JP2021085045A - ガスバリア性フィルムの製造方法 - Google Patents

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美保 大関
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Shusuke Hanaoka
秀典 花岡
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Abstract

【課題】ガスバリア性及び無機薄膜層表面の濡れ性に優れたガスバリア性フィルムの製造方法を提供する。【解決手段】プラズマ化学気相成長法を用いて、基材と、該基材の少なくとも一方の面に形成された1層以上の無機薄膜層とを含むガスバリア性フィルムを製造する方法であって、該方法は、基材を一対の成膜ロール上に配置し、該一対の成膜ロール間に、酸素ガスを含む反応ガスと原料ガスとを供給し、該ロール間に発生させるプラズマ放電により、基材の少なくとも一方の側に無機薄膜層を形成する工程を含み、該工程の無機薄膜層形成時において、無機薄膜層の成膜部におけるプラズマ発光スペクトルを測定した際の、657nm付近のピーク強度Iaに対する559nm付近のピーク強度Ibの強度比(Ib/Ia)の経時変化における最大値と最小値との差を0.25以下に制御する、方法。【選択図】図1

Description

本発明は、プラズマ化学気相成長法(プラズマCVD法)によるガスバリア性フィルムの製造方法に関する。
ガスバリア性フィルムは、飲食品、化粧品、洗剤等の物品の充填包装に適する包装用容器として好適に用いることができる。近年、プラスチックフィルム等を基材とし、基材の一方の表面に、酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素、酸化アルミニウムなどの無機薄膜層を積層してなるガスバリア性フィルムが提案されている。例えば、特許文献1には、有機ケイ素化合物の原料ガス、及び窒素ガス等の反応ガスを原料として用いて、プラズマCVD法によって、ガスバリア膜(無機薄膜層)を成膜することを特徴とするガスバリア膜の製造方法が開示されている。
特開2010−222690号公報
しかし、本発明者の検討によれば、従来の方法では、何らかの影響で、部分的にガスバリア性及び無機薄膜層表面の濡れ性が低下し、フィルム全面において十分なガスバリア性及び濡れ性が得られない場合があることがわかった。
従って、本発明の目的は、ガスバリア性及び無機薄膜層表面の濡れ性に優れたガスバリア性フィルムの製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、プラズマ化学気相成長法によるガスバリア性フィルムの製造方法において、無機薄膜層形成時に、無機薄膜層成膜部におけるプラズマ発光スペクトルのピーク強度比(I/I)の経時変化における最大値と最小値との差を、0.25以下に制御すれば、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明には、以下の態様が含まれる。
[1]プラズマ化学気相成長法を用いて、基材と、該基材の少なくとも一方の面に形成された1層以上の無機薄膜層とを含むガスバリア性フィルムを製造する方法であって、該方法は、基材を一対の成膜ロール上に配置し、該一対の成膜ロール間に、酸素ガスを含む反応ガスと原料ガスとを供給し、該ロール間に発生させるプラズマ放電により、基材の少なくとも一方の側に無機薄膜層を形成する工程を含み、該工程の無機薄膜層形成時において、無機薄膜層の成膜部におけるプラズマ発光スペクトルを測定した際の、657nm付近のピーク強度Iに対する559nm付近のピーク強度Iの強度比(I/I)の経時変化における最大値と最小値との差を0.25以下に制御する、方法。
[2]前記ガスバリア性フィルムは、長さ100m以上の長尺フィルムである、[1]に記載の方法。
[3]前記工程において、プラズマの発生開始から停止までの操作を2回以上行う、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記工程において、基材の少なくとも一方の面に無機薄膜層を2層以上形成する、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記無機薄膜層は、珪素原子、酸素原子及び炭素原子を少なくとも含有する、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]前記無機薄膜層に含まれる珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計数に対する炭素原子の原子数比は、無機薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域において、連続的に変化する、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記基材は、可撓性フィルムと、該可撓性フィルムの少なくとも一方の側に形成された有機層とを含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
本発明の製造方法によれば、ガスバリア性及び無機薄膜層表面の濡れ性に優れたガスバリア性フィルムを形成できる。
本発明に用いられる製造装置の一例を示す概略図である。 図1に示す成膜ロールと分光器との位置関係を示す概略図である。 本発明の製造方法により得られるガスバリア性フィルムの層構成の一例を示す概略図である。 (a)は、実施例1の製造方法において、カウント比(I/I)が最大値である場合のプラズマ発光スペクトルである。(b)は、実施例1の製造方法において、カウント比(I/I)が最小値である場合のプラズマ発光スペクトルである。 実施例1の製造方法におけるカウント比(I/I)の経時変化を表したグラフである。
本発明は、プラズマ化学気相成長法(プラズマCVD法)を用いて、基材と、該基材の少なくとも一方の面に形成された1層以上の無機薄膜層とを含むガスバリア性フィルムを製造する方法である。該方法は、基材を一対の成膜ロール上に配置し、該一対の成膜ロール間に、酸素ガスを含む反応ガスと原料ガスとを供給し、該ロール間に発生させるプラズマ放電により、基材の少なくとも一方の側に無機薄膜層を形成する工程(以下、工程(A)ともいう)を含む。
[基材]
基材は、無機薄膜層を保持することができる基材である。
<可撓性フィルム>
基材は、少なくとも可撓性フィルムを含むことが好ましい。可撓性フィルムは、樹脂成分として少なくとも1種の樹脂を含む樹脂フィルムであり、透明な可撓性フィルムであることが好ましい。
可撓性フィルムに用いられる樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物;ポリアクリロニトリル樹脂;アセタール樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルサルファイド(PES)が挙げられる。可撓性フィルムとして、上記樹脂の1種を使用してもよいし、2種以上の樹脂を組み合せて使用してもよい。これらの中でも、耐熱性、透明性及び寸法安定性の観点から、ポリエステル系樹脂又はポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリエステル系樹脂であるPET又はPENがより好ましく、PENがさらに好ましい。
可撓性フィルムは、未延伸の樹脂フィルムであってもよいし、未延伸の樹脂フィルムを一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、樹脂フィルムの流れ方向(MD方向)、及び/又は、樹脂フィルムの流れ方向と直角方向(TD方向)に延伸した延伸樹脂フィルムであってもよい。可撓性フィルムは、上述した樹脂フィルムを2層以上積層した積層体であってもよい。
可撓性フィルムの厚みは、ガスバリア性フィルムを製造する際の安定性等を考慮して適宜設定してよいが、真空中における基材の搬送を容易にし易い観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上であり、好ましくは500μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。なお、可撓性フィルムの厚みは、膜厚計により測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
<プライマー層>
基材は、プライマー層を含んでいてもよい。密着性及び耐熱性等を高めやすい観点から、プライマー層は可撓性フィルムの少なくとも一方の面に形成することが好ましい。例えば、基材が後述の有機層を含み、可撓性フィルム、プライマー層及び有機層の順に積層されている場合、プライマー層により、可撓性フィルムと有機層との密着性を向上し得る。また、無機薄膜層を形成した側と反対側の可撓性フィルムの面にプライマー層を形成し、かつプライマー層が最外層である場合、該プライマー層は、ガスバリア性フィルムの保護層として機能するとともに、製造時の滑り性を向上させ、かつブロッキングを防止する機能も果たす。
プライマー層は、可撓性フィルムとの密着性等により適宜選定されるが、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂及びアミノ樹脂から選択される少なくとも1種を含んでなることが好ましい。これらの中でも、例えば、可撓性フィルムがPETフィルムやPENフィルムである場合、ガスバリア性フィルムの耐熱性の観点から、プライマー層は、主成分としてポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
プライマー層は、上記樹脂以外に添加剤を含むことができる。添加剤としては、プライマー層を形成するために公知の添加剤を用いることができ、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、炭酸カルシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子、硫酸バリウム粒子、水酸化アルミニウム粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、クレイ、タルク等の無機粒子が挙げられる。これらの中でも、ガスバリア性フィルムの耐熱性の観点から、シリカ粒子が好ましい。
プライマー層に含み得るシリカ粒子の平均一次粒子径は、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは15nm以上、特に好ましくは20nm以上であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下、さらに好ましくは60nm以下、特に好ましくは40nm以下である。シリカ粒子の平均一次粒子径が上記範囲であると、シリカ粒子の凝集を抑制し、ガスバリア性フィルムの透明性及び耐熱性を向上し得る。また、プライマー層が最外層である場合、シリカ粒子の平均一次粒子径が上記範囲であると、製造時におけるガスバリア性フィルムの滑り性をより向上させ、かつブロッキングを有効に防止し得る。なお、シリカ粒子の平均一次粒子径は、BET法や粒子断面のTEM観察により測定できる。
シリカ粒子の含有量は、ガスバリア性フィルムの耐熱性及び透明性の観点から、プライマー層の質量に対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは1.5〜40質量%、さらに好ましくは2〜30質量%である。
プライマー層の厚みは、ガスバリア性フィルムの耐熱性、及びプライマー層と有機層との密着性を向上しやすい観点から、好ましくは1μm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは200nm以下であり、好ましくは10nm以上、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。なお、プライマー層の厚みは膜厚計によって測定できる。ガスバリア性フィルムがプライマー層を2層以上含む場合、各プライマー層の厚みは同一又は異なっていてもよい。
プライマー層は、樹脂及び溶剤、並びに必要に応じて添加剤を含む樹脂組成物を可撓性フィルム等に塗布し、塗膜を乾燥することで成膜して得ることができる。プライマー層を形成する順は特に限定されない。
溶剤としては、前記樹脂を溶解可能なものであれば特に限定されず、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール系溶剤;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤;アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶剤;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素溶剤;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶剤等が挙げられる。溶剤は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
プライマー層を可撓性フィルム等に塗布する方法としては、従来用いられる種々の塗布方法、例えば、スプレー塗布、スピン塗布、バーコート、カーテンコート、浸漬法、エアーナイフ法、スライド塗布、ホッパー塗布、リバースロール塗布、グラビア塗布、エクストリュージョン塗布等の方法が挙げられる。
塗膜を乾燥する方法としては、例えば自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥及び減圧乾燥法が挙げられるが、加熱乾燥を好適に使用できる。乾燥温度は、樹脂や溶剤の種類にもよるが、通常50〜350℃程度であり、乾燥時間は、通常30〜300秒程度である。
上記のように、例えば可撓性フィルムの少なくとも一方の面にプライマー層を形成してもよいが、可撓性フィルムの両面にプライマー層を有する市販のフィルム、例えば帝人フィルムソリューション社製の「テオネックス(登録商標)」等を使用してもよい。
プライマー層は、単層であっても、2層以上の多層であってもよい。また、プライマー層を2層以上含む場合、各プライマー層は、同じ組成からなる層であっても、異なる組成からなる層であってもよい。
<有機層>
基材は、有機層を含んでいてもよい。無機薄膜層の均質化によるガスバリア性の安定化、及び/又はフィルム搬送時の滑り性確保の観点等から、基材は、可撓性フィルムと、該可撓性フィルムの少なくとも一方の側に形成された有機層とを含むことが好ましい。また、基材の少なくとも一方の面に上記プライマー層を含む場合には、該プライマー層上に有機層が形成されていることが好ましい。
有機層は、平坦化層としての機能を有する層であってもよいし、アンチブロッキング層としての機能を有する層であってもよいし、これらの両方の機能を有する層であってもよい。また、フィルム搬送時の滑り性確保の観点からは、有機層がアンチブロッキング層であることが好ましく、また、無機薄膜層の均質化によるガスバリア性の安定化とフィルム搬送時の滑り性確保の両立の観点からは、有機層は平坦化層であることが好ましい。可撓性フィルムの両側に有機層を形成する場合、両方の有機層のいずれもがアンチブロッキング層又は平坦化層であってもよく、一方の有機層がアンチブロッキング層で、他方の有機層が平坦化層であってもよい。また、有機層は単層でもよいし、2層以上の多層であってもよく、有機層を2つ以上形成する場合、複数の有機層は同じ組成からなる層であっても、異なる組成からなる層であってもよい。
有機層の厚みは、用途に応じて適宜調整してよいが、ガスバリア性フィルムの表面硬度や耐屈曲性を向上しやすい観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは0.7μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。ガスバリア性フィルムが2つ以上の有機層を有する場合、各有機層が上記範囲の厚みを有することが好ましく、各有機層における厚みは同一又は異なっていてもよい。有機層の厚みは、膜厚計によって測定することができ、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
有機層は、例えば、重合性官能基を有する光硬化性化合物を含む組成物を、可撓性フィルム又はプライマー層等の表面に塗布し、硬化することにより形成することができる。有機層を形成するための組成物に含まれる光硬化性化合物としては、紫外線又は電子線硬化性の化合物が挙げられ、このような化合物としては、重合性官能基を分子内に1個以上有する化合物、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性官能基を有する化合物が挙げられる。有機層を形成するための組成物(以下、有機層形成用組成物という場合がある)は、1種類の光硬化性化合物を含有してもよいし、2種以上の光硬化性化合物を含有してもよい。有機層形成用組成物に含まれる重合性官能基を有する光硬化性化合物を硬化させることにより、光硬化性化合物が重合して、光硬化性化合物の重合物を含む有機層が形成される。
有機層における該重合性官能基を有する光硬化性化合物の重合性官能基の反応率は、外観品質を高めやすい観点から、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上である。前記反応率の上限は特に限定されないが、外観品質を高めやすい観点から、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下である。反応率が上記の下限以上である場合、無色透明化しやすい。また、反応率が上記の上限以下である場合、耐屈曲性を向上させやすい。反応率は、重合性官能基を有する光硬化性化合物の重合反応が進むにつれて高くなるため、例えば光硬化性化合物が紫外線硬化性化合物である場合には、照射する紫外線の強度を高くしたり、照射時間を長くしたりすることにより、高めることができる。上記のような硬化条件を調整することにより、反応率を上記の範囲内にすることができる。
反応率は、有機層形成用組成物を可撓性フィルム又はプライマー層等の表面に塗布し、必要に応じて乾燥させて得た硬化前の塗膜、及び、該塗膜を硬化後の塗膜について、塗膜表面から全反射型FT−IRを用いて赤外吸収スペクトルを測定し、重合性官能基に由来するピークの強度の変化量から測定することができる。例えば、重合性官能基が(メタ)アクリロイル基である場合、(メタ)アクリロイル基中のC=C二重結合部分が重合に関与する基であり、重合の反応率が高くなるにつれてC=C二重結合に由来するピークの強度が低下する。一方、(メタ)アクリロイル基中のC=O二重結合部分は重合に関与せず、C=O二重結合に由来するピークの強度は重合前後で変化しない。そのため、硬化前の塗膜について測定した赤外吸収スペクトルにおける(メタ)アクリロイル基中のC=O二重結合に由来するピークの強度(ICO1)に対するC=C二重結合に由来するピークの強度(ICC1)の割合(ICC1/ICO1)と、硬化後の塗膜について測定した赤外吸収スペクトルにおける(メタ)アクリロイル基中のC=O二重結合に由来するピークの強度(ICO2)に対するC=C二重結合に由来するピークの強度(ICC2)の割合(ICC2/ICO2)とを比較することで、反応率を算出することができる。この場合、反応率は、式(1):
反応率[%]=[1−(ICC2/ICO2)/(ICC1/ICO1)]×100 (1)
により算出される。なお、C=C二重結合に由来する赤外吸収ピークは通常1350〜1450cm−1の範囲、例えば1400cm−1付近に観察され、C=O二重結合に由来する赤外吸収ピークは通常1700〜1800cm−1の範囲、例えば1700cm−1付近に観察される。
有機層の赤外吸収スペクトルにおける1000〜1100cm−1の範囲の赤外吸収ピークの強度をIとし、1700〜1800cm−1の範囲の赤外吸収ピークの強度をIとすると、I及びIは式(2):
0.05≦I/I≦1.0 (2)
を満たすことが好ましい。ここで、1000〜1100cm−1の範囲の赤外吸収ピークは、有機層に含まれる化合物及び重合物(例えば、重合性官能基を有する光硬化性化合物及び/又はその重合物)中に存在するシロキサン由来のSi−O−Si結合に由来する赤外吸収ピークであり、1700〜1800cm−1の範囲の赤外吸収ピークは、有機層に含まれる化合物及び重合物(例えば、重合性官能基を有する光硬化性化合物及び/又はその重合物)中に存在するC=O二重結合に由来する赤外吸収ピークであると考えられる。そして、これらのピークの強度の比(I/I)は、有機層中のシロキサン由来のSi−O−Si結合に対するC=O二重結合の相対的な割合を表すと考えられる。ピークの強度の比(I/I)が上記所定の範囲である場合、有機層の均一性を高めやすいと共に、層間の密着性、特に高湿環境下での密着性を高めやすくなる。ピークの強度の比(I/I)は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.20以上である。ピーク強度の比(I/I)が上記の下限以上である場合、有機層の均一性を高めやすい。これは、本発明は後述するメカニズムに何ら限定されないが、有機層に含まれる化合物及び重合物中に存在するシロキサン由来のSi−O−Si結合が多くなりすぎると有機層中に凝集物が生じ、層が脆化する場合があり、このような凝集物の生成を低減しやすくなるためであると考えられる。ピークの強度の比(I/I)は、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.5以下である。ピーク強度の比(I/I)が上記の上限以下である場合、有機層の密着性を高めやすい。これは、本発明は後述するメカニズムに何ら限定されないが、有機層に含まれる化合物及び重合物中にシロキサン由来のSi−O−Si結合が一定量以上存在することにより、有機層の硬さが適度に低減されるためであると考えられる。有機層の赤外吸収スペクトルは、ATRアタッチメント(PIKE MIRacle)を備えたフーリエ変換型赤外分光光度計(日本分光製、FT/IR−460Plus)により測定できる。
有機層形成用組成物に含まれる光硬化性化合物は、紫外線等により重合が開始し、硬化が進行して重合物である樹脂となる化合物である。光硬化性化合物は、硬化効率の観点から、好ましくは(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、単官能のモノマー又はオリゴマーであってもよいし、多官能のモノマー又はオリゴマーであってもよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを表し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを表す。
(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、(メタ)アクリル系化合物が挙げられ、具体的には、アルキル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ならびに、その重合体及び共重合体等が挙げられる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、並びにその重合体及び共重合体等が挙げられる。
有機層形成用組成物に含まれる光硬化性化合物は、上記(メタ)アクリロイル基を有する化合物に代えて、又は、上記(メタ)アクリロイル基を有する化合物に加えて、例えば、メテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、及びトリフェニルエトキシシラン等を含有することが好ましい。これら以外のアルコキシシランを用いてもよい。
上記に述べた重合性官能基を有する光硬化性化合物以外の光硬化性化合物としては、重合によりポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、スチレン樹脂、及びアルキルチタネート等の樹脂となる、モノマー又はオリゴマーが挙げられる。
有機層形成用組成物は、<プライマー層>の項に記載の無機粒子、好ましくはシリカ粒子を含むことができる。有機層形成用組成物に含まれるシリカ粒子の平均一次粒子径は、好ましくは5〜100nm、より好ましくは5〜75nmである。無機粒子を含有すると、ガスバリア性フィルムの耐熱性を向上しやすい。
無機粒子、好ましくはシリカ粒子の含有量は、有機層形成用組成物の固形分の質量に対して、好ましくは20〜90%であり、より好ましくは40〜85%である。無機粒子の含有量が上記範囲であると、ガスバリア性フィルムの耐熱性を向上しやすい。なお、有機層形成用組成物の固形分とは、有機層形成用組成物に含まれる溶剤等の揮発性成分を除いた成分を意味する。
有機層形成用組成物は、有機層の硬化性の観点から、光重合開始剤を含んでいてよい。光重合開始剤の含有量は、有機層の硬化性を高める観点から、有機層形成用組成物の固形分の質量に対して、好ましくは2〜15%であり、より好ましくは3〜11%である。
有機層形成用組成物は、塗布性の観点から、溶剤を含んでいてよい。溶剤としては、重合性官能基を有する光硬化性化合物の種類に応じて、該化合物を溶解可能なものを適宜選択でき、例えば、<プライマー層>の項に記載の溶剤等が挙げられる。溶剤は単独又は二種以上組み合わせて使用してよい。
前記重合性官能基を有する光硬化性化合物、前記無機粒子、前記光重合開始剤及び前記溶剤の他に、必要に応じて、熱重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、カール抑制剤等の添加剤を含んでもよい。
有機層は、上記の通り、例えば、光硬化性化合物を含む有機層形成用組成物(光硬化性組成物)を可撓性フィルム又はプライマー層等の表面に塗布し、必要に応じて乾燥後、紫外線もしくは電子線を照射することにより、光硬化性化合物を硬化させて形成することができる。
塗布方法としては、上記プライマー層を塗布する方法と同様の方法が挙げられる。
有機層が平坦化層としての機能を有する場合、有機層は、(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、スチレン樹脂、及びアルキルチタネート等を含有してよい。有機層はこれらの樹脂を1種類又は2種以上を組み合わせて含有してもよい。
有機層が平坦化層としての機能を有する場合、平坦化層は、剛体振り子型物性試験機(例えばエー・アンド・デイ株式会社製RPT−3000W等)により前記平坦化層表面の弾性率の温度変化を評価した場合、前記平坦化層表面の弾性率が50%以上低下する温度が150℃以上であることが好ましい。
有機層が平坦化層としての機能を有する場合、平坦化層を白色干渉顕微鏡で観察して測定される面粗さは、好ましくは3nm以下、より好ましくは2nm以下、さらに好ましくは1nm以下である。平坦化層の面粗さが上記の上限以下である場合、無機薄膜層の欠陥が少なくなり、ガスバリア性がより高められる効果がある。面粗さは、平坦化層を白色干渉顕微鏡で観察し、サンプル表面の凹凸に応じて、干渉縞が形成されることにより測定される。
有機層がアンチブロッキング層としての機能を有する場合、有機層は、特に上記に述べた無機粒子を含有することが好ましい。
基材の厚みは、ガスバリア性フィルムを製造する際の安定性等を考慮して適宜設定してよいが、真空中における基材の搬送を容易にし易い観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上であり、好ましくは550μm以下、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。なお、基材の厚みは、膜厚計により測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
基材は、長尺基材であることが好ましく、その長さは、特に限定されないが、好ましくは100m以上、より好ましくは150m以上、さらに好ましくは200m以上、特に好ましくは300m以上であり、好ましくは5000m以下、より好ましくは4000m以下、さらに好ましくは3000m以下、特に好ましくは2500m以下である。基材の長さが上記下限以上の長尺基材であっても、本発明の製造方法では、工程(A)の無機薄膜層形成時において、強度比(I/I)の経時変化における最大値と最小値との差が0.25以下に制御されているため、部分的な欠陥がなく、優れたガスバリア性及び無機薄膜層表面の濡れ性を有するガスバリア性フィルムを形成できる。また、基材の幅は、特に限定されず、好ましくは50mm以上、より好ましくは100mm以上、さらに好ましくは150mm以上であり、好ましくは5000mm以下、より好ましくは3000mm以下、さらに好ましくは1000mm以下である。なお、長尺基材の長さとは、長手方向の大きさを示し、長尺基材の幅とは、短手方向(長手方向に直交する方向)の大きさを示す。また、無機薄膜層表面の「濡れ性」とは水に対する親和性を意味し、濡れ性が向上するとは薄膜層表面がより親水性になるという意味である。「濡れ性」は、例えば薄膜層表面における水接触角により評価することができ、水接触角が小さいほど、濡れ性が高いことを示す。
[製造方法及び無機薄膜層]
本発明は、工程(A)の無機薄膜層形成時において、無機薄膜層の成膜部におけるプラズマ発光スペクトルを測定した際の、657nm付近のピーク強度Iに対する559nm付近のピーク強度Iの強度比(I/I)の経時変化における最大値と最小値との差を0.25以下に制御することを特徴とする。
本発明者は、工程(A)の無機薄膜層形成時において、無機薄膜層の成膜部におけるプラズマ発光スペクトルに着目したところ、意外なことに、657nm付近のピーク強度Iに対する559nm付近のピーク強度Iの強度比(I/I)の経時変化と、得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性及び無機薄膜層の濡れ性とに相関があることを見出した。
より詳細には、O2+に由来すると考えられる559nm付近のピーク強度Iと、Oに由来すると考えられる657nm付近のピーク強度Iとの強度比(I/I)を所定範囲に維持、すなわち、該強度比(I/I)の経時変化における最大値と最小値との差を0.25以下に制御(又は調整)すれば、ガスバリア性及び無機薄膜層の濡れ性に優れるガスバリア性フィルムを製造できることを見出した。これは、工程(A)における無機薄膜層形成中に、ピーク強度比(I/I)を所定範囲に維持できれば、無機薄膜層の組成や膜厚等の均一性を高めることができ、部分的なガスバリア性や無機薄膜層表面の濡れ性の低下を抑制できるからだと推定される。
一方、工程(A)における無機薄膜層形成中に、O2+に由来すると考えられる559nm付近のピーク強度Iと、Oに由来すると考えられる657nm付近のピーク強度Iとの強度比(I/I)を所定範囲に維持できない、すなわち、ピーク強度比(I/I)の経時変化における最大値と最小値との差が0.25を超えると、無機薄膜層の組成や膜厚等が不均一となりやすく、部分的にガスバリア性及び無機薄膜層表面の濡れ性が不良になる傾向がある。なお、ピーク強度及び強度比は、それぞれカウント数及びカウント比ともいう。
657nm付近のピーク強度Iに対する559nm付近のピーク強度Iの強度比(I/I)の経時変化における最大値と最小値との差は、好ましくは0.23以下、より好ましくは0.20以下、さらに好ましくは0.18以下、さらにより好ましくは0.15以下、特に好ましくは0.13以下である。該強度比(I/I)の経時変化における最大値と最小値との差が上記の上限以下であると、ガスバリア性フィルムのガスバリア性及び無機薄膜層の濡れ性をより向上しやすい。また、該強度比(I/I)の経時変化における最大値と最小値との差の下限は、通常0以上である。
657nm付近のピーク強度Iに対する559nm付近のピーク強度Iの強度比(I/I)の経時変化における最大値と最小値との差は、分光器を用いて、無機薄膜層の成膜部のプラズマ発光スペクトルを経時的に測定して求めることができる。より詳細には、プラズマ発光以外の光の影響を受けないように、分光器を黒色テープ等で固定し、予め、ロール上の基材の短手方向(TD方向)側端部(成膜ロールの長手方向側端部)からの距離50〜3000mmの位置で暗測定を行う。次いで、該位置において、成膜中のプラズマ発光スペクトルを例えば10〜5000m秒間隔で測定し、該測定で得られたスペクトルから暗測定のスペクトル(ベーススペクトル)を差し引くことで、プラズマ発光スペクトルの経時変化を算出でき、これにより強度比(I/I)の経時変化における最大値と最小値との差が求められる。例えば実施例に記載の方法により求めることができる。なお、本明細書において、TD方向とは、基材上に無機薄膜層を形成する際の流れ方向であるMD方向に直交する方向を意味する。
ピーク強度比(I/I)の経時変化における最大値と最小値との差を0.25以下に制御(又は調整)する方法としては、放電プラズマを発生させる際の圧力(例えば真空チャンバー内の圧力)を一定にする方法;可撓性フィルム、プライマー層又は有機層の持ち込み水分や残存溶媒によるアウトガスの発生を防止する方法;リードフィルムと基材とを接合するために用いる粘着テープからのアウトガスの発生を防止する方法;成膜の際の熱による装置壁からのアウトガスの発生を防止する方法などが挙げられる。
放電プラズマを発生させる際の圧力(例えば真空チャンバー内の圧力)を一定にする方法としては、より詳細には、無機薄膜層形成中の原料タンクの切り替え及び反応ガスボンベ切り替えによる圧力変動が生じないように、該切り替え時に原料ガス及び反応ガスの排気量及び流量比を調整する方法;成膜途中に原料タンク及び反応ガスボンベの切り替えを行わないようにする方法;パス回数が2回以上であって、原料タンクや反応ガスボンベの切り替えが必要な場合には、1パス終了後、次のパスに移行する前に(パス間で)原料タンク及び反応ガスボンベの切り替えを行う方法が挙げられる。上記のアウトガスの発生を防止する方法としては、より詳細には、可撓性フィルム、プライマー層、有機層、粘着テープ中の残存溶媒などを予め、低減又は除去しておく方法が挙げられる。なお、本明細書において、1パスとは、一定の長さのガスバリア性フィルムを製造する際に、一定の長さの基材を巻き出し、無機薄膜層を成膜し、巻き取るまでの一連の動作を意味し、言い換えれば、プラズマの発生開始から停止までの操作を意味する。
本発明の一実施態様において、本発明の製造方法は、工程(A)において、プラズマの発生開始から停止までの操作を1回以上、すなわち、1パス以上行う。また、工程(A)において、プラズマの発生開始から停止までの操作を2回以上、すなわち、2パス以上(複数パスともいう)行うこともできる。また、複数パス行う製造方法では、基材上に形成された無機薄膜層表面に、放電プラズマによりさらに無機薄膜層が形成されるため、基材の少なくとも一方の面に無機薄膜層が2層以上形成される。このような場合であっても、本発明の製造方法では、無機薄膜層形成時に、強度比(I/I)の経時変化における最大値と最小値との差が0.25以下に制御されているため、部分的なガスバリア性及び無機薄膜層表面の濡れ性の低下が防止され、優れたガスバリア性及び無機薄膜層表面の濡れ性を有するガスバリア性フィルムを形成できる。さらに、同じ厚みの無機薄膜層を形成する場合であっても、複数パスで行えば、1回のパスで形成する無機薄膜層の厚みが薄くても済むため、搬送スピードを上げることができ、基材への熱ダメージを抑制することができる。
工程(A)における前記基材は、上記の通り、好ましくは可撓性フィルムを含み、該可撓性フィルムに加え、任意にプライマー層及び/又は有機層を含むことができる。そのため、無機薄膜層は、基材が可撓性フィルムのみを含む場合には可撓性フィルム上に形成され;基材がプライマー層を含む場合は、好ましくはプライマー層上に形成され;基材が有機層を含む場合は、好ましくは有機層上に形成される。
成膜ロールは、一対の成膜ロール間に成膜ガスの放電プラズマを発生させる機能を有するものである。このような一対の成膜ロールは、成膜ロール間に電力を供給し、プラズマ放電のための一対の対抗電力として機能するように、プラズマ発生用電源に接続されていてよい。プラズマ発生用電源により、成膜ロール間、より詳細には成膜ロール間の空間に放電プラズマを発生させることが可能となる。プラズマ発生用電源としては、適宜公知のものを用いることができ、より効率的にプラズマCVDを実施可能となることから、一対の成膜ロールの極性を交互に反転させることが可能な交流電源等を利用することが好ましい。一対の成膜ロール間に、中周波数、例えば50Hz〜500kHz、好ましくは1kHz〜300kHz、より好ましくは1kHz〜200kHzの電力を供給することができる。中周波数が上記範囲であると、過剰の熱量の発生による成膜ロールの損傷を抑制することができる。印加電力は100W〜10kW、好ましくは100W〜5kWとすることができる。印加電力が、上記の下限以上であると、パーティクルの発生を抑制でき、また上記の上限以下であると、過剰の熱量の発生による成膜ロールの損傷を抑制することができる。
一対の成膜ロールの内部に、成膜ロールが回転しても回転しないように固定された磁場形成装置をそれぞれ設けることが好ましい。磁場形成装置により、一対の成膜ロールに磁場を印加することができ、それぞれの成膜ロールに配置された基材の表面に、同時に無機薄膜層を形成できるため、成膜レートを倍にできる。磁場形成装置は適宜公知のものを用いてよい。
一対の成膜ロール間において、放電プラズマを発生させる圧力は、原料ガスの種類等に応じて適宜選択でき、好ましくは0.1〜50Pa、より好ましくは0.1〜30Paである。低圧CVD法とする場合には、該空間の圧力は、好ましくは0.1〜10Pa、より好ましくは0.1Pa〜8.0Paである。
成膜ロールは適宜公知のロールを用いることができるが、より効率良く無機薄膜層を形成するという観点から、一対の成膜ロールの直径が同一のものが好ましく、成膜ロールの直径は、放電条件等の観点から、好ましくは5〜30cmである。一対の成膜ロールはその中心軸が同一平面上において略平行、特に平行となるように配置されるのが好ましい。このように配置することで、それぞれの成膜ロールに配置された基材の表面に、同時に無機薄膜層を形成できるため、成膜レートを倍にでき、かつ同じ構造の無機薄膜層を形成可能である。さらに、一方の成膜ロールにおいて、基材の表面に無機薄膜層を堆積させ、他方の成膜ロールにおいて、さらに無機薄膜層を堆積させることが可能であることから、無機薄膜層を効率良く形成することもできる。
成膜ロール等により搬送される基材の搬送速度は、原料ガスの種類や一対の成膜ロール間の空間圧力に応じて適宜選択でき、好ましくは0.1〜100m/分、より好ましくは0.3〜20m/分である。搬送速度が上記の下限以上であると、基材における熱に起因する皺の発生を抑制でき、また上記の上限以下であると、無機薄膜層の厚みが薄くなりすぎるのを抑制することができる。
原料ガスとしては、例えば珪素原子及び炭素原子を含有する有機ケイ素化合物が挙げられる。有機ケイ素化合物の具体例としては、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、(メトキシメチル)トリメチルシラン、(エトキシメチル)トリメチルシラン、(メトキシエチル)トリメチルシランなどが挙げられる。これらの有機ケイ素化合物の中でも、化合物の取り扱い性、得られる無機薄膜層のガスバリア性、及び無機薄膜層表面の濡れ性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。原料ガスとして、これらの有機ケイ素化合物の1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
反応ガスは酸素を含む。酸素は上記原料ガスと反応して酸化物等の無機化合物を形成できる。反応ガスは、酸化物又は窒化物を形成できる他のガスを含んでいてもよい。酸化物を形成するための他のガスとしては、例えばオゾン等が挙げられる。また、窒化物を形成するための他のガスとしては、例えば窒素、アンモニア等が挙げられる。これらのガスは単独又は2種以上組み合わせて使用でき、例えば酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組合せて使用することができる。原料ガスと反応ガスの流量比は、成膜する無機材料の原子数比(原子比ともいう)に応じて適宜調節できる。
工程(A)における成膜ガスには、原料ガス及び反応ガスの他、これらのガスを一対の成膜ロール間に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを含んでいてもよい。また、工程(A)における成膜ガスは、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを含んでいてもよい。キャリアガス及び放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス、水素を用いることができる。なお、本明細書においては、原料ガス、反応ガス、キャリアガス及び放電用ガスを総称して成膜ガスと称する。
原料ガスの流量は、0℃1気圧基準において、好ましくは10〜1000sccm、より好ましくは20〜500sccm、さらに好ましくは30〜300sccmである。反応ガスの流量は、0℃1気圧基準において、好ましくは10〜10000sccm、より好ましくは100〜5000sccm、より好ましくは200〜1000sccmである。
本発明の製造方法により形成される無機薄膜層は、より高度なガスバリア性(特に水蒸気バリア性)及び表面濡れ性を発現しやすい観点、ならびに、耐屈曲性、製造の容易性及び低製造コストといった観点から、珪素原子(Si)、酸素原子(O)、及び炭素原子(C)を少なくとも含有することが好ましい。
この場合、無機薄膜層は、一般式がSiOで表される化合物が主成分であることができる。式中、X及びYは、それぞれ独立に、2未満の正の数を表す。ここで、「主成分である」とは、材質の全成分の質量に対してその成分の含有量が50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であることをいう。無機薄膜層は一般式SiOで表される1種類の化合物を含有してもよいし、一般式SiOで表される2種以上の化合物を含有してもよい。前記一般式におけるX及び/又はYは、無機薄膜層の膜厚方向において一定の値でもよいし、変化していてもよい。
さらに無機薄膜層は珪素原子、酸素原子及び炭素原子以外の元素、例えば、水素原子、窒素原子、ホウ素原子、アルミニウム原子、リン原子、イオウ原子、フッ素原子及び塩素原子のうちの一以上の原子を含有していてもよい。
本発明の一実施態様では、無機薄膜層は、無機薄膜層中の珪素原子(Si)に対する炭素原子(C)の平均原子数比をC/Siで表した場合に、緻密性を高くし、微細な空隙やクラック等の欠陥を少なくする観点から、C/Siの範囲は式(3)を満たすことが好ましい。
0.02<C/Si<0.50 (3)
C/Siは、同様の観点から、0.03<C/Si<0.45の範囲にあるとより好ましく、0.04<C/Si<0.40の範囲にあるとさらに好ましく、0.05<C/Si<0.35の範囲にあると特に好ましい。
また、無機薄膜層は、無機薄膜層中の珪素原子(Si)に対する酸素原子(O)の平均原子数比をO/Siで表した場合に、緻密性を高くし、微細な空隙やクラック等の欠陥を少なくする観点から、1.50<O/Si<1.98の範囲にあると好ましく、1.55<O/Si<1.97の範囲にあるとより好ましく、1.60<O/Si<1.96の範囲にあるとさらに好ましく、1.65<O/Si<1.95の範囲にあると特に好ましい。
なお、平均原子数比C/Si及びO/Siは、下記条件にてXPSデプスプロファイル測定を行い、得られた珪素原子、酸素原子及び炭素原子の分布曲線から、それぞれの原子の厚み方向における平均原子濃度を求めた後、平均原子濃度から算出でき、例えば実施例に記載の方法により算出できる。
<XPSデプスプロファイル測定>
エッチングイオン種:アルゴン(Ar
エッチングレート(SiO熱酸化膜換算値):0.027nm/sec
スパッタ時間:0.5min
X線光電子分光装置を使用
照射X線:単結晶分光AlKα(1486.6eV)
X線のスポット及びそのサイズ:100μm
検出器:Pass Energy 69eV,Step size 0.125eV
帯電補正:中和電子銃(1eV)、低速Arイオン銃(10V)
無機薄膜層の表面に対して赤外分光測定(ATR法)を行った場合、950〜1050cm−1に存在するピーク強度(I)と、1240〜1290cm−1に存在するピーク強度(I)との吸収強度比(I/I)が式(4)を満たすことが好ましい。
0.01≦I/I<0.05 (4)
本発明の一実施態様では、赤外分光測定(ATR法)から算出したピーク強度比I/Iは、無機薄膜層中のSi−O−Siに対するSi−CHの相対的な割合を表すと考えられる。式(4)で表される関係を満たす無機薄膜層は、緻密性が高く、微細な空隙やクラック等の欠陥を低減しやすいため、ガスバリア性及び耐衝撃性を高めやすいと考えられる。ピーク強度比I/Iは、無機薄膜層の緻密性を高く保持しやすい観点から、0.02≦I/I<0.04の範囲がより好ましい。
無機薄膜層が上記ピーク強度比I/Iの範囲を満たす場合、本発明におけるガスバリア性フィルムが適度に滑りやすくなり、ブロッキングを低減しやすい。上記ピーク強度比I/Iが大きすぎると、Si−Cが多すぎることを意味し、この場合、屈曲性が悪く、かつ滑りにくくなる傾向がある。また、上記ピーク強度比I/Iが小さすぎると、Si−Cが少なすぎることにより屈曲性が低下する傾向がある。
無機薄膜層の表面の赤外分光測定は、プリズムにゲルマニウム結晶を用いたATRアタッチメントを備えたフーリエ変換型赤外分光光度計によって測定できる。
無機薄膜層の表面に対して赤外分光測定(ATR法)を行った場合、950〜1050cm−1に存在するピーク強度(I)と、770〜830cm−1に存在するピーク強度(I)との強度比(I/I)が式(5)を満たすことが好ましい。
0.25≦I/I≦0.50 (5)
赤外分光測定(ATR法)から算出したピーク強度比I/Iは、無機薄膜層中のSi−O−Siに対するSi−CやSi−O等の相対的な割合を表すと考えられる。式(5)で表される関係を満たす無機薄膜層は、高い緻密性を保持しつつ、炭素が導入されることから耐屈曲性を高めやすく、かつ耐衝撃性も高めやすいと考えられる。ピーク強度比I/Iは、無機薄膜層の緻密性と耐屈曲性のバランスを保つ観点から、0.25≦I/I≦0.50の範囲が好ましく、0.30≦I/I≦0.45の範囲がより好ましい。
前記無機薄膜層は、無機薄膜層表面に対して赤外分光測定(ATR法)を行った場合、770〜830cm−1に存在するピーク強度(I)と、870〜910cm−1に存在するピーク強度(I)との強度比が式(6)を満たすことが好ましい。
0.70≦I/I<1.00 (6)
赤外分光測定(ATR法)から算出したピーク強度比I/Iは、無機薄膜層中のSi−Cに関連するピーク同士の比率を表すと考えられる。式(6)で表される関係を満たす無機薄膜層は、高い緻密性を保持しつつ、炭素が導入されることから耐屈曲性を高めやすく、かつ耐衝撃性も高めやすいと考えられる。ピーク強度比I/Iの範囲について、無機薄膜層の緻密性と耐屈曲性のバランスを保つ観点から、0.70≦I/I<1.00の範囲が好ましく、0.80≦I/I<0.95の範囲がより好ましい。
無機薄膜層は、単層であっても、2層以上の多層であってもよい。また、基材の両方の面に無機薄膜層を有していてもよい。無機薄膜層を2層以上又は複数形成する場合、各層は同じ組成からなる層であっても、異なる組成からなる層であってもよいが、ガスバリア性フィルムのガスバリア性、無機薄膜層表面の濡れ性及び耐熱性を向上しやすい観点から、同じ組成からなる層であることが好ましい。また、無機薄膜層を2層以上又は複数形成する場合は、工程(A)において、複数パス実施すればよい。
無機薄膜層の厚さは、ガスバリア性及び耐屈曲性を向上しやすい観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは50nm以上、特に好ましくは100nm以上であり、好ましくは3000nm以下、より好ましくは2000nm以下、さらに好ましくは1000nm以下である。無機薄膜層が2層以上又は複数ある場合、各層の厚さは同一又は異なっていてもよい。
無機薄膜層は、好ましくは1.8g/cm以上の高い平均密度を有し得る。ここで、無機薄膜層の「平均密度」は、ラザフォード後方散乱法(Rutherford Backscattering Spectrometry:RBS)で求めた珪素の原子数、炭素の原子数、酸素の原子数と、水素前方散乱法(Hydrogen Forward scattering Spectrometry:HFS)で求めた水素の原子数とから測定範囲の無機薄膜層の重さを計算し、測定範囲の無機薄膜層の体積(イオンビームの照射面積と膜厚との積)で除することで求められる。無機薄膜層の平均密度が上記の下限以上であると、緻密性が高く、微細な空隙やクラック等の欠陥を低減しやすい構造となるため好ましい。無機薄膜層が珪素原子、酸素原子、炭素原子及び水素原子からなる本発明の好ましい一態様において、無機薄膜層の平均密度が2.22g/cm未満であることが好ましい。
無機薄膜層が少なくとも珪素原子(Si)、酸素原子(O)、及び炭素原子(C)を含有する本発明の好ましい一態様において、該無機薄膜層の膜厚方向における該無機薄膜層表面からの距離と、各距離における珪素原子の原子数比との関係を示す曲線を珪素分布曲線という。ここで、無機薄膜層表面とは、本発明におけるガスバリア性フィルムの表面となる面を指す。同様に、膜厚方向における該無機薄膜層表面からの距離と、各距離における酸素原子の原子数比との関係を示す曲線を酸素分布曲線という。また、膜厚方向における該無機薄膜層表面からの距離と、各距離における炭素原子の原子数比との関係を示す曲線を炭素分布曲線という。珪素原子の原子数比、酸素原子の原子数比及び炭素原子の原子数比とは、無機薄膜層に含まれる珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計数に対するそれぞれの原子数の比率を意味する。
屈曲によるガスバリア性の低下の抑制及び表面濡れ性を高めやすい観点からは、前記無機薄膜層に含まれる珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計数に対する炭素原子の原子数比が、無機薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域において連続的に変化することが好ましい。ここで、上記炭素原子の原子数比が、無機薄膜層の膜厚方向において連続的に変化するとは、例えば上記の炭素分布曲線において、炭素の原子数比が後述の通り、不連続に変化する部分を含まないことを意味する。
前記無機薄膜層の炭素分布曲線が4つ以上の極値を有することが、ガスバリア性フィルムの耐屈曲性、ガスバリア性及び表面濡れ性の観点から好ましい。
前記無機薄膜層の珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線が、下記の条件(i)及び(ii)を満たすことが、ガスバリア性フィルムの耐屈曲性、ガスバリア性及び表面濡れ性の観点から好ましい。
(i)珪素の原子数比、酸素の原子数比及び炭素の原子数比が、前記無機薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域において、下記式(7)で表される条件を満たす、及び、
(酸素の原子数比)>(珪素の原子数比)>(炭素の原子数比) (7)
(ii)前記炭素分布曲線が好ましくは少なくとも1つ、より好ましくは8つ以上の極値を有する。
無機薄膜層の炭素分布曲線は、実質的に連続であることが好ましい。炭素分布曲線が実質的に連続とは、炭素分布曲線における炭素の原子数比が不連続に変化する部分を含まないことである。具体的には、膜厚方向における前記無機薄膜層表面からの距離をx[nm]、炭素の原子数比をCとしたときに、式(8)を満たすことが好ましい。
|dC/dx|≦0.01 (8)
また、無機薄膜層の炭素分布曲線は少なくとも1つの極値を有することが好ましく、8つ以上の極値を有することがより好ましい。ここでいう極値は、膜厚方向における無機薄膜層表面からの距離に対する各元素の原子数比の極大値又は極小値である。極値は、膜厚方向における無機薄膜層表面からの距離を変化させたときに、元素の原子数比が増加から減少に転じる点、又は元素の原子数比が減少から増加に転じる点での原子数比の値である。極値は、例えば、膜厚方向における複数の測定位置において、測定された原子数比に基づいて求めることができる。原子数比の測定位置は、膜厚方向の間隔が、例えば20nm以下に設定される。膜厚方向において極値を示す位置は、各測定位置での測定結果を含んだ離散的なデータ群について、例えば互いに異なる3以上の測定位置での測定結果を比較し、測定結果が増加から減少に転じる位置又は減少から増加に転じる位置を求めることによって得ることができる。極値を示す位置は、例えば、前記の離散的なデータ群から求めた近似曲線を微分することによって、得ることもできる。極値を示す位置から、原子数比が単調増加又は単調減少する区間が例えば20nm以上である場合に、極値を示す位置から膜厚方向に20nmだけ移動した位置での原子数比と、極値との差の絶対値は例えば0.03以上である。
前記のように炭素分布曲線が好ましくは少なくとも1つ、より好ましくは8つ以上の極値を有する条件を満たすように形成された無機薄膜層は、屈曲前のガス透過率に対する屈曲後のガス透過率の増加量が、前記条件を満たさない場合と比較して少なくなる。すなわち、前記条件を満たすことにより、屈曲によるガスバリア性の低下を抑制する効果が得られる。炭素分布曲線の極値の数が2つ以上になるように前記無機薄膜層を形成すると、炭素分布曲線の極値の数が1つである場合と比較して、前記の増加量が少なくなる。また、炭素分布曲線の極値の数が3つ以上になるように前記無機薄膜層を形成すると、炭素分布曲線の極値の数が2つである場合と比較して、前記の増加量が少なくなる。炭素分布曲線が2つ以上の極値を有する場合に、第1の極値を示す位置の膜厚方向における前記無機薄膜層表面からの距離と、第1の極値と隣接する第2の極値を示す位置の膜厚方向における前記無機薄膜層表面からの距離との差の絶対値が、1nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、1nm〜100nmの範囲内であることがさらに好ましい。
また、前記無機薄膜層の炭素分布曲線における炭素の原子数比の最大値及び最小値の差の絶対値が0.01より大きいことが好ましい。前記条件を満たすように形成された無機薄膜層は、屈曲前のガス透過率に対する屈曲後のガス透過率の増加量が、前記条件を満たさない場合と比較して少なくなる。すなわち、前記条件を満たすことにより、屈曲によるガスバリア性の低下を抑制する効果が得られる。炭素の原子数比の最大値及び最小値の差の絶対値が0.02以上であると前記の効果が高くなり、0.03以上であると前記の効果がさらに高くなる。
珪素分布曲線における珪素の原子数比の最大値及び最小値の差の絶対値が低くなるほど、無機薄膜層のガスバリア性が向上する傾向がある。このような観点で、前記の絶対値は、0.05未満(5at%未満)であることが好ましく、0.04未満(4at%未満)であることがより好ましく、0.03未満(3at%未満)であることが特に好ましい。
また、酸素炭素分布曲線において、各距離における酸素原子の原子数比及び炭素原子の原子数比の合計を「合計原子数比」としたときに、合計原子数比の最大値及び最小値の差の絶対値が低くなるほど、前記無機薄膜層のガスバリア性が向上する傾向がある。このような観点で、前記の合計原子数比は、0.05未満(5at%未満)であることが好ましく、0.04未満(4at%未満)であることがより好ましく、0.03未満(3at%未満)であることが特に好ましい。
前記無機薄膜層表面方向において、無機薄膜層を実質的に一様な組成にすると、無機薄膜層のガスバリア性及び表面濡れ性を均一にするとともに向上させることができる。実質的に一様な組成であるとは、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線において、前記無機薄膜層表面の任意の2点で、それぞれの膜厚方向に存在する極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子数比の最大値及び最小値の差の絶対値が、互いに同じであるかもしくは0.05以内の差であることをいう。
前記条件を満たすように形成された無機薄膜層は、例えば有機EL素子を用いたフレキシブル電子デバイスなどに要求されるガスバリア性を発現することができる。
上記の無機薄膜層の組成、膜厚及び各分布曲線の形状等は、成膜ガスの種類、これらのガスの流量比(例えば反応ガスと成膜ガスの流量比)、成膜条件などを適宜選択すること、例えば上記に例示の成膜ガス;反応ガス及び原料ガスの流量の範囲;並びに、上記の放電プラズマを発生させる際の圧力の範囲、印加電力の範囲、周波数の範囲及びフィルムの搬送速度の範囲等から適宜選択することで調整することができる。
ここで、得られる無機薄膜層が、珪素原子、酸素原子及び炭素原子を少なくとも含有する一実施態様において、原料ガスと反応ガスの好ましい調整方法を以下に説明する。
かかる態様の場合、珪素原子及び炭素原子を含有する有機ケイ素化合物を含む原料ガスと反応ガスとの分解反応により、SiOやSiO(0<x<2、0<y<2)が生成させ、無機薄膜層を形成してもよい。工程(A)において、一対の成膜ロール間の空間に供給される原料ガスと反応ガスとの比率としては、原料ガスと反応ガスとを完全に反応させる(原料ガスを完全酸化させる)ために理論上必要となる反応ガス比率よりも過剰にしないことが好ましい。これは、原料ガスに含まれる前記有機ケイ素化合物が完全酸化されると、SiO層を生成し、SiO層が形成されない、すなわち、該有機ケイ素化合物中の酸化されなかった炭素原子が無機薄膜層中に取り込まれなくなり、ガスバリア性の観点から不利になるからである。一方、反応ガスの比率が小さすぎると、酸化されなかった炭素原子が無機薄膜層中に過剰に取り込まれ、無機薄膜層の透明性が低下する場合がある。このため、一対の成膜ロール間に供給される反応ガスの体積流量Vと原料ガスの体積流量Vとの流量比(V/V)は、原料ガスに含まれる該有機ケイ素化合物を完全酸化させるために必要な、反応ガスの体積流量V02と原料ガスの体積流量V01との最小流量比(V02/V01)をPとしたとき、好ましくは0.98P〜0.20P、より好ましくは0.95P〜0.25P、さらに好ましくは0.90P〜0.30Pである。流量比V/Vが上記の上限以下であると、無機薄膜層において、該有機シラン化合物由来の過剰な炭素原子による透明性の低下を有効に抑制でき、また流量比V/Vが上記の下限以上であると、無機薄膜層において、該有機シラン化合物由来の過少な炭素原子によるガスバリア性の低下を有効に抑制できる。
最小流量比P(V02/V01)は、以下のように求められる。例えば原料ガスとしてヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)[(CHSi−O−Si(CH]を用い、反応ガスとして酸素を用いた場合に、原料ガスと反応ガスとの反応により下記の反応式(I):(CHSi−O−Si(CH + 12O →6CO+9HO+2SiO (I)に従った反応が生じ、SiOが製造される。このような反応においては、HMDSO1モルを完全酸化するための酸素量は12モルである。よって、最小流量比PはV02/V01=12となる。
工程(A)において、基材を搬送するために、成膜ロールの他、送り出しロール、複数の搬送ロール、及び巻き取りロールを用いることができる。送り出しロールから搬送された基材は、搬送ロール及び成膜ロールにより搬送されながら、成膜ロールを通過する際に表面に無機薄膜層が形成される。これにより得られたガスバリア性フィルムは巻き取りロールにより巻き取られる。送り出しロール、搬送ロール、及び巻き取りロールは公知のものを用いることができる。また、成膜ガスを一対のロール間の空間に供給するために、公知のガス供給管等を用いてもよい。なお、成膜ガスを上記圧力下でプラズマ放電させるために、少なくとも成膜ロール及びガス供給管を真空チャンバ−内等に配置するのが好ましい。
[本発明の一実施態様]
以下、図1を参照しながら、本発明の一実施態様に係る製造方法を説明するが、本発明は図1による実施態様に限定されるものではない。
図1は、本発明に用いられる製造装置の一例を示す概略図であり、プラズマ化学気相成長法により無機薄膜層を形成する装置の概略図である。なお、図1においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜調整している。このため、寸法や比率等は適宜変更できる。
図1に示す製造装置10は、送り出しロール11、巻き取りロール12、搬送ロール13〜18、第1成膜ロール25、第2成膜ロール26、ガス供給管19、プラズマ発生用電源20、電極21、電極22、第1成膜ロール25の内部に設置された磁場形成装置23、及び第2成膜ロール26の内部に設置された磁場形成装置24を有している。
製造装置10の構成要素のうち、少なくとも第1成膜ロール25、第2成膜ロール26、ガス供給管19、磁場形成装置23、磁場形成装置24は、ガスバリア性フィルムを製造するときに、図示略の真空チャンバー内に配置される。この真空チャンバーは、図示略の真空ポンプに接続される。真空チャンバーの内部の圧力は、真空ポンプの動作により調整される。
この装置を用いると、プラズマ発生用電源20を制御することにより、第1成膜ロール25と第2成膜ロール26との間の空間27に、ガス供給管19から供給される成膜ガスの放電プラズマを発生させることができ、発生する放電プラズマを用いて連続的な成膜プロセスでプラズマCVD成膜を行うことができる。
送り出しロール11には、成膜前の基材29が巻き取られた状態で配置され、基材29を長尺方向に巻き出しながら送り出しする。また、基材29の端部側には巻取りロール12が設けられ、成膜が行われた後の基材29を牽引しながら巻き取り、ロール状に収容する。第1成膜ロール25及び第2成膜ロール26は、平行に延在して対向配置されている。
両ロールは導電性材料で形成され、それぞれ回転しながら基材29を搬送する。第1成膜ロール25及び第2成膜ロール26は、直径が同じものを用いることが好ましく、直径は5cm〜30cmである。また、第1成膜ロール25と第2成膜ロール26とは、相互に絶縁されていると共に、共通するプラズマ発生用電源20に接続されている。プラズマ発生用電源20から交流電圧を印加すると、第1成膜ロール25と第2成膜ロール26との間の空間27に電場が形成される。プラズマ発生用電源20は、印加電力が好ましくは100W〜10kWであり、交流の周波数は好ましくは50Hz〜500kHzである。
磁場形成装置23及び磁場形成装置24は、空間27に磁場を形成する部材であり、第1成膜ロール25及び第2成膜ロール26の内部に格納されている。磁場形成装置23及び磁場形成装置24は、第1成膜ロール25及び第2成膜ロール26と共には回転しないように(すなわち、真空チャンバーに対する相対的な姿勢が変化しないように)固定されている。
磁場形成装置23及び磁場形成装置24は、第1成膜ロール25及び第2成膜ロール26の延在方向と同方向に延在する中心磁石23a,24aと、中心磁石23a,24aの周囲を囲みながら、第1成膜ロール25及び第2成膜ロール26の延在方向と同方向に延在して配置される円環状の外部磁石23b,24bとを有している。磁場形成装置23では、中心磁石23aと外部磁石23bとを結ぶ磁力線(磁界)が、無終端のトンネルを形成している。磁場形成装置24においても同様に、中心磁石24aと外部磁石24bとを結ぶ磁力線が、無終端のトンネルを形成している。
この磁力線と、第1成膜ロール25と第2成膜ロール26との間に形成される電界と、が交叉するマグネトロン放電によって、成膜ガスの放電プラズマが生成される。すなわち、詳しくは後述するように、空間27は、プラズマCVD成膜を行う成膜空間として用いられ、基材29において第1成膜ロール25、第2成膜ロール26に接しない面(成膜面)には、成膜ガスがプラズマ状態を経由して堆積した無機薄膜層が形成される。
空間27の近傍には、空間27にプラズマCVDの原料ガスや反応ガスを含む成膜ガス28を供給するガス供給管19が設けられている。ガス供給管19は、第1成膜ロール25及び第2成膜ロール26の延在方向と同一方向に延在する管状の形状を有しており、複数箇所に設けられた開口部から空間27に成膜ガス28を供給する。図1では、ガス供給管19から空間27に向けて成膜ガス28を供給する様子を矢印で示している。
原料ガス及び反応ガスは、上記例示の原料ガス及び反応ガスが用いられ、その流量及び比率も、上記例示の範囲から選択できる。なお、成膜ガスには、上記キャリアガス及び放電用ガスを含んでいてもよい。真空チャンバー内の圧力(真空度)、すなわち、空間27の圧力は好ましくは0.1〜50Paである。プラズマ発生装置の電極ドラムの電力は、好ましくは100W〜10kWである。基材29の搬送速度(ライン速度)は、好ましくは0.1〜100m/分である。
製造装置10においては、以下のとおり、基材29に対して成膜が行われる。すなわち、基材29の表面に無機薄膜層が形成される。まず、成膜前に、基材29から発生するアウトガスが十分に少なくなるように事前の処理を行うとよい。
基材29からのアウトガスの発生量を少なくする方法としては、真空乾燥、加熱乾燥、及びこれらの組み合わせによる乾燥、並びに自然乾燥による乾燥方法が挙げられる。いずれの乾燥方法であっても、ロール状に巻き取った基材29の内部の乾燥を促進するために、乾燥中にロールの巻き替え(巻出し及び巻き取り)を繰り返し行い、基材29全体を乾燥環境下に曝すことが好ましい。
真空乾燥は、耐圧性の真空容器に基材29を入れ、真空ポンプのような減圧機を用いて真空容器内を排気して真空にすることにより行う。真空乾燥時の真空容器内の圧力は、1000Pa以下が好ましく、100Pa以下がより好ましく、10Pa以下がさらに好ましい。真空容器内の排気は、減圧機を連続的に運転することで連続的に行うこととしてもよく、内圧が一定以上にならないように管理しながら、減圧機を断続的に運転することで断続的に行うこととしてもよい。乾燥時間は、少なくとも8時間以上であることが好ましく、1週間以上であることがより好ましく、1ヶ月以上であることがさらに好ましい。
加熱乾燥は、基材29を室温以上の環境下に曝すことにより行う。加熱温度は、室温以上200℃以下が好ましく、室温以上150℃以下がさらに好ましい。200℃を超える温度では、基材29が変形するおそれや、基材29から例えばオリゴマー成分が溶出し表面に析出することにより、欠陥が生じるおそれがある。乾燥時間は、加熱温度や用いる加熱手段により適宜選択することができる。
加熱手段としては、常圧下で基材29を室温以上200℃以下に加熱できるものであればよい。通常知られる装置の中では、赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置や、加熱ドラムが好ましく用いられる。赤外線加熱装置とは、赤外線発生手段から赤外線を放射することにより対象物を加熱する装置である。マイクロ波加熱装置とは、マイクロ波発生手段からマイクロ波を照射することにより対象物を加熱する装置である。加熱ドラムとは、ドラム表面を加熱し、対象物をドラム表面に接触させることにより、接触部分から熱伝導により加熱する装置である。
自然乾燥は、基材29を低湿度の雰囲気中に配置し、乾燥ガス(乾燥空気、乾燥窒素)を通風させることで低湿度の雰囲気を維持することにより行う。自然乾燥を行う際には、基材29を配置する低湿度環境にシリカゲルなどの乾燥剤を一緒に配置することが好ましい。乾燥時間は、8時間以上であることが好ましく、1週間以上であることがより好ましく、1ヶ月以上であることがさらに好ましい。これらの乾燥は、基材29を製造装置に装着する前に別途行ってもよく、基材29を製造装置に装着した後に、製造装置内で行ってもよい。基材29を製造装置に装着した後に乾燥させる方法としては、送り出しロールから基材29を送り出し搬送しながら、チャンバー内を減圧することが挙げられる。また、通過させるロールがヒーターを備えるものとし、ロールを加熱することで該ロールを上述の加熱ドラムとして用いて加熱することとしてもよい。
基材29からのアウトガスを少なくする別の方法として、予め基材29の表面に無機膜を成膜しておくことが挙げられる。無機膜の成膜方法としては、真空蒸着(加熱蒸着)、電子ビーム(Electron Beam、EB)蒸着、スパッタ、イオンプレーティングなどの物理的成膜方法が挙げられる。熱CVD、プラズマCVD、大気圧CVDなどの化学的堆積法により無機膜を成膜することとしてもよい。表面に無機膜を成膜した基材29を、上述の乾燥方法による乾燥処理を施すことにより、さらにアウトガスの影響を少なくしてもよい。
次いで、不図示の真空チャンバー内を減圧環境とし、第1成膜ロール25、第2成膜ロール26に印加して空間27に電界を生じさせる。この際、磁場形成装置23及び磁場形成装置24では上述した無終端のトンネル状の磁場を形成しているため、成膜ガスを導入することにより、該磁場と空間27に放出される電子とによって、該トンネルに沿ったドーナツ状の成膜ガスの放電プラズマが形成される。この放電プラズマは、数Pa近傍の低圧力で発生可能であるため、真空チャンバー内の温度を室温近傍とすることが可能になる。
一方、磁場形成装置23及び磁場形成装置24が形成する磁場に高密度で捉えられている電子の温度は高いので、当該電子と成膜ガスとの衝突により生じる放電プラズマが生じる。すなわち、空間27に形成される磁場と電場により電子が空間27に閉じ込められることにより、空間27に高密度の放電プラズマが形成される。より詳しくは、無終端のトンネル状の磁場と重なる空間においては、高密度の(高強度の)放電プラズマが形成され、無終端のトンネル状の磁場とは重ならない空間においては低密度の(低強度の)放電プラズマが形成される。これら放電プラズマの強度は、連続的に変化するものである。
放電プラズマが生じると、ラジカルやイオンを多く生成してプラズマ反応が進行し、成膜ガスに含まれる原料ガスと反応ガスとの反応が生じる。本発明は、この際発生するO2+及びOに由来するプラズマ発光スペクトルを捉え、上記の通り、強度比(I/I)を0.25以下に制御(又は調整)するものである。
ここで、高強度の放電プラズマが形成されている空間では、酸化反応に与えられるエネルギーが多いため反応が進行しやすく、主として前記有機ケイ素化合物の完全酸化反応を生じさせることができる。一方、低強度の放電プラズマが形成されている空間では、酸化反応に与えられるエネルギーが少ないため反応が進行しにくく、主として前記有機ケイ素化合物の不完全酸化反応を生じさせることができる。
なお、本明細書において「珪素原子及び炭素原子を含有する有機ケイ素化合物の完全酸化反応」とは、該有機ケイ素化合物と酸素との反応が進行し、該有機ケイ素化合物が、上述の反応式(I)に示すような、SiOと水と二酸化炭素にまで酸化分解されることを意味する。
また、本明細書において「珪素原子及び炭素原子を含有する有機ケイ素化合物の不完全酸化反応」とは、該有機ケイ素化合物が完全酸化反応をせず、SiOではなく構造中に炭素を含むSiOxCy(0<x<2、0<y<2)が生じる反応となることを意味する。
上述のとおり、製造装置10では、放電プラズマが第1成膜ロール25、第2成膜ロール26の表面にドーナツ状に形成されるため、第1成膜ロール25、第2成膜ロール26の表面を搬送される基材29は、高強度の放電プラズマが形成されている空間と、低強度の放電プラズマが形成されている空間とを交互に通過することとなる。そのため、第1成膜ロール25、第2成膜ロール26の表面を通過する基材29の表面には、完全酸化反応によって生じるSiOを多く含む層(Ha1層又はHa2層とする)に、不完全酸化反応によって生じるSiOxCyを多く含む層(Hb1層又はHb2層とする)が挟持されて形成される。例えば、積層されている順に、基材29/HA層(Ha1層/Hb1層/Ha1層)/HB層(Ha2層/Hb2層/Ha2層)で構成された積層体などが形成される。
これらに加えて、高温の2次電子が磁場の作用で基材29に流れ込むのが防止され、よって、基材29の温度を低く抑えたままで高い電力の投入が可能となり、高速成膜が達成される。膜の堆積は、主に基材29の成膜面のみに起こり、成膜ロールは基材29に覆われて汚れにくいために、長時間の安定成膜ができる。
本発明の一実施態様において、本発明により製造されたガスバリア性フィルムは、少なくとも、HA層とHB層とを有する。まず、基材側にHA層を形成した後に、HB層を形成することが好ましい。HB層を形成する際は、HA層を形成時の膜表面の温度より、高い温度で成膜することが好ましい。膜表面の温度を制御する方法としては、1.真空チャンバー内の成膜時の圧力を低くする、2.プラズマ発生用電源からの印加電力を高くする、3.原料ガスの流量(及び反応ガスの流量)を小さくする、4.基材の搬送速度を小さくする、5.成膜ロール自体の温度を上げる、6.成膜時のプラズマ発生用電源の周波数を下げるなどが挙げられる。これらの条件1〜6のうちの1つを選び、他の条件を固定して、選んだ条件を最適化して、成膜時に適度な温度となるようにして、成膜してもよいし、これらの条件のうちの2つ又は3つ以上を変化させて、最適化して、成膜時に適度な温度となるようにして、成膜してもよい。なお、条件1〜4及び6に関しては、上述の範囲で最適化することが好ましい。上記5の条件に関しては、第1成膜ロール25及び第2成膜ロール26の表面の温度として、−10〜80℃であることが好ましい。
図1には図示していないが、製造装置10には、図1に示す一対の成膜ロール25及び26の手前側に分光器が設置されている。その位置をより詳細に説明するために、図2に成膜ロールと分光器との位置関係を示す概略図を示す。なお、図2においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜調整している。また、図2は、図1に示す一対の成膜ロール25及び26以外の構成要素は省略しており、一対の成膜ロール25及び26を短手方向から見た概略図(図1に示す成膜ロールを上から見た概略図)である。一対の成膜ロール25及び26の長手方向側端部、すなわち、基材29(図示せず)の短手方向(TD方向)側端部から、ガラス窓31を介して、好ましくは50〜3000mmの位置に分光器32が設置されている。ガラス窓31の幅は特に限定されないが、通常5〜100mmである。
製造装置10により、基材29に、無機薄膜層の成膜を行っている間、分光器32を用いて、プラズマ発光スペクトルを測定する。本発明では、一対の成膜ロール25及び26の間に、酸素ガスを含む成膜ガス28を供給し、該ロール間に発生させるプラズマ放電により、基材29上に無機薄膜層を形成する工程(A)において、該無機薄膜層形成時に、無機薄膜層の成膜部におけるプラズマ発光スペクトルを測定した際の、657nm付近のピーク強度Iに対する559nm付近のピーク強度Iの強度比(I/I)の経時変化における最大値と最小値との差を0.25以下に制御する。これにより、ガスバリア性及び無機薄膜層の濡れ性に優れるガスバリア性フィルムを製造することができる。
本発明の製造方法では、工程(A)において、プラズマの発生開始から停止までの操作を1回以上、すなわち、1パス以上行う。図1の製造装置では、一定の長さのガスバリア性フィルムを製造する際に、一定の長さの基材29を巻き出し、一対の成膜ロール25及び26を通過する際に無機薄膜層を成膜し、巻き取りロール12で巻き取るまでの動作が1パスである。また、通常、2パス目は、1パス目で基材29に無機薄膜層が成膜されたフィルムを巻き取った巻き取りロール12から、該フィルムを送り出し、搬送ロール18〜16により搬送され、次いで、第2成膜ロール26及び第1成膜ロール25を通過する際に、1パス目で成膜された無機薄膜層上にさらに無機薄膜層が成膜され、次いで、搬送ロール15〜13により搬送され、最後に、送り出しロール11で該フィルムが巻き取られる。このように2パス目では巻き取りロール12が送り出しロールになり、送り出しロール11が巻取りロールとなる。3パス目は、1パス目と同様に成膜され、4パス目は2パス目と同様に成膜される。よって、成膜を複数パスで行うことにより、無機薄膜層を多層にすることができる。かかる場合、同じ厚みの無機薄膜層を形成する場合であっても、搬送スピードを上げることができるため、基材への熱ダメージを抑制することができる。しかも、本発明では、複数パス行う場合であっても、無機薄膜層形成中に、強度比(I/I)の経時変化における最大値と最小値との差を0.25以下に制御されているため、部分的なガスバリア性や無機薄膜層表面の濡れ性の低下が防止され、優れたガスバリア性及び無機薄膜層表面の濡れ性を有するガスバリア性フィルムを形成できる。
図1及び図2にかかる本発明の一実施態様では、基材29は、上記[基材]の項に記載の基材と同様のものであり、無機薄膜層は[製造方法及び無機薄膜層]の項に記載の無機薄膜層と同様のものである。
[ガスバリア性フィルム]
本発明の製造方法により得られるガスバリア性フィルムは、前記基材と、該基材の少なくとも一方の面に形成された1層以上の前記無機薄膜層とを含む。該基材は、前記可撓性フィルムに加え、前記プライマー層及び/又は前記有機層を含んでいてもよい。本発明の製造方法により得られるガスバリア性フィルムは、工程(A)の無機薄膜層形成時において、強度比(I/I)の経時変化における最大値と最小値との差が0.25以下に制御されているため、ガスバリア性及び無機薄膜層表面の濡れ性に優れている。ここで、無機薄膜層表面の濡れ性に優れると、薄膜層表面上に機能層を形成する場合などに、その膜厚を均一化しやすいため、そのようなガスバリア性フィルムを電子デバイスに適用する際においても光学特性の低下等を有効に抑制できる。従って、本発明におけるガスバリア性フィルムは、有機EL素子や有機薄膜太陽電池等の電子デバイス用途に好適に利用可能である。
図3に、本発明の製造方法により得られるガスバリア性フィルムの層構成の一例を示すが、この態様に限定されない。ガスバリア性フィルム1は、例えば図1及び図2に示す製造装置により製造することができ、可撓性フィルム5、プライマー層4及び有機層3をこの順に有する基材6上に無機薄膜層2が形成(又は積層)されたフィルムである。なお、図3においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜調整している。このため、寸法や比率等は適宜変更できる。
本発明により得られるガスバリア性フィルムは、無機薄膜層表面の濡れ性に優れる。そのため、該ガスバリア性フィルムは、水接触角が小さい。該ガスバリア性フィルムの水接触角は、好ましくは95°以下、より好ましくは90°以下、さらに好ましくは80°以下である。水接触角が上記の上限以下であると、無機薄膜層表面の濡れ性を向上できる。また、ガスバリア性フィルムの水接触角の下限は、好ましくは2°以上である。なお、水接触角は、接触角計により測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
本発明により得られるガスバリア性フィルムは、ガスバリア性、特に水蒸気バリア性に優れる。そのため、該ガスバリア性フィルムは、水蒸気透過度が小さい。該ガスバリア性フィルムの水蒸気透過度は、好ましくは5×10−2g/m/day以下、より好ましくは3×10−2g/m/day以下、さらに好ましくは1×10−2g/m/day以下である。ガスバリア性フィルムの水蒸気透過度が上記の上限以下であると、ガスバリア性を向上できる。また、ガスバリア性フィルムの水蒸気透過度の下限は、通常0g/m/day以上である。なお、水蒸気透過度は、ISO/WD 15106−7(Annex C)に準拠したCa腐食試験法で測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
ガスバリア性フィルムは、必要に応じて、各層の間や最外層に、他の層を有していてよい。他の層としては、例えば易滑層、ハードコート層、透明導電膜層、カラーフィルター層、易接着層、カール調整層、応力緩和層、耐熱層、耐擦傷層、耐押し込み層、保護層等が挙げられる。
ガスバリア性フィルムの厚みは、ガスバリア性フィルムのガスバリア性、無機薄膜層表面の濡れ性、耐屈曲性、耐久性及び表面硬度等の観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上であり、好ましくは600μm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは250μm以下である。なお、ガスバリア性フィルムの厚み(膜厚)は、膜厚計により測定できる。
ガスバリア性フィルムは、好ましくは長尺フィルムであり、その長さ及び幅はそれぞれ、上記基材の長さ及び幅と同じ範囲から選択できる。本発明では、工程(A)の無機薄膜層形成時において、強度比(I/I)の経時変化における最大値と最小値との差が0.25以下に制御されているため、長さ100m以上の長尺フィルムであっても、部分的な欠陥がなく、優れたガスバリア性及び無機薄膜層表面の濡れ性を有することができる。
〔膜厚〕
実施例及び比較例で得られたガスバリア性フィルムにおける可撓性フィルム、有機層及び無機薄膜層の各層の膜厚は、膜厚計((株)小坂研究所製、「サーフコーダET200」)を用いて、無成膜部と成膜部の段差測定を行って求めた。
〔無機薄膜層表面のX線光電子分光測定〕
実施例で得られたガスバリア性フィルムの無機薄膜層表面の原子数比は、X線光電子分光法(ULVAC PHI(株)製、「QuanteraSXM」)を用いて、以下のXPSデプスプロファイルに従って測定した。X線源としてはAlKα線(1486.6eV、X線スポット100μm)を用い、また、測定時の帯電補正のために、中和電子銃(1eV)、低速Arイオン銃(10V)を使用した。測定後の解析は、MultiPak V6.1A(アルバック・ファイ(株))を用いてスペクトル解析を行い、測定したワイドスキャンスペクトルから得られるSiの2p、Oの1s、Nの1s、及びCの1sそれぞれのバインディングエネルギーに相当するピークを用いて、Siに対するC(C/Si)及びSiに対するO(O/Si)の表面原子数比を算出した。表面原子数比としては、5回測定した値の平均値を採用した。この結果から、珪素原子、酸素原子及び炭素原子の分布曲線を作成し、それぞれの原子の厚み方向における平均原子濃度を求めた後、平均原子濃度から平均原子数比C/Si及びO/Siを算出した。
<XPSデプスプロファイル測定>
エッチングイオン種:アルゴン(Ar
エッチングレート(SiO熱酸化膜換算値):0.027nm/sec
スパッタ時間:0.5min
X線光電子分光装置:アルバックファイ社製、機種名「Quantera SXM」
照射X線:単結晶分光AlKα(1486.6eV)
X線のスポット及びそのサイズ:100μm
検出器:Pass Energy 69eV,Step size 0.125eV
帯電補正:中和電子銃(1eV)、低速Arイオン銃(10V)
〔無機薄膜層表面の赤外分光測定(ATR法)〕
実施例で得られたガスバリア性フィルムの無機薄膜層表面の赤外分光測定は、プリズムにゲルマニウム結晶を用いたATRアタッチメント(PIKE MIRacle)を備えたフーリエ変換型赤外分光光度計(日本分光(株)製、FT/IR−460Plus)によって測定した。
〔ガスバリア性フィルムの水蒸気透過度〕
実施例及び比較例で得られたガスバリア性フィルムの水蒸気透過度は、温度23℃、湿度50%RHの条件において、ISO/WD 15106−7(Annex C)に準拠してCa腐食試験法で測定し、以下の基準で評価した。
〇・・・水蒸気透過度が5×10−2g/m/day以下
×・・・水蒸気透過度が5×10−2g/m/dayを超える。
〔水接触角の測定〕
23℃50%RHの雰囲気下で、接触角計(DropMaster DM−500、協和界面科学(株)製)を用いて、実施例及び比較例で得られたガスバリア性フィルムの無機薄膜層表面の水滴に対する接触角を液滴法により求めた。1.0μLの水滴を無機薄膜層表面に滴下後、1,000m秒後の接触角を値として用いた。以下の基準で評価した。
〇・・・接触角が95°以下
×・・・接触角が95°を超える。
〔無機薄膜層の製造方法〕
実施例及び比較例において、図1に示す製造装置を用いて、基材の有機層側の表面に無機薄膜層を積層した。具体的には、図1に示すように、基材29を送り出しロ−ル10に装着し、真空チャンバー内を1×10−3Pa以下にした後、真空チャンバー内の排気口周辺における圧力が1Paになるように、成膜空間27に、原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)と、反応ガスとしての酸素ガス(放電ガスとしても機能する)とを含む成膜ガス28を供給し、排気量を調節した。その後、第1成膜ロール25と第2成膜ロール26にそれぞれ交流電力を供給し、一対の成膜ロール25及び26の間で放電によりプラズマを発生させた。その際、真空チャンバー内の排気口周辺における圧力が1Paになるよう、再度排気量を微調整した。次いで、発生させたプラズマを用いて原料ガスと反応ガスとを分解及び反応させて、下記成膜条件にてプラズマCVD法による薄膜形成を行い、基材29の有機層側の表面に、緻密な無機薄膜層を積層させた。さらに、搬送ロールを経由して、巻き取りロール12により、ガスバリア性フィルムを巻き取った。なお、一対の成膜ロール25及び26はプラズマ発生用電源20と接続された電極であり、搬送は、該電極表面にそれぞれ基材を密着させながら行った。また、一対の成膜ロール25及び26(電極)は、磁束密度が電極及び基材表面で高くなるように電極内部に磁場形成装置23及び24が配置されており、該磁場により、プラズマ発生時に電極及び基材上でプラズマが高密度に拘束された。
〈成膜条件1〉
原料ガスの供給量:100sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute、0℃、1気圧基準)
酸素ガスの供給量:500sccm
真空チャンバー内の真空度:1Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度:0.5m/min
パス回数:1回
〔無機薄膜層成膜中のプラズマ発光スペクトル測定〕
無機薄膜層の成膜中のプラズマ発光スペクトルは、分光器(Ocean Photonics製、「USB2000」)を用いて測定した。分光器は、図2に示すように、製造装置10のガラス窓(SCHOTT社製テンパックス)の外側に設置されている。分光器による測定位置は、成膜ロールの長手方向側端部(又はロール上の基材の短手方向(TD方向)側端部までの距離が480mm(内30mmはガラス窓)となる位置であり、その位置でO由来のピーク(657nm付近)の強度I、O2+由来のピーク(559nm付近)の強度Iを算出した。測定は500m秒間隔で行い、これから、成膜中のI/Iの経時変化における最大値及び最小値の差を算出した。なお、該測定においては、プラズマ発光以外の光の影響を受けないよう、分光器を黒色テープ等で固定し、暗測定のスペクトルをベースとしてプラズマ発光スペクトルから差し引いて、プラズマ発光を分光した。すなわち、強度比(I/I)の経時変化における最大値及び最小値の差は、プラズマ発光スペクトルから暗測定のスペクトルを差し引いて得られたスペクトルから算出したものである。
〔実施例1〕
両面にプライマー層を有する可撓性フィルム(帝人フィルムソリューション(株)製、商品名「テオネックス(登録商標)」、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、Q65HWA、厚み100μm、長さ500m、幅350mm、両面易接着処理)の片面に、有機層形成用組成物(日本化工塗料(株)、「TOMAX FA−3292」)をグラビアコーティング法にて塗布し、100℃で1分乾燥させた後、高圧水銀ランプを用いて、積算光量500mJ/cmの条件で紫外線照射し、厚み2.5μmの有機層を積層させて、可撓性フィルム、プライマー層及び有機層がこの順に積層された基材を得た。ここで、有機層形成用組成物は、溶剤として酢酸エチルを8.1質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルを52.1質量%、固形分としてUV硬化オリゴマーを10〜20質量%、シリカ粒子(平均一次粒子径20nm)を20〜30質量%、添加剤として光重合開始剤を2〜3質量%含有する組成物である。UV硬化オリゴマーは、重合性官能基として(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物である。このようにして得た基材の有機層側の表面に、上記無機薄膜層の製造方法に従い、無機薄膜層を積層させ、ガスバリア性フィルムAを得た。無機薄膜層成膜中は排気量及び原料ガス流量を調節することにより真空チャンバー内の圧力を一定とした。このとき、無機薄膜層成膜中のI/Iの最大値と最小値の差は0.119であった。また、得られたガスバリア性フィルムAの無機薄膜層の厚みは300nmであり、該ガスバリア性フィルムAの長さは500m及び幅は350mmであった。また、温度40℃、湿度90%RHの条件における水蒸気透過度は5.0×10−3g/(m・day)であった。さらに、カウント比(I/I)[657nm付近のカウントに対する559nm付近のカウントの比]が最大値である場合のプラズマ発光スペクトルと、カウント比(I/I)が最小値である場合のプラズマ発光スペクトルを図4(a)及び(b)に示し、カウント比(I/I)の経時変化を表したグラフ[縦軸;カウント比(I/I)、横軸;時間]を図5に示す。
上記条件にてXPSデプスプロファイル測定を行ったところ、ガスバリア性フィルムAは、無機薄膜層に含まれる珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計数に対する炭素原子の原子数比が、無機薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域において連続的に変化し、該領域において、原子数比が大きい方から酸素、珪素及び炭素の順となっていた。また、平均原子数比C/Siは0.30であり、平均原子数比O/Siは1.73であった。
ガスバリア性フィルムAの無機薄膜層について、上記条件にて赤外分光測定を行った。赤外吸収スペクトルから、950〜1050cm−1に存在するピーク強度(I)と、1240〜1290cm−1に存在するピーク強度(I)との吸収強度比(I/I)を求めると、I/I=0.03であった。また、950〜1050cm−1に存在するピーク強度(I)と、770〜830cm−1に存在するピーク強度(I)との吸収強度比(I/I)を求めると、I/I=0.36であった。また、770〜830cm−1に存在するピーク強度(I)と、870〜910cm−1に存在するピーク強度(I)との吸収強度比(I/I)を求めると、I/I=0.84であった。
〔比較例1〕
成膜中に原料切り替えを行い、その際ガス流量比の調整のみを行った他は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムBを製造した。原料切り替え時に真空チャンバー内の圧力変化が生じ、無機薄膜層の成膜中のI/Iの最大値と最小値の差は0.282であった。また、無機薄膜層の厚みは295nmであった。得られたガスバリア性フィルムB内の、I/Iの変化の大きい領域について、温度40℃、湿度90%RHの条件における水蒸気透過度を測定したところ7×10−2g/(m・day)であった。
実施例1、及び比較例1で得られたガスバリア性フィルムをついて、上記方法に従い、水蒸気透過度及び無機薄膜層表面の水接触角を測定した結果を表1に示す。なお、水蒸気透過度及び水接触角の具体的な値は、括弧内に記載した。
Figure 2021085045
表1に示されるように、実施例1で得られたガスバリア性フィルムは、プラズマ発光スペクトルのピーク強度比(I/I)の変化の大きい領域を含む、すなわちピーク強度比(I/I)の最大値と最小値の差の大きい比較例1で得られたガスバリア性フィルムと比較し、成膜部全面(フィルム全体)において優れたガスバリア性を示すとともに、接触角が小さく、優れた無機薄膜層表面の濡れ性を有することが確認された。
1…ガスバリア性フィルム、2…無機薄膜層、3…有機層、4…プライマー層、5…可撓性フィルム、6…基材、10…製造装置、11…送り出しロール、12…巻き取りロール、13〜18…搬送ロール、19…ガス供給管、20…プラズマ発生用電源、21,22…電極、23,24…磁場形成装置、25…第1成膜ロール、26…第2成膜ロール、27…空間(成膜空間)、28…成膜ガス、29…基材、31…ガラス窓、32…分光器

Claims (7)

  1. プラズマ化学気相成長法を用いて、基材と、該基材の少なくとも一方の面に形成された1層以上の無機薄膜層とを含むガスバリア性フィルムを製造する方法であって、該方法は、基材を一対の成膜ロール上に配置し、該一対の成膜ロール間に、酸素ガスを含む反応ガスと原料ガスとを供給し、該ロール間に発生させるプラズマ放電により、基材の少なくとも一方の側に無機薄膜層を形成する工程を含み、該工程の無機薄膜層形成時において、無機薄膜層の成膜部におけるプラズマ発光スペクトルを測定した際の、657nm付近のピーク強度Iに対する559nm付近のピーク強度Iの強度比(I/I)の経時変化における最大値と最小値との差を0.25以下に制御する、方法。
  2. 前記ガスバリア性フィルムは、長さ100m以上の長尺フィルムである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記工程において、プラズマの発生開始から停止までの操作を2回以上行う、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記工程において、基材の少なくとも一方の面に無機薄膜層を2層以上形成する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記無機薄膜層は、珪素原子、酸素原子及び炭素原子を少なくとも含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記無機薄膜層に含まれる珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計数に対する炭素原子の原子数比は、無機薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域において、連続的に変化する、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記基材は、可撓性フィルムと、該可撓性フィルムの少なくとも一方の側に形成された有機層とを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
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