JP2021070800A - ハードコートフィルムおよび画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐衝撃性と耐屈曲性とを両立可能であり、かつカールの少ないハードコートフィルムを提供する。【解決手段】ハードコートフィルム(11)は、透明ポリイミドフィルム(1)の少なくとも一方の面にハードコート層(2)を備える。ハードコートフィルムは、透明ポリイミドフィルムの両面にハードコート層を備えていてもよい。ハードコート層は、脂環式エポキシ基を有するシロキサン化合物の硬化物を含み、ハードコート層の合計厚みが30μm以上である。【選択図】図1
Description
本発明は、透明ポリイミドフィルムの主面にハードコート層を備えるハードコートフィルムに関する。さらに、本発明は、画像表示パネルの表面にハードコートフィルムを備える表示装置に関する。
ディスプレイ、タッチパネル、および太陽電池等のエレクトロニクスデバイスの急速な進歩に伴い、デバイスの薄型化や軽量化、更にはフレキシブル化が要求されている。これらの要求に対して、基板やカバーウインドウ等に用いられているガラス材料のプラスチックフィルム材料への置き換えが検討されている。これらの用途では、プラスチックフィルムに、高い耐熱性や、高温での寸法安定性、高機械強度が求められる。また、近年、曲面ディスプレイや折り畳み可能なディスプレイ(フレキシブルディスプレイ、フォルダブルディスプレイ)が開発されており、プラスチックフィルムには、上記特性に加えて、耐屈曲性が要求されるようになっている。
特許文献1には、フレキシブルディスプレイ用の透明基板材料として、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面にハードコート層を設けたハードコートフィルムが開示されている。基材フィルムの表面にハードコート層を設けることにより、表面硬度や耐擦傷性等の機械強度を向上できる。
プラスチック材料により耐熱性や、高温での寸法安定性が要求される場合は、ポリイミドフィルムが用いられる。一般的な全芳香族ポリイミドは、黄色または褐色に着色しているが、脂環式構造の導入、屈曲構造の導入、フッ素置換基の導入等により、可視光透過率が高い透明ポリイミドが得られる。特許文献2には、透明ポリイミドフィルムの表面に、ラジカル重合性またはカチオン重合性のハードコート層を形成することにより、耐屈曲性を向上しながら、表面硬度の低下を抑制したことが記載されている。
表示パネル等を適切に保護するために、ディスプレイの表面に配置されるハードコートフィルムには、高い硬度と耐衝撃性が要求される。ハードコート層の厚みを大きくすることによりハードコートフィルムの硬度を向上できる。しかし、ハードコート層の厚みを大きくすると、ハードコートフィルムの耐屈曲性が低下する傾向がある。また、一般に用いられているアクリル系のハードコート材料は硬化収縮が大きく、ハードコート層の厚みを大きくするとハードコートフィルムのカールが大きくなる傾向がある。ハードコートフィルムにカールが生じていると、ロールトゥーロールによる搬送が困難となり、生産性やハンドリング性が低下する場合がある。また、所定サイズに切り出したハードコートフィルムのカールが大きい場合は、デバイスへの貼り合わせ等の作業性が低下する。
上記に鑑み、本発明は、高い硬度および耐衝撃性と耐屈曲性とを両立可能であり、かつカールの小さいハードコートフィルムの提供を目的とする。
本発明のハードコートフィルムは、透明ポリイミドフィルムの主面上にハードコート層を備える。ハードコート層は、脂環式エポキシ基を有するシロキサン化合物を含む。透明ポリイミドフィルムとハードコート層は接していてもよい。
透明ポリイミドフィルムの一方の面のみにハードコート層が設けられている場合、ハードコート層の厚みは30μm以上である。ハードコート層厚みは、透明ポリイミドフィルムの厚みよりも大きくてもよい。
ハードコートフィルムは、透明ポリイミドフィルムの両面にハードコート層を備えていてもよい。両面にハードコート層が設けられている場合、両面のハードコート層の合計厚みは30μm以上である。透明ポリイミドフィルムの両面にハードコート層が設けられる場合、一方の面のハードコート層の厚みと他方の面のハードコート層の厚みは、同一でもよく、異なっていてもよい。ハードコート層の合計厚みは、透明ポリイミドフィルムの厚みよりも大きくてもよい。
透明ポリイミドフィルムは、テトラカルボン酸二無水物由来構造とジアミン由来構造とを有するポリイミド樹脂を含む。ポリイミド樹脂としては、テトラカルボン酸二無水物成分として脂環式酸二無水物およびフッ素含有芳香族テトラカルボン酸二無水物からなる群から選択される1種以上を含み、ジアミン成分として、フッ素含有ジアミンを含むものが挙げられる。
ハードコート層の形成に用いられるハードコート組成物は、脂環式エポキシ基を有するシロキサン化合物を含む。上記のハードコート組成物を硬化することによりハードコート層が形成される。ハードコート組成物は、光カチオン重合開始剤を含有する光カチオン重合性組成物でもよい。シロキサン化合物は、好ましくは、下記一般式(I)で表される化合物を含むシラン化合物の縮合物である。
Y−R1−(Si(OR2)xR3 3−x) …(I)
Y−R1−(Si(OR2)xR3 3−x) …(I)
式(I)において、Yは脂環式エポキシ基であり;R1は炭素数1〜10のアルキレン基であり;R2は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり;R3は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選択される1価の炭化水素基であり;xは1〜3の整数である。
本発明のハードコートフィルムは、耐衝撃性と耐屈曲性とを両立可能であり、かつカールが小さく、ハンドリング性にも優れている。
図1は、透明ポリイミドフィルム1の一方の主面にハードコート層2が設けられたハードコートフィルム11の断面図である。フィルム基材としての透明ポリイミドフィルム1の主面に、ハードコート組成物を塗布し、硬化することにより、ハードコート層2が形成される。ハードコートフィルムは、図2に示すように、透明ポリイミドフィルムの両面にハードコート層21,22を備えていてもよい。ハードコート層は、透明ポリイミドフィルムの主面の全面に形成されていてもよく、一部のみに形成されていてもよい。
以下、透明ポリイミドフィルム、およびハードコート層の好ましい形態について順に説明する。なお、本明細書に例示の成分や官能基等は、特記しない限り、単独で用いてもよく、2種以上を併用(併存)してもよい。
[透明ポリイミドフィルム]
透明ポリイミドフィルム1は、全光線透過率が80%以上の透明フィルムである。透明ポリイミドフィルムの全光線透過率は85%以上が好ましく、88%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。透明ポリイミドフィルムのヘイズは2%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。透明ポリイミドフィルムのヘイズは0.1%以上または0.2%以上であってもよい。
透明ポリイミドフィルム1は、全光線透過率が80%以上の透明フィルムである。透明ポリイミドフィルムの全光線透過率は85%以上が好ましく、88%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。透明ポリイミドフィルムのヘイズは2%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。透明ポリイミドフィルムのヘイズは0.1%以上または0.2%以上であってもよい。
表示装置等に用いられる透明ポリイミドフィルムは、黄色度(YI)の絶対値が小さいことが好ましい。透明ポリイミドフィルムの黄色度の絶対値は、3.5以下が好ましく、3.0以下がより好ましい。透明ポリイミドフィルムの波長400mにおける光透過率は、55%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、65%以上がさらに好ましく、70%以上が特に好ましい。
耐熱性の観点から、透明ポリイミドフィルムのガラス転移温度は、200℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましく、300℃以上がさらに好ましい。ガラス転移温度は、動的粘弾性分析(DMA)にて、損失正接が極大を示す温度である。ガラス転移温度が過度に高いと成形加工が困難になる場合があるため、透明ポリイミドフィルムのガラス転移温度は500℃以下が好ましい。
<ポリイミド樹脂の組成>
ポリイミドフィルムはポリイミド樹脂を含む。ポリイミド樹脂は、一般に、テトラカルボン酸二無水物(以下、単に「酸二無水物」と記載する場合がある)とジアミンとの縮合により得られるポリアミド酸を脱水環化することにより得られる。すなわち、ポリイミドは、酸二無水物由来構造とジアミン由来構造とを有する。
ポリイミドフィルムはポリイミド樹脂を含む。ポリイミド樹脂は、一般に、テトラカルボン酸二無水物(以下、単に「酸二無水物」と記載する場合がある)とジアミンとの縮合により得られるポリアミド酸を脱水環化することにより得られる。すなわち、ポリイミドは、酸二無水物由来構造とジアミン由来構造とを有する。
ポリイミドの重量平均分子量は、5,000〜500,000が好ましく、10,000〜300,000がより好ましく、30,000〜200,000がさらに好ましい。重量平均分子量がこの範囲内である場合に、十分な機械特性および成形性が得られやすい。本明細書における分子量は、ゲルパーミレーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレンオキシド(PEO)換算の値である。分子量は、ジアミンと酸二無水物のモル比や反応条件等により調整可能である。
(酸二無水物)
透明ポリイミドは、酸二無水物成分として、フッ素含有芳香族酸二無水物および/または脂環式酸二無水物を含むことが好ましい。フッ素含有芳香族酸二無水物としては、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物等が挙げられる。中でも2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(以下「6FDA」と記載する場合がある)が好ましい。
透明ポリイミドは、酸二無水物成分として、フッ素含有芳香族酸二無水物および/または脂環式酸二無水物を含むことが好ましい。フッ素含有芳香族酸二無水物としては、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物等が挙げられる。中でも2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(以下「6FDA」と記載する場合がある)が好ましい。
フッ素含有芳香族酸二無水物を用いることにより、ポリイミド樹脂の溶媒への溶解性が高くなる傾向がある。ポリイミド樹脂が溶媒への溶解性を有する場合、ハードコート組成物を塗布した際に、組成物中の溶媒やモノマーによりポリイミドフィルムの表面がわずかに膨潤して、ポリイミドフィルムとハードコート層との密着性が向上する場合がある。
脂環式酸二無水物としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,1’‐ビシクロヘキサン‐3,3’,4,4’‐テトラカルボン酸‐3,4,3’,4’‐二無水物挙げられる。中でも、透明性および機械強度に優れるポリイミドが得られることから、脂環式酸二無水物としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が好ましく、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物が特に好ましい。
ジクロロメタン等の低沸点溶媒への溶解性が高く、かつ透明性が高く着色の少ない透明ポリイミドフィルムを得るためには、酸二無水物として、フッ素含有芳香族酸二無水物に加えて、ビス無水トリメリット酸エステル含むことが好ましい。
ビス無水トリメリット酸エステルは、無水トリメリット酸とジオールとのエステルであり、ジオールとしては芳香族ジオールが好ましい。芳香族ジオールとしては、ヒドロキノン類、ビフェノール類、ビスフェノール類等が挙げられる。
ビス無水トリメリット酸芳香族エステルとしては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
一般式(1)において、nは1以上の整数であり、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素原子数1〜20のパーフルオロアルキル基である。であり、nは1以上の整数である。nが2以上の場合、それぞれのベンゼン環に結合している置換基R1〜R4は、同一でもよく、異なっていてもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。パーフルオロアルキル基の具体例としては、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
透明性および機械強度に優れ、かつ有機溶媒に対する溶解性の高いポリイミドが得られることから、一般式(1)において、nは1または2が好ましく、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基であることが好ましい。一般式(1)においてn=2である酸二無水物の好ましい例としては、下記の式(2)で表されるビス(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボン酸)2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチルビフェニル−4,4’−ジイル(以下「TAHMBP」と記載する場合がある)が挙げられる。一般式(1)においてn=1である酸二無水物の好ましい例としては、下記の式(3)で表されるp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(以下「TMHQ」と記載する場合がある)が挙げられる。
酸二無水物として、これらのビス無水トリメリット酸エステルを含むポリイミドは、ジクロロメタン等の低沸点ハロゲン化アルキルに対して高い溶解性を示し、かつ、ポリイミドフィルムが高い透明性および機械強度を示す傾向がある。式(2)で表されるTAHMBPは、剛直性の高いビフェニル骨格を有しており、かつ、メチル基の立体障害によってビフェニルの2つのベンゼン環の間の結合がねじれてπ共役の平面性が低下するため、吸収端波長が短波長シフトして、ポリイミドの着色を低減できる。
上記以外の酸二無水物成分としては、ピロメリット酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等の1つの芳香環に4つのカルボニルが結合している芳香族テトラカルボン酸二無水物;2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,4’−オキシジフタル酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等の異なる芳香環に2つずつのカルボニル基が結合している芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
例えば、酸二無水物として、一般式(1)で表される酸二無水物およびフッ素含有芳香族酸二無水物に加えて、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下「BPDA」と記載する場合がある)を用いることにより、ジクロロメタン等の低沸点溶媒への溶解性を保ちつつ、高弾性率と透明性を併せ持つポリイミドが得られる。酸二無水物成分の全量100mol%のうち、一般式(1)で表される酸二無水物およびフッ素含有芳香族酸二無水物以外の酸二無水物の含有量は、50mol%以下が好ましく、30mol%以下がより好ましい。換言すれば、酸二無水物成分の全量100mol%のうち、一般式(1)で表される酸二無水物およびフッ素含有芳香族酸二無水物の含有量の合計は、50mol%以上が好ましく、70mol%以上がより好ましい。
(ジアミン)
透明ポリイミドは、ジアミン成分として、フッ素含有芳香族ジアミンを含むことが好ましい。
透明ポリイミドは、ジアミン成分として、フッ素含有芳香族ジアミンを含むことが好ましい。
フッ素含有芳香族ジアミンとしては、1,4−ジアミノ−2−フルオロヘンゼン、1,4−ジアミノ−2,3−ジフルオロベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ジフルオロベンゼン、1,4−ジアミノ−2,6−ジフルオロベンゼン、1,4−ジアミノ−2,3,5−トリフルオロベンゼン、1,4−ジアミノ、2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン、1,4−ジアミノ−2−(トリフルオロメチル)ヘンゼン、1,4−ジアミノ−2,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2,6−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2,3,5−トリス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2,3,5,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン、2−フルオロベンジジン、3−フルオロベンジジン、2,3−ジフルオロベンジジン、2,5−ジフルオロベンジジン、2,6−ジフルオロベンジジン、2,3,5−トリフルオロベンジジン、2,3,6−トリフルオロベンジジン、2,3,5,6−テトラフルオロベンジジン、2,2’−ジフルオロベンジジン、3,3’−ジフルオロベンジジン、2,3’−ジフルオロベンジジン、2,2’,3−トリフルオロベンジジン、2,3,3’−トリフルオロベンジジン、2,2’,5−トリフルオロベンジジン、2,2’,6−トリフルオロベンジジン、2,3’,5−トリフルオロベンジジン、2,3’,6,−トリフルオロベンジジン、2,2’,3,3’−テトラフルオロベンジジン、2,2’,5,5’−テトラフルオロベンジジン、2,2’,6,6’−テトラフルオロベンジジン、2,2’,3,3’,6,6’−ヘキサフルオロベンジジン、2,2’,3,3’,5,5’、6,6’−オクタフルオロベンジジン、2−(トリフルオロメチル)ベンジジン、3−(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,6−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,5−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,6−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,5,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,3’ −トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,5−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,6−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’,5−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’,6,−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,3,3’−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン等が挙げられる。
フッ素含有芳香族ジアミンとしては、フルオロアルキル置換ベンジジンが好ましく、中でも、ビフェニルの2位にフルオロアルキル基を有するフルオロアルキル置換ベンジジンが好ましく、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(以下「TFMB」と記載する場合がある)が特に好ましい。ビフェニルの2位および2’位にフルオロアルキル基を有することにより、フルオロアルキル基の電子求引性によるπ電子密度の低下に加えて、フルオロアルキル基の立体障害によって、ビフェニルの2つのベンゼン環の間の結合がねじれてπ共役の平面性が低下するため、吸収端波長が短波長シフトして、ポリイミドの着色を低減できる。
ジアミン成分の全量100mol%のうち、フルオロアルキル置換ベンジジンの含有量は、40〜100mol%が好ましく、50mol%以上がより好ましく、60mol%以上がさらに好ましい。フルオロアルキル置換ベンジジンの含有量が40mol%以上であれば、ポリイミドフィルムの鉛筆硬度や弾性率が高くなる傾向がある。
ジアミン成分として、フッ素含有芳香族ジアミンに加えてスルホニル基含有ジアミンを用いることにより、ポリイミド樹脂の溶媒への溶解性や透明性が向上する場合がある。スルホニル基含有ジアミンとしては、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン等のジフェニルスルホン誘導体が挙げられる。中でも、ポリイミド樹脂の溶媒への溶解性を向上できることから、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(以下「3,3’−DDS」と記載する場合がある)が特に好ましい。
ジアミン全量100mol%に対する3,3’−DDS等のスルホニル基含有ジアミン含有量は、5mol%以上、10mol%以上、15mol%以上、20mol%以上または25mol%以上であってもよい。ポリイミド樹脂の機械強度の観点から、ジアミン全量100mol%に対する3,3’−DDS等のスルホニル基含有ジアミン含有量は、50mol%以下が好ましく、40mol%以下がより好ましく、35mol%以下がさらに好ましい。
ポリイミド樹脂は、ジアミン成分として、フッ素含有芳香族ジアミンおよびスルホニル基含有ジアミン以外の成分を含んでいてもよい。フッ素含有芳香族ジアミンおよびスルホニル基含有ジアミン以外のジアミンとしては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン等の1つの芳香環に2つのアミノ基が結合しているジアミン;ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルフィド、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノジフェニルアルカン、ビス(アミノベンゾイル)ベンゼン等の異なる芳香環のそれぞれアミノ基が結合している芳香族ジアミン;ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式ジアミンが挙げられる。
(組成の具体例)
一実施形態において、ポリイミド樹脂は、酸二無水物成分として、一般式(1)で表される酸二無水物およびフッ素含有芳香族酸二無水物を含み、ジアミンとして、フルオロアルキル置換ベンジジンを含む。一般式(1)で表される酸二無水物としては、式(2)で表されるTAHMBPおよび/または式(3)で表されるTMHQが好ましく、フッ素含有芳香族酸二無水物としては6FDAが好ましく、フルオロアルキル置換ベンジジンとしてはTFMBが好ましい。ポリイミドは、酸二無水物成分として、さらにBPDAを含んでいてもよく、ジアミン成分としてさらに3,3’−DDSを含んでいてもよい。
一実施形態において、ポリイミド樹脂は、酸二無水物成分として、一般式(1)で表される酸二無水物およびフッ素含有芳香族酸二無水物を含み、ジアミンとして、フルオロアルキル置換ベンジジンを含む。一般式(1)で表される酸二無水物としては、式(2)で表されるTAHMBPおよび/または式(3)で表されるTMHQが好ましく、フッ素含有芳香族酸二無水物としては6FDAが好ましく、フルオロアルキル置換ベンジジンとしてはTFMBが好ましい。ポリイミドは、酸二無水物成分として、さらにBPDAを含んでいてもよく、ジアミン成分としてさらに3,3’−DDSを含んでいてもよい。
酸二無水物成分の全量100mol%のうち、一般式(1)で表される酸二無水物の量は、15〜65mol%が好ましく、TAHMBPとTMHQの合計が15〜65mol%であることが好ましい。一般式(1)で表される酸二無水物の量は、20〜65mol%がより好ましく、TAHMBPとTMHQの合計が20〜65mol%であることがさらに好ましい。一般式(1)で表される酸二無水物の含有量が15mol%以上であれば、ポリイミドフィルムの鉛筆硬度や弾性率が高くなる傾向があり、一般式(1)で表される酸二無水物の含有量が65mol%以下であれば、ポリイミドフィルムの透明性が高くなる傾向がある。
酸二無水物成分の全量100mol%のうち、6FDA等のフッ素含有芳香族酸二無水物の量は30〜80mol%が好ましく、35〜60mol%がより好ましい。さらに、酸二無水物成分として、BPDAを10〜40mol%含んでいてもよい。
一実施形態において、ポリイミド樹脂は、ビフェニル構造を有する酸二無水物成分を含む。酸二無水物成分がビフェニル構造を有することにより、ポリイミドフィルムの耐紫外線特性が高められ、紫外線照射に伴う透明性の低下(黄色度の増加)が抑制される傾向がある。
透明樹脂の光劣化を抑制するために、紫外線吸収剤を添加することが一般的に行われている。しかし、透明ポリイミドフィルムの耐紫外線性を高めるために紫外線吸収剤の添加量を多くすると、フィルムの着色による黄色度の増加や、耐熱性の低下に繋がる場合がある。ポリイミドの酸二無水物成分としてビフェニル構造を有する酸二無水物を用いることにより、紫外線吸収剤を用いない場合、または紫外線吸収剤の添加量が少ない場合でも、ポリイミドフィルムが十分な耐紫外線性を有し、紫外線吸収剤に起因する着色を抑制できるため、優れた透明性と耐紫外線性とを両立できる。
ポリイミドフィルムの耐紫外線性を向上する観点から、ビフェニル構造を有する酸二無水物の含有量は、酸二無水物成分全量100mol%に対して、10mol%以上が好ましく、15mol%以上がより好ましく、20mol%以上がさらに好ましい。透明性と耐紫外線性とを両立し、さらに、優れた機械強度、およびジクロロメタン等の低沸点溶媒に対する溶解性を持たせる観点から、ビフェニル構造を有する酸二無水物、一般式(1)で表される酸二無水物、およびフッ素含有芳香族酸二無水物の含有量の合計は、酸二無水物成分全量100mol%に対して、80mol%以上が好ましく、85mol%以上がより好ましく、90mol%以上がさらに好ましく、95mol%以上がさらに好ましい。
ビフェニル構造を有する酸二無水物としては、例えば、TAHMBP等の一般式(1)においてn=2である化合物が挙げられる。TAHMBPは、一般式(1)で表される酸二無水物であり、かつビフェニル構造を有する酸二無水物に該当する。
ビフェニル構造を有する酸二無水物として、一般式(1)においてn=2である化合物を含むポリイミドは、TAHMBPの含有量が、酸二無水物成分の全量100mol%に対して、15〜65mol%が好ましく、20〜65mol%がより好ましく、30〜60mol%がさらに好ましく;6FDAの含有量が、酸二無水物成分の全量100mol%に対して、3〜600mol%が好ましく、5〜40mol%がより好ましく、10〜30mol%がさらに好ましく;TFMBの含有量が、ジアミン成分100mol%に対して、40〜100mol%が好ましく、50〜90mol%がより好ましく、60〜80mol%がさらに好ましく;3,3’−DDSの含有量が、ジアミン成分100mol%に対して、60mol%以下が好ましく、3〜40mol%がより好ましく、5〜20mol%がさらに好ましい。3,3’−DDSの含有量は10mol%以下であってもよい。
さらに、TMHQ等の一般式(1)においてnが2以外である酸二無水物(すなわち、ビフェニル構造を有さない化合物)を併用してもよい。また、ビフェニル構造を有する酸二無水物として、TAHMBP等の一般式(1)で表される酸二無水物に加えて、BPDA等を併用してもよい。
ビフェニル構造を有する酸二無水物として、一般式(1)で表される酸二無水物以外の化合物を用いてもよい。例えば、ポリイミドは、ビフェニル構造を有する酸二無水物成分としてBPDAを含み、一般式(1)で表される酸二無水物成分としてTMHQを含み、フッ素含有芳香族酸二無水物として6FDAを含んでいてもよい。
酸二無水物成分として、BPDA、TMHQおよび6FDAを含むポリイミドは、BPDAの含有量が、酸二無水物成分の全量100mol%に対して、10〜50mol%が好ましく、15〜45mol%がより好ましく、20〜40mol%がさらに好ましく;TMHQの含有量が、酸二無水物成分の全量100mol%に対して、10〜65mol%が好ましく、15〜60mol%がより好ましく、20〜50mol%がさらに好ましく;6FDAの含有量が、酸二無水物成分の全量100mol%に対して、30〜80mol%が好ましく、35〜70mol%がより好ましく、40〜60mol%がさらに好ましく;TFMBの含有量が、ジアミン成分100mol%に対して、40〜100mol%が好ましく、50〜90mol%がより好ましく、60〜80mol%がさらに好ましく;3,3’−DDSの含有量が、ジアミン成分100mol%に対して、60mol%以下が好ましく、10〜50mol%がより好ましく、20〜40mol%がさらに好ましい。
上記の酸二無水物およびジアミンの組合せを用い、それぞれの酸二無水物成分およびジアミン成分の量を上記範囲とすることにより、ジクロロメタン等の低沸点溶媒への溶解性が高く、残存溶媒量の低減が容易であり、かつ、透明性および機械強度に優れるポリイミドが得られる。
(ポリアミド酸の合成)
ポリアミド酸は、例えば、有機溶媒中で酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得られる。酸二無水物とジアミンは略等モル量(95:100〜105:100のモル比)を用いることが好ましい。酸二無水物の開環を抑制するため、溶媒中にジアミンを溶解させた後、酸二無水物を添加する方法が好ましい。複数種のジアミンや複数種の酸二無水物を添加する場合は、一度に添加してもよく、複数回に分けて添加してもよい。ポリアミド酸溶液は、通常5〜35重量%、好ましくは10〜30重量%の濃度で得られる。
ポリアミド酸は、例えば、有機溶媒中で酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得られる。酸二無水物とジアミンは略等モル量(95:100〜105:100のモル比)を用いることが好ましい。酸二無水物の開環を抑制するため、溶媒中にジアミンを溶解させた後、酸二無水物を添加する方法が好ましい。複数種のジアミンや複数種の酸二無水物を添加する場合は、一度に添加してもよく、複数回に分けて添加してもよい。ポリアミド酸溶液は、通常5〜35重量%、好ましくは10〜30重量%の濃度で得られる。
ポリアミド酸の重合には、原料としてのジアミンおよび酸二無水物、ならびに重合生成物であるポリアミド酸を溶解可能な有機溶媒を特に限定なく使用できる。有機溶媒の具体例としては、メチル尿素、N,N−ジメチルエチルウレア等のウレア系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、テトラメチルスルフォン等のスルホン系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化アルキル系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、p−クレゾールメチルエーテル等のエーテル系溶媒、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶媒が挙げられる。これらの中でも、重合反応性およびポリアミド酸の溶解性に優れることから、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、またはN−メチルピロリドンが好ましく用いられる。
<ポリイミドフィルムの作製>
ポリアミド酸の脱水環化によりポリイミドが得られる。ポリイミドフィルムの作製方法としては、支持体上にポリアミド酸溶液を膜状に塗布し、溶媒を乾燥除去するとともにポリアミド酸をイミド化する方法と、ポリイミド酸溶液のイミド化を行い、得られたポリイミド樹脂を溶媒に溶解した溶液を支持体上に膜状に塗布して溶媒を乾燥除去する方法が挙げられる。ポリイミド樹脂の溶媒に対する可溶性が低い場合は、前者の方法が用いられる。可溶性ポリイミドのフィルム化にはいずれの方法も利用できる。残存不純物が少なく透明性の高いポリイミドフィルムを得る観点から、後者の方法が好ましい。
ポリアミド酸の脱水環化によりポリイミドが得られる。ポリイミドフィルムの作製方法としては、支持体上にポリアミド酸溶液を膜状に塗布し、溶媒を乾燥除去するとともにポリアミド酸をイミド化する方法と、ポリイミド酸溶液のイミド化を行い、得られたポリイミド樹脂を溶媒に溶解した溶液を支持体上に膜状に塗布して溶媒を乾燥除去する方法が挙げられる。ポリイミド樹脂の溶媒に対する可溶性が低い場合は、前者の方法が用いられる。可溶性ポリイミドのフィルム化にはいずれの方法も利用できる。残存不純物が少なく透明性の高いポリイミドフィルムを得る観点から、後者の方法が好ましい。
溶液でのイミド化には、ポリアミド酸溶液に脱水剤およびイミド化触媒等を添加する化学イミド化法が適している。イミド化の進行を促進するため、ポリアミド酸溶液を加熱してもよい。イミド化触媒としては、第三級アミンが用いられる。中でも、ピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリン等の複素環式の第三級アミンが好ましい。脱水剤としては、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物等の酸無水物が用いられる。
ポリアミド酸のイミド化により得られたポリイミド溶液は、そのまま製膜用溶液として用いることもできるが、一旦、ポリイミド樹脂を固形物として析出させることが好ましい。ポリイミド樹脂を固形物として析出させることにより、ポリアミド酸の重合時に発生した不純物や残存モノマー成分、ならびに脱水剤およびイミド化触媒等を、洗浄・除去できる。そのため、透明性や機械特性に優れたポリイミドフィルムが得られる。
ポリイミド溶液と貧溶媒とを混合することにより、ポリイミド樹脂が析出する。貧溶媒は、ポリイミド樹脂の貧溶媒であって、ポリイミド樹脂を溶解している溶媒と混和するものが好ましく、水、アルコール類等が挙げられる。ポリイミドの開環等の副反応が生じ難いことから、イソプロピルアルコール、2−ブチルアルコール、2−ペンチルアルコール、フェノール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコールが好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。析出したポリイミド樹脂には、少量のイミド化触媒や脱水剤等が残存している場合があるため、貧溶媒により洗浄することが好ましい。析出および洗浄後のポリイミド樹脂は、真空乾燥、熱風乾燥等により貧溶媒を除去することが好ましい。
ポリイミド樹脂および添加剤を適切な溶媒に溶解することにより、ポリイミド樹脂溶液を調製する。溶媒は、上記のポリイミド樹脂を溶解可溶なものであれば特に限定されず、例えば、ポリアミド酸の重合に用いる有機溶媒として先に例示したウレア系溶媒、スルホン系溶媒、アミド系溶媒、ハロゲン化アルキル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒等が挙げられる。これらの他に、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノン等のケトン系溶媒も、溶媒として好適に用いられる。
ポリイミド樹脂溶液は、ポリイミド以外の樹脂成分、および添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、架橋剤、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子等が挙げられる。ポリイミド溶液中の固形分100重量部に対するポリイミド樹脂の含有量は60重量部以上が好ましく、70重量部以上がより好ましく、80重量部以上がさらに好ましい。すなわち、ポリイミドフィルムにおけるポリイミド樹脂の含有量は60重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましい。
支持体上にポリイミド樹脂溶液を塗布し、溶媒を乾燥除去することにより、ポリイミドフィルムが得られる。溶媒の乾燥時には加熱を行うことが好ましい。加熱温度は特に限定されず、室温〜250℃程度で適宜に設定される。段階的に加熱温度を上昇させてもよい。支持体としては、ガラス基板、SUS等の金属基板、金属ドラム、金属ベルト、プラスチックフィルム等を使用できる。生産性向上の観点から、支持体として、金属ドラム、金属ベルト等の無端支持体、または長尺プラスチックフィルム等を用い、ロールトゥーロールによりフィルムを製造することが好ましい。プラスチックフィルムを支持体として使用する場合、製膜ドープの溶媒に溶解しない材料を適宜選択すればよく、プラスチック材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエチレンナフタレート等が用いられる。
ポリイミドフィルムの厚みは特に限定されず、用途に応じて適宜設定すればよい。ポリイミドフィルムの厚みは、例えば5μm以上である。支持体から剥離後のポリイミドフィルムに自己支持性を持たせる観点から、ポリイミドフィルムの厚みは20μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましい。ディスプレイのカバーウインドウ材料等の強度が求められる用途においては、ポリイミドフィルムの厚みは、40μm以上または50μm以上であってもよい。ポリイミドフィルムの厚みの上限は特に限定されないが、可撓性および透明性の観点からは200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましい。
ポリイミドフィルムの作製方法として、可溶性ポリイミド樹脂の溶液を用いる方法を中心に説明したが、前述のように、支持体上にポリアミド酸溶液を膜状に塗布し、支持体上での加熱によりイミド化を行ってもよい。また、溶媒を除去後のゲルフィルムを支持体から剥離後にさらに加熱してイミド化を行ってもよい。
[ハードコート層]
ポリイミドフィルムにハードコート組成物を塗布し、硬化することによりハードコート層が形成される。ハードコート層は、ポリイミドフィルムの片面のみに形成してもよく、両面に形成してもよい。ハードコート層の合計厚みは30μm以上である。図1に示すように、ポリイミドフィルム1の片面にハードコート層2が形成される場合、ハードコート層2の厚みが30μm以上である。図2に示すように、ポリイミドフィルム1の両面にハードコート層21,22が形成される場合、これらのハードコート層の厚みの合計が30μm以上である。
ポリイミドフィルムにハードコート組成物を塗布し、硬化することによりハードコート層が形成される。ハードコート層は、ポリイミドフィルムの片面のみに形成してもよく、両面に形成してもよい。ハードコート層の合計厚みは30μm以上である。図1に示すように、ポリイミドフィルム1の片面にハードコート層2が形成される場合、ハードコート層2の厚みが30μm以上である。図2に示すように、ポリイミドフィルム1の両面にハードコート層21,22が形成される場合、これらのハードコート層の厚みの合計が30μm以上である。
<ハードコート組成物>
(シロキサン化合物)
ハードコート組成物は、シロキサン化合物を含有する光硬化性樹脂組成物である。ハードコート層形成用樹脂組成物に含まれるシロキサン化合物は、光カチオン重合性官能基として脂環式エポキシ基を有する。脂環式エポキシ基としては、3,4−エポキシシクロヘキシル基が好ましい。シロキサン化合物としては、例えばWO2014/204010に記載の光硬化性シロキサン化合物を用いることができる。
(シロキサン化合物)
ハードコート組成物は、シロキサン化合物を含有する光硬化性樹脂組成物である。ハードコート層形成用樹脂組成物に含まれるシロキサン化合物は、光カチオン重合性官能基として脂環式エポキシ基を有する。脂環式エポキシ基としては、3,4−エポキシシクロヘキシル基が好ましい。シロキサン化合物としては、例えばWO2014/204010に記載の光硬化性シロキサン化合物を用いることができる。
脂環式エポキシ基を有するシロキサン化合物は、例えば、(1)脂環式エポキシ基を有するシラン化合物の縮合;(2)1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合および脂環式エポキシ基を有する化合物(例えばビニルシクロヘキセンオキシド)と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するポリシロキサン化合物とのヒドロシリル化反応等により得られる。網目状にシロキサン結合を有し、1分子中に多数の脂環式エポキシ基を有するシロキサン化合物が得られることから、上記(1)により得られるシロキサン化合物が好ましい。
脂環式エポキシ基を有するシラン化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
Y−R1−(Si(OR2)xR3 3−x) …(I)
Y−R1−(Si(OR2)xR3 3−x) …(I)
一般式(I)において、Yは脂環式エポキシ基であり、R1は炭素数1〜10のアルキレン基である。R2は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選択される1価の炭化水素基である。R3は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である。xは1〜3の整数である。xが2以上である場合、複数のR2は同一でも異なっていてもよい。(3−x)が2以上である場合、複数のR3は同一でも異なっていてもよい。
脂環式エポキシ基Yとしては、3,4−エポキシシクロヘキシル基が挙げられる。アルキレン基R1は、直鎖状でも分枝を有していてもよいが、直鎖アルキレン基が好ましく、炭素数1〜5の直鎖アルキレンが好ましく、エチレンが特に好ましい。すなわち、Siに結合している置換基Y−R1−は、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルであることが好ましい。
R2の具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基、及び、フェネチル基が挙げられる。シロキサン化合物の光カチオン重合の際の脂環式エポキシ基の反応性を高める観点から、R2は炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、エチル基またはプロピル基が特に好ましい。
R3の具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。シラン化合物の縮合を促進する観点から、R3は炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
網目状のシロキサン化合物の形成、およびシロキサン化合物に含まれる脂環式エポキシ基の数を大きくして硬化膜の硬度を高める観点から、一般式(I)におけるxは2または3が好ましい。縮合により得られるシロキサン化合物の分子量の調整等を目的として、xが2または3であるシラン化合物と、xが1であるシラン化合物とを併用してもよい。
一般式(I)で表されるシラン化合物の具体例としては、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメチルメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルメチルジメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルジメチルメトキシシラン等が挙げられる。
上記のシラン化合物のSi−OR2部分の反応により、Si−O−Si結合が形成されてシロキサン化合物が生成する。エポキシシクロヘキシル基等の脂環式エポキシドは、求電子反応性が高く、求核反応が低い。そのため、エポキシ基の開環を抑制する観点から、中性または塩基性条件下で反応を実施することが好ましい。
反応系を塩基性とするために用いる塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物や、アミン類が挙げられる。ハードコート層の形成(光硬化反応)の際に塩基性化合物が存在すると、光カチオン開始剤(光酸発生剤)から発生する酸が塩基性化合物によりクエンチされて、脂環式エポキシ基の光カチオン重合反応を阻害する場合がある。そのため、シロキサン化合物の形成に用いられる塩基性化合物は、揮発により除去可能であるものが好ましい。また、シロキサン化合物のエポキシ基の開環を抑制する観点から、塩基性化合物は求核性が低いことが好ましい。そのため、塩基性化合物としては第三級アミンが好ましく、中でも、トリエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリプロピルアミン、メチルジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の沸点が30〜160℃の第三級アミンが好ましい。WO2016/052413に記載されているように中性塩を用いて反応を実施してもよい。
硬化膜の硬度を高める観点から、シラン化合物の縮合により得られるシロキサン化合物の重量平均分子量は500以上が好ましい。また、シロキサン化合物の揮発を抑制する観点からも、シロキサン化合物の重量平均分子量は500以上が好ましい。一方、分子量が過度に大きいと、他の組成物との相溶性の低下等に起因して白濁が生じる場合がある。そのため、シロキサン化合物の重量平均分子量は20000以下が好ましい。シロキサン化合物の重量平均分子量は1000〜18000が好ましく、1500〜16000がより好ましく、2000〜14000がさらに好ましく、2800〜12000が特に好ましい。
シロキサン化合物は、1分子中に複数の脂環式エポキシ基を有することが好ましい。シロキサン化合物の1分子中に含まれる脂環式エポキシ基の数が大きいほど、光硬化時の架橋密度が高くなり、硬化膜の機械強度が高められる傾向がある。シロキサン化合物の1分子中の脂環式エポキシ基の数は、3個以上が好ましく、4個以上がより好ましく、5個以上がさらに好ましい。一方、1分子中に含まれる脂環式エポキシ基の数が過度に大きくなると、硬化時に分子間の架橋に寄与しない官能基の割合が増加する場合がある。そのため、シロキサン化合物の1分子中の脂環式エポキシ基の数は、100個以下が好ましく、80個以下がより好ましく、70個以下がさらに好ましく、60個以下が特に好ましい。
架橋点密度を高めて、硬化物の硬度や耐擦傷性を向上させるとの観点から、一般式(I)で表されるシラン化合物の反応により得られるシロキサン化合物における脂環式エポキシ基の残存率は高い方が好ましい。シラン化合物が有する脂環式エポキシ基のモル数に対する、縮合物の脂環式エポキシ基のモル数の割合は、20%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましい。上記のように、反応のpHや、中性塩または塩基性化合物を適切に選択することにより、脂環式エポキシ基の残存率が高められる。
光硬化時の副反応を抑制する観点や硬化物の硬度の観点から、シロキサン化合物におけるシラン化合物単位あたりに残存するOR2基の数が小さいことが好ましい。シロキサン化合物におけるSi原子1個あたりのOR2基の数は、2個以下である。Si原子1個あたりのOR2基の数は、平均1.5個以下が好ましく、1.0個以下がより好ましい。硬化物の耐屈曲性の観点からシロキサン化合物におけるSi原子1個あたりのOR2基の数は平均0.01個以上、0.05個以上、または0.3個以上であってもよい。
シラン化合物の縮合によりシロキサン化合物を得る場合、脂環式エポキシ基を有するシラン化合物に加えて、脂環式エポキシ基を有していないシラン化合物を用いてもよい。脂環式エポキシ基を有さないシラン化合物は、例えば、下記一般式(II)で表される。
R4−(Si(OR2)3 …(II)
R4−(Si(OR2)3 …(II)
一般式(II)のR4は、炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基、および置換アリール基からなる群から選択され、脂環式エポキシ基を有さない1価の基である。R4が置換を有するアルキル基である場合、置換基としては、グリシジル基、チオール基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、フェニル基、シクロヘキシル基、ハロゲン等が挙げられる。一般式(II)のR2は、一般式(I)におけるR2と同様である。
前述のように、硬化膜の機械強度が高める観点から、シロキサン化合物の1分子中に含まれる脂環式エポキシ基の数は大きいほど好ましい。そのため、シラン化合物の反応により得られるシロキサン化合物は、脂環式エポキシ基を有するシラン化合物(一般式(I)で表される化合物)に対する脂環式エポキシ基を有さないシラン化合物(一般式(II)で表される化合物)のモル比が2以下の条件で縮合したものであることが好ましい。一般式(I)で表される化合物に対する一般式(II)で表される化合物のモル比は、1以下が好ましく、0.6以下がより好ましく、0.4以下がさらに好ましく、0.2以下であることが特に好ましい。一般式(I)で表される化合物に対する一般式(II)で表される化合物のモル比は0でもよい。
機械強度に優れるハードコート層を形成する観点から、ハードコート組成物中の上記シロキサン化合物の含有量は、固形分の合計100重量部に対して40重量部以上が好ましく、50重量部以上がより好ましく、60重量部以上がさらに好ましい。
(光カチオン重合開始剤)
ハードコート組成物は、光カチオン重合開始剤を含むことが好ましい。光カチオン重合開始剤は、活性エネルギー線の照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤)である。光酸発生剤から生成した酸により、上記のシロキサン化合物の脂環式エポキシ基が反応して、分子間架橋が形成されハードコート材料が硬化する。
ハードコート組成物は、光カチオン重合開始剤を含むことが好ましい。光カチオン重合開始剤は、活性エネルギー線の照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤)である。光酸発生剤から生成した酸により、上記のシロキサン化合物の脂環式エポキシ基が反応して、分子間架橋が形成されハードコート材料が硬化する。
光酸発生剤としては、トルエンスルホン酸または四フッ化ホウ素等の強酸;スルホニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、セレニウム塩等のオニウム塩類;鉄−アレン錯体類;シラノール−金属キレート錯体類;ジスルホン類、ジスルホニルジアゾメタン類、ジスルホニルメタン類、スルホニルベンゾイルメタン類、イミドスルホネート類、ベンゾインスルホネート類等のスルホン酸誘導体;有機ハロゲン化合物類等が挙げられる。
上記の光酸発生剤の中で、脂環式エポキシ基を有するシロキサン化合物を含有するハードコート組成物における安定性が高いことから、芳香族スルホニウム塩または芳香族ヨードニウム塩が好ましい。中でも、光硬化が速く、ポリイミドフィルムとの密着性に優れるハードコート層が得られやすいことから、芳香族スルホニウム塩または芳香族ヨードニウム塩は、カウンターアニオンがフルオロフォスフェート系アニオン、フルオロアンチモネート系アニオン、またはフルオロボレート系アニオンであるものが好ましい。特に、カウンターアニオンは、フルオロフォスフェート系アニオンまたはフルオロアンチモネート系アニオンが好ましい。このような光酸発生剤の具体例としては、ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウム・ヘキサフルオロフォスフェート、ヘキサフルオロフォスフェートのフッ素原子の一部または全部をパーフルオロアルキル基で置換したヘキサフルオロフォスフェート誘導体、ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウム・ヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
ハードコート組成物中の光カチオン重合開始剤の含有量は、上記のシロキサン化合物100重量部に対して、0.05〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。
(粒子)
ハードコート組成物は粒子を含んでいてもよい。粒子としては、有機粒子、無機粒子、有機無機複合粒子等が挙げられる。有機粒子の材料としては、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、架橋ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、架橋スチレン、ナイロン、シリコーン、架橋シリコーン、架橋ウレタン、架橋ブタジエン等が挙げられる。無機粒子の材料としては、シリカ、チタニア、アルミナ、酸化スズ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化アンチモン等の金属酸化物;窒化珪素、窒化ホウ素等の金属窒素化物;炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム等の金属塩等が挙げられる。有機無機複合フィラーとしては、有機粒子の表面に無機物層を形成したものや、無機粒子の表面に有機物層または有機微粒子を形成したものが挙げられる。
ハードコート組成物は粒子を含んでいてもよい。粒子としては、有機粒子、無機粒子、有機無機複合粒子等が挙げられる。有機粒子の材料としては、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、架橋ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、架橋スチレン、ナイロン、シリコーン、架橋シリコーン、架橋ウレタン、架橋ブタジエン等が挙げられる。無機粒子の材料としては、シリカ、チタニア、アルミナ、酸化スズ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化アンチモン等の金属酸化物;窒化珪素、窒化ホウ素等の金属窒素化物;炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム等の金属塩等が挙げられる。有機無機複合フィラーとしては、有機粒子の表面に無機物層を形成したものや、無機粒子の表面に有機物層または有機微粒子を形成したものが挙げられる。
粒子の形状としては、球状、粉状、繊維状、針状、鱗片状等が挙げられる。球状粒子は異方性がなく応力が偏在し難いことから、歪みの発生が抑えられ、硬化収縮等に起因するハードコートフィルムのカール抑制に寄与し得る。
粒子の平均粒子径は、例えば5nm〜10μm程度である。ハードコート層の透明性を高める観点から、平均粒子径は1000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、300nm以下がさらに好ましく、100nm以下が特に好ましい。粒子径は、レーザー回折/散乱式の粒子径分布測定装置により測定でき、体積基準のメジアン径を平均粒子径とする。
ハードコート組成物は、表面修飾された粒子を含んでいてもよい。粒子が表面修飾されることにより、シロキサン化合物中での粒子の分散性が向上する傾向がある。また、粒子表面が脂環式エポキシ基と反応可能な重合性官能基により修飾されている場合は、粒子表面の官能基と上記のシロキサン化合物の脂環式エポキシ基とが反応して化学架橋が形成されるため、膜強度や耐屈曲性の向上が期待できる。
脂環式エポキシ基と反応可能な重合性官能基としては、ビニル基、(メタ)アクリル基、水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシ基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基、オキセタン基等が挙げられる。中でも、エポキシ基が好ましい。特に、光カチオン重合によるハードコート組成物の硬化の際に、粒子とシロキサン化合物との間に化学架橋を形成できることから、脂環式エポキシ基で表面修飾された粒子が好ましい。
表面に反応性官能基を有する粒子としては、例えば、表面修飾された無機粒子や、コアシェルポリマー粒子が挙げられる。ハードコート組成物は、表面修飾された無機粒子とコアシェルポリマー粒子の両方を含んでいてもよい。
無機粒子をハードコート組成物に配合することにより、硬化膜の表面硬度が向上する傾向がある。特に、金属酸化物粒子を用いた場合に、硬化膜の密着性、耐擦傷性、耐屈曲性等を抑制しつつ、表面硬度が向上する傾向がある。金属酸化物としては、シリカ、チタニア、アルミナ、酸化スズ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化アンチモン等が挙げられる。中でも、有機物による表面修飾が容易であり、分散性に優れることから、シリカ粒子が好ましい。
金属酸化物粒子は、コロイド(溶剤分散ゾル)としてハードコート組成物に配合してもよい。ハードコート組成物の他の成分との相溶性や粒子の分散性の観点から、コロイドの分散媒は有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、δ−ブチロラクトン等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。
コアシェルポリマー粒子をハードコート組成物に配合することにより、硬化膜の耐屈曲性が向上する傾向がある。コアシェルポリマー粒子としては、第一の重合体からなるコア層と、コア層の表面にグラフト重合された第二の重合体からなるシェル層により構成された共重合体が挙げられる。コアシェルポリマー粒子は、3層以上の多層構造でもよい。
コア成分の存在下で、ビニルモノマーをグラフト重合することにより、コア層の表面全部または一部がシェル層で覆われたコアシェルポリマーが得られる。コアシェルポリマーは、例えば、乳化重合、懸濁重合、マイクロサスペンジョン重合等により製造できる。粒子径のコントロールの観点から、乳化重合で製造することが好ましい。
ハードコート層の耐屈曲性を向上する観点から、コアシェルポリマー粒子は、エラストマーまたはゴム状の共重合体を主成分とするコア層を有するコアシェル型ゴム粒子であることが好ましい。コア層を構成するゴム系ポリマーは、常温でゴム特性を有することが好ましく、ガラス転移温度は0℃以下が好ましく、−20℃以下がより好ましい。コア層を形成するゴム系ポリマーの具体例としては、ブタジエンゴム、ブタジエン−スチレンゴム、ブタジエンアルキルアクリレートゴム、アルキルアクリレートゴム、オルガノシロキサンゴム等が挙げられる。コアシェル構造を保つために、コア層は少なくとも部分的に架橋構造を有する架橋ゴムであることが好ましい。
コアシェルポリマーにおけるコア層の平均粒子径は、10nm以上、20nm以上、30nm以上、40nm以上、50nm以上、60nm以上、70nm以上、80nm以上、90nm以上または100nm以上であり得る。コアシェルポリマーにおけるコア層の平均粒子径は、500nm以下、400nm以下、350m以下、300nm以下、250nm以下、200nm以下または150nm以下であり得る。
シェル層を構成するビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、又はメタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸グリシジルやグリシジルビニルエーテル等のグリシジルビニル単量体;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;4−ビニルシクロヘキセン1,2−エポキシド、エポキシシクロヘキセニル(メタ)アクリレート等の脂環式エポキシ基含有ビニル誘導体;2−オキセタニルプロピル(メタ)アクリレート等のオキセタン基含有ビニル誘導体;ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3ブチレングリコール等のジビニル単量体等が挙げられる。
コアシェルポリマー粒子は、ハードコート組成物中において、上記のシロキサン化合物を主成分とするマトリクス相に対して一次粒子が独立して分散していることが好ましい。シロキサン化合物中でのコアシェル粒子の分散性の観点から、シェル層はエポキシ基、オキセタニル基、カルボキシル基、水酸基およびアミノ基からなる群から選択される一種以上の反応性官能基を含有するものが好ましい。中でも脂環式エポキシ基と高い反応性を有することから、エポキシ基、オキセタニルが好ましく、エポキシ基が特に好ましい。
コアシェルポリマー粒子は、好ましくは50〜97重量%、より好ましくは70〜90重量%のゴムポリマーのコア層と、好ましくは3〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%の前記ビニル単量体の重合物であるシェル層とからなる。シェル層の含有率が3重量%未満の場合には、コアシェルポリマー粒子の取扱い時に凝集し易く、操作性に問題が生じる場合がある。また、シェル層の含有率が50重量%を超えると、コアシェル重合体におけるコア層の含有率が低下して、硬化膜の屈曲性が低下する場合がある。
ハードコートフィルムの耐屈曲性向上や硬度向上等を目的として粒子を含める場合、その含有量は、上記のシロキサン樹脂100重量部に対して、3〜150重量部が好ましく、5〜100重量部がより好ましく、10〜80重量部がさらに好ましい。
(反応性希釈剤)
ハードコート組成物は、反応性希釈剤を含んでいてもよい。組成物に反応性希釈剤を配合することにより、光カチオン重合の反応点(架橋点)の密度が増加するため、硬化速度が高められる場合がある。
ハードコート組成物は、反応性希釈剤を含んでいてもよい。組成物に反応性希釈剤を配合することにより、光カチオン重合の反応点(架橋点)の密度が増加するため、硬化速度が高められる場合がある。
光カチオン重合の反応性希釈剤としては、カチオン重合性官能基を有する化合物が用いられる。反応性希釈剤のカチオン重合性官能基としては、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基、およびアルコキシシリル基が挙げられる。中でも、シロキサン化合物の脂環式エポキシ基との反応性が高いことから、反応性希釈剤としては、脂環式エポキシ基を有するものが好ましい。
硬化収縮の低減や、硬化膜の機械的強度を向上する観点から、反応性希釈剤は、1分子中に2個以上のカチオン重合性官能基を有するものが好ましく、中でも1分子中に2個以上の脂環式エポキシ基を有するものが好ましい。1分子中に2個以上の脂環式エポキシ基を有する化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル製「セロキサイド2021P」)、ε−カプロラクトン変性3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル製「セロキサイド2081」)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エポキシ変性鎖状シロキサン化合物(信越化学製「X−40−2669」)、およびエポキシ変性環状シロキサン化合物(信越化学製「KR−470」)等が挙げられる。
ハードコート組成物における反応性希釈剤の含有量は、上記のシロキサン化合物100重量部に対して、100重量部以下が好ましく、50重量部以下が好ましい。
(光増感剤)
ハードコート組成物は、感光性の向上等を目的として光増感剤を含んでいてもよい。光増感剤としては、アントラセン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体、ベンゾイン誘導体等が挙げられる。中でも、光誘起電子供与性の観点から、アントラセン誘導体、チオキサントン誘導体、およびベンゾフェノン誘導体が好ましい。
ハードコート組成物は、感光性の向上等を目的として光増感剤を含んでいてもよい。光増感剤としては、アントラセン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体、ベンゾイン誘導体等が挙げられる。中でも、光誘起電子供与性の観点から、アントラセン誘導体、チオキサントン誘導体、およびベンゾフェノン誘導体が好ましい。
ハードコート組成物における反応性希釈剤の含有量は、上記の光酸発生剤100重量部に対して50重量部以下が好ましく、30重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましい。
(溶媒)
ハードコート組成物は、無溶媒型でもよく、溶媒を含んでいてもよい。溶媒は、透明ポリイミドフィルムを溶解させないものが好ましい。一方、透明ポリイミドフィルムを膨潤させる程度の溶解性を有する溶媒を用いることにより、透明ポリイミドフィルムとハードコート層との密着性が向上する場合がある。溶媒としては、メチルイソブチルケトンやジイソブチルケトン等のケトン類;ブタノールやイソプロピルアルコール等のアルコール類;酢酸ブチルや酢酸イソプロピル等のエステル類;ジエチレングリコールメチルエーテルやプロピレングリコールメチルエーテル等のエーテル類;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化アルキル類が挙げられる。溶媒の配合量は、上記のシロキサン化合物100重量部に対して500重量部以下が好ましく、300重量部以下がより好ましい。
ハードコート組成物は、無溶媒型でもよく、溶媒を含んでいてもよい。溶媒は、透明ポリイミドフィルムを溶解させないものが好ましい。一方、透明ポリイミドフィルムを膨潤させる程度の溶解性を有する溶媒を用いることにより、透明ポリイミドフィルムとハードコート層との密着性が向上する場合がある。溶媒としては、メチルイソブチルケトンやジイソブチルケトン等のケトン類;ブタノールやイソプロピルアルコール等のアルコール類;酢酸ブチルや酢酸イソプロピル等のエステル類;ジエチレングリコールメチルエーテルやプロピレングリコールメチルエーテル等のエーテル類;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化アルキル類が挙げられる。溶媒の配合量は、上記のシロキサン化合物100重量部に対して500重量部以下が好ましく、300重量部以下がより好ましい。
(添加剤)
ハードコート組成物は、無機顔料や有機顔料、可塑剤、分散剤、湿潤剤、増粘剤、消泡剤、界面活性剤、レベリング剤等の添加剤を含んでいてもよい。レベリング剤としては、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤等が挙げられる。なお、上記のシロキサン化合物を含む溶液は、レベリング剤を含まない場合でも、硬度の高い膜を形成できる。そのため、ハードコート組成物はレベリング剤を含んでいなくてもよい。ハードコート組成物がレベリング剤を含まない場合に、ハードコートフィルムのカールが低減する傾向がある。
ハードコート組成物は、無機顔料や有機顔料、可塑剤、分散剤、湿潤剤、増粘剤、消泡剤、界面活性剤、レベリング剤等の添加剤を含んでいてもよい。レベリング剤としては、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤等が挙げられる。なお、上記のシロキサン化合物を含む溶液は、レベリング剤を含まない場合でも、硬度の高い膜を形成できる。そのため、ハードコート組成物はレベリング剤を含んでいなくてもよい。ハードコート組成物がレベリング剤を含まない場合に、ハードコートフィルムのカールが低減する傾向がある。
ハードコート組成物は、上記のシロキサン化合物以外の熱可塑性または熱硬化性の樹脂材料を含んでいてもよい。シロキサン化合物および/またはシロキサン化合物以外の樹脂材料がラジカル重合性を有する場合、ハードコート組成物は、光カチオン重合開始剤に加えて光ラジカル重合開始剤を含んでいてもよい。
(ハードコート組成物の調製)
ハードコート組成物の調製方法は特に限定されない。例えば、上記の各成分を配合し、ハンドミキサーやスタティックミキサー等による混合、プラネタリーミキサーやディスパー、ロール、ニーダー等による混練等を行ってもよい。これらの操作は、必要に応じて遮光した状態で実施してもよい。
ハードコート組成物の調製方法は特に限定されない。例えば、上記の各成分を配合し、ハンドミキサーやスタティックミキサー等による混合、プラネタリーミキサーやディスパー、ロール、ニーダー等による混練等を行ってもよい。これらの操作は、必要に応じて遮光した状態で実施してもよい。
<ハードコート層の形成>
透明ポリイミドフィルム上にハードコート組成物を塗布し、必要に応じて溶媒を乾燥除去した後、活性エネルギー線を照射してハードコート組成物を硬化することにより、透明ポリイミドフィルム上にハードコート層が設けられたハードコートフィルムが得られる。
透明ポリイミドフィルム上にハードコート組成物を塗布し、必要に応じて溶媒を乾燥除去した後、活性エネルギー線を照射してハードコート組成物を硬化することにより、透明ポリイミドフィルム上にハードコート層が設けられたハードコートフィルムが得られる。
ハードコート組成物を塗布する前に、透明ポリイミドフィルムの主面に、コロナ処理やプラズマ処理等の表面処理を行ってもよい。また、透明ポリイミドフィルムの表面に易接着層(プライマー層)等を設けてもよい。なお、上記のハードコート組成物の硬化により形成されるハードコート層は、透明ポリイミドフィルムに対する高い密着性を示すため、易接着層等を設けなくてもよい。すなわち、透明ポリイミドフィルム1とハードコート層2とが接していてもよい。
ハードコート組成物に活性エネルギー線を照射することにより、光カチオン重合開始剤から酸が生成し、シロキサン化合物の脂環式エポキシ基がカチオン重合することにより、硬化が進行する。ハードコート組成物が反応性希釈剤を含んでいる場合は、シロキサン化合物同士の重合反応に加えて、シロキサン化合物の脂環式エポキシ基と反応性希釈剤との重合反応も生じる。また、ハードコート組成物が表面に反応性官能基を有する粒子を含有する場合は、粒子表面の官能基とシロキサン化合物の脂環式エポキシ基が反応して化学架橋が形成される。
光硬化の際に照射する活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線、電子線等が挙げられる。硬化反応速度が高くエネルギー効率に優れることから、活性光線としては、紫外線が好ましい。活性エネルギー線の積算照射量は、例えば50〜10000mJ/cm2程度であり、光カチオン重合開始剤の種類および配合量、ハードコート層の厚み等に応じて設定すればよい。硬化温度は特に限定されないが、通常100℃以下である。
ハードコート層の厚みを大きくするほど、ハードコートフィルムの表面硬度が高くなるとともに、耐衝撃性が向上する傾向がある。ハードコート層の合計厚みは30μm以上であり、40μm以上が好ましく、45μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましい。ハードコート層の合計厚みは、55μm以上または60μm以上であってもよい。上記のハードコート組成物は硬化収縮が小さいため、ハードコート層の厚みが大きい場合でも、ハードコートフィルムのカールおよびクラックの発生を抑制できる。
ハードコート層の厚みが大きいほど耐衝撃性が向上するが、厚みの増大に伴って、ハードコート層の透明性が低下する場合や、ハードコートフィルムのカールが大きくなる場合がある。そのため、ハードコート層の合計厚みは200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、120μm以下がさらに好ましい。
図1に示すように、透明ポリイミドフィルム1の片面のみにハードコート層2が設けられる場合、ハードコート層2の厚みが上記範囲内であることが好ましい。ハードコート層の厚みが大きい場合、1層のハードコート層を2回以上に分けて形成してもよい。例えば、透明ポリイミドフィルム1の表面に第1層を形成し、その上に第2層を形成することにより、厚みの大きいハードコート層を形成できる。ハードコート層を2回に分けて形成する場合、第1層と第2層の厚みは同一でもよく異なっていてもよい。ハードコート層は3回以上に分けて形成してもよい。
図2に示すように、透明ポリイミドフィルム1の両面にハードコート層21,22を形成する場合、一方の面のハードコート層21の厚みと、他方の面のハードコート層22の厚みとの合計が上記範囲内であることが好ましい。透明ポリイミドフィルムの両面にハードコート層を設けることにより、ハードコートフィルムのカールがさらに抑制される傾向がある。
ハードコート層21の厚みとハードコート層22の厚みは同一でも異なっていてもよい。例えば、ハードコートフィルムをディスプレイのカバーウインドウとして用いる場合、より高い耐擦傷性が要求される外表面のハードコート層の厚みを相対的に大きくしてもよい。
支持体上での溶液の加熱乾燥により溶媒を除去後のポリイミドフィルムは、A面(塗布時の空気界面)とB面(塗布時の支持体面)で、熱履歴、残留応力および残存溶媒量等に差異が生じている。支持体からフィルムを剥離すると、支持体による保持力が解放され、フィルムの表裏の特性差に起因して、カールが生じやすい。特に、フィルムの厚みが大きくなると、表裏の特性の差が大きいため、カールが大きくなる傾向がある。ポリイミドフィルムにカールが生じている場合でも、表裏のハードコート層に厚み差を設けることにより、ポリイミドフィルム1の表裏の特性差に起因する内部応力と、ハードコート層21,22との界面の応力とをバランスさせることにより、ハードコートフィルムのカールを低減できる。例えば、ハードコートフィルムがA面を内側としてカールしている場合、B面のハードコート層の厚みを、A面のハードコート層の厚みよりも大きくすることにより、カールが低減する傾向がある。
ハードコート層は、シロキサン化合物が脂環式エポキシ基の重合反応により架橋されたポリマーマトリクスを有するため、ガラスに匹敵する表面硬度を実現し得る。ハードコートフィルムのハードコート層形成面の鉛筆硬度は5H以上が好ましく、6H以上がより好ましい。ハードコート層形成面の鉛筆硬度は、7H以上、8H以上または9Hでもよい。
本発明のハードコートフィルムは、上記のように高い表面硬度を有し、かつ耐屈曲性にも優れる。ハードコートフィルムは、ハードコート層形成面を内側にして円筒マンドレル試験を行った際に、ハードコート層にクラックが生じるマンドレル径が、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましく、3mm以下であることがさらに好ましい。ポリイミドフィルムの両面にハードコート層が形成されている場合は、内側の面のハードコート層にクラックが生じるマンドレル径が上記範囲であることが好ましい。
ハードコートフィルムの全光線透過率は80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、88%以上がさらに好ましい。ハードコートフィルムのヘイズは2%以下が好ましく、1.5%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましく、0.5%以下が特に好ましい。
前述のように、光硬化の際に、光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)から酸が生成して光硬化が進行する。そのため、硬化後のハードコート層には、光酸発生剤のカウンターアニオンが残存している。ハードコート層は、前述の光酸発生剤のカウンターアニオンとして、フルオロフォスフェート系アニオン、フルオロアンチモネート系アニオン、またはそれらの塩を含んでいてもよい。
ハードコート層は微粒子を含んでいてもよい。ハードコート組成物が微粒子を含む場合、光硬化後のハードコート層にも微粒子が含まれる。ハードコート組成物が、脂環式エポキシ基と反応可能な重合性官能基を有する微粒子を含む場合、光硬化後のハードコート層は、シロキサン樹脂と微粒子との間に化学架橋が形成されていることが好ましい。
[ハードコートフィルムの応用]
ハードコートフィルムは、ハードコート層上、またはポリイミドフィルムのハードコート層非形成面は、各種の機能層が設けられてもよい。機能層としては、反射防止層、防眩層、帯電防止層、透明電極等が挙げられる。また、ハードコートフィルムには、透明粘着剤層が付設されてもよい。
ハードコートフィルムは、ハードコート層上、またはポリイミドフィルムのハードコート層非形成面は、各種の機能層が設けられてもよい。機能層としては、反射防止層、防眩層、帯電防止層、透明電極等が挙げられる。また、ハードコートフィルムには、透明粘着剤層が付設されてもよい。
本発明のハードコートフィルムは、透明性が高く、耐衝撃性に優れるため、画像表示パネルの表面に設けられるカバーウインドウや、ディスプレイ用透明基板、タッチパネル用透明基板、太陽電池用基板等に好適に用いることができる。ハードコートフィルムは、透明性および耐衝撃性に加えて、耐屈曲性にも優れることから、曲面ディスプレイやフレキシブルディスプレイ等のカバーウインドウや基板フィルムとして好適に使用できる。
以下、実施例および比較例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[ポリイミドフィルム]
(ポリアミド酸溶液の調製)
反応容器に、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)72.3gを投入し、窒素雰囲気下で攪拌した。そこに、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を5.976g(18.7mmol)、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−DDS)を1.986g(8.00mmol)投入し、窒素雰囲気下で撹拌してジアミン溶液を得た。そこに、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(TMHQ)を2.995g(6.54mmol)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(6FDA)を5.922g(13.3mmol)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を1.961g(6.67mmol)を加え、窒素雰囲気下で攪拌してポリアミド酸溶液を得た。
(ポリアミド酸溶液の調製)
反応容器に、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)72.3gを投入し、窒素雰囲気下で攪拌した。そこに、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を5.976g(18.7mmol)、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−DDS)を1.986g(8.00mmol)投入し、窒素雰囲気下で撹拌してジアミン溶液を得た。そこに、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(TMHQ)を2.995g(6.54mmol)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(6FDA)を5.922g(13.3mmol)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を1.961g(6.67mmol)を加え、窒素雰囲気下で攪拌してポリアミド酸溶液を得た。
(イミド化およびポリイミド樹脂の抽出)
ポリイミド酸溶液100gに、イミド化触媒としてピリジン6gを添加し、完全に分散させた後、無水酢酸8gを添加し、90℃で3時間攪拌した後、室温まで冷却してポリイミド溶液を得た。溶液を攪拌しながら、100gのイソプロピルアルコール(IPA)を、3滴/秒の速度で滴下して、ポリイミド樹脂を析出させた。さらに150gのIPAを添加し、約30分撹拌後、桐山ロートを使用して吸引ろ過を行った。濾別したポリイミド樹脂をIPAで6回洗浄した後、120℃の真空オーブンで8時間乾燥させて白色のポリイミド樹脂粉体を得た。
ポリイミド酸溶液100gに、イミド化触媒としてピリジン6gを添加し、完全に分散させた後、無水酢酸8gを添加し、90℃で3時間攪拌した後、室温まで冷却してポリイミド溶液を得た。溶液を攪拌しながら、100gのイソプロピルアルコール(IPA)を、3滴/秒の速度で滴下して、ポリイミド樹脂を析出させた。さらに150gのIPAを添加し、約30分撹拌後、桐山ロートを使用して吸引ろ過を行った。濾別したポリイミド樹脂をIPAで6回洗浄した後、120℃の真空オーブンで8時間乾燥させて白色のポリイミド樹脂粉体を得た。
(ポリイミドフィルムの作製)
ポリイミド樹脂をメチルエチルケトンに溶解し、固形分濃度17%のポリイミド溶液を得た。コンマコーターを用いて、ポリイミド溶液を無アルカリガラス板上に塗布し、40℃で10分、80℃で30分、150℃で30分、170℃で1時間、大気雰囲気下で乾燥した後、無アルカリガラス板から剥離して、厚さ50μm、全光線透過率89.8%の透明ポリイミドフィルムを得た。以下では、このポリイミドフィルムの形成時の無アルカリガラスとの接触面を「B面」、反対側の面を「A面」と記載する。
ポリイミド樹脂をメチルエチルケトンに溶解し、固形分濃度17%のポリイミド溶液を得た。コンマコーターを用いて、ポリイミド溶液を無アルカリガラス板上に塗布し、40℃で10分、80℃で30分、150℃で30分、170℃で1時間、大気雰囲気下で乾燥した後、無アルカリガラス板から剥離して、厚さ50μm、全光線透過率89.8%の透明ポリイミドフィルムを得た。以下では、このポリイミドフィルムの形成時の無アルカリガラスとの接触面を「B面」、反対側の面を「A面」と記載する。
[ハードコート組成物の調製]
<ハードコート組成物1>
反応容器に、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製「SILQUEST A−186」)100重量部、塩化マグネシウム0.12重量部、水11重量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテル11重量部を仕込み、130℃で3時間撹拌後、60℃で減圧脱揮して縮合物(シロキサン樹脂)を得た。
<ハードコート組成物1>
反応容器に、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製「SILQUEST A−186」)100重量部、塩化マグネシウム0.12重量部、水11重量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテル11重量部を仕込み、130℃で3時間撹拌後、60℃で減圧脱揮して縮合物(シロキサン樹脂)を得た。
上記のシロキサン樹脂100重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル100重量部、光酸発生剤としてトリアリールスルホニウム・SbF6塩のプロピレンカーボネート溶液(サンアプロ製「CPI−101A」)を固形分として0.2重量部、およびレベリング剤としてポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンのキシレン/イソブタノール溶液(BYK製「BYK−300」)を固形分として0.5重量部配合して、ハードコート組成物1を得た。
<ハードコート組成物2>
レベリング剤を添加しなかったこと以外は、ハードコート組成物1の調製と同様にして、ハードコート組成物2を得た。
レベリング剤を添加しなかったこと以外は、ハードコート組成物1の調製と同様にして、ハードコート組成物2を得た。
<ハードコート組成物3>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート100重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル43重量部、光ラジカル重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF製「イルガキュア184」)3重量部、およびレベリング剤(BYK製「BYK−300」)固形分として0.5重量部を配合して、ハードコート組成物3を得た。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート100重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル43重量部、光ラジカル重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF製「イルガキュア184」)3重量部、およびレベリング剤(BYK製「BYK−300」)固形分として0.5重量部を配合して、ハードコート組成物3を得た。
[比較例1]
透明ポリイミドフィルムのA面にコロナ処理を行った後、上記のハードコート組成物1を、乾燥後の厚みが7μmとなるようにバーコーターを用いて塗布し、120℃で2分間加熱した。その後、高圧水銀ランプを用いて、波長250〜390nmの積算光量が1330mJ/cm2となるように紫外線を照射してハードコート組成物を硬化させて、ポリイミドフィルムの片面(A面)にハードコート層を備えるハードコートフィルムを得た。
透明ポリイミドフィルムのA面にコロナ処理を行った後、上記のハードコート組成物1を、乾燥後の厚みが7μmとなるようにバーコーターを用いて塗布し、120℃で2分間加熱した。その後、高圧水銀ランプを用いて、波長250〜390nmの積算光量が1330mJ/cm2となるように紫外線を照射してハードコート組成物を硬化させて、ポリイミドフィルムの片面(A面)にハードコート層を備えるハードコートフィルムを得た。
[実施例1〜5]
ハードコート組成物およびハードコート層の厚みを表1に示すように変更したこと以外は比較例1と同様にして、片面にハードコート層を備えるハードコートフィルムを得た。
ハードコート組成物およびハードコート層の厚みを表1に示すように変更したこと以外は比較例1と同様にして、片面にハードコート層を備えるハードコートフィルムを得た。
[実施例6,7]
透明ポリイミドフィルムのA面にコロナ処理を行った後、バーコーターを用いて上記のハードコート組成物1を塗布し、比較例1と同様にして乾燥および硬化を行った。その後、透明ポリイミドフィルムのB面にコロナ処理を行い、A面と同様に、ハードコート組成物の塗布、乾燥および硬化を行い、透明ポリイミドフィルムの両面にハードコート層を備えるハードコートフィルムを得た。ハードコート組成物の塗布厚みは、両面同一とした。ハードコート層の合計厚みは表1に示す通りであった。
透明ポリイミドフィルムのA面にコロナ処理を行った後、バーコーターを用いて上記のハードコート組成物1を塗布し、比較例1と同様にして乾燥および硬化を行った。その後、透明ポリイミドフィルムのB面にコロナ処理を行い、A面と同様に、ハードコート組成物の塗布、乾燥および硬化を行い、透明ポリイミドフィルムの両面にハードコート層を備えるハードコートフィルムを得た。ハードコート組成物の塗布厚みは、両面同一とした。ハードコート層の合計厚みは表1に示す通りであった。
[比較例2]
透明ポリイミドフィルムのA面にコロナ処理を行った後、上記のハードコート組成物3を、厚みが65μmとなるようにバーコーターを用いて塗布した。その後、高圧水銀ランプを用いて、波長250〜390nmの積算光量が1330mJ/cm2となるように紫外線を照射してハードコート組成物を硬化させた。ハードコート組成物を硬化後のポリイミドフィルムは、ハードコート層形成面を内側として著しくカールしており、ハードコート層の全面にクラックが生じていた。
透明ポリイミドフィルムのA面にコロナ処理を行った後、上記のハードコート組成物3を、厚みが65μmとなるようにバーコーターを用いて塗布した。その後、高圧水銀ランプを用いて、波長250〜390nmの積算光量が1330mJ/cm2となるように紫外線を照射してハードコート組成物を硬化させた。ハードコート組成物を硬化後のポリイミドフィルムは、ハードコート層形成面を内側として著しくカールしており、ハードコート層の全面にクラックが生じていた。
[比較例3]
基材フィルムとして、ポリイミドフィルムに代えて、厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ製、L−50T60)を用い、ハードコート層の厚みを40μmに変更した。それ以外は比較例1と同様にして、PETフィルムの片面にハードコート層を備えるハードコートフィルムを得た。
基材フィルムとして、ポリイミドフィルムに代えて、厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ製、L−50T60)を用い、ハードコート層の厚みを40μmに変更した。それ以外は比較例1と同様にして、PETフィルムの片面にハードコート層を備えるハードコートフィルムを得た。
[評価]
下記に従って、実施例および比較例で得られたハードコートフィルムを評価した。なお、比較例2では、フィルムが著しくカールしており、ハードコート層の全面にクラックが生じていたため、評価を実施しなかった。
下記に従って、実施例および比較例で得られたハードコートフィルムを評価した。なお、比較例2では、フィルムが著しくカールしており、ハードコート層の全面にクラックが生じていたため、評価を実施しなかった。
<ハードコート層の密着性>
ハードコート層に、1mm間隔で100マスの碁盤目状の切り込みを入れ、JIS K5600−5−6:1999に準拠してクロスカット試験を行い、フィルムの表面からハードコート層が剥離したマス目の割合(%)を記録した。数字が小さいほど、ハードコート層の密着性が良好であることを示す。
ハードコート層に、1mm間隔で100マスの碁盤目状の切り込みを入れ、JIS K5600−5−6:1999に準拠してクロスカット試験を行い、フィルムの表面からハードコート層が剥離したマス目の割合(%)を記録した。数字が小さいほど、ハードコート層の密着性が良好であることを示す。
<耐屈曲性>
JIS K5600−5−1:1999に従って、A面を内側とした場合(内曲げ)およびB面を内側とした場合(外曲げ)のそれぞれについて、タイプ1の試験機を用いて円筒型マンドレル試験を行った。マンドレルの径が小さいほど、耐屈曲性に優れることを示す。両面にハードコート層を形成した試料については、いずれかの面のハードコート層にクラック生じたマンドレルの最小直径を試験値とした。
JIS K5600−5−1:1999に従って、A面を内側とした場合(内曲げ)およびB面を内側とした場合(外曲げ)のそれぞれについて、タイプ1の試験機を用いて円筒型マンドレル試験を行った。マンドレルの径が小さいほど、耐屈曲性に優れることを示す。両面にハードコート層を形成した試料については、いずれかの面のハードコート層にクラック生じたマンドレルの最小直径を試験値とした。
<表面硬度>
JIS K5600−5−4:1999により、ハードコート層形成面の鉛筆硬度を測定した。両面にハードコート層を形成した試料については、両面それぞれについて鉛筆硬度を測定した。
JIS K5600−5−4:1999により、ハードコート層形成面の鉛筆硬度を測定した。両面にハードコート層を形成した試料については、両面それぞれについて鉛筆硬度を測定した。
<耐衝撃性>
水平な台の上に、厚み30μmのアルミ箔を載置し、その上に5cm×10cmに切り出したハードコートフィルムをA面が上側となるように載置し、ハードコートフィルム上に、質量5gのペン先直径1mmのボールペンを、90mmの高さから落下させた。ハードコートフィルムの下のアルミ箔の表面形状をレーザー顕微鏡にて測定し、衝撃による変形量(凹みの深さ)を求めた。変形量が小さいほど、耐衝撃性に優れることを示す。
水平な台の上に、厚み30μmのアルミ箔を載置し、その上に5cm×10cmに切り出したハードコートフィルムをA面が上側となるように載置し、ハードコートフィルム上に、質量5gのペン先直径1mmのボールペンを、90mmの高さから落下させた。ハードコートフィルムの下のアルミ箔の表面形状をレーザー顕微鏡にて測定し、衝撃による変形量(凹みの深さ)を求めた。変形量が小さいほど、耐衝撃性に優れることを示す。
<カール>
ハードコートフィルムを5cm×10cmに切り出し、23℃55%RHの環境に2日静置して調湿した。フィルムのA面が上側となるように水平な台に載置して、反り(台からフィルムまでの距離)の最大値を、定規を用いて測定した。フィルムが凹形状になっている場合は、B面が上側となるようにして測定を行い、カール量を負の数値として記録した。比較例2では、ハードコートフィルムがA面を内側として筒状に丸まっており、カールの値を測定できなかった。
ハードコートフィルムを5cm×10cmに切り出し、23℃55%RHの環境に2日静置して調湿した。フィルムのA面が上側となるように水平な台に載置して、反り(台からフィルムまでの距離)の最大値を、定規を用いて測定した。フィルムが凹形状になっている場合は、B面が上側となるようにして測定を行い、カール量を負の数値として記録した。比較例2では、ハードコートフィルムがA面を内側として筒状に丸まっており、カールの値を測定できなかった。
<ハードコート層の密着性>
ハードコートフィルムのA面のハードコート層に、1mm間隔で100マスの碁盤目状の切り込みを入れ、JIS K5600−5−6:1999に準拠してクロスカット試験を行い、フィルムの表面からハードコート層が剥離したマス目の割合(%)を記録した。数字が小さいほど、ハードコート層の密着性が良好であることを示す。
ハードコートフィルムのA面のハードコート層に、1mm間隔で100マスの碁盤目状の切り込みを入れ、JIS K5600−5−6:1999に準拠してクロスカット試験を行い、フィルムの表面からハードコート層が剥離したマス目の割合(%)を記録した。数字が小さいほど、ハードコート層の密着性が良好であることを示す。
<全光線透過率>
スガ試験機製ヘイズメーターHZ−V3により、JIS K7361−1:1999およびJIS K7136:2000に記載の方法により測定した。
スガ試験機製ヘイズメーターHZ−V3により、JIS K7361−1:1999およびJIS K7136:2000に記載の方法により測定した。
実施例および比較例のハードコートフィルムの構成および評価結果を表1に示す。
ハードコート層の厚みが7μmの比較例1では、耐衝撃試験での変形量が100μmを超えていたのに対して、ハードコート層の厚みが大きい実施例1〜5では、ハードコート層の厚みが大きくなるに従って変形量が小さくなり、耐衝撃性が向上していた。また、ハードコート層の厚みの増大に伴って、表面硬度が向上していた。実施例1〜5では、ハードコート層の厚みが大きくなってもマンドレル試験の内曲げの試験値に変化はなく、高い耐屈曲性を示していた。また、ハードコート層の厚みを増加させても、カール量の著しい増大はみられず、良好なハンドリング性を保っていた。
アクリル系のハードコート組成物を用いた比較例2では、著しいカールの増大がみられ、ハードコートフィルムのハンドリングが困難であった。カールの増大は、アクリル系のハードコート組成物の硬化収縮に起因すると考えられる。
PETフィルム基材を用いた比較例3では、クロスカット試験でハードコート層の剥離がみられ、密着性に劣っていた。また、比較例3は、ハードコート層の厚みが小さい実施例1よりも鉛筆硬度が低く、ハードコート層の厚みが大きい実施例2〜4よりもカールが大きくなっていた。
以上の結果から、透明ポリイミドフィルム上に、脂環式エポキシ基を含むシロキサン化合物のハードコート層を形成することにより、フィルム基材とハードコート層との密着性に優れ、表面硬度および耐衝撃性に優れるとともに、カールが小さいハードコートフィルムを形成できることが分かる。
レベリング剤を含まないハードコート組成物を用いた実施例3および実施例5では、ハードコート層の厚みが同等の実施例2および実施例4に比べてカールが小さくなっていた。これらの結果から、レベリング剤を添加しないことにより、ハードコートフィルムのカールをさらに低減できることが分かる。
透明ポリイミドフィルムの両面にハードコート層を形成した実施例6,7においても、実施例1〜5と同様に、優れた耐衝撃性を示した。また、実施例6,7では、ハードコート層の合計厚みが大きいにも関わらず、実施例2〜5よりもさらにカール量が小さくなっていた。なお、実施例6,7では、マンドレル試験において外側の面に形成されたハードコート層にクラックが生じやすく試験値が大きくなっているが、内側の面のハードコート層は、実施例1〜5と同様、良好な耐屈曲性を示していた。
1 透明ポリイミドフィルム
2,21,22 ハードコート層
11,12 ハードコートフィルム
2,21,22 ハードコート層
11,12 ハードコートフィルム
Claims (10)
- 透明ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面にハードコート層を備えるハードコートフィルムであって、
前記ハードコート層は、脂環式エポキシ基を有するシロキサン化合物の硬化物を含み、
前記ハードコート層の合計厚みが30μm以上である、ハードコートフィルム。 - 前記透明ポリイミドフィルムの一方の面のみにハードコート層を備える、請求項1に記載のハードコートフィルム。
- 前記透明ポリイミドフィルムの一方の面に第一ハードコート層を備え、前記透明ポリイミドフィルムの他方の面に第二ハードコート層を備える、請求項1に記載のハードコートフィルム。
- ハードコート層の合計厚みが、前記透明ポリイミドフィルムの厚みよりも大きい、請求項1〜3のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
- 前記シロキサン化合物が、下記一般式(I)で表される化合物を含むシラン化合物の縮合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のハードコートフィルム:
Y−R1−(Si(OR2)xR3 3−x) …(I)
式(I)において、Yは脂環式エポキシ基であり;R1は炭素数1〜10のアルキレン基であり;R2は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり;R3は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選択される1価の炭化水素基であり;xは1〜3の整数である。 - 全光線透過率が80%以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
- 前記透明ポリイミドフィルムは、酸二無水物由来構造とジアミン由来構造とを有するポリイミド樹脂を含み、
前記酸二無水物として、脂環式酸二無水物およびフッ素含有芳香族酸二無水物からなる群から選択される1種以上を含み、
前記ジアミンとして、フッ素含有ジアミンを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。 - 前記透明ポリイミドフィルムと前記ハードコート層とが接している、請求項1〜8のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
- 画像表示パネルの表面に、請求項1〜9のいずれか1項に記載のハードコートフィルムを備える、表示装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019200242A JP2021070800A (ja) | 2019-11-01 | 2019-11-01 | ハードコートフィルムおよび画像表示装置 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2019200242A JP2021070800A (ja) | 2019-11-01 | 2019-11-01 | ハードコートフィルムおよび画像表示装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2021070800A true JP2021070800A (ja) | 2021-05-06 |
Family
ID=75712488
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2019200242A Pending JP2021070800A (ja) | 2019-11-01 | 2019-11-01 | ハードコートフィルムおよび画像表示装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2021070800A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2022270471A1 (ja) * | 2021-06-21 | 2022-12-29 | 株式会社カネカ | ハードコートフィルムおよびその製造方法、ならびにディスプレイ |
-
2019
- 2019-11-01 JP JP2019200242A patent/JP2021070800A/ja active Pending
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WO2022270471A1 (ja) * | 2021-06-21 | 2022-12-29 | 株式会社カネカ | ハードコートフィルムおよびその製造方法、ならびにディスプレイ |
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