JP2021069321A - 変異セルラーゼ - Google Patents

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早紀 高比良
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Abstract

【課題】プロテアーゼ耐性が向上したセルラーゼの提供。【解決手段】配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列に対して、配列番号2のアミノ酸配列の所定の位置に相当する位置におけるアミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列を含む、変異セルラーゼ。【選択図】なし

Description

本発明は、変異セルラーゼに関する。
プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼ、ペクチン酸リアーゼ、クチナーゼ、リケナーゼ等の複数の酵素を洗浄補助剤として洗剤に配合することは、以前から実施されている。グリコシドハイドロラーゼの一つであるセルラーゼは、木綿単繊維の非晶質領域に作用し、単繊維内の皮脂汚れ等を効果的に除去するため、衣料用洗剤に配合するのに適している。
洗剤が一定の洗浄活性を発揮するためには、洗剤中の酵素が安定に存在し、その活性を維持している必要がある。しかし、タンパク質である酵素は、同じく洗剤中に配合されたプロテアーゼにより消化される可能性があり、このことが洗剤中での酵素の安定保存を困難にしている。
酵素の安定化のため、カルシウムイオン、ホウ砂、ホウ酸、ホウ素化合物、ギ酸などのカルボン酸、ポリオール等の酵素安定化剤を液体洗剤に加えることは公知である。また、4−置換フェニルボロン酸や、ペプチドアルデヒド、及びホウ素組成物糖によってプロテアーゼを可逆的に阻害することによる、洗剤中の酵素の安定化法が知られている。特許文献1には、バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM−S237株由来のセルラーゼにおける、触媒ドメインを含む369アミノ酸領域から、324位〜330位領域を欠失させることで、又は、該欠失に加えて323位もしくは331位のアミノ酸残基を置換することで、該セルラーゼのプロテアーゼ耐性が向上することが記載されている。
特開2012−029614号公報
本発明は、プロテアーゼ耐性が向上し、液体洗剤中で安定に存在できるセルラーゼ変異体を提供する。
本発明者は、バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM−S237株由来のセルラーゼのアミノ酸配列上の特定のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換することによって、該セルラーゼのプロテアーゼ耐性が向上するとともに、液体洗剤中での安定が向上することを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有し、かつ以下:
配列番号2のアミノ酸配列の247位に相当する位置のSer以外のアミノ酸残基;
配列番号2のアミノ酸配列の248位に相当する位置のGlu以外のアミノ酸残基;
配列番号2のアミノ酸配列の255位に相当する位置のGly以外のアミノ酸残基;
配列番号2のアミノ酸配列の326位に相当する位置のLeu以外のアミノ酸残基;及び、
配列番号2のアミノ酸配列の330位に相当する位置のAsn以外のアミノ酸残基、
からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を有する、アミノ酸配列を含み、かつセルラーゼ活性を有する、ポリペプチドを提供する。
また本発明は、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
また本発明は、前記ポリヌクレオチドを含有するベクターを提供する。
また本発明は、前記ポリヌクレオチド又はベクターを含有する形質転換体を提供する。
また本発明は、前記形質転換体を培養することを含む、セルラーゼ活性を有するポリペプチドの製造方法を提供する。
また本発明は、配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列又はこれと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドにおいて、配列番号2のアミノ酸配列の247位、248位、255位、326位及び330位に相当する位置のアミノ酸残基からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換することを含む、セルラーゼ活性を有する変異ポリペプチドの製造方法を提供する。
本発明によれば、プロテアーゼ耐性が向上し、液体洗剤中においてもプロテアーゼによる分解を受けることなく安定的に存在できる変異セルラーゼが提供される。また本発明の変異セルラーゼを配合した洗剤は、高いセルラーゼ活性を長期にわたって維持することができるので、長期保存後にも高い洗浄力を発揮することができる。
変異セルラーゼの液体洗剤組成物中での保存安定性。
本明細書中で引用された全ての特許文献、非特許文献、及びその他の刊行物は、その全体が本明細書中において参考として援用される。
本明細書において、アミノ酸配列及びヌクレオチド配列の同一性はLipman−Pearson法(Science,1985,227:1435−1441)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx−Win(Ver.5.1.1;ソフトウェア開発)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
本明細書において、アミノ酸配列及びヌクレオチド配列に関する「少なくとも80%の同一性」とは、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは92%以上、さらに好ましくは94%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは96%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、さらに好ましくは99.5%以上の同一性をいう。
本明細書において、別途定義されない限り、アミノ酸配列におけるアミノ酸の欠失、置換、付加又は挿入に関して使用される「1又は数個」とは、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個を意味し得る。また本明細書において、別途定義されない限り、ヌクレオチド配列におけるヌクレオチドの欠失、置換、付加又は挿入に関して使用される「1又は数個」とは、1〜60個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜15個、さらに好ましくは1〜9個を意味し得る。本明細書において、アミノ酸又はヌクレオチドの「付加」には、配列の一末端及び両末端への1又は数個のアミノ酸又はヌクレオチドの付加が含まれる。
本明細書において、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列上の「相当する位置」又は「相当する領域」は、目的配列と参照配列(例えば、配列番号2のアミノ酸配列)とを、最大の相同性を与えるように整列(アラインメント)させることにより決定することができる。アミノ酸配列又はヌクレオチド配列のアラインメントは、公知のアルゴリズムを用いて実行することができ、その手順は当業者に公知である。例えば、アラインメントは、Clustal Wマルチプルアラインメントプログラム(Thompson,J.D.et al,1994,Nucleic Acids Res.22:4673−4680)をデフォルト設定で用いることにより、行うことができる。Clustal Wは、例えば、欧州バイオインフォマティクス研究所(European Bioinformatics Institute:EBI[www.ebi.ac.uk/index.html])や、国立遺伝学研究所が運営する日本DNAデータバンク(DDBJ[www.ddbj.nig.ac.jp/searches−j.html])のウェブサイト上で利用することができる。上述のアラインメントにより参照配列の任意の位置にアラインされた目的配列の位置は、当該任意の位置に「相当する位置」とみなされる。また、相当する位置により挟まれた領域、又は相当するモチーフからなる領域は、相当する領域とみなされる。
当業者であれば、上記で得られたアミノ酸配列のアラインメントを、最適化するようにさらに微調整することができる。そのような最適アラインメントは、アミノ酸配列の同一性又は類似性や挿入されるギャップの頻度等を考慮して決定するのが好ましい。ここでアミノ酸配列の同一性又は類似性とは、2つのアミノ酸配列をアラインメントしたときにその両方の配列に同一又は類似のアミノ酸残基が存在する位置の数の全長アミノ酸残基数に対する割合(%)をいう。類似のアミノ酸残基とは、タンパク質を構成する20種のアミノ酸のうち、極性や電荷の点で互いに類似した性質を有しており、いわゆる保存的置換を生じるようなアミノ酸残基を意味する。そのような類似のアミノ酸残基からなるグループは当業者にはよく知られており、例えば、アルギニンとリシン;グルタミン酸とアスパラギン酸;セリンとトレオニン;グルタミンとアスパラギン;ロイシンとイソロイシン等がそれぞれ挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書において、「アミノ酸残基」とは、タンパク質を構成する20種のアミノ酸残基、アラニン(Ala又はA)、アルギニン(Arg又はR)、アスパラギン(Asn又はN)、アスパラギン酸(Asp又はD)、システイン(Cys又はC)、グルタミン(Gln又はQ)、グルタミン酸(Glu又はE)、グリシン(Gly又はG)、ヒスチジン(His又はH)、イソロイシン(Ile又はI)、ロイシン(Leu又はL)、リシン(Lys又はK)、メチオニン(Met又はM)、フェニルアラニン(Phe又はF)、プロリン(Pro又はP)、セリン(Ser又はS)、スレオニン(Thr又はT)、トリプトファン(Trp又はW)、チロシン(Tyr又はY)及びバリン(Val又はV)を意味する。
本明細書において、プロモーター等の制御領域と遺伝子の「作動可能な連結」とは、遺伝子と制御領域とが、該遺伝子が該制御領域の制御の下で発現し得るように連結されていることをいう。遺伝子と制御領域との「作動可能な連結」の手順は当業者に周知である。
本明細書において、遺伝子に関する「上流」及び「下流」とは、該遺伝子の転写方向の上流及び下流をいう。例えば、「プロモーターの下流に配置された遺伝子」とは、DNAセンス鎖においてプロモーターの3’側に該遺伝子が存在することを意味し、遺伝子の上流とは、DNAセンス鎖における該遺伝子の5’側の領域を意味する。
本明細書において、細胞の機能や性状、形質に対して使用する用語「本来」とは、当該機能や性状、形質が当該細胞に元から存在していることを表すために使用される。対照的に、用語「外来」とは、当該細胞に元から存在するのではなく、外部から導入された機能や性状、形質を表すために使用される。例えば、「外来」遺伝子又はポリヌクレオチドとは、細胞に外部から導入された遺伝子又はポリヌクレオチドである。外来遺伝子又はポリヌクレオチドは、それが導入された細胞と同種の生物由来であっても、異種の生物由来(すなわち異種遺伝子又はポリヌクレオチド)であってもよい。
本明細書において、所与の変異ポリペプチドの「親」ポリペプチドとは、そのアミノ酸残基に所定の変異がなされることにより、当該変異ポリペプチドとなるポリペプチドをいう。言い換えると、「親」ポリペプチドとは、変異ポリペプチドに当該変異が加えられる前のポリペプチドである。
本明細書において、「セルラーゼ活性」とは、β−1,4グルカンのβ−1,4グリコシド結合を切断する活性をいう。本明細書において、「セルラーゼ」とは、セルラーゼ活性を有するポリペプチドをいう。
本発明は、プロテアーゼ耐性が向上した変異セルラーゼ、及びその製造方法を提供する。
一態様において、本発明は、変異セルラーゼの製造方法を提供する。当該本発明の方法は、親セルラーゼにおいて、配列番号2のアミノ酸配列の247位、248位、255位、326位及び330位に相当する位置のアミノ酸残基からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を、他のアミノ酸残基に置換することを含む。
本発明の変異セルラーゼの親セルラーゼの一例としては、バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM−S237株(FERM BP−7875)のアルカリセルラーゼ(以下、S237セルラーゼともいう)由来の触媒ドメイン(catalytic domain:CD)を含むポリペプチドが挙げられる。S237セルラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。配列番号2のアミノ酸配列において、14位〜369位領域は、該セルラーゼの触媒ドメイン(catalytic domain:CD)であり、376位〜540位領域及び550位〜733位領域は、該セルラーゼの炭水化物結合モジュール(carbohydrate binding module:CBM)であり、該CDと該CBMは、リンカー(370位〜375位)を介して結合されている(特許文献1参照)。
したがって、該親セルラーゼの例としては、セルラーゼのCD領域を含むポリペプチドが挙げられる。一実施形態において、該親セルラーゼは、配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列を含み、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドである。別の一実施形態において、該親セルラーゼは、配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドである。別の一実施形態において、該親セルラーゼは、配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドである。
別の一実施形態において、該親セルラーゼは、配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列又はこれと少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドである。別の一実施形態において、該親セルラーゼは、配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列から1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドである。
該親セルラーゼは、該CD領域に加えて、任意の酵素由来のCBMを構成するポリペプチドを含んでいてもよい。該CBMを構成するポリペプチドの例としては、上記S237セルラーゼのCBM;枯草菌等のバチルス属細菌及び他の菌に由来する、セルラーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼ、キチナーゼ等のポリサッカライド分解酵素の有するセルロース結合ドメイン;ムタナーゼのムタン結合ドメイン;アミラーゼファミリーの澱粉結合ドメイン;β−グルコシダーゼのグルカン結合領域;グルコシルトランスフェラーゼのグルカン結合領域;グルカン結合タンパク質;β−1,3−グルカン結合蛋白質;セルロース結合タンパク質;キチン結合蛋白質;レクチン類;Biochem,2004,382:769−781に記載されるCBMファミリー1〜36に属するCBM;Trichoderma reesei由来のCBM(Biochemistry,1989,28:7241−7257)、Bacillus halodurans由来のCBM(J Biol Chem,2006,280:530−537)、バチルス属由来のセルロース結合ドメイン、などが挙げられる。このうち、S237セルラーゼのCBMが好ましい。上記に挙げたCBM、ドメイン、タンパク質等の全長ポリペプチド及び部分ポリペプチド、又はそれらの改変体は、その炭水化物結合能が損なわれない限り、該CBMを構成するポリペプチドに含まれ得る。該親セルラーゼは、上記CBMを構成するポリペプチドを1つ又は2つ以上含有していてもよい。
したがって、該親セルラーゼのさらなる例としては、配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列又はこれと少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列(以下、CD配列と称する)を含む配列番号2のアミノ酸配列の部分配列からなるポリペプチド;配列番号2の全長アミノ酸配列からなるポリペプチド、及び該CD配列と上記に挙げたCBMを構成するポリペプチドとを含むポリペプチド、などが挙げられる。当該CD配列を含む配列番号2のアミノ酸配列の部分配列の例としては、該CD配列とその上流及び/又は下流に位置する任意長さのアミノ酸配列とから構成される配列番号2の部分アミノ酸配列、例えば、配列番号2の−30位〜369位からなるアミノ酸配列、配列番号2の−30位〜540位からなるアミノ酸配列、配列番号2の−30位〜733位からなるアミノ酸配列、配列番号2の1位〜540位からなるアミノ酸配列、配列番号2の1位〜733位からなるアミノ酸配列、配列番号2の1位〜794位からなるアミノ酸配列、配列番号2の−30位〜369位と376位〜540位とからなるアミノ酸配列、配列番号2の1位〜369位と376位〜540位とからなるアミノ酸配列、配列番号2の−30位〜369位と550位〜733位とからなるアミノ酸配列、配列番号2の1位〜369位と550位〜733位とからなるアミノ酸配列、配列番号2の−30位〜540位と550位〜733位とからなるアミノ酸配列、配列番号2の1位〜540位と550位〜733位とからなるアミノ酸配列、配列番号2の−30位〜369位と550位〜794位とからなるアミノ酸配列、配列番号2の1位〜369位と550位〜794位とからなるアミノ酸配列、配列番号2の−30位〜540位と550位〜794位とからなるアミノ酸配列、配列番号2の1位〜540位と550位〜794位とからなるアミノ酸配列、配列番号2の−30位〜369位と376位〜733位とからなるアミノ酸配列、配列番号2の1位〜369位と376位〜733位とからなるアミノ酸配列、配列番号2の−30位〜369位と376位〜794位とからなるアミノ酸配列、配列番号2の1位〜369位と376位〜794位とからなるアミノ酸配列、等、ならびに、上述のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列が挙げられる。
さらに別の一実施形態において、該親セルラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列又はこれと少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドである。さらに別の一実施形態において、該親セルラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列から1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列をからなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドである。
配列番号2のアミノ酸配列から1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなる親セルラーゼとしては、例えば、特開2004−000140号公報に記載される変異アルカリセルラーゼが挙げられる。すなわち、配列番号2のアミノ酸配列において:−21位をグルタミン、アラニン、プロリン又はメチオニンに;−15位をアスパラギン又はアルギニンに;−9位をプロリンに;3位をヒスチジンに;9位をアラニン、スレオニン又はチロシンに;46位をヒスチジン、メチオニン、バリン、スレオニン又はアラニンに;79位をイソロイシン、ロイシン、セリン又はバリンに;212位をアラニン、フェニルアラニン、バリン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ロイシン、イソロイシン、チロシン、スレオニン、メチオニン又はグリシンに;233位をイソロイシン、ロイシン、プロリン又はバリンに;278位をアラニン、セリン、グリシン又はバリンに;432位をスレオニン、ロイシン、フェニルアラニン又はアルギニンに;436位をロイシン、アラニン又はセリンに;438位をアラニン、アスパラギン酸、グリシン又はリジンに;522位をメチオニンに;534位をバリン、スレオニン又はロイシンに;あるいは、578位をイソロイシン又はアルギニンに置換した変異アルカリセルラーゼが挙げられる。
該親セルラーゼのさらなる例としては、バチルス エスピー1139株由来のアルカリセルラーゼ(Egl−1139)(J Gen Microbiol,1986,132:2329−2335)(配列番号2との配列同一性91.4%)、バチルス エスピーKSM−64株由来のアルカリセルラーゼ(Egl−64)(Biosci Biotechnol Biochem,1992,56:872−877)(同91.9%)、バチルス エスピーKSM−N131株由来のセルラーゼ(Egl−N131b)(特願2000−47237号)(同95.0%)等、これらの触媒ドメイン、及びこれらの触媒ドメインを含む部分ポリペプチドが挙げられる。
好ましくは、該親セルラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列の247位に相当する位置にSerを有するか、配列番号2のアミノ酸配列の248位に相当する位置にGluを有するか、配列番号2のアミノ酸配列の255位に相当する位置にGlyを有するか、配列番号2のアミノ酸配列の326位に相当する位置にLeuを有するか、又は配列番号2のアミノ酸配列の330位に相当する位置にAsnを有する。より好ましくは、該親セルラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列の247位、248位、及び255位に相当する位置に、それぞれSer、Glu、及びGlyを有する。さらに好ましくは、該親セルラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列の247位、248位、255位、326位、及び330位に相当する位置に、それぞれSer、Glu、Gly、Leu、及びAsnを有する。
該親セルラーゼから本発明の変異セルラーゼを製造する場合、好ましくは、配列番号2のアミノ酸配列の247位に相当する位置のSerが、Arg、Lys又はProに置換されるか、配列番号2のアミノ酸配列の248位に相当する位置のGluが、Asp又はGlyに置換されるか、配列番号2のアミノ酸配列の255位に相当する位置のGlyが、Ala、Arg、Asp、Cys、Glu、Gln、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、Tyr又はValに置換されるか、配列番号2のアミノ酸配列の326位に相当する位置のLeuが、Ala、Arg、Asp、Cys、Gln、His、Pro、Ser又はTrpに置換されるか、あるいは、配列番号2のアミノ酸配列の330位に相当する位置のAsnが、Ala、Arg、Asp、Cys、Glu、Gln、Lys、Phe、Trp又はValに置換される。本発明による変異セルラーゼの製造においては、上述した247位、248位、255位、326位、及び330位に相当する位置における置換のうち、いずれか1種類の置換のみが行われてもよく、又はいずれか2種もしくは3種類の置換が組み合わせて行われてもよい。
したがって、一実施形態において、本発明の変異セルラーゼは、配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有し、かつ以下:
配列番号2のアミノ酸配列の247位に相当する位置のSer以外のアミノ酸残基;
配列番号2のアミノ酸配列の248位に相当する位置のGlu以外のアミノ酸残基;
配列番号2のアミノ酸配列の255位に相当する位置のGly以外のアミノ酸残基;
配列番号2のアミノ酸配列の326位に相当する位置のLeu以外のアミノ酸残基;及び、
配列番号2のアミノ酸配列の330位に相当する位置のAsn以外のアミノ酸残基、
からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を有するアミノ酸配列を含み、かつセルラーゼ活性を有する、ポリペプチドである。
好ましくは、該本発明の変異セルラーゼは、以下:
配列番号2のアミノ酸配列の247位に相当する位置のArg、Lys又はPro;
配列番号2のアミノ酸配列の248位に相当する位置のAsp又はGly;
配列番号2のアミノ酸配列の255位に相当する位置のAla、Arg、Asp、Cys、Glu、Gln、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、Tyr又はVal;
配列番号2のアミノ酸配列の326位に相当する位置のAla、Arg、Asp、Cys、Gln、His、Pro、Ser又はTrp;及び、
配列番号2のアミノ酸配列の330位に相当する位置のAla、Arg、Asp、Cys、Glu、Gln、Lys、Phe、Trp又はVal、
からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を有する。
一実施形態において、該本発明の変異セルラーゼは、該247位に相当する位置にArg、Lys又はProを有し、かつ、該248位に相当する位置にGlu、該255位に相当する位置にGly、該326位に相当する位置にLeu、及び該330位に相当する位置にAsnを有する。
別の一実施形態において、該本発明の変異セルラーゼは、該247位に相当する位置にSer、該248位に相当する位置にAsp又はGlyを有し、かつ、該255位に相当する位置にGly、該326位に相当する位置にLeu、及び該330位に相当する位置にAsnを有する。
別の一実施形態において、該本発明の変異セルラーゼは、該247位に相当する位置にSer、該248位に相当する位置にGlu、該255位に相当する位置にAla、Arg、Asp、Cys、Glu、Gln、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、Tyr又はValを有し、かつ、該326位に相当する位置にLeu、及び該330位に相当する位置にAsnを有する。
別の一実施形態において、該本発明の変異セルラーゼは、該247位に相当する位置にSer、該248位に相当する位置にGlu、該255位に相当する位置にGly、該326位に相当する位置にAla、Arg、Asp、Cys、Gln、His、Pro、Ser又はTrpを有し、かつ、該330位に相当する位置にAsnを有する。
別の一実施形態において、本発明の変異セルラーゼは、該247位に相当する位置にSer、該248位に相当する位置にGlu、該255位に相当する位置にGly、該326位に相当する位置にLeuを有し、かつ、該330位に相当する位置にAla、Arg、Asp、Cys、Glu、Gln、Lys、Phe、Trp又はValを有する。
一実施形態において、該本発明の変異セルラーゼは、配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。別の一実施形態において、本発明の変異セルラーゼは、配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなる。
さらに別の一実施形態において、該本発明の変異セルラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。別の一実施形態において、本発明の変異セルラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなる。
あるいは、該本発明の変異セルラーゼは、上述した任意の酵素由来のCBMを構成するポリペプチドを含み得る。例えば、該変異セルラーゼは、配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドと、異種CBMとを組み合わせたキメラ酵素であり得る。キメラ酵素は、例えば、特開2002−51768号公報、Applied Biochemistry and Biotechnology,1998,75:193−204、J of Bacteriology,2003,185(2):504−512等に記載されているように、当業者に公知であり、その作製方法も当業者に知られている。
例えば、異なる酵素のCDとCBMとを組み合わせたキメラ酵素は、遺伝子工学的な手法又は化学的な架橋方法等によってCDとCBMとを連結することによって得ることができる。連結する場合、CDとCBMとを直接連結してもよいし、リンカーを介して連結してもよい。リンカーは、ポリサッカライドを分解する各種の酵素に良く見られるような、触媒活性領域と基質結合ドメインとの間をつなぐ領域として存在するペプチドである(Adv Microbiol Physiol,1995,37:1−81)。
リンカーとしては、酵素や蛋白質に由来する各種リンカーやその誘導体、人工的に設計したポリペプチドなどを使用することができる。リンカーの長さは、好ましくは1〜400アミノ酸であり、より好ましくは1〜100アミノ酸であり、さらに好ましくは1〜50アミノ酸である。プロテアーゼによるリンカーの分解を防いで本発明の変異セルラーゼのプロテアーゼ耐性をさらに向上させるために、リンカー配列にプロテアーゼに感受性の低いアミノ酸配列を選択したり、リンカー配列のアミノ酸残基を糖鎖により修飾したりすることができる。
遺伝子工学的手法による連結の場合、目的のCDをコードする遺伝子と目的のCBMをコードする遺伝子とを直接連結させるか、又はリンカー配列をコードする遺伝子を介して連結させてキメラ遺伝子を構築し、これを発現させることによって、目的のキメラ酵素を得ることができる。例えば、CDをコードする遺伝子とCBMをコードする遺伝子とが連結されたポリヌクレオチド、又はさらにその間にリンカー配列をコードする遺伝子が挿入されたポリヌクレオチドをPCR等の方法により作製し、これを適当な発現ベクターに組み込む。あるいは、CDをコードする遺伝子とCBMをコードする遺伝子、又はさらにその間にリンカー配列をコードする遺伝子が隣接して配置するように発現ベクターを構築する。得られた発現ベクターを適切な宿主に組み込んでこれを培養すれば、目的のキメラ酵素タンパク質を得ることができる。
該キメラ酵素のポリペプチド上におけるCDとCBMとの配置は、それらが由来する酵素上での本来の存在位置に依存せず、CBMはCDに対して、N末端側、C末端側、内側等、任意の位置に存在してよい。また、1つのCDに対して1つ又は複数のCBMを組み合わせてもよく、それらのCBMはCDに対して各々任意の位置に存在してよい。例えば、全てのCBMをCDの上流、下流又は内側に配置してもよく、又は1つのCBMを上流、下流又は内側に配置し、他のCBMを別の位置に配置してもよい。
化学的架橋法の場合、化学的な結合、例えば、イオン結合、ジスルフィド結合、疎水結合、水素結合、pH感受性の結合、又は金属イオンを媒介とした結合などを利用して、CDとCBMとを連結させる。この場合にも、CDとCBMとの間にリンカー領域を介在させてもよい。
本発明の変異セルラーゼの製造において、親セルラーゼのアミノ酸残基を変異させる手段としては、当技術分野で公知の各種変異導入技術を使用することができる。例えば、親セルラーゼのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド(以下、親遺伝子という)において、変異すべきアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列を、変異後のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列に変異させ、さらにその変異遺伝子からタンパク質を発現させることにより、目的の変異セルラーゼを得ることができる。
親遺伝子への目的の変異の導入は、基本的には、当業者に周知の様々な部位特異的変異導入法を用いて行うことができる。部位特異的変異導入法は、例えば、インバースPCR法やアニーリング法などの任意の手法により行うことができる。市販の部位特異的変異導入用キット(例えば、Stratagene社のQuickChange II Site−Directed Mutagenesis Kitや、QuickChange Multi Site−Directed Mutagenesis Kit等)を使用することもできる。
親遺伝子への部位特異的変異導入は、最も一般的には、導入すべきヌクレオチド変異を含む変異用プライマーを用いて行うことができる。該変異用プライマーは、親遺伝子における変異すべきアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列を含む領域にアニーリングし、かつその変異すべきアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(コドン)に代えて変異後のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(コドン)を有するヌクレオチド配列を含むように設計すればよい。変異前及び変異後のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(コドン)は、当業者であれば通常の教科書等に基づいて適宜認識し選択することができる。あるいは、部位特異的変異導入は、導入すべきヌクレオチド変異を含む相補的な2つのプライマーを別々に用いて変異部位の上流側及び下流側をそれぞれ増幅したDNA断片を、SOE(splicing by overlap extension)−PCR(Gene,1989,77(1):p61−68)により1つに連結する方法を用いることもできる。
親遺伝子を含む鋳型DNAは、親セルラーゼを産生する株(例えばバチルス エスピーKSM−S237株)などから、常法によりゲノムDNAを抽出するか、又はRNAを抽出し逆転写によりcDNAを合成することによって、調製することができる。あるいは、親セルラーゼのアミノ酸配列に基づいて、対応するヌクレオチド配列を化学合成して鋳型DNAとして用いてもよい。必要に応じて、親遺伝子は、後述する変異セルラーゼ産生用の形質転換体の種にあわせて、コドン至適化されてもよい。各種生物が使用するコドンの情報は、Codon Usage Database([www.kazusa.or.jp/codon/])から入手可能である。親遺伝子を含むポリヌクレオチドの例としては、配列番号1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、配列番号1の配列と少なくとも80%の同一性を有するヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、配列番号1の配列に対して1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、挿入又は付加されたヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、ならびに、配列番号52又は53のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、などが挙げられる。
変異用プライマーは、ホスホロアミダイト法(Nucleic Acids R4esearch,1989,17:7059−7071)等の周知のオリゴヌクレオチド合成法により作製することができる。そのようなプライマー合成は、例えば市販のオリゴヌクレオチド合成装置(ABI社製など)を用いて実施することもできる。該変異用プライマーを含むプライマーセットを使用し、親遺伝子を鋳型DNAとして上述のような部位特異的変異導入を行うことにより、目的の変異セルラーゼをコードするポリヌクレオチドを得ることができる。
したがって、本発明はまた、本発明の変異セルラーゼをコードするポリヌクレオチドを提供する。当該本発明のポリヌクレオチドは、一本鎖又は2本鎖のDNA、cDNA、RNAもしくは他の人工核酸を含み得る。該DNA、cDNA及びRNAは、化学合成されていてもよい。また当該本発明のポリヌクレオチドは、オープンリーディングフレーム(ORF)に加えて、非翻訳領域(UTR)のヌクレオチド配列を含んでいてもよい。また当該本発明のポリヌクレオチドは、変異セルラーゼ産生用の形質転換体の種にあわせて、コドン至適化されていてもよい。
本発明はまた、当該本発明の変異セルラーゼをコードするポリヌクレオチドを含有するベクターを提供する。該ベクターは、該本発明のポリヌクレオチドを常法により任意のベクター中に挿入することにより作製することができる。該ベクターの種類は特に限定されず、プラスミド、ファージ、ファージミド、コスミド、ウイルス、YACベクター、シャトルベクター等の任意のベクターであってよい。また該ベクターは、限定ではないが、好ましくは、細菌内、とりわけバチルス属細菌内で増幅可能なベクターであり、より好ましくは、バチルス属細菌内で導入遺伝子の発現を誘導可能な発現ベクターである。中でも、バチルス属細菌と他の生物のいずれでも複製可能なベクターであるシャトルベクターは、本発明の変異体を組換え生産する上で好適に用いることができる。好ましいベクターの例としては、限定するものではないが、pHA3040SP64、pHSP64R又はpASP64(特許第3492935号)、pHY300PLK(大腸菌と枯草菌の両方を形質転換可能な発現ベクター;Jpn J Genet,1985,60:235−243)、pAC3(Nucleic Acids Res,1988,16:8732)等のシャトルベクター;pUB110(J Bacteriol,1978,134:318−329)、pTA10607(Plasmid,1987,18:8−15)等のバチルス属細菌の形質転換に利用可能なプラスミドベクター、等が挙げられる。また大腸菌由来のプラスミドベクター(例えばpET22b(+)、pBR322、pBR325、pUC57、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19、pBluescript等)を用いることもできる。
本発明の変異セルラーゼを組換え生産する場合、当該ベクターは発現ベクターであることが好ましい。発現ベクターは、転写プロモーター、ターミネーター、リボソーム結合部位等の宿主生物における発現に必須な各種エレメント;ポリリンカー、エンハンサー等のシスエレメント;ポリA付加シグナル;リボソーム結合配列(SD配列);薬剤(例えばアンピシリン、ネオマイシン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール等)耐性遺伝子等の選択マーカー遺伝子、などの有用な配列を必要に応じて含み得る。あるいは、本発明の変異セルラーゼをコードするポリヌクレオチドが、上記の有用な配列を含んでいてもよい。
本発明はまた、本発明の変異セルラーゼをコードするポリヌクレオチド又はそれを含有するベクターを含む、形質転換体を提供する。該形質転換体は、本発明の変異セルラーゼをコードするポリヌクレオチド、又はそれを含有するベクターを宿主に導入することにより製造することができる。
当該形質転換体の宿主としては、枯草菌等のバチルス属(Bacillus)菌や、クロストリジウム属(Clostridium)菌、酵母などが挙げられ、このうちバチルス属菌が好ましく、枯草菌又はその変異株がより好ましい。したがって、本発明の形質転換体は、好ましくは組換えバチルス属細菌であり、より好ましくは枯草菌又はその変異株の組換え体である。枯草菌変異株としては、aprXと、aprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprAから選択される遺伝子とを欠失した株(特開2006−174707)などが挙げられる。
ポリヌクレオチドやベクターの宿主細胞への導入には、例えば、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、パーティクルガン法、PEG法等の周知の形質転換技術を適用することができる。例えばバチルス属細菌に適用可能な方法としては、コンピテントセル形質転換法(J Bacteriol,1967,93:1925−1937)、エレクトロポレーション法(FEMS Microbiol Lett,1990,55:135−138)、プロトプラスト形質転換法(Mol Gen Genet,1979,168:111−115)、Tris−PEG法(J Bacteriol,1983,156:1130−1134)などが挙げられる。
当該本発明の形質転換体を培養することにより、本発明の変異セルラーゼを製造することができる。したがって、本発明はまた、本発明の形質転換体を用いる変異セルラーゼの製造方法を提供する。変異セルラーゼ製造のための当該形質転換体の培養は、当該分野の一般的な方法に従って行うことができる。例えば、該形質転換体がバチルス属菌である場合、その培養のための培地は、バチルス属菌の生育に必要な炭素源、及び無機窒素源もしくは有機窒素源を含む。炭素源としては、例えばグルコース、デキストラン、可溶性デンプン、ショ糖、メタノールなどが挙げられる。無機窒素源もしくは有機窒素源としては、例えばアンモニウム塩類、硝酸塩類、アミノ酸、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などが挙げられる。必要に応じて、該培地は、他の栄養素、例えば無機塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウム)、ビタミン類、抗生物質(例えばテトラサイクリン、ネオマイシン、カナマイシン、スペクチノマイシン、エリスロマイシン等)などを含んでいてもよい。培養条件、例えば温度、通気撹拌条件、培地のpH及び培養時間等は、微生物の種や形質、培養スケール等に応じて適宜選択され得る。
あるいは、本発明の変異セルラーゼは、無細胞翻訳系を使用して、本発明の変異セルラーゼをコードするポリヌクレオチド又はその転写産物から発現させてもよい。「無細胞翻訳系」とは、宿主となる細胞を機械的に破壊して得た懸濁液にタンパク質の翻訳に必要なアミノ酸等の試薬を加えて、in vitro転写翻訳系又はin vitro翻訳系を構成したものである。
当該形質転換体又は無細胞翻訳系で製造された本発明の変異セルラーゼは、タンパク質精製に用いられる一般的な方法、例えば、細胞の破砕、遠心分離、硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、培養液、細胞破砕液、無細胞翻訳系の反応液などから取得することができる。
本発明の変異セルラーゼは、親セルラーゼに対して、プロテアーゼ耐性が向上している。例えば、本発明の変異セルラーゼのプロテアーゼ耐性(プロテアーゼ処理後の残存活性)は、親セルラーゼに対して、好ましくは120%以上、より好ましくは130%以上であり得る。
したがって、本発明の別の一態様は、セルラーゼのプロテアーゼ耐性の向上方法である。例えば、当該方法は、上述した親セルラーゼにおいて、配列番号2のアミノ酸配列の247位、248位、255位、326位及び330位に相当する位置のアミノ酸残基からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を、他のアミノ酸残基に置換することを含む。当該方法の詳細は、上述した本発明の変異セルラーゼの製造方法と同様である。
本発明はまた、本発明の変異セルラーゼを含有する洗剤組成物を提供する。本発明の変異セルラーゼは、洗剤組成物、特に液体洗剤用の酵素として好適である。本発明の変異セルラーゼは、プロテアーゼ耐性が向上しており、洗剤液中でプロテアーゼとともに長期保存しても、プロテアーゼによる分解を受けることなく、長期にわたって高いセルラーゼ活性を維持することができる。したがって、本発明の洗剤組成物は、長期保存後にも高い洗浄力を発揮することができる。
本発明の洗剤組成物における本発明の変異セルラーゼの含有量は、セルラーゼ活性を示すことができる量であり、かつ洗剤組成物中に均一に溶解又は分散可能な範囲であればよい。例えば、本発明の洗剤組成物における該変異セルラーゼの含有量は、好ましくは0.0001〜5質量%、より好ましくは0.0001〜2質量%である。
本発明の洗剤組成物は、本発明の変異セルラーゼに加えて、界面活性剤を含有する。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の任意の界面活性剤を1種で又は2種以上組み合わせて用いることができる。本発明の洗剤組成物における該界面活性剤の含有量は、好ましくは0.01〜80質量%、より好ましくは0.1〜70質量%である。
非イオン性界面活性剤の例としては、炭素数8以上22以下の炭化水素基、好ましくは炭素数8以上18以下の直鎖アルキル基と、エチレンオキシ基を平均1モル以上20モル以下の数で結合したポリオキシエチレン鎖と、及び必要ならばプロピレンオキシ基及びブチレンオキシ基から選ばれるアルキレンオキシ基が平均0モル以上5モル以下の数で該エチレンオキシ基とランダム又はブロック結合したポリアルキレンオキシ鎖とを有する、ポリオキシエチレン(ポリオキシアルキレン)アルキルエーテル;炭素数8以上22以下の脂肪酸のメチルもしくはエチルエステル化物に、エチレンオキサイドを1モル以上20モル以下反応させて得られる、ポリオキシエチレンメチルもしくはエチルエーテル脂肪酸エステル;炭素数8以上22以下の脂肪酸残基を有しアルカノール基の炭素数が2又は3であるアルキルもしくはアルケニルアルカノールアミド;該アルキルもしくはアルケニルアルカノールアミドにエチレンオキシドを平均1以上20以下付加したアルキルもしくはアルケニルアルカノールアミドEO付加物;炭素数8以上22以下の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基、好ましくは直鎖アルキル基を有し、グルコースの平均縮合度が1以上3以下であるアルキル(ポリ)グルコシド;ならびに、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン等の多価アルコール化合物と脂肪酸とがエステル結合した多価アルコール脂肪酸エステル(例えばモノエステル体を主体とするグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル)及びそれらのエチレンオキシド付加物、などを挙げることができる。なお上記化合物名における“(ワード)”の記載は、“ワード”がある構造とない構造とを説明しており、例えばアルキル(ポリ)グルコシドの場合は、アルキルグルコシドとアルキルポリグルコシドの記載を意味するものとする。
陰イオン性界面活性剤の例としては、カルボキシレート型陰イオン性界面活性剤、スルホン酸型又は硫酸エステル型陰イオン性界面活性剤、非石鹸系陰イオン性界面活性剤、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸又はその塩、ポリオキシベンゼンスルホン酸又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、不飽和結合を2位以上好ましくは8位以下に有する内部オレフィンをスルホン酸化したものの塩である内部オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、脂肪酸石鹸、リン酸エステル塩系界面活性剤、アシルアラニネート、アシルタウレート、アルキルエーテルカルボン酸、アルコール硫酸エステル、などが挙げられる。ここで塩は、アルカリ金属との塩、アルカリ土類金属との塩が挙げられ、カリウム、ナトリウム、カルシウム及びマグネシウムの他に、アンモニアや炭素数が2以上4以下のアルカノール基を有するモノないしトリアルカノールアミン、好ましくはモノエタノールアミン等の塩でもよい。液体洗剤の場合、酸性の系に該陰イオン性界面活性剤を配合し、続いてアルカリ剤や炭酸ナトリウム等の強塩基弱酸塩を配合して中和してもよく、その逆でもよい。
陽イオン性界面活性剤の例としては、炭素結合の間がエステル結合、エーテル結合又はアミド結合で分断されていてもよい炭素数が3以上25以下の長鎖アルキル基又はアルケニル基を1つ以上3つ以下有し、残りの基としてメチル、エチル及びヒドロキシエチルから選ばれる短鎖基を有し、塩素イオン、臭素イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオンを対イオンとする第4級アンモニウム塩;エステル結合、エーテル結合又はアミド結合で分断されていてもよい炭素数が3以上25以下の長鎖アルキル基又はアルケニル基を1つ以上3つ以下有し、残りの基としてメチル、エチル及びヒドロキシエチルから選ばれる短鎖基を有する3級アミン及びその酸塩;ならびに、炭素数が8以上25以下のアルキル基又はアルケニル基を有するモノ長鎖アルキルもしくはアルケニルトリメチルアンモニウム塩、ジ長鎖アルキルもしくはアルケニルジメチルアンモニウム塩、モノ長鎖モノアルキルもしくはアルケニルピリジニウム塩、アルキルもしくはアルケニルアミドプロピルジメチルアミン又はその酸塩、などが挙げられる。好ましくは炭素数8〜22の長鎖アルキル基を1つ又は2つ有するアルキルジもしくはトリメチル第4級アンモニウムの塩素塩もしくはメチル硫酸塩;炭素数が11〜25のアルカノイルオキシエチレン基を1つ以上3つ以下有しかつ炭素数1又は2のアルキル基又はヒドロキシエチル基を有する、第4級アンモニウムの塩素塩又はメチル硫酸塩;及び、炭素数8〜22の長鎖アルキル基を1つ有する脂肪酸アミドプロピルジメチルアミン又はその酸塩、が挙げられる。
両性界面活性剤の例としては、炭素数8以上22以下のアルキル基又はアルケニル基と陰イオン性基及び陽イオン性基とを有する化合物、例えばアルキル酢酸ベタイン、アルカノールアミドプロピル酢酸ベタイン、アルキルイミダゾリン、アルキルアラニン等、ならびにアルキルベタイン型、アルキルアミドベタイン型、イミダゾリン型、アルキルアミノスルホン型、アルキルアミノカルボン酸型、アルキルアミドカルボン酸型、アミドアミノ酸型又はリン酸型の両性界面活性剤、などが挙げられる。好ましくは炭素数10〜18のアルキル基を有するスルホベタイン又はカルボベタインを挙げることができる。
その他の両性界面活性剤の例としては、非イオン性界面活性剤に分類される場合もあるが、pHにより極性を有する、炭素数8以上22以下のアルキル基又はアルケニル基を有するアミンオキシド型の界面活性剤を挙げることができる。該アミンオキシド型界面活性剤の例としては、炭素数8以上22以下のアルキル基又はアルケニル基を1つ有しかつ炭素数1以上3以下のアルキル基を2つ有するアルキルもしくはアルケニルアミンオキシド、及び、総炭素数21以上25以下のアルカノイルもしくはアルケノイルアミノプロピル基を1つ有しかつ炭素数1以上3以下のアルキル基を2つ有するアルキルもしくはアルケニルアミドプロピルアミンオキシドが挙げられる。より好ましくは、炭素数8以上18以下のアルキル基を有するアルキルジメチルアミンオキシド、及び炭素数8以上18の脂肪酸残基を有する脂肪族アミドプロピルジメチルアミンオキシドを挙げることができる。
本発明の洗剤組成物は、さらに、洗剤組成物に通常使用される成分、例えば、水溶性ポリマー、水混和性有機溶剤、アルカリ剤、有機酸又はその塩、キレート剤、本発明の変異セルラーゼ以外の他の酵素、酵素安定化剤、蛍光剤、再汚染防止剤、分散剤、色移り防止剤、仕上げ剤、過酸化水素等の漂白剤、酸化防止剤、可溶化剤、pH調整剤、緩衝剤、防腐剤、香料、塩、アルコール、糖類、水などを含み得る。
水溶性ポリマーとしては、例えば、(i)炭素数2〜5のエポキシド由来の重合単位を含んで構成されるポリエーテル鎖部分と(ii)アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸から選ばれる一種以上の不飽和カルボン酸単量体由来の重合単位を含んで構成されるポリマー鎖部分とを有し、(i)又は(ii)はいずれかが幹鎖となり、他方が枝鎖となったグラフト構造を有する高分子化合物(特開2010−275468号公報、特開平10−060496号公報);アルキレンテレフタレート単位及び/又はアルキレンイソフタレート単位と、オキシアルキレン単位及び/又はポリオキシアルキレン単位を有する水溶性ポリマー(特開2009−155606号公報)、などが挙げられる。本発明の洗剤組成物における当該水溶性ポリマーの含有量は、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%である。
水混和性有機溶剤としては、例えばアルカノール類、アルキレングリコール・グリセリン類、ポリアルキレングリコール類、(ポリ)アルキレングリコールモノもしくはジアルキルエーテル類、アルキルグリセリルエーテル類、(ポリ)アルキレングリコールの芳香族エーテル類が挙げられる。アルカノール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール等が好ましい。アルキレングリコール・グリセリン類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、及びグリセリン等が好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びグリセリンがより好ましい。ポリアルキレングリコール類としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びランダムもしくはブロック重合でもよいポリエチレンポリプロピレングリコールが好ましく、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールがより好ましい。(ポリ)アルキレングリコールモノもしくはジアルキルエーテル類としては、平均付加モル数1以上3以下のポリオキシエチレンモノブチルエーテル、及び平均付加モル数1以上3以下のポリオキシプロピレンモノプロピルエーテル等が好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテルがより好ましい。アルキルグリセリルエーテル類としては、炭素数1以上8以下のアルキル基を有するアルキル(ポリ)グリセリルエーテルが好ましく、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル又はイソアミルグリセリルエーテルがより好ましい。(ポリ)アルキレングリコールの芳香族エーテル類としては、平均付加モル数1以上3以下の(ポリ)オキシエチレンモノフェニルエーテル、及び平均付加モル数1以上3以下の(ポリ)オキシエチレンベンジルエーテル等が好ましく、モノエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールエーテルモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、及びジエチレングリコールモノベンジルエーテルがより好ましい。本発明の洗剤組成物における当該水混和性有機溶剤の含有量は、好ましくは0.01〜40質量%、より好ましくは0.1〜35質量%である。
アルカリ剤としては、無機性アルカリ剤の例として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられ、また有機性のアルカリ剤の例として、C2−C4のアルカノールを1〜3個有するアルカノールアミンとして、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシアルキレンアミン、ジメチルアミノプロピルアミン等が挙げられる。モノエタノールアミン、及びトリエタノールアミンが好ましい。本発明の洗剤組成物における当該アルカリ剤の含有量は、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜10質量%である。
有機酸又はその塩としては、後述するキレート剤を挙げることができるが、その他の有機酸又はその塩であってもよい。例えば、飽和脂肪酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、又はそれらの塩等の多価カルボン酸類;クエン酸、リンゴ酸、グリコール酸、p−ヒドロキシ安息香酸、安息香酸又はそれらの塩等のヒドロキシカルボン酸類、などが挙げられ、なかでもクエン酸又はその塩が好ましい。本発明の洗剤組成物における当該有機酸又はその塩の含有量は、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜3質量%である。
キレート剤とは、金属イオンと配位結合をすることができる化合物をいう。洗剤組成物に添加されたキレート剤は、洗濯用水又は汚れの中のカルシウムイオン、マグネシウムイオン等の洗浄に悪影響を及ぼす金属イオンを封鎖する作用を有する。本発明の洗剤組成物に含まれ得るキレート剤の例としては、ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジエンコル酸、メチルグリシン二酢酸等のアミノポリ酢酸又はこれらの塩;ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸等の有機酸又はこれらの塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、及びこれらのアルカリ金属又は低級アミン塩、などが挙げられる。本発明の洗剤組成物におけるキレート剤の含有量は、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.005〜4質量%である。
再汚染防止剤及び分散剤としては、例えばポリアクリル酸、ポリマレイン酸、カルボキシメチルセルロース、重量平均分子量5000以上のポリエチレングリコール、無水マレイン酸−ジイソブチレン共重合体、無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、及び特開昭59−62614号公報の請求項1〜21(1頁3欄5行〜3頁4欄14行)記載のポリマーなどの再汚染防止剤及び分散剤を挙げることができる。色移り防止剤としては、例えばポリビニルピロリドンが挙げられる。これら再汚染防止剤、分散剤及び色移り防止剤としてのポリマー化合物の含有量は0〜10質量%が好ましい。
漂白剤としては、例えば過酸化水素、過炭酸塩、過硼酸塩などの漂白剤を、当該洗剤組成物中0〜10質量%含有させることが好ましい。漂白剤を使用するときは、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)や特開平6−316700号公報記載などの漂白活性化剤(アクチベーター)を、当該洗剤組成物中0〜10質量%配合させることができる。
蛍光剤としては、例えばビフェニル型蛍光剤(チノパールCBS−Xなど)やスチルベン型蛍光剤(DM型蛍光染料など)が挙げられる。本発明の洗剤組成物における当該蛍光剤の含有量は0.001〜2質量%が好ましい。
本発明の変異セルラーゼ以外の他の酵素としては、例えば、プロテアーゼ、他のセルラーゼ、β−グルカナーゼ、ヘミセルラーゼ、リパーゼ、ペルオキシダーゼ、ラッカーゼ、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、ペクチン酸リアーゼ、キシログルカナーゼ、キシラナーゼ、ペクチンアセチルエステラーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ラムノガラクツロナーゼ、ペクチンリアーゼ、マンナナーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、セロビオヒドロラーゼ、及びトランスグルタミナーゼ等の加水分解酵素、ならびにそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
酵素安定化剤としては、例えばホウ素化合物、カルシウムイオン源(カルシウムイオン供給化合物)、ヒドロキシ化合物、蟻酸などが挙げられ、酸化防止剤としては、ブチルヒドロキシトルエン、ジスチレン化クレゾール、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムなどが挙げられる。可溶化剤としては、パラトルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、メタキシレンスルホン酸、安息香酸塩(防腐剤としての効果もある)などが挙げられる。さらに、本発明の洗剤組成物は、オクタン、デカン、ドデカン、トリデカンなどのパラフィン類、デセン、ドデセンなどのオレフィン類、塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタンなどのハロゲン化アルキル類、D−リモネンなどのテルペン類などの水非混和性有機溶剤、色素、香料、抗菌防腐剤、シリコーン等の消泡剤などを含有していてもよい。
洗剤組成物が液体洗剤組成物の場合、残部は水であり、組成物自体の保存安定性や、酵素への活性に影響を与えないものを用いることが好ましい。
本発明の洗剤組成物の形状は、限定されないが、酵素のプロテアーゼ分解をより効果的に抑制できる点で、液体(濃縮液体を含む)、及びゲル状の洗剤組成物が好適である。
本発明の洗剤組成物の種類としては、限定されないが、好ましくは衣料用、又は布製品(シーツ、カーテン、カーペット、壁クロス等)の洗浄用の洗剤組成物、及び顔又はボディ用の洗剤組成物が挙げられる。本発明の洗剤組成物は、プロテアーゼ耐性の高い変異セルラーゼを含有することにより安定性が向上しており、長期保存後にも高い酵素洗浄力を発揮することができる。
本発明はまた、例示的実施形態として以下の物質、製造方法、用途、方法等を包含する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
〔1〕配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有し、かつ以下:
配列番号2のアミノ酸配列の247位に相当する位置のSer以外のアミノ酸残基;
配列番号2のアミノ酸配列の248位に相当する位置のGlu以外のアミノ酸残基;
配列番号2のアミノ酸配列の255位に相当する位置のGly以外のアミノ酸残基;
配列番号2のアミノ酸配列の326位に相当する位置のLeu以外のアミノ酸残基;及び、
配列番号2のアミノ酸配列の330位に相当する位置のAsn以外のアミノ酸残基、
からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を有する、アミノ酸配列を含み、かつセルラーゼ活性を有する、ポリペプチド。
〔2〕好ましくは、
前記247位に相当する位置にArg、Lys又はProを有するか、
前記248位に相当する位置にAsp又はGlyを有するか、
前記255位に相当する位置にAla、Arg、Asp、Cys、Glu、Gln、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、Tyr又はValを有するか、
前記326位に相当する位置にAla、Arg、Asp、Cys、Gln、His、Pro、Ser又はTrpを有するか、あるいは、
前記330位に相当する位置にAla、Arg、Asp、Cys、Glu、Gln、Lys、Phe、Trp又はValを有する、
〔1〕記載のポリペプチド。
〔3〕好ましくは、
前記247位に相当する位置にArg、Lys又はPro、該248位に相当する位置にGlu、該255位に相当する位置にGly、該326位に相当する位置にLeu、及び該330位に相当する位置にAsnを有するか、
前記247位に相当する位置にSer、該248位に相当する位置にAsp又はGly、該255位に相当する位置にGly、該326位に相当する位置にLeu、及び該330位に相当する位置にAsnを有するか、
前記247位に相当する位置にSer、該248位に相当する位置にGlu、該255位に相当する位置にAla、Arg、Asp、Cys、Glu、Gln、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、Tyr又はVal、該326位に相当する位置にLeu、及び該330位に相当する位置にAsnを有するか、
前記247位に相当する位置にSer、該248位に相当する位置にGlu、該255位に相当する位置にGly、該326位に相当する位置にAla、Arg、Asp、Cys、Gln、His、Pro、Ser又はTrp、及び該330位に相当する位置にAsnを有するか、あるいは、
前記247位に相当する位置にSer、該248位に相当する位置にGlu、該255位に相当する位置にGly、該326位に相当する位置にLeu、及び該330位に相当する位置にAla、Arg、Asp、Cys、Glu、Gln、Lys、Phe、Trp又はValを有する、
〔2〕記載のポリペプチド。
〔4〕好ましくは以下である、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項記載のポリペプチド:
配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;
配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド;
配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列と、炭水化物結合モジュールを構成するポリペプチドとを含むポリペプチド;
配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;あるいは、
配列番号2のアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド。
〔5〕好ましくは、前記配列同一性が90%以上である、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項記載のポリペプチド。
〔6〕好ましくは、親ポリペプチドと比べてプロテアーゼ耐性が向上している、〔1〕〜〔5〕のいずれか1項記載のポリペプチド。
〔7〕前記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
〔8〕前記〔7〕記載のポリヌクレオチドを含有するベクター。
〔9〕前記〔7〕記載のポリヌクレオチド又は前記〔8〕記載のベクターを含有する形質転換体。
〔10〕好ましくはバチルス属菌である、〔9〕記載の形質転換体。
〔11〕前記〔9〕又は〔10〕記載の形質転換体を培養することを含む、セルラーゼ活性を有するポリペプチドの製造方法。
〔12〕配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列又はこれと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドにおいて、配列番号2のアミノ酸配列の247位、248位、255位、326位及び330位に相当する位置のアミノ酸残基からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換することを含む、セルラーゼ活性を有する変異ポリペプチドの製造方法。
〔13〕好ましくは、前記アミノ酸残基の置換が、
前記247位に相当する位置のSerのArg、Lys又はProへの置換、
前記248位に相当する位置のGluのAsp又はGlyへの置換、
前記255位に相当する位置のGlyのAla、Arg、Asp、Cys、Glu、Gln、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、Tyr又はValへの置換、
前記326位に相当する位置のLeuのAla、Arg、Asp、Cys、Gln、His、Pro、Ser又はTrpへの置換、あるいは、
前記330位に相当する位置のAsnのAla、Arg、Asp、Cys、Glu、Gln、Lys、Phe、Trp又はValへの置換、
である、〔12〕記載の方法。
〔14〕好ましくは、配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列又はこれと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドが以下である、〔12〕又は〔13〕記載の方法:
配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;
配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド;
配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列と、炭水化物結合モジュールを構成するポリペプチドとを含むポリペプチド;
配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;あるいは、
配列番号2のアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド。
〔15〕配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列又はこれと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドが、
好ましくは、配列番号2の247位に相当する位置にSerを有するか、配列番号2の248位に相当する位置にGluを有するか、配列番号2の255位に相当する位置のGlyを有するか、配列番号2の326位に相当する位置のLeuを有するか、あるいは、
配列番号2の330位に相当する位置のAsnを有する、
より好ましくは、配列番号2の247位、248位、255位、326位及び330位に、それぞれSer、Glu、Gly、Leu及びAsnを有する、
〔12〕〜〔14〕のいずれか1項記載の方法。
〔16〕好ましくは、前記配列同一性が90%以上である、〔12〕〜〔15〕のいずれか1項記載の方法。
〔17〕好ましくは、前記変異ポリペプチドが親ポリペプチドと比べてセルラーゼ活性が向上している、〔12〕〜〔16〕のいずれか1項記載の方法。
〔18〕前記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項記載のポリペプチドを含有する洗剤組成物。
〔19〕プロテアーゼをさらに含有する、〔18〕記載の洗剤組成物。
〔20〕液体洗剤組成物である、〔18〕又は〔19〕記載の洗剤組成物。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1 変異セルラーゼ発現細胞の作製
(1)方法
プラスミド精製にはHigh Pure Plasmid isolation kit(Roche)又はQiafilter Plasmid Midi kit(Qiagen)を用いた。制限酵素はRoche社製品を使用した。DNAのライゲーション反応にはLigation High(TOYOBO)を用いた。オリゴDNAプライマーの合成はオペロンバイオテクノロジー社に依頼した。変異プラスミド作製に至るPCR反応にはpyrobest(登録商標)DNA polymerase(タカラバイオ)又はPrimeSTAR(登録商標)Mutagenesis Basal kit(タカラバイオ)を用いた。コロニーPCRにはEX taq DNA polymerase(タカラバイオ)を用いた。PCR産物の精製にはHigh Pure PCR product purification kit(Roche)又はMultiscreen PCRμ96 Cleanup kit(Millipore)を用いた。DNAシーケンス反応試薬にはBig Dye DNA sequencing kit Ver.3.1(Applied Biosystems)を用いた。DNAシーケンス反応後のDNA精製にはMontage Seq 96 Sequencing ReactionCleanup Kit(Millipore)を用いた。PCR反応、DNAシーケンス反応用サーマルサイクラーにはGeneAmp(登録商標)9700(Applied Biosystems)を用いた。DNAシーケンス解析にはABI Prism(登録商標)3100(Applied Biosystems)を用いた。プラスミド調製、セルラーゼ発現の宿主菌には枯草菌(Bacillus subtilis Marburg No.168株(Nature,1997,390,p249)を用いた。枯草菌の形質転換法はプロトプラスト法(Molec Gen Genet,1979,168:111−115)に従った。
(2)全長セルラーゼ発現プラスミドの作製
シャトルベクターpHY300PLK(ヤクルト本社)を鋳型に、プライマーpHY+1(HindIII)F(配列番号3)及びプライマーpHY+3040(HindIII)R(配列番号4)とpyrobest(登録商標)DNA polymeraseを用いてPCRを行った。得られた増幅産物を精製後、制限酵素HindIIIにて消化し、ライゲーションにより自己環化させた。得られたプラスミドで宿主菌を形質転換し、50μg/mLテトラサイクリン塩酸塩(シグマ)を含むDM3再生培地に塗沫した。数日後に寒天培地に出現した形質転換体を取得し、プラスミドを抽出した。抽出したプラスミドの制限酵素消化断片の電気泳動像を確認し、アンピシリン耐性遺伝子とori−177(大腸菌における複製基点)が欠失したプラスミドpHA3040を得た。
S237セルラーゼ遺伝子(バチルス エスピーKSM−S237株(FERM BP−7875)由来、GenBank AB18420、Biosci Biotechnol Biochem,2000,64(11):2281−2289、特開2000−210081号公報)を一部改変したDNA(配列番号52:Q212S変異(特開2004−140号公報記載のQ242Sに相当)を含み、セルラーゼORF中のEcoRIサイト、XbaIサイトを破壊し、かつプロモーター上流の5’末端にEcoRIサイト、ORF下流の3’末端にXbaIサイトを有する)を制限酵素EcoRI及びXbaIにて同時消化した。他方プラスミドpHA3040を制限酵素EcoRI及びXbaIにて同時消化し、S237セルラーゼ遺伝子を含むDNA断片と混合し、ライゲーションした。ライゲーション産物で枯草菌を形質転換し、50μg/mLテトラサイクリン塩酸塩を含むDM3再生培地に塗沫した。数日後に寒天培地に出現したコロニーについて、溶解斑の有無からセルラーゼ遺伝子が導入された形質転換体を選抜した。形質転換体からプラスミドDNAを抽出し、先の配列番号52のDNA配列が正しく挿入されていることを確認した。得られたプラスミドをpHA237QSAとした。
(3)セルラーゼ触媒ドメイン発現プラスミドの作製
(1)で構築した、S237セルラーゼ全長を発現するプラスミドpHAS237QSAを鋳型に、プライマーT369/_R(配列番号5)及びプライマーT369/stop_F(配列番号6)と、PrimeSTAR(登録商標)Mutagenesis Basal Kitを用いてPCRを行い、得られた増幅産物で枯草菌を形質転換し、50μg/mLテトラサイクリン塩酸塩を含むDM3再生培地に塗沫した。数日後に寒天培地に出現したコロニーについて、溶解斑の有無からセルラーゼ遺伝子が導入された形質転換体を選抜した。形質転換体からプラスミドを抽出した。抽出したプラスミドに配列番号53のDNA配列が挿入されていることを確認した、S237セルラーゼ触媒ドメインのみを発現するプラスミドを、pHAP237QSBとした。以下、本プラスミドにコードされる遺伝子より産生されるS237セルラーゼ触媒ドメインのQ212S変異体を、S237QSBと称する。
(4)変異セルラーゼ発現細胞の作製
変異セルラーゼ発現細胞の作製手順を、247位SerがLysに置換された変異体(S247K)発現細胞を例にして説明する。
S237QSBを発現するプラスミドpHAP237QSBを鋳型として、表1〜2に示したS247_R(配列番号7、S247までを増幅するリバースプライマー;5’末端の15残基がフォワードプライマーの5’末端の15残基と相補する)及びS247K_F(配列番号8、S247をKに置換するフォワードプライマー)をプライマーとして、PrimeSTAR(登録商標)Mutagenesis Basal Kit(タカラバイオ)を用いてPCRを行った。得られた増幅産物で枯草菌を形質転換し、50μg/mLテトラサイクリン塩酸塩を含むDM3再生培地に塗沫した。数日後に寒天培地に出現したコロニーについて、溶解斑の有無からセルラーゼ遺伝子が導入された形質転換体を得た。同様の手順で、表1〜2に記載の247位、248位、255位、326位又は330位のアミノ酸が置換された変異体を発現する細胞を作製した。表1〜2に記載の変異体の名称は、置換位置と置換前後のアミノ酸を示している。例えば、「S247K」は、配列番号2の247位Ser(S)がLys(K)に置換された変異体であることを示す。
Figure 2021069321
Figure 2021069321
実施例2 セルラーゼの製造
実施例1で得られた形質転換体を培養し、セルラーゼを製造した。プラスミドpHAP237QSB又はそれらプラスミドに由来する変異プラスミドを保持する枯草菌形質転換体を、96穴ディープウェルプレート(サーモフィッシャー)中の300μL種母培地(LB培地:1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1%NaCl、15ppmテトラサイクリン)に植菌し、30℃で16時間振盪培養した。次いで96穴ディープウェルプレート中の80μL主培地(2×L−マルトース培地:2%トリプトン、1%酵母エキス、1%NaCl、7.5%マルトース、7.5ppm硫酸マンガン4−5水和物、15ppmテトラサイクリン)に種母培養液を6%(v/v)植菌し、30℃で3日間振盪培養した。培養によって得られたS237QSB又はその変異体を含む培養液を遠心分離して上清を取得した。
実施例3 変異セルラーゼの保存安定性評価
実施例2で得られたセルラーゼを液体洗剤中での安定性評価に供した。
(1)アルカリプロテアーゼKP43の調製
バチルス エスピーKSM−64(FERM P−10482)のゲノムDNAを、プライマーSP64−F(EcoRI)(配列番号54)及びSP64−R(BamHI)(配列番号55)を用いてPCR増幅し、Endo−1,4−β−glucanase(Genbank ACCESSION No.M84963)上流のプロモーター領域を含むDNA断片を取得した。この増幅産物と実施例1(2)で構築したpHA3040を、制限酵素EcoRI(Roche社)とBamHI(Roche社)でそれぞれ二重消化したのち、Ligation Highを用いてライゲーション反応を行い、得られた反応産物をエタノール沈殿にて精製した。この反応産物を用いてバチルス エスピーKSM−9865株(FERM P−18566)をエレクトロポレーション法にて形質転換し、スキムミルク含有アルカリLB寒天培地に塗沫した。数日後に寒天培地に発生したコロニーを形質転換体として分離し、プラスミドを抽出した。抽出したプラスミドに目的の配列が挿入されていることを確認し、プラスミドpHA3040SP64(配列番号56)を取得した。
アルカリプロテアーゼKP43遺伝子配列(配列番号57)を含むDNA(5’末端にBamHIサイト、3’末端にXbaIサイトを有する)をBamHI及びXbaIにて同時消化し、同じくBamHI及びXbaIで同時消化したpHA3040SP64と混合してLigation Highを用いてライゲーション反応を行った。ライゲーション産物をエタノール沈殿にて精製したのち、これを用いてバチルス エスピーKSM−9865株(FERM P−18566)をエレクトロポレーション法にて形質転換し、スキムミルク含有アルカリLB寒天培地に塗沫した。数日後に寒天培地に出現したコロニーについて、スキムミルク溶解斑の有無からプロテアーゼ遺伝子が導入された形質転換体を選抜した。この形質転換体からプラスミドを抽出し、配列番号57の遺伝子が挿入されていることを確認してプラスミドpHA64TSBを取得した。
pHA64TSBを保持する形質転換体を大試験管中の5mL種母培地(LB培地:1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1%NaCl、15ppmテトラサイクリン)に植菌し、30℃で16時間振盪培養した。次いでフラスコ中の20mL主培地(2×L−マルトース培地:2%トリプトン、1%酵母エキス、1%NaCl、7.5%マルトース、7.5ppm硫酸マンガン4−5水和物、15ppmテトラサイクリン)に種母培養液を2.5%(v/v)植菌し、30℃で3日間振盪培養した。培養液を遠心分離した後、アルカリプロテアーゼKP43(配列番号58)を含む培養上清を取得した。
(2)残存活性の測定
実施例2で得られたセルラーゼについて、液体洗剤組成物中での残存活性を測定し、保存安定性を評価した。2mM p−nitrophenyl−D−cellotrioside(pNPG3、生化学工業)水溶液を133mMリン酸緩衝液(pH7.4)で10倍に希釈し、基質溶液とした。96穴マイクロプレートの各ウェルに150μLの液体洗剤組成物A(AATCC Standard Reference High Efficiency Detergent(American Association of Textile Chemists and Colorists)に(1)で調製したアルカリプロテアーゼKP43をタンパク濃度が0.15mg/mLとなるように添加したもの)を添加し、そこに実施例2で得られたセルラーゼを含む培養上清5μLを加え攪拌した。攪拌直後に混合液20μLを分取し、あらかじめ各ウェル150μLのイオン交換水を加えた96穴マイクロプレートに対して希釈、攪拌した。8.5倍希釈液となった同液50μLを、予め各ウェル50μLの基質溶液を加えた96穴マイクロプレートに添加し、反応を開始させた。30℃に温度設定したマイクロプレートリーダーVersaMax(Molecular Device)のチャンバー内にプレートを挿入し、420nmにおける吸光度変化をカイネティックモードで10分間測定して、セルラーゼ活性の初期活性値を得た。マイクロプレートリーダーでの計測値は、解析ソフトSoftmaxPro(Molecular Device)により測定結果として出力される吸光度変化速度(mOD/min)の値を暫定活性値(mOD/min)として使用した。液体洗剤組成物と培養上清が混合された96穴マイクロプレートは、PCR用シールで密封の上、40℃で保温した。保温開始から3日後、プレートを取り出し、初期活性値の測定と同様の方法で残存活性値を得た。残存暫定活性値(mOD/min)の初期暫定活性値(mOD/min)に対する割合を残存活性(%)とした。
実施例3で製造したセルラーゼについて、液体洗剤組成物A中での40℃、3日後の残存活性を表3及び図1に示した。なお図中の横軸の項目は変異体を示す。コントロールには親セルラーゼS237QSBを用いた。その結果、変異体はコントロールより高い残存活性を示し、親セルラーゼに対する保存安定性の向上が認められた。
Figure 2021069321

Claims (14)

  1. 配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有し、かつ以下:
    配列番号2のアミノ酸配列の247位に相当する位置のSer以外のアミノ酸残基;
    配列番号2のアミノ酸配列の248位に相当する位置のGlu以外のアミノ酸残基;
    配列番号2のアミノ酸配列の255位に相当する位置のGly以外のアミノ酸残基;
    配列番号2のアミノ酸配列の326位に相当する位置のLeu以外のアミノ酸残基;及び、
    配列番号2のアミノ酸配列の330位に相当する位置のAsn以外のアミノ酸残基、
    からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を有する、アミノ酸配列を含み、かつセルラーゼ活性を有する、ポリペプチド。
  2. 前記247位に相当する位置にArg、Lys又はProを有するか、
    前記248位に相当する位置にAsp又はGlyを有するか、
    前記255位に相当する位置にAla、Arg、Asp、Cys、Glu、Gln、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、Tyr又はValを有するか、
    前記326位に相当する位置にAla、Arg、Asp、Cys、Gln、His、Pro、Ser又はTrpを有するか、あるいは、
    前記330位に相当する位置にAla、Arg、Asp、Cys、Glu、Gln、Lys、Phe、Trp又はValを有する、
    請求項1記載のポリペプチド。
  3. 前記配列同一性が90%以上である、請求項1又は2記載のポリペプチド。
  4. 親ポリペプチドと比べてプロテアーゼ耐性が向上している、請求項1〜3のいずれか1項記載のポリペプチド。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
  6. 請求項5記載のポリヌクレオチドを含有するベクター。
  7. 請求項5記載のポリヌクレオチド又は請求項6記載のベクターを含有する形質転換体。
  8. バチルス属菌である、請求項7記載の形質転換体。
  9. 請求項7又は8記載の形質転換体を培養することを含む、セルラーゼ活性を有するポリペプチドの製造方法。
  10. 配列番号2の1位〜369位のアミノ酸配列又はこれと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドにおいて、配列番号2のアミノ酸配列の247位、248位、255位、326位及び330位に相当する位置のアミノ酸残基からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換することを含む、セルラーゼ活性を有する変異ポリペプチドの製造方法。
  11. 前記アミノ酸残基の置換が、
    前記247位に相当する位置のSerのArg、Lys又はProへの置換、
    前記248位に相当する位置のGluのAsp又はGlyへの置換、
    前記255位に相当する位置のGlyのAla、Arg、Asp、Cys、Glu、Gln、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、Tyr又はValへの置換、
    前記326位に相当する位置のLeuのAla、Arg、Asp、Cys、Gln、His、Pro、Ser又はTrpへの置換、あるいは、
    前記330位に相当する位置のAsnのAla、Arg、Asp、Cys、Glu、Gln、Lys、Phe、Trp又はValへの置換、
    である、請求項10記載の方法。
  12. 前記配列同一性が90%以上である、請求項10又は11記載の方法。
  13. 前記変異ポリペプチドが親ポリペプチドと比べてプロテアーゼ耐性が向上している、請求項10〜12のいずれか1項記載の方法。
  14. 請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドを含有する洗剤組成物。
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