JP2021066653A - セラミックス物品の製造方法、金属成分含有液、セラミックス物品製造用キットおよびセラミックス物品 - Google Patents

セラミックス物品の製造方法、金属成分含有液、セラミックス物品製造用キットおよびセラミックス物品 Download PDF

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Abstract

【課題】 付加製造技術を用いたセラミックス物品の製造において、高い造形精度および形状精度を達成しながら造形物の機械的強度の向上を実現するためのセラミックス物品の製造方法および金属成分含有液を提供する。【解決手段】 セラミックス物品の製造方法であって、(i)セラミックスを主成分とする粉末にエネルギービーム照射して焼結または溶融および凝固させ、固化部を形成することによりセラミックス造形物を得る工程と、(ii)前記セラミックス造形物に、金属元素を含む無機粒子を含む金属成分含有液を吸収させる工程と、(iii)前記金属成分含有液を吸収させた前記セラミックス造形物を加熱処理する工程と、を有することを特徴とする。【選択図】 なし

Description

本発明は、付加製造技術、中でも粉末床溶融結合方式や指向性エネルギー積層方式を用いたセラミックス物品の製造方法に関する。
短時間で試作品を作製したり、少数部品を製造したりする用途において、原料粉末に、造形対象物の三次元データに基づいてエネルギービームを照射し、原料粉末を結合させて所望の造形物を得る付加製造技術が普及している。金属粉末を原料とする造形(金属造形)では、粉末床溶融結合方式が広く採用されており、緻密で多様性のある金属造形物が得られている。金属造形物の高い緻密性は、金属粉末を効果的に溶融および凝固させることによって実現される。このような金属造形での成功を基礎にして、付加製造技術に関してはセラミックス材料への展開が議論され、多くの取り組みが報告されている。
ところが、酸化アルミニウムや酸化ジルコニウムなどの一般的な金属酸化物は、金属とは異なり、レーザー光に対する吸収能が低い。このため、金属酸化物の粉末を、金属粉末と同様に溶融させるためには、より多くのエネルギーを投入する必要があるが、レーザー光が拡散して溶融が不均一となるため、高い造形精度を得ることが難しい状況にあった。
また、金属酸化物は熱伝導率が低いため、凝固する際に大きな熱応力が生じ、これにより形成されたクラックが造形物の機械的強度の低下を招いていた。
このような状況下において、特許文献1には造形用レーザー光を照射する前および後に、溶融させる粉末およびの周辺の粉末を溶融しない程度に予熱用レーザー光によって加熱することにより、熱応力の緩和することが記載さている。さらに、Al−ZrO共融系(共晶系)組成の粉末を用いて融点を下げることで、溶融に必要なエネルギーを低下させて熱応力を緩和するとともに、相分離構造を形成することでクラックの伸展を抑制する技術が開示されている。さらに、ガラス粉末を融解して造形物に浸潤させ、クラックをガラスで埋めることで造形物の機械的強度を向上させる技術が開示されている。
特表2013−501701号公報
特許文献1によれば、予熱しながら造形することにより、優れた機械的強度の造形物が得られている。しかし、造形用レーザー光の照射部から拡散した光によって、予熱によってある程度高温となっている照射部近傍の粉末の一部が昇温して溶融してしまう場合がある。そのため、造形用レーザー光を照射していない部分が造形されてしまい、造形用レーザー光の照射部を選択的に溶融して高い造形精度を得るのは困難である。また、予熱なしで造形した後、ガラスを浸潤させた造形物は、Al−ZrO共晶系組成の粉末を用いても、曲げ強度が50MPa未満と低い。
本発明は、かかる課題に対処するため、付加製造技術を用いたセラミックス物品の製造において、高い造形精度および形状精度を達成しながら造形物の機械的強度の向上を実現するためのセラミックス物品の製造方法を提供する。さらに、かかる製造方法で用いる金属成分含有液と、セラミックス物品製造キットを提供するものである。
また、本発明は、付加製造技術を適用した際の利点ある自由形状を有しうるセラミックス物品であって、優れた造形精度、形状精度および機械的強度を有するセラミックス物品を提供する。
本発明の第一の観点は、セラミックス物品の製造方法であって、
(i)セラミックスを主成分とする粉末にエネルギービーム照射して焼結または溶融および凝固させ、固化部を形成することによりセラミックス造形物を得る工程と、
(ii)前記セラミックス造形物に、金属元素を含む無機粒子を含む金属成分含有液を吸収させる工程と、
(iii)前記金属成分含有液を吸収させた前記セラミックス造形物を加熱処理する工程と、を有することを特徴とする。
本発明の第二の観点は、
エネルギービームを用いる付加製造法によって造形されたセラミックス造形物のクラック補修に用いられる金属成分含有液であって、前記金属成分含有液は、溶媒と、金属元素を含む平均粒径が300nm以下の無機粒子と、を含み、前記金属元素の酸化物は、前記セラミックス造形物に含まれる少なくとも一種類の化合物と共晶になりうることを特徴とする。
本発明の第三の観点は、エネルギービームを用いる付加製造法によってセラミックス物品を製造するためのセラミックス物品製造用キットであって、セラミックスを主成分とする粉末と金属成分含有液とを含んでおり、前記金属成分含有液は、金属元素を含む無機粒子と溶媒とを含み、前記金属元素の酸化物が、前記粉末から造形されるセラミックス造形物に含まれる少なくとも一種類の化合物と共晶になりうることを特徴とする。
本発明の第四の観点は、付加製造技術によって製造されたセラミックス物品であって、少なくとも1種類の金属元素が共通する3種類の相を含み、前記3種類の相のうち少なくとも2種類は複合化合物の相であることを特徴とする。
本発明によれば、付加製造法を用いて、高い精度で、機械的強度に優れたセラミックス物品を製造することが可能となる。
粉末床溶融結合方式を用いたセラミックス物品の製造工程を模式的に示す図である。 指向性エネルギー積層方式を用いたセラミックス物品の製造工程を模式的に示す図である。 共晶関係にある場合の成分Xと成分Yの組成比と、それぞれの組成比における温度と状態との関係を表す相図の例である。 (a)は本発明の実施例において、ある層にレーザーを走査しながら照射する過程を示す模式的斜視図で、(b)は(a)の次に造形する層にレーザーを走査しながら照射する過程を示す模式的斜視図である。 実施例1で得られたセラミックス物品の光学顕微鏡像である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明するが、本発明は以下の具体例になんら限定されるものではない。
本発明にかかるセラミックス物品の製造方法は、金属成分含有液を用いて、付加製造法によって形成されたセラミックス造形物に対して適切な処理を施すことにより、優れた造形精度、形状精度および機械的強度を有するセラミックス物品を提供できる。具体的には、付加製造法によって形成されたセラミックス造形物が有するクラックに金属成分含有液を吸収させた後に加熱処理を行うことにより、クラック部近傍のみを局所的に溶融させ、クラックを低減ないし消滅せしめる。
付加製造技術は、造形対象である造形モデルの三次元形状データに基づいて材料を結合させて物体を形成するプロセスであり、多くの場合、層状に材料を接合する方法が用いられている。付加製造技術を用いることで、従来の型成形法や削り出しなどの除去加工法では作製が困難であった、複雑形状や微細形状を有するセラミックス物品を実現することができる。本発明に係るセラミックス物品の製造方法には、粉末床溶融結合方式または指向性エネルギー積層方式(いわゆるクラッディング方式)の付加製造技術が含まれる。また、本発明の金属成分含有液は粉末床溶融結合方式または指向性エネルギー積層方式の付加製造によって形成された造形物に用いることが好適である。
まず、金属成分含有液を用いた処理工程を含むセラミックス物品の製造方法について説明した後、前記製造方法によって製造されたセラミックス物品およびセラミックス物品製造用キットについて説明する。
<セラミックス物品の製造方法>
本発明のセラミックス物品の製造方法について説明する。本発明の製造方法は、以下の3つの工程を有することを特徴とする。
(i)セラミックスを主成分とする粉末にエネルギービーム照射して焼結または溶融および凝固させ、固化部を形成することによりセラミックス造形物を得る。
(ii)前記セラミックス造形物に、金属元素を成分とする無機粒子を含む金属成分含有液を吸収させる。
(iii)前記金属成分含有液を吸収させた前記セラミックス造形物を加熱処理する。
以下では、汎用的な構造用セラミックスである酸化アルミニウムを主成分として含む粉末を用いて造形を行う場合を例にとり、各工程を具体的に説明するが、技術思想は、酸化アルミニウムを主成分として含む粉末に限定されるものではない。酸化シリコンを主成分として含む粉末や他のセラミックスを主成分とする粉末を用いた造形にも適用することができる。また、造形物として目的のセラミックス(例えばムライトやコージライトなど)が形成されるように複数のセラミックス(例えば酸化アルミニウムや酸化シリコン、酸化マグネシウムなど)を混合した粉末を用いた造形にも、適用可能である。
本発明では、セラミックス造形物を造形するためのセラミックスを主成分とする粉末は、無機化合物粉末で構成されていればよく、焼結された多結晶体と定義されるセラミックスのみならず、非晶質や単結晶からなる粉末を用いても良い。また、焼結または溶融および凝固の際に、粉末はバインダなどの有機成分を含まないことが好ましい。粒子同士の結合を妨げる恐れがあるためである。このような観点から、粉末中の炭素の量は、2000ppm以下が好ましく、1000ppm以下がより好ましい。
なお、本発明では、成分について論じる対象(粉末、造形物または物品)の中で、モル比で一番多く含まれる成分を主成分とよぶ。「主とする成分」という表記も主成分と同義で用いる。副成分とは、主成分以外の成分を指し、焼結助剤や赤外線吸収体などのように、造形を容易にするために添加される。
<工程(i)>
セラミックスを主成分とする粉末にエネルギービーム照射して焼結または溶融および凝固させ、固化部を形成することによりセラミックス造形物を得る工程である。
粉末床溶融結合方式を用いた造形手順の基本的なフローを、図1を用いて説明する。まず、ステージ151に設置した基台130上にセラミックスを主成分とする粉末101を載置し、ローラー152を用いて粉末層102を形成する(図1(a)および(b))。粉末層102の表面に、エネルギービーム源180から射出したエネルギービームを、スキャナ部181で走査させながら、製造する物品の三次元形状データに基づいてエネルギービームを照射する。エネルギービームの照射範囲182では、粉末が焼結、あるいは溶融および凝固して、固化部100が形成される(図1(c))。次に、ステージ151を降下させ、前記造形物100上に粉末層102を新たに形成する(図1(d))。新たに形成した粉末層102に、図1(c)と同様にしてエネルギービームを照射し、照射範囲に固化部100を形成する。このとき、エネルギービームの出力を、先に形成された固化部の、新たに形成した粉末層102側の表層が溶融する程度に調整しておくと、先に形成された固化部と後から形成される固化部とを互いに接合することができる。これら一連の工程を繰り返して行うことで、層毎に形成される固化部100が互いに接合して一体となった所望形状の造形物110が形成される(図1(e)および(f))。最後に、未固化の粉末103を除去し、必要に応じて造形物の不要部分の除去や造形物と基台の分離を実施する(図1(g)および(h))。
次に、クラッディング方式を用いた造形手順の基本的なフローを、図2を用いて説明する。クラッディング方式は、クラッディングノズル201にある複数の粉末供給孔202から粉末を噴出させ、それらの粉末が焦点を結ぶ領域にエネルギービーム203を照射して、所望の場所に付加的に固化部100を形成する(図2(a))。この時、粉末床溶融結合方式と同様に、下地の表層が溶融する程度にエネルギービーム203の出力を調整しておくことで、かかる工程を繰り返して、固化部が一体となった所望形状の造形物110を得ることができる(図2(b)および(c))。最後に、必要に応じて造形物の不要部分の除去や造形物と基台の分離を実施する。
いずれの方式においても、粉末にエネルギービームを照射すると、粉末がエネルギーを吸収し、該エネルギーが熱に変換されて粉末が溶融する。そして、エネルギービームが通過して照射が終了した領域では、溶融部が周りの雰囲気および隣接部によって冷却されて焼結あるいは凝固して固化部が形成される。この時、溶融部が凝固する過程の急冷によって、造形物の表層および内部に応力が発生し、クラックが無数に形成される。
使用するエネルギービームとしては、粉末の吸収特性に鑑みて適切な波長を有する光源を選定する。高精度な造形を行うためには、ビーム径が絞れて指向性が高いレーザービームもしくは電子ビームを採用することが好ましい。汎用性の観点から、1μm波長帯のYAGレーザーやファイバーレーザー、10μm波長帯のCOレーザーなどが、好適なエネルギービームとして挙げられる。
(セラミックスを主成分とする粉末)
ここでは、一般的な構造用セラミックスである酸化アルミニウム(Al)を主成分とする粉末(以下、原料粉末と称する場合がある)を例にとって詳しく説明する。酸化アルミニウムを主成分とする粉末は、副成分として、酸化アルミニウムと共晶組成を生じる、希土類元素の酸化物を含むことが好ましい。具体的には、酸化ガドリニウム(Gd)、酸化イットリウム(Y)、酸化テルビウム(Tb)および酸化プラセオジム(Pr)から選択される少なくとも一種を含んでいることが特に好ましい。例えば、原料粉末が、酸化アルミニウムと共晶組成を生じる酸化ガドリニウムを含むことで、共晶組成が3つ存在し、3つの共晶組成近傍それぞれにおける共晶点は、酸化アルミニウム単体の融点および酸化ガドリニウム単体の融点よりも低くなる。これによって少ない熱量で粉末の溶融が可能となり、粉末内でのエネルギーの拡散が抑制されるため、造形精度が向上する。また、原料粉末が酸化ガドリニウムを含むことで、造形物は2相以上からなる相分離構造となる。これにより、クラックの伸展が抑えられ、造形物の機械的強度が向上する。酸化イットリウムなど他の希土類元素の酸化物を含む場合も、酸化ガドリニウムの場合と同じような効果が得られる。
エネルギービームがレーザービームである場合、粉末に十分なエネルギー吸収があることで、粉末内における熱の広がりが抑制されて局所的になり、非造形部への熱の影響が低減するため、造形精度が向上する。たとえば、1μm波長帯のNd:YAGレーザーやファイバーレーザーを用いる場合は、粉末に、酸化テルビウム(Tb)、酸化プラセオジム(Pr11)、Ti、TiO、SiO、ZnO、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、MnO、MnO、Mn、Mn、FeO、Fe、Fe、CuO、CuO、Cr、CrO、NiO、V、VO、V、V、Co、CoO、遷移金属炭化物、遷移金属窒化物、Si、AlN、ホウ化物、ケイ化物などの良好なエネルギー吸収を示す成分が副成分として含有されていることがより好ましい。これらの成分は、1μm波長帯のNd:YAGレーザーやファイバーレーザーを用いる場合の吸収体となる。原料粉末が、酸化テルビウム(Tb)や酸化プラセオジム(Pr11)などのレーザービームに対して良好なエネルギー吸収を示す希土類元素化合物に加えて、レーザービームに対するエネルギー吸収の低い他の希土類元素を含んでいることも好ましい。吸収体とは、造形に使用するレーザーに含まれる波長の光に対し、主成分よりも高い吸収能を示す成分(元素或いは化合物)をいう。吸収体の吸収能は、使用される波長のレーザービームに含まれる波長の光に対して、10%以上の吸収率であることが好ましく、40%以上であればより好ましく、60%以上であればさらに好ましい。
以上の観点から、特に好適な原料粉末として、Al−Gd、Al−GdAlO、Al−Tb、Al−Gd−Tb、Al−GdAlO−Tb、Al−Pr11、Al−Gd−Pr11、Al−GdAlO−Pr11、Al−Y、Al−YAlO、Al−YAl12、Al−Y−Tb、Al−YAlO−Tb、Al−YAl12−Tb、Al−Y−Pr11、Al−YAlO−Pr11、Al−YAl12−Pr11、Al−ZrO、Al−ZrO−Tb、Al−ZrO−Pr11、Al−SiO、Al−Gd−SiO、Al−GdAlO−SiO、Al−Y−SiO、Al−YAlO−SiO、Al−YAl12−SiO、Al−ZrO−SiO、SiO−Tb、SiO−Pr11、(MgO−Al−SiO)−Tb、(MgO−Al−SiO)−Pr11、(Al−SiO)−Tb、(Al−SiO)−Pr11等が挙げられる。
セラミックスを主成分とする粉末は、共晶になりうる組成物を、共晶組成を成す比率で含有していることが好ましい。共晶組成とは、相図で示される共晶点における組成であるが、エネルギービームを用いる造形プロセスは、非常に高速に加熱状態と冷却状態が生じるため、共晶点からずれた組成であっても相分離構造を有する共晶組織が形成される。そのため、本発明の製造方法における共晶組成は、共晶組織が形成される組成範囲と定義したほうが好ましく、相図で言うところの共晶組成に対して±10mol%の範囲が含まれる。主成分が酸化アルミニウム以外である粉末の場合も、同様に、共晶をなす組成物を、共晶組成を成す比率で含有していることが好ましい。
成分Xと別の成分Yが共晶になりうることを、「成分Xと成分Yが共晶関係にある」と表現することがある。共晶とは、2成分以上を含む液体から、同時に晶出する2種以上の結晶の混合物である。「成分Xと成分Yが共晶になりうる」とは、「成分Xと成分Yが共晶の状態を有する」と同義である。共晶の状態を有する場合、共晶点(共融点ともいう)が存在する。共晶点は共晶が生じる温度であり、温度を縦軸、成分組成比を横軸にして表される状態図において、液相曲線の極小値に相当する。共晶点に相当する組成を共晶組成(または共融組成)と呼ぶ。したがって、成分Xと成分Yの共晶点は、成分Xと成分Yそれぞれの融点よりも低い。
なお、本明細書では、上述のAlやTbなどのように、化学式を用いて材料を表現する場合があるが、本発明の趣旨を満たせば、実際の材料の元素の構成比が化学式の比と厳密に一致している必要はない。即ち、ある材料を構成する金属元素の価数は、化学式から想定される価数と多少異なっていてもよく、例えば、SiOの場合、吸収体の構成元素比がSi:O=1:1.30であっても、レーザービームに対して良好なエネルギー吸収を示すため、本発明に含まれる。十分な光吸収能を得るという観点において、より好ましい元素構成比は、化学量論比からのずれが±15%以内である。
<工程(ii)>
工程(ii)では、工程(i)で得られたセラミックス造形物に、金属元素を含有する無機粒子を含む金属成分含有液を吸収させる。粉末床溶融結合方式やクラッディング方式などの直接造形方式の場合、エネルギービーム照射によって粉末が溶融した部分が周囲により冷やされて凝固し、固化部が形成される。セラミックスの場合は、固化部にはクラックが多く発生する。これは、材料自体の熱伝導率が小さいために、非固化部と固化部との間に生じる温度差に起因する熱応力によるものと考えられる。このような固化部が互いに接合することで造形物が形成されるため、クラックは造形物全体にエネルギービームの走査方向に略依存した形で碁盤の目のように縦横無尽に分布する。造形物の断面を走査電子顕微鏡等で確認すると、クラックの多くは幅が数nmから数μmである。また、クラックの長さは、数μmから数mmまで様々である。このクラックが造形物の機械的強度を低くする主な原因になっていると考えられる。
上記のようなクラックを有する造形物に金属成分含有液を接触させると、造形物のクラック内に金属成分含有液が吸収され、金属元素を含む無機粒子が行き渡る。金属成分含有液を吸収させた造形物を、後述する工程(iii)において所定の温度範囲で加熱することで、クラックの近傍だけを選択的に溶融させることができる。このような処理を行うことで、造形物の形状変化を抑えながら、造形物中に存在するクラックを低減して、造形物の機械的強度を向上させることができる。
(金属成分含有液)
金属成分含有液について説明する。
工程(ii)で使用する金属成分含有液は、少なくとも金属元素を含む無機粒子と溶媒とを含む。造形物に金属成分含有液を吸収させる工程では、無機粒子を造形物のクラックに密に充填させる必要はなく、造形物のクラックに面する造形物の表面に、ほぼ一様に無機粒子を存在させられればよい。無機粒子をクラック全体にいきわたらせるためには、金属成分含有液は、クラックの幅よりも十分小さい粒子径の無機粒子を含んでいることが好ましい。粉末床溶融結合方式やクラッディング方式などの直接造形方式の場合、クラックの多くは幅が数nmから数μmである。この中で機械的強度(3点曲げ強度)に寄与するサイズのクラックを低減させるためには、無機粒子の平均粒子径は300nm以下であることが好ましい。クラックをより低減させ、機械的強度を向上させるための好ましい平均粒子径は100nm以下、さらに好ましい平均粒子径は50nm以下である。粒子径は、同一物性の球の直径として定義される球相当径である。平均粒子径の計測方法は特に限定されないが、動的光散乱法や顕微鏡法などを用いることができる。なお、本発明における平均粒子径は、メジアン径であり、頻度の累積が50%になる粒子径(D50)である。
微粒子の形状はとくに限定されず、球状、柱状、楕円球状、立方体状、直方体状、針状、板状、鱗片状、ピラミッド状などが挙げられる。
無機粒子に含まれる金属元素は、その酸化物が、セラミックス造形物に含まれる少なくとも一種類の化合物と共晶になりうるものが好ましい。前述したように、無機粒子に含まれる金属元素の酸化物とセラミックス造形物の成分との共晶が生じる共晶点は、それぞれの単独成分の融点よりも低くなる。これにより、無機粒子が存在する造形物のクラック近傍の融点を低下させる効果が大きくなる。
従って、金属成分含有液を造形物に吸収させ、金属成分含有液中の無機粒子を造形物中のクラックに分布させた後に、後述する工程(iii)において造形物が加熱される。すると、無機粒子とセラミックス造形物の少なくとも一種類の化合物とが存在することによって融点が局所的に低下し、クラック近傍の造形物を選択的に溶融させることができる。これによって造形物の形状の保持しながら造形物中のクラックを低減させることが容易となる。
金属元素を含む無機粒子としては、金属粒子、金属酸化物粒子、金属窒化物粒子、金属炭化物粒子、金属ホウ化物粒子や金属水酸化物粒子などが挙げられる。無機粒子を構成する原子の結合状態は問わない。結晶質であってもよいし、非晶質であってもよい。
中でも、無機粒子の主成分が、金属酸化物であることが好ましい。無機粒子の主成分が金属酸化物であると、工程(iii)の加熱処理工程で二酸化炭素や水蒸気などの揮発成分が発生しにくいため、安定した加熱処理が可能となる。また、工程(i)で形成されたセラミックス造形物は、エネルギービームによる過激な反応によって、化学量論比よりも酸素が少ない状態となっている場合がある。この場合、工程(iii)の加熱処理は、酸素を含む雰囲気中で行われるのが好ましく、造形物の酸化を促し、酸素不足を解消することができる。金属酸化物粒子は、金属粒子などと比べて加熱処理時に酸化反応が生じにくく、造形物自体への酸素供給を阻害しない。これらの観点から、金属酸化物を主成分とする無機粒子が好ましい。
また、加熱処理によって有毒ガスが発生する可能性があるため、無機粒子に含まれるハロゲン元素の濃度は、1000ppm以下の不純物レベルであることが好ましい。
金属成分含有液を吸収させるセラミックス造形物に含まれる化合物を成分X、金属成分含有液に含まれる無機粒子に含まれる金属元素の酸化物を成分Yとすると、成分Xと成分Yとが共晶の状態を有する関係にあることが好ましい。この場合、クラックで生じる局所的な溶融は、以下の現象によるものと推測される。成分Xは、成分Yと共晶の状態を有する関係にあればよく、複数の化合物の複合体(相分離構造など)をまとめて成分Xとみなしてもよい。例えば、後に詳述するが、Al−Gd系の原料粉末から形成された造形物は、AlとGdAlOの2成分の相分離構造を有する。この場合は成分XをAlとGdAlOの2成分の相分離構造を指してもよい。AlとGdAlOは、いずれも酸化ジルコニウムと共晶の状態を有する関係にあるため、酸化ジルコニウムを成分Yとすることができる。
造形物に金属成分含有液を吸収させると、造形物の表面のみならず、造形物のクラックを構成する面にも、金属成分含有液に含まれていた無機粒子がある量存在することになる。この状態で加熱処理を行うと、造形物のクラックを構成する面には、無機粒子の主成分が金属酸化物であるか、加熱処理の過程で無機粒子に含まれる金属元素が酸化して金属酸化物となることで、ある量の成分Yが存在することになる。クラックの表面に存在する成分Yの近傍において、成分Yの量と共晶組成もしくは共晶組成に近い組成比となる量の成分Xが、造形物の融点よりも低い温度で溶融する。そして、さらに周辺の造形物を構成する成分Xと融合することで、融合した組成の成分Xの割合が増加する。成分Xの割合が増加すると、融合箇所の融点が相対的に上昇して加熱処理の温度を上回り、再結晶化してクラックの補修に寄与すると考えられる。その結果、造形物の形状を維持したまま、クラックの近傍領域だけが軟化して再結晶化し、クラックを低減ないし消失せしめる効果が得られるものと考える。また、この過程は加熱温度が一定の状態に維持されるだけで進行が完了するため、制御が容易であるという利点がある。
このため、クラックが補修された部分は、ガラス浸潤などでクラックを充填する方法に比べて組織間の結合が強くなり、高い機械的強度を有する造形物が得られていると考えられる。また、クラックにガラス等の材料を補填する方法に比べて、極端な組成の偏りが小さくなるため、機械的強度以外の物性に関しても比較的均質な造形物が得られる。
成分XとYの組み合わせはいくつも考え得るが、中でも、無機粒子に含まれる金属元素の酸化物である成分Yの融点Tが、成分Yと共晶を形成しうるセラミックス造形物に含まれる化合物である成分Xの融点Tよりも高い関係にあることが好ましい。図3に、成分Xと成分Yとが共晶関係にある場合の成分Xと成分Yの組成比と、それぞれの組成比における温度と状態との関係を表した相図の例を示す。横軸が組成比を表しており、左端において成分Xが100%であり、右端に近づくほど成分Xの割合が減り、成分Yの割合が増える。
成分Xの融点をT、成分Yの融点をT、成分Xと成分Yとの共晶点をTとすると、それぞれの温度は、T<T、T<Tの関係を満たす。この場合、金属成分含有液を吸収させた後に行う加熱処理によって造形物が到達する最高温度Tを、T≦T<Tの関係を満たすように設定するとよい。T、Tは、それぞれ造形物の融点Tよりも低くなるように設定する。さらにT<Tであれば、金属成分含有液を吸収させる回数や加熱の回数が少なくても高い効果を得ることができる。これは、図3に示すように、T<Tであることにより、成分Xと成分Yとの共晶組成が成分X比率の高い状態となり、成分Yの割合が少ない状態で、クラック近傍を共晶温度で溶融させることができるからである。なお、T<Tは好ましい条件であって、必須条件ではない。
例えば、造形物の主成分が酸化アルミニウム(Al;融点T=2070℃)である場合、金属成分含有液に含まれる無機粒子の主成分は、加熱によって酸化ジルコニウム(ZrO;融点T=2715℃)となる成分が好適である。この場合、無機粒子に含まれる金属元素はジルコニウムである。加熱によって酸化ジルコニウムになる無機粒子の候補としては、ジルコニウム(金属)、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、塩化ジルコニウムなどがある。塩化ジルコニウムは昇華性固体であるが、水和塩化水酸化ジルコニウムなどを経て酸化ジルコニウムになることができる。AlとZrOは共晶を形成しうる関係にあり、共晶点Tは約1840℃である。つまり、AlとZrOとは、前述した好ましい関係、T<Tを満たす組み合わせである。従って、金属成分含有液に含まれる金属元素からクラック近傍にZrOが生成されることにより、加熱処理時の最高温度Tを1840℃≦T<2070℃の範囲で設定することができる。そして、Alの融点よりも十分低い温度でクラック近傍を選択的に溶融させ、クラックを低減ないし消失させることができる。
造形物がAlとGdAlOの2成分を含んでいる場合、造形物の融点はこれら2成分の組成比に応じて決まる。例えば、造形物が2成分を共晶組成で含有しているとすると、造形物の融点Tは約1720℃(共晶点)になる。このような場合、金属成分含有液は、加熱によって酸化ジルコニウムとなる成分を主とする無機粒子を含んでいるものが好ましい。ZrOの融点Tは2715℃であるが、AlとGdAlOとZrOの3成分の共晶点Tが約1662℃であるため、造形物の融点T約1720℃より十分低い温度Tで加熱することで、クラックを低減ないし消失させることが可能となる。
このように、造形物を構成する少なくとも一種類の化合物と、無機粒子に含まれる金属元素の酸化物である金属酸化物との組み合わせは、他にも考え得る。好ましい成分Xの融点T<Tの関係を満たす組合せの例としては、[SiO]とZrO、[SiO]とAl、[Al]とMgO、[Al]とHfO、[AlとReAlO(Reは希土類)]とZrO、[AlとReAl12(Reは希土類)]とZrO、[AlとReAlO(Reは希土類)]とHfO、[AlとReAl12(Reは希土類)]とHfO、[MgAlSi18]とMgSiO、[MgAlSi18]とMgSiOなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、上記説明において、[ ]内には造形物を構成する相であって成分Xに該当し得る成分を示し、[ ]に続けて無機粒子に含まれる金属元素の酸化物である金属酸化物の相を示している。
なお、成分Yとなる金属元素を含む金属成分含有液は、成分Yの含有率が3モル%未満のセラミックス造形物中に対して用いることが好ましい。このような組み合わせにより、加熱でクラック近傍のみを局所的に溶融させ易くなり、造形物の変形を抑制することができる。金属成分含有液を吸収させるセラミックス造形物中の成分Yの含有率は、より好ましくは2モル%未満であり、さらに好ましくは1モル%未満である。
前述したように、クラックを消滅させるためには、それに適した量の成分Yを、クラックに面する造形物表面に存在させることが必要となる。クラックに面する造形物表面に存在する成分Yの量は、金属成分含有液を造形物に吸収させる回数、金属成分含有液中の無機粒子の含有量や粒子径などを、吸収させる造形物の大きさや形状によって調整するとよい。
本発明において金属成分含有液中の無機粒子の含有量は特に限定されないが、目的によっては好ましい含有量がある。
金属成分含有液中の無機粒子の含有量が多いと、工程(ii)を1回施すことで、クラックに面する造形物表面に多くの成分Yを付与することできる。そのため、工程(ii)および工程(iii)を施す回数が少なくてもクラックを十分に低減ないし消滅せしめることができる。このような観点においては、金属成分含有液の無機粒子の含有量は25重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。一方、金属成分含有液の無機粒子の含有量が多いと、工程(ii)を1回あたりにクラックに面する造形物表面に付与される成分Yの量が多くなりすぎ、造形物の溶融が、クラック周辺の広い範囲にまで及びやすくなる場合がある。造形物の形状精度を維持するためには、無機粒子の含有量が80重量%以下の金属成分含有液が好ましく、より好ましくは75重量%以下である。
まとめると、造形物を構成する成分や、造形物の大きさによって変動するが、造形物の形状を維持しながら加熱処理の時間を短縮するには、金属成分含有液の無機粒子の含有量は25重量%以上80重量%以下が好ましい。より好ましくは、30重量%以上75重量%以下である。
微細な形状を有する造形物に適用する金属成分含有液の無機粒子の含有量は、50重量%未満が好ましく、より好ましくは40重量%未満である。
上述の観点から、クラックを補修する処理の初期段階で、無機粒子の含有量が多い分散液を使用してクラックをある程度効率的に低減させた後、仕上げ段階で無機粒子の含有量が少ない分散液を用いてクラックを低減ないし消滅させることも好ましい。このように、無機粒子の含有量が互いに異なる複数種類の金属成分含有液を組み合わせて用いることで、形状精度を担保しながらより効率的にクラックを低減ないし消滅させることができる。
無機粒子は、トップダウン法でそれぞれの材料を破砕して作製してもよいし、ボトムアップ法で金属塩、水和物、水酸化物、炭酸塩などから水熱反応などの手法を用いて合成してもよいし、または市販品を用いてもよい。
金属成分含有液は、無機粒子を分散させる溶媒として、有機溶剤、水、これらの混合物のいずれかを含んでいる。具体的には、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、エステル変性エーテル類、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アミド類、水、油類、あるいはこれら2種以上の混合溶媒を含んでいる。アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、エチレングリコールなどが好ましい。ケトン類としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどが好ましい。エステル類としては、例えば酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、4−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチルなどが好ましい。エーテル類としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルカルビトール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−ブトキシエタノールなどが好ましい。変性エーテル類としては、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。炭化水素類としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどが好ましい。ハロゲン化炭化水素類としては、例えばジクロロメタン、ジクロルエタン、クロロホルムが好ましい。アミド類としては、例えばジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンが好ましい。油類としては、例えば鉱物油、植物油、ワックス油、シリコーン油が好ましい。
さらに、クラックに均等に粒子を吸収させるため、粒子が分散液中で凝集や沈降などせず、高い分散性を維持しているのが好ましい。従って、金属成分含有液は、さらに分散剤を含んでいるのが好ましい。
前記分散剤としては、有機酸、シランカップリング剤、界面活性剤、のうち少なくとも一種を含むことが好ましい。有機酸としては、例えばアクリル酸、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、2−アクリロキシエチルコハク酸、2−アクリロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロキシエチルフタル酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、3−メチルヘキサン酸、3−エチルヘキサン酸などが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシランなどが好ましい。界面活性剤としては、例えばオレイン酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルキルリン酸エステルナトリウム、塩化アルキルメチルアンモニウム、アルキルアミノカルボン酸塩などのイオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどの非イオン系界面活性剤が好ましい。
造形物の中心部まで金属成分含有液を吸収させるため、および、造形物の表面に金属成分含有液が分厚く堆積するのを抑制するため、金属成分含有液の粘性は低いほうが好ましく、20℃における粘度が12mPa・s以下であることが特に好ましい。
金属成分含有液の製造方法は問わない。無機粒子、分散剤、溶媒を混合して作製することが好ましいが、すべてを一度に混合して作製してもよい。あるいは、粒子と分散剤を混合してから溶媒を加えて混合してもよいし、粒子と溶媒を混合してから分散剤を加えて混合してもよいし、分散剤と溶媒とを混合してから粒子を混合して作製してもよい。
金属成分含有液については前述した通りである。セラミックス造形物が酸化アルミニウムを主成分とする場合は、酸化ジルコニウムを主成分とする無機粒子を含む金属成分含有液が好適である。
造形物のクラックを構成する面に一様に無機粒子を介在させることができれば、造形物に金属成分含有液を吸収させる手法は特に限定されない。金属成分含有液中に造形物を浸して含浸させてもよいし、金属成分含有液を霧状にして造形物に吹き付けたり、刷毛などで表面に塗布したりして、吸収させてもよい。また、これらの手法を複数組み合わせてもよいし、同じ手法を複数回繰り返してもよい。
工程(i)を多数回繰り返して得られる造形物の体積が大きい場合は、造形物の内部まで無機粒子を十分に行き渡らせるため、金属成分含有液に造形物を浸して減圧脱気することが好ましい。あるいは、造形物を密閉容器に入れて減圧脱気した後に、金属成分含有液に浸してもよい。
<工程(iii)>
工程(iii)では、金属成分含有液を吸収させたセラミックス造形物を加熱処理する。
工程(ii)により、無機粒子は造形物の表層および造形物内部のクラックに広く分布している。例えば、酸化アルミニウムを主成分とする造形物に、酸化ジルコニウム粒子が分散した金属成分含有液を吸収させた状態の造形物は、クラック近傍のみが局所的にAlとZrOの共晶組成に近づく。そのため、クラック部から離れた部分に比べてクラック部近傍のみ融点が低くなる。この融点の差を利用して、造形物に含まれる少なくとも一種類の化合物と、無機粒子に含まれる金属元素からなる金属酸化物との共晶点以上、造形物を構成する材料の融点未満の温度で加熱する。
ここでは、AlとZrOの共晶点以上、Alの融点未満の温度で加熱する。これによって、造形物の形状は維持された状態で、造形物中の無機粒子が存在している部分、即ち、造形物のクラック近傍だけが一部溶融する。
造形物が2種類の化合物で構成されており、これら2成分と酸化ジルコニウムとが3成分で共晶(3相共晶)をなす関係であると、これら3成分の共晶点は2成分の共晶点よりも低い温度となる。この場合、造形物が一種類の化合物からなる場合よりさらに低い温度で工程(iii)を実施でき、比較的サイズの大きな造形物であっても造形物内での加熱の温度ムラを低減できるため、より好ましい。また、製造する物品が酸化物である場合、比較的低い温度であれば、大気雰囲気の電気炉等で工程(iii)を簡便に実施することができる。
例えば、Al−Gdは、酸化ジルコニウムと3相共晶を形成できる材料である。したがって、Al−Gdを成分として含む粉末から形成された造形物に、ジルコニウム元素を成分とする無機粒子を含む金属成分含有液を吸収させると、造形物のクラックを構成する面にはジルコニウム元素を含む無機粒子がある量付与される。この状態で加熱処理を行うと、造形物のクラックを構成する面に存在するジルコニウム元素は、例えば加熱処理の過程で酸化ジルコニウムとなる。クラックに面する造形物の表面の酸化ジルコニウムの近傍では、酸化ジルコニウムの量と、3相共晶が形成されうる組成比あるいはその近傍の組成比となる量のAl−Gdが、造形物の融点よりも低い温度で溶融する。そして、その後再結晶化してクラックの補修に寄与する。
このように、クラック近傍を3相共晶が形成されうる組成比に近づければ、融点を局所的に大きく低下させることができる。この融点の差を利用して、前記3相の共晶点以上、造形物の融点未満の温度で加熱し、クラック近傍のみを選択局所的に溶融させることができる。
具体的には、Al−Gdを成分として含む粉末から形成され、工程(ii)を経た造形物のクラック近傍の最高温度が1600℃以上1710℃以下となるように加熱処理することによって、クラックを減少または消滅させることができる。この場合、AlとGdとZrOの3相の共晶点以上、Al−Gd系の造形物がとり得る最も低い融点(約1720℃)未満という観点でより好ましくは1662℃以上1710℃以下である。前述したように、クラック近傍のみを溶融させるには、金属成分含有液を造形物のクラックに吸収させた後に行う加熱処理の温度を適切に設定する必要がある。造形物を構成する成分Xと粒子の主成分である無機酸化物成分Yとが、図3の相図に示す共晶関係にある場合、工程(iii)で行う加熱処理によって造形物が到達する最高温度Tが、T≦T<Tとなるように設定することが好ましい。より好ましくは、T≦T<T−(T−T)/2である。これにより、造形物の融点Tよりも十分低い温度においてクラックの近傍を選択的に溶融させ、クラックを低減ないし消失させることができるため、造形物の形状が維持し易くなる。
クラック近傍が上記最高温度に達しさえすれば、加熱時間は問わない。具体的には、造形物を、工程(iii)において、クラック近傍を到達させたい温度で加熱するとよい。このような温度での加熱により、クラックとその近傍が溶融して、表面エネルギーが減少する方向に移動するため、クラックが減少または消滅するものと考えられる。そして、さらに加熱が進むと造形物の結晶質・非結晶質内部へと拡散し、金属酸化物成分を含んだ状態で結晶が再結晶化すると考えられる。このような作用により、クラックにガラス浸潤させて単に埋める手法よりも、造形物の機械的強度をより高める効果を奏するものと推測される。
造形物のクラックを構成する面に無機粒子が存在すれば、前述のようにクラックの近傍が溶融し、クラックを減少または消滅させる効果がある。
クラック近傍における無機粒子の量は、金属成分含有液中の無機粒子の含有量や、クラックに金属成分含有液を吸収させる方法や、その回数などによって調整するとよい。
例えば、酸化アルミニウムを主成分とする造形物の場合、クラック近傍を、酸化アルミニウム62モル%に対して、酸化ジルコニウムが38モル%となる、共晶組成に近づけることで、クラック近傍がより溶融しやすくなる。クラック近傍を選択的に溶融させてクラックを減少または消滅させるには、酸化アルミニウムと酸化ジルコニウムの共焦点が約1840℃である場合、1840℃以上2070℃未満の温度で加熱することが好ましい。より好ましくは1850℃以上2060℃以下である。
また、Al−Gdを含む粉末から形成された造形物の場合は、Alを主成分とする相と、GdAlOを主成分とする相とを含む。前述したように、この造形物には、酸化ジルコニウム金属成分含有液を吸収させ(工程(ii))、1662℃以上1710℃以下の温度で加熱する(工程(iii))とよい。クラックから造形物内に侵入した酸化ジルコニウム粒子の成分が、造形物の結晶質および非晶質の内部に拡散して再結晶化する。その結果、得られるセラミックス物品には、蛍石構造のZrOを主成分とする相と、Alを主成分とする相と、GdAlOを主成分とする相の3相共晶が形成される。また、Al−Gdを含む粉末に、副成分として酸化テルビウム(Tb)の粉末を添加した場合、造形物には、Alを主成分とする相と、Gdサイトの一部がTbで置換された(Gd,Tb)AlOを主成分とする相とが含まれる。この場合も、同様に1662℃以上1710℃以下の温度で加熱する(工程(iii))と、クラックを減少または消滅させることができる。
工程(i)によって形成された直後の造形物は、エネルギービーム照射による溶融の後に急冷されて固化しているため、非晶質成分を多く含む。工程(ii)で吸収させる金属成分含有液を、造形物を構成する成分に基づいて適切に選択することで、工程(iii)の加熱処理の過程で造形物に含まれる非晶質成分の大部分を結晶質へと変化させることができる。また、加熱処理の過程では、造形物をある時間以上加熱すること、無機粒子に含まれる金属元素の酸化物を造形物の結晶内部に十分に拡散させ、再結晶化させることで高い機械的強度を得ることができる。工程(iii)における最高温度Tsの保持時間は、積算で1分以上が好ましく、5分以上がより好ましい。一方で、加熱処理の時間が長すぎると、セラミックス造形物を構成する結晶粒子の粒径が大きくなりすぎて、機械的強度の低下を招く場合がある。したがって、工程(iii)における最高温度Tsの保持時間は、積算で2時間以下が好ましく、1時間以下がより好ましい。さらに好ましくは30分以下である。
なお、本発明において加熱処理の時間とは、特別な記載がない限り、工程(iii)における加熱処理の最高温度Tsでの保持時間を指すものとする。また、加熱処理の積算時間とは、工程(iii)を一回実施する場合は加熱処理の最高温度Tsでの保持時間を指し、工程(iii)を所定の回数繰り返し実施した場合は各回の最高温度Tsでの保持時間を積算したものとする。
加熱の方法は特に限定されない。金属成分含有液を吸収させたセラミックス造形物に再びエネルギービームを照射することで加熱してもよいし、電気炉に入れて加熱してもよい。エネルギービームで加熱する場合は、造形物が上述の好ましい温度範囲で加熱されるように、エネルギービームの投入熱量と造形物の温度の関係を事前に熱電対等で把握する必要がある。加熱後の降温レートを調整できる電気炉は、造形物全体を加熱し、さらに冷却温度を制御することもできるため、新たなクラックの形成が抑制され好適である。
工程(ii)と工程(iii)を繰り返して実施すると、造形物からクラックが消滅していない限り、繰り返すたびに造形物中に無機粒子に含まれる金属元素の酸化物が拡散する。すると、造形物のクラック近傍とそれ以外の部分とで、粒子に起因する成分の濃度差が小さくなり、造形物のクラック近傍の融点(共晶点)とそれ以外の部分の融点との差が小さくなる。クラック近傍のみを溶融させるという観点において、前記融点の差は20℃以上あることが好ましく、より好ましくは30℃以上である。例えば、酸化アルミニウムを主成分とする粉末から形成された造形物に対しては、造形物中の酸化ジルコニウム成分が3モル%未満であれば、造形物の形状変化を抑えつつ、クラック近傍のみを溶融させることができるため好ましい。より好ましくは2モル%未満である。さらに好ましくは1モル%未満である。結晶粒子の粒子径が小さく、かつ、機械的強度に寄与するクラックが十分に低減されたセラミックス物品は、特に優れた機械的強度を有する。このようなセラミックス物品は、クラックの低減に要する加熱処理時間をできるだけ短くし、粒成長を抑制することによって実現することができる。
さらに、主成分と吸収体などの副成分とを含むような、複数種の化合物からなる粉末を用いる場合は、工程(iii)における加熱処理の積算時間は短い方が好ましい。これにより、複数の相が入り組んだ相分離構造を有するセラミックス物品が得られる。具体的には、少なくとも1種類の金属元素が共通する3種類の相を含む相分離構造であり、3種類の相のうち少なくとも2種類は複合化合物の相であるセラミックス物品が得られる。後に詳述するが、このような相分離構造を有するセラミックス物品は、1相あるいは2相からなるセラミックス物品よりも優れた機械的強度を有する。
<セラミックス物品>
本発明のセラミックス物品は、付加製造技術を用いて製造されるセラミックスを主成分とする物品であり、付加製造技術の特徴である自由形状と、優れた機械的強度とを両立していることが特徴である。付加製造技術の中でも、好ましくは粉末床溶融結合方式や指向性エネルギー積層方式にて製造される。
機械的強度に優れるセラミックス物品は、前述したように、複数種の材料からなる粉末を用いて積層造形を行い、得られた造形物に適切な成分の金属成分含有液中を吸収させた後の加熱処理の積算時間を短くすることによって実現することができる。そして、このようにして得られた機械的強度が特に優れたセラミックス物品は、少なくとも1種類の金属元素が共通する3種類の相を含む相分離構造を有する。少なくとも1種類の金属元素が共通する3種類の相のうち少なくとも2種類は複合化合物の相である。3種類の相に共通する金属元素が、セラミックス物品の主成分となる化合物に含まれる場合、セラミックス物品は、主成分の相と前記主成分を構成する少なくとも1種類の金属元素を含む2種類の複合化合物の相を含む、3つ以上の相からなる相分離構造を有する。言い換えると、少なくとも一種類の金属元素が共通する3種類の相を含む相分離構造を有している。
主成分として好ましくは、酸化アルミニウム、希土類アルミネート、酸化シリコン、ムライト、コージライトなどである。中でも酸化アルミニウムは汎用的な構造用セラミックスとして広く利用されているほか、熱伝導率が比較的高いため、直接造形方式の付加製造技術に好適である。
以下では、酸化アルミニウムを主成分とするセラミックス物品を例に説明するが、技術思想は酸化アルミニウムを主成分とするセラミックス物品に限定されるものではない。
例えば、酸化アルミニウム粉末と、副成分として酸化ガドリニウム粉末とを含む粉末にエネルギービームを照射して固化させた場合を考える。酸化アルミニウムと酸化ガドリニウムは共晶を形成しうる関係にあるため、主にAl相、GdAlO相、Gd相で構成される造形物が形成され得る。
前記造形物に金属成分含有液を吸収させた後、加熱処理して得られるセラミックス物品は、加熱処理の積算時間が短い場合には、Al相の他に、GdAlO相、GdAl相、Gd相、金属成分含有液の無機粒子に由来する相などを含み得る。このとき、セラミックス物品のクラックが十分に低減されていると、長時間加熱処理して得られるセラミックス物品よりも優れた機械的強度を示す。
優れた機械的強度が得られる要因として、セラミックス物品を構成する結晶粒子の粒径と、複合化合物相の存在とがあると考えられる。
工程(iii)における加熱処理の積算時間が短いと、粗大粒が形成される前に加熱処理が終了するため、小粒径で構成された機械的強度に優れるセラミックス物品が得られる。好ましい平均粒径は、20μm以下であり、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。
また、複合化合物が複数存在することで、セラミックス物品は多くの種類の相からなる複雑な相分離構造が形成される。また、一般的に複合化合物は主成分よりも高い靭性を有する場合が多い。従って、これらの複雑な相分離構造が機械的強度の向上に寄与していると考えられる。
複合化合物は粉末の主成分と副成分から、工程(i)の溶融および凝固時、および/または、工程(iii)の加熱処理時に生成されると考えられる。例えば、主成分である酸化アルミニウム粉末に副成分として酸化ガドリニウム粉末含む粉末を用いた場合は、上述のGdAlO相とGdAl相が複合化合物に当たる。GdAlOは主に工程(i)においてAlと共晶することで生成されると考えられる。一方で、GdAl相は主に工程(iii)の加熱処理時に、原料の溶け残りであるGd相と、Al相やGdAlO相との間における原子の固相拡散過程で生成されると考えられる。したがって、工程(iii)の加熱処理の積算時間が長いと、GdAl相は消滅し、セラミックス物品の相構成は平衡状態となるが、機械的強度は減少する。ここで、工程(i)において主成分との共晶で生成される複合化合物を複合化合物1、工程(iii)において過渡的に生成される複合化合物を複合化合物2とすると、複合化合物2の割合が多いほどセラミックス物品の機械的強度が高まると考えられる。
主成分と副成分とを含む粉末から付加製造技術で形成したセラミックス物品の場合、主成分の種類によって得られる機械的強度は異なるが、短時間加熱でクラック補修することによって、上述のようなメカニズムにより機械的強度をさらに増強させることができる。粉末の主成分としては、酸化アルミニウムのほかに、酸化シリコン、ムライト、コージライトなどが適用可能である。また、粉末の副成分としては、主成分と共晶を形成しうる成分、吸収体成分、焼結助剤成分、その他の化合物などが挙げられる。
主成分と副成分の好ましい組み合わせは、Al−Gd、Al−Tb、Al−Gd−Tb、Al−GdAlO−Tb、Al−Pr11、Al−Gd−Pr11、Al−GdAlO−Pr11、Al−Y、Al−YAlO、Al−Y−Tb、Al−YAlO−Tb、Al−YAl12−Tb、Al−Y−Pr11、Al−YAlO−Pr11、Al−YAl12−Pr11、Al−ZrO−Tb、Al−ZrO−Pr11、Al−SiO、Al−Gd−SiO、Al−GdAlO−SiO、Al−Y−SiO、Al−YAlO−SiO、Al−YAl12−SiO、Al−ZrO−SiO、SiO−Tb、SiO−Pr11、(MgO−Al−SiO)−Tb、(MgO−Al−SiO)−Pr11、(Al−SiO)−Tb、(Al−SiO)−Pr11などが挙げられる。なお、上記組み合わせでは、先頭の成分が主成分を指し、後続の成分が副成分を指す。これらの組み合わせの場合、複合化合物としては、複合酸化物が生成される。
本発明のセラミックス物品は、上述した少なくとも1種類の金属元素が共通する3種類の相とは異なる相をさらに含むことが好ましい。3種類の相に共通する金属元素が、セラミックス物品の主成分となる化合物に含まれる場合、主成分の相と、前記主成分を構成する少なくとも1種類の金属元素を含む2種類の複合化合物の相の3種類の相を有し、さらに別の相を含むことが好ましい。別の相は異なる相と表現することもある。前記別の相は工程(ii)で用いる金属成分含有液の無機粒子由来の成分で、造形物に含まれる主成分および2種類の複合化合物の少なくとも一つと共晶を形成しうる関係であることが好ましい。金属成分含有液の無機粒子由来の成分がある一定量以上存在することは、クラックが十分に補修されたことを意味し、また、このような別の相をさらに含むことで、セラミックス物品の相分離構造がより複雑になり、機械的強度が向上する。このような観点からより好ましくは、金属成分含有液の無機粒子由来の成分は、前記主成分と共晶を形成しうる関係であることである。十分な機械的強度と高い形状精度を得るためには、セラミックス物品に含まれる無機粒子由来の金属元素は、セラミックス物品に含まれる全金属元素に対して、0.3モル%以上5モル%以下の範囲で含まれることが好ましい。より好ましくは0.5モル%以上3モル%以下である。セラミックス物品に含まれる無機粒子由来の成分が多すぎると、物品の形状精度低下する傾向にある。
例えば、主成分として酸化アルミニウム粉末、副成分として酸化ガドリニウム粉末を含む粉末にエネルギービームを照射して形成した造形物を、酸化ジルコニウム粒子を含む金属成分含有液を用いてクラック補修して得られるセラミックス物品について説明する。このようにして得られたセラミックス物品は、Al相の他に、GdAlO相、GdAl相、Gd相、蛍石構造のZrO相などを含み得る。蛍石構造のZrO相が金属成分含有液の無機粒子に由来する相であって前述の別の相に該当する。蛍石構造のZrO相は、Zrサイトの一部が希土類元素(ここではGd)に置換されることで安定な相となる。
金属成分含有液の無機粒子に由来する相である蛍石構造のZrO相は、セラミックス物品の主成分となる相と比べて小さい粒径の結晶粒子で構成されていることが好ましい。主成分となる相と相対的に粒径が小さい別の相が、主成分となる相同士を連結するような働きをし、セラミックス物品の機械的強度に寄与していると考えられるためである。別の相の粒子径は、主成分となる相の粒子径の1/2以下が好ましく、1/3以下がより好ましい。
相分離構造がより複雑になるという観点では、複合化合物の少なくとも一つと主成分とが共晶を形成しうる関係であることが好ましい。
<評価方法>
本発明における、造形物の評価方法について説明する。
(機械的強度)
造形物の機械的強度は、ファインセラミックスの室温曲げ強度試験のJIS規格であるR1601に基づいた3点曲げ試験によって評価した。3点曲げ強度は、3点曲げ強度は、5個の試験片それぞれについて、破壊されたときの最大荷重をP[N]、外部支点間距離をL[mm]、試験片の幅をw[mm]、試験片の厚さをt[mm]としたとき、
3×P×L/(2×w×t2) (式1)
を用いて算出し、それらを平均した値とした。
(相対密度)
相対密度[%]は、造形物のかさ密度(重量を体積で割ったもの)を理論密度で割って算出した。理論密度は、結晶構造から算出した。結晶構造は、X線回折測定を実施してリートベルト解析を行うことにより特定した。
(結晶構造)
セラミックス物品を鏡面に研磨し、X線回折(XRD)、電子線回折、走査電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析(SEM−EDX)および透過電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析(TEM−EDX)により、物品中の相の結晶構造と組成を調べた。そして、相分離構造を走査電子顕微鏡−電子線後方散乱回折(SEM−EBSD)により分析した。
さらに、前記計測面の100μm×100μmの視野サイズで異なる場所10か所について、SEM−EDXおよびEBSDの同時分析を行い、組成と結晶相についてマッピングを行った。小さい相が含まれる場合は、透過電子顕微鏡(TEM)を用いることで、同様に組成ならびに結晶構造を解析することができる。
相を構成する結晶粒子の粒径は、EBSDを用いて、計測面にて観察される同一相内の300個以上の結晶粒子を観察し、各結晶粒子の円相当径の中央値を算出すること算出した。
(組成分析)
粉末、造形物あるいはセラミックス物品中の金属元素の含有量は、誘導結合プラズマ発光分析(ICP−AES)、GDMS、ICP−MS、蛍光X線分析(XRF)、SEM−EDXなどにより測定した。
また、造形物やセラミックス物品中の各相の構成比は、上述の結晶構造分析と組成分析を組み合わせて、測定・算出した。
(実施例1)
平均粒子径が約20μmのα−Al粉末、平均粒子径が約35μmのGd粉末、平均粒子径が約5μmのTb3.5粉末(Tb粉末)を用意し、モル比がAl:Gd:Tb3.5=77.4:20.8:1.8となるように各粉末を秤量した。各秤量粉末を乾式ボールミルで30分間混合して混合粉末(原料粉末)を得た。
ICP発光分光分析により前記原料粉末の組成分析を行ったところ、酸化ジルコニウムの含有量は1モル%未満であった。次に、上述した図1に示す工程と同様の工程を経て実施例1の造形物として、5mm×42mm×6mmの直方体を作製した(工程(i))。
造形物の形成には、50Wのファイバーレーザーが搭載されている3D SYSTEMS社製のProX DMP 100(商品名)を用いた。
最初に、ローラーを用いて、アルミナ製の基台130上に、前記原料粉末からなる20μm厚の一層目の粉末層を形成した(図1(a)、(b))。次いで、30Wのレーザービームを、描画速度140mm/s、描画ピッチ100μmで走査した。図4(a)に示すように、描画ラインが長方形の各辺に対して斜め45度となるようレーザービームを走査しながら粉末に照射し、5mm×42mmの長方形の領域内の粉末を溶融および凝固させ、固化部100を形成した(図1(c))。
次に、固化部100を覆うように、ローラーにて20μm厚の粉末層を新たに形成し、レーザービームを走査しながら前記粉末層に照射し、5mm×42mmの長方形の領域にある材料粉末を溶融および凝固させ、固化部100を形成した(図1(d)、(e))。このとき、図4(b)に示すように、一層目の描画ラインと直交する方向にレーザーを走査させ、粉末を溶融および凝固させた。このような工程を、固化部の高さが6mmになるまで繰り返し、42mm×5mm×6mmの造形物を5個作製した。
光学顕微鏡でこれら造形物の表面を観察したところ、造形物表面の凹凸のRaは20μm以下であった。光学顕微鏡で得られた画像を図5に示す。図5からわかるように、レーザービームの描画方向に依存したクラックが形成されていた。すなわち、長方形の各辺に対してほぼ斜め45度となるような方向に延びたクラックが存在していた。
それぞれの前記造形物をアルミナ製の基台から切り離し、研磨によって、3点曲げ強度試験用のW40mm×D4mm×H3mmの造形物を得た。研磨面をSEMで観察すると、レーザービームの描画方向に依存した数nmから数μm幅のクラックが形成されていた。すなわち、光学顕微鏡での観察結果と同様に、長方形の各辺に対してほぼ斜め45度となるような方向に格子状のクラックが形成されていた。
金属成分含有液として酸化ジルコニウムの粒子を含む酸化ジルコニウム含有液1を用いた。酸化ジルコニウムは、造形物の主成分である酸化アルミニウムと共晶を形成し得る。
粒子として平均粒子径10nmの酸化ジルコニウム粒子(関東電化工業社製)と、分散剤としてアクリル酸2−ヒドロキシエチル、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランと、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとをそれぞれ用いた。これらを分散液中の酸化ジルコニウムの含有量が70重量%となるように混合し、均一撹拌をして酸化ジルコニウム含有液1を得た。
試験用に加工した上記造形物を前記酸化ジルコニウム含有液1に浸漬し、1分間減圧脱気して、造形物内部まで液を吸収させたのち、1時間自然乾燥させた(工程(ii))。
続いて、酸化ジルコニウム含有液1を吸収させた造形物を電気炉に入れて加熱した。大気雰囲気において、酸化アルミニウムと酸化ガドリニウムと酸化ジルコニウムの3相の共晶点(1662℃)以上、造形物の融点(1720℃)以下である1670℃まで2時間で昇温させ、1670℃で10分間保持した(工程(iii))。その後、通電を終了して自然放冷により冷却し、実施例1のセラミックス物品を得た。実施例1では、それぞれの造形物に酸化ジルコニウム含有液1を吸収させる工程(工程ii))と加熱処理する工程(工程(iii))をそれぞれ一回実施することで、3点曲げ強度試験用のセラミックス物品を5個作製した。
得られたセラミックス物品について、寸法精度を評価した。具体的には、工程(ii)および工程(iii)を実施する前の造形物の各辺の長さに対する実施後に得られる物品の各辺の長さの変化率を、寸法精度(形状精度という場合もある)とする。実施例1の寸法精度は、工程(ii)および工程(iii)を実施する前の研磨後の造形物の寸法(W40mm×D4mm×H3mm)に対して、各辺1%以内であった。また、工程(ii)および工程(iii)の実施前後で、造形物の各辺の長さの比はほぼ一致しており、撓みや表面の凹凸なども見られず、造形物とセラミックス物品は相似形状であった。
相対密度の平均値は95.9%であった。
3点曲げ試験には、インストロン社製の圧縮試験機を用いた。実施例1のセラミックス物品5本について試験したところ、3点曲げ強度の平均値は173MPaであった。
セラミックス物品に含まれる相について分析した。すると、Al(主成分)よりなる相、GdAlO(複合化合物1)よりなる相、GdAl(複合化合物2)よりなる相、Gdよりなる相、および、蛍石構造の酸化ジルコニウムを主成分とする相(前述の別の相に相当)の5相が確認された。機械的強度に大きく寄与すると考えられるGdAl相は、XRDの結果から、4重量%の割合でセラミックス物品に存在していた。蛍石構造の酸化ジルコニウムを主成分とする相を構成する主な金属元素は、Zr、Gd、Tbであり、Zr、Gd、Tb以外の金属元素は、1モル%未満であった。また、蛍石構造の酸化ジルコニウムを主成分とする相に含まれる金属元素のうち、希土類元素であるGd、Tbの割合は平均して30モル%であった。物品内における酸化ジルコニウムを主成分とする相の分布に偏りは見られず、酸化ジルコニウム成分がクラック部から造形物中に拡散し、希土類元素を取り込みながら相分離構造として再結晶化したことがわかる。
セラミックス物品に含まれるZrの量を調べると、本実施例のセラミックス物品を構成する金属元素のうち、Zrの量は、0.7モル%であった。また、本実施例ないし以下の実施例で得られる物品は、前述のGdを構成元素とする相において、GdサイトにTbが固溶された状態を含んでいても良い。
EBSDにより計測したセラミックス物品を構成する結晶粒子の平均粒径は、4.5μmであった。
以上の結果から、複数の相が複雑に入り組んだ相分離構造と主成分よりも高い靭性を有する複合化合物の存在、および結晶粒子が小粒径であることにより、高い機械的強度のセラミックス物品が得られたと考えられる。
(実施例2)
造形物の形成に、300Wのファイバーレーザーが搭載されている3D SYSTEMS社製のProX DMP 200(商品名)を用いて造形条件を調整した以外は、実施例1と同様にして、3点曲げ強度試験用にW40mm×D4mm×H3mmの造形物を5個作製した(工程(i))。造形条件の設定は、レーザービームの出力を294W(300Wの98%)、描画速度を1000mm/s、描画ピッチを100μmとした。
光学顕微鏡でこれら造形物の表面を観察したところ、造形物表面の凹凸のRaは20μm以下であった。
続いて、造形した5個の前記造形物それぞれをアルミナ製の基台から切り離し、研磨することによって、3点曲げ強度試験用のW40mm×D4mm×H3mmの造形物を得た。研磨面をSEMで観察すると、レーザービームの描画方向に依存した数nmから数μm幅のクラックが形成されていた。すなわち、光学顕微鏡での観察結果と同様に、長方形の各辺に対してほぼ斜め45度となるような方向に格子状のクラックが形成されていた。
実施例1と同様にして、造形物に酸化ジルコニウム含有液1を吸収させる工程(ii)および加熱する工程(iii)を実施し、セラミックス物品5個を作製した。得られたセラミックス物品について、実施例1と同様に、3点曲げ強度、寸法精度、相対密度、および、セラミックス物品を構成する相の結晶構造と組成の分析を行った。
実施例2で得られたセラミックス物品の寸法精度は、1%以下と優れていた。また、実施例1のセラミックス物品と同様に、工程(ii)および工程(iii)の実施前後で造形物の形状はほぼ変化せず、相似形状を維持していた。
セラミックス物品に含まれる相について分析した。すると、Al(主成分)よりなる相、GdAlO(複合化合物1)よりなる相、GdAl(複合化合物2)よりなる相、Gdよりなる相、および、蛍石構造の酸化ジルコニウムを主成分とする相(前述の別の相に相当)の5相が確認された。機械的強度に大きく寄与すると考えられるGdAl(複合化合物2)の相は、XRDの結果から4重量%の割合でセラミックス物品に存在していた。蛍石構造の酸化ジルコニウムを主成分とする相を構成する主な金属元素は、Zr、Gd、Tbであり、Zr、Gd、Tb以外の金属元素は、1モル%未満であった。また、蛍石構造の酸化ジルコニウムを主成分とする相に含まれる金属元素のうち、希土類元素の割合は平均して30モル%であった。酸化ジルコニウムを主成分とする相の分布に偏りはなく、酸化ジルコニウム成分がクラック部から造形物中に拡散し、希土類元素を取り込みながら相分離構造として再結晶化したことがわかる。セラミックス物品に含まれるZrの量を調べると、本実施例のセラミックス物品を構成する金属元素のうち、Zrの量は、0.7モル%であった。
EBSDにより計測したセラミックス物品を構成する結晶粒子の粒径は、4.0μmであった。
これら複数の相が複雑に入り組んだ相分離構造と主成分よりも高い靭性を有する複合化合物の存在、および小粒径により、高い機械的強度のセラミックス物品が得られたと考えられる。
(実施例3)
実施例1と同様にして、3点曲げ強度試験用にW40mm×D4mm×H3mmの造形物を作製した(工程(i))。光学顕微鏡で実施例3の造形物の表面を観察したところ、造形物表面の凹凸のRaは20μm以下であった。
平均粒子径10nmのジルコニア微粒子(関東電化工業社製)と分散剤としてアクリル酸2−ヒドロキシエチル、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを混合し均一撹拌した。これに、分散液中のジルコニアの含有量が70重量%となるように溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、均一撹拌をして酸化ジルコニウム含有液2を得た。
実施例1と同様の条件で上記酸化ジルコニウム含有液2を造形物に吸収させる工程(ii)および加熱する工程(iii)を実施し、実施例3のセラミックス物品5個を作製した。
得られたセラミックス物品について、実施例1と同様に、3点曲げ強度、寸法精度、相対密度、および、セラミックス物品を構成する相の結晶構造と組成の分析を行った。
実施例3の3点曲げ強度、相対密度、結晶粒径、およびGdAl相の存在比の評価結果を、実施例1の結果と共に表1に示す。
実施例3のセラミックス物品の寸法精度は1%以下と優れていた。また、実施例1のセラミックス物品と同様に、工程(ii)および工程(iii)の実施前後で造形物の形状は変化せず、相似形状を維持していた。
実施例3のセラミックス物品は、実施例1と同様の相分離構造を有していた。すなわち、Alよりなる相、GdAlO(複合化合物1)よりなる相、GdAl(複合化合物2)よりなる相、Gdよりなる相、および、蛍石構造の酸化ジルコニウムを主成分とする相の5相が確認された。機械的強度に大きく寄与すると考えられるGdAl相は、XRDの結果から4重量%の割合でセラミックス物品に存在していた。蛍石構造の酸化ジルコニウムを主成分とする相を構成する主な金属元素は、Zr、Gd、Tbであった。
本実施例で得られたセラミックス物品においても、酸化ジルコニウムを主成分とする相の分布に偏りはなく、酸化ジルコニウム成分がクラック部から造形物中に拡散し、希土類元素を取り込みながら相分離構造として再結晶化したと考えられる。セラミックス物品に含まれるZrの量を調べると、本実施例のセラミックス物品を構成する金属元素のうち、Zrの量は、0.7モル%であった。
(実施例4)
実施例1と同様にして、3点曲げ強度試験用にW40mm×D4mm×H3mmの造形物を作製した(工程(i))。光学顕微鏡で造形物の表面を観察したところ、造形物表面の凹凸のRaは20μm以下であった。
本実施例の工程(ii)では、実施例1と同様の分散剤と溶媒を用いて15重量%の酸化ジルコニウム含有液3を調整して用いた。造形物に酸化ジルコニウム含有液3を吸収させる工程(工程(ii))、および、酸化ジルコニウム含有液を吸収させた造形物を加熱する工程(工程(iii))も、実施例1と同様の条件で行った。
実施例4では工程(ii)と工程(iii)を交互に3回ずつ繰り返した。このようにして、実施例4について、強度試験用のセラミックス物品5個を得た。
実施例1と同様に、実施例4のセラミックス物品についても、3点曲げ強度、相対密度、寸法精度、および、造形物を構成する相の結晶構造と組成の分析を行った。
実施例4の3点曲げ強度、相対密度、粒径、およびセラミックス物品中のGdAl(複合化合物2)の相の存在割合の評価結果を、実施例1の結果と共に表1に示す。
実施例4のセラミックス物品の寸法精度は1%以下と優れていた。また、実施例1の造形物と同様に、工程(ii)および工程(iii)の実施前後で造形物の形状は変化せず、相似形状を維持していた。
また、実施例4のセラミックス物品も、実施例1と同様の相分離構造を有していた。すなわち、Alよりなる相、GdAlO(複合化合物1)よりなる相、GdAl(複合化合物2)よりなる相、Gdよりなる相、および、蛍石構造の酸化ジルコニウムを主成分とする相の5相が確認された。機械的強度に大きく寄与すると考えられるGdAl(複合化合物2)よりなる相は、XRDの結果から2重量%の割合でセラミックス物品に存在していた。蛍石構造の酸化ジルコニウムを主成分とする相を構成する主な金属元素は、Zr、Gd、Tbであった。
実施例4のセラミックス物品も、酸化ジルコニウムを主成分とする相の分布に偏りはなく、酸化ジルコニウム成分がクラック部から造形物中に拡散し、希土類元素を取り込みながら相分離構造として再結晶化したものと考えらえる。セラミックス物品に含まれるZrの量を調べると、本実施例のセラミックス物品を構成する金属元素のうち、Zrの量は、0.4モル%であった。
(実施例5および実施例6)
実施例1と同様にして、3点曲げ強度試験用にW40mm×D4mm×H3mmの造形物を作製した(工程(i))。光学顕微鏡で造形物の表面を観察したところ、造形物表面の凹凸のRaは20μm以下であった。
水酸化ジルコニウム水溶液とHNOの混合溶液を90℃で30分間加熱したのち、前記混合液をろ過して乾燥させ、前駆体粉末を得た。前記前駆体粉末を1000℃で仮焼することで平均粒子径が40nmの酸化ジルコニウム原料粉末を得た。
同様にして、前記前駆体粉末を1030℃で仮焼することで、平均粒子径が90nmの酸化ジルコニウム原料粉末を得た。
前記酸化ジルコニウム原料粉末を用いて、実施例1と同様にして、平均粒子径が40nmの粒子を含む酸化ジルコニウム含有液4と90nmの粒子を含む酸化ジルコニウム含有液5を作製した。酸化ジルコニウム含有液4は、液中の酸化ジルコニウムの含有量が30重量%となるように調合した。酸化ジルコニウム含有液5は、液中の酸化ジルコニウムの含有量が15重量%となるように調合した。
実施例5では、金属成分含有液として酸化ジルコニウム含有液4を用いた。造形物に酸化ジルコニウム含有液4を吸収させる工程(工程(ii))、および、酸化ジルコニウム含有液4を吸収させた造形物を加熱する工程(工程(iii))は、実施例1と同じ条件で行った。実施例5では工程(ii)と工程(iii)を交互に3回ずつ繰り返した。
実施例6では、金属成分含有液として酸化ジルコニウム含有液5を用いた。造形物に酸化ジルコニウム含有液5を吸収させる工程(工程(ii))、および、酸化ジルコニウム含有液5を吸収させた造形物を加熱する工程(工程(iii))は、実施例1と同じ条件で行った。実施例6では工程(ii)と工程(iii)を交互に5回ずつ繰り返した。
このようにして、実施例5および実施例6のそれぞれについて、強度試験用のセラミックス物品5個を得た。
実施例1と同様に、実施例5および実施例6のセラミックス物品それぞれについて、3点曲げ強度、相対密度、寸法精度、および、造形物を構成する相の結晶構造と組成の分析を行った。評価結果を、実施例1の結果と共に表1に示す。
実施例5および6ともにセラミックス物品の寸法精度は1%以下と優れていた。また、実施例1の造形物と同様に、工程(ii)および工程(iii)の実施前後で造形物の形状は変化せず、相似形状を維持していた。
実施例5および6のセラミックス物品は、実施例1と同様の相分離構造を有していた。すなわち、Alよりなる相、GdAlO(複合化合物1)よりなる相、GdAl(複合化合物2)よりなる相、Gdよりなる相、および、蛍石構造の酸化ジルコニウムを主成分とする相の5相を含んでいた。蛍石構造の酸化ジルコニウムを主成分とする相を構成する主な金属元素は、Zr、Gd、Tbであった。
酸化ジルコニウムを主成分とする相の分布に偏りはなく、酸化ジルコニウム成分がクラック部から造形物中に拡散し、希土類元素を取り込みながら相分離構造として再結晶化していた。実施例5および6それぞれのセラミックス物品に含まれるZrの量を調べると、実施例5のZrの量は1.1モル%、実施例6のZr量は0.5モル%であった。
(実施例7および実施例8)
平均粒子径が約38μmのSiO粉末、平均粒子径が4μmのTb粉末を用意し、Siが酸化物換算で96.5モル%、Tbが酸化物換算で3.5モル%となるように各粉末を秤量した。各秤量粉末を乾式ボールミルで30分間混合して混合粉末(原料粉末)を得た。ICP発光分光分析により前記原料粉末の組成分析を行ったところ、酸化アルミニウムの含有量は1モル%未満であった。
次に、レーザービームの出力を47.5W、描画速度を60mm/s、描画ピッチを80μmとした点を除き、実施例1と同様にして、実施例7および実施例8の造形物として、5mm×42mm×6mmの直方体を作製した。光学顕微鏡で造形物の表面を観察したところ、造形物は多孔質であり、造形物表面の凹凸の孔を除いた部分のRaは20μm以下であった。
作製した造形物をアルミナ製の基台から切り離し、研磨によって、3点曲げ強度試験用のW40mm×D4mm×H3mmの造形物を得た。
金属成分含有液としては、酸化アルミニウム含有液を採用した。造形物の主成分である酸化シリコンと酸化アルミニウムは共晶関係にある。平均粒子径25nmのアルミナ微粒子(関東化学社製)と分散剤としてアクリル酸2−ヒドロキシエチル、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランと、溶媒としてメチルエチルケトンを分散液中のアルミナの含有量が70重量%となるように混合し、均一撹拌をして酸化アルミニウム含有液1を得た。
試験用に加工した上記造形物に前記酸化アルミニウム含有液1を吸収させ、1分間減圧脱気して、造形物内部まで液を含浸させたのち、1時間自然乾燥させた(工程(ii))。
続いて、酸化アルミニウム含有液1を吸収させた造形物を電気炉に入れて加熱した。大気雰囲気において酸化シリコンと酸化アルミニウムの共晶点以上、酸化シリコンの融点以下である1610℃まで2.5時間で昇温させ、1610℃で50分間保持した後、通電を終了して5.0時間で200℃以下に冷却した(工程(iii))。
実施例7では、造形物に酸化アルミニウム含有液1を吸収させる工程(工程(ii))と加熱処理の工程(工程(iii))を交互に2回ずつ繰り返し、セラミックス物品5個を作製した。
実施例8では、平均粒子径25nmのアルミナ微粒子(関東化学社製)を1100℃で仮焼した後に粉砕して平均粒子径が90nmの酸化アルミニウム粒子を作製し、酸化アルミニウム金属成分含有液2の原料として使用した。酸化アルミニウム粒子を変えた点以外は、実施例7と同様の方法で実施例8のセラミックス物品5個を作製した。
実施例1と同様に、実施例7および実施例8のセラミックス物品それぞれについて、3点曲げ強度、相対密度、寸法精度、および、造形物を構成する相の結晶構造と組成の分析を行った。実施例7および実施例8の結果を表1に示す。
実施例7および8ともにセラミックス物品の寸法精度は1%以下と優れていた。また、他の実施例の造形物と同様に、工程(ii)および工程(iii)の実施前後で造形物の形状はほぼ変化せず、相似形状を維持していた。
実施例7および8のセラミックス物品は、SiO(クリストバライト)相、SiTb相およびAlよりなる相を含む、相分離構造を有していた。さらに、Al−SiOからなる不定比の複合酸化物も存在していた。SiTb相とAl−SiOからなる不定比の複合酸化物が二種類の複合酸化物の相に対応し、Al相が、金属成分含有液の無機粒子由来の相に対応する。
酸化アルミニウムよりなる相の分布に偏りはなく、酸化アルミニウム成分がクラック部から造形物中に拡散し、相分離構造として再結晶化していた。実施例7および8それぞれのセラミックス物品に含まれるAlの量を調べると、実施例7のAlの量は0.8モル%、実施例8のAl量は0.4モル%であった。
(比較例1)
実施例1と同様にして、W40mm×D4mm×H3mmの造形物5個を作製した。光学顕微鏡で造形物の表面を観察したところ、造形物表面の凹凸のRaは20μm以下であった。
作製した造形物に、金属成分含有液を吸収させる工程(工程(ii))、および、金属成分含有液を含浸させた造形物を加熱する工程(工程(iii))を実施しなかった以外は、実施例1と同様にして物品を作製した。
比較例1の造形物についても、実施例1と同様に、3点曲げ強度、相対密度造形物を構成する相の結晶構造と組成の評価を行った。3点曲げ強度と相対密度の評価結果を表1に示す。比較例1は、加熱する工程(工程(iii))を実施していなため、一部非晶質状態の領域が存在していた。そこで、粒径評価は、結晶部のみで行っている。
比較例1の造形物は、主にAlよりなる相と、GdAlOよりなる相と、原料の溶け残りであるGd相と組成にゆらぎのあるアモルファス相で構成されていた。比較例1の造形物には、レーザービームの描画方向に依存したクラックが形成されていた。すなわち、長方形の各辺に対してほぼ斜め45度となるような方向に延びたクラックが存在していた。クラックの幅は数nmから数μmであった。
(比較例2)
実施例1と同様にして、W40mm×D4mm×H3mmの造形物5個を作製し、光学顕微鏡で造形物の表面を観察したところ、造形物表面の凹凸のRaは20μm以下であった。
得られた造形物に、無機酸化物金属成分含有液を吸収させる工程(工程(ii))を省略して工程(iii)のみを実施した点を除き、実施例1と同様にして3点曲げ強度試験用のW40mm×D4mm×H3mmの物品を作製した。つまり、造形後、造形物を電気炉に入れて加熱処理だけを行った。大気雰囲気において1670℃まで2.5時間で昇温させ、1670℃で50分間保持した後、通電を終了して自然放冷により冷却する工程を3回繰り返して、セラミックス物品5個を作製した。
実施例1と同様に、比較例2のセラミックス物品についても、3点曲げ強度、相対密度、および、セラミックス物品を構成する相の結晶構造と組成の分析を行った。
3点曲げ強度、相対密度の計測結果を表1に示す。分析の結果、比較例2のセラミックス物品は、Alよりなる相、GdAlOよりなる相の2相で構成されていた。また、比較例2の比較用セラミックス物品には、レーザービームの描画方向に依存したクラックが残存していた。すなわち、長方形の各辺に対してほぼ斜め45度となるような方向に延びたクラックが残存していた。クラックの幅は数nmから数μmであった。
(比較例3および比較例4)
平均粒子径が約20μmのα−Al粉末を用意した。ICP発光分光分析により前記原料粉末の組成分析を行ったところ、酸化ジルコニウムの含有量は1モル%未満であった。次に、上述した図1と同様の工程を経て比較例3および比較例4にかかる造形物をそれぞれ5個ずつ作製した。
比較用造形物の形成には、レーザーの出力を50W、レーザーの照射速度を50mm/s、レーザーの描画ピッチを50μmとした以外は実施例1と同様の条件にて、W50mm×D10mm×H8mmの造形物を作製した。比較用造形物の表面の凹凸は目視で確認できるほど大きく、Raは計測不可であった。
造形物の形状を研磨によってW40mm×D4mm×H3mmに整えた。光学顕微鏡で研磨後の造形物の表面を観察したところ、レーザービームの描画方向に依存したクラックが形成されていた。すなわち、長方形の各辺に対してほぼ斜め45度となるような方向に延びたクラックが存在していた。
25nmの粒子径を有するFe粒子(関東化学社製)と分散剤としてアクリル酸2−ヒドロキシエチル、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを混合し均一撹拌した。これに、分散液中の酸化鉄の含有量が70重量%となるように溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、均一撹拌をして酸化鉄含有液を得た。
なお、本比較例の造形物を構成する成分である酸化アルミニウムと、分散液中の酸化鉄とは共晶を形成しない。
比較例3では、熱処理の最高温度を、Al−Fe系の状態図を参照し、相変化が生じる1700℃より高い温度1800℃とした。その他は、実施例1と同様の条件で酸化鉄含有液を造形物に吸収させた後に熱処理を施し、セラミックス物品を5個得た。
また、比較例4では、熱処理の最高温度を、Al2O3−Fe2O3系の相変化が生じる1700℃より低い温度1650℃とした以外は、比較例3と同様にして、セラミックス物品5個を作製した。
比較例3および比較例4のセラミックス物品についても、実施例1と同様に、3点曲げ強度、寸法精度、相対密度、および、セラミックス物品を構成する相の結晶構造と組成の分析を行った。評価結果を表1に示す。
比較例3および比較例4のセラミックス物品の寸法精度は、いずれも1%以下であった。
また、比較例3および比較例4のセラミックス物品の中心部付近の断面を研磨してSEMで観察したところ、いずれのセラミックス物品にも、描画方向に依存したクラックが残存していた。比較例3のセラミックス物品では、コランダム構造の(Al、Fe)で構成され、クラック近傍でFeが多く検出され、相分離構造は見られなかった。比較例4のセラミックス物品は、そのほとんどがコランダム構造のAlで構成され、クラック近傍に部分的にスピネル構造のAlFeが形成されていた。
(比較例5)
造形物に金属成分含有液を吸収させる工程(工程(ii))を実施しなかった点を除き、実施例7と同様にして、3点曲げ強度試験用にW40mm×D4mm×H3mmの造形物を作製した。つまり、金属成分含有液を吸収させる工程(工程(ii))だけを省略し、造形物を電気炉に入れて加熱処理(工程iii))は行った。大気雰囲気において1610℃まで2.5時間で昇温させ、1610℃で50分間保持した後、通電を終了して自然放冷により冷却する工程を2回繰り返して、セラミックス物品5個を作製した。
比較例5のセラミックス物品についても、実施例7と同様に、3点曲げ強度、相対密度、および、比較用セラミックス物品を構成する相の結晶構造と組成の分析を行った。計測結果を表1に示す。
分析の結果、比較例5のセラミックス物品は、SiO(クリストバライト)相とSiTb相の2相で構成されていた。また、比較例5のセラミックス物品にも、レーザービームの描画方向に依存した、方形の各辺に対してほぼ斜め45度となるような方向に延びたクラックが残存していた。クラックの幅は数nmから数μmであった。
Figure 2021066653
(考察)
表1に示した結果から、以下のことが分かった。
本発明の金属成分含有液を用いて作製した、実施例1〜6にかかる、主成分が酸化アルミニウムのセラミックス物品は、本発明の金属成分含有液を使用しなかった比較例1〜比較例4のセラミックス物品に較べ、3点曲げ強度が大きく向上した。このことから、本発明にかかる金属成分含有液を用いることで、造形物の機械的強度を大きく向上させることができることが確認できた。
また、造形物を構成する酸化アルミニウムと共晶を形成しない酸化鉄を主成分とする粒子を含む金属成分含有液を用いて作製した比較例3および4は、クラックがほぼ造形時のまま残存しており、実施例1〜6のような高い機械的強度は得られなかった。比較例3および4では、酸化鉄粒子中のFe成分が造形物中に拡散したのみで、クラック部の溶融が発生しなかったと考えられる。
それに対して、造形物を構成する酸化アルミニウムと共晶になりうる酸化ジルコニウム金属成分含有液を用いた実施例1〜6では、クラック近傍のみで溶融が起こり、造形物の形状および寸法を保ちながらクラックが低減ないし消滅されたと考えられる。また、酸化ジルコニウム粒子成分を取り込んだ形で再結晶化されたため、酸化アルミニウムを主成分とするセラミックス部品において100MPa以上の高い機械的強度(3点曲げ強度)が得られたと考えられる。
また、加熱処理の積算時間が30分以下と短い実施例1〜5では、セラミックス物品を構成する結晶粒子の粒径が10μm以下と小さく、加熱処理の積算時間が50分と長い実施例6に比べて高い機械的強度が得られた。
さらに、実施例1〜6では、複合化合物GdAl相の存在比が大きいほど優れた機械的強度が得られる傾向であった。
実施例7および8の酸化シリコンを主成分とするセラミックス物品は、相対密度が82.2%および80.3%とポーラスであった。これは、レーザー照射による溶融時の酸化シリコン成分の粘性が高いため、ポーラス状態になったと推測される。作製された造形物がポーラスであったにも関わらず、本発明の金属成分含有液を用いることで20MPa前後の機械的強度が得られた。それに対して、本発明の分散液を使用しなかった比較例5は3点曲げ強度が7MPaと低かった。
実施例7と実施例8を比較すると、小さい粒子径の分散液を用いた実施例7は、大きい粒子径の分散液を用いた実施例8よりも高い機械的強度が得られた。これは、小さい粒子がクラックの奥まで侵入し、作用したためと考えられる。
実施例1〜4の比較から、分散液中の無機酸化物粒子の含有量が大きいと、工程(ii)および工程(iii)の実施回数が少なくても高い機械的強度が得られることがわかる。
さらに、実施例3および4を比較すると、工程(ii)および工程(iii)を多数回繰り返すほど、造形物の3点曲げ強度が向上することがわかる。これは、補修されたクラックの割合が増えたためと考えられる。
すべての実施例、および比較例1、2において、造形物の表面の凹凸のRaは20μm以下と高い造形精度が得られたのに対し、比較例3および4では、造形物の表面および側面に目視で確認できる程度(100〜300μmと推測)の凹凸が見られた。これは、各実施例で用いた原料粉末であるセラミックス粉末が、照射するレーザービームに対してエネルギー吸収の高い成分、具体的にはTb3.5粉末(Tb粉末)を含んでいなかったためと認められる。
以上のように本発明の金属成分含有液を用いれば、付加製造において、高い形状精度を達成しながら造形物の機械的強度の向上を実現することができ、複雑形状や微細形状でありながら高い機械的強度を有するセラミックス物品を得ることが可能となる。さらに、本発明に係るセラミックス物品は、セラミックスを主成分とする粉末と、前述の溶媒と金属元素を含む無機粒子とを含む前記金属成分含有液とを含むセラミックス物品製造用キットを用いることで、容易に製造することができる。
本発明によれば、緻密で複雑な形状の造形物が得られる直接造形方式の特徴をそのまま生かしつつ、さらに造形物の機械的強度を向上させることができる金属成分含有液を提供することができる。また、金属成分含有液を用いたセラミックス物品の製造方法を提供することができる。
100 固化部
101 粉末
102 粉末層
103 未固化の粉末
110 造形物
130 基台
151 ステージ
152 ローラー
180 エネルギービーム源
181 スキャナ部
201 クラッディングノズル
202 粉末供給孔
203 エネルギービーム

Claims (42)

  1. (i)セラミックスを主成分とする粉末にエネルギービーム照射して焼結または溶融および凝固させ、固化部を形成することによりセラミックス造形物を得る工程と、
    (ii)前記セラミックス造形物に、金属元素を含有する無機粒子を含む金属成分含有液を吸収させる工程と、
    (iii)前記金属成分含有液を吸収させた前記セラミックス造形物を加熱する工程と、を有することを特徴とするセラミックス物品の製造方法。
  2. 前記金属元素の酸化物は、前記セラミックス造形物に含まれる少なくとも一種類の化合物と共晶を形成しうる関係にあることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス物品の製造方法。
  3. 前記金属元素の酸化物が、前記セラミックス造形物の主成分と共晶を形成しうる関係にあることを特徴とする請求項2に記載のセラミックス物品の製造方法。
  4. 前記工程(iii)における加熱処理の温度が、前記セラミックス造形物に含まれる少なくとも一種類の化合物と前記金属元素の酸化物との共晶点以上であることを特徴とする請求項2または3に記載のセラミックス物品の製造方法。
  5. 前記無機粒子の平均粒径が300nm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のセラミックス物品の製造方法。
  6. 前記無機粒子が前記金属元素の酸化物であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のセラミックス物品の製造方法。
  7. 前記粉末の主成分が、酸化アルミニウムまたは酸化シリコンであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のセラミックス物品の製造方法。
  8. 前記粉末が、希土類元素の酸化物を含むことを特徴とする請求項1乃至7いずれか一項に記載のセラミックス物品の製造方法。
  9. 前記希土類元素の酸化物が、酸化ガドリニウム、酸化イットリウム、酸化テルビウムおよび酸化プラセオジムの群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項8に記載のセラミックス物品の製造方法。
  10. 前記粉末の主成分が酸化シリコンであり、前記金属元素の酸化物が酸化ジルコニウムまたは酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のセラミックス物品の製造方法。
  11. 前記粉末の主成分が酸化アルミニウムであり、前記金属元素からなる金属酸化物が酸化ジルコニウムまたは酸化シリコンであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のセラミックス物品の製造方法。
  12. 前記工程(i)におけるエネルギービームが、レーザービームまたは電子ビームであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載のセラミックス物品の製造方法。
  13. エネルギービームを用いる付加製造法によって造形されたセラミックス造形物のクラック補修に用いられる金属成分含有液であって、
    前記金属成分含有液は、溶媒と、金属元素を含み平均粒径が300nm以下の無機粒子と、を含んでおり、
    前記金属元素の酸化物は、前記セラミックス造形物に含まれる少なくとも一種類の化合物と共晶を形成しうる関係にある酸化物であることを特徴とする金属成分含有液。
  14. 前記金属元素の酸化物が、前記セラミックス造形物の主成分と共晶を形成しうる関係にあることを特徴とする請求項13に記載の金属成分含有液。
  15. 前記セラミックス造形物の主成分が酸化物であることを特徴とする請求項13または14に記載の金属成分含有液。
  16. 前記金属酸化物の融点Tは、前記金属元素の酸化物と共晶を形成しうる関係にある前記セラミックス造形物に含まれる化合物の融点Tよりも高いことを特徴とする請求項13乃至15のいずれか一項に記載の金属成分含有液。
  17. 前記無機粒子の平均粒径が100nm以下であることを特徴とする請求項13乃至16のいずれか一項に記載の金属成分含有液。
  18. 前記無機粒子が前記金属元素の酸化物を含むことを特徴とする請求項13乃至17のいずれか一項に記載の金属成分含有液。
  19. 前記金属元素の酸化物は酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムまたは酸化シリコンであることを特徴とする請求項13乃至18のいずれか一項に記載の金属成分含有液。
  20. 前記溶媒が有機溶剤、水、それらの混合物のいずれかであることを特徴とする請求項13乃至19のいずれか一項に記載の金属成分含有液。
  21. さらに分散剤を含むことを特徴とする請求項13乃至20のいずれか一項に記載の金属成分含有液。
  22. エネルギービームを用いる付加製造法によってセラミックス物品を製造するためのセラミックス物品製造用キットであって、
    セラミックスを主成分とする粉末と、金属成分含有液と、を含んでおり、
    前記金属成分含有液は、溶媒と金属元素を含む無機粒子とを含み、
    前記金属元素の酸化物が、前記粉末から造形されるセラミックス造形物に含まれる少なくとも一種類の化合物と共晶を形成しうる関係にあることを特徴とするセラミックス物品製造用キット。
  23. 前記金属成分含有液は加熱処理よって前記金属元素の酸化物を生成することを特徴とする請求項22に記載のセラミックス物品製造用キット。
  24. 前記金属元素の酸化物が、前記セラミックス造形物の主成分と共晶を形成しうる関係にあることを特徴とする請求項22または23に記載のセラミックス物品製造用キット。
  25. 前記セラミックス造形物の主成分が酸化物であることを特徴とする請求項22乃至24のいずれか一項に記載のセラミックス物品製造用キット。
  26. 前記金属元素の酸化物の融点Tは、前記金属元素の酸化物と共晶を形成しうる関係にある前記セラミックス造形物に含まれる化合物の融点Tよりも高いことを特徴とする請求項22乃至25のいずれか一項に記載のセラミックス物品製造用キット。
  27. 前記セラミックスを主成分とする粉末は、前記レーザービームに含まれる波長の光を吸収する吸収体を含むことを特徴とする請求項22乃至26のいずれか一項に記載のセラミックス物品製造用キット。
  28. 前記セラミックスを主成分とする粉末が、主成分として酸化アルミニウムを含み、吸収体としてTb、Pr11、SiOのいずれかの粉末を含むことを特徴とする請求項27に記載のセラミックス物品製造用キット。
  29. 前記金属成分含有液が、前記無機粒子として酸化ジルコニウムの粒子を含むことを特徴とする請求項28に記載のセラミックス物品製造用キット。
  30. 付加製造技術によって製造されたセラミックス物品であって、少なくとも1種類の金属元素が共通する3種類の相を含む相分離構造を有し、
    前記3種類の相のうち少なくとも2種類は複合化合物の相であることを特徴とするセラミックス物品。
  31. 前記複合化合物が複合酸化物であることを特徴とする請求項30に記載のセラミックス物品。
  32. 前記3種類の相に共通して含まれる前記金属元素が、アルミニウムであることを特徴とする請求項30または31に記載のセラミックス物品。
  33. 前記3種類の相に、1種類の金属元素を含む化合物の相が含まれることを特徴とする請求項30乃至32のいずれか一項に記載のセラミックス物品。
  34. 前記複合化合物の少なくとも一つと前記1種類の金属元素を含む化合物の相とが共晶を形成しうる関係であることを特徴とする請求項33に記載のセラミックス物品。
  35. 前記1種類の金属元素を含む化合物の相が酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項33または34に記載のセラミックス物品。
  36. 前記3種類の相とは異なる相をさらに含み、前記3種類の相とは異なる相は前記3種類の相の少なくとも一種と共晶を形成しうる関係にあることを特徴とする請求項30乃至35のいずれか一項に記載のセラミックス物品。
  37. 前記3種類の相とは異なる相をさらに含み、前記3種類の相とは異なる相は、前記化合物の相と共晶を形成しうる関係にあることを特徴とする請求項33乃至35のいずれか一項に記載のセラミックス物品。
  38. 前記3種類の相とは異なる相に最も多く含まれる金属元素が、0.3モル%以上5モル%以下の割合で含まれることを特徴とする請求項36または37に記載のセラミックス物品。
  39. 前記複合化合物が希土類元素を含むことを特徴とする請求項30乃至38のいずれか一項に記載のセラミックス物品。
  40. 前記希土類元素が、ガドリニウム、イットリウム、テルビウムおよびプラセオジムの群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項39に記載のセラミックス物品。
  41. 前記2種類の複合化合物が、GdAlOとGdAlであることを特徴とする請求項30乃至40のいずれか一項に記載のセラミックス物品。
  42. 前記3種類の相がそれぞれ、Al、GdAlO、GdAlの相であることを特徴とする請求項30乃至41のいずれか一項に記載のセラミックス物品。
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