JP2003213388A - 外径が3mm以上の形状記憶合金ボルトの製造方法 - Google Patents

外径が3mm以上の形状記憶合金ボルトの製造方法

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JP2003213388A
JP2003213388A JP2002006919A JP2002006919A JP2003213388A JP 2003213388 A JP2003213388 A JP 2003213388A JP 2002006919 A JP2002006919 A JP 2002006919A JP 2002006919 A JP2002006919 A JP 2002006919A JP 2003213388 A JP2003213388 A JP 2003213388A
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Hisao Kamiya
久夫 神谷
Koichi Morii
浩一 森井
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 形状回復終了温度が60〜110℃であると
ともに、形状回復率が30%以上であり、かつ強度の高
い外径が3mm以上の形状記憶合金ボルトを製造する方
法を提供すること。 【解決手段】 重量%で(以下同じ)、Ni:54.0
〜55.5%、Tiが残部からなる形状記憶合金、N
i;43.0〜50.0%、Cu;6.0〜12.0
%、Tiが残部からなる形状記憶合金、Ni:49.0
〜51.0%、Nb:8.0〜12.0%、Tiが残部
からなる形状記憶合金等のうちのいずれか1種をスウェ
ージング加工によって20〜50%の冷間加工をし、3
50〜500℃で0.5〜5時間加熱する形状記憶熱処
理をし、その後転造加工によってネジを成形することを
特徴とする外径が3mm以上の形状記憶合金ボルトの製
造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、外径が3mm以上
の形状記憶合金ボルトの製造方法、詳細には60〜11
0℃の温度に加熱した場合に形状回復が得られる外径が
3mm以上の形状記憶合金ボルトの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】形状記憶合金は、合金の温度を変えるこ
とにより、高温相から低温相へ熱弾性的にマルテンサイ
ト変態することによって、形状記憶効果や超弾性といっ
た特異な性質を示すことが知られている。この形状記憶
合金として、NiTi形状記憶合金、NiTiCu形状
記憶合金、NiTiNb形状記憶合金等が知られてい
る。これらのNiTi系の形状記憶合金は、良好な形状
回復率を得るため、冷間加工後350〜500℃で形状
記憶熱処理をすることが好ましいことが知られている。
また、外径が1.5mm程度の細いボルトの製造方法も
知られている(特開昭63─280905号公報参
照)。
【0003】しかし、これらの形状記憶合金は、金属間
化合物と称される分類の金属であるので、通常の冷間で
の伸線加工では焼き付き等が発生するため、外径が3m
m以上、特に5mm以上の素材を工業的に製造すること
が困難であった。また、これらの形状記憶合金は、冷間
加工が極めて困難であるばかりでなく、切削加工も困難
なため、外径が3mm以上、特に5mm以上のボルトを
製造することも実用化されていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、形状回復終
了温度が60〜110℃であるとともに、形状回復率が
30%以上であり、かつ強度の高い外径が3mm以上の
形状記憶合金ボルトを製造する方法を提供することを課
題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明者達は、ネジ部の外径が3mm以上の形状記
憶合金ボルトの製造方法について鋭意研究をしていたと
ころ、外径が3mm以上、特に5mm以上の形状記憶合
金に必要な冷間加工率を得るためにはスウェージング加
工(回転スウェージング加工)をすればよいこと、スウ
ェージング加工をすれば、冷間で50%の加工率まで行
うことができること、ボルトに必要な強度を得るために
は形状記憶熱処理をした後転造加工によってネジを成形
すれば、強度の高い(形状が回復するときにネジ部で切
れたり、ネジ部が局部的に伸びたりし難い)ボルトが得
られること、上記特許請求の範囲に記載した成分組成の
形状記憶合金に対して20〜50%(減面率)の冷間加
工をし、350〜500℃で0.5〜5時間加熱する形
状記憶熱処理をすると、30%以上の形状回復率が得ら
れるとともに、形状回復終了温度が60〜90℃の形状
記憶合金が得られること、ネジ精度は2級以下でないと
引張時に破断すること等の知見を得た。本発明は、これ
らの知見に基づいて発明をされたものである。
【0006】すなわち、本発明の外径が3mm以上の形
状記憶合金ボルトの製造方法においては、Ni:54.
0〜55.5%、Tiが残部からなる形状記憶合金、N
i;43.0〜50.0%、Cu;6.0〜12.0
%、Tiが残部からなる形状記憶合金、Ni:49.0
〜51.0%、Nb:8.0〜12.0%、Tiが残部
からなる形状記憶合金等のうちのいずれかの形状記憶合
金をスウェージング加工によって20〜50%、好まし
くは30%以上、より好ましくは40%以上の冷間加工
をし、その後350〜500℃で0.5〜5時間、好ま
しくは1〜3時間加熱する形状記憶熱処理をし、その後
更にMs点以下の温度等でネジを転造加工によって成形
することである。
【0007】
【作用】本発明の外径が3mm以上の形状記憶合金ボル
トの製造方法は、上記成分組成等の形状記憶合金をスウ
ェージング加工によって減面率20〜50%の冷間加工
をし、その後350〜500℃で0.5〜5時間加熱す
る形状記憶熱処理をし、その後更にMs点以下の温度等
でネジを転造加工して成形することによって、形状回復
終了温度が60〜110℃であるとともに、形状回復率
が30%以上であり、かつ強度の高い外径が3mm以上
の形状記憶合金ボルトを製造することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】次に、本発明の外径が3mm以上
の形状記憶合金ボルトの製造方法を詳細に説明する。本
発明の外径が3mm以上の形状記憶合金ボルトの製造方
法(以下「本発明の製造方法」という。)に用いること
ができる形状記憶合金は、Niが54.0〜55.5
%、Tiが残部のNiTi2元系合金、Niが43.0
〜50.0%、Cuが6.0〜12.0%、Tiが残部
のNiTiCu3元系合金、Niが49.0〜51.0
%、Nbが8.0〜12.0%、Tiが残部のNiTi
Nb3元系合金等である。上記NiTiCu3元系合金
のCuは、変態点を上げるので、そのために含有させる
元素であるが、多過ぎると熱間加工時に割れが発生す
る。また、NiTiNb3元系合金のNbは、ボルトに
加工した後の引張加工をしやすくするので、そのために
含有させる元素である。これらの合金の成分組成を上記
のようにしたのは、上記成分組成の範囲外では形状回復
終了温度を60〜110℃であって、かつ形状回復率が
30%以上のものが得られないからである。また、これ
らの合金のMs点は、形状回復終了温度(表1参照)の
−5〜−20℃である。
【0009】本発明の製造方法において、形状記憶合金
をスウェージング加工するのは、スウェージング加工で
ないと20〜50%の冷間加工ができないからである。
また、スウェージング加工での加工率(減面率)を20
%以上にするのは、図1に示すように20%以上にしな
いと形状回復率が30%以上にならないからである。ま
た、上限を50%にしたのは、スウェージング加工によ
ってもこれ以上の加工率にすることは困難であるからで
ある。形状回復率が60%以上のものは、加工率25%
以上の冷間加工、形状回復率が90%以上のものは、加
工率35%以上の冷間加工をすることによって得ること
ができる。
【0010】本発明の製造方法において、形状記憶熱処
理を350〜500℃で0.5〜5時間の加熱処理を行
うのは、図2に示すようにこの範囲以外では形状記憶合
金の形状回復率を30%以上にすることができないから
である。350〜500℃で1〜3時間の加熱処理を行
うと90%以上の形状回復率を得ることができる。
【0011】本発明の製造方法において、転造加工によ
ってネジを成形するのは、他の成形方法より成形が容易
で、大量生産に適しているからである。この転造加工に
よるネジの成形では、0℃で2級ネジ、常温で3級ネジ
を成形することができる。ネジの谷の深い1級ネジは、
0℃付近の温度で成形をしても割れが生じる場合があ
り、成形が困難である。また、この転造加工によるネジ
の成形は、形状記憶熱処理の後にMs点(本発明に使用
する形状記憶合金のMs点は、形状回復終了温度の−5
〜−20℃である。)以下の温度でするのが好ましい。
加熱された場合に形状を回復しようとするため、ボルト
の雄ネジが雌ネジと固く結合されるからである。
【0012】本発明の製造方法において、形状記憶熱処
理の後に転造加工によってネジを成形するのは、ネジ部
強度を高くするとともに、上記のようにネジの成形をM
s点以下の温度で行うと加熱された場合に形状を回復し
ようとするため、ボルトの雄ネジが雌ネジと固く結合さ
れるようになるからである。ネジの成形の後に形状記憶
熱処理をしたボルトは、Ms点以下の温度で8%の伸び
歪みを与える段階(形状記憶合金ボルトの場合、前もっ
て8%程度の伸び歪みを与えておく必要がある。)でネ
ジ部で切れたり、ネジ部が局部的に伸びたりする場合が
ある。これは、ネジ部の強度が低いためである。形状記
憶熱処理の後に転造加工によるネジの成形をすると強度
が高くなるのは、転造加工による加工硬化によりネジ部
の強度が高くなったものと考えられる。
【0013】次に、本発明の外径が3mm以上の形状記
憶合金ボルトの製造方法の一具体例を説明する。750
℃程度で焼なまし処理をされた形状記憶合金の棒状素材
をスウェージング加工によって20〜50%の冷間加工
をし、その後表面をセンタレスグラインダ加工により表
面を平滑にする。その後必要なボルトの長さに切断し、
直線形状のまま固定して350〜500℃で0.5〜5
時間の形状記憶熱処理をする。その後Ms点以下の温度
で転造加工によって両端部にネジを転造加工する。その
後Ms点以下の温度で伸び歪みがボルト平行部の長さの
2〜10%になる引張加工をして製品となる。頭部を必
要とするボルトにおいては、ボルトの一端部のネジにナ
ットを固定することによって製品となる。
【0014】
【実施例】次に、本発明の実施例を説明する。下記表1
に示す成分組成の形状記憶合金の750℃で焼なまし処
理をされたφ8.5mmの棒状素材を下記表1に示す冷
間加工率のスウェージング加工をし、その後センタレス
グラインダ加工により表面を平滑にしてφ5.3mmの
棒状素材とした。その後長さ130mmに切断し、両端
を研削して直棒の形状にした。次に、下記表1に示す条
件で形状記憶熱処理(MT)をし、その後0℃に冷却
し、転造加工によってM6サイズ、長さ15mmの2級
ネジを両側に設けて有効長さ100mm(中央部のネジ
の無い部分)のボルトを製造した。その後回復率測定の
ために引張前の平行部長さを測定し、ボルトを引張試験
機によって8%の伸び歪みを与えた後除荷して試験片と
した。この8%の伸び歪みを与える段階で破断しなかっ
たものを下記表1の破断の有無の欄に破断なしと記載
し、破断したものを破断有りと記載した。
【0015】これらの試験片を用いて、下記方法によっ
て形状の回復率および形状回復終了温度を測定し、その
結果を下記表1に示す。形状回復終了温度および形状の
回復率は、上記伸び歪みを与えた試験片を無負荷状態で
徐々に加熱し、縮むのが終了した温度を形状回復終了温
度とし、縮んだ全長さから形状の回復率を求めた。
【0016】
【表1】
【0017】上記表1の結果によると、本発明のもの
は、いずれも回復率が85〜99%、形状回復温度が6
8〜105℃あり、また破断がなかった。これに対し
て、NiTi形状記憶合金のNi含有量が本発明より多
い比較例1は、形状回復温度が50℃で、本発明の目標
の60℃に届かなかった。また、Ni含有量が本発明の
ものより少ない比較例2は、形状回復温度が115℃
で、本発明の目標の110℃より高くなり過ぎた。
【0018】NiTiCu形状記憶合金のCu含有量が
本発明のものより少ない比較例3および本発明のものよ
り多い比較例4は、いずれも形状回復温度が58℃と5
0℃で、本発明の目標の60℃に届かなかった。NiT
iNb形状記憶合金のNb含有量が本発明のものより少
ない比較例5および本発明のものより多い比較例6は、
いずれも形状回復温度が55℃と50℃で、本発明の目
標の60℃に届かなかった。
【0019】NiTiCu形状記憶合金の冷間加工率が
本発明より少ない比較例7、形状記憶熱処理(MT)の
温度が本発明より高い比較例8、MTの温度が本発明よ
り低い比較例9、MTの時間が本発明より長い比較例1
0は、いずれも形状回復温度が本発明の目標の60℃に
届かなかった。
【0020】NiTiNb形状記憶合金のMTと転造に
よるネジ切の順番が本発明と逆の比較例11は、試験片
を作成する段階で破断した。Coを3.3%,Feを
2.1%,Vを4.6%を含有した比較例12〜14
は、いずれも形状回復温度が本発明の目標の60℃に届
かず、また比較例14は回復率も本発明の目標の30%
に届かなかった。NiTi形状記憶合金のMTの温度が
本発明より高い比較例15、MTの温度が本発明より低
い比較例16は、いずれも形状の回復率が本発明の目標
である30%に届かなかった。
【0021】
【発明の効果】本発明の外径が3mm以上の形状記憶合
金ボルトの製造方法は、上記構成にすることにより、形
状回復終了温度が60〜110℃であるとともに、形状
の回復率が30%以上であり、かつ強度の高い外径が3
mm以上の形状記憶合金ボルトを製造することができる
という優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用する形状記憶合金のスウェージン
グの加工率と形状記憶熱処理の加熱温度と形状の回復率
との関係を示すグラフである。
【図2】本発明に使用する形状記憶合金の形状記憶熱処
理の加熱時間および加熱温度と形状の回復率との関係を
示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22C 19/03 C22C 19/03 A F16B 35/00 F16B 35/00 J // C22F 1/00 630 C22F 1/00 630L 631 631Z 686 686A 691 691B 694 694A

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 形状記憶合金をスウェージング加工によ
    って20〜50%の冷間加工をし、350〜500℃で
    0.5〜5時間加熱する形状記憶熱処理をした後、転造
    加工によってネジを成形することを特徴とする外径が3
    mm以上の形状記憶合金ボルトの製造方法。
  2. 【請求項2】 上記形状記憶合金が重量%で(以下同
    じ)、Ni:54.0〜55.5%、Tiが残部からな
    る形状記憶合金、Ni;43.0〜50.0%、Cu;
    6.0〜12.0%、Tiが残部からなる形状記憶合金
    およびNi:49.0〜51.0%、Nb:8.0〜1
    2.0%、Tiが残部からなる形状記憶合金のうちのい
    ずれか1種であることを特徴とする請求項1記載の外径
    が3mm以上の形状記憶合金ボルトの製造方法。
  3. 【請求項3】 上記転造加工によってネジを成形する時
    の温度が形状記憶合金のMs点以下であることを特徴と
    する請求項1または請求項2記載の外径が3mm以上の
    形状記憶合金ボルトの製造方法。
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