JP2021073166A - マイクロカプセル及びマイクロカプセル含有組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】圧力応答性と内包成分を徐々に放出する徐放性とを兼ね備えたマイクロカプセル及びマイクロカプセル含有組成物を提供する。【解決手段】コアを内包するシェルのシェル材として、3官能以上の脂肪族イソシアネート化合物に由来する構造と、2官能の脂肪族イソシアネート化合物に由来する構造及び2官能の芳香族イソシアネート化合物に由来する構造から選ばれる少なくとも一方の構造と、を有するポリウレタン又はポリウレアを含むマイクロカプセル並びにマイクロカプセル含有組成物である。【選択図】なし

Description

本開示は、マイクロカプセル及びマイクロカプセル含有組成物に関する。
近年、マイクロカプセルは、香料、染料、蓄熱材、医薬品成分などの機能性材料を内包して保護すること、機能性材料を刺激に応答して放出させること等の点で、新たな価値を顧客に提供できる可能性があることから注目されている。
香料をマイクロカプセルに内包する場合には、例えば、香料を内包したマイクロカプセル(以下、香料カプセルともいう。)を柔軟剤と混合することで、柔軟剤を使用して衣服を洗濯した後、柔軟剤に含まれるマイクロカプセルが衣服に付着し、圧力等が加えられてマイクロカプセルが破壊されると、内包されている香料が放出される。したがって、香料をカプセル化することにより、香料を一定期間保持でき、香料による香りを所望の時期に生じさせることができる。
香料カプセルに用いられるシェル材としては、アルデヒドとアミンとの反応生成物(例えばメラミンホルムアルデヒド樹脂)が主体である。シェルにメラミンホルムアルデヒド樹脂を用いる例として、コア材料として香料を含み、壁材料(シェル材)としてアルデヒド(例えばホルムアルデヒド)とアミン(例えばメラミン)の反応生成物を含む樹脂を用いたマイクロカプセルが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、シェルとしてポリウレタン又はポリウレアを用いるマイクロカプセルも提案されている。例えば、ポリイソシアネートとポリアミンとの重合の反応生成物を含むポリ尿素壁(ポリウレア壁)と、ポリ尿素壁に封入された香料を含むポリ尿素マイクロカプセルが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2017−122235号公報 特表2013−530825号公報
しかしながら、上記のような香料カプセルは、圧力応答性を利用して内包成分を外部へ放出するものであるため、例えば衣類に圧力が加えられることでカプセルが壊れ、香料による芳香が拡散される。したがって、圧力がカプセルに加えられない状態では、香料はカプセル内に閉じ込められたまま保持され、香料による芳香を継続的に得ることはできない。
香料カプセルとしては、所望の芳香が所望強度で得られたり、所望の時期に芳香が拡散されることが望ましいため、圧力応答性のある香料カプセルに対する要求がある一方、カプセルが破壊されない状況でも、僅かながら芳香が得られ、かつ、芳香を長時間に亘って持続させることができる性質、即ち香料が自然的に徐々に放出される徐放性を有する香料カプセルに対する要望が高まっている。
また、上記した従来技術のうち、特許文献1に記載の発明のように、メラミンホルムアルデヒド樹脂をマイクロカプセルのシェル材として用いる場合、原料のホルムアルデヒドの溶出が懸念されている。したがって、安全性の観点から、メラミンホルムアルデヒド樹脂を、シェル材として安全性の高いポリウレタン又はポリウレアに置き換えることが検討されている。
一方、マイクロカプセルの毛又は繊維に対する付着性は、例えば香料カプセルの場合には芳香を長期間持続させるのに重要な要素であり、マイクロカプセルの付着性がより向上されれば、ポリウレタン又はポリウレアへの置き換えが更に進むことが期待される。
本開示は、上記に鑑みなされたものである。
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、圧力応答性と内包成分を徐々に放出する徐放性とを兼ね備えたマイクロカプセルを提供することにある。
また、本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、圧力応答性と内包成分を徐々に放出する徐放性とを兼ね備えたマイクロカプセル含有組成物を提供することにある。
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> コアを内包するシェルのシェル材として、3官能以上の脂肪族イソシアネート化合物に由来する構造と、2官能の脂肪族イソシアネート化合物に由来する構造及び2官能の芳香族イソシアネート化合物に由来する構造から選ばれる少なくとも一方の構造と、を有するポリウレタン又はポリウレアを含むマイクロカプセルである。
<2> 3官能以上の脂肪族イソシアネート化合物に由来する構造の、シェル材の全質量に占める割合が、20質量%〜90質量%である<1>に記載のマイクロカプセルである。
<3> 2官能の脂肪族イソシアネート化合物に由来する構造及び2官能の芳香族イソシアネート化合物に由来する構造から選ばれる少なくとも一方の構造の、シェル材の全質量に占める割合が、10質量%〜70質量%である<1>又は<2>に記載のマイクロカプセルである。
<4> コアがコア材として香料を含む<1>〜<3>のいずれか1つに記載のマイクロカプセルである。
<5> <1>〜<4>のいずれか1つに記載のマイクロカプセルと、水と、を含有するマイクロカプセル含有組成物である。
<6> マイクロカプセルは、表面にアニオン電荷を有し、かつ、更にカチオン性界面活性剤を含有する<5>に記載のマイクロカプセル含有組成物である。
<7> マイクロカプセルが、表面の少なくとも一部にアニオン変性ポリビニルアルコールを有する<6>に記載のマイクロカプセル含有組成物である。
<8> マイクロカプセルのゼータ電位が、−80meV〜−5meVである<5>〜<7>のいずれか1つに記載のマイクロカプセル含有組成物である。
<9> 洗濯、デイケア、又はヘアケアの用途に用いられる<5>〜<8>のいずれか1つに記載のマイクロカプセル含有組成物である。
本発明の一実施形態によれば、圧力応答性と内包成分を徐々に放出する徐放性とを兼ね備えたマイクロカプセルが提供される。
また、本発明の他の実施形態によれば、圧力応答性と内包成分を徐々に放出する徐放性とを兼ね備えたマイクロカプセル含有組成物が提供される。
以下、本開示のマイクロカプセル及びマイクロカプセル含有組成物について詳細に説明する。
本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、「シェル」とはマイクロカプセルの壁(カプセル壁ともいう。)をいい、「コア」とはシェルに内包された部分をいう。また、本明細書において、シェルを形成するための材料を「シェル材」といい、コアに含まれる成分を「コア材」という。
本開示のマイクロカプセルにおいて、「内包」とは、目的物がマイクロカプセルのシェル(カプセル壁)に覆われて閉じ込められている状態を指す。
<マイクロカプセル>
本開示のマイクロカプセルは、コアを内包するシェルのシェル材として、3官能以上の脂肪族イソシアネート化合物に由来する構造と、2官能の脂肪族イソシアネート化合物に由来する構造及び2官能の芳香族イソシアネート化合物に由来する構造から選ばれる少なくとも一方の構造と、を有するポリウレタン又はポリウレアを含む。
従来から圧力応答性を利用したマイクロカプセルが提案されており、例えば香料を内包成分としてシェル(壁)内に内包し、圧力が加えられた際に放出させて芳香を拡散する技術がある。従来より知られているマイクロカプセルは、一般的に圧力が加えられない状態では、香料はカプセル内に閉じ込められたまま保持され、カプセルのシェルが破壊されない限り香料による芳香が放散される機能を有していない。ところが、近年では、所望時に内包成分を放出できる圧力応答性を有しつつ、圧力が加えられない状態でも徐々に内包成分が放出される機能を有するマイクロカプセルに対する要望がある。
上記に鑑み、本開示では、特にマイクロカプセルのシェル構造に着目し、3官能以上の脂肪族イソシアネート化合物と脂肪族又は芳香族の2官能のイソシアネート化合物とを用いたシェルを有するマイクロカプセルとする。これにより、マイクロカプセルのシェルに柔軟性が付与され、かつ、内包成分を徐々に放出させることができる徐放性を付与することができる。また、温度上昇により、内包成分を放出させる単位時間あたりの量を向上させることもできる。
(シェル)
本開示のマイクロカプセルは、コアを内包するシェルを有する。
本開示におけるシェルを形成するシェル材は、ポリウレタン又はポリウレアを含む。
本開示におけるポリウレタン又はポリウレアは、3官能以上の脂肪族イソシアネート化合物に由来する構造と、2官能の脂肪族イソシアネート化合物に由来する構造及び2官能の芳香族イソシアネート化合物に由来する構造から選ばれる少なくとも一方の構造と、を有している。
ポリウレタン又はポリウレアの形成において、3官能の脂肪族イソシアネート化合物と2官能のイソシアネート化合物とが用いられることで、本開示におけるシェルは、圧力応答性と徐放性とを兼ね備えたものである。
なお、以下において、2官能の脂肪族イソシアネート化合物及び2官能の芳香族イソシアネート化合物を総じて、「特定ジイソシアネート」と称する場合がある。
−3官能以上の脂肪族イソシアネート化合物−
シェルを形成するシェル材であるポリウレタン又はポリウレアは、3官能以上の脂肪族イソシアネート化合物に由来する構造を有する。3官能以上の脂肪族イソシアネート化合物に由来する構造を有していることで、シェルの柔軟性を高めることができ、繊維又は毛等の付着対象物に対する付着性が得られる。
3官能以上の脂肪族イソシアネート化合物に由来する構造とは、3官能以上の脂肪族イソシアネート化合物がウレタン化又はウレア化して形成される構造を指す。
3官能以上の脂肪族イソシアネート化合物としては、2官能の脂肪族イソシアネート化合物(分子中に2つのイソシアネート基を有する化合物)と分子中に3つ以上の活性水素基を有する化合物(3官能以上の例えばポリオール、ポリアミン又はポリチオール等)とのアダクト体(付加物)として3官能以上としたイソシアネート化合物(アダクト型)、2官能の脂肪族イソシアネート化合物の3量体(ビウレット型又はイソシアヌレート型)を挙げることができる。
アダクト型の3官能以上のイソシアネート化合物は、上市されている市販品を用いてもよい。市販品の例としては、タケネート(登録商標)D−120N(イソシアネート価=3.5 mmol/g)、D−140N、D−160N(以上、三井化学株式会社製)、スミジュール(登録商標)HT(バイエル株式会社製)、コロネート(登録商標)HL、HX(東ソー株式会社製)、デュラネートP301−75E(旭化成株式会社製)、バーノック(登録商標)DN−950(DIC株式会社製)などが挙げられる。
中でも、アダクト型の3官能以上のイソシアネート化合物として、三井化学株式会社製のタケネート(登録商標)シリーズ(例えば、タケネートD−110N、D−120N、D−140N、D−160N等)がより好ましい。
イソシアヌレート型の3官能以上のイソシアネート化合物は、上市されている市販品を用いてもよい。市販品の例としては、タケネート(登録商標)D−127N、D−170N、D−170HN、D−172N、D−177N(三井化学株式会社製)、スミジュールN3300、デスモジュール(登録商標)N3600、N3900、Z4470BA(以上、バイエル株式会社製)、コロネート(登録商標)HK(東ソー株式会社製)、デュラネート(登録商標)TPA−100、TKA−100(旭化成株式会社製)、バーノック(登録商標)DN−980(DIC株式会社製)などが挙げられる。
ビウレット型の3官能以上のイソシアネート化合物は、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、タケネート(登録商標)D−165N、NP1200(三井化学株式会社製)、デスモジュール(登録商標)N3200A(バイエル株式会社製)、デュラネート(登録商標)24A−100、22A−75P(旭化成株式会社製)などが挙げられる。
3官能以上の脂肪族イソシアネート化合物に由来する構造の、シェル材の全質量に占める割合としては、20質量%〜95質量%であることが好ましく、20質量%〜90質量%であることがより好ましく、50質量%〜80質量%であることが更に好ましい。
3官能以上の脂肪族イソシアネート化合物に由来する構造の割合が20質量%以上であると、シェルに良好な柔軟性を付与することができる。また、3官能以上の脂肪族イソシアネート化合物に由来する構造の割合が95質量%以下であると、コア材の外部への徐放性を保持するのに適している。
−特定ジイソシアネート−
シェルを形成するシェル材であるポリウレタン又はポリウレアは、特定ジイソシアネートに由来する構造、即ち、2官能の脂肪族イソシアネート化合物に由来する構造及び2官能の芳香族イソシアネート化合物に由来する構造から選ばれる少なくとも一方の構造を有する。
2官能の脂肪族イソシアネート化合物に由来する構造とは、2官能の脂肪族イソシアネートがウレタン化又はウレア化して形成される構造を指す。
2官能の芳香族イソシアネート化合物に由来する構造とは、2官能の芳香族イソシアネートがウレタン化又はウレア化して形成される構造を指す。
2官能の脂肪族イソシアネート化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン及び1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
2官能の芳香族イソシアネート化合物としては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート、4−クロロキシリレン−1,3−ジイソシアネート、2−メチルキシリレン−1,3−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルヘキサフルオロプロパンジイソシアネート等が挙げられる。
イソシアネート化合物については「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(岩田敬治編、日刊工業新聞社発行(1987))に記載されている。
特定ジイソシアネートに由来する構造、即ち、2官能の脂肪族イソシアネートに由来する構造及び2官能の芳香族イソシアネートに由来する構造から選ばれる少なくとも一方の構造の、シェル材の全質量に占める割合としては、合計の質量比率で5質量%〜80質量%であることが好ましく、10質量%〜70質量%であることが好ましく、10質量%〜50質量%であることがより好ましく、15質量%〜45質量%であることが好ましく、20質量%〜40質量%であることが更に好ましい。
特定ジイソシアネートに由来する構造の割合が5質量%以上であると、シェルの架橋密度が低くなり、内包されるコア材の徐放性を高めることができる。また、特定ジイソシアネートに由来する構造の割合が80質量%以下、更には70質量%以下であると、シェルの柔軟性を保ちやすく、例えば繊維又は毛等に対する付着性を良好に維持することができる。
特定ジイソシアネートに対する3官能の脂肪族イソシアネート化合物の比率としては、質量基準で、95/5〜50/50であることが好ましく、75/10〜50/50であることがより好ましく、75/25〜50/50であることが更に好ましい。
特定ジイソシアネートに対する3官能の脂肪族イソシアネート化合物の比率が上記の範囲内であると、コア材の徐放性に優れ、かつ、繊維又は毛に対する付着性に優れたものとなる。
−他のイソシアネート化合物−
シェルを形成するシェル材であるポリウレタン又はポリウレアは、上記の3官能の脂肪族イソシアネート化合物及び特定ジイソシアネート以外に、他のイソシアネート化合物に由来する構造を有していてもよい。
他のイソシアネート化合物に由来する構造とは、他のイソシアネート化合物がウレタン化又はウレア化して形成される構造を指す。
他のイソシアネート化合物としては、例えば、3官能以上の芳香族イソシアネート化合物が挙げられる。
3官能以上の芳香族イソシアネート化合物の具体例としては、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物(アダクト体)、ビウレット体もしくはイソシアヌレート体等が挙げられる。
3官能以上の芳香族イソシアネート化合物として上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例としては、バーノック(登録商標)D−750、D−800(DIC株式会社製)、タケネート(登録商標)D−102、D−103、D−103H、D−103M2、D−110N、オレスター(登録商標)P49−75S(以上、三井化学株式会社製)、デスモジュール(登録商標)L75、IL−135−BA、HL−BA、スミジュール(登録商標)E−21−1(バイエル株式会社製)、コロネート(登録商標)L、L−55、L−55E(東ソー株式会社製)等が挙げられる。
マイクロカプセルのシェル(壁)の厚み(壁厚)としては、0.01μm〜1μmが好ましい。マイクロカプセルの壁厚が0.01μm以上であることで、マイクロカプセルが割れやすくなることが抑制され、コア材を放出したい時期までコア材をコア内において保護することができる。マイクロカプセルの壁厚が1μm以下であることで、マイクロカプセルの適度な割れやすさを付与することができ、所望の時期にコア材を放出することができる。
上記と同様の観点から、マイクロカプセルの壁厚は、より好ましくは0.05μm〜0.7μmであり、さらに好ましくは0.05μm〜0.2μmである。
壁厚は、5個のマイクロカプセルの個々の壁厚(μm)を走査型電子顕微鏡(SEM)により求めて平均した平均値をいう。
具体的には、マイクロカプセル液を任意の支持体上に塗布し、乾燥させて塗布膜を形成する。得られた塗布膜の断面切片を作製し、その断面をSEMを用いて観察し、任意の5個のマイクロカプセルを選択して、それら個々のマイクロカプセルの断面を観察して壁厚を測定して平均値を算出することにより求められる。
(コア)
本開示のマイクロカプセルは、シェルに内包されたコアを有する。
コアには、所望とする内包成分を含めることができ、内包成分の例としては、香料、溶媒、補助溶媒等が挙げられる。
コアにコア材として香料が含まれた態様が好ましい。
本開示のマイクロカプセルが例えば衣服の繊維又は毛(毛髪等)等に付着させて使用される場合、コア材として香料を含むことにより、衣服又は毛髪等に圧力が与えられない場合でも、香料による芳香が徐々に拡がる徐放性が発現する。また、衣服又は毛髪に擦れ等により圧力が与えられた際には、カプセルが壊れて香料が放出され、所望とする芳香を拡散させることができる。
−香料−
香料としては、「特許庁、周知慣用技術集(香料)第III部香粧品香料、頁49−103頁、平成13年6月15日発行」に記載の、合成香料、天然精油、天然香料、動植物エキス等の中から適するものを適宜選択することができる。
香料としては、例えば、ピネン、ミルセン、カンフェン、Rリモネン等のモノテルペン;セドレン、カリオフィレン、ロンギフォレン等のセスキテルペン;1,3,5−ウンデカトリエン、α−アミルシンナミルアルデヒド、ジヒドロジャスモン、メチルイオノン、α−ダマスコン、アセチルセドレン、ジヒドロジャスモン酸メチル、シクロペンタデカノリド等の合成香料;オレンジ精油、レモン精油、ベルガモット精油、マンダリン精油等の天然精油;が挙げられる。
コア材の全質量に対する香料の含有量としては、100質量%〜20質量%が好ましく、95質量%〜30質量%がより好ましく、85質量%〜40質量%が更に好ましい。
−溶媒−
コアには、溶媒が含有されてもよい。
溶媒の例としては、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル等の脂肪酸エステル系化合物、ジイソプロピルナフタレン等のアルキルナフタレン系化合物、1−フェニル−1−キシリルエタン等のジアリールアルカン系化合物、イソプロピルビフェニル等のアルキルビフェニル系化合物、トリアリールメタン系化合物、アルキルベンゼン系化合物、ベンジルナフタレン系化合物、ジアリールアルキレン系化合物、アリールインダン系化合物等の芳香族炭化水素;フタル酸ジブチル、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素;ツバキ油、大豆油、コーン油、綿実油、菜種油、オリーブ油、ヤシ油、ひまし油、魚油等の天然動植物油;鉱物油等の天然物高沸点留分などが挙げられる。
溶媒のコア材中における含有量は、コア材の全質量に対して、50質量%未満が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が最も好ましい。
−補助溶媒−
コアには、マイクロカプセルを製造する際に用いられるシェル材の油相中への溶解性を高める観点から、油相成分として補助溶媒が含有されてもよい。補助溶媒には、上記の溶媒は含まれない。
補助溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン等のケトン系化合物、酢酸エチル等のエステル系化合物、イソプロピルアルコール等のアルコール系化合物等が挙げられる。補助溶媒の沸点は、130℃以下であることが好ましい。
補助溶媒のコア材中における含有量は、コア材の全質量に対して、50質量%未満が好ましく、30質量%未満がより好ましく、20質量%未満がさらに好ましい。
−添加剤−
コアには、上記成分のほか、例えば、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、ワックス、臭気抑制剤等の添加剤が含有されていてもよい。
添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であればよく、コア材の全質量に対して、0質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜15質量%がより好ましく、5質量%〜10質量%がさらに好ましい。
マイクロカプセルの形態としては、例えば、マイクロカプセル分散液を挙げることができ、好ましくは、マイクロカプセルが水系溶媒に分散されたマイクロカプセル水分散液の形態である。
マイクロカプセルの体積標準のメジアン径(D50)は、0.1μm〜100μmであることが好ましい。
メジアン径(D50)が0.1μm以上であることで、マイクロカプセルが、付着する対象物(毛、繊維等)が有する微細な空隙に入り込むことで、割れにくくなることを防ぐことができる。メジアン径(D50)が100μm以下であることで、付着性の低下を防ぐことができる。
上記の観点から、マイクロカプセルの体積標準のメジアン径(D50)は、1μm〜70μmであることが好ましく、5μm〜50μmであることがより好ましく、5μm〜30μmであることが更に好ましい。
マイクロカプセルの体積標準のメジアン径は、分散条件を変更すること等により制御することができる。
ここで、マイクロカプセルの体積標準のメジアン径とは、マイクロカプセル全体を体積累計が50%となる粒子径を閾値に2つに分けた場合に、大径側と小径側での粒子の体積の合計が等量となる径をいう。
本開示において、マイクロカプセルの体積標準のメジアン径は、マイクロトラックMT3300EXII(日機装株式会社製)を用いて測定される。
本開示のマイクロカプセルについて、「単分散性が高い」とは、粒径分布の範囲が狭い(すなわち、粒径のバラツキが少ない)ことを意味し、「単分散性が低い」とは、粒径分布の範囲が広い(すなわち、粒径のバラツキが多い)ことを意味する。
より具体的には、マイクロカプセルの単分散性の高低は、CV値(coefficient of variation;変動係数)を用いて表すことができる。ここで、CV値とは、下記式で求められる値である。
CV値(%)=(標準偏差/体積平均粒径)×100
CV値が低いほどマイクロカプセルの単分散性が高く、CV値が高いほどマイクロカプセルの単分散性が低いことが表される。
本開示において、体積平均粒径及び標準偏差は、マイクロトラックMT3300EXII(日機装株式会社製)を用いて算出される。
例えば、マイクロカプセルの「単分散性が高い」とは、マイクロカプセルの粒径分布のCV値が、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下、更により好ましくは30%以下、最も好ましくは25%以下であることをいうこともできる。CV値が上記範囲である場合、マイクロカプセルの粒径の単分散性が高いため、マイクロカプセルの取扱い、機能発現の制御などが容易になる。
<マイクロカプセル含有組成物>
本開示のマイクロカプセル含有組成物は、少なくとも、既述の本開示のマイクロカプセルと、水系溶媒と、を含有する。本開示のマイクロカプセル含有組成物は、必要に応じて、更に、カチオン性界面活性剤、アニオン性基付与剤、表面アニオン化剤等を含有することが好ましく、必要に応じて、添加物等の他の成分を含有していてもよい。
本開示のマイクロカプセル含有組成物に含まれるマイクロカプセルの詳細については、既述の通りであり、好ましい態様も同様である。
マイクロカプセルのマイクロカプセル含有組成物中における含有比率としては、特に制限されるものではなく、目的又は場合に応じて選択すればよく、例えば、マイクロカプセル含有組成物の全固形分に対して、20質量%〜50質量%とすることができる。
−水系溶媒−
水系溶媒としては、水、水及びアルコール等が挙げられ、イオン交換水等を用いることができる。
水系溶媒のマイクロカプセル含有組成物中における含有比率としては、特に制限されるものではなく、目的又は場合に応じて選択すればよく、例えば、マイクロカプセル含有組成物の全固形分に対して、50質量%〜70質量%とすることができる。
本開示のマイクロカプセル含有組成物は、マイクロカプセルが表面にアニオン電荷を有し、かつ、更にカチオン性界面活性剤を含有する態様が好ましい。
これにより、マイクロカプセルとカチオン性界面活性剤との間に相互作用が得られ、マイクロカプセルの周囲にカチオン性界面活性剤の正電荷を付与することができる。結果、アニオン電荷を有する付着対象物(例えば毛又は繊維)に対するマイクロカプセルの付着性を向上することが可能になる。
マイクロカプセルが表面にアニオン電荷を有することは、マイクロカプセルを水中に分散させた場合のゼータ電位を測定することで確認できる。ゼータ電位がマイナスである場合、マイクロカプセルの表面がアニオン電荷で覆われていることを指す。
マイクロカプセルのゼータ電位としては、水中に分散した場合の値として、−80meV〜−5meVであることが好ましく、−80meV〜−11meVであることがより好ましく、−50meV〜−10meVであることが更に好ましい。
「ゼータ電位」(z)は、特殊な測定技術によって測定される、溶液中の帯電物体によって生成される見掛けの静電位を意味する。ゼータ電位の論理的基本及び実際の関連性の詳細な考察は、例えば、「Colloid Science:Zeta Potential in Colloid Sciences:Principles and Applications」(Hunter Robert J.;Editor.;Publisher(Academic Press,London);1981;p 1988)に記載されている。物体のゼータ電位は、物体の表面からある程度の距離で測定され、一般に表面自体での静電位を超えない。しかしながら、その値は、溶液中にある他の物体、特に複数の結合部位を有する分子との静電的相互作用を確立する物体の能力の好適な尺度となり得る。
ゼータ電位は、相対測定値であり、値は測定方法に依存する傾向がある。本開示において、ゼータ電位は、以下の方法により測定される値である。
a.装置はELSZ-2000ZS(大塚電子株式会社製)を用いる。
b.装置の設定は以下の通りである。
c.試料の調製手順は以下の通りである。
(i)対象とするカプセルを含有するスラリーをカプセル濃度として0.5質量%となるように水に加え、スラリーを希釈する。測定濃度は必要に応じて、計測率が自動検出により好ましい範囲になるように調整する。
(ii)希釈した試料のゼータ電位を、試料を濾過せずに測定する。
(iii)濾過したスラリーを標準セルユニット(大塚電子株式会社製)に注入し、セルを装置に挿入する。試験温度を25℃に設定する。
(iv)温度が安定してから(通常3〜5分後)測定を開始する。それぞれの試料に
ついて、5回の測定を行うように設定し、測定する。
d.本開示におけるゼータ電位は、各スラリーに対して3回の測定値の平均として「mV」を単位として測定される値である。
上記のもと、マイクロカプセルのゼータ電位は、ELSZ-2000ZS(大塚電子株式会社製)を用いて測定することができる。
マイクロカプセル表面にアニオン電荷を付与する方法としては、特に制限はなく、例えば、アニオン性基付与剤をシェルに結合させる方法、マイクロカプセル表面に表面アニオン化剤を用いてアニオン電荷を付与する方法等が挙げられる。中でも、作業効率の観点から、マイクロカプセル表面に表面アニオン化剤を用いてアニオン電荷を付与する方法が好ましい。
アニオン性基付与剤を用いてシェルの表面にアニオン性基を結合させる方法としては、以下の方法を一例として挙げることができる。
即ち、溶媒、並びに、シェル材である3官能の脂肪族イソシアネート及び特定ジイソシアネートを撹拌混合して油相を調製する。続いて、水相として、アニオン性基付与剤(例えばリシン)を含む水溶液を調製する。調製した水相に油相を加えて分散して乳化し、得られた乳化液を加温して撹拌した後、冷却する。冷却後、塩基(例えば水酸化ナトリウム)の水溶液を添加し、表面にアニオン性基を有するマイクロカプセルの水分散液を得る。
アニオン性基付与剤を含む水溶液は、乳化液を生成した後に添加してもよいし、塩基の水溶液を事前に水相に加えておいてもよい。
なお、上記の各成分の含有量は、適宜変更することができる。
−アニオン性基付与剤−
アニオン性基付与剤としては、特に制限はなく、例えば、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸(以上、和光純薬工業株式会社製)等が挙げられる。
マイクロカプセル表面に表面アニオン化剤を用いてアニオン電荷を付与する方法としては、特に制限はなく、例えば、表面アニオン化剤を用いてマイクロカプセル表面に保護コロイドを形成する方法が好ましい。
保護コロイドとは、マイクロカプセル表面に存在することでマイクロカプセル表面にアニオン電荷を付与できるコロイドをいう。
−表面アニオン化剤−
表面アニオン化剤としては、マイクロカプセル表面にアニオン電荷を付与できるものであれば特に制限はなく、アニオン性水溶性ポリマー(アニオン変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、カラギーナンなどのアニオン性多糖類、ポリアクリル酸ナトリウムおよび他のモノマーとの共重合体、ポリマレイン酸ナトリウム及び他のモノマーとの共重合体等)及びアニオン性界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等)などが挙げられる。
本開示のマイクロカプセル含有組成物におけるマイクロカプセルは、マイクロカプセル表面へのアニオン電荷付与の点から、表面の少なくとも一部にアニオン変性ポリビニルアルコールを有していることが好ましい。
表面アニオン化剤を用いてマイクロカプセル表面に保護コロイドを形成する方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。但し、本開示においては、以下の方法に限定されるものではない。
まず、溶媒と、シェル材である3官能の脂肪族イソシアネート及び特定ジイソシアネートと、を撹拌混合して、油相を調製する。続いて、水相として、表面アニオン化剤(例えばアニオン変性ポリビニルアルコール)を含む水溶液を調製する。調製した水相に油相を加えて分散させて乳化し、生成した乳化液を加温して撹拌し、冷却する。冷却後、塩基(例えば水酸化ナトリウム水溶液)を添加し、表面に保護コロイドを有するマイクロカプセルの水分散液を得る。
なお、上記した各成分の含有量は、適宜変更することができる。
アニオン変性ポリビニルアルコールは、上市されている市販品を用いることができる。
市販品の例としては、クラレポバールKM−618(株式会社クラレ製)、クラレポバールKL−318(株式会社クラレ製)、ゴーセノールL−3266(日本合成化学株式会社製)、ゴーセノールT−330(日本合成化学株式会社製)等が挙げられる。中でも、アニオン性付与の観点から、アニオン変性ポリビニルアルコールとしては、クラレポバールKM−618、ゴーセノールL−3266が好ましく、クラレポバールKM−618がより好ましい。
−カチオン性界面活性剤−
本開示のマイクロカプセル含有組成物は、マイクロカプセル表面にアニオン電荷が付与されている場合には、カチオン性界面活性剤を含有していることが好ましい。これにより、マイクロカプセルのアニオン電荷(マイナス電荷)と、カチオン性界面活性剤のプラス電荷と、が相互作用によって引き合うことで、マイクロカプセルをカチオン性界面活性剤のプラス電荷が覆う。結果、カプセル全体として、プラス電荷を生じさせることができ、マイクロカプセルのプラス電荷とマイクロカプセルが付着する付着対象物(例えば繊維又は毛)が有するマイナス電荷とが引き合い、付着対象物に対するマイクロカプセルの付着性をより向上させることができる。
カチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩(例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド)、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、上市されている市販品を用いてもよい。市販品の例としては、カチオンEQ−01D(日油株式会社)、カチオンSF−10(三洋化成工業株式会社製)、カチオンSF−75PA(三洋化成工業株式会社製)、アデカミンSF−108(株式会社ADEKA製)等が挙げられる。
−分散媒−
本開示のマイクロカプセル含有組成物は、水系溶媒以外の他の分散媒を含んでもよい。
マイクロカプセルの分散媒を更に含むことで、マイクロカプセル含有組成物は、種々の用途に用いる際に容易に配合することができる。
マイクロカプセル含有組成物における分散媒は、組成物の使用目的に応じて適宜選択することができる。分散媒としては、マイクロカプセルの壁材に影響を与えない液状成分であることが好ましい。
好ましい他の分散媒としては、粘度調整剤、安定化剤などが挙げられる。
なお、本開示のマイクロカプセル含有組成物における分散媒の含有量は、用途に応じて適宜選択すればよい。
−他の成分−
本開示のマイクロカプセル含有組成物は、上記した成分以外の他の成分を含有することができる。
他の成分は、特に制限がなく、目的又は場合により適宜選択すればよい。他の成分としては、例えば、界面活性剤、架橋剤、潤滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤等が挙げられる。
<マイクロカプセルの製造方法>
本開示のマイクロカプセルの製造は、公知の方法により行うことができ、例えば以下に示す製造方法で製造することができる。但し、本開示は、以下の方法に制限されるものではない。
本開示のマイクロカプセルは、溶媒並びにシェル材である3官能の脂肪族イソシアネート及び特定ジイソシアネートを含む油相を、乳化剤及び(必要に応じてアニオン性基付与剤又は表面アニオン化剤)を含む水相に分散して乳化液を調製する工程(乳化工程)と、シェル材を油相と水相との界面で重合させてシェルを形成してコアを内包したマイクロカプセルを形成する工程(カプセル化工程)と、を有する方法で作製することができる。
アニオン性基付与剤は、乳化工程後に添加してもよい。
[乳化工程]
乳化工程では、溶媒並びにシェル材である3官能の脂肪族イソシアネート及び特定ジイソシアネートを含む油相を、乳化剤及び(必要に応じてアニオン性基付与剤又は表面アニオン化剤)を含む水相に分散して乳化液を調製する。
油相が溶媒を含むことにより、マイクロカプセルの単分散性が高められる。
〜乳化液〜
本開示の乳化液は、溶媒とシェル材とを含む油相を、乳化剤を含む水相に分散させることにより調製することができる。
(油相)
本開示における油相は、少なくとも、溶媒と、シェル材である3官能の脂肪族イソシアネート及び特定ジイソシアネートと、を含み、必要に応じて、香料、補助溶媒、添加剤などの他の成分が含まれてもよい。香料、補助溶媒、及び添加剤の詳細については、既述のマイクロカプセルの項に記載した通りである。
−溶媒−
本開示における製造方法で使用することができる溶媒は、既述のマイクロカプセルの項に記載した通りである。
−シェル材−
本開示におけるシェル材は、3官能の脂肪族イソシアネート及び特定ジイソシアネートを含む。
シェル材の油相中における含有量としては、油相の全質量に対して、0.1質量%超20質量%以下が好ましく、0.5質量%〜10質量%がより好ましく、1質量%〜5質量%が更に好ましい。
シェル材の濃度は、マイクロカプセルの大きさ、壁厚等に鑑みて適宜調整することができる。
(水相)
本開示における水相は、少なくとも水系溶媒及び乳化剤を含むことが好ましく、マイクロカプセルの表面にアニオン電荷を付与するための成分として例えばアニオン性基付与剤又は表面アニオン化剤を更に含むことができる。
−水系媒体−
本開示の水系媒体は、水、水及びアルコール等が挙げられ、イオン交換水等を用いることができる。
水系媒体の水相中における含有量としては、水相に油相を乳化分散して得られる乳化液の全質量に対して、20質量%〜80質量%が好ましく、30質量%〜70質量%がより好ましく、40質量%〜60質量%が更に好ましい。
−乳化剤−
乳化剤には、分散剤もしくは界面活性剤又はこれらの組み合わせが含まれる。
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール及びその変性物(例えばアニオン変性ポリビニルアルコール)、ポリアクリル酸アミド及びその誘導体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン−アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、アラビアゴム及びアルギン酸ナトリウムなどを挙げることができ、ポリビニルアルコールが好ましい。
分散剤は、シェル材と反応しないこと又は極めて反応し難いことが好ましく、例えばゼラチンなどの分子鎖中に反応性のアミノ基を有するものは、予め反応性を失わせる処理をしておくことが好ましい。
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
ノニオン界面活性剤は、特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系化合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系化合物、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル系化合物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル系化合物、グリセリン脂肪酸部分エステル系化合物、ソルビタン脂肪酸部分エステル系化合物、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル系化合物、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル系化合物、ショ糖脂肪酸部分エステル系化合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル系化合物、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル系化合物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル系化合物、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル系化合物、ポリオキシエチレン化ひまし油系化合物、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル系化合物、脂肪酸ジエタノールアミド系化合物、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン系化合物、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
アニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アビエチン酸塩、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、アルキルポリオキシアルキレンスルホアルキルエーテルの塩、アルケニルポリオキシアルキレンスルホアルキルエーテルの塩などが挙げられる。
カチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩(例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド)、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン、アミノカルボン酸、スルホベタイン、アミノ硫酸エステル、イミタゾリンが挙げられる。
乳化剤の濃度は、乳化液の全質量に対して、0質量%超20質量%以下が好ましく、0.005質量%以上10質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上10質量%以下が更に更に好ましく、1質量%以上5質量%以下が更に好ましい。
−アニオン性基付与剤又は表面アニオン化剤−
本開示における水相は、アニオン性基付与剤又は表面アニオン化剤を含むことが好ましい。アニオン性基付与剤及び表面アニオン化剤の詳細については、既述のマイクロカプセルの項において説明した通りである。
なお、一部のアニオン性基付与剤及び表面アニオン化剤(例えば、アニオン変性ポリビニルアルコール)は、後述する乳化剤としても用いることができるため、一部のアニオン性基付与剤及び表面アニオン化剤を用いる場合には、後述する乳化剤を添加しなくてもよい。
アニオン性基付与剤のシェルにおける含有量としては、シェル材の全質量に対して、0.5質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜10質量%がより好ましく、2.5質量%〜7質量%がさらに好ましい。
表面アニオン化剤の含有量としては、水相の全質量に対して、1質量%〜15質量%が好ましく、2質量%〜12質量%がより好ましく、4質量%〜10質量%が更に好ましい。
水相は、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤などの他の成分を含有してもよい。他の成分を含有する場合の含有量は、水相の全質量に対して、0質量%超20質量%以下が好ましく、0.1質量%超15質量%以下がより好ましく、1質量%超10質量%以下が更に好ましい。
(分散)
分散は、本開示の油相を油滴として本開示の水相に分散させること(乳化)をいう。分散は、油相と水相との分散に通常用いられる手段、例えば、ホモジナイザー、マントンゴーリー、超音波分散機、ディゾルバー、ケディーミル、又はその他の公知の分散装置を用いて行うことができる。
水相に対する油相の混合比率(油相/水相;質量基準)としては、0.1〜1.5が好ましく、0.2〜1.2がより好ましく、0.4〜1.0が更に好ましい。混合比率が0.1〜1.5の範囲内であると、適度の粘度に保持でき、製造適性に優れ、乳化液の安定性に優れる。
[カプセル化工程]
本開示のマイクロカプセルの製造方法は、シェル材を油相と水相との界面で重合させてシェルを形成し、溶媒を内包するマイクロカプセルを形成する工程を含む。これにより、本開示の溶媒がシェルに内包されたマイクロカプセルが形成される。
(重合)
重合は、乳化液中の油相に含まれるシェル材を水相との界面で重合させる工程であり、これによりシェルが形成される。重合は、好ましくは加熱下で行われる。重合における反応温度は、通常は40℃〜100℃が好ましく、50℃〜80℃がより好ましい。また、重合の反応時間は、通常は0.5時間〜10時間程度が好ましく、1時間〜5時間程度がより好ましい。重合温度が高い程、重合時間は短くなるが、高温で分解するおそれのある内包成分やシェル材を使用する場合には、低温で作用する重合開始剤を選択して、比較的低温で重合させるのが望ましい。
重合工程中に、マイクロカプセル同士の凝集を防止するためには、水性溶液(例えば、水、酢酸水溶液など)を更に加えてマイクロカプセル同士の衝突確率を下げることが好ましく、充分な攪拌を行うことも好ましい。重合工程中に改めて凝集防止用の分散剤を添加してもよい。更に、必要に応じて、ニグロシン等の荷電調節剤、又はその他任意の補助剤を添加することができる。これらの補助剤は、シェルの形成時、又は任意の時点で添加することができる。
〜マイクロカプセル含有組成物の用途〜
本開示のマイクロカプセル含有組成物は種々の用途に使用することができる。
マイクロカプセル含有組成物は、例えば、洗濯、ヘアケア、デイケア等の用途に適用することができる。
−洗濯−
本開示のマイクロカプセル含有組成物は、例えば、マイクロカプセル内にコア材(例えば香料)を含めることで、衣料用柔軟剤とすることができる。これにより、本開示のマイクロカプセル含有組成物は洗濯の用途に好適である。
衣料用柔軟剤であるマイクロカプセル含有組成物は、衣料をマイクロカプセル含有組成物に浸漬し、脱水、乾燥することで、マイクロカプセル含有組成物に含まれるマイクロカプセル及び必要に応じてカチオン性界面活性剤が衣料の繊維に吸着したり、繊維間の微細な空隙に入り込む等することにより衣料に保持される。これにより、衣類に対して、柔軟性、帯電防止性などが付与され、更にマイクロカプセルが付与されることで、所望の時期に内包成分(コア材)を放出し得、かつ、圧力が加えられない状態でも内包成分が徐々に放出される徐放性を付与することができる。
衣料用柔軟剤により処理された衣料を着用した場合、柔らかな着心地に加え、マイクロカプセル内に内包成分(コア材)が安定に含まれるため、経時後であっても衣服を擦るなどして応力を与え、マイクロカプセルを崩壊させることで、内包成分を放出させることができる。また、応力を加えない状態でも、内包成分が自然的に放出されるので、長期に亘って内包成分の放出効果が得られる。例えば、衣服を着用して行動する際、行動に伴って衣服に付着したマイクロカプセルが徐々に壊れてコア材を放出し、また衣服を着用する前又は着用後に着脱する等して行動を伴わない場合にもコア材を放出することができる。
衣料用柔軟剤は、マイクロカプセルのマイクロカプセル含有組成物の全質量に対する含有量が0.3質量%〜3質量%であることが好ましい。また、マイクロカプセル含有組成物がカチオン性界面活性剤を更に含有する場合は、カチオン性界面活性剤のマイクロカプセル含有組成物の全質量に対する含有量が10質量%〜30質量%であることが好ましい。
そのほか、マイクロカプセル含有組成物は、衣料用柔軟剤に含まれる公知の成分(例えば、消泡剤、色材、香料など)を更に含むことができる。衣料用柔軟剤に用いられる分散媒としては、イオン交換水等の水が好ましい。
−ヘアケア−
本開示のマイクロカプセル、並びにマイクロカプセル及び水系溶媒を含むマイクロカプセル含有組成物は、そのままヘアケアの用途に適用することができる。
ヘアケアの用途としては、リンス、コンディショナー、整髪料等の毛髪化粧料等に任意に適用することができる。
毛髪化粧料である本開示のマイクロカプセル含有組成物は、毛髪に適用した場合、マイクロカプセルが毛髪に付着し、毛髪を擦る、櫛でとく等した場合、応力によりマイクロカプセルが崩壊し、コア材を放出することができる。
液状の毛髪化粧料の場合、スプレー容器に充填することで、より長時間に亘り、マイクロカプセルを安定に保存することができ、好ましい。
スプレーにより毛髪化粧料を毛髪に付与した場合、分散媒とマイクロカプセルとが、毛髪に付着する。その後、頭皮をマッサージするなどを行なうことにより、マイクロカプセルに応力が掛かることでマイクロカプセルが崩壊し、コア材を毛髪に付着させることができる。
毛髪化粧料である本開示のマイクロカプセル含有組成物には、毛髪化粧料に含まれ得る公知の成分を任意に含有することができる。
毛髪化粧料の含まれ得る公知の成分としては、アルコールなどの水性媒体、油剤、洗浄成分或いは分散成分としての界面活性剤、皮膚に浸透する有効成分、色材、香料などが挙げられる。
−デイケア−
本開示のマイクロカプセル含有組成物は、例えば、支持体と支持体に含浸された既述のマイクロカプセル含有組成物とを含むデイケア(例えば、化粧用シート、おむつ等)の用途に適用することができる。
また、マイクロカプセル含有組成物が界面活性剤等の洗浄成分を含む場合、皮膚清拭用のシートとすることができる。
支持体としては、液状成分を保持することができれば特に制限はない。支持体としては、不織布、織布などの内部に水分を保持する空隙を有する繊維集合体、スポンジシートなどの多孔質体等が好ましい。
支持体に本開示のマイクロカプセル含有組成物を含浸させることで、支持体を皮膚に押しつけて擦ることでマイクロカプセルが壊れ、任意の時期に内包成分(コア材)を放出させることができ、かつ、応力を加えない状態でも、内包成分が自然的に放出されるので、長期に亘って内包成分の放出効果が得られる。
化粧用シート、おむつ等は、マイクロカプセル含有組成物を安定に保持するため、水不透過性の包装材料により包装されることが、効果の持続性の観点から好ましい。
既述のように、本開示のマイクロカプセル含有組成物は、必要な時期に任意の時期にコア材を放出しうるため、種々の用途に適用することができる。既述の用途は、その一例であり、本開示のマイクロカプセル含有組成物の用途は、上記記載には限定されない。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例において、体積基準のメジアン径、標準偏差、及び体積平均粒径は、マイクロトラックMT3300EXII(日機装株式会社製)により測定した。
シェルの厚み(壁厚)は、マイクロカプセルを切断した断面を走査型電子顕微鏡JSM−7800F(日本電子株式会社製)により観察して測定した。
また、ゼータ電位は、ELSZ-2000ZS(大塚電子株式会社製)を用いて測定した。以下のように、スラリーの各々に対して3回測定し、3回の測定値を平均してゼータ電位(単位:mV)を求めた。
(i)対象とするカプセルを含有するスラリーをカプセル濃度として0.5質量%となるように水に加え、スラリーを希釈した。測定濃度は必要に応じて、計測率が自動検出により好ましい範囲になるように調整した。
(ii)希釈した試料のゼータ電位を、試料を濾過せずに測定した。
(iii)濾過したスラリーを標準セルユニット(大塚電子株式会社製)に注入し、セルを装置に挿入した。試験温度は25℃に設定した。
(iv)温度が安定してから(通常3〜5分後)測定を開始した。それぞれの試料に
ついて、5回の測定を行う設定とした。
(実施例1)
−評価用サンプルの作製−
溶媒としてサラコス(登録商標)HG−8(日清オイリオグループ株式会社製)18.2質量部と、香料であるD−リモネン(ヤスハラケミカル株式会社製;香料)54.7質量部と、シェル材として、3官能の芳香族イソシアネート化合物であるバーノック(登録商標)D−750(DIC株式会社製、トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体)1.1質量部、及び3官能の脂肪族イソシアネート化合物であるタケネート(登録商標)D−160N(三井化学株式会社製、ヘキサメチレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体)2.3質量部と、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI、和光純薬工業株式会社製;特定ジイソシアネート化合物)0.8質量部と、を撹拌混合して油相を得た。
次に、ポリビニルアルコールであるクラレポバール(登録商標)PVA−217E(株式会社クラレ製;PVA)の5.8質量%水溶液を用意した。この水溶液157質量部に油相を加えて分散した後、生成した乳化液を70℃まで加温し、1時間撹拌した。続いて、冷却した後、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を3.8質量部添加し、マイクロカプセル水分散液を得た。
得られたマイクロカプセルの体積基準のメジアン径(D50)は17μmであった。
また、粒径分布のCV値[=(標準偏差/体積平均粒径)×100]は35%であった。マイクロカプセル水分散液のゼータ電位は0mVであった。
上記で得られたマイクロカプセルの香料換算1.0質量%と、カチオン性界面活性剤であるジアルキルエステル型4級アンモニウム塩を含む無香料柔軟剤(ULTRA Downy、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社製)99質量%と、を混合してマイクロカプセル含有組成物とした。次いで、マイクロカプセル含有組成物5質量部と水95質量部とを混合し、これに木綿タオル(35cm×35cm)を20分浸漬し、絞った後24時間乾燥し、評価用サンプルを作製した。
−評価−
(徐放性の官能評価)
上記で得た評価サンプル(木綿タオル)を25℃で経時し、香りの強度を24時間おきに10人のパネラーに評価してもらった。以下の基準で点数をつけ、5回の平均値(整数に四捨五入)を求めて徐放性を評価する指標とした。
<評価基準>
0点:乾燥直後でも香りがしない。
1点:乾燥直後は香りがするが、24時間経時した時点では香りがしない。
2点:24時間以降も香りがするが、48時間経時した時点は香りがしない。
3点:48時間以降も香りがするが、72時間経時した時点は香りがしない。
4点:72時間以降も香りがする。
(香り強度の官能評価)
上記で得た評価サンプル(木綿タオル)を5回擦り合わせた後、発生した香りの強度を10人のパネラーに評価してもらい、実施例1の香りの強度を基準(3点)とした。そして、各実施例及び比較例で作製した評価サンプルに対し、6段階に分けて点数(0点(香り強度弱い)〜5点(香り強度強い))をつけ、平均値(整数に四捨五入)を求めて定性評価を行った。
(香料の抽出量(マイクロカプセルの付着量))
上記で得た評価サンプル(木綿タオル)の6分の1をジメチルスルホキシド100gに浸漬し、24時間静置することで、マイクロカプセル内部の香料を抽出した。
抽出終了後のジメチルスルホキシド溶液に対して、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)を施して香料の抽出量を定量し、マイクロカプセルの付着量を評価する指標とした。
(実施例2〜実施例8)
実施例1において、使用するイソシアネート化合物の組合せを表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、マイクロカプセル水分散液を得た。
得られたマイクロカプセルの体積基準のメジアン径、標準偏差、体積平均粒径、ゼータ電位、及びシェル厚(壁厚)は、実施例1と同様に測定した。
(実施例9〜実施例33)
実施例1において、ポリビニルアルコールをアニオン変性ポリビニルアルコールに代え、かつ、イソシアネート化合物の種類及び混合比を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、マイクロカプセル水分散液を得た。
得られたマイクロカプセルの体積基準のメジアン径、標準偏差、体積平均粒径、ゼータ電位、及びシェル厚(壁厚)は、実施例1と同様に測定した。
(比較例1〜2)
実施例1において、ポリイソシアネートを表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、マイクロカプセル水分散液を得た。得られたマイクロカプセルの体積基準のメジアン径、標準偏差、体積平均粒径、ゼータ電位、及びシェル厚(壁厚)は、実施例1と同様に測定した。
Figure 2021073166

表1中の成分の詳細は以下の通りである。
217E:クラレポバールPVA―217E(部分ケン化ポリビニルアルコール)、株式会社クラレ製
KM−618:クラレポバールKM−618(アニオン変性ポリビニルアルコール)、株式会社クラレ製
KL−318:クラレポバールKL−318(アニオン変性ポリビニルアルコール)、株式会社クラレ製
L−3266:ゴーセノールL−3266(アニオン変性ポリビニルアルコール)、日本合成化学株式会社製
D−750:バーノックD−750(トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体;3官能以上の芳香族イソシアネート化合物)、DIC社製
D−160N:タケネートD−160N(ヘキサメチレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体;3官能の脂肪族イソシアネート化合物)、三井化学株式会社製
MDI:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(和光純薬工業株式会社製)
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート(和光純薬工業株式会社製)
DMDI:4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(和光純薬工業株式会社製)
THDI:トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(和光純薬工業株式会社製)
表1に示すように、実施例では、比較例1及び比較例2に比べ、長期に亘る徐放性が発現されていることが分かる。また、実施例のマイクロカプセルは、繊維への付着性も良好であり、繊維に付着した状態で保持され、一定の強度の芳香性(香り)発現させることができた。
また、実施例9〜16のマイクロカプセルは、表面にアニオン電荷が付されていない実施例1〜8のマイクロカプセルに比べ、より長期に亘る徐放性が得られており、繊維への付着性の点でも優れていた。
実施例17〜21又は実施例22〜27のマイクロカプセルを対比すると、徐放性の点で、3官能以上の脂肪族イソシアネート化合物と特定ジイソシアネート化合物の量的関係に好ましい範囲があることが分かる。また、繊維へのマイクロカプセルの付着性の点では、特定ジイソシアネートの比率がより低くなるにしたがい、良好になることが分かる。
また、実施例28〜29を踏まえると、マイクロカプセルのゼータ電位は、−50meV〜−10meVの範囲が好適である。
さらに、マイクロカプセルのシェルの厚みとしては、実施例32〜33を実施例9と対比すると、0.05μm〜0.2μmが好ましいと考えられる。
本開示のマイクロカプセルは、コア材(特に香料)を内包する態様で好適に利用でき、香料の保護、刺激応答性等の種々の好ましい機能を発揮することができる。

Claims (9)

  1. コアを内包するシェルのシェル材として、3官能以上の脂肪族イソシアネート化合物に由来する構造と、2官能の脂肪族イソシアネート化合物に由来する構造及び2官能の芳香族イソシアネート化合物に由来する構造から選ばれる少なくとも一方の構造と、を有するポリウレタン又はポリウレアを含むマイクロカプセル。
  2. 前記3官能以上の脂肪族イソシアネート化合物に由来する構造の、シェル材の全質量に占める割合が、20質量%〜90質量%である請求項1に記載のマイクロカプセル。
  3. 前記2官能の脂肪族イソシアネート化合物に由来する構造及び前記2官能の芳香族イソシアネート化合物に由来する構造から選ばれる少なくとも一方の構造の、シェル材の全質量に占める割合が、10質量%〜70質量%である請求項1又は請求項2に記載のマイクロカプセル。
  4. 前記コアがコア材として香料を含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のマイクロカプセル。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のマイクロカプセルと、水系溶媒と、を含有するマイクロカプセル含有組成物。
  6. 前記マイクロカプセルは、表面にアニオン電荷を有し、かつ、更にカチオン性界面活性剤を含有する請求項5に記載のマイクロカプセル含有組成物。
  7. 前記マイクロカプセルが、表面の少なくとも一部にアニオン変性ポリビニルアルコールを有する請求項6に記載のマイクロカプセル含有組成物。
  8. 前記マイクロカプセルのゼータ電位が、−80meV〜−5meVである請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載のマイクロカプセル含有組成物。
  9. 洗濯、デイケア、又はヘアケアの用途に用いられる請求項5〜請求項8のいずれか1項に記載のマイクロカプセル含有組成物。
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