JP5666816B2 - 変異アルカリセルラーゼ - Google Patents

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Description

本発明は、再汚染防止能が向上した変異アルカリセルラーゼ、及び再汚染防止能とプロテアーゼ耐性とが向上した変異アルカリセルラーゼに関する。
プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ等の加水分解酵素を洗浄補助剤として洗浄剤に配合することは古くから行われてきた。加水分解酵素の1つであるセルラーゼは、もともと中酸性領域で作用する酵素として知られ、通常アルカリ性の衣料用洗浄剤への配合には適さないとされていた。しかし、近年では好熱性又は好アルカリ性バチルス属細菌を始めとする複数の生物種からアルカリセルラーゼやその変異体等が得られており、アルカリ性衣料用洗剤にも配合されるようになっている(例えば特許文献1〜6)。例えば、特許文献1にはバチルス・エスピー(Bacillus sp.)KSM-S237株由来の耐熱性を有するアルカリセルラーゼが、特許文献2には最適pHをpH10.5付近に高めた変異アルカリセルラーゼが、特許文献3には生産性を高めた変異アルカリセルラーゼが、それぞれ開示されている。
しかしながら、セルラーゼは、共存するプロテアーゼによって分解され易い等の問題もあり、更なる改良が必要とされていた。
一方、衣料品等の効果的な洗浄には、被洗浄物から汚れ物質を十分離脱させることや酵素分解等により汚れ物質を迅速に除去することが重要であるが、更に、被洗浄物から一旦離脱させた汚れ物質の再付着を防止すること(再汚染防止)も大変重要である。特にすすなどの微小な汚れ物質は、洗浄液中に一旦拡散してから被洗浄物に再付着すると、それを除去することが大変困難であることが知られている。
そのため、例えば衣料用洗剤には、従来、様々な再汚染防止剤が配合されてきた。再汚染防止剤としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース等のセルロース系化合物、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等のノニオン性高分子、アミノ酸ポリマー等が使用されているが、更に高い効果を有する再汚染防止剤の開発が望まれていた。
特許文献4及び6には、一部のセルラーゼについて、再汚染防止作用を有することが記載されているが、セルラーゼの再汚染防止機構の詳細は不明であり、より高い再汚染防止能を有するセルラーゼを取得する方法についても、未だ報告されていない。
特許第3512981号明細書 特開2003−310270号公報 特開2004−140号公報 特表2004−536593号公報 特表2006−509850号公報 特開2002−265998号公報
本発明は、再汚染防止能が向上した変異アルカリセルラーゼ、及び再汚染防止能とプロテアーゼ耐性とが向上した変異アルカリセルラーゼを提供することに関する。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、バチルス・エスピーKSM-S237株由来のアルカリセルラーゼにおいて、所定の位置のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換することにより再汚染防止能が向上できること、及び一部の変異アルカリセルラーゼでは再汚染防止能とプロテアーゼ耐性とが向上できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[8]に係るものである。
[1] 配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるアルカリセルラーゼにおいて、配列番号2で示されるアミノ酸配列の58位に相当する位置のグルタミン残基が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列からなる変異アルカリセルラーゼ。
[2] グルタミン残基から他のアミノ酸残基への置換が、グルタミン残基からアルギニン又はグルタミン酸への置換である請求項1記載の変異アルカリセルラーゼ。
[3] 上記[1]及び[2]の変異アルカリセルラーゼをコードする遺伝子。
[4] 上記[3]の遺伝子を含有する組換えベクター。
[5] 上記[4]の組換えベクターを含む形質転換体。
[6] 微生物である、上記[5]の形質転換体。
[7] 上記[1] 及び[2]の変異アルカリセルラーゼを含有する洗浄剤組成物。
[8] 上記[3]の遺伝子から変異アルカリセルラーゼを発現させることを含む変異アルカリセルラーゼの製造方法。
[9] 配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるアルカリセルラーゼにおいて、配列番号2で示されるアミノ酸配列の58位に相当する位置のグルタミン残基を、アルギニン又はグルタミン酸に置換することを特徴とする、アルカリセルラーゼの再汚染防止能の向上又は再汚染防止能及びプロテアーゼ耐性の向上方法。
本発明によれば、高い再汚染防止効果を有する、及び高い再汚染防止効果と高いプロテアーゼ耐性とを有する、洗浄剤配合用酵素として有用なアルカリセルラーゼを提供できる。
図1は、各種プロテアーゼを添加した場合のセルラーゼの残存活性(S237_Q242S(QS)を100とした場合)を比較した図である。
本発明の変異アルカリセルラーゼは、配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるアルカリセルラーゼにおいて、配列番号2で示されるアミノ酸配列の58位に相当する位置のグルタミン残基を、他のアミノ酸に置換することにより、再汚染防止能を向上させた、又は再汚染防止能とプロテアーゼ耐性とを向上させたものである。より具体的には配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるアルカリセルラーゼにおいて、配列番号2で示されるアミノ酸配列の58位に相当する位置のグルタミン残基をグルタミン酸又はアルギニンに置換することにより、再汚染防止能を向上させた、又は再汚染防止能とプロテアーゼ耐性とを向上させたものである。
本明細書において、アミノ酸置換前のアルカリセルラーゼを「基準アルカリセルラーゼ」、そのアミノ酸配列を「基準アミノ酸配列」、そのアルカリセルラーゼをコードする遺伝子を「基準アルカリセルラーゼ遺伝子」と称する。
本発明において、配列番号2は、バチルス・エスピーKSM-S237株由来のアルカリセルラーゼのアミノ酸配列を示す。当該アミノ酸配列の1位〜30位;MMLRKKTKQLISSILILVLLLSLFPAALAA[アミノ酸1文字表記]は、N末端シグナル配列であることから、配列番号2は、当該アルカリセルラーゼの前駆体タンパク質のアミノ酸配列を示し、シグナル配列が除去されたアミノ酸配列が成熟タンパク質のアミノ酸配列を示すことになる。
従って、本発明の変異アルカリセルラーゼの基準アミノ酸配列としては、オープンリーディングフレーム(ORF)にコードされたアミノ酸配列であってもよいし、その配列からシグナル配列が除去されたアミノ酸配列であってもよい。
本発明の変異アルカリセルラーゼの基準アミノ酸配列としては、配列番号2で示されるバチルス・エスピーKSM-S237株由来のアルカリセルラーゼのアミノ酸配列の他に、配列番号2で示されるアミノ酸配列に対して、90%以上、更に好ましくは95%以上、なお好ましくは96%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列が包含される。
ここで、アミノ酸配列間の同一性とは、2つのアミノ酸配列をアラインメントしたときに両方の配列において同一のアミノ酸残基が存在する位置の数の全長アミノ酸残基数に対する割合(%)をいう。具体的には、リップマン−パーソン法(Lipman-Pearson法;Science, 227, 1435, (1985))によって計算され、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(Ver.5.1.1;ソフトウェア開発)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行なうことにより算出できる。
配列番号2で示されるアミノ酸配列に対して、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるS237セルラーゼ以外のバチルス属細菌の基準アルカリセルラーゼとしては、例えば、バチルス・エスピーDSM12648株由来アルカリセルラーゼ(配列番号4)[S237セルラーゼ(シグナル配列を含む)とのアミノ酸配列同一性は約98.2%]、バチルス・エスピー1139株由来アルカリセルラーゼ(配列番号6)[S237セルラーゼ(シグナル配列を含む)とのアミノ酸配列同一性は約91.3%]、バチルス・エスピーKSM-64株由来アルカリセルラーゼ(配列番号8)[S237セルラーゼ(シグナル配列を含む)とのアミノ酸配列同一性は91.6%]、バチルス・エスピー KSM-N131株由来(特開2001-231569号)のアルカリセルラーゼ(N131b)[S237セルラーゼ(シグナル配列を含む)とのアミノ酸同一性は97.1%]などの様々なバチルス菌株由来のアルカリセルラーゼが挙げられ、これらは、互いに高いアミノ酸配列同一性及び類似性を有している。
尚、配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる基準アルカリセルラーゼには、配列番号2、4、6及び8で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるものが包含される。そのような基準アミノ酸配列の一例としては、配列番号2で示されるアミノ酸配列の10位に相当する位置をグルタミン、アラニン、プロリン又はメチオニンに置換した変異アルカリセルラーゼ、16位に相当する位置をアスパラギン又はアルギニンに置換した変異アルカリセルラーゼ、22位に相当する位置をプロリンに置換した変異アルカリセルラーゼ、33位に相当する位置をヒスチジンに置換した変異アルカリセルラーゼ、39位に相当する位置をアラニン、スレオニン又はチロシンに置換した変異アルカリセルラーゼ、76位に相当する位置をヒスチジン、メチオニン、バリン、スレオニン又はアラニンに置換した変異アルカリセルラーゼ、109位に相当する位置をイソロイシン、ロイシン、セリン又はバリンに置換した変異アルカリセルラーゼ、242位に相当する位置をアラニン、フェニルアラニン、バリン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ロイシン、イソロイシン、チロシン、スレオニン、メチオニン又はグリシンに置換した変異アルカリセルラーゼ、263位に相当する位置をイソロイシン、ロイシン、プロリン又はバリンに置換した変異アルカリセルラーゼ、308位に相当する位置をアラニン、セリン、グリシン又はバリンに置換した変異アルカリセルラーゼ、462位に相当する位置をスレオニン、ロイシン、フェニルアラニン又はアルギニンに置換した変異アルカリセルラーゼ、466位に相当する位置をロイシン、アラニン又はセリンに置換した変異アルカリセルラーゼ、468位に相当する位置をアラニン、アスパラギン酸、グリシン又はリジンに置換した変異アルカリセルラーゼ、552位に相当する位置をメチオニンに置換した変異アルカリセルラーゼ、564位に相当する位置をバリン、スレオニン又はロイシンに置換した変異アルカリセルラーゼ、608位に相当する位置をイソロイシン又はアルギニンに置換した変異アルカリセルラーゼ、又は上記のアミノ酸残基の置換を1以上組み合わせた変異アルカリセルラーゼ等の特許文献2及び3記載の変異アルカリセルラーゼが挙げられる。
本発明では、上記のような基準アミノ酸配列中、配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるアルカリセルラーゼにおいて、配列番号2で示されるアミノ酸配列の58位に相当する位置のグルタミン残基が、他のアミノ酸に置換される。
より具体的には配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるアルカリセルラーゼにおいて、配列番号2で示されるアミノ酸配列の58位に相当する位置のグルタミン残基が、グルタミン酸又はアルギニンに置換される。
上記「配列番号2で示されるアミノ酸配列の58位に相当する位置」という表現は、配列番号2で示されるアミノ酸配列については、その配列の1番目のアミノ酸残基から数えて58番目に出現するアミノ酸残基を意味する。一方、配列番号2以外のアルカリセルラーゼのアミノ酸配列については、配列番号2で示されるアルカリセルラーゼのアミノ酸配列を参照配列として、当該アルカリセルラーゼのアミノ酸配列中の所定のアミノ酸残基の位置を指定するために使用される。すなわち、対象となるアミノ酸配列(配列“Z”とする)を配列番号2のアミノ酸配列とアラインメントしたときに、配列番号2のアミノ酸配列の58番目のアミノ酸残基に対してアラインされる(すなわち、アラインメントにおいて同じ縦列に整列される)、アミノ酸配列“Z”中のアミノ酸残基を意味する。なお配列番号2のアミノ酸配列と他のアミノ酸配列とのアラインメントは、手作業で行うこともできるが、例えばClustal W マルチプルアラインメントプログラム(Thompson, J.D. et al, (1994) Nucleic Acids Res. 22, p.4673-4680)をデフォルト設定で用いることにより作成することができる。Clustal Wは、例えば、欧州バイオインフォマティクス研究所(European Bioinformatics Institute : EBI、http://www.ebi.ac.uk/index.html)や、国立遺伝学研究所が運営する日本DNAデータバンク(DDBJ、http://www.ddbj.nig.ac.jp/Welcome-j.html)のウェブサイトから利用することができる。
当業者であれば、得られたアラインメントを、必要に応じて最適なアラインメントとなるように更に微調整することできる。そのような最適アラインメントは、アミノ酸配列の類似性や挿入されるギャップの頻度等を考慮して決定するのが好ましい。ここでアミノ酸配列の類似性とは、2つのアミノ酸配列をアラインメントしたときにその両方の配列に同一又は類似のアミノ酸残基が存在する位置の数の全長アミノ酸残基数に対する割合(%)をいう。類似のアミノ酸残基とは、タンパク質を構成する20種のアミノ酸のうち、極性や電荷の点で互いに類似した性質を有しており、いわゆる保存的置換を生じるようなアミノ酸残基を意味する。そのような類似のアミノ酸残基からなるグループは当業者にはよく知られており、例えば、アルギニン及びリジン;グルタミン酸及びアスパラギン酸;セリン及びトレオニン;グルタミン及びアスパラギン;バリン、ロイシン及びイソロイシン等がそれぞれ挙げられるが、これらに限定されない。
上記のバチルス・エスピーDSM12648株由来アルカリセルラーゼ(配列番号4)、バチルス・エスピー1139株由来アルカリセルラーゼ(配列番号6)、バチルス・エスピーKSM-64株由来アルカリセルラーゼ(配列番号8)について、上述の方法によりアライメントを行うと配列番号4(DSM12648株由来)については29位のグルタミン残基、配列番号6(1139株由来)については58位のグルタミン残基、配列番号8(KSM-64株由来)については57位のグルタミン残基が「配列番号2で示されるアミノ酸配列の58位に相当する位置」のアミノ酸残基となる。
本発明の変異アルカリセルラーゼは、当技術分野で公知の各種の変異導入技術を用して製造することができる。例えば、本発明の変異アルカリセルラーゼは、その基準アミノ酸配列をコードするアルカリセルラーゼ遺伝子(基準アルカリセルラーゼ遺伝子)内の置換対象のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列を、置換後のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列に変異させ、更にその変異遺伝子から変異アルカリセルラーゼを発現させることにより、製造することができる。
基準アルカリセルラーゼ遺伝子への目的の変異導入は、基本的には基準アルカリセルラーゼ遺伝子を鋳型DNAとして用いるPCR増幅や各種DNAポリメラーゼによる複製反応に基づき、当業者には周知の様々な部位特異的変異導入法を用いて行うことができる。部位特異的変異導入法は、例えば、インバースPCR法やアニーリング法など(村松ら編、「改訂第4版 新 遺伝子工学ハンドブック」、羊土社、p.82-88)の任意の手法により行うことができる。必要に応じてStratagene社のQuickChange II Site-Directed Mutagenesis Kitや、QuickChange Multi Site-Directed Mutagenesis Kit等の各種の市販の部位特異的変異導入用キットを使用することもできる。本発明ではまた、導入すべきヌクレオチド変異を含む相補的な2つの変異プライマーを別々に用いて変異部位の上流側及び下流側をそれぞれ増幅したDNA断片を、SOE(splicing by overlap extension)-PCR(Horton R.M. et al., Gene (1989) 77(1), p.61-68)により1つに連結する方法を用いることもできる。このSOE-PCR法を用いた変異導入手順については、後述の実施例にも詳述している。
基準アルカリセルラーゼ遺伝子を含む鋳型DNAは、アルカリセルラーゼを産生する生物から、常法により、ゲノムDNAを抽出するか、又はRNAを抽出し逆転写によりcDNAを合成することによって調製することができる。アルカリセルラーゼを産生する生物は、枯草菌(Bacillus subtilis)等のバチルス属細菌、クロストリジウム属細菌、アシドサーマス属細菌を含む細菌の他、植物や動物でも報告されているが、枯草菌(Bacillus subtilis)等のバチルス属細菌についての研究が最も進んでおり、それら生物は当業者であれば容易に入手することができる。例えば、バチルス・エスピーのKSM-S237株(受託番号FERM BP-7875)、KSM-64株(受託番号FERM BP-2886)、KSM-635株(受託番号FERM BP-1485)は、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、それぞれ併記した受託番号に基づいて寄託されている。
これらバチルス属菌株からのゲノムDNAの調製は、例えば、Pitcher et al., Lett. Appl. Microbiol., 1989, 8: p.151-156に記載の方法などを用いて行うことができる。基準アルカリセルラーゼ遺伝子を含む鋳型DNAは、調製したcDNA又はゲノムDNAから切り出した基準アルカリセルラーゼ遺伝子を含むDNA断片を任意のベクター中に挿入した形で調製してもよい。なお、バチルス・エスピーKSM-S237由来アルカリセルラーゼ(配列番号2)、DSM12648株由来アルカリセルラーゼ(配列番号4)、1139株由来アルカリセルラーゼ(配列番号6)、KSM-64株由来アルカリセルラーゼ(配列番号8)をコードする塩基配列を含む既報のDNA配列(GenBank登録配列)を、それぞれ配列番号1(GenBankアクセッション番号AB018420)、3、5(GenBankアクセッション番号D00066)及び7(GenBankアクセッション番号M84963)に示した。
基準アルカリセルラーゼ遺伝子への部位特異的変異導入は、最も一般的には、導入すべきヌクレオチド変異を含む変異プライマーを用いて行うことができる。そのような変異プライマーは、基準アルカリセルラーゼ遺伝子内の置換対象のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列を含む領域にアニーリングし、かつその置換対象のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(コドン)に代えて置換後のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(コドン)を有する塩基配列を含むように設計すればよい。置換対象及び置換後のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(コドン)は、当業者であれば通常の教科書等に基づいて適宜認識し選択することができる。
例えば、S237セルラーゼ(配列番号2)の58位のグルタミン残基をアルギン残基に置換する場合には、そのグルタミンに対応するコドンCAA(配列番号1の744位〜746位)をアルギニンコドンGAAに変更した配列を含むプライマー(Q58R-FW;配列番号11)と、その相補配列を有するプライマー(Q58R-RV;配列番号12)を、変異プライマーとして使用することができる。本発明で用いるプライマーは、ホスホロアミダイト法(Nucleic Acids Research, 17, 7059-7071, 1989)等の周知のオリゴヌクレオチド合成法により作製することができる。そのようなプライマー合成は、例えば市販のオリゴヌクレオチド合成装置(ABI社製など)を用いて作製することもできる。変異プライマーを含むプライマーセットを使用し、基準アルカリセルラーゼ遺伝子を鋳型DNAとして上記のような部位特異的変異導入を行うことにより、目的の変異が導入された変異アルカリセルラーゼ遺伝子を得ることができる。本発明はこのようにして得られる変異アルカリセルラーゼ遺伝子にも関する。なお本発明において「変異アルカリセルラーゼ遺伝子」とは、変異アルカリセルラーゼのアミノ酸配列をコードする任意の核酸断片(DNA、mRNA、及び人工核酸等を含む)を意味する。本発明の「遺伝子」は、オープンリーディングフレームに加えて非翻訳領域(UTR)などの他の塩基配列を含んでもよい。
得られた変異アルカリセルラーゼ遺伝子を常法により任意のベクター中に挿入し連結することにより、組換えベクターを作製することができる。本発明で用いるベクターは特に限定されず、プラスミド、ファージ、ファージミド、コスミド、ウイルス、YACベクター、シャトルベクター等の任意のベクターであってよい。そのようなベクターとしては、限定するものではないが、細菌内、とりわけバチルス属細菌内で増幅可能なベクターがより好ましく、バチルス属細菌内で導入遺伝子の発現を誘導可能な発現ベクターであることが更に好ましい。中でも、バチルス属細菌と他の生物のいずれでも複製可能なベクターであるシャトルベクターは、変異アルカリセルラーゼを組換え生産する上で特に好適に用いることができる。好ましいベクターの例としては、限定するものではないが、pHY300PLK(大腸菌と枯草菌の両方を形質転換可能な発現ベクター;Ishikawa, H. and Shibahara, H., Jpn. J. Genet, (1985) 60, p.235-243)、pAC3(Moriyama, H. et al., Nucleic Acids Res. (1988) 16, p.8732)等のシャトルベクター、pUB110(Gryczan, T. J. et al., J. Bacteriol. (1978) 134, p.318-329)、pTA10607(Bron, S. et al., Plasmid, 18 (1987) p.8-15)等のバチルス属細菌の形質転換に利用可能なプラスミド、分泌シグナルを組換えタンパク質に付与可能な分泌ベクター(山根他,「枯草菌分泌ベクターによる融合タンパク質」 澱粉科学, 34. (1987), p.163-170)等が挙げられる。また大腸菌由来のプラスミド(例えばpET22b(+)、pBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19、pBluescript等)を用いることもできる。
変異アルカリセルラーゼを組換え生産する目的では、ベクターは発現ベクターであることが好ましい。発現ベクターは、転写プロモーター、ターミネーター、リボソーム結合部位などの宿主生物における発現に必須な各種エレメントの他、選択マーカー遺伝子やポリリンカー、エンハンサーなどのシスエレメント、ポリA付加シグナル、リボソーム結合配列(SD配列)等の有用な配列を必要に応じて含みうる。
変異アルカリセルラーゼ遺伝子を含む組換えベクターを用いて、形質転換体を作製することができる。本発明では、本発明の変異アルカリセルラーゼ遺伝子を含む組換えベクター(具体的には組換え発現ベクター)を宿主細胞に導入することにより形質転換体(形質転換細胞)を作製し、それを組換えタンパク質の発現が誘導される条件下で培養することにより、変異アルカリセルラーゼを産生させることができる。本発明は、そのようにして作製された形質転換体、及びその形質転換体を用いた変異アルカリセルラーゼの製造方法にも関する。組換えベクターを導入する宿主細胞としては、大腸菌や枯草菌等の細菌、酵母細胞を始めとする微生物の他、昆虫細胞、動物細胞(例えば、哺乳動物細胞)、植物細胞等の任意の細胞を使用することができる。本発明においては、特に、枯草菌等のバチルス属細菌を使用することが好ましい。
形質転換には、例えば、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、パーテイクルガン法、PEG法等の周知の形質転換技術を適用することができる。例えばバチルス属細菌に適用可能な形質転換法としては、コンピテントセル形質転換法(Bott. K.F. and Wilson, G.A., J. Bacteriol. (1967) 93, 1925)、エレクトロポレーション法(Brigidi. P. et al., FEMS Microbiol. Lett. (1990) 55, 135)、プロトプラスト形質転換法(Chang, S. and Cohen, S.N., Mol. Gen. Genet., (1979) 168, p.111-115)、Tris-PEG法(Takahashi W. et al., J. Bacteriol. (1983) 156, p.1130-1134)などが挙げられる。
組換えタンパク質生産のための上記形質転換体の培養は、当業者には一般的な方法に従って行うことができる。例えば、大腸菌や酵母細胞等の微生物宿主に基づく形質転換体を培養する培地としては、宿主微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。培地には、薬剤選択マーカーの種類に対応してアンピシリンやテトラサイクリン等を添加してもよい。プロモーターとして誘導性のものを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、Lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した細菌等を培養するときにはイソプロピル-1-チオ-β-D-ガラクトシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドール酢酸(IAA)等を培地に添加することができる。培養条件は特に限定されないが、好ましくは形質転換に用いる宿主生物に適した条件下で行われる。例えば、組換えタンパク質を生産するための枯草菌形質転換体の培養には、例えば、LB培地、2xYT培地、2xL-マルトース培地、又はCSL発酵培地等を用いることができる。
本発明の変異アルカリセルラーゼは、無細胞翻訳系を使用して変異アルカリセルラーゼ遺伝子又はその転写産物から発現させてもよい。「無細胞翻訳系」とは、宿主となる細胞を機械的に破壊して得た懸濁液にタンパク質の翻訳に必要なアミノ酸等の試薬を加えて、in vitro転写翻訳系又はin vitro翻訳系を構成したものである。
発現された変異アルカリセルラーゼは、タンパク質精製に用いられる一般的な方法、例えば遠心分離、硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、培養液、細胞破砕液、又は無細胞翻訳系から取得することができる。しかし遠心分離や限外濾過型フィルター等を用いて分離又は濃縮したその培養上清や溶菌液上清等の溶液は、粗酵素液としてそのまま使用することもできる。発現された変異アルカリセルラーゼが細胞内から分泌されない場合には、その細胞を破砕してからタンパク質の分離精製を行えばよい。
以上のようにして製造した変異アルカリセルラーゼについては、後述の再汚染防止能評価法により、再汚染防止能の向上を確認することができる。
なお本発明において用いるmRNAの調製、cDNAの作製、PCR、RT-PCR、ライブラリーの作製、ベクター中へのライゲーション、細胞の形質転換、DNAの塩基配列の決定、核酸化学合成、タンパク質のN末端側のアミノ酸配列決定、突然変異誘発、タンパク質の抽出等の実験は、通常の実験書に記載の方法によって行うことができる。そのような実験書としては、例えば、SambrookらのMolecular Cloning, A laboratory manual, (2001) 3rd Ed., Sambrook, J. & Russell, DW. Cold Spring Harbor Laboratory Pressを挙げることができる。特に、枯草菌の遺伝子組換え実験については例えば、吉川博文著“7.2 枯草菌系”「続生化学実験講座1.遺伝子研究法II」, (1986) 東京化学同人社(東京), p.150-169等の枯草菌の遺伝子操作に関する一般的な実験書を参照することができる。
斯くして得られる本発明の変異アルカリセルラーゼにおいては、優れた耐熱性を有するという基準アルカリセルラーゼの性質を保持すると共に、これと比較してプロテアーゼ耐性及び再汚染防止能が向上する。従って、本発明のアルカリプロテアーゼは、各種洗剤組成物配合用酵素として有用である。
本発明においてアルカリセルラーゼ(変異アルカリセルラーゼ又は基準アルカリセルラーゼ)の「再汚染防止能」とは、水溶液中に添加されたアルカリセルラーゼが、水溶液中に分散した疎水性(親油性)の汚れ物質の、水溶液中に存在する布などの基質への再付着を阻止する能力を意味する。一方、「再汚染防止効果」とは、アルカリセルラーゼ(変異アルカリセルラーゼ又は基準アルカリセルラーゼ)存在下において、水溶液中に分散した疎水性(親油性)の汚れ物質の、水溶液中の布などの基質への再付着が阻止されること、及びその阻止レベルを意味する。
再汚染防止能の評価は、好ましくは、洗剤組成物を溶かした使用水に疎水性すす汚れのモデルとしてカーボンブラックを加えて分散させた分散液に、上記で製造した変異アルカリセルラーゼを添加することにより調製した洗浄液を用いて木綿白布を洗浄し、洗浄後の白布の550nmでの反射率を測定して未洗浄の木綿白布の同反射率と比較することにより、行うことができる。再汚染防止能評価法の手順の詳細は後述の実施例に記載されている。なお、本発明の再汚染防止能評価で用いる使用水は、脱イオン水に対してCaCl2とMgCl2・6H2 Oを適宜溶解させることにより調製することができる。
再汚染防止能評価では、各試験系で得られた再汚染防止率を、洗浄前及び洗浄後の木綿白布の反射率に基づき次式により算出することができる。
(数1)
再汚染防止率(%)
=[(試験後の木綿の白布の反射率)/(試験前の木綿の白布の反射率)] × 100
この再汚染防止率が100%に近いほど、カーボンブラックによる再汚染量が少ないことを示す。
更に、変異アルカリセルラーゼを添加した洗浄液(酵素添加群)及び添加しない洗浄液(酵素無添加群)を用いた試験系について算出した再汚染防止率に基づき、変異アルカリセルラーゼ添加による再汚染防止促進度(%)を次式に基づいて算出することができる。
(数2)
酵素添加による再汚染防止促進度(%)
=[(酵素添加群の再汚染防止率)−(酵素無添加群の再汚染防止率)]/[100−(酵素無添加群の再汚染防止率)] × 100
この再汚染防止促進度(%)が上昇するほど、変異アルカリセルラーゼ添加により再汚染防止効果が大きく改善されることを示す。
また、個々の変異アルカリセルラーゼにおいて、再汚染防止能向上度(%)を次式によって算出した。なお次式中の「変異酵素」は、変異アルカリセルラーゼであり、対照酵素とは、基準アルカリセルラーゼ、すなわち野性型アルカリセルラーゼ又は変異導入前のアルカリセルラーゼである。
(数3)
変異アルカリセルラーゼにおける再汚染防止能向上度(%)
=[(変異酵素添加群の再汚染防止率)−(対照酵素添加群の再汚染防止率)]
/[100−(対照酵素添加群の再汚染防止率)] × 100
この再汚染防止能向上度(%)が上昇するほど、その変異アルカリセルラーゼの再汚染防止能が変異導入前と比較して大きく向上したことを示す。
本発明の変異アルカリセルラーゼは、例えば1〜25%、通常は2〜15%、より一般的には3〜12.5%の再汚染防止能向上度(%)を示しうる。
また、本発明において、「プロテアーゼ耐性」とは、各種プロテアーゼ、特にアルカリプロテアーゼを配合した洗浄剤組成物中におけるセルラーゼの残存活性によって評価される、セルラーゼのプロテアーゼに対する安定性をいう。
具体的には、例えば、対象のセルラーゼを、アルカリプロテアーゼを添加した洗浄剤組成物中で40℃、24時間保存した場合において算出される当該セルラーゼの残存活性(次式参照)が挙げられる。
(数4)
セルラーゼ残存活性(%)
=(保存24時間後のセルラーゼ活性/調製直後のセルラーゼ活性)×100
本発明の変異アルカリセルラーゼは、上記セルラーゼ残存活性(%)が、例えば20〜75%、通常は50〜70%を示し、基準アルカリセルラーゼに比べて、15〜35%向上する。
従って、本発明の変異アルカリセルラーゼは、各種プロテアーゼの共存下で使用することができる。
ここで、プロテアーゼとしては、例えば市販のアルカラーゼ、エスペラーゼ、サビナーゼ、エバラーゼ、カンナーゼ(登録商標;ノボザイムズ社)、プロペラーゼ、プラフェクト(登録商標;ジェネンコア社)、KAP(花王)、等が挙げられる。
本発明の洗浄剤組成物には公知の洗浄剤成分、例えば、界面活性剤、二価金属イオン捕捉剤、アルカリ剤、再汚染防止剤、漂白剤、蛍光剤等を配合することができる。
界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び陽イオン性界面活性剤等の任意の界面活性剤を1種で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。より好ましい界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤である。
陰イオン性界面活性剤としては、炭素数10〜18のアルコールの硫酸エステル塩、炭素数8〜20のアルコールのアルコキシル化物の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、パラフィンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩又は脂肪酸塩が好ましい。例えば、アルキル鎖の炭素数が10〜14、より好ましくは12〜14の、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩及びアルキル硫酸塩は本発明における陰イオン性界面活性剤として好適に使用できる。これらの塩の対イオンとしては、アルカリ金属塩やアミン類が好ましく、特にナトリウム、カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンが好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキル(炭素数8〜20)エーテル、アルキルポリグリコシド、ポリオキシアルキレンアルキル(炭素数8〜20)フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸(炭素数8〜22)エステル、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸(炭素数8〜22)エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーが好ましい。例えば、ポリオキシエチレン(EO平均付加モル数6)アルキル(炭素数12〜14)エーテルは、本発明における非イオン性界面活性剤として好適に使用できる。
本発明の洗浄剤組成物中の界面活性剤の合計量は、当業者であれば適宜設定することができるが、洗浄力及び溶解性の点からは、洗浄剤組成物の質量に対して10〜60質量%が好ましく、15〜50質量%がより好ましく、20〜45質量%が更に好ましい。そのうち陰イオン性界面活性剤の含有量は洗浄剤組成物の質量に対して1〜60質量%が好ましく、1〜50質量%がより好ましく、3〜40質量%が特に好ましい。また非イオン性界面活性剤の含有量は洗浄剤組成物の質量に対して1〜45質量%が好ましく、1〜35質量%がより好ましく、4〜25質量%が特に好ましい。陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤は単独で用いることもできるが、好ましくは、混合して用いるのが良い。また、両性界面活性剤や陽イオン性界面活性剤を目的に合わせ併用することもできる。
本発明の洗浄剤組成物は、ビルダーをさらに含んでもよい。ビルダーとは、それ自身に洗浄力は無いか又はごく弱い洗浄力しか有しないにもかかわらず、界面活性剤と共に配合されるとその洗剤能力を著しく向上させることができる化合物のことである。ビルダーの作用としては、例えば、多価金属陽イオン捕捉作用、汚れ分散作用、若しくはアルカリ緩衝作用、又はそれらの2種以上の組み合わせなどが挙げられる。かかるビルダーには、水溶性無機化合物、水不溶性無機化合物、有機化合物等がある。水溶性無機化合物のビルダーとしては、リン酸塩(トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、メタリン酸塩、リン酸三ナトリウム等)、ケイ酸塩、炭酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩等が挙げられる。中でも上記3種の作用を全て有する点でリン酸塩が好ましい。水不溶性無機化合物のビルダーとしては、アルミノケイ酸塩(A型ゼオライト、P型ゼオライト、X型ゼオライト、非晶質アルミノ珪酸塩等)、結晶性珪酸塩等が挙げられる。有機化合物のビルダーとしては、カルボン酸塩(アミノカルボン酸塩、ヒドロキシアミノカルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、シクロカルボン酸塩、マレイン酸誘導体、シュウ酸塩等)、有機カルボン酸(塩)ポリマー(アクリル酸ポリマー及びコポリマー、多価カルボン酸(例えばマレイン酸等)ポリマー及びコポリマー、グリオキシル酸ポリマー、多糖類及びこれらの塩等)等が挙げられる。中でも有機カルボン酸(塩)ポリマーが好ましい。ビルダーの塩において、対イオンとしては、アルカリ金属塩、アミン類が好ましく、特にナトリウム、カリウム、モノエタノールアミン、又はジエタノールアミンが好ましい。本発明の洗浄剤組成物に含めるビルダーは、上記水溶性無機化合物を含むことが好ましく、上記水溶性無機化合物及び有機化合物の組み合わせであることがより好ましく、水溶性無機化合物、有機化合物及び水不溶性無機化合物の組み合わせであることが更に好ましい。
本発明の洗浄剤組成物中のビルダーの合計量は、当業者であれば適宜設定することができるが、洗浄剤組成物の質量に対して20〜80質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましく、35〜60質量%が更に好ましい。そのうち水溶性無機化合物ビルダーは、洗浄剤組成物の質量に対して10〜50質量%が好ましく、15〜45質量%がより好ましく、20〜40質量%が更に好ましい。そのうち水不溶性無機化合物ビルダーは洗浄剤組成物の質量に対して5〜50質量%が好ましく、10〜45質量%がより好ましく、15〜40質量%が更に好ましい。そのうち有機化合物ビルダーは洗浄剤組成物の質量に対して0.1〜20質量%が好ましく、0.3〜15質量%がより好ましく、0.5〜10質量%が更に好ましい。
本発明の洗浄剤組成物の具体的な好ましい組成として、以下の組成A〜Eなどが挙げられる。
1)組成A:直鎖アルキル(炭素数12〜14)ベンゼンスルホン酸塩ナトリウム20重量%、非イオン性界面活性剤(炭素数12〜16、平均エチレンオキシド付加モル数6.0のポリオキシエチレンアルキルエーテル)4重量%、炭酸ナトリウム30重量%、硫酸ナトリウム10重量%、ゼオライト(4A型ゼオライト(東ソー(株)製))30重量%、アクリル酸マレイン酸コポリマー2重量%、結晶性シリケート(粉末SKS-6(ヘキストトクヤマ(株)製))4重量%
2)組成B:直鎖アルキル(炭素数12〜14)ベンゼンスルホン酸塩ナトリウム24重量%、直鎖アルキル(炭素数10〜13)硫酸エステルナトリウム5%、脂肪酸(炭素数14〜18)ナトリウム塩6%、非イオン性界面活性剤(炭素数12〜16、平均エチレンオキシド付加モル数6.0のポリオキシエチレンアルキルエーテル)7重量%、トリポリリン酸ナトリウム12%、炭酸ナトリウム12重量%、硫酸ナトリウム6重量%、ゼオライト(4A型ゼオライト(東ソー(株)製))14重量%、ポリアクリル酸ナトリウム(平均分子量10000)6重量%、結晶性シリケート(粉末SKS-6(ヘキストトクヤマ(株)製))8重量%
3)組成C:直鎖アルキル(炭素数12〜14)ベンゼンスルホン酸塩ナトリウム12重量%、非イオン性界面活性剤(炭素数12〜16、平均エチレンオキシド付加モル数6.0のポリオキシエチレンアルキルエーテル)11重量%、炭酸ナトリウム28重量%、硫酸ナトリウム11重量%、ゼオライト(4A型ゼオライト(東ソー(株)製))28重量%、ポリアクリル酸ナトリウム(平均分子量10000)8重量%、結晶性シリケート(粉末SKS-6(ヘキストトクヤマ(株)製))2重量%
4)組成D:直鎖アルキル(炭素数12〜14)ベンゼンスルホン酸塩ナトリウム14重量%、脂肪酸(炭素数14〜18)ナトリウム塩2%、非イオン性界面活性剤(炭素数12〜16、平均エチレンオキシド付加モル数6.0のポリオキシエチレンアルキルエーテル)10重量%、トリポリリン酸ナトリウム23%、炭酸ナトリウム29重量%、硫酸ナトリウム6重量%、ゼオライト(4A型ゼオライト(東ソー(株)製))11重量%、ポリアクリル酸ナトリウム(平均分子量10000)3重量%、結晶性シリケート(粉末SKS-6(ヘキストトクヤマ(株)製))2重量%
5)組成E:非イオン性界面活性剤(炭素数12〜16、平均エチレンオキシド付加モル数12.0のポリオキシエチレンアルキルエーテル)20重量%、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド(アルキル基炭素数8〜18)1重量%、ソフタノール70H(日本触媒性)20重量%、アクリル酸マレイン酸コポリマー1.5重量%、モノエタノールアミン1.5重量%、クエン酸1.15重量%、ブチルジグリコール5重量%、エタノール2重量%、亜硫酸ナトリウム0.2重量%、水47.65重量%
本発明の洗浄剤組成物は、水、pH調整剤、緩衝剤、分散剤、防腐剤、酸化防止剤、賦形剤、蛍光染料等の染料、消臭剤、防臭剤、香料、柔軟剤、植物エキス等の他の成分をさらに含んでいてもよい。本発明の洗浄剤組成物は、粉末、顆粒、圧縮成型錠剤、液状等の任意の形態であってよい。本発明の洗浄剤組成物は、携帯性や簡便性の点で、一回の使用量を分包包装しても良く、その場合、包装材料が水溶性であることが好ましい。
本発明の洗浄剤組成物は、限定するものではないが、好ましくは衣料用、又は布製品(シーツ、カーテン、カーペット、壁クロス等)のものである。本発明の洗浄剤組成物は、高い再汚染防止能を有する変異アルカリセルラーゼを含有することから、良好な再汚染防止効果を発揮することができる。
洗浄剤組成物中への本発明変異アルカリセルラーゼの配合量は、アルカリセルラーゼが活性を示す量であれば特に制限されないが、洗浄剤組成物1kg当たり0.1〜5000Uが配合できるが、経済性等を考慮し、500U以下が好ましい。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
なお、下記において共通に用いた実験手順及び試薬等を最初に記載する。
1) DNA断片の増幅
DNA断片の増幅は、GeneAmp PCRシステム(アプライドバイオシステムズ)を使用し、Pyrobest DNAポリメラーゼ(タカラバイオ)と付属の試薬類を用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により行った。PCRの反応液組成は、適宜希釈した鋳型DNAを1μL、センスプライマー及びアンチセンスプライマーを各々20pmol、及びPyrobest DNAポリメラーゼを2.5U混合し、水を加えて反応液総量を50μLに調整した。PCR反応は、98℃で10秒間、55℃で30秒間及び72℃で1〜5分間(目的増幅産物に応じて調整したが、目安は1kb当たり1分間)の3段階の温度変化を30サイクル繰り返した後、72℃で5分間反応させる条件で行った。
後述のDNA断片増幅に使用したプライマーを表1に示す。
更に、実施例3〜5においてS237セルラーゼ又は変異S237セルラーゼに目的のアミノ酸変異を導入するために用いた上流側領域増幅用及び下流側領域増幅用のプライマーセットを表に示す(詳細は後述の実施例を参照)。
2) 枯草菌への遺伝子導入
S237セルラーゼ又は変異S237セルラーゼをコードする遺伝子の枯草菌への導入は、コンピテントセル形質転換法(J. Bacteriol. 93, 1925 (1967))、プロトプラスト形質転換法(Mol. Gen. Genet. 168, 111 (1979))のいずれかによって行った。なお、形質転換には、エレクトロポレーション法(FEMS Microbiol. Lett. 55, 135 (1990))を用いてもよい。
コンピテントセル形質転換法では、まず、枯草菌(Bacillus subtilis Marburg No.168株(Nature, 390, (1997) p.249))をSPI培地(0.20% 硫酸アンモニウム、1.40% リン酸水素二カリウム、0.60% リン酸二水素カリウム、0.10% クエン酸三ナトリウム二水和物、0.50% グルコース、0.02% カザミノ酸 (Difco)、5mM 硫酸マグネシウム、0.25μM 塩化マンガン、50μg/mL トリプトファン)において37℃で、生育度(OD600)の値が1程度になるまで振盪培養した。振盪培養後、培養液の一部を9倍量のSPII培地(0.20% 硫酸アンモニウム、1.40% リン酸水素二カリウム、0.60% リン酸二水素カリウム、0.10% クエン酸三ナトリウム二水和物、0.50% グルコース、0.01% カザミノ酸 (Difco)、5mM 硫酸マグネシウム、0.40μM 塩化マンガン、5μg/mL トリプトファン)に接種し、更に生育度(OD600)の値が0.4程度になるまで振盪培養することにより、枯草菌細胞をコンピテントセルとして調製した。次いで調製したコンピテントセル懸濁液(SPII培地におけるコンピテントセル培養物)100μLに、S237セルラーゼ又は変異S237セルラーゼをコードする遺伝子を含むプラスミドベクター含有溶液2μLを添加し、37℃で1時間振盪培養後、その全量を、適切な選択薬剤を含むLB寒天培地(1% トリプトン、0.5% 酵母エキス、1% NaCl、1.5% 寒天)上に塗沫した。37℃における静置培養の後、生育したコロニーを形質転換体として分離した。
プロトプラスト形質転換法では、まず、枯草菌株(Bacillus subtilis Marburg No.168株(Nature, 390, (1997) p.249))を、50mLのLB培地(1% トリプトン、0.5% 酵母エキス、1% NaCl)中で37℃にて約2時間振盪培養し、600nmにおける吸光度が0.4となった時点で、室温で遠心分離(7000rpm、15分間)により菌体を集めた。集めた菌体を5mLのSMMP[0.5M シュークロース、20mM マレイン酸二ナトリウム、20mM 塩化マグネシウム6水塩、35%(w/v)Antibiotic Medium 3(Difco)]に懸濁後、SMMP溶液に溶解した500μLのリゾチーム溶液(30mg/mL)を加え、37℃で1時間保温して菌体をプロトプラスト化した。保温終了後、室温で遠心分離(2800rpm、15分間)によりプロトプラストを集め、5mLのSMMPに懸濁しプロトプラスト溶液を調製した。0.5mLのプロトプラスト溶液に、10μLのプラスミド溶液(S237セルラーゼ又はS237セルラーゼ変異体をコードする遺伝子を含むプラスミドベクターを含む)と1.5mLの40%(w/v)ポリエチレングリコール(PEG8000、Sigma)を加え、緩やかに攪拌して室温で2分間放置した後、直ちに5mLのSMMP溶液を混和し、室温で遠心分離(2800rpm、15分間)によりプロトプラストを集め、1mLのSMMP溶液に再懸濁した。プロトプラスト懸濁液を、37℃で90分間振盪(120rpm)した後、テトラサイクリン(15μg/mL、Sigma)を含むDM3再生寒天培地[0.8%(w/v)寒天(和光純薬)、0.5% コハク酸2ナトリウム6水塩、0.5% カザミノ酸テクニカル(Difco)、0.5% 酵母エキス、0.35% リン酸1カリウム、0.15% リン酸2カリウム、0.5% グルコース、0.4% 塩化マグネシウム6水塩、0.01% 牛血清アルブミン(Sigma)、0.5% カルボキメチルセルロース、0.005% トリパンブルー(Merck)及びアミノ酸混液(トリプトファン、ロイシン、メチオニン各10μg/mL)]上に塗布し、30℃で72時間培養して、生育したコロニーを形質転換体として分離した。
後述の実施例での組換えタンパク質生産のための形質転換体の培養には、種培養培地としてLB培地(1% トリプトン、0.5% 酵母エキス、1% NaCl)を、主培養培地として2xL-マルトース培地(2% トリプトン、1% 酵母エキス、1% NaCl、7.5% マルトース、7.5ppm硫酸マンガン4-5水和物)を用いた。
3) 洗浄剤組成物の調製
再汚染防止能の評価には、洗浄剤組成物として上記好ましい組成Cの洗浄剤を、酵素安定性試験の評価には、組成Eの洗浄剤を用いた。
4) 再汚染防止能評価
再汚染防止能の評価は、JIS K3362:1998記載の洗浄力評価方法に基づいて以下のように行った。洗剤組成物C 0.33gを使用水(4°DHの場合はCaCl2:55.42mg/L、MgCl2・6H2O:43.51mg/L、12°DHの場合はCaCl2:166.26mg/L、MgCl2・6H2O:130.53mg/L)50mLに溶解し、これに疎水性すす汚れのモデルであるカーボンブラック(旭カーボン社製の旭洗浄用カーボンブラック0.125gを添加し、使用水50mLを加えた後、26±1.5KHzの超音波を5分間照射して成分を均一に分散させた。その分散液に更に20℃の使用水400mLを加え、アルカリセルラーゼ(S237セルラーゼ又は変異S237セルラーゼ)を所定の酵素量となるように添加して、それを洗浄液とした。調製した洗浄液は、20℃にてかき混ぜ式洗浄力試験機〔ターゴトメータ:Terg-O-To meter(上島製作所)〕の試料カップに移した。評価布として6 cm x 6 cmの木綿の白布(#2003白色織製100%綿、谷頭商店(大阪府大阪市東淀川区小松4-11-15)供給)5枚を試料カップに入れ、更に溶液に対する布量(浴比)を調節するため、綿メリヤス白布[シル付晒布(谷頭商店供給)を洗濯後、充分に濯いだもの]を適宜投入して、回転速度80±4rpmで10分間攪拌した。次いで綿メリヤス白布と共に木綿の白布を取り出し、軽く絞った後、素早く2000 mLの水道水中に投入した。そこから木綿の白布のみを取り出し、更に水道流水にて3分間濯ぎを行った後、脱水・アイロン仕上げを行って、分光測色計CM-3500d(コニカミノルタ)を用いて550 nmにおける反射率を測定した。木綿の白布については、洗浄試験前に、分光測色計CM-3500d(コニカミノルタ)を用いて550 nmにおける反射率を予め測定しておいた。
得られた反射率に基づき、次式によって各洗浄試験での再汚染防止率を算出した。
(数5)
・再汚染防止率(%)
=[(試験後の木綿の白布の反射率)/(試験前の木綿の白布の反射率)] × 100
次いで、アルカリセルラーゼへの変異導入がその再汚染防止能に対して及ぼす効果、すなわち変異アルカリセルラーゼにおける再汚染防止能向上度を、次式によって算出した。なお変異酵素とは目的のアミノ酸置換が導入された変異アルカリセルラーゼであり、対照酵素とは、基準アルカリセルラーゼ、すなわち野性型アルカリセルラーゼ又はアミノ酸置換前のアルカリセルラーゼである。
(数6)
・変異アルカリセルラーゼにおける再汚染防止能向上度(%)
=[(変異酵素添加群の再汚染防止率)−(対照酵素添加群の再汚染防止率)]
/[100−(対照酵素添加群の再汚染防止率)] × 100
[実施例1]バチルス・エスピーKSM-S237株由来のアルカリセルラーゼ(S237セルラーゼ)の組換え生産
バチルス・エスピー(Bacillus sp.)KSM-S237株(FERM BP-7875)由来のS237セルラーゼ(配列番号2)をコードするアルカリセルラーゼ遺伝子[以下、S237セルラーゼ遺伝子とも称する;塩基配列はGenBankアクセッション番号AB18420(配列番号1)に基づき入手可能;Hakamada et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 64(11), (2000) p.2281-2289;特開2000-210081号公報]を含む核酸断片(3.1 kb)を、上述の表1に示すプライマー237UB1とS237RVからなるプライマーセットを用い、上記「1)DNA断片の増幅」に従って増幅した。鋳型DNAとしては、上記KSM-S237株から常法により抽出したゲノムDNAを用いた。
増幅断片は、シャトルベクターpHY300PLK(ヤクルト本社;Ishiwa, H. & Shibahara, H., Jpn. J. Genet. (1985) 60, p.235-243)のSmaI制限酵素切断部位に挿入し、組換えプラスミドpHY-S237を構築した。プラスミド中に挿入されたS237セルラーゼ遺伝子断片については、3100 DNAシーケンサー(Applied Biosystems)を用いて配列決定することにより、配列番号1に示す塩基配列を有することを確認した。次いで上記「2)枯草菌への遺伝子導入」に従って、プロトプラスト形質転換法により、枯草菌(Bacillus subtilis Marburg No.168株(Nature, 390, (1997) p.249))を組換えプラスミドpHY-S237を用いて形質転換した。これによって得られた形質転換体を10 mLのLB培地(1% トリプトン、0.5% 酵母エキス、1% NaCl)で30℃にて一夜振盪培養を行い、更にこの培養液0.05 mLを50 mLの2xL-マルトース培地(2% トリプトン、1% 酵母エキス、1% NaCl、7.5% マルトース、7.5 ppm硫酸マンガン4-5水和物、15 ppmテトラサイクリン)に接種し、30℃にて3日間振盪培養を行った。遠心分離によって菌体を除いた培養液上清を、脱イオン水にて10倍希釈した後、20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)で平衡化したDEAE-Toyopearl 650C(東ソー)カラム(1cm x 3cm)に添着した。
0.075M NaClを含む20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)10mLでカラムを洗浄した後、0.4M NaClを含む20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)10mLによりカラムからタンパク質を溶出させた。目的とする組換えS237セルラーゼは、電気泳動的にほぼ単一な成分として溶出された。溶出サンプルを、1mM CaCl2を含む10mM トリス塩酸塩緩衝液(pH7.5)に対して透析し、脱塩処理を行った後、以下の方法によりアルカリセルラーゼ含有量を測定した。すなわち、1/7.5M リン酸緩衝液(pH7.4、和光純薬)で適宜希釈した上記サンプル溶液50μLに0.4mM p-ニトロフェニル-β-D-セロトリオシド(生化学工業)を50μL加えて混和し、30℃にて反応を行った際に遊離するp-ニトロフェノール量を420nmにおける吸光度(OD420)の変化に基づいて定量した。1分間に1μmolのp-ニトロフェノールを遊離させる酵素量を1Uとした。またPROTEIN ASSAY RAPID KIT(和光純薬工業製)を用い、キット添付の牛血アルブミンを標準としてタンパク質量を測定した。
[実施例2]変異S237セルラーゼの作製−1
以下のようにして、S237セルラーゼ遺伝子にヌクレオチド変異を導入し、それを組換え発現させることにより、S237セルラーゼ(配列番号2)の58位のグルタミンをアルギニンに置換した変異S237セルラーゼ(S237-Q58R)を作製した。
バチルス エスピーKSM-S237株(FERM BP-7875)から常法により抽出したゲノムDNAを鋳型とし、上記表1及び2に示したプライマー237UB1とQ58R-RVからなるプライマーセット及びプライマーQ58R-FWとS237RVからなるプライマーセットを用いて、上記「1)DNA断片の増幅」に従ってPCR増幅を行った。その結果、S237セルラーゼ遺伝子の58位のアミノ酸残基に対応する位置に導入されたヌクレオチド変異を3'末端付近に含み、かつその変異位置から主に上流側の領域を含む0.7kbのDNA増幅断片と、そのヌクレオチド変異を5'末端付近に含み、かつその変異位置から主に下流側の領域を含む2.5kbのDNA増幅断片とを得た。用いたプライマーQ58R-RVの塩基配列は、S237セルラーゼの58位のグルタミンをアルギニンに置換するヌクレオチド変異を含むようにS237セルラーゼ遺伝子の塩基配列に基づいて設計されたものである。プライマーQ58R-FWの塩基配列は、プライマーQ58R-RVの相補配列である。
次いで、得られた2つの断片を混合して鋳型とし、上記「1)DNA断片の増幅」に従って、表1に示した237UB1とS237RVからなるプライマーセットを用いてSOE(splicing by overlap extension)-PCR(Horton R.M. et al., Gene (1989) 77(1), p.61-68)を行い、それら2つの断片が相補配列を介して連結した3.2kbのDNA断片を得た。
得られた3.2kbのDNA断片(変異S237セルラーゼ遺伝子)をシャトルベクターpHY300PLKのSmaI制限酵素切断点に挿入し、組換えプラスミドpHY-S237_Q58Rを構築した。プラスミド中に挿入された変異S237セルラーゼ遺伝子の塩基配列は、3100 DNAシーケンサー(Applied Biosystems)を用いて配列決定することにより確認した。次いで実施例1と同様に、上記「2)枯草菌への遺伝子導入」に従い、組換えプラスミドpHY-S237_Q58Rを枯草菌に導入し、得られた形質転換体を培養した。得られた培養物からは、実施例1と同様の方法により、組換え生産されたタンパク質を単離精製し、定量を行った。この組換えタンパク質は、S237セルラーゼのアミノ酸配列(配列番号2)の58位のグルタミンがアルギニンに置換された変異S237セルラーゼ(以下、S237_Q58Rとも称する)である。得られた変異S237セルラーゼを含む酵素サンプルを、後述の再汚染防止能評価に用いた。
[実施例3]変異S237セルラーゼの作製−2
S237セルラーゼ(配列番号2)の242位のグルタミンをセリンに置換した変異S237セルラーゼS237_Q242Sを、実施例2の記載と同様の方法で作製した。すなわち、上記表1及び2に示した237UB1とQ242S-RVからなるプライマーセット及びQ242S-FWとS237RVからなるプライマーセットを用いて、目的のヌクレオチド変異を含むS237セルラーゼ遺伝子(配列番号1)の上流側領域(変異位置付近から上流側の領域)と、目的のヌクレオチド変異を含むS237セルラーゼ遺伝子(配列番号1)の下流側領域(変異位置付近から下流側の領域)とをPCR増幅し、得られた2つのDNA断片を鋳型として目的の変異S237セルラーゼ遺伝子を含む3.2kbのDNA断片を増幅し、それをシャトルベクターpHY300PLKに挿入して組換えプラスミドpHY-S237_Q242Sを構築し、プラスミドに挿入された変異S237セルラーゼ遺伝子の塩基配列を確認し、上記「2)枯草菌への遺伝子導入」に従った方法によりその組換えプラスミドを枯草菌に導入し、得られた形質転換体を培養し、得られた培養物から組換えタンパク質(すなわち、変異S237セルラーゼS237_Q242S)を単離精製して、定量を行った。
この変異S237セルラーゼS237_Q242Sに対して、更に、58位のグルタミンをアルギニン又はグルタミン酸に置換した2種のS237セルラーゼ二重変異体(それぞれ、QS_Q58R、及びQS_Q58E)を、基本的には実施例2の記載と同様にして作製した。まず、上記で作製したpHY-S237_Q242Sを鋳型DNAとし、上記表1及び2に示した目的の変異を導入するための各々2組のプライマーセットを用いて、目的のヌクレオチド変異を3'末端付近に含む変異S237セルラーゼS237_Q242S遺伝子の上流側領域(変異位置付近から上流側の領域)と、目的のヌクレオチド変異を含む変異S237セルラーゼS237_Q242S遺伝子の下流側領域(変異位置付近から下流側の領域)とをPCR増幅し、得られた2つのDNA断片を鋳型として目的の変異S237セルラーゼ遺伝子を含むDNA断片を増幅した。それをシャトルベクターpHY300PLKに挿入して組換えプラスミドを構築し、プラスミドに挿入された変異S237セルラーゼ遺伝子の塩基配列を確認し、上記「2)枯草菌への遺伝子導入」に従った方法によりその組換えプラスミドを枯草菌に導入し、得られた形質転換体を培養し、得られた培養物から組換えタンパク質(変異S237セルラーゼ)を単離精製して、定量を行った。得られた各変異S237セルラーゼを含む酵素サンプルを、後述の再汚染防止能評価および安定性評価に用いた。
[実施例4]変異S237セルラーゼの再汚染防止能評価-1
実施例2で作製した変異S237セルラーゼS237_Q58Rの再汚染防止能を、上述の「4) 再汚染防止能の評価」に従って評価した。尚、評価に際しては綿メリヤス白布[シル付晒布(谷頭商店供給)を洗濯後、充分に濯いだもの]を50g投入し、溶液に対する布量(浴比)を10L/kgになる様調節した。上記洗剤組成物Bを使用し、S237_Q58Rについて野生型S237セルラーゼ活性52.8mUのタンパク質量に相当する酵素量を用いた。得られた結果を表3に示した。変異S237セルラーゼS237_Q58R はS237セルラーゼと比較して再汚染防止能の向上が認められた。
[実施例5]変異S237セルラーゼの再汚染防止能評価−2
実施例3でS237_Q242Sを基準セルラーゼとして作製した変異S237セルラーゼQS_Q58R、及びQS_Q58Eの再汚染防止能を、上述の「4) 再汚染防止能の評価」に従って評価した。尚、評価に際しては皮脂汚れ成分の共存を想定し、6cm x 6cmの汚染布wfk10D(Wfk Testgewebe GmbH(D-41379, Gemany))3枚を添加した。上記組成Cの洗浄剤を使用し、各変異S237セルラーゼについてS237_Q242Sセルラーゼ活性52.8mUのタンパク質量に相当する酵素量を用いた。本評価においてはS237_Q242Sを対照酵素として用いた。得られた結果を表に示す。評価したいずれの変異S237セルラーゼを用いた場合にも対照酵素(S237_Q242S)と比較して高い再汚染防止効果が得られ、変異導入により再汚染防止能が向上したことが認められた。
〔実施例6〕変異S237セルラーゼの液体洗浄剤中における安定性試験
実施例3でS237_Q242Sを基準セルラーゼとして作製した変異S237セルラーゼQS_Q58Rを各種アルカリプロテアーゼを添加した上述の組成Eの洗浄剤に中にて保存した際の安定性を評価した。
アルカリプロテアーゼとしてはアルカリプロテアーゼKP43(特許第3479509号)、KannaseTM(Novozymes)及び ProperaseTM(Danisco)を用いた。これら3 種のアルカリプロテアーゼは、いずれも洗浄剤への配合に適したズブチリシン様アルカリプロテアーゼである。
組成Eの洗浄剤 450 μLにセルラーゼ(S237QSまたはS237QS_Q58R)460U/Lと先述した3種のアルカリプロテアーゼをタンパク量として0.012 g(KP43では29U/L添加に相当するタンパク質量)を添加し、サンプルの液量が500 μLになるように調製した後40℃で保存し、24時間経過した洗浄剤中のセルラーゼ残存活性を測定した。
セルラーゼ活性は、実施例1に記載のp−ニトロフェニル−β−D−セロトリオシドを用いる方法により測定し、セルラーゼ残存活性は次式によって算出した。
(数7)
セルラーゼ残存活性(%)
=(保存24時間後のセルラーゼ活性/調製直後のセルラーゼ活性)× 100
実験結果を図1に示す。40℃で24時間保存した後のS237_QSの残存活性値を100として、QS_Q58Rの相対残存活性を示したところ、3種のプロテアーゼのいずれを添加した系においてもQS_Q58RはS237QSと比較して高い残存活性を示した(図1)。これより、S237セルラーゼの58番目のグルタミンをアルギニンへ置換することにより、再汚染防止能及びプロテアーゼ耐性の向上が認められた。

Claims (9)

  1. 配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるアルカリセルラーゼにおいて、配列番号2で示されるアミノ酸配列の58位に相当する位置のグルタミン残基がアルギニン又はグルタミン酸に置換されたアミノ酸配列からなり、
    基準アルカリセルラーゼと比較し再汚染防止能が向上した変異アルカリセルラーゼ。
  2. 請求項1記載の変異アルカリセルラーゼをコードする遺伝子。
  3. 請求項記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
  4. 請求項記載の組換えベクターを含む形質転換体。
  5. 微生物である、請求項記載の形質転換体。
  6. 請求項1記載の変異アルカリセルラーゼを含有する洗浄剤組成物。
  7. 請求項記載の遺伝子から変異アルカリセルラーゼを発現させることを含む変異アルカリセルラーゼの製造方法。
  8. 配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるアルカリセルラーゼにおいて、配列番号2で示されるアミノ酸配列の58位に相当する位置のグルタミン残基を、アルギニン又はグルタミン酸に置換することを特徴とする、アルカリセルラーゼの再汚染防止能の向上方法。
  9. 配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるアルカリセルラーゼにおいて、配列番号2で示されるアミノ酸配列の58位に相当する位置のグルタミン残基を、アルギニンに置換することを特徴とする、アルカリセルラーゼの再汚染防止能及びプロテアーゼ耐性の向上方法。
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