JP2021093703A - 圧電memsデバイス、製造方法および駆動方法 - Google Patents

圧電memsデバイス、製造方法および駆動方法 Download PDF

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Abstract

【課題】量産に適した、信頼性の高い圧電MEMSデバイス、製造方法および駆動方法を提供する。【解決手段】圧電MEMSデバイス本体部1は、基板10を有する。基板10は、可動部12を有する。可動部12は、下部電極22、圧電膜24、上部電極の順に積層される。上部電極は、アクチュエータ用上部電極部26bと、センサ用上部電極部26aとを有する。圧電膜24は、アクチュエータ用上部電極部26bが設けられた部分と、センサ用上部電極部26aが設けられた部分とが連続している。アクチュエータ用上部電極部26bと、センサ用上部電極部26aとの平均電極間隔dμmと、可動部の平均厚みtμmとが、d≧0.33t+0.6を満たしている。アクチュエータ用上部電極部26bよって規定されるアクチュエータ用圧電部20bに、非共振周波数として、最低共振周波数の0.81倍以下の周波数の駆動信号を入力する駆動回路を備える。【選択図】図1

Description

本開示は、圧電微小電気機械システム(MEMS:Micro Electro Mechanical System)デバイス、製造方法および駆動方法に関する。
近年、圧電膜を成膜する技術の進展から、圧電膜を用いた圧電デバイスへ注目が集まっている。特に、シリコン(Si)の微細加工技術と組み合わせた圧電MEMSデバイスは注目を集めている。この種の圧電MEMSデバイスとして、例えば、圧電MEMSミラーを備えたマイクロスキャナは、小型かつ低消費電力であることが特徴であり、レーザープロジェクタから光干渉断層計のような光診断用スキャナなど、幅広い応用が期待されている。また、圧電ジャイロセンサは、静電型のジャイロセンサと比較し、低消費電力が期待されている。
圧電MEMSデバイスは、可動部を備えた基材の可動部上に下部電極、圧電膜および上部電極が積層されてなる圧電部を備える。圧電部は、上下電極間に電圧を印加することでアクチュエータとして機能する。あるいは、圧電部は、圧電膜に歪が生じることで上下電極間に生じる電圧を検出するセンサとして機能する。圧電MEMSデバイスには、1つもしくは複数の圧電部を備え、インクジェットヘッドのような圧電部をアクチュエータとしてのみ用いるデバイス、加速度ピックアップのように圧電部をセンサとしてのみ用いるデバイスもあるが、複数の圧電部の一部をセンサとして、他の一部をアクチュエータとして機能させるデバイスもある。この種の圧電MEMSデバイスとして、例えば、圧電ジャイロセンサは、アクチュエータでデバイスを駆動させながら、センサで力学的な変化を検出する(特許文献1〜3参照)。また、圧電MEMSミラーデバイスは、ミラーをアクチュエータで駆動させながら、センサでミラーの角度を検出する(特許文献4〜6参照)。
圧電部をアクチュエータとして用いる圧電MEMSデバイスにおいては、デバイスの共振周波数で駆動する共振駆動型のデバイスと、共振周波数から外れた周波数で駆動する非共振駆動型のデバイスがある。共振駆動型のデバイスでは、アクチュエータの駆動によりエネルギーはデバイス全体に蓄積されていき、デバイス全体が均一に動作する。エネルギーが蓄積されるので、少ないエネルギー(低い入力電圧)で大きな変位を得ることができる。そのため、例えば、特許文献1〜3等に開示のジャイロセンサの場合、一般的には、低い入力電圧で高い変位やセンサ信号が得られる共振周波数で駆動する。一方、例えば、特許文献4に示す圧電MEMSミラーでは、ラスタースキャン(Raster scan)方式において、主走査方向には高速搖動させる共振駆動し、副走査方向には低速搖動させる非共振駆動する。
特開2012−18174号公報 特開2010−181179号公報 国際公開第2009/041502号 特開2013−225075号公報 特開2016−148763号公報 特開2015−22064号公報
本発明者らは、上述のような低い周波数の非共振周波数で駆動する非共振駆動用のアクチュエータとセンサとを備えた非共振駆動型デバイスにおいて、センサをアクチュエータに近接させすぎた場合、デバイス可動部全体の振動状態を精度よく検出することができないおそれがあることを見出した。
非共振駆動型の場合、共振駆動型と異なりデバイス全体が均一に動かずアクチュエータ近辺が選択的に歪み易いので、デバイスの中でアクチュエータ近辺のみが特異的な動きをする。これに起因して、センサをアクチュエータに近接させすぎると、デバイス可動部全体が振動しているのか、アクチュエータ付近のみが振動しているのかを十分にセンシングすることができない場合が生じていると推定される。
アクチュエータとセンサの両者を備えたデバイスにおいては、センサ電圧をフィードバックさせてアクチュエータの駆動を行っていることが多い。そのため、デバイス可動部全体の振動状態を精度よく検出する必要がある。デバイス可動部全体の振動状態を精度よく検出できないと、例えばレーザーディスプレー用途のMEMSミラー等として使用する場合、画質が著しく落ちる懸念があり、デバイスとしての信頼性が低下する。圧電MEMSデバイスにおいては、小型化の観点からセンサとアクチュエータと近接して配置される傾向にあり、センサとアクチュエータとの距離について十分な検討がなされておらず、その指針は明確になっていない。
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであって、非共振駆動型のアクチュエータとセンサとを備えた圧電MEMSデバイスにおいて、信頼性の高い圧電MEMSデバイスおよび製造方法、並びに駆動方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1>
可動部を有する基板を備え、可動部上に、下部電極、圧電膜および上部電極がこの順に積層され、かつ、非共振周波数で駆動する非共振駆動型の圧電MEMSデバイスであって、
上部電極は、アクチュエータ用上部電極部と、アクチュエータ用上部電極部に非接触のセンサ用上部電極部とを有し、
圧電膜は、アクチュエータ用上部電極部が設けられた部分と、センサ用上部電極部が設けられた部分とが連続しており、
アクチュエータ用上部電極部と、センサ用上部電極部との平均電極間隔をdμmとし、可動部の平均厚みをtμmとした場合、dとtとが、
d≧0.33t+0.6
を満たし、
アクチュエータ用上部電極部によって規定されるアクチュエータ用圧電部に、非共振周波数として、最低共振周波数の0.81倍以下の周波数の駆動信号を入力するための駆動回路を備えた圧電MEMSデバイス。
<2>
平均電極間隔dおよび可動部の平均厚みtが、
d≧0.56t+8
を満たす、<1>に記載の圧電MEMSデバイス。
<3>
可動部の平均厚みが100μm以下である<1>または<2>に記載の圧電MEMSデバイス。
<4>
平均電極間隔が250μm以下である<1>から<3>のいずれかに記載の圧電MEMSデバイス。
<5>
圧電膜が10μm以下である<1>から<4>のいずれかに記載の圧電MEMSデバイス。
<6>
圧電膜が、鉛を含有するペロブスカイト型酸化物を主成分とする<1>から<5>のいずれかに記載の圧電MEMSデバイス。
<7>
基板は、シリコン基材である<1>から<6>のいずれかに記載の圧電MEMSデバイス。
<8>
基板は、可動部の一端が固定された固定部をさらに有し、可動部の他端が自由端となる、カンチレバー構造を有する<1>から<7>のいずれかに記載の圧電MEMSデバイス。
<9>
非共振周波数は、最低共振周波数の0.7倍以下の周波数である<1>から<8>のいずれかに記載の圧電MEMSデバイス。
<10>
非共振周波数は、最低共振周波数の0.1倍以下の周波数である、<1>から<8>のいずれかに記載の圧電MEMSデバイス。
<11>
可動部を有する基板を有し、可動部上に、下部電極、圧電膜および上部電極がこの順に積層され、かつ、非共振周波数で駆動する非共振駆動型の圧電MEMSデバイスであって、上部電極は、アクチュエータ用上部電極部と、アクチュエータ用上部電極部に非接触のセンサ用上部電極部とを有し、圧電膜は、アクチュエータ用上部電極部が設けられた部分と、センサ用上部電極部が設けられた部分とが連続している圧電MEMSデバイスの製造方法であって、
アクチュエータ用上部電極部とセンサ用上部電極部との平均電極間隔を、基板の可動部の平均厚みに応じて定める、圧電MEMSデバイスの製造方法。
<12>
平均電極間隔をdμmとし、可動部の平均厚みをtμmとした場合、dとtとが、
d≧0.33t+0.6
を満たす配置とする、<11>に記載の圧電MEMSデバイスの製造方法。
<13>
平均電極間隔dおよび可動部の平均厚みtが、
d≧0.56t+8
を満たす配置とする、<12>に記載の圧電MEMSデバイスの製造方法。
<14>
可動部を有する基板を備え、可動部上に、下部電極、圧電膜および上部電極がこの順に積層された圧電MEMSデバイスであって、
上部電極は、アクチュエータ用上部電極部と、アクチュエータ用上部電極部に非接触のセンサ用上部電極部とを有し、
圧電膜は、アクチュエータ用上部電極部が設けられた部分と、センサ用上部電極部が設けられた部分とが連続しており、
アクチュエータ用上部電極部と、センサ用上部電極部との平均電極間隔をdμmとし、可動部の平均厚みをtμmとした場合、dとtとが、
d≧0.33t+0.6
を満たす圧電MEMSデバイスに対し、
アクチュエータ用上部電極部によって規定されるアクチュエータ用圧電部に、圧電MEMSデバイスの最低共振周波数の0.81倍以下の周波数を有する非共振周波数の駆動信号を入力して非共振駆動する駆動方法。
<15>
圧電MEMSデバイスが、平均電極間隔dおよび可動部の平均厚みtが、
d≧0.56t+8
を満たす、<14>に記載の駆動方法。
<16>
非共振周波数は、最低共振周波数の0.7倍以下の周波数である、<14>または<15>に記載の駆動方法。
<17>
非共振周波数は、最低共振周波数の0.1倍以下の周波数である、<14>または<15>に記載の駆動方法。
高い信頼性を有する、非共振駆動型のアクチュエータとセンサとを備えた圧電MEMSデバイスを得ることができる。
圧電MEMSデバイスの一実施形態に係るカンチレバーの斜視図である。 図1に示すカンチレバーの側面図および平面図である。 バルク圧電体の逆圧電効果を説明するための図である。 バルク圧電体の正圧電効果を説明するための図である。 拘束されていない圧電膜に電圧を印加した場合の動作説明図である。 拘束された圧電膜に電圧を印加した場合に圧電膜に生じる応力を説明するための図である。 基板上に形成された圧電膜に電圧を印加した場合に圧電膜に生じる応力を説明するための図である。 圧電膜に引張応力が加えられた場合の圧電効果を説明するための図である。 圧電膜に圧縮応力が加えられた場合の圧電効果を説明するための図である。 可動部の変位状態を模式的に示す図である。 可動部の圧電膜に生じる応力を模式的に示す図である。 可動部の幅方向における応力分布を説明するための図である。 電極間隔を説明するための図である。 電極間隔を説明するための図である。 圧電MEMSデバイスの製造方法を説明するための図である。 圧電MEMSデバイスの他の実施形態に係るミラーデバイスの斜視図である。 図16に示すミラーデバイスの一部を拡大して示す図である。 参考例のカンチレバーの寸法を示す図である。 参考例のカンチレバーについての電極間隔とセンサ電圧との関係を示す図である。 試験例1A−1、1A−2のカンチレバーについての電極間隔とセンサ電圧との関係を示す図である。 図18の縦軸を拡大して示した図である。 試験例1Bのカンチレバーについての電極間隔とセンサ電圧との関係を示す図である。 試験例2のカンチレバーについての電極間隔とセンサ電圧との関係を示す図である。 試験例3のカンチレバーについての電極間隔とセンサ電圧との関係を示す図である。 カンチレバーの基板の可動部厚みtと電極間隔dとの関係を示す図である。
以下、図面を参照して本開示の圧電MEMSデバイスの実施形態を説明する。
「圧電MEMSデバイス」
図1は、本開示の実施形態に係る非共振駆動型の圧電MEMSデバイス100(図2参照)の本体部1を構成するカンチレバーの斜視図である。図2はカンチレバーの側面図および上部電極側から見た平面図を含む、圧電MEMSデバイス100の概略構成を示す図である。なお、視認容易のため、各層の膜厚やそれらの比率は、適宜変更して描いており、必ずしも実際の膜厚や比率を反映したものではない。以下の図面において同様とする。
圧電MEMSデバイス100の本体部1(以下において、デバイス本体部1という。)は、可動部12と可動部12の一端12aが固定される固定部14と有する基板10を備える。可動部12は固定部14との境界を固定端とし、他端12bが自由端とされた片持ち梁である。基板10の固定部14は、可動部12と比較して十分に厚く、可動部12の振動時にも振動による変位を生じない非可動部である。
デバイス本体部1は、可動部12上に、下部電極22、圧電膜24および上部電極26がこの順に積層されている。ここで、「下部」および「上部」は鉛直方向における上下を意味するものではなく、圧電膜を挟んで基板側に配置される電極を下部電極、圧電膜に関して基材と反対の側に配置される電極を上部電極と称しているに過ぎない。
下部電極22は基板10の全面に一様に備えられている。すなわち、可動部12から固定部14に亘って連続膜として備えられている。
圧電膜24はその外縁が下部電極22の外縁より内側となるように、下部電極22上に設けられている。圧電膜24は少なくとも可動部12上にあればよいが、本例のように固定部14側に亘って設けられていてもよい。圧電膜24は連続膜として備えられている。
上部電極26は、圧電膜24上にパターン形成されており、3つの矩形状の上部電極部26a、26b、26cが互いに離隔して並列配置されている。本例においては、3つの上部電極部26a、26b、26cのうち、中央の上部電極部26bがアクチュエータ用上部電極部であり、両脇の上部電極部26aおよび26cがセンサ用上部電極部である。以下において、3つの矩形状の上部電極部26a、26b、26cを区別する必要のある場合には、それぞれ、アクチュエータ用上部電極部26b、センサ用上部電極部26a、センサ用上部電極部26cという。
上記の通り、デバイス本体部1は、アクチュエータ用上部電極部26bと、アクチュエータ用上部電極部26bに非接触のセンサ用上部電極部26a、26cとを有する。そして、圧電膜24は、アクチュエータ用上部電極部26bが設けられた部分と、センサ用上部電極部26a、26cが設けられた部分とが連続している。
3つの矩形状の上部電極部26a、26b、26cによって、3つの圧電部20a、20b、20cが規定される。各圧電部20a、20b、20cは、下部電極22、圧電膜24、および各々上部電極部26a、26b、26cによって構成される。下部電極22および圧電膜24はそれぞれ、3つの圧電部20a、20b、20cに対して共通膜として備えられている。アクチュエータ用上部電極部26bを備えた圧電部20bがアクチュエータ用圧電部(以下において、アクチュエータ用圧電部20bという。)であり、センサ用上部電極部26a、26cを備えた圧電部20a、20cがセンサ用圧電部(以下においてセンサ用圧電部20a、20cという。)である。
駆動電圧が印加されることによってアクチュエータ用圧電部20bは可動部12を非共振周波数で振動させ、センサ用圧電部20a、20cは、可動部12の振動により圧電膜に生じる歪に応じたセンサ電圧を出力する。
本圧電MEMSデバイス100は、デバイス本体部1に加えてアクチュエータ用圧電部20bに非共振周波数の駆動信号を入力するための駆動回路32を含む回路基板30を備えている。図2に示すように、各圧電部20a、20b、20cは、それぞれ配線部27a、27b、27cおよび電極パッド28a、28b、28cを介して回路基板30に接続されている。アクチュエータ用圧電部20bは、駆動信号を入力するための駆動回路32と接続されている。また、センサ用圧電部20a、20cは、センサ電圧を取出すための検出回路34にそれぞれ接続されている。駆動回路32および検出回路34は回路基板30上に設けられている。各圧電部20a、20b、20cは、下部電極22に接続された電極パッド(図示しない)および、上部電極部26a、26b、26cに接続された電極パッド28a、28b、28cからそれぞれワイヤボンディングにより回路基板30に接続されている。回路基板30は、デバイス本体部1の基板10の一部に設けられていてもよいし、デバイス本体部1とは別体の基板であってもよい。なお、本明細書において、圧電MEMSデバイスが駆動回路を備えるとは、駆動回路を含む回路基板が可動部を備えた基板と一体的に備えられている場合および別体として備えられている場合を含むこととする。
駆動回路32はアクチュエータ用圧電部20bに対して、最低共振周波数fの0.81倍以下の非共振周波数の駆動信号(駆動電圧)を入力する。最低共振周波数とは、デバイス固有の複数の共振周波数のうち最も低い周波数である。共振周波数は、デバイスの各種寸法および材質から有限要素法を用いて算出することができる。算出方法についての詳細は後述する。圧電MEMSデバイスサイズにおける最低共振周波数は、例えば、数十kHzから数百kHzの周波数帯中の特定の周波数である。本開示の圧電MEMSデバイスにおいては、非共振周波数として、最低共振周波数fの0.7倍以下の周波数を用いることが好ましく、最低共振周波数fの0.3倍以下の周波数とすることがより好ましく、最低共振周波数fの0.1倍以下の周波数とすることが特に好ましい。また、非共振駆動には直流駆動を含むこととする。なお、一般的な共振周波数で駆動させる場合の駆動回路は、駆動時に生じる共振周波数のピークシフトに追随し、常に共振周波数で駆動できるように構成されている。これに対して、本開示の圧電MEMSデバイスにおいて、非共振駆動用に備えられる駆動回路32は、予め求められた、デバイスの最低共振周波数の0.81倍以下の予め定めた特定の周波数fの駆動信号を圧電MEMSデバイスに入力するように構成されたものであり、共振駆動用の駆動回路とは異なる。
ここで、本開示の技術における非共振周波数を最低共振周波数fの0.81倍以下に定めた理由について説明する。
デバイスの可動部に対して外部からYの振幅で振動を与えた場合の変位量をXとした場合、共振の影響が全くない完全な非共振の状態ではX/Y=1となる。そして、可動部の振動に共振の影響が加わることにより、X/Y>1となる。
y=Ysinωtの振動が与えられた場合の変位量Xは、デバイスの減衰率をζとしたとき、下記式(I)で表される。
Figure 2021093703
(I)
ω1=2πf1、ω=2πf
1は最低共振周波数でありfは駆動周波数である。
減衰率ζは圧電MEMSデバイスにおける空気抵抗等のダンパー項である。一般的に、ダンパー項は、空気抵抗、すなわち、空気中であるか真空であるか、デバイスを接着剤等で止めている場合はその接着部分が完全に拘束されているかどうか、材料そのものの弾性挙動が線形で応答しない等のエネルギーロス等に依存する項である。
他方、一般的な圧電MEMSデバイスの品質係数Q値は、可動部変位量Xの周波数依存性から求められる値である。横軸を角周波数(ω=2πf)、縦軸を可動部変位量Xとした場合、可動部変位量Xは、共振周波数の低周波数側から共振角周波数に向かって徐々に大きくなり、共振角周波数でピークとなり、共振周波数を超えて周波数が高くなるにつれて徐々に小さくなるグラフで表される。このようなグラフにおいて、最大変位量の1/√2倍の変位量となる2つの周波数間の幅をΔωとしたとき、Q値は、Q=ω/Δωと定義される。すなわち、Q値が高いデバイスでは、変位量特性は、共振周波数で鋭いピークを示す。逆にQ値が低いデバイスでは、変位量特性は共振周波数でなだらかなピークを示す。
一般的なMEMSデバイスにおけるQ値は10〜1000程度であり、その範囲ではQ値と減衰率ζとの関係を、Q=1/(2ζ)と表すことができる。
すなわち、(I)式はQ値を用いて、
Figure 2021093703
(II)

と表すことができる。
式(II)を用いて、デバイスのQ値が10である場合、100である場合、1000である場合について、駆動周波数fにおける変位量Xを求めた。その結果、最低共振周波数fの近傍では、デバイスのQ値によって変位量Xが大きく異なる一方で、最低共振周波数fの0.81倍以下の周波数で駆動すれば、Q値にかかわらず、ほぼ同じ挙動を示し、外部から与える振動の振幅Yに対する変位量Xの比X/Yは3未満であった。Q値に依存せず、ほぼ同じ挙動を示しているということは、共振による影響がほとんどなく、非共振的な要素が支配的であることを意味する。そこで、本明細書においては、Q値にかかわらずほぼ同じ挙動を示す、最低共振周波数fの0.81倍以下の周波数を非共振周波数として取り扱うこととした。
また、変位量Xが完全な非共振の場合の変位量に対して2倍未満となる周波数は0.7f以下であり、変位量Xが完全な非共振の場合の変位量に対して1.1倍未満となる周波数は0.3f以下である。また、変位量Xが完全な非共振の場合の変位量に対して1.01倍未満となる周波数は0.1f以下である。最低共振周波数fの0.1倍であるような非常に低い周波数においては、共振の周波数による変位量は全体の変位量の1%に満たず、ほぼ完全な非共振とみなすことができる。なお、共振を伴わない完全な非共振の状態に近いほど、アクチュエータ近辺のみでの特異的な動作が顕著であることから、後述する本開示の技術による効果は高い。
本開示の圧電MEMSデバイスの駆動方法の一実施形態は、例えば、上記圧電MEMSデバイス本体部1に対して、最低共振周波数fの0.81倍以下の非共振周波数の駆動信号を入力して非共振駆動する駆動方法である。なお、駆動信号は、最低共振周波数fの0.7倍以下とすることが好ましく、最低共振周波数fの0.3倍以下とすることがより好ましく、最低共振周波数fの0.1倍以下とすることがさらに好ましい。
本デバイス本体部1はアクチュエータ用圧電部20bに非共振周波数の駆動電圧が印加されることで、圧電膜24が面内方向に収縮し、この圧電膜24の収縮によって歪を生じ、可動部12が駆動電圧の周波数に応じて振動する。そしてこの振動によってセンサ用圧電部20a、20cの圧電膜24に歪が生じ、この歪によってセンサ用圧電部20a、20cの圧電膜24に生じる電圧をセンサ用圧電部20a、20cに接続された検出回路34によってセンサ電圧として検出する。このセンサ電圧は可動部12の変位量に対応するので、このセンサ電圧に応じて駆動電圧の振幅を制御するフィードバック制御を行うことで、デバイス本体部1の可動部12を所望の変位量で振動させることができる。
本開示の圧電MEMSデバイスは非共振周波数で駆動する非共振駆動型の圧電MEMSデバイスである。
既述の通り、駆動回路32は、最低共振周波数の0.81倍以下、好ましくは0.7倍以下、より好ましくは0.3倍以下、さらに好ましくは0.1倍以下の低い周波数の駆動信号をアクチュエータ用圧電部20bに加える。なお、1つのデバイス中に複数のアクチュエータ用圧電部を備えている場合には、そのうちの少なくとも1つのアクチュエータ用圧電部に対して非共振周波数の駆動信号を与えるように構成されていればよい。他のアクチュエータ用圧電部に対しては共振周波数の駆動信号を与える共振駆動用の駆動回路をさらに備えていればよい。すなわち、本開示の非共振駆動型の圧電MEMSデバイスは、複数のアクチュエータ用圧電部を備える場合には、例えば、圧電MEMSミラーのように共振駆動型のアクチュエータと非共振駆動型のアクチュエータとを組み合わせたデバイスを含む。
デバイス本体部1において、アクチュエータ用上部電極部26bと、センサ用上部電極部26a、26cとは以下の関係で配置されている。
アクチュエータ用上部電極部26bと、センサ用上部電極部26aとの電極間隔をd1μmとし、可動部12の厚みをtμmとした場合、d1とtとが、
d1≧0.33t+0.6を満たす。
なお、
d1≧0.56t+8
を満たすことが好ましい。
同様に、アクチュエータ用上部電極部26bと、センサ用上部電極部26cの電極間隔をd2μmとした場合、
d2≧0.33t+0.6を満たす。
なお、
d2≧0.56t+8
を満たすことが好ましい。
すなわち、本開示の圧電MEMSデバイス100は、可動部を有する基板を備えたデバイス本体部1を有し、可動部上に、下部電極、圧電膜および上部電極がこの順に積層され、かつ、非共振周波数で駆動する非共振駆動型の圧電MEMSデバイスであって、上部電極は、アクチュエータ用上部電極部と、アクチュエータ用上部電極部に非接触のセンサ用上部電極部とを有し、圧電膜は、アクチュエータ用上部電極部が設けられた部分と、センサ用上部電極部が設けられた部分とが連続している。そして、アクチュエータ用上部電極部と、センサ用上部電極部との平均電極間隔をdμmとし、可動部の平均厚みをtμmとした場合、dとtとが、
d≧0.33t+0.6 (1)
を満たし、
さらには、
d≧0.56t+8 (2)
を満たすことが好ましい。
本実施形態において、電極間隔d1とd2とは、上記関係式を満たせば、同一でもよいし、異なっていてもよい。
可動部12の平均厚みtは100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。可動部12の平均厚みが厚くなるほど可動部12の変位は小さくなるが、100μm以下、好ましくは50μm以下であれば、十分な可動部12の変位を得ることができる。また、可動部の平均厚みtは、良好なデバイスの実現のため、圧電膜の厚みと同程度以上であることが好ましい。可動部(振動板)の厚みに対して圧電膜の厚みが厚い場合、圧電膜は面内方向のみに振動する事となり、デバイスとしての機能が十分得られない場合があるからである。
可動部12の平均厚みtは、可動部12全域の各位置における厚みを積分して可動部12の面積で平均化させた値とする。
デバイス本体部1は、カンチレバー構造を有し、可動部12は固定端12aから自由端12bまでの領域であり、可動部12の厚みは均一である。この場合、可動部12の厚みは可動部12の平均厚みと同義である。
本例の場合、可動部12は全域に亘って均一な厚みを有し、非可動部(固定部14)とは厚みが十分に異なり、非可動部は駆動時においても変位しないため、可動部12と非可動部の境界は明確である。一方、本開示の技術においては、基板10の全域に亘って厚みに勾配がある、あるいは厚みに段差があるなどのために、可動部と非可動部との境界が不明瞭であってもよい。そのような場合には、圧電MEMSデバイスにおける可動部は、アクチュエータ用圧電部に対して電圧を印加して駆動した際に、最大変位となる点の変位振幅に対し、1/1000以上の振幅で変位する範囲と定義する。
既述の通り、本デバイス100は、共振周波数で駆動するものではなく、非共振周波数で駆動するアクチュエータ用圧電部を含む。アクチュエータ用上部電極部とセンサ用上部電極部との電極間隔dが可動部12の平均厚みtと上記関係式(1)を満たすことで、可動部全体の振動状態に対応した精度のよいセンサ電圧を得ることができ、このセンサ電圧をフィードバック信号として用いた場合に、デバイス動作に支障を生じさせず、所望のデバイス動作を生じさせることができる。すなわち、本デバイス100は、デバイスとして高い信頼性を備える。また、アクチュエータ用上部電極部とセンサ用上部電極部との電極間隔dが可動部12の平均厚みtと上記関係式(2)を満たす場合には、電極間隔dが±1μm程度変化した場合におけるセンサ電圧の変化を十分に抑制することができ、デバイスとして高い信頼性を得ると共に、量産性に優れたデバイスとすることができる。
以下に、発明者らが推測する、非共振駆動型の圧電MEMSデバイスにおける上記センサの精度低下の発生原理および、本開示の技術によるセンサ精度低下の抑制効果について順を追って説明する。
0)一般論としての基板拘束のないフリーのバルク状圧電体の逆圧電効果(アクチュエータ動作)
まず、一般論として、基板拘束のないフリーのバルク状圧電体のアクチュエータ動作は以下の通りである。基板拘束のないフリーの圧電体とは、図3、図4等に示すように、基板を備えず、圧電体124が下部電極122および上部電極126に挟まれた場合をいう。ここで、圧電体124は下部電極122側が負、上部電極126側が正となるように分極処理が施されている。図3、4において、自発分極の向きを−(マイナス)から+(プラス)に向かう矢印で示している。図3に示すように、圧電体124に上部電極126側が正となる電圧が印加された場合、分極の負電荷が正電圧に引っ張られ、正電荷が負電圧に引っ張られ、結果として実線で示すように圧電体124がz軸方向に矢印130で示す向きに縮む。ここで、圧電体124は体積を維持しようとするので、z軸方向に縮むとz軸方向に垂直な面内方向には矢印131の向きに伸びる。一方、図4に示すように、圧電体124に上部電極側が負となる電圧が印加された場合、分極の負電荷が正電圧に引っ張られ、正電荷が負電圧に引っ張られ、結果として実線で示すように圧電体124がz軸方向に矢印132で示す向きに伸び、面内方向には矢印134で示す向きに縮む。
1)薄膜状圧電体(圧電膜)の逆圧電効果(アクチュエータ動作)
(1−1)圧電膜の伸縮がフリーである場合
一端124aが固定端、他端124bは自由端である薄膜状の圧電体124(以下において、圧電膜124とする。)のアクチュエータ動作について説明する(図5参照)。ここでは、上向き方向の分極を有する圧電膜124に対して、上部電極126が正電位となるように、例えば、1Vの電圧を印加する。図5に示すように、基板がなく、圧電膜124全体に電圧をかけるケースを考える。上部電極126と下部電極122は圧電膜124に対して無視できる程度の厚みであり、圧電材料の動きを拘束しない。すなわち、圧電膜124はフリーな状態にある。ここで、圧電膜124は、z軸方向(厚み)は薄く、x軸方向(幅)は短くy軸方向(長さ)は幅に対して十分に長いこととする。この場合、電圧を印加すると圧電膜124は、黒矢印135で示す長手方向(y軸方向)に伸びるとシンプルに考えて良い。圧電膜124がフリーな状態にある場合、電圧の印加に応じて圧電膜124は自由に伸びるので、圧電材料内部では応力はほとんど発生していない。
(1−2)圧電膜が完全に拘束されている場合
次に、図6に示すように圧電膜124の両端124a、124bが固定された完全拘束状態の場合について考える。圧電膜124、下部電極122および上部電極126自体は図5に示すものと同一とする。この場合、上記と同様に圧電膜124に対して、上部電極126が正電位となるように、例えば1Vの電圧を印加すると、圧電膜124はその長手方向(y軸方向)に伸びようとするが、両端124a、124bが固定されて拘束されているため伸びることができない。そのため、圧電膜124には白抜き矢印136で示す圧縮応力がかかる。
2)基板によって拘束された圧電膜の逆圧電効果(アクチュエータ動作)
図7に示すように、基板110上に、下部電極122、圧電膜124および上部電極126が積層された、上記本開示の実施形態の可動部と同様の構成の場合について説明する。基板110上に備えられた圧電膜124に対して、図5と同様に、上部電極126が正電位となるように、1Vの電圧を印加すると、圧電膜124は図中黒矢印137(=長手方向(y軸方向))に伸びようとする。しかし、基板110は伸びないために、結果として、z軸のマイナス方向に向かってたわむことになる。圧電膜124にとっては、上記(1−1)のフリーの場合と(1−2)の完全拘束状態の場合との中間の状態となっている。圧電膜124は伸びようとしているが基板110によって拘束されているので、圧電膜124は白矢印138で示す圧縮応力を受けることとなっている。
3)圧電膜に外力が加えられた場合の正圧電効果(センサ動作)
次に、圧電膜に対して外力が加えられた場合の動作、すなわちセンサとして機能する場合について説明する。
図8に示すように、圧電膜124に対して長手方向に矢印140で示す引張応力をかけると、圧電膜124は破線で示すように長手方向に伸びる。この場合、圧電膜124には元に戻そうとする方向に電圧が発生するので、縮もうとする方向の電圧、すなわち負電圧が発生する。
逆に、図9に示すように、圧電膜124に対して長手方向に矢印141で示す圧縮応力をかけると、圧電膜124は破線で示すように長手方向に縮まる。この場合も、圧電膜124には元に戻そうとする方向に電圧が発生するので、伸びようとする方向の電圧、すなわち正電圧が発生する。
4)本実施形態のカンチレバーにおけるアクチュエータ動作およびセンサ動作
図1に示したカンチレバー構造のデバイス本体部1において、中央に配置されているアクチュエータ用上部電極部26bに1Vを印加した場合、図7の場合と同様に可動部は−z方向にたわむことになる。
すなわち、アクチュエータ用上部電極部26b付近の圧電膜24は伸びようとしているが基板10によって拘束されているため、圧電膜24には圧縮応力がかかる。
一方で、圧電膜24の電界がかかっていない部分は、アクチュエータ用圧電部20bによる可動部の動きにつられて動いているだけである。すなわち、圧電膜24のアクチュエータ用上部電極部26bに対応する部分以外の部分は引張応力をうけ、結果として圧電膜24が伸びている。
図10は、上記のようにアクチュエータ用上部電極部26b(図1および図2参照)に正電圧を加えた場合のカンチレバーの可動部12の変位を模式的に示す図であり、図11は可動部12に生じる応力を模式的に示す図である。図10において変位の大きい領域ほど高い濃度で示されている。
図10に示すように、可動部12は固定端12aから長手方向に同一の距離の部分は同一の変位を示し、全体として一体的に変位しているように見える。しかし、実際には、図11に示すように、駆動電圧が印加されていない長手方向に沿った両サイドのセンサ用上部電極部26a、26cは引張応力(図中、黒矢印で示されている。)を受け、アクチュエータ用上部電極部26bを備えた中央部(駆動部)は圧縮応力(図中、白抜き矢印で示されている。)を受けている。図12は、可動部12の幅方向(x軸方向)において圧電膜24に生じる応力を模式的に示す。
図12に示すように、幅方向において中心に圧縮応力が生じ、外側に向かって引張応力に変化している。この際、図12において引張応力が優勢な領域では負電圧、圧縮応力が優勢な領域では正電圧が検出されることになる。アクチュエータ用上部電極部とセンサ用上部電極部との間隔が非常に近接している場合、圧縮応力が優勢な領域でセンサ電圧を検出することになる。そのため、アクチュエータ用圧電部に生じる特異的な動作の影響が大きくなり、可動部12全体の振動状態を適切に検出できていない恐れがあると本発明者らは推測している。一方、引張応力が優勢な負電圧を検出できる領域でセンシングすることにより、可動部全体としての振動状態を適切に検出することができると考えられる。
本発明者らの検討によれば、可動部を駆動するためのアクチュエータ用上部電極部と、センサ用上部電極部との平均電極間隔dμm、および可動部の平均厚みtμmの関係が、
d≧0.33t+0.6 (1)
を満たす配置となっていれば、センサ用圧電部は、アクチュエータ用圧電部に生じる圧縮応力の影響が少なく引張応力が優勢な位置でセンサ電圧を検出することができる(後記の試験例参照)。そのため、可動部全体の振動状態をセンシングすることができ、センサ電圧を用いたフィードバック制御を行った駆動電圧の印加制御は精度よくなされる。
また、圧縮応力が生じている中心と引張応力が生じている部分との間には応力の変化が急峻な領域が存在する。この領域では幅方向の位置が少しずれただけで応力が大きく変化することになる。他方、中心から十分離れるにつれて引張応力による影響が大きくなってきて、応力の変化は一定となってくるため、幅方向の位置が少しずれたとしても応力はほとんど変化しない。
デバイスの量産の際には、その製造誤差によって個体ごとにセンサ用電極の位置にわずかなずれが生じる場合があるために、個体間でセンサ電圧が大きく異なってしまう可能性がある。センサ電圧が個々のデバイス毎で異なる場合、正確なフィードバック制御を行うには、個々のデバイス毎に駆動電圧に対する補正係数およびセンサ電圧に対する補正係数を計測する必要があるため、量産デバイスとしては生産性を十分に高めることは難しい。
本発明者らの検討によれば、可動部を駆動するためのアクチュエータ用上部電極部と、センサ用上部電極部との平均電極間隔dμm、および可動部の平均厚みtμmの関係が、
d≧0.56t+8 (2)
を満たす配置となっていれば、一般的なMEMSデバイスの公差である±1μm程度の範囲で、電極間隔が変化してもセンサ電圧は大きく変化しない。そのため、可動部全体の振動状態を精度よくセンシングすることができると同時に、量産に適した圧電MEMSデバイスを得ることができる。
上記においては、上向き分極した圧電膜に対して正電圧を印加する場合を例として説明しているが、上向き分極した圧電膜に負電圧を印加する場合、あるいは下向き分極した圧電膜を用いた場合等であっても、各々応力の向きが逆になるだけで、アクチュエータ用上部電極部にかかる応力およびその影響は同様である。
なお、基板厚が厚いほど拘束力が強くなるため、駆動時にアクチュエータ用圧電部の圧電膜にかかる圧縮応力および引張応力は強くなり、これらの応力の影響を受ける範囲が広がる。したがって、基板厚が厚い場合には、アクチュエータ用圧電部の圧電膜に係る応力の影響を受けないように、平均電極間隔dを大きくすることが望ましい。また、基板のヤング率が大きくなる(硬くなる)と、より拘束力が強くなる。そのため、基板厚が同じ厚みでヤング率がより大きい基板を用いる場合、より平均電極間隔dを大きくすることが望ましい。また、センサ用上部電極部の幅が相対的に小さくなり、アクチュエータ用上部電極部との平均電極間隔dよりも離れた領域が減ると、相対的にセンサ用圧電部で圧縮応力を受ける領域の割合が増える。このため、センサ用上部電極部の幅が小さくなるほど、平均電極間隔dを大きくすることが望ましい。
また、平均電極間隔dは250μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。
センサ用上部電極部がアクチュエータ用上部電極部から大きく離れてしまうと、非共振駆動型のデバイスの場合は十分な歪が出ないことがあり、センサ電圧のS/Nが低下する。このようなセンサ電圧のS/Nの低下をカバーするには、増幅回路等が必要になり、デバイスのサイズが大きくなる。ここで、電極間隔dが250μm以下であれば、センサ電圧のS/Nの低下を抑制することができるので、デバイスサイズの増加を抑制することができる。なお、電極間隔dを100μm以下とすることで、デバイスサイズの増加の抑制効果をより高めることができる。
なお、可動部の厚みtが厚いほど駆動時に生じる圧電歪が小さくなるため、センサ電圧も小さくなる。非共振駆動型デバイスでは、可動部の厚みtが厚い場合、可動部であってもアクチュエータから離れた領域における歪が非常に小さくなりセンサ電圧が得られなくなることがある。しかし、可動部の厚みtが厚い場合であっても、電極間隔dを250μm以下に抑えることでセンサ電圧を確実に検出可能とすることができる。また、可動部の厚みtが薄いほど歪にねじれ等が生じ易くなるため、電極間隔dが離れてしまうとデバイスごとの再現性が得られにくい。しかし、可動部の厚みtが薄い場合であっても、電極間隔dを250μm以下に抑えることでデバイス間の再現性を十分確保することができる。
また、電極間隔dは上部電極のパターニング精度の観点から0.5μmより大きいことが好ましい。
上記実施形態の場合は、矩形の上部電極部26a、26b、26cが平行に配列されているため、隣接する電極同士の電極間隔dは両者の最短距離で定義することができる。上記実施形態の場合には、電極間隔が一定であるため、電極間隔=平均電極間隔である。
しかし、上部電極26の形状や配置は上記実施形態の構成に限らず、図13、図14に示すように、アクチュエータ用上部電極部50とセンサ用上部電極部52との電極間隔が近い部分、遠い部分を含む場合がある。そこで、隣接して配置されるアクチュエータ用上部電極部50とセンサ用上部電極部52との平均電極間隔dは、以下のように求めることとする。
まず、基板60の可動部62におけるアクチュエータ用上部電極部50との間隔を定めるためのセンサ用上部電極部52の外縁領域を定める。この場合、それぞれのアクチュエータ用上部電極部50、センサ用上部電極部52に接続されている配線51、53が可動部62上にある場合には、配線51、53のうち可動部62上に位置する部分はアクチュエータ用上部電極部50あるいはセンサ用上部電極部52の一部と看做す。なお、各アクチュエータ用上部電極部50およびセンサ用上部電極部52の各々が基板60の非可動部64まで延在する場合であっても、両者の電極間隔は、可動部62の領域に存在する部分のみを対象とする。さらに、可動部62上に備えられている場合であっても、下部電極と上部電極に挟まれた積層部分の誘電率が、圧電膜単独の誘電率の1/2以上の誘電率となる領域の上部電極のみを対象とする。例えば、図14に示すように可動部62に配線取り回し部63が設けられている場合、配線取り回し部63には圧電膜との間に低誘電率の絶縁膜70を備えている場合がある。このような低誘電率の絶縁膜70上に配線51、53が形成されている場合には、その配線51、53はアクチュエータやセンサとして機能しない部分となるので、この部分を除くためである。
センサ用上部電極部52の外縁52aの各点からアクチュエータ用上部電極部50の外縁50aに向かって、センサ用上部電極部52とアクチュエータ用上部電極部50とが最短距離となる直線を引く。この際、図13に示すように、センサ用上部電極部52の外縁52aの任意の点とアクチュエータ用上部電極部50の外縁50aとを最短距離で結ぶ直線のうち、一点鎖線で示すようなセンサ用上部電極部52内を通る外縁領域は平均電極間隔の算出対象から除く。図13、図14において、センサ用上部電極部52の外縁52aのうちアクチュエータ用上部電極部50にセンサ用上部電極部52内部を通過することなく最短の直線を引くことができる領域のみを対象領域とする。センサ用上部電極部52の外縁52aの対象領域(図中太線で示す外縁領域)の各箇所からアクチュエータ用上部電極部50の外縁50aまでの直線の長さdnを積分して、対象領域で平均化して平均電極間隔dを算出する。
すなわち、平均電極間隔d=∫d(n)dn/∫dn
とする。
アクチュエータ用上部電極部とセンサ用上部電極部との電極間隔が一定でない場合には、上記のように平均電極間隔dを定義する。
圧電MEMSデバイスに用いられる基板は、例えば、シリコン基板である。ここで、シリコン基板としては、各種シリコンウエハを用いることができる。なお、ここでシリコンウエハの概念には、SOI(Silicon−On−Insulator)基板などの一部にSiO層を備えたウエハを含む。なお、一般に市販されているシリコン基板と同等のヤング率を有する基板を適宜用いることも可能である。
下部電極22および上部電極26の厚みに特に制限はないが、50nm以上300nm以下が好ましく、例えば200nm程度である。圧電膜24の厚みは1μm以上、10μm以下が好ましく、例えば、1μm以上、5μm以下である。
下部電極22、上部電極26および圧電膜24の成膜方法は、特に限定されないが、気相成長法であることが好ましく、特にはスパッタ法によって成膜することが好ましい。
下部電極22、上部電極26および圧電膜24は公知の材料を適宜用いることができる。
圧電膜24としては、例えば、下記式で表される1種または2種以上のペロブスカイト型酸化物(P)を含むものが挙げられる。
一般式A (P)
(式中、A:Aサイトの元素であり、Pb、Ba、La、Sr、Bi、Li、Na、Ca、Cd、Mg、およびKからなる群より選ばれた少なとも1種の元素、
B:Bサイトの元素であり、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Sb、Cr、Mo、W、Mn、Sc、Co、Cu、In、Sn、Ga、Zn、Cd、Fe、およびNiからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素。
O:酸素原子。
a:b:c=1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)
圧電膜24は、特には、鉛を含有するペロブスカイト型酸化物を主成分とするものであることが好ましい。ここで、主成分とは、構成成分のうちの80mol%以上を示す成分を意味する。
鉛を含有するペロブスカイト型酸化物としては、例えば、下記式で表される1種または2種以上のペロブスカイト型酸化物(PX)が挙げられる。
(Zr、Ti、Mb−x−y (PX)
(式中、A:Aサイトの元素であり、Pbを含む少なくとも1種の元素。Mは、V、Nb、Ta、およびSbからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素である。
0<x<b、0<y<b、0≦b−x−y、a:b:c=1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)
上記一般式(PX)で示されるペロブスカイト型酸化物は、大きな誘電率を有するため、好ましい。
上述の一般式(P)および(PX)で表されるペロブスカイト型酸化物からなる圧電膜は、高い圧電歪定数(d31定数)を有するため、かかる圧電膜を備えた圧電アクチュエータは、変位特性の優れたものとなる。なお、一般式(PX)で表されるペロブスカイト型酸化物の方が一般式(P)で表されるものよりも圧電定数が高く、より好ましい。
また、一般式(P)および(PX)で表されるペロブスカイト型酸化物からなる圧電膜を備えた圧電アクチュエータは、駆動電圧範囲において、リニアリティの優れた電圧―変位特性を有している。これらの圧電材料は、本発明を実施する上で良好な圧電特性を示すものである。
上記においては、圧電MEMSデバイスとしてカンチレバーを例に説明したが、カンチレバーに限るものではない。圧電MEMSデバイスとしては、両持ち梁、ダイアフラム構造等の可動部を有するものであってもよい。また、圧電MEMSデバイスはミラーデバイスのように軸中心に搖動する可動部を備えるもの、オートフォーカスデバイスなどであってもよく、非共振で駆動するアクチュエータ部とセンサ部を同時に備えるものであれば、特に制限はない。
なお、MEMSデバイスとは、半導体のシリコン基板等に、機械要素部品のセンサ、アクチュエータおよび/または電子回路などをひとまとめにしたミクロンレベル構造を持つデバイスをいい、圧電MEMSデバイスとは、そのセンサ、あるいはアクチュエータに圧電方式を適用したデバイスである。
圧電MEMSデバイスのサイズとしては、例えば、長さ、幅および厚みのそれぞれが10mm程度以下のものが一般的であるが、本開示の技術においては、これよりも小さい構造でも大きい構造でもよく、特に制限されるものではない。また、可動部の厚みについても、5μm〜0.2mm程度が一般的であるが、作製できる範囲であればよく、特に制限されるものではない。
「圧電MEMSデバイスの製造方法」
可動部を有する基板を有し、可動部上に、下部電極、圧電膜および上部電極がこの順に積層され、かつ、非共振周波数で駆動する非共振駆動型の圧電MEMSデバイスであって、上部電極は、アクチュエータ用上部電極部と、アクチュエータ用上部電極部に非接触のセンサ用上部電極部とを有し、圧電膜は、アクチュエータ用上部電極部が設けられた部分と、センサ用上部電極部が設けられた部分とが連続している圧電MEMSデバイスの製造に当たっては、アクチュエータ用上部電極部とセンサ用上部電極部の電極間隔を、基板の可動部の平均厚みに応じて定める。可動部の平均厚みに応じて電極間隔を定めることによって、量産に適する、信頼性の高い圧電MEMSデバイスを設計し、製造することができる。
具体的には、アクチュエータ用上部電極部と、センサ用上部電極部との平均電極間隔をdμmとし、可動部の平均厚みをtμmとした場合、dとtとが、
d≧0.33t+0.6 (1)
を満たす配置となるように設計することが好ましい。
また、
d≧0.56t+8 (2)
を満たす配置とするように設計することがより好ましい。
既述の通り、上記式(1)を満たす場合には、アクチュエータ圧電部に生じる応力とは逆の応力が優勢な領域でセンシングすることができるので、可動部全体の振動状態をより正確に検出することができ、フィードバック制御において信頼性の高い駆動動作を実現できる。
また、平均電極間隔dと可動部の平均厚みtとが上記関係(2)を満たす場合には、量産時において、製造誤差による上部電極部の間隔の配置にずれがあっても、個体間でのセンサ電圧の強度差を1%未満に抑制することができる。そのため、全ての個体に対して個々に補正係数を求める必要がなく、量産に適する。個々の補正係数を求めることなく、各デバイスは、代表値の補正係数によるフィードバック制御で十分な信頼性のある駆動動作を実現できる。
図1、2に示したデバイス本体部1の製造工程を、図15を参照して説明する。
まず、構造体を構成する基板10を用意し、基板10の表面に下部電極22をスパッタ法により成膜する(S1)。
次に、下部電極22上に圧電膜24を、スパッタ法により成膜し、さらに、圧電膜24上に上部電極26を成膜する(S2)。
その後、リソグラフィーおよびエッチングにより上部電極26をパターン化して、3つの上部電極部26a、26b、26cを形成する(S3)。なお、この際、電極用配線および電極パッド等を同時に形成してもよい。パターン化において、それぞれの上部電極部と、隣接する上部電極部との間隔dμm、および可動部の平均厚みtμmとが、上記式(1)を満たす、好ましくは(2)を満たすように上部電極26をパターン化する。
以上の工程によって、上記のデバイス本体部1を備えた圧電MEMSデバイス100を製造することができる。
本開示の技術は、上記実施形態において説明したカンチレバーに限らず、連続した一枚の可動部上にアクチュエータ用圧電部とセンサ用圧電部とを同時に備えた圧電MEMSデバイス全般に適用することができる。
「他の実施形態に係る圧電MEMSデバイス」
本開示の他の実施形態に係る圧電MEMSデバイスとしてのミラーデバイスのデバイス本体部201を図16に示す。ミラーデバイスにおいてもデバイス本体部201に加えて駆動回路を備えるが、図16においては図示を省略している。
ミラーデバイスのデバイス本体部201は、ミラー部212と、ミラー部212を第1軸a1の周りに傾き振動(すなわち搖動)させる第1可動部214と、ミラー部212を第2軸a2の周りに搖動させる1対の第2可動部216A、216Bとを備えている。第1可動部214はミラー部212を囲むように環状の形状を有しトーションバーを介してミラー部212と接続されている。1対の第2可動部216A、216Bは、第1可動部214を挟んで対称に配置されている。第2可動部216A、216Bはそれぞれミアンダ構造を有し、それぞれの一端が第1可動部214を囲む枠部材210を介して第1可動部214と接続されている。また、第2可動部216A、216Bのそれぞれの他の一端は、外周に備えられる、図示しない固定枠に固定されている。第1可動部214、枠部材210、第2可動部216A、216Bおよび固定枠が、本開示の技術における基板を構成する。
第1可動部214は、環状に沿って順に配置された4つのアクチュエータ用圧電部214A〜214Dを有し、第2軸a2上にセンサ用圧電部215A、215Bを備えている。
第2可動部216A、216Bは、それぞれ複数の矩形板状部が連結部を介して折り返すように並べられたミアンダ構造を有する。一方の第2可動部216Aの各矩形板状部にはアクチュエータ用圧電部220a〜220dが備えられている。また、第2可動部216Aの一端にはセンサ用圧電部220eが備えられている。他方の第2可動部216Bの各矩形板状部にはアクチュエータ用圧電部221a〜221dが備えられている。また、第2可動部216Bの一端にはセンサ用圧電部221eが備えられている。
各圧電部214A〜214D、215A、215B、220a〜220e、221a〜221eは、それぞれ、下部電極、圧電膜224および上部電極226がこの順に積層されてなる。図16中において、圧電膜224は斜線で示されており、上部電極226はドットで示されている。圧電膜224は下部電極上に設けられている。
第1可動部214は、共振周波数の駆動電圧が入力された第1アクチュエータ用圧電部214A〜214Dの作用により、ミラー部212を第1軸a1周りに共振モードで傾き振動させる。第1センサ用圧電部215Aおよび第2センサ用圧電部215Bは、第1可動部214の変位に伴い圧電膜に生じる歪に応じたセンサ電圧を検出する。このセンサ用圧電部215A、215Bが検出したセンサ電圧はアクチュエータ用圧電部214A〜214Dに与えられる駆動信号のフィードバック制御に用いられる。
第2可動部216A、216Bは、非共振周波数の駆動電圧が入力されたアクチュエータ用圧電部220a〜220d、221a〜221dの作用により、ミラー部212を第2軸a2周りに非共振モードで傾き振動させる。センサ用圧電部220eは、第2可動部216Aの変位に伴って生じる歪に応じたセンサ電圧を検出する。センサ用圧電部221eは、第2可動部216Bの変位に伴って生じる歪に応じたセンサ電圧を検出する。これらのセンサ電圧はアクチュエータ用圧電部220a〜220dおよび221a〜221dに与えられる駆動信号のフィードバック制御に用いられる。
すなわち、本実施形態のミラーデバイスは、共振駆動用のアクチュエータ用圧電部214A〜214Dと、非共振駆動用のアクチュエータ用圧電部220a〜220d、221a〜221dを備えた圧電MEMSデバイスである。
図17は、図16に示すデバイス本体部201の破線17で囲まれた部分、すなわち、センサ用圧電部220eが形成された第2可動部216Aの一端を拡大して示す図である。各圧電部220a〜220eは、それぞれ下部電極、圧電膜および上部電極が積層されてなる。圧電部220a〜220eの下部電極および圧電膜は、それぞれ連続した共通膜から構成されている。上部電極226は分割されて圧電部毎で独立して設けられている。従って、センサ用上部電極部226eによりセンサ用圧電部220eが規定され、アクチュエータ用上部電極部226aによりアクチュエータ用圧電部220aが規定される。センサ用上部電極部226eはアクチュエータ用上部電極部226aと非接触とされており、両者の間隔、すなわち電極間隔はdμmである。第2可動部216Aの厚みtμm(図16参照)と電極間隔dμmとの関係は、
d≧0.33t+0.6 (1)
を満たす。
また、
d≧0.56t+8 (2)
を満たすことが好ましい。
なお、本例では、第2可動部216Aの厚みは一様であり、センサ用上部電極部226eとアクチュエータ用上部電極部226aとの電極間隔も一様としている。なお、他方の第2可動部216Bにおけるセンサ用上部電極部とアクチュエータ用上部電極部との関係は、上記一方の第2可動部216Aにおけるセンサ用上部電極部226eとアクチュエータ用上部電極部226aとの関係と同様である。
センサ用上部電極部226eと、アクチュエータ用上部電極部226aとの電極間隔dが上記関係(1)を満たすものであるので、既述の実施形態の圧電MEMSデバイスであるカンチレバー1と同様の効果を得ることができる。すなわち、センサ用圧電部で検出されるセンサ電圧は高い信頼性を有し、フィードバック信号として用いた場合、所望のデバイス動作を生じさせることができる。また、特に関係(2)を満たす場合には、本ミラーデバイスの製造工程において、MEMSデバイスの公差である±1μm程度の範囲で、電極間隔dがずれたとしてもセンサ電圧は大きく変化しないため、量産時においても個体毎にセンサ電圧の補正係数を計測する必要がないため、量産に適する。
なお、本実施形態のミラーデバイスにおいても、デバイス本体部201に加えて駆動回路と検出回路とを備えた回路基板を備えている。駆動回路としては、少なくとも非共振駆動用のアクチュエータ用圧電部220a〜220d、221a〜221dに非共振周波数の駆動信号を入力するための非共振駆動用の駆動回路を備えている。さらには、共振駆動用のアクチュエータ用圧電部214A〜214Dに共振周波数の駆動信号を入力するための共振駆動用の駆動回路を備えている。
[シミュレーションによる評価]
以下、本開示の圧電MEMSデバイスについてのシミュレーションによる評価結果を説明する。ここでは、圧電MEMSデバイスとしてカンチレバーを例に説明する。
「参考例」
(カンチレバー1A)
図18は参考例に用いたカンチレバー1Aの側面図および平面図であり、寸法を説明するための図である。カンチレバー1Aの構成は図1、2を用いて説明した実施形態のデバイス本体部1と同等であり、同等の構成要素については同じ符号を付している。
基板10として、ハンドル層380μm厚、BOX(Buried Oxide)層1μm厚、デバイス層33μm厚のSOI(Silicon on Insulator)基板を用いた。可動部12はデバイス層により構成され、固定部14はハンドル層、BOX層、およびデバイス層の積層部により構成されている。すなわち、可動部12の厚みtは33μmである。また、可動部12の長さが1mm、幅Wが135μmのカンチレバーとした。
基板10の一面に、下部電極22である0.1μm厚のIr電極、圧電膜24であるNb置換PZT(Pb(lead) Zirconate Titanate)膜(圧電定数d31=250pm/V、ヤング率50GPa、ポアソン比0.3、厚み3μm)、および上部電極26である0.1μm厚のPt電極の順に積層した後、エッチング処理を行い、上部電極26を3つの矩形状の上部電極部26a、26b、26cに分離した。
下部電極22は基板10の一面の全面に配置し、圧電膜24は下部電極22よりも10μmずつ内側となるようにし、その上に25μm幅の矩形の上部電極部26a、26b、26cを3本並列して配置した。3本のうち、いずれか1本または2本をアクチュエータとして機能させ、残りをセンサとして機能させる。リークを防ぐため、上部電極26の先端部はPZT膜より15μm内側に配置した。
(電極間隔とセンサ電圧値の変化についてのシミュレーション)
上記カンチレバー1Aにおいて、3本ある上部電極部26a、26b、26cのうち、中央の上部電極部26bの位置を固定し、両脇の上部電極部26a、26cを長さ方向の位置は固定し、幅方向の位置を変化させて、電極間隔d1、d2を変化させてシミュレーションを行った。電極間隔d1、d2が0の場合は3本の上部電極部26a、26b、26cがつながってしまい、各圧電部がセンサあるいはアクチュエータとして機能しなくなる。また、20μmよりも電極間隔d1、d2が離れてしまうと圧電膜24(PZT膜)から上部電極26がはみ出してしまうので、電極間隔d1、d2の最大値は20μmとした。ここではd1=d2=dとして、電極間隔dを1μm〜20μmの範囲で変化させた場合のセンサ電圧の変化をシミュレーションにより求めた。
上記カンチレバー1Aについて、参考例として、最低共振周波数でアクチュエータを駆動させて共振振動を生じさせた場合のセンサ電圧の変化を求めた。
なお、シミュレーションに際しては、有限要素法にて最低共振周波数を求め、システムのQ値を100となるように定め、中央の上部電極部26bに、最低共振周波数で0.01Vの振幅の正弦波電圧を印加したこととして、有限要素法による計算を実施し、両脇の上部電極部26a、26cに出力される電圧の振幅を計算した。すなわち、中央の圧電部20bをアクチュエータ用圧電部とし、両脇の圧電部20a、20cをセンサ用圧電部として機能させる圧電薄膜MEMSデバイスとしてセンサ電圧の振幅を算出した。
本明細書におけるシミュレーションには、有限要素法解析システムである解析シミュレーションソフト、ムラタソフトウェア製のFemtet(登録商標)を用いた。上記最低共振周波数は、上記シミュレーションソフトの圧電解析における共振解析を用いて算出した。また、センサ電圧は、上記シミュレーションソフトの圧電解析における調和解析によって算出した。なお、カンチレバー1Aの最低共振周波数は40kHzであった。
シミュレーションにおける前提条件およびパラメータについて説明する。なお、この前提条件およびパラメータは、後記の試験例についても同様とした。
(前提条件)
シミュレーションにおいては、カンチレバーの幅方向をx軸、長手方向をy軸、厚み方向をz軸として計算した。なお、シミュレーションに当たっては、計算負荷の軽減のため、下部電極の厚みは無視して計算した。下部電極はPZT膜と比較して十分に小さいので、計算結果への影響は小さい。PZT膜の下部電極側の面は、一様に0Vとされ、アクチュエータ用の上部電極に所定の駆動電圧を印加し、センサ用の上部電極の電位をセンサ電圧として計測することとした。また、カンチレバーの可動部12について、可動部12の固定端12aを完全拘束とした条件にてシミュレーションを実施した。
(パラメータ)
1)可動部12を構成するデバイス層(シリコン層)について
シリコンの弾性スティフネステンソルcijとして下記表1に示す値を用いた。単位はGPaである。弾性スティフネステンソルcijは、i=1〜6、j=1〜6の6×6=36成分で表される。対角成分は全く同じ値、例えばc12=c21である。面方位(100)のウエハを用い、そのオリエンテーションフラットに対して垂直な方向をカンチレバーの長手方向としてサンプルを作製するため、一般的なシリコンのテンソル標記に対し、45°回転させた値を採用した。
Figure 2021093703
2)圧電膜について
圧電膜の物性値としては、以下の値を用いた。
2−1)弾性定数
ヤング率50GPa、ポアソン比0.3の等方弾性体と仮定した。ヤング率50Pa、ポアソン比0.3の等方弾性体を弾性コンプライアンスsij[×10-12(1/Pa)]として下記表2に示す値を採用した。弾性コンプライアンスsijは、i=1〜6、j=1〜6の6×6の36成分で表される。
Figure 2021093703
2−2)圧電定数
圧電定数dij[pC/N]として、i=1〜3、j=1〜6の18成分で表される、下記表3に示す値を用いた。
Figure 2021093703
2−4)比誘電率
比誘電率εij[無次元]として、i=1〜3、j=1〜3の9成分で表される、下記表4に示す値を用いた。
Figure 2021093703
3)Ptからなる上部電極の弾性定数
ヤング率168GPa、かつ、ポアソン比0.39の等方弾性体とした。
電極間隔dを1μm〜20μmの範囲でシミュレーションを実施した結果を図19に示す。中央の上部電極部26bを挟んで配置される、一方の上部電極部26aと他方の上部電極部26cは中央の上部電極部26bに対して対称に配置されているので、2つの上部電極部26aおよび26cの出力は同等である。図19に示すセンサ電圧は、1つの上部電極部で検出した場合の値である。中央の圧電部20bをアクチュエータとし、両脇の圧電部20a、20cをセンサとした、後記の試験例1A−1、試験例1B,2,3においても同様とする。
図19に示すように、電極間隔dが変動してもセンサ電圧に大きな差は生じなかった。そのため、電極間隔dが多少変化しても、センサ電圧は大きな変動を生じないため、製造公差によって電極間隔dが変化していたとしても、駆動時に個体間で動作が異なる等の支障は生じない。
共振周波数で駆動した場合は、アクチュエータ用圧電部に対する電圧の印加によって、デバイスの全体が共振して振動するために、デバイスに均等な応力が生じていると考えられる。そのため、アクチュエータ用上部電極部とセンサ用上部電極部との電極間隔dが変化してもセンサ電圧は大きく変化しないと考えられる。
「試験例1A」
上記カンチレバー1Aを用い、非共振周波数で駆動させた場合のセンサ電圧の変化を求めた。なお、最低共振周波数は、参考例と同様に、上記シミュレーションソフトの圧電解析における共振解析を用いて算出した。一方、以下の試験例について、センサ電圧は、シミュレーションソフトの圧電解析における静解析を用いて算出した。直流電圧による駆動は、最低共振周波数の0.81倍以下の非共振周波数による駆動の一例である。なお、最低共振周波数の0.81倍以下の非共振周波数で駆動する場合には、デバイスのQ値によらず同様の振る舞いをするため、試験例においてはQ値の入力は不要である。
(試験例1A−1)
参考例の場合と同様に、中央の圧電部20bをアクチュエータ用圧電部とし、両脇の圧電部20a、20cをセンサ用圧電部とし、中央の上部電極部26bに直流1Vを印加し、両脇の上部電極部26a、26cによって検出されるセンサ電圧をシミュレーションにより求めた。結果を図20において、白四角のマーカーおよび破線で示す。なお、圧電MEMSデバイスでは、直流電圧を印加した場合の計算結果と最低共振周波数よりも十分に低い非共振周波数(例えば最低共振周波数の10%以下)の電圧を印加した場合の計算結果とは同等の結果となる。また、全く共振しない完全な非共振の場合に比べて変位が3倍未満である最低共振周波数の81%以下の範囲であれば、ほぼ同様の傾向が得られる。以下の試験例についても同様である。
(試験例1A−2)
両脇の圧電部20a、20cをアクチュエータ用圧電部とし、中央の圧電部20bをセンサ用圧電部とし、両脇の上部電極部26a、26cに直流1Vを印加し、中央の上部電極部26bによって検出されるセンサ電圧をシミュレーションにより求めた。この場合、アクチュエータの能力が2倍となっているため、得られたセンサ電圧を1/2にした結果を、図20において、黒三角のマーカーおよび実線で示す。
図20に示すように、試験例1A−1および試験例1A−2はセンサ電圧の電極間隔依存性は、ほぼ同様の振る舞いをしている。図21は図20のセンサ電圧の軸を拡大して示したグラフである。電極間隔dが11μm近傍において、センサ電圧の符号が逆転していることが分かる。センサ電圧が負である領域では、アクチュエータ用圧電部に生じる応力の影響よりもアクチュエータ用圧電部から離れた部分に生じる応力による影響が大きい。すなわち、カンチレバー1Aにおいては、電極間隔dを11μm近傍超えとすることでデバイス全体の振動をセンシングすることができる。一方で、図21に示すように、電極間隔dが18μmと20μmとでも9%の信号強度差があることが分かった。
以下において、可動部の厚みtを変化させ、それぞれの厚みtにおいてセンサ電圧が負電圧である電極間隔dおよび±1μmのずれが生じてもセンサ電圧の大きな変化が生じない電極間隔dについて調べた。
「試験例1B」
(カンチレバー1B)
カンチレバー1Aにおいて、可動部12の幅Wを135μmから200μmとし、圧電膜24の幅を115μmから180μmに変えた以外は同様とした。なお、試験例1Bのカンチレバー1Bの最低共振周波数は40kHzであった。
(電極間隔とセンサ電圧の関係についてのシミュレーション)
カンチレバー1Bにおいて、3本ある上部電極部26a、26b、26cのうち、中央の上部電極部26bの位置を固定し、両脇の上部電極部26a、26cを長さ方向の位置は固定し、幅方向の位置を変化させることによって電極間隔d1、d2を変化させ、電極間隔とセンサ電圧の関係についてシミュレーションを行った。ここでは電極間隔d1=d2=dとして、電極間隔dを8μm〜46μmの範囲で変化させた場合の、電極間隔とセンサ電圧の関係をシミュレーションにより求めた。結果を図22に示す。
図22に示すように、センサ電圧は電極間隔dが大きくなるにつれて変化が小さくなり、電極間隔dがさらに大きくなるとほぼ変化しなくなることが分かる。センサ電圧が0となるのは電極間隔dが10μmと12μmとの間であった。また、以下に、配置が1μmずれた場合にもセンサ電圧の変化を抑制できる電極間隔について詳細に検討した。
(電極間隔が1μmずれた場合のセンサ電圧の変化量)
上記シミュレーション結果から、各々の電極間隔で検出されるセンサ電圧について、中央の上部電極部26bを固定として、両脇の上部電極部26a、26cの位置が±1μmずれた場合、すなわち、電極間隔dが+1μm、−1μmずれた場合のセンサ電圧の変化量(信号強度差異)を算出した。電極間隔d[μm]におけるセンサ電圧の信号強度をI(d)とし、電極間隔がd−1[μm]におけるセンサ電圧の信号強度I(d−1)との強度差異
{|I(d−1)−I(d)|/I(d)}×100[%]、
および電極間隔がd+1[μm]における信号強度I(d+1)との強度差異
{|I(d+1)−I(d)|/I(d)}×100[%]
をそれぞれ求めた。
なお、シミュレーションにおいて1μm間隔で数値が算出されていない場合、例えば、ある電極間隔dにおける+1μmずれた場合の信号強度が算出されていない場合、電極間隔dの次に大きい値との間で線形補完をしてd+1の信号強度を求めて上記強度差異を算出した。同様に、電極間隔dの次に小さい値との間で線形補完を行いd−1における信号強度を求めて上記強度差を算出した。
例えば、電極間隔d=24μmの場合のセンサ電圧での信号強度I(24μm)の、1μm狭い電極間隔d−1=23μmの場合の信号強度I(23μm)との信号強度差異Δ(d−1)は、
{|I(23μm)−I(24μm)|/I(24μm)}×100[%]
で求めた。
シミュレーション結果が2μm間隔で算出されている場合には、I(24μm)とI(22μm)の間に直線を引き、そこからI(23μm)を読み取った、すなわち線形補完によりI(23μm)を求めた。
同様に、電極間隔d=24μmの場合のセンサ電圧での信号強度I(24μm)の、1μm広い電極間隔d+1=25μmの場合の信号強度I(25μm)との信号強度差異Δ(d+1)は、
{|I(25μm)−I(24μm)|/I(24μm)}×100[%]
で求めた。
上記信号強度差異Δ(d−1)、Δ(d+1)について、両者が1%未満である場合、良好(A)、少なくとも一方が1%以上である場合、不良(B)と評価した。
各電極間隔dにおける信号強度差異Δ(d−1)、Δ(d+1)および評価結果を表5に示す。
Figure 2021093703
表5に示すように、電極間隔dが28μm以上であれば±1μmの配置誤差においての信号強度の差異が1%未満であった。従って、実際のデバイスにおいて電極位置が±1μmの範囲で変動しても、フィードバック制御による動作に支障はない。一方、電極間隔dが26μm以下である場合には、1μmの配置誤差によって1%以上の信号強度差異を生じる。そのため、精度よく製造プロセスを実施することが求められる。
「試験例2」
(カンチレバー1C)
カンチレバー1Aにおいて、可動部12の厚みtを66μmとし、可動部12の幅Wを250μmとし、圧電膜24の幅を230μmとした以外は同様とした。なお、試験例2のカンチレバー1Cの最低共振周波数は82kHzであった。
(電極間隔とセンサ電圧値の関係についてのシミュレーション)
試験例1Bと同様にして、電極間隔dを16μm〜70μmの範囲で変化させた場合の電極間隔とセンサ電圧との関係についてのシミュレーションを行った。結果を図23に示す。
センサ電圧が0となるのは電極間隔dが22μmと24μmとの間であった。また、以下に、試験例1Bと同様に、配置が1μmずれた場合にもセンサ電圧の変化が抑制できる電極間隔について詳細に検討した。
(電極間隔が1μmずれた場合のセンサ電圧の変化量)
試験例1Bと同様にして、各々の電極間隔で検出されるセンサ電圧について、中央の上部電極部26bを固定として、両脇の上部電極部の位置が±1μmずれた場合のセンサ電圧の変化量、ここでは信号強度差異Δ(d−1)、Δ(d+1)を算出した。
各電極間隔dにおける信号強度差異Δ(d−1)、Δ(d+1)および評価結果を表6に示す。評価は試験例1Bと同様の基準で行った。
Figure 2021093703
表6に示すように、電極間隔dが46μm以上であれば±1μmの配置誤差においての信号強度の差異が1%未満であった。従って、実際のデバイスにおいて電極位置が±1μmの範囲で変動しても、フィードバック制御による動作に支障はない。一方、電極間隔dが44μm以下である場合には、1μmの配置誤差によって1%以上の信号強度差異を生じる。そのため、精度よく製造プロセスを実施することが求められる。
「試験例3」
(カンチレバー1D)
カンチレバー1Aにおいて、可動部12の厚みtを100μm、可動部12の幅Wを300μmとし、圧電膜24の幅を280μmとした以外は同様とした。なお、試験例3のカンチレバー1Dは最低共振周波数が125kHzであった。
(電極間隔とセンサ電圧値の関係についてのシミュレーション)
試験例1Bと同様にして、電極間隔dを14μm〜80μmの範囲で変化させた場合の電極間隔とセンサ電圧との関係についてのシミュレーションを行った。結果を図24に示す。
センサ電圧が0となるのは電極間隔dが32μmと34μmとの間であった。また、以下に、試験例1B、2と同様に、配置が1μmずれた場合にもセンサ電圧の変化が抑制できる電極間隔について詳細に検討した。
(電極間隔が1μmずれた場合のセンサ電圧の変化量)
試験例1Bと同様にして、各々の電極間隔で検出されるセンサ電圧について、中央の上部電極部26bを固定として、両脇の上部電極部の位置が±1μmずれた場合のセンサ電圧の変化量、ここでは信号強度差異Δ(d−1)、Δ(d+1)を算出した。
各電極間隔dにおける信号強度差異Δ(d−1)、Δ(d+1)および評価結果を表7に示す。評価は試験例1Bと同様の基準で行った。
Figure 2021093703
表7に示すように、電極間隔dが66μm以上であれば±1μmの配置誤差においての信号強度の差異が1%未満であった。従って、実際のデバイスにおいて電極位置が±1μmの範囲で変動しても、フィードバック制御による動作に支障はない。一方、電極間隔dが60μm以下である場合には、1μmの配置誤差によって1%以上の信号強度差異を生じる。そのため、精度よく製造プロセスを実施することが求められる。
以上の試験例1B,2および3について、各例の可動部の厚みt、計算で求めた電極間隔のうち、センサ電圧が0となる前後の電極間隔、および1μmの配置誤差で信号強度差異1%となる前後の電極間隔をそれぞれ表8に示す。
Figure 2021093703

基板の可動部の厚みtと表8に示す電極間隔dとの関係を図25に示す。図25において、センサ電圧が0となる前後の電極間隔のうち、センサ電圧が正の最大電極間隔については黒三角(▲)、センサ電圧が負の最大電極間隔については白三角(△)で示している。両者はいずれも可動部の厚みに対して線形に変化している。両者の境界を示す実線はd=0.33t+0.6で表される。また、図25において、1μmの配置誤差で信号強度差異1%となる前後の電極間隔のうち、信号強度差異が1%以上である最大電極間隔については黒丸(●)、信号強度差異が1%未満である最小電極間隔については白丸(○)で示している。両者の境界を示す破線はd=0.56t+8で表される。
すなわち、アクチュエータ用圧電部への印加電圧とは異符号となるセンサ電圧を検出することができるのは、アクチュエータ用上部電極部と、センサ用上部電極部との電極間隔dと可動部の厚みtとが、
d≧0.33t+0.6
を満たす場合であることが明らかになった。
また、電極位置が±1μmの範囲で変動しても、センサ電圧の変動が1%未満に抑制することができるのは、
d≧0.56t+8
を満たす場合であることが明らかになった。
1 圧電MEMSデバイス本体部(カンチレバー)
10 基板
12 可動部
12a 可動部の一端(固定端)
12b 可動部の他端(自由端)
14 固定部
20a、20b、20c 圧電部
20a、20c センサ用圧電部
20b アクチュエータ用圧電部
22 下部電極
24 圧電膜
26 上部電極
26a 上部電極部(センサ用上部電極部)
26b 上部電極部(アクチュエータ用上部電極部)
26c 上部電極部(センサ用上部電極部)
27a、27b、27c 配線部
28a、28b、28c 電極パッド
30 回路基板
32 駆動回路
34 検出回路
50 アクチュエータ用上部電極部
50a アクチュエータ用上部電極部の外縁
51 配線
52 センサ用上部電極部
52a センサ用上部電極部の外縁
60 基板
62 可動部
64 非可動部
70 絶縁膜
100 圧電MEMSデバイス
110 基板
122 下部電極
124 圧電体、圧電膜
124a 一端
124b 他端
126 上部電極
201 圧電MEMSデバイス本体部(ミラーデバイス本体部)
210 枠部材
212 ミラー部
214 第1可動部
214A〜214D 第1可動部のアクチュエータ用圧電部
215A、215B 第1可動部のセンサ用圧電部
216A、216B 第2可動部
220a〜220d、221a〜221d 第2可動部のアクチュエータ用圧電部
220e、221e 第2可動部のセンサ用圧電部
224 圧電膜
226 上部電極
226a アクチュエータ用上部電極部
226e センサ用上部電極部

Claims (17)

  1. 可動部を有する基板を備え、前記可動部上に、下部電極、圧電膜および上部電極がこの順に積層され、かつ、非共振周波数で駆動する非共振駆動型の圧電MEMSデバイスであって、
    前記上部電極は、アクチュエータ用上部電極部と、前記アクチュエータ用上部電極部に非接触のセンサ用上部電極部とを有し、
    前記圧電膜は、前記アクチュエータ用上部電極部が設けられた部分と、前記センサ用上部電極部が設けられた部分とが連続しており、
    前記アクチュエータ用上部電極部と、前記センサ用上部電極部との平均電極間隔をdμmとし、前記可動部の平均厚みをtμmとした場合、dとtとが、
    d≧0.33t+0.6
    を満たし、
    前記アクチュエータ用上部電極部によって規定されるアクチュエータ用圧電部に、前記非共振周波数として、最低共振周波数の0.81倍以下の周波数の駆動信号を入力する駆動回路を備えた圧電MEMSデバイス。
  2. 前記平均電極間隔dおよび前記可動部の平均厚みtが、
    d≧0.56t+8
    を満たす、請求項1に記載の圧電MEMSデバイス。
  3. 前記可動部の平均厚みが100μm以下である請求項1または請求項2に記載の圧電MEMSデバイス。
  4. 前記平均電極間隔が250μm以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の圧電MEMSデバイス。
  5. 前記圧電膜が10μm以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の圧電MEMSデバイス。
  6. 前記圧電膜が、鉛を含有するペロブスカイト型酸化物を主成分とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の圧電MEMSデバイス。
  7. 前記基板は、シリコン基材である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の圧電MEMSデバイス。
  8. 前記基板は、前記可動部の一端が固定された固定部をさらに有し、前記可動部の他端が自由端となる、カンチレバー構造を有する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の圧電MEMSデバイス。
  9. 前記非共振周波数は、前記最低共振周波数の0.7倍以下の周波数である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の圧電MEMSデバイス。
  10. 前記非共振周波数は、前記最低共振周波数の0.1倍以下の周波数である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の圧電MEMSデバイス。
  11. 可動部を有する基板を有し、前記可動部上に、下部電極、圧電膜および上部電極がこの順に積層され、かつ、非共振周波数で駆動する非共振駆動型の圧電MEMSデバイスであって、前記上部電極は、アクチュエータ用上部電極部と、前記アクチュエータ用上部電極部に非接触のセンサ用上部電極部とを有し、前記圧電膜は、前記アクチュエータ用上部電極部が設けられた部分と、前記センサ用上部電極部が設けられた部分とが連続している圧電MEMSデバイスの製造方法であって、
    前記アクチュエータ用上部電極部と前記センサ用上部電極部との平均電極間隔を、前記基板の可動部の平均厚みに応じて定める、圧電MEMSデバイスの製造方法。
  12. 前記平均電極間隔をdμmとし、前記可動部の平均厚みをtμmとした場合、dとtとが、
    d≧0.33t+0.6
    を満たす配置とする、請求項11に記載の圧電MEMSデバイスの製造方法。
  13. 前記平均電極間隔dおよび前記可動部の平均厚みtが、
    d≧0.56t+8
    を満たす配置とする、請求項12に記載の圧電MEMSデバイスの製造方法。
  14. 可動部を有する基板を備え、前記可動部上に、下部電極、圧電膜および上部電極がこの順に積層された圧電MEMSデバイスであって、
    前記上部電極は、アクチュエータ用上部電極部と、前記アクチュエータ用上部電極部に非接触のセンサ用上部電極部とを有し、
    前記圧電膜は、前記アクチュエータ用上部電極部が設けられた部分と、前記センサ用上部電極部が設けられた部分とが連続しており、
    前記アクチュエータ用上部電極部と、前記センサ用上部電極部との平均電極間隔をdμmとし、前記可動部の平均厚みをtμmとした場合、dとtとが、
    d≧0.33t+0.6
    を満たす圧電MEMSデバイスに対し、
    前記アクチュエータ用上部電極部によって規定されるアクチュエータ用圧電部に、前記圧電MEMSデバイスの最低共振周波数の0.81倍以下の周波数を有する非共振周波数の駆動信号を入力して非共振駆動する駆動方法。
  15. 前記圧電MEMSデバイスが、前記平均電極間隔dおよび前記可動部の平均厚みtが、
    d≧0.56t+8
    を満たす、請求項14に記載の駆動方法。
  16. 前記非共振周波数は、前記最低共振周波数の0.7倍以下の周波数である、請求項14または請求項15に記載の駆動方法。
  17. 前記非共振周波数は、前記最低共振周波数の0.1倍以下の周波数である、請求項14または請求項15に記載の駆動方法。
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