本開示の一態様に係る車両駆動装置は、車両に搭載される3相モータを駆動するための、複数のスイッチング素子が3相ブリッジ構成で接続されたインバータを制御するPWM(Pulse Width Modulation)信号を出力するマイコンと、前記マイコンから出力された前記PWM信号に基づいて、前記複数のスイッチング素子を駆動するPWM駆動回路と、前記インバータの異常時に、前記複数のスイッチング素子のうち下アームのスイッチング素子を一括して短絡する3相短絡を行う3相短絡駆動回路と、を備える。そして、前記3相短絡駆動回路は、前記3相短絡の指令信号により、前記PWM駆動回路のゲート出力を遮断するとともに、前記下アームのスイッチング素子の前記ゲートに電圧を印加する第1スイッチと、前記3相短絡の前記指令信号により、前記複数のスイッチング素子のうち上アームのスイッチング素子のゲートソース間を短絡させる第2スイッチとを有する。
これにより、車両駆動装置は、3相短絡の指令信号によりインバータが3相短絡制御の状態となる際に、第1スイッチにより下アームのスイッチング素子のゲートに電圧が印加されるので、当該スイッチング素子をオンさせることができる。また、車両駆動装置は、3相短絡の指令信号によりインバータが3相短絡制御の状態となる際に、第2スイッチにより上アームのスイッチング素子のゲートソース間を短絡させることで、当該スイッチング素子を強制的にオフすることができる。よって、車両駆動装置は、安定して3相短絡を実施することができる。
また、例えば、前記PWM駆動回路の電源は、前記3相モータを駆動するための第1直流電池、および、前記車両の電装品に電力を供給するための、前記第1直流電池よりも電圧が低い第2直流電池の少なくとも一方に基づく電源でもよい。
これにより、車両駆動装置は、専用の電源を設けずに、PWM駆動回路用の電源と下アームのスイッチング素子のゲートとを第1スイッチを介して接続するといった簡単な構成で、下アームのスイッチング素子のゲートに電圧を印加することができる。
また、例えば、前記インバータの異常は、前記マイコンの異常でもよい。
これにより、車両駆動装置は、マイコンに異常が発生し、当該マイコンが正常にスイッチング素子のオン・オフを制御できない場合に、3相短絡制御の状態になる。車両駆動装置は、例えば、マイコンの異常により弱め磁束制御が行えず誘起電圧の上昇を抑制することが困難な場合に、3相短絡制御の状態になる。よって、車両駆動装置は、マイコンに異常が発生したことに起因して誘起電圧が上昇することを抑制することができる。
また、例えば、前記マイコンの異常を検出するための異常検出回路をさらに備え、前記異常検出回路は、前記マイコンの異常を検出すると、前記3相短絡の前記指令信号を前記3相短絡駆動回路に出力してもよい。
これにより、車両駆動装置は、マイコンの異常が発生したときに3相短絡制御の状態になるので、マイコンに異常が発生したことに起因して誘起電圧が上昇することを抑制することができる。
また、例えば、前記インバータの異常は、前記第1直流電池の電圧が所定電圧を超える過電圧状態でもよい。
これにより、車両駆動装置は、インバータに過電圧が発生したときに3相短絡制御の状態になるので、3相ブリッジ回路にかかる過電圧を低減することができる。
また、例えば、前記過電圧状態を検出するための過電圧検出回路をさらに備え、前記過電圧検出回路は、前記インバータに接続される前記第1直流電池に電気的に接続され、前記過電圧状態を検出すると、前記3相短絡の前記指令信号を前記3相短絡駆動回路に出力してもよい。
これにより、第1直流電池に電気的に接続された過電圧検出回路を用いて、インバータの過電圧を検出することができる。
また、例えば、前記3相短絡の前記指令信号を保持するラッチ回路をさらに備え、前記ラッチ回路の出力は、前記第1スイッチと、前記第2スイッチとに入力されてもよい。
これにより、インバータの過電圧の電圧値が過電圧と判定される閾値前後でふらついた場合に、通常制御の状態と3相短絡制御の状態とが短期間に繰り返し切り替わることを抑制することができる。つまり、車両駆動装置は、さらに安定して3相短絡を実施することができる。また、ラッチ回路を用いることで、第1スイッチおよび第2スイッチの切り替えを同時に行うことができる。
また、例えば、前記第2スイッチおよび前記下アームのスイッチング素子と接続される半導体スイッチをさらに備え、前記第2スイッチは、フォトカプラであり、前記3相短絡の前記指令信号が前記フォトカプラに入力されて前記半導体スイッチがオンになることで、前記下アームのスイッチング素子の前記ゲートソース間を短絡させてもよい。
これにより、第2スイッチは、半導体スイッチと第2スイッチに接続される部品(例えば、ラッチ回路)との絶縁を維持した状態で、ゲートに蓄積された電荷を放電することができる。また、第2スイッチの動作を高速に行うことができる。
また、例えば、前記第2スイッチは、リレーを有し、前記3相短絡の前記指令信号が入力されて前記リレーがオンになることで、前記下アームのスイッチング素子の前記ゲートソース間を短絡させてもよい。
これにより、第2スイッチは、上アームのスイッチング素子のゲートと第2スイッチに接続される部品(例えば、ラッチ回路)との絶縁を維持した状態で、ゲートに蓄積された電荷を放電することができる。また、簡易な構成で第2スイッチを実現することができる。
また、例えば、前記インバータの異常時に、前記複数のスイッチング素子のうち下アームのスイッチング素子を一括して短絡する3相短絡を行うための信号を前記PWM駆動回路に出力する3相短絡切替回路を、さらに備え、前記3相短絡切替回路は、前記マイコンと前記PWM駆動回路との間に電気的に接続され、通常動作時は前記PWM信号を駆動信号として前記PWM駆動回路に出力し、前記3相短絡の指令信号が入力されると、前記下アームのスイッチング素子をオンに、かつ、前記複数のスイッチング素子のうち上アームのスイッチング素子をオフにする前記駆動信号を前記PWM駆動回路に出力する。
これにより、車両駆動装置は、第1スイッチが故障しており3相短絡駆動時に接続が切り替わらない場合であっても、3相短絡切替回路からの駆動信号により3相短絡駆動を実行することができる。よって、3相短絡駆動を実行できる確実性が増す。
また、例えば、前記3相短絡切替回路は、前記駆動信号を前記PWM駆動回路に出力する論理回路を含んでもよい。
これにより、車両駆動装置は、複数のスイッチング素子のオン・オフ動作を、論理回路を用いない場合に比べて高速に行うことができる。
また、例えば、前記インバータの異常は、前記マイコンの異常であることを含んでもよい。
これにより、車両駆動装置は、マイコンに異常が発生し、当該マイコンが正常にスイッチング素子のオン・オフを制御できない場合に、3相短絡制御の状態になる。車両駆動装置は、例えば、マイコンの異常により弱め磁束制御が行えず誘起電圧の上昇を抑制することが困難な場合に、3相短絡制御の状態になる。よって、車両駆動装置は、マイコンに異常が発生したことに起因して誘起電圧が上昇することを抑制することができる。
また、例えば、前記マイコンの異常を検出するための異常検出回路をさらに備え、前記異常検出回路は、前記マイコンの異常を検出すると、前記3相短絡の前記指令信号を前記3相短絡切替回路に出力してもよい。
これにより、車両駆動装置は、マイコンの異常が発生したときに3相短絡制御の状態になるので、マイコンに異常が発生したことに起因して誘起電圧が上昇することを抑制することができる。
また、例えば、前記インバータの異常は、前記3相モータを駆動するための電源の電圧が所定電圧を超える過電圧状態であることを含んでもよい。
これにより、車両駆動装置は、インバータに過電圧が発生したときに3相短絡制御の状態になるので、3相ブリッジ回路にかかる過電圧を低減することができる。
また、例えば、前記過電圧状態を検出するための過電圧検出回路をさらに備え、前記過電圧検出回路は、前記インバータに接続される前記電源に電気的に接続され、前記過電圧状態を検出すると、前記3相短絡の前記指令信号を前記3相短絡切替回路に出力してもよい。
これにより、第1直流電池に電気的に接続された過電圧検出回路を用いて、インバータの過電圧を検出することができる。
また、例えば、前記3相短絡切替回路は、前記3相短絡の前記指令信号を保持するラッチ回路をさらに有してもよい。
これにより、インバータの過電圧の電圧値が過電圧と判定される閾値前後でふらついた場合に、通常制御の状態と3相短絡制御の状態とが短期間に繰り返し切り替わることを抑制することができる。つまり、車両駆動装置は、さらに安定して3相短絡を実施することができる。
また、例えば、前記駆動信号は、前記複数のスイッチング素子のうち上アームのスイッチング素子を駆動する上アーム駆動信号と、前記下アームのスイッチング素子を駆動する下アーム駆動信号とを含み、前記3相短絡切替回路は、前記上アーム駆動信号と、前記下アーム駆動信号とが入力される監視回路をさらに有し、前記監視回路は、前記上アーム駆動信号と前記下アーム駆動信号とが同時にオンになる信号であることを検出すると、前記PWM駆動回路の前記複数のスイッチング素子への出力を遮断する遮断回路を動作させてもよい。
これにより、3相短絡切替回路が有する部品や基板などが故障して上下アームのスイッチング素子を同時にオンさせる信号が出力されている場合に、PWM駆動回路から複数のスイッチング素子への駆動信号が遮断される。つまり、複数のスイッチング素子の各々はオフとなる。よって、車両駆動装置は、上下アームのスイッチング素子が同時にオンしてしまい、上下間短絡が発生することを抑制することができる。
また、例えば、前記監視回路は、前記マイコンに検出結果を出力し、前記マイコンは、前記検出結果を取得すると、前記3相短絡の前記指令信号の出力を禁止するとともに、前記3相モータの回転数を制限するための信号を出力してもよい。
これにより、車両駆動装置は、3相短絡切替回路に異常がある場合に、3相短絡駆動が行われることを禁止することができる。また、車両駆動装置は、3相モータの回転数を制限するための信号を、例えば上位ECU(Electronic Control Unit)に出力し、当該上位ECUが車両の速度を低下するように制御することで、3相モータの回転数が上昇してインバータが過電圧状態となることを抑制することができる。
また、例えば、前記遮断回路は、前記上アーム駆動信号と前記下アーム駆動信号とが同時にオンになる信号であることを検出すると、前記PWM駆動回路の前記複数のスイッチング素子への出力をオフにしてもよい。
これにより、上アーム駆動信号と下アーム駆動信号とが同時にオンになる信号が検出されると、遮断回路により、PWM駆動回路から複数のスイッチング素子へ出力された信号がその経路上で遮断される。つまり、PWM駆動回路から複数のスイッチング素子への駆動信号は、当該複数のスイッチング素子には入力されない。よって、車両駆動装置は、3相短絡切替回路が有する部品や基板などが故障して上下アームのスイッチング素子を同時にオンさせる信号が出力されている場合に、上下アームのスイッチング素子を同時にオフとすることで、上下間短絡が発生することを抑制することができる。
また、例えば、前記遮断回路は、前記上アーム駆動信号と前記下アーム駆動信号とが同時にオンになる信号であることを検出すると、前記PWM駆動回路への電力供給をオフにしてもよい。
これにより、上アーム駆動信号と下アーム駆動信号とが同時にオンになる信号が検出されると、遮断回路により、PWM駆動回路への電力供給がオフになる。つまり、PWM駆動回路から複数のスイッチング素子への駆動信号の出力が停止する。よって、車両駆動装置は、3相短絡切替回路が有している部品や基板などが故障して上下アームのスイッチング素子を同時にオンさせる信号が出力されている場合に、上下アームのスイッチング素子を同時にオフとすることで、上下間短絡が発生することを抑制することができる。
また、例えば、前記遮断回路は、前記第1スイッチと前記PWM駆動回路との間に電気的に接続される。
これにより、論理回路が故障して同時オンとなる信号が出力されたときに、遮断回路によりPWM駆動回路をオフすることができる。
なお、これらの全般的または具体的な態様は、システム、方法、または、集積回路で実現されてもよく、システム、方法、または、集積回路の任意な組み合わせで実現されてもよい。
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
また、本明細書において、同時などの要素間の関係性を示す用語、および、数値は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
(実施の形態1)
以下、本実施の形態に係る車両駆動装置について、図1〜図4を参照しながら説明する。
[1−1.車両駆動装置の構成]
まず、本実施の形態に係る車両駆動装置5の構成について、図1〜図3Bを参照しながら説明する。図1は、本実施の形態に係る車両駆動装置5を備える電気車両1を例示する図である。
図1に示すように、電気車両1は、駆動輪2と、動力伝達機構3と、永久磁石モータM1と、インバータ10と、電池P1とを備える。これらの構成のうち、車両駆動装置5は、永久磁石モータM1、インバータ10および電池P1によって構成されている。以下、永久磁石モータM1をモータM1とも記載する。電気車両1は、車両の一例である。
モータM1は、電気車両1の駆動輪2を駆動する3相交流式のモータ(3相モータ)であり、例えば、埋込磁石同期モータまたは表面磁石同期モータなどのモータが用いられる。
動力伝達機構3は、例えば、ディファレンシャルギアおよびドライブシャフトによって構成され、モータM1と駆動輪2との間にて動力を伝達する。モータM1の回転力は、動力伝達機構3を経由して駆動輪2に伝達される。これと同様に、駆動輪2の回転力は、動力伝達機構3を経由してモータM1に伝達される。なお、電気車両1は、動力伝達機構3を備えていなくてもよく、モータM1と駆動輪2とが直結された構造であってもよい。
電池P1は、例えば、リチウムイオン電池などの直流電源である。電池P1は、モータM1を駆動させるための電力を供給し、および、この電力を蓄積する。電池P1は、第1直流電池の一例である。電池P1の電圧は、例えば、48Vであるがこれに限定されない。電池P1は、後述する低電圧直流電池よりも高電圧であり、高電圧直流電池であるとも言える。
インバータ10は、電池P1から供給された直流電力を例えば3相の交流電力に変換して、その交流電力をモータM1に供給する。このように車両駆動装置5は、電池P1の電力を用いて3相交流式のモータM1を駆動するように構成されている。インバータ10は、例えば、複数のスイッチング素子S1〜S6が3相ブリッジ構成で接続されている。
図2は、本実施の形態に係る車両駆動装置5のインバータ10が備える3相ブリッジ回路20の一例を示す回路図である。なお、図2に示す電圧Vpは電源電圧であり、電圧Vgは接地電圧である。
図2に示すように、車両駆動装置5は、モータM1と、インバータ10と、電池P1とを備える。インバータ10は、3相ブリッジ回路20と制御回路30とを有する。なお、図2には、3相ブリッジ回路20に印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサC1も図示されている。
3相ブリッジ回路20は、電池P1から供給された直流電力をスイッチング動作により3相の交流電力に変換して、その交流電力をモータM1に供給し、モータM1を駆動する回路である。3相ブリッジ回路20の、スイッチング動作制御用の入力側はPWM駆動回路50および3相短絡駆動回路60に、電力の入力側は電池P1に、それぞれ接続され、出力側はモータM1に接続されている。
なお、モータM1の回生時には、3相ブリッジ回路20の出力側から回生電流が導入され、電力の入力側に向かって流れるが、ここでは、電池P1が接続される側を入力側、モータM1が接続される側を出力側と定義する。
3相ブリッジ回路20は、複数のスイッチング素子S1〜S6が3相ブリッジ接続されて構成される。3相ブリッジ回路20は、図2の上側に位置する上側アーム群に設けられたスイッチング素子S1、S2、S3と、図2の下側に位置する下側アーム群に設けられたスイッチング素子S4、S5、S6とを有する。例えば、スイッチング素子S1〜S6は、電界効果トランジスタ(FET)または絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などによって構成される。また、スイッチング素子S1〜S6は、ワイドバンドギャップ半導体を用いて構成されてもよい。
各スイッチング素子S1、S2、S3は、モータM1の3つの端子から引き出された3つの出力線と、電池P1の正極に接続された電源線Lpとの間のそれぞれの間に接続されている。各スイッチング素子S4、S5、S6は、上記3つの出力線と電池P1の負極に接続された接地線Lgとの間のそれぞれの間に接続されている。また、各スイッチング素子S1〜S6には、還流ダイオードが並列接続されている。還流ダイオードは、スイッチング素子S1〜S6に寄生する寄生ダイオードであってもよい。なお、以降において、各スイッチング素子S1、S2、S3を上アーム、各スイッチング素子S4、S5、S6を下アームとも記載する場合がある。
各スイッチング素子S1〜S6は、制御回路30に接続され、制御回路30から出力された信号によって駆動する。具体的には、各スイッチング素子S1〜S6は、PWM駆動回路50から出力された信号によって、電池P1から供給された直流電力をスイッチング動作により3相の交流電力に変換して、その交流電力をモータM1に供給する。モータM1は、各スイッチング素子S1〜S6の駆動に基づいて、力行、回生または惰行などの状態で駆動される。また、各スイッチング素子S1〜S6は、3相短絡駆動回路60から出力された信号によって、上アームのスイッチング素子S1、S2、S3が一括して開放され、下アームのスイッチング素子S4、S5、S6が一括して短絡される3相短絡の状態となる。
制御回路30は、各スイッチング素子S1〜S6の駆動を制御するための制御装置である。制御回路30は、マイクロコントローラ40と、PWM駆動回路50と、3相短絡駆動回路60とを有する。以下、マイクロコントローラ40をマイコン40とも記載する。
マイコン40は、電気車両1に搭載されるモータM1を駆動するための、複数のスイッチング素子S1〜S6を有する3相ブリッジ回路20からなるインバータ10を制御する。マイコン40は、PWM駆動回路50および3相短絡駆動回路60と電気的に接続されており、PWM駆動回路50および3相短絡駆動回路60のそれぞれを制御するための制御信号を生成し、出力する。マイコン40は、各種の演算等を行うマイクロプロセッサと、マイクロプロセッサを動作させるためのプログラムまたは情報などを記憶するメモリ、および周辺回路とによって構成される。
マイコン40は、モータM1に流れる電流を検知する電流センサCSu、CSv、CSw、および、モータM1の磁極位置を検出して回転位置を検知する回転位置センサRSなどの各種センサによって検知された情報を取得する。なお、電流センサCSu、CSv、CSwは、モータM1のu相、v相、w相における電流値を検知するセンサである。また、マイコン40は、電源線Lpにおける電圧Vpに関する情報を取得する。また、マイコン40は、制御回路30の外部、例えば電気車両1のECU(Electronic Control Unit)から出力されたトルク指令または駆動回生指示信号などの制御指令情報を取得する。マイコン40は、例えば、上記の各情報を、モータ制御信号取得部(図示しない)を介して取得する。
そして、マイコン40は、取得した上記の各情報に基づいて、演算によりトルク指令値を電流に換算し、モータM1を電流制御するための制御信号を出力する。例えば、マイコン40は、車両駆動装置5の駆動時におけるモータM1のトルクが、トルク指令情報に示された目標トルク(例えば電気車両1のアクセルペダルまたはブレーキペダルの操作量に応じたトルク)となるように、モータM1を駆動するために必要な駆動信号(例えば、後述するPWM信号)を演算し、この駆動信号をPWM駆動回路50に出力する。マイコン40は、車両駆動装置5が通常駆動している際は、3相PWM制御を行うための駆動信号を出力する。駆動信号は、モータM1の電流制御のための制御信号である。
なお、マイコン40は、駆動信号を生成する信号生成部の一例である。信号生成部は、マイコン40であるであることに限定されず、マイクロプロセッサまたはCPU(中央演算処理装置)などであってもよい。
PWM駆動回路50は、マイコン40から出力されたPWM信号(駆動信号の一例)に基づいて、複数のスイッチング素子S1〜S6の駆動を制御する。PWM駆動回路50は、電池P1から供給された直流電力を3相の交流電力に変換して、その交流電力をモータM1に供給するために各スイッチング素子S1〜S6のスイッチング動作を制御する。
3相短絡駆動回路60は、インバータ10の異常時に、インバータ10にかかる過電圧を抑制するために、複数のスイッチング素子S1〜S6のうち下アームのスイッチング素子S4、S5、S6を一括して短絡する3相短絡を行う。具体的には、3相短絡駆動回路60は、インバータ10の異常時に各スイッチング素子S1、S2、S3(上アーム)をオフとし、かつ、各スイッチング素子S4、S5、S6(下アーム)をオンとする。
これにより、モータM1から発生する誘起電圧をほぼ0(ゼロ)にすることができるので、3相ブリッジ回路20の過電圧を抑制することができる。なお、過電圧は、例えば、電池P1のプラス側配線の外れ、断線、あるいは、電池P1に設けられた図示しないメインリレーの開放などによって発生し得る。
なお、本実施の形態では、インバータ10の異常は、インバータ10に過電圧が発生したこと、つまり、電池P1の電圧が所定電圧を超える過電圧状態である例について説明するが、これに限定されない。
ここで、3相短絡駆動回路60の構成などの詳細について、さらに図3A、および図3Bを参照しながら説明する。図3Aは、本実施の形態に係るインバータ10のうちの1相分の機能構成を示すブロック図である。図3Bは、降圧DC電源70の一実施例を示すブロック図である。図3Aでは、インバータ10のうちのu相の機能構成を示す。以下では、u相について説明するが、v相およびw相においても同様のことが言える。
図3Aに示すように、インバータ10は、制御回路30に加えて、降圧DC電源70と、過電圧検出回路80とを有する。また、3相短絡駆動回路60は、電源切替スイッチ61と、ラッチ回路62と、絶縁スイッチ63と、放電回路64と、抵抗素子R1〜R3とを有する。
降圧DC電源70は、PWM駆動回路50の駆動用の電源である。降圧DC電源70は、例えば、12V〜15V程度の電圧をPWM駆動回路50に供給する。本実施の形態では、降圧DC電源70は、さらに、3相短絡駆動を行うときに下アームのスイッチング素子S4をオンするための電圧を当該スイッチング素子S4のゲートに供給する。降圧DC電源70は、3相短絡駆動を行うときに、電源切替スイッチ61の切り替えにより、PWM駆動回路50を介さずにスイッチング素子S4のゲートに電圧を供給する。なお、降圧DC電源70は、PWM駆動回路50の電源の一例である。
降圧DC電源70は、モータM1を駆動するための電池P1、および、電気車両1の電装品に電力を供給するための、電池P1よりも電圧が低い低電圧直流電池の少なくとも一方に基づく電源である。ここでは、図3Aに示すように、降圧DC電源70は、電池P1の電圧をDC/DCコンバータにより降圧して生成された電源である。なお、降圧DC電源70は、低電圧直流電池である電池P2(図3B参照)そのものであってもよい。この場合、低電圧直流電池は、例えば、12Vの蓄電池であってもよい。低電圧直流電池は、第2直流電池の一例である。
なお、降圧DC電源70が電池P1、および、低電圧直流電池である電池P2の両方に基づく電源である場合、図3Bに示すように、電池P1の電圧を降圧するDC/DCコンバータ71の出力と、電池P2とを、ダイオードORにより電源切替スイッチ61と接続される構成としてもよい。例えば、電圧が高いダイオード側の電池から電源切替スイッチ61を介して電力が供給されてもよい。
過電圧検出回路80は、3相ブリッジ回路20における直流電圧の所定の過電圧を検出する回路である。過電圧検出回路80は、例えば、電源線Lpにおける所定の過電圧を検出する。より具体的には、過電圧検出回路80は、電源線Lpにおける所定の過電圧を検出した場合に、3相短絡を行うための3相短絡信号を出力する。3相短絡信号は、過電圧を検出したことを示す信号であるとも言える。過電圧検出回路80は、電源線Lpおよび接地線Lgのそれぞれと電気的に接続される。
なお、所定の過電圧とは、電源線Lpの電圧が、回路を構成する部品の耐電圧を超えない電圧として予め決定される。ここで、回路を構成する部品とは、例えば、3相ブリッジ回路20のスイッチング素子S1〜S6、または、平滑コンデンサC1などである。過電圧検出回路80は、3相短絡信号を3相短絡駆動回路60に出力する。なお、過電圧検出回路80は、マイコン40に3相短絡信号を出力してもよい。3相短絡信号は、例えば、ハイレベルのパルス信号であるがこれに限定されない。また、3相短絡信号は、3相短絡の指令信号の一例である。
過電圧検出回路80の回路構成は、過電圧を検出し、かつ、当該過電圧を検出したことを示す信号を出力できれば、特に限定されない。過電圧検出回路80は、例えば、複数の抵抗素子と、比較回路とを有する。比較回路は、+入力端子と、−入力端子と、+入力端子の電圧と−入力端子の電圧との比較結果を出力する出力端子とを有する。比較回路は、例えば、+入力端子に入力される検出電圧が−入力端子に入力される基準電圧よりも高い場合に、出力端子から3相短絡信号を出力する。検出電圧は、過電圧であるか否かの判定の対象となる電圧であり、例えば、電源線Lpにおける電圧Vpに基づく電圧である。基準電圧は、過電圧を検出するための基準となる電圧であり、例えば、定電圧源における電圧(例えば、5V)に基づく電圧である。また、複数の抵抗素子は、電圧Vpおよび定電圧源における電圧を分圧するために用いられる。
電源切替スイッチ61は、ラッチ回路62からの信号により、PWM駆動回路50のゲート出力を遮断するとともに、複数のスイッチング素子S1〜S6のうち下アームのスイッチング素子S4のゲートに電圧を印加するためのスイッチである。電源切替スイッチ61は、一端が降圧DC電源70に接続され、かつ、他端の一方がPWM駆動回路50に接続され、他端の他方がスイッチング素子S4のゲートに接続されており、降圧DC電源70の電力の供給先を選択的に切り替える。電源切替スイッチ61は、車両駆動装置5が通常駆動している際には、降圧DC電源70とPWM駆動回路50とを接続する。また、電源切替スイッチ61は、車両駆動装置5が3相短絡駆動している際には、降圧DC電源70とスイッチング素子S4のゲートとを接続する。なお、詳細は後述するが、ゲート出力を遮断するとは、例えば、PWM駆動回路50の出力側がハイインピーダンスになることである。なお、電源切替スイッチ61は、第1スイッチの一例である。
ラッチ回路62は、入力側がマイコン40および過電圧検出回路80と接続され、出力側が電源切替スイッチ61および絶縁スイッチ63と接続され、過電圧検出回路80から出力された3相短絡信号を保持し、電源切替スイッチ61および絶縁スイッチ63に出力する。言い換えると、ラッチ回路62の出力は、電源切替スイッチ61および絶縁スイッチ63に入力される。また、ラッチ回路62は、マイコン40が3相短絡信号を出力する機能を有する場合、当該マイコン40から出力された3相短絡信号を保持し、電源切替スイッチ61および絶縁スイッチ63に出力してもよい。
ラッチ回路62は、3相短絡信号を電源切替スイッチ61に出力することで、降圧DC電源70とスイッチング素子S4のゲートとが導通するように電源切替スイッチ61を切り替える。また、ラッチ回路62は、3相短絡信号を絶縁スイッチ63に出力することで、絶縁スイッチ63をオフからオンに切り替える。ラッチ回路62は、例えば、電源切替スイッチ61の切り替えと、絶縁スイッチ63の切り替えとを同時に行わせる。
なお、ラッチ回路62は、過電圧検出回路80から3相短絡信号を取得すると、マイコン40からラッチ解除信号を取得するまで、当該3相短絡信号を電源切替スイッチ61および絶縁スイッチ63に出力する。
絶縁スイッチ63は、ラッチ回路62からの3相短絡信号により、複数のスイッチング素子S1〜S6のうち上アームのスイッチング素子S1のゲートソース間を短絡させることで、上アームのスイッチング素子S1のゲートを強制的にオフする。
絶縁スイッチ63は、入力側がラッチ回路62に接続され、出力側が放電回路64に接続され、ラッチ回路62から3相短絡信号を取得すると、オンとなる。絶縁スイッチ63がオンとなることで、放電回路64に放電を実行させるための信号が出力される。放電回路64が半導体スイッチである場合、絶縁スイッチ63の出力側は半導体スイッチのゲートと接続されており、絶縁スイッチ63がオンとなることで、当該半導体スイッチがオンする。
絶縁スイッチ63は、ラッチ回路62と放電回路64とを絶縁し、かつ、放電回路64をラッチ回路62からの出力により制御可能な構成を有する。絶縁スイッチ63は、例えば、フォトカプラまたはリレーにより実現される。これにより、絶縁スイッチ63は、ラッチ回路62を放電回路64から絶縁する(保護する)ことができる。
絶縁スイッチ63がフォトカプラである場合、入力側がラッチ回路62に接続され、出力側が放電回路64(放電回路64が半導体スイッチである場合、半導体スイッチのゲート)に接続される。絶縁スイッチ63がリレーである場合、当該リレーは、例えば、スイッチと、電流を流すことで生じる磁力によりスイッチをオン・オフするコイルとを有し、コイル(一次巻き線側)がラッチ回路62と接続され、スイッチ(接点側)が放電回路64(放電回路64が半導体スイッチである場合、半導体スイッチのゲート)に接続される。なお、絶縁スイッチ63は、第2スイッチの一例である。
放電回路64は、一端(例えば、ドレイン)がスイッチング素子S1のゲートに接続され、他端(例えば、ソース)がスイッチング素子S1のソースに接続され、3相短絡駆動している際に、絶縁スイッチ63がオンすることでスイッチング素子S1のゲートの電荷を放電する。放電回路64は、例えば、トランジスタなどの半導体スイッチにより実現される。絶縁スイッチ63からゲートに信号が供給されることでゲートがオンし、スイッチング素子S1のゲートの電荷を放電させる。
これにより、放電回路64は、スイッチング素子S1のゲートおよびソースを同電位とすることができるので、スイッチング素子S1をオフとすることができる。放電回路64は、3相短絡駆動をしている際に、スイッチング素子S1を確実にオフさせるために設けられる。
放電回路64は、絶縁スイッチ63がフォトカプラである場合、ラッチ回路62からの3相短絡信号がフォトカプラに入力され、当該入力に対応する出力がトランジスタのゲートに入力されることで放電回路64がオンになる。そして、放電回路64がオンになることで、ゲートソース間が短絡する。言い換えると、絶縁スイッチ63は、ラッチ回路62からの3相短絡信号がフォトカプラに入力されて放電回路64がオンになることで、上アームのスイッチング素子S1のゲートソース間を短絡させる。これにより、スイッチング素子S1のゲートの電荷が放電される。
また、放電回路64は、絶縁スイッチ63がリレーである場合、ラッチ回路62からの3相短絡信号がリレーのコイルに入力されることで当該コイルに電流が流れ、当該電流により生じる磁力によりスイッチがオンになる。そして、スイッチがオンになることで、ゲートソース間が短絡する。言い換えると、絶縁スイッチ63は、ラッチ回路62からの3相短絡信号がリレーに入力されてリレーがオンになることで、上アームのスイッチング素子S1のゲートソース間を短絡させる。これにより、スイッチング素子S1のゲートの電荷が放電される。
なお、絶縁スイッチ63がリレーである場合、当該絶縁スイッチ63が放電回路64としての機能を有する。つまり、絶縁スイッチ63と放電回路64とは、1つの回路部品により実現されてもよい。
このように、3相短絡駆動回路60は、ラッチ回路62から出力される3相短絡信号により、上アームのスイッチング素子S1をオフにし、かつ、下アームのスイッチング素子S4をオンする構成を有する。
また、図3Aに示すように、電源切替スイッチ61は、抵抗素子R1を介してスイッチング素子S4のゲートに接続されている。また、PWM駆動回路50は、抵抗素子R2を介してスイッチング素子S1のゲートと接続され、抵抗素子R3を介してスイッチング素子S4のゲートと接続されている。言い換えると、抵抗素子R1は、一方の端子が電源切替スイッチ61の他端の他方に接続され、他方の端子がスイッチング素子S4のゲートに接続されている。抵抗素子R2は、一方の端子がPWM駆動回路50(例えば、PWM駆動回路50のHigh側端子)に接続され、他方の端子がスイッチング素子S1のゲートに接続されている。抵抗素子R3は、一方の端子がPWM駆動回路50(例えば、PWM駆動回路50のLow側端子)に接続され、他方の端子がスイッチング素子S4のゲートに接続されている。
上記のように、3相短絡駆動回路60は、3相短絡駆動している際に、3相ブリッジ回路20の上側アーム群のスイッチング素子S1、S2、S3を絶縁スイッチ63を介して開放し、かつ、下側アーム群のスイッチング素子S4、S5、S6を電源切替スイッチ61を介して短絡する回路である。つまり、3相短絡駆動回路60は、背景技術に記載した特許文献1のように、論理回路(ロジック回路)からの出力信号により下側アーム群のスイッチング素子S4、S5、S6を短絡させない。3相短絡駆動回路60は、論理回路からの出力でスイッチング素子S4、S5、S6のゲートを直接駆動しない。
これにより、車両駆動装置5は、例えば、3相ブリッジ回路20に過電圧が検出された場合に、3相短絡駆動回路60を働かせて安定して3相短絡駆動を行い、3相ブリッジ回路20にかかる過電圧を抑制することができる。このようにして、制御モータM1の3相のそれぞれを安定して短絡することで、モータM1の巻線コイル間から誘起される電圧をより確実に抑制することができる。
また、例えば、背景技術で記載した特許文献1の車両駆動装置は、上アームのスイッチング素子のグランドレベルが下アームのスイッチング動作により変動するので、不安定である。そのため、論理回路(ロジック回路)からの出力信号により上アームのスイッチング素子を動作させるためには、上アームのスイッチング素子のソースの電位をグランドとした絶縁電源が必要となり、回路構成が複雑になる。一方、本実施の形態に係る車両駆動装置5は、上記のように、絶縁電源を要することなく、3相短絡駆動している際に、上アームのスイッチング素子S1、S2、S3をより確実にオフにすることができる。
[1−2.車両駆動装置の動作]
次に、車両駆動装置5の動作について、図4を参照しながら説明する。図4は、本実施の形態に係る車両駆動装置5の動作の一例を示すフローチャートである。図4では、インバータ10が通常駆動している状態における動作を示す。なお、通常駆動している状態では、電源切替スイッチ61は、PWM駆動回路50に接続されている。つまり、降圧DC電源70は、PWM駆動回路50に電力を供給している。また、以下では、u相について説明するが、v相およびw相においても同様のことが言える。
図4に示すように、インバータ10が通常駆動している状態で過電圧検出回路80が電源線Lpにおける所定の過電圧を検出すると(S11でYes)、過電圧検出回路80は、ラッチ回路62に3相短絡信号を出力する。ラッチ回路62は、3相短絡信号を保持し、当該3相短絡信号を電源切替スイッチ61および絶縁スイッチ63に出力する。これにより、ラッチ回路62は、電源切替スイッチ61をPWM駆動回路50から下アームのスイッチング素子S4へ切り替え、かつ、上アームのスイッチング素子S1のゲートに接続された放電回路64を動作させる(S12)。言い換えると、ラッチ回路62は、降圧DC電源70の電圧をスイッチング素子S4のゲートに供給し、かつ、スイッチング素子S1のゲートの電荷を放電する。これによって、インバータ10は、3相短絡駆動している際に、上アームのスイッチング素子S1をより確実にオフさせ、かつ、下アームのスイッチング素子S4をより確実にオンさせることができる。
放電回路64によりスイッチング素子S1のゲートの電荷が放電されるため、3相短絡駆動している際に、スイッチング素子S1およびS4の両方がオンし、電池P1の正負極間が短絡してしまうことを防止することができる。
なお、電源切替スイッチ61が3相短絡状態に切り替わった際、PWM駆動回路50には駆動用の電力が供給されないので、PWM駆動回路50の特性からPWM駆動回路50の出力側がハイインピーダンスとなる。これにより、電源切替スイッチ61がスイッチング素子S4に切り替わった際、降圧DC電源70からの電力が抵抗素子R3を介してPWM駆動回路50に引き込まれてしまい、スイッチング素子S4のゲートがオンにならない、という不具合を抑制することができる。PWM駆動回路50の出力側がハイインピーダンスとなることは、PWM駆動回路50のゲート出力が遮断されることの一例である。PWM駆動回路50に駆動用の電力が供給されないときの出力側(スイッチング素子S1側)のインピーダンスは、3相短絡駆動している際に、放電回路64を介してスイッチング素子S1のゲートの電荷が放電される、つまりPWM駆動回路50にゲートの電荷が流れない程度のインピーダンスである。PWM駆動回路50に駆動用の電力が供給されないときの出力側(スイッチング素子S4側)のインピーダンスは、3相短絡駆動している際に、降圧DC電源70からの電力がスイッチング素子S4のゲートに供給される、つまりPWM駆動回路50に抵抗素子R3を介して降圧DC電源70からの電力が供給されない程度のインピーダンスである。
なお、放電回路64がオンするとき、当該放電回路64とラッチ回路62とは電位が異なるが、放電回路64とラッチ回路62との間に絶縁スイッチ63が接続されているため、スイッチング素子S1のゲートの電荷がラッチ回路62側に流れることはない。
また、インバータ10が通常駆動している状態で過電圧検出回路80が電源線Lpにおける所定の過電圧を検出しないと(S11でNo)、3相短絡駆動は行われずに処理を終了する。つまり、インバータ10は、通常駆動している状態を継続する。
上記のように、本実施の形態に係る車両駆動装置5は、3相短絡駆動している際に下アームのスイッチング素子S4、S5、S6のゲートに電圧を印加するための電源切替スイッチ61と、3相短絡駆動している際に上アームのスイッチング素子S1、S2、S3のゲートソース間を短絡させるための絶縁スイッチ63とを備える。
これにより、車両駆動装置5は、ラッチ回路62からの3相短絡信号(3相短絡の指令信号の一例)によりインバータ10が3相短絡制御の状態となる際に、電源切替スイッチ61により下アームのスイッチング素子S4、S5、S6のゲートに電圧が印加されるので、当該スイッチング素子S4、S5、S6をオンさせることができ、かつ、絶縁スイッチ63により上アームのスイッチング素子S1、S2、S3のゲートソース間を短絡させることで、当該スイッチング素子S1、S2、S3を強制的にオフすることができる。さらに、電源切替スイッチ61の切替により、PWM駆動回路50に駆動用の電力が供給されなくなり、PWM駆動回路50の特性からPWM駆動回路50の出力側がハイインピーダンスとなることによって、車両駆動装置5は、安定して3相短絡を実施することができる。
(実施の形態1の変形例)
以下、本変形例に係る車両駆動装置ついて、図5〜図7を参照しながら説明する。図5は、本変形例に係るインバータ10aのうちの1相分の機能構成を示すブロック図である。図5では、インバータ10aのうちのu相の機能構成を示す。以下では、u相について説明するが、v相およびw相においても同様のことが言える。
本変形例に係るインバータ10aは、主に、異常検出回路90を有する点において、実施の形態1に係るインバータ10と相違する。以下、本変形例に係るインバータ10aについて、実施の形態1に係るインバータ10との相違点を中心に説明する。また、本変形例において、実施の形態1に係るインバータ10と同一または類似の構成については、インバータ10と同一の符号を付し、説明を省略または簡略化する。
図5に示すように、本変形例に係るインバータ10aは、マイコン40に不具合が生じている場合であっても、3相短絡駆動を実行できるように、マイコン40の異常を検出する異常検出回路90を備える。異常検出回路90は、例えば、制御回路30内に設けられていてもよい。なお、マイコン40に不具合が生じている場合とは、例えば、マイコン40のプログラムソフトにバグが発生している場合、または、プログラムソフトの一部が暴走している場合などである。
異常検出回路90は、マイコン40の異常を検出するための回路である。具体的には、異常検出回路90は、マイコン40の異常を検出して、3相短絡駆動回路60を駆動するための信号を出力する回路である。マイコン40の異常は、インバータ10の異常の一例である。
異常検出回路90について、図6を参照しながら説明する。図6は、本変形例に係る異常検出回路90の機能構成を示すブロック図である。なお、図6において、マイコン40は、クリアパルス信号を不具合通知回路91に定期的に出力している。
図6に示すように、異常検出回路90は、不具合通知回路91とNOT回路92とを有する。
不具合通知回路91は、マイコン40の不具合の有無を監視する回路であり、例えば、ウォッチドックタイマ回路である。不具合通知回路91は、クリアパルス信号を所定期間受け付けていない場合に、マイコン40に不具合が生じているとして、不具合通知信号を、NOT回路92を介してラッチ回路62およびマイコン40に出力する。
不具合通知信号は、リセット信号であり、例えば、ローレベルのパルス信号として出力される。ローレベルのパルス信号は、NOT回路92によって反転され、ハイレベルのパルス信号としラッチ回路62に出力される。
ラッチ回路62は、不具合通知回路91から出力された不具合通知信号に基づく信号(例えば、ハイレベルのパルス信号であり、以下において通知信号とも記載する)を保持し、電源切替スイッチ61および絶縁スイッチ63に出力する。ラッチ回路62が異常検出回路90から取得する不具合通知信号に基づく信号(通知信号)は、3相短絡の指令信号の一例である。
なお、マイコン40は、不具合通知信号であるリセット信号を受け付けることで再起動する。マイコン40は、リセット信号によって正常に再起動できた場合に、ラッチ回路62に保持されている信号を解除するラッチ解除信号を出力する。マイコン40が正常に再起動されると、車両駆動装置5は平常運転に戻るが、正常に再起動できなかった場合は、不具合通知信号に基づく信号が継続して電源切替スイッチ61および絶縁スイッチ63に出力された状態となる。
なお、3相短絡駆動回路60は、ラッチ回路62を有する例について説明したが、マイコン40からの3相短絡指令、過電圧検出回路80からの3相短絡信号、または、マイコン40からの通知信号を取得すると、3相短絡制御の状態に遷移させることができれば、ラッチ回路62を有することに限定されない。3相短絡駆動回路60は、例えば、3相短絡指令、3相短絡信号、および、通知信号の少なくとも1つを取得すると取得した信号を出力する論理回路(例えば、OR回路)を、ラッチ回路62に替えて有していてもよい。なお、3相短絡駆動回路60は、不具合通知信号に基づく信号を保持するためには、ラッチ回路62を有しているとよい。
次に、本変形例に係る車両駆動装置の動作について、図7を参照しながら説明する。図7は、本変形例に係る車両駆動装置の動作の一例を示すフローチャートである。図7では、インバータ10aが通常駆動している状態における動作を示す。なお、通常駆動している状態では、電源切替スイッチ61は、PWM駆動回路50に接続されている。つまり、降圧DC電源70は、PWM駆動回路50に電力を供給している。また、以下では、u相について説明するが、v相およびw相においても同様のことが言える。
図7に示すように、インバータ10aが通常駆動している状態で異常検出回路90がマイコン40の異常を検出すると(S21でYes)、異常検出回路90は、ラッチ回路62に不具合通知信号に基づく信号を出力する。ラッチ回路62は、NOT回路92によって反転された不具合通知信号(例えば、ハイレベルのパルス信号であり、不具合通知信号に基づく信号の一例)を保持し、当該NOT回路92によって反転された不具合通知信号を電源切替スイッチ61および絶縁スイッチ63に出力する。
これにより、ラッチ回路62は、電源切替スイッチ61をPWM駆動回路50から下アームのスイッチング素子S4へ切り替え、かつ、上アームのスイッチング素子S1のゲートに接続される放電回路64を動作させる(S22)。言い換えると、ラッチ回路62は、降圧DC電源70の電圧をスイッチング素子S4のゲートに供給し、かつ、絶縁スイッチ63がオンすることでスイッチング素子S1のゲートの電荷を放電する。これによって、インバータ10aは、マイコン40の不具合時において、上アームのスイッチング素子S1をより確実にオフさせ、かつ、下アームのスイッチング素子S4をより確実にオフさせることができる。
また、インバータ10aが通常駆動している状態で異常検出回路90がマイコン40の異常を検出しないと(S21でNo)、3相短絡駆動は行われずに処理を終了する。つまり、インバータ10aは、通常駆動している状態を継続する。
上記のように、本変形例に係る車両駆動装置が備えるインバータ10aは、マイコン40の異常を検出するための異常検出回路90を備える。これにより、車両駆動装置は、例えば、マイコン40の異常により正常な制御が行えず誘起電圧の上昇を抑制することが困難な場合に、3相短絡制御の状態になる。よって、車両駆動装置は、マイコン40に異常が発生したことに起因して誘起電圧が上昇することを抑制することができる。なお、マイコン40の正常な制御とは、通常のモータ駆動トルク出力制御、及び、マイコン40からのPWM駆動信号による3相短絡制御を含む。
(実施の形態2)
以下、本実施の形態に係る車両駆動装置について、図8および図9を参照しながら説明する。
[2−1.車両駆動装置の構成]
まず、本実施の形態に係る車両駆動装置の構成について、図8を参照しながら説明する。図8は、本実施の形態に係るインバータ110のうちの1相分の機能構成を示すブロック図である。図8では、インバータ110のうちのu相の機能構成を示す。以下では、u相について説明するが、v相およびw相においても同様のことが言える。
本実施の形態に係るインバータ110は、主に、リレー165および166を有し、PWM駆動回路50からの出力信号が当該リレー165および166を経由してスイッチング素子S1およびS4に供給される点において、実施の形態1に係るインバータ10と相違する。以下、本実施の形態に係るインバータ110について、実施の形態1に係るインバータ10との相違点を中心に説明する。また、本実施の形態において、実施の形態1に係るインバータ10と同一または類似の構成については、インバータ10と同一の符号を付し、説明を省略または簡略化する。
図8に示すように、インバータ110が有する3相短絡駆動回路160は、電源切替スイッチ161と、ラッチ回路62と、絶縁スイッチ63と、放電回路64と、リレー165および166と、抵抗素子R1〜R3とを有する。なお、本実施の形態では、PWM駆動回路50は、電源切替スイッチ161を介さずに降圧DC電源70から電力の供給を受ける。
電源切替スイッチ161は、一端が降圧DC電源70に接続され、かつ、他端がスイッチング素子S4のゲートに接続されており、降圧DC電源70の電力(電圧)をスイッチング素子S4のゲートに供給するか否かを選択的に切り替える。電源切替スイッチ161は、車両駆動装置が3相短絡駆動している際に、降圧DC電源70とスイッチング素子S4のゲートとを接続する。電源切替スイッチ161の切り替えは、ラッチ回路62からの3相短絡信号により行われる。
リレー165は、一端がPWM駆動回路50(例えば、PWM駆動回路50のHigh側出力端子)に接続され、他端がスイッチング素子S1のゲートに接続されており、PWM駆動回路50からの出力信号をスイッチング素子S1のゲートに供給するか否かを選択的に切り替える。
リレー165は、接点であるスイッチ165aと、一次巻き線であるコイル165bとを有する。リレー165は、コイル165bに電流を流すことで生じる磁力によりスイッチ165aをオン・オフする。本実施の形態では、リレー165は、電源切替スイッチ161がオンすることで降圧DC電源70から供給される電流がコイル165bに流れることでスイッチ165aがオフする構成を有する。
リレー165は、車両駆動装置が通常駆動している際には、PWM駆動回路50とスイッチング素子S1のゲートとを接続する。また、リレー165は、車両駆動装置が3相短絡駆動している際には、PWM駆動回路50とスイッチング素子S1のゲートとの接続を解除(切断)する。
これにより、リレー165は、車両駆動装置が3相短絡駆動している際に、PWM駆動回路50からスイッチング素子S1のゲートに出力信号が供給されてしまい、スイッチング素子S1がオンすることを抑制することができる。つまり、リレー165は、車両駆動装置が3相短絡駆動している際に、電池P1の正負極間が短絡することを抑制することができる。
リレー166は、一端がPWM駆動回路50(例えば、PWM駆動回路50のLow側出力端子)に接続され、他端がスイッチング素子S4のゲートに接続されており、PWM駆動回路50からの出力信号をスイッチング素子S4のゲートに供給するか否かを選択的に切り替える。
リレー166は、接点であるスイッチ166aと、一次巻き線であるコイル166bとを有する。リレー166は、コイル166bに電流を流すことで生じる磁力によりスイッチ166aをオン・オフする。本実施の形態では、リレー166は、電源切替スイッチ161がオンすることで降圧DC電源70から供給される電流がコイル166bに流れることでスイッチ166aがオフする構成を有する。
リレー166は、車両駆動装置が通常駆動している際には、PWM駆動回路50とスイッチング素子S4のゲートとを接続する。また、リレー166は、車両駆動装置が3相短絡駆動している際には、PWM駆動回路50とスイッチング素子S4のゲートとの接続を解除(切断)する。
これにより、リレー166は、車両駆動装置が3相短絡駆動している際に、PWM駆動回路および降圧DC電源70のうち降圧DC電源70からの信号(電圧)のみをスイッチング素子S4のゲートに供給することができる。
また、車両駆動装置が3相短絡駆動している際に、リレー165および166がオフすることでPWM駆動回路50とスイッチング素子S1およびS4との電気的な接続を遮断することができるので、PWM駆動回路50の出力側をハイインピーダンスとすることができる。
これにより、電源切替スイッチ161がオンした際、降圧DC電源70からの電力が抵抗素子R1及びR3を介してPWM駆動回路50に引き込まれてしまい、スイッチング素子S4のゲートがオンにならない、という不具合を抑制することができる。また、電源切替スイッチ161がオンした際、PWM駆動回路50にゲートの電荷が流れることにより、スイッチング素子S1のゲートがオフにならない、という不具合を抑制することができる。なお、リレー165および166をオフしてPWM駆動回路50とスイッチング素子S1およびS4との電気的な接続を遮断することは、PWM駆動回路50のゲート出力が遮断されることの一例である。
[2−2.車両駆動装置の動作]
次に、車両駆動装置の動作について、図9を参照しながら説明する。図9は、本実施の形態に係る車両駆動装置の動作の一例を示すフローチャートである。図9では、インバータ110が通常駆動している状態における動作を示す。なお、通常駆動している状態では、電源切替スイッチ161は、オフ状態である。つまり、降圧DC電源70は、スイッチング素子S4のゲートに電力(電圧)を供給していない。
図9に示すように、インバータ110が通常駆動している状態で過電圧検出回路80が電源線Lpにおける所定の過電圧を検出すると(S31でYes)、過電圧検出回路80は、ラッチ回路62に3相短絡信号を出力する。ラッチ回路62は、3相短絡信号を保持し、当該3相短絡信号を電源切替スイッチ161および絶縁スイッチ63に出力する。これにより、ラッチ回路62は、電源切替スイッチ161をオンし、かつ、上アームのスイッチング素子S1のゲートに接続された放電回路64を動作させる(S32)。言い換えると、ラッチ回路62は、降圧DC電源70の電圧をスイッチング素子S4のゲートに供給し、かつ、絶縁スイッチ63がオンすることでスイッチング素子S1のゲートの電荷を放電する。これによって、インバータ110は、3相短絡駆動している際に、上アームのスイッチング素子S1をより確実にオフさせ、かつ、下アームのスイッチング素子S4をより確実にオンさせることができる。
また、インバータ110が通常駆動している状態で過電圧検出回路80が電源線Lpにおける所定の過電圧を検出しないと(S31でNo)、3相短絡制御は行われずに処理を終了する。つまり、インバータ110は、通常駆動している状態を継続する。
上記のように、本実施の形態に係る車両駆動装置が備えるインバータ110は、一端がPWM駆動回路50と接続され、他端が上アームのスイッチング素子S1、S2、S3と接続されるリレー165と、一端がPWM駆動回路50と接続され、他端が下アームのスイッチング素子S4、S5、S6と接続されるリレー166とを備える。そして、インバータ110は、3相短絡動作している際に、リレー165および166をオフとすることで、PWM駆動回路50とスイッチング素子S1〜S6との間の経路上において、ハイインピーダンスを実現することができる。
(実施の形態3)
以下、本実施の形態に係る車両駆動装置について、図10〜図13を参照しながら説明する。
[3−1.車両駆動装置の構成]
図10は、本実施の形態に係る車両駆動装置5のインバータ210が備える3相ブリッジ回路20の一例を示す回路図である。なお、図10に示す電圧Vpは電源電圧であり、電圧Vgは接地電圧である。なお、車両駆動装置5を備える電気車両1の構成は、実施の形態1と同様であり、説明を省略する。
図10に示すように、車両駆動装置5は、モータM1と、インバータ210と、電池P1とを備える。インバータ210は、3相ブリッジ回路20と制御回路230とを有する。なお、図10には、3相ブリッジ回路20に印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサC1も図示されている。
3相ブリッジ回路20は、電池P1から供給された直流電力をスイッチング動作により3相の交流電力に変換して、その交流電力をモータM1に供給し、モータM1を駆動する回路である。3相ブリッジ回路20の、スイッチング動作制御用の入力側は3相短絡切替回路250およびPWM駆動回路260に、電力の入力側は電池P1に、それぞれ接続され、出力側はモータM1に接続されている。
なお、モータM1の回生時には、3相ブリッジ回路20の出力側から回生電流が導入され、電力の入力側に向かって流れるが、ここでは、電池P1が接続される側を入力側、モータM1が接続される側を出力側と定義する。
3相ブリッジ回路20は、複数のスイッチング素子S1〜S6が3相ブリッジ接続されて構成される。3相ブリッジ回路20は、図10の上側に位置する上側アーム群に設けられたスイッチング素子S1、S2、S3と、図10の下側に位置する下側アーム群に設けられたスイッチング素子S4、S5、S6とを有する。例えば、スイッチング素子S1〜S6は、電界効果トランジスタ(FET)または絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などによって構成される。また、スイッチング素子S1〜S6は、ワイドバンドギャップ半導体を用いて構成されてもよい。
各スイッチング素子S1、S2、S3は、モータM1の3つの端子から引き出された3つの出力線と、電池P1の正極に接続された電源線Lpとの間のそれぞれの間に接続されている。各スイッチング素子S4、S5、S6は、上記3つの出力線と電池P1の負極に接続された接地線Lgとの間のそれぞれの間に接続されている。また、各スイッチング素子S1〜S6には、還流ダイオードが並列接続されている。還流ダイオードは、スイッチング素子S1〜S6に寄生する寄生ダイオードであってもよい。なお、以降において、各スイッチング素子S1、S2、S3を上アーム、各スイッチング素子S4、S5、S6を下アームとも記載する場合がある。
各スイッチング素子S1〜S6は、制御回路230に接続され、制御回路230から出力された信号によって駆動する。具体的には、各スイッチング素子S1〜S6は、PWM駆動回路260から出力された信号によって、電池P1から供給された直流電力をスイッチング動作により3相の交流電力に変換して、その交流電力をモータM1に供給する。モータM1は、各スイッチング素子S1〜S6の駆動に基づいて、力行、回生または惰行などの状態で駆動される。また、各スイッチング素子S1〜S6は、3相短絡切替回路250から出力された信号に基づいて、上アームのスイッチング素子S1、S2、S3が一括して開放され、下アームのスイッチング素子S4、S5、S6が一括して短絡される3相短絡の状態となる。
制御回路230は、各スイッチング素子S1〜S6の駆動を制御するための制御装置である。制御回路230は、マイクロコントローラ240と、3相短絡切替回路250と、PWM駆動回路260とを有する。以下、マイクロコントローラ240をマイコン240とも記載する。
マイコン240は、電気車両1に搭載されるモータM1を駆動するための、複数のスイッチング素子S1〜S6を有する3相ブリッジ回路20からなるインバータ210を制御する。マイコン240は、3相短絡切替回路250と電気的に接続されており、3相短絡切替回路250およびPWM駆動回路260のそれぞれを制御するための制御信号を生成し、出力する。マイコン240は、各種の演算等を行うマイクロプロセッサと、マイクロプロセッサを動作させるためのプログラムまたは情報などを記憶するメモリ、および周辺回路とによって構成される。
マイコン240は、モータM1に流れる電流を検知する電流センサCSu、CSv、CSw、および、モータM1の磁極位置を検出して回転位置を検知する回転位置センサRSなどの各種センサによって検知された情報を取得する。なお、電流センサCSu、CSv、CSwは、モータM1のu相、v相、w相における電流値を検知するセンサである。また、マイコン240は、電源線Lpにおける電圧Vpに関する情報を取得する。また、マイコン240は、制御回路230の外部、例えば電気車両1のECUから出力されたトルク指令または駆動回生指示信号などの制御指令情報を取得する。マイコン240は、例えば、上記の各情報を、モータ制御信号取得部(図示しない)を介して取得する。
そして、マイコン240は、取得した上記の各情報に基づいて、演算によりトルク指令値を電流に換算し、モータM1を電流制御するための制御信号を出力する。例えば、マイコン240は、車両駆動装置5の駆動時におけるモータM1のトルクが、トルク指令情報に示された目標トルク(例えば電気車両1のアクセルペダルまたはブレーキペダルの操作量に応じたトルク)となるように、モータM1を駆動するために必要な駆動信号(例えば、後述するPWM信号)を演算し、この駆動信号を3相短絡切替回路250に出力する。マイコン240は、この駆動信号を3相短絡切替回路250に出力することで、3相短絡切替回路250を介してPWM駆動回路260の動作を制御する。マイコン240は、車両駆動装置5が通常駆動している際は、3相PWM制御を行うための駆動信号を出力する。駆動信号は、モータM1の電流制御のための制御信号である。
なお、マイコン240は、駆動信号を生成する信号生成部の一例である。信号生成部は、マイコン240であるであることに限定されず、マイクロプロセッサまたはCPU(中央演算処理装置)などであってもよい。
3相短絡切替回路250は、インバータ210の異常時に、インバータ210にかかる過電圧を抑制するために、複数のスイッチング素子S1〜S6のうち下アームのスイッチング素子S4、S5、S6を一括して短絡する3相短絡を行う。具体的には、3相短絡切替回路250は、インバータ210の異常時に各スイッチング素子S1、S2、S3(上アーム)をオフとし、かつ、各スイッチング素子S4、S5、S6(下アーム)をオンとする。
これにより、モータM1から発生する誘起電圧をほぼ0(ゼロ)にすることができるので、3相ブリッジ回路20の過電圧を抑制することができる。なお、過電圧は、例えば、電池P1のプラス側配線の外れ、断線、あるいは、電池P1に設けられた図示しないメインリレーの開放などによって発生し得る。
なお、本実施の形態では、インバータ210の異常は、インバータ210に過電圧が発生したこと、つまり、電池P1の電圧が所定電圧を超える過電圧状態である例について説明するが、これに限定されない。
また、3相短絡切替回路250は、複数のスイッチング素子S1〜S6を駆動する駆動信号をPWM駆動回路260に出力する論理回路を有する。
ここで、3相短絡切替回路250の構成などの詳細について、さらに図11Aおよび図11Bを参照しながら説明する。図11Aは、本実施の形態に係るインバータ210のうちの1相分の機能構成を示すブロック図である。図11Aでは、インバータ210のうちのu相の機能構成を示す。以下では、u相について説明するが、v相およびw相においても同様のことが言える。
図11Aに示すように、インバータ210は、制御回路230に加えて、降圧DC電源70と、過電圧検出回路80と、リレー290とを有する。また、3相短絡切替回路250は、AND回路251と、OR回路252と、AND回路253と、ラッチ回路254と、NOT回路255とを有する。
AND回路251は、マイコン240のHigh側(H側)からのPWM信号およびラッチ回路254からの信号を受け付け、受け付けた信号に基づいてPWM駆動回路260を制御するための信号を出力する。AND回路251は、入力端子の一端がマイコン240のHigh側端子(図11A中の「H側」)に接続され、入力端子の他端がラッチ回路254に接続される。また、AND回路251は、出力端子がPWM駆動回路260に接続される。
AND回路251は、通常動作時にはPWM信号をそのまま駆動信号としてPWM駆動回路260に出力し、3相短絡動作時は上アームのスイッチング素子S1をオフにする駆動信号をPWM駆動回路260に出力する。AND回路251は、例えば、マイコン240およびラッチ回路254の両方から信号(例えば、Highレベルの信号)を受け付けている場合に、信号(例えば、Highレベルの信号)を出力する。本実施の形態では、AND回路251がPWM駆動回路260に出力する信号は、上アーム駆動信号の一例である。
通常駆動のときには、例えば、ラッチ回路254からHighレベルの信号が出力されている。そのため、AND回路251は、PWM信号がHighレベルのときに、PWM駆動回路260にHighレベルの信号を出力し、PWM信号がLowレベルのときに、PWM駆動回路260にLowレベルの信号を出力する。
AND回路251は、第1論理回路の一例である。なお、第1論理回路は、AND回路251であることに限定されず、通常動作時にはPWM信号をそのまま駆動信号としてPWM駆動回路260に出力し、3相短絡動作時は上アームのスイッチング素子S1をオフにする駆動信号をPWM駆動回路260に出力することができれば、1以上の他の論理回路を有する構成であってもよい。
OR回路252は、マイコン240のLow側端子(図11A中のL側)からのPWM信号およびラッチ回路254からの信号を受け付け、受け付けた信号に基づいてPWM駆動回路260を制御するための信号を出力する。OR回路252は、入力端子の一端がマイコン240のLow側端子(図11A中の「L側」)に接続され、入力端子の他端がNOT回路255を介してラッチ回路254に接続される。また、OR回路252は、出力端子がPWM駆動回路260に接続される。
OR回路252は、通常動作時にはPWM信号をそのまま駆動信号としてPWM駆動回路260に出力し、3相短絡動作時は下アームのスイッチング素子S4をオンにする駆動信号をPWM駆動回路260に出力する。OR回路252は、例えば、マイコン240およびラッチ回路254の少なくとも一方から信号(例えば、Highレベルの信号)を受け付けている場合に、信号(例えば、Highレベルの信号)を出力する。OR回路252は、OR回路252がPWM駆動回路260に出力する信号は、下アーム駆動信号の一例である。
通常駆動のときには、例えば、ラッチ回路254からHighレベルの信号が出力されている。そのため、OR回路252は、通常駆動のときには、NOT回路255からLowレベルの信号が出力されるため、PWM信号がHighレベルのときに、PWM駆動回路260にHighレベルの信号を出力し、PWM信号がLowレベルのときに、PWM駆動回路260にLowレベルの信号を出力する。
OR回路252は、第2論理回路の一例である。なお、第2論理回路は、OR回路252であることに限定されず、通常動作時にはPWM信号をそのまま駆動信号としてPWM駆動回路260に出力し、3相短絡動作時は下アームのスイッチング素子S4をオンにする駆動信号をPWM駆動回路260に出力することができれば、1以上の他の論理回路を有する構成であってもよい。
AND回路253は、AND回路251およびOR回路252からの駆動信号(例えば、上アーム駆動信号および下アーム駆動信号)が入力され、入力された駆動信号に基づいて、3相短絡切替回路250の内部信号に不具合が発生しているか否かを検出する。3相短絡切替回路250の内部信号に不具合が発生するとは、PWM駆動回路260のHigh側とLow側の両方にHIghレベルの信号が入力されている状態である。その原因は、例えば3相短絡切替回路250が有する複数の論理回路の少なくとも1つの故障、あるいは、3相短絡切替回路250の基板における配線パターンが短絡する故障などが挙げられる。AND回路253は、入力端子の一端がAND回路251の出力端子に接続され、入力端子の他端がOR回路252の出力端子に接続される。また、AND回路253は、出力端子がマイコン240およびリレー290に接続される。なお、AND回路253の出力端子は、少なくともリレー290に接続されていればよい。
AND回路253は、例えば、AND回路251およびOR回路252の両方からHighレベルの駆動信号が入力されている場合に、スイッチング素子S1およびS4が同時にオンすることを示す同時オン検出信号を出力する。また、AND回路253は、例えば、AND回路251およびOR回路252の一方または両方からLowレベルの駆動信号が入力されている場合に、同時オン検出信号を出力しない。
本実施の形態において、マイコン240の制御において、AND回路251およびOR回路252の双方からHighレベルの駆動信号が出力されることはない。AND回路251およびOR回路252の双方からHighレベルの駆動信号が出力されると、PWM駆動回路260はスイッチング素子S1およびS4の双方をオンにするが、このとき上下間短絡が発生してしまうためである。言い換えると、AND回路251およびOR回路252の双方からHighレベルの駆動信号が出力されている場合、3相短絡切替回路250が有する複数の論理回路の少なくとも1つが故障していることが原因の一つとなる。AND回路253は、AND回路251およびOR回路252の双方からHighレベルの駆動信号が出力されると、同時オン検出信号をマイコン240およびリレー290に出力する。AND回路253は、上アーム駆動信号と下アーム駆動信号とが同時にオンになる信号であることを検出すると、上記の同時オン検出信号を出力することで、PWM駆動回路260の複数のスイッチング素子S1〜S6への出力を遮断するリレー290を動作させる。AND回路253は、監視回路の一例であり、AND回路253がマイコン240に出力する同時オン検出信号は、検出結果の一例である。また、AND回路253は、少なくともリレー290に同時オン検出信号を出力すればよい。
なお、3相短絡切替回路250は、AND回路253を有することに限定されない。3相短絡切替回路250は、例えば、AND回路253を有していなくてもよい。
ラッチ回路254は、入力側がマイコン240および過電圧検出回路80と接続され、出力側がAND回路251、および、NOT回路255を介してOR回路252と接続され、過電圧検出回路80から出力された3相短絡信号を保持し、AND回路251、および、NOT回路255を介してOR回路252に出力する。言い換えると、ラッチ回路254の出力は、AND回路251、および、NOT回路255を介してOR回路252に入力される。また、ラッチ回路254は、マイコン240が3相短絡指令を出力する機能を有する場合、当該マイコン240から出力された3相短絡指令を保持し、AND回路251、および、NOT回路255を介してOR回路252に出力してもよい。3相短絡信号および3相短絡指令は、3相短絡の指令信号の一例である。
本実施の形態では、ラッチ回路254は、通常駆動している際には信号を出力し、3相短絡駆動をしている際には信号の出力を停止するように構成される。ラッチ回路254は、例えば、3相短絡信号または3相短絡指令を取得すると、マイコン240からラッチ解除信号を取得するまで、信号の出力の停止を維持する。ラッチ回路254からの信号は、例えば、3相短絡信号または3相短絡指令を取得すると、3相短絡駆動を行うための信号であるアクティブLow(図11A中の「アクティブL」)となるとも言える。
なお、ラッチ回路254は、3相短絡信号または3相短絡指令を取得すると、信号の出力を停止することに限定されず(例えば、アクティブLowとなることに限定されず)、信号の出力を開始するように構成されていてもよい。ラッチ回路254の構成は、3相短絡切替回路250の論理回路の構成により適宜決定されるとよい。
NOT回路255は、入力端子がラッチ回路254に接続され、出力端子がOR回路252の入力端子に接続され、ラッチ回路254からの信号が入力されない場合に信号を出力する。
PWM駆動回路260は、降圧DC電源70からの電力供給を、リレー290を介して受けて、マイコン240から出力されたPWM信号(駆動信号の一例)に基づいて、複数のスイッチング素子S1〜S6の駆動を制御する。PWM駆動回路260は、電池P1から供給された直流電力を3相の交流電力に変換して、その交流電力をモータM1に供給するために各スイッチング素子S1〜S6のスイッチング動作を制御する。PWM駆動回路260は、マイコン240から出力されたPWM信号に基づいて、複数のスイッチング素子S1〜S6を駆動するとも言える。PWM駆動回路260は、複数のスイッチング素子S1〜S6を動作させるための電力(例えば、ゲート電位を維持する電力)を出力することが可能なように構成されている。
PWM駆動回路260は、AND回路251からHighレベルの駆動信号を取得すると、スイッチング素子S1をオンする。また、PWM駆動回路260は、OR回路252からHighレベルの駆動信号を取得すると、スイッチング素子S4をオンする。
なお、PWM駆動回路260は、リレー290がオフして降圧DC電源70からの電力の供給が停止すると、PWM駆動回路260には駆動用の電力が供給されないので、PWM駆動回路260の特性からPWM駆動回路260の出力側がハイインピーダンスとなる。これは、PWM駆動回路260のゲート出力を遮断することの一例である。
降圧DC電源70は、PWM駆動回路260の駆動用の電源である。降圧DC電源70は、例えば、12V〜15V程度の電圧をPWM駆動回路260に供給する。本実施の形態では、降圧DC電源70は、さらに、3相短絡駆動を行うときに下アームのスイッチング素子S4をオンするための電力をPWM駆動回路260に供給する。つまり、降圧DC電源70は、通常駆動を行うとき及び3相短絡駆動を行うときの双方において、PWM駆動回路260に電力を供給する。なお、降圧DC電源70は、PWM駆動回路260の電源の一例である。
降圧DC電源70は、モータM1を駆動するための電池P1、および、電気車両1の電装品に電力を供給するための、電池P1よりも電圧が低い低電圧直流電池の少なくとも一方に基づく電源である。ここでは、図11Aに示すように、降圧DC電源70は、電池P1の電圧をDC/DCコンバータにより降圧して生成された電源である。なお、降圧DC電源70は、低電圧直流電池である電池P2(図11B参照)そのものであってもよい。この場合、低電圧直流電池は、例えば、12Vの蓄電池であってもよい。低電圧直流電池は、第2直流電池の一例である。なお、図11Bは、降圧DC電源70の一実施例を示すブロック図である。
なお、降圧DC電源70が電池P1、および、低電圧直流電池である電池P2の両方に基づく電源である場合、図11Bに示すように、電池P1の電圧を降圧するDC/DCコンバータ71の出力と、電池P2とを、ダイオードORによりリレー290と接続される構成としてもよい。例えば、電圧が高いダイオード側の電池からリレー290を介して電力が供給されてもよい。
過電圧検出回路80は、3相ブリッジ回路20における直流電圧の所定の過電圧を検出する回路である。過電圧検出回路80は、例えば、電源線Lpにおける所定の過電圧を検出する。より具体的には、過電圧検出回路80は、電源線Lpにおける所定の過電圧を検出した場合に、3相短絡を行うための3相短絡信号を出力する。3相短絡信号は、過電圧を検出したことを示す信号であるとも言える。過電圧検出回路80は、電源線Lpおよび接地線Lgのそれぞれと電気的に接続される。
なお、所定の過電圧とは、電源線Lpの電圧が、回路を構成する部品の耐電圧を超えない電圧として予め決定される。ここで、回路を構成する部品とは、例えば、3相ブリッジ回路20のスイッチング素子S1〜S6、または、平滑コンデンサC1などである。過電圧検出回路80は、3相短絡信号を3相短絡切替回路250に出力する。なお、過電圧検出回路80は、マイコン240に3相短絡信号を出力してもよい。3相短絡信号は、例えば、ハイレベルのパルス信号であるがこれに限定されない。
過電圧検出回路80の回路構成は、過電圧を検出し、かつ、当該過電圧を検出したことを示す信号を出力できれば、特に限定されない。過電圧検出回路80は、例えば、複数の抵抗素子と、比較回路とを有する。比較回路は、+入力端子と、−入力端子と、+入力端子の電圧と−入力端子の電圧との比較結果を出力する出力端子とを有する。比較回路は、例えば、+入力端子に入力される検出電圧が−入力端子に入力される基準電圧よりも高い場合に、出力端子から3相短絡信号を出力する。検出電圧は、過電圧であるか否かの判定の対象となる電圧であり、例えば、電源線Lpにおける電圧Vpに基づく電圧である。基準電圧は、過電圧を検出するための基準となる電圧であり、例えば、定電圧源における電圧(例えば、5V)に基づく電圧である。また、複数の抵抗素子は、電圧Vpおよび定電圧源における電圧を分圧するために用いられる。
リレー290は、降圧DC電源70と、PWM駆動回路260との導通及び非導通を切り替える。つまり、リレー290は、降圧DC電源70からの電力をPWM駆動回路260に供給するか否かを切り替える。リレー290による切り替えは、AND回路253からの信号に基づいて行われる。リレー290は、遮断回路の一例である。また、リレー290がオフになることは、PWM駆動回路260の複数のスイッチング素子S1〜S6への出力を遮断することの一例である。
リレー290は、接点であるスイッチ290aと、一次巻き線であるコイル290bとを有する。リレー290は、コイル290bに電流を流すことで生じる磁力によりスイッチ290aをオン・オフする。本実施の形態では、リレー290は、AND回路253から出力される信号によりコイル290bに電流が流れることでスイッチ290aがオフする構成を有する。スイッチ290aは、降圧DC電源70からPWM駆動回路260への電力供給をオフにする遮断スイッチの一例である。
リレー290は、車両駆動装置5が通常駆動している際には、PWM駆動回路260と降圧DC電源70とを接続する。また、リレー290は、車両駆動装置5が3相短絡駆動している際には、PWM駆動回路260と降圧DC電源70との接続を解除(切断)する。
これにより、リレー290は、例えば3相短絡切替回路250の論理回路の少なくとも1つが故障しており、スイッチング素子S1およびS4をマイコン240からのPWM信号に基づいて正常に制御できない場合に、スイッチング素子S1およびS4をオフすることができる。つまり、リレー290は、3相短絡切替回路250のAND回路251、および、OR回路252の出力が双方ともHighレベルの信号としてOR回路252に入力されている際に、電池P1の正負極間が短絡することを抑制することができる。その原因は、例えば3相短絡切替回路250が有する複数の論理回路の少なくとも1つが故障していることなどが挙げられる。
また、図11Aに示すように、PWM駆動回路260は、抵抗素子R1を介してスイッチング素子S1のゲートに接続されている。また、PWM駆動回路260は、抵抗素子R2を介してスイッチング素子S4のゲートと接続されている。言い換えると、抵抗素子R1は、一方の端子がPWM駆動回路260に接続され、他方の端子がスイッチング素子S1のゲートに接続されている。抵抗素子R2は、一方の端子がPWM駆動回路260に接続され、他方の端子がスイッチング素子S4のゲートに接続されている。
上記のように、3相短絡切替回路250は、スイッチング素子S1〜S6を制御するための論理回路(例えば、AND回路251およびOR回路252)を有する。また、3相短絡切替回路250は、マイコン240とPWM駆動回路260との間に電気的に接続されている。つまり、車両駆動装置5は、背景技術に記載した特許文献1のように、論理回路(ロジック回路)からの出力信号により直接複数のスイッチング素子S1〜S6を駆動しない。車両駆動装置5は、PWM駆動回路260からの出力信号により直接複数のスイッチング素子S1〜S6を駆動する。
これにより、車両駆動装置5は、例えば、3相ブリッジ回路20に過電圧が検出された場合に、3相短絡切替回路250を働かせて安定して3相短絡駆動を行い、3相ブリッジ回路20にかかる過電圧を抑制することができる。このようにして、車両駆動装置5は、モータM1の3相のそれぞれを安定して短絡することで、モータM1の巻線コイル間から誘起される電圧をより確実に抑制することができる。
また、例えば、背景技術で記載した特許文献1の車両駆動装置は、上アームのスイッチング素子のソースの電位が下アームのスイッチング動作により変動するので、不安定である。そのため、論理回路(ロジック回路)からの出力信号により上アームのスイッチング素子を動作させるためには、上アームのスイッチング素子のソースの電位をグランドとした絶縁電源が必要となり、回路構成が複雑になる。一方、本実施の形態に係る車両駆動装置5は、上記のように、絶縁電源を要することなく、3相短絡駆動している際に、上アームのスイッチング素子S1、S2、S3をより確実にオフにすることができる。
また、上記のように、3相短絡切替回路250は、さらに、PWM駆動回路260に出力する駆動信号のうち、上アームを駆動するAND回路251から出力される駆動信号と、下アームを駆動するOR回路252から出力される駆動信号とが入力されるAND回路253を有する。そして、AND回路253は、2つの駆動信号が同時にオンになる信号(例えば、同時にHighレベルである信号)であることを検出すると、PWM駆動回路260への電力供給を遮断することで、PWM駆動回路260の複数のスイッチング素子S1〜S6への出力を遮断するリレー290を動作させる。AND回路253は、例えば、上アームのスイッチング素子と下アームのスイッチング素子とが同時にオンになり短絡状態となると、リレー290を動作させてもよい。
例えば、駆動信号は、複数のスイッチング素子S1〜S6のうち上アームのスイッチング素子S1、S2、S3を駆動する上アーム駆動信号と、下アームのスイッチング素子S4、S5、S6を駆動する下アーム駆動信号とを含む。3相短絡切替回路250が有する論理回路は、上アーム駆動信号をPWM駆動回路260に出力するAND回路251(第1論理回路の一例)と、下アーム駆動信号をPWM駆動回路260に出力するOR回路252(第2論理回路の一例)とを有する。また、3相短絡切替回路250は、AND回路251から出力される上アーム駆動信号と、OR回路252から出力される下アーム駆動信号とが入力されるAND回路253(監視回路の一例)をさらに有する。AND回路253は、マイコン240と、PWM駆動回路260への電力供給を遮断するリレー290(遮断回路の一例)とに電気的に接続されている。そして、AND回路253は、上アーム駆動信号と下アーム駆動信号とが、上下アームのスイッチング素子が同時にオンになる信号であることを検出すると、PWM駆動回路260への電力供給を遮断するリレー290を動作させる。
これにより、車両駆動装置5は、3相短絡切替回路250が有する部品(例えば、論理回路の少なくとも1つ)又は基板などが故障して上下アームのスイッチング素子を同時にオンさせる信号が出力されている場合に、上下アームのスイッチング素子が同時にオンしてしまい、上下間短絡が発生することを抑制することができる。
また、上記のように、車両駆動装置5は、電気車両1に搭載される3相モータを駆動するための、複数のスイッチング素子S1〜S6が3相ブリッジ接続されたインバータ210を制御するPWM信号を出力するマイコン240と、PWM信号に基づいて複数のスイッチング素子S1〜S6を駆動するPWM駆動回路260と、インバータ210の異常時に下アームのスイッチング素子S4〜S6を一括して短絡する3相短絡を行う3相短絡切替回路250とを備える。3相短絡切替回路250は、マイコン240とPWM駆動回路260との間に電気的に接続され、通常動作時はPWM信号を駆動信号としてPWM駆動回路260に出力し、3相短絡の指令信号が入力されると、下アームのスイッチング素子S4〜S6をオンに、かつ、上アームのスイッチング素子S1〜S3をオフにする駆動信号をPWM駆動回路260に出力する。
これにより、車両駆動装置5は、例えば、3相短絡切替回路250からの駆動信号に基づいてPWM駆動回路260から出力される出力信号により、複数のスイッチング素子S1〜S6を駆動する。車両駆動装置5は、例えば、スイッチング素子S1〜S6を動作させるための電力(例えば、ゲート電位を維持する電力)を出力することが困難な回路からの出力信号により複数のスイッチング素子S1〜S6を駆動する場合に比べて、より確実に複数のスイッチング素子S1〜S6を駆動することができる。よって、車両駆動装置5は、安定して3相短絡を実施することができる。
[3−2.車両駆動装置の動作]
次に、車両駆動装置5の動作について、図12および図13を参照しながら説明する。まずは、車両駆動装置5の3相短絡動作について、図12を参照しながら説明する。図12は、本実施の形態に係る車両駆動装置5の第1の動作の一例を示すフローチャートである。図12では、インバータ210が通常駆動している状態における動作を示す。なお、通常駆動している状態では、リレー290のスイッチ290aは、導通している。つまり、降圧DC電源70は、PWM駆動回路260に電力を供給している。また、以下では、u相について説明するが、v相およびw相においても同様のことが言える。
図12に示すように、インバータ210が通常駆動している状態で過電圧検出回路80が電源線Lpにおける所定の過電圧を検出すると(S111でYes)、過電圧検出回路80は、ラッチ回路254に3相短絡信号を出力する(S112)。ラッチ回路254は、3相短絡信号を保持し、当該3相短絡信号をAND回路251およびOR回路252に出力する。本実施の形態では、ラッチ回路254からの信号は、過電圧検出回路80が所定の過電圧を検出すると、3相短絡駆動を行うための信号であるアクティブLow(図11A中の「アクティブL」)となる。
これにより、ラッチ回路254は、3相短絡駆動している際に、マイコン240からAND回路251に出力されるPWM信号に関わらず、AND回路251からPWM駆動回路260にHighレベルの信号が出力されることを禁止し、かつ、マイコン240からOR回路252に出力されるPWM信号に関わらず、OR回路252からPWM駆動回路260にHighレベルの信号が出力されるようにする。つまり、ラッチ回路254は、3相短絡駆動している際に、上アームのスイッチング素子S1をオフとし、かつ、下アームのスイッチング素子S4をオンにする(S113)。
また、インバータ210が通常駆動している状態で過電圧検出回路80が電源線Lpにおける所定の過電圧を検出しないと(S111でNo)、3相短絡駆動は行われずに処理を終了する。つまり、インバータ210は、通常駆動している状態を継続する。
上記のように、本実施の形態に係る車両駆動装置5は、マイコン240とPWM駆動回路260との間に電気的に接続される3相短絡切替回路250を備える。PWM駆動回路260は、複数のスイッチング素子S1〜S6を駆動する。3相短絡切替回路250は、通常動作時にはPWM信号をそのまま駆動信号としてPWM駆動回路260に出力し、3相短絡信号が入力されると(3相短絡駆動時には)、複数のスイッチング素子S1〜S6のうち下アームのスイッチング素子S4、S5、S6をオンに、かつ、複数のスイッチング素子S1〜S6のうち上アームのスイッチング素子S1、S2、S3をオフにする駆動信号をPWM駆動回路260に出力する。
これにより、複数のスイッチング素子S1〜S6は、PWM駆動回路260により制御される。PWM駆動回路260は、論理回路とは異なり、一般的にスイッチング素子のゲート電位を維持する電力を出力することが可能である。よって、車両駆動装置5は、一般的にスイッチング素子のゲート電位を維持する電力を出力することが困難な論理回路からの出力でスイッチング素子をオン・オフしている場合に比べて、安定して3相短絡を実施することができる。
次に、車両駆動装置5の3相短絡動作について、図13を参照しながら説明する。図13は、本実施の形態に係る車両駆動装置5の第2の動作の一例を示すフローチャートである。図13では、インバータ210が通常駆動又は3相短絡駆動している状態における動作を示す。なお、通常駆動又は3相短絡駆動している状態では、リレー290のスイッチ290aは、導通している。つまり、降圧DC電源70は、PWM駆動回路260に電力を供給している。また、以下では、u相について説明するが、v相およびw相においても同様のことが言える。
図13に示すように、インバータ210が通常駆動又は3相短絡駆動している状態でAND回路253がスイッチング素子S1およびスイッチング素子S4が同時オンとなる信号を検出すると(S121でYes)、AND回路253は、上下アームのスイッチング素子S1およびS4をオフとするための信号をリレー290に出力する(S122)。当該信号は、リレー290をオフにできる信号であればよい。当該信号は、上記の同時オン検出信号である。なお、本実施の形態では、AND回路253は、ステップS122において、当該信号をマイコン240にも出力するが、これに限定されない。また、AND回路253がマイコン240に当該信号を出力することは、検出結果を出力することの一例である。
リレー290は、AND回路253から当該信号を取得すると、オフとなる。これにより、降圧DC電源70からPWM駆動回路260への電力供給は、停止される。言い換えると、PWM駆動回路260からスイッチング素子S1およびS4に、ゲート電圧が供給されなくなる。つまり、AND回路253は、当該信号を出力することで、上アームのスイッチング素子S1および下アームのスイッチング素子S4をオフとする(S123)。
また、マイコン240は、AND回路253から当該信号を取得すると、3相短絡指令を3相短絡切替回路250に出力することを禁止してもよい。つまり、マイコン240は、3相短絡駆動を行わせない制御を行ってもよい。
マイコン240は、AND回路253から当該信号を取得すると、上下アームのスイッチング素子が同時オンとなる信号を検出したことを上位ECUに通知する(S124)。上位ECUは、当該信号を取得すると、例えば、モータM1の回転数(すなわち、電気車両1の速度)を低下させるための制御を行ってもよい。マイコン240がステップS124において同時オンとなる信号を検出したことを上位ECUに通知することは、モータM1の回転数を制限するための信号を出力することの一例である。
また、インバータ210が通常駆動または3相短絡駆動している状態でAND回路253がスイッチング素子S1およびスイッチング素子S4が同時オンとなる信号を検出しないと(S121でNo)、上下アームのスイッチング素子S1およびS4をオフする動作は行われずに処理を終了する。つまり、インバータ210は、通常駆動又は3相短絡駆動している状態を継続する。
上記のように、本実施の形態に係る車両駆動装置5の制御方法は、上下アームのスイッチング素子(例えば、スイッチング素子S1およびS4)が同時オンとなる信号を検出する第1ステップと、同時オンとなる信号を検出した場合に、上下アームのスイッチング素子をオフにする第2ステップとを含む。そして、第2ステップは、上下アームのスイッチング素子を駆動するPWM駆動回路260に供給させる電力を遮断するステップを含む。
これにより、車両駆動装置5は、3相短絡切替回路250が故障して上下アームのスイッチング素子を同時にオンさせる信号が出力されている場合に、上下アームのスイッチング素子が同時にオンしてしまう、つまり電池P1の正負極間が短絡してしまうことを抑制することができる。
(実施の形態3の変形例)
以下、本変形例に係る車両駆動装置ついて、図14〜図16を参照しながら説明する。図14は、本変形例に係るインバータ210aのうちの1相分の機能構成を示すブロック図である。図14では、インバータ210aのうちのu相の機能構成を示す。以下では、u相について説明するが、v相およびw相においても同様のことが言える。
本変形例に係るインバータ210aは、主に、異常検出回路300を有する点において、実施の形態3に係るインバータ210と相違する。以下、本変形例に係るインバータ210aについて、実施の形態3に係るインバータ210との相違点を中心に説明する。また、本変形例において、実施の形態3に係るインバータ210と同一または類似の構成については、インバータ210と同一の符号を付し、説明を省略または簡略化する。
図14に示すように、本変形例に係るインバータ210aは、マイコン240に不具合が生じている場合であっても、3相短絡駆動を実行できるように、マイコン240の異常を検出する異常検出回路300を備える。異常検出回路300は、例えば、制御回路230内に設けられていてもよい。なお、マイコン240に不具合が生じている場合とは、例えば、マイコン240のプログラムソフトにバグが発生している場合、または、プログラムソフトの一部が暴走している場合などである。
異常検出回路300は、マイコン240の異常を検出するための回路である。具体的には、異常検出回路300は、マイコン240の異常を検出して、3相短絡切替回路250を駆動するための信号を出力する回路である。マイコン240の異常は、インバータ210aの異常の一例である。
異常検出回路300について、図15を参照しながら説明する。図15は、本変形例に係る異常検出回路300の機能構成を示すブロック図である。なお、図15において、マイコン240は、クリアパルス信号を不具合通知回路301に定期的に出力している。
図15に示すように、異常検出回路300は、不具合通知回路301とNOT回路302とを有する。
不具合通知回路301は、マイコン240の不具合の有無を監視する回路であり、例えば、ウォッチドックタイマ回路である。不具合通知回路301は、クリアパルス信号を所定期間受け付けていない場合に、マイコン240に不具合が生じているとして、不具合通知信号を、NOT回路302を介してラッチ回路254およびマイコン240に出力する。
不具合通知信号は、リセット信号であり、例えば、ローレベルのパルス信号として出力される。ローレベルのパルス信号は、NOT回路302によって反転され、ハイレベルのパルス信号としラッチ回路254に出力される。
ラッチ回路254は、不具合通知回路301から出力された不具合通知信号に基づく信号(例えば、ハイレベルのパルス信号であり、以下において通知信号とも記載する)を保持し、AND回路251、および、NOT回路255を介してOR回路252に出力する。ラッチ回路254が異常検出回路300から取得する不具合通知信号に基づく信号は、3相短絡の指令信号の一例である。
なお、マイコン240は、不具合通知信号であるリセット信号を受け付けることで再起動する。マイコン240は、リセット信号によって正常に再起動できた場合に、ラッチ回路254に保持されている信号を解除するラッチ解除信号を出力する。マイコン240が正常に再起動されると、車両駆動装置5は平常運転に戻るが、正常に再起動できなかった場合は、不具合通知信号に基づく信号が継続してAND回路251、および、NOT回路255を介してOR回路252に出力された状態となる。
なお、3相短絡切替回路250は、ラッチ回路254を有する例について説明したが、マイコン240からの3相短絡指令、過電圧検出回路80からの3相短絡信号、または、マイコン240からの通知信号を取得すると、3相短絡制御の状態に遷移させることができれば、ラッチ回路254を有することに限定されない。3相短絡切替回路250は、例えば、3相短絡指令、3相短絡信号、および、通知信号の少なくとも1つを取得すると取得した信号を出力する論理回路(例えば、OR回路)を、ラッチ回路254に替えて有していてもよい。なお、3相短絡切替回路250は、不具合通知信号に基づく信号を保持するためには、ラッチ回路254を有しているとよい。
次に、本変形例に係る車両駆動装置の動作について、図16を参照しながら説明する。図16は、本変形例に係る車両駆動装置の動作の一例を示すフローチャートである。図16では、インバータ210aが通常駆動している状態における動作を示す。なお、通常駆動している状態では、リレー290のスイッチ290aは、導通している。つまり、降圧DC電源70は、PWM駆動回路260に電力を供給している。また、以下では、u相について説明するが、v相およびw相においても同様のことが言える。
図16に示すように、インバータ210aが通常駆動している状態で異常検出回路300がマイコン240の異常を検出すると(S131でYes)、異常検出回路300は、ラッチ回路254に不具合通知信号に基づく信号を出力する。ラッチ回路254は、NOT回路302によって反転された不具合通知信号(例えば、ハイレベルのパルス信号であり、通知信号の一例)を保持し、当該NOT回路302によって反転された不具合通知信号である通知信号を、AND回路251、および、NOT回路255を介してOR回路252に出力する(S132)。
ラッチ回路254は、通知信号を取得すると、AND回路251からの駆動信号の出力を停止させ、かつ、OR回路252からの駆動信号の出力を行わせる。ラッチ回路254は、通知信号を取得すると、上アームのスイッチング素子をオフとし、下アームのスイッチング素子をオンとする(S133)。つまり、ラッチ回路254は、3相短絡駆動を行う。
また、インバータ210aが通常駆動している状態で異常検出回路300がマイコン240の異常を検出しないと(S131でNo)、3相短絡駆動は行われずに処理を終了する。つまり、インバータ210aは、通常駆動している状態を継続する。
上記のように、本変形例に係る車両駆動装置が備えるインバータ210aは、マイコン240の異常を検出するための異常検出回路300を備える。これにより、車両駆動装置は、例えば、マイコン240の異常により正常な制御が行えず誘起電圧の上昇を抑制することが困難な場合に、3相短絡制御の状態になる。よって、車両駆動装置は、マイコン240に異常が発生したことに起因して誘起電圧が上昇することを抑制することができる。なお、マイコン240の正常な制御とは、通常のモータ駆動トルク出力制御、及び、マイコン240からのPWM駆動信号による3相短絡制御を含む。
(実施の形態4)
以下、本実施の形態に係る車両駆動装置について、図17および図18を参照しながら説明する。
[4−1.車両駆動装置の構成]
まず、本実施の形態に係る車両駆動装置の構成について、図17を参照しながら説明する。図17は、本実施の形態に係るインバータ310のうちの1相分の機能構成を示すブロック図である。図17では、インバータ310のうちのu相の機能構成を示す。以下では、u相について説明するが、v相およびw相においても同様のことが言える。
本実施の形態に係るインバータ310は、主に、リレー390および391を有し、PWM駆動回路260からの出力信号が当該リレー390および391を経由してスイッチング素子S1およびS4に供給される点において、実施の形態3に係るインバータ210と相違する。以下、本実施の形態に係るインバータ310について、実施の形態3に係るインバータ210との相違点を中心に説明する。また、本実施の形態において、実施の形態3に係るインバータ210と同一または類似の構成については、インバータ210と同一の符号を付し、説明を省略または簡略化する。
図17に示すように、インバータ310は、インバータ210に比べて、さらにリレー390および391を備える。また、インバータ310は、降圧DC電源70およびPWM駆動回路260の導通状態を切り替えるためのリレー290を備えていない。本実施の形態では、PWM駆動回路260は、リレー390および391を介さずに降圧DC電源70から電力の供給を受ける。
リレー390は、一端がPWM駆動回路260(例えば、PWM駆動回路260のHigh側端子)に接続され、他端がスイッチング素子S1のゲートに接続されており、PWM駆動回路260からの出力信号をスイッチング素子S1のゲートに供給するか否かを選択的に切り替える。
リレー390は、接点であるスイッチ390aと、一次巻き線であるコイル390bとを有する。リレー390は、コイル390bに電流を流すことで生じる磁力によりスイッチ390aをオン・オフする。本実施の形態では、リレー390は、AND回路253が同時オン検出信号を出力することで供給される電流がコイル390bに流れることでスイッチ390aがオフする構成を有する。スイッチ390aは、PWM駆動回路260からスイッチング素子S1への電力供給をオフにする遮断スイッチの一例である。
リレー390は、車両駆動装置が通常駆動または3相短絡駆動している際には、PWM駆動回路260とスイッチング素子S1のゲートとを接続する。また、リレー390は、3相短絡切替回路250の論理回路又は基板などが故障して上下アームのスイッチング素子を同時にオンさせる信号が出力されている際には、PWM駆動回路260とスイッチング素子S1のゲートとの接続を解除(切断)する。
これにより、リレー390は、3相短絡切替回路250の論理回路が、スイッチング素子S1をマイコン240からのPWM信号に基づいて正常に動作していない場合に、スイッチング素子S1をオフすることができる。
リレー391は、一端がPWM駆動回路260(例えば、PWM駆動回路260のLow側出力端子)に接続され、他端がスイッチング素子S4のゲートに接続されており、PWM駆動回路260からの出力信号をスイッチング素子S4のゲートに供給するか否かを選択的に切り替える。
リレー391は、接点であるスイッチ391aと、一次巻き線であるコイル391bとを有する。リレー391は、コイル391bに電流を流すことで生じる磁力によりスイッチ391aをオン・オフする。本実施の形態では、リレー391は、AND回路253が同時オン検出信号を出力することで供給される電流がコイル391bに流れることでスイッチ391aがオフする構成を有する。スイッチ391aは、PWM駆動回路260からスイッチング素子S4への電力供給をオフにする遮断スイッチの一例である。
リレー391は、車両駆動装置が通常駆動または3相短絡駆動している際には、PWM駆動回路260とスイッチング素子S4のゲートとを接続する。また、リレー391は、3相短絡切替回路250の論理回路又は基板などが故障して上下アームのスイッチング素子を同時にオンさせる信号が出力されている際には、PWM駆動回路260とスイッチング素子S4のゲートとの接続を解除(切断)する。
これにより、リレー391は、3相短絡切替回路250の論理回路が、スイッチング素子S4をマイコン240からのPWM信号に基づいて正常に動作していない場合に、スイッチング素子S4をオフすることができる。
また、コイル390bおよび391bの一端は、電気的に接続されており、かつ、AND回路253に接続されている。そのため、AND回路253が同時オン検出信号を出力すると、当該信号に基づく電流はコイル390bおよび391bの両方に流れる。つまり、リレー390および391は、同時にオンし、かつ、同時にオフする。リレー390および391のオン・オフの動作は、同期しているとも言える。リレー390および391は、遮断回路の一例である。また、リレー390および391がオフになることは、PWM駆動回路260の複数のスイッチング素子S1〜S6への出力をオフする(遮断する)ことの一例である。
これにより、リレー390および391は、車両駆動装置が通常駆動または3相短絡駆動している際に、3相短絡切替回路250の不具合により、電池P1の正負極間が短絡することを抑制することができる。なお、3相短絡切替回路250の不具合とは、例えば論理回路の少なくとも1つの故障などに起因する。
[4−2.車両駆動装置の動作]
次に、車両駆動装置の動作について、図18を参照しながら説明する。図18は、本実施の形態に係る車両駆動装置の動作の一例を示すフローチャートである。図18では、インバータ310が通常駆動又は3相短絡駆動している状態における動作を示す。なお、通常駆動又は3相短絡駆動している状態では、スイッチ390aおよび391aは、導通している。つまり、PWM駆動回路260からの出力信号は、スイッチング素子のゲートに供給される状態である。また、以下では、u相について説明するが、v相およびw相においても同様のことが言える。なお、インバータ310が通常駆動している状態から3相短絡駆動している状態に遷移するときの動作は、実施の形態3の図12と同様であり、説明を省略する。
図18に示すように、インバータ310が通常駆動又は3相短絡駆動している状態でAND回路253がスイッチング素子S1およびS4が同時オンとなる信号を検出すると(S141でYes)、AND回路253は、上下アームのスイッチング素子S1およびS4のゲート駆動ラインを遮断するための信号をリレー390および391に出力する(S142)。ステップS142の動作は、上下アームのスイッチング素子S1およびS4をオフとするための信号をリレー390および391に出力することに相当する。当該信号は、リレー390および391をオフにできる信号であればよい。当該信号は、上記の同時オン検出信号である。なお、本実施の形態では、AND回路253は、ステップS142において、当該信号をマイコン240にも出力するが、これに限定されない。また、AND回路253がマイコン240に当該信号を出力することは、検出結果を出力することの一例である。
リレー390および391は、AND回路253から当該信号を取得すると、オフとなる。具体的には、リレー390は、当該信号に基づく電流がコイル390bに流れることで、スイッチ390aがオフになる。また、リレー391は、当該信号に基づく電流がコイル391bに流れることで、スイッチ391aがオフになる。コイル390bおよび391bに流れる電流の電流値は、例えば、同じである。
これにより、PWM駆動回路260からスイッチング素子S1およびS4への出力信号は、PWM駆動回路260からスイッチング素子S1およびS4までの経路上で遮断される。言い換えると、PWM駆動回路260からスイッチング素子S1およびS4に、ゲート電圧が供給されなくなる。つまり、AND回路253は、当該信号を出力することで、上アームのスイッチング素子S1および下アームのスイッチング素子S4をオフとする(S143)。
また、マイコン240は、AND回路253から当該信号を取得すると、3相短絡指令を3相短絡切替回路250に出力することを禁止してもよい。つまり、マイコン240は、3相短絡駆動を行わせない制御を行ってもよい。
マイコン240は、AND回路253から当該信号を取得すると、上下アームのスイッチング素子S1およびS4が同時オンとなる信号を検出したことを上位ECUに通知する(S144)。これは、図13に示すステップS124と同様の処理であり、説明を省略する。
また、インバータ210が通常駆動または3相短絡駆動している状態でAND回路253がスイッチング素子S1およびS4が同時オンとなる信号を検出しないと(S141でNo)、上下アームのスイッチング素子S1およびS4をオフする動作は行われずに処理を終了する。つまり、インバータ210は、通常駆動又は3相短絡駆動している状態を継続する。
上記のように、本実施の形態に係る車両駆動装置の制御方法は、上下アームのスイッチング素子(例えば、スイッチング素子S1およびS4)が同時オンとなる信号を検出する第1ステップと、同時オンとなる信号を検出した場合に、上下アームのスイッチング素子をオフにする第2ステップとを含む。そして、第2ステップは、PWM駆動回路260から上下アームのスイッチング素子の各々への出力信号を遮断するステップを含む。
これにより、車両駆動装置は、3相短絡切替回路250が故障して上下アームのスイッチング素子を同時にオンさせる信号が出力されている場合に、上下アームのスイッチング素子が同時にオンしてしまう、つまり電池P1の正負極間が短絡してしまうことを抑制することができる。
(実施の形態5)
以下、本実施の形態に係るインバータ410について、図19を参照しながら説明する。図19は、本実施の形態に係るインバータ410のうちの1相分の機能構成を示すブロック図である。図19では、インバータ410のうちのu相の機能構成を示す。以下では、u相について説明するが、v相およびw相においても同様のことが言える。また、以下では、上記実施の形態又は実施の形態の変形例と同一又は類似の構成については、当該実施の形態又は当該実施の形態の変形例と同一の符号を付し、説明を省略又は簡略化する場合がある。なお、本実施の形態に係る車両駆動装置は、例えば、実施の形態1に係る車両駆動装置5のインバータ10に替えて、インバータ410を備える。
図19に示すように、インバータ410は、降圧DC電源70と、過電圧検出回路80と、制御回路430とを有する。また、制御回路430は、マイコン240と、PWM駆動回路260と、3相短絡切替回路450と、3相短絡駆動回路460とを有する。
3相短絡駆動回路460が有する電源切替スイッチ61は、3相短絡切替回路450のNOT回路255からの信号により、PWM駆動回路260のゲート出力を遮断するとともに、複数のスイッチング素子S1〜S6のうち下アームのスイッチング素子S4〜S6のゲートに電圧を印加するためのスイッチである。電源切替スイッチ61は、一端が降圧DC電源70に接続され、かつ、他端の一方がPWM駆動回路260に接続され、他端の他方がスイッチング素子S4のゲートに接続されており、降圧DC電源70の電力の供給先を選択的に切り替える。電源切替スイッチ61は、車両駆動装置が通常駆動している際には、降圧DC電源70とPWM駆動回路260とを接続する。また、電源切替スイッチ61は、車両駆動装置が3相短絡駆動している際には、降圧DC電源70とスイッチング素子S4のゲートとを接続する。電源切替スイッチ61は、第1スイッチの一例である。
3相短絡切替回路450は、マイコン240及びPWM駆動回路260に接続され、マイコン240からのPWM信号及び3相短絡指令に応じた信号をPWM駆動回路260に出力する。3相短絡切替回路450は、インバータ410の異常時に、インバータ410にかかる過電圧を抑制するために、複数のスイッチング素子S1〜S6のうち下アームのスイッチング素子S4〜S6を一括して短絡する3相短絡を行う。具体的には、3相短絡切替回路450は、インバータ410の異常時に各スイッチング素子S1、S2、S3(上アーム)をオフとし、かつ、各スイッチング素子S4、S5、S6(下アーム)をオンとする信号(駆動信号)をPWM駆動回路260に出力する。
3相短絡切替回路450は、AND回路251と、OR回路252と、ラッチ回路254と、NOT回路255とを有する。3相短絡切替回路450は、実施の形態3に係る3相短絡切替回路250においてAND回路253を有していない構成を有する。
通常駆動のときには、例えば、ラッチ回路254からHighレベルの信号が出力され、3相短絡駆動のときには、例えば、ラッチ回路254からLowレベルの信号(図19中の「アクティブL」)が出力される。
AND回路251は、3相短絡駆動のとき、ラッチ回路254からのLowレベルの信号に基づいて、Lowレベルの信号を出力する。このLowレベルの信号は、スイッチング素子S1をオフするための信号である。
OR回路252は、3相短絡駆動のとき、NOT回路255からのHighレベルの信号に基づいて、Highレベルの信号を出力する。このHighレベルの信号は、スイッチング素子S4をオンするための信号である。
NOT回路255は、入力端子がラッチ回路254に接続され、出力端子がOR回路252の入力端子、電源切替スイッチ61及び絶縁スイッチ63に接続され、ラッチ回路254からLowレベルの信号が入力されるとHighレベルの信号を出力する。ラッチ回路254に3相短絡信号または3相短絡指令が入力されると、ラッチ回路254から3相短絡駆動を行うためのLowレベルの信号が出力される。NOT回路255は、Lowレベルの信号が入力されると、Highレベルの信号を出力する。
NOT回路255は、3相短絡駆動を行うときにHighレベルの信号を電源切替スイッチ61、絶縁スイッチ63およびOR回路252に出力する。Highレベルの信号が電源切替スイッチ61に出力されることで、電源切替スイッチ61の接続が切り替わり、降圧DC電源70とスイッチング素子S4のゲートとが接続されるので、3相短絡駆動を行うことができる。また、Highレベルの信号が絶縁スイッチ63に出力されることで、絶縁スイッチ63がオンとなり、放電回路64に放電を実行させるための信号が出力される。3相短絡駆動を行うときに放電回路64がスイッチング素子S1のゲートの電荷を放電することで、スイッチング素子S1のゲートおよびソースを同電位にすることができるので、スイッチング素子S1を確実にオフさせることができる。
3相短絡駆動回路460は、インバータ410の異常時に、インバータ410にかかる過電圧を抑制するために、複数のスイッチング素子S1〜S6のうち下アームのスイッチング素子S4、S5、S6を一括して短絡する3相短絡を行う。具体的には、3相短絡駆動回路460は、インバータ410の異常時に上アームのスイッチング素子S1、S2、S3をオフとし、かつ、下アームのスイッチング素子S4、S5、S6をオンとする。これにより、モータM1から発生する誘起電圧をほぼ0(ゼロ)にすることができるので、3相ブリッジ回路20の過電圧を抑制することができる。
3相短絡駆動回路460は、実施の形態1に係る3相短絡駆動回路60に加えて、抵抗素子R4を有する。抵抗素子R4は、一方の端子が放電回路64に接続され、他方の端子がスイッチング素子S1のゲートに接続される。言い換えると、放電回路64とスイッチング素子S1のゲートとは、抵抗素子R4を介して接続されている。
上記のように、本実施の形態に係る車両駆動装置は、電気車両1に搭載される3相モータを駆動するための、複数のスイッチング素子S1〜S6が3相ブリッジ構成で接続されたインバータ410を制御するPWM(Pulse Width Modulation)信号を出力するマイコン240と、マイコン240から出力されたPWM信号に基づいて、複数のスイッチング素子S1〜S6を駆動するPWM駆動回路260と、インバータ410の異常時に、複数のスイッチング素子S1〜S6のうち下アームのスイッチング素子S4〜S6を一括して短絡する3相短絡を行う3相短絡駆動回路460と、インバータ410の異常時に、複数のスイッチング素子S1〜S6のうち下アームのスイッチング素子S4〜S6を一括して短絡する3相短絡を行うための信号をPWM駆動回路260に出力する3相短絡切替回路450とを備える。
3相短絡駆動回路460は、3相短絡信号又は3相短絡指令により、PWM駆動回路260のゲート出力を遮断するとともに、下アームのスイッチング素子S4〜S6のゲートに電圧を印加する電源切替スイッチ61と、3相短絡信号又は3相短絡指令により、複数のスイッチング素子S1〜S6のうち上アームのスイッチング素子S1〜S3のゲートソース間を短絡させる絶縁スイッチ63とを有する。
3相短絡切替回路450は、マイコン240とPWM駆動回路260との間に電気的に接続され、通常動作時はPWM信号を駆動信号としてPWM駆動回路260に出力し、3相短絡信号又は3相短絡指令が入力されると、下アームのスイッチング素子S4〜S6をオンに、かつ、複数のスイッチング素子S1〜S6のうち上アームのスイッチング素子S1〜S3をオフにする駆動信号をPWM駆動回路260に出力する。
上記のようなインバータ410における3相短絡駆動の実行について説明する。まずは、3相短絡駆動回路460の動作が正常である場合に3相短絡駆動する例について説明する。この場合、上記でも説明したように、3相短絡駆動するときにNOT回路255からHighレベルの信号が電源切替スイッチ61に出力されるので、電源切替スイッチ61の接続が切り替わる。具体的には、降圧DC電源70とPWM駆動回路260と接続する状態から、降圧DC電源70とスイッチング素子S4とを接続する状態に切り替わる。これにより、3相短絡駆動が実行される。
このように、インバータ410は、3相短絡駆動回路460の動作が正常である場合、3相短絡切替回路450からPWM駆動回路260に入力される信号に関わらず、3相短絡駆動を実行することができる。
次に、3相短絡駆動回路460の動作が正常ではない場合に3相短絡駆動する例について説明する。3相短絡駆動回路460の動作が正常ではない場合とは、例えば、電源切替スイッチ61が故障しており、NOT回路255からのHighレベルの信号が入力されても接続が切り替わらない場合などが想定される。なお、電源切替スイッチ61の故障は、例えば、電源切替スイッチ61の降圧DC電源70側の端子と、PWM駆動回路260側の端子とが固着していることなどが挙げられる。
この場合、3相短絡駆動するときにNOT回路255からHighレベルの信号が電源切替スイッチ61に出力されるが、電源切替スイッチ61は故障しているので接続が切り替わらないことが起こり得る。つまり、3相短絡駆動するときに、降圧DC電源70からPWM駆動回路260に電力が供給されてしまうことが起こり得る。
本実施の形態では、インバータ410が3相短絡切替回路450を備えているので、3相短絡駆動するときに、3相短絡切替回路450からスイッチング素子S1をオフにし、かつ、スイッチング素子S4をオンにする信号が出力される。3相短絡切替回路450は、電源切替スイッチ61の故障によりPWM駆動回路260に電力が供給されているので、3相短絡切替回路450からの信号に基づいて、スイッチング素子S1をオフにし、かつ、スイッチング素子S4をオンにすることが可能となる。
このように、インバータ410は、3相短絡駆動回路460の動作が正常ではない場合、3相短絡切替回路450からPWM駆動回路260に出力される信号(駆動信号)に基づいて、3相短絡駆動を実行することができる。また、NOT回路255からHighレベルの信号が同時に電源切替スイッチ61およびOR回路252に出力されるので、電源切替スイッチ61が動作しなくても、直ちに3相短絡切替回路450から3相短絡させるための信号が出力可能である。
なお、3相短絡駆動回路460の動作が正常であるか否かに関わらず、NOT回路255からHighレベルの信号が絶縁スイッチ63に出力される。よって、放電回路64は、3相短絡駆動回路460の動作が正常であるか否かに関わらず、上アームのスイッチング素子S1のゲートソース間を短絡させることができる。
(実施の形態6)
以下、本実施の形態に係るインバータ510について、図20を参照しながら説明する。図20は、本実施の形態に係るインバータ510のうちの1相分の機能構成を示すブロック図である。図20では、インバータ510のうちのu相の機能構成を示す。以下では、u相について説明するが、v相およびw相においても同様のことが言える。
本実施の形態に係るインバータ510は、主に、3相短絡切替回路250がAND回路253を有し、3相短絡駆動回路560が遮断スイッチ590を有する点において、実施の形態5に係るインバータ410と相違する。以下、本実施の形態に係るインバータ510について、実施の形態5に係るインバータ410との相違点を中心に説明する。また、本実施の形態において、実施の形態5に係るインバータ410と同一又は類似の構成については、インバータ410と同一の符号を付し、説明を省略または簡略化する。
図20に示すように、インバータ510は、降圧DC電源70と、過電圧検出回路80と、制御回路530とを有する。また、制御回路530は、マイコン240と、3相短絡切替回路250と、PWM駆動回路260と、3相短絡駆動回路560とを有する。
3相短絡切替回路250は、実施の形態5に係る3相短絡切替回路450に加えてAND回路253を有する。本実施の形態に係る3相短絡切替回路250の構成は、実施の形態3に係る3相短絡切替回路250と同様である。
AND回路253は、出力端子がマイコン240および遮断スイッチ590に接続される。AND回路253は、例えば、AND回路251およびOR回路252の両方からHighレベルの駆動信号が入力されている場合に、スイッチング素子S1およびS4が同時にオンすることを示す同時オン検出信号(例えば、Highレベルの信号)を、マイコン240および遮断スイッチ590に出力する。また、AND回路253は、例えば、AND回路251およびOR回路252の一方または両方からLowレベルの駆動信号が入力されている場合に、同時オン検出信号を出力しない。なお、AND回路253の出力端子は、少なくとも遮断スイッチ590に接続されていればよい。
3相短絡駆動回路560は、実施の形態5に係る3相短絡駆動回路460に加えて遮断スイッチ590を有する。
遮断スイッチ590は、電源切替スイッチ61を介して降圧DC電源70から供給される電力をPWM駆動回路260に供給するか否かを切り替えるスイッチである。遮断スイッチ590は、電源切替スイッチ61とPWM駆動回路260との間に電気的に接続される。遮断スイッチ590は、例えば、一端が電源切替スイッチ61の他端の一方に接続され、他端がPWM駆動回路260に接続され、AND回路253からの信号によりオン・オフが切り替わる。具体的には、遮断スイッチ590は、同時オン検出信号がAND回路253から出力されるとオフになる。つまり、遮断スイッチ590は、AND回路253が同時オンを検出した場合、降圧DC電源70からPWM駆動回路260への電力の供給を停止させる。また、遮断スイッチ590は、同時オン検出信号がAND回路253から出力されていないときはオンになる。つまり、遮断スイッチ590は、AND回路253が同時オンを検出していない場合、降圧DC電源70からPWM駆動回路260へ電力を供給させる。
遮断スイッチ590は、例えば、半導体スイッチ又は電磁開閉式のスイッチなどにより実現されるが、これに限定されない。遮断スイッチ590は、遮断回路の一例である。
上記のように、本実施の形態に係る車両駆動装置は、電気車両1に搭載される3相モータを駆動するための、複数のスイッチング素子S1〜S6が3相ブリッジ構成で接続されたインバータ510を制御するPWM(Pulse Width Modulation)信号を出力するマイコン240と、マイコン240から出力されたPWM信号に基づいて、複数のスイッチング素子S1〜S6を駆動するPWM駆動回路260と、インバータ510の異常時に、複数のスイッチング素子S1〜S6のうち下アームのスイッチング素子S4〜S6を一括して短絡する3相短絡を行う3相短絡駆動回路560と、インバータ510の異常時に、複数のスイッチング素子S1〜S6のうち下アームのスイッチング素子S4〜S6を一括して短絡する3相短絡を行うための信号をPWM駆動回路260に出力する3相短絡切替回路250とを備える。
3相短絡駆動回路560は、3相短絡信号又は3相短絡指令により、PWM駆動回路260のゲート出力を遮断するとともに、下アームのスイッチング素子S4〜S6のゲートに電圧を印加する電源切替スイッチ61と、3相短絡信号又は3相短絡指令により、複数のスイッチング素子S1〜S6のうち上アームのスイッチング素子S1〜S3のゲートソース間を短絡させる絶縁スイッチ63とを有する。
3相短絡切替回路250は、マイコン240とPWM駆動回路260との間に電気的に接続され、通常動作時はPWM信号を駆動信号としてPWM駆動回路260に出力し、3相短絡信号又は3相短絡指令が入力されると、下アームのスイッチング素子S4〜S6をオンに、かつ、複数のスイッチング素子S1〜S6のうち上アームのスイッチング素子S1〜S3をオフにする駆動信号をPWM駆動回路260に出力する。
3相短絡切替回路250は、さらに、上アームのスイッチング素子S1〜S3を駆動させる上アーム駆動信号と、下アームのスイッチング素子S4〜S6を駆動させる下アーム駆動信号とが入力されるAND回路253(監視回路の一例)を有する。AND回路253は、上アーム駆動信号と下アーム駆動信号とが同時にオンになる信号であることを検出すると、PWM駆動回路260の複数のスイッチング素子S1〜S6への出力を遮断する遮断スイッチ590(遮断回路の一例)を動作させる。なお、遮断スイッチ590は、電源切替スイッチ61とPWM駆動回路260との間に電気的に接続される。
上記のようなインバータ510において同時オンを検出したときの動作について説明する。なお、論理回路が故障(例えば、AND回路251、OR回路252の少なくとも一方が故障)したことにより同時オンが検出されたものとして説明するが、マイコン240などが故障することにより同時オンが検出されることも起こり得る。
AND回路253は、3相短絡ではない状態(通常状態)において、同時オンを検出すると、同時オン検出信号を遮断スイッチ590に出力することで、当該遮断スイッチ590をオフさせる。つまり、AND回路253は、PWM駆動回路260からスイッチング素子S1およびS4への出力を強制的に停止させることで、スイッチング素子S1およびS4が同時オンすることを抑制する。
この場合、スイッチング素子S1およびS4は、オフとなるが、電気車両1が走行中である場合などではモータM1が回転し続けるので、回生電力などにより3相ブリッジ回路20に過電圧が加わることがある。この過電圧を抑制するには、3相短絡駆動を行うことが考えられるが、遮断スイッチ590がオフとなっているので、PWM駆動回路260により3相短絡駆動を行うことができない。
そこで、マイコン240は、AND回路253からの同時オン検出信号を取得すると、3相短絡指令をラッチ回路254に出力する。これにより、電源切替スイッチ61の接続を切り替えることができるので、同時オンが検出された後であっても(PWM駆動回路260の動作が停止した後であっても)3相短絡駆動回路560により3相短絡駆動を行うことができる。つまり、故障した3相短絡切替回路250の論理回路を使用することなく3相短絡駆動を行うことができる。
なお、この場合、マイコン240が3相短絡指令を出力することで、絶縁スイッチ63にHighレベルの信号が入力されるので、絶縁スイッチ63は放電回路64を介してスイッチング素子S1のゲートソース間を短絡させることができる。
なお、3相短絡が必要となった状態で、かつ、同時オン検出信号が出力された場合、例えば、直ちにマイコン240が3相短絡指令を出力することで、3相短絡駆動回路560により3相短絡が実行可能である。
なお、マイコン240は、同時オンが検出された後に3相短絡駆動することに限定されない。マイコン240は、電気車両1が停止している又は低速で走行している場合など、過電圧が発生しにくい状況であれば、3相短絡駆動させなくてもよい。
なお、同時オンが検出されスイッチング素子S1およびS4がオフになった後、過電圧検出回路80が過電圧を検出することで、同時オンが検出された後に3相短絡駆動が行われてもよい。
なお、上記のようなインバータ510における3相短絡駆動の実行については、実施の形態5に係るインバータ410と同様である。
また、電源切替スイッチ61が切り替わらなかった場合の動作については、実施の形態5に係るインバータ410と同様である。
(その他の実施の形態)
以上、一つまたは複数の態様に係る車両駆動装置5等について、実施の形態等に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態等に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示に含まれてもよい。
例えば、上記実施の形態等において、マイコン40は、過電圧検出回路80から3相短絡信号を取得すると、PWM駆動回路50へのPWM信号の出力を停止してもよい。
また、上記実施の形態等において、マイコン40は、過電圧検出回路80から3相短絡信号を取得すると、電気車両1のECUに3相短絡信号を取得したことを示す信号を出力してもよい。
また、上記実施の形態1の変形例において、不具合通知回路91は、ウォッチドックタイマ回路であるとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、マイコン40をデュアルコアプロセッサとし、自己診断機能により異常を判定するようにしてもよい。具体的には、自己診断機能として、デュアルロックステップ方式により異常の有無を判定する。なお、デュアルロックステップ方式では、デュアルコアプロセッサは、2つのプロセッサコアに同じ処理を実行させ、その処理結果が合致しなければ異常であると判定する。この場合、実施の形態1の変形例で説明した不具合通知信号は、デュアルコアプロセッサの異常出力信号とすればよい。また、上記以外にも、自己診断機能としてクロック周波数の異常なども検出するようにしてもよい。
また、上記実施の形態2において、3相短絡動作している際に、PWM駆動回路50とスイッチング素子S1〜S6とを絶縁することができれば、インバータ110は、PWM駆動回路50の出力側にリレー165および166を有することに限定されない。インバータ110は、例えば、PWM駆動回路50の出力側にフォトカプラおよび論理回路を有していてもよい。
例えば、上記実施の形態等において、マイコン240は、過電圧検出回路80から3相短絡信号を取得すると、3相短絡切替回路250へのPWM信号の出力を停止してもよい。
また、上記実施の形態等において、マイコン240は、過電圧検出回路80から3相短絡信号を取得すると、電気車両1のECUに3相短絡信号を取得したことを示す信号を出力してもよい。
また、上記実施の形態3の変形例において、不具合通知回路301は、ウォッチドックタイマ回路であるとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、マイコン240をデュアルコアプロセッサとし、自己診断機能により異常を判定するようにしてもよい。具体的には、自己診断機能として、デュアルロックステップ方式により異常の有無を判定する。なお、デュアルロックステップ方式では、デュアルコアプロセッサは、2つのプロセッサコアに同じ処理を実行させ、その処理結果が合致しなければ異常であると判定する。この場合、実施の形態3の変形例で説明した不具合通知信号は、デュアルコアプロセッサの異常出力信号とすればよい。また、上記以外にも、自己診断機能としてクロック周波数の異常なども検出するようにしてもよい。
また、上記実施の形態3において、AND回路253からの同時オン検出信号により、PWM駆動回路260と降圧DC電源70との接続を遮断することができれば、インバータ210は、リレー290を有することに限定されない。インバータ210は、例えば、PWM駆動回路260と降圧DC電源70との間に電気的に接続されるフォトカプラおよび論理回路を有していてもよい。
また、上記実施の形態4において、3相短絡駆動している際に、PWM駆動回路260とスイッチング素子S1〜S6とを絶縁することができれば、インバータ310は、PWM駆動回路260の出力側にリレー390および391を有することに限定されない。インバータ310は、例えば、PWM駆動回路260の出力側にフォトカプラおよび論理回路を有していてもよい。
また、上記実施の形態等において、3相短絡切替回路250はPWM駆動回路260に駆動信号を出力するための論理回路を有する構成であることについて説明したが、これに限定されない。3相短絡切替回路250は、PWM駆動回路260に駆動信号を出力することができれば、論理回路以外の部品を有していてもよい。この場合、AND回路253は、3相短絡切替回路250が有する部品などが故障していることを検出する。
また、上記実施の形態等において例示した論理回路は一例であり、他の論理回路またはそれらの組み合わせにより同様の機能を実現できれば、例示した論理回路以外であってもよい。