JP2021098882A - 導電性パターン付構造体の製造方法 - Google Patents

導電性パターン付構造体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】簡便な製造工程であり、かつ層間密着性が良好な導電性パターン付構造体を形成できる、導電性パターン付構造体の製造方法を提供する。【解決手段】本発明の一態様は、平均粒子径が1nm以上100nm以下である酸化銅含有粒子とヒドラジンとを含む分散体を基材に印刷して塗布膜を得る塗布膜形成工程と、前記塗布膜を乾燥する乾燥工程と、前記乾燥工程後の塗布膜に無電解めっきを行うめっき工程又は前記乾燥工程後の塗布膜を還元液に浸漬し銅含有膜を得る湿式還元工程とを含む、導電性パターン付構造体の製造方法を提供する。一態様において、当該方法は、銅含有膜にめっきを行う工程を更に含む。【選択図】図1

Description

本発明は、導電性パターン付構造体の製造方法に関する。
回路基板は、基材上に導電性の配線を施した構造を有する。回路基板の製造方法は、一般的に、次の通りである。まず、金属箔を貼り合せた基材上にフォトレジストを塗布する。次に、フォトレジストを露光及び現像して所望の回路パターンのネガ状の形状を得る。次に、フォトレジストに被覆されていない部分の金属箔をケミカルエッチングにより除去してパターンを形成する。これにより、高性能の回路基板を製造することができる。しかしながら、従来の方法は、工程数が多く、煩雑であると共に、フォトレジスト材料を要する等の欠点がある。
これに対し、金属微粒子及び金属酸化物微粒子からなる群から選択された微粒子を分散させた分散体(以下、「ペースト材料」ともいう)で基材上に所望の配線パターンを直接印刷する直接印刷技術が注目されている。この技術は、工程数が少なく、フォトレジスト材料を用いる必要がない等、きわめて生産性が高い。
直接印刷技術においては、基材(支持体として)上に、上記ペースト材料を適用、次いで焼成することで、基材上に金属質膜(例えば、銅粒子及び/又は銅酸化物粒子を用いた場合には銅含有膜)を形成できる。従来、支持体と金属質膜との密着性を向上させる目的で、基材上に、下地層として酸化ケイ素のコロイダルシリカを設けることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1:国際公開第2016/031860号
しかしながら、特許文献1に記載されるような、下地層に使用されるコロイダルシリカは、金属に対する密着性に優れるが、樹脂との密着性が悪い。このため、基材の材質が樹脂である場合、薬剤の侵入及び熱膨張により下地層と基材との間で剥離が生じ、製品の信頼性が低くなる場合がある。また、コロイダルシリカを基材上に塗布する工程が必要であることによる工程数増加という欠点もある。また、銅酸化物粒子を用いた場合は、導電性を得るために還元焼成工程が必要となるため、使用できる基材が限定されること、及び還元性ガスが必要となって高コストになることが欠点である。
本発明はかかる状況に鑑み、簡便な製造工程であり、かつ層間密着性が良好な導電性パターン付構造体を形成できる、導電性パターン付構造体の製造方法を提供することを目的とする。
本開示は、以下の態様を包含する。
[1] 平均粒子径が1nm以上100nm以下である酸化銅含有粒子とヒドラジンとを含む分散体を基材に印刷して塗布膜を得る塗布膜形成工程と、
前記塗布膜を乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥工程後の塗布膜に無電解めっきを行うめっき工程と
を含む、導電性パターン付構造体の製造方法。
[2] 平均粒子径が1nm以上100nm以下である酸化銅含有粒子とヒドラジンとを含む分散体を基材に印刷して塗布膜を得る塗布膜形成工程と、
前記塗布膜を乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥工程後の塗布膜を還元液に浸漬し、銅含有膜を得る湿式還元工程と、
を含む、導電性パターン付構造体の製造方法。
[3] 平均粒子径が1nm以上100nm以下である酸化銅含有粒子とヒドラジンとを含む分散体を基材に印刷して塗布膜を得る塗布膜形成工程と、
前記塗布膜を乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥工程後の塗布膜を還元液に浸漬し、銅含有膜を得る湿式還元工程と、
前記銅含有膜を脱脂する脱脂工程と、
前記脱脂工程後の銅含有膜にめっきを行って、前記銅含有膜とめっき層とを含む導電性層を得るめっき工程と、
を含む、導電性パターン付構造体の製造方法。
[4] 平均粒子径が1nm以上100nm以下である酸化銅含有粒子とヒドラジンとを含む分散体を基材に印刷して塗布膜を得る塗布膜形成工程と、
前記塗布膜を乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥工程後の塗布膜を還元液に浸漬し、銅含有膜を得る湿式還元工程と、
前記銅含有膜に無電解めっきを行って、前記銅含有膜とめっき層とを含む導電性層を得るめっき工程と、
を含む、導電性パターン付構造体の製造方法。
[5] 前記湿式還元工程と前記めっき工程とを同時に行う、上記態様4に記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
[6] アミノ基を有する化合物を含む脱脂液に前記銅含有膜を浸漬することによって前記脱脂を行う、上記態様3に記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
[7] 前記還元液が、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)グリシン及び/又はクエン酸を含む、上記態様2〜6のいずれかに記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
[8] 前記基材が密着層を有する、上記態様1〜7のいずれかに記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
[9] 前記塗布膜形成工程は、インクジェット印刷によって行う、上記態様1〜8のいずれかに記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
[10] 前記分散体は、リン酸エステルを含む、上記態様1〜9のいずれかに記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
[11] 前記分散体は、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、及び1−オクタノールからなる群から選択される少なくとも1つを含む、上記態様1〜10のいずれかに記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
本発明によれば、簡便な製造工程であり、かつ層間密着性が良好な導電性パターン付構造体を形成できる、導電性パターン付構造体の製造方法を提供することができる。
本発明の一態様で使用できる分散体における酸化銅とリン酸エステル塩との関係を示す断面模式図である。 本発明の一態様に係る導電性パターン付構造体の製造手順を示す断面模式図である。 本発明の一態様に係る導電性パターン付構造体の製造手順を示す断面模式図である。
以下、本発明の実施形態を例示するが、本発明は本実施の形態に限定されるものではない。
本発明の一態様は、導電性パターン付構造体の製造方法を提供する。本発明の一態様において、当該方法は、酸化銅含有粒子とヒドラジンとを含む分散体を基材に印刷して塗布膜を得る塗布膜形成工程と、該塗布膜を乾燥する乾燥工程と、該乾燥工程後の塗布膜(本開示で、乾燥膜ともいう。)に無電解めっきを行う工程とを含む。
また、別の本発明の一態様において、当該方法は、酸化銅含有粒子を含む分散体を基材に印刷して塗布膜を得る塗布膜形成工程と、該塗布膜を乾燥する乾燥工程と、該乾燥工程後の塗布膜を還元液に浸漬して、銅含有膜を得る湿式還元工程とを含む。
また、別の本発明の一態様において、当該方法は、酸化銅含有粒子を含む分散体を基材に印刷して塗布膜を得る塗布膜形成工程と、該塗布膜を乾燥する乾燥工程と、該乾燥工程後の塗布膜を還元液に浸漬して、銅含有膜を得る湿式還元工程と、該銅含有膜を脱脂する脱脂工程と、該脱脂工程後の銅含有膜にめっきを行って、銅含有膜とめっき層とを含む導電性層を形成するめっき工程とを含む。
また、さらに別の本発明の一態様において、当該方法は、酸化銅含有粒子を含む分散体を基材に印刷して塗布膜を得る塗布膜形成工程と、該塗布膜を乾燥する乾燥工程と、該乾燥工程後の塗布膜を還元液に浸漬して、銅含有膜を得る湿式還元工程と、該湿式還元工程後の銅含有膜に無電解めっきを行って、銅含有膜とめっき層とを含む導電性層を形成するめっき工程とを含む。
上記方法によれば、印刷によって形成した塗布膜を還元液によって湿式還元することにより、及び/又は当該塗布膜上にめっき層を形成することにより、焼成を必要とせずに、所望のパターンで還元銅層及び/又はめっき層を形成できるため、従来のフォトレジストを用いた手法と比較し、生産性を向上させることができる。また、湿式還元によって生成した還元銅は表面積が大きく、銅含有膜に対するめっきの成長速度を速くすることができる。また、一態様においては、めっきによって、空隙率が比較的低い領域を形成できるため、導電性パターン付構造体の抵抗を低くすることができる。具体的な方法は後述するが、本実施形態の方法によれば、湿式法によって還元銅層及び/又はめっき層を生成できるため、従来のような還元性ガスや高温が不要となる。
以下、各工程の好適例について説明する。
<塗布膜形成工程>
本工程では、酸化銅含有粒子を含む分散体(本開示で、酸化銅インクともいう。)を基材に塗布して、塗布膜を得る。
[酸化銅含有粒子を含む分散体]
分散体(酸化銅インク)は、酸化銅含有粒子とヒドラジンとを含む。酸化銅含有粒子は、典型的には酸化銅からなるが、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含み得る。分散体は、分散媒、分散剤、及び/又は、ヒドラジン以外の還元剤を更に含んでもかまわない。
(酸化銅)
酸化銅としては、酸化第一銅(Cu2O)及び酸化第二銅(CuO)が挙げられるが、酸化第一銅が好ましい。酸化第一銅は、金属酸化物の中でも還元が容易であり、微粒子形状での湿式還元が容易であり、価格的にも銅であるがゆえに銀等の貴金属類と比較し安価であり、マイグレーションが生じ難い点で有利である、酸化銅としては、市販品又は合成品を用いてよい。
例えば、酸化第一銅の合成法としては、次の方法が挙げられる。
(1)ポリオール溶剤中に、水と銅アセチルアセトナト錯体を加え、いったん有機銅化合物を加熱溶解させ、次に、反応に必要な水を後添加し、さらに昇温して有機銅の還元温度で加熱して加熱還元する方法。
(2)有機銅化合物(例えば銅−N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン錯体)を、ヘキサデシルアミン等の保護剤存在下、不活性雰囲気中で、300℃程度の高温で加熱する方法。
(3)水溶液に溶解した銅塩をヒドラジンで還元する方法。
この中では(3)の方法は操作が簡便で、かつ、平均粒子径の小さい酸化第一銅が得られるので好ましい。
酸化第二銅の合成方法としては、以下の方法が挙げられる。
(1)塩化第二銅又は硫酸銅の水溶液に水酸化ナトリウムを加えて水酸化銅を生成させた後、加熱する方法。
(2)硝酸銅、硫酸銅、炭酸銅、水酸化銅等を空気中で600℃の温度に加熱して熱分解する方法。
この中で(1)の方法は粒子径が小さい酸化第二銅が得られるので好ましい。
合成終了後、生成物溶液と酸化銅との分離は、遠心分離等の既知の方法を用いて行う。得られた酸化銅に、後述の分散媒、及び任意に後述の分散剤を加え、ホモジナイザー等既知の方法で攪拌し分散させる。分散媒によっては酸化銅が分散し難く分散が不充分な場合があるが、このような場合は、一例として、酸化銅が分散しやすいアルコール類(例えばブタノール等)を分散媒として用いて酸化銅を分散させた後、所望の分散媒への置換と所望の濃度への濃縮を行うことで、酸化銅を所望の分散媒に良好に分散させることができる。方法の一例として、UF膜による濃縮、適切な分散媒によって希釈及び濃縮を繰り返す方法、等が挙げられる。このようにして得られた酸化銅分散体が、印刷に用いられる。
一態様において、酸化銅は微粒子状であり、平均粒子径は1nm以上、100nm以下である。その平均粒子径は、3nm以上、50nm以下であることが好ましく、5nm以上、40nm以下であることがより好ましい。ここで平均粒子径とは、分散体中での分散時の粒子径であり、大塚電子製FPAR−1000を用いてキュムラント法によって測定したときの値である。すなわち、平均粒子径は、一次粒子径とは限らず、二次粒子径である場合もある。平均粒子径が100nm以下の場合、低温でのパターン形成が可能となり、基材の汎用性が広がる点、及び、基材上に微細パターンを形成し易い傾向がある点で好ましい。また、1nm以上の場合、分散体中での酸化銅含有粒子の分散安定性が良好で、分散体の長期保管安定性が良好である点、及び、均一な薄膜を作製できる点で好ましい。一態様において、分散体中の粒子は実質的に酸化銅含有粒子のみである。この場合、分散体について測定した平均粒子径の値を酸化銅の平均粒子径とみなすことができる。
分散体100質量%中の酸化銅の質量比率は、好ましくは、5質量%以上、又は10質量%以上、又は15質量%であり、好ましくは、60質量%以下、又は55質量%以下、又は50質量%以下である。
(分散媒)
分散媒は、酸化銅含有粒子を分散させることができるものである。一態様において、分散媒は、分散剤を溶解させることができる。酸化銅インクを用いて導電性パターンを形成するという観点から、分散媒の揮発性が作業性に影響を与える。したがって、分散媒は、導電性パターンの形成方法、例えば塗布の方式(特に印刷)に適するものであることが好ましい。すなわち、分散媒は分散性と印刷の作業性とに合わせて選択することが好ましい。
分散媒としては、アルコール類(1価アルコール及び多価アルコール(例えばグリコール))、アルコール(例えばグリコール)のエーテル類、アルコール(例えばグリコール)のエステル類等を使用できる。分散媒の具体例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2−ペンタンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、トリエチレングリコール、トリ−1,2−プロピレングリコール、グリセロール、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、2−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、2−エチルブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよく、塗布方式に応じ、蒸発性、塗布機材、被塗布基材の耐溶剤性等を考慮し選択する。乾燥が遅く、連続印刷時にインクの凝集がない点で、分散体は、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、及び1−オクタノールからなる群から選択される少なくとも1つを含むことが特に好ましい。
分散媒の沸点は、印刷連続性の向上という点では高い方が好ましく、例えば、好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。一方、上記沸点は、分散媒としての機能を良好に得る観点から、好ましくは400℃以下、より好ましくは300℃以下、さらに好ましくは250℃以下である。
分散媒の含有量は、分散体全体の中で30質量%以上、95質量%以下が好ましく、40質量%以上、95質量%以下がさらに好ましく、50質量%以上、90質量%以下が最も好ましい。
(分散剤)
分散剤としては、酸化銅を分散媒中に分散させることができる化合物を使用できる。分散剤の数平均分子量は、300〜300,000、又は350〜200,000、又は400〜150,000であることが好ましい。なお本開示の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用い標準ポリスチレン換算で求められる値である。数平均分子量が300以上であると、絶縁性に優れ、分散体の分散安定性への寄与も大きい傾向があり、300,000以下であると、取扱い性の点で好ましい。分散剤は、酸化銅に対する親和性を有する基を有していることが好ましく、この観点から、リン含有有機化合物が好ましく、リン酸エステルがより好ましく、ポリマーのリン酸エステルが更に好ましい。ポリマーのリン酸エステルとして、例えば、下記化学式(1):
Figure 2021098882
(式中、lは1〜10000の整数であり、mは1〜10000の整数であり、そしてnは1〜10000の整数である。)
で示される構造は、酸化銅、特に酸化第一銅への吸着性、及び基材への密着性に優れるため、好ましい。
化学式(1)中、lは、より好ましくは1〜5000、更に好ましくは1〜3000である。
化学式(1)中、mは、より好ましくは1〜5000、更に好ましくは1〜3000である。
化学式(1)中、nは、より好ましくは1〜5000、更に好ましくは1〜3000である。
一態様において、リン含有有機物の分解温度は、600℃以下であることが好ましく、400℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。分解温度は、分散体の分散安定性向上効果に優れる分散剤の選定が容易である観点から、50℃以上、又は80℃以上、又は100℃以上であってもよい。一態様において、リン含有有機物の沸点は、300℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。沸点は、30℃以上、又は50℃以上、又は80℃以上であってよい。本開示で、分解温度は、熱重量示差熱分析法で測定される値である。
一態様において、リン含有有機物は、湿式還元を行う場合に当該湿式還元を均一に進行させ、又は、湿式還元を使わず直接めっきを行う場合に塗布膜及びめっき層の剥がれが生じ難い点で好ましい。
分散剤としては公知のものを用いてもよい。例えば、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、不飽和ポリカルボン酸ポリアミノアマイド、ポリアミノアマイドのポリカルボン酸塩、長鎖ポリアミノアマイドと酸ポリマーの塩等の塩基性基を有するポリマーが挙げられる。また、アクリル系(コ)ポリマー、変性ポリエステル酸、ポリエーテルエステル酸、ポリエーテル系カルボン酸、ポリカルボン酸等の高分子のアルキルアンモニウム塩、アミン塩、アミドアミン塩等が挙げられる。このような分散剤としては、市販されているものを使用することもできる。
上記市販品としては、例えば、DISPERBYK(登録商標)―101、DISPERBYK―102、DISPERBYK−110、DISPERBYK―111、DISPERBYK―112、DISPERBYK−118、DISPERBYK―130、DISPERBYK―140、DISPERBYK−142、DISPERBYK―145、DISPERBYK―160、DISPERBYK―161、DISPERBYK―162、DISPERBYK―163、DISPERBYK―2155、DISPERBYK―2163、DISPERBYK―2164、DISPERBYK―180、DISPERBYK―2000、DISPERBYK―2025、DISPERBYK―2163、DISPERBYK―2164、BYK―9076、BYK―9077、TERRA−204、TERRA−U(以上ビックケミー社製)、フローレンDOPA−15B、フローレンDOPA−15BHFS、フローレンDOPA−22、フローレンDOPA−33、フローレンDOPA−44、フローレンDOPA−17HF、フローレンTG−662C、フローレンKTG−2400(以上共栄社化学社製)、ED−117、ED−118、ED−212、ED−213、ED−214、ED−216、ED−350、ED−360(以上楠本化成社製)、プライサーフM208F、プライサーフDBS(以上第一工業製薬製)等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
分散剤の酸価(mgKOH/g)は、好ましくは、20以上、130以下、より好ましくは30以上、100以下である。酸価が上記範囲である場合、分散体の分散安定性が良好であり好ましい。特に平均粒子径が小さい酸化銅の場合、上記範囲の酸価が有効である。具体的には、ビックケミー社製「DISPERBYK―102」(酸価101)、「DISPERBYK−140」(酸価73)、「DISPERBYK−142」(酸価46)、「DISPERBYK−145」(酸価76)、「DISPERBYK−118」(酸価36)、「DISPERBYK−180」(酸価94)等が好ましく挙げられる。
また、分散剤のアミン価(mgKOH/g)と酸価との差([アミン価]−[酸価])は、−50以上0以下であることが好ましい。アミン価は、遊離塩基と遊離塩基由来部位との総量を示すものであり、酸価は、遊離脂肪酸と遊離脂肪酸由来部位との総量を示すものである。アミン価及び酸価は、それぞれ、JIS K 7700又はASTM D2074に準拠した方法で測定する。[アミン価]−[酸価]の値が−50以上0以下である場合、分散体の分散安定性が良好であり好ましい。[アミン価]−[酸価]の値は、より好ましくは−40以上0以下であり、さらに好ましくは−20以上0以下である。
分散剤の含有量は、酸化銅の量に比例させ、要求される分散安定性を考慮し調整するのがよい。分散体中の酸化銅に対する分散剤の質量比率(分散剤質量/酸化銅質量)は、0.0050以上0.30以下であることが好ましく、より好ましくは0.050以上0.25以下であり、さらに好ましくは0.10以上0.23以下である。分散剤の量は分散体の分散安定性に影響し、量が少ないと酸化銅が凝集しやすく、多いと分散体の分散安定性が向上する傾向がある。但し、分散体における分散剤の含有率を35質量%以下にすると、湿式還元工程後に得られる銅含有膜において分散剤由来の残渣の影響を抑え、導電性を向上できる。一態様において、分散体100質量%中の分散剤の量は、好ましくは、0.5質量%以上、又は0.8質量%以上、又は1.0質量%以上であり、好ましくは、35質量%以下、又は 30質量%以下、又は25質量%以下である。
(ヒドラジン)
一態様において、分散体はヒドラジンを含む。ヒドラジンはヒドラジン水和物の形態であってもよい(すなわち、本開示のヒドラジンとは、ヒドラジン水和物も包含する概念である。)。分散体がヒドラジンを含むことにより、湿式還元工程又はめっき工程において、ヒドラジンが酸化銅、特に酸化第一銅の還元に寄与し、より抵抗の低い還元銅層(銅含有膜として)を形成することができる。また、ヒドラジンは、分散体の分散安定性の維持においても有利であり、湿式還元時の生産性向上の観点からも好ましい。
分散体は、ヒドラジン以外の還元剤を更に含んでよい。還元剤としては、ナトリウム、水素化ホウ酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、蟻酸、シュウ酸、アスコルビン酸、硫化鉄(II)、塩化スズ(II)、水素化ジイソブチルアルミニウム、カーボン等が挙げられる。
分散体中のヒドラジンの含有量(水和物の場合は水和水を除いた量)は、酸化銅の量に比例させ,要求される還元性を考慮し調整するのがよい。一態様において、分散体中の酸化銅に対するヒドラジンの質量比率(ヒドラジン質量/酸化銅質量)は、好ましくは0.0001以上0.1以下、より好ましくは0.0001以上0.05以下、さらに好ましくは0.0001以上0.03以下である。ヒドラジンの質量比率が0.0001以上である場合、分散体の分散安定性が良好であり、かつ還元銅層の抵抗が低い点で好ましく、0.1以下である場合、分散体の長期安定性が良好である。
分散体中のヒドラジンとヒドラジン以外の還元剤との合計含有量は、酸化銅の量に比例させ,要求される還元性を考慮し調整するのがよい。一態様において、分散体中の酸化銅に対するヒドラジンとヒドラジン以外の還元剤との合計質量比率(還元剤合計質量/酸化銅質量)は、好ましくは0.0001以上0.1以下、より好ましくは0.0001以上0.05以下、さらに好ましくは0.0001以上0.03以下である。還元剤の上記合計質量比率が0.0001以上である場合、分散体の分散安定性が良好であり、かつ還元銅層の抵抗が低い点で好ましく、0.1以下である場合、分散体の長期安定性が良好である。
分散体は、配合成分を混合し、ミキサー法、超音波法、3本ロール法、2本ロール法、アトライター、ホモジナイザー、バンバリーミキサー、ペイントシェイカー、ニーダー、ボールミル、サンドミル、自公転ミキサー等を用いて分散処理することにより製造できる。分散体の粘度は、目的の塗布様式に応じて設計できる。例えばスクリーン印刷用の分散体の粘度は、好ましくは50mPa・s以上、より好ましくは100mPa・s以上、さらに好ましくは200mPa・s以上であり、好ましくは50000mPa・s以下、より好ましくは10000mPa・s以下、さらに好ましくは5000mPa・s以下である。なお分散体の粘度は、コーンプレート型回転粘度計を用いて23℃で測定される値である。
(分散体中の酸化銅と分散剤との関係)
図1は、本発明の一態様で使用できる分散体(酸化銅インク)における、酸化銅とリン酸エステル塩との関係を示す断面模式図である。図1を参照し、本発明の一態様において、酸化銅インク100が、酸化銅12とリン酸エステル塩13(分散剤としてのリン酸エステルの例)とを含む場合、酸化銅12の周囲を、リン酸エステル塩13が、リン13aを内側に、エステル塩13bを外側にそれぞれ向けて取り囲んでいる。リン酸エステル塩13は電気絶縁性を示すため、互いに隣接する酸化銅12間の電気的導通は、リン酸エステル塩13によって妨げられている。また、リン酸エステル塩13は、立体障害効果により酸化銅インク100の凝集を抑制している。したがって、酸化銅12は半導体である(すなわちある程度の導電性を有する)が、電気絶縁性を示すリン酸エステル塩13で覆われているので、酸化銅インク100は電気絶縁性を示す。
一方、湿式還元工程及び/又はめっき工程において酸化銅12が銅に還元されると、優れた電気導電性を有する導電性パターン領域が形成される。なお、分散剤としてリン含有有機物を用いた場合、導電性パターン領域中にはリン元素が残存している。リン元素は、リン元素単体、リン酸化物及びリン含有有機物のうち少なくとも1つとして存在している。しかし、このような残存リン元素は、通常、導電性パターン領域中に偏析して存在しているため、導電性パターン領域の抵抗が大きくなる恐れはない。
[基材]
本実施形態で用いられる基材は、塗布膜を形成する表面を有するものであり、配線パターンを形成するための回路基板シートの基板材料等を例示できる。基材は、無機材料若しくは有機材料又はこれらの組合せで構成されてよく、一態様において密着層を有してよい。
無機材料としては、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、硼珪酸ガラス、石英ガラス等のガラス、及びアルミナ等のセラミック材料が挙げられる。
有機材料としては、セルロースなどの紙材料や樹脂フィルム等の高分子材料が挙げられる。高分子材料としては、ポリイミド(PI)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリアセタール(POM)、ポリアリレート(PAR)、ポリアミド(PA)(PA6、PA66等)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエーテルニトリル(PENt)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリカルボジイミド、シリコーンポリマー(ポリシロキサン)、ポリメタクリルアミド、ニトリルゴム、アクリルゴム、ポリエチレンテトラフルオライド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリブテン、ポリペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−ジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ブチルゴム、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリスチレン(PS)、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フェノールノボラック、ベンゾシクロブテン、ポリビニルフェノール、ポリクロロピレン、ポリオキシメチレン、ポリスルホン(PSF)、ポリフェニルスルホン樹脂(PPSU)、シクロオレフィンポリマー(COP)、アクリロ二トリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等を挙げることができる。特に、PI、PET及びPENは、フレキシブル性、コストの観点から好ましい。
基材は、例えば、ガラスコンポジット基材、ガラスエポキシ基材等の複合基材、テフロン(登録商標)基材、アルミナ基材、低温低湿同時焼成セラミックス(LTCC)、シリコンウェハ等であってもよい。
基材の厚さは、例えば1μm〜10mmとすることができ、好ましくは25μm〜250μmである。基材の厚さが250μm以下である場合、作製される電子デバイスを、軽量化、省スペース化、及びフレキシブル化でき好ましい。
[塗布膜の形成]
分散体の塗布方法としては、インクジェット印刷、スクリーン印刷、凹版ダイレクト印刷、凹版オフセット印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等を用いることができる。塗布は、ダイコート、スピンコート、スリットコート、バーコート、ナイフコート、スプレーコート、ディップコート等の方法を用いて実施できる。塗布方法は、好ましくはインクジェット印刷である。インクジェット法は印刷版が不要でかつ、配線間に余分な成分が付着することがないので、マイグレーション性に優れる。
塗布膜の乾燥後の層厚は、均一な還元銅層を形成できる点で、好ましくは1nm以上10000nm以下、より好ましくは10nm以上8000nm以下、さらに好ましくは100nm以上7000nm以下である。
基材は密着層(インク受容層ともいう)を有してよく、当該密着層上に塗布膜を形成してよい。密着層を形成する化合物(本開示において「コーティング用化合物」ともいう)は、好ましくは、−OH基を有し、並びに/又は、Ar−O構造及び/若しくはM−O構造を有する。ここで、Arは芳香族構造を、Mは金属原子をそれぞれ表す。上記密着層が存在する場合、酸化銅含有粒子を含む層を基材上に密着性良く形成でき、更に、熱が基材本体まで伝わりにくいことによって、耐熱性の低い樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂をも基材として使用できるため汎用性の点で有利である。
−OH基は、特に芳香族性水酸基(すなわち、−Ar−OH基を構成する−OH基)又は金属原子に結合した水酸基(すなわち、−M−OH基を構成する−OH基)であることが好ましい。−Ar−OH基及び−M−OH基を構成する−OH基は活性が高く、密着層と、基材本体、及び/又は酸化銅含有粒子を含む層との密着性に優れる傾向にある。
−Ar−OH基における芳香族構造(Ar)としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、フェナントレン、ピレン、ペリレン、及びトリフェニレン等の芳香族炭化水素;並びに、チオフェン、チアゾール、ピロール、フラン、ピリジン、ピラゾール、イミダゾール、ピリダジン、ピリミジン、及びピラジン等の複素芳香族化合物;等の芳香族化合物に由来する(すなわち、これら化合物から水素原子が2つ除かれた)2価の基が挙げられる。芳香族構造のπ電子系に含まれる電子数は、22以下であることが好ましく、14以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。π電子系に含まれる電子数が22以下であると結晶性が高くなりすぎず、柔軟で平滑性の高い密着層を得やすくなる。芳香族構造は、芳香環に結合した水素の一部が官能基によって置換されていてもよい。官能基としては、例えば、ハロ基、アルキル基(例えばメチル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基等)、複素芳香族基(チエニル基等)、ハロアリール基(例えばペンタフルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、3,4,5−トリフルオロフェニル基等)、アルケニル基、アルキニル基、アミド基、アシル基、アルコキシ基(例えばメトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基、ナフトキシ基等)、ハロアルキル基(例えばパーフルオロアルキル基等)、チオシアノ基、及び水酸基等を挙げることができる。−Ar−OH基としては、特にヒドロキシフェニル基(−Ph−OH)が好ましい。
−M−OH基における金属原子(M)としては、ケイ素、銀、銅、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、タンタル、錫、カルシウム、セリウム、クロム、コバルト、ホルミウム、ランタン、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、アンチモン、サマリウム、テルビウム、タングステン、イットリウム、亜鉛、及びインジウム等が挙げられる。密着層に絶縁性を要する場合は、−Si−OH基、又は−Zr−OH基が好ましく、密着層に導電性を要する場合は、−Ti−OH基、又は−Zn−OH基が好ましい。
Ar−O構造における芳香族構造(Ar)は、上記−Ar−OH基に関して例示した芳香族化合物と同様の芳香族化合物から水素原子が1つ以上除かれた構造であってよい。特に、Ar−O構造としては、Ph−O構造が好ましい。
M−O構造における金属原子は、上記−M−OH基に関して例示した金属原子と同様のものを用いることができる。特に、M−O構造としては、Si−O構造、Ti−O構造、Zn−O構造、及びZr−O構造が好ましい。
Si−O構造を有するコーティング用化合物としては、例えばシリカ系化合物(例えば二酸化ケイ素(SiO2))、及びシリコーン系化合物(例えばポリシロキサン、例えばアルキルポリシロキサン、例えばジメチルポリシロキサン)等が挙げられる。
コーティング用化合物としては、例えば、ポリイミド、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリアセタール、ポリアリレート(PAR)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエーテルニトリル(PENt)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリカルボジイミド、シリコーンポリマー(ポリシロキサン)、ポリメタクリルアミド、ニトリルゴム、アクリルゴム、ポリエチレンテトラフルオライド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリブテン、ポリペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−ジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ニトリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリスチレン(PS)、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フェノールノボラック樹脂、ベンゾシクロブテン、ポリビニルフェノール、ポリクロロピレン、ポリオキシメチレン、ポリスルホン(PSF)等に、上記−OH基、及び/又はAr−O構造若しくはM−O構造を導入した材料が挙げられる。コーティング用化合物としては、特に、フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、ポリビニルフェノール、及びポリイミドが好ましい。
密着層の厚さの上限値は特に限定されないが、好ましくは20μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは1μm以下であり、下限値は好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.2μm以上である。
<乾燥工程>
本工程では、塗布膜形成工程で得た塗布膜を乾燥させて乾燥膜を形成する。乾燥工程は分散媒を気化させるための工程である。分散媒は、室温で気化させてもよいし、オーブン、真空乾燥等の方法で気化させてもよい。基材の耐熱性を考慮すると、150℃以下の温度で乾燥させることが好ましく、100℃以下の温度で乾燥させることがさらに好ましい。
<湿式還元工程>
本工程では、乾燥工程後の塗布膜(乾燥膜)を還元液に浸漬することで、銅含有膜を得る。乾燥膜中の酸化銅含有粒子を還元して銅を生成させ、銅自体の融着及び一体化により銅含有膜(還元銅層)を形成することができる。ただし、酸化銅含有粒子をそのままめっきする場合は、本工程を省略できる場合がある。
還元液は、下記の還元剤を含むことが好ましい。還元剤は、無機系であっても、有機系であってもよく、無機系還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、二酸化硫黄、亜硝酸ナトリウム、金属アルミニウム、塩化セリウム、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられ、有機系還元剤としては、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、メタノール、クエン酸及びその塩、シュウ酸及びその塩、ギ酸及びその塩、グリセリン、グルコース、エチレングリコール、グリシン及びその誘導体(例えばN−[N−(ベンジルオキシカルボニル)グリシル]−L−プロリン、N−カルボベンゾキシグリシ4−ニトロフェニル、L−(2−クロロフェニル)グリシン塩化物、BOC−NΑ−メチル−L−フェニルグリシン、アセチルアミノ(シアノ)酢酸エチル、キシレノールオレンジ、D−(−)−2−(2,5−ジヒドロフェニル)グリシン、Cbz−シクロへキシル−L−グリシン、(R)−α−[(3−エトキシ−1−メチル−3−オキソ−1−プロペニル)アミノ]ベンゼン酢酸カリウム、N−(ジフェニルメチレン)グリシンtert−ブチル、D−プロパルギルグリシン、(S)−α−アミノ−4−フルオロベンゼン酢酸、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−2−シクロヘキシルグリシン、グリシンメチル塩酸塩、D−2−アリルグリシン塩酸塩、(S)−2−シクロヘキシル−2−アミノ酢酸、(2S)−N−[[(カルボキシメチル)アミノカルボニル]メチル]−2−アミノ−4−メチルペンタンアミド、(R)−2−アミノ−4−ペンチン酸、(R)−N−BOC−プロパルギルグリシン、N−ベンジルグリシン、(S)−N−BOC−Α−アリルグリシンジシクロヘキシルアミン、BOC−D−シクロプロピルグリシン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−D−2−フェニルグリシン、(R)−(−)−N−(3,5−ジニトロベンゾイル)−α−フェニルグリシン、L−2−クロロフェニルグリシン、4−フルオロ−D−フェニルグリシン、BOC−L−シクロプロピルグリシン、グリシンベンジルp−トルエンスルホナート、(S)−N−BOC−アリルグリシン、(R)−N−BOC−アリルグリシン、(R)−4−ヒドロキシ−α−[(3−メトキシ−1−メチル−3−オキソ−1−プロペニル)アミノ]ベンゼン酢酸カリウム、N−[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニル]−D−2−フェニルグリシン、DL−ロイシルグリシルグリシン、グリシルグリシルグリシン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−プロパルギルグリシン、2−アミノ−2−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]酢酸、(S)−N−BOC−3−ヒドロキシアダマンチルグリシン、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン、2−プロパルギル−L−グリシン、N−(トリフェニルメチル)グリシン、N−ベンジルグリシンエチル、2−(2−オキソ−2−ヒドロキシエチルアミノ)安息香酸、FMOC−D−アリルグリシン、L−2−(4−クロロフェニル)グリシン、D−2−シクロヘキシルグリシン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)グリシン、N−(ベンジルオキシカルボニル)−D−フェニルグリシン、N−[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニル]−L−2−フェニルグリシン、ベンジルオキシカルボニルアミノ(ジメトキシホスフィニル)酢酸メチル、N−(tert−ブトキシカルボニル)グリシンメチル、4−(トリフルオロメチル)フェニルグリシン、グリシル−DL−ロイシン、N−トシルグリシン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−D−2−シクロヘキシルグリシン、N−ホルミルグリシン、N−T−ブチルグリシンHCL、(R)−2−アリルグリシン、H−グリシンベンジルエステル塩酸塩、N−カルボベンゾキシ−L−2−フェニルグリシン、(ジフェニルメチレンアミノ)酢酸エチル(ジフェニルメチレンアミノ)酢酸エチル、オクスフェニシン、L−メチオニルグリシン、(4−ヒドロキシフェニル)(アミノ)酢酸、(R)−α−アミノベンゼン酢酸メチル・塩酸塩、L−Α−シクロプロピルグリシン、N−ベンジルグリシン塩酸塩、D−シクロプロピルグリシン、α−アミノ−4−フルオロベンゼン酢酸、グリシンtert−ブチル塩酸塩、N−(tert−ブトキシカルボニル)−2−ホスホノグリシントリメチル、N−[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニル]グリシン、N−(4−ヒドロキシフェニル)グリシン、DL−2−(4−クロロフェニル)グリシン、L−Α−シクロヘキシルグリシン、グリシンエチル塩酸塩、N−[(メトキシカルボニル)メチル]カルバミド酸ベンジル、DL−2−(2−クロロフェニル)グリシン、L−シクロペンチルグリシン、N−BOC−2−(4’−クロロフェニル)−D−グリシン、BOC−L−シクロペンチルグリシン、D−(2−クロロフェニル)グリシン塩化物、N−フタロイルグリシン、N−ホルミルグリシンエチル、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−2−フェニルグリシン、N−(tert−ブトキシカルボニル)グリシン、N−(2−アミノエチル)グリシン、N−フェニルグリシン、N,N−ジメチルグリシン塩酸塩、(S)−N−FMOC−アリルグリシン、D−(−)−2−(4−ヒドロキシフェニル)グリシン、L(+)−2−フェニルグリシンメチルエステル塩酸塩、エデト酸三ナトリウム、N−(tert−ブトキシカルボニル)グリシルグリシン、(2R)−2−アミノ−2−フェニル酢酸エチル・塩酸塩、N−アセチルグリシンエチル、L−ロイシルグリシン水和物、L−2−アリルグリシン塩酸塩)、L−アスコルビン酸及びその塩、チオグリコール酸、塩酸ヒドロキシルアミン、ハイドロキノン、ハイドロサルファイト、エリソルビン酸、エリソルビン酸塩、チオ尿素、錫系還元剤、鉄系還元剤、亜鉛系還元剤などが挙げられる。なおグリシン誘導体としては、分子中にヒドロキシ基を2個以上有する構造を有する化合物が好適である。生産性の観点から、還元が早く進むので、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)グリシン及び/又はクエン酸を含むことが好ましい。
典型的な態様において、還元液は溶媒を含む。溶媒としては、一般的に用いられる水系又は有機系溶媒を用いることができ、例えば、水、エタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、トルエン、ヘキサン、ベンゼン、クロロホルム、塩化メチレン、酢酸、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
湿式還元工程の温度は、生産性の観点から、還元が早く進む点で、20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、40℃以上がさらに好ましい。また、均一な銅含有膜を得る観点から、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。
後述する無電解めっき工程を行う場合は、湿式還元工程と無電解めっき工程とを同時に行うこともできる。生産性向上の観点から、湿式還元工程と無電解めっき工程とを同時に行うことが好ましい。具体的には、後述する無電解めっき浴の中に上述の還元液を添加することで、湿式還元工程と無電解めっき工程とを同時に行うことができる。なおこの場合には、浸漬浴中の還元剤濃度及びめっき物質濃度(一態様において銅濃度)が本開示で例示する範囲内となるように、溶媒量を調整することが好ましい。
(洗浄工程)
湿式還元後、適切な洗浄液を用いて、未還元部及び還元液を除去してもよい。これにより、基材の上に清浄な還元領域が残される。一方、洗浄工程を行わなくてもよい。いずれの場合も、導電性パターンとしての還元領域によって導電性が付与された基材(以下、導電性基材ともいう。)が得られる。ただし、酸化銅含有粒子をそのままめっきする場合は、本工程を省略できる場合がある。
洗浄を行う場合の洗浄液としては、酸化銅を分散又は溶解させる液を用いることができる。具体例としては、水、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2−ペンタンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、トリエチレングリコール、トリ−1,2−プロピレングリコール、グリセロール、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、2−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、2−エチルブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、2−オクタノール、n−ノニルアルコール、2、6ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール、アセトン等が挙げられる。上記の溶媒は、特に、塗布膜に分散剤が含まれる場合、酸化銅を良好に洗い落とすことができ好適である。溶媒としては、水、エタノール、ブタノール、i−プロパノール、及びアセトンが特に好ましい。なお、上記の洗浄液に分散剤を加えてもよい。分散剤としては前述したものが使用でき、より好ましくはリン含有有機物である。
<脱脂工程>
本開示の方法の一態様は、銅含有膜を脱脂する工程を有する。脱脂方法としては、UV法、湿式脱脂法等が挙げられる。脱脂工程により、その後のめっきの成長速度が速くなり、生産性が向上する。また、本工程は、めっき後の導電性層の空隙率低減、すなわち、最終的な導電性層の空隙率に寄与する。なお、めっき工程を無電解めっきで行う場合には、脱脂工程を省略できる場合がある。
導電性パターン付構造体の層間密着性の観点から、脱脂工程は、アミノ基を含む化合物を含む脱脂液に上記導電性基材又は上記乾燥膜を浸漬することにより行われることが好ましい。アミノ基を含む化合物としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等のアミノ酸類、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン等のアルキルアミン類、2−アミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン等のアルカノールアミン類、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等のポリアミン類、タウリン等のアミノスルホン酸、2−アミノエタンチオール等のアミノチオール類、3−ピコリルアミン、3−ピリジンメタノール等の含窒素複素環式化合物類が挙げられる。めっきの成長速度に寄与する観点から、2−アミノエタノールが特に好ましい。
脱脂液は市販品であってもよく、具体的には、上村工業株式会社のALC―009(アミノ基を有する化合物として2−アミノエタノールを含む)、アトテックジャパン株式会社のクリーナーセキュリガント902(アミノ基を有する化合物として2−アミノエタノールを含む)等が挙げられる。
脱脂液の中のアミノ基を含む化合物の濃度としては、めっき反応の阻害物質を取り除く観点から5mmol/L以上が好ましく、10mmol/L以上がより好ましく、20mmol/L以上がより好ましい。また、めっき反応を促進させる観点から、100mmol/L以下が好ましく、90mmol/L以下がより好ましく、80mmol/L以下がより好ましい。
脱脂液への導電性基材の浸漬時間としては、めっきの成長速度に寄与する観点から1分以上が好ましく、2分以上がより好ましい。また、基材へのダメージを低減する観点から、15分以内が好ましく、10分以内がより好ましい。攪拌下での浸漬が、均一な脱脂の観点で好ましい。
浸漬温度は、めっきの成長速度促進の効果を高めるために15℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、40℃以上がさらに好ましい。また、基材へのダメージを低減する観点から、70℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。
<めっき工程>
本発明の一態様においては、脱脂工程後の銅含有膜にめっきを行う。また、本発明の別の一態様においては、湿式還元工程後の銅含有膜に無電解めっきを行う。上述のようにして得られた導電性基材の銅含有膜(還元銅層)上に電解めっき又は無電解めっきを施すことで、所望の層厚のめっき層(例えばめっき銅層)を形成し、還元銅層及びめっき層で構成された導電性パターンを得る。この結果、導電性パターン付構造体を製造することができる。
一方、本発明の別の一態様においては、乾燥工程後の塗布膜(乾燥膜)に対して無電解めっきを行ってもよい。無電解めっきは、乾燥膜中の酸化銅の一部若しくは全部を還元してよく、又は当該酸化銅を還元しなくてもよい。無電解めっきにより、酸化銅及び/又はその還元物である銅を含む層と、めっき層とで構成された導電性パターンを形成できる。
無電解めっきは、パターンへの適用性の広さの観点からより好ましい。特にレーザーでパターンが作製されている配線に対しては無電解めっきが好ましい。
電解めっきには、一般的な電気めっき法を適用することができる。例えば、銅イオンを含む溶液(めっき浴)中に、一方に電極を入れ、他方にめっきを施す対象である導電性基材を入れる。そして、外部直流電源から直流電流を電極と導電性基材との間に印加する。一態様においては、導電性基材上の還元銅層に、外部直流電源の一方の電極に接続された冶具(例えばクリップ)を接続することで還元銅層に電流を印加できる。この結果、導電性基材上の還元銅層の表面に、銅イオンの還元によって銅が析出し、めっき銅層が形成される。
電解めっき浴としては、例えば硫酸銅浴、ホウふっ化銅浴、シアン化銅浴、及びピロリン酸浴を使用することができる。安全性及び生産性の観点から、硫酸銅浴及びピロリン酸浴が好ましい。
硫酸銅めっき浴としては、例えば、硫酸銅5水和物、硫酸及び塩素を含有する硫酸酸性硫酸銅めっき浴が好適に用いられる。硫酸銅めっき浴中の硫酸銅5水和物の濃度は、好ましくは50g/L〜300g/L、より好ましくは100g/L〜200g/Lである。硫酸の濃度は、好ましくは40g/L〜160g/L、より好ましくは80g/L〜120g/Lである。めっき浴の溶媒は、通常、水である。めっき浴の温度は、好ましくは20〜60℃、より好ましくは30〜50℃である。電解処理時の電流密度は、好ましくは1〜15A/dm2であり、より好ましくは2〜10A/dm2である。
ピロリン酸銅めっき浴としては、例えば、ピロリン酸銅及びピロリン酸カリウムを含有するめっき浴が好適である。ピロリン酸銅めっき浴中のピロリン酸銅の濃度は、好ましくは60g/L〜110g/L、より好ましくは70g/L〜90g/Lである。ピロリン酸カリウムの濃度は、好ましくは240g/L〜470g/L、より好ましくは300g/L〜400g/Lである。めっき浴の溶媒は、通常、水である。めっき浴のpHは、好ましくは8.0〜9.0、より好ましくは8.2〜8.8である。pH値調整のために、アンモニア水等を添加してもよい。めっき浴の温度は、好ましくは20〜60℃、より好ましくは30〜50℃である。電解処理時の電流密度は、好ましくは0.5〜10A/dm2であり、より好ましくは1〜7A/dm2である。
電解めっき用のめっき浴は界面活性剤を更に含んでもよい。
無電解めっきには、一般的な無電解めっき法を適用することができる。例えば、脱脂工程又は洗浄工程と共に、無電解めっきを行う。無電解めっき浴としては、例えば銅イオン及び還元剤を含むめっき液を使用できる。空気バブリングを行いながら導電性基材又は乾燥膜をめっき液に浸漬することで、めっき液中の銅イオンが還元され、還元銅層又は乾燥膜の表面に銅が析出し、めっき銅層が形成される。乾燥膜に対して無電解めっきを行う態様においては、乾燥膜中の酸化銅の一部又は全部がめっき液によって還元されてもよいし、還元されなくてもよく、したがって、酸化銅及び/又は銅を含む層の上にめっき銅層が形成される。
無電解めっき浴としては、例えば銅イオン源としてCuSO4、錯化剤としてEDTA(エチレンジアミン四酢酸)又はロシェル塩、還元剤としてホルムアルデヒド(CH2O)、テトラヒドロ酸カリウム、ジメチルアミンボラン、グリオキシル酸、又はホスフィン酸を含むめっき液を使用できる。錯化剤としてEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を含むとめっき液が剥れず、めっき速度が速くなるため好ましい。市販品としては、上村工業株式会社のスルカップPEA−6、スルカップELC−SP、メルテックス株式会社のメルプレートCU−390、メルプレートCU−5100P、奥野製薬工業株式会社のOPCカッパーHFS、OPCカッパーNCA、ATSアドカッパーIW、ロームアンドハース株式会社のCUPOSIT328、C4500、アトテック株式会社のAtotechMVTP1、PrintganthUPlus、日本マクダーミッド株式会社のCu−150、Cu−510、等を用いることができる。また、無電解めっき浴の温度は25〜80℃が好ましく、より高速なめっき成長が望めることから30℃〜70℃、又は35℃〜65℃がより好ましい。めっき時間は5分〜60分が好ましく、より好ましくは5分〜50分、より好ましくは10分〜40分である。
無電解めっき用のめっき浴は界面活性剤を更に含んでもよい。
無電解めっきは、銅濃度1.5g/L以上5.0g/L以下の範囲のめっき液を用いて行われることが好ましい。めっきの速度を向上させるために1.5g/L以上の濃度が好ましく、めっき被膜の均一性の観点から5.0g/L以下の濃度が好ましい。銅濃度は、さらに好ましくは1.5g/L以上4.0g/L以下、さらに好ましくは1.8g/L以上3.5g/L以下、さらに好ましくは2.0g/L以上3.0g/L以下である。
めっき層(一態様においてめっき銅層)の層厚は、導電性パターン付構造体に要求される電流を流すことが可能である点で、好ましくは1μm以上100μm以下、より好ましくは1μm以上50μm以下、更に好ましくは2μm以上30μm以下である。
<導電性パターン付構造体の製造方法の好適例>
以下、図2を参照して、導電性パターン付構造体の製造方法のより具体的な好適例を説明する。
図2(a)に示す塗布膜形成工程において、水とプロピレングリコール(PG)との混合溶媒中に酢酸銅を溶かし、ヒドラジンを加えて攪拌する。
次いで、図2(b)及び(c)に示すように、生成物溶液(上澄み)と酸化第一銅(沈殿物)とを遠心分離する。
次いで、図2(d)に示すように、沈殿物に、分散剤及びアルコールを加え、沈殿物を分散させる。
次いで、図2(e)に示すように、酸化銅を含む分散体を、インクジェット法又はグラビア印刷法等によって基材上に印刷して塗布膜を形成し、次いで乾燥させる。この結果、図2(f)に示すように、基材上に、酸化銅及び分散剤を含む乾燥後の塗布膜(酸化銅層)が形成される。
次に、図2(g)に示すように、塗布膜に対して、還元剤を含む還元液を用いた湿式還元を行うことで、酸化銅を銅に還元する。この結果、図2(h)に示すように、基材上に、銅を含む還元銅層が形成された導電性基材が得られる。
次いで、図2(i)に示すように、アミノ基を含む化合物を含む脱脂液に導電性基材を浸漬して脱脂工程を行い、次いでめっき工程を行う。この結果、図2(j)に示すように、基材上に、還元銅層及びめっき銅層が形成される。
また、別の態様として、湿式還元工程とめっき工程とを同時に行うこともできる。例えば、上記酸化銅層としての酸化第一銅層に対してめっき工程を行うことで、還元と同時にめっき銅層を形成可能である。
以上の手順で、導電性パターン付構造体を製造できる。
また、以下、図3を参照して、導電性パターン付構造体の製造方法のより具体的な好適例を説明する。
図3(a)に示す塗布膜形成工程において、水とプロピレングリコール(PG)との混合溶媒中に酢酸銅を溶かし、ヒドラジンを加えて攪拌する。
次いで、図3(b)及び(c)に示すように、生成物溶液(上澄み)と酸化第一銅(沈殿物)とを遠心分離する。
次いで、図3(d)に示すように、沈殿物に、分散剤及びアルコールを加え、沈殿物を分散させる。
次いで、図3(e)に示すように、酸化銅を含む分散体を、インクジェット法又はグラビア印刷法等によって基材上に印刷して塗布膜を形成し、次いで乾燥させる。この結果、図3(f)に示すように、基材上に、酸化銅及び分散剤を含む乾燥膜(酸化銅層)が形成される。
次いで、図3(g)に示すように、アミノ基を含む化合物を含む脱脂液に乾燥膜を浸漬して脱脂工程を行い、次いでめっき工程を行う。めっき工程においては、酸化銅層中の酸化銅の一部又は全部が還元されてもよい。この結果、図3(h)に示すように、基材上に、酸化銅及び/又はその還元物である銅の層とめっき銅層とが形成される。
以上の手順で、導電性パターン付構造体を製造できる。
上述の通り、本開示の方法によれば、非常に低コストかつ低エネルギーで還元銅膜を作製できるので、より簡便に導電性パターン領域付構造体を製造することができる。
<追加の層の形成>
本開示の導電性パターン付構造体は、前述したような基材及び導電性層に加え、追加の層を有してもよい。追加の層としては、樹脂層及びハンダ層を例示できる。
[樹脂層]
一態様においては、導電性層の一部が樹脂層で覆われていることが好ましい。導電性層の一部が樹脂層で覆われていることにより、導電性パターンの酸化が防止され、信頼性が向上する。また、導電性層に樹脂層で覆われていない部分が存在することで、部品を電気的に接合することができる。
樹脂層の一例は、封止材層である。樹脂層は例えばトランスファー成形、圧縮成形等により形成することができる。用いられる樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド(PI)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリアセタール(POM)、ポリアリレート(PAR)、ポリアミド(PA)(PA6、PA66等)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエーテルニトリル(PENt)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリカルボジイミド、シリコーンポリマー(ポリシロキサン)、ポリメタクリルアミド、ニトリルゴム、アクリルゴム、ポリエチレンテトラフルオライド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリブテン、ポリペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−ジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ブチルゴム、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリスチレン(PS)、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フェノールノボラック、ベンゾシクロブテン、ポリビニルフェノール、ポリクロロピレン、ポリオキシメチレン、ポリスルホン(PSF)、ポリフェニルスルホン樹脂(PPSU)、シクロオレフィンポリマー(COP)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等が挙げられる。また、樹脂層の好ましい厚みは、0.1μm以上1mm以下、又は0.5μm以上800μm以下である。
封止材層は、製造後の完成品(導電性パターン付構造体そのもの及びそれを含む製品)において、導電性パターンを外部からのストレスから保護し、導電性パターン付構造体の長期安定性を向上できる。
樹脂層の一例である封止材層の透湿度は、良好な長期安定性を確保する観点から、好ましくは、1.0g/m2/day以下、より好ましくは0.8g/m2/day以下、さらに好ましくは0.6g/m2/day以下である。透湿度を低くすることで、封止材層の外部からの水分の混入を防ぎ、導電性パターンの酸化を抑制できる。透湿度は低い程好ましい。上記透湿度は、カップ法で測定される値である。
封止材層は、製造時に使用される場合がある酸素バリア層を剥離した後にも、導電性パターン付構造体に対して酸素バリア機能を与える機能層であることができる。その他の機能として、導電性パターン付構造体の取り扱い時の耐傷性、外界からの汚染から導電性パターン付構造体を保護するための防汚性、強靭な樹脂を用いた場合における導電性パターン付構造体に対する剛性向上、等の機能を有してよい。
[ハンダ層]
一態様において、導電性層の基材側とは反対側の一部にハンダ層が形成されていることが好ましい。ハンダ層によって導電性層と他の部材とを接続できる。ハンダ層は例えばリフロー法によって形成できる。ハンダ層は、Sn−Pb系、Pb−Sn−Sb系、Sn−Sb系、Sn−Pb−Bi系、Bi−Sn系、Sn−Cu系、Sn−Pb−Cu系、Sn−In系、Sn−Ag系、Sn−Pb−Ag系、Pb−Ag系等のハンダ層であってよい。ハンダ層の厚みは、好ましくは0.1μm以上2mm以下、より好ましくは0.5μm以上1mm以下である。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<評価方法>
[ヒドラジン定量方法]
標準添加法によりヒドラジンの定量を行った。
サンプル(分散体)50μLに、ヒドラジン33μg、サロゲート物質(ヒドラジン1524)33μg、ベンズアルデヒド1質量%アセトニトリル溶液1mlを加えた。最後にリン酸20μLを加え、4時間後、GC/MS(ガスクロマトグラフ/質量分析)測定を行った。
同じく、サンプル(分散体)50μLに、ヒドラジン66μg、サロゲート物質(ヒドラジン1524)33μg、ベンズアルデヒド1質量%アセトニトリル溶液1mlを加えた。最後にリン酸20μLを加え、4時間後、GC/MS測定を行った。
同じく、サンプル(分散体)50μLに、ヒドラジン133μg、サロゲート物質(ヒドラジン1524)33μg、ベンズアルデヒド1質量%アセトニトリル溶液1mlを加えた。最後にリン酸20μLを加え、4時間後、GC/MS測定を行った。
最後に、サンプル(分散体)50μLに、ヒドラジンを加えず、サロゲート物質(ヒドラジン1524)33μg、ベンズアルデヒド1質量%アセトニトリル溶液1mlを加え、最後にリン酸20μLを加え、4時間後、GC/MS測定を行った。
上記4点のGC/MS測定から、m/z=207のクロマトグラムよりヒドラジンのピーク面積値を得た。次にm/z=209のマスクロマトグラムよりサロゲートのピーク面積値を得た。x軸に、添加したヒドラジンの質量/添加したサロゲート物質の質量、y軸に、ヒドラジンのピーク面積値/サロゲート物質のピーク面積値をとり、標準添加法による検量線を得た。
検量線から得られたY切片の値を、添加したヒドラジンの質量/添加したサロゲート物質の質量で除しヒドラジンの質量を得た。
[平均粒子径測定]
分散体の平均粒子径は、大塚電子製FPAR−1000を用いてキュムラント法によって測定した。
[導電性層の元素分析]
XRD(X線回折装置)を用いて測定した。
測定装置:リガク Ultima−IV
X線源:Cu−Kα
励起電圧:電圧40kV,電流40mA
光学系:集中光源系
Cu−Kβ線フィルタ:Ni箔
アブソーバー:なし
検出器:Dtex(高感度検出器)
測定方式:θ/2θ法
スリット:DS=1°
2θ/θスキャン:2θ=5〜90°(0.02°/ステップ、10°/分)
[厚み測定]
触診式膜厚測定機を用いて測定した。
装置:Bruker社製DektakXT
Stylus Force: 3mg
Speed:200μm/s
<実施例1>
蒸留水(共栄製薬株式会社製)7560g、1,2−プロピレングリコール(関東化学株式会社製)3494gの混合溶媒中に酢酸銅(II)一水和物(関東化学株式会社製)806gを溶かし、外部温調器によって液温を−5℃にした。ヒドラジン一水和物(東京化成工業株式会社製)235gを20分間かけて加え、窒素雰囲気下で30分間攪拌した後、外部温調器によって液温を25℃にし、窒素雰囲気下で90分間攪拌した。攪拌後、遠心分離で上澄みと沈殿物に分離した。得られた沈殿物390gに、DISPERBYK−145(ビッグケミー製)(酸価:76mgKOH/g、アミン価:71mgKOH/g、リン含有有機物である)13.7g(分散剤含有量4g)、及びエタノール(関東化学株式会社製)907gを加え、窒素雰囲気下でホモジナイザーを用いて分散し、酸化第一銅を含む分散体1365gを得た。
分散体は良好に分散されており、平均粒子径は21nmであった。ヒドラジン量は3000質量ppmであった。
得られた分散体を、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、カプトン500H、厚み125μm)にスピンコート法によって塗布し、90℃のオーブンで2時間保持して塗布膜内の溶媒を揮発させて、酸化銅膜である試料1を得た。得られた試料1の塗布膜厚は1000nmであった。
N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)グリシンを水に溶かし、32wt%の溶液を調製した。これを還元液として用い、90℃に加熱した状態の当該還元液に、上記の酸化銅膜を2分間浸漬させた。その後、エタノールで洗浄し、銅膜を得た。
本銅膜をXRD(リガク Ultima−IV)で観察した所、酸化第一銅から銅に変化していることがわかった。
<実施例2>
蒸留水(共栄製薬株式会社製)7560g、1,2−プロピレングリコール(関東化学株式会社製)3494gの混合溶媒中に酢酸銅(II)一水和物(関東化学株式会社製)806gを溶かし、外部温調器によって液温を−5℃にした。ヒドラジン一水和物(東京化成工業株式会社製)235gを20分間かけて加え、窒素雰囲気下で30分間攪拌した後、外部温調器によって液温を25℃にし、窒素雰囲気下で90分間攪拌した。攪拌後、遠心分離で上澄みと沈殿物に分離した。得られた沈殿物390gに、DISPERBYK−145(ビッグケミー製)13.7g(分散剤含有量4g)及びエタノール(関東化学株式会社製)907gを加え、窒素雰囲気下でホモジナイザーを用いて分散し、酸化第一銅を含む分散体1365gを得た。
分散体は良好に分散されており、平均粒子径は21nmであった。ヒドラジン量は3000質量ppmであった。
得られた分散体を、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、カプトン500H、厚み125μm)にスピンコート法によって塗布し、90℃のオーブンで2時間保持して塗布膜内の溶媒を揮発させて、酸化銅膜である試料2を得た。得られた試料2の塗布膜厚は1000nmであった。
クエン酸を水に溶かし、48wt%の溶液を調製した。これを還元液として用い、90℃に加熱した状態の当該還元液に、上記の酸化銅膜を2分間浸漬させた。その後、エタノールで洗浄し、銅膜を得た。
本銅膜をXRD(リガク Ultima−IV)で観察した所、酸化第一銅から銅に変化していることがわかった。
<実施例3>
蒸留水(共栄製薬株式会社製)7560g、1,2−プロピレングリコール(関東化学株式会社製)3494gの混合溶媒中に酢酸銅(II)一水和物(関東化学株式会社製)806gを溶かし、外部温調器によって液温を−5℃にした。ヒドラジン一水和物(東京化成工業株式会社製)235gを20分間かけて加え、窒素雰囲気下で30分間攪拌した後、外部温調器によって液温を25℃にし、窒素雰囲気下で90分間攪拌した。攪拌後、遠心分離で上澄みと沈殿物に分離した。得られた沈殿物390gに、DISPERBYK−145(ビッグケミー製)13.7g(分散剤含有量4g)及び1−ブタノール(関東化学株式会社製)907gを加え、窒素雰囲気下でホモジナイザーを用いて分散し、酸化第一銅を含む分散体1365gを得た。
分散体は良好に分散されており、平均粒子径は28nmであった。ヒドラジン量は3000質量ppmであった。
得られた分散体を、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、カプトン500H、厚み125μm)にスピンコート法によって塗布し、室温25℃のクリーンルーム内に24時間放置し、塗布膜内の溶媒を揮発させて、酸化銅膜である試料3を得た。得られた試料3の塗布膜厚は1100nmであった。
次に、めっきの前処理液である上村工業株式会社のACL−009を50mL/Lとなるように水に溶解した処理液を50℃に加温し、試料3を5分間浸漬した。処理後、試料を取り出し水洗した。次に、無電解めっき液である奥野製薬工業株式会社のOPCカッパーNCAを60℃に加温し、試料を30分間浸漬した。処理後、試料を取り出し水洗した。水洗後、4端子法により本試料の抵抗値を測定したところ、4.4μΩ・cmであった。処理後の試料の厚みは3300nmであった。銅がめっき成長することが確認できた。
<実施例4>
蒸留水(共栄製薬株式会社製)7560g、1,2−プロピレングリコール(関東化学株式会社製)3494gの混合溶媒中に酢酸銅(II)一水和物(関東化学株式会社製)806gを溶かし、外部温調器によって液温を−5℃にした。ヒドラジン一水和物(東京化成工業株式会社製)235gを20分間かけて加え、窒素雰囲気下で30分間攪拌した後、外部温調器によって液温を25℃にし、窒素雰囲気下で90分間攪拌した。攪拌後、遠心分離で上澄みと沈殿物に分離した。得られた沈殿物390gに、DISPERBYK−145(ビッグケミー製)13.7g(分散剤含有量4g)及び1−ブタノール(関東化学株式会社製)907gを加え、窒素雰囲気下でホモジナイザーを用いて分散し、酸化第一銅を含む分散体1365gを得た。
分散体は良好に分散されており、平均粒子径は28nmであった。ヒドラジン量は3000質量ppmであった。
得られた分散体を、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、カプトン500H、厚み125μm)にスピンコート法によって塗布し、大気下100℃のオーブンで1時間加熱し、塗布膜内の溶媒を揮発させて、酸化銅膜である試料4を得た。得られた試料4の塗布膜厚は1100nmであった。
次に、めっきの前処理液である上村工業株式会社のACL−009を50mL/Lとなるように水に溶解した処理液を50℃に加温し、試料4を5分間浸漬した。処理後、試料を取り出し水洗した。次に、無電解めっき液である奥野製薬工業株式会社のOPCカッパーNCAを60℃に加温し、試料を30分間浸漬した。処理後、試料を取り出し水洗した。水洗後、4端子法による本試料の抵抗値を測定したところ、13μΩ・cmであった。処理後の試料の厚みは4200nmであった。銅がめっき成長することが確認できた。
<実施例5>
蒸留水(共栄製薬株式会社製)7560g、1,2−プロピレングリコール(関東化学株式会社製)3494gの混合溶媒中に酢酸銅(II)一水和物(関東化学株式会社製)806gを溶かし、外部温調器によって液温を−5℃にした。ヒドラジン一水和物(東京化成工業株式会社製)235gを20分間かけて加え、窒素雰囲気下で30分間攪拌した後、外部温調器によって液温を25℃にし、窒素雰囲気下で90分間攪拌した。攪拌後、遠心分離で上澄みと沈殿物に分離した。得られた沈殿物390gに、DISPERBYK−145(ビッグケミー製)(酸価:76mgKOH/g、アミン価:71mgKOH/g、リン含有有機物である)13.7g(分散剤含有量4g)、及び1−ヘプタノール(関東化学株式会社製)907gを加え、窒素雰囲気下でホモジナイザーを用いて分散し、酸化第一銅を含む分散体1365gを得た。
分散体は良好に分散されており、平均粒子径は36nmであった。ヒドラジン量は3000質量ppmであった。
得られた分散体を、インクジェット印刷によりポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、カプトン500H、厚み125μm)に印刷した。
装置:DIMATIXマテリアルプリンターDMP−2831
ヘッド:DMC−11610
電圧:25V
印刷後、25℃の大気下で24時間乾燥し、塗布膜内の溶媒を揮発させて、酸化銅膜である試料5を得た。得られた試料5の塗布膜厚は200nmであった。
N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)グリシンを水に溶かし、32wt%の溶液を調製した。これを還元液として用い、80℃に加熱した状態の当該還元液に、上記の酸化銅膜を5分間浸漬させた。その後、エタノールで洗浄し、銅膜を得た。
次に、無電解めっき液である奥野製薬工業株式会社のOPCカッパーNCAを60℃に加温し、試料を30分間浸漬した。処理後、試料を取り出し水洗した。水洗後、4端子法による本試料の抵抗値を測定したところ、12μΩ・cmであった。処理後の試料の厚みは1500nmであった。銅がめっき成長することが確認できた。
<実施例6>
蒸留水(共栄製薬株式会社製)7560g、1,2−プロピレングリコール(関東化学株式会社製)3494gの混合溶媒中に酢酸銅(II)一水和物(関東化学株式会社製)806gを溶かし、外部温調器によって液温を−5℃にした。ヒドラジン一水和物(東京化成工業株式会社製)235gを20分間かけて加え、窒素雰囲気下で30分間攪拌した後、外部温調器によって液温を25℃にし、窒素雰囲気下で90分間攪拌した。攪拌後、遠心分離で上澄みと沈殿物に分離した。得られた沈殿物390gに、DISPERBYK−145(ビッグケミー製)(酸価:76mgKOH/g、アミン価:71mgKOH/g、リン含有有機物である)13.7g(分散剤含有量4g)、及び1−ヘプタノール(関東化学株式会社製)907gを加え、窒素雰囲気下でホモジナイザーを用いて分散し、酸化第一銅を含む分散体1365gを得た。
分散体は良好に分散されており、平均粒子径は36nmであった。ヒドラジン量は3000質量ppmであった。
得られた分散体を、インクジェット印刷によりポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、カプトン500H、厚み125μm)に印刷した。
装置:DIMATIXマテリアルプリンターDMP−2831
ヘッド:DMC−11610
電圧:25V
印刷後、25℃の大気下で24時間塗布膜内の溶媒を揮発させて、酸化銅膜である試料6を得た。得られた試料6の塗布膜厚は400nmであった。
次に、無電解めっき液である奥野製薬工業株式会社のOPCカッパーNCAを60℃に加温し、試料6を30分間浸漬した。処理後、試料を取り出し水洗した。水洗後、4端子法による本試料の抵抗値を測定したところ、80μΩ・cmであった。処理後の試料の厚みは1000nmであった。銅がめっき成長することが確認できた。
<実施例7>
蒸留水(共栄製薬株式会社製)7560g、1,2−プロピレングリコール(関東化学株式会社製)3494gの混合溶媒中に酢酸銅(II)一水和物(関東化学株式会社製)806gを溶かし、外部温調器によって液温を−5℃にした。ヒドラジン一水和物(東京化成工業株式会社製)235gを20分間かけて加え、窒素雰囲気下で30分間攪拌した後、外部温調器によって液温を25℃にし、窒素雰囲気下で90分間攪拌した。攪拌後、遠心分離で上澄みと沈殿物に分離した。得られた沈殿物390gに、DISPERBYK−145(ビッグケミー製)(酸価:76mgKOH/g、アミン価:71mgKOH/g、リン含有有機物である)13.7g(分散剤含有量4g)、及び1−ヘプタノール(関東化学株式会社製)907gを加え、窒素雰囲気下でホモジナイザーを用いて分散し、酸化第一銅を含む分散体1365gを得た。
分散体は良好に分散されており、平均粒子径は36nmであった。ヒドラジン量は3000質量ppmであった。
PETフィルム(東洋紡株式会社コスモシャインA4100、厚み100μm)に、コルコートPX(コルコート株式会社)1mLを滴下し、1500rpmで50秒スピンコートした。その後、100℃のオーブンで30分間乾燥し、コーティング層付きPETフィルムを得た。
上記コーティング層付きPETフィルムに上記分散体をインクジェット印刷により印刷した。
装置:DIMATIXマテリアルプリンターDMP−2831
ヘッド:DMC−11610
電圧:25V
印刷後、25℃の大気下で24時間塗布膜内の溶媒を揮発させて、酸化銅膜である試料7を得た。得られた試料7の塗布膜厚は400nmであった。
次に、無電解めっき液である奥野製薬工業株式会社のOPCカッパーNCAを60℃に加温し、試料7を30分間浸漬した。処理後、試料を取り出し水洗した。水洗後、4端子法による本試料の抵抗値を測定したところ、93μΩ・cmであった。処理後の試料の厚みは800nmであった。銅がめっき成長することが確認できた。
なお、本発明は、上記実施の形態や実施例に限定されるものではない。当業者の知識に基づいて上記実施の形態や実施例に設計の変更等を加えてもよく、また、上記実施の形態や実施例を任意に組み合わせてもよく、そのような変更等を加えた態様も本発明の範囲に含まれる。
本発明は、プリント配線板、電子デバイス、電磁波シールド、帯電防止膜等の製造に好適に適用され得る。
100 酸化銅インク
12 酸化銅
13 リン酸エステル塩
13a リン
13b エステル塩

Claims (11)

  1. 平均粒子径が1nm以上100nm以下である酸化銅含有粒子とヒドラジンとを含む分散体を基材に印刷して塗布膜を得る塗布膜形成工程と、
    前記塗布膜を乾燥する乾燥工程と、
    前記乾燥工程後の塗布膜に無電解めっきを行うめっき工程と
    を含む、導電性パターン付構造体の製造方法。
  2. 平均粒子径が1nm以上100nm以下である酸化銅含有粒子とヒドラジンとを含む分散体を基材に印刷して塗布膜を得る塗布膜形成工程と、
    前記塗布膜を乾燥する乾燥工程と、
    前記乾燥工程後の塗布膜を還元液に浸漬し、銅含有膜を得る湿式還元工程と、
    を含む、導電性パターン付構造体の製造方法。
  3. 平均粒子径が1nm以上100nm以下である酸化銅含有粒子とヒドラジンとを含む分散体を基材に印刷して塗布膜を得る塗布膜形成工程と、
    前記塗布膜を乾燥する乾燥工程と、
    前記乾燥工程後の塗布膜を還元液に浸漬し、銅含有膜を得る湿式還元工程と、
    前記銅含有膜を脱脂する脱脂工程と、
    前記脱脂工程後の銅含有膜にめっきを行って、前記銅含有膜とめっき層とを含む導電性層を得るめっき工程と、
    を含む、導電性パターン付構造体の製造方法。
  4. 平均粒子径が1nm以上100nm以下である酸化銅含有粒子とヒドラジンとを含む分散体を基材に印刷して塗布膜を得る塗布膜形成工程と、
    前記塗布膜を乾燥する乾燥工程と、
    前記乾燥工程後の塗布膜を還元液に浸漬し、銅含有膜を得る湿式還元工程と、
    前記銅含有膜に無電解めっきを行って、前記銅含有膜とめっき層とを含む導電性層を得るめっき工程と、
    を含む、導電性パターン付構造体の製造方法。
  5. 前記湿式還元工程と前記めっき工程とを同時に行う、請求項4に記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
  6. アミノ基を有する化合物を含む脱脂液に前記銅含有膜を浸漬することによって前記脱脂を行う、請求項3に記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
  7. 前記還元液が、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)グリシン及び/又はクエン酸を含む、請求項2〜6のいずれか一項に記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
  8. 前記基材が密着層を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
  9. 前記塗布膜形成工程は、インクジェット印刷によって行う、請求項1〜8のいずれか一項に記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
  10. 前記分散体は、リン酸エステルを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
  11. 前記分散体は、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、及び1−オクタノールからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
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