JP2004332110A - 耐高面圧摺動材 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高面圧下においても摺動特性や耐摩耗性、耐焼付き性、靭性に優れ、加えて熱拡散性能にも優れる耐高面圧摺動材を提供する。
【解決手段】 銅または銅合金マトリックス2に硬質粒子3が分散されてなる複合組織4を有し、前記硬質粒子3の粒径が0.2mm以上であるとともに、前記硬質粒子3の含有率が30〜80体積%であるものとする。また、より好ましくは、前記硬質粒子3の平均粒径を0.3mm以上とする。
【選択図】図1
【解決手段】 銅または銅合金マトリックス2に硬質粒子3が分散されてなる複合組織4を有し、前記硬質粒子3の粒径が0.2mm以上であるとともに、前記硬質粒子3の含有率が30〜80体積%であるものとする。また、より好ましくは、前記硬質粒子3の平均粒径を0.3mm以上とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、高面圧下での耐摩耗性や、強度、靭性等を要求される摺動部構成材料として用いられて好適な耐高面圧摺動材に関するものである。
極めて強度の高い岩盤の割岩作業に用いられて好適な装置として、例えばくさび装置が知られている。このくさび装置は、油圧シリンダの推力を受けるくさびと、このくさびを挟む2組のくさびガイドを備え、油圧シリンダの駆動にてそのくさびをそれらくさびガイドに対して摺動させることにより、その油圧シリンダの推力をそれらくさびガイドで横方向拡幅力に変換し、この拡幅力にて岩盤を破壊して、割岩作業を行えるように構成されている。
このくさび装置において、くさびとくさびガイドとは高面圧下で摺動するため、それら摺動体(くさび、くさびガイド)の摩擦係数の増大は、前記拡幅力、言い換えれば割岩力に大きく影響してその割岩力を弱めるだけでなく、摩擦熱による寿命低下や、焼付き等の不具合を招く原因となる。
従来、このような不具合を防止するために、摺動体のうちの一方にリン青銅からなる摺動材を装着するとともに、摺動面に土砂粉塵が入り込むのを防止する防塵機構を設け、かつ潤滑油供給機構により摺動面に潤滑油を供給するといった低摩擦化手段(A)や、摺動体の双方を焼入れ鋼で構成し、摺動面にグリスを手作業で供給するといった低摩擦化手段(B)などが実用に供されている。
ところが、前記低摩擦化手段(A)では、リン青銅の抗圧力が低いため、非常な高面圧(10〜50kg/mm2、場合によっては100kg/mm2を超える)下の摺動によって摺動材が塑性変形してしまい、早期に機能不全に陥るという問題がある。また、防塵機構や潤滑油供給機構を具備するため、構造が複雑になり、コストアップを招くという問題がある。さらに、防塵機構によっても防ぎきれない土砂粉塵もしくは防塵機構の損傷部分から摺動面に侵入した土砂粉塵によって、摺動材が早期に摩耗するという問題もある。一方、前記低摩擦化手段(B)では、前記低摩擦化手段(A)と比較して構造が簡単であるため、比較的低コストであるという利点は有するも、十分なグリスの供給がない限り焼付きが生じてしまうことから、1割岩動作毎に摺動面に大量のグリスを手作業で供給しなければならず、面倒であり、作業者の労力増を招くという問題がある。また、防塵機構が省略されることから、土砂粉塵による早期摩耗は免れないという問題がある。
そこで、卓越した耐摩耗性を有する超硬合金やSiCを摺動材として採用することも考えられるが、超硬合金やSiCは靭性に乏しく衝撃荷重や曲げ荷重が加わると即破損につながる恐れがあるために、安定性に欠けるという問題がある。
これらの問題を解決し得る摺動材が例えば特許文献1〜特許文献9にて提案されている。これら特許文献にて提案されている摺動材は、Fe基、Ni基、Co基およびTi基のいずれかのマトリックス金属に、炭化セラミック等の硬質粒子を分散することで、靭性や耐摩耗性、耐焼付き性が向上されている。なお、これら特許文献に係る摺動材において、当該摺動材に含有されている硬質粒子の粒径は、最大のものでも200μm程度である。
しかしながら、前述列挙の特許文献に係る摺動材では、含有されている硬質粒子の粒径が最大のものでも200μm程度と小さいため、以下のような問題点を生じる。すなわち、
(1)硬質粒子の含有率が低い場合(図14(a)参照)は、耐摩耗性や耐焼付き性が劣る。
(2)耐摩耗性や耐焼付き性を向上させるためには硬質粒子の含有率を高くする必要があるが(同図(b)参照)、この場合、靭性低下とコストアップを招く。
(3)摺動面の面粗さは硬質粒子サイズに応じたものとなり(同図(b)参照)、摺動面の摩耗が進行すると、摩擦係数が大きくなる場合がある(特に摺動面に土砂粉塵が侵入している場合)。
(4)摺動面に土砂粉塵が侵入する使用環境では、マトリックス金属の急速な摩耗減肉とそれに付随する硬質粒子の欠損・脱落(同図(a)(b)においてハッチングで示される部分)が生じ易く、耐用寿命の改善効果が少ない。
(1)硬質粒子の含有率が低い場合(図14(a)参照)は、耐摩耗性や耐焼付き性が劣る。
(2)耐摩耗性や耐焼付き性を向上させるためには硬質粒子の含有率を高くする必要があるが(同図(b)参照)、この場合、靭性低下とコストアップを招く。
(3)摺動面の面粗さは硬質粒子サイズに応じたものとなり(同図(b)参照)、摺動面の摩耗が進行すると、摩擦係数が大きくなる場合がある(特に摺動面に土砂粉塵が侵入している場合)。
(4)摺動面に土砂粉塵が侵入する使用環境では、マトリックス金属の急速な摩耗減肉とそれに付随する硬質粒子の欠損・脱落(同図(a)(b)においてハッチングで示される部分)が生じ易く、耐用寿命の改善効果が少ない。
さらに、それら摺動材において採用されているマトリックス金属(Fe基、Ni基、Co基、Ti基)は熱伝導率が低く摩擦熱の拡散性能が劣るため、摩擦熱の影響による寿命低下を十分に抑制することができないという問題点がある。
本発明は、このような問題点を解消するためになされたもので、高面圧下においても摺動特性や耐摩耗性、耐焼付き性、靭性に優れ、加えて熱拡散性能にも優れる耐高面圧摺動材を提供することを目的とするものである。
前記目的を達成するために、第1発明による耐高面圧摺動材は、
銅または銅合金マトリックスに硬質粒子が分散されてなる複合組織を有し、前記硬質粒子の粒径が0.2mm以上であるとともに、前記硬質粒子の含有率が30〜80体積%であることを特徴とするものである。
銅または銅合金マトリックスに硬質粒子が分散されてなる複合組織を有し、前記硬質粒子の粒径が0.2mm以上であるとともに、前記硬質粒子の含有率が30〜80体積%であることを特徴とするものである。
次に、前記目的を達成するために、第2発明による耐高面圧摺動材は、
銅または銅合金マトリックスに硬質粒子が分散されてなる複合組織を有し、前記硬質粒子の平均粒径が0.3mm以上であるとともに、前記硬質粒子の含有率が30〜80体積%であることを特徴とするものである。
銅または銅合金マトリックスに硬質粒子が分散されてなる複合組織を有し、前記硬質粒子の平均粒径が0.3mm以上であるとともに、前記硬質粒子の含有率が30〜80体積%であることを特徴とするものである。
第1発明または第2発明において、前記硬質粒子は、炭化物、硼化物もしくは窒化物またはこれらの一種以上を金属で結合した超硬合金もしくはサーメットであるのが好ましい(第3発明)。
第1発明または第2発明において、前記硬質粒子は、タングステン炭化物またはタングステン炭化物を金属で結合した超硬合金であるのが好ましい(第4発明)。
第1発明乃至第4発明において、当該耐高面圧摺動材の摺動面における前記硬質粒子の間には凹部が形成されているのが好ましい(第5発明)。
第1発明においては、マトリックス金属として銅または銅合金が用いられ、この銅または銅合金に硬質粒子が分散される。銅または銅合金は融点が比較的低いので、製造過程において硬質粒子の溶出によるマトリックス金属の硬化、並びに熱作用による硬質粒子の変質が抑制される。したがって、銅または銅合金が持つ延性により衝撃荷重や曲げ荷重に対するねばり強さを確保することができるとともに、硬質粒子が持つ耐摩耗性を良好に保持することができる。また、銅または銅合金は熱伝導率が高く、そのため摩擦熱の吸収・放熱がスムーズに行われるので、摩擦熱の影響による摺動性能低下を抑制することができる。
また、第1発明においては、マトリックス金属に分散される硬質粒子の粒径が従来と比較して極めて大きな0.2mm以上とされる。これにより、1個の硬質粒子がマトリックス金属と接合している面積は大きくなり、またマトリックス金属の摩耗が進行してもマトリックス金属と硬質粒子の接合面積の減少率を小さくできるので、硬質粒子の保持強度が飛躍的に増す。また、硬質粒子の粒径を大きくすることで、製造過程における入熱による硬質粒子の組織変質、およびマトリックス金属と硬質粒子との接合部に生じる相互拡散や反応に伴う硬質粒子の組織変質を少なくして、硬質粒子本来の組織を大きな体積で維持することができる。こうして、硬質粒子の欠損・脱落が防止され、硬質粒子が持つ耐摩耗性を安定に保持することができる。また、硬質粒子の粒径を大きくして、硬質粒子1個あたりの摺動面積の増大化が図られることで、摺動特性の硬質粒子依存度が向上され、少ない量で硬質粒子の摺動特性を効果的に引き出すことが可能になる。したがって、靭性と高耐摩耗性を兼備させることができる。
また、第1発明においては、マトリックス金属に分散される硬質粒子の含有率が30〜80体積%とされることで、耐摩耗性、靭性および延性をバランス良く兼備させることができる。
したがって、第1発明の耐高面圧摺動材によれば、高面圧下においても摺動特性や耐摩耗性、耐焼付き性、靭性が十分に発揮されるとともに、摩擦熱の吸収・放熱がスムーズに行われて熱による摺動性能低下が抑制されるので、ランニングコストの削減やメンテナンスフリー化が図れるのは勿論のこと、従来のような防塵機構や潤滑油供給機構等の省略化による構造の簡素化によってコストダウンを図ることができる。
第2発明の耐高面圧摺動材によれば、第1発明の耐高面圧摺動材と同様の作用効果を得ることができるのは言うまでもない。さらに、この第2発明の耐高面圧摺動材においては、銅または銅合金マトリックスに分散される硬質粒子の平均粒径が0.3mm以上とされる。ここで、硬質粒子の平均粒径が0.3mm以上とされるのは、以下に述べる理由によるものである。すなわち、土砂粉塵等が摺動面ですり潰された際にその摺動面についた摩耗痕の幅や深さに基づいて実験的に求められた摺動材料層の必要最低限の厚さが0.2mmである点や、摺動材料層が厚すぎるとコストアップを招く点などに鑑みて、摺動材料層の厚さのねらい値を0.2mmに設定した場合において、厚さ0.2mmの摺動材料層に粒径0.2mmの硬質粒子が分散されている状態では、摺動面に硬質粒子は点でしか現れないため、摺動材の使用開始時において硬質粒子の特性を十分に発揮させることができないが、硬質粒子の平均粒径が0.3mm以上であれば、摺動材料層の厚みが0.2mmであっても摺動面に硬質粒子の面を確実に露出させることができ、摺動材の使用開始時においても硬質粒子の特性を十分に発揮させることができるからである。
第3発明によれば、銅または銅合金マトリックスに分散される硬質粒子として、銅または銅合金との反応が小さい炭化物、硼化物もしくは窒化物またはこれらの一種以上を金属で結合した超硬合金もしくはサーメットが採用されるので、硬質粒子を変質させることなく高硬度の状態を維持することができる。
第4発明によれば、第3発明と同様に硬質粒子を変質させることなく高硬度の状態を維持することができるのは勿論のこと、タングステン炭化物(後述するWC,W2C)またはタングステン炭化物を金属で結合した超硬合金は比較的比重が大きいので、例えば溶接肉盛によって複合組織を形成する場合、肉盛形成過程で硬質粒子が沈下して、密集層が容易に得られるという利点がある。
第5発明によれば、硬質粒子間に形成された凹部において潤滑油が保持されるので、僅かな潤滑油の供給で摺動面が良好に潤滑されてスムーズな摺動が実現されるとともに、摺動時の鳴きも発生しないという効果を奏する。
次に、本発明による耐高面圧摺動材の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示されるように、本発明の耐高面圧摺動材1は、マトリックス金属2に硬質粒子3が分散されてなる複合組織4を有している。ここで、前記硬質粒子3の粒径は0.2mm以上にされるとともに、前記硬質粒子3の含有率は30〜80体積%にされる。また、この耐高面圧摺動材1の摺動面において、互いに隣接する硬質粒子3,3の間には凹部5が形成されている。
前記マトリックス金属としては、比較的融点が低く(1000℃前後)、延性に優れるとともに、表1に示されるように、Fe基、Ni基、Co基およびTi基と比較して熱伝導率が高い銅(Cu≧99.96)または銅合金が用いられる。ここで、銅合金としては、例えばリン青銅(C5191P−H,Sn:5.5〜8,P:0.03〜0.35,Cu+Sn+P≧99.5)、アルミニウム青銅、7/3黄銅(Cu−30Zn)、6/4黄銅(Cu−40Zn)等が挙げられる。このように、融点の低いマトリックス材を用いることで、製造過程の入熱による硬質粒子の変質が抑制され、熱伝導率の高いマトリックス材を用いることで、摺動時に発生する摩擦熱の吸収・放熱がスムーズに行われる。こうして、硬質粒子の変質と摩擦熱の影響による摺動性能低下を抑制するようにされる。
前記マトリックス金属に分散される硬質粒子としては、炭化物系、硼化物系、窒化物系、珪化物系、酸化物系等の各種セラミックが挙げられる。特に炭化物系、硼化物系、窒化物系セラミックは、高硬度を有するとともに、摺動性に優れている点で好適である。ここで、前記炭化物系セラミックの例としては、WC,W2C,TiC,NbC,VC,Mo2C,Cr3C2,TaC,ZrC等が挙げられる。また、前記硼化物系セラミックの例としては、MoB,TiB2,CrB,VB2,NbB2,TaB2,WB等が、前記窒化物系セラミックの例としては、TiN,CrN等がそれぞれ挙げられる。なお、当該硬質粒子として、前記炭化物系セラミックをFe,Ni,Co、Cr等の金属で結合してなる超硬合金、もしくはサーメットを用いても良い。
延性、靭性、熱伝導率などの高いマトリックス金属中に、これよりもこれら特性の低い硬質粒子を分散させると、粒子分散材料の特性はマトリックス金属単体の特性から硬質粒子の特性へと近づいていき、延性、靭性、熱伝導率は低下する。一般に、互いに隣接する硬質粒子の粒子間距離λとこれら特性の変化量Pとは、P∝1/λの関係にあり、λが大きいほど特性の変化量Pは少なくなる。マトリックス金属中の硬質粒子の含有率が同じならば、粒径を大きくするほどλも大きくなり、Pは小さくなる。すなわち、マトリックス金属の延性、靭性、熱伝導率の低下に及ぼす硬質粒子の影響が小さくなるので、含有率が同じならば硬質粒子の粒径を大きくする方が、マトリックス金属本来の特性を良く引き出すことができる。そこで、本発明においては、前記硬質粒子の粒径が従来と比較して極めて大きな0.2mm以上とされる。
ここで、前記硬質粒子の粒径の下限が0.2mmとされる理由は、本発明の耐高面圧摺動材が、土砂粉塵が摺動面に入り込む条件下で使用されることを考慮したためである。すなわち、土砂粉塵が摺動面に入り込む条件下においては、土砂粉塵が摺動面ですり潰され、摺動面についた摩耗痕の幅や深さから考えると、摺動材の厚みが最低0.2mmは必要であることが、試験等によって確認されたので、これを基準に考えると、マトリックス金属に分散し得る硬質粒子の最小粒径は0.2mmであることが導き出される。なお、土砂粉塵が摺動面に入り込む使用条件下と比較して摩耗度合が低い傾向にある使用条件下(例えば、摺動面に入り込むのがスラリーであったり、摺動面に対して防塵手段が施されていたりするなど)で本発明の耐高面圧摺動材が実用に供されるなど、摺動特性の硬質粒子依存度を多少減じても問題ないと判断される場合には、0.2mmよりも若干小さな粒径(例えば0.15mm)の硬質粒子を用いることも可能である。
さらに、本発明において、前記硬質粒子の平均粒径が0.3mm以上であるのがより好ましい態様である。ここで、硬質粒子の平均粒径が0.3mm以上とされるのは、以下に述べる理由によるものである。すなわち、土砂粉塵等が摺動面ですり潰された際にその摺動面についた摩耗痕の幅や深さに基づいて実験的に求められた摺動材料層の必要最低限の厚さが0.2mmである点や、摺動材料層が厚すぎるとコストアップを招く点などに鑑みて、摺動材料層の厚さのねらい値を0.2mmに設定した場合において、図2(a)に示されるように、厚さ0.2mmの摺動材料1層に粒径0.2mmの硬質粒子3′が分散されている状態では、摺動面に硬質粒子3′は点でしか現れないため、摺動材料1の使用開始時において硬質粒子3′の特性を十分に発揮させることができないが、同図(b)に示されるように、硬質粒子3″の平均粒径が0.3mm以上であれば、摺動材料1層の厚みが0.2mmであっても摺動面に硬質粒子3″の面を確実に露出させることができ、摺動材料1の使用開始時においても硬質粒子3″の特性を十分に発揮させることができるからである。
また、本発明において、前記硬質粒子の粒径の上限を10mm(より好ましくは6mm)に設定するのが好ましい態様である。このように粒径の上限を10mmとしたのは、粒径が10mmを超えてしまうと、所望の強度・靭性並びに熱伝導率の確保が困難になるからである。また、粒径のより好ましい上限として6mmに設定したのは、粒径が6mmであれば、必要十分な強度・靭性並びに熱伝導率を容易に確保できるからである。
また、前記硬質粒子の含有率の下限は、以下に述べる理論により、30体積%とされる。すなわち、硬質粒子が分散されてなる摺動材同士の摺動を考えたとき、対向する硬質粒子が常にラップしている(重なり合っている)状態にあれば、摺動特性が硬質粒子自身の特性に近いものになると推察される。そこで、図3に示されるように、それぞれの摺動材における硬質粒子3A・・・,3B・・・が格子状に配列されているものと仮定し、同図において実線で示される一側の摺動材における硬質粒子3A・・・および同図において点線で示される他側の摺動材における硬質粒子3B・・・のそれぞれの半径をrとし、両硬質粒子の平面投影上の距離をbとすると、b<0のとき、両硬質粒子がラップすることになり、そのときの硬質粒子の面積率Sfは、Sf=π/8=0.3925となる。実際には、硬質粒子が同図で示されるように均一には分布しておらず、また全ての硬質粒子がラップする必要もないので、実用的にはSf=30%で十分と考えられる。こうして導出された面積率Sfに基づいて、硬質粒子の必要最小限の含有率が30体積%に設定される。
また、前記硬質粒子の含有率の上限が80体積%とされるのは、含有率が80体積%を超えると、所望の強度・靭性並びに熱伝導率の確保が困難になるからである。
本発明の耐高面圧摺動材は、ガス溶着、消耗電極式アーク溶接、プラズマ粉体溶接肉盛法等の溶接肉盛法による溶接肉盛層として、または熱間静水圧焼結法(HIP法)等の焼結法による焼結体として製造される。なお、その他の製造方法としては、真空炉内において溶浸を行う真空溶浸法や、含浸法などが挙げられる。
例えば、本発明の複合組織からなる摺動材料層を消耗電極式アーク溶接法にて摺動体の表面に直接形成する場合には、マトリックスとなる金属ワイヤを電極として摺動体の表面に溶融プールを形成し、硬質粒子をその溶融プールに混入させて凝固するようにされる。
なお、前記摺動材料層は、必ずしも摺動体の表面に直接形成する必要はなく、摺動体が例えば溶接肉盛に要する予熱の不可能な部材や、肉盛層形成工程での熱影響による変形や材質変化を嫌う部材で構成されている場合には、摺動体とは別体の適当な板材に前記摺動材料層を形成して作製された被摺動材料層板材を、場合によっては必要な形状・サイズに切り出して、切り出された被摺動材料層板材を、溶接接合、溶浸(含浸)接合、焼結接合、ろう付け、ボルト締結、圧入などの結合手段により、摺動体の所定の個所に取り付けるようにすることも可能である。
また、摺動材の製造段階において必ずしも前記凹部5が形成される必要はない。その理由は、新品の摺動材の摺動面に前記凹部5が仮に形成されていなくても、摺動材の使用過程でマトリックス金属の摩耗が進んで自然に摺動面に凹部が形成され、かかる凹部に潤滑剤が保持されることで潤滑剤が摺動面になじみ易くなるからである。
〔定速摩擦摩耗試験〕
供試材料としてブロック(接触面積S:5mm×5mm)とディスク(外径:139mm、内径:105mm)とをそれぞれ作製し、図4に示されるように、ブロックに対してディスクを摺動速度V(2m/sec)で回転させ、かつブロックをそのディスクに負荷荷重Wで押し付けて、ブロックの摩耗高さHを計測するとともに、摺動速度Vを面圧P(P=W/S)で除した値(V/P)に対する摩擦係数μの関係を算出する定速摩擦摩耗試験を、表3に示される供試材料の組み合わせパターン毎に行った。その結果が同表並びに図6〜13に示されている。
注1)摩耗高さHは、摩擦力リミットによる試験終了時での計測結果である。
注2)SCM435(鋼調質材)の硬さは、HRC46である。
供試材料としてブロック(接触面積S:5mm×5mm)とディスク(外径:139mm、内径:105mm)とをそれぞれ作製し、図4に示されるように、ブロックに対してディスクを摺動速度V(2m/sec)で回転させ、かつブロックをそのディスクに負荷荷重Wで押し付けて、ブロックの摩耗高さHを計測するとともに、摺動速度Vを面圧P(P=W/S)で除した値(V/P)に対する摩擦係数μの関係を算出する定速摩擦摩耗試験を、表3に示される供試材料の組み合わせパターン毎に行った。その結果が同表並びに図6〜13に示されている。
注2)SCM435(鋼調質材)の硬さは、HRC46である。
表3におけるブロックの摩耗高さHについて、試験No.1〜試験No.7のそれぞれの結果と、試験No.8の結果とを比較して明らかなように、本発明例のものは、比較例のものに比し著しく耐摩耗性に優れている。特に本発明の摺動材同士の組合せでは、高面圧まで安定した摺動特性が得られた。また、図6〜図13に示されるように、本発明例のものは、高面圧下における摺動特性や耐焼付き性にも優れることが確認された。
さらに、摺動部材に外力が加わって変形を生じる場合を想定して以下に述べる三点曲げ試験を行った。
(1) 試験方法
図5に示されるような三点曲げ試験により、表面に摺動材料層が形成されてなる試験片に割れが発生したときの荷重とたわみを測定する。
(2)試験片
試験片は以下の2水準である。
試験片(1)→摺動材料層の組成:リン青銅+φ0.6硬質粒子
摺動材料層の厚み:0.75mm
製 法:溶接肉盛法
試験片(2)→摺動材料層の組成:アルミニウム青銅+φ0.6硬質粒子
摺動材料層の厚み:0.8mm
製 法:溶接肉盛法
(1) 試験方法
図5に示されるような三点曲げ試験により、表面に摺動材料層が形成されてなる試験片に割れが発生したときの荷重とたわみを測定する。
(2)試験片
試験片は以下の2水準である。
試験片(1)→摺動材料層の組成:リン青銅+φ0.6硬質粒子
摺動材料層の厚み:0.75mm
製 法:溶接肉盛法
試験片(2)→摺動材料層の組成:アルミニウム青銅+φ0.6硬質粒子
摺動材料層の厚み:0.8mm
製 法:溶接肉盛法
この三点曲げ試験を行った結果、試験片(1)のものでは、押付け荷重Fが約300kgfで割れが発生し、そのときのたわみ量が約1mmであった。一方、試験片(2)のものでは、押付け荷重Fが約328kgfで割れが発生し、そのときのたわみ量が約1.16mmであった。つまり、銅系のマトリックスに硬質粒子を分散させてなる摺動材料層の曲げによる限界たわみ量はスパン70mmで1mm程度であるという結論が得られた。こうして得られた結論に基づいて、試験片が円弧状に変形したと近似すると、その曲率半径は約600mmとなり、本発明に係る摺動材料層の外曲げの限界は曲率半径が600mm程度であることが分かった。この三点曲げ試験の結果から、本発明に係る摺動材料層は、十分な強度・靭性を備えていると言える。すなわち、使用中に衝撃や変形が伴う摺動部材として適用が可能であり、適用範囲の広さは超硬合金やSiCよりも優れている。
1 耐高面圧摺動材
2 マトリックス金属
3 硬質粒子
4 複合組織
5 凹部
2 マトリックス金属
3 硬質粒子
4 複合組織
5 凹部
Claims (5)
- 銅または銅合金マトリックスに硬質粒子が分散されてなる複合組織を有し、前記硬質粒子の粒径が0.2mm以上であるとともに、前記硬質粒子の含有率が30〜80体積%であることを特徴とする耐高面圧摺動材。
- 銅または銅合金マトリックスに硬質粒子が分散されてなる複合組織を有し、前記硬質粒子の平均粒径が0.3mm以上であるとともに、前記硬質粒子の含有率が30〜80体積%であることを特徴とする耐高面圧摺動材。
- 前記硬質粒子は、炭化物、硼化物もしくは窒化物またはこれらの一種以上を金属で結合した超硬合金もしくはサーメットである請求項1または2に記載の耐高面圧摺動材。
- 前記硬質粒子は、タングステン炭化物またはタングステン炭化物を金属で結合した超硬合金である請求項1または2に記載の耐高面圧摺動材。
- 当該耐高面圧摺動材の摺動面における前記硬質粒子の間には凹部が形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の耐高面圧摺動材。
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JP (1) | JP2004332110A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007013558A1 (ja) | 2005-07-27 | 2007-02-01 | Nippon Paint Co., Ltd. | 水性メタリック塗料組成物及び複層塗膜形成方法 |
JP2021102993A (ja) * | 2019-12-25 | 2021-07-15 | 株式会社クボタ | 摺動部材および摺動部材の製造方法 |
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2004
- 2004-04-14 JP JP2004119399A patent/JP2004332110A/ja active Pending
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WO2007013558A1 (ja) | 2005-07-27 | 2007-02-01 | Nippon Paint Co., Ltd. | 水性メタリック塗料組成物及び複層塗膜形成方法 |
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JP7339154B2 (ja) | 2019-12-25 | 2023-09-05 | 株式会社クボタ | 摺動部材および摺動部材の製造方法 |
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