JP2021095612A - オーステナイト系耐熱合金部材およびオーステナイト系耐熱合金素材 - Google Patents

オーステナイト系耐熱合金部材およびオーステナイト系耐熱合金素材 Download PDF

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友彰 浜口
Tomoaki HAMAGUCHI
友彰 浜口
仙波 潤之
Mitsuyuki Senba
潤之 仙波
淳一 樋口
Junichi Higuchi
淳一 樋口
林 宏太郎
Kotaro Hayashi
宏太郎 林
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Abstract

【課題】クリープ破断強度および耐再熱割れ性に優れ、かつ熱間加工時の耐割れ性に優れたオーステナイト系耐熱合金部材を提供する。【解決手段】厚さ20mm以上であり、所定の化学組成を有し、表層部における金属組織が、ASTM粒度番号7.0以上であり、厚さ中央部における金属組織が、ASTM粒度番号4.0以下であり、厚さ中央部に含まれる粒子径が50nm以下のTi炭硫化物およびTi硫化物の合計個数密度が50〜500個/μm3である、オーステナイト系耐熱合金部材。【選択図】なし

Description

本発明は、オーステナイト系耐熱合金部材およびオーステナイト系耐熱合金素材に関する。
近年、環境負荷軽減の観点から発電用ボイラなどでは運転条件の高温・高圧化が世界的規模で進められており、過熱器管および再熱器管の材料として使用されるオーステナイト系耐熱合金部材には、より優れたクリープ破断強度を有することが求められている。
このような技術的背景のもと、種々のオーステナイト系耐熱合金に関する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、表面加工を施して330HV以上となる塑性加工硬化層を表面に形成させた後、その硬化した表面部分に対して、十分な再結晶を生じさせるとともに再結晶粒内または粒界にCr炭化物を分散して析出させるための局部的な加熱処理を施して、耐粒界腐食性と耐応力腐食割れ性を高めた、オーステナイト系合金構造物とその製造法が開示されている。
また、特許文献2には、結晶粒の微細化を行うとともに、結晶粒界に析出するSを抑制することにより、熱間加工性を向上させた、高Ni、高Crステンレス鋼が開示されている。特許文献3には、Ni基合金製品が提案されている。このNi基合金製品は、Wを活用して高温強度を高めるとともに、有効B量を管理することにより、熱間加工性を改善するとともに溶接割れを防止した、特に大型製品として好適なオーステナイト系耐熱合金製品である。
さらに、特許文献4には、Cr、TiとZrの活用によりα−Cr相を強化相としてクリープ強度を高めた、オーステナイト系耐熱合金ならびに、その合金からなる耐熱耐圧部材およびその製造方法が提案されている。特許文献5には、多量のWを含有させるとともにAlとTiとを活用して、固溶強化とγ’相の析出強化によって強度を高めた、Ni基耐熱合金が提案されている。
そして、特許文献6および7には、熱間加工時の割れ性に優れ、厚肉、大型高温部材として好適に用いることのできる、オーステナイト系耐熱合金部材が提案されている。特許文献8には、HAZの液化割れおよびHAZの脆化割れをともに防止できるとともに、溶接施工中に発生する溶接作業性に起因した欠陥も防止でき、さらに、高温でのクリープ強度にも優れるオーステナイト系耐熱合金が提案されている。
特開2000−265249号公報 特開2002−80942号公報 特開2011−63838号公報 国際公開第2009/154161号 国際公開第2010/038826号 特開2014−34725号公報 特開2014−145109号公報 特開2010−150593号公報
主蒸気管または再熱蒸気管等の厚肉かつ大径の高温部材として使用されるオーステナイト系耐熱合金部材には、より優れたクリープ破断強度を有するとともに、溶接後熱処理時または使用時に問題となる再熱割れを回避できる優れた耐再熱割れ性を有することも求められる。一般に、より優れたクリープ破断強度および耐再熱割れ性の両方を得ることは困難であり、特許文献1〜8のいずれにおいても、上述の課題解決には至っておらず、改善の余地が残されている。
本発明は上記の問題を解決し、クリープ破断強度および耐再熱割れ性に優れ、厚さが20mm以上の厚肉の場合であっても、熱間加工時、例えば、熱間曲げ加工時または熱間鍛造時の表面欠陥が防止できて、発電用ボイラの主蒸気管または再熱蒸気管等の厚肉かつ大径の高温部材に熱間加工して用いるのに好適な、オーステナイト系耐熱合金部材およびその素材を提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、下記のオーステナイト系耐熱合金部材およびオーステナイト系耐熱合金素材を要旨とする。
(1)厚さ20mm以上のオーステナイト系耐熱合金部材であって、
前記部材の化学組成が、質量%で、
C:0.009%以下、
Si:2.0%以下、
Mn:3.0%以下、
P:0.040%以下、
S:0.0001〜0.0100%、
O:0.010%以下、
N:0.020%以下、
Cr:25.0〜38.0%、
Ni:40.0〜60.0%、
W:3.0〜10.0%、
Ti:0.01〜1.20%、
Al:0.30%以下、
B:0.0001〜0.010%、
Zr:0.0001〜0.50%、
Co:0〜1.0%、
Cu:0〜1.0%、
Mo:0〜1.0%、
V:0〜0.50%、
Nb:0〜0.50%、
残部:Feおよび不純物であり、
前記部材の表層部における金属組織が、ASTM粒度番号7.0以上であり、
前記部材の厚さ中央部における金属組織が、ASTM粒度番号4.0以下であり、
前記部材の厚さ中央部に含まれる粒子径が50nm以下のTi炭硫化物およびTi硫化物の合計個数密度が50〜500個/μmである、
オーステナイト系耐熱合金部材。
(2)前記化学組成が、質量%で、
Co:0.01〜1.0%、
Cu:0.01〜1.0%、
Mo:0.01〜1.0%、
V:0.01〜0.50%、および
Nb:0.01〜0.50%、
から選択される1種以上を含有する、
上記(1)に記載のオーステナイト系耐熱合金部材。
(3)前記化学組成が、質量%で、
C:0.0001〜0.009%、
を含有する、
上記(1)または(2)に記載のオーステナイト系耐熱合金部材。
(4)(1)から(3)までのいずれかに記載のオーステナイト系耐熱合金部材の素材として用いられるオーステナイト系耐熱合金素材であって、
(1)から(3)までのいずれかに記載の化学組成を有し、
表層部における硬さが、300HV0.1以上である、
オーステナイト系耐熱合金素材。
本発明のオーステナイト系耐熱合金部材は、耐再熱割れ性と長時間クリープ破断強度との両方に優れ、かつ厚さが20mm以上の厚肉であっても、熱間加工時の表面での割れ(以下、「表面欠陥」ともいう。)を防止できる。
熱間加工時の表面欠陥を防止する方法について、これまでの発明者らの研究により、以下の(a)〜(e)に示す知見が得られている。
(a)熱間加工時の表面欠陥の発生は、熱間加工前の部材表面の金属組織と関係する。例えば、部材表面に加工層が残存した状態で熱間加工すると、熱間加工中、加工層内の転位上に炭化物が析出し、その結果、粒内が強化されて相対的に粒界が弱化するので、表面近傍に粒界割れが発生する。加えて、部材表面の結晶粒径が粗粒であるほど部材は変形しにくくなるため、粗粒組織も粒界弱化を助長することとなる。
(b)熱間加工時の表面欠陥を防止するためには、部材表面に加工層を残存させた状態で熱処理を施し、表面近傍を再結晶化させることで転位上への析出を抑制するとともに、細粒効果によって表面近傍の変形抵抗を下げることが粒界弱化の低減に効果的である。
(c)表面欠陥が存在する場合、クリープ亀裂の発生起点となる。したがって、優れたクリープ特性を維持するためにも表面欠陥を防止する必要がある。
(d)熱間加工時の表面欠陥を防止するためには、部材表面からの深さが50μmまでの領域(以下、上記領域を「表層部」ともいう。)における金属組織を、平均結晶粒度でASTM粒度番号7.0以上の再結晶粒にする必要がある。
(e)また、優れたクリープ特性を維持するためには、表層部の金属組織を上記の再結晶粒として表面欠陥を防止するとともに、部材厚さの25%となる各表面側を除外した領域(以下、上記領域を「部材の厚さ中央部」ともいう。)における金属組織を、平均結晶粒度でASTM粒度番号4.0以下の粗粒にする必要がある。
また、本発明者らは、オーステナイト系耐熱合金の耐再熱割れ性とクリープ破断特性とを詳細に調査した結果、以下の(f)、(g)に示す知見を得るに至った。
(f)一般的に、優れたクリープ破断強度を得るためには、所定量以上のCを含有させることにより、粒界の析出強化を行う必要があると考えられている。しかしながら、多量のCを含有させると、炭化物による粒内析出強化に伴い粒界弱化が生じることとなり、再熱割れが生じる原因となる。すなわち、耐再熱割れ性とクリープ破断特性との間には、いわゆるトレードオフの関係が存在することとなる。
(g)本発明者らが上記の問題を解決するために検討した結果、α−Cr相およびNiTiといった析出物を活用することにより、C含有量を低減したとしても優れたクリープ破断強度を確保することが可能になることを見出した。そして、C含有量を低減することにより、炭化物の粒内析出強化によって相対的に発生する粒界弱化が抑制され、耐再熱割れ性を向上させることが可能になる。
さらに、本発明者らは、オーステナイト系耐熱合金のクリープ破断特性を詳細に調査した結果、以下の知見を得るに至った。
(h)部材の厚さ中央部に予め、極めて微細なTi炭硫化物および/またはTi硫化物を所定量以上析出させることによって、使用環境中において、α−Cr相を粒内に微細析出させることが可能となる。
(i)粒内に微細析出したα−Cr相は、粒界に析出した場合に比べて、クリープ破断強度を向上させる効果が高い。
本発明は上記知見に基づいてなされたものである。以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
1.化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.009%以下
Cは、一般的には、オーステナイトを安定にするとともに粒界に微細な炭化物を形成し、高温でのクリープ破断強度を向上させる元素であることが知られている。しかしながら、本発明においては、C含有量が過剰になると耐再熱割れ性の低下を招く。このため、C含有量は0.009%以下とする。C含有量は0.008%以下であるのが好ましく、0.005%以下であるのがより好ましい。
なお、C含有量について特に下限を設ける必要はないが、極端な低減は製造コストの上昇を招く。そのため、C含有量は0.0001%以上であるのが好ましく、0.0005%以上であるのがより好ましく、0.0008%以上であるのがさらに好ましい。
Si:2.0%以下
Siは、脱酸作用を有するとともに、高温での耐食性および耐酸化性の向上に有効な元素である。しかしながら、Siが過剰に含有された場合にはオーステナイトの安定性が低下して、靱性およびクリープ破断強度の低下を招く。そのため、Si含有量は2.0%以下とする。Si含有量は1.5%以下であるのが好ましく、1.0%以下であるのがより好ましく、0.5%以下であるのがさらに好ましい。
なお、Si含有量について特に下限を設ける必要はない。しかし、Si含有量を極端に低減すると、脱酸効果が十分に得られず合金の清浄性が劣化する。また、高温での耐食性および耐酸化性の向上効果も得難くなり、製造コストも大きく上昇する。そのため、Si含有量は0.02%以上とするのが好ましく、0.05%以上とするのがより好ましい。
Mn:3.0%以下
Mnは、Siと同様、脱酸作用を有するだけでなく、オーステナイトの安定化にも寄与する元素である。しかしながら、Mn含有量が過剰になると脆化を招き、さらに、靱性およびクリープ延性の低下も生じる。そのため、Mn含有量は3.0%以下とする。Mn含有量は2.8%以下であるのが好ましく、2.5%以下であるのがより好ましい。
なお、Mn含有量についても特に下限を設ける必要はない。しかし、Mn含有量を極端に低減すると、脱酸効果が十分に得られず合金の清浄性を劣化させる。また、熱間加工性が劣化するだけでなく、オーステナイト安定化効果が得難くなり、製造コストも大きく上昇する。そのため、Mn含有量は0.005%以上とするのが好ましく、0.010%以上とするのがより好ましい。
P:0.040%以下
Pは、不純物として合金中に含有され、多量に含まれる場合には、熱間加工性および溶接性を著しく低下させ、さらに、長時間使用後のクリープ延性も低下させる。そのため、P含有量は0.040%以下とする。P含有量は0.030%以下であるのが好ましく、0.020%以下であるのがより好ましい。
なお、Pの含有量は可能な限り低減することが好ましいが、極度の低減は製造コストの増大を招く。そのため、P含有量は0.0005%以上とするのが好ましく、0.0008%以上とするのがより好ましい。
S:0.0001〜0.0100%
Sは、強化相であるα−Cr相の析出核となるTi炭硫化物および/またはTi硫化物を形成するために必要な元素である。この効果を十分に得るためには、S含有量を0.0001%以上とする必要がある。しかしながら、Sが多量に含まれる場合には、熱間加工性および溶接性が著しく低下し、さらに、長時間使用後のクリープ延性も低下する。したがって、S含有量は0.0001〜0.0100%とする。S含有量は0.0003%以上であるのが好ましく、0.0005%以上であるのがより好ましい。また、S含有量は0.0090%以下であるのが好ましく、0.0080%以下であるのがより好ましい。
O:0.010%以下
O(酸素)は、不純物として合金中に含まれ、その含有量が過剰になると熱間加工性が低下し、さらに靱性および延性の劣化を招く。このため、O含有量は0.010%以下とする。O含有量は0.008%以下であるのが好ましく、0.005%以下であるのがより好ましい。
なお、O含有量について特に下限を設ける必要はないが、極端な低減は製造コストの上昇を招く。そのため、O含有量は0.0005%以上とするのが好ましく、0.0008%以上とするのがより好ましい。
N:0.020%以下
Nは、オーステナイトを安定にするのに有効な元素であるものの、過剰に含有されると、高温での使用中に多量の微細窒化物が粒内に析出してクリープ延性および靱性の低下を招く。そのため、N含有量は0.020%以下とする。N含有量は0.018%以下であるのが好ましく、0.015%以下であるのがより好ましい。
なお、N含有量について特に下限を設ける必要はない。しかし、N含有量を極端に低減すると、オーステナイトを安定にする効果が得難くなるだけでなく、製造コストも大きく増加する。そのため、N含有量は0.0005%以上とするのが好ましく、0.0008%以上とするのがより好ましい。
Cr:25.0〜38.0%
Crは、高温での耐酸化性および耐食性の確保のために必須の元素である。上記の効果を得るためには、Cr含有量を25.0%以上とする必要がある。しかしながら、Cr含有量が38.0%を超えると、高温でのオーステナイトの安定性が劣化してクリープ破断強度の低下を招く。したがって、Cr含有量は25.0〜38.0%とする。Cr含有量は25.5%以上であるのが好ましく、26.0%以上であるのがより好ましい。また、Cr含有量は37.5%以下であるのが好ましく、37.0%以下であるのがより好ましい。
Ni:40.0〜60.0%
Niは、オーステナイトを得るために有効な元素であり、長時間使用時の組織安定性を確保するために必須の元素である。上述のCr含有量の範囲において、上記したNiの効果を十分に得るためには、Ni含有量を40.0%以上とする必要がある。しかしながら、Niは高価な元素であり、多量に含有させるとコストの増大を招く。したがって、Ni含有量は40.0〜60.0%とする。Ni含有量は41.0%以上であるのが好ましく、42.0%以上であるのがより好ましい。また、Ni含有量は58.0%以下であるのが好ましく、56.0%以下であるのがより好ましい。
W:3.0〜10.0%
Wは、マトリックスに固溶して高温でのクリープ破断強度の向上に大きく寄与する元素である。その効果を十分に発揮させるためには、W含有量を3.0%以上とする必要がある。しかしながら、Wを過剰に含有させても効果は飽和し、かえってクリープ破断強度を低下させる。さらに、Wは高価な元素であるため、過剰に含有させるとコストの増大を招く。したがって、W含有量は3.0〜10.0%とする。W含有量は3.5%以上であるのが好ましく、4.0%以上であるのがより好ましい。また、W含有量は9.5%以下であるのが好ましく、9.0%以下であるのがより好ましい。
Ti:0.01〜1.20%
Tiは、強化相であるα−Cr相の析出核となるTi炭硫化物および/またはTi硫化物を形成するために必要な元素であり、加えて、強化相であるNiTiの形成にも必要な元素でもある。それらの効果を得るためには、Ti含有量を0.01%以上とする必要がある。しかしながら、Ti含有量が過剰になると炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性および靱性の低下を招く。したがって、Ti含有量は0.01〜1.20%とする。Ti含有量は0.05%以上であるのが好ましく、0.10%以上であるのがより好ましい。また、Ti含有量は1.10%以下であるのが好ましく、1.00%以下であるのがより好ましい。
Al:0.30%以下
Alは、脱酸作用を有する元素である。しかしながら、Alの含有量が過剰になると合金の清浄性が著しく劣化して、熱間加工性および延性が低下する。そのため、Al含有量は0.30%以下とする。Al含有量は0.20%以下であるのが好ましく、0.10%以下であるのがより好ましい。
なお、Alの含有量について特に下限を設ける必要はない。しかし、Al含有量を極端に低減すると、脱酸効果が十分に得られず合金の清浄性を逆に劣化させるとともに、製造コストの上昇を招く。そのため、Al含有量は0.0005%以上とするのが好ましい。Alの脱酸効果を安定して得るとともに、良好な清浄性を確保するためには、Al含有量は0.001%以上とするのがより好ましい。
B:0.0001〜0.010%
Bは、高温での使用中に粒界に偏析して粒界を強化するとともに粒界炭化物を微細分散させることにより、クリープ破断強度を向上させるのに必要な元素である。この効果を得るためにはB含有量を0.0001%以上とする必要がある。しかしながら、B含有量が過剰になると、溶接性が劣化することに加えて、熱間加工性が劣化する。したがって、B含有量は0.0001〜0.010%とする。B含有量は0.0005%以上であるのが好ましく、0.001%以上であるのがより好ましい。また、B含有量は0.008%以下であるのが好ましく、0.006%以下であるのがより好ましい。
Zr:0.0001〜0.50%
Zrは、クリープ破断強度を向上させる作用を有する。すなわち、Zrは、粒界強化元素であり、高温でのクリープ破断強度向上に寄与し、さらに、クリープ延性の向上にも寄与する。この効果を得るためにはZr含有量を0.0001%以上とする必要がある。しかしながら、Zr含有量が0.50%を超えると熱間加工性が低下する。したがって、Zr含有量は0.0001〜0.50%とする。Zr含有量は0.30%以下であるのが好ましい。
本発明のオーステナイト系耐熱合金の化学組成において、残部はFeおよび不純物である。Feは安価な原料であるため、0.1%〜20.0%含まれることが好ましい。また、ここで「不純物」とは、合金を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
本発明のオーステナイト系耐熱合金には、さらに、Co、Cu、Mo、VおよびNbから選択される1種以上の元素を含有させてもよい。
Co:0〜1.0%
Coは、クリープ破断強度を向上させる作用を有する。すなわち、Coは、Niと同様オーステナイト生成元素であり、相安定性を高めてクリープ破断強度の向上に寄与する。そのため、Coを含有させてもよい。しかしながら、Coは極めて高価な元素であるため、Coを過剰に含有させると大幅なコスト増を招く。したがって、Co含有量は1.0%以下とする。Co含有量は0.8%以下であるのが好ましい。一方、上記の効果を得たい場合は、Co含有量を0.01%以上とするのが好ましい。
Cu:0〜1.0%
Cuは、クリープ破断強度を向上させる作用を有する。すなわち、Cuは、NiおよびCoと同様オーステナイト生成元素であり、相安定性を高めてクリープ破断強度の向上に寄与する。そのため、Cuを含有させてもよい。しかしながら、Cuが過剰に含有された場合には熱間加工性の低下を招く。したがって、Cu含有量は1.0%以下とする。Cu含有量は0.8%以下であるのが好ましい。一方、上記の効果を得たい場合は、Cu含有量を0.01%以上とするのが好ましい。
Mo:0〜1.0%
Moは、クリープ破断強度を向上させる作用を有する。すなわち、Moは、マトリックスに固溶して高温でのクリープ破断強度を向上させる作用を有する。そのため、Moを含有させてもよい。しかしながら、Moが過剰に含有された場合にはオーステナイトの安定性が低下して、かえってクリープ破断強度の低下を招く。したがって、Mo含有量は1.0%以下とする。Mo含有量は0.8%以下であるのが好ましい。一方、上記の効果を得たい場合は、Mo含有量を0.01%以上とするのが好ましい。
V:0〜0.50%
Vは、クリープ破断強度を向上させる作用を有する。すなわち、Vは、CまたはNと結合して微細な炭化物または炭窒化物を形成し、クリープ破断強度を向上させる作用を有する。そのため、Vを含有させてもよい。しかしながら、Vが過剰に含有された場合、炭化物または炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性の低下を招く。したがって、V含有量は0.50%以下とする。V含有量は0.40%以下であるのが好ましい。一方、上記の効果を得たい場合は、V含有量を0.01%以上とするのが好ましい。
Nb:0〜0.50%
Nbは、Vと同様にCまたはNと結合して微細な炭化物または炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ破断強度向上に寄与する。そのため、Nbを含有させてもよい。しかしながら、Nbの含有量が過剰になると炭化物または炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性および靱性の低下を招く。したがって、Nb含有量は0.50%以下とする。Nb含有量は0.40%以下であるのが好ましい。一方、上記の効果を得たい場合は、Nb含有量を0.01%以上とするのが好ましい。
上記のCo、Cu、Mo、VおよびNbは、そのうちのいずれか1種のみ、または、2種以上を複合的に含有させることができる。これらの元素を複合して含有させる場合の合計量は、4.0%であってもよい。
2.部材の金属組織
本発明のオーステナイト系耐熱合金部材の金属組織は、表層部において、ASTM粒度番号7.0以上であり、厚さ中央部において、ASTM粒度番号4.0以下である。
前述のように、本発明において、「表層部」とは部材表面からの深さが50μmまでの領域をいう。また、「厚さ中央部」とは、部材厚さの25%となる各表面側を除外した領域をいう。
なお、熱間加工時の表面欠陥を防止するためには、表層部の金属組織は細粒であるほど好ましく、平均結晶粒度について、上限は特に規定しない。しかしながら、過度に細粒な組織とするのは、技術的に困難であるだけでなく、製造コストの上昇を招くため、ASTM粒度番号12.0以下とするのが好ましい。
また、優れたクリープ特性を得るためには、部材の厚さ中央部の平均結晶粒度は、ASTM粒度番号3.0以下であるのが好ましく、2.0以下であるのがより好ましい。一方、部材の厚さ中央部の金属組織が過度に粗粒であるとクリープ延性の劣化および衝撃値の低下を招くだけでなく、部材の内部での割れを生じさせる場合があるため、部材の厚さ中央部の平均結晶粒度は、ASTM粒度番号−2.0以上であるのが好ましく、−1.0以上であるのがより好ましい。
表層部および厚さ中央部の平均結晶粒度は、下記の手順で求めることができる。部材の横断面が被検面となるように切断し、鏡面研磨した後、王水で腐食して、倍率100倍で3視野光学顕微鏡観察して、切断法により平均粒切片長さを測定し、その平均粒切片長さを1.128倍して平均結晶粒径を求める。さらに、JIS G 0551−02(2009)により結晶粒度に換算する。
3.素材の硬さ
本発明のオーステナイト系耐熱合金部材は、後述するように、表面に機械的に強加工が施されたオーステナイト系耐熱合金素材に対して、熱処理を施して再結晶させることにより得られる。
強加工を施した後で再結晶熱処理前の素材の表層部における硬さは、300HV0.1以上であるのが好ましく、350HV0.1以上であるのがより好ましい。素材の表層部における硬さが300HV0.1未満では、再結晶熱処理後の部材表層部の平均結晶粒度がASTM粒度番号7.0以上とならないおそれがあるためである。
そして、再結晶熱処理後の部材の表層部の硬さは、250HV0.1以下であるのが好ましく、220HV0.1以下であるのがより好ましい。再結晶熱処理後の部材表層部の硬さが250HV0.1を超えると、粒内の変形抵抗が高く、粒界破壊を助長するおそれがあるためである。
ここで、「HV0.1」は、試験力を0.9807N(100gf)として、マイクロビッカース硬さ試験を実施した場合の「硬さ記号」を意味する。
なお、表層部の硬さにおいて、HV0.1が300以上とは、表層部の転位密度が1.0×1014/m以上であることに相当する。すなわち、強加工を施した後で再結晶熱処理前の素材の表層における転位密度は、1.0×1014/m以上であることが好ましい。
「転位密度」は、Co管球を用いてXRDにより試料表面をθ−2θ測定し、得られたX線回折データから{111}、{200}、{220}および{311}面のLorentz関数近似によって回折ピークの角度、半値幅、回折強度を求め、Modified Williamson-Hallの式およびModified Warren-Averbachの式より算出することができる。
4.Ti炭硫化物およびTi硫化物
上述のように、本発明において、当該オーステナイト系耐熱合金部材の長時間クリープ破断強度を得るためには、α−Cr相の析出核として作用する、微細なTi炭硫化物およびTi硫化物の個数密度の合計量を適切に制御する必要がある。具体的には、部材の厚さ中央部に含まれる50nm以下のTi炭硫化物およびTi硫化物の合計個数密度を、50〜500個/μmの範囲に制御する必要がある。
部材の厚さ中央部に含まれるTi炭硫化物およびTi硫化物の合計個数密度が50個/μmを下回る場合、十分なα−Cr相を得られず、優れたクリープ破断強度を得ることができない。一方、部材の厚さ中央部に含まれるTi炭硫化物およびTi硫化物の合計個数密度が500個/μmを超える場合、α−Crの粗大化が早まり、かえってクリープ破断強度が低下する。クリープ破断強度向上の観点からは、部材の厚さ中央部に含まれるTi炭硫化物およびTi硫化物の合計個数密度は100個/μm以上であることが好ましい。
本発明において、部材の厚さ中央部に含まれる50nm以下のTi炭硫化物およびTi硫化物の合計個数密度は透過電子顕微鏡(TEM)によって測定する。具体的には、試料の厚さ中央部から、厚さ100nmの薄膜を作製し、TEMにより観察する。この時の倍率は100000倍とする。そして、Ti炭硫化物またはTi硫化物と特定されたものの面積を画像処理により測定し、円相当径が50nm以下であるTi炭硫化物およびTi硫化物の個数の合計を計測する。そして、計測された合計個数を視野の体積で除することにより、合計個数密度を求める。
5.製造方法
本発明のオーステナイト系耐熱合金素材の製造方法については特に制限はないが、例えば、上述の化学組成を有する鋼塊または鋳片に、熱間鍛造等の熱間加工を施し、続いて、必要に応じて熱間押出等の異なる方法の熱間加工をさらに施した後、溶体化熱処理を行い、その後、機械的に強加工を施すことによって製造することができる。
適切な条件で溶体化熱処理を行うことにより、厚さ中央部における平均結晶粒度を制御することが可能である。具体的には、溶体化熱処理の条件としては、1050〜1280℃の温度域において、0.1〜5h保持するのが好ましい。溶体化熱処理の温度域は1100〜1250℃とするのがより好ましく、保持時間は0.2〜1.5hとするのがより好ましい。加熱保持後は、水冷することが望ましい。
また、機械的に強加工を施す方法については特に制限はなく、例えば、工具による切削、研磨、レーザーもしくはサンドブラスト等を活用したショットピーニング、ロールもしくは油圧プレスによる冷間圧延、または冷間での抽伸等を行うことができる。
さらに上記のオーステナイト系耐熱合金素材に対して、再結晶熱処理を施すことによって、本発明のオーステナイト系耐熱合金部材が得られる。具体的には、再結晶させるための熱処理の条件としては、980〜1180℃の温度域で0.1〜3h保持するのが好ましい。再結晶熱処理の温度域は1000〜1150℃とするのがより好ましく、保持時間は0.5〜1.5hとするのがより好ましい。
そして、上記の工程の後、微細なTi炭硫化物および/またはTi硫化物を析出させるために、300℃までの平均冷却速度が0.1〜5.0℃/sとなる条件で室温まで冷却する。
6.割れの評価方法
本発明のオーステナイト系耐熱合金部材は、熱間加工時の表面欠陥を防止できるものである。一方、部材内部の微小な割れについては、生じないのが最も望ましいことは言うまでもないが、たとえ生じたとしても、割れの深さが小さければ、実プラントにおいて重大な事故につながる可能性は低く、大きな問題とはならない。
したがって、本発明のオーステナイト系耐熱合金部材は、再結晶粒からなる部材の表層を含む試験片を、1100℃において0.0001s−1のひずみ速度で引張試験を行い、伸びが10%となった時の試験片内部における割れの深さが20μm以下であるのが望ましい。
上記の試験に用いる試験片は、部材の少なくとも一方の面の表層を含むものとし、両方の面を含んでいてもよい。また、形状については、JIS Z 2241(2011)に規定される、断面が長方形または正方形となるような板状試験片または棒状試験片を用いることができる。この際、試験片の少なくとも一面に部材表面が含まれるように試験片を作製するのが望ましい。
上記の試験片を用いて、熱間加工を模擬した低ひずみ速度での引張試験を行う。具体的には、グリーブル試験機を用いて、上記の試験片を、加工温度1100℃でひずみ速度が0.0001s−1の低ひずみ速度で引張試験し、伸び(ひずみ量)が10%になった時点で引張試験を中断し、引張試験中断後の試験片を用いて、試験片表面部および内部の割れを確認する。
なお、グリーブル試験とは、試験片中央部を通電加熱しながら行う引張試験である。加工温度は、グリーブル試験片の中央部に熱電対を溶着して測定する。
引張試験中断後の試験片表面における割れの有無は、JIS Z 2343−1(2001)に規定される浸透探傷試験により行うこととする。また、試験片内部の割れの有無は、引張試験中断後の試験片中央部を横断面が被検面となるように切断し、鏡面研磨した後、倍率100倍で光学顕微鏡観察して確認することとする。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有するオーステナイト系耐熱合金1〜20およびA〜Dを実験室溶解してインゴットを作製した。そして、上記インゴットに対して熱間での鍛造および圧延による成形を行った後、表2に示す条件での溶体化熱処理を行い、厚さ25mm、幅100mm、長さ500mmの合金板を複数枚作製した。その後、合金板に種々の条件で切削バイトによる表面切削加工を行うことで表層部の硬さを調整し、素材とした。さらに、素材に対して、表2に示す条件で再結晶熱処理後、冷却して試験材を得た(試験No.1〜24)。
Figure 2021095612
Figure 2021095612
上記の強加工後で再結晶熱処理前および再結晶熱処理後の各合金板から試験片を採取し、それぞれの試験片について、強加工を施した合金板表面から深さ50μmの位置におけるマイクロビッカース硬さ(HV0.1)を試験力0.9807N(100gf)で3点測定した。そして、その平均値を求め、それぞれ素材および部材の表層部の硬さとした。
同様に、強加工後で再結晶熱処理前および再結晶熱処理後の各合金板から採取した試験片について、表層部の転位密度の測定を行った。「転位密度」は、Co管球を用いてXRDにより試料表面をθ−2θ測定し、得られたX線回折データから{111}、{200}、{220}および{311}面のLorentz関数近似によって回折ピークの角度、半値幅、回折強度を求め、Modified Williamson-Hallの式およびModified Warren-Averbachの式より算出した。
続いて、再結晶熱処理後の各試験材から、横断面が被検面となるように平均結晶粒度を決定するための試験片を切り出して鏡面研磨した。その後、各試験片について、表層となる表面加工を施した合金板表面から深さ50μmまでの領域、および合金板の厚さの25%となる各表面側を除外した領域のそれぞれの平均結晶粒度を、以下の方法により求めた。
上記の試験片を鏡面研磨して、王水で腐食した後、表層および部材の厚さ中央部のそれぞれの任意の3視野について倍率100倍で光学顕微鏡観察して、切断法により平均粒切片長さを測定し、その平均粒切片長さを1.128倍して平均結晶粒径を求めた。さらに、JIS G 0551−02(2009)により結晶粒度に換算した。
その後、各試験材からTEM観察用試験片を切り出し、Ti炭硫化物およびTi硫化物の合計個数密度の測定を行った。具体的には、各試験材の厚さ中央部から、厚さ100nmの薄膜を作製し、TEMにより観察した。この時の倍率は100000倍とした。そして、Ti炭硫化物またはTi硫化物と特定されたものの面積を画像処理により測定し、円相当径が50nm以下であるTi炭硫化物およびTi硫化物の個数の合計を計測した。そして、計測された個数を視野の体積で除することにより、個数密度を求めた。
次に、各試験材を用いて、以下に示す方法により、クリープ破断強度、耐再熱割れ性および熱間加工性の評価試験を実施した。
まず、各試験材の肉厚中央部から、JIS Z 2241(2011)に記載される直径6mm、標点距離30mmの丸棒クリープ破断試験片を採取して、700℃、170MPaの条件でクリープ破断試験を行った。試験は、JIS Z 2271(2010)に準拠して行った。なお、クリープ破断時間が、2000h以上となるものを合格(○)とし、2000h未満のものを不合格(×)とした。
また、上記形状の丸棒引張試験片を用いて、700℃において10−6/sの極低歪速度で引張試験を行い、破断絞りを測定した。なお、上述の歪速度10−6/sは、通常の高温引張試験における歪速度の1/100〜1/1000という非常に遅い歪速度である。したがって、この極低歪速度で引張試験した際の破断絞りを測定することによって、再熱割れ感受性の相対評価を行うことができる。
具体的には、上述の極低歪速度で引張試験した際の破断絞りが大きい場合、再熱割れ感受性が低く、再熱割れ防止に対する効果が大きいと評価することができる。なお、破断絞りが、20%以上となるものを合格(○)とし、20%未満のものを不合格(×)とした。
続いて、各試験材について、引張試験に用いるための試験片を切り出した。引張試験用の試験片は、表面加工を施した合金板表面が含まれるように、合金板の長手方向に平行な10mm角で長さが130mmの角棒状の試験片を複数本ずつ機械加工により作製した。
上記の試験片を用いて、前述の加工温度が1100℃、ひずみ速度が0.0001s−1の低ひずみ速度での引張試験を行った。そして、伸び(ひずみ量)が10%になった時点で引張試験を中断し、引張試験中断後の試験片を用いて試験片表面部および内部の割れを調査した。
前述のとおり、引張試験中断後の試験片表面における割れの有無は、JIS Z 2343−1(2001)に規定される浸透探傷試験により行い、試験片内部の割れの有無は、試験片中央部を横断面が被検面となるように切断し、鏡面研磨した後、倍率100倍で光学顕微鏡観察して調査した。
表面割れについては、割れが発生しなかったものを「○」、割れが発生したものを「×」とした。また、内部割れについては、割れが発生しなかったものを「○」、割れは発生したものの、その深さが20μm以下であったものを「△」、20μmを超える深さの割れが発生したものを「×」とした。
それらの結果を表2に併せて示す。表2の総合評価においては、クリープ破断時間が長く、耐再熱割れ性が良好で、かつ熱間加工時の耐割れ性評価である引張試験片表面および内部の双方に割れが認められなかった場合を「良」とした。また、クリープ破断時間が長く、耐再熱割れ性が良好で、かつ浸透探傷試験では試験片表面に割れが認められなかったものの、試験片内部に深さ20μm以下の微小な割れが認められた場合を「可」とした。そして、クリープ破断時間および耐再熱割れ性の少なくともいずれかが不可の場合、引張試験片の表面に割れが認められた場合、または、引張試験片の内部に20μmを超える深さの割れが発生した場合を「不可」とした。
表2に示すように、化学組成、表層および部材の厚さ中央部における平均結晶粒度、および50nm以下のTi炭硫化物およびTi硫化物の合計個数密度が本発明の規定範囲内である試験No.1〜3、5〜7、9〜11、13〜15、および17〜19は、総合評価において、「良」または「可」となった。
これに対して、本発明の規定を満足しない試験No.4、8、12、16および20〜24は、総合評価において、「不可」となった。具体的には、試験No.4は、溶体化熱処理温度が低く、部材の厚さ中央部の平均結晶粒度番号が大きいため、クリープ破断強度が劣る結果となった。
また、試験No.8および20は、強加工後の素材表層部の硬度が低いため、再結晶化熱処理後の部材表層部の平均結晶粒度番号が小さく、厚さ中央部の平均結晶粒度番号も、規定範囲内ではあるが、小さくなった。そのため、熱間加工時に表面欠陥が生じ、さらに表面欠陥が内部まで伸展した。試験No.16は、再結晶熱処理温度が低かったため、表面割れが生じる結果となった。
さらに、試験No.12、16、および20は、再結晶熱処理後の平均冷却速度が規定から外れるため、50nm以下のTi炭硫化物およびTi硫化物の合計個数密度が本発明の規定から外れ、十分なクリープ破断強度が得られなかった。そして、C含有量が本発明の規定から外れる合金A〜Dを用いた試験No.21〜24は、十分な耐再熱割れ性が得られなかった。
本発明のオーステナイト系耐熱合金部材は、耐再熱割れ性と長時間クリープ破断強度に優れ、かつ、厚さが20mm以上の厚肉であっても、熱間加工時の表面欠陥を防止できる。このため、本発明のオーステナイト系耐熱合金部材は、発電用ボイラの主蒸気管または再熱蒸気管等の大径かつ厚肉の高温部材として使用されるのに好適である。

Claims (4)

  1. 厚さ20mm以上のオーステナイト系耐熱合金部材であって、
    前記部材の化学組成が、質量%で、
    C:0.009%以下、
    Si:2.0%以下、
    Mn:3.0%以下、
    P:0.040%以下、
    S:0.0001〜0.0100%、
    O:0.010%以下、
    N:0.020%以下、
    Cr:25.0〜38.0%、
    Ni:40.0〜60.0%、
    W:3.0〜10.0%、
    Ti:0.01〜1.20%、
    Al:0.30%以下、
    B:0.0001〜0.010%、
    Zr:0.0001〜0.50%、
    Co:0〜1.0%、
    Cu:0〜1.0%、
    Mo:0〜1.0%、
    V:0〜0.5%、
    Nb:0〜0.5%、
    残部:Feおよび不純物であり、
    前記部材の表層部における金属組織が、ASTM粒度番号7.0以上であり、
    前記部材の厚さ中央部における金属組織が、ASTM粒度番号4.0以下であり、
    前記部材の厚さ中央部に含まれる粒子径が50nm以下のTi炭硫化物およびTi硫化物の合計個数密度が50〜500個/μmである、
    オーステナイト系耐熱合金部材。
  2. 前記化学組成が、質量%で、
    Co:0.01〜1.0%、
    Cu:0.01〜1.0%、
    Mo:0.01〜1.0%、
    V:0.01〜0.5%、および
    Nb:0.01〜0.5%、
    から選択される1種以上を含有する、
    請求項1に記載のオーステナイト系耐熱合金部材。
  3. 前記化学組成が、質量%で、
    C:0.0001〜0.009%、
    を含有する、
    請求項1または請求項2に記載のオーステナイト系耐熱合金部材。
  4. 請求項1から3までのいずれかに記載のオーステナイト系耐熱合金部材の素材として用いられるオーステナイト系耐熱合金素材であって、
    請求項1から3までのいずれかに記載の化学組成を有し、
    表層部における硬さが、300HV0.1以上である、
    オーステナイト系耐熱合金素材。
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