JP6735169B2 - 骨固定部材とその製造方法、並びに骨固定部材製造用の中間成形体 - Google Patents
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この場合、装着孔の内周面およびその周縁部を回避した部分の少なくとも一部は、粒径が1μm未満の等軸粒の含有率が面積率で50%未満である比較的疎な組織とされているので、骨固定部材全体が、粒径が1μm未満である微細な等軸粒の含有率が面積率で50%以上と高い緻密な組織で形成されている場合と比較して、冷間加工性が向上し、骨の形状に合うように骨固定部材の形状を加工することが容易となる。
この場合、装着孔の内周面およびその周縁部はβ相の含有率が低いので、骨固定部材における装着孔の内周面およびその周縁部の静的強度を確実に向上させることができ、さらにα相とβ相との界面での破壊が起こりにくくなるので、骨固定部材の疲労強度を確実に向上させることができる。
この場合、装着孔の内周面およびその周縁部は硬さが高いので、骨固定部材における装着孔の内周面およびその周縁部の静的強度並びに骨固定部材の疲労強度をより確実に向上させることができる。
この場合、中間成形体の窪み部は厚みが薄いので、比較的容易に装着孔を形成することができる。
この場合は、プレス速度が上記の範囲にあるので、熱間鍛造によって微細な等軸粒を装着孔の内周面およびその周縁部に確実に発現させることができる。
本発明の骨固定部材製造用の中間成形体によれば、窪み部を除去して装着孔を形成することによって、骨固定部材における装着孔の内周面およびその周縁部の静的強度並びに骨固定部材の疲労強度が向上した骨固定部材を工業的に有利に製造することができる。またさらに、Ti合金は、Alを4質量%以上9質量%以下の範囲、Vを2質量%以上10質量%以下の範囲にて含有し、残部がTiおよび不可避不純物からなるので、骨固定部材における装着孔の内周面およびその周縁部の静的強度並びに骨固定部材の疲労強度がさらに確実に向上した骨固定部材を製造することが可能となる。
この場合、窪み部の内周面およびその周縁部を回避した部分の少なくとも一部は、粒径が1μm未満の等軸粒の含有率が面積率で50%未満である比較的疎な組織とされているので、冷間加工性が向上し、例えば、この中間成形体の外縁部(バリ)の除去等の加工が容易になる。
この場合、骨固定部材における装着孔の内周面およびその周縁部の静的強度並びに骨固定部材の疲労強度が確実に向上した骨固定部材を製造することが可能となる。
この場合、骨固定部材における装着孔の内周面およびその周縁部の静的強度並びに骨固定部材の疲労強度がより確実に向上した骨固定部材を製造することが可能となる。
図1において、本実施形態の骨固定部材10は、体内に埋め込まれ、骨30に取り付けられる本体部11を備える。
本体部11は、図1に示される上面視において長方形状を呈する板状に形成されている。本体部11は、図2に示される幅方向に沿う断面視において上方に向けて突となるように湾曲している。本体部11は、この本体部11を骨30に取り付けるためのネジ(取り付け部材)20が挿入される装着孔12を複数個有している。装着孔12は、本体部11に長手方向に間隔をあけて複数形成されている。装着孔12の上部は、ネジ20の皿形状の頭部21が収容されるテーパー状のザグリ部13となっている。
なお、本実施形態の骨固定部材10において、装着孔12の内周面の周縁部とは、JIS T 0312の曲げ疲労試験において、耐久限である106回以上の繰り返し数に相当する曲げ荷重を負荷した場合に、骨固定部材10に発生する最大応力に対してその70%以上の応力が発生する領域を意味する。
ここで、α+β型のTi合金は、通常の鋳造等の冷却速度により常温でβ相が面積率で10〜50%となるTi合金であり、ここで、ニアα型のTi合金は、V、Cr、Moなどのβ相安定化元素を0.1〜2質量%含んでいるTi合金で、同冷却速度により常温でのβ相は面積率で0%を超え10%未満のTi合金である。
本実施形態の骨固定部材10では、装着孔12の内周面等は、等軸粒の含有率が面積率で50%以上とされており、等軸粒の含有率が高く、緻密な組織とされているので、静的強度が高くなる。また、装着孔の内周面等には析出物が存在しないか、存在するとしても微細な等軸粒の粒界にわずかに存在する程度となるので、析出物と基地との界面が破壊の起点となることが起こりにくく、疲労強度も高くなる。本実施形態の骨固定部材10において、装着孔12の内周面等に存在する析出物の量は、面積割合で4%以下であることが好ましい。
装着孔12の内周面等の硬さを340HV以上とすることによって、骨固定部材10の疲労強度および装着孔12の内周面等の静的強度をより確実に向上させることができる。
Ti合金素材は、製造する骨固定部材の厚さの2倍以上の高さを有することが好ましい。Ti合金素材の形状は、棒材もしくは平板等の形状とすることができるが、棒材(丸棒あるいは角材)の形状とすることが好ましい。
図3、4に示されるように、中間成形体40は、骨固定部材10の本体部11を形成する本体形成部41と、骨固定部材10の装着孔12が形成される位置に設けられた窪み部42とを有する。本体形成部41は、骨固定部材10の本体部11の形状に合せて、上方に向けて突となるように湾曲している。窪み部42の上部は、骨固定部材10のザグリ部13の形状に合せて、テーパー状のザグリ形成部43となっている。本体形成部の周囲には、外縁部44(バリ)が形成されている。
本体形成部41の窪み部42は、熱間鍛造によって形成される。このため、窪み部42の内周面等を、粒径が1μm未満の等軸粒の含有率が面積率で50%以上とすることができる。
なお、第一の工程、第二の工程および第三の工程は、同一の場所で実施してもよいし、異なる場所で実施してもよい。例えば、第一の工程と第二の工程を同一の場所で実施して、第三の工程を異なる場所で実施してもよい。
図1に示した実施形態の骨固定部材10では、本体部11に複数個の装着孔12が形成されているが、装着孔12の数には特に制限はない。装着孔12の数は1個であってもよい。さらに、図1に示した実施形態の骨固定部材10では、本体部11は、幅が一定となっているが、本体部11の形状には、特に制限はない。本体部11の形状は、一部が幅広になっていてもよいし、ねじれていてもよい。また、L字やCの字、円盤や三角形形状等であってもよい。また、使用部位の骨に沿うよう、側面はアーチ状に湾曲していてもよい。
等軸粒の面積率、β相面積率、マイクロビッカース硬さは、本体部11の上面における装着孔12の開口周縁部と、装着孔12の内周面等を回避した部分とにおいてそれぞれ測定した。装着孔12の開口周縁部は、装着孔12の開口周縁の最頂部から深さ50μmの部分(測定範囲:30μm×10μm)とした。装着孔12の内周面等を回避した部分は、中間成形体40の外縁部44を除去することによって露出した本体部11の端部の表面から深さ50μmの部分とした。
SEM/EBSD装置を用いて、IPF(逆極点、Inverse Pole Figure、結晶方位差3°以上を粒界とする)マップを作成し、主な構成相であるα相についてそのIPFマップ中の粒径1μm未満の等軸粒の含有率(面積率)を算出した。
SEM/EBSD装置を用いて、α相とβ相の結晶構造の違いから相マップを作成し、その相マップ中のβ相の含有率(面積率)を算出した。
全自動マイクロビッカース硬さ試験機(FUTURE−TECH製:MF−700)を用いて、試験荷重1.96Nで圧痕を打ち、その大きさから硬さを算出した。
JIS T 0312に記載されている曲げ試験を実施して、得られた曲げ強度を骨固定部材の疲労強度とした。
α+β合金の展伸材(常温でのβ相の面積率が10〜50%となるTi合金)を原料とし、切削によって図1、2に示す形状の骨固定部材を製造した。この製造した骨固定部材を基準試料として、その疲労強度を測定した。この基準試料の疲労強度に対する骨固定部材の疲労強度の向上率{=(骨固定部材の疲労強度−基準試料の疲労強度}/基準試料の疲労強度×100}が、3%以上30%未満の範囲にあったものを「○」、疲労強度の向上率が30%以上であったものを「◎」、疲労強度の向上率が3%未満であったものを「×」とした。
比較例5、6で得られた骨固定部材10は、装着孔の内周面等のマイクロビッカース硬さは高いが、疲労強度が低かった。マイクロビッカース硬さが高いのは、β相の面積率が低いためである。一方、疲労強度が低いのは、装着孔12の内周面等において、粒径が1μm未満の等軸粒の含有率が低いためである。疲労破壊における亀裂の進展に対して、粒内よりもより多くのエネルギーを必要とする粒界はその障壁となるが、比較例5、6の骨固定部材10では粒径が1μm以上の大きな結晶粒が多く含まれることからその粒界に当たる頻度が低く、所望の疲労強度が得られていない。
11 本体部
12 装着孔
13 ザグリ部
20 ネジ
21 頭部
30 骨
40 中間成形体
41 本体形成部
42 窪み部
43 ザグリ形成部
44 外縁部
Claims (11)
- 体内に埋め込まれ、骨に取り付けられる骨固定部材であって、
ニアα型および/またはα+β型に一般分類される組成をもち、Alを4質量%以上9質量%以下の範囲、Vを2質量%以上10質量%以下の範囲にて含有し、残部がTiおよび不可避不純物からなるTi合金で形成され、
この骨固定部材を骨に取り付けるための取り付け部材が挿入される装着孔を有し、
この骨固定部材における前記装着孔の内周面およびその周縁部は、粒径が1μm未満の等軸粒の含有率が面積率で50%以上であることを特徴とする骨固定部材。 - 前記装着孔の内周面およびその周縁部を回避した部分の少なくとも一部は、粒径が1μm未満の等軸粒の含有率が面積率で50%未満であることを特徴とする請求項1に記載の骨固定部材。
- 前記装着孔の内周面およびその周縁部におけるTi合金のβ相の含有率が面積率で0%を超えて4%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の骨固定部材。
- 前記装着孔の内周面およびその周縁部の硬さが、340HV以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の骨固定部材。
- 体内に埋め込まれ、骨に取り付けられる骨固定部材の製造方法であって、
ニアα型および/またはα+β型に一般分類される組成をもち、Alを4質量%以上9質量%以下の範囲、Vを2質量%以上10質量%以下の範囲にて含有し、残部がTiおよび不可避不純物からなるTi合金からなるTi合金素材に溶体化処理を施した後、焼き入れ処理を行って、α’マルテンサイトTi合金材を得る第一の工程と、
このα’マルテンサイトTi合金材に対して、前記α’マルテンサイトTi合金材のβ変態点に対して−300℃以上−100℃以下の温度に加熱した状態でプレスして熱間鍛造を施すことにより、骨固定部材を骨に取り付けるための取り付け部材が挿入される装着孔形成用の窪み部を有し、この窪み部の内周面およびその周縁部は、粒径が1μm未満の等軸粒の含有率が面積率で50%以上である中間成形体を得る第二の工程と、を備えることを特徴とする骨固定部材の製造方法。 - 前記第二の工程で得られた前記中間成形体の前記窪み部を除去して、前記装着孔を形成する第三の工程を備えることを特徴とする請求項5に記載の骨固定部材の製造方法。
- 前記第二の工程において、プレス速度を、前記α’マルテンサイトTi合金材のプレス方向における高さの0.0001倍/秒以上50倍/秒以下として、前記α’マルテンサイトTi合金材をプレスすることを特徴とする請求項5または6に記載の骨固定部材の製造方法。
- 体内に埋め込まれ、骨に取り付けられる骨固定部材を製造するための骨固定部材製造用の中間成形体であって、
ニアα型および/またはα+β型に一般分類される組成をもち、Alを4質量%以上9質量%以下の範囲、Vを2質量%以上10質量%以下の範囲にて含有し、残部がTiおよび不可避不純物からなるTi合金で形成され、
骨固定部材を骨に取り付けるための取り付け部材が挿入される装着孔形成用の窪み部を有し、
この窪み部の内周面およびその周縁部は、粒径が1μm未満の等軸粒の含有率が面積率で50%以上であることを特徴とする骨固定部材製造用の中間成形体。 - 前記窪み部の内周面およびその周縁部を回避した部分の少なくとも一部は、粒径が1μm未満の等軸粒の含有率が面積率で50%未満であることを特徴とする請求項8に記載の骨固定部材製造用の中間成形体。
- 前記窪み部の内周面およびその周縁部におけるTi合金のβ相の含有率が面積率で0%を超えて4%以下であることを特徴とする請求項8または9に記載の骨固定部材製造用の中間成形体。
- 前記窪み部の内周面およびその周縁部の硬さが、340HV以上であることを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の骨固定部材製造用の中間成形体。
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