JP2019190644A - 摺動部材 - Google Patents

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隆弘 蒲
実 日根野
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実 日根野
秀樹 松本
Hideki Matsumoto
秀樹 松本
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Abstract

【課題】摺接粒子の摩耗量がより少ない摺動部材を提供する。【解決手段】被摺動部材に対して相対的に摺動する摺動部材であって、摺動部材基部(10a)と、上記摺動部材基部(10a)の表面に散在して固定される摺接粒子(10b)と、を備え、上記摺接粒子(10b)の複数は、上記摺動部材基部(10a)の表面から突出し、かつ、上記被摺動部材に摺接しており、上記摺接粒子(10b)の原料粒子は、平均粒子径が、10〜250μmであり、球状粒子である。【選択図】図1

Description

本発明は、摺動部材に関する。
排水ポンプの一種として、先行待機運転ポンプが知られている。先行待機運転ポンプは、例えばゲリラ豪雨のような急激な水量の増加に対応すべく、予め無水状態で全速運転(先行待機運転)することや、気水混合状態での排水を行うことが可能となっている。このような先行待機運転ポンプに適用できる摺動部材が、例えば特許文献1に開示されている。
特許文献1には、摺動部材基部および摺接粒子を備えたポンプ用軸・軸受構造が開示されている。当該摺接粒子は、摺動部材基部の表面に散在して固定されるとともに、摺動部材基部の表面から突出しており、被摺動部材に摺接することが記載されている。また、電着又はスパークプラズマ焼結により、摺接粒子を摺動部材基部の表面に直接固定し、摺動部材が製造されることが記載されている。
特開2016−211727号公報(2016年12月15日公開)
特許文献1に開示の摺動部材は、摺動性が良く、かつ、基体の材料選択の幅が広いという優れた効果を奏する。一方、摺動部材の製作においては摺動性を確保するため、硬質粒子を精度良く加工する技術が求められていた。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであって、その目的は、摺接粒子により摺接面を容易に形成することである。すなわち、摺接粒子を無加工で、または摺接粒子の加工量を抑制して摺接面を形成することである。
本願発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、原料粒子の平均粒子径が所定の範囲であり、原料粒子が球状粒子である摺接粒子を用いることにより、摺接面を容易に形成することができる摺動部材を製造可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本願発明は、以下の発明を包含する。
〔1〕被摺動部材に対して相対的に摺動する摺動部材であって、
摺動部材基部と、
上記摺動部材基部の表面に散在して固定される摺接粒子と、を備え、
上記摺接粒子の複数は、上記摺動部材基部の表面から突出し、かつ、上記被摺動部材に摺接しており、
上記摺接粒子の原料粒子の平均粒子径が、10〜250μmであり、
上記摺接粒子の原料粒子は、球状粒子である、摺動部材。
〔2〕上記摺接粒子の投影部分の面積の割合が、上記摺動部材基部の面積の50〜80%であることを特徴とする、〔1〕に記載の摺動部材。
〔3〕上記原料粒子の粒径範囲が、当該原料粒子の平均粒子径に対して±50%である、〔1〕または〔2〕に記載の摺動部材。
〔4〕上記摺接粒子は、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、立方晶窒化ホウ素、ガラス状カーボン、アルミナ、ジルコニア、炭化ホウ素、炭化ケイ素、炭化タングステン、窒化ケイ素、ケイ素化物、リン化物、硫化物からなる群より選ばれる1種以上を含む、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の摺動部材。
本発明の一態様によれば、被摺動部材である相手材への攻撃性が緩和された摺動部材を容易に提供することができる。また、摺動部材が曲率を有する構造の場合、球状粒子を適用することによって、より優れた摺接面を容易に形成することができる。
本発明の実施形態における軸・軸受構造及び摺動部材としての軸部材の、軸方向に垂直な断面を示す断面概略図である。 本発明の実施形態において使用され得る球状粒子を示す図である。 平均粒子径が50〜600μmである球状の原料粒子を平板基材の上に投影面積が50%となるように固定した摺動部材を、球状粒子の先端が揃っている状態で1μm摩耗させた際の生成する摺接面積(摺動部材基部1mm当たり)を示すグラフである。 本発明の実施形態に係るポンプの縦断面図である。 本発明の実施形態に係るポンプの滑り軸受装置の縦断面図である。
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上B以下」を意図する。
〔1.摺動部材〕
被摺動部材に対して相対的に摺動する摺動部材として、スラリー液を排出可能なポンプに用いられる回転機構における軸・軸受構造の軸部材について説明する。なお、本実施形態では、摺動部材としての軸部材について説明するが、本発明の摺動部材は必ずしもこれに限らない。例えば、本発明の摺動部材は、軸部材に対して相対的に摺動する軸・軸受構造における軸受部材にも適用することができる。また、例えば、本発明の摺動部材は、スラスト軸受のような、被摺動部材に対して相対的に平面で摺動する摺動部材にも適用することができる。
軸・軸受構造1Aにおける、本発明の一実施形態の摺動部材としての軸部材10の構成について、図1に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態における軸・軸受構造1Aの、軸方向に垂直な断面を示す断面概略図である。
図1に示すように、軸・軸受構造1Aは、摺動部材としての軸部材10と、被摺動部材としての軸受部材11とからなっている。軸部材10は、円筒形状の軸スリーブである。尚、軸部材10は、軸スリーブに限定されるものではなく、軸であってもよい。一方、軸受部材11は、内部に軸部材10が収容される円筒形状を有しており、軸部材10を軸支する。
軸受部材11は、例えば、硬質のセラミックスまたは超硬合金等からなり、珪砂の硬度と同等以上であるため、スラリー液に含まれる珪砂等に対する耐摩耗性に優れる。さらに、硬質のセラミックスである、共有結合性またはイオン結合性のセラミックスは、スラリー液中にまれに含まれる金属くず等の金属成分との親和性が小さいため、軸受部材11へのスラリー液に含まれる金属くず等の金属成分の付着を防ぎやすい。なお、軸受部材11の表面に、摩擦係数を低く、もしくは耐摩耗性を向上するための膜を形成するような加工がされていても良い。
軸部材10は、図1に示すように、少なくとも、摺動部材基部10aと、上記摺動部材基部10aの表面に散在して固定される球状の摺接粒子10bとを備える。上記摺接粒子10bは、上記摺動部材基部10aの表面から突出している。なお、図1においては、摺接粒子10bのうち、一部のみを図示している。摺接粒子10bは、摺接粒子の原料粒子(以下、「原料粒子」とも称する)が摺動部材基部に固定されることにより形成される。また、上記摺接粒子の複数は、上記摺動部材基部の表面から突出し、かつ、上記被摺動部材に摺接しており、軸部材10の軸を中心とした円周面である摺接面12が形成される。すなわち、上記摺動部材基部の表面から突出しているが、上記被摺動部材に摺接していない摺接粒子があってもよい。ここで、上記「原料粒子」とは、摺動部材基部に固定する前の摺接粒子を意味する。
摺接粒子10bの原料粒子は、球状粒子である。球状粒子とは、角を有さない丸みを帯びた粒子を意図する。球状粒子は製造により真球からずれ、楕円形状等になる場合があるが、使用する球状粒子の直径不同および真球度は10μm以下である。
摺接粒子10bは、球状粒子である限りは特に限定されず、例えば、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン(Diamond-like Carbon、以下「DLC」と称する)、立方晶窒化ホウ素、ガラス状カーボン、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タングステン、窒化ケイ素、ケイ素化物、リン化物、硫化物からなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。なお、炭化タングステンとしては、WC、W2C、およびWCとW2Cとの複合材が挙げられる。図2は、本発明の一実施において用いられ得る球状のガラス状カーボン粒子の形状を示す図である。
摺接粒子10bの原料粒子の平均粒子径は、10μm以上250μm以下である。より好ましくは10μm以上150μm以下であり、さらに好ましくは10μm以上100μm以下である。上記範囲の平均粒子径を有する摺接粒子であれば、使用可能である。また、摺接粒子の平均粒子径が細かいものほど、予め低圧で馴染み運転(摺り合わせ)することにより摺接粒子が緩やかに摩耗するため、摺接粒子と被摺動部材との接触面積(摺接面積)の増大が期待できる。図3は、平均粒子径が50〜600μmである球状の原料粒子を平板基材の上に投影面積が50%となるように固定した摺動部材を、球状粒子の先端が揃っている状態で1μm摩耗させた際に生成する摺接面積(摺動部材基部1mm当たり)を示すグラフである。
平均粒子径が細かい原料粒子を使うと、単位面積当たりの摺接粒子の数は多くなるため、摺接粒子のわずかな摩耗によって摺接面積が増加する。摺接面積が増加することによって、単位摺接面積あたりの圧力が低下するため、原料粒子の平均粒子径が小さいほど安定した運転が期待できる。平均粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置:株式会社島津製作所、SALD−2100により計測されるD50値である。
本明細書中、原料粒子の「粒径範囲」とは、摺動部材基部の表面に散在して固定されるすべての原料粒子において最小径粒子と最大径粒子とで示される粒子径の範囲である。原料粒子の最小粒子径と最大粒子径とは、レーザー回折式粒子径分布測定装置:株式会社島津製作所、SALD−2100により計測される。
摺接粒子10bの原料粒子の粒径範囲は、特に限定されないが、当該原料粒子の平均粒子径の±50%以内であることが好ましい。例えば、「原料粒子の粒径範囲が、当該原料粒子の平均粒子径の±50%以内である」とは、原料粒子の粒子径が、当該原料粒子の平均粒子径の0.5倍以上、当該原料粒子の平均粒子径の1.5倍以下であることを意味する。摺接粒子10bの原料粒子の粒径範囲は、より好ましくは当該原料粒子の平均粒子径の±30%であり、さらに好ましくは当該原料粒子の平均粒子径の±20%である。粒径範囲が狭くなることにより、摺動部材を製造するに当たって原料粒子を固定して摺接粒子とする際、複数の粒子を揃えやすくなるからである。また、Ni−P等を用いて摺接粒子の原料粒子にメッキを施す際、メッキは1時間に数μmから数十μm程度堆積する。粒径範囲が広いとメッキでの処理時間が長くなるため、原料粒子の粒径範囲は、上記範囲であることが望ましい。
摺接粒子の投影部分の面積の割合は、摺動部材基部の面積の50〜80%であることが好ましい。上記割合は、電着によって摺接粒子を摺動部材基部に固定する場合は、摺動部材基部の面積の50〜60%であることが好ましく、ロウ付け等の化学的結合によって摺接粒子を摺動部材基部に固定する場合は、摺動部材基部の面積の50〜80%であることが好ましい。「摺接粒子の投影部分の面積(投影面積)」とは、摺動部材基部10aの単位表面における、投影部分の面積の和を意図する。投影部分とは、摺動部材基部の表面の垂直方向から見たときの摺接粒子の外周で囲まれる部分である。投影面積は、摺動部材基部10aの単位表面をレーザー顕微鏡で観察することによって得た顕微鏡写真に基づいて測定する。
「摺接粒子の投影部分の面積の割合」とは、摺接粒子の投影部分の面積が、摺動部材基部10aの単位表面の面積に占める割合を意図する。「摺接粒子の投影部分の面積の割合」は、以下のように求めることができる。すなわち、摺動部材基部10aにおいて2以上の単位表面を定め、それぞれの単位表面において投影面積の和を求める。次に、単位表面ごとに、上記和の、単位表面の面積に対する比率を求める。最後に、単位表面ごとに得られた上記比率の平均値を求めることにより、「摺接粒子の投影部分の面積の割合」を求めることができる。「摺接粒子の投影部分の面積の割合は、摺動部材基部の面積の50〜80%である」とは、上記平均値が50〜80%であることを意味する。具体的には、摺動部材基部10aの2以上の単位表面において、投影面積の和の比率を計算し、それらに基づき算出された平均値である。投影部分とは、摺動部材基部の表面の垂直方向から見たときの摺接粒子の外周で囲まれる部分である。投影面積は、摺動部材基部10aの単位表面をレーザー顕微鏡で観察することによって得た顕微鏡写真に基づいて測定する。
摺接粒子の投影面積を得るときに選択される摺動部材基部10aの単位表面は、少なくとも2つ以上であり、10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましく、40以上であることがさらに好ましく、80以上であることが特に好ましい。また、投影面積を得るときに選択される摺動部材基部10aの単位表面は、ランダムに、かつ、摺動部材基部10aの全体から偏りなく選択されることが好ましい。また、上記単位表面の大きさは、特に限定されず、摺動部材基部10aの大きさ等によって適宜設定される。
摺動部材基部10aは、基体からなる構成としてもよい。基体は、SUS304等の一般的に用いられる材質によって形成されていてもよく、樹脂で形成されていてもよい。また、摺動部材基部10aの表面形状は、平坦であってもよく、凹凸構造を有していてもよく、曲面を有していてもよい。
また、上記摺動部材基部10aは、基体と、上記基体の表面に形成された金属膜やロウ材とを備えていてもよい。後述するように、摺動部材基部10aの外表面上への摺接粒子10bの原料粒子の固定は、電着、ロウ付け、スパークプラズマ焼結(Spark Plasma Sintering)(以下、SPSという)を用いて行うことができ、金属膜やロウ材は、摺接粒子を形成するための固定部材として機能する。さらに、金属膜やロウ材は、基体が他の粒子と接触することにより摩耗する事態を防止することができる。
摺動部材基部10aの表面から摺接粒子10bの先端までの平均高さ(以下、「突出高さ」と称する)は、0.8μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましい。なお、突出高さにおける摺接粒子10bの先端とは、摺り合わせ加工を行う場合は、当該加工を行った後の摺接粒子10bの先端、すなわち摺接面12を意図する。
また、突出高さは、摺接粒子10bの原料粒子の平均粒子径の40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。すなわち、例えば、原料粒子の平均粒子径が150μmであれば、突出高さは、60μm以下であることが好ましく、45μm以下であることがより好ましい。突出高さが上記構成であれば、摺接粒子10bの固定強度が大きくなりやすい。
摺接粒子10bの埋め込み率は、摺接粒子10bの原料粒子の粒子径の50%以上であることが好ましい。埋め込み率が上記構成であれば、摺接粒子10bの固定強度が大きくなりやすい。なお、「埋め込み率」とは、摺接粒子10bの高さのうち、摺動部材基部10aに埋め込まれている部分の高さが、摺接粒子10bの原料粒子の粒子径に対して占める割合を意図する。摺接粒子の原料粒子の粒子径とは、摺動部材基部に固定する前の個々の摺接粒子の長径を意図する。上記粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置:株式会社島津製作所、SALD−2100により計測される。摺動部材基部10aに埋め込まれている部分の高さは、例えば、図1において、摺接粒子10bの、摺動部材基部10aに埋め込まれている部分の最深部に、摺動部材基部10aの表面から垂線を下した場合に、当該垂線の長さを測定することによって求めることができる。なお、上記「摺動部材基部10aの表面」とは、図1において、摺動部材基部10aが有する面のうち、部材間摺接面13に平行であって、かつ対向している面をいう。
摺接粒子を軸受の外周面または内周面に固定する場合、摺接面12、つまり、軸受部材11側の端部は、軸部材10の軸方向から見たときに、軸部材10の軸を中心とした同一円周上にある。該摺接面12は、軸部材10が回転するときに、被摺動部材である軸受部材11と摺接する面である。
スラスト軸受において摺接粒子10bを固定する場合、各摺接粒子10bの先端、つまり、軸受部材11側の端部は、摺動部材基部10aの表面の垂直方向から見たときに、同一平面状にある。
上記構成によれば、軸部材10が回転する際に、軸受部材11と摺接するのは摺接粒子10bのみとなる。したがって、軸部材10は、摩擦係数が低く、摩擦による熱の発生が抑えられたものとなるため、耐久性がより向上したものとなる。
<摺動部材の製造方法>
本発明の一実施形態における摺動部材の製造方法は、所望の摺動部材を得られる限りにおいて特に限定されない。例えば、電着、ロウ付け、スパークプラズマ焼結(Spark Plasma Sintering)(以下、SPSという)により、摺動部材基部10aの外表面上への摺接粒子10bの原料粒子の固定を行って、摺動部材を製造することができる。
(電着を用いた固定方法)
摺動部材基部10aの表面上への摺接粒子10bの原料粒子の固定は、周知の電着の方法で行うことができる。例えば、摺動部材基部10aの表面上に、摺接粒子10bの原料粒子を配置する。その後、所望の埋め込み率となるように、ニッケルメッキ液中で通電する。摺動部材基部10aの表面にニッケルメッキが施され、それに伴って、摺接粒子10bの原料粒子がニッケルメッキにある程度埋め込まれ、摺動部材基部10a上に固定される。
または、例えば、外表面以外の面をマスキングした摺動部材基部10aを、摺接粒子10bの原料粒子を含むニッケルメッキ液の中に配置する。その後、ニッケルメッキ液中で通電することにより、摺動部材基部10aの外表面にニッケルメッキが施されるとともに、摺接粒子10bの原料粒子がニッケルメッキにある程度埋め込まれ、摺動部材基部10a上に固定される。尚、電着に用いるメッキ液としては、他の金属や合金によるメッキ液を用いてもよい。
(ロウ付けによる固定方法)
摺動部材基部10aの表面上への摺接粒子10bの原料粒子の固定は、周知のロウ付けにより行うことができる。
例えば、まず、摺動部材基部10aの表面上に、摺接粒子10bの原料粒子を配置する。次に、摺接粒子10bの原料粒子をニッケルメッキ等によって点付固定する。その後、Ni-Cr-B-SiまたはCu-Ag-In-Ti等からなるロウ材粉末のペーストを塗布し、ロウ材の融点以上に加熱する。これにより、摺接粒子10bの原料粒子がロウ材に埋め込まれ、摺動部材基部10a上に固定される。
(SPSを用いた固定方法)
まず、摺動部材基部10a上に摺接粒子10bの原料粒子を配置し、その後SPS装置にて、例えば950℃、30MPaの条件下で加圧成形を行う。摺動部材基部10a上に保持されなかった他の摺接粒子10bの原料粒子は、除圧後に除去することによって摺接粒子10bを摺動部材基部10a上に固定することができる。
(仮基板を用いる固定方法)
本発明の一実施形態に係る摺動部材の製造方法は、仮基板の表面に摺接粒子の原料粒子が接触するように、仮基板上に当該原料粒子を含む固定層を形成する工程と、仮基板、固定層、基材の順となるようにこれらを積層し、上記固定層と上記基材とを接合する工程と、上記仮基板を除去する工程と、を含んでいてもよい。仮基板を用いる固定方法により摺動部材を製造することにより、より摺接面を形成しやすい
仮基板は、原料粒子を仮基板の表面形状に沿って配置することができる限りにおいて、その材質や表面形状は限定されない。仮基板の材質としては、SUS304、樹脂等が挙げられる。仮基板の表面形状は、平坦であってもよく、凹凸構造を有していてもよく、曲面を有していてもよい。
仮基板の表面上にメッシュ等を載置してもよい。摺接粒子の原料粒子の最大粒子径よりも大きな目開きを有するメッシュを載置することにより、固定層の表面の垂直方向から見たときに、上記摺接粒子がメッシュに沿うように、仮基板の表面に摺接粒子を配置することができる。
固定層は、電着、ロウ付け、スパークプラズマ焼結(Spark Plasma Sintering)(以下、SPSという)等による摺動部材基部10aの外表面上への摺接粒子10bの原料粒子の固定の過程で形成される。固定層の厚さは、摺接粒子10bの粒子径や仮基板の形状に応じて適宜決定される。
接合層の構成は、固定層と基材とを接合できる限りにおいて、特に限定されない。例えば、接合層は、基材への接着剤の塗布等により、形成される。
仮基板を除去する方法は特に限定されず、仮基板の材質や形成方法に合わせて、適宜決定すればよい。例えば、仮基板の切削、溶解等が挙げられる。
本固定方法を用いると、用いる原料粒子の粒度分布がばらついていても摺接粒子による摺接面を形成することができる。
<被膜を有する摺接粒子>
本発明の一実施形態において、上記摺接粒子は、少なくとも一部が被膜にて覆われていてもよい。上記の構成によれば、摺接粒子の摺接面を被膜によって表面がより円滑な面となるように覆うことができ、摺動部材の摺接面をより円滑な面にすることができる。
上記被膜は、少なくとも上記摺接粒子の摺接面周辺部の角部を覆う、ダイヤモンドライクカーボン膜又はガラス状カーボン膜からなる構成としてもよい。上記の構成によれば、軸部材の摺接面をさらに円滑な面にすることができる。
上記被膜は、摺接面周辺部の周りを覆うダイヤモンドライクカーボン膜又はガラス状カーボン膜からなり、上記摺接面周辺部から側面に至る角部に対応する部分の上記被膜の外面が曲面になっている構成としてもよい。
上記の構成によれば、ダイヤモンドライクカーボン膜又はガラス状カーボン膜からなる被膜は、摺接粒子の摺接面周辺部の周りを覆い、被摺動部材への攻撃性を緩和することができる。
上記被膜の膜厚は、被膜の効果を十分に発揮させるために、5μm〜10μmとすることが好ましい。
摺接粒子の少なくとも一部が被膜にて被覆されている場合であり、かつ、摺接粒子の先端、すなわち摺接面の少なくとも一部が被膜にて被覆されている場合には、摺接粒子の突出高さは、固定層の表面から当該被膜の先端までの高さとなる。
<被膜の形成方法>
摺接粒子の少なくとも一部がダイヤモンドライクカーボン膜(以下、DLC膜とも称する)にて被覆されている摺接粒子は、摺接粒子にDLC膜をコーティングすることにより調整することができる。DLC膜のコーティング方法としては、真空あるいは大気圧におけるプラズマを用いた蒸着技術による手法、および有機溶媒などの液中から炭素膜を電気的に析出させる手法などが知られている。現在は、真空装置を用いた蒸着法によるコーティング法が主流である。
真空装置を用いた蒸着法によるDLC膜のコーティング方法は、炭素供給源として固体炭素を用いる手法と炭化水素系の原料を用いる手法とに大別される。固体炭素(グラファイト)を炭素供給源とする手法としては、アークイオンプレーティング、非平衡マグネトロンスパッタリングおよびフィルタードアークイオンプレーティングが知られている。また、炭化水素系ガス(CH、C、C等)を炭素供給源とする手法としては、高周波プラズマCVD、パルス方式直流プラズマCVD、イオン化蒸着およびプラズマイオン注入・成膜が知られている。
摺接粒子の少なくとも一部がガラス状カーボン膜にて被覆されている摺接粒子は、摺接粒子に熱硬化性樹脂を主成分とするガラス状カーボン用樹脂組成物を塗布し、硬化した後、不活性雰囲気中または真空下で焼成炭化することにより調整することができる。
〔2.ポンプ〕
本発明の一実施形態に係るポンプは、本発明の一実施形態に係る摺動部材を備える。本発明の一実施形態に係る摺動部材は、摺接粒子の摩耗量がより少ないため、本発明の一実施形態に係るポンプを長時間安定的に運転させることができる。
上記ポンプとしては、例えば、図2に示すようなスラリー液を排出可能な立軸斜流ポンプ装置が挙げられる。立軸斜流ポンプ装置81は、ケーシング82の下端に吸込口83を有する。ケーシング82内には回転自在な主軸84が挿通されており、主軸84の下端に羽根車85が設けられている。ケーシング82の上部には、主軸84を回転駆動させる駆動装置86(電動機)が設けられている。主軸84は滑り軸受装置87によって回転自在に支持されている。
図2および図3に示すように、主軸84は軸本体84aと軸受箇所において軸本体84aに外嵌された円筒状のスリーブ84b(摺動部材の一例)とで構成され、滑り軸受装置87は、スリーブ84bの外周面に摺接する軸受88と、軸受88の周囲に設けられたハウジング89と、軸受88とハウジング89との間に設けられた円筒形状の緩衝用ゴム90とを有している。ハウジング89は、金属製の円筒形状の部材であり、ケーシング82内に設けられた固定部材91に固定されている。
軸受88は、円筒状の軸受シェル93と軸受体94(被摺動部材の一例)とで構成されている。摺接粒子94の内周面とスリーブ84bの外周面とが摺接する。なお、スリーブ84bに、本発明の一実施形態における固定層および基材が備えられる。
これによると、主軸84が所定の回転方向に回転すると、スリーブ84bの外周面が軸受体94の内周面に摺接する。この際、滑り軸受装置87は、回り止めされ、主軸84と共回りすることはない。
上記立軸斜流ポンプ装置81は先行待機運転を行うものであり、揚水を行う揚水運転と、揚水を行わない待機運転とに切り替え可能である。本発明の一実施形態に係る摺動部材は、自揚水による潤滑作用が発揮されず、滑り軸受装置87に対する主軸84の摺動抵抗が増大するドライ状態での待機運転時に効果を発揮するものである。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
〔摩擦試験〕
(実施例1)
50mm×50mm×1mmtのSUS304基材の表面にガラス状カーボン粒子(平均粒子径50μm:粒径範囲は原料粒子の平均粒子径に対して±25%)をNi−Pメッキで電着固定した。その後、50mm×50mm×5mmtのSUS304基材とガラス状カーボン粒子を固定したSUS304基材とを樹脂系接着剤で接合した。次に、厚み1mmtのSUS304を切削除去し、メッキ部のみを加工して、突出高さが1μmの試料を作製した。
ガラス状カーボン粒子を固定した上記試料とφ5mm×20mmLの窒化ケイ素ピンとを使用し、摺動往復幅5mm、面圧1kg/cm、往復回数1分間に200回で1時間摺動試験を実施した。その結果、摩擦係数は0.079であった。この数値は、試料が良好な摺動性を示すことを意図する。また、摺動面において摺動傷は観察されなかった。
(実施例2)
炭素含有量が4%のタングステンカーバイト球状粒子(平均粒子径107μm:粒径範囲は原料粒子の平均粒子径に対して±40%)を用いて実施例1と同様の方法で試料を作製した。また、水中において摺動試験を行ったこと以外は実施例1と同一条件で摺動試験を実施した。摩擦係数は0.1であり、良好な摺動性を示した。
(比較例1)
炭素含有量が4%のタングステンカーバイト粉砕粉(平均粒子径107μm:粒径範囲は原料粒子の平均粒子径に対して±40%)を用いて実施例1と同様の方法で試料を作製した。また、水中において摺動試験を行ったこと以外は実施例1と同一条件で摺動試験を実施した。摩擦係数は0.15であった。この数値は、摩擦が少し高めであることを示し、窒化ケイ素ピンの摩耗粉が水中に浮いているのが目視で観察できた。実施例2の窒化ケイ素ピンの比摩耗量はおよそ1×10−6mm/N・mであったことに対して、比較例2の窒化ケイ素ピンの比摩耗量では1×10−4mm/N・mと摩耗量が多かった。なお、比摩耗量は試験前後の窒化ケイ素の重量減、面圧及び摺動距離から算出した。
本発明は、ポンプ、例えば先行待機運転ポンプに好適に利用することができる。
1A 軸・軸受構造
10 軸部材
10a 摺動部材基部
10b 摺接粒子
11 軸受部材
12 摺接面

Claims (4)

  1. 被摺動部材に対して相対的に摺動する摺動部材であって、
    摺動部材基部と、
    上記摺動部材基部の表面に散在して固定される摺接粒子と、を備え、
    上記摺接粒子の複数は、上記摺動部材基部の表面から突出し、かつ、上記被摺動部材に摺接しており、
    上記摺接粒子の原料粒子の平均粒子径が、10〜250μmであり、
    上記摺接粒子の原料粒子は、球状粒子である、摺動部材。
  2. 上記摺接粒子の投影部分の面積の割合が、上記摺動部材基部の面積の50〜80%であることを特徴とする、請求項1に記載の摺動部材。
  3. 上記原料粒子の粒径範囲が、当該原料粒子の平均粒子径に対して±50%である、請求項1または2に記載の摺動部材。
  4. 上記摺接粒子は、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、立方晶窒化ホウ素、ガラス状カーボン、アルミナ、ジルコニア、炭化ホウ素、炭化ケイ素、炭化タングステン、窒化ケイ素、ケイ素化物、リン化物、硫化物からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の摺動部材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2022209966A1 (ja) * 2021-03-30 2022-10-06 イーグル工業株式会社 摺動部品

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