JP2021070803A - 防曇塗料および防曇塗料が塗工された物品 - Google Patents

防曇塗料および防曇塗料が塗工された物品 Download PDF

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祥子 高野
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Abstract

【課題】優れた防曇性を有するとともに、長期にわたりその防曇性を持続できる塗膜を形成できる防曇塗料を提供すること。【解決手段】架橋ポリマーを含み、前記架橋ポリマーが、式(1)で表される基を側鎖として有する、防曇塗料。−COOM ・・・(1)(式(1)において、Mは、NaおよびKから選択される少なくとも1つである。)【選択図】なし

Description

本発明は、防曇塗料および当該防曇塗料が塗工された物品に関する。
ガラス板の代替として軽量化や成形性の観点から樹脂成形体が広く用いられている。用途として、自動車部品、家電部品、ハウジング、容器、フィルム、シート等の広い分野で使用されている。特に透明プラスチックは、各種窓、光学用レンズ、ミラー、眼鏡、ゴーグル、遮音壁、信号機灯のレンズ、前照灯レンズ、カーブミラー、風防、銘板等に使用されている。しかし、プラスチック等の樹脂基材は、外気との温湿度差により、基材の一方の面が露点温度以下になった場合や、急激な温湿度変化が生じた場合に基材表面が結露し、表面に微細な水滴が付着し透過光を散乱することがある。そのような場合、樹脂成形体は、透明性が損なわれ、いわゆる曇りが発生する。
上記の曇りの発生を防止する(防曇)方法として基材の表面に、親水性樹脂および界面活性剤などを混合した溶液を塗装し、塗膜(乾燥塗膜あるいは硬化塗膜)を形成させる方法が知られている。
この方法は、塗膜中に含まれる界面活性剤が、付着した水滴の接触角を下げ、基材表面に付着した水分が水滴とはならず水膜となることにより、光の散乱を起こさないことで防曇効果を発現させる。また、当該方法は、界面活性剤による水滴の接触角低下が迅速に起こるため、防曇効果が速やかに発現できる。
しかし、上記の塗膜の実使用を考慮した場合(例えば、長期間使用した場合、または塗膜表面を水拭きした場合など)、塗膜内部中の界面活性剤が容易に流出し、防曇性が低下してしまう。一方、界面活性剤を多量に添加することにより、防曇持続性を多少向上させることができるが、大幅に向上することはできず、また、塗膜が傷つき易くなり、塗膜の外観も低下してしまう問題がある。
このような界面活性剤の流出を防ぐために、水に溶けにくい界面活性剤を使用する方法(特許文献1)が報告されている。
特開2015−86370号公報
しかしながら、特許文献1における技術においても、界面活性剤の流出を完全には防ぐことができず、また長期にわたり界面活性剤の流出を抑制して防曇性を維持する点において改善の余地があった。
本発明は上記課題を鑑み、親水性基を有する架橋ポリマーを用いることにより、優れた防曇性を有するとともに、長期にわたりその防曇性を持続できる塗膜を形成できることを見出し完成されたものである。
本発明によれば、
架橋ポリマーを含み、
前記架橋ポリマーが、式(1)で表される基を側鎖として有する、防曇塗料が提供される。
−COOM ・・・(1)
(式(1)において、Mは、NaおよびKから選択される少なくとも1つである。)
また本発明によれば、
熱可塑性樹脂からなる基材と、
前記基材の表面の少なくとも一部に形成された塗膜と、を備え、
前記塗膜は、上記防曇塗料からなる、物品が提供される。
本発明によれば、優れた防曇性能を有するとともに、長期にわたりその防曇性を持続できる塗膜を形成できる防曇塗料、および当該塗膜を有する物品が提供される。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態の防曇塗料は、架橋ポリマー(以下、「架橋ポリマーP」と称する)を含み、当該架橋ポリマーPは、式(1)で表される基を側鎖として有する。
−COOM ・・・(1)
式(1)において、Mは、Na(ナトリウム)およびK(カリウム)から選択される少なくとも1つである。
本実施形態の防曇塗料に用いられる架橋ポリマーPは、式(1)で表される基が連結基を介して主鎖骨格に結合しており、かつ式(1)で表される基が架橋基により架橋された架橋構造を有する。架橋ポリマーPは、基材表面に塗工された場合、基材表面上に塗膜を形成する。架橋ポリマーPが側鎖として有する式(1)で表される基は、親水性基であるため、得られる塗膜は親水性を有し、よって、当該塗膜に水(水蒸気)が付着した場合、水は水滴とならずに、水膜を形成する。これにより、当該塗膜が塗工された基材は、防曇性を発現する。また架橋ポリマーPは、架橋構造、すなわち、立体網目構造を有するため、得られる塗膜が水に晒された場合であっても、水に溶解したり、脱離したりしない。さらに架橋ポリマーPは、その主鎖に共有結合された式(1)で表される基を有する。そのため、架橋ポリマーPからなる塗膜が水に晒された場合であっても、架橋ポリマーPから式(1)の基が脱離しない。よって、架橋ポリマーPからなる塗膜は、優れた防曇維持性を備える。
架橋ポリマーPは、式(1)で表される基を有するポリマーを架橋剤で架橋することにより得られる。架橋ポリマーPは、その架橋構造(立体網目構造)により、耐候性、耐久性に優れた塗膜を形成し得る。本明細書中、架橋ポリマーPを形成するために用いられるポリマーを、「架橋前ポリマーP'」または「ポリマーP'」と称する。
架橋前ポリマーP'は、式(1)で表される基を有するポリマーであり、水溶性ポリマーおよび水不溶性ポリマーのいずれも用いることができる。架橋前ポリマーP'と架橋剤との架橋反応により生成する架橋ポリマーPは水不溶性となる。
ここで、「水溶性」および「水不溶性」とは、架橋前ポリマーP'または架橋ポリマーPを、120℃で2時間乾燥させて、恒量に達したポリマーを、飽和に達するまで25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10gを超える時は水溶性、10g以下である時は水不溶性と判断する。
架橋ポリマーPが有する式(1)で表される基としては、例えば、式(2)で表される基を好ましく用いることができる。
−(CH−COOM ・・・(2)
ここで、式(2)において、nは、1〜11の整数であり、Mは、NaおよびKから選択される少なくとも1つである。
式(2)で表される基において、nは1〜11の整数であり、好ましくは、3〜11の整数である。式(2)で表される基は、nの異なるアルキレン基の混合物であってもよい。上記範囲の炭素数のアルキレン基であることにより、ポリマーP'を架橋剤と反応させて得られる架橋ポリマーPが、防曇コーティングとして適度な耐久性を有する。
式(2)で表される基としては、例えば、式(3)で表される基が好ましい。
−C(=O)−N(−R)−(CH−COOM ・・・(3)
式(3)において、
nは、1〜11の整数であり、Mは、NaおよびKから選択される少なくとも1つであり、Rは、炭素数1〜10の有機基である。
好ましくは、nは、3〜11の整数である。
を構成する炭素数1〜10の有機基としては、置換または無置換の、直鎖または分岐鎖の炭素数1〜10のアルキルが挙げられ、より具体的には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ヘテロ環基、カルボキシル基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
アルケニル基としては、例えばアリル基、ペンテニル基、ビニル基などが挙げられる。
アルキニル基としては、例えばエチニル基などが挙げられる。
アルキリデン基としては、例えばメチリデン基、エチリデン基などが挙げられる。
アリール基としては、例えばトリル基、キシリル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
アルカリル基としては、例えばトリル基、キシリル基などが挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクあ、ロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
ヘテロ環基としては、例えばエポキシ基、オキセタニル基などが挙げられる。
これらの炭素数1〜10の有機基中の水素原子は、例えば、フッ素原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基などで置換されていてもよい。
中でも、式(1)で表される基を有する架橋ポリマーPは、式(1)の基を有する構造単位を含むことが好ましい。式(1)の基を有する構造単位としては、式(1)の基が2価の連結基を介して主鎖骨格に結合している構造単位であれば特に制限されないが、例えば、以下の式(4)で表される構造単位であることが好ましい。
Figure 2021070803
式(4)において、nは、1〜11の整数であり、好ましくは、3〜11の整数であり、Mは、NaおよびKから選択される少なくとも1つである。
架橋ポリマーPは、式(4)で表されるような、式(1)の基を有する構造単位を有することにより、式(1)の基が親水性基であることに起因した防曇性と、式(1)の基が架橋ポリマーPの構造単位に直接結合していることに起因した防曇維持性とを備える。
架橋ポリマーPは、好ましくは、式(5)で表される構造単位を含む。
Figure 2021070803
式(5)において、nは、1〜11の整数であり、Mは、NaおよびKから選択される少なくとも1つであり、Qは、置換または非置換の、単環または多環の、飽和または不飽和のC6〜C20の炭素環式基またはヘテロ環式基である。
式(5)で表される構造単位における環式基Qとしては、例えば、ノルボルネン、インデン、およびスチレン等の炭素環式基より誘導される基が挙げられる。中でも、ノルボルネン由来構造単位、インデン由来の構造単位を用いることが好ましい。環式基Qとして、ノルボルネン由来の基である式(CO)で表される基を用いる場合、この式(CO)で表される構造単位は化学的に堅牢である。そのため、これを構造単位として含む架橋ポリマーPは保存安定性に優れるとともに、耐久性に優れた塗膜を形成し得る。
Figure 2021070803
式(CO)において、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜30の有機基であり、
は0、1または2である。
一般式(CO)における、R、R、RおよびRの炭素数1〜30の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ヘテロ環基、カルボキシ基などを挙げることができる。
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
アルケニル基としては、例えばアリル基、ペンテニル基、ビニル基などが挙げられる。
アルキニル基としては、例えばエチニル基などが挙げられる。
アルキリデン基としては、例えばメチリデン基、エチリデン基などが挙げられる。
アリール基としては、例えばトリル基、キシリル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
アルカリル基としては、例えばトリル基、キシリル基などが挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
ヘテロ環基としては、例えばエポキシ基、オキセタニル基などが挙げられる。
一般式(CO)におけるR、R、RおよびRとしては、水素またはアルキル基が好ましく、水素がより好ましい。
、R、RおよびRの炭素数1〜30の有機基中の水素原子は、任意の原子団により置換されていてもよい。例えば、フッ素原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基などで置換されていてもよい。より具体的には、R、R、RおよびRを構成する炭素数1〜30の有機基として、フッ化アルキル基などを選択してもよい。
また、式(5)における環式基Qとして、インデン由来の基である式(IN)で表される基を用いる場合、この式(IN)で表される構造単位は、化学的に堅牢であるとともに、これが有する芳香族環に起因して高い疎水性を備える。そのため、これを構造単位として含む架橋ポリマーPは、保存安定性に優れるとともに、耐熱性や基材に対する密着性において優れる。
Figure 2021070803
架橋ポリマーPは、式(1)で表される基を有する架橋前ポリマーP'を架橋剤により架橋して得られる架橋構造を有する。以下に、架橋前ポリマーP'よび架橋剤を用いて架橋ポリマーPを製造する方法について説明する。
(架橋前ポリマーP')
架橋前ポリマーP'は、主鎖に上述の式(1)で表される基が結合した構造を有するポリマーであることが好ましい。式(1)で表される基としては、好ましくは、上記式(2)で表される基、より好ましくは、式(3)で表される基を用いることができる。架橋前ポリマーP'は、上記式(4)で表される構造単位を有するポリマーであることが好ましく、上記式(5)で表される構造単位を有するポリマーであることがさらに好ましい。さらに、架橋前ポリマーP'は、上記式(5)における環式基Qが、上記式(CO)で表される基または上記式(IN)で表される基であるポリマーであることが好ましい。
(架橋前ポリマーP'の製造)
架橋前ポリマーP'が、式(5)で表される構造単位を含み、かつ式(5)における環式基がノルボルネン由来構造単位(式(CO))であるポリマーについて、その製造方法を説明する。なお、本実施形態の架橋前ポリマーP'の製造方法は、上記構造単位を含むポリマーに限定されて解釈されるべきではない。式(5)における環式基Qが、インデン由来構造単位(式(IN))またはスチレン由来構造単位のような他の環式基である場合であっても、同様の方法により目的の架橋前ポリマーP'を製造することができる。
Figure 2021070803
式(5)において、nは、1〜11の整数であり、Mは、NaおよびKから選択される少なくとも1つであり、Qは、置換または非置換の、単環または多環の、飽和または不飽和のC6〜C20の炭素環式基またはヘテロ環式基である。
Figure 2021070803
式(CO)において、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜30の有機基であり、aは0、1または2である。
一実施形態において、架橋前ポリマーP'は、例えば、(I)式(CO−m)で表されるモノマーと、無水マレイン酸とを付加重合して、式(CO)で表される構造単位と式(MA)で表される構造単位とを含む第1の前駆体ポリマー(「原料ポリマー」)を得る工程、(II)工程(I)で得られた原料ポリマーと、式(am)で表されるアミノ酸とを反応させて、式(CO)で表される構造単位と式(4h)で表される構造単位を含む第2の前駆体ポリマーを得る工程、(III)工程(II)で得られた第2の前駆体ポリマーを塩基処理する工程、により製造することができる。式(CO−m)、式(4h)および式(am)において、a1、R〜R、およびnは、上記式(CO)および式(4)における定義と同義である。
Figure 2021070803
Figure 2021070803
Figure 2021070803
NH−(CH−COOH (am)
Figure 2021070803
式(CO−m)で表されるノルボルネンとしては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン(慣用名:2−ノルボルネン)、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−デシル−2−ノルボルネン、5−アリル−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−エチニル−2−ノルボルネン、5−ベンジル−2−ノルボルネン、5−フェネチル−2−ノルボルネン、2−アセチル−5−ノルボルネン、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。重合の際、式(CO−m)で表されるモノマーは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
工程(I)における重合の方法については限定されないが、ラジカル重合開始剤を用いたラジカル重合が好ましい。重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物などを使用できる。
アゾ化合物として具体的には、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(ABCN)などを挙げることができる。
有機過酸化物としては、例えば、過酸化水素、ジ−tert−ブチルパーオキサイド(DTBP)、過酸化ベンゾイル(ベンゾイルパーオキサイド,BPO)および、メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKP)などを挙げることができる。
重合開始剤については、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合反応に用いる溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤を用いることができる。重合溶媒は単独溶剤でも混合溶剤でもよい。
架橋前ポリマーP'の調製について、各工程ごとに説明する。架橋前ポリマーP'の合成は、まず、工程(I)において、式(CO−m)で表されるモノマー、無水マレイン酸および重合開始剤を溶媒に溶解させて反応容器に仕込み、その後、加熱して、付加重合を進行させて、式(CO)で表される構造単位と式(MA)で表される構造単位を含む前駆体ポリマー(原料ポリマー)を得る。加熱温度は例えば50〜80℃であり、加熱時間は例えば5〜20時間である。
反応容器に仕込む際の、式(CO−m)で表されるモノマーと、無水マレイン酸で表されるモノマーモル比は、0.5:1〜1:0.5であることが好ましい。分子構造制御の観点から、モル比は1:1であることが好ましい。
次いで、工程(II)において、工程(I)で得られた原料ポリマーと、式(am)で表されるアミノ酸とを、溶媒中で、加熱して反応させて、式(CO)で表される構造単位と、式(4h)で表される構造単位とを含む前駆体ポリマーを得る。加熱温度は例えば80〜130℃であり、加熱時間は例えば3〜10時間である。式(am)で表されるアミノ酸としては、グリシン、γ−アミノ酪酸、5−アミノペンタン酸、6−アミノヘキサン酸、7−アミノヘプタン酸、12−アミノラウリン酸等が挙げられる。
次いで、工程(III)において、式(CO)で表される構造単位と、式(4h)で表される構造単位とを含む工程(II)で得られた前駆体ポリマーを、塩基性水溶液で処理して、式(4h)で表される構造単位を、式(4)で表される構造単位に変換する。塩基性水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
上記方法により得られる架橋前ポリマーP'を含む反応混合物は、例えば、抽出、再結晶、濾過、乾燥の当該分野で公知の方法により、単離および/または精製してもよい。
なお、架橋前ポリマーP'は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、周期共重合体などのいずれであってもよい。典型的にはランダム共重合体または交互共重合体である。なお、一般に、無水マレイン酸は交互共重合性が強いモノマーとして知られている。
上記工程は、インデンモノマー、またはスチレンモノマーのような他のモノマーを用いた場合であっても、ノルボルネンモノマーの場合と同様の条件を適用することができる。
上記工程により得られる架橋前ポリマーP'の重量平均分子量は、例えば、6,000以上100,000以下であり、好ましくは、9,000以上70,000以下である。また架橋前ポリマーP'の数平均分子量は、例えば、3,000以上50,000以下、好ましくは、5,000以上15,000以下である。架橋前ポリマーP'の分子量が前記の範囲であれば、これを架橋剤で処理して得られる架橋ポリマーPもまた十分な水不溶性を備えるとともに、耐久性を備える。
なお、本発明において、平均分子量の測定は、GPC測定により得られる標準ポリスチレン(PS)の検量線から求めた、ポリスチレン換算値を用いる。測定条件は、以下の通りである。
東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC−8320GPC
カラム:東ソー社製TSK−GEL Supermultipore HZ−M
検出器:液体クロマトグラム用RI検出器
測定温度:40℃
溶媒:THF
試料濃度:2.0mg/ミリリットル
(架橋ポリマーPの製造)
上述の架橋前ポリマーP'は、架橋剤で処理することにより、この架橋前ポリマーP'が有する式(1)で表される基の一部と架橋剤とが架橋構造を形成して、架橋ポリマーPとなる。得られた架橋ポリマーPは、水不溶性であり、架橋剤と未反応の式(1)の基を有する。
(架橋剤)
本実施形態の架橋ポリマーPを得るために用いられる架橋剤は、多官能エポキシ化合物である。多官能エポキシ化合物としては、好ましくは分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物、より好ましくはグリシジルエーテル基を有する化合物、更に好ましくはエチレングリコールを母骨格とする脂肪族多官能エポキシ化合物である。
多官能エポキシ化合物のエポキシ当量(g/eq)は、反応のし易さ、および得られる架橋ポリマーPの保存安定性の観点から、好ましくは110以上、より好ましくは120以上、更に好ましくは140以上であり、そして、好ましくは1000以下、より好ましくは800以下、更に好ましくは600以下である。
多官能エポキシ化合物のエポキシ基の数は、効率よく架橋前ポリマーP'の式(1)の基と反応させて架橋構造を形成する観点から、1分子あたり2以上、好ましくは3以上であり、そして、1分子あたり好ましくは6以下、市場入手性の観点から、より好ましくは4以下である。
多官能エポキシ化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
これらの中では、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテルから選ばれる1種以上の水溶性多官能エポキシ化合物が好ましい。
エポキシ化合物と架橋前ポリマーP'との架橋反応は、好ましくは、塗布膜上で実施され、その反応温度は、反応の完結と経済性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上、より更に好ましくは60℃以上、より更に好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下である。また、反応時間は、上記と同様の観点から、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、更に好ましくは1.5時間以上であり、そして、好ましくは5時間以下、より好ましくは4時間以下、更に好ましくは3時間以下、より更に好ましくは2時間以下である。
架橋されて得られる架橋ポリマーPの架橋度は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは25モル%以上、更に好ましくは30モル%以上であり、そして、好ましくは60モル%以下、より好ましくは50モル%以下、更に好ましくは40モル%以下である。
なお、架橋度は架橋前ポリマーP'の酸価と架橋剤のエポキシ基の当量から計算される見かけの架橋度である。即ち、架橋度は「エポキシ化合物のエポキシ基のモル当量数/架橋前ポリマーP'の式(1)の基のモル当量数」である。
架橋ポリマーPは、エポキシ化合物と未反応の式(1)の基を有する。式(1)で表される基は、親水性基であるため、架橋ポリマーPからなる塗膜は親水性を有し、よって、当該塗膜に蒸気をあてた場合、水滴とならずに、水膜を形成する。これにより、防曇性が発現し得る。
(防曇塗料の作製)
上述の架橋ポリマーPは、溶媒に溶解または分散させて、液状またはワニス状の防曇塗料として提供される。防曇塗料を作製するために用いられる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、およびイソプロパノール、ならびにこれらの組み合せが挙げられる。中でも、架橋ポリマーPが溶解し得ることから、水、メタノール、エタノール/水混合物、メタノール/水混合物、イソプロパノール/水混合物、イソプロパノール/メタノール混合物が好ましく用いられる。
本実施形態の防曇塗料が溶媒を含む場合、架橋ポリマーPは、塗料全体に対して、例えば、10質量%以上90質量%以下の量であり、好ましくは、20質量%以上80質量%以下の量である。上記の配合量で架橋ポリマーPを配合することにより、塗布性や取扱い性に優れた塗料が得られる。
本実施形態の防曇塗料は、必要に応じて、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤等のその他の成分を含んでもよい。本実施形態の防曇塗料が界面活性剤を含む場合、その量は、例えば、塗料の固形分全体に対して、5質量%以下であり、好ましくは、3質量%以下であり、より好ましくは全く含まない。本実施形態の防曇塗料は、界面活性剤を含まないため、塗膜が水に晒された場合の界面活性剤のブリードアウトの問題が生じない。よって、外観が優れた塗膜が得られる。
本実施形態の防曇塗料から得られる塗膜は、優れた防曇性を備える。本実施形態において、防曇性は、塗膜の水に対する接触角を指標として評価する。本実施形態の防曇塗料から得られる塗膜は、高い親水性を有し、よって付着した水滴の接触角を下げ、水膜を形成するように作用する。塗膜上に形成された水膜は、光の散乱を起こさないため、結果として防曇効果が得られる。本実施形態の防曇塗料から得られる塗膜の水に対する接触角は、60°以下であり、好ましくは、50℃以下であり、より好ましくは40°以下であり、さらに好ましくは30°以下であり、さらにより好ましくは20°以下である。なお、接触角の測定は、本実施形態の防曇塗料を基材に塗布し、120℃で加熱処理して塗膜を得、当該塗膜について、協和界面化学株式会社製「CA−Z」等の市販の装置を用いて測定することができる。
本実施形態の防曇塗料から得られる塗膜は、水不溶性であり、水に晒された場合であってもその性能、形状、外観の変化がほとんどまたは全くない。本実施形態において、水不溶性であるとは、防曇塗料を基材に塗布して120℃で恒量に達するまで乾燥させて、塗膜を得、得られた塗膜を飽和に達するまで25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下であることをいう。
(用途)
本実施形態の防曇塗料を、通常の塗料において行われる塗装方法により基材に塗装し、加熱乾燥することによって、基材の表面に防曇性を有する塗膜を形成することができる。基材としては、特に限定されず、公知の樹脂基材(部材)が使用可能である。樹脂基材(部材)としては、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。これらの基材は、目的に応じて、適宜、例えばハードコート処理、反射防止処理、透明導電処理、電磁波遮蔽処理、ガスバリア処理等の表面機能化処理を施してもよい。
基材に防曇塗料を塗工する方法としては、例えば、バーコーター塗装、はけ塗り、流し塗り、浸漬塗り、スプレー塗り、スピンコート、フローコートなど、公知の方法が採用できる。
本実施形態の防曇塗料が塗工された基材は、例えば、家具、家庭用品、収納又は備蓄用品、壁又は屋根等の建材、玩具又は遊具、パチンコ面盤等の趣味用品、医療用品、福祉用品、OA機器、AV機器、電池電装用品、電気又は電子用品、照明機器、船舶部品、航空機の構造の車体部品、車両部品、光学部品に使用可能であり、特に好ましくは、車両用途や光学用途に用いることができる。
車両用途では、内外装部品として好適であり、特に、ヘッドライトカバー、メーターカバー、またはテールランプカバー等のLED光源が想定される部材に利用することができる。
光学用途としては、例えば、太陽電池に用いられる透明基盤等が挙げられる。その他にも、光通信システム、光交換システム、光計測システムの分野において、導波路、光ファイバー、光ファイバーの被覆材料、LEDレンズ、LED用レンズ(キャップ)カバー、各種LEDやEL照明等のカバー等にも利用することができる。特に好ましくは、光ファイバー、LEDレンズ、LED用レンズ(キャップ)カバー、各種LEDやEL照明等のカバーに利用することができる。
本実施形態の防曇塗料を塗工して得られる塗膜の膜厚は、防曇性を向上させる観点から、1.0μm以上が好ましく、3.0μm以上がより好ましい。また塗膜の膜厚は、塗膜の平滑性を高める観点から、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(原料ポリマー1の合成)
撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、無水マレイン酸(以下、MAとも示す)209.41g(2.1mol)と、2−ノルボルネン(以下、NBとも示す)201.06g(2.1mol)と、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)21.85g(94.9mmol)とを入れた。その後、反応容器に、さらにメチルエチルケトン(以下、MEKとも示す)316.7g及びトルエン163.1gからなる混合溶媒を加えて各成分を溶解し、溶解液を作製した。
この溶解液に対して、20分間窒素を通気して、酸素を除去した。次いで、撹拌しつつ温度65℃で6時間加熱することで、MAとNBとを重合させ、重合溶液を作製した。
得られた重合溶液を、MEK456.1gで希釈することで希釈液を作製し、次いで、希釈液をメタノール5418.1gに滴下することで白色固体を析出させた。これにより得られた白色固体を、温度120℃で真空乾燥することにより、NBに由来する構造単位とMAに由来する構造単位とを含むポリマー334.94g得た。このポリマーを以下では「原料ポリマー1」と記載する。
原料ポリマー1をGPC測定した。重量平均分子量Mwは10800、多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は1.97であった。
(原料ポリマー2の合成)
無水マレイン酸(以下、MAとも示す)209.41g(2.1mol)と、インデン(以下、INとも示す)248.0g(2.1mol)と、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)21.85g(94.9mmol)とを入れた。その後、反応容器に、さらにメチルエチルケトン(以下、MEKとも示す)537.34gを加えて各成分を溶解し、溶解液を作製した。
この溶解液に対して、20分間窒素を通気して、酸素を除去した。次いで、撹拌しつつ温度65℃で4時間加熱することで、MAとINとを重合させ、重合溶液を作製した。
得られた重合溶液を、MEK508.3gで希釈することで希釈液を作製し、次いで、希釈液をメタノール6,000gに滴下することで白色固体を析出させた。これにより得られた白色固体を、温度120℃で真空乾燥することにより、INに由来する構造単位とMAに由来する構造単位とを含むポリマー416.2g得た。このポリマーを以下では「原料ポリマー2」と記載する。
原料ポリマー2をGPC測定した。重量平均分子量Mwは49300、多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は2.04であった。
(架橋前ポリマー1の調製)
原料ポリマー1(60.0g(MA換算0.31mol))と、グリシン23.4g(0.31mol)を、溶媒存在下、115℃で4時間加熱処理(還流)した。これにより、原料ポリマー1中の無水マレイン酸構造の部分に、グリシンのアミノ基を反応させた。
その後、得られた溶液の水洗を繰り返すことで未反応原料を除去し、さらに溶媒留去と希釈を繰り返すことで、ポリマー1の質量20%PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、以下同じ)溶液292.4gを得た。
得られたポリマー1をGPC測定した。重量平均分子量Mwは10300、多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は1.93であった。また、H−NMR測定の結果、4.2ppm付近にグリシンのアミノ基に隣接する炭素のプロトンのピークが見られた。これにより、原料ポリマー1中へのグリシンの導入が確認された。
ポリマー1の質量20%PGMEA溶液にグリシン部のCOOHの90%がCOONaに変換されるよう水酸化ナトリウム11.2g(0.28mol)の質量40%水溶液を滴下した。析出したポリマーをPGMEAまたはヘプタンなどの貧溶媒1200gに滴下して洗浄して、白色固体を得、これを120℃で真空乾燥して、架橋前ポリマー1を58g得た。架橋前ポリマー1中のナトリウム(Na)の定量はICP−MSで実施した。結果は7.5%であった。これによりほぼすべてのグリシン部のCOOHがCOONaに変換されたことを確認した。
(架橋前ポリマー2の調製)
原料ポリマー1(40.0g(MA換算0.21mol))と、4−アミノ酪酸21.5g(0.21mol)を、溶媒存在下、115℃で4時間加熱処理(還流)した。これにより、原料ポリマー1中の無水マレイン酸構造の部分に、4−アミノ酪酸のアミノ基を反応させた。
その後、得られた溶液の水洗を繰り返すことで未反応原料を除去し、さらに溶媒留去と希釈を繰り返すことで、ポリマー2の質量20%PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、以下同じ)溶液219.4gを得た。
得られたポリマー2をGPC測定した。重量平均分子量Mwは10700、多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は1.93であった。
ポリマー2の質量20%PGMEA溶液に4−アミノ酪酸部のCOOHの90%がCOONaに変換されるよう水酸化ナトリウム7.56g(0.19mol)の質量40%水溶液を滴下した。析出したポリマーをPGMEAまたはヘプタンなどの貧溶媒900gに滴下して洗浄して、白色固体を得、これを120℃で真空乾燥して、架橋前ポリマー2を44g得た。架橋ポリマー2中のナトリウム(Na)の定量はICP−MSで実施した。結果は6.5%であった。これによりほぼすべての4−アミノ酪酸部のCOOHがCOONaに変換されたことを確認した。
(架橋前ポリマー3の調製)
原料ポリマー1(40.0g(MA換算0.21mol))と、12−アミノラウリン酸44.8g(0.21mol)を、溶媒存在下、115℃で4時間加熱処理(還流)した。これにより、原料ポリマー1中の無水マレイン酸構造の部分に、12−アミノラウリン酸のアミノ基を反応させた。
その後、得られた溶液の水洗を繰り返すことで未反応原料を除去し、さらに溶媒留去と希釈を繰り返すことで、ポリマー3の質量20%PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、以下同じ)溶液219.1gを得た。
得られたポリマー2をGPC測定した。重量平均分子量Mwは12700、多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は1.88であった。
ポリマー3の質量20%PGMEA溶液に12−アミノラウリン酸部のCOOHの90%がCOONaに変換されるよう水酸化ナトリウム7.56g(0.19mol)の質量40%水溶液を滴下した。析出したポリマーをPGMEAまたはヘプタンなどの貧溶媒900gに滴下して洗浄して、白色固体を得、これを120℃で真空乾燥して、架橋前ポリマー3を44g得た。架橋前ポリマー3中のナトリウム(Na)の定量はICP−MSで実施した。結果は4.9%であった。これによりほぼすべての12−アミノラウリン酸部のCOOHがCOONaに変換されたことを確認した。
(架橋前ポリマー4の調製)
原料ポリマー2(40.0g(MA換算0.19mol))と、グリシン14.2g(0.19mol)を、溶媒存在下、115℃で4時間加熱処理(還流)した。これにより、原料ポリマー2中の無水マレイン酸構造の部分に、グリシンのアミノ基を反応させた。
その後、得られた溶液の水洗を繰り返すことで未反応原料を除去し、さらに溶媒留去と希釈を繰り返すことで、ポリマー4の質量20%PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、以下同じ)溶液224.1gを得た。
得られたポリマー4をGPC測定した。重量平均分子量Mwは35900、多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は1.67であった。
(防曇塗料の作製)
(実施例1〜9、および11)
上記で得られた架橋前ポリマー1〜4を、それぞれ、固形分20%になるようメタノールに溶解した。次いで、得られた溶液に、多官能エポキシ化合物を、エポキシ基の量が、架橋前ポリマーのCOONa部の25モル%に相当する量で加えて、防曇塗料を作製した。配合量は表1に示す。なお、表1に記載の成分は以下のとおりである。
(実施例10)
上記で得られた架橋前ポリマー4を、それぞれ、固形分10%になるよう水、エタノール混合溶媒(重量分率50/50)に溶解した。次いで、得られた溶液に、多官能エポキシ化合物を、エポキシ基の量が、架橋前ポリマーのCOONa部の50モル%に相当する量で加えて、防曇塗料を作製した。配合量は表1に示す。なお、表1に記載の成分は以下のとおりである。
(架橋前ポリマー)
・架橋前ポリマー1:上記式(CO)の構造単位(a=0、R、R、R、R=Hは)と、上記式(4)の構造単位(M=Na、n=1)とからなるポリマー
・架橋前ポリマー2:上記式(CO)の構造単位(a=0、R、R、R、R=Hは)と、上記式(4)の構造単位(M=Na、n=3)とからなるポリマー
・架橋前ポリマー3:上記式(CO)の構造単位(a=0、R、R、R、R=Hは)と、上記式(4)の構造単位(M=Na、n=11)とからなるポリマー
・架橋前ポリマー4:上記式(IN)の構造単位と、上記式(4)の構造単位(M=Na、n=1)とからなるポリマー
(架橋剤)
・エポキシ化合物1:以下の式のエポキシ化合物(ナガセケムテックス株式会社製、デナコールEx313、エポキシ当量:141g/eq)
Figure 2021070803
・エポキシ化合物2:以下の式のエポキシ化合物(ナガセケムテックス株式会社製、デナコールEx421、エポキシ当量:152g/eq)
Figure 2021070803
・エポキシ化合物3:以下の式のエポキシ化合物(ナガセケムテックス株式会社製、デナコールEx811、エポキシ当量:132g/eq)
Figure 2021070803
・エポキシ化合物4:以下の式のエポキシ化合物(ナガセケムテックス株式会社製、デナコールEx832、エポキシ当量:284g/eq)
Figure 2021070803
(溶剤)
・溶剤1:メタノール
(塗膜の作製)
上述で得られた塗料を、ポリカーボネート板に、1000rpmでスピンコート塗布した。その後、120℃で1時間乾燥させて、厚みが2〜5μmの塗膜を得た。
(塗膜の性能評価)
上述で得た塗膜が塗工されたポリカーボネート板を試験片として用いて、以下の項目について評価した。
(防曇性の評価)
80℃温水浴に試験片の塗膜面があたるよう設置し、10秒間蒸気をあてた。試験片を傾けて乾燥させた。これを10回繰り返し、蒸気をあてた直後に水膜が形成されるかを目視で確認した。結果を以下の表記で表1に示す。
〇:水膜を張る
△:小さい水滴が観察される
×:水膜は張るが塗膜が溶ける
(塗膜強度の評価)
上述の防曇性の評価試験における80℃蒸気試験の後、塗膜の剥離の有無、溶けの有無がないかを目視で確認した。結果を以下の表記で表1に示す。
〇:溶けない
△:わずかに溶ける
×:溶ける
(接触角の測定)
協和界面科学株式会社製ポータブル接触角計PCA−1を用い、試験片の水に対する接触角を測定した。結果を表1に示す。
(外観の評価1−水垂れ跡の有無)
80℃温水浴に試験片の塗膜面があたるよう設置し、10秒間蒸気をあて、試験片を傾けて乾かした。その後、塗膜表面に白い汚れがないかを目視で観察した。結果を、以下の表記で表1に示す。
〇:白い汚れ無し
×:白い汚れがある
N.d.:測定不可(膜強度試験における80℃蒸気試験により塗膜が溶けたり破れたりしたため)
(外観の評価2−LED照射時の外観)
試験片の塗膜面にLEDライトを垂直方向に照射し、試験片が透明に見えるか否かを目視で観察した。結果を、以下の表記で表1に示す。
〇:透明に見える
×:白く見える
(外観の評価3−吐息による曇りの有無)
試験片の塗膜面に吐息を数回吹きかけ、曇りの有無を目視で確認した。結果を、以下の表記で表1に示す。
〇:曇らない
×:曇る
(耐水性の評価−24時間の水浸漬後の吐息による曇りの有無)
試験片を、室温の水槽に入れ、24時間放置した。その後、試験片を取り出し、試験片の塗膜面に吐息を数回吹きかけ、曇りの有無を目視で確認した。結果を、以下の表記で表1に示す。
〇:曇らない
△:わずかに曇るが、使用上問題ない
×:曇り、使用上問題となる
(防曇維持性の評価−繰り返し80℃蒸気試験)
80℃温水浴に試験片の塗膜面があたるよう設置し、10秒間蒸気をあてた後、試験片を傾けて乾燥させた。これを繰り返し、蒸気をあてた直後に水膜が形成されるかを目視で確認した。何回の蒸気試験の後、水膜が形成されずに曇りが生じるかを測定した。結果を、以下の評で表1に示す。
〇:18回目以降の蒸気試験で、曇りが生じた
△:4回目〜17回目の蒸気試験で、曇りが生じた
×:3回目以前の蒸気試験で、曇りが生じた
Figure 2021070803
実施例の防曇塗料はいずれも、優れた防曇性と耐久性とを良好なバランスで備えていた。

Claims (17)

  1. 架橋ポリマーを含み、
    前記架橋ポリマーが、式(1)で表される基を側鎖として有する、防曇塗料。
    −COOM ・・・(1)
    (式(1)において、Mは、NaおよびKから選択される少なくとも1つである。)
  2. 溶媒をさらに含む、請求項1に記載の防曇塗料。
  3. 式(1)で表される前記基が、式(2)で表される基である、請求項1または2に記載の防曇塗料。
    −(CH−COOM ・・・(2)
    (式(2)において、nは、1〜11の整数であり、Mは、NaおよびKから選択される少なくとも1つである。)
  4. 式(2)で表される前記基が、式(3)で表される基である、請求項3に記載の防曇塗料。
    −C(=O)−N(−R)−(CH−COOM ・・・(3)
    (式(3)において、nは、1〜11の整数であり、Mは、NaおよびKから選択される少なくとも1つであり、Rは、炭素数1〜10の有機基である。)
  5. 前記架橋ポリマーが、式(4)で表される構造単位を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の防曇塗料。
    Figure 2021070803
    (式(4)において、nは、1〜11の整数であり、Mは、NaおよびKから選択される少なくとも1つである。)
  6. 前記架橋ポリマーが、式(5)で表される構造単位を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の防曇塗料。
    Figure 2021070803
    (式(5)において、nは、1〜11の整数であり、Mは、NaおよびKから選択される少なくとも1つであり、Qは、置換または非置換の、単環または多環の、飽和または不飽和のC6〜C20の炭素環式基またはヘテロ環式基である。)
  7. 前記式(5)におけるQが、置換または非置換の、ノルボルネン、インデン、およびスチレンから選択される少なくとも1つに由来する基である、請求項6に記載の防曇塗料。
  8. 前記架橋ポリマーが、式(1)で表される基を有する構造単位を含むポリマーを架橋剤で架橋して得られる架橋ポリマーであり、前記架橋剤が多官能エポキシ化合物である、請求項1〜7のいずれかに記載の防曇塗料。
    −COOM ・・・(1)
    (式(1)において、Mは、NaおよびKから選択される少なくとも1つである。)
  9. 式(1)で表される基を有する構造単位を含む前記ポリマーの重量平均分子量が、6,000以上100,000以下である、請求項8に記載の防曇塗料。
  10. 前記溶媒が、水、メタノール、エタノール、およびイソプロパノールから選択される少なくとも1つである、請求項2に記載の防曇塗料。
  11. 界面活性剤を実質的に含まない、請求項1〜10のいずれかに記載の防曇塗料。
  12. 当該防曇塗料を基材に塗布し、120℃で加熱処理して塗膜を得たとき、前記塗膜の、水との接触角が、60°以下である、請求項1〜11のいずれかに記載の防曇塗料。
  13. 当該防曇塗料を基材に塗布し、120℃で加熱処理して塗膜を得たとき、前記塗膜が、水不溶性である、請求項1〜12のいずれかに記載の防曇塗料。
  14. 熱可塑性樹脂からなる基材と、
    前記基材の表面の少なくとも一部に形成された塗膜と、を備え、
    前記塗膜は、請求項1〜13のいずれかに記載の防曇塗料からなる、物品。
  15. 前記基材が、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、およびアクリル樹脂から選択される少なくとも1つより構成される、請求項14に記載の物品。
  16. 車両部材である、請求項14または15に記載の物品。
  17. 前記車両部材が、ヘッドライトカバー、メーターカバー、またはテールランプカバーである、請求項16に記載の物品。
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