JP2021098867A - アルダル酸を構造単位とする新規ポリマーと製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
そこで、合成方法や後処理方法を検討したところ、得られたポリマーが水可溶部に存在しており、分子量も増加していることが分かり、ポリマーを効率的に回収する方法を見出し、本発明を完成した。
[1]少なくとも1つのアルダル酸に由来する繰り返し単位を含み、重量平均分子量が3800以上である熱可塑性ポリマー。
[2]少なくとも1つのジアミン又はジオールに由来する繰り返し単位を更に含む、[1]に記載の熱可塑性ポリマー。
[3]少なくとも1つのジアミンに由来する繰り返し単位を含む、[2]に記載の熱可塑性ポリマー。
[4]前記アルダル酸が、キシラル酸、アラビナル酸、グルカル酸、マンナル酸、及びガラクタル酸よりなる群から選択される、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー。
[5]結晶性を有する、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー。
[6](i)アルダル酸又はその誘導体、及びジアミン又はジオールを、水及び非極性有機溶媒中で混合する工程、及び
(ii)(i)の工程で得られた反応混合物を減圧下で濃縮する工程、
を含む、アルダル酸に由来する繰り返し単位を含むポリマーを製造する方法。
[7]濃縮した反応混合物を凍結乾燥することを含む、[6]に記載の製造方法。
[8]前記非極性有機溶媒が、クロロホルム、及びジクロロメタンよりなる群から選択される、[6]又は[7]に記載の製造方法。
を、提供するものである。
本発明のポリマーの重量平均分子量は、通常、3800以上、好ましくは4000以上、より好ましくは1万以上、更に好ましくは2万以上である。また、重量平均分子量の上限については特に制限はないが、通常100万以下、好ましくは35万以下、より好ましくは10万以下である。
なお、上記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した値であり、標準物質としてはポリエチレンオキシドが使用される。
なお、ジアミンが芳香族ジアミンである場合は、上述した製造方法の他、通常の溶液重合によっても、アルダル酸に由来する繰り返し単位を含むポリマーを製造することができる。
アルダル酸の誘導体は、アルダル酸の水酸基が保護基に変換されたものを意味し(ここでいう水酸基には、末端カルボキシ基の一部を構成するOH基は含まれない)、水酸基の保護基としては、エステル系保護基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基)、エーテル系保護基(例えば、メチル基、エチル基)等が挙げられる。水酸基の保護基として、好ましくは、アセチル基、メチル基である。なお、通常の方法により、脱保護を行うことが可能であり、例えば合成後のポリマーに対して脱保護を行うことにより、「アルダル酸の水酸基が保護基に変換されている繰り返し単位」を「アルダル酸自体に由来する繰り返し単位」に変換することも可能である。
また、末端のカルボキシ基の一部を構成する水酸基は、ジアミン又はジオールとの反応性を高めるため、塩素等で置換することが好ましい。
グルカル酸カリウム塩は塩水港精糖株式会社から提供を受けた。それ以外の試薬は市販されているものを精製せずに用いた。
以下のスキーム1によりグルカル酸アセテートを合成した。
1H-NMR (CDCl3):δ 2.07 (s, 3H, CH3CO at C4), 2.08 (s, 3H, CH3CO at C3), 2.15 (s, 3H, CH3CO at C5), 2.19 (s, 3H, CH3CO at C2), 5.22 (d, 1H, J4,5= 4.65, C5-H), 5.37 (d, 1H, J2,3= 3.90, C2-H), 5.60 (dd, 1H, J4,5= 4.65, J4,3= 6.22, C4-H), 5.81 (dd, 1H, J3,2= 3.90, J3,4= 6.22, C3-H), 6.9 (broad s, C1OOH and C6OOH). 13C-NMR (CDCl3):δ 20.31 (CH3CO at C2), 20.36 (CH3CO at C5), 20.42 (CH3CO at C3) 20.46 (CH3CO at C4), 69.20 (C3), 69.66 (C5), 69.81 (C4), 70.15 (C2), 169.73 (CH3CO at C5), 170.07 (CH3CO at C3), 170.14 (CH3CO at C4), 170.19 (C6), 170.21 (C1), 170.47 (CH3CO at C2). 10% and 50% decomposition temperature Td10% = 187.5 °C, Td50% = 195.5 °C.
上記のスキーム1により、塩化グルカル酸アセテートを合成した。
GAA(1.0g、2.6mmol)のクロロホルム溶液に、塩化チオニル(1.2mlm、16.5mmol)を室温で加えた。反応混合物を50℃で3時間撹拌し、その後濃縮して、塩化グルカル酸アセテート(GACA)を得た。この生成物を精製せずに重合に用いた。
GAA系ポリエステルの溶液重合
以下のスキーム2の上段により、GAA系ポリエステルの溶液重合を行った。
1,4−ブタンジオール(BO、m=2)(234μL、2.6mmol)及び1,6−ヘキサンジオール(HO、m=3)(312mg、2.6mmol)を用いて、他のポリエステルを合成した。
GAA系ポリアミドの溶液重合
以下のスキーム2の下段により、GAA系ポリアミドの溶液重合を行った。
エチレンジアミン(EA、m=1)(176.4μL、2.6mmol)及びTEA(734μL、5.3mmol)のDMAc(5.0ml)溶液に、GACA(ca.1.0g、2.6mmol)のDMAc(5.0ml)溶液を滴下した。反応混合物を一晩撹拌した。溶媒をエバポレーターにより除去し、乾燥凍結し、ポリアミドの粗生成物を得た。
1,4−ブタンジアミン(BA、m=2)(265μL、2.6mmol)及び1,6−ヘキサンジアミン(HA、m=3)(365μL、2.6mmol)を用いて他のポリアミドを合成した。ポリアミドの分子量は、精製せずにGPCで測定した。
界面重合によるGAA系ポリアミドの合成
以下のスキーム3により、GAA系ポリアミドの界面重合を行った。
BA(300μL、3mmol)及びHA(400μL、3.0mmol)を用いて他のポリアミドを合成し、GAA及びBA又はHAからなる純粋なポリアミドの収量は、各々、1.7mg及び4.2mgであった。
図1のプロトンのピークを同定した。5−6ppmの範囲のブロードなピークはグルカル酸主鎖のプロトン由来であり、ポリマー状生成物が得られたことが示唆された。また、2.1ppmにアセチル基由来のピークが見られた。図1の(a)における3.4ppmのピークはEAのCH2由来であり、図1の(b)における3.2と1.5ppmのピークはBAのCH2由来であり、図1の(c)における3.2、1.3、1.5ppmのピークはHAのCH2由来であった。1H−NMRの測定からジアミンとグルカル酸アセテートとの重合反応が進んだことが分かる。
実施例1、比較例1〜2で得られたポリマーの分子量を、20mM LiCl/DMAcを溶媒としてGPC(SCL−10A,RID−10A,SIL−10Ai,CTO−10AC, and LC−10Ai,Shimadzu)により測定した。GPC曲線を図2に示す。
図2の(a)、(b)は、GAA及びEO、BO、HOからなるポリエステルのGPC溶出曲線及び分子量分布であり(比較例1)、(c)、(d)は、GAA及びEA、BA、HAからなる溶液重合によるポリアミドのGPC溶出曲線及び分子量分布であり(比較例2)、(e)、(f)は、GAA及びEA、BA、HAからなる界面重合によるポリアミドのGPC溶出曲線及び分子量分布である(実施例1)。
図2(e)の溶出曲線のうち、14分付近に溶出した最も高分子量のピークが生成したポリマー由来である。16分付近の低分子量側のピークの分子量は300程度だったことから、モノマーと考えられる。
ポリマーの分子量を表1に示す。全てのジアミンとの界面重合において、14.5×103〜20.8×103という高分子量化合物が溶液中に生成していることが示される。
GACAとEAを実施例1と同じ仕込み比率で界面重合を行った。EAの炭酸水素ナトリウム水溶液をGACAのクロロホルム溶液に入れた後、エバポレーターを使わず、三日間攪拌した。水とクロロホルムで分液し、有機層を濃縮乾燥した。水層を凍結乾燥した。生成物の分子量をクロロホルムまたは20mM LiCl/DMAcでGPC測定した。有機層の生成物の重量平均分子量は1,300であり、水層の生成物の分子量は1,000ぐらいであった。
実施例1で得られたポリアミドについて透析前のサンプルを混合物のまま測定した。
TGA曲線を図3に示す。ポリアミドは150〜200℃に分解があった。これはGAAとジアミンモノマー由来であった。加熱後残った40%の残存物は塩であった。
DSC曲線を図4に示す。EA、BA、HAとの重合生成物は119.5、139.4、141.7℃に吸熱ピークが見られた。GAAとHAの融点は50と44℃であり、EA、BAは室温下で液体であるから、これらのピークは生成物の融点であった。従って、生成物は結晶性ポリアミドと考えられた。
図5に実施例1で得られたポリアミドのPOM写真を示す。開始温度40℃と比較し、EA、BA、HAとの重合生成物は、各々、120℃、140℃、140℃に溶融により透明になった部分が見える。得られた生成物は熱可塑性であった。
溶液重合によるGAA系ポリアミドの合成
以下のスキーム4により、GACAと芳香族ジアミンとの溶液重合を行い、GAA系ポリアミドを合成した。
GACA、mXDA、Et3N及びDMAcの使用量等の重合条件、並びにポリアミド生成物の分子量及び収率を表2に示す。
TGA曲線を図8に示す。これらポリアミドは230℃付近から分解が開始することが分かった。
DSC曲線を図9に示す。表2の番号1及び2の重合条件で得られた重合生成物は、それぞれ149.8℃及び132.5℃に吸熱ピークが見られた。これらのピークは生成物の融点である。従って、生成物は結晶性ポリアミドと考えられた。
溶液重合によるGAA系ポリアミドの合成
以下のスキーム5により、GACAと芳香族ジアミンとの溶液重合を行い、GAA系ポリアミドを合成した。
ポリアミド生成物の分子量は、Mw=7.8×103、Mn=4.1×103、Mw/Mn=1.9であり、収率は45.2%であった。
実施例3で得られたポリアミドの1H−NMRを図10に示す。図10には、ピークの帰属を示すが、ポリアミド生成物の化学構造が確認できる。
界面重合によるGAA系ポリアミドの合成
以下のスキーム6により、GACAと芳香族ジアミンとの界面重合を行い、GAA系ポリアミドを合成した。
ポリアミド生成物の分子量は、Mw=6.6×103、Mn=1.6×103、Mw/Mn=4.0であった。
実施例4で得られたポリアミドの1H−NMRを図11に示す。図11には、ピークの帰属を示すが、ポリアミド生成物の化学構造が確認できる。
また、実施例4で得られたポリアミドのTGA曲線及びDSC曲線を図12に示す。
TGA曲線を図12左に示す。ポリアミドは150〜200℃に分解があった。
DSC曲線を図12右に示す。GAA由来の融点と思われる吸熱が50〜70℃見られたが、それ以外の吸熱ピークは見られなかった。分子量が6000と低いので、結晶性か非晶性かについては言及することは難しい。
GAA系ポリアミドの脱保護
以下のスキーム7により、GAA系ポリアミドからアセチル基の脱保護を行い、GA系ポリアミドへと変換した。
GAA系ポリアミド(250mg)をDMAc(5.0mL)に溶かし、ここに28%アンモニア水(1.5mL、2.0mL又は2.5mL)を添加して、室温にて24時間攪拌した。
1.5mL及び2.5mLのアンモニア水を添加した場合は、24時間後、反応混合物中にアセトンを加えてポリアミドを沈殿させ、これを回収した。1.5mLのアンモニア水を添加した場合の収量は169.0mgであり、2.5mLのアンモニア水を添加した場合の収量は138.0mgであった。
また、2.0mLのアンモニア水を添加した場合は、24時間後、反応混合物中に2−プロパノールを加えてポリアミドを沈殿させ、これを回収した。2.0mLのアンモニア水を添加した場合の収量は87.8mgであった。
グルカル酸のプロトン由来のピークが5−6ppm範囲(a)から3.7−4.3ppm範囲(b,c,d)にシフトし、脱保護が行われたことが分かる。2.5mLのアンモニア水を添加した場合は、他と比べてOHのピークがブロードであり、脱保護がよく進行していることが分かる。なお、沈殿にアセトンを用いた場合、回収した生成物の純度が低く、一方、2−プロパノールを用いた沈殿では、回収した生成物の純度が高いことが分かる。
Claims (8)
- 少なくとも1つのアルダル酸に由来する繰り返し単位を含み、重量平均分子量が3800以上である熱可塑性ポリマー。
- 少なくとも1つのジアミン又はジオールに由来する繰り返し単位を更に含む、請求項1に記載の熱可塑性ポリマー。
- 少なくとも1つのジアミンに由来する繰り返し単位を含む、請求項2に記載の熱可塑性ポリマー。
- 前記アルダル酸が、キシラル酸、アラビナル酸、グルカル酸、マンナル酸、及びガラクタル酸よりなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー。
- 結晶性を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリマー。
- (i)アルダル酸又はその誘導体、及びジアミン又はジオールを、水及び非極性有機溶媒中で混合する工程、及び
(ii)(i)の工程で得られた反応混合物を減圧下で濃縮する工程、
を含む、アルダル酸に由来する繰り返し単位を含むポリマーを製造する方法。 - 濃縮した反応混合物を凍結乾燥することを含む、請求項6に記載の製造方法。
- 前記非極性有機溶媒が、クロロホルム、及びジクロロメタンよりなる群から選択される、請求項6又は7に記載の製造方法。
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