JP2021095453A - 粘着剤組成物、粘着フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】耐熱性に優れ、しかも粘着力が良好な粘着剤組成物及び耐久性に優れた粘着フィルムを提供することと、重金属を含まず、臭気や着色、既存の設備で生産可能な汎用性の高い方法で上述する粘着剤組成物を提供する。【解決手段】本発明に係る粘着剤組成物は、架橋性官能基を有さないエチレン性不飽和単量体、及び架橋性官能基を有するエチレン性不飽和単量体を共重合してなる、有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤由来の残基を有する共重合体と、架橋剤とを含有する粘着剤組成物であって、共重合体に対するヨウ素含有率が0.0001〜10,000質量ppmである、粘着剤組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤由来の残基を有する共重合体と、架橋剤とを含有し、耐熱性に優れた粘着剤組成物に関する。
また本発明は、基材に上記粘着剤組成物からなる粘着層を形成することにより得られる、耐久性に優れた粘着フィルムに関する。
近年、工業用途などに使用される粘着剤においては、低コストで容易に製造できることから、アクリル共重合体を含むアクリル系粘着剤が一般的に使用されている。このような工業用粘着剤は、用途によって多種多様な条件での耐久性が求められている。例えば、偏光板や位相差フィルム等に代表される光学フィルムと、液晶パネル等のディスプレイとを貼り合わせる光学粘着剤は、車載用、屋外用ディスプレイなど過酷な条件を要求される環境下においても粘着剤の性能を保持し続ける必要があり、使用環境下における優れた耐久性が要求される。かかる共重合体を製造するに当たっては、通常のフリーラジカル重合法が用いられるが、当該フリーラジカル重合法では、分子量の制御や、共重合体組成の均一性を取ることが困難であり、その結果として低分子量成分(オリゴマー)や、ホモポリマーの生成が起こり、これらの成分は粘着剤として使用する際に、使用環境下での耐熱性の低下や、再剥離時に糊残りによる被着体表面の汚染を招くことが知られている。そこで、できるだけこれらの成分を排除することが求められている。
これらに対して、より制御されたラジカル重合として、リビングラジカル重合が検討されている。リビングラジカル重合は、ラジカル重合の簡便性と汎用性を保ちつつ分子構造の精密制御を可能にする重合法で、分子量及び分子量分布等を制御しやすく、低分子量成分等の生成を抑えることができる。この重合法には、重合成長末端を安定化させる手法の違いにより、遷移金属触媒を用いる方法(ATRP)、硫黄系の可逆的連鎖移動剤を用いる方法(RAFT)(例えば、特許文献1)、有機テルル化合物を用いる方法(TERP)、(例えば、特許文献2)、その他の方法がある。
特開2017/19926 国際公開第2016/067406号 国際公開第2007/119884号
上述するリビングラジカル重合法は、モノマーによる反応性や適用可能なモノマー種には限定がある。更に、遷移金属触媒や有機テルル化合物を用いるATRP法やTERP法では、樹脂組成物中から触媒や開始剤として用いた銅やテルル等の金属を完全に除去することが困難である。また、それらの樹脂組成物を粘着剤として用いた場合、電子材料用途において残存金属による誤作動等の問題が考えられる。また、硫黄系の可逆的連鎖移動剤を用いるRAFT法では、硫黄化合物由来の着色や臭気が発生し、粘着剤として用いた場合、光学用途に用いる場合には光線透過率が低下し、医療用途に用いる場合には臭気による不快感を与える等の問題が考えられる。
また、特許文献3には、上述する有機テルル化合物を重合開始剤として用いてリビングラジカル重合法によりモノマーを共重合して得られた共重合体を含有する粘着剤が記載されており、この粘着剤は、耐熱性に優れた効果を示すことが記載されている。但し、これらの方法に関しても、耐熱性の更なる向上が求められている。更に、反応操作や精製等が非常に複雑なことから、再現合成が難しいことに加え、生産設備的にも汎用性が高い方法とは言い難い。
本発明は、耐熱性に優れ、しかも粘着力が良好な粘着剤組成物及び耐久性に優れた粘着フィルムを提供することと、重金属を含まず、臭気や着色、既存の設備で生産可能な汎用性の高い方法で上述する粘着剤組成物を提供することを目的とする。
本発明者が鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本発明の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
[1]:架橋性官能基を有さないエチレン性不飽和単量体、及び架橋性官能基を有するエチレン性不飽和単量体を共重合してなる、下記一般式(1)〜(3)いずれか記載の有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤由来の残基を有する共重合体と、架橋剤とを含有する粘着剤組成物であって、
共重合体に対するヨウ素含有率が0.0001〜10,000質量ppmである、粘着剤組成物。

一般式(1)
Figure 2021095453


一般式(2)
Figure 2021095453


一般式(3)
Figure 2021095453

但し、Polymerization unitは、一般式(3)の場合にはYからの分岐毎にそれぞれ独立に、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を主体とする重合体ユニットであり、
は、Yからの分岐毎にそれぞれ独立に、エステル基、ケトン基およびアミド基からなる群より選択される2価の基、または直接結合であり、
Qは1価の分子末端基であり、Yからの分岐毎にそれぞれ独立に、前記分子末端基は、官能基、官能基を有していてもよい炭化水素基、またはヨード基であり、
Yはp価の、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、
pは2〜6の整数であり、
、RおよびRはそれぞれ独立に、一般式(3)の場合にはYからの分岐毎にそれぞれ独立に、水素原子または置換基を有していてもよい1価の炭化水素基であり、
およびRはそれぞれ独立に、一般式(3)の場合にはYからの分岐毎にそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基または−CORであり、
は置換基を有していてもよい1価の炭化水素基、−COR、シアノ基またはニトロ基であり、
とR、RとR4、とRおよびRとRはそれぞれ独立に、一般式(3)の場合にはYからの分岐毎にそれぞれ独立に、互いに結合して環を形成していてもよく、
は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基または置換基を有していてもよい1価の炭化水素基であり、
11は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、
12はアルキレン基、アリーレン基およびアルキレンオキシ基からなる群より選ばれる2価の炭化水素基、または直接結合であり、
前記炭化水素基は、複素環を有していてもよく、それぞれ独立に、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基および芳香族炭化水素基の少なくともいずれかを有する。
[2]:共重合体の重量平均分子量(Mw)が、10万〜120万である[1]に記載の粘着剤組成物。
[3]:共重合体の多分散度(Mw/Mn)が、2.5以下である[1]又は[2]記載の粘着剤組成物。
[4]:共重合体を構成するエチレン性不飽和単量体の全質量%中、
架橋性官能基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構成単位の含有量が、
0.1〜20質量%の範囲にあることを特徴とする[1]〜[3]いずれかに記載の粘着剤組成物。
[5]:前記架橋性官能基が、水酸基および/またはカルボキシ基であることを特徴とする[1]〜[4]いずれか記載の粘着剤組成物。
[6]:共重合体100質量部に対し、0.1〜10質量部の架橋剤を含むことを特徴とする[1]〜[5]いずれかに記載の粘着剤組成物。
[7]:架橋後のゲル分率が70%以上であることを特徴とする[1]〜[6]いずれか記載の粘着剤組成物。
[8]: [1]〜[7]のいずれかに記載の粘着剤組成物から形成された粘着層を有する粘着フィルム。
本発明によれば、耐熱性に優れ、しかも粘着力が良好な粘着剤組成物及び耐久性に優れた粘着フィルムの提供を可能にする。更に重金属を含まず、臭気や着色、既存の設備で生産可能な汎用性の高い方法で上述する粘着剤組成物を提供できるという優れた効果を有する。
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。本明細書において特定する数値は、実施形態または実施例に開示した方法により求められる値である。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれる。また、本発明のフィルムは、シート、テープおよびラベルと同義である。また、特に言及しない限り、各種成分は、それぞれ独立に、単独または2種類以上を併用できる。
<粘着剤組成物>
本発明に係る粘着剤組成物は、架橋性官能基を有さないエチレン性不飽和単量体、及び架橋性官能基を有するエチレン性不飽和単量体を共重合してなる有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤由来の残基を有する共重合体と、架橋剤とを含有する粘着剤組成物であり、且つ、共重合体に対するヨウ素含有率が0.0001〜10,000質量ppm(以下、ppm)である。
本明細書において「エチレン性不飽和単量体」とは、重合性のエチレン性不飽和基を分子内に1つ以上有する単量体をいう。なお、非重合性のエチレン性不飽和基が含まれていてもよいことは言うまでもない。
更に、「開始剤残基」とは、開始剤由来の部分構造をいい、共重合体中の開始剤に由来する残基を意味する。
また、本明細書において「エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位」には、エチレン性不飽和単量体の残基の他、エチレン性不飽和単量体の残基の一部分を共重合体の重合時または重合後に反応性化合物と反応させて得られたエチレン性不飽和単量体の残基の誘導体も含む。例えば、エチレン性不飽和単量体の残基の一部分に、単量体に元々含まれていない官能基または/および置換基が導入された構造単位も含まれる。なお、単量体自体に官能基または/および置換基が含まれていてもよいことは言うまでもない。
本明細書において「架橋性官能基」とは、水酸基、カルボキシ基、グリシジル基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、加水分解性シリル基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基等の反応性を有する官能基を意味する。なかでも、上記粘着剤層のゲル分率調整が容易であることから、水酸基又はカルボキシル基がより好ましい。
本明細書でいう重量平均分子量(Mw)は、後述する実施例に記載の方法で求められる値である。共重合体のMwの好ましい範囲は1万〜200万であり、より好ましい範囲は10万〜120万である。また、多分散度(Mw/Mn)は、再剥離時の糊残りによる被着体表面の汚染性の観点から、1〜4.0であることが好ましく、1〜3.0であることがより好ましく、1〜2.5であることが更に好ましい。
エチレン性不飽和単量体中のエチレン性不飽和基の具体例としては、エチレン基、プロペニル基、ブテニル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリル基、アリルエーテル基、ビニルエーテル基、マレイル基、マレイミド基、(メタ)アクリルアミド基、アセチルビニル基およびビニルアミド基が例示できる。「エチレン性不飽和単量体」は、(メタ)アクリル基がより好ましい。なお、「(メタ)アクリル」は「アクリル」、「メタクリル」およびこれらの混合物の両方を包含する。また、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」、「メタクリレート」およびこれらの混合物の両方を包含する。
本発明の共重合体は、リビングラジカル重合で合成されるため2種以上のビニルモノマーを順次反応させるとブロック共重合体とすることができる。当該ブロック共重合体は、モノマーの種類に関係なく、反応させるモノマーの順番によるポリマーを得ることができる。例えば、ビニルモノマーA とビニルモノマーB を反応させブロック共重合体を得る場合、反応させる順番によりA−Bのものも、B−A のものも得ることができ、その結果、A−B−A やA−B−C−B−Aといったトリブロック共重合体や、ペンタブロック共重合体等も得ることが可能である。上記で、各ブロックを製造後、そのまま次のブロックの反応を開始しても良いし、一度反応を終了後、精製してから次のブロックの反応を開始しても良い。ブロック共重合体の単離は通常の方法により行うことができる。
共重合体の合計質量に基づいてエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位の含有量は、共重合体の合計質量に対して80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。
また、共重合体を構成するエチレン性不飽和単量体の全質量%中、架橋性官能基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構成単位の含有量は、0.1〜20質量%の範囲にあることを好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
本発明で使用する架橋性官能基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば下記のようなものを挙げることができる。
水酸基を含む単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好ましくは1〜8)に水酸基が結合している単量体を含む、以下の例が挙げられる。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルヘキシル)−メチルアクリレート、クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート類、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート類、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、α位水酸基メチル置換アクリレート類が挙げられる。
カルボキシ基を含む単量体としては、メタクリル酸、アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好ましくは1〜8)にカルボキシ基が結合している単量体を含む、以下の例が挙げられる。例えば、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチル−コハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−フタル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられる。
グリシジル基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好ましくは1〜8)にエポキシ基が結合している単量体が挙げられる。例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸のC1〜C24グリシジルエステルが挙げられる。
アミノ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好ましくは1〜8)にアミノ基が結合している単量体が例示できる。具体的には、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート四級化物が挙げられる。
メルカプト基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好ましくは1〜8)にメルカプト基が結合している単量体が挙げられる。例えば、2−メルカプトエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
ビニル基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好ましくは1〜8)にビニル基が結合している単量体、2個以上の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンのポリアルキレングリコール付加物のメタクリル酸エステル等の、2個以上の付加重合性基を有するメタクリル酸系モノマー類が挙げられる。
また、各種ビニル基を変性(化学変換)によって導入してもよい。具体的には、反応性を有する基を有する共重合体を合成した後、その反応性を有する基を変性(化学変換)してビニル基を導入する方法が例示できる。例えば、水酸基を含む共重合体を得た後、この共重合体をイソシアネートと(メタ)アクリレートを持つ化合物と反応させることで、共重合体にビニル基を導入する方法が挙げられる。共重合体への導入位置は、主鎖中の側鎖、分子末端、開始剤残基などが例示できる。
加水分解性シリル基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好ましくは1〜8)に加水分解性シリル基が結合している単量体が挙げられる。具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する単量体が例示できる。また、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、が挙げられる。
イソシアネート基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好ましくは1〜8)にイソシアネート基が結合している(メタ)アクリレートが挙げられる。例えば、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナートが挙げられる。
また、ブロックイソシアネート基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好ましくは1〜8)にブロックイソシアネート基が結合している単量体が挙げられる。ブロックイソシアネート基は、遊離のイソシアネート基を反応させないためにブロック剤でイソシアネート基をブロックした構造を有する基である。ブロックイソシアネート基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基(炭素数は好ましくは1〜8)に、ブロックイソシアネート基を含む基が結合している単量体を使用できる。例えば、2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート、2−[0−(1'−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチルメタクリレートが挙げられる。
本発明で使用する架橋性官能基以外のエチレン性不飽和単量体としては、例えば下記のようなものが挙げられる。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖または分岐アルキル(メタ)アクリレート類;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャリブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート類;
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート類;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−オキセタニル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレート類;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、またはノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリレート類;
メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、n−ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルキルエーテル基を有する(メタ)アクリレート類;
3−(アクリロイルオキシメチル)3−メチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)3−メチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)3−エチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)3−エチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)3−ブチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)3−ブチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)3−ヘキシルオキセタンおよび3−(メタクリロイルオキシメチル)3−ヘキシルオキセタン等のオキセタニル基を有する(メタ)アクリレート類;
スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸ビニル、または(メタ)アクリル酸アリル等のビニル類;
エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、またはイソブチルビニルエーテル等のエーテル基を有するビニルエーテル類等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[共重合体の製造方法]
以下、本実施形態の共重合体の製造方法の一例について説明するが、本発明の共重合体は以下の製造方法に限定されるものではない。
共重合体の製造は、有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤を用いたヨウ素移動重合RCMP(可逆配位媒介重合)法またはRTCP(可逆移動触媒重合)法により行う。RCMP法(又はRTCP法)は、特殊な材料や金属系の触媒が不要であり、有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤を用いる。有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤は、触媒と混合し、必要に応じて加温することで、ヨウ素と直結していた炭素にラジカルが生じ、それによって重合性モノマーの重合が開始される。そして、持続性のヨウ素ラジカルとラジカル連鎖末端とが一時的に結合を形成し、ラジカル連鎖末端とヨウ素ラジカルが可逆的に再結合する特性により、ラジカル重合の進行を制御できる。重合温度は、例えば60〜120℃で行うことができる。
重合の終了は、通常重合温度を制御することにより終了する。重合体の連鎖末端は、ラジカル連鎖末端とヨウ素ラジカルとの再結合が形成されている。連鎖末端のアルキルラジカルとヨウ素ラジカルに再開裂する可能性があるので、連鎖末端は不活性処理することが好ましい。不活性処理は、例えば、連鎖末端を非重合性基に変換する方法がある。また、連鎖末端に所望の官能基を導入してもよい。
RCMP法(又はRTCP法)によれば、低コストであり、金属を使わずに合成することが可能となる。また、一般的なラジカル重合と同じ温度条件下で重合することが可能であり、既存の生産設備が使うことが可能である。以下、詳細な製造方法の一例について説明する。
まず、原料のエチレン性不飽和単量体、並びに有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤(以下、単に重合開始剤(XI)ともいう)、触媒(m)、必要に応じて溶媒、重合開始剤(XI)以外のラジカル重合開始剤、単体ヨウ素等を用意する。触媒(m)としては、例えば、ラジカルを発生させて重合開始剤(XI)からヨウ素を引き抜く化合物、重合開始剤(XI)のヨウ素に配位して重合開始剤からヨウ素を引き抜く化合物などが挙げられる。触媒(m)として、ヨウ素ラジカルのドーマント作用を促進する化合物を更に有していてもよい。
重合開始剤(XI)は、炭素−ヨウ素結合を有する有機ヨウ素化合物であり、触媒(m)の存在下で重合が進行し、ラジカル重合のドーマント種になり得る化合物である。重合開始剤(XI)として、下記一般式(4)〜(6)で表される化合物を例示できる。重合開始剤(XI)は1種単独または2種以上を併用して用いられる。

一般式(4)
Figure 2021095453

一般式(5)
Figure 2021095453

一般式(6)
Figure 2021095453

但し、Zは、Yからの分岐毎にそれぞれ独立に、エステル基、ケトン基およびアミド基からなる群より選択される2価の基、または直接結合であり、
Yはp価の置換基を有していてもよい炭化水素基であり、
pは2〜6の整数であり、
、RおよびRはそれぞれ独立に、一般式(6)の場合にはYからの分岐毎にそれぞれ独立に、水素原子または置換基を有していてもよい1価の炭化水素基であり、
およびRはそれぞれ独立に、一般式(6)の場合にはYからの分岐毎にそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基または−CORであり、
は置換基を有していてもよい1価の炭化水素基、−COR、シアノ基またはニトロ基であり、
とR、RとR、RとRおよびRとRはそれぞれ独立に、一般式(6)の場合にはYからの分岐毎にそれぞれ独立に、互いに結合して環を形成していてもよく、
は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基または置換基を有していてもよい1価の炭化水素基であり、
11は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、
12はアルキレン基、アリーレン基およびアルキレンオキシ基からなる群より選ばれる2価の炭化水素基、または直接結合であり、
前記炭化水素基は、複素環を有していてもよく、それぞれ独立に、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基および芳香族炭化水素基の少なくともいずれかを有する。一般式(4)、一般式(5)は、ヨウ素−炭素結合を1つ有する例であり、一般式(6)はヨウ素−炭素結合が2〜6つ有する例である。所望とする共重合体の構造に応じて、適切な重合開始剤(XI)を選定すればよい。
本明細書において「置換基」とは、別途の定義がない限り、有機基中の一以上の水素原子が、複素環基、炭素数1〜12の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数1〜12の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数1〜12の環状脂肪族炭化水素基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアラルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアミノ基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアシル基、炭素数1〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜12のアルキロイルオキシ基、炭素数1〜12のアリーロイルオキシ基または炭素数1〜12のアルキルシリル基で置換されていることを意味する。置換基には、官能基を有していてもよい。複素環基は特に限定されないが、官能基を有していてもよい炭素数5〜18の芳香族複素環が例示できる。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が例示できる。複素環の具体例としては、フラン、チオフェン、ピロール、ピリジンが挙げられる。
本明細書において「官能基」とは、別途の定義がない限り、メルカプト基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、ビニル基、加水分解性シリル基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、エポキシ基、オキセタン基、フリル基、アセトアセチル基、オキサゾリジン基、ニトリル基およびリン酸基、ヒドラジド基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、アジリジン基、アセタール基、スピロオルトエステル基、活性エステル基、活性エーテル基、環状カーボネート基、イソプロペニル基、アルデヒド基、プロパルギル基、アジド基が例示できる。ここで、活性エステル、活性エーテル基とは、架橋反応に利用できる活性化されたエステル結合をいう。例えば、メチルアクリルアミドメトキシ酢酸などの化合物が挙げられ、二重結合、活性エステル基、活性エーテル基を持っているモノマーであり、アクリル樹脂の架橋に利用されている。なお、広義には、エステル結合、エーテル結合なども官能基に分類され得るが、共重合体にこれらの結合が含まれていてもよいことは言うまでも無い。また、上述する官能基以外の官能基(例えば、ハロゲン原子、ニトロ基)を有していてもよい。
重合開始剤(XI)の具体例としては、エチレンビス(2−ヨードイソブチレート)、エチレンビス(2−ヨード−2−フェニルアセテート)、p−キシリレンジヨージド、1,4−ビス(1’−ヨードエチル)ベンゼン、2,5−ジヨードアジピン酸ジエチル、グリセロールトリス(2−ヨードイソブチレート)、1,3,5−トリス(1’−ヨードエチル)ベンゼン2−ヨード−2−(4’−(2”−ヨードプロピオニルオキシ)フェニル)酢酸メチル、2−ヨードイソ酪酸4−ヨードブチル、2−ヨード−2−(4’−(2”−ヨードプロピオニルオキシ)フェニル)酢酸メチル、2−ヨードイソ酪酸4−ヨードブチル、2−ヨード−2−(4’−(4”−ヨードブタノイルオキシ)フェニル)酢酸メチル、2−ヨードフェニル酢酸4−ヨードブチル、2−ヨード−2−フェニル酢酸2−(ヨードアセトキシ)エチル、エチル2−ヨードアセテート、エチル2−ヨードプロパノエート、エチル2−ヨードブチレート、エチル2−ヨードバレレート、エチル2−ヨードイソブチレート、メチル2−ヨードアセテート、エチル2−ヨードイソブチレート、ベンジル2−ヨードイソブチレート、2−ヨード酢酸、2−ヨードプロピオン酸、2−ヨードイソ酪酸、α−ヨード−γ−ブチロラクトン、2−ヨードプロピオンアミド、2−ヨードアセトニトリル、2−ヨードプロピオニトリル、2−ヨードイソブチロニトリル、2-ヨードアセトフェノン、ベンジルヨージド、(1−ヨードエチル)ベンゼン、4−ニトロベンジルヨージド、2−ヒドロキシエチル2−ヨードイソブチレート、2−ヒドロキシエチル2−ヨード−2−フェニルアセテート、エチル2−ヨード−2−フェニルアセテート、エチル2−ヨード2−(4’−メチルフェニル)アセテート、エチル2−ヨード−2−(4’−ニトロフェニル)アセテート、2−ヨード−2−フェニル酢酸、ヨードジフェニルメタン、9−ヨード−9H-フルオレン、α−ヨードベンジルシアニド、ジエチル2−ヨード−2−メチルメロネート、エチル2−ヨード−2−メチルアセトアセテート、p−キシレンヂヨージド、ジエチル2,5−ジヨードアジペート(Diethyl 2,5-Diiodoadipate)、1,4−ビス(1’−ヨードエチル)ベンゼン、エチレングリコールビス(2−ヨードイソブチレート)、エチレングリコールビス(2−ヨード−2−フェニルアセテート)(Glycerol Tris(2-iodoisobutyrate))、1,3,5−トリス(1’−ヨードエチル)ベンゼン、2−ヒドロキシエチル−2−ヨードイソ酪酸塩、2−ヒドロキシエチル−2−ヨード−2−フェニル酢酸塩、2−ヨード−2−アミジノプロパン、4−ヨード−4−シアノ−ペンタン酸、2−ヨード−2−メチルプロパンアミド、2−ヨード−2−シアノブタノール、2−ヨード−2−メチル−N−(2−ヒドロキシメチル)プロピオンアミド4−メチルペンタン、2−ヨード−2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド4−メチルペンタン、ヨード酢酸、2−ヨードプロパン酸、2−ヨードプロンアミドが例示できるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
また、特開2018−111806号公報に開示の有機ヨウ素化合物を好適に利用できる。重合開始剤のヨウ素に直結する炭素は、第3級炭素、第2級炭素または電子吸引基と直結している第1級炭素が好ましい。
重合開始剤(XI)は、重合開始剤(XI)を合成するための原料を仕込み、重合中にin situ、即ち反応溶液中で重合開始剤(XI)を生成させて、それをこの重合法の重合開始剤(XI)として使用することもできる。例えば、アゾ化合物とヨウ素を原料として仕込み、その両者の反応により重合開始剤(XI)を重合中にin situで生成させ、それをこの重合法の重合開始剤(XI)として使用することができる。即ち、本発明の製造方法では、例えばヨウ素とアゾ化合物とを反応させることにより、本重合工程において重合開始剤(XI)を生成する工程を含んでいてもよい。
重合開始剤(XI)を生成させるために用いるアゾ化合物としては、例えば、アゾ系ラジカル重合開始剤が例示できる。アゾ系ラジカル重合開始剤(例えば、AIBN)のように他の開始剤を用いて重合開始剤(XI)を生成させる場合には、他の開始剤を消費して重合開始剤(XI)が充分に得られてからモノマーを添加して重合体生成を行う方法が好適である。
アゾ化合物としては、例えば、2,2‘−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メトキシプロパンアミド]、2,2’−アゾビス(2−メチル−2−プロペニルプロパンアミド)、2,2’−ビス(2−イミダゾリン−2−イル)[2,2’−アゾビスプロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス(プロパン−2−カルボアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]、2,2’−アゾビス[2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン二塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−2−プロペニルプロパンアミド〕、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩が例示できる。
有機ヨウ素化合物のヨウ素に配位して重合開始剤(XI)からヨウ素を引き抜く触媒(m)は、RCMP法において通常用いられる有機アミン化合物、ヨウ化物イオンとのイオン結合を有する非金属化合物を制限無く用いることができる。この非金属化合物中の非金属原子がカチオンの状態であり、ヨウ化物イオンとイオン結合を形成している触媒が好適である。
有機アミン化合物からなる触媒(m)としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,1,2,2−テトラキス(ジメチルアミノ)エテン、1,4,8,11−テトラメチル−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルジアミノメタン、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリス(2−(メチルアミノ)エチル)アミン、ヘマトポルフィリンが例示できる(国際公開第2011/016166号)。
ヨウ化物イオンとのイオン結合を有する非金属化合物であって、該非金属化合物中の非金属原子がカチオンの状態であり、ヨウ化物イオンとイオン結合を形成している触媒としては、具体的にはアンモニウム塩、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられ、より具体的には、テトラブチルアンモニウムヨーダイド、テトラブチルアンモニウムトリヨーダイド、テトラブチルアンモニウムブロモジヨーダイド、1−メチル−3−メチル−イミダゾリウムヨーダイド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、2−クロロ−1−メチルピリジニウムヨーダイド、ヘキサフェニルジホスファゼニウムクロリド、メチルトリブチルホスホニウムヨーダイド、テトラフェニルホスホニウムヨーダイド、トリブチルスルホニウムヨーダイド、ジフェニルヨードニウムヨーダイド等を挙げることができる(国際公開WO2013/027419号公報参照)。
RTCP法(可逆移動触媒重合)で重合する場合は、触媒に連鎖移動能をもつ有機分子を用いる。この場合は、触媒とラジカル発生剤(アゾ化化合物など)を組み合わせて、触媒から触媒ラジカルを発生させ、この触媒ラジカルを休眠種の活性化剤として利用する。
ラジカルを発生させて重合開始剤(XI)からヨウ素を引き抜く化合物(触媒)としては、例えば、RTCP法に用いられるリン、窒素、炭素、酸素、ゲルマニウム、スズおよびアンチモンから選択される少なくとも1種の中心原子と、当該中心原子に結合したヨウ素原子と、を含む化合物からなる触媒が挙げられる。
ゲルマニウム、スズまたはアンチモンから選択される中心元素とする触媒としては、
例えば、ゲルマニウム、スズまたはアンチモンから選択される少なくとも1つの中心元
素と、当該中心元素に結合した少なくとも1つのヨウ素原子を含む化合物などが挙げられ、具体的にはヨウ化ゲルマニウム(II)、ヨウ化ゲルマニウム(IV)、ヨウ化スズ(II)、ヨウ化スズ(IV)が例示できる(特開2007−92014号公報参照)。これらの触媒は1種単独または2種類以上を併用してもよい。
窒素またはリンを中心元素とする触媒としては、窒素またはリンから選択される少なく
とも1つの中心元素と、当該中心元素に結合した少なくとも1つのヨウ素原子とを含む化
合物が挙げられ、具体的には、ヨウ化リンなどのハロゲン化リン;ヨウ化ホスフィンなどのホスファイト系化合物;エトキシフェニルフォスフィネート、フェニルフェノキシフォ
スフィネートなどのホスフィネート系化合物;ヨウ化窒素、ヨウ化亜リン酸、ヨウ化アミ
ン、ヨードスクシンイミドなどのヨウ化イミド誘導体; ヒダントイン系化合物などが挙げ
られる(国際公開第2008/139980号参照)。これらの触媒は1種単独または2種類以上を併用できる。
炭素を中心元素とする触媒としては、例えば、ヨードベンゼン、4−メチル−
1−ヨードベンゼン、2,4,6−トリメチルヨードベンゼン、3−シアノヨードベンゼ
ン、4−シアノヨードベンゼン、4−ヨードアニソール、テトラヨードメタン、トリフルオロヨードメタン、ジフルオロジヨードメタン、1,4−シクロヘキサジエン、ジフェニルメタン、ジメシチルメタン、キサンテン、チオキサンテン、マロン酸ジエチル、フルオレン;アセチルアセトンなどのアセトアセチル系化合物が例示できる。これらの触媒は1種単独または2種類以上を併用できる。
酸素を中心とする触媒の具体例としては、例えば、フェノール、ヒドロキノン、tert−ブチルフェノールなどのフェノール系化合物;チモールジアイオダイドなどのアイオ
ドオキシフェニル化合物;ビタミンEなどのビタミン類や、N−コハク酸イミドなどが例示できる。これらの触媒は1種単独または2種以上を併用できる。
触媒(m)の添加量は、重合速度を適切なものとし、且つ未反応単量体の残存量を低減させる観点から、重合開始剤(XI)100モルに対して、0.01〜2,500モルが好ましく、より好ましくは0.05〜1,000モル、さらに好ましくは0.1〜500モルである。
重合開始剤(XI)の量は、共重合体の構造および所望とするMwの値等により変動し得るが、全単量体の100質量部あたり、例えば0.01〜10質量部とすることができる。重合開始剤(XI)の分子量は特に限定されず、好適な範囲は共重合体のMwによっても変動し得るが、例えば、150〜1,500とすることが好適である。
重合条件は、用いる単量体および重合開始剤(XI)の種類によって適宜設定すればよい。重合温度は、例えば室温〜200℃、より好ましくは60〜120℃である。また、重合雰囲気は、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス下で行うことが好ましい。反応時間は、単量体の転化率を指標に適宜設定すればよい。例えば、30分〜120時間である。
重合は、バルク重合でも溶液重合でもよい。また、乳化重合、分散重合、懸濁重合などにより重合してもよい。溶液重合に用いる溶媒は特に限定されないが、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン原子含有溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジグライム等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が例示できる。溶媒は、1種単独または2種以上が併用して用いられる。
重合体を得た後、必要に応じて、ドーマント種であるヨウ素ラジカルを不活性化する。重合体末端がドーマント種であるヨウ素が残っていてもよい場合には、ヨウ素ラジカルの不活性化工程は省略できる。また、重合体の連鎖末端は、任意のタイミングで不活性基、架橋性官能基などに末端処理する工程を行うことができる。
前述の一般式(4)〜(6)の重合開始剤(XI)を用い、且つラジカル重合性単量体としてエチレン性不飽和単量体を用いた場合、上記工程によって以下の一般式(1)〜(3)のいずれかに記載の構造を有する共重合体が得られる。

一般式(1)
Figure 2021095453


一般式(2)
Figure 2021095453


一般式(3)
Figure 2021095453

但し、Polymerization unitは、一般式(3)の場合にはYからの分岐毎にそれぞれ独立に、エチレン性不飽和単量体に由来する単量体を主体とする重合体ユニットであり、
Qは1価の分子末端基であり、Yからの分岐毎にそれぞれ独立に、前記分子末端基は、官能基、官能基を有していてもよい炭化水素基またはヨード基であり、その他の記号は、一般式(4)〜(6)で説明した通りである。共重合体は、一般式(1)〜(3)で示される重合体の構造単位としてエチレン性不飽和単量体由来の構造単位に限定されず、その他のラジカル重合性単量体が含まれていてもよい。
重合開始剤(XI)の炭素−ヨウ素結合が2つの場合には、重合体ブロック(B)、重合体ブロック(A)の順にブロックを重合することにより、[A−B]Xの星形ブロック構造が得られる。同様にして、重合開始剤(XI)の炭素−ヨウ素結合が3つの場合には、重合体ブロック(B)、重合体ブロック(A)の順にブロックを重合することにより、[A−B]Xの星形ブロック構造が得られる。重合開始剤(XI)の炭素−ヨウ素結合が4〜6の場合、4〜6の星形ブロック構造が得られる。
RCMP法(又はRTCP法)によれば、重金属が実質的に含まれない共重合体が得られるという利点がある。このため、人体と直接接触する用途、例えば医療用途や光学用途などに特に好適である。また、RCMP法(又はRTCP法)によれば、リビングラジカル重合ができるので多分散度の狭い共重合体を得ることが可能である。
本発明の粘着剤組成物は、共重合体中の架橋性官能基と反応する架橋剤を配合することで凝集力を促進させて粘着力を高め、耐熱性および耐溶剤性を高めることができる。
前記架橋剤としては、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アミン系化合物、金属塩、金属アルコキシド、金属キレート化合物、多官能アクリレート系のモノマー化合物、シランカップリング剤系化合物等が挙げられる。
前記架橋剤は、共重合体の架橋性官能基と架橋し得る官能基を有する。架橋剤の種類は、共重合体の種類により変わり得る。エチレン性不飽和単量体の架橋性官能基が水酸基、アミノ基の場合には、架橋剤は、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物が好ましく、カルボキシ基の場合には、架橋剤は金属キレート化合物、イソシアネート化合物が好ましく、架橋性官能基がエポキシ基の場合には、架橋剤はアミン系化合物が好ましく、架橋性官能基がイソシアネート基、ブロックイソシアネート基の場合には、架橋剤は水酸基系化合物が好ましく、架橋性官能基がビニル基には、架橋剤は多官能アクリレート系のモノマー化合物が好ましく、架橋性官能基が加水分解性シリル基の場合には、架橋剤はシランカップリング剤系化合物が好ましい。
前記イソシアネート系化合物としては、例えばトルイレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トルイレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のイソシアネート化合物、スミジュールN ( 住友バイエルウレタン社製) の如きビュレットポリイソシアネート化合物、デスモジュールIL、HL(バイエルA.G.社製)、コロネートE H (日本ウレタン社製)の如きイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物、スミジュールL(住友バイエルウレタン社製)の如きアダクトポリイソシアネート化合物、コロネートHL(日本ポリウレタン社製)、コロネートL(日本ポリウレタン社製)、コロネートL55E(日木ポリウレタン社製)の如きアダクトポリイソシアネート化合物等が挙げられる。又、ブロックイソシアネートを使用してもかまわない。
前記エポキシ系化合物としては、例えばビスフェノールA ・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジ又はトリグリシルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルm−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N’ −ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
前記アミン系化合物としては、例えばヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、アミン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
金属塩としては、例えばアルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アン
チモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属の塩化物、臭化
物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩等の塩、例えば塩化第二銅、塩化アルミニウム、塩化第二鉄
、塩化第二スズ、塩化亜鉛、塩化ニッケル、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム、酢酸
銅、酢酸クロム等が挙げられる。
前記金属アルコキシド化合物としては、例えばテトラエチルチタネート、テトラエチルジルコネート、アルミニウムイソプロピオネート等が挙げられる。金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属のアセチルアセトンやアセト酢酸エステル配位化合物等が挙げられる。アンモニウム塩としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウム等が挙げられる。ヒドラジン化合物としては、ヒドラジン、ヒドラジンヒドラート、及びそれらの塩基塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機塩類、ギ酸、シュウ酸等の有機酸塩類が挙げられる。
前記金属キレート化合物としては、例えばアルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物が挙げられる。具体的には、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレートが挙げられる。
前記多官能アクリレート系のモノマー化合物としては、例えば、多官能アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等の2官能型;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能型;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能型;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能型;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能型などが挙げられる。
多官能アクリレート系モノマー化合物と共重合体のビニル基等の官能基とをエンチオール反応させることにより架橋させることができる。
前記シランカップリング剤系化合物としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン;p−スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン等が例示できる。
前記架橋剤の配合量は、共重合体100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部がよい。かかる配合量が0.1質量部未満では凝集力が不足し、10質量部を越えると架橋密度が高くなりすぎ粘着力が低下することとなり好ましくない。
また、表面保護フィルムのように剥離時の被着体表面の汚染を防ぐことが目的の場合は
架橋剤の配合量は、共重合体100質量部に対して、3〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは3〜7質量部がよい。かかる配合量が3質量部未満では被着体表面を汚染する可能性があり、10質量部を越えると架橋密度が高くなりすぎ粘着力が低下することとなり好ましくない。また、光学フィルムのように基材の収縮による残留応力の緩和が目的の場合は架橋剤の配合量は、共重合体100質量部に対して、0.1〜3質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜3質量部がよい。かかる配合量が0.1質量部未満では凝集力が不足し、3質量部を越えると架橋密度が高くなりすぎ応力緩和性が低下することとなり好ましくない。
ただしA−B−Aトリブロック共重合体のようなブロック共重合体は相分離構造により化学的な架橋点に加え、Aブロックがミクロ相分離を形成することにより物理的な疑似架橋点を有するためこの限りではない。
また共重合体と架橋剤との架橋を促進するために、必要に応じて有機スズや第3級アミン、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の公知の触媒や、エポキシ系化合物の場合ではトリフェニルホスフィン等のリン酸触媒を用いることもできる。
本発明の粘着剤組成物において、乾燥後又は硬化後のゲル分率としては70%以上、特に70〜95質量%であることが好ましい。ゲル分率が70%未満であると、接着力が上昇しやすく、また剥離時に糊残りしやすい。
なお、ここでいうゲル分率とは、乾燥質量W1(g)の硬化後の粘着剤を酢酸エチルでソックスレー抽出後、取り出して乾燥したときの質量をW2(g)としたとき、下記式により算出される値を意味する。
ゲル分率(%)=(W2/W1)×100
粘着剤組成物に含まれる任意の他の成分として、共重合体以外の樹脂、溶剤、粘着付与樹脂、添加剤、フィラーが例示できる。
(その他の樹脂)
共重合体以外の樹脂として、本発明に該当しない、その他のアクリル樹脂が例示できる。共重合体とその他の樹脂を混合することにより、塗工粘度、粘着性および剥離性をより適切なものに調整することができる。
また、共重合体以外の樹脂として、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリブタジエン、セルロース、ポリウレタンポリウレア、オレフィン系樹脂、粘着付与樹脂が例示できる。
粘着剤組成物は、粘着付与樹脂を用いることにより、タック性、粘着力および保持力の調整が容易となる。粘着付与樹脂としては、共重合体との相溶性に優れる樹脂が好適であり、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂などの天然樹脂、石油樹脂、水素添加石油樹脂、スチレン系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂の合成樹脂が例示できる。
粘着付与樹脂は、共重合体100質量部に対して、0.1〜50質量部用いることが好ましい。より好ましくは1〜40質量部であり、更に好ましくは5〜20質量部である。
前記ロジン系樹脂としては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等のロジン;水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等の変性ロジン;これらロジン、変性ロジンのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル等のロジンエステルが例示できる。上記ロジン類の具体例としては、パインクリスタルKE−100、パインクリスタルKE−311、パインクリスタルKE−359、パインクリスタルKE−604、パインクリスタルD−6250(荒川化学工業社製)が挙げられる。
前記テルペン系樹脂としては、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン等を主体とするテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。上記テルペン系樹脂の具体例としては、タマノル901(荒川化学工業社製)が例示できる。前記水素添加(以下、水添ともいう)石油樹脂等としては、(水添)脂肪族系(C5系)石油樹脂、(水添)芳香族系(C9系)石油樹脂、(水添)共重合系(C5/C9系)石油樹脂、(水添)ジシクロペンタジエン系石油樹脂、脂環式飽和炭化水素樹脂等が挙げられる。上記スチレン系樹脂としては、ポリα−メチルスチレン、α−メチルスチレン/スチレン共重合体、スチレン系単量体/脂肪族系単量体共重合体、スチレン系単量体/α−メチルスチレン/脂肪族系単量体共重合体、スチレン系単量体共重合体、スチレン系単量体/芳香族系単量体共重合体が例示できる。上記スチレン系樹脂の具体例としては、FTR6000シリーズ、FTR7000シリーズ(三井化学社製)が例示できる。
前記粘着付与樹脂の中でも、相容性に優れる点で、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、芳香族系石油樹脂が好ましく、中でも接着性を高める観点からロジン系樹脂および芳香族系石油樹脂が好ましく、また、ロジン系樹脂の場合は、耐光劣化や着色、不純物による気泡の発生を抑える観点から、蒸留、再結晶、抽出等の操作により精製処理された不均化又は水素化ロジン類がさらに好ましい。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、前記粘着付与樹脂の軟化点については、高い粘着力を発現する点から50〜150℃のものが好ましい。
(溶剤)
樹脂組成物(D)を粘着剤組成物として用いる場合は、溶剤含有タイプ、無溶剤タイプのいずれでもよい。
溶剤含有タイプの場合、液状またはペースト状とする態様がある。この場合、溶剤は、共重合体および他の成分への溶解性または分散性を考慮して選定する。また、加工性を改善するために可塑剤的機能として溶剤を用いる態様もある。この場合、加工性およびプロセス性等を考慮して溶剤を選定する。
溶剤は1種単独または2種以上を併用して用いることができる。具体的には、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、その他の炭化水素系溶剤の有機溶剤が例示できる。
(フィラー)
フィラーとしては、ガラス繊維、カーボン繊維などの無機繊維及び有機繊維;炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどの無機充填剤、銀、銅、カーボンナノチューブなどの導電材が例示できる。
(添加剤)
本発明で得られる粘着剤組成物は、必要に応じて他の成分を添加することもできる。添
加剤としては、例えば染料、顔料、色素、蛍光増白剤、湿潤剤、表面張力調製剤、増粘剤、防黴剤、防腐剤、酸素吸収剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤、水溶性消光剤、酸化防止剤、香料、金属不活性剤、造核剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、加工助剤、シランカップリング剤、可塑剤、軟化剤、消泡剤、充填剤、粘度調整剤、分散剤、レベリング調整剤、反射防止剤、蛍光剤、光拡散剤、光安定剤、屈折率調整剤、艶消し剤、界面活性剤等が挙げられ、これらは、粘着剤の用途や使用目的に応じて、適宜選択して配合もしくは粘着剤層と積層して使用される。本発明では、接着力の調整を目的として、シランカップリング剤を添加することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ − グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどがあり、これらの1種を単独で又は2 種以上を混合して用いることができる。本発明におけるシランカップリング剤の添加量は、前記共重合体100質量部に対し通常0.01〜5.0質量部添加することが好ましく、0.03〜2.0質量部添加することがより好ましい。
粘着剤組成物を電子デバイス用途などに用いる場合には、帯電防止剤を添加することが好ましい。帯電防止剤としては、例えば、化研産業株式会社製のPR−IL1汎用帯電防止剤(イオン性液体)が例示できる。
また、粘着剤組成物は、粘着力調整の観点からは可塑剤を含むことが好ましい。可塑剤の好適な例としては上記可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ビス−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−デシルフタレート、ジイソデシルフタレートなどのフタル酸エステル類、ビス−2−エチルヘキシルセバケート、ジ−n−ブチルセバケートなどのセバシン酸エステル類、ビス−2−エチルヘキシルアゼレートなどのアゼライン酸エステル類、ビス−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−n−オクチルアジペートなどのアジピン酸エステル類などの脂肪酸エステル類;塩素化パラフィンなどのパラフィン類;ポリプロピレングリコールなどのグリコール類;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油などのエポキシ系高分子可塑剤;トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェートなどのリン酸エステル類;トリフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類;ポリ(メタ)アクリル酸n−ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル系オリゴマー;液状ポリブテン;液状ポリイソブチレン;液状ポリイソプレン;プロセスオイル;ナフテン系オイルが例示できる。
本発明の粘着剤組成物中のヨウ素含有率は、ヨウ素由来の着色を抑制する観点から、共重合体に対して0.0001ppm以上、10,000ppm以下とする。凝集力向上の観点からは、下限は0.0001ppmとする。ヨウ素含有率の下限値は0.01ppmであることが好ましく、0.1ppmであることがより好ましく、1ppmであることが更に好ましく、10ppm若しくは100ppmであることが特に好ましい。また、ヨウ素含有率の上限は5,000ppmであることがより好ましく、2,000ppmあることが更に好ましく、1,000ppm以下であることが特に好ましい。
また、凝集力向上以外の観点からも、共重合体中にヨウ素を0.0001〜10,000ppm含有することで、抗菌性の向上効果がある。また、粘着剤として用いる場合には、耐熱・加湿耐久性を良好に保つ効果も期待できる。
本明細書において共重合体に対するヨウ素含有率は、蛍光X線分析装置を用いて微量ヨウ素の検出法によりヨウ素含有率を求める。当該測定法によってヨウ素が検出されなかった場合には、検出限界値が0.0001ppm未満である(少なくとも0.0001ppmのヨウ素を検出可能な)装置を用いてヨウ素含有率を求める。本発明においては、蛍光X線分析装置を用いてヨウ素が検出されなかった場合には、後述する実施例に記載のICP−MS又はICP−MS/MS測定装置により求めた。
本発明における粘着フィルムは最小構成単位として基材と粘着剤層を含む。また粘着剤
層は基材の片面もしくは両面に形成される。本発明における粘着フィルムの粘着剤層形成方法としては特に限定されるものではなく、基材の片面または両面に粘着剤組成物(溶液) を塗布し、乾燥する方法、表面に離形処理が施された離型フィルムの離形面に粘着剤組成物を塗布し、乾燥もしくは乾燥および熟成後、基材の片面または両面に転写する方法等があげられる。またフィルム表面に粘着層が露出する場合は実用に供されるまで離形フィルムで保護される。
前記離型フィルムの構成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シート、金属箔およびそれらのラミネート体といった適宜な薄層体を用いることができる。また、離型フィルムの表面には、粘着剤層からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、フッ素処理等の処理が施されていてもよい。
本発明における粘着フィルムに用いられる基材としては、粘着フィルムに通常用いられる基材であればよく、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、セロハンなどのプラチックフィルム; ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタールおよびエチレン・酢酸ビニル共重合体の鹸化物等のポリビニルアルコール系樹脂に、ヨウ素あるいは二色性染料等の偏光成分を含有させて、延伸することにより得られるフィルムを、当該フィルムの保護を目的に、三酢酸セルロース等のセルロース系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエーテルスルホン系フィルム等のフィルムで積層した多層フィルム; クラフト紙、和紙等の紙; マニラ麻、パルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維などの天然繊維、半合成繊維又は合成繊維の繊維状物質などからなる単独又は混紡などの織布や不織布等の布; 天然ゴム、ブチルゴム等からなるゴムシート; ポリウレタン、ポリクロロプレンゴム等からなる発泡体による発泡体シート;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;これらの複合体などが挙げられる。
本発明における粘着フィルムを表面保護フィルムとして用いる場合の基材としては、とりわけポリエチレン製フィルムやポリエステル製フィルム(ポリエチレンテレフタレート製フィルム等)などのプラスチックフィルムを好適に用いることができる。なお、基材は透明、半透明、不透明のうちいずれであってもよい。また、片面又は両面にコロナ処理などの表面処理が施されていてもよい。
本発明における粘着フィルムを光学フィルムに用いる場合の基材としては、液晶表示装置に通常用いられる基材であればよく、例えば偏光板や位相差板などがあげられ、例えばポリビニルアルコールフィルムに、ヨウ素の偏光成分を含有させて延伸することにより得られるフィルムに、当該フィルムの保護を目的に三酢酸セルロースフィルムが積層された多層フィルムなどが用いられる。
本発明の粘着剤は、テープ、シート、ラベル、箔等に広く適用することができる。例えば、合成樹脂製又は変成天然物製のフィルム、紙、あらゆる種類の布、金属箔、金属化プラスチック箔、アスベスト又はガラス繊維布等の基質材料に、溶剤型、エマルション型又はホットメルト型等の形で前記粘着剤を塗布し、活性エネルギー線や熱により硬化させることにより得られる。具体的な用途としては、例えば塗装用マスキングテープ等の建築用、輸送時の表面保護フィルム等の自動車用途、電気絶縁用粘着テープ、半導体製造工程用テープ等の電気電子材料用途、液晶ディスプレイ等の光学フィルム貼り合わせ用テープ等
の光学用途、経皮投与用貼布剤等の医療用途向け粘着剤などとして非常に有効である。
粘着層の形成方法は、特に制限は無く、溶剤により粘度を調整した粘着剤組成物を例えば基材または離型シートに、例えばマイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、およびスピンコーター等を用いて形成できる。基材に塗工する場合には、基材に帯電防止処理、プラズマ処理、密着付与プライマー処理、コロナ処理等を施してもよい。塗工に際して乾燥工程を行うことが好ましい。乾燥装置は、特に制限は無く、例えば熱風乾燥機、赤外線ヒーターおよび減圧法等が挙げられる。乾燥温度は、通常60〜160℃程度である。本実施形態の粘着フィルムにおける粘着層の乾燥後の膜厚は、5〜100μmとすることが好ましい。
粘着フィルムは、基材と粘着層が積層された積層体から構成されていてもよい。また、帯電防止層、保護層など、任意の1または複数の層との積層体としてもよい。粘着層は1層の単層または2層以上の積層体とすることができる。
粘着層の架橋反応は、上記乾燥工程時に熱により行ってもよいし、別途、エージング処理や熱圧着を行ってもよい。また、活性光線照射により架橋を行ってもよい。
粘着層は、基材の片面に形成する態様の他、両面に形成することもできる。粘着層上には、被着体に貼付する直前まで、剥離性シートを積層させておくことが好ましい。剥離性シートは、例えば、上質紙等の紙またはプラスチックフィルムに剥離剤をコーティングしてなる公知の剥離紙または剥離フィルムを用いることができる。
被着体は特に限定されないが、人体、SUS(ステンレス鋼),ガラス、プラスチックフィルム等が挙げられる。プラスチックフィルムは、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA),ポリカーボネートがある。また、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィンも好適である。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、例中、「部」とあるのは「質量部」を、「%」とあるのは「質量%」を意味するものとする。また、溶剤以外は不揮発分換算値である。
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)およびMw/Mnの測定]
GPC(商品名:GPC−8020、東ソー社製、カラム:TSKgelSuperHM−M(東ソー社製)、移動相:テトラヒドロフラン溶液)を用い、標準物質としてポリスチレン(分子量427,000、190,000、96,400、37,400、10,200、2,630、440、92)を使用して検量線を作製し、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定した。この測定値から多分散度(PDI=Mw/Mn)を算出した。
[ヨウ素含有率の測定]
各実施例・比較例で得られた共重合体をメチルエチルケトンに溶解させて共重合体の濃度が2.5質量%の溶液を調製した。得られた溶液を蛍光X線分析装置(フィリップス社製、品番:PW2404)で測定し、各実施例・比較例で得られた共重合体の質量に対するヨウ素含有率(ppm)を求めた。
また、蛍光X線分析装置によりヨウ素が検出されなかったサンプルは、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析)装置(アジレント・テクノロジー社製、Agilent 7900)で測定し、共重合体に対するヨウ素含有率(質量ppm)を求めた。
更に、ICP−MS装置によりヨウ素が検出されなかったサンプルは、ICP−MS/MS装置(アジレント・テクノロジー社製、Agilent 8900 ICP−QQQ を MS/MS モードで使用)で測定し、共重合体に対するヨウ素含有率(質量ppm)を求めた。
ICP−MS、ICP−MS/MSの測定条件としては、共重合体約0.25gを精秤し、マイクロウェーブ湿式分解装置を用いた酸分解法により処理後、蒸留水で50mL定溶とし、ICP測定を行った。
共重合体の原料の略称は、以下の通りである。
(単量体)
BA:ブチルアクリレート(日本触媒社製)
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート(日本触媒社製)
MAA:メタクリル酸(三菱ケミカル社製)
HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(日本触媒社製)
GMA:メタクリル酸グリシジル(三菱ガス化学社製)
(重合開始剤)
合成1:エチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート(TERP重合開始剤)
CP−I:2−ヨード−2−メチルプロピオニトリル(東京化成工業社製)
BM1448: 4−シアノ−4−[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタンサンメチル(BORON MOLECULAR社製)
EMA−II:エチレンビス(2−ヨードイソブチレート)(合同資源社製)
EMA−III:グリセロールトリス(2−ヨードイソブチレート)(合同資源社製)
Ebib:2-ブロモイソ酪酸エチル(東京化成工業社製)
AIBN:2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(和光純薬社製)
(実施例S1):ランダム共重合体(RCMP法)
RCMP法により共重合体を合成した。具体的には、窒素ガス導入管、撹拌機を備えた2Lフラスコに、CP−Iを0.40g、ヨウ素を0.001g、テトラブチルアンモニウムヨージドを16.1gおよびBAを194.0g、HEMAを6.0g混合し、70℃で16時間反応させた。H−NMRから算出したBA、HEMAの転化率は全て100%であった。その後、室温まで冷却し、アルミナ粉(Aldrich社製)を添加、1時間攪拌した後、濾過、洗浄および乾燥によって、ランダム構造を有する共重合体(C1)を得た。目的物の生成は、H−NMRより確認した。
実施例S1のエチレン性不飽和単量体の仕込み率、共重合体のMw、Mw/Mn、共重合体の構造、ヨウ素含有率(質量ppm)の結果を表1に示す。共重合体の構造中、「ランダム」とはランダム共重合体、「ジブロック」とはジブロック共重合体の構造体のことを意味する。以下の実施例も同様とした。
(実施例S2〜S6,S8〜S9、S11〜13、S15、比較例S5):ランダム共重合体(RCMP法)
実施例S1と同様RCMP法により、表1、2に示す各条件で重合し共重合体を得た。リビングラジカル重合用の重合開始剤は、CP−I以外にも多分岐開始剤として、EMA−II、EMA−IIIを表1に示す条件で用いた。また、エチレン性不飽和単量の仕込み率に関しても同様である。表1、2に実施例S1と同様の特性値を示す(以下同様)。
(実施例S7):ジブロック共重合体(RCMP法)
RCMP法により共重合体を合成した。具体的には、窒素ガス導入管、撹拌機を備えた2Lフラスコに、CP−Iを0.10g、ヨウ素を0.01g、テトラブチルアンモニウムヨージドを4.1gおよびBAを194.0g混合し、70℃で15時間反応させた。H−NMRから算出したBAの転化率は100%であった。次いで、ジブロック共重合体を合成するため、2段目モノマーとしてGMA6.0g、トルエン溶媒10gをプレポリマー溶液全量に加え、70℃で12時間反応させた。H−NMRから算出した2段目モノマーGMAの転化率も100%であった。
その後、室温まで冷却し、アルミナ粉(Aldrich社製)を添加、1時間攪拌した後、濾過、洗浄および乾燥によって、ジブロック構造を有する共重合体(C7)を得た。目的物の生成は、H−NMRより確認した。
(実施例S10、C14):ジブロック共重合体(RCMP法)
実施例S7と同様RCMP法により、表1、2に示す各条件で重合し共重合体を得た。表1、2に実施例S7と同様の特性値を示す
(比較例S1):ランダム共重合体(フリーラジカル重合法)
フリーラジカル重合法により共重合体を合成した。具体的には、窒素ガス導入管、撹拌機を備えた2Lフラスコに、AIBNを0.5g、BAを194.0g、HEMAを6.0g混合し、75℃で10時間反応させた。H−NMRから算出したBA、HEMAの転化率はどちらも99.5%以上であった。その後、室温まで冷却し、濾過、洗浄および乾燥によって、比較例用のランダム構造を有する共重合体(J1)を得た。目的物の生成は、H−NMRより確認した。
(TERP重合開始剤の合成)
合成1:(エチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート)
国際公開2007/119884号に開示の方法の通りに合成した。具体的には、金属テルル〔Aldrich製、商品名:Tellurium(−40mesh)〕6.38g(50mmol)をTHF50mLに懸濁させ、これにn−ブチルリチウム(Aldrich製、1.6Mヘキサン溶液)34.4mL(55mmol)を、室温でゆっくり滴下した(10分間)。この反応溶液を金属テルルが完全に消失するまで撹拌した(20分間)。この反応溶液に、エチル−2−ブロモ−イソブチレート10.7g(55mmol)を室温で加え、2時間撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を濃縮し、続いて減圧蒸留して、黄色油状物7.67g(収率46.5%)の合成1の化合物を得た。また、1H−NMR分析で目的物の生成を確認した。
(比較例S2):ランダム共重合体(TERP法)
TERP法により共重合体を合成した。具体的には、アルゴン置換したグローブボックス内で、合成1で製造したエチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート0.038g、AIBN0.01g、BAを194.0g、HEMAを6.0g、メチルエチルケトン溶媒200gを系内に加え、反応容器にアルゴンガスを流入しながら密閉し、60℃で20時間反応させた。H−NMRから算出したBA、HEMAの転化率はどちらも99.5%以上であった。その後、室温まで冷却し、濾過、洗浄および乾燥によって、比較例用のランダム構造を有する共重合体(S2)を得た。
(比較例S3):ランダム共重合体(RAFT法)
RAFT法により共重合体を合成した。具体的には、窒素ガス導入管、撹拌機を備えた2Lフラスコに、BM1448(RAFT剤)0.18g、AIBN0.01g、BAを194.0g、MAA6.0gをメチルエチルケトン溶媒200g中で、75℃の環境下、12時間反応させた。H−NMRから算出したBA、MAAの転化率はどちらも99.5%以上であった。その後、室温まで冷却し、濾過、洗浄および乾燥によって、比較例用のランダム構造を有する共重合体(S3)を得た。
(比較例S4):ランダム共重合体(ATRP法)
ATRP法により共重合体を合成した。具体的には、窒素ガス導入管、撹拌機を備えた2Lフラスコに、臭化銅(I)0.6gとEbib(2-ブロモイソ酪酸エチル)1.6g、N,N,N’、N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン0.8g、2EHAを194.0g、HEMA6.0を、メチルエチルケトン溶媒200g中、85℃で12時間反応させた。H−NMRから算出したBA、HEMAの転化率は全て99.5%以上であった。その後、室温まで冷却し、濾過、洗浄および乾燥によって、比較例用のランダム構造を有する共重合体(S4)を得た。
(比較例S6):ランダム共重合体(RCMP法)
実施例S8で得られた共重合体(C8)に対して、表2のヨウ素含量(ppm)になるようにヨウ素を添加することで、比較例用のランダム構造を有する共重合体(S6)を得た。
Figure 2021095453
Figure 2021095453

<粘着剤組成物および粘着フィルムの作製および特性評価>:
表3に示す各共重合体100部に、表3に示す配合量で架橋剤を加えることにより、実施例Y1〜Y17および比較例Y1〜Y6に係る粘着剤組成物を得た。また、これらの粘着剤組成物から粘着層を形成し、粘着物性、性状(着色、臭気匂い)及び粘着剤組成物の主成分である共重合体の合成操作性を評価した。評価結果を表3に示す。
(架橋剤)
各実施例および比較例に係る架橋剤としては、コロネートL−55E/イソシアネート系(日本ポリウレタン工業(株)製、固形分55%、表3・4では「コロネートL」と表記)、アルミキレートD/金属キレート系(川研ファインケミカル(株)製)、IPDA/アミン系(イソホロンジアミン、東京化成工業(株)製)を用いた。
(粘着フィルムの製造)
各実施例および比較例に係る粘着組成物をそれぞれ厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製剥離性フィルム基材(製品名「SP−PET382050」、リンテック社製)の剥離処理面上に、ドクターブレードにて乾燥後の厚みが65μmになるように塗工したフィルムを準備した。そして、25℃で100時間乾燥することにより粘着層を有する積層体である粘着フィルムを得た。
(ゲル分率)
ゲル分率は、ポリエチレンテレフタレート製剥離性フィルム基材を剥離した粘着層に対し、トルエン浸漬前、およびトルエンに室温下で24時間浸漬した後、80℃で5時間乾燥した後の質量をそれぞれ求め、下記の式から求めた。
ゲル分率(%)=[A/B]×100
A:粘着層のトルエン浸漬後における乾燥質量(トルエンの質量は含まない)
B:粘着層のトルエン浸漬前の質量
(粘着力/180°剥離試験および保持力)
厚みが65μmの各実施例および比較例に係る積層体を、25mm×100mmのサイズにカットして試験片βを作製した。次いで、JIS G4305及びJIS B0601に準拠したステンレス板(SUS304、表面仕上げBA、表面粗さ50nm、サイズ50mm×125mm)上に、粘着層がステンレス板と対向した状態となるように載せた。次いで、試験片β上に300mm/分の速度で2kgのゴムローラーを一往復させることにより、試験片βとステンレス板とを貼り合わせた。更に、試験片βから剥離性フィルムを剥がし、JIS Z0237に準じて、樹脂フィルム上に厚さ25μmのJIS C2318に規定するポリエチレンテレフタレートフィルムを重ねた。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に300mm/分の速度で2kgのゴムローラーをもう一往復させることにより、180°剥離強度評価用サンプルγを得た。続いて、引張試験機(RTG1250A、AND社製)を用いて、温度23℃、湿度50%で24時間静置し、JIS Z0237に準じて、剥離速度300mm/分で180°方向の引張試験を行い、180°剥離強度(N/25mm)を測定した。
(保持力)
試験片βを、上述するJIS G4305及びJIS B0601に準拠したステンレス板に25mm×25mmで貼り付け、試験片β上に300mm/分の速度で2kgのゴムローラーを一往復させることにより、試験片βとステンレス板とを貼り合わせた。更に、試験片βから剥離性フィルムを剥がし、JIS Z0237に準じて、粘着層上に厚さ25μmのJIS C2318に規定するポリエチレンテレフタレートフィルムを重ねた。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に300mm/分の速度で2kgのゴムローラーをもう一往復させた。その後、温度23℃、湿度50%で24時間静置し、保持力評価用サンプルδを作製した。そして、保持力評価用サンプルδを各条件温度(80℃、100℃、120℃の3水準)、相対湿度50%の条件で、荷重1kgの重りを吊り下げ、おもりが落下するまでの時間から求めた。20時間後で重りが落下しない場合は、20時間後の試験片βとステンレス板のずれ距離を測長し、以下の基準により保持力を評価した。
+++:ずれ距離が1.0mm以下
++:ずれ距離が1.0mmを超えて、10.0mm以下
+:ずれ距離が10.0mmを超えて、20.0mm以下
NG:ずれ距離が20.0mmを超える、又は重りが落下
同様にして、保持力評価用サンプルδを120℃、相対湿度50%の条件で上記基準により保持力を評価した。
(樹脂着色)
上記で得られた粘着フィルムの着色を目視で観察し、下記基準で評価した。
+++:着色がない(無色透明)
NG:明らかな着色や色むらが確認される
(臭気匂い)
上記で得られた粘着フィルムの匂い・臭気を下記基準で評価した。
+++:無臭
NG:強烈な臭気を感じる
Figure 2021095453
<粘着剤組成物および粘着フィルム(光学フィルム)の作製および特性評価>
表4に示す各共重合体100部に、表4に示す配合量で架橋剤を加えることにより、実施例Y18〜Y24および比較例Y7〜12に係る粘着剤組成物を得た。また、これらの粘着剤組成物から粘着層を形成し、粘着物性及び耐久性(耐熱・耐湿熱)、糊残りを評価した。評価結果を表4に示す。
(粘着フィルムの製造)
各実施例および比較例に係る粘着剤組成物をそれぞれ厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製剥離性フィルム基材(製品名「SP−PET382050」、リンテック社製)の剥離処理面上に、ドクターブレードにて乾燥後の厚みが65μmになるように塗工したフィルムを準備した。そして、25℃で100時間乾燥することにより粘着層を有する積層体である粘着フィルムを得た。
(ゲル分率)
ゲル分率は、ポリエチレンテレフタレート製剥離性フィルム基材を剥離した粘着層に対し、トルエン浸漬前、およびトルエンに室温下で24時間浸漬した後、80℃で5時間乾燥した後の質量をそれぞれ求め、下記の式から求めた。
ゲル分率(%)=[A/B]×100
A:粘着層のトルエン浸漬後における乾燥質量(トルエンの質量は含まない)
B:粘着層のトルエン浸漬前の質量
(粘着力/90°剥離試験)
粘着フィルムの粘着層に対し、被着体として無アルカリガラス(コーニングガラス#1737)を用意し、23℃、50℃RHにて上述した粘着フィルムを当該被着体に接着させてJIS Z 0237の粘着力の測定方法に準拠して90°剥離強度を測定した。
(保持力)
厚みが65μmの各実施例および比較例に係る積層体である粘着フィルムの保持力を評価した。温度条件を120℃1水準のみに変更した以外は、実施例Y1〜Y17および比較例Y1〜Y6と同様の方法で保持力評価用サンプルδを作製し、以下の基準により評価した。
+++:ずれ距離が1.0mm以下。
++:ずれ距離が1.0mmを超えて、10.0mm以下。
+:ずれ距離が10.0mmを超えて、20.0mm以下。
NG:ずれ距離が20.0mmを超える、又は重りが落下する。
(糊残り)
粘着力測定後の被着体表面を目視で観察し、下記のごとく評価した。
+++:被着体表面の顕著な汚染なし
+:被着体表面にくもり
NG:被着体表面に明らかな糊残り(凝集破壊又は転写)
(耐久性試験)
上記で得られた160×160mmサイズの粘着フィルム(光学フィルム)を195×195mmサイズの無アルカリガラスに(コーニングガラス#1737)に貼り付け、80℃(耐熱耐久性)、および60℃、90%RH(加湿耐久性)の雰囲気に500時間投入して、光学フィルムの気泡の発生・剥がれおよび色むらを目視で観察し、下記の基準で評価した。
<気泡・剥がれ>
+++:気泡の発生や浮き・剥がれがない
NG:気泡の発生や浮き・剥がれが確認される
<色むら>
+++:色むらがない
+:僅かな色むらが確認される
NG:色むらが確認される
Figure 2021095453
本発明の粘着剤組成物は、分子量分布を3.0未満にすることができ、これにより粘着剤として使用する際に、使用環境下での耐熱性の低下や、再剥離時の糊残りによる被着体表面の汚染を招くことが知られている低分子量成分(オリゴマー)や、ホモポリマーの生成が抑制され、かつ有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤由来の残基を有する共重合体中に、ヨウ素を0.0001〜10,000ppm含有することで、凝集力向上や抗菌性の向上効果がある。また、粘着剤として用いる場合には、耐熱・加湿耐久性を良好に保つ効果も期待できる。

Claims (8)

  1. 架橋性官能基を有さないエチレン性不飽和単量体、及び架橋性官能基を有するエチレン性不飽和単量体を共重合してなる、下記一般式(1)〜(3)いずれか記載の有機ヨウ素系リビングラジカル重合開始剤由来の残基を有する共重合体と、架橋剤とを含有する粘着剤組成物であって、
    共重合体に対するヨウ素含有率が0.0001〜10,000質量ppmである、粘着剤組成物。

    一般式(1)
    Figure 2021095453

    一般式(2)
    Figure 2021095453

    一般式(3)
    Figure 2021095453

    但し、Polymerization unitは、一般式(3)の場合にはYからの分岐毎にそれぞれ独立に、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を主体とする重合体ユニットであり、
    は、Yからの分岐毎にそれぞれ独立に、エステル基、ケトン基およびアミド基からなる群より選択される2価の基、または直接結合であり、
    Qは1価の分子末端基であり、Yからの分岐毎にそれぞれ独立に、前記分子末端基は、官能基、官能基を有していてもよい炭化水素基、またはヨード基であり、
    Yはp価の、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、
    pは2〜6の整数であり、
    、RおよびRはそれぞれ独立に、一般式(3)の場合にはYからの分岐毎にそれぞれ独立に、水素原子または置換基を有していてもよい1価の炭化水素基であり、
    およびRはそれぞれ独立に、一般式(3)の場合にはYからの分岐毎にそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基または−CORであり、
    は置換基を有していてもよい1価の炭化水素基、−COR、シアノ基またはニトロ基であり、
    とR、RとR4、とRおよびRとRはそれぞれ独立に、一般式(3)の場合にはYからの分岐毎にそれぞれ独立に、互いに結合して環を形成していてもよく、
    は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基または置換基を有していてもよい1価の炭化水素基であり、
    11は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、
    12はアルキレン基、アリーレン基およびアルキレンオキシ基からなる群より選ばれる2価の炭化水素基、または直接結合であり、
    前記炭化水素基は、複素環を有していてもよく、それぞれ独立に、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基および芳香族炭化水素基の少なくともいずれかを有する。
  2. 共重合体の重量平均分子量(Mw)が、10万〜120万である請求項1記載の粘着剤組成物。
  3. 共重合体の多分散度(Mw/Mn)が、2.5以下である請求項1又は2記載の粘着剤組成物。
  4. 共重合体を構成するエチレン性不飽和単量体の全質量%中、
    架橋性官能基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構成単位の含有量が、
    0.1〜20質量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の粘着剤組成物。
  5. 前記架橋性官能基が、水酸基および/またはカルボキシ基であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の粘着剤組成物。
  6. 共重合体100質量部に対し、0.1〜10質量部の架橋剤を含むことを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の粘着剤組成物。
  7. 架橋後のゲル分率が70%以上であることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の粘着剤組成物。
  8. 基材上に、請求項1〜7のいずれかに記載の粘着剤組成物から形成された粘着層を有する粘着フィルム。
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