JP2021090956A - 化学反応装置及び化学反応方法 - Google Patents

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西岡 将輝
Masateru Nishioka
将輝 西岡
正人 宮川
Masato Miyagawa
正人 宮川
長瀬 多加子
Takako Nagase
多加子 長瀬
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Abstract

【課題】本発明は、粘性の高い流体や、スラリーを含む流体を反応原料とする化学反応であっても連続的に実施して、該化学反応によって得た反応器内の化学物質を容易に取り出すことを可能にする化学反応装置及び化学反応方法を提供する。【解決手段】管構造を有する反応器と、前記反応器にそって移動可能に配された温度制御機構と、前記反応器内に得られた化学物質を取り出す取出し手段とを含み、前記温度制御機構を前記反応器にそって移動させることにより前記反応器内に配した反応原料を連続的に加熱処理して、前記反応器内に化学物質を生成し、前記取出し手段によって該化学物質を取り出す、化学反応装置及び化学反応方法。【選択図】図1

Description

本発明は、化学反応装置及び化学反応方法に関する。
化学物質の生産性の向上を目的として、化学物質を連続的に製造する方法が、種々開発されてきた。例えば特許文献1には、マイクロ波合成法を利用した無機素材の製造方法において、無機素材を合成する前駆物質の混合溶液を製造した後に、この混合溶液をチューブ形反応器に連続的に投入すると同時に、上記反応器にマイクロ波を照射し、連続的に無機素材を製造する方法が記載されている。
特開2002−186849号公報
化学物質の連続的な製造方法としては、フロー式反応により反応原料を反応流路に流通させながら、反応流路内で目的の化学反応を生じさせる方法が知られている。しかし、例えば、ゼオライト合成のような粘性の高い流体や、スラリーを含む流体の化学反応では、フロー式反応の適用は難しい。このような流体を反応流路内に流通させるには、大きな動力のポンプが必要となる。そのため、ポンプが特殊な材料や構造を有するため高価であり、特殊なメンテナンスも必要となる。特に、反応器内圧を高めた状態で実施する高圧反応では、反応器内圧力を維持しながら、連続的に反応生成物(化学物質)を取り出す調圧部は、スラリーの閉塞などトラブルが多く発生するなどの点で改善する余地があった。
本発明は、粘性の高い流体や、スラリーを含む流体を反応原料とする化学反応であっても連続的に実施して、該化学反応によって得た反応器内の化学物質を容易に取り出すことを可能にする化学反応装置及び化学反応方法を提供することを課題とする。
本発明の上記課題は下記の手段により解決される。
[1]
管構造を有する反応器と、
前記反応器にそって移動可能に配された温度制御機構と、
前記反応器内に得られた化学物質を取り出す取出し手段とを含み、
前記温度制御機構を前記反応器にそって移動させることにより前記反応器内に配した反応原料を連続的に加熱処理して、前記反応器内に化学物質を生成し、前記取出し手段によって該化学物質を取り出す、化学反応装置。
[2]
前記反応器は前記温度制御機構が直線的に移動する部位を有する[1]に記載の化学反応装置。
[3]
前記反応器内を加圧する加圧手段と、
前記反応器の出口部分に閉塞状態もしくは狭窄状態を作り出す調圧機構とを有する[1]又は[2]に記載の化学反応装置。
[4]
前記温度制御機構は、電磁波照射による非接触加熱装置である[1]〜[3]のいずれかに記載の化学反応装置。
[5]
前記非接触加熱装置は、前記反応器内に電磁波エネルギーを集中させる機構を有する[4]に記載の化学反応装置。
[6]
前記非接触加熱装置は、電磁波エネルギーを集中させる電磁波照射空間を有する空胴共振器を含む[5]に記載の化学反応装置。
[7]
前記空胴共振器は、該空胴共振器内への電磁波照射により、TMmn0モード(mは0以上の整数、nは1以上の整数)もしくはTEm0pモード(mおよびpは1以上の整数)のシングルモードの定在波を形成する[6]に記載の化学反応装置。
[8]
管構造を有する反応器内に反応原料を充填する原料充填工程と、
温度制御機構を前記反応器にそって移動させ、前記反応原料を連続的に加熱処理することにより化学反応を生じる化学反応工程と、
前記化学反応により生成した化学物質を排出する排出工程とを有し、
前記原料充填工程、前記化学反応工程及び前記排出工程を順次繰り返す化学反応方法。
[9]
前記反応原料は、粘度が10−2Pa・s以上10Pa・s以下の流体、もしくは固体粒子が1質量%以上95質量%以下含まれるスラリーを含む[8]に記載の化学反応方法。
[10]
前記原料充填工程と前記化学反応工程との間に、前記反応器内に充填された反応原料を加圧する加圧工程を有する[8]に記載の化学反応方法。
[11]
前記反応原料の加圧に当たり、前記反応器の出口部分を閉塞状態もしくは狭窄状態にし、前記反応原料の供給工程や前記化学物質の排出工程では、前記反応器の出口部分を開放状態にする[10]に記載の化学反応方法。
[12]
前記温度制御機構による加熱は、電磁波照射による非接触加熱である[8]〜[11]のいずれかに記載の化学反応方法。
[13]
前記電磁波照射により、前記反応器内に電磁波エネルギーを集中させる[8]〜[12]のいずれかに記載の化学反応方法。
[14]
前記温度制御機構は空胴共振器を含み、該空胴共振器内に定在波を形成することにより前記反応器内に電磁波エネルギーを集中させる[13]に記載の化学反応方法。
[15]
前記定在波は、TMmn0モード(mは0以上の整数、nは1以上の整数)もしくはTEm0pモード(mおよびpは1以上の整数)のシングルモードの定在波である[14]に記載の化学反応方法。
[16]
前記化学反応において、未反応の反応原料と反応終了後の生成物との間に挟み込むように、気体を、又は、反応原料及び反応生成物と非相溶の液体を前記反応器内に供給する[8]〜[15]のいずれかに記載の化学反応方法。
本発明の化学反応装置及び化学反応方法によれば、粘性の高い流体や、スラリーを含む流体を反応原料とする化学反応であっても、反応器にそって温度制御機構を移動させることによって、反応原料の化学反応を連続的に実施することが可能になる。しかも該化学反応によって得た反応器内の化学物質を容易に取り出すことができる。
本発明の化学反応装置の好ましい一実施形態を模式的に示した断面図である。 本発明の化学反応方法の好ましい一実施形態を模式的に示した断面図であり、化学反応方法の原料充填工程を示した図面である。 本発明の化学反応方法の好ましい一実施形態を模式的に示した断面図であり、化学反応方法の加圧工程を示した図面である。 本発明の化学反応方法の好ましい一実施形態を模式的に示した断面図であり、化学反応方法の化学反応工程を示した図面である。 本発明の化学反応方法の好ましい一実施形態を模式的に示した断面図であり、化学反応方法の排出工程を示した図面である。 本発明の化学反応装置の好ましい別の一実施形態を模式的に示した断面図である。 原料に用いたフライアッシュ粒子およびマイクロ波加熱処理後の粒子のX線回折パターン図であり、縦軸はIntensity(強度)(arb.unit)を示し、横軸は2Theta(2θ)(deg.)を示す。 (A)図は原料として用いたフライアッシュ粒子の走査型電子顕微鏡像、及び(B)図はマイクロ波加熱処理後の粒子の走査型電子顕微鏡像を示した図面代用写真である。 粒子径2〜5nmの白金ナノ粒子が合成された状態の透過型電子顕微鏡像を示した図面代用写真である。 FAU(faujasite)型ゼオライト単相が示されたX線回折パターン図であり、縦軸はIntensity(強度)(arb.unit)を示し、横軸は2Theta(2θ)(deg.)を示す。 粒子径10〜30nmの結晶粒子の透過型電子顕微鏡像を示した図面代用写真であり、(A)図は結晶粒子の全体像を示し、(B)図が結晶粒子の拡大像を示す。 ゼオライトの細孔特性を調べた窒素吸着測定結果を示した窒素吸着等温線であり、縦軸は吸着量(Va(cm(STP:標準温度及び圧力)/g))を示し、横軸は相対圧P(吸着平衡圧)/Pо(飽和蒸気圧)を示す。 BJH(Barrett−Joyner−Halenda)法によるメソポアの細孔径分布の解析結果を示した図であり、縦軸は粒度分布dVp/d(dp)を示し、横軸はPore diameter(ポア直径)(nm)を示す。粒度分布は、測定対象となる粒子群の中に、どの程度の粒子径の粒子がどの程度の割合(全体を100%とした相対粒子量(体積))で含まれているかを示す。
本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して以下に説明する。本発明は、本発明で規定されること以外、下記実施形態に限定されるものではない。また、各図面に示される装置の形態は、本発明の理解を容易にするための模式図であり、各構成部材のサイズおよび相対的な大小関係等は説明の便宜上大小を変えている場合があり、実際の関係をそのまま示すものではない。また、本発明で規定する事項以外はこれらの図面に示された外形、形状に限定されるものでもない。
[化学反応装置]
図1に示すように、化学反応装置1は、管構造を有する(管状ともいう)反応器10を備える。反応器10は、反応原料30を、管内を直線的に輸送する部位を有することが好ましい。すなわち、直管部分を有することが好ましい。反応器10の外径断面及び内径断面は特に制限されず、例えば円形とすることができる。直管部分を有することによって、後述する空胴共振器21を反応器10にそって移動させやすくなる。
反応器10の直管部分には、管長方向に移動可能とする温度制御機構20が配されている。温度制御機構20は、反応器10内の反応原料30(本明細書において被処理対象物と同義に用いることがある。)に電磁波エネルギーを照射する機構を有し、電磁波エネルギーを集中させる機構を有することが好ましい。温度制御機構20は、反応原料30を電磁波加熱する能力を有するものであればどのような形態であってもよい。例えば、周波数が1kHz以上の電磁波を発生させて、その電磁波によって反応器10内の反応原料30を加熱する形態が挙げられる。すなわち、温度制御機構20は、電磁波照射による非接触加熱装置である。電磁波としては、マイクロ波を用いることが好ましく、他に赤外線、可視光線、紫外線等の利用も挙げられる。上記温度制御機構20には、例えば、電磁波照射がなされる電磁波照射空間を有し、マイクロ波の定在波を形成可能な空胴共振器21が挙げられる。以下、温度制御機構20を空胴共振器21として説明する。
空胴共振器21は、反応器10の直管状の部分を移動可能とする形態を有している。例えば、円筒形の空胴共振器21の中心軸Cにそって管構造を有する反応器10の中心軸Ctが一致するように移動可能に配される。空胴共振器21の移動形態は、種々の形態が挙げられる。例えば、リニアステージの可動部に空胴共振器21を据え付ける方法、電動モータを取り付けた空胴共振器21自体が移動する方法、等が挙げられる。このように、反応器10の一端から他端まで空胴共振器21を移動させることが可能になるため、反応器10内の全域にわたってマイクロ波照射による連続的な加熱が可能になり、それにともなって、反応器10内の反応原料の化学反応を進行させることができる。
さらに化学反応装置1は、図示はしていないが、空胴共振器21内に定在波を形成することができる周波数のマイクロ波を供給するマイクロ波供給手段を有する。マイクロ波供給手段は、マイクロ波を出力するマイクロ波発生器、出力したマイクロ波を空胴共振器21内に供給するアンテナを含む。マイクロ波発生器には、マイクロ波を発振するマイクロ波発振器が備えられる。さらに、マイクロ波発振器を制御する制御部、マイクロ波の減衰レベルを調節する減衰器、マイクロ波電力を増幅する増幅器、反射波を吸収するアイソレータ、反射波を抑制する整合器等(図示せず)を備えてもよい。
空胴共振器21は、その内部のマイクロ波照射空間21Aに定在波を形成する。定在波は、TMmn0モード(mは0以上の整数、nは1以上の整数である)又はTEm0pモード(m、pは1以上の整数である)のシングルモードが好ましい。
例えば、TM010モードの場合は、マイクロ波照射空間21Aの中心軸Cにおいて、かつ空胴共振器21内に形成される定在波のエネルギー(電界強度)が極大となる。もしくはTM110モードの場合は、マイクロ波照射空間21Aの中心軸Cにおいて、かつ空胴共振器21内に形成される定在波のエネルギー(磁界強度)が極大となる。また中心軸C方向には定在波エネルギーが均一となる。このエネルギーが極大でかつ均一となる部分又はその近傍に沿って、管状の反応器10が配される。反応器10内(内部空間10A)には反応原料30が配される。中心軸Cに電界強度が極大になる定在波を形成するか、磁界強度が極大なる定在波を形成するかは、反応原料30の物性による。反応原料30が誘電損失を有する場合は電界強度が極大となる定在波を用いると効率的に加熱することができる。反応原料30が磁性損失を有する場合は、磁界強度が極大となる定在波を用いると効率的に加熱することができる。反応原料30が電気伝導度を有する場合は磁界強度が極大となる定在波を用いると、誘導電流によるジュール熱による加熱が可能となる。反応原料30が金属を有する場合、電界強度の大きな部分では放電が生じる場合があるため、電界強度が極小となる定在波部分に反応原料30を配置するのが望ましい。この場合、TM110モードの定在波が発生する円筒形の空胴共振器21では、中心軸Cにおいて磁界強度が極大となり、中心軸Cに沿って磁界強度が均一になる。一方、空胴共振器21内のTM110モードの定在波の電界分布は中心軸Cの位置では電界強度は0となる。
このため、反応器10の中心軸Ctは、空胴共振器21の中心軸Cに一致して配されることが好ましい。この反応器10内の内部空間10Aに反応原料30が配される。反応原料30が配されるとは、内部空間10Aに反応原料30が存在することを意味し、反応原料30が反応器10内に静置している状態も、反応原料30が反応器10内を流動している状態も含む意味である。反応原料30は、反応器10の内部空間10A内のすべてを満たしていてもよく、または一部を満たしていてもよい。
なお、上記説明では、反応器10を構成部材として設けた形態を示したが、反応器10を構成部材として設けず、反応原料の代わりに棒状の反応原料を用い、その種類に応じて、温度制御機構20の加熱条件もしくは冷却条件を設定することもできる。本発明では、このような形態も、棒状の反応原料が反応器10を兼ねるものとして、本発明に包含されるものとする。また、反応器10は管内に反応原料を流通させる形態でなければ、反応器10を孔が貫通した形状とする必要はなく、例えば、一端を閉じた形状(例えば試験管の形状)とすることもできる。
断面が矩形の角筒型(以下、矩形型ともいう)空胴共振器を用いることもできる。このような空胴共振器におけるTE101モードの定在波の場合、中心軸Cの位置で電界強度が極大となり、中心軸Cに沿って電界強度は均一となる。もしくはTE102モードの定在波の場合、中心軸Cの位置で電界強度が0、磁界強度が極大となり、中心軸Cに沿って電界強度は0であり、磁界強度は極大値で均一となる(図示せず)。
なお、矩形型空胴共振器においてTEm0pモード(mは1以上、pは1以上の整数)においては、電界が極大となる軸及び磁界が極大となる軸は中心軸C以外にも存在しており、該軸においても同様の作用が期待される。しかし、中心軸以外ではその位置を特定するのは、中心軸Cを特定するより難しくなるため、本発明は中心軸位置に反応器10の中心軸を配置することがより好ましいといえる。矩形型空胴共振器において中心軸の位置と電界が極大となる位置が一致する定在波はTEm0pモード(mは1以上の整数、pは1以上の奇数)である。また中心軸C位置と磁界が極大となる位置が一致する定在波はTEm0pモード(mは1以上の整数、pは2以上の偶数)である。
図示はしていないが、空胴共振器21のマイクロ波供給口には、高周波を印加することができるアンテナを有することが好ましい。アンテナは、ケーブルを介してマイクロ波発生器と接続することができる。なお、アンテナは、マイクロ波発生器と電気的に接続されていれば、その接続形態は問わない。
マイクロ波発生器から発せられたマイクロ波をアンテナから空胴共振器21内に供給することができる。マイクロ波発生器では、増幅器(図示せず)によってマイクロ波電力を調整することができ、それによって空胴共振器12内に形成される定在波のエネルギー強度分布を制御することが可能となる。
定在波は、空胴共振器21内に上述したTMモードまたはTEモードの定在波が形成される周波数とすることができる。
また、アンテナのかわりに導波管を用いたマイクロ波供給口を設置した形態とすることもできる。供給するマイクロ波の周波数を伝送できる角筒型導波管もしくは円筒型導波管と空胴共振器とを適切な開口部を有したアイリスを介して配することで、マイクロ波発振器からのマイクロ波エネルギーを空胴共振器21に導入することができる。
なお、上記の各形態は、本発明のマイクロ波処理装置1の一例を説明したものであり、本発明の化学反応装置1は、本発明で規定すること以外は、上記の形態に何ら限定されるものではない。
電界を利用したマイクロ波処理を行う場合は、TMmn0モード(mは0または2以上の偶数、nは1以上の整数)もしくはTEm0pモード(mは1以上の整数、pは1以上の奇数)を用いることも好ましい。なかでも円筒型の空胴共振器21におけるTM010モードの定在波および矩形型空胴共振器(図示せず)におけるTE101モードは、中心軸C部分が電界極大となるため、被処理対象物を設置する位置を決定しやすい。
被処理対象物は、空胴共振器21の内部の電界強度に対応させて、電界強度の強い部分に配される。特に、空胴共振器21内に形成された電界強度が極大になる領域に配せば、より効率的な加熱が可能になる。例えば、被処理対象物が、誘電損失を有する物質の場合には電界エネルギーを吸収することで、より効率的な加熱となる。ただし被処理対象物が金属やイオンを含む物質などで電気伝導性を有する場合、電界により放電現象が生じることがある。放電の発生が不適切な場合は、次項に示す磁界極大を用いるマイクロ波処理が適切である。
また、磁界を利用したマイクロ波処理を行う場合は、TMmn0モード(mおよびnは1以上の整数)もしくはTEm0pモード(mは1以上の整数、pは2以上の偶数)を用いることも好ましい。なかでも円筒型の空胴共振器21におけるTM110モードの定在波および矩形型空胴共振器におけるTE102モードは、中心軸C部分が磁界極大となるため、被処理対象物を設置する位置を決定しやすい。
被処理対象物は、空胴共振器の内部の磁界強度に対応させて、磁界強度の強い部分に配される。特に、空胴共振器内に形成された磁界強度が極大になる領域に配せば、より効率的な加熱が可能になる。例えば、反応原料が、磁性を有する物質の場合には磁界エネルギーを吸収することで、より効率的な加熱となる。反応原料が金属やイオンを含む物質などで電気伝導性を有する場合、磁界により物質内に誘起された電流によるジュール熱で発熱させることができ、より効率的な加熱が可能になる。
上記の化学反応装置1では、内部に反応原料又は反応原料が配された反応器10が存在する空胴共振器21に対して、マイクロ波発生器からマイクロ波を供給し、空胴共振器21内に上記の定在波を形成する。例えば、この定在波の磁界強度が極大となる部分に沿って反応器10を設けることにより、反応器10内の反応原料30を高いエネルギー効率で処理することができる。上記化学反応装置1では、空胴共振器21に設けられたマイクロ波供給口から定在波を形成するマイクロ波がマイクロ波照射空間21A内に供給される。
定在波の周波数は、例えば、2.45GHz帯の周波数であっても915MHz帯の周波数であってもよく、空胴共振器2内に定在波を形成できればよい。電界による加熱を期待する場合は、TM0n0モードの定在波が形成されることが好ましく、TM010、TM020、TM030のモードの定在波が形成されることが好ましい。中でも中心軸Cに電界強度のピークが位置するという理由から、円筒型の空胴共振器21におけるTM010モードの定在波が形成されることがさらに好ましい。また、同様の理由で矩形型の空胴共振器におけるTE101モードの定在波が形成されることも好ましい。磁界による加熱を期待する場合は、TM1n0モードの定在波が形成されることが好ましく、TM110、TM120、TM130のモードの定在波が形成されることがより好ましい。なかでも中心軸Cに磁界強度のピークが位置するという理由から、円筒型空胴共振器におけるTM110モードの定在波が形成されることがさらに好ましい。また、同様の理由で矩形型空胴共振器におけるTM102モードの定在波が形成されることも好ましい。
上記化学反応装置1において、マイクロ波発生器から供給されるマイクロ波は、周波数を調整して供給される。周波数の調整により、空胴共振器21内に形成される定在波の磁界強度分布を所望の分布状態に制御することができる。またマイクロ波電力の出力によって定在波の強度を調整することができる。つまり、反応原料30の加熱状態を制御することが可能になる。
具体的には、図示はしていないが、下記の制御部によって制御することができる。制御部は、例えば、マイクロ波発生器に内蔵されていても、又は別体に構成されていてもよい。この制御部は、空胴共振器21のマイクロ波照射空間21A内に形成された定在波の周波数(共振周波数)に基づいて、マイクロ波発生器から発生するマイクロ波の周波数を調整する。そしてマイクロ波発振器より調整された周波数のマイクロ波が発振される。マイクロ波照射空間21A内の定在波の周波数(共振周波数)を検出するため、空胴共振器21には検出部が配されていることが好ましい。検出部は、マイクロ波照射空間21A内部のエネルギー強度を計測し、その信号を処理して周波数を検出するものであればよい。またマイクロ波発生器は、温度測定器の値をもとにマイクロ波出力を調整することもできる。この方法として、マイクロ波発振器(図示せず)とマイクロ波増幅器(図示せず)の間に設置した減衰器(図示せず)の減衰率を調整することもできる。
本発明の化学反応装置1の構成について、以下に詳説する。
<反応器>
管構造の反応器10は、好ましくは円管状を成す。例えば、その内径は1〜20mmであることが好ましく、外径は3〜22mmであることが好ましい。また、内径は1〜10mmであることがより好ましく、外形は3〜12mmであることがより好ましい。反応器10は、マイクロ波による加熱の場合、マイクロ波を透過する材料で構成されることが好ましく、そのような材料として、石英等のガラス材料、フッ素樹脂等の樹脂材料、アルミナ等のセラミック材料等を挙げることができる。反応器10は、その一端側から反応原料が供給され、他端側から反応生成物が排出される形態を有することが好ましい。
一実施形態において、反応器10の両端は開放され、その一方の端部には、化学反応によって得られた化学物質(反応生成物)を他方の端部から排出して取り出す取出し手段としてのピストン11を有する。このピストン11は、反応器内を摺動可能に配されている。すなわち、ピストン11によって押し込まれる側の物質が押し込む側に流入しないようにされている。このピストン11は、後述する作動流体を用いた加圧とともに、反応器10内を大気圧以上に加圧する加圧手段として用いることもできる。
反応器10の上記一方の端部側の側面には、反応原料30を供給するための反応原料供給部(図示せず)が例えば配管(図示せず)及びボール弁12を介して接続される。また、配管には反応原料を送給するポンプが配されることが好ましい。図示した状態では、ボール弁12が開けられた状態となっている。よって、反応原料30が反応器10の内部10Aに充填される状態になっている。配管内径と同等の流路を有するボール弁12を配することにより、粘性の高い反応原料やスラリーを含む反応原料の供給や停止が容易に可能になる。
また反応原料としての反応溶液の粘度が高い場合や、スラリー状の場合は、ボール弁12は流路12Pの内径の大きな弁を用いると、原料溶液供給に必要なポンプの動力負荷を減らすことができる。
反応器10の上記他方の端部にはボール弁13が配される。図示した状態では、ボール弁13が閉じられた状態となっている。このボール弁13は、閉じた状態において反応器10内に反応原料30を閉じ込める機能を有する。開けた状態において、ピストン11を駆動させることによって反応器10内で生成された反応生成物(化学物質)を排出する排出口として機能する。そのため、ボール弁13の流路13Pは、反応器10の内径と同等であることが好ましい。このような弁形態としては、ボール弁が好ましい。また、上記ボール弁13を用いたことから、反応器10内で生成された反応生成物を出口で詰まらせることなく、反応器10内から円滑に取出すことができる。さらに、ボール弁13の開閉状態によって、反応器10の出口部分を閉塞状態にする、もしくは、狭窄状態にすることが可能になる。これによって、反応器10内の圧力を調整することもできる。すなわち、ボール弁13は、反応器10内の圧力を調整する調圧機構としても機能する。
反応器10の上記一方の端部側の別の側面には、作動流体(図示せず)を供給するための作動流体供給部(図示せず)が配管(図示せず)、加圧手段としての昇圧ポンプ14、配管15介して接続されている。また、配管15には仕切弁16が配されていることが好ましい。例えば、仕切弁16は、図示したように、ボール弁で構成されてもよい。図示した状態では、仕切弁16が閉じられた状態となっている。よって、作動流体は反応器10の内部10Aに供給されていない状態になっている。上記のように、昇圧ポンプ14により作動流体を昇圧して反応器10内に供給することによって、反応原料を大気圧以上の所定の圧力まで加圧することができる。反応原料の加圧に必要な昇圧ポンプ14は作動流体しか流通しないので、スラリーポンプなど特殊なポンプを利用する必要なない。たとえば、高速液体クロマトグラフ(HPLC)用のポンプなどが利用できる。上記作動流体には、反応原料と非相溶な、水、有機溶媒、フロン系溶媒等を用いることができる。なお、反応原料と混合してもよい場合は、作動流体には非相溶の液体でなくてもよい。また、気体を用いることもできる。
なお、昇圧ポンプ14による作動流体による加圧は、反応器10内に生成した化学物質(反応生成物)を押出すことができるため、取出し手段として用いることもできる。
<空胴共振器>
化学反応装置に用いる空胴共振器21の形状は、一つ以上のマイクロ波供給口を有し、マイクロ波を供給した際にシングルモードの定在波が形成されるものであれば特に制限はない。例えば、円筒形又は角筒形の空胴共振器を用いることができる。本明細書において円筒形の空胴共振器とは、該空胴共振器の中心軸Cに垂直な内側断面形状が円形であるものの他、当該断面形状が楕円形もしくは長円形であるものを含む意味に用いる。また、角筒形の空胴共振器は、中心軸Cに直角な内側断面形状が多角形であるものを意味し、当該断面形状が例えば4〜10角形であることが好ましい。また、多角形の角が、丸みを帯びた形状であってもよい。
空胴共振器21の大きさも上記説明した形態において、目的に応じて適宜に設計することができる。空胴共振器21において中心軸Cの方向の長さは特に限定されないが、短すぎると空胴共振器21内に十分なマイクロ波電力を供給できないことがある。また供給するマイクロ波の波長をλとしたとき、長さがλ以上の場合は、その方向に向かって磁界分布が極大をもつ高次の定在波が形成される共振周波数と、目的の定在波の共振周波数を分離する必要がある。このため、中心軸C方向の空胴共振器の寸法はλ以下とすることが好ましい。λの値は共振周波数によって異なるが、例えば、共振周波数が2.4〜2.5GHzの場合、λは125〜120mmであることが好ましく、共振周波数が900〜930MHzの場合、λは333〜322mmであることが好ましい。
マイクロ波供給口が二つ以上の場合は、お互いの位相を制御することで形成される時間平均的な定在波を用いてもよい。
空胴共振器21は電気抵抗率の小さいものが望ましく、通常は金属製であり、一例として、アルミニウム、銅、鉄、マグネシウム、黄銅、ステンレス、若しくはそれらの合金等を用いることができる。又は、樹脂やセラミック、金属の表面に電気抵抗率の小さい物質をめっき、蒸着などによりコーティングしてもよい。コーティングには銀、銅、金、スズ、ロジウムを含む材を用いることができる。
<マイクロ波発生器>
本発明の化学反応装置1は、マイクロ波発生器から発生したマイクロ波をマイクロ波供給口からアンテナを介して空胴共振器21のマイクロ波照射空間21A内に供給する。マイクロ波発生器は、前述したように、マイクロ波発振器を備え、またマイクロ波発振器を制御する制御部を備えてもよく、さらに減衰器、増幅器、アイソレータ、整合器等を備えていてもよい。もしくは、空胴共振器21にアイリスを介して接続した導波管を用いてマイクロ波照射空間21A内にマイクロ波を供給してもよい。
<マイクロ波発振器>
上記マイクロ波発生器に含まれるマイクロ波発振器としては、発振周波数を2.45GHz帯の範囲内にて調整できるマイクロ波発振器を挙げることができる。例えば、半導体固体素子を用いたマイクロ波発振器や、マグネトロン等のマイクロ波発振器を用いることができる。マイクロ波の周波数を微調整できるという観点から、半導体固体素子を用いたマイクロ波発生器を用いることが好ましい。半導体固体素子を用いたマイクロ波発振器としては、例えばガンダイオード、アバランシェダイオード(インパットダイオード)、等を用いたマイクロ波発生器が挙げられる。もしくは、MHz帯ではコイルとコンデンサからなるLC回路による発振回路も用いることができる。また、これらの素子と周波数制御機構をパッケージ化したVCO(Voltage Controlled Oscillator)やPLL(Phase Lockd Loop)回路等も挙げることができる。マイクロ波発振器によって発生されるマイクロ波は、周波数が2.45GHz帯のマイクロ波に限定されるものではなく、915MHz帯、5.8GHz帯等、その他の周波数帯のマイクロ波を発生するものも、適宜、用いることができる。
<減衰器>
減衰器(アッテネータ)は、被処理対象物の温度を調節するように減衰レベルを調節し、最終のマイクロ波電力を決定する。マイクロ波増幅器の入り口レベルを減衰器で調節することで、最終出力を調節するものである。減衰器を用いないマイクロ波調整手段として、マイクロ波増幅器の増幅率を調整する方法もある。
<制御部>
制御部は、共振周波数の変化に基づいて、マイクロ波供給手段により供給するマイクロ波の周波数を制御する。この共振周波数の変化は、反応原料の、形状、組成、相及び温度等の状態の少なくともいずれかが変動することによって反応原料の誘電率が変化することによる。この誘電率の変化によって、磁界が極大となる周波数が変化し得るため、磁界が極大となる位置を一定位置に制御する。
磁界の極大位置を一定位置に制御するには、マイクロ波発振器から発生するマイクロ波を、空胴共振器のマイクロ波照射空間21A内に形成された定在波の周波数に一致するように調整する方法がある。この一致するとは、完全に一致することが好ましいが、ある範囲内、例えば1%以内の差がある場合も周波数が一致している範ちゅうに含むものとする。
例えば、検出部によって、検出された信号を解析して、マイクロ波発振器へ送る周波数信号を決定する。そして、周波数を一致させたマイクロ波をマイクロ波発振器より発振させて、マイクロ波照射空間21A内に照射する。
制御部の機能は上記に限定されることはなく、マイクロ波処理装置の各種機能を制御することもできる。
上記制御部における制御方法の具体的一例を説明する。検出部によってマイクロ波照射空間21A内のマイクロ波のエネルギー強度に比例した出力信号を検出する。一方、マイクロ波照射空間21Aに供給するマイクロ波は、マイクロ波発振器から発振したマイクロ波もしくはマイクロ波発振器から発振したマイクロ波を増幅器によって増幅したマイクロ波である。このとき、マイクロ波発生器から発生する周波数を例えば2.45GHz帯全域又は2.45GHz帯の一部の帯域で掃引すると、検出部からのエネルギー強度の出力信号は極大値をもつ分布を得る。この極大値はマイクロ波照射空間21A内に定在波が形成できていることを意味しているので、あらかじめTMmn0(mは0以上、nは1以上の整数)モードあるいはTEm0n(m、nは1以上の整数)定在波の共振周波数と比較することで所定のモードの共振周波数を検出することができる。制御部によって、このマイクロ波発生器から発生するマイクロ波の周波数が、検出したマイクロ波の周波数に一致するように、マイクロ波発振器よりマイクロ波を発振する。
もしくは制御部では、検出部からの出力信号を用いず、マイクロ波発生器と空胴共振器21の間に設置する反射波検出器からの反射波信号を用いることもできる。この場合、反射波が小さい、つまり反射波の周波数が極小値となることが、空胴共振器21内にエネルギーが供給され定在波が形成されていることを意味する。したがって、マイクロ波の反射波の極小値からマイクロ波の共振器周波数を導出することもできる。
このようにして、検出部によって検出される極大値、もしくは反射波検出器によって検出される極小値から導出したマイクロ波の共振周波数に一致した周波数のマイクロ波を、マイクロ波発生器のマイクロ波発振器から発振させるようにする。または検出したマイクロ波の共振周波数に一致した周波数のマイクロ波を増幅器から出力させるようにする。
そして、マイクロ波照射空間21A内に共振周波数に一致させた周波数のマイクロ波を供給する。
共振周波数を検出するための操作は定期的に行うことが望ましい。外乱が大きい場合や温度変化、流量変化、組成変化等の状態変化が大きい場合、マイクロ波処理を開始した直後は短い周期、例えば1秒以下の周期で行うことが望ましい。一方、外乱が少ない場合や、温度変化、流量変化、組成変化等の状態変化が少ない場合、マイクロ波処理を開始し十分な時間が経過し安定したのちは、長い周期、例えば1分おきに行ってもよい。
共振周波数を検出するためにマイクロ波発生器からのマイクロ波の周波数を掃引する場合、掃引周波数の幅は狭いほうが望ましい。しかし変動が大きく、掃引周波数の幅が狭すぎる場合には、掃引周波数内に極大値が見つからないことがある。その場合は掃引周波数幅を広げて、再度掃引することで共振周波数を検出することも望ましい。
<マイクロ波増幅器>
マイクロ波発生器には、マイクロ波発振器から発生したマイクロ波を増幅する増幅器を備えることが好ましい。このマイクロ波増幅器の構成に特に制限はないが、例えば、高周波用電界効果トランジスタ(FET)を有する高周波トランジスタ回路で構成されることが、例えば小型化において好ましい。またマイクロ波増幅器の出力電力は、適宜設定することができる。照射するマイクロ波電力を調整する手段として、マイクロ波増幅器の入力段手前に減衰器を設けてもよい。もしくはマイクロ波増幅器の増幅率を調整する手段を用いてもよい。
<アイソレータ>
アイソレータは、マイクロ波発振器にて発生する反射波の影響を抑制(例えば吸収)してマイクロ波増幅器を保護するものであり、一方向(アンテナ方向)にマイクロ波が供給されるようにするものである。このアイソレータの代わりにサーキュレータを用いることもできる。サーキュレータを用いる場合には3つのポートのうち一つのポートに終端抵抗(ダミーロード)を接続する。残りの2つのポートが入力と出力になる。マイクロ波増幅器や、配線、ケーブル、コネクタ類が反射波に対して損傷を受けないレベルであれば、アイソレータもしくはサーキュレータを設けなくてもよい。
<整合器>
整合器は反射波が発生しないように反射波を抑制する機能を有する。整合器としては、可変式のスタブチューナやスラグチューナもしくはEHチューナ等用いることができる。また、被処理対象物のマイクロ波吸収特性が大きく変化しない場合は、固定式の整合器を用いることもできる。また、被処理対象物を設置した際、一時的に整合器を調整できる半固定式の整合器を用いることができる。
例えば、回路基板上にマイクロストリップラインによって構成された線路と、該線路のインピーダンス(例えば、Sパラメータ)を調整するコンデンサとを有する構成をとることができる。また、線路には、線路のインピーダンスを調整するための線路パターン調整部を配してもよい。
マイクロ波増幅器や配線、ケーブル、コネクタ類が反射波に対して損傷を受けないレベルであれば、整合器を設けなくてもよい。
<アンテナ>
円筒形の空胴共振器21の中心軸Cに平行な壁面(円筒の内面)又はその近傍には、マイクロ波供給口が設けられている。マイクロ波供給口を通じてマイクロ波照射空間21Aには、高周波を印加することができるアンテナが配されていることが好ましい。アンテナとしては磁界励起アンテナ、例えばループアンテナ、または電界励起アンテナ、例えばモノポールアンテナやダイポールアンテナ等を用いることが好ましい。アンテナの入力端は、整合器の線路の出力端に接続されている。
もしくは空胴共振器21にアイリスを設けた導波管を用いてマイクロ波供給口を構成することもできる。
通常、マイクロ波発振器から発せられたマイクロ波を、マイクロ波増幅器、アイソレータ、整合器を介してアンテナを通してマイクロ波照射空間21A内に供給する。
マイクロ波処理空間21A内の上記アンテナを磁界励起アンテナとなるループアンテナとする場合の端部は空胴共振器壁面など接地電位と接続することが好ましい。このアンテナにマイクロ波(高周波)を印加することで、例えばループアンテナのループ内に磁界が励振され空胴共振器内に定在波を形成する形態とすることができる。
マイクロ波処理空間21A内の上記アンテナを電界励起のモノポールアンテナ、ダイポールアンテナとする場合、端部は空胴共振器壁面に接続せず、オープンとすることが好ましい。
上記アンテナをループアンテナとして構成する場合の端面は空胴共振器壁面など接地電位と接続することが好ましい。アンテナにマイクロ波(高周波)を印加することで、ループアンテナのループ内に磁界が励振され空胴共振器21内に定在波を形成する形態とすることができる。
例えば、上記の円筒状の空胴共振器21においてTM110のシングルモード定在波を形成させた場合、中心軸Cにおいて、磁界強度が極大になり、中心軸C方向に磁界強度が均一になる。したがって、反応器10において、その内部に存在する原料溶液30を、均一に、高効率にマイクロ波加熱することが可能になる。
なお、マイクロ波発生器から導波管を用いてマイクロ波供給口にマイクロ波を供給してもよい。
さらに上記構成では、装置を小型化するために、空胴共振器21と一体に構成された筐体内に、マイクロ波増幅器、アイソレータ、整合器、アンテナ等を配することも好ましい。
<反応原料>
本発明の化学反応装置1では、反応原料(例えば、反応器内に配された原料溶液)は、空胴共振器21内部に定在波の電界の極大点もしくはその近傍、又は磁界の極大点もしくはその近傍に対応させて配される。反応原料11が誘電損失を有する場合は、電界の極大点もしくはその近傍に配するのがよいが、誘電損失が大きい場合には、反応器10の最大長さが大きい場合、定在波が形成できないこともある。このとき、反応原料が磁気損失を有する場合や、導電率を有する場合もしくはイオン性溶液が含まれる場合は、磁界の極大点もしくはその近傍に配することで最大長さが大きい反応器10を用いることができる。粘性の高い流体や、スラリーを含む流体の場合、反応器の最大長さが大きいほうが、圧力損失を低く抑えることができる。例えば、粘度が10−2Pa・s以上10Pa・s以下の流体が好ましく、1Pa・s以上10Pa・s以下の流体がより好ましく、10Pa・s以上5×10Pa・s以下の流体がさらに好ましい。また固体粒子が0.1質量%以上95質量%以下含まれるスラリーを含む流体が好ましく、固体粒子が1質量%以上90質量%以下含まれるスラリーを含む流体がより好ましく、固体粒子が5質量%以上80質量%以下含まれるスラリーを含む流体がさらに好ましい。
例えば、ゼオライト合成に用いる反応原料は水ガラスとよばれる粘度の高い流体であるとともに、反応生成物は固体分を含むスラリーとなる。この場合、空胴共振器21内に形成された定在波の磁界強度が極大になる部分に沿って配せば、より効率的な加熱が可能になる。
別の例として、金属ナノ粒子合成に用いる反応原料は、高分子の保護剤を多く含むため、粘度の高い流体であるとともに、反応原料中にイオン性分子が含まれるため反応管最大長さを大きくすると定在波形成が困難となる。生産性を上げるためには、高濃度原料を用いることが望まれるため、さらに粘度の高い流体かつ、多くのイオンを含む流体を扱う必要がある。空胴共振器21内に形成された定在波の磁界強度が極大になる部分に沿って配せば、より効率的な加熱が可能になる。
図1に示す形態の化学反応装置1においては、反応器10内に配される反応原料30に特に制限はなく、液体、固体、粉末、スラリーおよびそれらの混合物を挙げることができる。本発明の化学反応装置1は、反応原料ないし反応生成物が沈殿を生じるようなものでも好適に適用できる。
[化学反応方法]
化学反応方法は、図1に示した化学反応装置1を用いる。先ず、管構造の反応器10内の反応原料が処理される部位に反応原料30を充填する(原料充填工程)。次に、反応器10内に充填された反応原料30を静止状態にして、温度制御装置20(空胴共振器21)を反応器10にそって移動させ、反応原料30を連続的に加熱処理もしくは冷却処理して化学反応を進行させる(化学反応工程)。次に、化学反応によって生成した化学反応物質を排出する(排出工程)。そして、原料充填工程、化学反応工程、及び排出工程を順次繰り返す。このように各工程を何度も順に繰り返すことによって、実質的に、反応原料を反応器のボール弁12側からボール弁13側に流して処理しているのと同様になる。このような処理方法をセミフロー式ともいう。
また、原料充填工程と化学反応工程との間に、反応器10内に充填された反応原料30を加圧する加圧工程を有することが好ましい。
以下、化学反応方法の好ましい一実施形態について詳述する。
化学反応方法は、図2に示すように、まず、原料充填工程を行う。原料充填工程は、ボール弁12を開け、ボール弁13及びボール弁16を閉じた状態で、反応原料を送給するポンプ(図示せず)によって、反応原料30を反応器10の内部に供給して充填する。このとき、ボール弁13の反対側はピストン11によって反応器10内は閉塞状態とされている。
次に図3に示すように、加圧工程を行うことが好ましい。加圧工程は、ボール弁12及びボール弁13を閉じ、ボール弁16を開けた状態で、昇圧ポンプ14によって作動流体(例えば、水)を反応器10内に圧入し、反応器10内の反応原料30の圧力を所定圧力に加圧する。加圧力は、圧力ゲージによって確認することが好ましい。反応器10の内圧が所定圧力に到達したのち、ボール弁16を閉じる。
次に図4に示すように、化学反応工程を行う。化学反応工程は、ボール弁12、ボール弁13及びボール弁16を閉じた状態で、空胴共振器21をボール弁13側からピストン11側に反応器10に沿って矢印A方向に移動させる。移動中に空胴共振器21によってマイクロ波を照射することで空胴共振器21内にある反応器10内の反応原料(反応溶液)30を加熱して、反応生成物(化学物質)32を生成する。すなわち、空胴共振器21が移動した位置の反応原料30を加熱する。このとき、反応器10内の反応原料30に対して必要な反応時間が確保されるように、空胴共振器21を移動させることが好ましい。そのための空胴共振器21の移動速度は、反応原料が化学反応を生じる温度が確保されるように設定されることが好ましい。
または、空胴共振器21が、移動と一定時間の停止とを繰り返すことも可能である。このようにすることで、マイクロ波照射による加熱時間を十分に確保することができる。
このように、空胴共振器21を移動させることで、反応器10の長さ方向全域にわたって、マイクロ波を照射して反応原料30を加熱することができ、化学反応を促進させることが可能になる。
そして反応器10の全域で反応を進めることができたら、空胴共振器21によるマイクロ波照射を停止する。そして図5に示すように、排出工程を行う。この排出工程は、ボール弁12、16を閉じ、ボール弁13を開けた状態で行う。上記のように弁操作を行った後、ピストン11を駆動させ、反応器10内に押し込むことによって、反応生成物32を反応器10内から押し出す。又は昇圧ポンプ14を作動させる(この場合は、ボール弁16は開ける)ことによって、作動流体等を反応器10内に押し込むことで、化学反応後の製品となる反応生成物32を反応器10内から排出する。このとき、ボール弁13の流路13Pの内径が反応器10の内径と同等になっていれば、反応生成物32がスラリーや固形物であっても、大きな動力なしに、排出することができる。そのため、反応器10の出口における反応生成物による閉塞のトラブルが生じにくくなる。
上記化学反応において、未反応の反応原料30と反応終了後の反応生成物32との間に挟み込むように、空気等の気体を、又は、反応原料30及び反応生成物32と非相溶の流体を反応器10内に供給しておくことが好ましい。非相溶の流体としては、水系溶媒、有機系溶媒、フロン系溶媒、気体等があげられる。こうすることによって、反応原料に作動流体が溶解することを防ぐことができる。
上記化学反応方法における反応器10内の反応原料の加熱の際には、空胴共振器内にマイクロ波を照射して、該空胴共振器内にTMmn0モード(mは0以上、nは1以上の整数)又はTEm0pモード(m、pは1以上の整数)のシングルモードの定在波を形成する。そして、該定在波を用いて反応器10内の反応原料30を加熱する。この加熱は、主に加熱処理であるが、例えば吸熱反応により分子の結合を切るような処理も含む。マイクロ波には例えば915MHz帯や2.45GHz帯の周波数のマイクロ波を用いる。定在波の電界強度が極大もしくは磁界強度が極大となる部分に沿って反応原料30を配し、該反応原料30を加熱することにより化学反応を生じさせることを含む。
化学反応方法としては、反応原料の温度を制御することによって、反応原料が関わる反応を促進もしくは停止することができる。例えば、反応原料の温度を高めることによって反応を促進し、加熱を停止して温度を下げることによって反応を停止することができる。
上記化学反応方法では、反応器10を冷却して、反応原料を冷やし、もしくは凍結させて、加熱時における反応原料の不要な拡散を抑えてもよい。例えば、図6に示すように、反応器10の周囲に、冷媒によって反応器10内を冷却する冷却器41、42を配してもよい。冷却器41、42としては、例えば、冷媒が循環する冷媒配管が挙げられる。空胴共振器21の進行方向側に配した冷却器41は、マイクロ波照射前の反応原料30を低温にする。例えば、反応原料30を凍結させてもよい。低温又は凍結された反応原料30は、マイクロ波照射によって加熱され、化学反応を生じさせることができる。空胴共振器21の進行方向とは反対側に配した冷却器42は、空胴共振器21によるマイクロ波加熱によって生じた化学反応を速やかに停止する。また、反応生成物32の拡散を防止することができる。これによって、マイクロ波照射による化学反応時間を一定時間により正確に制御することが可能になる。
または、空胴共振器21を含む反応器10全体を、例えば、アイスバスに入れて、空胴共振器21によるマイクロ波加熱を行ってもよい。この場合、空胴共振器21による加熱部分以外は冷却されるため、化学反応が停止し、反応生成物の拡散を防ぐことができる。この冷却では、空胴共振器21の移動速度よりも早い冷却速度を有することが好ましい。
図6に示したように、反応器10を水平方向に配する横型の反応器の場合で、反応生成物32が反応原料30よりも比重が重い場合、反応器10の底部に反応生成物32が溜まるが、反応原料を流動させる化学反応ではないため、問題とはならない。
上記化学反応としては、転移反応、置換反応、付加反応、環化反応、縮合反応、還元反応、酸化反応、水素化反応、接触還元反応、異性化反応、開裂反応、不均化反応、接触分解反応、選択的触媒還元反応、選択的酸化反応、ラセミ化反応、等が例示される。さらに高分子合成に用いられるラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合、無機反応等が例示されるが、これらに限定されず種々の化学反応が挙げられる。また、触媒の作用を利用した触媒反応であることも好ましい。
なかでも反応原料ないし反応生成物が沈殿を生じるような反応が好ましい。例えば、ナノ粒子合成、水熱合成、微粒子表面改質等の反応がある。好適な例としてゼオライトの合成反応が挙げられる。
上記の化学反応は、通常、マイクロ波照射によって目的の反応を生じる反応原料を加熱することにより化学反応を生じさせることができる。または触媒に反応原料を通し、それにマイクロ波照射することによって化学反応を生じさせることができる。例えば、上述した反応管の中に反応原料を供給し、マイクロ波照射によって定在波を形成し、定在波の磁界強度の極大部分によって反応管内の該反応原料を加熱して、化学反応を生じさせることができる。または反応管内に触媒を配し、この触媒に反応原料を通し、上記同様に定在波の磁界強度の極大部分によって反応原料を加熱することによって、もしくは触媒を加熱することによって化学反応を生じさせることができる。
上記の化学反応それ自体は公知であり、本発明の化学反応方法には、加熱状態の制御以外は、公知の化学反応を広く適用することができる。
本発明の化学反応方法において、反応時間、反応温度、反応基質、反応媒体等の条件は、目的の化学反応に応じて適宜に設定すればよい。例えば、化学ハンドブック(鈴木周一・向山光昭編、朝倉書店、2005年)、マイクロ波化学プロセス技術II(竹内和彦、和田雄二監修、シーエムシー出版、2013年)、特開2010−215677号公報、特開2011−137226号公報等を参照し、化学反応条件を適宜に設定することができる。
本発明の化学反応装置1は、反応器10内に配された反応原料30を、空胴共振器21を移動することによって、反応器10内全体の反応原料30の加熱する形態とすることができる。また、反応原料30の加熱により生じる化学反応は、反応原料30自体が化学反応を起こして反応生成物を生じてもよく、または加熱した被加熱対象物の作用(典型的には触媒作用)により反応原料30に化学反応が生じる形態としてもよい。
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。
[実施例1]
実施例1では、図1に示した化学反応装置1を用いて、ゼオライトのマイクロ波加熱合成を行った。この化学反応装置1は、マイクロ波発振器(2.4〜2.5GHz、最大出力100W)、磁界が中心軸で極大となるTM110モードの空胴共振器21、昇圧ポンプ14、ボール弁12、13、16等を含む加圧可能なセミフロー式の化学反応装置である。反応器10には外径8mm、内径6mmの石英製の反応管を用い、その反応器10の中心軸Ctに空胴共振器21の中心軸Cが一致するように、かつ反応器10にそって移動可能となるように、空胴共振器21を設置した。そして反応器10内にて、反応原料30であるゼオライトの原料溶液の加熱を行った。
原料溶液は、塩化アルミニウム六水和物、コロイダルシリカ30質量%溶液、水酸化ナトリウムをそれぞれ純水に溶解させて、それらを、Na:Al:Si:HO=4:1:1:53となるように混合した後、室温にて24時間撹拌して作製した。その後、送液手段にダブルプランジャーポンプを用いて120ml/hの流量にて、ボール弁12を開けて原料溶液を反応器10内に充填した。そして、空胴共振器21の移動速度を0.5mm/s、設定加熱温度を150℃にして、該空胴共振器21を反応器10に沿ってボール弁13側からボール弁12側に向けて移動して、反応器10の全長に亘りマイクロ波加熱を行った。温度計測には放射温度計(図示せず)を用い、反応器10の表面温度を測定した。なお、昇圧ポンプ14の作動流体(水)の排出量を調整することで、加熱時の反応管内部の圧力を0.5MPa〜0.8MPaの範囲に保持した。加熱後にボール弁13を開けてピストン11を駆動することによって溶液(反応生成物)を排出した。そして、排出物を遠心分離することで沈殿物を回収し、純水を用いて数回、遠心分離での洗浄を繰り返した。その後に、沈殿物を乾燥させて粒子解析を行った。粒子解析には、X線回折装置(Rigaku製SmartLab)を用いた。
ゼオライト原料溶液加熱時の温度、入射波の出力、反射波の出力及び共振周波数の時間変化に関して、設定温度である150℃に対して±2℃での温度制御が可能であり、また反射波は小さく、効率の良いマイクロ波加熱が可能であった。なお、沸点近傍での加熱合成のため、反応管内部の圧力が飽和蒸気圧に近い場合には気泡が生じうる。本実験においても合成途中で数個の気泡が発生したが、気泡発生に伴う温度や共振周波数の変動は小さく、安定した加熱制御が可能であった。
合成物のX線回折パターンより、SOD(sodalite)型ゼオライトの合成を示すピークが確認された。
一般的にゼオライト原料液は多くのイオンを含み、高い電気伝導性を有することから、磁界加熱が、効率の良い加熱に適しているといえる。
[実施例2]
実施例2では、反応原料30であるゼオライトの原料溶液にフライアッシュ(石炭灰)を含むスラリーを用いてゼオライトのマイクロ波加熱合成を行った。外径6mm、内径4mmの石英製の反応管を用いた以外は、実施例1と同様の化学反応装置1を用いた。
原料溶液(原料懸濁液)は、フライアッシュ(JIS規格IV種)に5Mの水酸化ナトリウム水溶液を加えて、室温にて10分間撹拌して作製した。原料溶液に含まれるフライアッシュの量は、約35質量%とした。その後、送液手段にダブルプランジャーポンプを用いて120ml/hの流量にて、ボール弁12を開けて原料溶液を反応器10内に充填した。そして、空胴共振器21の移動速度を2mm/min、設定加熱温度を140℃にして、該空胴共振器21を反応器10に沿ってボール弁13側からボール弁12側に向けて移動して、反応器10の全長に亘りマイクロ波加熱を行った。なお、原料溶液のマイクロ波加熱時間は10分間とした。昇圧ポンプ14の作動流体(水)の排出量を調整することで、加熱時の反応器内部の圧力を0.8MPa〜1.0MPaの範囲に保持した。加熱後、ボール弁13を開けてピストン11を駆動することによって溶液(反応生成物)を排出した。そして、排出物を遠心分離することによって沈殿物を回収し、純水を用いて数回、遠心分離での洗浄を繰り返した。その後に、沈殿物を乾燥させて粒子解析を行った。粒子解析には、上記のX線回折装置および走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー社製S−4800)を用いた。
図7に、原料として用いたフライアッシュ粒子およびマイクロ波加熱処理後の粒子のX線回折パターンを示した。マイクロ波加熱処理によって、原料に含まれていた石英およびムライトのピークに加えて、ゼオライトの1種であるヒドロキシソーダライトが合成されたことを示すピークが確認された。図8に示したように、原料として用いたフライアッシュ粒子およびマイクロ波加熱処理後の粒子の走査型電子顕微鏡像によって、加熱処理により粒子表面の起伏が増加し、粒子の表面積が増大したことが確認できた。
以上より、本発明の化学反応装置1はスラリー状の原料溶液を用いたマイクロ波化学合成に適用できることがわかった。
[実施例3]
実施例3では、図1に示した化学反応装置1を用いて、粘度の高い原料溶液を用いた白金ナノ粒子のマイクロ波加熱合成を行った。この化学反応装置1は、マイクロ波発振器(900〜930MHz、最大出力300W)、電界が中心軸で極大となるTM010モードの空胴共振器21、昇圧ポンプ14、ボール弁12、13、16等を含む加圧可能なセミフロー式の化学反応装置である。反応器10には外径10mm、内径8mmの石英製の反応管を用い、その反応器10の中心軸Ctに空胴共振器21の中心軸Cが一致するように、かつ反応器10に沿って移動可能となるように、空胴共振器21を設置した。そして反応器10内にて、反応原料30である白金ナノ粒子の原料溶液の加熱を行った。
原料溶液は、塩化白金酸六水和物200mMおよびポリビニルピロリドン(重量平均分子量10000)を20質量%溶解させたグリセリン溶液(粘度:20Pa・s以上(25℃))を用いた。送液手段にダブルプランジャーポンプを用いて、ボール弁12を開けて原料溶液を反応器10内に充填した。そして、空胴共振器21の移動速度を10mm/min、設定加熱温度を140℃にして、該空胴共振器21を反応器10に沿ってボール弁13側からボール弁12側に向けて移動して、反応器10の全長に亘りマイクロ波加熱を行った。なお、原料溶液のマイクロ波加熱時間は4分間に相当した。温度計測には放射温度計(図示せず)を用い、反応器10の表面温度を測定した。加熱時の反応器内部の圧力は、大気圧に保持した。マイクロ波加熱処理後、ボール弁13を開けてピストン11を駆動することによって反応溶液(反応生成物)を排出した。粒子解析には、透過型電子顕微鏡(TEM、FEI社製TECNAI G2)を用いて反応溶液中の粒子の観察を行った。
マイクロ波加熱処理後の溶液の外観色は、加熱前のオレンジ色から、白金ナノ粒子を含む溶液に特有の黒色へと変化していた。図9に示す透過型電子顕微鏡像より、粒子径2〜5nmの白金ナノ粒子が合成されたことが確認できた。
以上より、本発明の化学反応装置1は粘度が高い原料溶液を用いたマイクロ波加熱合成に適用できることがわかった。
[実施例4]
実施例4では、原料溶液とマイクロ波加熱条件が異なる以外は実施例1と同様の手順にて、ゼオライトのマイクロ波加熱合成を行った。原料溶液は、アルミン酸ナトリウム、コロイダルシリカ30質量%溶液、水酸化ナトリウムをそれぞれ純水に溶解させて、それらを、Na:Al:Si:HO=4:1:1:90(モル比)となるように混合した後、室温にて240時間撹拌して作製した。マイクロ波加熱時の空胴共振器21の移動速度を1cm/min、設定加熱温度を140℃とした。なお、原料溶液のマイクロ波加熱時間は2分間に相当した。そして、遠心分離を経て得られた沈殿物を乾燥させて、X線回折測定および透過型電子顕微鏡にて粒子解析を行った。図10に示すX線回折パターンより、FAU型ゼオライト単相を確認した。図11に示す透過型電子顕微鏡像より、粒子径10〜30nmの結晶粒子の生成を確認した。
さらに、当該ゼオライトの細孔特性を調べるために窒素吸着測定(測定装置:マイクロトラック・ベル社製BELSORP−MAX)を行った。測定のための前処理として、150℃で24時間の加熱を施した。図12に示す窒素吸着等温線より、マイクロポア(2nm未満)、メソポア(2nm以上50nm未満)、及びマクロポア(50nm以上)領域に於いて細孔が確認され、BET(Brunauer−Emmett−Teller)法による細孔容積は其々、0.24、0.54、0.50cm/gであった。また、BETプロットを行った結果、比表面積は670m/gであった。さらに、BJH法によるメソポアの細孔径分布の解析結果を図13に示す。図13では、44nm付近にピークが見られ、多数のメソポアが存在していることが分かった。
以上より、一般的にメソポーラス構造を有するゼオライトナノ粒子を合成する上で必要不可欠とされている有機構造規定剤を添加せずに、メソポーラス構造を有するゼオライトナノ粒子を合成できることがわかった。
1 化学反応装置
10 反応器
11 ピストン
12、13 ボール弁
21P、13P 流路
14 昇圧ポンプ
15 配管
16 仕切弁(ボール弁)
20 温度制御機構
21 空胴共振器
21A マイクロ波照射空間
30 反応原料
32 反応生成物(化学物質)
C 空胴共振器の中心軸
Ct 反応器の中心軸

Claims (16)

  1. 管構造を有する反応器と、
    前記反応器にそって移動可能に配された温度制御機構と、
    前記反応器内に得られた化学物質を取り出す取出し手段とを含み、
    前記温度制御機構を前記反応器にそって移動させることにより前記反応器内に配した反応原料を連続的に加熱処理して、前記反応器内に化学物質を生成し、前記取出し手段によって該化学物質を取り出す、化学反応装置。
  2. 前記反応器は前記温度制御機構が直線的に移動する部位を有する請求項1に記載の化学反応装置。
  3. 前記反応器内を加圧する加圧手段と、
    前記反応器の出口部分に閉塞状態もしくは狭窄状態を作り出す調圧機構とを有する請求項1又は2に記載の化学反応装置。
  4. 前記温度制御機構は、電磁波照射による非接触加熱装置である請求項1〜3のいずれか1項に記載の化学反応装置。
  5. 前記非接触加熱装置は、前記反応器内に電磁波エネルギーを集中させる機構を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の化学反応装置。
  6. 前記非接触加熱装置は、電磁波エネルギーを集中させる電磁波照射空間を有する空胴共振器を含む請求項5に記載の化学反応装置。
  7. 前記空胴共振器は、該空胴共振器内への電磁波照射により、TMmn0モード(mは0以上の整数、nは1以上の整数)もしくはTEm0pモード(mおよびpは1以上の整数)のシングルモードの定在波を形成する請求項6に記載の化学反応装置。
  8. 管構造を有する反応器内に反応原料を充填する原料充填工程と、
    温度制御機構を前記反応器にそって移動させ、前記反応原料を連続的に加熱処理することにより化学反応を生じる化学反応工程と、
    前記化学反応により生成した化学物質を排出する排出工程とを有し、
    前記原料充填工程、前記化学反応工程及び前記排出工程を順次繰り返す化学反応方法。
  9. 前記反応原料は、粘度が10−2Pa・s以上10Pa・s以下の流体、もしくは固体粒子が1質量%以上95質量%以下含まれるスラリーを含む請求項8に記載の化学反応方法。
  10. 前記原料充填工程と前記化学反応工程との間に、前記反応器内に充填された反応原料を加圧する加圧工程を有する請求項8に記載の化学反応方法。
  11. 前記反応原料の加圧に当たり、前記反応器の出口部分を閉塞状態もしくは狭窄状態にし、前記反応原料の供給工程や前記化学物質の排出工程では、前記反応器の出口部分を開放状態にする請求項10に記載の化学反応方法。
  12. 前記温度制御機構による加熱は、電磁波照射による非接触加熱である請求項8〜11のいずれか1項に記載の化学反応方法。
  13. 前記電磁波照射により、前記反応器内に電磁波エネルギーを集中させる請求項8〜12のいずれか1項に記載の化学反応方法。
  14. 前記温度制御機構は空胴共振器を含み、該空胴共振器内に定在波を形成することにより前記反応器内に電磁波エネルギーを集中させる請求項13に記載の化学反応方法。
  15. 前記定在波は、TMmn0モード(mは0以上の整数、nは1以上の整数)もしくはTEm0pモード(mおよびpは1以上の整数)のシングルモードの定在波である請求項14に記載の化学反応方法。
  16. 前記化学反応において、未反応の反応原料と反応終了後の生成物との間に挟み込むように、気体を、又は、反応原料及び反応生成物と非相溶の流体を前記反応器内に供給する請求項8〜15のいずれか1項に記載の化学反応方法。
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