<第1の実施形態>
まず、本発明の第1の実施形態に係る電子機器1について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る電子機器1は、例えば、ノート型PC(Personal Computer;パーソナルコンピュータ)などの情報処理装置である。なお、電子機器1は、デスクトップ型PC、タブレット端末装置、スマートフォンなど、いずれの形態の情報処理装置であってもよい。
電子機器1は、システムの動作状態として少なくとも通常動作状態(パワーオン状態)と待機状態との間を遷移可能である。通常動作状態とは、特に制限なく処理の実行が可能な動作状態であり、例えば、ACPI(Advanced Configuration and Power Interface)で規定されているS0状態に相当する。待機状態は、システム処理の少なくとも一部が制限されている状態である。例えば、待機状態は、少なくとも表示部の表示がOFFとなる状態であり、通常動作状態よりも電力の消費量が低い動作状態である。待機状態は、スタンバイ状態、スリープ状態等であってもよく、Windows(登録商標)におけるモダンスタンバイや、ACPIで規定されているS3状態(スリープ状態)等に相当する状態であってもよい。
以下では、システムの動作状態が待機状態から通常動作状態へ遷移することを起動と呼ぶことがある。待機状態では、一般的に通常動作状態よりも動作の活性度が低いため、電子機器1のシステム処理を起動させることは、電子機器1におけるシステム処理の動作を活性化させることになる。
図1は、本実施形態に係る電子機器1の概要を説明する図である。電子機器1は、後述する近接センサを備えており、電子機器1の近傍に存在する人物を検出する。この人物の存在を検出する処理のことを、HPD(Human Presence Detection)処理とも呼ぶことがある。電子機器1は、電子機器1の近傍に存在する人物を検出し、検出結果に基づいて電子機器1の動作状態を制御する。例えば、電子機器1は、図1(A)に示すように、電子機器1の前に人物が存在しない状態(Absence)から存在する状態(Presence)への変化、即ち電子機器1へ人物が接近したこと(Approach)を検出した場合、自動でシステムを起動して通常動作状態へ遷移させる。また、電子機器1は、図1(B)に示すように、電子機器1の前に人物が存在している状態(Presence)では、システムを待機状態へ遷移させないように制限し、通常動作状態を継続させる。そして、電子機器1は、図1(C)に示すように、電子機器1の前に人物が存在している状態(Presence)から存在しない状態(Absence))への変化、即ち電子機器1から人物が離脱したこと(Leave)を検出した場合には、システムを待機状態へ遷移させる。
人物の検出に用いられる近接センサは、検出可能な角度を示すFoV(Field of View:検出視野角)が従来は例えば20°程度と狭かったが、最近では例えば60°程度の広いFoVの近接センサもでてきている。図2は、異なるFoVの近接センサの検出視野角の比較を表した模式図である。図2(A)は、従来の狭いFoVの近接センサを用いたときの検出視野角FoV(A)を表した模式図である。一方、図2(B)は、広いFoVの近接センサを用いたときの検出視野角FoV(B)を表した模式図である。
また、図3は、図2(A)に示すFoV(A)の近接センサを電子機器1が仮に用いたと想定した場合に、電子機器1の正面に存在する人物が検出される検出範囲の一例を示している。この場合、電子機器1は、FoV(A)内に設定された狭い検出範囲ERA内に人物が検出されるか否かによって、電子機器1の前に人物が存在しているか否かを検出する。一方、図4は、図2(B)に示すFoV(B)の近接センサを電子機器1が用いた場合に、電子機器1の正面に存在する人物が検出される検出範囲の一例を示している。電子機器1は、FoV(B)内に設定された検出範囲ERB内に人物が検出されるか否かによって、電子機器1の前に人物が存在しているか否かを検出する。
電子機器1を使用している人物は、常に電子機器1の正面にきちんと留まっているとは限らず、体勢が自由に動きがちであるため、FoV(A)の近接センサを用いるよりFoV(B)の近接センサを用いる方が、検出視野角が広く検出精度がよい。本実施形態では、電子機器1は、FoV(B)の近接センサを備えているものとして説明する。なお、電子機器1が備える近接センサのFoVは例えば60°程度であるが、60°に限定されるものではなく、60°未満(例えば、40〜60°程度)であってもよいし、60°よりもさらに広い角度でもよい。
ここで、FoV(A)の近接センサに対してFoV(B)の近接センサは、検出視野角は広いが、検出素子の数が多いことから検出に必要な消費電力が高い。そこで、電子機器1は、図4に示すように、検出範囲ERBのうちの一部の検出範囲のみ用いる。例えば、電子機器1を使用している人物の体勢が動いたとしても(例えば、頭が動いたとしても)、電子機器1を使用している限りは、当該人物の胸のあたりは大きく移動しない。そのため、人物の検出には、検出範囲ERBのうちの下側(鉛直方向下側)の一部の範囲(例えば、検出範囲ERBL)のみで十分である。例えば、近接センサは、複数の検出素子がマトリクス状に配置されており、検出範囲ERBのうち垂直方向(鉛直方向)について一部の行(例えば、最も下の一行)のみを検出範囲とする。電子機器1は、FoV(B)の近接センサの下側の一部の行に配列された複数の検出素子から出力された検出信号に基づいて人物を検出することにより、全ての検出素子を用いるよりも消費電力を抑えることができるとともに、水平方向(鉛直方向に直交する方向)には広い範囲で人物を検出することにより、狭い範囲で人物を検出する場合よりも、人物の検出精度を高めることができる。なお、近接センサの具体的な構成例については、後述する。
(電子機器の外観構成)
図5は、本実施形態に係る電子機器1の外観の構成例を示す斜視図である。
電子機器1は、第1筐体10、第2筐体20、及びヒンジ機構15を備える。第1筐体10と第2筐体20は、ヒンジ機構15を用いて結合されている。第1筐体10は、第2筐体20に対して、ヒンジ機構15がなす回転軸の周りに相対的に回動可能である。回転軸の方向は、ヒンジ機構15が設置されている側面10c、20cに対して平行である。
第1筐体10は、Aカバー、ディスプレイ筐体とも呼ばれる。第2筐体20は、Cカバー、システム筐体とも呼ばれる。以下の説明では、第1筐体10と第2筐体20の側面のうち、ヒンジ機構15が備わる面を、それぞれ側面10c、20cと呼ぶ。第1筐体10と第2筐体20の側面のうち、側面10c、20cとは反対側の面を、それぞれ側面10a、20aと呼ぶ。図示において、側面20aから側面20cに向かう方向を「後」と呼び、側面20cから側面20aに向かう方向を「前(或いは正面)」と呼ぶ。後方に対して右方、左方を、それぞれ「右」、「左」と呼ぶ。第1筐体10、第2筐体20の左側面をそれぞれ側面10b、20bと呼び、右側面をそれぞれ側面10d、20dと呼ぶ。また、第1筐体10と第2筐体20とが重なり合って完全に閉じた状態(開き角θ=0°の状態)を「閉状態」と呼ぶ。閉状態において第1筐体10と第2筐体20との互いに対面する側の面を、それぞれの「内面」と呼び、内面に対して反対側の面を「外面」と呼ぶ。また、閉状態に対して第1筐体10と第2筐体20とが開いた状態のことを「開状態」と呼ぶ。
図2に示す電子機器1の外観は開状態の例を示している。開状態は、第1筐体10の側面10aと側2筐体20の側面20aとが離れた状態である。開状態では、第1筐体10と第2筐体20とのそれぞれの内面が表れ、電子機器1は通常の動作を実行可能とすることが期待される。開状態は、第1筐体10の内面と第2筐体20の内面とがなす開き角θが所定の角度以上になった状態であり、典型的には100〜130°程度となる。なお、開状態となる開き角θの範囲は、ヒンジ機構15よって回動可能な角度の範囲等に応じて任意に定めることができる。
第1筐体10の内面には、表示部110が設けられている。表示部110は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどを含んで構成されている。また、第1筐体10の内面のうち表示部110の周縁の領域に、撮像部120と近接センサ130とが設けられている。即ち、撮像部120と近接センサ130とは、電子機器1を使用する人物(ユーザ)と対面するような位置に設けられている。撮像部120及び近接センサ130は、表示部110の周縁の領域のうち側面20a側に並んで配置されている。なお、近接センサ130は、表示部110の周縁の領域のうち側面20c側に配置されてもよい。
撮像部120は、開状態において、第1筐体10の内面に対面する方向(前方)の所定の画角内の物体の像を撮像する。所定の画角とは、撮像部120が有する撮像素子と撮像素子の撮像面の前方に設けられた光学レンズとによって定める撮像画角である。
近接センサ130は、電子機器1の近傍に存在する物体(例えば、人物)を検出する。例えば、近接センサ130は、赤外線(IR:Infrared)を発光する発光素子と、発光した赤外線が物体の表面に反射して戻ってくる反射波(即ち、物体から到来する赤外線)を検出する複数の検出素子とを含んで構成される赤外線センサである。なお、赤外線を放射する発光素子は、近接センサ130内の検出素子とは異なる位置(発行した赤外線が検出素子に直接到来しない位置)に内蔵されてもよいし、第1筐体10の内面の近接センサ130とは異なる位置に設けられてもよい。
図6は、本実施形態に係る近接センサ130の構成例を示す模式図である。
近接センサ130は、複数の検出素子を備える赤外線センサモジュールであり、例えば、図2(B)に示す広いFoVを有している。複数の検出素子は、検出面内に二次元的にマトリクス状に配列されている。図6に示す例では、水平方向に8個×垂直方向に8個の計64個の検出素子(1〜64の数字を付した検出素子(セル))が配列されている。個々の検出素子は、物体から到来する赤外線を検出し、検出した赤外線の光度に応じた検出信号を出力する。個々の検出素子の検出範囲は、例えば、検出面に対して直交する光学軸を中心に水平方向及び垂直方向のそれぞれに一定の角度(例えば、5°〜7°)の範囲である。近接センサ130が検出可能なFoVは、個々の検出素子の検出範囲をまとめた検出範囲となる。
なお、ここでは、近接センサ130には、水平方向に8個×垂直方向に8個の計64個の検出素子が配列されている例で説明するが、これに限定されるものではなく、配列されている検出素子の数は、任意の数とすることができる。
近接センサ130は、所定のサンプリング周期(例えば、50〜200ms)ごとに各検出素子で検出した光度をサンプリングし、サンプリングした光度に応じた検出信号を出力する。また、近接センサ130は、下側(鉛直方向下側)の一部の行に配列された複数の検出素子からのみ検出信号を出力することで、消費電力を抑制する。例えば、図6に示す最下行の8個の検出素子(57〜64の数字を付した検出素子(セル))のみ検出信号を出力する。FoVは、少なくとも水平方向に設定されればよく、例えば、最下行の8個の検出素子をすべて用いる場合のFoVは、検出面に対して直交する光学軸を中心に左右にそれぞれ角度「θ1」/2ずつ対称に分布する角度θ1の範囲となる。電子機器1は、θ1のFoVで、電子機器1の正面方向の所定の距離(例えば、約1.0m〜1.5m以内)の範囲に存在する人物を検出することができる。水平方向とは、鉛直方向と直交する水平面に平行な方向を意味する絶対的な水平方向に近似する。ここでは、鉛直方向と直交する水平面に近似する面(例えば、机の上)に、電子機器1が図5に示すような使用状態で置かれているものとして説明している。
なお、電子機器1の向きや使用状態によって、近接センサ130の検出面と鉛直方向との関係が代わると、近接センサ130の検出面に対する鉛直方向が変化し水平方向も変化するため、検出面の最下行に対応する検出素子の場所も変化する。
図5に戻り、第2筐体20の内面には、キーボード151及びタッチパッド153が入力デバイスとして設けられている。なお、入力デバイスとして、キーボード151及びタッチパッド153に代えて、または加えて、タッチセンサが含まれてもよいし、マウスや外付けのキーボードが接続されてもよい。タッチセンサが設けられた構成の場合、タッチセンサが操作を受け付ける操作領域は、表示部110の表示面に対応する領域としていてもよい。また、入力デバイスには、音声が入力されるマイクが含まれてもよい。
なお、第1筐体10と第2筐体20とが閉じた閉状態では、第1筐体10の内面に設けられている表示部110、撮像部120、及び近接センサ130は、第2筐体20の内面に覆われて、機能を発揮できない状態である。第1筐体10と第2筐体20とが完全に閉じた状態では、開き角θは0°となる。
(電子機器のハードウェア構成)
図7は、本実施形態に係る電子機器1のハードウェアの構成例を示す概略ブロック図である。電子機器1は、表示部110、撮像部120、近接センサ130、入力デバイス150、EC(Embedded Controller)200、システム処理部300、通信部350、記憶部360、及び電源部400を含んで構成される。表示部110は、システム処理部300により実行されるシステム処理により生成された表示データを表示する。
撮像部120は、第1筐体10の内面に対面する方向(前方)の所定の画角内の物体の像を撮像し、撮像した画像をシステム処理部300へ出力する。例えば、電子機器1に接近した人物の顔面が撮像部120の画角内に含まれるとき、撮像部120は、人物の顔画像を撮像し、撮像した顔画像をシステム処理部300へ出力する。撮像部120は、赤外線カメラであってもよいし、通常のカメラであってもよい。赤外線カメラは、撮像素子として赤外線センサを備えるカメラである。通常のカメラは、撮像素子として可視光線を受光する可視光センサを備えるカメラである。
近接センサ130は、第1筐体10の正面方向(前方)に存在する物体(例えば、人物)を検出し、検出結果を示す検出信号をEC200へ出力する。
入力デバイス150は、ユーザの入力を受け付ける入力部であり、例えばキーボード151及びタッチパッド153を含んで構成されている。入力デバイス150は、キーボード151及びタッチパッド153に対する操作を受け付けることに応じて、操作内容を示す操作信号をEC200へ出力する。
電源部400は、電子機器1の各部の動作状態に応じて各部へ電力を供給するための電源系統を介して電力を供給する。電源部400は、DC(Direct Current)/DCコンバータを備える。DC/DCコンバータは、AC(Alternate Current)/DCアダプタもしくは電池パックから供給される直流電力の電圧を、各部で要求される電圧に変換する。DC/DCコンバータで電圧が変換された電力が各電源系統を介して各部へ供給される。例えば、電源部400は、EC200から入力される各部の動作状態に応じて制御信号に基づいて各電源系統を介して各部に電力を供給する。
EC200は、CPU、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)およびI/O(Input/Output)ロジック回路などを含んで構成されたマイクロコンピュータである。EC200のCPUは、自部のROMに予め記憶した制御プログラムを読み出し、読み出した制御プログラムを実行して、その機能を発揮する。EC200は、システム処理部300とは独立に動作し、システム処理部300の動作を制御し、その動作状態を管理する。また、EC200は、近接センサ130と、入力デバイス150と電源部400に接続されている。
例えば、EC200は、近接センサ130から検出結果を示す検出信号を取得し、検出結果に基づいて人物の存在を検出するHPD処理を実行する。また、EC200は、HPD処理に応じてシステム処理部300の動作状態を制御する。また、EC200は、電源部400と通信を行うことにより、バッテリーの状態(残容量など)の情報を電源部400から取得するとともに、電子機器1の各部の動作状態に応じた電力の供給を制御するための制御信号などを電源部400へ出力する。また、EC200は、入力デバイス150から操作信号を取得し、取得した操作信号のうちシステム処理部300の処理に関連する操作信号についてはシステム処理部300へ出力する。
例えば、EC200は、HPD処理に関する機能構成として、人物検出部210と、動作制御部220とを備えている。人物検出部210は、近接センサ130が検出する検出結果に基づいて、所定のサンプリング周期(例えば、1kHz)で電子機器1の正面(前方)に存在する物体(例えば、人物)を検出する。なお、以下の説明では、人物検出部210が物体(例えば、人物)を検出することを、単に、人物を検出するとも記載する。即ち、人物検出部210が人物を検出するとは、人物検出部210が人物を検出することも、人物以外の物体を検出することも含む。例えば、人物検出部210は、近接センサ130から取得する検出信号に基づいて、電子機器1の正面(前方)の所定の範囲内に人物が存在するか否かを検出する。所定の範囲とは、人物検出部210が人物を検出する範囲として設定された人物検出範囲である。例えば、人物検出範囲は、近接センサ130のFoVの範囲またはEoV未満の範囲に相当する。また、人物検出部210は、人物を検出する際に、人物との距離も検出してもよい。
図8は、本実施形態に係る人物検出範囲の一例を説明する図である。この図は、机の上に置かれた電子機器1の人物検出範囲を、鉛直方向上側から表した図である。人物検出部210は、近接センサ130の検出面の最下行の検出素子(図6参照)から取得する検出信号に基づいて、人物検出範囲内に人物が存在するか否かを検出する。人物検出範囲は、近接センサ130の検出面に対して直交する光学軸AXを中心に角度θ1の範囲である。なお、この角度θ1は人物の存在の検出に最適な角度であれば限定されないが、ある程度広い方が好ましい。人物がU1の位置に存在する場合、身体の一部が人物検出範囲内に入っているため、人物検出部210は、人物が存在していることを検出する。一方、人物がU2の位置に存在する場合、人物の身体が人物検出範囲内に入っていないため、人物検出部210は、人物が存在しないことを検出する。
また、人物検出部210は、人物検出範囲内に人物を検出しない状態から人物を検出した場合、電子機器1へ人物が接近したこと(Approach)を検出する。また、人物検出部210は、人物検出範囲内に人物を検出した後、継続して人物を検出している場合には、電子機器1の正面に人物が存在する状態(Presence)であることを検出する。また、人物検出部210は、人物検出範囲内に人物を検出している状態から人物を検出しなくなった場合、電子機器1の正面に存在していた人物が離れたものと判定し、電子機器1から人物が離脱したこと(Leave)を検出する。
動作制御部220は、人物検出部210により人物検出範囲内に人物が検出された場合、システム処理部300によるシステム処理を起動させる。具体的には、動作制御部220は、人物検出部210が人物検出範囲内に人物を検出しない状態から人物を検出した場合(即ち、電子機器1への人物の接近を検出した場合)、システム処理を起動させる。より具体的には、動作制御部220は、システム処理部300によるシステム処理を起動させる場合、電源部400に対して、電子機器1の各部の動作に必要な電力を供給するための制御信号を出力する。その後、動作制御部220は、システム処理部300にシステム処理の起動を指示するための起動信号を出力する。システム処理部300は、起動信号を取得すると、システム処理を起動して通常動作状態へ遷移させる。
また、動作制御部220は、人物検出部210が人物検出範囲内に人物を継続して検出している場合、システム処理部300によるシステム処理を待機状態に遷移させないように制限し、通常動作状態を継続させる。なお、動作制御部220は、人物検出部210が人物検出範囲内に人物を継続して検出している場合であっても、所定の条件(例えば、無操作の期間が予め設定された期間継続した場合)によって、通常動作状態から待機状態へ遷移させてもよい。
また、動作制御部220は、人物検出部210が人物検出範囲内に人物を検出している状態から人物を検出しなくなった場合(即ち、電子機器1からの人物の離脱を検出した場合)、システム処理部300によるシステム処理を通常動作状態から待機状態に遷移させる。より具体的には、動作制御部220は、システム処理部300にシステム処理を通常動作状態から待機状態へ遷移させる指示をするための待機信号を出力する。システム処理部300は、待機信号を取得すると、システム処理を通常動作状態から待機状態へ遷移させる。その後、動作制御部220は、電源部400に対して、待機状態では不要な電力の供給を停止させるための制御信号を出力する。
システム処理部300は、CPU302、GPU(Graphic Processing Unit)304、メモリコントローラ306、I/O(Input−Output)コントローラ308、システムメモリ310、及び認証処理部312を含んで構成され、オペレーティングシステム(OS:Operating System)によるシステム処理によって、OS上で各種のアプリケーションソフトウェアの処理が実行可能である。CPU302とGPU304をプロセッサと総称することがある。前述したように、システムの動作状態として少なくとも通常動作状態(パワーオン状態)と待機状態との間を遷移可能である。
CPU302は、システム処理の動作状態が待機状態であって、EC200から起動信号が入力された場合、待機状態から通常動作状態に遷移させる。例えば、動作状態がスリープ状態であるとき、電源部400から電力の供給を受け、かつEC200から起動信号が入力されると、CPU302は、起動処理を開始する。CPU302は、起動処理において、システムメモリ310、記憶部360などの最小限のデバイスの検出と初期化を行う(プリブート)。CPU302は、記憶部360からシステムファームウェアをシステムメモリ310にロードし、通信部350、表示部110などその他のデバイスの検出と初期化を行う(ポスト処理)。初期化には、初期パラメータの設定などの処理が含まれる。なお、スリープ状態から通常動作状態への遷移(レジューム)においては、ポスト処理の一部が省略されることがある。CPU302は、起動処理が完了した後、OSによるシステム処理の実行を開始する(起動)。例えば、CPU302は、動作状態がスタンバイ状態であって、EC200から起動信号が入力されると、実行を停止していたソフトウェアの実行を再開する。
なお、CPU302は、OSによるシステム処理の実行を開始すると、OSの利用を許可する前にログイン認証処理を実行し、ログイン認証処理でログインを許可するまで、以降のシステム処理の実行を一旦停止する。ログイン認証処理は、電子機器1を使用する人物が予め登録された正規のユーザであるか否かを判定するユーザ認証処理である。ログイン認証には、パスワード認証、顔認証、指紋認証などがある。ここでは、顔認証処理の場合を例に説明する。CPU302は、撮像部120で撮像された人物の顔画像に基づく顔認証処理の実行を認証処理部312に指示する。CPU302は、認証処理部312による認証結果が成功であった場合、ログインを許可し、一旦停止していたシステム処理の実行を再開する。一方、認証処理部312による認証結果が失敗であった場合、ログインを許可せず、システム処理の実行を停止したままにする。
GPU304は、表示部110に接続されている。GPU304は、CPU302の制御に基づいて画像処理を実行して表示データを生成する。GPU304は、生成した表示データを表示部110に出力する。なお、CPU302とGPU304は、一体化して1個のコアとして形成されてもよいし、個々のコアとして形成されたCPU302とGPU304の相互間で負荷が分担されてもよい。プロセッサの数は、1個に限られず、複数個であってもよい。
メモリコントローラ306は、CPU302とGPU304によるシステムメモリ310、記憶部360などからのデータの読出し、書込みを制御する。
I/Oコントローラ308は、通信部350、表示部110およびEC200からのデータの入出力を制御する。
システムメモリ310は、プロセッサの実行プログラムの読み込み領域ならびに処理データを書き込む作業領域として用いられる。
認証処理部312は、CPU302から顔認証処理の実行の指示を受け取ると、撮像部120で撮像された人物の顔画像に基づいて顔認証処理を実行する。撮像部120で撮像された人物の顔画像とは、電子機器1の前方から接近する人物の顔画像である。顔認証処理は、顔検出処理と顔照合処理とを含む。顔検出処理は、撮像部120から入力される画像信号から顔が表されている領域である顔領域を定める処理である。顔照合処理は、顔領域から顔の特徴を表す複数の顔特徴点(例えば、口、目、鼻、など)の位置を求め、顔領域の位置と大きさがそれぞれ所定の位置と大きさとなるように正規化し、正規化した顔特徴点の分布を画像特徴量として定める過程と、定めた画像特徴量と所定の人物の顔画像に係る画像特徴量と照合し、照合に成功した画像特徴量に係る人物を特定する過程を有する。記憶部360には、アカウント毎に、そのアカウントでログインする正規ユーザとしての認証情報が設定されている。認証情報には、そのユーザの顔画像の画像特徴量が含まれる。認証情報には、さらにそのユーザを示すユーザ情報を対応付けて記憶される。ユーザ情報は、例えば、ユーザ名、ユーザID(Identifier)、など電子機器1のユーザを特定できる情報であればよい。
認証処理部312は、撮像部120で撮像された人物の顔画像と、設定されているユーザの認証情報とを照合した結果が一致と判断できる場合に顔認証に成功したと判定する。一方、認証処理部312は、例えば、電子機器1を使用する人物以外の人物が前を単に横切った場合には、撮像部120で撮像された画像から顔領域が検出されない。認証処理部312は、顔認証の成否を示す認証情報をCPU302及びEC200に出力する。
通信部350は、無線または有線による通信ネットワークを介して他の機器と通信可能に接続し、各種のデータの送信および受信を行う。例えば、通信部350は、イーサネット(登録商標)等の有線LANインターフェースやWi−Fi(登録商標)等の無線LANインターフェース等を含んで構成されている。なお、通信部350は、USB(Universal Serial Bus)インターフェースやBluetooth(登録商標)インターフェースを含んで構成されてもよい。
記憶部360は、HDD(Hard Disk Drive)、セキュアNVRAM(Non−Volatile RAM)、ROM(Read Only Memory)などの記憶媒体を含んで構成される。HDDは、OS、デバイスドライバ、アプリケーションなどの各種のプログラム、その他、プログラムの動作により取得した各種のデータを記憶する。セキュアNVRAMには、各ユーザの認証に用いる認証データを記憶する。認証データには、各ユーザの識別情報と、認証情報とを対応付けて記憶する。セキュアNVRAMには、I/Oコントローラ308から経由したOSの動作環境からはアクセスできないように保護(ロック)される。但し、CPU302のパワーオン、リセット時にロックを解除し、プリブートの終了時にシステムファームウェアを実行してロックを開始する。
(処理の動作)
次に、本実施形態に係る処理の動作について説明する。
まず、電子機器1が人物の接近を検出したことによりシステム処理を起動する起動処理の動作について説明する。図9は、本実施形態に係る起動制御の一例を示すフローチャートである。ここでは、電子機器1は、開状態で机の上等に置かれており、待機状態であるものとする。
(ステップS101)人物検出部210は、近接センサ130から取得する検出信号に基づいて、電子機器1への人物の接近を検出したか否かを判定する。人物検出部210は、人物検出範囲内に人物を検出しない状態から人物を検出した場合、電子機器1への人物の接近を検出したと判定する。また、人物検出部210は、人物検出範囲内に人物を検出しない状態のままである場合、電子機器1への人物の接近を検出していないと判定する。そして、人物検出部210は、電子機器1への人物の接近を検出していないと判定した場合(NO)、再びステップS101の処理を行う。一方、人物検出部210は、電子機器1への人物の接近を検出したと判定した場合(YES)、ステップS103の処理に進む。
(ステップS103)動作制御部220は、システム処理部300によるシステム処理を起動させる。具体的には、動作制御部220は、システム処理部300によるシステム処理を起動させる場合、電源部400に対して、電子機器1の各部の動作に必要な電力を供給するための制御信号を出力する。また、動作制御部220は、CPU302にシステム処理の起動を指示するための起動信号を出力する。CPU302は、起動信号を取得すると、起動処理を開始する。そして、ステップS105の処理に進む。
(ステップS105)CPU302は、ログイン認証を実行する。例えば、CPU302は、撮像部120で撮像された人物の顔画像を用いた顔認証によるログイン認証処理を実行する。具体的には、CPU302は、撮像部120で撮像された人物の顔画像に基づく顔認証処理の実行を認証処理部312に指示し、認証処理部312から認証結果を取得する。そして、ステップS107の処理に進む。
(ステップS107)CPU302は、認証結果が成功であるか否かを判定する。CPU302は、認証結果が成功の場合には(YES)、ステップS109の処理に進む。一方、CPU302は、認証結果が失敗の場合には(NO)、ステップS113の処理に進む。
(ステップS109)CPU302は、認証結果が成功の場合にはログイン成功である旨を通知し(例えば、表示部110に表示)、起動処理を継続する。そして、ステップS111の処理に進む。
(ステップS111)CPU302は、起動処理を終了し、通常動作状態に遷移する。
(ステップS113)認証結果が失敗の場合にはログイン失敗である旨を通知し(例えば、表示部110に表示)、ステップS105の認証処理に戻る。なお、CPU302は、連続して所定の回数の認証処理に失敗した場合には、認証処理を中止し、ログイン認証処理の実行が不可の状態に遷移させてもよい。
次に、電子機器1からの人物の離脱を検出したことによりシステム処理を通常動作状態から待機状態へ遷移させる待機状態遷移処理の動作について説明する。
図10は、本実施形態に係る待機状態遷移処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、電子機器1は、開状態で机の上等に置かれており、通常動作状態であるものとする。
(ステップS151)人物検出部210は、近接センサ130から取得する検出信号に基づいて、電子機器1からの人物の離脱を検出したか否かを判定する。例えば、人物検出部210は、人物検出範囲内に人物を検出している状態から人物を検出しなくなった場合、電子機器1からの人物の離脱を検出したと判定する。一方、人物検出部210は、人物検出範囲内に人物を検出している状態のままである場合、電子機器1からの人物の離脱を検出していないと判定する。そして、人物検出部210は、電子機器1からの人物の離脱を検出していない場合(NO)、再びステップS151の処理を行う。一方、人物検出部210は、電子機器1からの人物の離脱を検出した場合(YES)、ステップS153の処理に進む。
(ステップS153)動作制御部220は、システム処理部300によるシステム処理を通常動作状態から待機状態へ遷移させる。具体的には、動作制御部220は、CPU302にシステム処理を待機状態へ遷移させる指示をするための待機信号を出力する。CPU302は、待機信号を取得すると、通常動作状態から待機状態へ遷移させる。また、動作制御部220は、電源部400に対して、待機状態では不要な電力の供給を停止させるための制御信号を出力する。
以上説明してきたように、本実施形態に係る電子機器1において、近接センサ130(検出センサの一例)は、人物(物体の一例)から到来する赤外線(波動の一例)を検出して検出信号を出力する。例えば、近接センサ130には、赤外線(波動の一例)を検出して検出信号を出力する複数の検出素子が配列されている。人物検出部210(検出部の一例)は、近接センサ130において赤外線を検出可能な検出可能範囲のうちの一部の範囲で検出された検出信号に基づいて、所定の検出範囲内に存在する物体を検出する。例えば、人物検出部210は、近接センサ130の複数の検出素子が配列されている領域(検出可能範囲)のうちの一部の領域に配列されている複数の検出素子から出力された検出信号に基づいて、人物検出範囲(所定の検出範囲の一例)内に存在する人物を検出する。
これにより、電子機器1は、複数の検出素子が配列された近接センサ130の一部の領域に配列されている複数の検出素子を用いて人物を検出するため、近接センサ130の全ての検出素子を用いるよりも消費電力を抑制しつつ、且つ従来の狭いFoVの近接センサを用いる場合に比較して広いFoVで人物の存在を検出することができる。よって、電子機器1は、消費電力の増加を抑制しつつ人物の存在を適切に検出することができる。
例えば、近接センサ130には、検出可能範囲として複数の検出素子がマトリクス状に配置されている。そして、人物検出部210は、複数の検出素子のうち下側の一部の行に配列された複数の検出素子から出力された検出信号に基づいて、人物検出範囲内に存在する人物を検出する。
これにより、電子機器1は、電子機器1を使用している人物の体勢が動いたとしても(例えば、頭が動いたとしても)、電子機器1を使用している限りは、当該人物の胸のあたりは大きく移動しないため、消費電力の増加を抑制しつつ人物の存在を適切に検出することができる。
また、電子機器1は、システム処理を実行するシステム処理部(処理部の一例)と、人物検出部210による検出結果に基づいてシステム処理の動作を制御する動作制御部220とをさらに備えている。
これにより、電子機器1は、人物の存在の有無に応じて、システム処理の動作を適切に制御することができる。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
本実施形態に係る電子機器1の基本的な構成は、第1の実施形態と同様であるため、本実施形態において特徴的な処理について説明する。第1の実施形態では、電子機器1を使用している人物がある程度動いても人物検出範囲から外れないように、FoVが広い近接センサ130を用いたが、これは人物の離脱を誤検出しないようにするのに有効である反面、人物の接近を検出する場合に誤検出する可能性が高める懸念がある。例えば、人物の接近を検出する場合には、電子機器1を使用する人物以外の人物が電子機器1の前を単に横切ったときに人物検出範囲に入ってしまわないように、人物検出範囲を狭めに設定することが好ましい。そこで、本実施形態では、人物の接近を検出する際の人物検出範囲を、人物の離脱を検出する際の人物検出範囲より狭く設定する態様について説明する。
電子機器1は、電子機器1からの人物の離脱を検出する場合と、電子機器1への人物の接近を検出する場合とで、異なる人物検出範囲に設定する。以下では、電子機器1からの人物の離脱を検出する検出モードのことを、「離脱検出モード」と呼ぶ。また、電子機器1への人物の接近を検出する検出モードのことを、「接近検出モード」と呼ぶ。電子機器1は、離脱検出モードでの人物検出範囲より、接近検出モードの人物検出範囲の方が狭い検出範囲に設定する。例えば、電子機器1は、「離脱検出モード」では近接センサ130のFoVを角度θ1に設定し、「接近検出モード」では近接センサ130のFoVを角度θ2に設定する。ここで、θ2<θ1であり、人物の接近を検出する際の角度θ2は人物の離脱の検出に最適な角度θ1よりも狭い角度に設定される。
具体的には、例えば第1の実施形態で説明したように、「離脱検出モード」では、人物検出部210は、近接センサ130の最下行の8個の検出素子(図6参照)からの検出信号を取得する。これにより、「離脱検出モード」では、近接センサ130のFoV(即ち、人物検出範囲)は、角度θ1となる。一方、「接近検出モード」では、人物検出部210は、近接センサ130のFoV(即ち、人物検出範囲)を狭める。具体的には、人物検出部210は、近接センサ130の検出に使用する検出素子からなる行方向の幅が狭くなるように、最下行8個の検出素子のうちの一部の検出素子を用いて検出する。
図11は、「接近検出モード」の近接センサ130の構成例を示す模式図である。「接近検出モード」では、近接センサ130の最下行の8個の検出素子のうちの中央の4個の検出素子(59〜62の数字を付した検出素子(セル))のみ検出信号を出力する。例えば、この4個の検出素子を用いる場合のFoVは、検出面に対して直交する光学軸を中心に左右にそれぞれ角度「θ2」/2ずつ対称に分布する角度θ2の範囲となる。
図12は、「接近検出モード」の人物検出範囲の一例を説明する図である。この図は、図8と同様に机の上に置かれた電子機器1の人物検出範囲を、鉛直方向上側から表した図である。人物検出部210は、近接センサ130の検出面の最下行の検出素子のうちの中央の4個の検出素子(図11参照)から取得する検出信号に基づいて、人物検出範囲内に人物が存在するか否かを検出する。人物検出範囲は、近接センサ130の検出面に対して直交する光学軸AXを中心に角度θ2の範囲である。この角度θ2の範囲の外側は人物検出範囲外である。つまり、「離脱検出モード」での人物検出範囲外に加えて、「離脱検出モード」では人物検出範囲であった範囲(図に人物検出範囲外として示している範囲)も人物検出範囲外となる。人物がU3の位置に存在する場合、身体の一部が人物検出範囲内に入っているため、人物検出部210は、人物が存在していることを検出する。一方、人物がU4の位置に存在する場合、人物の身体が人物検出範囲内に入っていないため、人物検出部210は、人物が存在しないことを検出する。
このように、人物検出部210は、「離脱検出モード」では近接センサ130の最下行の8個の検出素子のみが検出信号を出力するように(即ち、広い検出範囲に)制御し、「接近検出モード」では近接センサ130の最下行の8個の検出素子のうちの中央の4個の検出素子のみが検出信号を出力するように(即ち、狭い検出範囲に)制御する。つまり、人物検出部210は、「離脱検出モード」では、近接センサ130の最下行の8個の検出素子から出力された検出信号に基づいて、人物検出範囲内に人物が存在するか否かを検出する。一方、人物検出部210は、「接近検出モード」では、近接センサ130の最下行の8個の検出素子のうちの中央の4個の検出素子から出力された検出信号に基づいて、人物検出範囲内に人物が存在するか否かを検出する。
なお、ここでは、狭い検出範囲にする場合に、近接センサ130の最下行の8個の検出素子のうちの中央の4個の検出素子を用いる例を説明したが、4個に限定されるものではなく、例えば、2個または3個としてもよいし、5個や6個としてもよい。或いは、近接センサ130に配列されている検出素子の数に応じて、任意の数とすることができる。
人物検出部210は、人物検出範囲内に人物が検出されている状態であるか否か(即ち、「離脱検出モード」と「接近検出モード」とのいずれであるか否か)に応じて、人物検出範囲を制御する。以下、図13を参照して、人物検出範囲の制御処理の動作について説明する。
図13は、本実施形態に係る人物検出範囲の制御処理の一例を示すフローチャートである。
(ステップS201)人物検出部210は、人物検出範囲内に人物が検出されている状態であるか、或いは人物が検出されていない状態であるかを判定する。人物検出部210は、人物が検出されている状態(人物検出)であると判定した場合、ステップS203の処理に進む。一方、人物検出部210は、人物が検出されていない状態(人物未検出)であると判定した場合、ステップS205の処理に進む。
(ステップS203)人物検出部210は、人物検出範囲内に人物が検出されている状態である場合には離脱検出モードに設定するとともに、近接センサ130の最下行の8個の検出素子のみが検出信号を出力するように制御し、近接センサ130のFoV(即ち、人物検出範囲)を角度θ1に制御する(図6、8参照)。そして、人物検出部210は、近接センサ130の最下行の8個の検出素子から出力された検出信号に基づいて、人物検出範囲内に人物が存在するか否かを検出する。これにより、電子機器1は、電子機器1からの人物の離脱を検出する場合には、広いFoV(人物検出範囲)を用いて検出する。
(ステップS205)人物検出部210は、人物検出範囲内に人物が検出されていない状態である場合には接近検出モードに設定するとともに、近接センサ130の最下行の8個の検出素子うちの中央の4個の検出素子のみが検出信号を出力するように制御し、近接センサ130のFoV(即ち、人物検出範囲)を角度θ2に制御する(図11、12参照)。そして、人物検出部210は、近接センサ130の検出面の最下行の検出素子のうちの中央の4個の検出素子から取得する検出信号に基づいて、人物検出範囲内に人物が存在するか否かを検出する。これにより、電子機器1は、電子機器1への人物の接近を検出する場合には、狭いFoV(人物検出範囲)を用いて検出する。
このように、本実施形態に係る電子機器1は、人物検出部210による人物の検出状態に応じて、近接センサ130のFoV(人物検出範囲)を変更する。例えば、電子機器1は、FoV(人物検出範囲)内に人物を検出している状態から検出しなくなった場合、FoV(人物検出範囲)を狭める。これにより、電子機器1は、人物の接近及び離脱を適切に検出することができる。
例えば、電子機器1は、人物が検出されている状態である場合には人物の離脱を検出する必要があるため、接近検出モードよりも広いFoV(人物検出範囲)となる離脱検出モードに設定する。一方、電子機器1は、人物が検出されていない状態である場合には人物の接近を検出する必要があるため、離脱検出モードよりも狭いFoV(人物検出範囲)となる接近検出モードに設定する。
これにより、電子機器1は、人物が検出されている状態である場合(即ち、人物の離脱を検出する場合)には比較的に広い検出範囲で人物を検出するため、人物の体勢がある程度動いただけで検出範囲から外れてしまうことにより待機状態へ遷移してしまうことを抑制することができる。また、電子機器1は、人物が検出されていない状態である場合(即ち、人物の接近を検出する場合)には比較的に狭い検出範囲で人物を検出するため、使用する人物以外の人物が電子機器1の前を単に横切ったときに検出範囲に入ってしまうことにより起動してしまうことを抑制することができる。よって、電子機器1は、使用する人物の接近及び離脱をより確実に検出することができる。
なお、ここでは、人物の検出状態に応じてFoV(人物検出範囲)を切替える制御を説明したが、システム処理の動作状態に応じてFoV(人物検出範囲)を切替えてもよい。人物が検出されている状態とは、人物が電子機器1を使用中のため電子機器1が通常動作状態に遷移している。よって、電子機器1は、通常動作状態では人物の離脱を検出する。一方、人物が検出されていない状態とは、電子機器1の近傍に人物が不在のため電子機器1が待機状態に遷移している。よって、電子機器1は、人物が検出されていない状態では、人物の接近を検出する。このことから、電子機器1は、システム処理の動作状態が通常動作状態の場合には、接近検出モードよりも広いFoV(人物検出範囲)となる離脱検出モードに設定し、システム処理の動作状態が待機状態の場合には、離脱検出モードよりも狭いFoV(人物検出範囲)となる接近検出モードに設定してもよい。
なお、電子機器1の前方に存在する人物を検出する際の最大検出距離(近接センサ130の検出面に直交する光軸方向の最大検出距離)を、離脱検出モードと近接検出モードとで異ならせてもよい。例えば、電子機器1は、離脱検出モードより近接検出モードの方が、最大検出距離が短くなるように制御してもよい。これにより、電子機器1は、人物の接近を検出する場合には、比較的に短い検出距離の範囲内で人物を検出するため、使用する人物以外の人物が電子機器1の前を単に横切ったときに検出範囲に入ってしまうことにより起動してしまうことを抑制することができる。
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
第2の実施形態において「離脱検出モード」より「接近検出モード」の方が人物検出範囲を狭める態様について説明したが、「離脱検出モード」において人物検出範囲内に検出された人物の検出位置の履歴によっては、人物が離脱したことに応じて「接近検出モード」になっても、人物検出範囲を狭めないようにしてもよい。
図14及び図15は、「離脱検出モード」において過去1分間に人物が検出された検出位置のヒストグラムを示す図である。横軸は、近接センサ130の水平方向の各検出素子を表している。縦軸は、各検出素子で人物が検出された数(度数)を表している。図14に示す例では、人物検出範囲内の端に偏って人物が検出されていたことを示している。一方、図15に示す例では、人物検出範囲内の中央付近で人物が検出されていることが多く、端に偏っていないことを示している。例えば、人物の離脱の前の過去1分間に、図14に示すように人物検出範囲内の端に偏って人物が検出されていた場合には、電子機器1から人物が離脱した後、再び人物が電子機器1を使用するために接近する際に、電子機器1の正面の中央付近ではなく端の方に接近することも考えられる。そのため、電子機器1は、人物検出範囲内の端に偏って人物が検出されていた場合には、「離脱検出モード」から「接近検出モード」に遷移しても、人物検出範囲を狭めずに、「離脱検出モード」と同じ範囲としてもよい。
例えば、人物検出部210は、検出された人物の人物検出範囲内における検出位置の履歴を記憶部360(管理部の一例)に管理しておき、人物検出範囲内に人物を検出している状態から検出しなくなった場合、当該検出しなくなった時点から過去の一定期間(例えば、1分間)の上記履歴に基づいて人物検出範囲内を設定する。具体的には、人物検出部210は、一定期間(例えば、1分間)の人物検出範囲内における人物の検出位置の履歴に基づいて、人物検出範囲内の端に偏って人物が検出されていたと判定される場合、人物検出範囲内に人物を検出している状態から検出しなくなった場合も(即ち、「離脱検出モード」から「接近検出モード」に遷移しても)人物検出範囲を狭めない。
人物の検出位置が人物検出範囲内の端に偏っているか否かは、例えば、ヒストグラムの中央値が左右両端の所定の列分の検出素子に含まれるか否かによって判定されてもよい。一例として、ヒストグラムの中央値が、左右両端の2列分の検出素子(図14及び図15に示す57〜64の数字を付した検出素子(セル)のうちの57、58、63、64の数字を付した検出素子(セル))に含まれる場合、人物検出範囲内の端に偏って人物が検出されていると判定される。図14に示す例では、ヒストグラムの中央値が、63及び64の数字を付した検出素子(セル)に含まれているため、人物検出範囲内の端に偏って人物が検出されていると判定される。
一方、ヒストグラムの中央値が、左右両端の2列分の検出素子以外(図14及び図15に示す57〜64の数字を付した検出素子(セル)のうちの59〜62の数字を付した検出素子(セル))に含まれる場合、人物検出範囲内の端に偏っていないと判定される。例えば、図15に示す例では、ヒストグラムの中央値が、61及び62の数字を付した検出素子(セル)に含まれているため、人物検出範囲内の端に偏っていないと判定される。
なお、人物の検出位置が人物検出範囲内の端に偏っているか否かを判定する方法は、中央値を用いて判定する方法に限られるものではなく、例えば、平均値、最頻値、分散、標準偏差などを用いて判定する方法としてもよい。
図16は、本実施形態に係る人物検出範囲の制御処理の一例を示すフローチャートである。
(ステップS301)人物検出部210は、人物検出範囲内に人物が検出されている状態であるか、或いは人物が検出されていない状態であるかを判定する。人物検出部210は、人物が検出されている状態(人物検出)であると判定した場合、ステップS303の処理に進む。一方、人物検出部210は、人物が検出されていない状態(人物未検出)であると判定した場合、ステップS305の処理に進む。
(ステップS303)人物検出部210は、人物検出範囲内に人物が検出されている状態である場合には離脱検出モードに設定するとともに、近接センサ130の最下行の8個の検出素子のみが検出信号を出力するように制御し、近接センサ130のFoV(即ち、人物検出範囲)を角度θ1に制御する(図6、8参照)。そして、人物検出部210は、近接センサ130の最下行の8個の検出素子から出力された検出信号に基づいて、人物検出範囲内に人物が存在するか否かを検出する。これにより、電子機器1は、電子機器1からの人物の離脱を検出する場合には、広いFoV(人物検出範囲)を用いて検出する。
(ステップS305)人物検出部210は、人物検出範囲内に人物が検出されていない状態(人物未検出)であると判定した場合、人物検出範囲内に人物を検出している状態から検出しない状態に遷移した時点から過去の一定期間(例えば、1分間)の人物検出範囲内における人物の検出位置の履歴に基づいて、人物検出範囲内の端に偏って人物が検出されていたか否かを判定する。人物検出部210は、人物検出範囲内の端に偏って人物が検出されていたと判定した場合(YES)、ステップS307の処理に進む。一方、人物検出部210は、人物の検出位置が人物検出範囲内の端に偏っていないと判定した場合(NO)、ステップS309の処理に進む。
(ステップS307)人物検出部210は、人物検出範囲内に人物が検出されていない状態(人物未検出)であると判定したことにより接近検出モードに設定するとともに、人物検出範囲内の端に偏って人物が検出されていたと判定したことにより近接センサ130の最下行の8個の検出素子のみが検出信号を出力するように制御し、近接センサ130のFoV(即ち、人物検出範囲)を角度θ1に制御する(図6、8参照)。そして、人物検出部210は、近接センサ130の検出面の最下行の検出素子から取得する検出信号に基づいて、人物検出範囲内に人物が存在するか否かを検出する。これにより、電子機器1は、電子機器1への人物の接近を検出する場合でも、過去の一定期間(例えば、1分間)において人物検出範囲内の端に偏って人物が検出されていた場合には、広いFoV(人物検出範囲)を用いて検出する。
(ステップS309)人物検出部210は、人物が検出されていない状態(人物未検出)であると判定したことにより接近検出モードに設定するとともに、人物の検出位置が人物検出範囲内の端に偏っていないと判定したことにより近接センサ130の最下行の8個の検出素子うちの中央の4個の検出素子のみが検出信号を出力するように制御し、近接センサ130のFoV(即ち、人物検出範囲)を角度θ2に制御する(図11、12参照)。そして、人物検出部210は、近接センサ130の検出面の最下行の検出素子のうちの中央の4個の検出素子から取得する検出信号に基づいて、人物検出範囲内に人物が存在するか否かを検出する。これにより、電子機器1は、電子機器1への人物の接近を検出する場合で、且つ、過去の一定期間(例えば、1分間)において人物の検出位置が人物検出範囲内の端に偏っていない場合には、狭いFoV(人物検出範囲)を用いて検出する。
これにより、電子機器1は、使用していた人物が電子機器1から離脱した場合に、離脱の直前の人物の検出位置に基づいて、その後に人物の接近を検出する際の人物検出範囲を適切に制御することができる。例えば、電子機器1は、離脱の直前に人物検出範囲内の端に偏って人物が検出されていた場合には広いFoV(人物検出範囲)を用いて検出し、離脱の直前の人物の検出位置が人物検出範囲内の端に偏っていない場合には狭いFoV(人物検出範囲)を用いて検出することができるため、人物の接近の検出精度を向上させることができる。
なお、人物検出部210は、人物検出範囲内に人物を検出している状態から検出しない状態に遷移した時点から過去の一定期間(例えば、1分間)において、人物検出範囲内の端に偏って人物が検出されていた場合、近接センサ130の最下行の検出素子のうちの人物が検出されていた端側の検出素子のみを用いて、狭いFoV(人物検出範囲)としてもよい。例えば、人物検出部210は、図14に示すように人物検出範囲内の左端に偏って人物が検出されていた場合、近接センサ130の最下行の8個の検出素子うちの左側の4個の検出素子(例えば、図14に示す57〜64の数字を付した検出素子(セル)のうちの61〜64の数字を付した検出素子(セル))のみを用いるようにしてもよい。反対に、人物検出部210は、人物検出範囲内の右端に偏って人物が検出されていた場合、近接センサ130の最下行の8個の検出素子うちの右側の4個の検出素子(例えば、図14に示す57〜64の数字を付した検出素子(セル)のうちの57〜60の数字を付した検出素子(セル))のみを用いるようにしてもよい。
なお、ここでは、近接センサ130の最下行の8個の検出素子のうちの左端または右端の4個の検出素子を用いる例を説明したが、4個に限定されるものではなく、例えば、2個または3個としてもよいし、5個や6個としてもよい。或いは、近接センサ130に配列されている検出素子の数に応じて、任意の数とすることができる。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。上述の実施形態において説明した各構成は、任意に組み合わせることができる。
なお、上記の説明では、近接センサ130が主に赤外線センサモジュールである場合を例にしたが、これには限られない。近接センサ130は、非接触で人物から到来する波動を検出できる検出素子を複数個備えていればよい。人物などの物体から到来する波動とは、上記のように、その物体で反射した反射波と、その物体自体が発する波動が含まれる。波動は、赤外線、可視光線の他、赤外線よりも波長が短い電波であってもよい。近接センサ130は、例えば、レーダセンサモジュール(図示せず)であってもよい。例えば、近接センサ130が電波を検出する場合、受信アンテナで受信する電波強度に基づいて人物などの物体を検出してもよいし、送信アンテナから送信した電波を2つ以上の受信アンテナで受信したときの受信時間の差分などに基づいて人物などの物体を検出してもよい。この場合、近接センサ130の検出可能範囲は、受信アンテナの受信可能範囲に相当し、受信アンテナの一部を用いることで、検出可能範囲のうちの一部の範囲で検出した検出信号に基づいて人物などの物体を検出することができる。近接センサ130が電波を検出する場合であっても、検出範囲を狭めることで、送信電力や受信電力を削減することができ、諸費電力を低減することができる。
また、上述した待機状態には、ハイバネーション状態やパワーオフ状態等が含まれてもよい。ハイバネーション状態は、例えば、ACPIで規定されているS4状態に相当する。パワーオフ状態は、例えば、ACPIで規定されているS5状態(シャットダウンした状態)相当する。また、待機状態には、少なくとも表示部の表示がOFF(画面OFF)となる状態、または画面ロックとなる状態が含まれてもよい。画面ロックとは、処理中の内容が視認できないように予め設定された画像(例えば、画面ロック用の画像)が表示部に表示され、ロックを解除(例えば、ユーザ認証)するまで、使用できない状態である。
また、上記実施形態では、システム処理部300と独立に動作するEC200は、センサハブ、チップセット、などのいずれの処理部であってもよく、EC200以外の処理部がEC200に代えて上述の処理を実行してもよい。このEC200等の処理部と近接センサ130の電力消費量の合計は、通例、システム処理部300の電力消費量よりも格段に少ない。
なお、上述した電子機器1は、内部にコンピュータシステムを有している。そして、上述した電子機器1が備える各構成の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述した電子機器1が備える各構成における処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD−ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。
また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部又は外部に設けられた記録媒体も含まれる。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に電子機器1が備える各構成で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
また、上述した実施形態における電子機器1が備える各機能の一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
また、上記実施形態の電子機器1は、PC、タブレット端末装置、スマートフォンなどに限られるものではなく、家庭用電気製品や業務用電気製品にも適用できる。家庭用電気製品としては、テレビや、表示部が備えられた冷蔵庫、電子レンジ等に適用できる。例えば、人物の接近または離脱に応じて、テレビの画面のON/OFFを制御すること、或いは、冷蔵庫や電子レンジ等の表示部の画面のON/OFFを制御することができる。また、業務用電気製品としては、自動販売機や、マルチメディア端末等に適用できる。例えば、人物の接近または離脱に応じて、自動販売機の照明のON/OFFなど、或いは、マルチメディア端末の表示部の画面のON/OFFなどのように動作状態を制御することができる。