JP2021080385A - ヒドロゲル形成組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】室温で混合するだけで作製できる自己支持性を有するヒドロゲルであって、特にべとつきの少ないヒドロゲルの提供、並びに、工業的に入手容易な原料を用いて、該ヒドロゲルを製造することができる方法の提供。【解決手段】重量平均分子量が100万乃至1000万である有機酸塩構造又は有機酸アニオン構造を有する水溶性有機高分子(A)及びケイ酸塩(B)を含む、自己支持性を有するヒドロゲルを形成することができるヒドロゲル形成組成物であって、ただし前記組成物は、重量平均分子量が200乃至2万であり、かつ耐加水分解性を有する化合物を含有しない、ヒドロゲル形成組成物及びそれから作られる自己支持性を有するヒドロゲル、並びに該ヒドロゲルの製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、分散剤を含有しないヒドロゲル形成組成物、該組成物より得られる自己支持性を有するヒドロゲル並びにその製造方法に関する。
ヒドロゲルは、水が主成分であるため生体適合性が高く、環境への負荷が低いソフトマテリアル素材という観点から、近年注目されている。
自己支持性を有する高強度ヒドロゲルとして、水に均一分散している層状粘土鉱物の共存下で(メタ)アクリルアミド誘導体の重合反応を行うことにより得られる有機無機複合ヒドロゲルが報告されている(特許文献1)。また、類似の報告例として、ポリ(メタ)アクリルアミド中にカルボン酸塩又はカルボシキアニオン構造の基を一部含有する高分子と粘土鉱物からなる有機無機複合ヒドロゲルも知られている(特許文献2)。
これらの報告例では、層状粘土鉱物の水分散液中でモノマーを重合させることで、生成する高分子と該粘土鉱物とが三次元網目構造を形成し、有機無機複合ヒドロゲルとなる。
室温で混合することで製造できる自己支持性を有する有機無機複合ヒドロゲルとして、末端にポリカチオン性の官能基を有するデンドリマー化合物と層状粘土鉱物を混合することにより得られるヒドロゲルが知られている(特許文献3)。
また、ポリアクリル酸塩と粘土鉱物からなる自立性(自己支持性)を有する乾燥粘土膜が知られており、表面保護材として検討されている(特許文献4)。
さらに、低分子量のポリアクリル酸塩を、粘土鉱物等のケイ酸塩の分散剤として配合した自己支持性を有するヒドロゲルが提案されている(特許文献5)
最近では、電解質高分子、クレイ粒子、及び分散剤を混合するだけで作製可能な有機無機複合ヒドロゲルも報告されている(非特許文献3及び4)。
特開2002−053629号公報 特開2009−270048号公報 国際公開第2011/001657号 特開2009−274924号公報 国際公開第2014/046136号
第61回高分子学会年次大会予稿集、Vol.61,No.1,p.683(2012) 第61回高分子討論会予稿集、1S11(2012)
しかし、特許文献1及び特許文献2に開示された有機無機複合ヒドロゲルでは、毒性が懸念される未反応のモノマーや、重合開始剤などの試薬がゲル中に残存する可能性がある。また、非化学製造業者が有機無機複合ヒドロゲルを製造するのは困難であり、さらに化学反応後にヒドロゲルとなるため、任意の形状にゲルを成型することも困難である。
また、特許文献3に開示されたヒドロゲルでは、該ヒドロゲルに含有されるデンドリマーが多段階の合成反応によって製造されるため、製造コストが高価になるという課題がある。
さらに、特許文献4では、中間物としてゲル状のペーストが作製されているが、該ゲル状のペーストは自立性を有するものではなく、該ゲル状のペーストがシートに塗布され乾燥後の膜において自立性を有するものである。
また、非特許文献1に基づく学会発表及び非特許文献2では、分散剤として二リン酸ナトリウム(別名:ピロリン酸ナトリウム)を使用しているが、該化合物は不安定なため、分散液の用途に応じた添加剤の添加状態や長期保存状態では、徐々に加水分解して分散剤としての機能を失い、ゲルの作製作業が困難となる。
また、低分子量のポリアクリル酸塩を分散剤として使用した特許文献5の配合では、得られたヒドロゲルにおいてべとつく場合があり、化粧品向けゲルとしては不向きである。
本発明は、室温で混合するだけで作製できる自己支持性を有するヒドロゲルであって、特にべとつきの少ないヒドロゲルの提供を目的とする。又、工業的に入手容易な原料を用いて、該ヒドロゲルを製造することができる方法の提供を目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、有機酸塩構造又は有機酸アニオン構造を有する水溶性有機高分子と、ケイ酸塩とを混合することにより、自己支持性を有するヒドロゲルが得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、第1観点として、重量平均分子量が100万乃至1000万である有機酸塩構造又は有機酸アニオン構造を有する水溶性有機高分子(A)及びケイ酸塩(B)を含む、自己支持性を有するヒドロゲルを形成することができるヒドロゲル形成組成物であって、ただし前記組成物は、重量平均分子量が200乃至2万であり、かつ耐加水分解性を有する化合物を含有しない、ヒドロゲル形成組成物に関する。
第2観点として、前記水溶性有機高分子(A)がカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造を有する水溶性有機高分子である、第1観点に記載のヒドロゲル形成組成物に関する。
第3観点として、前記水溶性有機高分子(A)が完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩である、第2観点に記載のヒドロゲル形成組成物に関する。
第4観点として、前記水溶性有機高分子(A)が重量平均分子量100万乃至1000万の完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩である、第3観点に記載のヒドロゲル形成組成物に関する。
第5観点として、前記ケイ酸塩(B)が水膨潤性ケイ酸塩粒子である、第1観点乃至第4観点のいずれか1項に記載のヒドロゲル形成組成物に関する。
第6観点として、前記ケイ酸塩(B)がスメクタイト、ベントナイト、バーミキュライト、及び雲母からなる群より選ばれる水膨潤性ケイ酸塩粒子である、第5観点に記載のヒドロゲル形成組成物に関する。
第7観点として、アルコールを含むことを特徴とする、第1観点乃至第6観点のいずれか1項に記載のヒドロゲル形成組成物に関する。
第8観点として、第1観点乃至第7観点のいずれか1項に記載のヒドロゲル形成組成物から作られる自己支持性を有するヒドロゲルに関する。
第9観点として、第1観点乃至第8観点のいずれか1項に特定される水溶性有機高分子(A)及びケイ酸塩(B)、並びに水又は含水溶媒を、高せん断力下にて混合する工程を含む、自己支持性を有するヒドロゲルの製造方法に関する。
第10観点として、前記高せん断力下にて混合する工程がホモミキサーホモジナイザー、ビーズミル、及び自転・公転ミキサーからなる群から選択される少なくとも一種の装置にて実施される、第9観点に記載の製造方法に関する。
第11観点として、前記高せん断力下にて混合する工程が2,000rpm超の回転速度にて実施される、第9観点又は第10観点に記載の方法に関する。
本発明によれば、工業的に入手容易で尚且つ化粧品や医薬部外品として利用されている安全性の高い原料を用いて混合するだけで自己支持性を有するヒドロゲルが得られる。
特に本発明によれば、手で触ったり肌に適用するなどした際においてべとつきの少ないヒロドゲルを提供することができる。
また本発明によれば、ゲル化する前の組成物を型に流し込んだり、得られたゲルを押出成型したりすることにより、任意形状のゲルを作製できる。ゲル化の際、重合反応等の共有結合形成反応が不要で、室温でもゲル化させることが可能なため、製造プロセスの観点から安全性が高いという効果がある。各成分の含量を調整することにより、透明性を有するヒドロゲルを作製できる。
また、本発明の製造方法は、水溶性有機高分子とケイ酸塩とを水又は含水溶媒とともに高せん断力下にて混合することにより、ケイ酸塩の分散剤を使用せずとも、構成成分の良好な分散性を実現し、ヒドロゲルを形成することができる。
図1は、実施例2(図1(a))及び参考例(図1(b))で得られたヒドロゲルの写真である。
従来より、ポリアクリル酸またはその金属塩は、ヒドロゲル材料に配合される粘土鉱物等のケイ酸塩の分散剤として使用され、また国際公開第2019/11524号等に開示されるように、含水貼付剤の粘着層を構成する一成分として、高い肌接着を示すことが知られている。一方、特開2009−286757号公報に開示されるように、ポリアクリル酸またはその金属塩はそれを配合した材料において、少量であっても曳糸性を発現し得、さらに乾き際に肌へのべとつきを生じさせ得ることが指摘されていた。
このように、ポリアクリル酸またはその金属塩は、分散剤としての役割や肌への付着性を高める効果をもたらし得る反面、化粧品などの用途向けの材料としては好ましくないべとつき感を与える虞がある。
こうした課題に対し、本発明者らは、ポリアクリル酸またはその金属塩、すなわち従来ケイ酸塩の分散剤として使用されてきたこれら化合物を含まないヒドロゲルの組成を検討し、それにより、従来の上記分散剤を用いたヒドロゲルと比べ、べとつきのない、あるいはべとつきの少ない、適度な肌接着性を与えるヒドロゲルとなること、そして配合成分を機械的な高せん断にて混合することにより、分散剤を使用せずとも、成分の良好な分散性を実現し、ヒドロゲルを形成できることを見出した。
本発明は、自己支持性を有するヒドロゲルを形成することができるヒドロゲル形成組成物であって、有機酸塩構造又は有機酸アニオン構造を有する水溶性有機高分子(A)、ケイ酸塩(B)を含むヒドロゲル形成組成物に関し、ただし重量平均分子量が200乃至2万であり、かつ耐加水分解性を有する化合物を含まないことを特徴とする、ヒドロゲル形成組成物に関する。
本発明のヒドロゲル形成組成物及びそれより作られるヒドロゲルは、上記成分(A)及び成分(B)の他に、本発明の所期の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、他の成分を任意に配合することができる。
[ヒドロゲル形成組成物]
<成分(A):水溶性有機高分子>
本発明の成分(A)は、有機酸塩構造又は有機酸アニオン構造を有する水溶性有機高分子である。
有機酸塩構造又は有機酸アニオン構造を有する水溶性有機高分子(A)としては、有機
高分子の側鎖として、複数のカルボキシル基、スルホニル基、及びホスホニル基等の有機酸基の塩構造又はアニオン構造を有し、水に自由に溶解する高分子が挙げられる。
そのような水溶性有機高分子(A)のうち、有機酸の塩構造を有するものとしては以下の有機酸:例えば、カルボキシル基を有するものとして、ポリ(メタ)アクリル酸、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース;スルホニル基を有するものとして、ポリスチレンスルホン酸;ホスホニル基を有するものとしてポリビニルホスホン酸等の、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、及びリチウム塩などが挙げられる。これらの中でも、好ましくは、好ましくはポリアクリル酸の塩を挙げることができる。
また有機酸アニオン構造を有するものとしては、例えば、上記有機酸又は有機酸の塩からカチオンが解離した構造を有するものが挙げられる。
なお、本明細書では、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸とメタクリル酸の両方をいう。
また、水溶性有機高分子(A)は架橋又は共重合されていてもよい。中でも分岐および化学架橋構造を持たない直鎖型構造が好ましい。
また水溶性有機高分子(A)は、有機酸構造の全てが塩構造となる完全中和物、又は有機酸構造と有機酸塩構造とが混在する部分中和物のいずれも使用でき、それらの混合物も使用できる。
前記水溶性有機高分子(A)の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレングリコール換算で100万乃至1,000万であり、より好ましくは重量平均分子量200万乃至700万である。また、上記重量平均分子量の範囲が記載された市販の水溶性有機高分子を使用することができる。
中でも本発明では、水溶性有機高分子(A)として、カルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造を有する水溶性有機高分子化合物であることが好ましい。特に完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩であることが好ましく、完全中和又は部分中和の直鎖型ポリアクリル酸塩がより好ましく、特に重量平均分子量200万乃至700万の完全中和又は部分中和された、直鎖型の非架橋型高重合ポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。
なお部分中和の中和度としては、例えば10%乃至90%であり、好ましくは30%乃至80%である。
前記水溶性有機高分子(A)の含有量は、ヒドロゲルの全質量(100質量%)に対して0.01質量%乃至20質量%、好ましくは0.1質量%乃至10質量%である。
<成分(B):ケイ酸塩>
本発明の成分(B)であるケイ酸塩は、水膨潤性ケイ酸塩粒子を好ましく用いることができる。
上記ケイ酸塩(B)としては、例えば、スメクタイト、ベントナイト、バーミキュライト、及び雲母等の水膨潤性のケイ酸塩粒子が挙げられ、水又は含水溶媒を分散媒としたコロイドを形成するものが好ましい。なお、スメクタイトとは、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等の膨潤性を有する粘土鉱物の総称である。
上記ケイ酸塩粒子の一次粒子の形状としては、円盤状、板状、球状、粒状、立方状、針状、棒状、無定形等が挙げられ、例えば直径5nm乃至1000nmの円盤状又は板状のものが好ましい。例えば、下記に例示するラポナイトXLGは、直径20nm乃至100nmの円盤状を有するケイ酸塩粒子である。
ケイ酸塩(B)の好ましい具体例としては、層状ケイ酸塩が挙げられ、市販品として容易に入手可能な例として、BYK社製のラポナイト(LAPONITE、登録商標)XLG(合成ヘクトライト)、XLS(合成ヘクトライト、分散剤としてピロリン酸ナトリウム含有)、XL21(ナトリウム・マグネシウム・フルオロシリケート)、RD(合成ヘクトライト)、RDS(合成ヘクトライト、分散剤として無機ポリリン酸塩含有)、及びS482(合成ヘクトライト、分散剤含有);片岡コープアグリ(株式会社)(旧:コープケミカル株式会社)製のルーセンタイト(登録商標)SWN(合成スメクタイト)及びSWF(合成スメクタイト)、ミクロマイカ(合成雲母)、及びソマシフ(登録商標、合成雲母);クニミネ工業株式会社製のクニピア(登録商標、モンモリロナイト)、スメクトン(登録商標)SA(合成サポナイト);株式会社ホージュン製のベンゲル(登録商標、天然ベントナイト精製品)等が挙げられる。
前記ケイ酸塩(B)の含有量は、ヒドロゲルの全質量(100質量%%)に対して0.01質量%乃至20質量%、好ましくは0.1質量%乃至15質量%である。
<その他成分:アルコール>
本発明のヒドロゲル形成組成物は、アルコールを含んでいてもよい。前記アルコールは、一価アルコールでも多価アルコールでもよい。
前記一価のアルコールとは、好ましくは水に自由に溶解する水溶性アルコールであり、より好ましくは炭素原子数1乃至8のアルコールであり、具体的には、メタノール、エタノール、2−プロパノール、i−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、1−オクタノール、イソオクタノールなどが挙げられる。
前記多価アルコールとは、二価以上のアルコールであり、グリセリン、ポリグリセリン(ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール(ペンタメチレングリコール)、1,2,6−へキサントリオール、オクチレングリコール(エトヘキサジオール)、ブチレングリコール(1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2,3−ブタンジオール等)、へキシレングリコール、1,3−プロパンジオール(トリメチレングリコール)、1,6−ヘキサンジオール(ヘキサメチレングリコール)等が挙げられ、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールが好ましい。
前記アルコールの配合量は、ヒドロゲルの全質量(100質量%)に対して0質量%乃至99質量%、好ましくは0質量%乃至60質量%である。
<その他成分>
また、本発明のヒドロゲル形成組成物には、層状ケイ酸塩の層間にインターカレートし、剥離を促進させるものとして、メタノール、エタノール、グリコール等の一価又は多価アルコール、ホルムアミド、ヒドラジン、ジメチルスルホキシド、尿素、アセトアミド、酢酸カリウム等を添加することができる。
また本発明のヒドロゲル形成組成物には、後述する特定のケイ酸塩の分散剤(重量平均分子量が200乃至2万であり、かつ耐加水分解性を有する化合物)以外に、ケイ酸塩の分散として用いられ得るその他化合物であれば、例えば、リン酸塩系分散剤、アルカリとして作用するもの、有機解膠剤等は使用することができる。
上記リン酸塩系分散剤としては、例えばオルトリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、及びエチドロン酸ナトリウム;アルカリとして作用するものとしては、例えば水酸化ナトリウム、及びヒドロキシルアミン;多価カチオンと反応し不溶
性塩又は錯塩を形成するものとして、炭酸ナトリウム、及びケイ酸ナトリウム;また有機解膠剤として、フミン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
上記水溶性有機高分子(A)、ケイ酸塩(B)の好ましい組合せとしては、ヒドロゲルの全質量(100質量%)に対して、成分(A)として重量平均分子量200万乃至700万の完全中和又は部分中和された非架橋型高重合ポリアクリル酸ナトリウム0.1質量%乃至10質量%、成分(B)として水膨潤性スメクタイト又はサポナイト0.1質量%乃至15質量%である。
<非含有成分:ケイ酸塩の分散剤>
本発明のヒドロゲル形成組成物は、成分(B)であるケイ酸塩の分散剤を含有しないものである。該分散剤は、重量平均分子量が200乃至2万であり、かつ耐加水分解性を有する化合物をいう。これらは通常、ケイ酸塩の分散性の向上や、層状ケイ酸塩を層剥離させる目的で分散剤又は解膠剤として使用されている。
本発明のヒドロゲル形成組成物に含まれない上記化合物(分散剤)としては、ポリカルボン酸塩系化合物(分散剤)として、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、アクリル酸ナトリウム/マレイン酸ナトリウム共重合体、アクリル酸アンモニウム/マレイン酸アンモニウム共重合体等;ポリアルキレングリコール系化合物(分散剤)として、ポリエチレングリコール(PEG900等)及びポリプロピレングリコール等が挙げられる。
本発明では、これら化合物を非含有成分とすることにより、べとつきの少ないヒドロゲルを提供することができる。
[ヒドロゲル及びその製造方法]
本発明のヒドロゲルは、上記ヒドロゲル形成組成物をゲル化させることにより得られる。
ヒドロゲル形成組成物を用いたゲル化は、ヒドロゲル形成組成物の必須成分のうち、一方の成分の水溶液又は水分散液と、残りの一成分若しくはその水溶液又は水分散液とを混合することによってゲル化させることができる。又、全成分の混合物に対して水を添加することによってもゲル化が可能である。またその他成分は任意の段階で、すなわち必須の一成分の水溶液又は分散液の製造時に一緒に混合したり、残りの必須成分を加える際に一緒に添加したり、あるいは必須成分とともに一緒に水に添加したり、また必須成分と水との混合物を形成後に添加することができる。
本発明では、ヒドロゲル形成組成物中の各成分、すなわち水溶性有機高分子(A)及びケイ酸塩(B)、並びに水又は含水溶媒を、高せん断力下にて混合することにより、ケイ酸塩の分散剤を使用せずとも、構成成分の良好な分散性を実現し、ヒドロゲルを形成することができる。
上記高せん断力下の混合は、例えばホモミキサー、ホモジナイザー、ビーズミル、自転・公転ミキサー等の撹拌装置や破砕装置を用いて実施することができる。また高せん断力下の混合は、例えば2,000rpm超の回転速度にて、また3,000rpm以上30,000rpm以下の回転速度にて、混合する方法が挙げられる。
混合する際の温度は、水溶液又は水分散液の凝固点乃至沸点、好ましくは−5℃乃至100℃であり、より好ましくは0℃乃至50℃である。
混合直後は強度が弱くゾル状であるが、静置することでゲル化する。静置時間は2時間乃至100時間が好ましい。静置温度は−5℃乃至100℃であり、好ましくは0℃乃至50℃である。また、混合直後のゲル化する前に型に流し込んだり、押出成型したりすることにより、任意形状のゲルを作製することができる。
ヒドロゲルの「自己支持性」という用語は、学術論文や特許文献において定義されることなく使用されるのが通例であるが、本明細書では、充分な強度を有することにより、容器等の支持体がなくてもゲルの形状を保持できる程度の硬さ(「弾性率」)や強度(「破断応力」)を有する特性を意味するものとする。
得られるヒドロゲルの強度は、例えば突刺し破断強度測定機により測定することができる。例えば、直径28mm高さ16mmの円柱状のヒドロゲルを作製し、(株)山電製クリープメーターRE2−33005Bにて測定できる。測定方法は、直径3mmの円柱状のシャフト((株)山電製プランジャー、形状:円柱、番号:No.3S、形式:P−3S)をゲル上部から1mm/秒の速度で押し当て、破断までの応力を測定する。本発明で得られるヒドロゲルの突刺し破断強度測定機による破断応力は、7kPa乃至100kPaである。
次に実施例を挙げて本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1及び実施例2:ポリアクリル酸ナトリウム及びラポナイトXLGからなるヒドロゲルの製造]
表1に従い、各種ポリアクリル酸ナトリウム(アロンビス(登録商標)MX:東亞合成(株)、重量平均分子量200万乃至300万)、アロンビス(登録商標)SX:東亞合成(株)、重量平均分子量400万乃至500万)水溶液と水を混合し、ポリアクリル酸ナトリウム水溶液を得た。得られたポリアクリル酸ナトリウム水溶液をホモミキサー(みづほ工業(株)、LR−1A)にて、5,000rpmから8,000rpmにて撹拌し、ここへラポナイト(登録商標)XLG粉末(BYK社製、合成ヘクトライト)を添加した。ラポナイトXLG粉末が目視確認で均一分散するまで前記撹拌を継続した。
撹拌終了後、得られた組成物をシャーレ90φ(住友ベークライト(株)、接着細胞用シャーレ MS−13900、90φ×20mm)に60g程度流し込み、1晩室温にて静置し、ヒドロゲルを得た。得られたゲルをシャーレから取り出し、該ゲルを手で持てるかどうか確認した。
[ヒドロゲルの突き刺し強度試験]
上記手順にて得られた撹拌終了後の組成物を、スナップカップ20mL(φ30×45mm、(株)マルエム製)に10g程度流し込み、1晩室温にて静置してヒドロゲルを形成させた後、突き刺し強度試験を実施した。
突き刺し試験は、(株)山電製クリープメーターRE2−33005Bを用い、直径3mmの円柱状のシャフト((株)山電製プランジャー、形状:円柱、番号:No.3S、形式:P−3S)をゲル上部から1mm/秒の速度で押し当て、破断までの応力を測定した。3箇所の突き刺し試験結果から平均強度(kPa)を算出した。
得られた結果を表1に示す。
Figure 2021080385
[参考例:ポリアクリル酸ナトリウム、低分子量ポリアクリル酸ナトリウム(分散剤)及びラポナイトXLGからなるヒドロゲルの製造及びヒドロゲルの突き刺し強度試験]
ポリアクリル酸ナトリウム(シグマアルドリッチ社、447013−100G、重量平均分子量5,100)18gを水264グラムに溶解した。そこへラポナイト(登録商標)XLG粉末 18gを添加し、均一になるまで撹拌し、低分子量のポリアクリル酸ナトリウムを分散剤として使用したラポナイトXLG分散液を調製した。
別途、高分子量のポリアクリル酸ナトリウム水溶液:1%アロンビス(登録商標)MX(重量平均分子量200万乃至300万)水溶液100gに対して、前述のラポナイトXLG分散液100gを添加した。添加後、目視で均一になるまでメカニカルスターラーにて200rpmで撹拌を継続した。
撹拌終了後、得られた組成物をシャーレ90φ(住友ベークライト(株)、接着細胞用シャーレ MS−13900、90φ×20mm)に60g程度流し込み、1晩室温にて静置し、ヒドロゲルを得た。得られたゲルをシャーレから取り出し、該ゲルを手で持てるかどうか確認した。
また、上記手順にて得られた撹拌終了後の組成物を、スナップカップ20mL(φ30×45mm、(株)マルエム製)に10g程度流し込み、1晩室温にて静置してヒドロゲルを形成させ、前述と同様の手順にて後突き刺し強度試験を実施した(N=3)。
1晩静置したサンプルは手で持てる程度の強度を有しており、平均強度は5.8kPaであった。
[使用感試験]
実施例2及び参考例で調製した組成物を、アズノールシャーレφ40×13.5mm(アズワン(株)製)に流し込み、1晩室温に静置してヒドロゲルを形成させた。
得られたヒドロゲルについて、ヒトの皮膚に対するべとつきと水々しさの使用感比較を行った(モニター3人)。
試験時のヒドロゲルの状態写真を図1((a)実施例2、(b)参考例)に示す。図1に示すように、参考例のヒドロゲル(図1(b))はべとついたゲルとなり、これと比べ、実施例2のヒドロゲル(図1(a))は肌接着性を有する使用感が得られ、参考例のゲルよりもべとつきが抑えられたゲルを得ることができた。

Claims (11)

  1. 重量平均分子量が100万乃至1000万である有機酸塩構造又は有機酸アニオン構造を有する水溶性有機高分子(A)及びケイ酸塩(B)を含む、自己支持性を有するヒドロゲルを形成することができるヒドロゲル形成組成物であって、
    ただし前記組成物は、重量平均分子量が200乃至2万であり、かつ耐加水分解性を有する化合物を含有しない、
    ヒドロゲル形成組成物。
  2. 前記水溶性有機高分子(A)がカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造を有する水溶性有機高分子である、請求項1に記載のヒドロゲル形成組成物。
  3. 前記水溶性有機高分子(A)が完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩である、請求項2に記載のヒドロゲル形成組成物。
  4. 前記水溶性有機高分子(A)が重量平均分子量100万乃至1000万の完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩である、請求項3に記載のヒドロゲル形成組成物。
  5. 前記ケイ酸塩(B)が水膨潤性ケイ酸塩粒子である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のヒドロゲル形成組成物。
  6. 前記ケイ酸塩(B)がスメクタイト、ベントナイト、バーミキュライト、及び雲母からなる群より選ばれる水膨潤性ケイ酸塩粒子である、請求項5に記載のヒドロゲル形成組成物。
  7. アルコールを含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のヒドロゲル形成組成物。
  8. 請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のヒドロゲル形成組成物から作られる自己支持性を有するヒドロゲル。
  9. 請求項1乃至請求項8のいずれか1項に特定される水溶性有機高分子(A)及びケイ酸塩(B)、並びに水又は含水溶媒を、高せん断力下にて混合する工程を含む、自己支持性を有するヒドロゲルの製造方法。
  10. 前記高せん断力下にて混合する工程がホモミキサー、ホモジナイザー、ビーズミル、及び自転・公転ミキサーからなる群から選択される少なくとも一種の装置にて実施される、請求項9に記載の製造方法。
  11. 前記高せん断力下にて混合する工程が2,000rpm超の回転速度にて実施される、請求項9又は請求項10に記載の方法。
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