JP2021080168A - フィブロイン組成物、フィブロイン溶液、及びフィブロイン繊維の製造方法 - Google Patents

フィブロイン組成物、フィブロイン溶液、及びフィブロイン繊維の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐水性に優れた製品(フィブロイン繊維等)を製造可能なフィブロイン組成物の提供。【解決手段】第1のフィブロインと、第2のフィブロイン及び第3のフィブロインからなる群より選択される少なくとも1種のフィブロインと、を含むフィブロイン組成物であって、第1のフィブロインは、(A)nモチーフの含有量が低減されたドメイン配列を有するフィブロインであり、第2のフィブロインは、グルタミン残基の含有量が低減されたドメイン配列を有するフィブロインであり、第3のフィブロインは、局所的に疎水性指標の大きい領域を含むドメイン配列を有するフィブロインである、フィブロイン組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、フィブロイン組成物、フィブロイン溶液、及びフィブロイン繊維の製造方法に関する。より具体的には、本発明は、耐水性等の物性に優れた製品(フィブロイン繊維等)を製造可能な混合フィブロイン組成物に関する。
フィブロインは、繊維状のタンパク質の一種であり、βプリーツシートの形成につながるグリシン残基、アラニン残基及びセリン残基を最大90%含有する(非特許文献1)。フィブロインとして、昆虫及びクモ類が産生する糸を構成するタンパク質(絹タンパク質、ホーネットシルクタンパク質、スパイダーシルクタンパク質)等が知られている。
組換えスパイダーシルクタンパク質、及び組換え絹タンパク質は、例えば、トランスジェニック・ヤギ、トランスジェニック・カイコ、組換え植物又は組換え哺乳類細胞等のタンパク質生産系での産生が報告されている。(非特許文献2)。更に、大量生産が可能なタンパク質生産系として、酵母、カビ、グラム陰性細菌及びグラム陽性細菌等の生物を宿主とした組換えフィブロイン生産も多数報告されている(特許文献1)。
より改良されたフィブロインを得るために、様々なアミノ酸配列の改変が行われており、例えば、タフネス及び伸度を向上させ、工業生産に適した組換えスパイダーシルクタンパク質が報告されている(特許文献2)。
また、スパイダーシルクタンパク質とウール等といった異なる種類のフィブロイン繊維を混合して紡糸することで物性の改変されたフィブロイン繊維が報告されている(特許文献3)。
しかしながら、例えば、フィブロインを紡糸して得られるフィブロイン繊維は、水又は湯への浸漬、高湿度環境への暴露等により収縮する特性を有する。この特性は、製造工程及び製品化において様々な問題を発生させ、フィブロイン繊維よりなる製品にも影響が及ぶ。
当該製品の収縮を防止するための防縮方法として、例えば、精練を完了した強撚糸使用の絹織物を、緊張した状態で水、その他の溶媒、又はその混合系に浸漬して所定時間加温することを特徴とする絹織物の防縮加工法(特許文献4)、所要形状に成形された状態にある動物繊維製品に、120〜200℃の高圧飽和水蒸気を接触させる処理を施して、当該繊維製品に水蒸気処理時の形状を固定することを特徴とする動物繊維製品の形状固定化方法(特許文献5)等が報告されている。
国際公開第2015/042164号 国際公開第2017/188434号 国際公開第2016/201369号 特公平2−6869号公報 特開平6−294068号公報
Asakuraら,Encyclopedia of Agricultural Science,Academic Press:New York,NY,1994年,Vol.4,pp.1−11 Science,2002年,295巻,pp.472−476
特許文献4及び5に開示されるような防縮方法は、操作が煩雑であり、また工程が増えるため、工業的に不利である。このような防縮方法によらず、フィブロイン繊維自体の収縮を抑制又は低減させることができれば、極めて工業的に有用である。
本発明は、耐水性に優れた製品(フィブロイン繊維等)を製造可能なフィブロイン組成物の提供を目的とする。本発明はまた、収縮が抑制又は低減されたフィブロイン繊維、及びその製造方法の提供も目的とする。
本発明者らは、特許文献2(国際公開第2017/188434号)で報告した(A)モチーフの含有量が低減されたフィブロインと、グルタミン残基含有率が低減されたアミノ酸配列を有するフィブロイン等の疎水性を高めたフィブロインとを混合した混合フィブロインから形成したフィブロイン繊維は、収縮が抑制又は低減されると共に、応力及び伸度にも優れることを見い出した。本発明はこの新規な知見に基づく。
すなわち、本発明は、例えば、以下の各発明に関する。
[1]
第1のフィブロインと、第2のフィブロイン及び第3のフィブロインからなる群より選択される少なくとも1種のフィブロインと、を含むフィブロイン組成物であって、
上記第1のフィブロインが、式1:[(A)モチーフ−REP]m1で表されるドメイン配列を含み、N末端側からC末端側に向かって、隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのREPのアミノ酸残基数を順次比較して、アミノ酸残基数が少ないREPのアミノ酸残基数を1としたとき、他方のREPのアミノ酸残基数の比が1.8〜11.3となる上記隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのアミノ酸残基数を足し合わせた合計値の最大値をxとし、上記ドメイン配列の総アミノ酸残基数をyとしたときに、x/yが50%以上であるアミノ酸配列を有するフィブロインであり、
上記第2のフィブロインが、式2:[(A)モチーフ−REP]m2で表されるドメイン配列又は式3:[(A)モチーフ−REP]m3−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含み、グルタミン残基含有率が9%以下であるアミノ酸配列を有するフィブロインであり、
上記第3のフィブロインが、式4:[(A)モチーフ−REP]m4で表されるドメイン配列を含み、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列に含まれる全てのREPにおいて、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域に含まれるアミノ酸残基の総数をzとし、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列に含まれるアミノ酸残基の総数をwとしたときに、z/wが6.2%以上であるアミノ酸配列を有するフィブロインである、フィブロイン組成物。
[式1、式2、式3及び式4中、(A)モチーフは、それぞれ独立に、4〜27アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、かつ(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が80%以上であり、REPは、それぞれ独立に、10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、m1、m2、m3及びm4は、それぞれ独立に、8〜300の整数を示す。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。]
[2]
上記第2のフィブロインのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、REP中の1若しくは複数のグルタミン残基を欠失したこと、又は他のアミノ酸残基に置換したことに相当する、グルタミン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列である、[1]に記載のフィブロイン組成物。
[3]
上記第2のフィブロインにおける上記他のアミノ酸残基が、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、システイン(C)、メチオニン(M)アラニン(A)、グリシン(G)、スレオニン(T)、セリン(S)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、プロリン(P)及びヒスチジン(H)からなる群より選択されるアミノ酸残基である、[1]又は[2]に記載のフィブロイン組成物。
[4]
上記第2のフィブロインは、REP中にGPGXX(但し、Xはグリシン残基以外のアミノ酸残基を示す。)モチーフを含み、GPGXXモチーフ含有率が10%以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載のフィブロイン組成物。
[5]
上記第2のフィブロインは、REPの疎水性度が−0.8以上である、[1]〜[4]のいずれかに記載のフィブロイン組成物。
[6]
上記第1のフィブロインは、配列番号1〜10のいずれかで示されるアミノ酸配列、又は配列番号1〜10のいずれかで示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載のフィブロイン組成物。
[7]
上記第2のフィブロインは、配列番号11〜24のいずれかで示されるアミノ酸配列、又は配列番号11〜24のいずれかで示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、[1]〜[6]のいずれかに記載のフィブロイン組成物。
[8]
[1]〜[7]のいずれかに記載のフィブロイン組成物を含み、
繊維、糸、フィラメント、フィルム、発泡体、球体、ナノフィブリル、ヒドロゲル、樹脂及びその等価物からなる群から選択される製品。
[9]
[1]〜[7]のいずれかに記載のフィブロイン組成物が、溶媒に溶解してなる、フィブロイン溶液。
[10]
上記溶媒が、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、ヘキサフルオロアセトン(HFA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ギ酸、尿素、グアニジン、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、臭化リチウム、塩化カルシウム及びチオシアン酸リチウム、並びにこれら2種以上の混合溶媒からなる群より選ばれる溶媒である、[9]に記載のフィブロイン溶液。
[11]
上記第1のフィブロインと、上記第2のフィブロイン及び第3のフィブロインからなる群より選択される少なくとも1種のフィブロインとの含有比率が、重量基準で9.9:0.1〜5.0:5.0である、[9]又は[10]に記載のフィブロイン溶液。
[12]
上記第1のフィブロインと、上記第2のフィブロイン及び第3のフィブロインからなる群より選択される少なくとも1種のフィブロインとの含有比率が、重量基準で5.0:5.0〜5.0.1:9.9である、[9]又は[10]に記載のフィブロイン溶液。
[13]
上記第1のフィブロインと、上記第2のフィブロイン及び第3のフィブロインからなる群より選択される少なくとも1種のフィブロインとの含有比率が、重量基準で5.0:5.0である、[9]又は[10]に記載のフィブロイン溶液。
[14]
[9]〜[13]のいずれかに記載のフィブロイン溶液を使用したフィブロイン繊維の製造方法であって、
上記フィブロイン溶液をドープ液とし、
上記ドープ液を口金から凝固液に押し出し、未延伸糸を得る工程を含む、フィブロイン繊維の製造方法。
[15]
上記未延伸糸を延伸する工程を更に含む、[14]に記載のフィブロイン繊維の製造方法。
[16]
上記凝固液が、メタノール、エタノール及び2−プロパノールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[14]又は[15]に記載のフィブロイン繊維の製造方法。
本発明によれば、耐水性に優れた製品(フィブロイン繊維等)を製造可能なフィブロイン組成物の提供が可能となる。
一実施形態に係るフィブロインのドメイン配列を示す模式図である。 一実施形態に係るフィブロインのドメイン配列を示す模式図である。 水等との接触によるフィブロイン繊維の長さ変化の例を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
〔フィブロイン組成物〕
本発明に係るフィブロイン組成物は、少なくとも2種のフィブロインを含む。すなわち、本発明に係るフィブロイン組成物は、第1のフィブロインを含み、更に第2のフィブロイン及び第3のフィブロインからなる群より選択される少なくとも1種のフィブロインを含む。ここで、第1のフィブロインは、(A)モチーフの含有量が低減されたドメイン配列を有するフィブロインである。第2及び第3のフィブロインは、疎水性を高めたフィブロインであり、具体的には、第2のフィブロインは、グルタミン残基の含有量が低減されたドメイン配列を有するフィブロインであり、第3のフィブロインは、局所的に疎水性指標の大きい領域を含むドメイン配列を有するフィブロインである。
本発明に係るフィブロインは、式A:[(A)モチーフ−REP]又は式B:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むタンパク質である。本発明に係るフィブロインは、ドメイン配列のN末端側及びC末端側のいずれか一方又は両方に更にアミノ酸配列(N末端配列及びC末端配列)が付加されていてもよい。N末端配列及びC末端配列は、これに限定されるものではないが、典型的には、フィブロインに特徴的なアミノ酸モチーフの反復を有さない領域であり、100残基程度のアミノ酸からなる。
本明細書において「ドメイン配列」とは、フィブロイン特有の結晶領域(典型的には、アミノ酸配列の(A)モチーフに相当する。)と非晶領域(典型的には、アミノ酸配列のREPに相当する。)を生じるアミノ酸配列である。(A)モチーフは4〜20アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、かつ(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が80%以上である。REPは10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。mは8〜300の整数を示す。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。
(A)モチーフは、(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が80%以上であればよいが、83%以上であることが好ましく、86%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましく、95%以上であることが更により好ましく、100%であること(アラニン残基のみで構成されることを意味する)が特に好ましい。ドメイン配列中に複数存在する(A)モチーフは、少なくとも7つがアラニン残基のみで構成されることが好ましい。アラニン残基のみで構成されるとは、(A)モチーフが、(A)(Aはアラニン残基を示し、nは4〜20の整数、好ましくは4〜16の整数を示す。)で表されるアミノ酸配列を有することを意味する。
(第1のフィブロイン)
本発明に係る第1のフィブロインは、式1:[(A)モチーフ−REP]m1で表されるドメイン配列を含み、N末端側からC末端側に向かって、隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのREPのアミノ酸残基数を順次比較して、アミノ酸残基数が少ないREPのアミノ酸残基数を1としたとき、他方のREPのアミノ酸残基数の比が1.8〜11.3となる上記隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのアミノ酸残基数を足し合わせた合計値の最大値をxとし、上記ドメイン配列の総アミノ酸残基数をyとしたときに、x/yが50%以上であるアミノ酸配列を有するフィブロインである(但し、第2のフィブロイン又は第3のフィブロインに該当するフィブロインを除く。)。
ここで、式1中、(A)モチーフは、4〜27アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、かつ(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が80%以上であり、REPは、10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、m1は、8〜300の整数を示す。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。
第1のフィブロインは、(A)モチーフの含有量が低減されているため、隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのREPのアミノ酸残基数の比(以下、「ギザ比率」ともいう。)が、上記x/yで示す範囲に入る割合が高くなっている。第1のフィブロインにおけるx/yは、60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましく、75%以上であることが更により好ましく、80%以上であることが更によりまた好ましく、85%以上であることが特に好ましい。x/yの上限に特に制限はなく、例えば、100%以下であってよい。x/yがこの範囲にあることにより、応力及び伸度に優れたフィブロイン繊維を得ることができるフィブロインとなる。
x/yは、特許文献2(国際公開第2017/188434号)に記載した方法に従って算出すればよい。
第1のフィブロインは、特許文献2(国際公開第2017/188434号)に記載した改変フィブロインであってよい。すなわち、第1のフィブロインは、例えば、天然由来のフィブロインの遺伝子配列から、x/yが50%以上になるように(A)モチーフをコードする配列の1又は複数を欠失させることにより得ることができる。また、例えば、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から、x/yが50%以上になるように1又は複数の(A)モチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより得ることもできる。いずれの場合においても、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から(A)モチーフが欠失したことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変を行ってもよい。
アミノ酸残基の置換、欠失、挿入及び/又は付加は、部分特異的突然変異誘発法等の当業者に周知の方法により行うことができる。具体的には、Nucleic Acid Res.10,6487(1982)、Methods in Enzymology,100,448(1983)等の文献に記載されている方法に準じて行うことができる。
天然由来のフィブロインとして、具体的には、例えば、昆虫又はクモ類が産生するフィブロインが挙げられる。
昆虫が産生するフィブロインとしては、例えば、ボンビックス・モリ(Bombyx mori)、クワコ(Bombyx mandarina)、天蚕(Antheraea yamamai)、柞蚕(Anteraea pernyi)、楓蚕(Eriogyna pyretorum)、蓖蚕(Pilosamia Cynthia ricini)、樗蚕(Samia cynthia)、栗虫(Caligura japonica)、チュッサー蚕(Antheraea mylitta)、ムガ蚕(Antheraea assama)等のカイコが産生する絹タンパク質、スズメバチ(Vespa simillima xanthoptera)の幼虫が吐出するホーネットシルクタンパク質が挙げられる。
昆虫が産生するフィブロインのより具体的な例としては、例えば、カイコ・フィブロインL鎖(GenBankアクセッション番号M76430(塩基配列)、AAA27840.1(アミノ酸配列))が挙げられる。
クモ類が産生するフィブロインとしては、例えば、オニグモ、ニワオニグモ、アカオニグモ、アオオニグモ及びマメオニグモ等のオニグモ属(Araneus属)に属するクモ、ヤマシロオニグモ、イエオニグモ、ドヨウオニグモ及びサツマノミダマシ等のヒメオニグモ属(Neoscona属)に属するクモ、コオニグモモドキ等のコオニグモモドキ属(Pronus属)に属するクモ、トリノフンダマシ及びオオトリノフンダマシ等のトリノフンダマシ属(Cyrtarachne属)に属するクモ、トゲグモ及びチブサトゲグモ等のトゲグモ属(Gasteracantha属)に属するクモ、マメイタイセキグモ及びムツトゲイセキグモ等のイセキグモ属(Ordgarius属)に属するクモ、コガネグモ、コガタコガネグモ及びナガコガネグモ等のコガネグモ属(Argiope属)に属するクモ、キジロオヒキグモ等のオヒキグモ属(Arachnura属)に属するクモ、ハツリグモ等のハツリグモ属(Acusilas属)に属するクモ、スズミグモ、キヌアミグモ及びハラビロスズミグモ等のスズミグモ属(Cytophora属)に属するクモ、ゲホウグモ等のゲホウグモ属(Poltys属)に属するクモ、ゴミグモ、ヨツデゴミグモ、マルゴミグモ及びカラスゴミグモ等のゴミグモ属(Cyclosa属)に属するクモ、及びヤマトカナエグモ等のカナエグモ属(Chorizopes属)に属するクモが産生するスパイダーシルクタンパク質、並びにアシナガグモ、ヤサガタアシナガグモ、ハラビロアシダカグモ及びウロコアシナガグモ等のアシナガグモ属(Tetragnatha属)に属するクモ、オオシロカネグモ、チュウガタシロカネグモ及びコシロカネグモ等のシロカネグモ属(Leucauge属)に属するクモ、ジョロウグモ及びオオジョロウグモ等のジョロウグモ属(Nephila属)に属するクモ、キンヨウグモ等のアズミグモ属(Menosira属)に属するクモ、ヒメアシナガグモ等のヒメアシナガグモ属(Dyschiriognatha属)に属するクモ、クロゴケグモ、セアカゴケグモ、ハイイロゴケグモ及びジュウサンボシゴケグモ等のゴケグモ属(Latrodectus属)に属するクモ、及びユープロステノプス属(Euprosthenops属)に属するクモ等のアシナガグモ科(Tetragnathidae科)に属するクモが産生するスパイダーシルクタンパク質が挙げられる。スパイダーシルクタンパク質としては、例えば、MaSp(MaSp1及びMaSp2)、ADF(ADF3及びADF4)等の牽引糸タンパク質、MiSp(MiSp1及びMiSp2)等が挙げられる。
クモ類が産生するフィブロインのより具体的な例としては、例えば、fibroin−3(adf−3)[Araneus diadematus由来](GenBankアクセッション番号AAC47010(アミノ酸配列)、U47855(塩基配列))、fibroin−4(adf−4)[Araneus diadematus由来](GenBankアクセッション番号AAC47011(アミノ酸配列)、U47856(塩基配列))、dragline silk protein spidroin 1[Nephila clavipes由来](GenBankアクセッション番号AAC04504(アミノ酸配列)、U37520(塩基配列))、major angu11ate spidroin 1[Latrodectus hesperus由来](GenBankアクセッション番号ABR68856(アミノ酸配列)、EF595246(塩基配列))、dragline silk protein spidroin 2[Nephila clavata由来](GenBankアクセッション番号AAL32472(アミノ酸配列)、AF441245(塩基配列))、major anpullate spidroin 1[Euprosthenops australis由来](GenBankアクセッション番号CAJ00428(アミノ酸配列)、AJ973155(塩基配列))、及びmajor ampullate spidroin 2[Euprosthenops australis](GenBankアクセッション番号CAM32249.1(アミノ酸配列)、AM490169(塩基配列))、minor ampullate silk protein 1[Nephila clavipes](GenBankアクセッション番号AAC14589.1(アミノ酸配列))、minor ampullate silk protein 2[Nephila clavipes](GenBankアクセッション番号AAC14591.1(アミノ酸配列))、minor ampullate spidroin−like protein[Nephilengys cruentata](GenBankアクセッション番号ABR37278.1(アミノ酸配列)等が挙げられる。
天然由来のフィブロインのより具体的な例としては、更に、NCBI GenBankに配列情報が登録されているフィブロインを挙げることができる。例えば、NCBI GenBankに登録されている配列情報のうちDIVISIONとしてINVを含む配列の中から、DEFINITIONにspidroin、ampullate、fibroin、「silk及びpolypeptide」、又は「silk及びprotein」がキーワードとして記載されている配列、CDSから特定のproductの文字列、SOURCEからTISSUE TYPEに特定の文字列の記載された配列を抽出することにより確認することができる。
第1のフィブロインは、N末端及びC末端のいずれか一方又は両方にタグ配列を含んでいてもよい。これにより、第1のフィブロインの単離、固定化、検出及び可視化等が可能となる。タグ配列の具体例として、例えば、配列番号25で示されるアミノ酸配列(Hisタグを含むアミノ酸配列)が挙げられる。
第1のフィブロインのより具体的な例として、(i)配列番号1〜10のいずれかで示されるアミノ酸配列(表1参照)、又は(ii)配列番号1〜10のいずれかで示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むフィブロインを挙げることができる。
(i)のフィブロインは、配列番号1〜10のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(ii)のフィブロインは、配列番号1〜10のいずれかで示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(ii)のフィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]m1で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。(ii)のフィブロインは、x/yが上述した範囲内にあることが好ましい。
Figure 2021080168
(第2のフィブロイン)
本発明に係る第2のフィブロインは、式2:[(A)モチーフ−REP]m2で表されるドメイン配列又は式3:[(A)モチーフ−REP]m3−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含み、グルタミン残基含有率が9%以下であるアミノ酸配列を有するフィブロインである。
式2及び式3中、(A)モチーフは、それぞれ独立に、4〜27アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、かつ(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が80%以上であり、REPは、それぞれ独立に、10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、m2及びm3は、それぞれ独立に、8〜300の整数を示す。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。
第2のフィブロインは、グルタミン残基含有率が9%以下であればよく、7%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましく、0%であることが特に好ましい。グルタミン残基含有率がこの範囲にあることにより、収縮が抑制又は低減されたフィブロイン繊維を得ることができるフィブロインとなる。
本明細書において、「グルタミン残基含有率」は、以下の方法により算出される値である。図1は、フィブロインのドメイン配列を示す模式図である。図1を参照しながらグルタミン残基含有率の算出方法を具体的に説明する。式A:[(A)モチーフ−REP]、又は式B:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むフィブロインにおいて、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列(図1の「領域A」に相当する配列。)に含まれる全てのREPにおいて、その領域に含まれるグルタミン残基の総数をaとし、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除き、更に(A)モチーフを除いた全REPのアミノ酸残基の総数をbとしたときに、グルタミン残基含有率はa/bとして算出される。
グルタミン残基含有率の算出において、「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列」を対象としているのは、「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列」(REPに相当する配列)には、フィブロインに特徴的な配列と相関性の低い配列が含まれることがあり、mが小さい場合(つまり、ドメイン配列が短い場合)、グルタミン残基含有率の算出結果に影響するので、この影響を排除するためである。
第2のフィブロインは、例えば、天然由来のフィブロインの遺伝子配列から、グルタミン残基含有率が9%以下になるように、REP中の1又は複数のグルタミン残基を欠失させること、及び/又はREP中の1又は複数のグルタミン残基を他のアミノ酸残基に置換することにより得ることができる。また、例えば、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から、グルタミン残基含有率が9%以下になるように、REP中の1又は複数のグルタミン残基を欠失したこと、及び/又はREP中の1又は複数のグルタミン残基を他のアミノ酸残基に置換したことに相当するアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより得ることもできる。いずれの場合においても、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列からREP中の1又は複数のグルタミン残基を欠失させること、及び/又はREP中の1又は複数のグルタミン残基を他のアミノ酸残基に置換することに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変を行ってもよい。アミノ酸残基の置換、欠失、挿入及び/又は付加を行う方法、並びに天然由来のフィブロインは、第1のフィブロインで説明したとおりである。
「他のアミノ酸残基」は、グルタミン残基以外のアミノ酸残基であればよいが、グルタミン残基よりも疎水性指標の大きいアミノ酸残基であることが好ましい。アミノ酸残基の疎水性指標については、公知の指標(Hydropathy index:Kyte J,&Doolittle R(1982)“A simple method for displaying the hydropathic character of a protein”,J.Mol.Biol.,157,pp.105−132)を使用する。具体的には、各アミノ酸の疎水性指標(ハイドロパシー・インデックス、以下「HI」とも記す。)は、下記表2に示すとおりである。
Figure 2021080168
表2に示すとおり、グルタミン残基よりも疎水性指標の大きいアミノ酸残基としては、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、システイン(C)、メチオニン(M)アラニン(A)、グリシン(G)、スレオニン(T)、セリン(S)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、プロリン(P)及びヒスチジン(H)から選ばれるアミノ酸残基を挙げることができる。これらの中でも、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、システイン(C)、メチオニン(M)及びアラニン(A)から選ばれるアミノ酸残基であることがより好ましく、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)及びフェニルアラニン(F)から選ばれるアミノ酸残基であることが更に好ましい。
第2のフィブロインは、REPのアミノ酸配列中に、GGXモチーフ及びGPGXXモチーフ(Gはグリシン残基、Pはフェニルアラニン残基、Xはグリシン残基以外のアミノ酸残基を示す。)から選ばれる少なくとも一つのモチーフが含まれていることが好ましい。REP中にこれらのモチーフが含まれることにより、第2のフィブロインの伸度を向上させることができる。
第2のフィブロインが、REP中にGPGXXモチーフを含む場合、GPGXXモチーフ含有率は、通常1%以上であり、5%以上であってもよく、10%以上であるのが好ましい。これにより、第2のフィブロインの伸度をより向上させることができる。GPGXXモチーフ含有率の上限に特に制限はなく、50%以下であってよく、30%以下であってもよい。
本明細書において、「GPGXXモチーフ含有率」は、以下の方法により算出される値である。式A:[(A)モチーフ−REP]、又は式B:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むフィブロインにおいて、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列に含まれる全てのREPにおいて、その領域に含まれるGPGXXモチーフの個数の総数を3倍した数(即ち、GPGXXモチーフ中のG及びPの総数に相当)をcとし、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除き、更に(A)モチーフを除いた全REPのアミノ酸残基の総数をdとしたときに、GPGXXモチーフ含有率はc/dとして算出される。
GPGXXモチーフ含有率の算出において、「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列」を対象としている理由は、上述した理由と同様である。なお、REPのC末端に「GPGXXモチーフ」が位置する場合、「XX」が例えば「AA」の場合であっても、「GPGXXモチーフ」として扱う。
図1は、フィブロインのドメイン配列を示す模式図である。図1を参照しながらGPGXXモチーフ含有率の算出方法を具体的に説明する。まず、図1に示したフィブロインのドメイン配列(「[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフ」タイプである。)では、全てのREPが「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列」(図1中、「領域A」で示した配列。)に含まれているため、cを算出するためのGPGXXモチーフの個数は7であり、cは7×3=21となる。同様に、全てのREPが「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列」(図1中、「領域A」で示した配列。)に含まれているため、当該配列から更に(A)モチーフを除いた全REPのアミノ酸残基の総数dは50+40+10+20+30=150である。次に、cをdで除すことによって、c/d(%)を算出することができ、図1のフィブロインの場合21/150=14.0%となる。
第2のフィブロインは、REPの疎水性度が、−0.8以上であることが好ましく、−0.7以上であることがより好ましく、0以上であることが更に好ましく、0.3以上であることが更により好ましく、0.4以上であることが特に好ましい。REPの疎水性度の上限に特に制限はなく、1.0以下であってよく、0.7以下であってもよい。
本明細書において、「REPの疎水性度」は、以下の方法により算出される値である。式A:[(A)モチーフ−REP]、又は式B:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むフィブロインにおいて、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列(図1の「領域A」に相当する配列。)に含まれる全てのREPにおいて、その領域の各アミノ酸残基の疎水性指標の総和をeとし、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除き、更に(A)モチーフを除いた全REPのアミノ酸残基の総数をfとしたときに、REPの疎水性度はe/fとして算出される。REPの疎水性度の算出において、「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列」を対象としている理由は、上述した理由と同様である。
第2のフィブロインは、N末端及びC末端のいずれか一方又は両方にタグ配列を含んでいてもよい。これにより、第2のフィブロインの単離、固定化、検出及び可視化等が可能となる。タグ配列の具体例として、例えば、配列番号25で示されるアミノ酸配列(Hisタグを含むアミノ酸配列)が挙げられる。
第2のフィブロインのより具体的な例として、(iii)配列番号11〜24のいずれかで示されるアミノ酸配列(表3参照)、又は(iv)配列番号11〜24のいずれかで示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むフィブロインを挙げることができる。
(iii)のフィブロインは、配列番号11〜24のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(iv)のフィブロインは、配列番号11〜24のいずれかで示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(iv)のフィブロインもまた、式2:[(A)モチーフ−REP]m2又は式3:[(A)モチーフ−REP]m3−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。(iv)のフィブロインは、グルタミン残基含有率が上述した範囲内にあることが好ましい。また、(iv)のフィブロインは、GPGXXモチーフ含有率が上述した範囲内にあることが好ましい。
Figure 2021080168
(第3のフィブロイン)
本発明に係る第3のフィブロインは、式4:[(A)モチーフ−REP]m4で表されるドメイン配列を含み、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列に含まれる全てのREPにおいて、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域に含まれるアミノ酸残基の総数をzとし、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列に含まれるアミノ酸残基の総数をwとしたときに、z/wが6.2%以上であるアミノ酸配列を有するフィブロインである(但し、第2のフィブロインに該当するフィブロインを除く。)。
ここで、式4中、(A)モチーフは、4〜27アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、かつ(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が80%以上であり、REPは、10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、m4は、8〜300の整数を示す。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。
第3のフィブロインは、z/wが6.2%以上であればよく、7%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることが更に好ましく、30%以上であることが更により好ましい。z/wの上限は、特に制限されないが、例えば、45%以下であってもよい。
z/wは、以下の方法で算出される値である。算出には、ドメイン配列から、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列を除いた配列(以下、「配列A」とする)を用いる。まず、配列Aに含まれる全てのREPにおいて、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値を算出する。疎水性指標の平均値は、連続する4アミノ酸残基に含まれる各アミノ酸残基のHIの総和を4(アミノ酸残基数)で除して求める。疎水性指標の平均値は、全ての連続する4アミノ酸残基について求める(各アミノ酸残基は、1〜4回平均値の算出に用いられる。)。次いで、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域を特定する。あるアミノ酸残基が、複数の「疎水性指標の平均値が2.6以上となる連続する4アミノ酸残基」に該当する場合であっても、領域中には1アミノ酸残基として含まれることになる。そして、当該領域に含まれるアミノ酸残基の総数がzである。また、配列Aに含まれるアミノ酸残基の総数がwである。
例えば、「疎水性指標の平均値が2.6以上となる連続する4アミノ酸残基」が20カ所抽出された場合(重複はなし)、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域には、連続する4アミノ酸残基(重複はなし)が20含まれることになり、zは20×4=80である。また、例えば、2つの「疎水性指標の平均値が2.6以上となる連続する4アミノ酸残基」が1アミノ酸残基だけ重複して存在する場合、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域には、7アミノ酸残基含まれることになる(z=2×4−1=7。「−1」は重複分の控除である。)。例えば、図2に示したドメイン配列の場合、「疎水性指標の平均値が2.6以上となる連続する4アミノ酸残基」が重複せずに7つ存在するため、zは7×4=28となる。また、例えば、図2に示したドメイン配列の場合、wは4+50+4+40+4+10+4+20+4+30=170である(C末端側の最後に存在する(A)モチーフは含めない)。次に、zをwで除すことによって、z/w(%)を算出することができる。図2の場合28/170=16.47%となる。
アミノ酸残基の疎水性指標については、公知の指標(Hydropathy index:Kyte J,&Doolittle R(1982)“A simple method for displaying the hydropathic character of a protein”,J.Mol.Biol.,157,pp.105−132)を使用する。具体的には、表2に示すとおりである。
第3のフィブロインは、例えば、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列を、上記のz/wの条件を満たすように、REP中の1又は複数の親水性アミノ酸残基(例えば、疎水性指標がマイナスであるアミノ酸残基)を疎水性アミノ酸残基(例えば、疎水性指標がプラスであるアミノ酸残基)に置換すること、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性アミノ酸残基を挿入することにより、局所的に疎水性指標の大きい領域を含むアミノ酸配列に改変することにより得ることができる。また、例えば、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から上記のz/wの条件を満たすアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより得ることもできる。いずれの場合においても、天然由来のフィブロインと比較して、REP中の1又は複数のアミノ酸残基が疎水性指標の大きいアミノ酸残基に置換されたこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性指標の大きいアミノ酸残基が挿入されたことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当する改変を行ってもよい。アミノ酸残基の置換、欠失、挿入及び/又は付加を行う方法、並びに天然由来のフィブロインは、第1のフィブロインで説明したとおりである。
疎水性指標の大きいアミノ酸残基としては、特に制限はないが、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、システイン(C)、メチオニン(M)及びアラニン(A)が好ましく、バリン(V)、ロイシン(L)及びイソロイシン(I)がより好ましい。
第3のフィブロインは、N末端及びC末端のいずれか一方又は両方にタグ配列を含んでいてもよい。これにより、第3のフィブロインの単離、固定化、検出及び可視化等が可能となる。タグ配列の具体例として、例えば、配列番号25で示されるアミノ酸配列(Hisタグを含むアミノ酸配列)が挙げられる。
第3のフィブロインのより具体的な例として、(v)配列番号27〜32のいずれかで示されるアミノ酸配列(表4参照)、又は(vi)配列番号27〜32のいずれかで示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むフィブロインを挙げることができる。
(v)のフィブロインは、配列番号27〜32のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(vi)のフィブロインは、配列番号27〜32のいずれかで示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(vi)のフィブロインもまた、式4:[(A)モチーフ−REP]m4で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。(vi)のフィブロインは、z/wが上述した範囲内にあることが好ましい。
Figure 2021080168
(フィブロインの製造)
第1のフィブロイン、第2のフィブロイン、及び第3のフィブロインは、特許文献2(国際公開第2017/188434号)に記載した方法により取得することができる。すなわち、本実施形態に係るフィブロインをコードする核酸を当該核酸配列に作動可能に連結された1又は複数の調節配列とを有する発現ベクターで宿主を形質転換し、当該宿主において、本発明に係る核酸を発現させることにより、本実施形態に係るフィブロインを生産することができる。また、特許文献2(国際公開第2017/188434号)に記載した方法により、精製されたフィブロインを取得することができる。
(フィブロイン組成物)
本発明に係るフィブロイン組成物における、第1のフィブロイン、並びに第2のフィブロイン及び第3のフィブロインから選択される少なくとも1種の含有比率は特に制限されるものではなく、フィブロイン組成物の用途等に応じて、適宜設定することができる。第1のフィブロインは、応力及び伸度に関して優れた性質を有しており、第2及び第3のフィブロインは耐水性に関して優れた性質を有している。したがって、フィブロイン組成物における第1のフィブロイン、並びに第2のフィブロイン及び第3のフィブロインから選択される少なくとも1種の含有比率は、応力及び伸度、又は耐水性のいずれを強化したいかにより、適宜決定すればよく、例えば応力及び伸度を重視する場合には第1のフィブロインの割合を多くすればよく、第1のフィブロインと、第2のフィブロイン及び第3のフィブロインから選ばれる少なくとも1種との含有比率を9.9:0.1〜5.0:5.0(重量比)の範囲にすることが好ましい。また、耐水性を重視する場合には第2のフィブロイン及び第3のフィブロインから選ばれる少なくとも1種の割合を多くすればよく、第1のフィブロインと、第2のフィブロイン及び第3のフィブロインから選ばれる少なくとも1種との含有比率を5.0:5.0〜5.0.1:9.9の範囲にすることが好ましい。さらに応力及び伸度、並びに耐水性をバランスよく発揮させる場合には、第1のフィブロインと、第2のフィブロイン及び第3のフィブロインから選ばれる少なくとも1種との含有比率を5.0:5.0としてもよい。
本発明に係るフィブロイン組成物は、粉末状、ペースト状、液状(例えば、懸濁液、後述のフィブロイン溶液)のいずれの形態であってもよい。また、本発明に係るフィブロイン組成物は、原料組成物の形態の他、当該フィブロイン組成物を含む、又は当該フィブロイン組成物からなる成形体(例えば、後述のフィブロイン繊維等の製品)の形態であってもよい。
本発明に係るフィブロイン組成物は、その形態等に応じて、第1のフィブロイン、並びに第2のフィブロイン及び第3のフィブロインから選択される少なくとも1種以外の成分を含むものであってもよい。
〔製品〕
本発明に係るフィブロイン組成物は、当該フィブロイン組成物を含む、又は当該フィブロイン組成物からなる製品であってもよい。製品としては、例えば、繊維、糸、フィラメント、フィルム、発泡体、球体、ナノフィブリル、ヒドロゲル、樹脂及びその等価物からなる群から選択される製品が挙げられる。これらは、特開2009−505668号公報、特許第5678283号公報、特許第4638735号公報等に記載の方法に準じて製造することができる。
本発明に係るフィブロイン組成物から形成されたフィブロイン繊維は、繊維又は糸として、織物、編物、組み物、不織布等に応用できる。また、ロープ、手術用縫合糸、電気部品用の可撓性止め具、さらには移植用生理活性材料(例えば、人工靭帯及び大動脈バンド)等の高強度用途にも応用できる。
〔フィブロイン溶液〕
本発明に係るフィブロイン溶液は、本発明に係るフィブロイン組成物が、溶媒に溶解してなるものである。当該フィブロイン溶液は、例えば、ドープ液として、フィブロイン繊維、フィブロインフィルム等の成形に用いることができる。
溶媒としては、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、ヘキサフルオロアセトン(HFA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ギ酸、並びに尿素、グアニジン、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、臭化リチウム、塩化カルシウム及びチオシアン酸リチウム等を含む水溶液等を挙げることができる。これらの溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
本実施形態に係るフィブロイン溶液には、必要に応じて無機塩を添加してもよい。無機塩としては、例えば、以下に示すルイス酸とルイス塩基とからなる無機塩が挙げられる。ルイス塩基としては、例えば、オキソ酸イオン(硝酸イオン、過塩素酸イオン等)、金属オキソ酸イオン(過マンガン酸イオン等)、ハロゲン化物イオン、チオシアン酸イオン、シアン酸イオン等が挙げられる。ルイス酸としては、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン等の金属イオン、アンモニウムイオン等の多原子イオン、錯イオン等が挙げられる。ルイス酸とルイス塩基とからなる無機塩の具体例としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、硝酸リチウム、過塩素酸リチウム、及びチオシアン酸リチウム等のリチウム塩、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、硝酸カルシウム、過塩素酸カルシウム、及びチオシアン酸カルシウム等のカルシウム塩、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、硝酸鉄、過塩素酸鉄、及びチオシアン酸鉄等の鉄塩、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、硝酸アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、及びチオシアン酸アルミニウム等のアルミニウム塩、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硝酸カリウム、過塩素酸カリウム、及びチオシアン酸カリウム等のカリウム塩、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硝酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、及びチオシアン酸ナトリウム等のナトリウム塩、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硝酸亜鉛、過塩素酸亜鉛、及びチオシアン酸亜鉛等の亜鉛塩、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硝酸マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、及びチオシアン酸マグネシウム等のマグネシウム塩、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、硝酸バリウム、過塩素酸バリウム、及びチオシアン酸バリウム等のバリウム塩、並びに塩化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、過塩素酸ストロンチウム、及びチオシアン酸ストロンチウム等のストロンチウム塩が挙げられる。
本実施形態に係るフィブロイン溶液は、第1のフィブロインと、第2のフィブロイン及び第3のフィブロインから選択される少なくとも1種とが混合(以下、「混合フィブロイン」と呼ぶこともある。)して溶解した溶液を調製することにより得ることができる。混合は第1のフィブロインを溶媒に溶解させた溶解液と、第2のフィブロイン及び第3のフィブロインから選択される少なくとも1種を溶媒に溶解させた溶解液を混合してもよく、第1のフィブロインと、第2のフィブロイン及び第3のフィブロインから選択される少なくとも1種と、を同一の溶媒中で混合して溶解させてもよい。
本実施形態に係るフィブロイン溶液の調製時に、30〜90℃に加温してもよい。使用する溶媒及びフィブロインの種類等に応じて溶解可能な温度を適時設定すればよい。溶解を促進するために振盪、撹拌してもよい。
本実施形態に係るフィブロイン溶液の粘度は、フィブロイン溶液の用途等に応じて適宜設定してよい。例えば、本実施形態に係るフィブロイン溶液を紡糸液(ドープ液)として使用する場合、その粘度は、紡糸方法に応じて適宜設定してよく、例えば、35℃において100〜15,000cP(センチポイズ)、40℃において100〜30,000cP(センチポイズ)等に設定すればよい。紡糸液の粘度は、例えば京都電子工業社製の商品名“EMS粘度計”を使用して測定することができる。
本実施形態に係るフィブロイン溶液における、第1のフィブロイン、並びに第2のフィブロイン及び第3のフィブロインから選択される少なくとも1種の含有比率は特に制限されるものではなく、フィブロイン溶液の用途等に応じて、適宜設定することができる。具体的には、例えば応力及び伸度を重視する場合には、第1のフィブロインと、第2のフィブロイン及び第3のフィブロインから選ばれる少なくとも1種との含有比率を9.9:0.1〜5.0:5.0(重量比)の範囲にすることが好ましい。また、耐水性を重視する場合には、第1のフィブロインと、第2のフィブロイン及び第3のフィブロインから選ばれる少なくとも1種との含有比率を5.0:5.0〜5.0.1:9.9の範囲にすることが好ましい。さらに応力及び伸度、並びに耐水性をバランスよく発揮させる場合には、第1のフィブロインと、第2のフィブロイン及び第3のフィブロインから選ばれる少なくとも1種との含有比率を5.0:5.0としてもよい。
〔フィブロイン繊維の製造方法〕
本発明に係るフィブロイン繊維は、本発明に係るフィブロイン溶液を紡糸液(ドープ液)として使用し、フィブロインの紡糸に通常使用されている方法で紡糸することにより、得ることができる。
すなわち、例えば、本発明に係るフィブロイン繊維の製造方法は、本発明に係るフィブロイン溶液をドープ液とし、当該ドープ液を口金から凝固液に押し出し、未延伸糸を得る工程を含むものとすることができる。
紡糸液の溶媒としては、フィブロイン溶液の説明で例示した溶媒と同種のものを挙げることができる。紡糸液には、必要に応じて無機塩を添加してもよい。無機塩としては、フィブロイン溶液の説明で例示した無機塩と同種のものを挙げることができる。
紡糸液における第1のフィブロイン、並びに第2のフィブロイン及び第3のフィブロインから選択される少なくとも1種の含有比率は、フィブロイン溶液で説明したとおりである。第1のフィブロインと、第2のフィブロイン及び第3のフィブロインから選択される少なくとも1種とを適切に配合することにより、第1のフィブロインのみで紡糸したフィブロイン繊維より強度、伸度の優れたフィブロイン繊維(混合フィブロイン繊維)を得ることができる。また、第2のフィブロイン及び第3のフィブロインから選択される少なくとも1種のみで紡糸したフィブロイン繊維より耐水性の優れたフィブロイン繊維(混合フィブロイン繊維)を得ることができる。いずれにおいても、混合フィブロインを紡糸することにより、それぞれ単独でフィブロインを紡糸する場合より応力及び伸度又は耐水性に優れた混合フィブロイン繊維を得ることができる。
具体的には、例えば、第1のフィブロインとしてPRT799(配列番号9)タンパク質とを用い、第2のフィブロインとしてPRT918(配列番号22)タンパク質を用いた場合、第1のフィブロイン:第2のフィブロイン=7:3の比率で混合溶解させた紡糸液(ドープ液)を使用して紡糸した混合フィブロイン繊維は、PRT799(配列番号9)タンパク質のみを含む紡糸液を使用して紡糸したフィブロイン繊維より強度及び伸度が優れた混合フィブロイン繊維となる。また、第1のフィブロイン:第2のフィブロイン=3:7の比率で混合溶解させた紡糸液を使用して紡糸した混合フィブロイン繊維は、PRT918(配列番号22)タンパク質のみを含む紡糸液を使用して紡糸したフィブロイン繊維より耐水性が優れた混合フィブロイン繊維となる。
紡糸方法としては、本発明に係る混合フィブロインを紡糸できる方法であれば特に制限されず、例えば、乾式紡糸、溶融紡糸、湿式紡糸等を挙げることができる。好ましい紡糸方法としては、湿式紡糸を挙げることができる。
湿式紡糸では、混合フィブロインを溶解させた溶媒(紡糸液)を紡糸口金(ノズル)から凝固液(凝固液槽)の中に押出して、凝固液中で混合フィブロインを固めることにより糸の形状の未延伸糸を得ることができる。凝固液としては、脱溶媒できる溶液であればよく、例えば、メタノール、エタノール及び2−プロパノール等の炭素数1〜5の低級アルコール、並びにアセトン等を挙げることができる。凝固液には、適宜水を加えてもよい。凝固液の温度は、0〜30℃であることが好ましい。紡糸口金として、直径0.1〜0.6mmのノズルを有するシリンジポンプを使用する場合、押し出し速度(吐出量)は1ホール当たり、0.001〜0.50mL/分であってよく、0.01〜0.50mL/分であることが好ましく、0.01〜0.40mL/分であることがより好ましく、0.01〜0.35mL/分であることがさらに好ましく、0.02〜0.35mL/分であることが特に好ましい。凝固液槽の長さは、脱溶媒が効率的に行える長さがあればよく、例えば、200〜500mmである。未延伸糸の引き取り速度は、例えば、0.001〜100m/分であってよく、0.01〜100m/分であってよく、0.1〜80m/分であってよく、0.1〜60m/分であってよく、0.1〜40m/分であってよく、0.1〜30m/分であってよく、0.1〜25m/分であってよく、0.1〜20m/分であってよく、0.1〜15m/分であってよく、1〜15m/分であってよく、1〜13m/分であってよく、1〜10m/分であってよく、1〜5m/分であってよく、1〜3m/分であってよい。引き取り速度が0.001m/分より小さい場合は、充分な生産性を得ることができない。引き取り速度が100m/分を超える場合は、溶媒の液体飛散が著しくなるため好ましくない。滞留時間は、未延伸糸中からドープ溶媒が除去される時間であればよく、例えば、0.01〜3分であってよく、0.01〜1.5分であることが好ましく、0.01〜0.2分であることがより好ましく、0.03〜0.2分であることがさらに好ましく、0.05〜0.15分であることが特に好ましい。また、凝固液中で延伸(前延伸)をしてもよい。低級アルコールの蒸発を抑えるため凝固液を低温に維持し、未延伸糸の状態で引き取ってもよい。凝固液槽は多段設けてもよく、また延伸は必要に応じて、各段、又は特定の段で行ってもよい。
上記の方法で得られた未延伸糸(又は前延伸糸)は、延伸工程を経て延伸糸(混合フィブロイン繊維)とすることができる。延伸方法としては、湿熱延伸、乾熱延伸等をあげることができる。
湿熱延伸は、温水中、温水に有機溶剤等を加えた溶液中、スチーム加熱中で行うことができる。温度としては、例えば、50〜90℃であってよく、75〜85℃が好ましい。湿熱延伸では、未延伸糸(又は前延伸糸)を、例えば、1〜10倍延伸することができ、2〜8倍延伸することが好ましい。
乾熱延伸は、電気管状炉、乾熱板等を使用して行うことができる。温度としては、例えば、140℃〜270℃であってよく、160℃〜230℃が好ましい。乾熱延伸では、未延伸糸(又は前延伸糸)を、例えば、0.5〜8倍延伸することができ、1〜4倍延伸することが好ましい。
湿熱延伸及び乾熱延伸はそれぞれ単独で行ってもよく、またこれらを多段で、又は組み合わせて行ってもよい。すなわち、一段目延伸を湿熱延伸で行い、二段目延伸を乾熱延伸で行う、又は一段目延伸を湿熱延伸行い、二段目延伸を湿熱延伸行い、更に三段目延伸を乾熱延伸で行う等、湿熱延伸及び乾熱延伸を適宜組み合わせて行うことができる。
延伸工程における最終的な延伸倍率は、未延伸糸(又は前延伸糸)に対して、例えば、5〜20倍であり、6〜11倍であることが好ましい。
本発明に係る混合フィブロインは、延伸して混合フィブロイン繊維とした後、混合フィブロイン繊維内のポリペプチド分子間で化学的に架橋させてもよい。架橋させることができる官能基は、例えば、アミノ基、カルボキシル基、チオール基及びヒドロキシ基等が挙げられる。例えば、ポリペプチドに含まれるリジン側鎖のアミノ基は、グルタミン酸又はアスパラギン酸側鎖のカルボキシル基と脱水縮合によりアミド結合で架橋できる。真空加熱下で脱水縮合反応を行なうことにより架橋してもよいし、カルボジイミド等の脱水縮合剤により架橋させてもよい。
ポリペプチド分子間の架橋は、カルボジイミド、グルタルアルデヒド等の架橋剤を用いて行ってもよく、トランスグルタミナーゼ等の酵素を用いて行ってもよい。カルボジイミドは、一般式RN=C=NR(但し、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基を含む有機基を示す。)で示される化合物である。カルボジイミドの具体例として、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)等が挙げられる。これらの中でも、EDC及びDICはポリペプチド分子間のアミド結合形成能が高く、架橋反応し易いことから好ましい。
架橋処理は、混合フィブロイン繊維に架橋剤を付与して真空加熱乾燥で架橋するのが好ましい。架橋剤は純品を混合フィブロイン繊維に付与してもよいし、炭素数1〜5の低級アルコール及び緩衝液等で0.005〜10質量%の濃度に希釈したものを混合フィブロイン繊維に付与してもよい。架橋処理は、温度20〜45℃で3〜42時間行うのが好ましい。架橋処理により、混合フィブロイン繊維に更に高い応力(強度)を付与することができる。
(混合フィブロイン繊維の物性評価)
以下のようにして、混合フィブロイン繊維の物性を測定し、評価することができる。
(a)光学顕微鏡を用いて繊維の直径を求める。
(b)温度20℃、相対湿度65%の条件で引張り試験機(INSTRON3342)を用いて繊維の応力、初期弾性率、伸度(破断点変位、変位)、を測定する。引張試験では10m秒間隔で測定することが好ましい。例えば、混合フィブロイン繊維のサンプルを厚紙で作製した型枠に貼り付け、つかみ具間距離を20mm、引張り速度を10mm/分として行えばよい。ロードセル容量10N、つかみ冶具はクリップ式でよい。測定値は、例えば、サンプル数n=5の平均値として算出することが好ましい。
(混合フィブロイン繊維の収縮性評価)
水等との接触によるフィブロイン繊維の長さの変化の例を図3に示す。フィブロイン繊維は、沸点未満の水に接触(湿潤)させることにより収縮する(一次収縮)特性を有する。一次収縮後、乾燥させると更に収縮する(二次収縮)。二次収縮後、再度沸点未満の水に接触させると二次収縮前の長さにまで膨張し、以後乾燥と湿潤を繰り返すと、二次収縮と同程度の幅(図3の「伸縮率」)で、収縮と膨張を繰り返す(図3)。フィブロイン繊維において、このような収縮が少ない程好ましいが、特にフィブロイン繊維からなる織物等の製品においては、この二次収縮が少ないことが好ましい。
二次収縮は、以下の方法で求められる二次収縮率を指標として評価することができる。
<二次収縮率>
長さ約30cmの複数本のフィブロイン繊維を束ね、繊度150デニールの繊維束とする。この繊維束に0.8gの鉛錘を取り付け、その状態で繊維束を40℃の水に10分間浸漬し一次収縮させ、水中で繊維束の長さを測定する。
一次収縮した繊維束を水中から取り出し、0.8gの鉛錘を取り付けたまま室温で2時間おいて乾燥させる。乾燥後、繊維束の長さを測定する。再度、湿潤、乾燥を少なくとも3回繰り返し、湿潤時の平均の長さ(Lwet)、乾燥時の平均の長さ(Ldry)を求める。二次収縮率は下記式に従って算出される。
式:二次収縮率(%)=(1−(Ldry/Lwet))*100
天然由来のフィブロインを紡糸したフィブロイン繊維は、通常、二次収縮率は11〜20%であるが、本発明に係る第2のフィブロインを単独で紡糸したフィブロイン繊維(例えば、後述の参考例11)は、二次収縮率が8%以下に低減された繊維である。本実施形態に係る混合フィブロイン繊維は、第2のフィブロインを単独で紡糸したフィブロイン繊維と同等又はより低減された二次収縮率を示す。
〔フィブロインフィルム〕
本発明に係るフィブロインフィルムは、本発明に係る混合フィブロイン溶液をドープ溶液として使用し、当該ドープ溶液を基材表面にキャスト成形し、乾燥及び/又は脱溶媒することにより得ることができる。
ドープ溶液の溶媒としては、フィブロイン溶液の説明で例示した溶媒と同種のものを挙げることができる。また、溶媒としては、ギ酸、ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)、又はジメチルスルホキシド等の極性溶媒が好ましい。ドープ溶液には、必要に応じて無機塩を添加してもよい。無機塩としては、フィブロイン溶液の説明で例示した無機塩と同種のものを挙げることができる。
フィブロインフィルムを形成する際のドープ溶液の粘度は15〜80cP(センチポアズ)であることが好ましく、20〜70cPであることがより好ましい。
また、ドープ溶液全量を100質量%としたとき、本発明に係る混合フィブロインの濃度は3〜50質量%であることが好ましく、3.5〜35質量%であることがより好ましく、4.2〜15.8質量%であることがさらに好ましい。
基材は、樹脂基板、ガラス基板、金属基板等であってよい。基材は、キャスト成形後のフィルムを容易に剥離できる観点から、好ましくは樹脂基板である。樹脂基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、又はこれらのフィルム表面にシリコーン化合物を固定化させた剥離フィルムであってよい。基材は、HFIP、DMSO溶媒等に対して安定であり、ドープ溶液を安定してキャスト成形でき、成形後のフィルムを容易に剥離できる観点から、PETフィルム又はPETフィルム表面にシリコーン化合物を固定化させた剥離フィルムであることがより好ましい。
具体的な手順を説明すると、まずドープ液を基材表面に流延し、アプリケーター、ナイフコーター、バーコーター等の膜厚制御手段を使用して、所定の厚さ(例えば、乾燥及び/又は脱溶媒後の厚さで1〜1000μm)の濡れ膜を作製する。
乾燥及び/又は脱溶媒は、乾式又は湿式で行うことができる。乾式で行う方法としては、真空乾燥、熱風乾燥、風乾等を挙げることができる。湿式で行う方法としては、キャストフィルムを脱溶媒液(凝固液とも言う)に浸漬して溶媒を脱離する方法等を挙げることができる。脱溶媒液として、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール等の炭素数1〜5の低級アルコール等のアルコール液、水とアルコールとの混合液等を挙げることができる。脱溶媒液(凝固液)の温度は0〜90℃であることが好ましい。
乾燥及び/又は脱溶媒後の未延伸フィルムは、水中で1軸延伸又は2軸延伸することができる。2軸延伸は、逐次延伸でも同時2軸延伸でもよい。2段以上の多段延伸をしてもよい。延伸倍率は、縦、横ともに、好ましくは1.01〜6倍、より好ましくは1.05〜4倍である。この範囲であると応力−歪のバランスがとりやすい。水中延伸は、20〜90℃の水温で行われることが好ましい。延伸後のフィルムは、50〜200℃の乾熱で5〜600秒間熱固定することが好ましい。この熱固定により、常温における寸法安定性が得られる。なお、1軸延伸したフィルムは1軸配向フィルムとなり、2軸延伸したフィルムは2軸配向フィルムとなる。
(フィルムの耐水性評価)
フィルムの耐水性は、塩類の飽和水溶液を用いた飽和塩法を利用し、高湿度下での吸湿の度合いを測定することにより評価することができる。
塩類としては、硫酸カリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、炭酸カリウム、塩化マグネシウム等を挙げることができる。
フィルムの耐水性は、例えば、硫酸カリウムの飽和水溶液を入れたファルコンチューブ等の密閉容器に、適当な大きさに切断したフィルムを、水溶液に浸からないように設置し、例えば、相対湿度98%のような高湿度で平衡状態にある空気中で、20〜48時間静置し、フィルムの重量及び水分含量を測定し、重量あたりの水分含量より水分率をもとめることにより、評価することができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔(1)フィブロインをコードする核酸の合成、及び発現ベクターの構築〕
第1のフィブロインとして、配列番号1〜10で示されるアミノ酸配列を有するフィブロイン、及び第2のフィブロインとして、配列番号11〜24で示されるアミノ酸配列を有するフィブロインを設計した。これらのフィブロインは、天然由来のフィブロインであるNephila clavipes(GenBankアクセッション番号:P46804.1、GI:1174415)の塩基配列及びアミノ酸配列に基づき、設計したものである。
配列番号6〜10で示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1〜5で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号25で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)を付加したものである。配列番号18〜24で示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号11〜17で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号25で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)を付加したものである。
配列番号1〜10で示されるアミノ酸配列を有するフィブロインは、本発明に係る第1のフィブロインに該当する(表1参照)。配列番号11〜24で示されるアミノ酸配列を有するフィブロインは、本発明に係る第2のフィブロインに該当する(表3参照)。
配列番号1で示されるアミノ酸配列(Met−PRT399)は、上記天然由来のフィブロインの(A)モチーフ中のアラニン残基が連続するアミノ酸配列をアラニン残基が連続する数を5つになるよう欠失したアミノ酸配列に対し、N末端側からC末端側に向かって2つおきに(A)モチーフ((A))を欠失させ、更にC末端配列の手前に[(A)モチーフ−REP]を1つ挿入したものである。
配列番号2で示されるアミノ酸配列(Met−PRT410)は、配列番号1で示されるアミノ酸配列(Met−PRT399)のREP中の全てのGGXをGQXに置換したものである。
配列番号3で示されるアミノ酸配列(Met−PRT587)は、上記天然由来のフィブロインのアミノ酸配列に対して、生産性の向上を目的としてアミノ酸残基の置換、挿入及び欠失を施したものである。
配列番号4で示されるアミノ酸配列(Met−PRT799)は、上記天然由来のフィブロインのアミノ酸配列に対して、生産性の向上を目的としてアミノ酸残基の置換、挿入及び欠失を施したものである。
配列番号5で示されるアミノ酸配列(Met−PRT468)は、配列番号2で示されるアミノ酸配列(Met−PRT410)の各(A)モチーフのC末端側に2つのアラニン残基を挿入し、更に一部のグルタミン(Q)残基をセリン(S)残基に置換し、配列番号2の分子量とほぼ同じとなるようにN末端側の一部のアミノ酸を欠失させたものである。
配列番号11で示されるアミノ酸配列(M_PRT888)は、配列番号2で示されるアミノ酸配列(Met−PRT410)のREP中のQQを全てVLに置換したものである。
配列番号12で示されるアミノ酸配列(M_PRT965)は、配列番号2で示されるアミノ酸配列(Met−PRT410)のREP中のQQを全てTSに置換し、かつ残りのQをAに置換したものである。
配列番号13で示されるアミノ酸配列(M_PRT889)は、配列番号2で示されるアミノ酸配列(Met−PRT410)のREP中のQQを全てVLに置換し、かつ残りのQをIに置換したものである。
配列番号14で示されるアミノ酸配列(M_PRT916)は、配列番号2で示されるアミノ酸配列(Met−PRT410)のREP中のQQを全てVIに置換し、かつ残りのQをLに置換したものである。
配列番号15で示されるアミノ酸配列(M_PRT918)は、配列番号2で示されるアミノ酸配列(Met−PRT410)のREP中のQQを全てVFに置換し、かつ残りのQをIに置換したものである。
配列番号16で示されるアミノ酸配列(M_PRT699)は、配列番号2で示されるアミノ酸配列(Met−PRT410)に対し、各(A)モチーフ(A)のC末端側に2つのアラニン残基を挿入し、配列番号2で示されるアミノ酸配列(Met−PRT410)の分子量とほぼ同じになるよう、C末端側のドメイン配列2つを欠失させ、かつグルタミン残基(Q)13箇所をセリン残基(S)又はプロリン残基(P)に置換したアミノ酸配列(M_PRT525:配列番号26)を得た後、更に配列番号26で示されるアミノ酸配列(M_PRT525)のREP中のQQを全てVLに置換したものである。
配列番号17で示されるアミノ酸配列(M_PRT698)は、配列番号26で示されるアミノ酸配列(M_PRT525)のREP中のQQを全てVLに置換し、かつ残りのQをIに置換したものである。
設計した配列番号6〜10及び配列番号18〜24で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸をそれぞれ合成した。当該核酸には、5’末端にNdeIサイト、終止コドン下流にEcoRIサイトを付加した。これら5種類の核酸をクローニングベクター(pUC118)にクローニングした。その後、同核酸をNdeI及びEcoRIで制限酵素処理して切り出した後、タンパク質発現ベクターpET−22b(+)に組換えて発現ベクターを得た。
〔(2)タンパク質の発現〕
配列番号6〜10及び配列番号18〜24で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸を含むpET22b(+)発現ベクターで、大腸菌BLR(DE3)を形質転換した。当該形質転換大腸菌を、アンピシリンを含む2mLのLB培地で15時間培養した。当該培養液をアンピシリンを含む100mLのシード培養用培地(表5)にOD600が0.005となるように添加した。培養液温度を30℃に保ち、OD600が5になるまでフラスコ培養を行い(約15時間)、シード培養液を得た。
Figure 2021080168
当該シード培養液を500mLの生産培地(表6)を添加したジャーファーメンターにOD600が0.05となるように添加して形質転換大腸菌を植菌した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して培養した。また培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持するようにした。
Figure 2021080168
生産培地中のグルコースが完全に消費された直後に、フィード液(グルコース455g/1L、Yeast Extract 120g/1L)を1mL/分の速度で添加した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して培養した。また培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持するようにし、20時間培養を行った。その後、1Mのイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)を培養液に対して終濃度1mMになるよう添加し、目的のタンパク質を発現誘導させた。IPTG添加後20時間経過した時点で、培養液を遠心分離し、菌体を回収した。IPTG添加前とIPTG添加後の培養液から調製した菌体を用いてSDS−PAGEを行い、IPTG添加に依存した目的とするタンパク質サイズのバンドの出現により、目的とするタンパク質の発現を確認した。
〔(3)タンパク質の精製〕
IPTGを添加してから2時間後に回収した菌体を20mM Tris−HCl buffer(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の菌体を約1mMのPMSFを含む20mMTris−HCl緩衝液(pH7.4)に懸濁させ、高圧ホモジナイザー(GEA Niro Soavi社)で細胞を破砕した。破砕した細胞を遠心分離し、沈殿物を得た。得られた沈殿物を、高純度になるまで20mMTris−HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の沈殿物を100mg/mLの濃度になるように8M グアニジン緩衝液(8Mグアニジン塩酸塩、10mMリン酸二水素ナトリウム、20mMNaCl、1mMTris−HCl、pH7.0)で懸濁し、60℃で30分間、スターラーで撹拌し、溶解させた。溶解後、透析チューブ(三光純薬株式会社製のセルロースチューブ36/32)を用いて水で透析を行った。透析後に得られた白色の凝集タンパク質を遠心分離により回収し、凍結乾燥機で水分を除き、凍結乾燥粉末を回収した。
得られた凍結乾燥粉末における目的タンパク質の精製度は、粉末のポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果をTotallab(nonlinear dynamics ltd.)を用いて画像解析することにより確認した。その結果、いずれのタンパク質も精製度は約85%であった。
〔(4)フィブロイン繊維の作製及び収縮性評価〕
上記で調製した第1のフィブロイン又は第2のフィブロイン単独でフィブロイン繊維を作製し、収縮性を評価した。
(4−1)紡糸液(ドープ液)の調製
4質量%になるように塩化リチウムを溶解したDMSOを溶媒として用い、上記で調製したPRT410(配列番号7:参考例1)、PRT888(配列番号18:参考例2)、PRT965(配列番号19:参考例3)、PRT889(配列番号20:参考例4)、PRT916(配列番号21:参考例5)及びPRT918(配列番号22:参考例6)タンパク質の凍結乾燥粉末を、それぞれ濃度24質量%となるように、溶媒に添加した。90℃のアルミブロックヒーターで1時間溶解させた後、不溶物と泡を取り除き、紡糸液(ドープ液)とした。
(4−2)紡糸
紡糸液をリザーブタンクに充填し、0.1又は0.2mm径のモノホールノズルからギアポンプを用い100質量%メタノール凝固浴槽中へ吐出させた。吐出量は0.01〜0.08mL/分に調整した。凝固後、100質量%メタノール洗浄浴槽で洗浄及び延伸を行った。洗浄及び延伸後、乾熱板を用いて乾燥させ、得られた原糸(フィブロイン繊維)を巻き取った。
(4−3)フィブロイン繊維の収縮性評価
得られた原糸を長さ約30cmに揃えて、束ね、繊度150デニールのフィブロイン繊維束とした。各フィブロイン繊維束に0.8gの鉛錘を取り付け、その状態でフィブロイン繊維束を40℃の水に10分間浸漬して一次収縮させ、水中でフィブロイン繊維束の長さを測定した。一次収縮したフィブロイン繊維束を水中から取り出し、0.8gの鉛錘を取り付けたまま、室温で2時間おいて乾燥させた。乾燥後、各フィブロイン繊維束の長さを測定した。この湿潤及び乾燥の操作を3回繰り返し、湿潤時の平均の長さ(Lwet:単位cm)、乾燥時の平均の長さ(Ldry:単位cm)を求め、下記式に従って二次収縮率を算出した。結果を表7に示す。
二次収縮率(%)={1−(Ldry/Lwet)}×100
Figure 2021080168
PRT410(参考例1)タンパク質で紡糸した繊維は、12%の二次収縮率を示したが、ドメイン内のグルタミン残基(Q)を別のアミノ酸残基に置換することにより、グルタミン残基含有率を低減させた(6.3%)PRT888(配列番号18)では、顕著な二次収縮率の低減効果が認められた(参考例2)。この二次収縮率の低減効果は、グルタミン残基含有率を更に低下(0%)させることにより、REPの疎水性度をPRT888のように高めなくても認められた(参考例3)。また、グルタミン残基含有率を更に低下(0%)させると共に、さらに疎水性度の高いアミノ酸残基に置換することにより、二次収縮率の低減効果がより顕著に認められた(参考例4〜6)。
〔(5)フィブロインフィルムの作製及び耐水性評価〕
上記で調製した第1のフィブロイン又は第2のフィブロイン単独でフィブロインフィルムを作製し、耐水性を評価した。
(5−1)フィルム作製用ドープ液の調製
PRT410(配列番号7:参考例7)、PRT699(配列番号23:参考例8)及びPRT698(配列番号24:参考例9)タンパク質の凍結乾燥粉末を99%ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)に濃度10質量%となるように添加し、55℃、400rpmの条件で20分間振盪し、溶解させ、ドープ液とした。
(5−2)フィルムキャスト成形
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム表面にシリコーン化合物を固定化させた離形フィルム(三井化学東セロ株式会社製、商品番号“SP−PET−01−75−BU”)を基板として使用した。バッチ式塗工機(井元製作所製)を使用して、送り速度20mm/秒、スリット幅0.18mmの条件で、上記で調製したドープ液を基板の表明にキャスト成形し、濡れ膜を作製した。
(5−3)乾燥及び脱溶媒
成形した濡れ膜を、55℃の恒温槽(espec社製)中で12時間静置し、乾燥した。その後、乾燥フィルムを基板から剥離し、メタノールに12時間浸漬した。浸漬後、再度60℃の恒温槽(espec社製)中で12時間静置し、乾燥した。得られたフィルムを30mm角に切断し、以下の耐水性評価を行った。
(5−4)フィルムの耐水性評価〕
硫酸カリウム(KSO・HO)の飽和水溶液を入れたファルコンチューブに、30mm角に切断したフィルムを、水溶液に浸からないように設置し、98%の高湿度下で48時間静置した。静置後のフィルムの水分含量を、カールフィッシャー(京都電子工業株式会社製)で吸湿の程度を測定することで水分率(%)として求めた。結果を表8に示す。
Figure 2021080168
グルタミン残基含有率の低下に伴い、フィルムの吸水性が低下することが確認され、耐水性が向上することが分かった。
〔(6)フィブロイン繊維の作製及び物性評価〕
上記で調製した第1のフィブロイン及び第2のフィブロイン単独又は混合して、フィブロイン繊維を作製し、物性を評価した。
(6−1)紡糸液(ドープ液)の調製
ギ酸(98%)を溶媒として用い、第1のフィブロインとして上記で調製したPRT799(配列番号9)タンパク質、及び第2のフィブロインとして上記で調製したPRT918(配列番号22)タンパク質の凍結乾燥粉末を、それぞれ以下に示す比率で、総濃度が30質量%となるように溶媒に添加した。70℃のアルミブロックヒーターで1時間加温し、溶解させた後、不溶物と泡を取り除き、紡糸液(ドープ液)とした。
PRT799:PRT918=10:0(参考例10)
PRT799:PRT918=7:3(実施例1)
PRT799:PRT918=5:5(実施例2)
PRT799:PRT918=7:3(実施例3)
PRT799:PRT918=0:10(参考例11)
(6−2)紡糸
紡糸液をリザーブタンクに充填し、0.1又は0.2mm径のモノホールノズルからギアポンプを用い100質量%メタノール凝固浴槽中へ吐出させた。吐出量は0.01〜0.08mL/分に調整した。凝固後、100質量%メタノール洗浄浴槽で洗浄及び延伸を行った。洗浄及び延伸後、乾熱板を用いて乾燥させ、得られた原糸(フィブロイン繊維)を卓上の紡糸装置を用いて巻き取った。
(6−3)フィブロイン繊維の収縮性評価
(6−2)で得られた原糸を長さ約30cmに揃えて、束ね、繊度150デニールのフィブロイン繊維束とした。各フィブロイン繊維束に0.8gの鉛錘を取り付け、その状態でフィブロイン繊維束を40℃の水に10分間浸漬して一次収縮させ、水中でフィブロイン繊維束の長さを測定した。一次収縮したフィブロイン繊維束を水中から取り出し、0.8gの鉛錘を取り付けたまま、室温で2時間おいて乾燥させた。乾燥後、各フィブロイン繊維束の長さを測定した。この湿潤及び乾燥の操作を3回繰り返し、湿潤時の平均の長さ(Lwet:単位cm)、乾燥時の平均の長さ(Ldry:単位cm)を求め、下記式に従って二次収縮率を算出した。
二次収縮率(%)={1−(Ldry/Lwet)}×100
各実施例及び参考例のフィブロイン繊維の二次収縮率を表9に示す。表9に示す二次収縮率は、参考例10(PRT799単独)のフィブロイン繊維の二次収縮率の値を100としたときの相対値である。
PRT799に対してPRT918を等量以下の割合で混合した混合フィブロイン繊維(実施例1)は、PRT918単独のフィブロイン繊維(参考例11)と比べて、二次収縮率の低減効果に加えて、応力及び伸度に優れており、予想されない秀逸した結果を得ることができた。また、PRT799単独のフィブロイン繊維(参考例10)を基準に見ると、PRT918を混合した混合フィブロイン繊維は、PRT918の割合が高いほど、応力及び伸度を有するPRT799単独のフィブロイン繊維に対して、更に二次収縮率の低減効果を付与可能であることが認められた(実施例1〜3)。
(6−4)フィブロイン繊維の物性測定による評価
(6−2)で得られた原糸の物性を以下の方法で測定した。
(a)光学顕微鏡を用いてフィブロイン繊維の直径を求めた。
(b)温度20℃、相対湿度65%の条件で引張り試験機(INSTRON3342)を用いてフィブロイン繊維の応力、初期弾性率、伸度(破断点変位、変位)を測定した。引張試験では10m秒間隔で測定した。各サンプルは厚紙で作製した型枠に貼り付け、つかみ治具間距離は20mm、引張り速度は10mm/分とした。ロードセル容量10N、つかみ冶具はクリップ式とした。測定値はサンプル数n=5の平均値とした。
各原糸の応力及び伸度を測定した結果を表9に示す。表9に示す応力及び伸度は、参考例10(PRT799単独)のフィブロイン繊維の応力及び伸度の値を100としたときの相対値である。
応力に関して、PRT799に対してPRT918を等量以下の割合で混合した混合フィブロイン繊維(実施例1)は、PRT799単独のフィブロイン繊維(参考例10)と比べて、より応力が向上するという効果が認められ、予想されない秀逸した結果を得ることができた。また、PRT918単独のフィブロイン繊維(参考例11)を基準に見ると、PRT799を混合した混合フィブロイン繊維は、PRT799の割合が高いほど、応力を向上させることが可能であることが認められた(実施例1〜3)。
伸度に関して、PRT799に対してPRT918を等量以下の割合で混合した混合フィブロイン繊維(実施例1)は、PRT799単独のフィブロイン繊維(参考例10)と比べて、より伸度が向上するという効果が認められ、予想されない秀逸した結果を得ることができた。また、PRT918単独のフィブロイン繊維(参考例11)を基準に見ると、PRT799を混合した混合フィブロイン繊維は、PRT799の割合が高いほど、伸度を向上させることが可能であることが認められた(実施例1〜3)。
Figure 2021080168
伸度及び二次収縮率低減効果(耐水性)を重視した配合である、PRT799とPRT918を等量混合したドープ液を用い、直径0.1mmのノズルを有するマルチホールノズルを用いて実機で紡糸した(実施例4)。比較として、PRT918単独で同様に紡糸した(参考例12)。得られた混合フィブロイン繊維(実施例4)及びフィブロイン繊維(参考例12)の二次収縮率、応力及び伸度を上述した方法により測定した。
表10に二次収縮率、応力及び伸度の測定結果を示す。表10に示す二次収縮率、応力及び伸度は、PRT918単独のフィブロイン繊維(参考例12)の値を100としたときの相対値である。
二次収縮率、応力及び伸度いずれも、卓上の紡糸装置で得られた結果と同等の結果が得られた。
Figure 2021080168

Claims (16)

  1. 第1のフィブロインと、第2のフィブロイン及び第3のフィブロインからなる群より選択される少なくとも1種のフィブロインと、を含むフィブロイン組成物であって、
    前記第1のフィブロインが、式1:[(A)モチーフ−REP]m1で表されるドメイン配列を含み、N末端側からC末端側に向かって、隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのREPのアミノ酸残基数を順次比較して、アミノ酸残基数が少ないREPのアミノ酸残基数を1としたとき、他方のREPのアミノ酸残基数の比が1.8〜11.3となる前記隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのアミノ酸残基数を足し合わせた合計値の最大値をxとし、前記ドメイン配列の総アミノ酸残基数をyとしたときに、x/yが50%以上であるアミノ酸配列を有するフィブロインであり、
    前記第2のフィブロインが、式2:[(A)モチーフ−REP]m2で表されるドメイン配列又は式3:[(A)モチーフ−REP]m3−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含み、グルタミン残基含有率が9%以下であるアミノ酸配列を有するフィブロインであり、
    前記第3のフィブロインが、式4:[(A)モチーフ−REP]m4で表されるドメイン配列を含み、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列に含まれる全てのREPにおいて、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域に含まれるアミノ酸残基の総数をzとし、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列に含まれるアミノ酸残基の総数をwとしたときに、z/wが6.2%以上であるアミノ酸配列を有するフィブロインである、フィブロイン組成物。
    [式1、式2、式3及び式4中、(A)モチーフは、それぞれ独立に、4〜27アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、かつ(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が80%以上であり、REPは、それぞれ独立に、10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、m1、m2、m3及びm4は、それぞれ独立に、8〜300の整数を示す。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。]
  2. 前記第2のフィブロインのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、REP中の1若しくは複数のグルタミン残基を欠失したこと、又は他のアミノ酸残基に置換したことに相当する、グルタミン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列である、請求項1に記載のフィブロイン組成物。
  3. 前記第2のフィブロインにおける前記他のアミノ酸残基が、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、システイン(C)、メチオニン(M)アラニン(A)、グリシン(G)、スレオニン(T)、セリン(S)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、プロリン(P)及びヒスチジン(H)からなる群より選択されるアミノ酸残基である、請求項1又は2に記載のフィブロイン組成物。
  4. 前記第2のフィブロインは、REP中にGPGXX(但し、Xはグリシン残基以外のアミノ酸残基を示す。)モチーフを含み、GPGXXモチーフ含有率が10%以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィブロイン組成物。
  5. 前記第2のフィブロインは、REPの疎水性度が−0.8以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィブロイン組成物。
  6. 前記第1のフィブロインは、配列番号1〜10のいずれかで示されるアミノ酸配列、又は配列番号1〜10のいずれかで示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィブロイン組成物。
  7. 前記第2のフィブロインは、配列番号11〜24のいずれかで示されるアミノ酸配列、又は配列番号11〜24のいずれかで示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のフィブロイン組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のフィブロイン組成物を含み、
    繊維、糸、フィラメント、フィルム、発泡体、球体、ナノフィブリル、ヒドロゲル、樹脂及びその等価物からなる群から選択される製品。
  9. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のフィブロイン組成物が、溶媒に溶解してなる、フィブロイン溶液。
  10. 前記溶媒が、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、ヘキサフルオロアセトン(HFA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ギ酸、尿素、グアニジン、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、臭化リチウム、塩化カルシウム及びチオシアン酸リチウム、並びにこれら2種以上の混合溶媒からなる群より選ばれる溶媒である、請求項9に記載のフィブロイン溶液。
  11. 前記第1のフィブロインと、前記第2のフィブロイン及び第3のフィブロインからなる群より選択される少なくとも1種のフィブロインとの含有比率が、重量基準で9.9:0.1〜5.0:5.0である、請求項9又は10に記載のフィブロイン溶液。
  12. 前記第1のフィブロインと、前記第2のフィブロイン及び第3のフィブロインからなる群より選択される少なくとも1種のフィブロインとの含有比率が、重量基準で5.0:5.0〜5.0.1:9.9である、請求項9又は10に記載のフィブロイン溶液。
  13. 前記第1のフィブロインと、前記第2のフィブロイン及び第3のフィブロインからなる群より選択される少なくとも1種のフィブロインとの含有比率が、重量基準で5.0:5.0である、請求項9又は10に記載のフィブロイン溶液。
  14. 請求項9〜13のいずれか一項に記載のフィブロイン溶液を使用したフィブロイン繊維の製造方法であって、
    前記フィブロイン溶液をドープ液とし、
    前記ドープ液を口金から凝固液に押し出し、未延伸糸を得る工程を含む、フィブロイン繊維の製造方法。
  15. 前記未延伸糸を延伸する工程を更に含む、請求項14に記載のフィブロイン繊維の製造方法。
  16. 前記凝固液が、メタノール、エタノール及び2−プロパノールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項14又は15に記載のフィブロイン繊維の製造方法。
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