JP2021102225A - 純チタン金属材料の加工方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高強度な純チタン金属材料を提供するための加工方法であって、鍛造抵抗を低減させることができる加工方法を提供する。【解決手段】 純チタン金属材料の加工方法は、25℃〜350℃の温度範囲を維持しつつ純チタン金属材料を三次元方向に対して各1回以上の鍛造を施し、該純チタン金属材料の全体における累積ひずみ量が1.2以上となる多軸鍛造処理工程を含むものである。多軸鍛造処理工程の後に、断面減縮を伴う強圧延を施す強圧延工程を含むことができる。多軸鍛造処理工程は、鍛造の終了後に時効処理を施す工程を含むことができる。強圧延工程は、単純ロール圧延その他の圧延方法を施すことができる。【選択図】 図1

Description

本発明は、純チタン金属材料の加工方法に関し、特に、高強度を有する純チタン金属材料を製造するための加工方法に関するものである。
純チタンとは、一般に純度99%以上のものを意味し、生体適合性に優れていることから、医療用の金属材料として使用されることがある。しかしながら、純チタンを使用する場合、強度が不十分であるため、他の金属元素を添加し、チタン合金として強度を増大させることがあった。例えば、Ti−6Al−4Vとするチタン合金などが開発されている(非特許文献1参照)。
ところが、Ti−6Al−4V合金を生体内で使用すると、それに含まれるアルミニウム成分またはバナジウム成分によって、生体不活性や生体拒絶反応を招来させることも周知となっている。そのため、このような現象を軽減するためには、生体材料の表面に、母材よりも生体適合性に優れる材料をコーティングする方法が開発されている(特許文献1参照)。
しかしながら、母材の表面に他の材料をコーティングする方法では、生体材料としての通常の加工を終了した後に全体をコーティングすることとなり、非常に煩雑なものとならざるを得なかった。さらに、コーティング条件の適正化、および生体内部における環境下での経時変化に伴う母材とコーティング材料との密着性などについて、追跡調査が余儀なくされ、その安全性の評価について疑問が残されていた。
特表2007−504920号公報 WO2014/038487号公報
城島尚之,「生体材料としてのチタンおよびチタン合金」,軽金属、Vol.55(2005),pp.561−565
上述のように、純チタンを使用する場合には強度は不足し、チタン合金を使用する場合はコーティングが必要となるため、生体材料として好適なチタン金属の開発が切望されていた。そこで、本願の発明者は、三次元方向に繰り返し鍛造処理を行う多軸鍛造法と、強圧延による高強度の純チタン材料を得る加工方法を開発した(特許文献2参照)。この方法によれば、生体適合性の良好な純チタンを使用しつつ、高強度を有することから、生体材料に適するものであった。
ところが、上記のように加工された純チタンを生体材料に加工するためには、その高強度によって、決して容易なものではなかった。例えば、人工歯根(いわゆるインプラント)の材料に使用する場合には、小径の線状に加工することが要請されるが、高強度のチタンインゴットを小径の線状に加工することは困難であった。
また、当該加工では内部ひずみを増大させることがあり、このような場合には時効処理などを施すことによって内部ひずみを除去することが一般的である。しかし、多軸鍛造によって結晶粒を微細化させることによって高強度を実現したにもかかわらず、当該結晶粒が、時効処理によって再結晶化または肥大化させるおそれがあり、この結果、強度が低下することが想定されていた。
他方において、前掲の多軸鍛造法は冷間加工であるため、鍛造抵抗が大きく、大型の鍛造機を必要とするが、大型の鍛造機を使用したとしても加工できる純チタン金属材料は比較的小さなものとならざるを得なかった。
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、高強度な純チタン金属材料を提供するための加工方法であって、鍛造抵抗を低減させることができる加工方法を提供することである。
そこで、本発明は、純チタン金属材料の加工方法であって、25℃〜350℃の温度範囲を維持しつつ純チタン金属材料を三次元方向に対して各1回以上の鍛造を施し、該純チタン金属材料の全体における累積ひずみ量が1.2以上となる多軸鍛造処理工程を含むことを特徴とするものである。
上記構成によれば、純チタンの再結晶温度である600℃よりも低温域による加工となるため、多軸鍛造により微細化した結晶が再結晶により肥大化することを抑えることができる。他方において、冷間ではない温度範囲による多軸鍛造のため、鍛造抵抗を低減させることができる。
上記構成の発明において、前記温度範囲を250℃〜350℃とすることが好ましく、また、前記累積ひずみ量を3.6以上とするものであってもよい。
上記構成のように温度範囲を250℃〜350℃とすることにより、鍛造抵抗を低減させることができるものであり、350℃を超えないことにより、微細化した結晶粒の再結晶(肥大化)を抑制することができる。なお、温間による多軸鍛造によることから、結晶粒の微小化の程度に劣ることとなるが、多軸鍛造による累積ひずみ量を3.6以上とすることにより、徐々に微小化した結晶粒により高強度の純チタン金属材料を得ることが可能となる。得られる組織は冷間多軸鍛造とほぼ同等であることから、冷間から350℃までのより広い温度域での鍛造による組織微細化が可能であることを示している。
また、上記構成の発明において、前記多軸鍛造処理工程は、三次元方向に対して各1回行う鍛造の終了後、または複数回行う鍛造の終了後において、時効処理を施すものとしてもよい。時効処理は、内部ひずみを除去するために行うものであるが、例えば、800℃以下の低温で焼鈍することにより、結晶粒を均一化することができる。すなわち、500℃を超える時効処理に場合には、再結晶を生じさせるが、短時間であれば、結晶粒を整えることができるものである。
さらに、上記構成の発明において、前記多軸鍛造処理工程の後に、断面減縮を伴う強圧延を施す強圧延工程を含むものとし、その際の断面減縮率を90%以上とすることができる。また、この場合の強圧延工程は、350℃以下の冷間または温間による加工とすることができる。
上記構成の場合には、多軸鍛造処理工程後の強圧延により、圧延集合組織を形成させ、強度を向上させることができる。すなわち、圧延によって形成される圧延面の底面集合組織は、塑性変形のための変形抵抗を上昇させることとなるのである。なお、断面減縮率は90%以上であれば、冷間または温間のいずれでもよいが、50%や65%程度の場合には冷間圧延が好ましい。これは前述の圧延集合組織の形成を容易にするためである。
上記各構成の発明おいては、前記強圧延工程として、単純ロール圧延、溝ロール圧延、線引き加工、絞り加工、転造加工、スウェージング加工およびバニシング加工のうちから選択することができ、これらのうち少なくとも一種以上によって強圧延工程としてもよい。
上記構成によれば、単純圧延による強圧延によって高強度の純チタン金属による基礎材料を得ることができるほか、溝ロール圧延などの加工方法を選択することにより、用途に応じた形状の純チタン金属材料を得ることができ、その変形加工と同時に強圧延を施すことができるものとなる。これにより、高強度化した純チタン金属材料を用途に応じて再度加工することなく、必要な形状等に加工しつつ高強度化させることができる。さらには、これらから所望の形状に切削加工してもよい。
本発明によれば、チタンが再結晶する温度よりも低い温度範囲において多軸鍛造を施すことから、結晶粒の微細化を誘導させることによる高強度な純チタン金属材料を提供することができる。また、適度な温度による多軸鍛造によるため、冷間鍛造に比較して鍛造抵抗を低減させることができる。
また、所定の温度範囲によって多軸鍛造を施す場合には、結晶粒が微細化するものの冷間鍛造による場合に比較して僅かに大きい結晶粒となるため、高強度でありながら延性に優れた特性を有するものとなるため、その後の強圧延を容易にすることができる。この強圧延に際しては、ロール圧延に限らず、圧延所定形状に塑性変形させるための加工方法を選択することができることとなる。また、所望の形状に切削加工してもよい。
そして、純チタン金属材料は、生体適合性に優れるものであり、上記加工により高強度となるものであるから、例えば、人工歯根(インプラント)等の各種医療材料として使用することができることはもちろんのこと、ネジ材その他の腐食環境構造材へ適用することができる。
純チタン金属ワイヤの加工方法に係る実施形態の概略を示す説明図である。 純チタン金属ワイヤの加工方法に係る実施形態の他の例を示す説明図である。 実験例1の結果(各温度域における多軸鍛造後)の応力を測定した結果を示すグラフである。 実験例2の結果として降伏応力の測定結果を示すグラフである。 実験例2の結果としてビッカース硬さの測定結果を示すグラフである。 実験例3において観察した温度域25℃(298K)における多軸鍛造による組織の変化を示す(OIM解析による組織)画像である。 実験例3において観察した温度域350℃(623K)における多軸鍛造による組織の変化を示す(OIM解析による組織)画像である。 実験例4(実験例3の追加実験)の結果を観察したOIM解析による組織画像である。 実験例5の結果として純チタン金属材料の引張試験の結果(最大引張応力と延性)を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による加工の一例を示している。図1(a)が多軸鍛造を示し、図1(b)はロール圧延を示している。多軸鍛造工程として施される多軸鍛造は、図1(a)に示されているように、加工前の純チタン材料(出発材料)Aに対し、三次元方向に各1回の鍛造加工をもって1回(1パス)の多軸鍛造としている。1パスごとのひずみ量を0.4とし、これを数回繰り返すことにより所定の累積ひずみ量とすることができる。例えば、累積ひずみ量を1.2とする場合には、3パスの体軸鍛造を施すこととなり、累積ひずみ量を2.4とする場合には6パスを施すこととなる。そして、15パスを施せば累積ひずみ量を6.0とすることも可能となる。
1パスごとのX方向、Y方向およびZ方向への段造によるひずみ量は、均等である必要はなく、例えば、X方向に0.1、Y方向に0.15、Z方向に0.15としてもよく、また、同様に0.13、0.13、0.14としてもよい。ただし、多軸鍛造を複数回繰り返す場合は、各パスの終了時において、その形状および大きさが出発材料と同じ状態となるように各方向からの鍛造によるひずみ量を調整する場合もある。なお、1パスにおけるひずみ速度は1×10−3/秒から10/秒の範囲としている。
上記のように、多軸鍛造により所定の累積ひずみ量を導入することにより、結晶粒が微細化し、これによる高強度の純チタン金属材料を得ることができる。上記のような加工を、冷間巨大ひずみ加工と呼び、これまでの実験においては、平均結晶粒径を100nm以下とすることができた。本実施形態では、累積ひずみ量を調整することにより、容易に平均結晶粒径を1μm以下にすることができるものである。
ここで、本実施形態では、多軸鍛造(各パス)における純チタン金属材料の温度を25℃(298K)〜350℃(623K)の温度範囲に維持するものである。これは鍛造抵抗を低減させるためである。この温度範囲は250℃(523K)〜350℃(623K)とすれば、鍛造抵抗を大きく低減させることができる。
上記のような多軸鍛造は、純チタン金属材料の組織の微細化を誘導するための加工である。組織の微細化は、低温であることが好ましいが、ここでは鍛造抵抗を低減させるために温間鍛造とする。一般的な純チタン金属は、600℃(873K)以上により再結晶されるとされているため、それ以下の温度範囲でなければ、微細化した結晶組織が再結晶により肥大化するおそれがある。ところが、純チタン金属を再結晶温度に近い程に高温(例えば500℃)とした場合であっても鍛造抵抗が大きく低減するものではなく、実験的には350℃(623K)以下であれば、多軸鍛造による結晶粒の微細化を導入することが可能であることが判明している。なお、350℃(623K)と同程度の特性を有する温度の下限は、実験的結果から250℃(523K)であり、さらに結晶粒の微細化にはそれ以下の温度域であることが好ましいことも判明している。
このように250℃(523K)〜350℃(623K)の温度範囲において純チタン金属材料に多軸鍛造を施す場合には、25℃(298K)未満の場合に比べて、結晶粒の微細化の進行は遅いが、複数回のパスを繰り返すことにより、徐々に結晶粒径は小さくなる。このような結晶の微細化によって強度を向上させるのである。
また、上記のような多軸鍛造が施された材料Bは、図1(b)に示すように、強圧延加工(強圧延工程)により塑性変形させることができる。このときの圧延率(断面減縮率)は、50%以上とすることができるが90%以上とすることが好ましい。このような断面減縮率を得るためには、圧延加工を数回に分けて施すこととなる。
また、この強圧延工程は、一種類(例えばロール圧延)のみで完結させる必要はなく、複数の圧延加工を組み合わせることもできる。例えば、上記のようにロール圧延により板状材料Cを構成した後、図2に示すように、適当な幅に切断して棒状の材料C1とし(図2(a)参照)、それを溝ロール圧延によって加工する(図2(b)参照、図中Dを得る)ことも可能である。当然のことながら、さらに転造加工を施してネジ形状としてもよく、その他の加工方法を組み合わせてもよい。所望の形状の純チタン金属材料を得るために圧延加工を用いる場合は、上記強圧延工程として当該圧延加工を採用することができるものである。さらには、これらから所望の形状に切削加工してもよい。
<実験例1>
まず、多軸鍛造加工時の純チタン金属材料の温度と鍛造抵抗との関係を検証するための実験を行った。使用した純チタン金属は、代表的な純チタン材料であるJIS H 4600 2種(N:0.33%、C:0.98%、H:0.014%、Fe:0.25%、O:0.20%)を使用し、25℃(298K)、250℃(523K)、300℃(573K)および350℃(623K)の各温度における鍛造時の応力を測定した。その鍛造応力と累積ひずみ量との関係を図3に示す。この図に示されるように、各パス終了後における次回パス時の軟化傾向は、350℃(623K)において顕著に表れ、それ以下の温度による場合は、軟化の程度が緩やかである。従って、350℃(623K)が上限であった。なお、350d(623K)よりも高温では、回復による変形抵抗が低下し、大きく軟化するものであった。他方、25℃(298K)では、鍛造による強度の向上により、鍛造抵抗(鍛造応力)が増加しており、これよりも低温の場合は、さらに顕著に増大するため、下限を25℃(298K)とする。
また、25℃(298K)から250℃(523K)までは、各パス終了後の次回のパスにおける鍛造応力は、僅かに増大するか、または変化がない状態であった。そのため、鍛造抵抗を低減させることのみを目的とする場合は、250℃(523K)以上が好ましく、加工後の強度のみに着目する場合は、350℃(623K)以下が好ましい。また、鍛造抵抗の限界を考慮すると25℃(298K)が下限値となり得る。
<実験例2>
上記の温度範囲について、その下限値および上限値を明確に評価するため、前記と同様の代表的な純チタン材料であるJIS H 4600 2種を使用し、25℃(298K)、250℃(523K)、300℃(573K)および350℃(623K)の各温度における多軸鍛造後の降伏応力およびビッカース硬さを測定した。多軸鍛造では、各パスにおけるひずみ量を0.4とし、それぞれ6回のパスを行うことにより累積ひずみ量を2.4とした。
降伏応力の測定結果を図4に、ビッカース硬さの測定結果を図5に示す。図4から明らかなとおり、降伏応力は、25℃(298K)における多軸鍛造による場合が最も大きく、温度を上昇させると徐々に応力が低下する。ここで、25℃(298K)から250℃(523K)までの応力低下、および250℃(523K)から300℃(573K)までの応力低下は僅かであるが、350℃(623K)の場合の応力低下が大きくなっている。
また、ビッカース硬さについては、図5から明らかなとおり、25℃(298K)において最も硬く、250℃(523K)および300℃(573K)では、25℃(298K)よりも低下しているが、両温度域では同程度であった。また、350℃(623K)では300℃(573K)よりも低下している。
これらの温度範囲よりもさらに高温の場合は降伏応力が著しく低下し、ビッカース硬さも低下したため、この温度範囲内が限界と考えられる。なお、鍛造応力の結果ならびに累積ひずみ量2.4における降伏応力およびビッカース硬さの測定結果を参照すれば、加工性および加工後の状態からは、250℃(523K)から300℃(573K)までの範囲が最も好適であるが、多少の作業性の悪さや加工後の強度などを考慮すると、25℃(298K)を下限値とし、350℃(623K)を上限値とすることができるものと判断される。
<実験例3>
前記と同様の代表的な純チタン材料であるJIS H 4600 2種を出発材料として、温度域25℃(298K)および350℃(623K)で多軸鍛造を施した際の結晶粒子を観測した。観測は、それぞれの多軸鍛造において、1パスごとのひずみ量を0.4とした場合における3パス(累積ひずみ量(ΣΔε)1.2)、6パス(累積ひずみ量(ΣΔε)2.4)、9パス(累積ひずみ量(ΣΔε)3.6)および15パス(累積ひずみ量(ΣΔε)6.0)後の状態について行った。その組織解析(OIM解析)の結果を図6および図7に示す。なお、図6は温度域25℃(298K)の場合であり、図7は温度域350℃(623K)の場合である。また、図中には、結晶粒子の平均粒径をdバーとして表示している。
図6および図7から明らかなとおり、出発材料の初期粒径が66μm程度あった結晶粒子は、温度域25℃(298K)および350℃(623K)のいずれの場合においても、9パス(累積ひずみ量(ΣΔε)3.6)後または15パス(累積ひずみ量(ΣΔε)6.0)後における結晶粒子の平均粒径は0.5μm前後まで微細化した。この結晶粒子の微細化により純チタン金属の強度が増加するものと判断される。
以上の結果から、累積ひずみ量を1.2以上であれば、十分に結晶粒子を微細化させることができるものであることが判明した。また、累積ひずみ量が3.6以上であれば、なお結晶粒子を微細化させることができる。そして累積ひずみ量が3.6を超えれば大きな変化を生じさせないことから、3.6以上であれば十分な累積ひずみ量であると判断し得るものとなった。
<実験例4>
上記実験例3の追加実験として、1パスごとのひずみ量を0.4として6パス(累積ひずみ量(ΣΔε)2.4)後の純チタン金属に対し、断面減縮率90%の強圧延を施した場合の結晶粒子の状態を観察した。この観察もOIM解析による。その結果を図8に示す。なお、図8(a)は温度域25℃(298K)による場合を示し、図8(b)は、温度域350℃(623K)の場合を示す。
図6および図7を参照しつつ図8の結果を見ると、温度域25℃(298K)の材料は、結晶粒子の平均粒径が0.76μmから0.72μmに僅かながら微細化し、温度域350℃(623K)の材料では、0.89μmが0.62μmまで大きく微細化が進んだ結果を示している。これにより、多軸鍛造終了後に強圧延を施すことで、結晶粒子の微細化を促進させ、強度を向上させることができることが明らかとなった。
<実験例5>
上記実験により結晶粒子が微細化した純チタン金属について、その最大引張応力と延性(破断伸び率)を測定した。その測定結果を図9に示す。測定は、温度域25℃(298K)および350℃(623K)において、それぞれ前記4種類の累積ひずみ量における多軸鍛造後の状態と、それぞれについて最終パス(累積ひずみ量6.0)後に断面減縮率90%の強圧延を施したものについて行った。なお、比較のために、図中には、出発材料に対し多軸鍛造を行わずに断面減縮率90%の強圧延のみを施した場合の測定結果を含めている。また、出発材料の最大引張応力および延性は、図示するグラフの目盛りから逸脱するため示していないが、測定結果は、最大引張応力が350MPaであり、延性は36%であった。
この図に示す測定結果から明らかなとおり、いずれの温度域においても、9パス(累積ひずみ量が3.6)の多軸鍛造を施すまでは、最大引張応力および延性は向上し、15パス(累積ひずみ量6.0)により僅かながら最大引張応力は低下することとなった。ただし、350℃(623K)の場合には、最大引張応力は低下するが延性が大きく向上するものとなった。
また、いずれの温度域においても15パス(累積ひずみ量6.0)後に強圧延を施した場合には、最大引張応力は約1,000MPaまで向上している。これは、単に多軸鍛造を施したそれぞれの材料よりも極めて向上したことを示している。
以上より、鍛造温度を25℃(298K)〜350℃(623K)の範囲内で多軸鍛造を施すことにより、鍛造抵抗を小さくしつつ十分な結晶粒の微細化と、それに伴う高強度の純チタン金属材料を製造することができることが判明し、さらに、その後の強圧延により強度を向上させることができることも判明した。そして、強圧延に際し単純ロール圧延以外の圧延方法を選択すれば、用途に応じた形状等に加工しつつ高強度の純チタン金属材料を製造し得るものとなる。
A 加工前の純チタン金属材料
B 多軸鍛造後の材料
C,C1 圧延加工中の材料
D 圧延加工終了後の材料

Claims (8)

  1. 純チタン金属材料の加工方法であって、
    25℃〜350℃の温度範囲を維持しつつ純チタン金属材料を三次元方向に対して各1回以上の鍛造を施し、該純チタン金属材料の全体における累積ひずみ量が1.2以上となる多軸鍛造処理工程を含むことを特徴とする純チタン金属材料の加工方法。
  2. 前記温度範囲が250℃〜350℃である請求項1に記載の純チタン金属材料の加工方法。
  3. 前記累積ひずみ量が3.6以上である請求項1または2に記載の純チタン金属材料の加工方法。
  4. 前記多軸鍛造処理工程は、三次元方向に対して各1回行う鍛造の終了後、または複数回行う鍛造の終了後において、時効処理を施すものである請求項1〜3のいずれかに記載の純チタン金属材料の加工方法。
  5. 前記多軸鍛造処理工程の後に、断面減縮を伴う強圧延を施す強圧延工程を含むものである請求項1〜4のいずれかに記載の純チタン金属材料の加工方法。
  6. 前記強圧延工程は、断面減縮率が90%以上の強圧延を施すものである請求項5に記載の純チタン金属材料の加工方法。
  7. 前記強圧延工程は、単純ロール圧延、溝ロール圧延、線引き加工、絞り加工、転造加工、スウェージング加工およびバニシング加工のうち、少なくとも一種以上によるものである請求項5または6に記載の純チタン金属材料の加工方法。
  8. 前記強圧延工程は、350℃以下の冷間または温間による加工である請求項5〜7のいずれかに記載の純チタン金属材料の加工方法。
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