粒子間領域12におけるスラリー液の進路は、軸方向(図中に矢印で示した方向)に直線的とはならず、クランク状となる。それゆえ、スラリー液が粒子間領域12を移動する速度を一層低減させることができ、スラリー液中の固体物を粒子間領域12にとどめやすい。
スラリー液中の固体物が粒子間領域12に留まりやすくなれば、当該固体物が軸受部材11に与える力を低減することができるため、軸受部材11の摩耗を抑制することができ、軸部材10と軸受部材11とが線接触した状態を保つことができる。
したがって、図5および6に示す軸部材10は、図4に示す軸部材10よりも、軸受部材11の偏摩耗を抑制し、先行待機運転ポンプの運転をより安定的に継続することができる。
図6では、軸部材10の最上部に摺接粒子10bが等間隔に4つ配置され、次列に、上記最上部に配置された、隣接した摺接粒子10b間のピッチ(中心間の距離)の半分の位置に、交互に摺接粒子10bが3つ配置され、以後同様の配置が繰り返されている。スラリー液の移動速度低減の観点からは、図6のように摺接粒子10bが配置されていることがより好ましい。
ただし、図6に示す配置に限られるものではなく、上述したように、例えば図5に示す態様等のごとく、スラリー液の移動方向(軸の回転方向。図4、5に示すy方向)と、粒子間領域12とが平行にならないように摺接粒子10bが配置されている形態は、好ましい形態であるといえる。
<摺接粒子の加工方法>
本実施の形態における、基体10a上に固定された摺接粒子10bの加工方法について以下に説明する。
基体10a上に上述の方法により固定された摺接粒子10bの粒子先端が、同一円周上にあるように加工する。すなわち、基体10aの回転中心軸から、最外にある粒子先端までの距離を等しくして、摺接粒子10bの粒子先端が同一円周上にあるようにする。この加工方法としては、ダイヤモンドや、炭化珪素等の砥石で削る、放電加工する、といった方法を用いることができる。当業者においては、本実施の形態における摺接粒子10bのような高硬度な材料を研削する方法として、適当なものを選択すればよい。
<被摺動部材>
次に、本発明の一態様に係る軸・軸受構造において、以上説明した軸部材(摺動部材)に対して相対的に摺動する軸受部材(被摺動部材)について、図1を参照して説明する。本実施形態において、軸受部材11は、図1に示すように、内部に軸部材10が収容される円筒形状を有しており、軸部材10を軸支する。
軸受部材11の材質は、例えば、硬質のセラミックスや超硬合金等から成り、セラミックスまたはサーメットであることが好ましい。これにより、被摺動部材としての耐久性を向上させることができる。軸受部材11の内側表面は、表面の凹凸が、摺動部材である軸部材10における摺接粒子間の領域深さに達しないことが好ましいが、表面粗さRaが1.0μm以下であれば摩擦等にそれほど影響はないため問題はない。なお、軸受部材11の表面に、摩擦係数を低く、または耐摩耗性を向上するための焼結体や膜を形成するような加工がされていても良い。
スラリー液に含まれる固体物は、摺動部材基部のみならず、軸受部材11をも摩耗させ得る。対策としては、<摺動部材の構成>の項で述べたように、軸部材10において、基体10aの表面の垂直方向から見たときに、摺接粒子10bを千鳥状に配置することが挙げられる。
これは、軸部材10の構成によって軸受部材11の摩耗を抑制するものであるが、軸受部材11の構成によって、上記固体物による軸受部材11の摩耗を抑制することも可能である。以下、この点について説明する。
軸部材10は軸受部材11に収容され、軸支されているが、例えば、上記固体物が軸受部材11の端部に損傷を与えた場合、摺接面13が、軸方向の全域に渡って軸受部材11の内側表面と均一に摺接している状態(線接触)を保つことができなくなり、軸部材10と軸受部材11とが互いに平行な状態を維持することが困難になる。このとき、傾いた軸部材10では、軸受部材11の軸方向の端部の内側表面と均一に摺接していた摺接粒子10bが、摺接状態を保てずに当該端部の内側表面と接触した状態、いわゆる点接触の状態が生じてしまう。
点接触が生じると、その部分に集中して摺接粒子10bが接触し続けることにより、点接触が生じた箇所を起点として軸受部材11の内側表面において、部分的に摩耗が進行し、軸受部材11が偏摩耗してしまう。例えば、図1が、軸・軸受構造1Aの、軸受部材11の軸方向の端部における軸方向に垂直な断面であるとすると、軸受部材11の軸方向の端部11aのいずれかの部分に摺接粒子10bが接触し、接触した部分を起点として、軸受部材11の内側表面において、軸方向に偏摩耗が生じる。軸受部材11が偏摩耗し、異常振動が発生した場合、先行待機運転ポンプの運転継続が困難になる恐れがある。
スラリー液に含まれる固体物による上記端部11aの損傷は、摺接粒子10bと上記端部11aとが、上記固体物を間に挟んで接触したときに生じやすい。それゆえ、一実施形態において、軸受部材11の内側表面(図1において、摺接粒子10bと向かい合う面)の強度を、上記固体物の1.5倍以上の硬さとすることが好ましい。これによって、上記偏摩耗を効果的に防止することができる。
また、他の実施形態として、例えば、上記内側表面を、上記強度を有する材料で構成することが挙げられる。ただし、軸部材10が傾いた場合、摺接粒子10bが接触するのは軸受部材11の端部であるため、軸受部材11の内側表面全体の強度を高める必要はなく、軸受部材11の軸方向の長さに対して、軸方向の端部から4%程度の内側表面の強度を高めることが好ましい。
上記強度を有する材料としては、例えば、CVD(化学気相成長)ダイヤモンド等を挙げることができる。上記強度を高める方法としては、例えば、CVDダイヤモンドコーティング等の方法を挙げることができる。
また、他の実施形態において、軸受部材11の端部11aに、硬質材からなるガイドリングを設けることも可能である。これによって、軸部材10が傾いた場合であっても、摺接粒子10bは上記ガイドリングと接触し、軸受部材11に直接接触することがないため、軸受部材11の摩耗を防ぐことができる。
上記硬質材としては、例えば、超硬合金、炭化ケイ素(SiC)、B4C(ボロンカーバイド)焼結体等を挙げることができる。また、上記ガイドリングを設ける方法としては、例えば、焼結体のリングを軸受部材11の両端部に設置する方法を挙げることができる。
〔2.先行待機運転ポンプ〕
本発明の一態様に係る先行待機運転ポンプは、以上説明した軸・軸受構造を備える。それゆえ、被摺動部材の偏摩耗が抑制され、安定した運転が可能で、耐久性に優れた先行待機運転ポンプを提供することができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
〔実施例1および比較例1:スラリー摩耗試験〕
基体としてのφ85mm×97mm×8.5mmtのSUS304材の表面に、平均粒子径150.1μmの単結晶ダイヤモンド(以下、「ダイヤモンドA」と称する)、または、平均粒子径52.5μmの単結晶ダイヤモンド(以下、「ダイヤモンドB」と称する)をニッケル電着して固定し、軸スリーブを作製した。
次に、ダイヤモンドAおよびダイヤモンドBに対して研削加工を行い、ダイヤモンドAおよびダイヤモンドBの粒子先端の高さを揃えるように加工した。すなわち、この加工によって、ダイヤモンドAおよびダイヤモンドBの粒子先端を、上記基体を中心とする同一円周上に存在するようにした。
図7,8は、それぞれ、初期状態のダイヤモンドAおよびダイヤモンドBの、軸方向に垂直な断面を示す模式図である。図中、10bは摺接粒子(図7ではダイヤモンドA、図8ではダイヤモンドBにそれぞれ該当する)、20はニッケルメッキ膜である。
ダイヤモンドAおよびダイヤモンドBの粒子間の領域の深さ、つまり、ニッケルメッキ膜の表面と上記ダイヤモンド粒子の先端(すなわち、摺接面)との高さの差(突出し高さ)はダイヤモンドAが20.1μm、ダイヤモンドBが4.5μmであった。
軸スリーブの外径は、ダイヤモンドAを用いた場合(以下、「軸スリーブA」と称する)が84.975mmであり、ダイヤモンドBを用いた場合(以下、「軸スリーブB」と称する)が84.95mmであった。なお、「軸スリーブの外径」とは、図1の摺接面13を基体10aの外周に沿ってつなげたときの円周である。
上記ニッケルメッキ膜20の表面の垂直方向から見たときの、上記単結晶ダイヤモンドが占める面積の割合である面密度は、軸スリーブAが26.5%、軸スリーブBが9.7%であった。
その後、軸スリーブA、Bを、それぞれ、内径が85.508mm、外径がΦ121mm、幅40mmの軸受(材質:窒化ケイ素、ビッカース硬さ:1500Hv)に装着し、それぞれ軸・軸受構造A、軸・軸受構造Bとした。スラリー液は、平均粒子径5μmの珪砂と、平均粒子径30μmの珪砂とを、重量比50:50で混合して得た珪砂を、水に3000ppmとなるように加え、撹拌することによって調製した。珪砂の平均粒子径も、上述したレーザー回折式粒子径分布測定装置:株式会社島津製作所、SALD−2100により計測される値である。
次に、軸・軸受構造A、軸・軸受構造Bを、周速8m/secの条件で運転し、装置下部のプロペラを回転した。これによって、上記スラリー液を、軸スリーブAと軸受との間、および、軸スリーブBと軸受との間にそれぞれ常時導入して、軸・軸受構造Aを250時間、軸・軸受構造Bを34.5時間運転した(スラリー摩耗試験)。なお、スラリー液を導入しないこと以外は同じ条件で、軸・軸受構造Aを100時間運転した試験(ドライ試験)も行った。
運転開始から所定時間経過後に、軸スリーブの外径、上記突出し高さ、ダイヤモンドA,Bの表面粗さ(Ra)、面密度をそれぞれ測定した。軸・軸受構造Aについては、軸受の内径も測定した。軸スリーブの外径および軸受の内径は3次元測定器を用いて測定し、突出し高さ、表面粗さおよび面密度はレーザー顕微鏡にてそれぞれ測定した。軸・軸受構造A、軸・軸受構造Bのスラリー摩耗試験の結果をそれぞれ表1、表2に示し、ドライ試験の結果を表3に示す。表1に示す結果が実施例1、表2に示す結果が比較例1に該当する。
表1および表3に示すように、軸スリーブの外径は、スラリー摩耗試験に250時間供した後も、ドライ試験の場合と同様に殆ど変化していなかった。つまり、摺接粒子であるダイヤモンド粒子は、スラリー中の固体物によって摩耗されることがほぼないと言えることが分かった。なお、軸・軸受構造Bについては軸スリーブの外径は測定していないが、表1の結果に鑑みると、同様に殆ど変化していないと考えられる。
ダイヤモンド粒子の表面粗さは、表1に示すように、軸・軸受構造Aでは、試験開始時よりも値が大きくなっているが、250時間経過後であっても規定値(0.5μm以下)内の値を示した。
突出し高さは、表3に示すように、ドライ試験では100時間で0.2μmの増加であったのに対し、表1に示すように、軸・軸受構造Aでは100時間で8.2μm増加し、250時間では19μm増加した。また、軸・軸受構造Bでは、34.5時間で12.5μmの増加が見られ、軸・軸受構造Aよりも増加率が高かった。面密度も、軸・軸受構造Bの方が、軸・軸受構造Aよりも増加率が高かった。
図3は、100時間のドライ試験を経たダイヤモンドAを外面側からレーザー顕微鏡で観察した結果を示すものである。なお、実施例1および比較例1において、レーザー顕微鏡としては、キーエンス製のVK-9700を用いた。
図示しないが、ダイヤモンドA(摺接粒子10b)は、250時間のスラリー摩耗試験に供した後であっても、ニッケルメッキ膜20中、80μmの深さに埋め込まれた状態になっていた。すなわち、平均粒子径が150.1μmである摺接粒子10bを用いたことによって、250時間という長時間、スラリー液が存在した状態であっても、摺動部材基部の摩耗が十分に抑制されたことが分かった。
図9は、表1および表2に示した軸スリーブAおよび軸スリーブBの突出し高さおよび面密度の変化をグラフ化した図である。図9に示すように、平均粒子径が150.1
μmであるダイヤモンドAを用いた軸スリーブAでは、平均粒子径が52.5μmであるダイヤモンドBを用いた軸スリーブBと比較して、突出し高さおよび面密度の増加率が低いことが分かる。すなわち、軸スリーブAの方が、軸スリーブBよりも摺動部材基部の摩耗に対する抑制効果が高いことが明らかとなった。図10は、表1に示した軸スリーブAの突出し高さの結果および試験時間(図中、延べ運転時間と記載)から、最小二乗法によって求めた検量線である。
本発明は、先行待機運転ポンプに好適に利用することができる。
1A 軸・軸受構造
10 軸部材
10a 基体
10b 摺接粒子
11 軸受部材
11a 軸受部材の軸方向の端部
12 粒子間領域
13 摺接面
20 ニッケルメッキ膜

Claims (8)

  1. 被摺動部材と、上記被摺動部材に対して相対的に摺動する摺動部材とを備える軸・軸受構造であって、
    上記摺動部材は、
    摺動部材基部と、
    上記摺動部材基部の表面に散在して固定されるとともに、上記被摺動部材に摺接する摺接粒子と、を備え、
    上記摺接粒子は、上記摺動部材基部の表面から突出しており、
    上記摺接粒子の平均粒子径が150μm以上であることを特徴とする軸・軸受構造。
  2. 上記摺動部材基部の表面の垂直方向から見たときの、上記摺接粒子が占める面積の割合である面密度が20〜70%であることを特徴とする請求項1に記載の軸・軸受構造。
  3. 上記摺動部材基部の表面の垂直方向から見たときに、上記摺接粒子が千鳥状に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の軸・軸受構造。
  4. 上記摺接粒子が、上記摺動部材基部にロウ付けされていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の軸・軸受構造。
  5. 上記摺接粒子は、硬さが珪砂の硬さ以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の軸・軸受構造。
  6. 上記摺接粒子は、ダイヤモンド粒子、ダイヤモンドライクカーボン粒子、立方晶窒化ホウ素、ガラス状カーボン粒子、アルミナ粒子、炭化ホウ素粒子、炭化ケイ素粒子、炭化タングステン粒子、窒化ケイ素粒子および炭化モリブデン粒子のうちの少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の軸・軸受構造。
  7. 上記摺接粒子の先端は、上記摺動部材基部を中心とする同一円周上に存在することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の軸・軸受構造。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載の軸・軸受構造を備えることを特徴とする先行待機運転ポンプ。
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