JP2021093703A - 圧電memsデバイス、製造方法および駆動方法 - Google Patents
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Abstract
Description
<1>
可動部を有する基板を備え、可動部上に、下部電極、圧電膜および上部電極がこの順に積層され、かつ、非共振周波数で駆動する非共振駆動型の圧電MEMSデバイスであって、
上部電極は、アクチュエータ用上部電極部と、アクチュエータ用上部電極部に非接触のセンサ用上部電極部とを有し、
圧電膜は、アクチュエータ用上部電極部が設けられた部分と、センサ用上部電極部が設けられた部分とが連続しており、
アクチュエータ用上部電極部と、センサ用上部電極部との平均電極間隔をdμmとし、可動部の平均厚みをtμmとした場合、dとtとが、
d≧0.33t+0.6
を満たし、
アクチュエータ用上部電極部によって規定されるアクチュエータ用圧電部に、非共振周波数として、最低共振周波数の0.81倍以下の周波数の駆動信号を入力するための駆動回路を備えた圧電MEMSデバイス。
<2>
平均電極間隔dおよび可動部の平均厚みtが、
d≧0.56t+8
を満たす、<1>に記載の圧電MEMSデバイス。
<3>
可動部の平均厚みが100μm以下である<1>または<2>に記載の圧電MEMSデバイス。
<4>
平均電極間隔が250μm以下である<1>から<3>のいずれかに記載の圧電MEMSデバイス。
<5>
圧電膜が10μm以下である<1>から<4>のいずれかに記載の圧電MEMSデバイス。
<6>
圧電膜が、鉛を含有するペロブスカイト型酸化物を主成分とする<1>から<5>のいずれかに記載の圧電MEMSデバイス。
<7>
基板は、シリコン基材である<1>から<6>のいずれかに記載の圧電MEMSデバイス。
<8>
基板は、可動部の一端が固定された固定部をさらに有し、可動部の他端が自由端となる、カンチレバー構造を有する<1>から<7>のいずれかに記載の圧電MEMSデバイス。
<9>
非共振周波数は、最低共振周波数の0.7倍以下の周波数である<1>から<8>のいずれかに記載の圧電MEMSデバイス。
<10>
非共振周波数は、最低共振周波数の0.1倍以下の周波数である、<1>から<8>のいずれかに記載の圧電MEMSデバイス。
<11>
可動部を有する基板を有し、可動部上に、下部電極、圧電膜および上部電極がこの順に積層され、かつ、非共振周波数で駆動する非共振駆動型の圧電MEMSデバイスであって、上部電極は、アクチュエータ用上部電極部と、アクチュエータ用上部電極部に非接触のセンサ用上部電極部とを有し、圧電膜は、アクチュエータ用上部電極部が設けられた部分と、センサ用上部電極部が設けられた部分とが連続している圧電MEMSデバイスの製造方法であって、
アクチュエータ用上部電極部とセンサ用上部電極部との平均電極間隔を、基板の可動部の平均厚みに応じて定める、圧電MEMSデバイスの製造方法。
<12>
平均電極間隔をdμmとし、可動部の平均厚みをtμmとした場合、dとtとが、
d≧0.33t+0.6
を満たす配置とする、<11>に記載の圧電MEMSデバイスの製造方法。
<13>
平均電極間隔dおよび可動部の平均厚みtが、
d≧0.56t+8
を満たす配置とする、<12>に記載の圧電MEMSデバイスの製造方法。
<14>
可動部を有する基板を備え、可動部上に、下部電極、圧電膜および上部電極がこの順に積層された圧電MEMSデバイスであって、
上部電極は、アクチュエータ用上部電極部と、アクチュエータ用上部電極部に非接触のセンサ用上部電極部とを有し、
圧電膜は、アクチュエータ用上部電極部が設けられた部分と、センサ用上部電極部が設けられた部分とが連続しており、
アクチュエータ用上部電極部と、センサ用上部電極部との平均電極間隔をdμmとし、可動部の平均厚みをtμmとした場合、dとtとが、
d≧0.33t+0.6
を満たす圧電MEMSデバイスに対し、
アクチュエータ用上部電極部によって規定されるアクチュエータ用圧電部に、圧電MEMSデバイスの最低共振周波数の0.81倍以下の周波数を有する非共振周波数の駆動信号を入力して非共振駆動する駆動方法。
<15>
圧電MEMSデバイスが、平均電極間隔dおよび可動部の平均厚みtが、
d≧0.56t+8
を満たす、<14>に記載の駆動方法。
<16>
非共振周波数は、最低共振周波数の0.7倍以下の周波数である、<14>または<15>に記載の駆動方法。
<17>
非共振周波数は、最低共振周波数の0.1倍以下の周波数である、<14>または<15>に記載の駆動方法。
図1は、本開示の実施形態に係る非共振駆動型の圧電MEMSデバイス100(図2参照)の本体部1を構成するカンチレバーの斜視図である。図2はカンチレバーの側面図および上部電極側から見た平面図を含む、圧電MEMSデバイス100の概略構成を示す図である。なお、視認容易のため、各層の膜厚やそれらの比率は、適宜変更して描いており、必ずしも実際の膜厚や比率を反映したものではない。以下の図面において同様とする。
デバイスの可動部に対して外部からYの振幅で振動を与えた場合の変位量をXとした場合、共振の影響が全くない完全な非共振の状態ではX/Y=1となる。そして、可動部の振動に共振の影響が加わることにより、X/Y>1となる。
一般的なMEMSデバイスにおけるQ値は10〜1000程度であり、その範囲ではQ値と減衰率ζとの関係を、Q=1/(2ζ)と表すことができる。
すなわち、(I)式はQ値を用いて、
と表すことができる。
d1≧0.33t+0.6を満たす。
なお、
d1≧0.56t+8
を満たすことが好ましい。
d2≧0.33t+0.6を満たす。
なお、
d2≧0.56t+8
を満たすことが好ましい。
d≧0.33t+0.6 (1)
を満たし、
さらには、
d≧0.56t+8 (2)
を満たすことが好ましい。
まず、一般論として、基板拘束のないフリーのバルク状圧電体のアクチュエータ動作は以下の通りである。基板拘束のないフリーの圧電体とは、図3、図4等に示すように、基板を備えず、圧電体124が下部電極122および上部電極126に挟まれた場合をいう。ここで、圧電体124は下部電極122側が負、上部電極126側が正となるように分極処理が施されている。図3、4において、自発分極の向きを−(マイナス)から+(プラス)に向かう矢印で示している。図3に示すように、圧電体124に上部電極126側が正となる電圧が印加された場合、分極の負電荷が正電圧に引っ張られ、正電荷が負電圧に引っ張られ、結果として実線で示すように圧電体124がz軸方向に矢印130で示す向きに縮む。ここで、圧電体124は体積を維持しようとするので、z軸方向に縮むとz軸方向に垂直な面内方向には矢印131の向きに伸びる。一方、図4に示すように、圧電体124に上部電極側が負となる電圧が印加された場合、分極の負電荷が正電圧に引っ張られ、正電荷が負電圧に引っ張られ、結果として実線で示すように圧電体124がz軸方向に矢印132で示す向きに伸び、面内方向には矢印134で示す向きに縮む。
(1−1)圧電膜の伸縮がフリーである場合
一端124aが固定端、他端124bは自由端である薄膜状の圧電体124(以下において、圧電膜124とする。)のアクチュエータ動作について説明する(図5参照)。ここでは、上向き方向の分極を有する圧電膜124に対して、上部電極126が正電位となるように、例えば、1Vの電圧を印加する。図5に示すように、基板がなく、圧電膜124全体に電圧をかけるケースを考える。上部電極126と下部電極122は圧電膜124に対して無視できる程度の厚みであり、圧電材料の動きを拘束しない。すなわち、圧電膜124はフリーな状態にある。ここで、圧電膜124は、z軸方向(厚み)は薄く、x軸方向(幅)は短くy軸方向(長さ)は幅に対して十分に長いこととする。この場合、電圧を印加すると圧電膜124は、黒矢印135で示す長手方向(y軸方向)に伸びるとシンプルに考えて良い。圧電膜124がフリーな状態にある場合、電圧の印加に応じて圧電膜124は自由に伸びるので、圧電材料内部では応力はほとんど発生していない。
次に、図6に示すように圧電膜124の両端124a、124bが固定された完全拘束状態の場合について考える。圧電膜124、下部電極122および上部電極126自体は図5に示すものと同一とする。この場合、上記と同様に圧電膜124に対して、上部電極126が正電位となるように、例えば1Vの電圧を印加すると、圧電膜124はその長手方向(y軸方向)に伸びようとするが、両端124a、124bが固定されて拘束されているため伸びることができない。そのため、圧電膜124には白抜き矢印136で示す圧縮応力がかかる。
図7に示すように、基板110上に、下部電極122、圧電膜124および上部電極126が積層された、上記本開示の実施形態の可動部と同様の構成の場合について説明する。基板110上に備えられた圧電膜124に対して、図5と同様に、上部電極126が正電位となるように、1Vの電圧を印加すると、圧電膜124は図中黒矢印137(=長手方向(y軸方向))に伸びようとする。しかし、基板110は伸びないために、結果として、z軸のマイナス方向に向かってたわむことになる。圧電膜124にとっては、上記(1−1)のフリーの場合と(1−2)の完全拘束状態の場合との中間の状態となっている。圧電膜124は伸びようとしているが基板110によって拘束されているので、圧電膜124は白矢印138で示す圧縮応力を受けることとなっている。
次に、圧電膜に対して外力が加えられた場合の動作、すなわちセンサとして機能する場合について説明する。
図8に示すように、圧電膜124に対して長手方向に矢印140で示す引張応力をかけると、圧電膜124は破線で示すように長手方向に伸びる。この場合、圧電膜124には元に戻そうとする方向に電圧が発生するので、縮もうとする方向の電圧、すなわち負電圧が発生する。
逆に、図9に示すように、圧電膜124に対して長手方向に矢印141で示す圧縮応力をかけると、圧電膜124は破線で示すように長手方向に縮まる。この場合も、圧電膜124には元に戻そうとする方向に電圧が発生するので、伸びようとする方向の電圧、すなわち正電圧が発生する。
図1に示したカンチレバー構造のデバイス本体部1において、中央に配置されているアクチュエータ用上部電極部26bに1Vを印加した場合、図7の場合と同様に可動部は−z方向にたわむことになる。
すなわち、アクチュエータ用上部電極部26b付近の圧電膜24は伸びようとしているが基板10によって拘束されているため、圧電膜24には圧縮応力がかかる。
一方で、圧電膜24の電界がかかっていない部分は、アクチュエータ用圧電部20bによる可動部の動きにつられて動いているだけである。すなわち、圧電膜24のアクチュエータ用上部電極部26bに対応する部分以外の部分は引張応力をうけ、結果として圧電膜24が伸びている。
d≧0.33t+0.6 (1)
を満たす配置となっていれば、センサ用圧電部は、アクチュエータ用圧電部に生じる圧縮応力の影響が少なく引張応力が優勢な位置でセンサ電圧を検出することができる(後記の試験例参照)。そのため、可動部全体の振動状態をセンシングすることができ、センサ電圧を用いたフィードバック制御を行った駆動電圧の印加制御は精度よくなされる。
d≧0.56t+8 (2)
を満たす配置となっていれば、一般的なMEMSデバイスの公差である±1μm程度の範囲で、電極間隔が変化してもセンサ電圧は大きく変化しない。そのため、可動部全体の振動状態を精度よくセンシングすることができると同時に、量産に適した圧電MEMSデバイスを得ることができる。
センサ用上部電極部がアクチュエータ用上部電極部から大きく離れてしまうと、非共振駆動型のデバイスの場合は十分な歪が出ないことがあり、センサ電圧のS/Nが低下する。このようなセンサ電圧のS/Nの低下をカバーするには、増幅回路等が必要になり、デバイスのサイズが大きくなる。ここで、電極間隔dが250μm以下であれば、センサ電圧のS/Nの低下を抑制することができるので、デバイスサイズの増加を抑制することができる。なお、電極間隔dを100μm以下とすることで、デバイスサイズの増加の抑制効果をより高めることができる。
しかし、上部電極26の形状や配置は上記実施形態の構成に限らず、図13、図14に示すように、アクチュエータ用上部電極部50とセンサ用上部電極部52との電極間隔が近い部分、遠い部分を含む場合がある。そこで、隣接して配置されるアクチュエータ用上部電極部50とセンサ用上部電極部52との平均電極間隔dは、以下のように求めることとする。
すなわち、平均電極間隔d=∫d(n)dn/∫dn
とする。
一般式AaBbOc (P)
(式中、A:Aサイトの元素であり、Pb、Ba、La、Sr、Bi、Li、Na、Ca、Cd、Mg、およびKからなる群より選ばれた少なとも1種の元素、
B:Bサイトの元素であり、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Sb、Cr、Mo、W、Mn、Sc、Co、Cu、In、Sn、Ga、Zn、Cd、Fe、およびNiからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素。
O:酸素原子。
a:b:c=1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)
Aa(Zrx、Tiy、Mb−x−y)bOc (PX)
(式中、A:Aサイトの元素であり、Pbを含む少なくとも1種の元素。Mは、V、Nb、Ta、およびSbからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素である。
0<x<b、0<y<b、0≦b−x−y、a:b:c=1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)
可動部を有する基板を有し、可動部上に、下部電極、圧電膜および上部電極がこの順に積層され、かつ、非共振周波数で駆動する非共振駆動型の圧電MEMSデバイスであって、上部電極は、アクチュエータ用上部電極部と、アクチュエータ用上部電極部に非接触のセンサ用上部電極部とを有し、圧電膜は、アクチュエータ用上部電極部が設けられた部分と、センサ用上部電極部が設けられた部分とが連続している圧電MEMSデバイスの製造に当たっては、アクチュエータ用上部電極部とセンサ用上部電極部の電極間隔を、基板の可動部の平均厚みに応じて定める。可動部の平均厚みに応じて電極間隔を定めることによって、量産に適する、信頼性の高い圧電MEMSデバイスを設計し、製造することができる。
d≧0.33t+0.6 (1)
を満たす配置となるように設計することが好ましい。
また、
d≧0.56t+8 (2)
を満たす配置とするように設計することがより好ましい。
本開示の他の実施形態に係る圧電MEMSデバイスとしてのミラーデバイスのデバイス本体部201を図16に示す。ミラーデバイスにおいてもデバイス本体部201に加えて駆動回路を備えるが、図16においては図示を省略している。
d≧0.33t+0.6 (1)
を満たす。
また、
d≧0.56t+8 (2)
を満たすことが好ましい。
以下、本開示の圧電MEMSデバイスについてのシミュレーションによる評価結果を説明する。ここでは、圧電MEMSデバイスとしてカンチレバーを例に説明する。
(カンチレバー1A)
図18は参考例に用いたカンチレバー1Aの側面図および平面図であり、寸法を説明するための図である。カンチレバー1Aの構成は図1、2を用いて説明した実施形態のデバイス本体部1と同等であり、同等の構成要素については同じ符号を付している。
上記カンチレバー1Aにおいて、3本ある上部電極部26a、26b、26cのうち、中央の上部電極部26bの位置を固定し、両脇の上部電極部26a、26cを長さ方向の位置は固定し、幅方向の位置を変化させて、電極間隔d1、d2を変化させてシミュレーションを行った。電極間隔d1、d2が0の場合は3本の上部電極部26a、26b、26cがつながってしまい、各圧電部がセンサあるいはアクチュエータとして機能しなくなる。また、20μmよりも電極間隔d1、d2が離れてしまうと圧電膜24(PZT膜)から上部電極26がはみ出してしまうので、電極間隔d1、d2の最大値は20μmとした。ここではd1=d2=dとして、電極間隔dを1μm〜20μmの範囲で変化させた場合のセンサ電圧の変化をシミュレーションにより求めた。
なお、シミュレーションに際しては、有限要素法にて最低共振周波数を求め、システムのQ値を100となるように定め、中央の上部電極部26bに、最低共振周波数で0.01Vの振幅の正弦波電圧を印加したこととして、有限要素法による計算を実施し、両脇の上部電極部26a、26cに出力される電圧の振幅を計算した。すなわち、中央の圧電部20bをアクチュエータ用圧電部とし、両脇の圧電部20a、20cをセンサ用圧電部として機能させる圧電薄膜MEMSデバイスとしてセンサ電圧の振幅を算出した。
シミュレーションにおいては、カンチレバーの幅方向をx軸、長手方向をy軸、厚み方向をz軸として計算した。なお、シミュレーションに当たっては、計算負荷の軽減のため、下部電極の厚みは無視して計算した。下部電極はPZT膜と比較して十分に小さいので、計算結果への影響は小さい。PZT膜の下部電極側の面は、一様に0Vとされ、アクチュエータ用の上部電極に所定の駆動電圧を印加し、センサ用の上部電極の電位をセンサ電圧として計測することとした。また、カンチレバーの可動部12について、可動部12の固定端12aを完全拘束とした条件にてシミュレーションを実施した。
1)可動部12を構成するデバイス層(シリコン層)について
シリコンの弾性スティフネステンソルcijとして下記表1に示す値を用いた。単位はGPaである。弾性スティフネステンソルcijは、i=1〜6、j=1〜6の6×6=36成分で表される。対角成分は全く同じ値、例えばc12=c21である。面方位(100)のウエハを用い、そのオリエンテーションフラットに対して垂直な方向をカンチレバーの長手方向としてサンプルを作製するため、一般的なシリコンのテンソル標記に対し、45°回転させた値を採用した。
圧電膜の物性値としては、以下の値を用いた。
2−1)弾性定数
ヤング率50GPa、ポアソン比0.3の等方弾性体と仮定した。ヤング率50Pa、ポアソン比0.3の等方弾性体を弾性コンプライアンスsij[×10-12(1/Pa)]として下記表2に示す値を採用した。弾性コンプライアンスsijは、i=1〜6、j=1〜6の6×6の36成分で表される。
ヤング率168GPa、かつ、ポアソン比0.39の等方弾性体とした。
上記カンチレバー1Aを用い、非共振周波数で駆動させた場合のセンサ電圧の変化を求めた。なお、最低共振周波数は、参考例と同様に、上記シミュレーションソフトの圧電解析における共振解析を用いて算出した。一方、以下の試験例について、センサ電圧は、シミュレーションソフトの圧電解析における静解析を用いて算出した。直流電圧による駆動は、最低共振周波数の0.81倍以下の非共振周波数による駆動の一例である。なお、最低共振周波数の0.81倍以下の非共振周波数で駆動する場合には、デバイスのQ値によらず同様の振る舞いをするため、試験例においてはQ値の入力は不要である。
参考例の場合と同様に、中央の圧電部20bをアクチュエータ用圧電部とし、両脇の圧電部20a、20cをセンサ用圧電部とし、中央の上部電極部26bに直流1Vを印加し、両脇の上部電極部26a、26cによって検出されるセンサ電圧をシミュレーションにより求めた。結果を図20において、白四角のマーカーおよび破線で示す。なお、圧電MEMSデバイスでは、直流電圧を印加した場合の計算結果と最低共振周波数よりも十分に低い非共振周波数(例えば最低共振周波数の10%以下)の電圧を印加した場合の計算結果とは同等の結果となる。また、全く共振しない完全な非共振の場合に比べて変位が3倍未満である最低共振周波数の81%以下の範囲であれば、ほぼ同様の傾向が得られる。以下の試験例についても同様である。
両脇の圧電部20a、20cをアクチュエータ用圧電部とし、中央の圧電部20bをセンサ用圧電部とし、両脇の上部電極部26a、26cに直流1Vを印加し、中央の上部電極部26bによって検出されるセンサ電圧をシミュレーションにより求めた。この場合、アクチュエータの能力が2倍となっているため、得られたセンサ電圧を1/2にした結果を、図20において、黒三角のマーカーおよび実線で示す。
(カンチレバー1B)
カンチレバー1Aにおいて、可動部12の幅Wを135μmから200μmとし、圧電膜24の幅を115μmから180μmに変えた以外は同様とした。なお、試験例1Bのカンチレバー1Bの最低共振周波数は40kHzであった。
カンチレバー1Bにおいて、3本ある上部電極部26a、26b、26cのうち、中央の上部電極部26bの位置を固定し、両脇の上部電極部26a、26cを長さ方向の位置は固定し、幅方向の位置を変化させることによって電極間隔d1、d2を変化させ、電極間隔とセンサ電圧の関係についてシミュレーションを行った。ここでは電極間隔d1=d2=dとして、電極間隔dを8μm〜46μmの範囲で変化させた場合の、電極間隔とセンサ電圧の関係をシミュレーションにより求めた。結果を図22に示す。
上記シミュレーション結果から、各々の電極間隔で検出されるセンサ電圧について、中央の上部電極部26bを固定として、両脇の上部電極部26a、26cの位置が±1μmずれた場合、すなわち、電極間隔dが+1μm、−1μmずれた場合のセンサ電圧の変化量(信号強度差異)を算出した。電極間隔d[μm]におけるセンサ電圧の信号強度をI(d)とし、電極間隔がd−1[μm]におけるセンサ電圧の信号強度I(d−1)との強度差異
{|I(d−1)−I(d)|/I(d)}×100[%]、
および電極間隔がd+1[μm]における信号強度I(d+1)との強度差異
{|I(d+1)−I(d)|/I(d)}×100[%]
をそれぞれ求めた。
なお、シミュレーションにおいて1μm間隔で数値が算出されていない場合、例えば、ある電極間隔dにおける+1μmずれた場合の信号強度が算出されていない場合、電極間隔dの次に大きい値との間で線形補完をしてd+1の信号強度を求めて上記強度差異を算出した。同様に、電極間隔dの次に小さい値との間で線形補完を行いd−1における信号強度を求めて上記強度差を算出した。
{|I(23μm)−I(24μm)|/I(24μm)}×100[%]
で求めた。
シミュレーション結果が2μm間隔で算出されている場合には、I(24μm)とI(22μm)の間に直線を引き、そこからI(23μm)を読み取った、すなわち線形補完によりI(23μm)を求めた。
同様に、電極間隔d=24μmの場合のセンサ電圧での信号強度I(24μm)の、1μm広い電極間隔d+1=25μmの場合の信号強度I(25μm)との信号強度差異Δ(d+1)は、
{|I(25μm)−I(24μm)|/I(24μm)}×100[%]
で求めた。
(カンチレバー1C)
カンチレバー1Aにおいて、可動部12の厚みtを66μmとし、可動部12の幅Wを250μmとし、圧電膜24の幅を230μmとした以外は同様とした。なお、試験例2のカンチレバー1Cの最低共振周波数は82kHzであった。
試験例1Bと同様にして、電極間隔dを16μm〜70μmの範囲で変化させた場合の電極間隔とセンサ電圧との関係についてのシミュレーションを行った。結果を図23に示す。
試験例1Bと同様にして、各々の電極間隔で検出されるセンサ電圧について、中央の上部電極部26bを固定として、両脇の上部電極部の位置が±1μmずれた場合のセンサ電圧の変化量、ここでは信号強度差異Δ(d−1)、Δ(d+1)を算出した。
(カンチレバー1D)
カンチレバー1Aにおいて、可動部12の厚みtを100μm、可動部12の幅Wを300μmとし、圧電膜24の幅を280μmとした以外は同様とした。なお、試験例3のカンチレバー1Dは最低共振周波数が125kHzであった。
試験例1Bと同様にして、電極間隔dを14μm〜80μmの範囲で変化させた場合の電極間隔とセンサ電圧との関係についてのシミュレーションを行った。結果を図24に示す。
試験例1Bと同様にして、各々の電極間隔で検出されるセンサ電圧について、中央の上部電極部26bを固定として、両脇の上部電極部の位置が±1μmずれた場合のセンサ電圧の変化量、ここでは信号強度差異Δ(d−1)、Δ(d+1)を算出した。
d≧0.33t+0.6
を満たす場合であることが明らかになった。
d≧0.56t+8
を満たす場合であることが明らかになった。
10 基板
12 可動部
12a 可動部の一端(固定端)
12b 可動部の他端(自由端)
14 固定部
20a、20b、20c 圧電部
20a、20c センサ用圧電部
20b アクチュエータ用圧電部
22 下部電極
24 圧電膜
26 上部電極
26a 上部電極部(センサ用上部電極部)
26b 上部電極部(アクチュエータ用上部電極部)
26c 上部電極部(センサ用上部電極部)
27a、27b、27c 配線部
28a、28b、28c 電極パッド
30 回路基板
32 駆動回路
34 検出回路
50 アクチュエータ用上部電極部
50a アクチュエータ用上部電極部の外縁
51 配線
52 センサ用上部電極部
52a センサ用上部電極部の外縁
60 基板
62 可動部
64 非可動部
70 絶縁膜
100 圧電MEMSデバイス
110 基板
122 下部電極
124 圧電体、圧電膜
124a 一端
124b 他端
126 上部電極
201 圧電MEMSデバイス本体部(ミラーデバイス本体部)
210 枠部材
212 ミラー部
214 第1可動部
214A〜214D 第1可動部のアクチュエータ用圧電部
215A、215B 第1可動部のセンサ用圧電部
216A、216B 第2可動部
220a〜220d、221a〜221d 第2可動部のアクチュエータ用圧電部
220e、221e 第2可動部のセンサ用圧電部
224 圧電膜
226 上部電極
226a アクチュエータ用上部電極部
226e センサ用上部電極部
Claims (17)
- 可動部を有する基板を備え、前記可動部上に、下部電極、圧電膜および上部電極がこの順に積層され、かつ、非共振周波数で駆動する非共振駆動型の圧電MEMSデバイスであって、
前記上部電極は、アクチュエータ用上部電極部と、前記アクチュエータ用上部電極部に非接触のセンサ用上部電極部とを有し、
前記圧電膜は、前記アクチュエータ用上部電極部が設けられた部分と、前記センサ用上部電極部が設けられた部分とが連続しており、
前記アクチュエータ用上部電極部と、前記センサ用上部電極部との平均電極間隔をdμmとし、前記可動部の平均厚みをtμmとした場合、dとtとが、
d≧0.33t+0.6
を満たし、
前記アクチュエータ用上部電極部によって規定されるアクチュエータ用圧電部に、前記非共振周波数として、最低共振周波数の0.81倍以下の周波数の駆動信号を入力する駆動回路を備えた圧電MEMSデバイス。 - 前記平均電極間隔dおよび前記可動部の平均厚みtが、
d≧0.56t+8
を満たす、請求項1に記載の圧電MEMSデバイス。 - 前記可動部の平均厚みが100μm以下である請求項1または請求項2に記載の圧電MEMSデバイス。
- 前記平均電極間隔が250μm以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の圧電MEMSデバイス。
- 前記圧電膜が10μm以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の圧電MEMSデバイス。
- 前記圧電膜が、鉛を含有するペロブスカイト型酸化物を主成分とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の圧電MEMSデバイス。
- 前記基板は、シリコン基材である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の圧電MEMSデバイス。
- 前記基板は、前記可動部の一端が固定された固定部をさらに有し、前記可動部の他端が自由端となる、カンチレバー構造を有する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の圧電MEMSデバイス。
- 前記非共振周波数は、前記最低共振周波数の0.7倍以下の周波数である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の圧電MEMSデバイス。
- 前記非共振周波数は、前記最低共振周波数の0.1倍以下の周波数である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の圧電MEMSデバイス。
- 可動部を有する基板を有し、前記可動部上に、下部電極、圧電膜および上部電極がこの順に積層され、かつ、非共振周波数で駆動する非共振駆動型の圧電MEMSデバイスであって、前記上部電極は、アクチュエータ用上部電極部と、前記アクチュエータ用上部電極部に非接触のセンサ用上部電極部とを有し、前記圧電膜は、前記アクチュエータ用上部電極部が設けられた部分と、前記センサ用上部電極部が設けられた部分とが連続している圧電MEMSデバイスの製造方法であって、
前記アクチュエータ用上部電極部と前記センサ用上部電極部との平均電極間隔を、前記基板の可動部の平均厚みに応じて定める、圧電MEMSデバイスの製造方法。 - 前記平均電極間隔をdμmとし、前記可動部の平均厚みをtμmとした場合、dとtとが、
d≧0.33t+0.6
を満たす配置とする、請求項11に記載の圧電MEMSデバイスの製造方法。 - 前記平均電極間隔dおよび前記可動部の平均厚みtが、
d≧0.56t+8
を満たす配置とする、請求項12に記載の圧電MEMSデバイスの製造方法。 - 可動部を有する基板を備え、前記可動部上に、下部電極、圧電膜および上部電極がこの順に積層された圧電MEMSデバイスであって、
前記上部電極は、アクチュエータ用上部電極部と、前記アクチュエータ用上部電極部に非接触のセンサ用上部電極部とを有し、
前記圧電膜は、前記アクチュエータ用上部電極部が設けられた部分と、前記センサ用上部電極部が設けられた部分とが連続しており、
前記アクチュエータ用上部電極部と、前記センサ用上部電極部との平均電極間隔をdμmとし、前記可動部の平均厚みをtμmとした場合、dとtとが、
d≧0.33t+0.6
を満たす圧電MEMSデバイスに対し、
前記アクチュエータ用上部電極部によって規定されるアクチュエータ用圧電部に、前記圧電MEMSデバイスの最低共振周波数の0.81倍以下の周波数を有する非共振周波数の駆動信号を入力して非共振駆動する駆動方法。 - 前記圧電MEMSデバイスが、前記平均電極間隔dおよび前記可動部の平均厚みtが、
d≧0.56t+8
を満たす、請求項14に記載の駆動方法。 - 前記非共振周波数は、前記最低共振周波数の0.7倍以下の周波数である、請求項14または請求項15に記載の駆動方法。
- 前記非共振周波数は、前記最低共振周波数の0.1倍以下の周波数である、請求項14または請求項15に記載の駆動方法。
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