JP2021080368A - 蓄熱材組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数の相変化材料を粒子化することなく混合しても、高い蓄熱効果が得られて冷媒の温度上昇を効果的に抑制できること。【解決手段】蓄熱材組成物は、融点差が20℃以上、40℃以下であるパラフィンワックス及び高級アルコールの混合物であり、好ましくは、融点が65℃以上、85℃以下の範囲内である高融点パラフィンワックスと、高融点パラフィンワックスよりも融点が20℃〜40℃低く炭素数が13以上、18以下の高級アルコールとを混合したものである。【選択図】図2

Description

本発明は、例えば、モータ、二次電池のバッテリ、燃料電池等の発熱源を冷却するための冷却回路中の冷媒の温度制御に利用できる蓄熱材組成物に関するもので、特に、その冷媒の昇温抑制に好適な蓄熱材組成物に関するものである。
自動車等の車両に搭載されるモータやバッテリ等の電装部品、自動車部品では、その出力の向上に伴い発熱量が増大している。このため、発熱量の増大に対応した冷却性能の向上が重要な課題となっている。特に、モータ、二次電池のバッテリ、燃料電池等では、その発熱量が大きくなり過ぎると、破損や劣化が生じて性能が低下するため、放熱対策が急務となっている。
即ち、発熱源であるモータ、二次電池のバッテリ、燃料電池等では、その周囲に冷却回路が形成され(例えば、二次電池や燃料電池等であればその筐体内、即ち、パック内やスタック内に形成され)、その冷却回路に冷媒を通流する冷媒方式で冷却がなされているところ、モータ、二次電池、燃料電池等の発熱量が大きくなると、特に高負荷時、急速充電時等に高温状態となるから、冷媒の急激な昇温により冷却が間に合わなくなり、モータ、二次電池、燃料電池等のオーバーヒートによる性能低下、動作不良が生じる恐れがある。殊に、温度が高い夏場では、短時間の負荷でも直ぐに温度が上昇し、損傷、焼損の恐れも生じる。このため、温度をより高度に制御できる冷却技術が求められている。
これに対し、高負荷時、急速充電時の一時的な高発熱に合わせて冷媒方式による冷却システムを高い冷却能に設計することで、例えば、冷却回路の増大や加圧冷媒の使用により、或いは、冷却ファン、ペルチェ素子、ヒートパイプ、ヒートシンク等の熱交換器等の複数の組み合わせ等により、冷却能を向上させることも可能であるが、そのような高性能な冷却回路の設計では、熱負荷の少ない通常状態のときでも、過剰に冷却してしまう過剰品質となり、コスト増を招くばかりか、冷却システムの肥大化、大型化、複雑化により、近年の自動車部品の小型化の要求、トレンドに対応できないものとなる。また、それらは電力消費の増大を招くことにもなる。
そこで、本発明者らは、既存の冷却システムを肥大化等させることなく、高負荷時や急速充電時等の高発熱時でも効果的な冷却を可能とする冷却システムを追求しているところ、モータ、バッテリ、燃料電池等の発熱源から冷却回路中の冷媒に伝わった熱エネルギを蓄熱材に吸熱、蓄熱させることを発想した。
ここで、蓄熱材としては、化学蓄熱材、顕熱蓄熱材、潜熱蓄熱材等が存在するが、中でも、蓄熱性(蓄熱密度等)、安定性、安全性、コスト、耐久性等の観点から、材料の相が特定温度で変化するときの潜熱を有する潜熱型(相変化型)の蓄熱材料が多く採用されている。
ところが、このような潜熱蓄熱材料では、出力温度(相転移温度)が一定で蓄熱温度域が狭域であるから、単一材料の選択では、選択した潜熱蓄熱材料の固有の融点(相転移点)付近における蓄熱に限定される。
したがって、単一材料の選択のみでは、その固有の融点付近よりも低温環境下では吸熱、蓄熱のメリットが生じない。更に、発熱源の種類、その周囲構造等に応じて最適な冷却温度が相違する各種冷却システムへの対応性に乏しく、幅広に対応できない。即ち、比較的高い融点の潜熱蓄熱材料を選択した際には、その潜熱蓄熱材料が相変化するまでに冷媒の昇温が高くなるから、冷却回路や、発熱源及びその周囲に対する熱負荷が高いものとなる。比較的低い融点の潜熱蓄熱材料を選択した際には、冷媒の急激な温度上昇では蓄熱容量がすぐに限界を超えて、効果的に冷媒の昇温を抑制的できない可能性がある。
一方で、従来、融点が異なる複数種の潜熱蓄熱材料を混合すると、蓄熱量が著しく減少する問題があった。このときの示差走査熱量計の測定によるDSC曲線を見ると、吸熱ピークが広がって相変化の温度範囲が広くなっていることから、複数種の潜熱蓄熱材料を併用した場合には、蓄熱分散または蓄熱損失が生じ、或いは、材料同士の化学反応等により蓄熱機能が低下、失活し、それ故に蓄熱量が大きく低下しているものと予測できる。
ここで、複数種の潜熱蓄熱材料を混合した技術として、特許文献1において、融点が異なる複数種の有機系相転移材料からなり疎水性の材料により表面が被覆された複数種のゲルボールを分散媒中に分散させたことにより、複数の相移転温度を備えるエマルション型蓄熱を開示している。この特許文献1の技術においては、相転移材料を粒状のゲルボール化し、かつ、そのゲルボール表面を疎水材料で被覆することにより、エマルジョン型の蓄熱材として、複数の相転移温度を備えるものとしている。
しかしながら、特許文献1の技術では、相転移材料のゲルボール化及び表面処理を要することで、製造に手間を要し、また、高コストとなる。更に、ゲルボール化及び表面処理により全体的な蓄熱量は低くなることが予測される。
同様に、相変化材料をマイクロカプセル化することでも、複数の相変化材料を組み合わせたときの蓄熱機能の低下、失活を回避できる可能性も皆無ではないが、やはり、カプセル殻の存在により、また、カプセル内で相変化材が充填されない空隙部分により、全体的な蓄熱量は低くなることが予測される。また、マイクロカプセル化には、カプセルや架橋剤等を必要とし製造工程も複雑化するから、コスト高になる。
更に、蓄熱材に関し、所望の相変化温度に制御可能な技術として、特許文献2及び特許文献3がある。
特許文献2は、パラフィンワックスに対し、炭素数10以上の脂肪酸または(及び)高級アルコールが10〜70重量%、これらパラフィンワックス、脂肪酸または(及び)高級アルコール全体に対して炭素数10以上のアルキル置換脂肪酸エステルを5〜50重量%とした蓄熱材組成物を開示するものである。
また、特許文献3は、炭素数14の高級アルコールおよびパラフィンワックスの混合物を主成分とし、該混合物中の炭素数14の高級アルコールの重量比率が75〜95重量%であり、且つ、示差走査型熱量計(DSC)により測定されたDSC曲線において、実質的に単一の融解ピークを有している蓄熱材用組成物を開示するものである。
特開2019−038975号公報 特開平5−39479号公報 特開2016−14088号公報
これら特許文献2及び特許文献3の技術は、何れもパラフィンワックスに所定の高級アルコールを混合することで所望温度での蓄熱設計を可能とするものであるが、何れも、示差走査熱量計の測定によるDSC曲線において、融解ピーク数が1本で、連続した単一の温度域に融解ピークを有し、特定の単一の温度帯の蓄熱である。このため、急激な昇温条件では、蓄熱容量がすぐに限界を超えて、効果的に冷媒の昇温を抑制的できない可能性がある。また、発熱源の種類、その周囲構造等に応じた温度設計とされる各種冷却システムへの汎用性に劣る。
そこで、本発明は、複数の相変化材料を粒子化することなく混合しても、高い蓄熱効果が得られて冷媒の温度上昇を効果的に抑制できる蓄熱材組成物の提供を課題とするものである。
請求項1の発明の蓄熱材組成物は、融点差が20℃以上、40℃以下、好ましくは、22℃以上、35℃以下、より好ましくは、24℃以上、30℃以下の範囲内であるパラフィンワックスと高級アルコールの混合物からなるものである。
上記パラフィンワックスは、好ましくは、常温で固体(固形)のパラフィン化合物である。ここで、上記パラフィン化合物とは、一般式Cn2n+2(nは限定されない)で表される脂肪族飽和炭化水素の総称であり、アルカン、メタン系炭化水素とも呼称されるものである。例えば、石油、潤滑油等に含まれ分留、精製によって取り出されるものであり、分留、精製の程度を問わずにノルマルパラフィン系及びイソパラフィン系を含む広義に捉えられるものであるが、ここには、同じ石油から分留され炭化水素を含みカーボン等を含有する黒褐色の重油、アスファルトは含まれない。潜熱量からすると、好ましくは、分子内の全ての炭素原子が直鎖構造の飽和炭化水素であり炭素骨格が枝分かれした側鎖を有さないノルマルパラフィン(n−パラフィン)である。より好ましくは、炭素数が偶数の2n(nは自然数から選択される1つの数)のノルマルパラフィンである。
上記高級アルコールは、好ましくは、常温で固体(固形)状の高級飽和脂肪族アルコールであり、その融点(相転移点)が、前記パラフィンワックスの融点よりも20℃〜40℃、より好ましくは、22℃〜35℃、更に好ましくは、24℃〜30℃の範囲内で低いものまたは高いものであればよい。換言すると、前記パラフィンワックスは、その融点が高級アルコールの融点よりも20℃〜40℃、より好ましくは、22℃〜35℃、更に好ましくは、24℃〜30℃の範囲内で高いまたは低いものである。
そして、これらパラフィン及び高級アルコールは、固相から液相へと相変化(融解)する際の潜熱により蓄熱する潜熱蓄熱材(固液相転移型相変化材)として機能するものである。
請求項2の発明の蓄熱材組成物の前記パラフィンワックスは、その融点(相転移点)が65℃以上、85℃以下、より好ましくは、70℃以上、80℃以下の範囲内であり、前記高級アルコールの融点よりも高いものである。
請求項3の発明の蓄熱材組成物の前記パラフィンワックスは、n−ヘキサトリアコンタン(n−C3674)が主成分であるものであり、好ましくは、純度80%以上の高純度精製のものである。
請求項4の発明の蓄熱材組成物の前記高級アルコールは、その炭素数が13以上、18以下、より好ましくは、14以上、18以下の高級脂肪族アルコールである。好ましくは、末端炭素に1つのヒドロキシ基を有する高級飽和脂肪族アルコールで、CH3(CH2mOHで表される脂肪族アルコールのうち、mが13以上、17以下のものである。更に好ましくは、融点が35℃以上、60℃以下の範囲内のものであり、例えば、ミリスチルアルコール、1−ヘキサデカノール、ステアリルアルコールを使用できる。
請求項5の発明の蓄熱材組成物の前記高級アルコールは、1−ヘキサデカノール(セタノール、セチルアルコール、パルミチルアルコールとも称される)であるものである。
請求項6の発明の蓄熱材組成物は、前記パラフィンワックス及び前記高級アルコールのうちの高融点側の蓄熱材(前記パラフィンワックスまたは前記高級アルコール)100質量部に対し、低融点側の蓄熱材(前記高級アルコールまたは前記パラフィンワックス)が、好ましくは、80質量部以上、550質量部以下、より好ましくは、100質量部以上、500質量部以下、更に好ましくは、300質量部以上、500質量部以下の範囲内の配合であるものである。なお、当該配合は、パラフィンワックス及び高級アルコールの固体(固形)量での配合である。
請求項7の発明の蓄熱材組成物は、前記パラフィンワックスと前記高級アルコールの合計量を100質量部に対し、前記パラフィンワックス及び前記高級アルコールのうちの高融点側の蓄熱材(前記パラフィンワックスまたは前記高級アルコール)が、好ましくは、10質量部以上、60質量部、より好ましくは、10質量部以上、55質量部以下、更に好ましくは、10質量部以上、30質量部以下の範囲内であり、前記低融点側の蓄熱材(前記高級アルコールまたは前記パラフィンワックス)が、好ましくは、40質量部以上、90質量部以下、より好ましくは、45質量部以上、90質量部以下、更に好ましくは、70質量部以上、90質量部以下の範囲内である。なお、当該配合は、高融点パラフィンワックス及び高級アルコールの固体(固形)量での配合である。
請求項8の発明の蓄熱材組成物は、更に、固−固相転移型相変化材を含有するものである。
上記固−固相転移型相変化材(固相相転移型相変化材)としては、例えば、柔粘性結晶を有し低温側結晶から高温側結晶へと相転移する、即ち、固相から固相への一次相転移すするトリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコールや、バナジウム、バリウム等の金属酸化物(酸化バナジウム、酸化チタン、酸化バリウム系等)や、硫化バナジウム等が使用できる。
請求項9の発明の蓄熱材組成物の前記固−固相転移型相変化材は、トリメチロールエタン(C5123)であるものである。
請求項10の発明の蓄熱材組成物の前記固−固相転移型相変化材は、前記高融点パラフィンワックスと前記高級アルコールの合計量を100質量部に対し、好ましくは、5質量部以上、95質量部以下、より好ましくは、10質量部以上、90質量部以下、更に好ましくは、30質量部以上、85質量部以下の範囲内で配合されるものである。
請求項11の発明の蓄熱材組成物は、更に、前記パラフィンワックス及び前記高級アルコールよりも融点が低い低融点パラフィンワックスを含有するものである。
上記低融点パラフィンワックスは、好ましくは、常温で固体(固形)のパラフィン化合物であり、より好ましくは、融点(相転移点)が35℃以上、55℃以下、更に好ましくは、40℃以上、50℃以下の範囲内であり、炭素数が偶数の2n(nは自然数から選択される1つの数)のノルマルパラフィン化合物である。この低融点パラフィンワックスの配合量は、前記高融点パラフィンワックス、前記高級アルコール及び前記低融点パラフィンワックスの合計量100質量部に対し、好ましくは、3質量部以上、50質量部以下の範囲内で配合されるものである。
請求項1の発明に係る蓄熱材組成物によれば、融点差が20℃以上、40℃以下の範囲内であるパラフィンワックス及び高級アルコールを含有する。
融点差が20℃以上、40℃以下の範囲内であるパラフィンワックス及び高級アルコールの組み合わせであれば、マイクロカプセル化等として粒子化することなく混合しても、パラフィンワックスと高級アルコールの蓄熱機能が失活することなく、パラフィンワックス及び高級アルコールの各潜熱量が維持される。即ち、示差走査熱量測定法(DSC法)による測定したDSC曲線を見ると、吸熱ピークが重複した広がりとならずに、複数のピークを有し、パラフィンワックスと高級アルコールの各々が連続しない異なる温度域で相変化することで、複数の温度域で蓄熱効果を発揮する。特に、このような融点差があるパラフィンワックスと高級アルコールとの混合では、パラフィンワックスと高級アルコールの各々が連続しない異なる温度域で相変化するために、昇温に伴いパラフィンワックスと高級アルコールの固液の2相が共存することになるから、高融点側の蓄熱材への熱移動も良好にできる。よって、全体として高い蓄熱効果を発揮できて、発熱源やその周囲を冷却するための冷媒の熱エネルギの吸熱、蓄熱効果が高く、冷媒の温度上昇を効果的に抑制できる。
請求項2の発明の蓄熱材組成物によれば、前記パラフィンワックスは、その融点(相転移点)が65℃以上、85℃以下の範囲内であり、前記高級アルコールの融点よりも高いものであるから、請求項1に記載の効果に加えて、例えば、100℃前後を上限温度に設定される冷媒の昇温抑制に好適でそのような冷媒に対し高い昇温抑制効果を発揮できる。
請求項3の発明に係る蓄熱材組成物によれば、前記パラフィンワックスは、n−ヘキサトリアコンタン(n−C3674)が主成分であるから、高級アルコールと混合しても、固相状態及び液相状態で共に化学的に安定で高い潜熱量を有し、高い蓄熱効果を発揮する。よって、請求項1または請求項2に記載の効果に加えて、例えば、100℃前後を上限温度と設定される冷媒の昇温抑制に好適で、そのような冷媒に対し高い昇温抑制効果が安定して得られる。
請求項4の発明に係る蓄熱材組成物によれば、前記高級アルコールは炭素数が13以上、18以下の脂肪族アルコールであるから、低コストで、純度が高いものが得られる。よって、請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の効果に加えて、安定した高い蓄熱効果により、冷媒の高い昇温抑制効果を安定して得られる。より好ましくは、融点が35℃以上、60℃以下のものであれば、熱負荷のない通常状態では相変化が生じ難いことで、繰り返しの相変化による劣化、即ち、潜熱量の低下が生じ難いから、長期間の安定した冷媒の昇温抑制効果が得られる。
請求項5の発明に係る蓄熱材組成物によれば、前記高級アルコールは1−ヘキサデカノールであるから、前記パラフィンワックスと混合しても、固相状態及び液相状態で共に化学的に安定で、高い潜熱量を有し、高い蓄熱効果を発揮する。よって、請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の効果に加えて、冷媒の高い昇温抑制効果がより安定して得られる。また、熱負荷の少ない状態では相変化が生じ難いことで、繰り返しの相変化による劣化、即ち、潜熱量の低下が生じ難いから、より長期間安定した冷媒の昇温抑制効果が得られる。
請求項6の発明に係る蓄熱材組成物によれば、前記高融点パラフィンワックスと前記高級アルコールの配合量は、前記高融点パラフィンワックスと前記高級アルコールのうち高融点側の蓄熱材を100質量部に対し、低融点側の蓄熱材が、好ましくは、80〜550質量部の範囲内である。当該範囲内であれば、昇温に伴う低融点側蓄熱材の液相と高融点側の蓄熱材の固相の共存バランスによる高融点側蓄熱材への効果的な熱移動を可能とし、請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載の効果に加えて、冷媒の昇温の抑制、緩和の高い効果を得ることができる。
特に、高融点側の蓄熱材100質量部に対し、低融点側の蓄熱材が、より好ましくは、100〜500質量部以下の範囲内、更に好ましくは、300〜500質量部以下の範囲内であれば、パラフィンワックスまたは高級アルコールを単独のときよりも冷媒の昇温抑制効果の向上を可能とする。
請求項7の発明に係る蓄熱材組成物によれば、前記高融点パラフィンワックスと前記高級アルコールの合計量を100質量部に対し、前記高融点パラフィンワックスと前記高級アルコールのうち高融点側の蓄熱材が、好ましくは、10〜60質量部の範囲内、低融点側の蓄熱材が、好ましくは、40〜90質量部の範囲内である。当該範囲内であれば、昇温に伴う低融点側蓄熱材の液相と高融点側の蓄熱材の固相の共存バランスによる高融点側蓄熱材への効果的な熱移動を可能とし、請求項1乃至請求項6の何れか1つに記載の効果に加えて、冷媒の昇温の抑制、緩和のより高い効果を得ることができる。
特に、前記高融点パラフィンワックスと前記高級アルコールの合計量を100質量部に対し、高融点側の蓄熱材が、より好ましくは、10〜55質量部の範囲内、更に好ましくは、10〜30質量部の範囲内、低融点側の蓄熱材が、より好ましくは、45〜90質量部の範囲内、更に好ましくは、70〜90質量部の範囲内あれば、パラフィンワックスまたは高級アルコールを単独のときよりも冷媒の昇温抑制効果の向上を可能とする。
請求項8の発明に係る蓄熱材組成物によれば、更に、固−固相転移型相変化材を含有するものであるから、請求項1乃至請求項7の何れか1つに記載の効果に加えて、相変化による体積変化の増大を相対的に低減可能とする。
請求項9の発明の蓄熱材組成物によれば、前記固−固相転移型相変化材は、トリメチロールエタン(C5123)であるから、高級アルコール及びパラフィンワックスと混合しても、化学的に安定であり、繰り返しの使用による劣化、即ち、潜熱量の低下も生じ難い。よって、請求項8に記載の効果に加えて、固−固相転移型相変化材による安定した蓄熱効果を発揮できる。また、トリメチロールエタン(C5123)の固相転移点からして、100℃前後を上限温度と設定される冷媒の昇温抑制に好適で、そのような冷媒に対する昇温抑制効果の向上も可能とする。
請求項10の発明の蓄熱材組成物によれば、前記固−固相転移型相変化材は、前記パラフィンワックスと前記高級アルコールの合計量を100質量部に対し、好ましくは、5〜95質量部の範囲内で配合されるから、請求項8または請求項9に記載の効果に加えて、冷媒の昇温抑制効果の向上を可能とする。
請求項11の発明の蓄熱材組成物によれば、更に、前記パラフィンワックス及び前記高級アルコールよりも融点が低い低融点パラフィンワックスを含有するものであるから、請求項1乃至請求項10の何れか1つに記載の効果に加えて、より低温側から蓄熱効果が得られる。
図1は本実施の形態の蓄熱材組成物による冷媒の昇温抑制効果を評価するための評価用試験装置の説明図である。 図2は本実施の形態の実施例1に係る蓄熱材組成物について示差走査熱量測定法(DSC法)で測定したDSC曲線のグラフである。 図3は本実施の形態の実施例2に係る蓄熱材組成物について示差走査熱量測定法(DSC法)で測定したDSC曲線のグラフである。 図4は本実施の形態の実施例3に係る蓄熱材組成物について示差走査熱量測定法(DSC法)で測定したDSC曲線のグラフである。 図5は本実施の形態の実施例4に係る蓄熱材組成物について示差走査熱量測定法(DSC法)で測定したDSC曲線のグラフである。 図6は本実施の形態の実施例5に係る蓄熱材組成物について示差走査熱量測定法(DSC法)で測定したDSC曲線のグラフである。 図7は本実施の形態の実施例6に係る蓄熱材組成物について示差走査熱量測定法(DSC法)で測定したDSC曲線のグラフである。 図8は参考例1の相変化材について示差走査熱量測定法(DSC法)で測定したDSC曲線のグラフである。 図9は参考例2の相変化材について示差走査熱量測定法(DSC法)で測定したDSC曲線のグラフである。 図10は参考例3の相変化材について示差走査熱量測定法(DSC法)で測定したDSC曲線のグラフである。 図11は参考例4の相変化材について示差走査熱量測定法(DSC法)で測定したDSC曲線のグラフである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、実施の形態において、表1の同一欄に記載の数値は、数量の大きさを示すものであり、基本的に材料に違いはないので、ここでは重複する説明を省略する。
本発明者らは、モータ、燃料電池、バッテリ等の発熱源を冷却するための冷却システムを肥大化させることなく、高負荷時、急速充電時等の一時的な高発熱時でも効果的な冷却を可能とするために、発熱源を冷却する冷却システムに用いられる冷媒の熱を蓄熱材に吸熱、蓄熱させることを発想し、冷媒の熱を蓄熱材に吸熱、蓄熱させる技術について鋭意実験研究を行ったところ、融点差を20℃以上、40℃以下としたパラフィンワックスと高級アルコールの混合物によれば、それに冷媒の熱を吸熱、蓄熱させて発熱源が高発熱したときでも冷媒の急激な昇温を抑制、緩和できることを見出した。
即ち、融点が20℃以上、40℃以下で相違するパラフィンワックス及び高級アルコールの組み合わせでは、パラフィンワックスや高級アルコールをマイクロカプセルに密封する等の粒子化しなくとも、それらの素材を混合するだけで、高い吸熱、蓄熱効果が得られ、冷媒の高い昇温抑制効果が得られた。
この理由については必ずしも明らかではないが、融点差を20℃以上、40℃以下としたパラフィンワックスと高級アルコールの組み合わせでは、パラフィンワックスと高級アルコールの蓄熱性能が失活することなく、また、パラフィンワックスと高級アルコールを混合しても蓄熱分散、損失等が生じることなくパラフィンワックス及び高級アルコールの各固有の高い潜熱量が維持されたものと推測できる。即ち、所定の融点差のあるパラフィンワックスと高級アルコールの混合物について、その示差走査熱量測定法(DSC法)により得られたDSC曲線を見ると、ブロードな単一の吸熱(融解)ピーク(ピークが重複してブロードどなった曲線)とならずに、吸熱ピークが複数(ダブルピーク)のDSC曲線となることから、蓄熱分散、損失等が生じ難く、パラフィンワックスと高級アルコールの本来有する高い蓄熱量が十分に生かされて高い蓄熱効果を発揮できたものと推測される。更に、融点差を20℃以上、40℃以下としたパラフィンワックスと高級アルコールの組み合わせでは、昇温で高融点側の蓄熱材の固相(固体、粉末)及び低融点側の蓄熱材の液相(液体)の複数相の共存状態が生じ、そのような複数相の共存バランスで、蓄熱材への熱の伝わりが良く、また、蓄熱損失等も生じ難くて、冷媒の昇温抑制効果が高くなるとも推測できる。
そして、このように融点差を20℃以上、40℃以下としたパラフィンワックスと高級アルコールの組み合わせでは、パラフィンワックスと高級アルコールの各固有の融点付近での相変化に対応した2点の相転移点(相転移温度)を有し、複数の異なる温度域で融解ピーク(ダブルピーク)を有するDSC曲線となり、パラフィンワックスと高級アルコールのそれぞれが互いに離れた(不連続な)異なる温度域で相変化して蓄熱、吸熱するものである。即ち、単一の温度域での融解ピークを有するものと比べ、吸熱、蓄熱の効果が特定の温度域に限定されずに、複数の温度域で蓄熱効果を発揮する。したがって、低融点側の蓄熱材によって低い温度帯での昇温でも蓄熱効果が得られることで、冷媒を低温に維持できるから、発熱源やその周囲の熱負荷を少なくできる。更に、発熱源の急激な昇温による熱エネルギの急激な増大に対しても、低温側から高温側にかけての段階的な蓄熱特性により、蓄熱容量が直ぐに限界を超えることはなく、冷媒の昇温抑制に効果的である。
こうして、本発明の実施の形態に係る蓄熱材組成物は、パラフィンワックスと高級アルコールを必須成分として含有し、それらの融点差が20℃以上、40℃以下、好ましくは、22℃以上、35℃以下、より好ましくは、24℃以上、30℃以下であるものである。
特に好ましくは、融点が65℃以上、85℃以下のパラフィンワックスと、炭素数が13以上、18以下の高級アルコールの組み合わせである。当該組み合わせであれば、低コストで、かつ、所望温度域での高い蓄熱特性を安定して得られる。即ち、融点が65℃以上、85℃以下のパラフィンワックスと、炭素数が13以上、18以下の高級アルコールは、何れも低コストで純度が高いものが得られるため、融解挙動のばらつきが少ないものとなり、安定した相転移温度及び高い潜熱量が得られることで、安定して高い昇温抑制効果が得られる。
融点が65℃以上、85℃以下のパラフィンワックスとしては、例えば、トリアコンタン(C3062)、ヘントリアコンタン(C3164)、ドトリアコンタン(C3266)、トリトリアコンタン(C3368)、テトラトリアコンタン(C3470)、ペンタトリアコンタン(C3572)、ヘキサトリアコンタン(C3674)、ヘプタトリアコンタン(C3776)、オクタトリアコンタン(C3878)、ノナトリアコンタン(C3980)、テトラコンタン(C4082)、ヘンテトラコンタン(C4184)等のパラフィンが含まれる。
また、炭素数が13以上、18以下の高級アルコールとしては、価格や入手の容易さ等を考慮すると、一価アルコールであって、直鎖型の1級アルコールが一般的であるが、分岐アルコールであってもよい。例えば、トリデシルアルコール(トリデカノール)、ミリスチルアルコール(1−テトラデカノール)、ペンタデシルアルコール(1−ペンタデカノール)、セタノール(1−ヘキサデカノール)、1−ヘプタデカノール、ステアリルアルコール(1−オクタデカノール)、イソステアリルアルコール等の飽和高級アルコールを使用できる。
ここで、モータ、燃料電池、バッテリ等の発熱源の冷却システム(空冷式、油冷式、水冷式等)においては、例えば、100℃前後の制御を限界として冷却システムの設計がなされている実情からして、余裕をみて、例えば、90℃〜95℃を冷媒の昇温限界温度と想定したときに、その冷媒の昇温抑制に効果的な蓄熱材組成物の温度設計として、好ましくは、融点が65℃以上、85℃以下、より好ましくは、70℃以上、80℃以下のパラフィンワックスと、好ましくは、炭素数が13以上、18以下、より好ましくは、炭素数が14以上、17以下で、好ましくは、融点が35℃以上、60℃以下、より好ましくは、融点が40℃以上、55℃以下の高級アルコールの組み合わせである。より好適には、融点が約75℃〜79℃の範囲内となるヘキサトリアコンタン(C3674)を主成分とするパラフィンワックスと、融点が約49℃〜52℃の範囲内となる炭素数16の1級アルコールで高級飽和脂肪族アルコールである1−ヘキサデカノール(セタノール、セチルアルコール、パミチルアルコールとも称される)の組み合わせである。
それらの組み合わせでは、互いの混合によっても、各蓄熱性能が失活、低下することなく、各固有の高い潜熱量が維持され、更に、昇温に伴う固相(固体、粉末)及び液相(液体)の複数相の好適な共存バランスによる蓄熱材への熱の伝わりやすさにより、冷媒が90℃〜95℃に達するまでの昇温速度の緩和効果を高くできる。また、繰り返しの使用によっても冷媒の昇温抑制効果が低下することなく、長期間、冷媒の高い昇温抑制効果が安定して得られる。
これら所定の融点差のパラフィンワックス及び高級アルコールの配合割合は、特に限定されないが、好ましくは、パラフィンワックス及び高級アルコールのうちの高融点側蓄熱材の配合を100質量部としたとき、パラフィンワックス及び高級アルコールのうちの低融点側の蓄熱材の配合を80質量部以上、500質量部以下、より好ましくは、100質量部以上、500質量部以下、更に好ましくは、300質量部以上、500質量部以下の範囲内とされる。
また、パラフィンワックス及び高級アルコールの合計量100質量部に対しては、それらのうちの高融点側の蓄熱材の配合が、好ましくは、10質量部以上、60質量部以下、より好ましくは、10質量部以上、55質量部以下、更に好ましくは、10質量部以上、30質量部以下の範囲内、低融点側の蓄熱材の配合が、好ましくは、40質量部以上、90質量部以下、より好ましくは、45質量部以上、90質量部以下、更に好ましくは、70質量部以上、90質量部以下の範囲内である。
当該配合により、昇温に伴う低融点側蓄熱材の液相と高融点側蓄熱材の固相との共存バランスによる蓄熱材への効果的な熱移動を可能とし、冷媒の昇温の抑制、緩和の高い効果を得ることができる。
更に、本実施の形態に係る蓄熱材組成物においては、融点差を20℃以上、40℃以下としたパラフィンワックス及び高級アルコールに加え、他の潜熱蓄熱材(相変化材料、相転移材料)を混合することも可能であり、好ましくは、パラフィンワックスの固有の融点及び高級アルコールの固有の融点よりも高い温度または低い温度で相変化する潜熱蓄熱材の使用である。
より好ましくは、パラフィンワックス及び高級アルコールの各固有の融点よりも高い温度の相変化点(相変化温度)を有する潜熱蓄熱材を混合する場合には、高融点側のパラフィンワックスまたは高級アルコールとは異種の潜熱蓄熱材を混合する。また、パラフィンワックス及び高級アルコールの各固有の融点よりも低い温度の相変化点(相変化温度)を有する潜熱蓄熱材を混合する場合には、低融点側のパラフィンワックスまたは高級アルコールとは異種の潜熱蓄熱材を混合する。これにより、他の潜熱蓄熱材を混合したときでも、その潜熱蓄熱材が、相変化点差が20℃以上、40℃以下のパラフィンワックス及び高級アルコールと相溶し難く、各成分の蓄熱量の低下が抑制される。加えて、より幅広い温度域での蓄熱により、冷媒への適用範囲も広くなる。更には、複数の相(固相、液相)の共存バランスによる蓄熱材への熱移動の向上を可能として冷媒の昇温抑制、緩和効果の向上も可能とする。
融点差を20℃以上、40℃以下としたパラフィンワックス及び高級アルコールとは別の潜熱蓄熱材(相変化材料、相転移材料)の一例としては、固−固相転移型相変化材(以下、単に、固−固相転移材とする)を使用できる。固−固相転移材による蓄熱は、固相間の相転移に基づく蓄熱、即ち、固相から固相へと変化する際の潜熱による蓄熱であり、一次相転移であるから体積変化が殆ど生じない。このため、パラフィンワックスや高級アルコールの配合量を減らして固−固相転移材を配合し、それにも蓄熱させることで、パラフィンワックスや高級アルコールが固相から液相へ相変化するときの漏れ出しや染み出し等の懸念を軽減できる。
本実施の形態に係る蓄熱材組成物で用いる固−固相転移材としては、例えば、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコールや、バナジウム、バリウム等の金属酸化物(酸化バナジウム、酸化チタン、酸化バリウム系等)や、硫化バナジウム等が使用できるが、パラフィンワックス及び高級アルコールとの相性、非相溶性や、熱履歴による蓄熱効果の安定性や、取扱性等からすると、好ましくは、トリメチロールエタン(CH3C(CH2OH)3)である。特に、トリメチロールエタンであれば、所定のパラフィンワックス及び高級アルコールとの混合で、例えば、90℃〜95℃に到達するまでの冷媒の昇温抑制に効果的な蓄熱、吸熱特性が発揮され、冷媒の昇温抑制、緩和効果の向上を可能とする。即ち、昇温によって所定のパラフィンワックス及び高級アルコールが相転移するから、固体状のトリメチロールエタンへの熱の伝わりが良く、トリメチロールの固固相転移による蓄熱が効果的に発揮され、冷媒の昇温抑制、緩和効果の向上を可能とする。
このような固−固相転移材は、高級アルコール及び高融点パラフィンワックスの合計量100質量部に対し、好ましくは、5質量部以上、95質量部以下、より好ましくは、10質量部以上、90質量部以下、更に好ましくは、30質量部以上、85質量部以下の範囲内で配合される。蓄熱材の合計量、即ち、固−固相転移材と高級アルコールとパラフィンワックス(高融点パラフィンワックス及び後述の低融点パラフィンワックスを配合する場合にはそれを含む)との合計量を100質量部に対しては、固−固相転移材は、好ましくは、3質量部以上、50質量部以下、より好ましくは、4質量部以上、48質量部以下、更に好ましくは、5質量部以上、45質量部以下の範囲内の配合である。
当該配合により、昇温に伴う液相と固相との共存バランスによる蓄熱材への効果的な熱移動を可能とし、冷媒の昇温の抑制、緩和効果の向上を可能とする。
更に他の潜熱蓄熱材(相変化材料、相転移材料)として、融点差を20℃以上、40℃以下としたパラフィンワックス及び高級アルコールとは別の、固液相転移型のパラフィン、高級アルコール、高級脂肪酸(脂肪酸エステル)等を混合することもできる。
融点差を20℃以上、40℃以下としたパラフィンワックス及び高級アルコールの組み合わせとして、例えば、融点が65℃以上、85℃以下の高融点パラフィンワックスと、炭素数が13以上、18以下の高級アルコールを使用した場合、更に、それらのパラフィンワックス及び高級アルコールよりも融点が低い低融点パラフィンワックスを配合することで、より低温側からの蓄熱、吸熱を可能とする。なお、低融点パラフィンワックスとの比較で、それと区別するため、低融点パラフィンワックスの融点よりも高い融点のパラフィンワックスは、便宜上、高融点パラフィンワックスと記載する場合もある。
このときの低融点パラフィンワックスとしては、高融点パラフィンワックスよりも融点が20℃以上低いものとなり、そのような低融点パラフィンワックスでは、高融点パラフィンワックスの吸熱ピーク(融解ピーク)に重複しないから、高融点パラフィンワックスの潜熱量を低下させることもない。特に、より低温側で相転移が開始することにより高融点成分側への熱の伝わりが良くなり、それらの吸熱、蓄熱が効果的に機能することで冷媒の昇温抑制、緩和効果の向上も可能となる。更に、そのような低融点パラフィンワックスは、比較的安価に入手できるから、低コスト化も可能である。そして、低融点パラフィンの配合によって低コスト化しても、冷媒の昇温抑制、緩和効果を高くできる
このような低融点パラフィンワックスとしては、例えば、n−ヘキサデカン(C1634)、n−ヘプタデカン(C1736)、n−オクタデカン(C1838)、n−ノナデカン(C1940)、n−イコサン(C2042)、n−ヘニコサン(C2144)、n−ドコサン(C2246)、n−トリコサン(C2348)、n−テトラコサン(C2450)等が使用できるが、高潜熱量及び低コストの観点から、偶数の炭素数のノルマルパラフィンを主成分とするものが好ましく、常温での取扱い安さから、n−イコサン(C2042)、n−ドコサン(C2246)、n−テトラコサン(C2450)が好適である。
低融点パラフィンワックスの配合量は、高級アルコール及び高融点パラフィンワックスの合計量100質量部に対し、好ましくは、5質量部以上、95質量部以下、より好ましくは、5質量部以上、90質量部以下、更に好ましくは、7質量部以上、85質量部の範囲内で配合される。
潜熱蓄熱材の合計量を100質量部に対しては、好ましくは、3質量部以上、50質量部以下、より好ましくは、4質量部以上、45質量部以下、更に好ましくは、5質量部以上、40質量部以下の範囲内である。即ち、使用する潜熱蓄熱材が高融点パラフィンワックス、高級アルコール及び低融点パラフィンワックスのみである場合には、高融点パラフィンワックス、高級アルコール及び低融点パラフィンワックスの合計量を100質量部に対し、好ましくは、3〜50質量部、より好ましくは、4〜45質量部、更に好ましくは、5〜40質量部の範囲内である。使用する潜熱蓄熱材が高融点パラフィンワックス、高級アルコール、固−固相転移材及び低融点パラフィンワックスである場合には、高融点パラフィンワックス、高級アルコール固−固相転移材及び低融点パラフィンワックスの合計量を100質量部に対し、好ましくは、3〜55質量部、より好ましくは、4〜50質量部、更に好ましくは、5〜45質量部の範囲内である。
当該配合により、昇温に伴う液相と固相との共存バランスによる蓄熱材への効果的な熱移動を可能とし、冷媒の昇温の抑制、緩和効果の向上を可能とする。
こうした本発明の実施の形態に係る蓄熱材組成物は、融点差が20℃〜40℃の範囲内である高級アルコールとパラフィンワックスを必須成分として含有するものであり、そのような所定の高級アルコールとパラフィンワックスの組み合わせでは、示差走査熱量測定法(DSC法)によるDSC曲線を見ると、吸熱ピーク(融解ピーク)が広い単一の吸熱ピークとならずに、パラフィンワックスの固有の融点近傍と高級アルコールの固有の融点近傍との複数の吸熱ピーク(ダブルピーク)を有する。
即ち、マイクロカプセル化等の粒子化することなく高級アルコールとパラフィンワックスを混合しても、アルコール及びパラフィンワックスの蓄熱機能が失活することなく、パラフィンワックスと高級アルコールが本来有する潜熱量が維持され、全体として高い蓄熱量が得られる。
つまり、昇温に伴う相転移がパラフィンワックスと高級アルコールとで別々の異なる温度帯で生じて、パラフィンワックスのみまたは高級アルコールのみの単独で測定される潜熱量と比較しても、全体の蓄熱量が大きく低下することなくパラフィンワックスと高級アルコールが有する高い潜熱量が維持される。更に、高級アルコール及びパラフィンワックスの各々の相転移に対応した複数の温度域での段階的な吸熱、蓄熱であり、昇温に伴い、高級アルコールの液相及びパラフィンワックスの固相、或いは、パラフィンワックスの液相及び高級アルコールの固相といった、アルコール及びパラフィンワックスの2成分で異なる複数相が共存する状態が生じる。このため、高融点側の蓄熱材への熱の伝わりを良くでき蓄熱損失も生じ難く、冷媒の昇温抑制、緩和効果を高くできる。
なお、吸熱ピーク(融解ピーク)が重複して広い単一の吸熱ピークとなるものでは、相変化の前後で大きな温度差があることで蓄熱損失、蓄熱分散が生じやすくなるに対し、融点差が20℃〜40℃の範囲内である高級アルコールとパラフィンワックスの組み合わせでは、成分同士の化学反応等により蓄熱性能が失活することもなく、連続しない異なる温度領域でパラフィンワックスと高級アルコールとが各々相転移するものであり、狭域の吸熱ピークが分散するから、蓄熱損失、蓄熱分散等も少なく、パラフィンワックスと高級アルコールの固有の潜熱量が維持されるものと考えられる。
こうして、本実施の形態の蓄熱材組成物によれば、複数の潜熱蓄熱材料の組みあわせであっても、パラフィンワックスの固有の融点の近傍と高級アルコールの固有の融点近傍との複数の相転移点を有して異なる温度域での複数段階で蓄熱し、マイクロカプセル化等の粒子化しなくとも蓄熱機能が失活することなく、高い蓄熱効果が得られるものである。
したがって、例えば、金属や合成樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート)等からなる容器、袋等に本実施の形態の蓄熱材組成物を封入し、それを、モータ、二次電池のバッテリ、燃料電池等の発熱源を冷却するための冷却回路中の冷媒に接触するように設けると、発熱源から冷媒に加わった熱エネルギを本実施の形態の蓄熱材組成物に多く吸熱、蓄熱でき、冷媒の温度上昇を効果的に抑制して高い温度制御を可能とする。
なお、本実施の形態の蓄熱材組成物を柔軟な容器や袋に充填する際には、所定のパラフィンワックス及び高級アルコールが常温で固体状のものでは、予め、固形状のパラフィンワックス及び高級アルコールを加熱により溶融してから混合し、または、混合した状態で融解し、自然冷却して固形状とした混合物を充填するのが好ましいが、各固形材料をそのまま容器や袋に充填してもよいし、各固形材料を均一に混合してから容器や袋に充填してもよい。なお、固−固相変化材を配合する場合には、それは溶融することなくパラフィンワックス及び高級アルコールに混合される。
そして、本実施の形態の蓄熱材組成物によれば、融点差が20℃〜40℃の範囲内である高級アルコールとパラフィンワックスの混合、組みあわせであり、そのDSC曲線では、パラフィンワックスの固有の融点の近傍と高級アルコールの固有の融点近傍との複数の吸熱ピーク(融解ピーク)を有し複数の異なる温度帯で相変化が生じて吸熱、蓄熱するものであるから、1種の潜熱蓄熱材のみの使用のときと比べ、また、単一の吸熱ピークを有するものと比べ、発熱源を冷却する冷却回路の広範囲の温度設計に対応できる汎用性が高く、使用時において高温まで昇温されない状態でも、所定の蓄熱効果が発揮され、発熱源やその周囲の熱負荷を低減できる。
即ち、単一の潜熱蓄熱材のみの使用では、その固有の融点付近に蓄熱の効果が限定されるところ、本実施の形態の蓄熱材組成物によれば、DSC曲線において、高級アルコール固有の融点付近とパラフィンワックス固有の融点付近との吸熱ピーク間で20〜40℃程度の温度差がある複数の温度域で蓄熱できるから、広範囲の温度帯で蓄熱効果が得られる。よって、蓄熱材組成物の吸熱を使用する冷媒の設計温度に対応した所望の温度域での蓄熱を可能とし、つまり、所望の蓄熱温度の制御を容易とし、冷媒の設計温度に対応した蓄熱による昇温抑制が可能である。故に、発熱源の種類、その周囲構造等に応じて相違する温度に設計される各種冷媒の昇温抑制に効果的な蓄熱特性に設定でき、広範囲の蓄熱用途として利用できる。
特に、比較的融点が低い1種の潜熱蓄熱材のみを使用した場合には、発熱源の急激な温度上昇が生じると、冷媒に急激に多くの熱エネルギ量が加わることで、蓄熱容量がすぐに限界を超え、蓄熱容量を超えると再び冷媒が急激な速度で昇温することになるため、冷媒の効果的な昇温抑制効果が得られない恐れがある。一方、比較的融点が高い1種の潜熱蓄熱材のみを使用した場合には、蓄熱までに冷媒が高温に昇温することになるから、発熱源やその周囲の熱負荷が高くなる。
これに対し、所定の融点差のある高級アルコール及びパラフィンワックスを組み合わせた本実施の形態の蓄熱材組成物では、高級アルコールとパラフィンワックスとの融解温度差があり、低温側から高温側にかけて段階的に蓄熱できることで、発熱源の急激な高発熱により冷媒に加わる熱エネルギが急激に増大したときでも、冷媒の昇温速度を緩やかにできて、冷媒の急激な昇温を抑制できる。よって、冷媒の冷却効果の持続性を高くでき、冷媒の限界温度に達するまでの時間を長くできる。そして、低温でも蓄熱効果が得られるから、負荷が少ないときでも冷却温度を低温に維持できることで、発熱源やその周囲の熱負荷を少なくできる。
また、これらパラフィンワックス及び高級アルコールは、蓄熱材の中でも、比較的大きな潜熱量(融解熱量)を有して単位体積当たりの蓄熱量も大きく、融解と凝固の相変化を繰り返しても、吸熱、放熱の繰り返し特性に優れて劣化し難く長期間安定した蓄熱量、蓄熱効果を得ることができる。
特に、パラフィンワックス及び高級アルコールは相溶性が低いから、繰り返しの使用によっても成分同士の反応や相溶による蓄熱量の低下、相転移点のずれ等が生じることもなく、長期間の安定した蓄熱効果による冷媒の昇温抑制効果を得ることができる。
加えて、入手が容易で安価であるから、更に、マイクロカプセル化等の粒子化しなくても高い蓄熱性能が得られるから、低コストで済む。加えて、腐食し難いから、金属や合成樹脂等からなる容器に封入しそれを冷媒に接触するように設けても、変質が生じることはない。そして、蓄熱密度が高いから、特に、上述したように、パラフィンワックス及び高級アルコールの組み合わせでは、全体的に高い潜熱量が得られるから、小型化も可能である。
ここで、モータ、バッテリ、燃料電池等の発熱源では、それを冷却するための冷媒の限界設定温度が、例えば、100℃前後に設定され、余裕をみて、例えば、90℃〜95℃に設定されることを想定すると、本実施の形態の蓄熱材組成物は、好ましくは、融点が65℃以上、85℃以下の高融点パラフィンワックスと、それよりも融点が20℃〜40℃低く炭素数が13以上、18以下の高級アルコールとを含有するものとする。より好ましくは、更に、固−固相転移型相変化材及び/または所定の融点差のパラフィンワックス及び高級アルコールよりも融点が低い低融点パラフィンワックスを含有するものとする。
このように融点が65℃以上、85℃以下の高融点パラフィンワックスと、それよりも融点が20℃〜40℃低く炭素数が13以上、18以下の高級アルコールとの組み合わせであれば、例えば、90℃〜95℃を昇温限界温度とする冷媒に対して、低温側から高温側にかけて段階的に吸熱、蓄熱効果を発揮するものであるから、発熱源の急激な高発熱により冷媒に加わる熱エネルギが急激に増大したときでも、冷媒の昇温速度を緩やかにできて、冷媒の急激な昇温を効果的に抑制し冷却効率の低下を抑制できる。また、所定の高温に達しない低温段階でも、即ち、負荷が少ない時でも、吸熱、蓄熱効果を有するから、発熱源やその周囲の熱負荷を低減できる。
更に、固−固相変化材を配合すると、相対的に、相変化による体積変化を少なくでき、また、固−液相転移型相変化材であるパラフィンワックスや高級アルコールの溶融時の染み出し等を少なくできる。故に、容器や袋の容量の低減化や簡素化により省スペース化を可能とし、より設置の自由度を高めることが可能となる。加えて、固−固相変化材は、パラフィンワックス及び高級アルコールの固液相変化による蓄熱とは相違する固相間の相変化時に蓄熱、吸熱を行うものであり、液相と固相の共存バランスによる蓄熱成分への効果的な熱移動によって、冷媒の昇温抑制効果を高めることが可能となる。
加えて、所定の融点差のある高級アルコール及びパラフィンワックスよりも融点が低い低融点パラフィンワックスの配合によって、低コスト化が可能である。更に、より低温側で相変化が開始することで、高級アルコール及びパラフィンワックスの馴染を良くし、また、液相と固相の共存のバランスが向上し、蓄熱成分への効果的な熱移動を可能として、冷媒の昇温抑制効果を高めることが可能となる。
こうして、本実施の形態の蓄熱材組成物を冷媒に対して使用することで、モータ、バッテリ、燃料電池等の高負荷時、急速充電時等に発熱源が高温となり、冷媒に熱エネルギ量が多く加わったときでも、その熱エネルギを蓄熱材組成物に吸熱、蓄熱させることにより冷媒の昇温を抑制、緩和できる。よって、発熱源が高発熱したときでも、発熱源を冷却する冷媒の冷却効果の低下を抑制でき、高い冷却効果の維持を可能とする。
特に、冷媒に加わった熱エネルギを蓄熱材組成物に吸熱、蓄熱することで冷媒の温度上昇を抑制、緩和するものであり、高性能な冷却設計によって負荷が少ない通常時においても冷媒の冷却温度を低温に設定するものでもないから、冷却システムを肥大化させることなく、また、電力省消費量を増大させることなく、冷却効果の維持が可能であり、低コストで済む。加えて、このような蓄熱材組成物であれば、それを封入した容器等を、発熱源を冷却するための冷却回路の内部空間に通流する冷媒に接触するように設ける省スペースの配設により、冷却システムを大型化、改変することなくそのまま利用して、冷却の持続性、冷却効果を高めることが可能である。
次に、本発明の実施の形態に係る蓄熱材組成物の実施例を具体的に説明する。
本実施の形態に係る蓄熱材組成物の実施例として、表1に示した配合内容で実施例1乃至実施例6に係る蓄熱材組成物を作製した。
Figure 2021080368
本実施例1〜6においては、高融点パラフィンワックスとして、日本精鑞株式会社製のパラフィンワックス「HNP−51」(融点:77℃、主成分:ヘキサトリアコンタン(n−(C3674))を使用し、また、高級アルコールとして、東京化成工業株式会社製の「1−ヘキサデカノール」(融点:49.0℃〜51.5℃)を使用した。更に、実施例4〜実施例6では、低融点パラフィンワックスとして、サソールケミカルズジャパン株式会社製の「Parafol(登録商標)22−95」(融点:42℃、主成分:ドコサン(n−(C2246))を使用し、また、固−固相転移型相変化材として、東京化成工業株式会社製の「トリメチロールエタン」(固相転移点:89℃)を使用した。
実施例1乃至実施例3では、まず、主成分がヘキサトリアコンタンである常温で固体状の高融点パラフィンワックスと、常温で固体状の高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールをそれぞれ所定の容器に入れ95℃の湯浴または油浴中で融解させた。
そして、融解した高融点パラフィンワックス及び融解した1−ヘキサデカノールを容器中で所定の重量比率で配合し、95℃の湯浴または油浴中で攪拌して混合し、常温(室温)まで自然冷却することにより、実施例1乃至実施例3に係る各蓄熱材組成物を調製した。
ここで、表1に示したように、実施例1では、固体分の重量比率で、主成分がヘキサトリアコンタンである高融点パラフィンワックスを17質量部、高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールを83質量部の配合とした。この実施例1の配合では、高融点パラフィンワックスを100質量部に対しては、高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールが488質量部である。
実施例2では、実施例1のときよりも高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールを減らし、その分、主成分がヘキサトリアコンタンである高融点パラフィンワックスを増やし、固体分の重量比率で、高融点パラフィンワックスを33質量部、高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールを67質量部の配合とした。この実施例2の配合では、高融点パラフィンワックスを100質量部に対しては、高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールが203質量部である。
実施例3では、実施例2のときよりも高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールを更に減らし、その分、主成分がヘキサトリアコンタンである高融点パラフィンワックスを更に増やし、固体分の重量比率で、高融点パラフィンワックスを50質量部、高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールを50質量部の配合とした。この実施例3の配合では、高融点パラフィンワックスを100質量部に対しては、高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールが100質量部である。
更に、実施例4乃至実施例6では、主成分がヘキサトリアコンタンである高融点パラフィンワックス(融点:77℃)と高級アルコールとしての1−ヘキサデカノール(融点:49.0℃〜51.5℃)に加え、主成分がドコサンである低融点パラフィンワックス(融点:42℃)と、固固相転移型相変化材としてのトリメチロールエタン(固相転移点:89℃)を配合して実施例4乃至実施例6に係る各蓄熱材組成物を得た。
具体的には、実施例4乃至実施例6においては、まず、主成分がヘキサトリアコンタンである常温で固体状の高融点パラフィンワックスと、常温で固体状の高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールと、主成分がドコサンである常温で固体状の低融点パラフィンワックスとをそれぞれ容器に入れ95℃の湯浴または油浴中で融解させた。
そして、融解した高融点パラフィンワックス、融解した1−ヘキサデカノール、及び融解した低融点パラフィンワックスと、常温で固体状のトリメチロールエタンとを容器中で所定の重量比率で配合し、95℃の湯浴または油浴中で攪拌して混合し、常温(室温)まで自然冷却することにより、実施例4乃至実施例6に係る各蓄熱材組成物を調製した。
ここで、表1に示したように、実施例4では、固体分の重量比率で、主成分がヘキサトリアコンタンである高融点パラフィンワックスを25質量部、高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールを45質量部、主成分がドコサンである低融点パラフィンワックスを5質量部、固固相転移型相変化材としてのトリメチロールエタンを25質量部の配合とした。この実施例4の配合では、高融点パラフィンワックスを100質量部に対しては、高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールが180質量部である。また、高融点パラフィンワックス及び高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールの合計量を100質量部に対し、低融点パラフィンが、7.1質量部、固固相転移型相変化材としてのトリメチロールエタンが35.7質量部である。
実施例5では、固体分の重量比率で、主成分がヘキサトリアコンタンである高融点パラフィンワックスを6質量部、高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールを31質量部、主成分がドコサンである低融点パラフィンワックスを31質量部、固固相転移型相変化材としてのトリメチロールエタンを31質量部の配合とした。この実施例5の配合では、高融点パラフィンワックスを100質量部に対しては、高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールが517質量部である。また、高融点パラフィンワックス及び高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールの合計量を100質量部に対し、低融点パラフィンが、83.8質量部、固固相転移型相変化材としてのトリメチロールエタンが83.8質量部である。
実施例6では、固体分の重量比率で、主成分がヘキサトリアコンタンである高融点パラフィンワックスを25質量部、高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールを25質量部、主成分がドコサンである低融点パラフィンワックスを45質量部、固固相転移型相変化材としてのトリメチロールエタンを5質量部の配合とした。この実施例6の配合では、高融点パラフィンワックスを100質量部に対しては、高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールが100質量部である。また、高融点パラフィンワックス及び高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールの合計量を100質量部に対し、低融点パラフィンが90質量部、固固相転移型相変化材としてのトリメチロールエタンが10質量部である。
また、参考例1として、主成分がヘキサトリアコンタンである常温で固体状の高融点パラフィンワックスを容器に入れ95℃の湯浴または油浴中で融解し、常温(室温)まで自然冷却することにより、表1に示す参考例1に係る高融点パラフィンワックスを調製した。
参考例2として、高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールを容器に入れ95℃の湯浴または油浴中で融解し、常温(室温)まで自然冷却することにより、表1に示す参考例2に係る高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールを調製した。
参考例3として、主成分がドコサンである低融点パラフィンワックスを容器に入れ95℃の湯浴または油浴中で融解し、常温(室温)まで自然冷却することにより、表1に示す参考例3に係る低融点パラフィンワックスを調製した。
参考例4では、固固相転移型相変化材としてのトリメチロールエタンのみを使用した。
なお、参考例1〜4で使用した材料は、実施例1〜6で使用した材料と同一である。
ここで、上記実施例1乃至実施例6に係る蓄熱材組成物の示差走査熱量の測定を行った。その測定結果のDSC曲線のグラフを図2乃至図7に示す。図2乃至図7のDSC曲線に示すように、実施例1乃至実施例6に係る蓄熱材組成物によれば、高融点パラフィンワックスの相変化に基づく吸熱(融解)ピーク(約70℃〜90℃の範囲内)と、高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールの相変化に基づく吸熱ピーク(約40℃〜50℃の範囲内)とを有し、それらの吸熱ピークは互いに重複することなく(多重ピークとならずに)独立して存在している。即ち、複数の異なる相転移点(相転移温度)を有して重複することなく独立した吸熱(融解)ピーク数が2本以上存在し、50℃以下の低温側と70℃以上の高温側との複数の温度帯で吸熱、蓄熱が生じることが分かる。
また、低融点パラフィン及び固固相転移型相変化材としてのトリメチロールエタンを更に配合した実施例4乃至実施例6の蓄熱材組成物では、図5乃至図7に示すDSC曲線のグラフにおいて、低融点パラフィンの相変化に基づく吸熱ピークやトリメチロールエタンの相変化に基づく吸熱ピークが、高融点パラフィンワックスの吸熱ピークまたは1−ヘキサデカノールの吸熱ピークと重複し或いは重複せずに単一のピークとして存在している。
これに対し、単一の蓄熱材(相変化材)のみである参考例1乃至参考例4について示差走査熱量測定を行った結果を示した図8乃至図11のDSC曲線では、吸熱(融解)ピーク数は、1本の単一である。
なお、ここでの示差走査熱量測定(DSC法)による熱物性測定に際しては、JIS K 7122の転移熱測定方法に準拠し、まず、約5mgの試料を封入したアルミニウムパンを、窒素雰囲気下において、(1)10℃/分で昇温し110℃で5分間保持して完全に融解させたのち、次に、(2)5℃/分で30℃まで降温し30℃で5分間保持して再結晶化させ、再度(1)及び(2)を繰り返して温度−吸熱特性を示す融解曲線(示差熱曲線)を得た。そして、2回目以降の昇温時の示差熱を測定した結果から、結晶融解に伴う吸熱特性の吸熱(融解)ピークを判断した。
次に、これら実施例1乃至実施例6に係る蓄熱材組成物及び参考例1乃至参考例4に係る蓄熱材(相変化材)による冷媒の昇温抑制効果について、評価試験を行った。
モータ、バッテリ、燃料電池等の発熱源の冷却システムでは、例えば、100℃前後に冷却の上限温度が採用されているところ、本評価試験では、余裕をみて、冷媒が90℃に達するまでの時間を評価した。
ここで、冷媒の昇温抑制効果を評価するために、図1に示す評価装置を構築した。
具体的には、図1に示すように、モータ、バッテリ、燃料電池等の発熱源を冷却するための冷媒に相当する所定の媒体(水)22を大容器21(ガラスビーカー)内に8g入れ、更に、その媒体22中に、固形状の蓄熱材組成物1(参考例においては各相変化材)を3g封入した小容器11(ガラスビーカー)を入れた。そして、蓄熱材組成物1(参考例においては各相変化材)を封入した小容器11と媒体22が入った大容器21ごと、95℃のオイルバス23に浸漬し、媒体22の温度が40℃から90℃に到達するまでの時間(所要時間)を媒体22中に浸漬した温度計24で測定した。なお、オイルバス23の温度は95℃の一定温度で維持した。
実施例1乃至実施例6の各蓄熱材組成物1及び参考例1乃至参考例4の各相変化材を用いて行った評価試験における結果は表1の下欄に示した通りである。なお、表1のコントールは、媒体22のみを入れた大容器21をオイルバス23に浸漬して同様に測定したときの結果である。
表1に示したように、実施例1乃至実施例6に係る蓄熱材組成物では、主成分がヘキサトリアコンタンである高融点パラフィンワックスと高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールの含有により、媒体22の温度が40℃から90℃に達するまでの時間が、それらを単独で配合した参考例1及び参考例2と同等またはそれらよりも長時間となった。
つまり、実施例1乃至実施例6に係る蓄熱材組成物によれば、高融点パラフィンワックスと高級アルコールを組み合わせても、高融点パラフィンワックスまたは1−ヘキサデカノールを単独で配合した参考例1及び参考例2と比較して、そのときと同等またはそれら以上の高い昇温抑制効果が示された。
このように実施例1乃至実施例6に係る蓄熱材組成物においては、主成分がヘキサトリアコンタンである高融点パラフィンワックスと高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールの混合により、互いに重複しない(連続していない)異なる複数の温度域での吸熱、蓄熱を可能とし、しかも、マイクロカプセルに封入する等の粒子化を行わずに混合しても蓄熱性能が失活することもなく、図2乃至図11に示した示差走査熱量測定からも分かるように、高融点パラフィンワックスや1−ヘキサデカノールを単独で用いた比較例1及び比較例2と比較してみても、高融点パラフィンワックスや1−ヘキサデカノールが本来有する潜熱量が維持され、媒体22の昇温抑制、緩和効果が高いものとなっている。
特に、本発明者らの実験研究によれば、実施例1で示したように、潜熱蓄熱材が、主成分がヘキサトリアコンタンである高融点パラフィンワックスと高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールのみである場合、それらのうちの高融点側の蓄熱材である高融点パラフィンワックス100質量部に対し、低融点側の蓄熱材である1−ヘキサデカノールを、より好ましくは250〜500質量部、更に好ましくは、300〜500質量部の範囲内とすることで、また、高融点パラフィンワックスと1−ヘキサデカノールの合計量を100質量部に対し、高融点パラフィンワックスをより好ましくは10〜55質量部、更に好ましくは、15〜30質量部の範囲内、1−ヘキサデカノールをより好ましくは45〜90質量部、更に好ましくは、70〜90質量部の範囲内とすることで、それらを単独で用いた比較例1及び比較例2のときよりも90℃に達するまでの所要時間が長くなり、冷媒(媒体22)の昇温抑制、緩和効果を向上させることが可能である。これは、所定の配合により、昇温に伴う1−ヘキサデカノールの液相と高融点パラフィンワックスの固相の共存状態における固液比率のバランスが好適となって高融点パラフィンワックスへの熱の伝わりが向上するためと推測できる。
更に、実施例4乃至実施例6では、主成分がヘキサトリアコンタンである高融点パラフィンワックス及び高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールよりも融点が低く、主成分がドコサンである低融点パラフィンワックスの配合により、低コストで良好な蓄熱効果を得ることができる。また、より低温側からの蓄熱を可能とするから、発熱源やその周囲の熱負荷を軽減できる。更に、主成分がヘキサトリアコンタンである高融点パラフィンワックス及び高級アルコールとしての1−ヘキサデカノールの融点よりも相変化温度が高いトリメチロールエタンの配合により、相変化による体積変化を相対的に少なくでき、また、より高温での蓄熱も可能とする。
特に、コントロール及び参考例4を見ると、トリメチロールエタン単独では、冷媒(媒体22)の昇温抑制効果が得られないものの、高融点パラフィンワックスと高級アルコールの組み合わせにトリメチロールエタンを所定量配合することで、より高温側でのトリメチロールエタンの固相間の相変化による蓄熱効果の発揮により、昇温抑制効果を高めることができる。このトリメチロールエタンの蓄熱効果の発揮は、昇温に伴う1−ヘキサデカノール及び高融点パラフィンワックスの液相とトリメチロールエタンの固相の共存状態における固液比率のバランスが好適で、トリメチロールエタンへの熱の伝わりが向上するためと推測できる。更に、主成分がドコサンである低融点パラフィンワックスの配合によっても、より低温側で蓄熱が開始することで冷媒の急激な昇温が抑制されるため、また、より低温側で蓄熱が開始することにより高融点成分側への熱の伝わりが良くなってそれらの蓄熱、吸熱が効果的に発揮されるため、冷媒の昇温抑制、緩和効果の向上を可能となる。
これより、参考例1〜4よりも、更には、実施例1乃至実施例3よりも、冷媒(媒体22)の昇温抑制、緩和効果を向上でき、90℃に達するまでの所要時間を長くできる。
そして、本発明者らの実験研究によれば、実施例4及び実施例5で示すように、高融点パラフィンワックス100質量部に対し、1−ヘキサデカノールが250質量部未満であっても、高融点パラフィンワックス及び1−ヘキサデカノールの合計量100質量部に対し、好ましくは、30質量部〜85質量部の範囲内でトリメチロールエタンを配合し、また、好ましくは、5質量部〜40質量部の範囲内で主成分がドコサンである低融点パラフィンワックスを配合する。高融点パラフィンワックス、低融点パラフィンワックス、1−ヘキサデカノール及びトリメチロールエタンの合計量100質量部に対しては、好ましくは、20〜40質量部の範囲内でトリメチロールエタンを配合し、好ましくは、5〜35質量部の範囲内で主成分がドコサンである低融点パラフィンワックスを配合する。
このような配合により、各潜熱蓄熱材を単独で用いたときよりも、更には、潜熱蓄熱材が高融点パラフィンワックス及び高級アルコールのみのときよりも、90℃に達するまでの所要時間を長くできて、冷媒(媒体22)の昇温抑制、緩和効果の向上が可能である。
以上説明してきたように、本実施の形態に係る蓄熱材組成物は、パラフィンワックスと高級アルコールとを含有する蓄熱材組成物であって、パラフィンワックスと高級アルコールの融点差が20℃以上、40℃以下であるものである。
したがって、本実施の形態に係る蓄熱材組成物によれば、このような融点差が20℃以上、40℃以下であるパラフィンワックスと高級アルコールの混合により、示差走査熱量測定法(DSC法)による測定で得られたDSC曲線では、それらの吸熱ピークが重複することなく、パラフィンワックスと高級アルコールの固液の複数相が共存することになる複数のピーク(ダブルピーク)を有し、パラフィンワックス及び高級アルコールの各々が有する潜熱量が維持され、全体として高い蓄熱効果を発揮できる。即ち、高融点パラフィンワックス固有の融点近傍と高級アルコール固有の融点近傍との複数の異なる温度帯でパラフィンワックスと高級アルコールのそれぞれが相変化するときの潜熱による蓄熱を可能とし、複数の相移転点を有して複数の温度域で蓄熱効果を発揮できる。しかも、パラフィンワックス及び高級アルコールをマイクロカプセル化等の粒子化することなく混合してもパラフィンワックスと高級アルコールの蓄熱機能が失活することがなく、また、蓄熱損失や蓄熱分散が生じ難く、パラフィンワックス及び高級アルコールの各々が有する潜熱量が維持される。更には、パラフィンワックスと高級アルコールの固液の複数相が共存することで熱移動も良くなる。
よって、この蓄熱材組成物を容器等に封入し、それを、モータ、二次電池のバッテリ、燃料電池等の発熱源を冷却するための冷却回路中の冷媒に接触するように設けると、冷媒の昇温を効果的に抑制、緩和できる。特に、このように低温側から高温側にかけて段階的に蓄熱効果を発揮させるものであるから、モータ、バッテリ、燃料電池等の発熱源の急激な高発熱や高温の環境条件により、冷媒に加わる熱エネルギが急激に増大したときでも、冷媒の急激な昇温を効果的に抑え昇温速度を緩やかにでき、冷却効率の低下を抑制できる。そして、低温側から高温側にかけて段階的に蓄熱効果を発揮させるものであることで、低温でも蓄熱効果が発揮されることで、発熱源やその周囲の熱負荷を少なくできる。
更に、複数の異なる温度帯で相変化の潜熱による蓄熱が可能であることで冷却回路の広範囲の温度設計に対応でき、冷却回路の広範囲の温度設計に対応できる汎用性が高いものである。
特に、好ましくは、融点が65℃以上、85℃以下の範囲内である高融点パラフィンワックス、例えば、主成分がヘキサトリアコンタンの高融点パラフィンと、高融点パラフィンワックスよりも融点が20℃〜40℃低く炭素数が13以上、18以下の高級アルコール、例えば、1−ヘキサデカノールとの混合であれば、例えば、モータ、バッテリ、燃料電池等の発熱源においてそれらを冷却するための冷却回路の冷媒では、その上限温度を100℃前後に設定されることから、そのような冷媒の昇温抑制に好適に使用できる。
即ち、パラフィンワックスは、融点(相転移点)が65℃以上、85℃以下の範囲内であり、高級アルコールの融点よりも高いものであると、昇温に伴い高級アルコールの液相とパラフィンワックスの固相との複数相の共存バランスでパラフィンワックスへの熱移動を良くできてパラフィンの蓄熱損失等が生じることなくパラフィンの蓄熱性能が十分に発揮される。そして、例えば、100℃前後を上限温度と設定される冷媒の昇温抑制に好適でそのような冷媒に対し高い昇温抑制効果を発揮でき、冷媒がその上限温度に達するまでの時間を効果的に長くできる。
また、高級アルコールは炭素数が13以上、18以下で、好ましくは、融点が35℃以上、60℃以下の脂肪族アルコールであると、低コストで純度が高いものが得られるから、安定した蓄熱性能を発揮できる。また、熱負荷の少ない通常状態では相変化が生じ難いことで、繰り返しの相変化による劣化、即ち、潜熱量の低下が生じ難い。よって、より長期間安定した冷媒の昇温抑制効果が得られる。
特に、本実施例1〜6では、主成分がヘキサトリアコンタンの高融点パラフィンを用い、また、高級アルコールとして、1−ヘキサデカノールを用いているから、それらを互いに混合しても、固相状態及び液相状態で共に化学的に安定で、高い潜熱量を有し、また、固液比率のバランスが好適で高融点パラフィンワックスへの熱の伝わりがよく、高い蓄熱効果を発揮する。そして、熱負荷のない通常状態では相変化が生じ難く、相変化の過剰な繰り返しが生じることでその熱履歴により早期に劣化や変質が生じて潜熱量が低下する恐れもない。故に、長期間の安定した冷媒の昇温抑制効果が得られる。
即ち、これら高融点パラフィン及び高級アルコールは、マイクロカプセル化等として粒子化しなくとも混合(ドライブレンド)するだけで、互いに反応して蓄熱機能が失活することもなく各素材の本来の蓄熱性能を発揮でき、固相状態及び液相状態で共に化学的に安定でそれぞれの固有の融点近傍で相変化することで全体として高い蓄熱量を有し、また、パラフィンワックスと高級アルコールの固液の複数相が共存することで熱移動も良くなる。よって、所定の冷媒の昇温抑制効果が高いものである。
本実施の形態に係る蓄熱材組成物によれば、更に、固−固相転移型相変化材を配合することで、相変化による体積変化の増大を相対的に抑制できることになるから、発熱源を冷却するための冷却回路中の冷媒の昇温を抑制するのに適用する際に、蓄熱材組成物を収容する容器や袋の小型化、簡素化を可能とする。また、固−液相転移型相変化材である高級アルコール及びパラフィンワックスの相対量が減るから、漏れ出しや染み出しが生じ難く、漏れ出しや染み出しを防止する容器の選択自由度を高めることができる。
そして、高級アルコール及び高融点パラフィンワックスとの混合で、固液2相の共存バランスの向上による熱移動の向上により、冷媒の昇温抑制効果の向上も可能とする。
特に、実施例4〜実施例6で示したように、固−固相転移型相変化材として、安価に入手できるトリメチロールエタン(C5123)を用いると、低コスト化が可能である。特に、トリメチロールエタン(C5123)は、高級アルコール及びパラフィンワックスと混合しても、化学的に安定であり、繰り返しの使用による蓄熱性能の喪失も生じ難く、100℃前後を上限温度に設定する冷媒に適用しても、昇華等することなく、高温で高い蓄熱機能を発揮することで、冷媒の昇温抑制効果の向上も可能とする。
本実施の形態に係る蓄熱材組成物によれば、更に、融点差が20〜40℃のパラフィンワックス及び高級アルコールよりも融点が低い低融点パラフィンワックスの配合により、低コスト化を可能とし、また、より低温側で相変化が開始されることで、冷媒を低温に維持できて発熱源やその周囲の熱負荷を軽減でき、更に、固液2相の共存バランスの向上による熱移動の向上により、冷媒の昇温抑制効果の向上も可能とする。
そして、実施例1〜6で用いた1−ヘキサデカノール、ヘキサトリアコンタンを主成分とした高融点パラフィンワックス、トリメチロールエタン、ドコサンを主成分とする低融点パラフィンワックスであれば、臭気が少なく、また、毒性や腐敗性もないから、取り扱いやすくて作業環境性もよい。更に、熱的安定性もよく、また、酸化劣化もし難いから、長期間安定した高い蓄熱特性を発揮できる。そして、マイクロフィルムカプセル化等の粒子化しないから、カプセルや架橋剤等を使用しないことで、低コストで高蓄熱効率が得られる。
このような本実施の形態に係る蓄熱材組成物は、融点差が20〜40℃のパラフィンワックス及び高級アルコールの組み合わせにより、複数の温度域で蓄熱効果を発揮できるため、モータ、二次電池バッテリ、燃料電池等の冷却に使用される冷媒の昇温抑制に好適である他、各種の部品、例えば、電子材料、磁性材料、触媒材料、構造体材料、光学材料、医療材料、自動車材料、建築材料等の部品の昇温抑制にも適用可能であり、幅広く蓄熱用途として適用できる。
また、本実施の形態に係る蓄熱材組成物によれば、パラフィンワックス、高級アルコールを含むことで、発熱源の発熱による温度上昇に伴い、固体から液体に相変化することによって吸熱する一方で、発熱源の作動停止等による温度低下に伴い、液体から固体に相変化することによって放熱する。特に、パラフィンワックスや高級アルコールの固液相転移型の潜熱蓄熱材では、状態変化がゆっくりであり、熱量が外部から供給されない場合には、蓄熱した潜熱を徐々に外部に放熱するという性質を有している。このため、そのような凝固に伴う放熱による保温効果も有する。当該保温効果により、例えば、バッテリ等のユニットに本実施の形態に係る蓄熱材組成物を配した際には、最適な使用温度を維持することも可能となる。特に、冬場の低温環境下では、保温によって、低温化による起電力の低下を防止して、起動時や充電時の電池性能の良好な保持が可能である。
ところで、上述の説明は、冷媒を用いて発熱源を冷却する冷却システムであって、内部空間に通流する冷媒により発熱源を冷却するための冷却回路と、冷却回路の冷媒に接触して設けられる蓄熱材とを具備し、蓄熱材は、融点差が20℃以上、40℃以下であるパラフィンワックスと高級アルコールとを混合した蓄熱材組成物を容器に封入してなることを特徴とする冷却システムの発明と捉えることもできる。
上記実施の形態の冷却システムによれば、融点差が20℃以上、40℃以下であるパラフィンワックスと高級アルコールとの混合物からなる蓄熱材組成物によって、高融点パラフィンワックス及び高級アルコールをマイクロカプセル化等として粒子化することなく混合しても、高融点パラフィンワックスと高級アルコールの蓄熱機能が失活することなく、高融点パラフィンワックスと高級アルコールの本来の有する潜熱量が維持され、全体として高融点パラフィンワックス及び高級アルコールの蓄熱量が大きく低下することなく、更に固液2相が共存することで熱移動もよく、高い蓄熱効果を発揮する。そして、このような蓄熱材組成物が容器に封入されてなる蓄熱材が冷媒に接触して設けられるから、冷媒に加わった熱エネルギを蓄熱材に吸熱、蓄熱させることで、冷媒の昇温の抑制を可能とし、高い冷却効果を維持できる。
特に、かかる蓄熱材によれば、高融点パラフィンワックス固有の融点の近傍と高級アルコール固有の融点近傍との複数の異なる温度帯で相変化の潜熱による蓄熱を可能とするから、発熱源の高負荷により冷媒に加わる熱エネルギが急激に増大したときでも、冷媒の急激な昇温を効果的に抑え昇温速度を緩やかにでき、冷却効率の低下を抑制できる。また、低温でも蓄熱効果が発揮されることで、発熱源やその周囲の熱負荷を少なくできる。更に、冷却回路の広範囲の温度設計に対応でき、冷媒の昇温を抑制するのに適用できる範囲が広いものである。
したがって、冷却システムを肥大化させることなく、また、電力省消費量を増大させることなく、低コストで冷却効果を高めること可能である。特に、蓄熱材組成物を封入した容器等を冷却回路の内部空間に通流する冷媒に接触するように設ける省スペースの配設により、冷却システムを大型化、改変することなくそのまま利用して、冷却効果を高めることが可能である。
ここで、上記発熱源としては、例えば、モータや、二次電池のバッテリ、燃料電池等である。
上記冷媒とは、例えば、空気、水、オイル、二酸化炭素、プロパン、ブタンやイソブタン等の炭化水素、アンモニア、フルオロカーボン系、フロン系の冷媒等が使用される。
上記冷却回路は、発熱源を冷却するために内部空間に冷媒を通流し、例えば、電池等であれば、そのバッテリパックまたはモジュールのバッテリセル間等に組み込まれる。
また、上記容器は、蓄熱材組成物が相変化して液相状態になっても、漏れや染み出しを防止できるものであればよく、例えば、金属や樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート)からなる容器、袋が使用できる。樹脂にアルミが蒸着またはラミネートされているものであってもよい。
なお、本発明を実施するに際しては、蓄熱材組成物及びそれを用いた冷却システムのその他の部分の構成、成分、配合、製造方法等についても、上記実施例に限定されるものではない。必要に応じて、添加剤を加えることも可能である。
また、本発明の実施の形態及び実施例で挙げている数値は、その全てが臨界値を示すものではなく、ある数値は製造コスト、製造が容易な形態等から決定した値であり、実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を許容値内で若干変更してもその実施を否定するものではない。

Claims (11)

  1. パラフィンワックスと高級アルコールとを含有する蓄熱材組成物であって、
    前記パラフィンワックスと前記高級アルコールの融点差が20℃以上、40℃以下であることを特徴とする蓄熱材組成物。
  2. 前記パラフィンワックスは、融点が65℃以上、85℃以下であり、前記高級アルコールの融点よりも高いものとしたことを特徴とする請求項1に記載の蓄熱材組成物。
  3. 前記パラフィンワックスは、ヘキサトリアコンタンが主成分であるものとしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蓄熱材組成物。
  4. 前記高級アルコールは、炭素数が13以上、18以下の脂肪族アルコールとしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の蓄熱材組成物。
  5. 前記高級アルコールは、1−ヘキサデカノールとしたことを特徴とする請求項1乃至請請求項4の何れか1つに記載の蓄熱材組成物。
  6. 前記パラフィンワックスと前記高級アルコールの配合量は、前記パラフィンワックス及び前記高級アルコールのうちの高融点側の蓄熱材を100質量部に対し、低融点側の蓄熱材を80〜550質量部の範囲内としたことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載の蓄熱材組成物。
  7. 前記高融点パラフィンワックスと前記高級アルコールの配合量は、前記高融点パラフィンワックスと前記高級アルコールの合計量を100質量部に対し、前記パラフィンワックス及び前記高級アルコールのうちの高融点側の蓄熱材を10〜60質量部の範囲内であり、低融点側の蓄熱材を40〜90質量部の範囲内としたことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1つに記載の蓄熱材組成物。
  8. 更に、固−固相転移型相変化材を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1つに記載の蓄熱材組成物。
  9. 前記固−固相転移型相変化材は、トリメチロールエタンとしたことを特徴とする請求項8に記載の蓄熱材組成物。
  10. 前記固−固相転移型相変化材の配合量は、前記高融点パラフィンワックスと前記高級アルコールの合計量を100質量部に対し、5〜95質量部の範囲内としたことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の蓄熱材組成物。
  11. 更に、前記パラフィンワックス及び前記高級アルコールよりも融点が低い低融点パラフィンワックスを含有することを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1つに記載の蓄熱材組成物。
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