JP2021094546A - 液液抽出に基づく特定物質の製造方法 - Google Patents

液液抽出に基づく特定物質の製造方法 Download PDF

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弘親 長縄
Hirochika Osanawa
弘親 長縄
哲志 永野
Tetsushi Nagano
哲志 永野
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Abstract

【課題】重液相内若しくは軽液相内又は両相内で分離精製される特定の物質を、従来法の仕組みでは得られない革新的な特徴を発現させることができるようにした特定物質の製造方法を提供すること。【解決手段】機械撹拌を利用する液液抽出において、撹拌翼の翼部位が重液相と軽液相の間の界面近傍に配置され、撹拌翼を格納する容器又はミキサー室の上方から重液相、下方から軽液相を送液導入する仕組みを用いて、両相を撹拌しながら向流接触させ、容器又はミキサー室内に乳濁混合状態の領域を形成させる。【選択図】図4(e)

Description

本発明は、液液抽出に基づく特定物質の製造方法に係り、詳細には、重液相(多くの場合、水相)と軽液相(多くの場合、油相)を、相混合のための容器内において互いに向流接触させながらエマルション相(2液相乳濁混合相)を成長させる一方で、両相の分離(相分離)を同時進行させることで、重液相内若しくは軽液相内又は両相内で分離精製される特定の物質を得るための特定物質の製造方法であり、特に、重液相と軽液相を効率的に相混合させて広範囲で安定なエマルション相を容易に得ることができる、液液抽出に基づく特定物質の製造方法に関する。
液液抽出(溶媒抽出とも呼ばれる)を利用して、水溶液中の目的成分を分離・濃縮したり、目的成分から不純物を分離・除去したりすることで、製品として高品位な金属品、化学品(有機化合物など)などを得ることができる。液液抽出とは、互いに混じり合わない2つの液体の相(例えば、水相と油相)の間における物質の分配の違いによって、金属イオン、有機化合物、生体高分子などを分離精製・濃縮する方法であり、工業的に幅広く利用されている。
液液抽出に基づく分離では、扱う対象に応じて、錯形成反応、脱水和反応、溶媒和反応、イオン交換反応、酸塩基反応、酸化還元反応、触媒反応、自己組織化反応など、多くの化学反応が関与し得る。
実際に、液液抽出を工業的に行う場合、撹拌翼の回転によって2液相を相混合した後、別室に運ばれた2液相を重力分離するミキサーセトラー法が、しばしば利用される。ミキサーセトラー法に基づく液液抽出の仕組みは、比較的シンプルな構造ながら安定な性能が得られることで、工業的な液液抽出を代表する装置として最も普及している。
一方、従来のミキサーセトラー法(以下、単に従来法と称する)の仕組みは、2液相の間の界面の位置が変化しやすく、かつ、界面位置の調整など、その扱いには熟練を要する。また、2液相の送液速度の比が、そのまま、相混合にあずかる両相の体積比(いわゆるO/A比)となるため、例えば、目的成分を含む水相の処理速度(プロセッシング・スピード)を大きくするために水相の送液速度を上げたい場合、同時に油相の送液速度も同様に大きくしなければ、両相の体積比が変化してしまう。
従来法の仕組みでは、水相、油相ともにミキサー室の底部から互いに隣接した導入口を通じて供給され、該ミキサー室の下方に設置された撹拌翼部位(回転軸の先端に位置する翼部位)によって両相が即座に撹拌混合される仕組みを基本としている。また、ミキサー室の下部に水相と油相が導入される前室が設けられ、その前室とミキサー室の間の仕切板に設けられた通過口から、撹拌翼(吸引力が生じるタイプ)の回転で生じる負圧による吸い上げを利用して両相を該前室からミキサー室に導きながら両相を混合する仕組みも、一般的なミキサーセトラー装置として知られている(特許文献1、特許文献2の図3)。
特公昭61−19281号公報 特許第6119029号公報
水相が重液相で油相が軽液相である場合、水相と油相はともに水相内に供給され、かつ、撹拌翼の翼部位は両相の導入口の直上の水相内に位置している。このように、両相は水相内(重液相内)に導入され、該水相内で即座に撹拌されるため、必然的に、周囲の水相を巻き込んだ状態での撹拌混合とならざるを得ない。それゆえに、乳濁混合状態が不十分であったり、広範囲に安定な状態を維持するには至らなかったりする場合がある。なお、前室を設けたタイプでは、前室上部に油相が滞留するため、その吸い上げにより油相の割合を増加させるのに役立つが、実際に相混合されている両相の体積比は安定しない。
また、両相ともにミキサー室の上部から導入し、撹拌翼部位をミキサー室の下部に設置した構造も存在するが(特許文献2の図1)、撹拌翼の翼部位を重液相リッチなミキサー室の下部に配置しているため、2液相の混合初期において、重液相の割合が大きくなる傾向を持つ点では同様である。
以上のように、従来法の仕組みは、重液相、軽液相ともにミキサー室の下部、又は両相ともに同室上部から導入する方式である。この点において、上部から重液相、下部から軽液相を導入する方式の多くのカラム型液液抽出方法とは異なる。重液相と軽液相を対向して流す方式では、両相の向流接触によって、より効率的な抽出が可能となる。従来のカラム型液液抽出方法(例えば、スプレーカラム方式、パルスカラム方式など)は、撹拌翼を用いるミキサーセトラーと比べて2液相混合能力は低い反面、両相の向流接触に基づく理論段数の向上が見込める。
また、従来法の仕組みでは、撹拌翼の回転によって生じる吸引力を送液に利用するため、(吸引力が生じるタイプの撹拌翼を選択した場合)ポンプだけに頼らないで送液できるという利点がある。すなわち、ポンプへの負荷を撹拌翼の回転によって大幅に軽減できるが、一方で、2液相の撹拌の強さの違い(撹拌翼の回転速度の違いなど)によって送液速度が変化してしまうという問題がある。
従来法の仕組みは、比較的シンプルな構造ながら安定した性能が得られる反面、界面位置が変化しやすいことなどによる扱いにくさ(扱いに熟練を要する)、相混合にあずかる2液相の体積比の非独立性(両相の送液速度の比に依存)、重液相リッチ(軽液相不足)に陥りやすい非効率な2液相混合、撹拌翼回転の送液速度への影響などの問題点がある。
本発明の目的は、上述の問題を解決し、重液相内若しくは軽液相内又は両相内で分離精製される特定の物質を、従来法の仕組みでは得られない革新的な特徴を発現させることができるようにした特定物質の製造方法を提供することにある。
本発明は、上方から重液相を、下方から軽液相を送液導入し、上部に軽液相を下部に重液相を形成させながら、軽液相と重液相間の界面近傍を機械的に攪拌することによって、軽液相と重液相との乳濁混合を促進させることを特徴とする液液抽出による特定物質の製造方法である。本製造方法は、例えば、撹拌翼を重液相と軽液相を導入する容器又は部屋、例えばミキサー室に設け、かつ攪拌翼の翼部位の位置を、軽液相と重液相の乳濁混合が効果的に行われる位置である界面近傍に配置した構造を用いることで容易に実施できる。
本発明に係る特定物質の製造方法の最適な形態では、次の7つの特徴を得ることができる。1)前記容器又は部屋での2液相界面の位置が変動なく常に安定で、2)相混合にあずかる両相の体積比を送液速度とは無関係に(独立的に)設定でき、3)両相を効率的に相混合することで広範囲で安定なエマルション相(2液相乳濁混合相)を成長させ、4)吸引力が生じない撹拌翼を用いることで、撹拌翼回転(相混合の強さ)が送液速度に影響せず、5)重液相と軽液相の対向送液に基づく両相の向流接触によって理論段数が向上し、6)機械撹拌のための容器又は部屋(ミキサー室)において相分離を同時進行させることで、分相性が向上し、7)オーバーフロー(溢流)による液送りから圧力作用による送液への切り替えにより、循環送液を容易にできる。
従来法の仕組みでは、重液相(多くの場合、水相)、軽液相(多くの場合、油相)の両方がミキサー室の下部から導入される。ミキサー室下部は重液相リッチになりやすく、そこに導入された2液相は、重液相リッチのまま、乳濁混合状態の相(エマルション相)を形成する。すなわち、重液相と軽液相の混合初期では、重液相の割合が大きい状態で2液相が乳濁混合される。そこで、その影響を小さくするため、撹拌翼の翼部位は、ミキサー室下部の両相の導入口の直上に設置されることが多い。また、両相の導入口の直下に前室を設けると、該前室の上部は軽液相の割合が大きくなるため、それを撹拌翼の吸引作用で吸い上げることにより、前述の重液相リッチの状態での乳濁混合を相殺・緩和できるが、吸上げられる両相の割合が一定ではないため、相混合されている両相の体積比が安定しないという欠点がある。
それに対して、本発明では、重液相と軽液相を相混合するための撹拌翼の翼部位を2液相の間の界面近傍(撹拌翼の回転によって重液相と軽液相の乳濁混合が促進される界面近くの位置)に配置するとともに、前記撹拌翼を格納する容器又は部屋(ミキサー室)の上方から重液相、下方から軽液相を送液導入する液液抽出の仕組みを利用することで、エマルション相(2液相乳濁混合相)に存在する重液相と軽液相の体積比が終始変化しないままで、相混合することができる。
本発明は、機械撹拌を利用する液液抽出において、従来のミキサーセトラー法(従来法と称する)の仕組みが持つ問題点を解決するとともに、従来法にはない革新的な特徴を発現させるものである。
具体的には、本発明の最良の実施形態では、従来法の仕組みの問題点である、界面位置が変化しやすいなどの扱いにくさ、相混合にあずかる2液相の体積比(いわゆるO/A比)が両相の送液速度の比に依存するという操作上の制限、周囲の重液相を巻き込んだ非効率な2液相混合、撹拌翼回転と送液速度が連動することで生じる操作上の煩雑さを解決できる。すなわち、本発明の方法によれば、界面位置が変動せず常に安定で、両相の体積比を送液速度とは無関係に(独立的に)設定でき、エマルション相内での両相の体積比を終始一貫して維持しながら効率的な2液相混合を実現し、撹拌翼回転が送液速度に影響しないようにできる。
また、本発明では、従来法にはない革新的な特徴として、重液相と軽液相の対向した流れに基づく向流接触により理論段数が向上する。ここで言う理論段数とは、液液抽出における分離の性能を回分式での分配平衡値を基準にして表した指標であり、理論段数が向上すると、2つの物質間の分離の度合の大きさを示す分離係数(2つの物質の分配比の比)の値が増加する。また、機械撹拌のための容器又は部屋(ミキサー室)において相分離を同時進行させることにより、分相性が向上する。さらに、オーバーフローから圧力送液への切り替えにより、循環送液を容易にできる。なお、循環送液適応型の仕組みは、正抽出、洗浄、及び逆抽出を一体化して同期的に循環送液することで生じる多段効果に利用することができ、従来法の仕組みと比較して、装置システムを大幅にダウンサイズできる。
重液相及び軽液相を循環送液する単室式の仕組み(その1)。 重液相及び軽液相を循環送液する単室式の仕組み(その2)。 重液相及び軽液相を循環送液する単室式の仕組み(その3)。 重液相及び軽液相を循環送液する単室式の仕組み(その4)。 重液相及び軽液相を循環送液する単室式の仕組み(その5)。 軽液相のみを循環送液する単室式の仕組み(その1)。 軽液相のみを循環送液する単室式の仕組み(その2)。 軽液相のみを循環送液する単室式の仕組み(その3)。 軽液相のみを循環送液する単室式の仕組み(その4)。 重液相のみを循環送液する単室式の仕組み(その5)。 重液相のみを循環送液する単室式の仕組み(その1)。 重液相のみを循環送液する単室式の仕組み(その2)。 重液相のみを循環送液する単室式の仕組み(その3)。 重液相のみを循環送液する単室式の仕組み(その4)。 重液相のみを循環送液する単室式の仕組み(その5)。 重液相及び軽液相を1回通過送液する単室式の仕組み(その1)。 重液相及び軽液相を1回通過送液する単室式の仕組み(その2)。 重液相及び軽液相を1回通過送液する単室式の仕組み(その3)。 重液相及び軽液相を1回通過送液する単室式の仕組み(その4)。 重液相及び軽液相を1回通過送液する単室式の仕組み(その5)。 重液相及び軽液相を循環送液する上下張出形状単室式の仕組み(その1)。 重液相及び軽液相を循環送液する上下張出形状単室式の仕組み(その2)。 重液相及び軽液相を循環送液する上下張出形状単室式の仕組み(その3)。 重液相及び軽液相を循環送液する上下張出形状単室式の仕組み(その4)。 重液相及び軽液相を循環送液する上下張出形状単室式の仕組み(その5)。 軽液相のみを循環送液する上下張出形状単室式の仕組み(その1)。 軽液相のみを循環送液する上下張出形状単室式の仕組み(その2)。 軽液相のみを循環送液する上下張出形状単室式の仕組み(その3)。 軽液相のみを循環送液する上下張出形状単室式の仕組み(その4)。 軽液相のみを循環送液する上下張出形状単室式の仕組み(その5)。 重液相のみを循環送液する上下張出形状単室式の仕組み(その1)。 重液相のみを循環送液する上下張出形状単室式の仕組み(その2)。 重液相のみを循環送液する上下張出形状単室式の仕組み(その3)。 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上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その10)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その11)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その11)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その12)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その12)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その13)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その13)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その14)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その14)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その15)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その15)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その16)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その16)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その17)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その17)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その18)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その18)。 重液相及び軽液相を循環送液する複室式の仕組み(その13)。 重液相及び軽液相を循環送液する複室式の仕組み(その14)。 重液相及び軽液相を循環送液する複室式の仕組み(その15)。 重液相及び軽液相を循環送液する複室式の仕組み(その16)。 軽液相のみを循環送液する複室式の仕組み(その13)。 軽液相のみを循環送液する複室式の仕組み(その14)。 軽液相のみを循環送液する複室式の仕組み(その15)。 軽液相のみを循環送液する複室式の仕組み(その16)。 重液相のみを循環送液する複室式の仕組み(その13)。 重液相のみを循環送液する複室式の仕組み(その14)。 重液相のみを循環送液する複室式の仕組み(その15)。 重液相のみを循環送液する複室式の仕組み(その16)。 重液相及び軽液相を1回通過送液する複室式の仕組み(その13)。 重液相及び軽液相を1回通過送液する複室式の仕組み(その14)。 重液相及び軽液相を1回通過送液する複室式の仕組み(その15)。 重液相及び軽液相を1回通過送液する複室式の仕組み(その16)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その19)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その19)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その20) 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その20)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その21)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その21)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その22)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その22)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その23)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その23)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その24)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その24)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その25)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その25)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その26)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その26)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その27)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その27)。 重液相及び軽液相を循環送液する複室式の仕組み(その17)。 重液相及び軽液相を循環送液する複室式の仕組み(その18)。 重液相及び軽液相を循環送液する複室式の仕組み(その19)。 重液相及び軽液相を循環送液する複室式の仕組み(その20)。 軽液相のみを循環送液する複室式の仕組み(その17)。 軽液相のみを循環送液する複室式の仕組み(その18)。 軽液相のみを循環送液する複室式の仕組み(その19)。 軽液相のみを循環送液する複室式の仕組み(その20)。 重液相のみを循環送液する複室式の仕組み(その17)。 重液相のみを循環送液する複室式の仕組み(その18)。 重液相のみを循環送液する複室式の仕組み(その19)。 重液相のみを循環送液する複室式の仕組み(その20)。 重液相及び軽液相を1回通過送液する複室式の仕組み(その17)。 重液相及び軽液相を1回通過送液する複室式の仕組み(その18)。 重液相及び軽液相を1回通過送液する複室式の仕組み(その19)。 重液相及び軽液相を1回通過送液する複室式の仕組み(その20)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その28)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その28)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その29)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その29)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その30)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その30)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その31)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その31)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その32)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その32)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その33)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その33)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その34)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その34)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その35)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その35)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その36)。 上方仕切板及び下方仕切板の構造と上下連通部位の関係(その36)。 図1(f)の仕組みを稼働させたときの乳濁混合状態の領域。 図2(f)の仕組みを稼働させたときの乳濁混合状態の領域。 図4(e)の仕組みを稼働させたときの乳濁混合状態の領域。 図6(e)の仕組みを稼働させたときの乳濁混合状態の領域。 図8(e)の仕組みを稼働させたときの乳濁混合状態の領域。 図10(e)の仕組みを稼働させたときの乳濁混合状態の領域。 図12(e)の仕組みを稼働させたときの乳濁混合状態の領域。 図4(e)に示す仕切板において上下の両室連通部位以外にも横型の通過口を設置した仕組み。 図21の仕組みを稼働させたときの乳濁混合状態の領域。 図8(m)に対応しているところの従来のミキサーセトラーの仕組み。
本発明は、攪拌翼2が備えられた容器1又は部屋(ミキサー室30)に重液相と軽液相を設置して行う機械撹拌に基づく液液抽出において、2液相間の界面を常に同じ位置に維持でき、前記容器又は部屋での両相の体積比を送液速度とは無関係に設定でき、重液相と軽液相を効率的に相混合して広範囲で安定なエマルション相(2液相乳濁混合相)を成長させることができ、撹拌翼回転(相混合の強さ)が送液速度に影響しないようにでき、重液相と軽液相の向流接触により理論段数が向上し、相混合のための容器1又は部屋(ミキサー室30)において相分離を同時進行させることで分相性が向上し、オーバーフロー(溢流)による液送りから圧力作用による送液に切り替えることで循環送液を容易にできることを特徴とする、液液抽出に基づく特定物質の製造方法に関するものである。
ミキサーセトラー法に代表される従来の機械撹拌を利用した液液抽出の仕組みには、界面位置が変動しやすい、相混合にあずかる2液相の体積比が両相の送液速度の比に依存する、2液相混合の際に周囲の重液相を巻き込んでしまう、攪拌翼2の回転速度が送液速度に影響してしまう、などの問題点がある。本発明は、これらの従来法の仕組みが持つ問題点を解消するものであり、加えて、従来法の仕組みでは得られない革新的な特徴を発現させるものである。この仕組みを用いた方法により、従来法よりも効率的かつ効果的に特定物質を製造することが可能になる。
攪拌翼2の翼部位を重液相4と軽液相5の間の界面100の近傍に配置して回転させ、該撹拌翼を格納する容器1又は部屋(ミキサー室30)の上方から重液相4、下方から軽液相5を送液導入する仕組みを利用することで、前述の従来法の仕組みが持つ問題点を解決できる。また、本発明の仕組みでは、重液相4と軽液相5の流れが対向していることで両相が向流接触し、理論段数が向上する。また、相混合のための容器1又は部屋(ミキサー室30)において相分離を同時進行させることで、分相性が向上する。さらに、オーバーフローから圧力送液への切り替えにより、循環送液を容易にできる。すなわち、従来法の問題点を解消できるだけではなく、従来法では得られない革新的な特徴が発現することから、従来法よりも効率的かつ効果的に、液液抽出に基づく特定物質の製造を行うことができるようになる。
初めに、本発明の最も基本的でシンプルな仕組みとして、図1(a)から図1(t)までを参照するが、この限りではない。攪拌翼2を備えた1つの容器1に重液相4と軽液相5を設置し、該容器内の両相の界面100の近傍に攪拌翼2の翼部位を配置した構造であって、該撹拌翼を回転させるとともに、前記容器の上方から重液相4、下方から軽液相5を送液導入し、両相が乳濁混合された状態と相分離された状態が共存するようにして液液抽出を行う。このような仕組みによれば、ミキサーセトラー法に代表される従来の機械撹拌を利用した液液抽出では実現できなかった2液相の向流接触が可能となる。なお、これらの図では、例として、重液相と軽液相を同体積としているが、その限りではない。図1(a)、図1(b)、図1(c)、図1(d)、図1(e)、図1(f)、図1(g)、図1(h)、図1(i)、図1(j)、図1(k)、図1(l)、図1(m)、図1(n)、及び図1(o)は、重液相若しくは軽液相又はその両方を循環送液させる仕組みの例であり、図1(p)、図1(q)、図1(r)、図1(s)、及び図1(t)は、重液相と軽液相の両方を1回通過で送液させる仕組みの例である。
図1(a)、図1(b)、図1(c)、図1(d)、及び図1(e)では、重液相、軽液相ともに循環送液する。図1(f)、図1(g)、図1(h)、図1(i)、及び図1(j)は、重液相を1回通過で送液しながら、軽液相を循環送液する。また、重液相の排出方法として、図1(f)及び図1(g)は配管方式、図1(h)、図1(i)、及び図1(j)は容器内通路方式である。なお、重液相の排出は、配管方式(図1(f)及び図1(g))でも容器内通路方式(図1(h)、図1(i)、及び図1(j))でも、排出位置を上方に配置して行う。図1(k)、図1(l)、図1(m)、図1(n)、及び図1(o)は、重液相を循環送液しながら、軽液相を1回通過で送液する。また、軽液相の排出方法として、図1(k)及び図1(l)は送液ライン7による配管方式、図1(m) 、図1(n)、及び図1(o)は軽液相通路12による容器内通路方式である。なお、軽液相の排出は、配管方式(図1(k)及び図1(l))では排出位置を上方に配置し、容器内通路方式(図1(m)、図1(n)、及び図1(o))では排出位置を下方に配置して行う。なお、図1(k)及び図1(l)について、軽液相の供給と排出を同じ高さで管理したい場合には、排出の配管を上方から下方に向けて延長することも可能である。なお、油相(多くの場合、軽液相5)内で分離精製される特定物質は、油相の送液ライン(多くの場合、軽液相の送液ライン7)に逆抽出容器(図示せず)を設けることで、該逆抽出容器内に設置された逆抽出液(多くの場合、重液相)に回収できる。すなわち、同一出願人が先に提出した特願2019−113657号の図1と同様に、例えば、送液ライン7の入口から取り出した軽液相を、容器1と同様の構造を有する逆抽出容器の下方から逆抽出液(重液相)内に送液し、その上方から得られるリセットされた軽液相を再度送液ライン7に戻すようにして、逆抽出液内に特定物質を回収する。
図1(p)、図1(q)、図1(r)、図1(s)、及び図1(t)は、重液相、軽液相ともに1回通過で送液する仕組みの例である。図1(p)では、重液相4、軽液相5ともに、排出方法を配管方式として、1回通過で送液する。図1(q)では、排出方法として、重液相は容器内通路方式、軽液相は配管方式として、1回通過で送液する。図1(r)では、排出方法として、重液相は配管方式、軽液相は容器内通路方式として、1回通過で送液する。図1(s)と図1(t)では、重液相、軽液相ともに、排出方法を容器内通路方式として、1回通過で送液する。また、図1(s)は重液相と軽液相の容器内通路を容器1の一方に寄せた形、図1(t)は両相の容器内通路を左右に割り振った形である。なお、重液相4の排出は、配管方式(図1(p)及び図1(r))でも容器内通路方式(図1(q)、図1(s)、及び図1(t))でも、排出位置を上方に配置して行う。また、軽液相5の排出は、配管方式(図1(p)及び図1(q))では排出位置を上方に配置し、容器内通路方式(図1(r)、図1(s)、及び図1(t))では排出位置を下方に配置して行う。なお、図1(p)及び図1(q)について、軽液相の供給と排出を同じ高さで管理したい場合には、排出の配管を上方から下方に向けて延長することも可能である。
また、図1(a)乃至図1(t)に示すところの攪拌翼2の翼部位の位置には、ある程度の幅を持たすことができ、例えば、2液相の界面100から上下に該翼部位の厚さ(高さ)の2、3倍程度の範囲内であれば、本発明の方法が有効である。
図1(a)乃至図1(t)に示すところの仕組みは、重液相4と軽液相5が乳濁混合した状態と両相が相分離した状態が共存する点に特徴があり、分相された両相が排出又は循環送液に供されることで機能する。すなわち、相分離は本発明の要であり、相分離を確実に行うことが重要である。そこで、例えば、容器1の上方部分若しくは下方部分又はその両方に対して、該容器の中間部分よりも断面積が大きい形状(張出形状)を設けることにより、重液相4と軽液相5の相分離が促進される。なお、翼部位を大きくしたいなどの理由から、該容器の中央部分の断面積を大きくする場合にも、前記張出形状と前記中央部分の間を狭窄させることで、同様な効果が得られる。
図2(a)から図2(t)までに、容器1の上方及び下方の両方に対して該容器の中間部分よりも断面積が大きい形状(張出形状)を設けた例を示すが、その限りではない。このような形状を有する容器であっても、図1(a)から図1(t)までに示す構造と同様な流路の仕組みが可能である。
図1(a)乃至図1(t)等、及び図2(a)乃至図2(t) 等に示す仕組みにおいて、重液相4と軽液相5が乳濁混合した領域を大きくすれば、液液抽出の処理速度(プロセッシング・スピード)を大きくでき、両相が相分離した領域を大きくすれば、分相に余裕を持たせることができる。例えば、容器1をより一層縦長の形状(鉛直方向に拡張した形状)にして体積を大きくすると(以下、縦長形状の顕著化という)、重液相4と軽液相5の乳濁混合状態の領域が鉛直方向に拡張されることで処理速度が増加し、分相に余裕が生じ、両相の相分離が促される。加えて、縦長の形状は、設置床面積を小さくできる点でも有利である。
さらに、重液相4と軽液相5を向流接触させることで高い理論段数が期待できる仕組みであることから、縦長形状をより顕著化すれば、理論段数の観点から選択的分離能が向上するので、より高度な分離が可能になる。
一方、容器1の縦長形状を顕著化すれば、必然的に、攪拌翼2の回転軸を長くしなければならない。ところが、回転軸が長くなれば、軸振動や軸ぶれが大きくなり、正常な機械撹拌が不可能になる場合もある。そこで、軸ホルダー若しくは軸受(ベアリング)又は二軸直交歯車を設置することで、軸振動や軸ぶれを解消することができる。なお、軸ホルダー、軸受、及び二軸直交歯車のうちの2者又はすべてを組み合せて用いても良い。図3(a)から図3(f)までに、軸ホルダー若しくは軸受又は二軸直交歯車を設置した例を示すが、その限りではない。
図3(a)は、図1(a)の構造に対して容器1の縦長形状を顕著化したもので、軸振動や軸ぶれを解消するために、攪拌翼2の翼部位の上方に軸ホルダー又は軸受を設置している。なお、ここで言う軸ホルダーとは、回転軸のぶれ(とくに、左右方向の動き)を制限するものであり、回転軸と軸ホルダーは、点でも面でも接触していない構造を意図している。一方、軸受とは、点あるいは面で回転軸と軸受が接触している構造、すなわち、転がり軸受又は滑り軸受を意図している。また、図3(b)は、図2(a) の構造に対して容器1の縦長形状を顕著化したもので、図3(a)と同様に、攪拌翼2の翼部位の上方に軸ホルダー又は軸受を設置している。なお、攪拌翼2の翼部位の上方に設置する軸ホルダー又は軸受は、複数個でも良い。
軸ホルダー又は軸受は、攪拌翼2の回転軸を翼部位の下方にまで延長した上で、該翼部位の下方に設置することも可能である。例えば、図3(c)又は図3(d)に示すように、容器1の底面付近に軸ホルダー又は軸受を設置することができるが、この限りではない。なお、攪拌翼2の翼部位の上方と下方の両方に軸ホルダー又は軸受を設置することもでき、攪拌翼2の翼部位の上方若しくは下方又はその両方に複数個の軸ホルダー又は軸受を設置しても良い。
軸ホルダーや軸受に替えて、二軸直交歯車を用いることもできる。図3(e)では、図1(a)に示す容器1の縦長形状を顕著化したものに対して、攪拌翼2の回転軸の軸振動や軸ぶれを解消するために、該撹拌翼の翼部位の上方に二軸直交歯車を設置している。また、図3(f)では、図2(a)に示す容器1の縦長形状を顕著化したものに対して、二軸直交歯車を同様に設置している。これらの場合、鉛直方向の回転軸に直交する水平方向の回転軸は、器壁に設置した軸受によって固定されているが、この限りではない。なお、二軸直交歯車を用いる場合でも、軸ホルダーや軸受を用いる場合と同様に、攪拌翼2の翼部位の上方に複数個の二軸直交歯車を設置しても良い。また、攪拌翼2の回転軸を翼部位の下方にまで延長した上で、二軸直交歯車を該翼部位の下方に設置することも可能である。その場合、攪拌翼2の翼部位の上方と下方の両方に二軸直交歯車を設置することもでき、攪拌翼2の翼部位の上方若しくは下方又はその両方に複数個の二軸直交歯車を設置しても良い。
また、二軸直交歯車を用いる場合、必ずしも、鉛直方向の回転軸を動力軸にする必要はなく、水平方向の回転軸を動力軸として、鉛直方向の回転軸は軸受で固定すれば、容器1の側方に攪拌翼2回転のためのモーターを設置できる。撹拌翼回転モーターの維持・管理の点では、縦長形状の容器1の上部に設置するよりも側方に設置する方が好都合の場合もある。
従来法の仕組みのように、重液相4と軽液相5を撹拌混合するミキサー室30と両相を相分離するセトラー室40に分離した容器構造に対しても、前述と同様な仕組みを適用することができる。具体的には、ミキサー室30とセトラー室40を格納する容器1の天井面と仕切板の間、及び底面と仕切板の間の2箇所に連通部位を設け、両室の間で重液相と軽液相が自由に行き来し合えるようにすれば、ミキサー室30とセトラー室40の区別がない前述の容器構造と同様に扱うことができる。なお、基本的に、ミキサー室30とセトラー室40の間の仕切板の上下2箇所の連通部位には、乳濁混合状態の混合相を通過させないように運転する。セトラー室40を設けることで、分相性及び運転時の安定性の向上が見込める。すなわち、エマルション相(2液相乳濁混合相)の予期しない成長(範囲の拡大)により、エマルション相が排出又は循環される重液相及び軽液相に混入するリスクが軽減される。
図4(a)から図4(p)までに、1枚の仕切板(M室/S室仕切板)によってミキサー室30とセトラー室40に分離した容器構造での本発明の仕組みを示すが、この限りではない。このような容器構造においても、図1(a)から図1(t)までに示す構造、及び図2(a)から図2(t)までに示す構造と同様な流路の仕組みが可能である。なお、図4(a)から図4(p)以外にも、両相の容器内通路を左右に割り振った構造(図1(e)、図1(j)、図1(o)、図1(t)、図2(e)、図2(j)、図2(o)、及び図2(t)のような構造)も可能である。しかしながら、分相性の向上を求めてセトラー室40を設置したという点において、ミキサー室30側に重液相4又は軽液相5の容器内通路(排出又は循環のための通路)を設けることは好ましいとは言えない。
ミキサー室30とセトラー室40を格納する容器1の天井面と仕切板の間、及び底面と仕切板の間に設置された連通部位と仕切板の構造の関係を図5(a1)、図5(b1)・・・図5(i1)に示す。また、そこに重液相と軽液相を設置した状態を、それぞれ図5(a2)、図5(b2)・・・図5(i2)に示す。なお、これらの図は、いずれもセトラー室40側からミキサー室30側を見た図である。天井面と仕切板の間に設けられた軽液相の連通部位は、仕切板の上端の一部又は全部が天井面と接していない構造、又は、仕切板の上端部に通過口が設けられた構造によって得られる。同様に、底面と仕切板の間に設けられた重液相の連通部位は、仕切板の下端の一部又は全部が底面と接していない構造、又は、仕切板の下端部に通過口が設けられた構造によって得られる。
なお、これらの連通部位の形状は、図5(a1)乃至図5(i2)に記載の形状に限らない。すなわち、仕切板の上端又は下端の一部が天井面又は底面と接していない構造に対して、その形状は四角に限らず、半円、三角などの形状でも良い。同様に、仕切板の上端部又は下端部に設けられた通過口の形状についても、円に限らず、四角、三角などの形状でも良い。
また、仕切板の上端又は下端の一部又は全部が天井面又は底面と接していない構造と該仕切板の上端部又は下端部に通過口が設けられた構造は、組み合せて用いることができる。図5(f1)乃至図5(i2)は、両者を組み合せた形態の例である。
図4(a)から図4(p)までに示す仕組み等は、ミキサー室30において広範囲にわたって乳濁混合状態の領域(エマルション相)を形成させる仕組みとして優れているが、その反面、エマルション相をセトラー室40に流出させることなく、ミキサー室30でのエマルション相の高さ(幅)を常に一定に保つことは、必ずしも容易ではない。すなわち、ミキサー室でのエマルション相の高さは、変動しやすい場合があり、その場合には、このような変動に対して余裕がある構造、又は変動を制御できる構造が好ましい。
まず、エマルション相の高さの変動に余裕がある構造として、ミキサー室30を縦長形状にする方法がある。縦長形状にすれば、セトラー室40へのエマルション相の流出を抑制して分相性が向上することに加え、エマルション相がより高く成長することで2液相接触が促進される利点もある。その一方で、縦長形状にすると、前述したように、攪拌翼2の回転軸が長くなることで軸振動や軸ぶれが大きくなり、正常な機械撹拌が不可能になる場合もある。そこで、例えば、図3(a)から図3(f)までに示すような、軸ホルダー若しくは軸受(ベアリング)又は二軸直交歯車を設置することで、軸振動や軸ぶれを解消する方法が有効である。なお、軸ホルダー、軸受、及び二軸直交歯車のうちの2者又はすべてを組み合せて用いても良い。
一方、ミキサー室30とセトラー室40の間の上下2箇所の連通部位は、上の連通部位で両室間の軽液相を行き来させ、下の連通部位で両室間の重液相を行き来させるためのものであり、いずれも、本来、エマルション相をセトラー室40に流出させる役目ではない。ところが、ミキサー室30からエマルション相がまったく移動しない構造では、成長し過ぎたエマルション相の逃げ道が、前述の上下連通部位を除いて他に存在せず、その点では、必ずしも好ましいとは言えない。逆に、エマルション相の一部がセトラー室40に移動する構造であれば、ミキサー室30でのエマルション相の高さ(幅)の変動は、大幅に抑制される。
そこで、エマルション相の高さ(幅)の変動を制御できる構造として、上下の連通部位以外にも、攪拌翼2の翼部位付近の高さで仕切板に通過口を設けると、該通過口からエマルション相がセトラー室40に流出することで、ミキサー室30でのエマルション相の高さの変動は抑制される。ところが、このような構造では、ミキサー室30で発生したエマルション相が、すぐさま、セトラー室40に移動するため、ミキサー室30でのエマルション相の発達が抑制され、なおかつ、大量のエマルション相がセトラー室40に集合するため、セトラー室40での分相が困難になる。
それに対して、ミキサー室30で発生したエマルション相を鉛直方向に形成された通路を移動させ、縦型の通過口に導いた後、セトラー室40に至らしめるようにすれば、その過程において相分離が進行し、セトラー室40での乳濁は大幅に解消される。そのような容器構造のいくつかの例を以下に示す。
図4(a)から図4(p)までに記載の仕切板に替えて、ミキサー室30とセトラー室40を格納する容器1の上部に両室の軽液相の連通部位を成す上方仕切板、及び前記容器の下部に両室の重液相の連通部位を成す下方仕切板を交互に設置することで、乳濁混合された2液相が鉛直方向に移行できる通路と縦型の通過口を形成させることができる。
上方仕切板20をミキサー室30寄りに配置し、下方仕切板21をセトラー室寄りに設置した例を、図6(a)から図6(p)までに示すが、この限りではない。なお、上方仕切板20と下方仕切板21が交互に設置される条件において、該上方仕切板及び該下方仕切板はそれぞれ複数枚であっても良い。このように、設置される仕切板の数の違いにかかわらず、図4(a)から図4(p)までに示す構造と同様な流路の仕組みが可能である。
また、このときの上方仕切板20(ミキサー室寄りの仕切板)の構造及びこれによって形成される軽液相5の連通部位の形状を、図7(a1)、図7(b1)・・・図7(i1)に示す。また、下方仕切板21(セトラー室寄りの仕切板)の構造及びこれによって形成される重液相4の連通部位の形状を、図7(a2)、図7(b2)・・・図7(i2)に示す。ここで、図7(a1)と図7(a2)、図7(b1)と図7(b2)・・・図7(i1)と図7(i2)が一対の上方仕切板20と下方仕切板21を示している。天井面と上方仕切板20の間に設けられた軽液相5の連通部位は、上方仕切板20の上端の一部又は全部が天井面と接していない構造、又は、上方仕切板20の上端部に通過口が設けられた構造によって得られる。同様に、底面と下方仕切板21の間に設けられた重液相4の連通部位は、下方仕切板21の下端の一部又は全部が底面と接していない構造、又は、下方仕切板21の下端部に通過口が設けられた構造によって得られる。
なお、これらの連通部位の形状は、図7(a1)乃至図7(i2)に記載の形状に限らない。すなわち、上方仕切板20上端の一部が天井面と接していない構造、又は、下方仕切板21の下端の一部が底面と接していない構造に対して、その形状は四角に限らず、半円、三角などの形状でも良い。同様に、上方仕切板20の上端部、又は下方仕切板21の下端部に設けられた通過口の形状についても、円に限らず、四角、三角などの形状でも良い。
また、上方仕切板20の上端の一部又は全部が天井面と接していない構造と下方仕切板21の下端部に通過口が設けられた構造、及び、上方仕切板20の上端部に通過口が設けられた構造と下方仕切板21の下端の一部又は全部が底面と接していない構造とは、組み合せて用いることができる。図7(f1)乃至図7(i2)は、両者を組み合せた形態の例である。
下方仕切板21をミキサー室30寄りに配置し、上方仕切板20をセトラー室40寄りに設置した例を、図8(a)から図8(p)までに示すが、この限りではない。なお、下方仕切板21と上方仕切板20が交互に設置される条件において、該下方仕切板及び該上方仕切板はそれぞれ複数枚であっても良い。この場合も、設置される仕切板の数の違いにかかわらず、図4(a)から図4(p)までに示す構造と同様な流路の仕組みが可能である。
また、このときの下方仕切板21(ミキサー室寄りの仕切板)の構造及びこれによって形成される重液相4の連通部位の形状を図9(a1)、図9(b1)・・・図9(i1)に示す。また、上方仕切板20(セトラー室寄りの仕切板)の構造及びをこれによって形成される軽液相5の連通部位の形状を図9(a2)、図9(b2)・・・図9(i2)に示す。ここで、図9(a1)と図9(a2)、図9(b1)と図9(b2)・・・図9(i1)と図9(i2)が一対の下方仕切板21と上方仕切板20を示している。底面と下方仕切板21の間に設けられた重液相の連通部位は、下方仕切板21の下端の一部又は全部が底面と接していない構造、又は、下方仕切板21の下端部に通過口が設けられた構造によって得られる。同様に、天井面と上方仕切板20の間に設けられた軽液相の連通部位は、上方仕切板20の上端の一部又は全部が天井面と接していない構造、又は、上方仕切板20の上端部に通過口が設けられた構造によって得られる。
なお、これらの連通部位の形状は、図9(a1)乃至図9(i2)に記載の形状に限らない。すなわち、上方仕切板20の上端の一部が天井面と接していない構造、又は、下方仕切板21の下端の一部が底面と接していない構造に対して、その形状は四角に限らず、半円、三角などの形状でも良い。同様に、上方仕切板20の上端部、又は下方仕切板21の下端部に設けられた通過口の形状についても、円に限らず、四角、三角などの形状でも良い。
また、下方仕切板21の下端の一部又は全部が底面と接していない構造と上方仕切板20の上端部に通過口が設けられた構造、及び、下方仕切板21の下端部に通過口が設けられた構造と上方仕切板20の上端の一部又は全部が天井面と接していない構造とは、組み合せて用いることができる。図9(f1)乃至図9(i2)は、両者を組み合せた形態の例である。
短い下方仕切板21と2箇所で屈曲させた上方仕切板20を組み合せて、鉛直方向の通路と縦型の通過口を形成させた例を、図10(a)から図10(p)までに示すが、この限りではない。なお、下方仕切板21と上方仕切板20が交互に設置される条件において、該下方仕切板及び該上方仕切板はそれぞれ複数枚であっても良い。この場合も、設置される仕切板の数や形状の違いにかかわらず、図4(a)から図4(p)までに示す構造と同様な流路の仕組みが可能である。
また、このときの下方仕切板21(短い形状の仕切板)の構造及びこれによって形成される重液相の連通部位の形状を、図11(a1)、図11(b1)・・・図11(i1)に示す。また、上方仕切板20(2箇所で屈曲させた形状の仕切板)の構造及びこれによって形成される軽液相の連通部位の形状を、図11(a2)、図11(b2)・・・図11(i2)に示す。ここで、図11(a1)と図11(a2)、図11(b1)と図11(b2)・・・図11(i1)と図11(i2)が一対の下方仕切板21と上方仕切板20を示している。右側に示す。天井面と上方仕切板の間に設けられた軽液相5の連通部位は、上方仕切板20の上端の一部又は全部が天井面と接していない構造、又は、上方仕切板20の上端部に通過口が設けられた構造によって得られる。同様に、底面と下方仕切板の間に設けられた重液相4の連通部位は、下方仕切板21の下端の一部又は全部が底面と接していない構造、又は、下方仕切板21の下端部に通過口が設けられた構造によって得られる。
なお、これらの連通部位の形状は、図11(a1)乃至図11(i2)に記載の形状に限らない。すなわち、上方仕切板20の上端の一部が天井面と接していない構造、又は、下方仕切板21の下端の一部が底面と接していない構造に対して、その形状は四角に限らず、半円、三角などの形状でも良い。同様に、上方仕切板20の上端部、又は下方仕切板21の下端部に設けられた通過口の形状についても、円に限らず、四角、三角などの形状でも良い。
また、下方仕切板21の下端の一部又は全部が底面と接していない構造と上方仕切板20の上端部に通過口が設けられた構造、及び、下方仕切板21の下端部に通過口が設けられた構造と上方仕切板20の上端の一部又は全部が天井面と接していない構造とは、組み合せて用いることができる。図11(f1)乃至図11(i2)は、両者を組み合せた形態の例である。
短い上方仕切板20と2箇所で屈曲させた下方仕切板21を組み合せて、鉛直方向の通路と縦型の通過口を形成させた例を、図12(a)から図12(p)までに示すが、この限りではない。なお、上方仕切板20と下方仕切板21が交互に設置される条件において、該上方仕切板及び該下方仕切板はそれぞれ複数枚であっても良い。この場合も、設置される仕切板の数や形状の違いにかかわらず、図4(a)から図4(p)までに示す構造と同様な流路の仕組みが可能である。
また、このときの上方仕切板20(短い形状の仕切板)の構造及びこれによって形成される重液相の連通部位の形状を、図13(a1)、図13(b1)・・・図13(i1)に示す。また、下方仕切板21(2箇所で屈曲させた形状の仕切板)の構造及びこれによって形成される軽液相の連通部位の形状を、図13(a2)、図13(b2)・・・図13(i2)に示す。ここで、図13(a1)と図13(a2)、図13(b1)と図13(b2)・・・図13(i1)と図13(i2)が一対の上方仕切板20と下方仕切板21を示している。右側に示す。天井面と上方仕切板20の間に設けられた軽液相の連通部位は、上方仕切板20の上端の一部又は全部が天井面と接していない構造、又は、上方仕切板20の上端部に通過口が設けられた構造によって得られる。同様に、底面と下方仕切板21の間に設けられた重液相の連通部位は、下方仕切板21の下端の一部又は全部が底面と接していない構造、又は、下方仕切板21の下端部に通過口が設けられた構造によって得られる。
なお、これらの連通部位の形状は、図13(a1)乃至図13(i2)に記載の形状に限らない。すなわち、上方仕切板20の上端の一部が天井面と接していない構造、又は、下方仕切板21の下端の一部が底面と接していない構造に対して、その形状は四角に限らず、半円、三角などの形状でも良い。同様に、上方仕切板20の上端部、又は下方仕切板21の下端部に設けられた通過口の形状についても、円に限らず、四角、三角などの形状でも良い。
また、上方仕切板20の上端の一部又は全部が天井面と接していない構造と下方仕切板21の下端部に通過口が設けられた構造、及び、上方仕切板20の上端部に通過口が設けられた構造と下方仕切板21の下端の一部又は全部が底面と接していない構造とは、組み合せて用いることができる。図13(f1)乃至図13(i2)は、両者を組み合せた形態の例である。
なお、図6(a)から図6(p)まで、図8(a)から図8(p)まで、図10(a)から図10(p)まで、及び図12(a)から図12(p)までは、ミキサー室30とセトラー室40の間に2枚の仕切板(上方仕切板20と下方仕切板21)を設置した例だが、さらに仕切板の枚数を増やすこともできる。すなわち、3枚、4枚、5枚、さらにそれ以上というように、上方仕切板20と下方仕切板21を交互に配置することによって、相分離効果を高めることも可能であるが、容器構造はより複雑化する。
以上、本発明の方法で用いる仕組みの容器構造、流路構造などの詳細を述べたが、いずれの仕組みにおいても、攪拌翼2の翼部位は、吸引力を生じさせない形状であることが好ましい。例えば、その形状が、ディスクの上下に溝を切った構造を有するもの、穴をあけた平板を鉛直方向に固定した構造を有するものなどが有効である。なお、図1(a)から図1(t)まで、及び図2(a)から図2(t)までに記載の仕組みのように、重液相4と軽液相5の撹拌混合に供する1つの容器を用いる方式を、便宜上、単室式と称し、図4(a)から図4(p)まで、図6(a)から図6(p)まで、図8(a)から図8(p)まで、図10(a)から図10(p)まで、及び図12(a)から図12(p)までに記載の仕組みのように、重液相4と軽液相5の撹拌混合に供する部屋(ミキサー室30)と両相の相分離に供する部屋(セトラー室40)が仕切板によって隔てられている容器構造を用いる方式を、便宜上、複室式と称する。
単室式は、シンプルな仕組みであり、2液相の送液速度及び攪拌翼2の回転速度が一定に保たれた条件において安定的に機能する。一方、処理対象の水相(多くの場合、重液相)の組成が大きく変化したり、固形成分が混入したりするなど、予測できない現象によって、エマルション相の高さ(幅)が急激に変化する場合もある。そのような場合に備えて、縦長形状にする、容器1の上下に断面積が大きい形状(張出形状)を設けるといった方法で、エマルション相の高さ(幅)の変動に対して余裕を持たせることができる。ただし、その上限を超えて、さらにエマルション相が発達した場合には、即座に正常な稼働が不可能になってしまう。
一方、複室式では、このような予想を超えたエマルション相の発達に対して、セトラー室40を設置することで、これを抑制することができる。すなわち、複室式とは、上限を超えて発達したエマルション相の一部をセトラー室40に導くことで、正常な稼働を保持しようとする仕組みである。たとえば、図4(a)乃至図4(p)に示す仕組みでは、ミキサー室30で過剰に発達したエマルション相が、本来、相分離された重液相4と軽液相5が通過すべき容器上下の連通部位からセトラー室40に向かって流出するが、短時間であれば、両相に大きな濁りを生じさせることなく稼働させることができる。また、図6(a)乃至図6(p)、図8(a)乃至図8(p)、図10(a)乃至図10(p)、図12(a)乃至図12(p)に示すような縦型の通過口を有する構造では、エマルション相が縦型の通過口を移動する間に相分離が進行するため、セトラー室40に至るときには、すでに乳濁が大幅に解消されている。
また、単室式、複室式のいずれにおいても、攪拌翼2の回転に基づく機械撹拌だけではエマルション相が形成されにくい場合がある。その場合、重液相4若しくは軽液相5又はその両方を、細孔又は細管を有するノズル(図示せず)を通じて送液することで、エマルション相の形成が促進されることがある。
以下、実施例により、本発明の示す仕組みによって生じる乳濁混合状態の領域、及び、このような乳濁混合状態の発生を利用して液液抽出を行うことで分離精製される特定の物質の製造方法の具体例を示すが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
乳濁混合状態の領域。
本発明の図1(a)から図1(t)までに示す単室式の仕組みの一例として、図1(f)の仕組みを稼働させることで発生する乳濁混合状態(エマルション)の領域を図14に示す。重液相としてイオン交換水(純水)又は0.1M(mol dm−3)硝酸水溶液を用い、軽液相としてアルカンを主成分とする溶媒(商品名ShellSol D70)を用いて実験を行った結果、乳濁混合状態の領域の上下において、2液相が相分離された状態の領域(上は軽液相、下は重液相の領域)が生じ、乳濁混合の領域及び相分離の領域の範囲(高さ)は安定的に維持された。なお、乳濁混合状態の領域の範囲(高さ)は、攪拌翼2の回転速度及び2液相の送液速度に影響を受けるが、これらの速度が変化しなければ、安定的に維持された。一方で、乳濁混合状態の領域が大きくなり過ぎて相分離状態の領域を十分に維持できなくなると(そのような撹拌翼回転速度、送液速度に設定すると)、容器1内が全体にわたって白濁し、事実上、液液抽出を行うことができなくなった。
なお、図1(f)以外の仕組み(図1(a)から図1(e)まで及び図1(g)から図1(t)までに示す仕組み)に対しても、同様な乳濁混合状態の領域が得られた。すなわち、軽液相5及び重液相4を送液するための流路構造の違いは、乳濁混合状態の領域に影響しないことが確認された。
従来のミキサーセトラー法(従来法と称する)の仕組みとの比較において、本発明の図1(a)乃至図1(t)に示す仕組み(単室式の仕組み)での乳濁混合状態の領域はミキサー室に相当し、相分離状態の領域はセトラー室に相当することから、乳濁混合状態の領域を大きくすることで、液液抽出の処理速度(プロセッシング・スピード)が大きくなった。例えば、容器1の底面積を維持しままで縦長形状にすれば、設置床面積を変えることなく処理速度を大きくできた。また、縦長形状は、相分離状態の領域に対して余裕を持たせられる点においても有効であり、乳濁混合状態の領域を大きくできるだけではなく、相分離状態の領域も十分に確保できることがわかった。
さらに、乳濁混合状態の領域を抑制して相分離状態の領域を確保するのに、容器1の上方若しくは下方又はその両方に対して、該容器の中間部分よりも断面積が大きい形状(張出形状)を設けたところ、重液相4と軽液相5の相分離が促進されることがわかった。図15は、図2(f)に示すような、容器1の上下に断面積が大きい形状を設けた仕組みを稼働させることで発生する乳濁混合状態の領域を示している。このように、乳濁混合状態の領域が断面積の大きい形状の部分に到達すると相分離が促されるため、乳濁混合状態の領域が大きくなり過ぎず、その成長を抑制できた。なお、図2(f)以外の仕組み(図2(a)から図2(e)まで及び図2(g)から図2(t)までに示す仕組み)に対しても、同様な乳濁混合状態の領域が得られた。すなわち、図1(a)から図1(f)までに示す仕組みと同様に、軽液相及び重液相を送液するための流路構造の違いは、乳濁混合状態の領域に影響しないことが確認された。
一方で、縦長形状が顕著化することで攪拌翼2の回転軸が長くなり、軸振動や軸ぶれが大きくなるが、図3(a)から図3(f)までに示すような、軸ホルダー、軸受、若しくは二軸直交歯車、又はこれらの組み合せを用いることにより、軸振動、軸ぶれは大幅に抑制された。
従来法の仕組みと同様に、重液相4と軽液相5を撹拌混合するミキサー室30と2液相を相分離するセトラー室40に分離した容器構造(複室式の仕組み)に対しても、乳濁混合状態の領域を確認した。図16は、図4(e)の仕組みを稼働させることで発生する乳濁状態の領域を示している。なお、本発明で言うところのミキサー室30とセトラー室40の範囲を明確にするために、ミキサー室の範囲を破線で囲んで明示している。
図16に示す乳濁混合状態の領域は、図14に示す乳濁混合状態の領域と同様に、攪拌翼2の回転速度若しくは送液速度又はこれら両方が大きくなり過ぎると、ミキサー室全体にわたって広がった。一方で、セトラー室を有する図4(e)の容器構造では、乳濁混合状態(エマルション)が、仕切板の上下に設置された連通部位を通じてミキサー室30からセトラー室40に移動し、セトラー室40において重力分離することができた。その場合、排水に若干の濁りは生じるものの、液液抽出を継続することは可能であった。この点において、複室式は単室式に対して優位性を持つと言える。なお、乳濁混合状態(エマルション)がセトラー室40に流出しても、稼働の前後で2液相間の界面の位置はほとんど変化せず、相混合にあずかる重液相4と軽液相5の体積比(いわゆるO/A比)は維持された。
図4(e)の仕組みに限らず、図4(a)から図4(d)まで及び図4(f)から図4(p)までに示す仕組みに対しても、同様な乳濁混合状態の領域が得られた。すなわち、図1(a)から図1(t)までに示す仕組み及び図2(a)から図2(t)までに示す仕組みと同様に、軽液相5及び重液相4を送液するための流路構造の違いは、乳濁混合状態の領域に影響しないことが確認された。
また、仕切板の上下に設置される連通部位に対して、図5(a1)から図5(i2)までに示す構造を用いた結果、いずれの場合も上下連通部位として十分に機能し、大きな差異は見られなかった。なお、それぞれの図の右側に示すように、複室式の仕組みは軽液相5の連通部位(上部連通部位)に軽液相5の液面が到達している状態において稼働させる必要があり、軽液相5の液面が該連通部位に達していない状態で稼働させると、軽液相5がセトラー室40に移動できないまま、重液相4だけがセトラー室40に移動するため、両室において2液相間の界面の位置を保持できなくなった。なお、軽液相5の液面が該連通部位の下に位置するように設定した上で、ミキサー室30の底部に至るまで乳濁混合状態(エマルション)を発達させると、従来法の仕組みと同様に、2液相の送液速度の比が両相の体積比に対応するようになった。
なお、図4(a)から図4(p)までに示す仕組みでは、単室式と同様に、乳濁混合状態の領域の範囲(高さ)は、攪拌翼2の回転速度と両相の送液速度に依存した。それに対して、図6(a)から図6(p)まで、図8(a)から図8(p)まで、図10(a)から図10(p)まで、及び図12(a)から図12(p)までに示すような、2枚の仕切板(上方仕切板及び下方仕切板)によって形成されるところの、乳濁混合状態(エマルション)が移動するための縦型の通過口を有する仕組みを利用すれば、攪拌翼2の回転速度、両相の送液速度の変化にかかわらず、乳濁混合状態の領域の範囲(高さ)を、ほぼ一定に維持できることがわかった。すなわち、ミキサー室30での乳濁混合状態(エマルション)の範囲(高さ)の変動は抑制された。しかしながら、該縦型通過口を有する仕組みは、乳濁混合状態(エマルション)をセトラー室40に移動させることを基本とする構造であるがゆえに、図4(a)から図4(p)までに示す仕組みと比較して、相分離能力は、若干、低下することがわかった。なお、その点において、図6(a)から図6(p)まで、図8(a)から図8(p)まで、図10(a)から図10(p)まで、及び図12(a)から図12(p)までに示す仕組みで、大きな差異は見られなかった。
図6(a)から図6(p)までに示す仕組みについて、図6(e)の流路構造を代表として、乳濁混合状態の領域の範囲(高さ)を図17に示す。なお、本発明で言うところのミキサー室30とセトラー室40の範囲を明確にするために、ミキサー室30の範囲を破線で囲んで明示している。このように、乳濁混合状態の領域が前述の縦型通過口の出口に至るまでをミキサー室30の範囲とした。また、容器1の天井面付近に軽液相5の連通部位、容器1の底面付近に重液相4の連通部位が存在する点においては、図16と同様である。
なお、図6(e)以外の仕組み(図6(a)から図6(d)まで及び図6(f)から図6(p)までに示す仕組み)に対しても、同様な乳濁混合状態の領域が得られた。すなわち、図1(a)から図1(t)までに示す仕組み、図2(a)から図2(t) までに示す仕組み、及び図4(a)から図4(p)までに示す仕組みと同様に、軽液相5及び重液相4を送液するための流路構造の違いは、乳濁混合状態の領域に影響しないことが確認された。
また、ミキサー室30寄りに位置する上方仕切板の成す軽液相5の連通部位、及びセトラー室40寄りに位置する下方仕切板21の成す重液相4の連通部位について、図7(a1)から図7(i2)までに示す構造を用いた結果、いずれの場合も上下連通部位として十分に機能し、大きな差異は見られなかった。
図18に、図8(a)から図8(p)までに示す仕組みについて、図8(e)の流路構造を代表として、乳濁混合状態の領域の範囲(高さ)を示す。図16、図17と同様に、ミキサー室30の範囲を破線で囲んで明示している。図18においても、容器1の天井面付近に軽液相の連通部位、容器1の底面付近に重液相4の連通部位が存在する点では、図16、図17と同様である。
なお、図8(e)以外の仕組み(図8(a)から図8(d)まで及び図8(f)から図8(p)までに示す仕組み)に対しても、同様な乳濁混合状態の領域が得られた。すなわち、図1(a)から図1(t)までに示す仕組み、図2(a)から図2(t)までに示す仕組み、図4(a)から図4(p)までに示す仕組み、及び図6(a)から図6(p)までに示す仕組みと同様に、軽液相5及び重液相4を送液するための流路構造の違いは、乳濁混合状態の領域に影響しないことが確認された。
また、ミキサー室30寄りに位置する下方仕切板21の成す重液相4の連通部位、及びセトラー室40寄りに位置する上方仕切板20の成す軽液相5の連通部位について、図9(a)から図9(i)までに示す構造を用いた結果、いずれの場合も上下連通部位として十分に機能し、大きな差異は見られなかった。
図10(a)から図10(p)までに示す仕組みについて、図10(e)の流路構造を代表として、乳濁混合状態の領域の範囲(高さ)を図19に示す。図16、図17、及び図18と同様に、ミキサー室30の範囲を破線で囲んで明示している。図19においても、容器1の天井面付近に軽液相5の連通部位、容器1の底面付近に重液相4の連通部位が存在する点では、図16、図17、及び図18と同様である。
なお、図10(e)以外の仕組み(図10(a)から図10(d)まで及び図10(f)から図10(p)までに示す仕組み)に対しても、同様な乳濁混合状態の領域が得られた。すなわち、図1(a)から図1(t)までに示す仕組み、図2(a)から図2(t)までに示す仕組み、図4(a)から図4(p)までに示す仕組み、図6(a)から図6(p)までに示す仕組み、及び図8(a)から図8(p)までに示す仕組みと同様に、軽液相5及び重液相4を送液するための流路構造の違いは、乳濁混合状態の領域に影響しないことが確認された。
また、図11(a1)から図11(i2)までに示す構造のような、下方仕切板21の構造と配置(各図の左)及び上方仕切板20の構造と配置(各図の右)によって形成される軽液相5及び重液相4の連通部位は、いずれの場合も、上下連通部位として十分に機能し、大きな差異は見られなかった。
図12(a)から図12(p)までに示す仕組みについて、図12(e)の流路構造を代表として、乳濁混合状態の領域の範囲(高さ)を図20に示す。図16、図17、図18、及び図19と同様に、ミキサー室30の範囲を破線で囲んで明示している。図20においても、容器1の天井面付近に軽液相5の連通部位、容器1の底面付近に重液相4の連通部位が存在する点では、図16、図17、図18、及び図19と同様である。
なお、図12(e)以外の仕組み(図12(a)から図12(d)まで及び図12(f)から図12(p)までに示す仕組み)に対しても、同様な乳濁混合状態の領域が得られた。すなわち、図1(a)から図1(t)までに示す仕組み、図2(a)から図2(t)までに示す仕組み、図4(a)から図4(p)までに示す仕組み、図6(a)から図6(p)までに示す仕組み、図8(a)から図8(p)までに示す仕組み、及び図10(a)から図10(p)までに示す仕組みと同様に、軽液相5及び重液相4を送液するための流路構造の違いは、乳濁混合状態の領域に影響しないことが確認された。
また、図13(a1)から図13(i2)までに示す構造のような、下方仕切板の構造と配置(各図の左)及び上方仕切板の構造と配置(各図の右)によって形成される軽液相5及び重液相4の連通部位は、いずれの場合も、上下連通部位として十分に機能し、大きな差異は見られなかった。
比較例1
複室式において重液相又は軽液相の連通部位の一方を欠いている仕組み。
本発明の特徴は、2液相が相混合される容器1又は部屋(ミキサー室30)において、乳濁混合状態の領域と相分離状態の領域が共存する点にあり、ミキサー室30とセトラー室40を有する複室式の仕組みでは、相分離した重液相4及び軽液相5の両方が両室の間で連通している。それに対する比較として、重液相4又は軽液相5のいずれか一方のみが両室を連通している場合について検討した。
まず、相分離した重液相4のみに対して連通部位を有する場合は、図4(e)に示す仕組みを用いて、軽液相5の液面が容器天井面と仕切板の間の連通部位に達していない状態で稼働させることで検討した。実施例1で示したように、軽液相5がセトラー室40に移動できないまま、重液相4だけがセトラー室40に移動するため、両室において2液相間の界面の位置を保持できなくなった。
次に、相分離した軽液相5のみに対して連通部位を有する場合は、図4(e)に示す仕組みを改造して検討した。すなわち、容器1の底面と仕切板の間に連通部位を有する図4(e)の仕組みに対して、仕切板の下端の全面が容器底面と接合している仕組みに改造した。この改造した仕組みを用いて、軽液相5の液面が容器天井面と仕切板の間の連通部位に達している状態で稼働させた。その結果、重液相4がセトラー室に移動できないまま、軽液相5だけがセトラー室に移動するため、両室において2液相間の界面の位置を保持できなくなった。
比較例2
複室式において上下の両室連通部位以外にも横型の通過口を有する仕組み。
図4(a)から図4(p)までに示す複室式の仕組みでは、単室式と同様に、乳濁混合状態(エマルション)の領域の範囲(高さ)は攪拌翼2の回転速度と両相の送液速度に影響されるが、これらの影響を抑制するために、ミキサー室30とセトラー室40の間に乳濁混合状態が移動するための通過口を設けることは有効である。そこで、図4(e)に示す仕切板に対し、上下の両室連通部位以外にも通過口(横型の通過口)を有する穴あき仕切板24を設置した。その仕組みを図21に示す。
図21に示す仕組みでは、乳濁混合状態(エマルション)の領域の範囲(高さ)に対する攪拌翼2の回転速度と両相の送液速度の影響を抑制することができた。しかしながら、その一方で、ミキサー室30における攪拌翼2の翼部位付近で発生した乳濁混合相(エマルション相)が、横型の通過口を介してすぐさまセトラー室40に移動してしまうため、ミキサー室30ではエマルション相が十分に発達できず、なおかつ、セトラー室40に大量のエマルションが流入することで、相分離に悪影響を及ぼすことがわかった。図21の仕組みを稼働させた際の乳濁混合状態(エマルション)の様子を図22に示す。
複室式での2液相間の界面位置の不変性の確認。
本発明に示す複室式の仕組みでは、2液相間の界面の位置は、ミキサー室30とセトラー室40で、常に同じ位置にあった。また、両相の送液速度の変動にかかわらず、なおかつ、いかに長期にわたって稼働させても、その位置は不変であった。具体的には、図4(a)乃至図4(p)、図6(a)乃至図6(p)、図8(a)乃至図8(p)、図10(a)乃至図10(p)、及び図12(a)乃至図12(p)に示す仕組みに対して、2液相間の界面位置の不変性が確認された。
一方、従来法の仕組みも、ミキサー室とセトラー室から成る複室式だが、2液相間の界面位置は、両室で必ずしも一致していない。また、該界面位置は、両相の送液速度の変動によって変化し、なおかつ、長期にわたって稼働させることで、その位置は徐々に変化するため、日常的に調整作業を要することが知られている。
2液相の送液速度の比とO/A比の独立性の確認。
本発明の仕組みでは、重液相4と軽液相5の送液速度は、相混合にあずかる両相の体積比(いわゆるO/A比)と無関係に設定することができた。具体的には、図1(a)乃至図1(t)、図2(a)乃至図2(t)、図4(a)乃至図4(p)、図6(a)乃至図6(p)、図8(a)乃至図8(p)、図10(a)乃至図10(p)、及び図12(a)乃至図12(p)に示す仕組みに対して、重液相4の送液速度と軽液相5の送液速度の比を1:1から1:10まで変化させたが、攪拌翼2を格納する容器1又は部屋(ミキサー室30)における2液相間の界面の位置は、稼働の前後で変化しないことがわかった。すなわち、2液相の送液速度の比とO/A比の独立性が確認された。
乳濁混合状態の発生とその安定性。
図8(m)に示す仕組みに対して、重液相4としてイオン交換水(純水)又は0.1M 硝酸水溶液を用い、軽液相5として前述のアルカン系溶媒(ShellSol D70)、トルエン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、又はn−オクタノールを用いて、乳濁混合状態の発生とその安定性に関する実験を行った。後述するように、従来法の仕組みでは、重液相4と軽液相5の乳濁混合状態が安定化するまでにかなりの時間(通常、数分から数時間)を要したが、本発明の仕組みでは、即座に(数秒から1分程度で)両相を乳濁混合の状態にすることができた。すなわち、相混合のための容器1又は部屋(ミキサー室30)の上方から重液相4、下方から軽液相5を送液導入しながら、2液相の界面付近に設置した攪拌翼2の翼部位を回転させることによって、即座に両相を乳濁混合状態(エマルション)に至らしめることができた。
また、後述するように、安定な乳濁混合状態を得るのに要する攪拌翼2の回転速度は、従来法の場合よりも、ずっと遅くてもよいことがわかった(従来法の3分の2から半分ほどの回転速度)。さらに、本発明の仕組みによって得られる乳濁混合状態は、従来法よりも密で均質性が高いことが、高速度カメラによる液滴観測によって確認された。なお、乳濁混合状態の違いは、目視からも明白であり、長時間を経ても稼働中の様子に変化は見られなかった。一方、従来法で発生させた乳濁混合状態は、長時間を経ることで変化する場合があった。
なお、抽出溶媒相(多くの場合、軽液相)の種類によっては、撹拌翼回転に基づく機械撹拌だけではエマルション相が形成されにくいことがあった。とくに、n−オクタノールのような極性有機溶媒を用いた場合に、このような傾向があった。その場合、重液相若しくは軽液相又はその両方を、細孔又は細管を有するノズルを通じて送液することで、エマルション相の形成が促進されることがわかった。
比較例3
乳濁混合状態の発生とその安定性の従来法との比較。
図23に示す従来法に対応する仕組みを作製し、図8(m)に示す本発明の仕組みと比較した。用いた重液相4及び軽液相5は実施例4と同様である。図8(m)の仕組みでは、数秒から1分程度で両相を乳濁混合の状態にすることができたのに対して、図23の仕組みでは、両相の乳濁混合状態が安定化するまでに数分から数時間を要した。また、図23の仕組みでは、安定な乳濁混合状態を得るために、図8(m)の仕組みと比較して、攪拌翼2の回転速度を1.5倍から2倍にする必要があった。従来法ではミキサー室全体にわたって均質な乳濁混合状態に至らしめる必要があり、攪拌翼2の回転速度が不足している場合、乳濁混合状態が密な領域と疎な領域が混在した不均質なエマルション相が発生することで、2液相間の界面位置が変動した。また、溶媒によっては、安定な乳濁混合状態に至らない場合もあった。とくに、アルコールなどの極性の高い溶媒について、エマルション相が発達しにくい傾向があった。
攪拌翼の回転速度と2液相の送液速度の独立性の確認。
吸引作用を持つ撹拌翼を用いる従来法(複室式)では、攪拌翼2の回転によって送液力が生じるため、ポンプ負荷を軽減できる一方、ポンプPと攪拌翼2の連動を考慮した煩雑かつ熟練を要する調整作業を要する。調整作業を煩雑にしている理由として、たとえば、以下に示す要因が挙げられる。攪拌翼2の回転速度の増加で、より強い剪断力が生じ、液滴どうしが合一しにくい微小な液滴が発生しやすくなるため、エマルション相が相分離しにくくなり、セトラー室へのエマルション相の移行を抑制する必要があるが、攪拌翼2の回転速度の増加に対応して送液速度も大きくなってしまうことから、逆に、エマルション相のセトラー室への移行が促進される。
本発明の仕組みでは、重液相及び軽液相の送液速度は、攪拌翼2の回転速度から完全に独立して設定できることがわかった。具体的には、図1(a)乃至図1(t)、図2(a)乃至図2(t)、図4(a)乃至図4(p)、図6(a)乃至図6(p)、図8(a)乃至図8(p)、図10(a)乃至図10(p)、及び図12(a)乃至図12(p)に示す仕組みに対して、攪拌翼2の回転速度と2液相の送液速度の関係を検討した結果、両者の独立性が確認できた。
分相性の向上の確認。
本発明の仕組みでは、機械撹拌のための容器1又は部屋(ミキサー室30)において相分離を同時進行させることで、分相性が向上することがわかった。具体的には、図1(a)乃至図1(t)、図2(a)乃至図2(t)、図4(a)乃至図4(p)、図6(a)乃至図6(p)、図8(a)乃至図8(p)、図10(a)乃至図10(p)、及び図12(a)乃至図12(p)に示す仕組みに対して、図23に示す従来法と比較したところ、分相性が大幅に向上することが確認できた。また、分相性が高いことは、処理速度(プロセッシング・スピード)を大きくできることを意味しており、本発明の仕組みを用いた場合と同じ処理速度を図23の仕組みに対して設定すると、セトラー室40が即座に激しく白濁し、排水が困難になった。
希土類元素の抽出分離実験。
本発明の図4(e)に示す仕組みにより、アルキルジアミドアミン(ADAAM)を用いて、硝酸水溶液から2つの希土類元素、ネオジム(Nd)とサマリウム(Sm)を抽出分離する実験を行った。具体的には、0.25M(mol dm−3)のADAAMを含むShellSol D70溶液を軽液相として用い、1.5 M の硝酸水溶液(重液相)に溶解しているネオジム(Nd)とサマリウム(Sm)を軽液相に抽出分離した。なお、ADAAMは、希土類元素間の選択的分離能に優れる分子性抽出剤であり、とくに、周期表で隣り合うNdとSmの分離など、中希土類の元素の分離に適している。
また、比較のため、前述と同じ重液相(水相)と軽液相(油相)を用いて、試験管でのバッチ実験(回分式での実験)を行った。共栓付き試験管に同体積の重液相4と軽液相5を入れて、縦振り振とう器により十分に振とうして抽出平衡に達せしめた後、遠心分離器を使って2液相を分離した。なお、振とう時間に対して分配比(油相中の希土類元素の濃度を水相中の希土類元素の濃度で割った値)が変化しなくなった時点において、抽出平衡に到達したと見なした。
分子性抽出剤ADAAMによるNdのSmの抽出分離について、図4(e)に示す仕組みを用いて実験を行った結果と試験管でのバッチ実験の結果を比較する。図4(e)の仕組みでの実験の結果は、Ndの分配比が8.5、Smの分配比が0.38となった。一方、バッチ実験での結果は、Ndの分配比が5.9、Smの分配比が0.42となった。
SmからのNdの分離係数(Ndの分配比をSmの分配比で割った値)の値を求めると、図4(e)の仕組みでの実験では22.4、バッチ実験では14.1となった。バッチ実験の結果は、抽出平衡時の結果であるから、図4(e)の仕組みでは、抽出平衡時の分離係数よりも大きな分離係数が得られることがわかった。この結果は、重液相(水相)と軽液相(油相)の対向送液に基づく両相の向流接触によって、理論段数が向上したことによるものと考えられる。
なお、図23の仕組みを用いた従来法でも、前述と同じ重液相(水相)と軽液相(油相)を用いて実験を行った結果、Ndの分配比は3.2、Smの分配比は0.23となった。すなわち、SmからのNdの分離係数は13.9であり、バッチ実験の結果(抽出平衡時の結果)とほぼ同じ値であった。
循環送液に対する適応性。
従来のオーバーフロー(溢流)による液送りの仕組みが循環送液には不向きであるのに対して、本発明の圧力作用による送液の仕組みは、循環送液に対する適応性が高いことがわかった。具体的には、図1(a)から図1(o)まで、図2(a)から図2(o)まで、図4(a)から図4(l)まで、図6(a)から図6(l)まで、図8(a)から図8(l)まで、図10(a)から図10(l)まで、及び図12(a)から図12(l)までに示す仕組みによって、重液相4若しくは軽液相5又は両相を循環送液することが容易であることが確認できた。
また、オーバーフロー(溢流)による液送りから圧力作用による送液に切り替えることで循環送液を容易にできることに加え、本発明の仕組みでは、相混合にあずかる重液相4と軽液相5の体積比(いわゆるO/A比)を送液速度とは無関係に設定できる点も、循環送液を容易にする一因である。すなわち、O/A比は変えず、2液相の送液速度の比を自由に設定できるので、たとえば、重液相4(多くの場合、水相)を1回通過方式で送液する場合の送液速度に対して、軽液相5(多くの場合、油相)を循環する送液速度を大幅に大きくした条件で、安定なエマルション相を永続的に維持しながら、処理を進められることがわかった。
循環送液適応型の仕組みには、様々な利点がある。たとえば、前述の本発明における循環送液の仕組みは、抽出速度が遅い系、抽出率が小さい系などを扱う場合に有効であること、正抽出、洗浄、及び逆抽出を一体化して同期的に循環送液することで生じる多段効果、同期的循環送液多段(特願2019―113657)にも利用できることを確認した。なお、多段を要する難分離、精密分離のケースでは、同期的循環送液多段を用いることで、従来のミキサーセトラー法の多段方式(容器員数多段)と比較して、装置システムを大幅にダウンサイズできることもわかった。
前述の実施例及び比較例に示された結果に基づき、以下のように考察できる。まず、この仕組みによって、従来法の仕組みと比較して、より効率的に、かつ、より広範囲で安定なエマルション相を成長させることができる。すなわち、上方から導入される重液相は、他の重液と接触することなく軽液相内を通過した先で初めてエマルション相に到達し、下方から導入される軽液相は、他の軽液と接触することなく重液相内を通過した先で初めてエマルション相に到達する。よって、エマルション相における重液相と軽液相の体積比は、常にほぼ一定の状態を安定的に維持できる。
さらに、重液相は上方から下方に向かって、軽液相は下方から上方に向かって流れるため、必然的に、両相は向流接触することになる。それによって、多くのカラム型の抽出装置(例えば、スプレーカラム、パルスカラム、エマルションフロー)と同様に、理論段数が向上する。
さて、従来法の仕組みでは、撹拌混合された重液相と軽液相がオーバーフロー(溢流)によって1通りのルートでミキサー室からセトラー室へと一方的に液送りされるため、重液相と軽液相の送液速度の比が、そのまま、ミキサー室に存在する2液相の体積比になる。別の言い方をすると、重液相と軽液相の送液速度の比を維持したままで、相混合にあずかる両相の体積比を変えることはできないし、両相の体積比を維持したままで、その送液速度の比を変えることもできない。すなわち、重液相と軽液相の体積比と両相の送液速度の比が一致する、という縛り(制限)の範囲内でしか運転できないという点において、操作上の自由度が小さい。それに対して、本発明における、例えば、単室式の仕組みでは、2液相の撹拌混合に供する1つの容器内でエマルション相が発生している領域と消滅している領域が共存するので、いわば、1つ容器が、従来法で言うところのミキサー室とセトラー室の両方を兼ねている。この場合、前記容器内に存在する2液相の体積比は、送液速度と無関係になる。また、本発明の複室式の仕組みでのミキサー室の場合も、従来法のミキサー室とは異なり、前記単室式と同様に、エマルション相が発生している領域と消滅している領域がミキサー室内で共存しながらセトラー室と連通しているため、本発明の仕組みでのミキサー室内に存在する2液相の体積比は、送液速度と無関係になる(詳細は後述する)。
すなわち、従来法の仕組みで、重液相と軽液相の送液速度の比が同じであればミキサー室に存在する重液相と軽液相の体積比は変化しないのと同様に、重液相と軽液相が1つの容器内に収まっていて、重液相の導入速度と排出速度、及び軽液相の導入速度と排出速度が共に一致していれば、前記容器内に存在する2液相の体積比は変化しない。実際、重液相と軽液相は個別に導入され、容器内では相混合されるが、再び、重液相と軽液相に分離した状態で個別に排出されるため、両相の導入速度と排出速度は常に一致している。別の言い方をすると、入口(導入口)と出口(排出口)で両相の出入りが制御されているため(いずれの液相も、導入された体積と同じ体積が排出されるため)、容器内に設置される両相の体積比は、送液速度の大きさに影響されることなく維持される。この場合、ポンプ等による送液速度が導入速度であり、排出速度でもある。すなわち、重液相の送液速度(=導入速度=排出速度)と軽液相の送液速度(=導入速度=排出速度)は、両相の体積比とは関係なく、自由に設定できる。このことは同時に、前記容器内で重液相と軽液相が成す界面の位置が、両相の送液速度とは無関係であることも意味している。
なお、オーバーフローによって1通りのルートでミキサー室からセトラー室に一方的に液送りされる場合、重液相と軽液相が個別にミキサー室に導入される反面、両相は分離されないまま、ミキサー室からセトラー室に移動するため、ミキサー室からの出口(セトラー室への入口)において、各液相に対しての個別の制御は働かず、ミキサー室に導入された重液相(又は軽液相)の体積とミキサー室からセトラー室に移動する重液相(又は軽液相)の体積は必ずしも一致していない。例えば、ミキサー室内に重液相と軽液相を設置した上で運転を開始した場合、両相の送液速度の比と設置時の両相の体積比が異なれば、ミキサー室内の両相の体積比は徐々に変化してしまう。よって、従来法の仕組み(オーバーフロー方式)では、通常、ミキサー室を空にした状態から運転を開始する。
また、重液相と軽液相の撹拌混合に供する1つの容器内でエマルション相が発生している領域と消滅している領域が共存する本発明の仕組みは、分相性においても、従来法の仕組みよりも優れている。従来法の仕組みでは、ミキサー室からセトラー室へと移行するエマルション相の中で、ミキサー室への導入時における重液相と軽液相の体積比が維持されている必要があり、ミキサー室では両相が全体にわたって均質的に撹拌混合されている状態が好ましいが、このことが分相性を悪くしている原因でもある。それに対して、1つの容器内において機械撹拌による相混合と相分離が同時進行する本発明の仕組みでは、容器全体にわたって均質的に撹拌混合されている必要はなく、最初から相分離が起こっていることから、分相性は従来法よりも大幅に向上する。
さらに、本発明の仕組みの場合、重液相及び軽液相は、必ずしも1回通過方式で送液する必要はなく、循環方式で送液してもよい。従来のオーバーフローによる液送りの仕組みは、循環送液には不向きだが、本発明の仕組みは、むしろ循環送液に適している。循環送液は、抽出速度が遅い系、抽出率が小さい系などを扱う場合に有効である。また、このような循環送液適応型の仕組みは、正抽出、洗浄、及び逆抽出を一体化して同期的に循環送液することで生じる多段効果、同期的循環送液多段(特願2019―113657)にも利用できる。多段を要する難分離、精密分離のケースでは、同期的循環送液多段を用いることで、従来法の多段方式(容器員数多段)と比較して、装置システムを大幅にダウンサイズできる。
前述の数々の優れた特徴を有する仕組みは、従来法の仕組みと同様に、重液相と軽液相を撹拌混合するミキサー室と両相を相分離するセトラー室に分離した容器構造に対しても、適用することができる。すなわち、ミキサー室とセトラー室を格納する容器の天井面と仕切板の間、及び底面と仕切板の間の2箇所に連通部位を設け、両室の間で重液相と軽液相が自由に行き来し合えるようにすれば、ミキサー室とセトラー室とに区分けされていない容器構造の場合と同様に扱うことができる。この点において、撹拌混合された重液相と軽液相がオーバーフローによって1通りのルートでミキサー室からセトラー室へと一方的に液送りされる(ミキサー室とセトラー室の間で両相が行き来できない)従来法の仕組みとは根本的に異なる。
別の言い方をすると、従来法の仕組みと本発明の方法の仕組みは、攪拌翼の翼部位の配置、仕切板の構造、及び重液相と軽液相の導入口の位置に違いがあるのみであり、従来法の仕組みを本発明の方法に基づいて改造することは容易である。従来法の仕組みでは、しばしばミキサー室とセトラー室で液面(軽液相と気相の間の界面)や2液相の間の界面の位置が異なり、特に、2液相界面の位置は、運転を継続するうちに徐々に変動する傾向があるため、定期的あるいは随時に、その位置を調整しなければならない。しかしながら、本発明に従って従来装置を改造すれば、相分離状態にある重液相と軽液相がミキサー室とセトラー室の間を自由に行き来し合えることから、両室の液面の位置(高さ)は同一であり、なおかつ、セトラー室での2液相の界面は、変動することなく常に同じ位置に維持されるので、その調整作業を要しない。
なお、従来法の仕組み(オーバーフロー方式)では、ミキサー室での重液相と軽液相の体積比(いわゆるO/A比)が送液速度の比に対応する。従って、攪拌翼の翼部位を両相の界面付近に配置して、より効率的かつ効果的に2液相を撹拌混合したい場合、送液速度の条件に合わせて、攪拌翼の回転軸の長さを調整する必要がある。それに対して、仕切板の構造を改良して、相分離状態にある重液相と軽液相がミキサー室とセトラー室の間を自由に行き来できるようにすれば、このような運転条件に合わせた回転軸の長さ調整は不要となる。例えば、ミキサー室での界面位置は、重液相と軽液相の体積比が1:1の場合の位置で維持しながら、両相の送液速度は、独立的に自由に設定できる。
また、本発明の仕組みでは、ポンプ等による圧力作用のみを送液に利用し、攪拌翼の回転によって生じる吸引作用は送液に用いない。この点も、撹拌翼回転で生じる吸引作用とポンプの圧力作用を組み合せながら、オーバーフロー(溢流)によって液送りする従来法とは異なる。従来法では、撹拌翼回転による送液力によってポンプ負荷を大幅に軽減できる一方、相混合の強さ(攪拌翼2の回転速度の大きさ)が送液速度に影響するという欠点がある。すなわち、2液相の撹拌の度合いによって送液速度が変化してしまう。それに対して、基本的に、吸引作用を生じさせない撹拌翼を用いる本発明の仕組みでは、相混合の強さと送液速度は、完全に独立している。従来法では、撹拌翼回転速度が送液速度に影響するため、両者の連動を考慮した煩雑かつ熟練を要する調整作業が必要になるが、本発明の方法では、撹拌翼回転速度と送液速度が独立しているため、大幅に調整作業が軽減される。
なお、本発明の仕組みにおいて、攪拌翼の翼部位が吸引力を生じさせる形状である場合、その稼働の前後で、ミキサー室とセトラー室とで2液相界面の位置が変化してしまうことから、本発明では、吸引力を生じさせない形状の翼部位の使用を推奨している。ただし、このことは、当該仕組みの運転に決定的な支障をもたらすものではない。
以上の説明では、容器の上方部分若しくは下方部分又はその両方に対して、該容器の中間部分よりも断面積が大きい形状(張出形状)を成すようにして、重液相と軽液相の相分離を促進させる構造を採用している。しかし、容器の中間部分の断面積を上方部分や下方部分の断面積よりも部分的に拡大し、そこに大きな径の攪拌翼を取り付けることで、上記相分離を促進させることも可能である。
本発明は、機械撹拌を利用する工業的な液液抽出に基づいて分離・精製される物質の製造方法に関するものである。液液抽出は、互いに混じり合わない2つの液体の相の間における物質の分配の違いにより、金属イオン、有機化合物、生体高分子などの物質を分離する方法であり、工業的に幅広く利用されている。特に、化学的性質が類似していて分離が難しいと言われる物質間の分離、高純度物質が求められる高精度な分離など、いわゆる、高度分離に対して、しばしば用いられる。
工業的な液液抽出では、一般的に、重液相(多くの場合、水相)と軽液相(多くの場合、油相)の相混合に対して機械撹拌が用いられ、例えば、ミキサーセトラー法は、液液抽出の代名詞とも言われる方法だが、その装置には、扱いにくさ、分相性の悪さ、相混合にあずかる2液相の体積比(いわゆるO/A比)などに対する設定自由度の低さ、多段を要する高度分離でのシステムの大型化などの問題があった。本発明の方法を用いれば、現状の機械撹拌による液液抽出が抱える上記の問題を解決できるので、液液抽出の産業上の利用可能性は更に拡大すると考えられる。
1:容器
2:撹拌翼
3:濁り防止仕切り
4:重液相
5:軽液相
6:重液相の送液ライン
7:軽液相の送液ライン
8:重液相用ポンプ
9:軽液相用ポンプ
10:重液相通路
11:重液相通路仕切板
12:軽液相通路
13:軽液相通路仕切板
14:軸ホルダー、軸受、又は二軸直交歯車
15:M室/S室仕切版
16:天井面/仕切板の連通部位
17:底面/仕切板の連通部位
18:仕切板上端部の通過口
19:仕切板下端部の通過口
20:上方仕切板
21:下方仕切板
22:縦型の通過口
23:乳濁混合状態の領域
24:穴あきM室/S室仕切板
25:横型の通過口
26:上方接合仕切板
27:下方接合仕切板
30:ミキサー室
40:セトラー室
100:界面

Claims (17)

  1. 容器内の上方から重液相を、下方から軽液相を送液導入し、上部に軽液相を下部に重液相を形成させながら、前記軽液相と前記重液相の間の界面近傍を機械的に攪拌することによって、前記軽液相と前記重液相との乳濁混合相を成長させ、前記重液相内又は前記軽液相内で分離精製される特定の物質を得るための液液抽出に基づく特定物質の製造方法。
  2. 請求項1において、前記重液相と前記軽液相を設置した前記容器内で、両相が乳濁混合された状態の領域と相分離された状態の領域が共存することを特徴とする液液抽出に基づく特定物質の製造方法。
  3. 請求項1において、容器の縦長形状を顕著化することで、重液相と軽液相の乳濁混合状態の領域を鉛直方向に拡張するとともに両相の相分離を促すことを特徴とする液液抽出に基づく特定物質の製造方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれかにおいて、容器の上方若しくは下方又はその両方の断面積を、該容器の中間部分の断面積よりも大きくすることで、重液相と軽液相の相分離を促すことを特徴とする液液抽出に基づく特定物質の製造方法。
  5. 請求項1及至4のいずれかにおいて、前記容器内に設置された撹拌翼の翼部位が、吸引力を生じさせない形状を有することを特徴とする液液抽出に基づく特定物質の製造方法。
  6. 請求項1及至4のいずれかにおいて、前記重液相若しくは前記軽液相又はその両方を循環送液させることを特徴とする液液抽出に基づく特定物質の製造方法。
  7. 請求項1及至4のいずれかにおいて、前記重液相及び前記軽液相を1回通過で送液させることを特徴とする液液抽出に基づく特定物質の製造方法。
  8. 請求項1及至4のいずれかにおいて、前記重液相若しくは前記軽液相又はその両方が、細孔又は細管を有するノズルを介して送液導入されることを特徴とする液液抽出に基づく特定物質の製造方法。
  9. 容器内の上方から重液相を、下方から軽液相を送液導入し、上部に軽液相を下部に重液相を形成させながら、前記軽液相と前記重液相間の界面近傍を機械的に攪拌することによって、前記軽液相と前記重液相との乳濁混合相を成長させ、前記重液相内又は前記軽液相内で分離精製される特定の物質を得るための特定物質の製造方法であって、前記容器は、重液相と軽液相を撹拌混合するミキサー室、及び2液相を相分離するセトラー室を備え、前記容器の上部及び下部のみで両室の軽液相及び重液相が連通するように仕切板が設置された容器構造を利用し、軽液相の液面を前記容器上部の連通部位に到達させた状態で、前記ミキサー室の上方から前記重液相、下方から前記軽液相を送液導入し、前記ミキサー室にて両相を向流接触させることを特徴とする液液抽出に基づく特定物質の製造方法。
  10. 請求項9において、前記ミキサー室と前記セトラー室の間に設置された前記仕切板を利用して、前記容器の上部において両室の軽液相を連通させることを特徴とする液液抽出に基づく特定物質の製造方法。
  11. 請求項9において、前記ミキサー室と前記セトラー室の間に設置された前記仕切板を利用して、前記容器の下部において両室の重液相を連通させることを特徴とする液液抽出に基づく特定物質の製造方法。
  12. 請求項9において、乳濁混合された2液相を、前記容器内に形成された縦型の液相通過口を通して鉛直方向に移行させることを特徴とする液液抽出に基づく特定物質の製造方法。
  13. 請求項9乃至12のいずれかにおいて、前記ミキサー室の縦長形状を顕著化することで、重液相と軽液相の乳濁混合状態の領域を鉛直方向に拡張するとともに両相の相分離を促すことを特徴とする液液抽出に基づく特定物質の製造方法。
  14. 請求項9及至13のいずれかにおいて、前記ミキサー室内に設置された撹拌翼の翼部位が、吸引力を生じさせない形状を有することを特徴とする液液抽出に基づく特定物質の製造方法。
  15. 請求項9及至13のいずれかにおいて、前記重液相若しくは前記軽液相又はその両方を循環送液させることを特徴とする液液抽出に基づく特定物質の製造方法。
  16. 請求項9及至13のいずれかにおいて、前記重液相及び前記軽液相を1回通過で送液させることを特徴とする液液抽出に基づく特定物質の製造方法。
  17. 請求項9及至13のいずれかにおいて、前記重液相若しくは前記軽液相又はその両方が、細孔又は細管を有するノズルを通じて送液されることを特徴とする液液抽出に基づく特定物質の製造方法。
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