JP2021099897A - 燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池の発電による省エネルギのメリットの有無を燃料電池の運転中に適切に判定する。【解決手段】燃料電池システムは、燃料電池と、燃料電池で発電された直流電力を電力系統と連系可能な交流電力に変換して出力する電力変換装置と、燃料電池の発電に伴う排熱を回収し排熱利用のために外部に出力する排熱出力装置と、制御部とを備える。制御部は、燃料の投入エネルギから排熱利用分のエネルギを除いた発電寄与分のエネルギを用いて電力系統の事業者の発電設備で発電するよりも、投入エネルギを用いて燃料電池が発電し電力変換装置から出力することで省エネルギのメリットがあるか否かの判定を所定の閾値を用いて燃料電池の運転中に行い、メリットがないと判定したことに基づいて燃料電池の運転を停止させるための所定処理を行う。【選択図】図6

Description

本発明は、燃料電池システムに関する。
従来、この種の燃料電池システムとしては、システムが備える燃料電池の状態を診断するものが知られている。例えば、特許文献1には、専用の診断装置を燃料電池に接続して診断専用の運転パターンで燃料電池を運転した際の発電電流や発電電圧などを検出し、それらの検出値を正常運転時の基準値と比較することで、燃料電池の機械的な不良や経年使用による劣化などを判定するものが開示されている。
特許第4352688号
上述した特許文献1のシステムでは、燃料電池の診断を行うために診断専用の運転パターンで燃料電池を運転しており、その間は燃料電池の通常の運転を行うことができないものとなる。このため、燃料電池を運転することによる省エネルギのメリットが低下するおそれがある。また、燃料電池システムでは発電に伴う排熱を回収して利用することができるため、燃料電池が劣化していても、劣化の程度によっては省エネルギのメリットを得られることがあるから、排熱利用分を考慮しないと不適切な判定結果となる場合がある。
本発明の燃料電池システムは、発電による省エネルギのメリットの有無を燃料電池の運転中に適切に判定することを主目的とする。
本発明の燃料電池システムは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明の燃料電池システムは、
燃料の投入を受けて発電する燃料電池と、
前記燃料電池で発電された直流電力を電力系統と連系可能な交流電力に変換して出力する電力変換装置と、
前記燃料電池の発電に伴う排熱を回収し排熱利用のために外部に出力する排熱出力装置と、
前記燃料電池と前記電力変換装置と前記排熱出力装置とを制御する制御部と、
を備える燃料電池システムであって、
前記制御部は、前記燃料の投入エネルギから排熱利用分のエネルギを除いた発電寄与分のエネルギを用いて前記電力系統の事業者の発電設備で発電するよりも、前記投入エネルギを用いて前記燃料電池が発電し前記電力変換装置から出力することで省エネルギのメリットがあるか否かの判定を所定の閾値を用いて前記燃料電池の運転中に行い、前記メリットがないと判定したことに基づいて前記燃料電池の運転を停止させるための所定処理を行うことを要旨とする。
本発明の燃料電池システムでは、電力系統の事業者の発電設備で発電するよりも、燃料電池が発電し電力変換装置から出力することで省エネルギのメリットがあるか否かの判定を所定の閾値を用いて燃料電池の運転中に行う。また、メリットがないと判定したことに基づいて燃料電池の運転を停止させるための所定処理を行う。これにより、診断専用の運転パターンで燃料電池を運転しなくても、省エネルギのメリットの有無を判定することができる。また、事業者の発電設備の発電では、燃料の投入エネルギから排熱利用分のエネルギを除いた発電寄与分のエネルギを用いることで、燃料電池システムの発電に排熱利用分のメリットを反映させることができから、省エネルギのメリットをより適切に判定することができる。したがって、発電による省エネルギのメリットの有無を燃料電池の運転中に適切に判定することができる。
本発明の燃料電池システムにおいて、前記燃料電池の出力電流または前記投入エネルギを入力値とし、前記燃料電池システムの発電電力または前記燃料電池の出力電圧を出力値として、前記入力値に対応する前記出力値を前記閾値として関係付けた判定用マップを記憶する記憶部を備え、前記制御部は、前記燃料電池の運転中に前記入力値と前記出力値とを取得し、取得した前記入力値に対応する前記閾値を前記判定用マップから導出して前記判定を行い、取得した前記出力値が前記閾値よりも小さい場合に前記メリットがないと判定するものとしてもよい。こうすれば、判定用マップから閾値を速やかに導出して判定を行うことができるから、処理負担の増加を抑えて、省エネルギのメリットの有無をより適切に判定することができる。
本発明の燃料電池システムにおいて、前記判定用マップでは、前記入力値を横軸にとり前記出力値を縦軸にとり、前記入力値と前記閾値との対応関係を示すメリット分岐ラインと、前記燃料電池システムの発電特性に基づいて劣化時に想定される前記出力値と前記入力値との対応関係を示す劣化想定ラインとが定められると共に、前記劣化想定ラインが前記メリット分岐ラインを下回る範囲が定められており、前記制御部は、前記燃料電池の運転中に取得した前記入力値が前記範囲外の場合には、前記入力値に対応する前記閾値を前記メリット分岐ラインから導出して前記判定を行い、前記燃料電池の運転中に取得した前記入力値が前記範囲内の場合には、前記入力値に対応する前記出力値を前記劣化想定ラインから導出し、導出した前記出力値を前記閾値として用いて前記判定を行うものとしてもよい。こうすれば、劣化想定ラインがメリット分岐ラインを下回る範囲外では、燃料電池システムの劣化により入力値に対応する出力値が劣化想定ラインを下回っていても、その出力値がメリット分岐ラインから導出される閾値を上回っていれば、省エネルギのメリットがあると判定して燃料電池を運転させるから、劣化が進んでいても省エネルギのメリットをもたらすことができる。一方、劣化想定ラインがメリット分岐ラインを下回る範囲内は、燃料電池システムの劣化が進み発電出力が不安定となりやすく、通常の使用状態ではその範囲内で燃料電池が運転されることは少ないものといえる。その範囲内では、劣化想定ラインに基づく閾値を用いて判定を行うことで、省エネルギのメリットがなく劣化が進行した状態で燃料電池が運転されるのを抑制することができる。
本発明の燃料電池システムにおいて、前記判定用マップでは、前記入力値を横軸にとり前記出力値を縦軸にとり、前記入力値と前記閾値との対応関係を示すメリット分岐ラインと、前記燃料電池システムの発電特性に基づいて劣化時に想定される前記出力値と前記入力値との対応関係を示す劣化想定ラインとが定められると共に、前記劣化想定ラインが前記メリット分岐ラインを下回る範囲が定められており、前記制御部は、前記燃料電池の運転中に取得した前記入力値が前記範囲外の場合には、前記入力値に対応する前記閾値を前記メリット分岐ラインから導出して前記判定を行い、前記燃料電池の運転中に取得した前記入力値が前記範囲内の場合には、前記判定を省略するものとしてもよい。こうすれば、劣化想定ラインがメリット分岐ラインを下回る範囲外では、燃料電池システムの劣化により入力値に対応する出力値が劣化想定ラインを下回っていても、その出力値がメリット分岐ラインから導出される閾値を上回っていれば、省エネルギのメリットがあると判定して燃料電池を運転させるから、劣化が進んでいても省エネルギのメリットをもたらすことができる。一方、劣化想定ラインがメリット分岐ラインを下回る範囲内は、燃料電池システムの劣化が進み発電出力が不安定となりやすく、通常の使用状態ではその範囲内で燃料電池が運転されることは少ないものといえる。その範囲内では、判定を省略することで、メリットの有無を誤判定したりするのを防止することができる。
本発明の燃料電池システムにおいて、前記排熱出力装置は、排熱を回収し湯水として蓄える貯湯タンクと、前記貯湯タンクに給水される水の温度を検出する給水温センサと、前記貯湯タンクから出湯される湯水の温度を検出する出湯温センサと、前記貯湯タンクから出湯される湯水の量を検出する出湯量センサと、を備え、前記制御部は、前記排熱利用分のエネルギとして、前記出湯温センサにより検出される湯水の温度と前記給水温センサにより検出される水の温度との温度差と、前記出湯量センサにより検出される湯水の量とに基づく熱量から導出されるエネルギを用いるものとしてもよい。こうすれば、燃料電池の運転中に実際の排熱利用分のエネルギを導出することができるから、省エネルギのメリットの有無をさらに適切に判定することができる。
本発明の燃料電池システムにおいて、前記制御部は、前記メリットがないことを所定時間に亘り継続して判定した場合に、前記所定処理を行うものとしてもよい。こうすれば、負荷変動や出力変動などにより一時的にメリットが低下した場合を除外して、省エネルギのメリットの有無をより一層適切に判定することができる。
燃料電池システム10の構成の概略を示す構成図である。 判定用マップ作成手順の一例を示すフローチャートである。 判定用マップ93aの一例を示す説明図である。 電圧ラインと電力ラインの一例を示す説明図である。 発電電力Wと発電効率ksの関係の一例を示す説明図である。 異常判定処理の一例を示すフローチャートである。 変形例の判定用マップ193aを示す説明図である。 変形例の異常判定処理を示すフローチャートである。
本発明を実施するための形態について説明する。
図1は燃料電池システム10の構成の概略を示す構成図である。燃料電池システム10は、図示するように、燃料電池ユニット20と、給湯ユニット25と、制御装置90と、操作パネル95とを備える。この燃料電池システム10は、燃料電池ユニット20により発電された電力を図示しない住宅の電気機器などに給電可能であり、給湯ユニット25から住宅の温水機器などに湯水を給湯可能である。
燃料電池ユニット20は、発電モジュール30と、原燃料ガス供給装置40と、エア供給装置45と、改質水供給装置50と、排熱回収装置60と、貯湯タンク70と、パワーコンディショナ80とを備える。
発電モジュール30は、改質水を気化して水蒸気を生成する気化器32と、天然ガスやLPガスなどの原燃料ガスを水蒸気改質により改質して改質ガスを生成する改質器34と、改質ガスと酸化剤ガスとの供給を受けて発電する燃料電池スタック36、図示しない点火ヒータなどを有する。気化器32と改質器34と燃料電池スタック36は、断熱性材料により形成された箱型のモジュールケース31内に収容されている。モジュールケース31内には、燃料電池スタック36の起動や、気化器32における水蒸気の生成、改質器34における水蒸気改質反応に必要な熱を供給するために、燃料電池スタック36を通過した燃料オフガス(アノードオフガス)と酸化剤オフガス(カソードオフガス)とを燃焼させる燃焼部38が設けられている。
燃料電池スタック36は、酸素イオン伝導体からなる固体電解質と、固体電解質の一方の面に設けられたアノードと、固体電解質の他方の面に設けられたカソードとを備える固体酸化物燃料電池セルが積層されたものである。燃料電池スタック36は、アノードに供給される燃料ガス中の水素とカソードに供給されるエア中の酸素とによる電気化学反応によって発電する。
原燃料ガス供給装置40は、燃料ガスの供給源と気化器32とを接続する原燃料ガス供給管41を有する。原燃料ガス供給管41には、燃料ガスの供給源側から順に、ガス供給弁42やガスポンプ43、図示しない脱硫器、流量センサ44などが設けられており、ガス供給弁42を開弁した状態でガスポンプ43を駆動することにより、原燃料ガスを脱硫器で脱硫して気化器32へ供給する。
エア供給装置45は、外気と連通するフィルタ47と燃料電池スタック36とを接続するエア供給管46を有する。エア供給管46には、エアブロワ48が設けられており、エアブロワ48を駆動することにより、フィルタ47を介して吸入したエアを燃料電池スタック36へ供給する。なお、エア供給管46には、図示しない流量センサなどが設けられている。
改質水供給装置50は、改質水を貯蔵する改質水タンク53と気化器32とを接続する改質水供給管51を有する。改質水タンク53には、改質水ポンプ52が設けられており、改質水ポンプ52を駆動することにより改質水タンク53内の改質水を汲み上げて改質水供給管51を介して気化器32へ供給する。なお、改質水供給管51には、図示しない流量センサなどが設けられている。
排熱回収装置60は、循環ポンプ62と、循環ポンプ62の駆動により貯湯タンク70の貯湯水を循環させる循環配管61と、循環配管61内の貯湯水と燃焼部38からの燃焼排ガスとの間で熱交換を行う熱交換器63とを有する。燃焼部38からの燃焼排ガスは、熱交換により水蒸気成分が凝縮され、凝縮された水(凝縮水)が凝縮水供給管64を介して改質水タンク53に回収される。凝縮水供給管64には図示しない水精製器が設けられており、水精製器により精製(浄化)された水が改質水タンク53に回収される。また、残りの排気ガス(ガス成分)は、排気ガス排出管65を介して外気へ排出される。
貯湯タンク70は、排熱回収装置60の排熱回収により温められた温水(貯湯水)を貯湯する。この貯湯タンク70には、給水源(水道)からの水が給水管71を経て流入する。また、貯湯タンク70に貯湯された湯水は、出湯管72を経て給湯ユニット25に出湯される。出湯管72には、給水管71の分岐管に接続された混合弁73が設けられており、出湯に要求される水温や出湯に定められた上限水温に応じて、混合弁73で分岐管から流入される水と混合させてから、給湯ユニット25に湯水が出湯される。なお、給水管71には、給水管71を通過して貯湯タンク70に供給される水の給水温Tiを検出する給水温センサ74が設けられている。また、出湯管72には、出湯管72を通過して給湯ユニット25に出湯される湯水の出湯温Toを検出する出湯温センサ75と、出湯管72を通過する湯水の流量を検出する出湯量センサ76とが設けられている。
パワーコンディショナ80は、図示は省略するが、燃料電池スタック36から出力された直流電圧を所定電圧に昇圧するDC/DCコンバータと、昇圧された直流電圧を商用電力系統2と連系可能な交流電圧に変換するインバータとを備え、燃料電池スタック36で発電された直流電力を交流電力に変換して、商用電力系統2に接続される電力ライン4から住宅の電気機器などに給電する。なお、燃料電池スタック36に接続された電力ラインには、燃料電池スタック36から出力されるスタック電流Isを検出する電流センサ81と、スタック電圧Vsを検出する電圧センサ82とが設けられている。また、商用電力系統2に接続された電力ラインには、パワーコンディショナ80から出力される出力電流Ioを検出する電流センサ83と、出力電圧Voを検出する電圧センサ84とが設けられている。
給湯ユニット25は、燃料ガスの供給源から供給される燃料ガスを燃焼させるガスバーナ26などを備える。給湯ユニット25は、貯湯タンク70から出湯管72を経て出湯された湯水をガスバーナ26での加熱により所望の水温に調整して、住宅の温水機器などに給湯する。
制御装置90は、燃料電池システム10の全体を制御する制御部91と、無線または有線の通信回線を介して操作パネル95と通信する通信部92と、各種処理プログラムや各種情報を記憶する記憶部93とを備える。なお、制御部91は、時間を計測するためのタイマTなどを備える。制御部91には、流量センサ44からのガス流量Qgや給水温センサ74からの給水温Ti、出湯温センサ75からの出湯温To、出湯量センサ76からの湯水の流量F、電流センサ81からのスタック電流Is、電圧センサ82からのスタック電圧Vs、電流センサ83からの出力電流Io、電圧センサ84からの出力電圧Voなど、各種センサからの検出信号などが入力ポートを介して入力されている。また、制御部91からは、ガス供給弁42やガスポンプ43、エアブロワ48、改質水ポンプ52、循環ポンプ62、混合弁73、ガスバーナ26などの各補機への駆動信号やパワーコンディショナ80への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。また、制御部91は、通信部92を介して操作パネル95からの操作信号を受信して、操作信号に基づく各種制御を実行したり、通信部92を介して操作パネル95に表示信号を送信して、表示信号に基づく各種情報を表示したりする。なお、操作パネル95は、住宅内に設置され、使用者(住宅の居住者)により燃料電池システム10の各種操作が行われたり、燃料電池システム10に関する各種情報を表示したりする。
制御装置90の制御部91は、燃料電池システム10に要求される要求電力により発電するように原燃料ガス供給装置40とエア供給装置45と改質水供給装置55とを制御する。また、要求電力によっては定格出力で定常運転するように運転制御する。具体的には、制御部91は、まず、上記要求電力と燃料電池スタック36の発電電力の偏差に基づいてフィードバック制御により燃料電池スタック36が出力すべき出力電流である電流指令Is*を設定する。なお、燃料電池スタック36の発電電力は、電流センサ81により検出されるスタック電流Isと電圧センサ82により検出されるスタック電圧Vsとの積であるDC出力Wdcとして算出することができる。次に、設定した電流指令Is*に基づいて目標ガス流量、目標エア流量および目標水量を設定する。続いて、制御装置90は、目標ガス流量で原燃料ガス供給装置40から燃料ガスが供給されるように、目標ガス流量と、流量センサ44で計測されるガス流量との偏差に基づくフィードバック制御によりガスポンプ43を制御する(原燃料ガス供給制御)。また、目標エア流量でエア供給装置45からエアが供給されるように、目標エア流量と、流量センサで計測されるエア流量との偏差に基づくフィードバック制御によりエアブロワ48を制御する(エア供給制御)。また、目標水量で改質水供給装置50から改質水が供給されるように、目標水量と、流量センサで計測される改質水量との偏差に基づくフィードバック制御により改質水ポンプ52を制御する(改質水供給制御)。
ここで、制御装置90の記憶部93には、燃料電池システム10で発電を行うことによる省エネルギのメリットがあるか否かの判定に用いられる判定用マップ93aが記憶されている。この判定用マップ93aの作成手順について説明する。図2は判定用マップ作成手順の一例を示すフローチャートであり、図3は判定用マップ93aの一例を示す説明図である。判定用マップ93aは、例えば燃料電池システム10の設計者などにより作成されて工場出荷時に記憶部93に記憶される。あるいは、燃料電池システム10が住宅等に設置された際や設置後に試運転された際、通常運転が開始された際などに、制御部91の作成処理により作成されたものが記憶部93に記憶されてもよい。
図2の判定用マップの作成手順では、まず、燃料電池スタック36のスタック電流Is[A]とスタック電圧Vs[V]との特性(IV特性)からスタック電流Isに対する燃料電池システム10(燃料電池ユニット20)の発電電力W(AC出力)を算出する(S100)。ここでは、まず、スタック電流Isに対する燃料電池スタック36の直流電力(DC出力Wdc)を、IV特性に基づくスタック電流Isとスタック電圧Vsとの積(Is×Vs)として算出する。そして、DC出力Wdc[W]と補機ロスAL[W]とパワコン変換効率kp[%]とに基づいて、次式(1)により燃料電池システム10のAC出力である発電電力W[W]を算出する。式(1)では、DC出力Wdcから、補機で消費される電力である補機ロスALを減じた値に、パワーコンディショナ80のAC/DC変換効率であるパワコン変換効率kpを乗じることで、発電電力Wを算出する。このため、発電電力Wは、劣化に伴う補機ロスALの増加やパワコン変換効率kpの低下が反映されたものとなる。なお、補機ロスALは、各補機の特性に基づいて劣化後の補機の消費電力として定められており、パワコン変換効率kpは、パワーコンディショナ80の特性に基づいて定められている。
W=(Wdc-AL)×kp ・・・(1)
ここで、図4は電圧ラインと電力ラインの一例を示す説明図である。図4では、横軸のスタック電流Isに対するスタック電圧Vs(右縦軸)の電圧ラインとして、燃料電池システム10の使用初期(劣化前)の初期電圧ライン(点線)と、燃料電池システム10の発電特性に基づいて劣化時に想定される末期電圧ライン(一点鎖線)とを示す。また、スタック電流Isに対する発電電力W(左縦軸)の電力ラインとして、初期電圧ラインに対応して導出される初期電力ライン(破線)と、末期電圧ラインに対応して導出される末期電力ライン(二点鎖線)とを示す。燃料電池システム10では、劣化が進行すると、スタック電流Isに対するスタック電圧Vsを示す運転ポイントやスタック電流Isに対する発電電力Wを示す運転ポイントが、初期電圧ライン上や初期電力ライン上ではなく末期電圧ライン上や末期電力ライン上を推移することになる。なお、運転ポイントが末期電圧ラインや末期電力ラインを下回る場合、燃料電池システム10の劣化の観点からは運転を停止することが好ましいが、運転を継続することは不可能ではない。
次に、スタック電流Isに対する燃料ガスの投入エネルギEtを算出する(S110)。ここでは、まず、スタック電流Isに対する燃料利用率Uf[%]を求める。燃料利用率Ufは、原燃料ガス供給装置40により燃料電池スタック36へ投入(供給)される燃料ガスのうち発電に利用される燃料ガスの割合であり、燃料電池ユニット20の特性によって定まり、例えばスタック電流Isの三次関数で表される。この燃料利用率Ufとスタック電流Isと定数αに基づいて、次式(2)により燃料ガスのガス流量Qg[L/min]を算出する。定数α[L/min・A]は、1Aのスタック電流Isの発電に必要な水素を供給するためのガス流量として、燃料ガスの組成や燃料電池ユニット20の特性によって定められている。そして、ガス流量Qgと燃料ガスの発熱量Hg[MJ/m3]とに基づいて、次式(3)により燃料ガスの投入エネルギEt[W]を算出する。なお、値60は、時間の単位を分から秒に換算する換算係数である。
Qg=Is×α/Uf ・・・(2)
Et=Qg×Hg/60 ・・・(3)
続いて、燃料電池システム10の排熱利用量Hoに基づいて排熱利用分のエネルギEhを算出する(S120)。排熱利用量Hoは、例えば燃料電池システム10で貯湯タンク70に回収されて給湯ユニット25に出湯される湯水の熱量として、次式(4)により算出することができる。式(4)では、貯湯タンク70から出湯される湯水の出湯温To[℃]から貯湯タンク70に供給される水の給水温Ti[℃]を減じた温度差(To−Ti)に、貯湯タンク70のタンク容量TC[L]と水の比熱Cw[kJ/(kg・℃)]と水の密度ρ(kg/L)と出湯回数N[回/日]とを乗じることにより、排熱利用量Hoを算出する。なお、出湯回数Nは、例えば値2[回/日]などとし、値24は[回/時]に換算する換算係数である。そして、この排熱利用量Hoから次式(5)により排熱利用分のエネルギEh[W]を算出する。なお、給湯効率kh[%]は、出湯管72の排熱ロスなどに基づいて定められており、値3600は、時間の単位を時から秒に換算する換算係数である。この排熱利用分のエネルギEhは、投入エネルギEtのうち出湯により利用されるエネルギ量となる。
Ho=(To-Ti)×Tc×Cw×ρ×N/24 ・・・(4)
Eh=Ho/(kh×3600) ・・・(5)
排熱利用分のエネルギEhを取得すると、この排熱利用分のエネルギEhを除いた発電寄与分のエネルギと商用電力系統の事業者の発電設備における発電効率kcとから、省エネルギのメリットが生じる燃料電池ユニット20の発電効率ksを、次式(6)により算出する。式(6)の左辺は、発電電力Wを燃料電池ユニット20の発電効率ksで除したエネルギ(投入エネルギに相当)から、排熱利用分のエネルギEhを減じることで、燃料電池システム10で発電電力Wの発電に実際に使用している発電寄与分のエネルギ量となる。また、式(6)の右辺は、発電電力Wを、事業者の発電設備における発電効率kcで除したエネルギ量となる。なお、発電効率kcは、事業者で定められた値である。発電電力Wを変化させながら式(6)が成立するように、発電電力Wに対する発電効率ksを収束計算により求める。これにより、発電寄与分のエネルギを用いて商用電力系統の事業者の発電設備で発電するよりも、燃料電池システム10で発電することで省エネルギのメリットが生じる最小の発電効率ksを導出することになる。こうして求めた発電電力Wと発電効率ksとに基づいて、両者の関係を示す近似式(ks=f(W))を設定する(S140)。図5は発電電力Wと発電効率ksの関係の一例を示す説明図である。近似式は、例えば、発電電力Wに対する発電効率ksを複数プロットし、各プロット点を通る近似線の式として、例えば発電電力Wの5次式などに設定される。
W/ks-Eh=W/kc ・・・(6)
次に、スタック電流Isに対し省エネルギのメリットが生じる下限電力Wmin[W]を、次式(7)により算出する(S150)。ここでは、スタック電流Isに対する発電電力Wとして、S100の式(1)で算出した発電電力Wと近似式(ks=f(W))とを用いて発電効率ksを求め、求めた発電効率ksにS110の式(3)で算出した投入エネルギEtを乗じることにより、下限電力Wmin(ks×Et)を算出する。式(1),(3)では、発電電力W,投入エネルギEtがスタック電流Isに対する値として算出されるから、スタック電流Isを変化させることで、複数のスタック電流Isに対する下限電力Wminをそれぞれ算出することができる。また、上述したように、発電効率ksは、省エネルギのメリットを発生させるための最小の発電効率である。このため、発電効率ksに投入エネルギEtを乗じた下限電力Wminは、複数のスタック電流Isのそれぞれにおいて省エネルギのメリットが生じる最小の発電電力として算出される。図4では、プロット点の図示は省略するが、スタック電流Isに対する下限電力Wminの関係を複数プロットし、各プロット点を通る近似線を下限電力ラインとして示す。下限電力ラインは、劣化によりスタック電流Isが小さくなるほど、下限電力Wminが小さくなるラインとして定められている。また、下限電力ラインは、末期電力ラインと交差しており、スタック電流Isが交点のスタック電流である交点電流Isp未満の小さな範囲では末期電力ラインが下限電力ラインを下回り、スタック電流Isが交点電流Isp以上の大きな範囲では下限電力ラインが末期電力ラインを上回っている。なお、スタック電流Isは、燃料電池システム10(燃料電池スタック36)の劣化の進行により小さくなる傾向にあるから、交点電流Isp未満の範囲は燃料電池システム10の劣化が進行した範囲といえる。また、このようにスタック電流Isが著しく小さくなると、適切な出力が得られにくかったり出力が不安定となることがある。なお、住宅に設置される燃料電池システム10の通常の使用で、交点電流Isp未満の範囲に到達するには比較的長期間を要するため、交点電流Isp未満の範囲で燃料電池スタック36が運転されることは殆どない。
Wmin=ks×Et ・・・(7)
こうしてスタック電流Isに対応する下限電力Wmin(下限電力ライン)を求めると、下限電力Wminに基づく判定用マップ93aを作成する。判定用マップ93aは、図4に示すように、スタック電流Isを入力値として横軸にとり、発電電力Wを出力値として縦軸にとったマップとして作成されている。本実施形態の判定用マップ93aでは、スタック電流Isが交点電流Isp以上の大きな範囲では、下限電力ライン上の発電電力(下限電力Wmin)が判定用の閾値として導出され、スタック電流Isが交点電流Isp未満の小さな範囲では、末期電力ライン上の発電電力が判定用の閾値として導出される。また、図中に斜線で示す領域が、省エネルギのメリットのない領域となる。こうして作成された判定用マップ93aが記憶部93に記憶されている。
次に、燃料電池システム10の運転中に行われる異常判定処理を説明する。図6は異常判定処理の一例を示すフローチャートである。この異常判定処理では、制御装置90の制御部91は、まず、電流センサ81からのスタック電流Isと電流センサ83からの出力電流Io、電圧センサ84からの出力電圧Voを取得し(S200)、取得したスタック電流Isが交点電流Isp以上であるか否かを判定する(S210)。制御部91は、スタック電流Isが交点電流Isp以上であると判定すると、判定用マップ93aの下限電力ラインから現在のスタック電流Isに対応する発電電力Wを閾値として導出し(S220)、その閾値と現在の発電電力Wとを比較する(S240)。即ち、S200で取得した現在のスタック電流Isを用いて判定用マップ93aの下限電力ラインから導出される発電電力Wと、S200で取得した現在の出力電流Ioと出力電圧Voとの積として算出される現在の発電電力Wとを比較する。
一方、制御部91は、S210でスタック電流Isが交点電流Isp未満であると判定すると、判定用マップ93aの末期電力ラインから現在のスタック電流Isに対応する発電電力Wを閾値として導出し(S230)、その閾値と現在の発電電力Wとを比較する(S240)。即ち、S200で取得した現在のスタック電流Isを用いて判定用マップ93aの末期電力ラインから導出される発電電力Wと、S200で取得した現在の出力電流Ioと出力電圧Voとの積として算出される現在の発電電力Wとを比較する。
続いて、制御部91は、S240の比較の結果、閾値よりも現在の発電電力Wが小さいか否かを判定する(S250)。閾値よりも現在の発電電力Wが小さいと判定すると、制御部91が備えるタイマTによる時間の計測中であるか否かを判定する(S260)。計測中でないと判定すると、タイマTによる時間の計測を開始し(S270)、計測中であると判定すると、S270をスキップする。そして、タイマTの計測時間が所定時間Tref以上となったか否かを判定する(S300)。計測時間が所定時間Tref以上となっていないと判定すると、S200に戻る。所定時間Trefは、例えば500分や600分などの数百分程度の時間に定めることができる。なお、異常の早期判定のために、所定時間Trefを数十分や百数十分程度の時間に定めてもよい。
また、制御部91は、S250で閾値よりも現在の発電電力Wが小さくない即ち現在の発電電力Wが閾値よりも大きいと判定すると、タイマTによる時間の計測中であるか否かを判定する(S280)。計測中でないと判定すると、S200に戻り、計測中であると判定すると、タイマTによる時間の計測を終了して(S290)、S200に戻る。S290では計時を終了したタイマTをリセットする。なお、タイマTによる時間の計測開始と計測終了とが頻繁に切り替わるハンチングを防止するため、タイマTによる時間の計測中は判定用マップ93aの下限電力ラインや末期電力ラインの発電電力に若干のマージンを加えた閾値を用いて、タイマTによる時間の計測を終了するものとしてもよい。
そして、タイマTによる時間の計測を終了することなく、発電電力Wが閾値よりも小さい状態が所定時間Trefに亘って継続すると、制御部91は、S300でタイマTの計測時間が所定時間Tref以上になったと判定する。この場合、制御部91は、事業者の発電設備で発電する場合に比べて、燃料電池システム10で発電するメリットがない(メリットが低下した)と判定し、燃料電池スタック36の運転停止を促す警告を操作パネル95に表示することで使用者に報知して(S310)、異常判定処理を終了する。即ち、燃料電池システム10で発電するよりも、事業者の発電設備で発電した電力を購入した方が使用者にメリットがあるため、燃料電池スタック36の運転停止を促すのである。
以上説明した燃料電池システム10は、事業者の発電設備で発電するよりも燃料電池システム10で発電することで省エネルギのメリットがあるか否かの分岐として定められた閾値を用いて、メリットの有無の判定を燃料電池スタック36の運転中に行う。また、メリットがないと判定すると燃料電池スタック36の運転を停止させるための警告を報知する。これにより、診断専用の運転パターンで運転しなくても省エネルギのメリットの有無を判定することができる。また、閾値としては、判定用マップ作成手順において、投入エネルギから排熱利用分のエネルギEhを除いた発電寄与分のエネルギと事業者の発電効率kcから、省エネルギのメリットがある発電効率ksと発電電力Wとの関係に基づいて定められる下限電力Wminが用いられる。このため、排熱利用分のエネルギEhを反映させて、省エネルギのメリットをより適切に判定することができる。
また、スタック電流Isに対する閾値(下限電力Wmin)が定められた判定用マップ93aが記憶部93に記憶されており、運転中のスタック電流Isに対応する閾値を判定用マップ93aから導出して判定を行う。このため、閾値を速やかに導出して判定を行うことができるから、処理負担が増加するのを抑えることができる。
また、判定用マップ93aでは、劣化時に想定される発電電力Wとスタック電流Isとの対応関係を示す末期電力ライン(劣化想定ライン)が、スタック電流Isと下限電力Wminとの対応関係を示す下限電力ライン(メリット分岐ライン)を下回る範囲が定められ、両ラインの交点電流Ispが定められている。スタック電流Isが交点電流Isp以上の場合には、下限電力Wminを閾値として判定を行い、スタック電流Isが交点電流Isp未満の場合には、末期電力ラインから導出した発電電力Wを閾値として判定を行う。このため、下限電力ラインが末期電力ラインを下回る範囲内では、発電電力Wが末期電力ラインを下回っていても、発電電力Wが下限電力ラインに基づく閾値を上回って省エネルギのメリットがあると判定される限り、燃料電池スタック36を運転することができる。即ち、末期電力ラインではなく、排熱利用分を考慮した下限電力ラインを用いて判定することで、燃料電池システム10の劣化が進んでいても、排熱利用分を含めた省エネルギのメリットを使用者にもたらすことができる。一方、末期電力ラインが下限電力ラインを下回る範囲内でも、末期電力ラインに基づく閾値を用いて判定を行うことで、メリットがなく劣化が進行した状態で燃料電池スタック36の運転を停止させることができる。
また、発電電力Wが閾値よりも小さい状態を所定時間Tref以上継続した場合に、運転停止を促す警告(所定処理)を行うから、住宅の電気機器の負荷が変動したり発電電力Wが変動したりすることで一時的に閾値を下回った状態を除いて、省エネルギのメリットがない状態を適切に判定することができる。
上述した実施形態では、判定用マップ93aにおいて交点電流Isp未満では末期電力ラインから閾値を導出したが、これに限られるものではない。例えば、スタック電流Isが交点電流Isp未満の場合には、メリットの有無の判定を省略してもよい。その場合、図6のS230の処理を省略し、S210でスタック電流Isが交点電流Isp未満と判定した場合には、S200に戻るものなどとしてもよい。また、S210でスタック電流Isが交点電流Isp未満と判定した場合には、劣化が比較的進行しているから、S260に進んでもよい。あるいは、スタック電流Isが交点電流Isp未満であるか否かに拘わらず、常に判定用マップ93aの下限電力ラインから閾値を導出して、メリットの有無の判定を行うものとしてもよい。
実施形態では、発電電力Wが閾値よりも小さい状態が所定時間Trefに亘って継続した場合に、運転停止を促す警告を報知したが、これに限られず、燃料電池スタック36を強制的に運転停止させるなど、燃料電池スタック36の運転を停止させるための所定処理を行うものであればよい。また、発電電力Wが閾値よりも小さいと判定した場合に、直ちに警告を報知するなどの所定処理を行ってもよい。この場合、発電電力Wが閾値よりも小さい状態が所定時間Trefに亘って継続した場合に強制的に運転停止させてもよい。
実施形態では、判定用マップ93aを用いて閾値を導出したが、これに限られず、燃料電池スタック36の運転中に取得した値(入力値)に基づいて、判定用マップを用いることなく、閾値を算出することにより導出してもよい。この場合、判定用マップ93aが記憶部93に記憶されなくてもよい。
実施形態では、判定用マップ93aが、横軸にスタック電流Isをとり、縦軸に発電電力Wをとったが、これに限られず、横軸に投入エネルギEtをとってもよいし、縦軸にスタック電圧Vsをとってもよい。図7は変形例の判定用マップ193aを示す説明図である。変形例の判定用マップ193aでは、横軸に入力値としてスタック電流Isをとり、縦軸に判定値としてスタック電圧Vsをとる。判定用マップ193aは、図2に示した判定用マップ作成手順の一部を変更することで作成される。例えば、S150で算出した下限電力Wminを、次式(8)によりスタック電圧Vsの下限電圧である下限電圧Vsminに変換する。式(8)では、下限電力Wminをパワコン変換効率kpで除して補機ロスALを加えた値を、スタック電流Isで除することにより下限電圧Vsminを算出する。このため、下限電圧Vsminは、補機ロスALの増加やパワコン変換効率kpの低下などが反映されたものとなる。
Vsmin=(Wmin/kp+AL)/Is ・・・(8)
また、上述したように、下限電力Wminは複数のスタック電流Isに対する値が算出されるから、下限電圧Vsminも複数のスタック電流Isに対する値を算出できる。図7では、プロット点の図示は省略するが、スタック電流Isに対する下限電圧Vsminの関係を複数プロットし、各プロット点を通る近似線を下限電圧ラインとして示す。下限電圧ラインは、末期電圧ラインと交差しており、スタック電流Isが交点電流Isp’未満の小さな範囲では末期電圧ラインが下限電圧ラインを下回り、スタック電流Isが交点電流Isp’以上の大きな範囲では下限電圧ラインが末期電圧ラインを上回る関係にある。このため、実施形態と同様に、スタック電流Isが交点電流Isp’未満では末期電圧ラインから導出されるスタック電圧Vsを閾値とし、スタック電流Isが交点電流Isp’以上では下限電圧ラインから導出されるスタック電圧Vs(下限電圧Vsmin)を閾値とする。したがって、斜線部分がメリットがないと判定する領域となる。
図8は変形例の異常判定処理を示すフローチャートである。変形例では、実施形態と同じ処理には同じステップ番号を付して説明を省略する。この異常判定処理では、制御部91は、まず、電流センサ81からのスタック電流Isと電圧センサ82からのスタック電圧Vsを取得して(S200b)、スタック電流Isが交点電流Isp’以上であるか否かを判定する(S210b)。交点電流Isp’以上であると判定すると、判定用マップ193aの下限電圧ラインから現在のスタック電流Isに対応するスタック電圧Vsを閾値として導出し(S220b)、その閾値と現在のスタック電圧Vsとを比較する(S240b)。一方、制御部91は、S210bで交点電流Isp’未満であると判定すると、判定用マップ193aの末期電圧ラインから現在のスタック電流Isに対応するスタック電圧Vsを閾値として導出し(S230b)、その閾値と現在のスタック電圧Vsとを比較する(S240b)。そして、制御部91は、S250bで現在のスタック電圧Vsが閾値よりも小さいと判定すると、S260に進み、現在のスタック電圧Vsが閾値よりも小さくないと判定すると、S280に進む。このため、スタック電圧Vsを閾値とする変形例でも、実施形態と同様に、メリットの有無を適切に判定することができる。
実施形態では、発電電力W(主に下限電力Wmin)を閾値とし、スタック電流Isに対する発電電力Wを判定値として、閾値と判定値とを比較することによりメリットがあるか否かを判定した。また、変形例では、スタック電圧Vs(主に下限電圧Vsmin)を閾値とし、スタック電流Isに対するスタック電圧Vsを判定値として、閾値と判定値とを比較することによりメリットがあるか否かを判定した。これらに限られず、運転中の燃料電池スタック36の発電に関する判定値を閾値と比較してメリットがあるか否かを判定すればよい。例えば、省エネルギのメリットがあるか否かの分岐となる発電効率を閾値とし、運転中に導出した発電効率と比較してメリットがあるか否かを判定してもよい。また、スタック電流Is(入力値)に対する判定値(出力値)や閾値とするものに限られず、投入エネルギEt(入力値)に対する判定値(出力値)や閾値としてもよい。これらの電流や電圧、発電電力、エネルギなどは相互に変換可能であるため、適宜選択すればよい。
実施形態では、排熱利用量Hoを、例えば燃料電池システム10で貯湯タンク70に回収されて給湯ユニット25に出湯される湯水の熱量として、式(4)により算出したが、これに限られるものではない。例えば、運転中に給水温センサ74からの給水温Tiや出湯温センサ75からの出湯温To、出湯量センサ76からの湯水の流量Fを取得し、出湯温Toと給水温Tiとの温度差と、湯水の流量Fとに基づく排熱利用量Hoを次式(9)により算出する。このように運転中の実測値に基づいて排熱利用量Hoを算出することで、排熱利用状況に応じた排熱利用分のエネルギEhを導出することができる。このため、閾値に実際の排熱利用状況を反映させるから、省エネルギのメリットの低下をさらに適切に判定することができる。なお、出湯量センサ76に代えて、給湯ユニット25が備える流量センサにより検出された流量を取得して用いてもよい。また、排熱利用量Hoだけでなく、ガス流量Qgについても流量センサ44により検出されたものを用いたり、そのガス流量Qgから算出された投入エネルギEtを用いたりしてもよい。
Ho=(To-Ti)×F×Cw×ρ ・・・(9)
実施形態では、発電電力Wを閾値として省エネルギのメリットがあるか否かを判定したが、これに限られるものではない。例えば、電力量に電力料金の単価を乗じたり、ガス供給(投入)流量にガス料金の単価を乗じたりすることによりコストを導出し、コストに基づいて省エネルギのメリットがあるか否かを判定してもよい。即ち、メリットがあるか否かの分岐となるコストを閾値とし、運転中に導出した現在のコストと比較することで、省エネルギ化による経済性のメリットがあるか否かを判定してもよい。なお、電気料金の単価やガス料金の単価は、記憶部93に記憶されたものを用いてもよいし、使用者が操作パネル95から入力したものを用いてもよいし、制御装置90が通信部92により接続されるネットワークなどを介して電力会社やガス会社から取得したものを用いてもよい。
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、燃料電池スタック36が「燃料電池」に相当し、パワーコンディショナ80が「電力変換装置」に相当し、排熱回収装置60と貯湯タンク70(給水管71や出湯管72、混合弁73を含む)とが「排熱出力装置」に相当し、制御装置90の制御部91が「制御部」に相当する。また、記憶部93が「記憶部」に相当する。また、貯湯タンク70が「貯湯タンク」に相当し、給水温センサ74が「給水温センサ」に相当し、出湯温センサ75が「出湯温センサ」に相当し、出湯量センサ76が「出湯量センサ」に相当する。
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明は、燃料電池システムの製造産業などに利用可能である。
2 商用電力系統、4 電力ライン、10 燃料電池システム、20 燃料電池ユニット、25 給湯ユニット、26 ガスバーナ、30 発電モジュール、31 モジュールケース、32 気化器、34 改質器、36 燃料電池スタック、38 燃焼部、40 原燃料ガス供給装置、41 原燃料ガス供給管、42 ガス供給弁、43 ガスポンプ、44 流量センサ、45 エア供給装置、46 エア供給管、47 フィルタ、48 エアブロワ、50 改質水供給装置、51 改質水供給管、52 改質水ポンプ、53 改質水タンク、60 排熱回収装置、61 循環配管、62 循環ポンプ、63 熱交換器、64 凝縮水供給管、65 排気ガス排出管、70 貯湯タンク、71 給水管、72 出湯管、73 混合弁、74 給水温センサ、75 出湯温センサ、76 出湯量センサ、80 パワーコンディショナ、81 スタック電流センサ、82 スタック電圧センサ、83 出力電流センサ、84 出力電圧センサ、90 制御装置、91 制御部、92 通信部、93 記憶部、93a,193a 判定用マップ、95 操作パネル。

Claims (6)

  1. 燃料の投入を受けて発電する燃料電池と、
    前記燃料電池で発電された直流電力を電力系統と連系可能な交流電力に変換して出力する電力変換装置と、
    前記燃料電池の発電に伴う排熱を回収し排熱利用のために外部に出力する排熱出力装置と、
    前記燃料電池と前記電力変換装置と前記排熱出力装置とを制御する制御部と、
    を備える燃料電池システムであって、
    前記制御部は、前記燃料の投入エネルギから排熱利用分のエネルギを除いた発電寄与分のエネルギを用いて前記電力系統の事業者の発電設備で発電するよりも、前記投入エネルギを用いて前記燃料電池が発電し前記電力変換装置から出力することで省エネルギのメリットがあるか否かの判定を所定の閾値を用いて前記燃料電池の運転中に行い、前記メリットがないと判定したことに基づいて前記燃料電池の運転を停止させるための所定処理を行う
    燃料電池システム。
  2. 請求項1に記載の燃料電池システムであって、
    前記燃料電池の出力電流または前記投入エネルギを入力値とし、前記燃料電池システムの発電電力または前記燃料電池の出力電圧を出力値として、前記入力値に対応する前記出力値を前記閾値として関係付けた判定用マップを記憶する記憶部を備え、
    前記制御部は、前記燃料電池の運転中に前記入力値と前記出力値とを取得し、取得した前記入力値に対応する前記閾値を前記判定用マップから導出して前記判定を行い、取得した前記出力値が前記閾値よりも小さい場合に前記メリットがないと判定する
    燃料電池システム。
  3. 請求項2に記載の燃料電池システムであって、
    前記判定用マップでは、前記入力値を横軸にとり前記出力値を縦軸にとり、前記入力値と前記閾値との対応関係を示すメリット分岐ラインと、前記燃料電池システムの発電特性に基づいて劣化時に想定される前記出力値と前記入力値との対応関係を示す劣化想定ラインとが定められると共に、前記劣化想定ラインが前記メリット分岐ラインを下回る範囲が定められており、
    前記制御部は、前記燃料電池の運転中に取得した前記入力値が前記範囲外の場合には、前記入力値に対応する前記閾値を前記メリット分岐ラインから導出して前記判定を行い、前記燃料電池の運転中に取得した前記入力値が前記範囲内の場合には、前記入力値に対応する前記出力値を前記劣化想定ラインから導出し、導出した前記出力値を前記閾値として用いて前記判定を行う
    燃料電池システム。
  4. 請求項2に記載の燃料電池システムであって、
    前記判定用マップでは、前記入力値を横軸にとり前記出力値を縦軸にとり、前記入力値と前記閾値との対応関係を示すメリット分岐ラインと、前記燃料電池システムの発電特性に基づいて劣化時に想定される前記出力値と前記入力値との対応関係を示す劣化想定ラインとが定められると共に、前記劣化想定ラインが前記メリット分岐ラインを下回る範囲が定められており、
    前記制御部は、前記燃料電池の運転中に取得した前記入力値が前記範囲外の場合には、前記入力値に対応する前記閾値を前記メリット分岐ラインから導出して前記判定を行い、前記燃料電池の運転中に取得した前記入力値が前記範囲内の場合には、前記判定を省略する
    燃料電池システム。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
    前記排熱出力装置は、排熱を回収し湯水として蓄える貯湯タンクと、前記貯湯タンクに給水される水の温度を検出する給水温センサと、前記貯湯タンクから出湯される湯水の温度を検出する出湯温センサと、前記貯湯タンクから出湯される湯水の量を検出する出湯量センサと、を備え、
    前記制御部は、前記排熱利用分のエネルギとして、前記出湯温センサにより検出される湯水の温度と前記給水温センサにより検出される水の温度との温度差と、前記出湯量センサにより検出される湯水の量とに基づく熱量から導出されるエネルギを用いる
    燃料電池システム。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
    前記制御部は、前記メリットがないことを所定時間に亘り継続して判定した場合に、前記所定処理を行う
    燃料電池システム。
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