JP2021065413A - 粒子線治療装置およびエネルギー調整方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、複数種の荷電粒子ビームを患者に照射する粒子線治療装置が、十分な量の荷電粒子ビームを患者に照射することである。【解決手段】粒子線治療装置100は、第1の荷電粒子ビームを加速する第1ライナック2と、第1の荷電粒子ビームとは質量電荷比が異なる第2の荷電粒子ビームを加速する第2ライナック4とを備えている。また、粒子線治療装置100は、第1ライナック2によって加速された第1の荷電粒子ビームの軌道と第2ライナック4によって加速された第2の荷電粒子ビームの軌道とを併せる偏向電磁石11を備えている。さらに、粒子線治療装置100は、偏向電磁石11によって導かれた第1の荷電粒子ビームおよび第2の荷電粒子ビームを加速するシンクロトロン20を備えている。【選択図】図1

Description

本発明は、粒子線治療装置およびエネルギー調整方法に関し、特に、複数種の荷電粒子ビームを加速する技術に関する。
粒子線を患部に照射する粒子線治療が広く行われている。一般に、粒子線治療では加速器を備える粒子線治療装置が用いられる。加速器には、炭素イオンやヘリウムイオン等のイオン粒子が注入され、治療に必要なエネルギーを有するようになるまでイオン粒子が加速される。加速器によって加速されたイオン粒子によるビームは、粒子線治療装置から患部に向けて照射される。
粒子線治療装置には、特許文献1に示されているように、2種類の荷電粒子ビームを患者に照射し、患者を貫通した一方の荷電粒子ビームの状態量を測定することで、他方の荷電粒子ビームの体内での停止位置を測定するものがある。
特許文献1に記載の粒子ビーム発生装置(粒子線治療装置)では、2つのイオン源により発生した2種類のイオン粒子が混合チャンバで混合される。混合後の荷電粒子ビームは共通の線型加速器(ライナック)およびシンクロトロンによって加速される。これによって、患者の体内で停止する第1の荷電粒子ビームと、患者の体を貫通する第2の荷電粒子ビームとが共に患者へ照射される。
粒子ビーム発生装置は、患者の体を貫通した第2の荷電粒子ビームの位置や残飛程を測定することで、第1の荷電粒子ビームが患者の体内で停止した位置を求める。ここで、残飛程は、粒子ビーム発生装置から発せられた荷電粒子ビームが、仮に水等の予め定められた物体に入射した場合に、その物体に入射してから停止するまでの距離として定義される。粒子ビーム発生装置は、第1の荷電粒子ビームが停止した位置を参照し、次回に発生する第1の荷電粒子ビームおよび第2の荷電粒子ビームの状態を制御する。これによって、次回の照射において第1の荷電粒子ビームがより正確に患部へ照射される。
特表2013−533953号公報
特許文献1に記載されている粒子ビーム発生装置では、原子番号の異なる2種類の荷電粒子ビームに対して共通に設けられた線形加速器によって、シンクロトロンへの入射に適したエネルギーに達するまでこれら2種類の荷電粒子ビームが加速される。そのため、第1の荷電粒子ビームの核子あたりの運動量(以下の説明では、核子あたりの運動量は、単に運動量と称される。)と第2の荷電粒子ビームの運動量は、線形加速器の出口において異なる。この運動量の差異は、第1および第2の荷電粒子ビームの両者の核子あたりの静止質量が核子同士の結合エネルギーの違いにより異なることに起因する。
特許文献1に記載されている粒子ビーム発生装置において、シンクロトロンを構成する電磁石の励磁量を第1の荷電粒子ビームの運動量に応じた値とした場合には次のような問題が生じ得る。すなわち、第2の荷電粒子ビームの軌道がシンクロトロン内において理想的な軌道から外れてしまい、第2の荷電粒子ビームの位置や残飛程の測定に必要な量が患者へ照射されない可能性がある。
一方、シンクロトロンを構成する電磁石の励磁量を第2の荷電粒子ビームの運動量に応じた値とした場合には次のような問題が生じ得る。すなわち、第1の荷電粒子ビームの軌道がシンクロトロン内において理想的な軌道から外れてしまい、治療に必要な量の第1の荷電粒子ビームが患者に照射されない可能性がある。
本発明の目的は、複数種の荷電粒子ビームを患者に照射する粒子線治療装置が、十分な量の荷電粒子ビームを患者に照射することである。
本発明は、第1の荷電粒子ビームを加速する第1の加速器と、前記第1の荷電粒子ビームとは質量電荷比が異なる第2の荷電粒子ビームを加速する第2の加速器と、前記第1の加速器によって加速された前記第1の荷電粒子ビームの軌道と前記第2の加速器によって加速された前記第2の荷電粒子ビームの軌道とを併せる偏向器と、前記偏向器によって導かれた前記第1の荷電粒子ビームおよび前記第2の荷電粒子ビームを加速する第3の加速器と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、複数種の荷電粒子ビームを患者に照射する粒子線治療装置が、十分な量の荷電粒子ビームを患者に照射することができる。
粒子線治療装置の構成を模式的に示す図である。 入射器の構成を模式的に示す図である。 低エネルギー輸送系の構成を模式的に示す図である。 デバンチャに印加される高周波電圧を調整する処理のフローチャートである。
本発明の各実施形態に係る粒子線治療装置が図面を用いて説明される。複数の図面に示された同一の事項については同一の符号が付されており、説明の重複が避けられている。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る粒子線治療装置100が図1および図2を参照して説明される。図1には本実施形態に係る粒子線治療装置100の構成が模式的に示されている。粒子線治療装置100は、第1イオン源1、第1ライナック2、第2イオン源3、第2ライナック4、低エネルギービーム輸送系10、シンクロトロン20、高エネルギービーム輸送系30、測定装置60および制御装置70を備えている。
ここでは、粒子線治療装置100の構成および動作の概要が説明される。第1イオン源1は第1の荷電粒子ビームを生成する。第1ライナック2は第1の荷電粒子ビームをシンクロトロン20への入射に適した運動エネルギーに達するまで加速する。第2イオン源3は、第1の荷電粒子ビームとは質量電荷比が異なる第2の荷電粒子ビームを生成する。第2ライナック4は第2の荷電粒子ビームをシンクロトロン20への入射に適した運動エネルギーに達するまで加速する。以下の説明において荷電粒子ビームは、単にビームと称される。また、以下の説明において運動エネルギーは、単にエネルギーと称される。
シンクロトロン20は、第1ライナック2から取り出された第1のビームと、第2ライナック4から取り出された第2のビームとを、所定のエネルギーに達するまで加速する。シンクロトロン20によって加速された第1のビームおよび第2のビームは、高エネルギービーム輸送系30へ取り出され、患者50中の患部51へ照射される。
第1のビームは患者50の体内で停止し、第2のビームは患者50を貫通する。測定装置60は患者50を貫通した第2のビームの線量、位置、残飛程等の物理的な状態量を測定し、制御装置70はこれらの測定値から患者50の体内における第1のビームの停止位置を算出する。
このように、粒子線治療装置100は、第1の加速器および第2の加速器として第1ライナック2および第2ライナック4を備えている。後述するように、低エネルギービーム輸送系10には、第1ライナック2によって加速された第1のビームの軌道と、第2ライナック4によって加速された第2のビームの軌道とを併せる偏向器としての偏向電磁石11が設けられている。
第1のビームおよび第2のビームに対して個別にライナックが設けられ、さらに偏向電磁石11が設けられていることで、イオン粒子の質量荷電比が異なる第1のビームおよび第2のビームの軌道が併せられる。シンクロトロン20は、偏向電磁石11によって導かれた第1のビームおよび第2のビームを加速する。粒子線治療装置100では、シンクロトロン20によって加速された第1のビームおよび第2のビームが患者50に照射される。
次に、粒子線治療装置100の具体的な構成および動作が説明される。粒子線治療装置100は制御装置70によって制御される。制御装置70は、プロセッサ72および記憶デバイス74を備えている。プロセッサ72は、記憶デバイス74に記憶されたプログラムを読み込み実行する。プロセッサ72は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ、インターフェース等を備えたコンピュータや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラム可能な演算デバイスであってよい。コンピュータは、粒子線治療装置100の外部に設けられたものであってもよいし、粒子線治療装置100に備えられたものであってもよい。
プログラムは記憶デバイス74に記憶されており、プロセッサ72によって読み出される。また、プログラムは、外部に設けられたコンピュータからプロセッサ72に読み込まれ、プロセッサ72にインストールされてもよい。外部のコンピュータは、制御装置70に直接接続されたものでもよいし、インターネット等の通信回線に接続されたものでもよい。制御装置70が実行する処理の一部は、外部のコンピュータが実行してもよい。
制御装置70が備える記憶デバイス74には、例えば、RAM、ROM、ハードディスク、USBメモリ、SDカード等が用いられてよい。記憶デバイス74は、インターネット等の通信回線上にあるストレージであってもよい。制御装置70が実行する処理は、分散処理を実行する複数のコンピュータによって実行されてもよい。
プロセッサ72はプログラムを実行することで、第1ライナック2、第2ライナック4、低エネルギービーム輸送系10、シンクロトロン20、高エネルギービーム輸送系30および測定装置60を制御する。第1ライナック2、第2ライナック4、低エネルギービーム輸送系10、シンクロトロン20、高エネルギービーム輸送系30および測定装置60は制御装置70の制御に応じて動作する。
第1ライナック2より取り出された第1のビームと第2ライナック4により取り出された第2のビームは、低エネルギービーム輸送系10を経由してシンクロトロン20へ入射される。低エネルギービーム輸送系10は、上流側の四極電磁石12、偏向電磁石11、荷電変換膜14および下流側の四極電磁石12を備えている。
偏向電磁石11の上流側の四極電磁石12は、ビームの形状を偏向電磁石11への入射に適した形状に整える。偏向電磁石11は、第1のビームと第2のビームを略同一の軌道に合流させ、第1のビームの軌道と第2のビームの軌道とを併せる。なお、「略同一」の用語は、同一であることの他、相違があったとしても第1のビームと第2のビームをシンクロトロン20によって共に加速することが可能となる程度に近似していることを意味する。
荷電変換膜14は、第1のビームを構成するイオン粒子の価電子の数と、第2のビームを構成するイオン粒子の価電子の数との関係を調整する荷電変換器としての機能を有する。すなわち、荷電変換膜14は、ビームを構成するイオン粒子から所定数の電子を剥ぎ取りイオン粒子の価数を変化させる。これによって、第1のビームおよび第2のビームが共通のシンクロトロン20で加速され得る。荷電変換膜14の下流側の四極電磁石12は、ビームの形状をシンクロトロン20への入射に適した形状に整える。
シンクロトロン20は、入射用インフレクタ21、偏向電磁石22、四極電磁石23、六極電磁石24、高周波加速空胴25、取り出し用高周波電圧印加装置26、取り出し用の静電デフレクタ27、および取り出し用のセプタム電磁石28を備えている。
偏向電磁石22はシンクロトロン20中を周回するビームを偏向して所定の周回軌道を形成する。以下の説明において、シンクロトロン20中を周回するビームは周回ビームと称され、その周回軌道は周回ビーム軌道と称される。
本実施形態では、周回ビームの進行方向に沿った方向は進行方向と称される。また、進行方向に垂直で偏向電磁石22の動径方向に沿った方向は水平方向と称される。さらに、進行方向および水平方向の両方に垂直な方向は垂直方向と称される。進行方向については、ビームが進む方向が正方向として定義される。水平方向については、シンクロトロン20の外側方向が正方向として定義される。垂直方向については、図面手前方向が正方向として定義される。
また、シンクロトロン20では、設計上の周回ビーム軌道は中心軌道と称される。周回ビームのイオン粒子は中心軌道の周りを水平方向および垂直方向に振動しており、この振動はベータトロン振動と称される。また、シンクロトロン20における1周あたりのベータトロン振動の振動数はチューンと称される。
四極電磁石23は、周回ビームに収束あるいは発散の力を加えて周回ビームのチューンを周回ビームが安定となる値に保つ。高周波加速空胴25は周回ビームに進行方向の高周波電圧を印加して周回ビームを進行方向の所定の位相に高周波捕獲し、所定のエネルギーまで加速する。以下の説明では、進行方向の高周波電圧は加速電圧と称される。
高周波捕獲された周回ビームのイオン粒子の運動量は設計上の運動量を中心として振動しており、この振動はシンクロトロン振動と称される。周回ビームを加速する間は、制御装置70は、偏向電磁石22の励磁量と四極電磁石23の励磁量を周回ビームの運動量に比例して増加させると共に加速電圧の周波数を適切な値に制御し、周回ビーム軌道および周回ビームのチューンを一定に保つ。以下の説明では、加速電圧の周波数は加速周波数と称される。
周回ビームの加速が完了した後、制御装置70は、シンクロトロン20における四極電磁石23の励磁量を変更して周回ビームの水平チューンを周回ビーム粒子のベータトロン振動が不安定となる値に接近させる。
制御装置70は、六極電磁石24を励磁して周回ビームに中心軌道からの距離の2乗に比例する強度の磁場を発生させる。これによって、周回ビームのイオン粒子の水平方向の位置と傾きによって定義される位相空間上に、水平ベータトロン振動が安定する領域の境界であるセパラトリクスが形成される。
取り出し用高周波電圧印加装置26は、周回ビームに水平チューンと同期する周波数の水平方向の高周波電圧を印加し、周回ビーム粒子の水平ベータトロン振動の振幅を増大させる。水平ベータトロン振動の振幅が増大してセパラトリクスを越えた周回ビーム粒子は、水平ベータトロン振動の振幅を急激に増大させ、静電デフレクタ27に入射する。静電デフレクタ27は、入射した周回ビーム粒子を水平方向に偏向し、セプタム電磁石28に入射させる。
セプタム電磁石28は、静電デフレクタ27により偏向されたビーム粒子をさらに水平方向へ偏向する。これによって、ビーム粒子はシンクロトロン20の外へ取り出される。なお、セプタム電磁石28の代わりにビームを垂直方向に偏向するランバートソン電磁石が用いられてもよい。また、セプタム電磁石28は、複数台の電磁石によって構成されてもよい。
シンクロトロン20から取り出されたビームは、高エネルギービーム輸送系30を経由した後に患部51へ照射される。高エネルギービーム輸送系30は、上流側の四極電磁石32、偏向電磁石31、下流側の四極電磁石32および照射野形成装置40を備えており、シンクロトロン20から取り出されたビームを患部51まで輸送する。照射野形成装置40は、上流側の四極電磁石32、偏向電磁石31および下流側の四極電磁石32を経由して運ばれてきたビームを整形し、照射線量が所定の値を超える領域の形状が患部51の形状に合わせられた照射野を形成する。
本実施形態に係る粒子線治療装置100では、走査電磁石(図示省略)によって患部51の形状に合わせてビームを走査するスキャニング照射法が照射野の形成に用いられてよい。スキャニング照射において患者50の体内で第1のビームが停止する深さ、すなわち進行方向の位置は、シンクロトロン20から取り出される第1のビームのエネルギーを変化させることで制御される。
粒子線治療装置100では、第1のビームは患者50の体内、より好ましくは患部51内で停止し照射野が形成される。一方、第2のビームは患者50の体を貫通し、患者50よりも下流側に設けられた測定装置60へ入射する。測定装置60は線量モニタ61、ビーム位置モニタ62および飛程モニタ63を備えている。
線量モニタ61は測定装置60へ入射した第2のビームの量を測定する。ビーム位置モニタ62は第2のビームの位置を測定する。第2のビームの位置は、ビーム進行方向に交わる平面内、例えば、ビーム進行方向に垂直な平面内における位置として定義される。
飛程モニタ63は、測定装置60へ入射した第2のビームの水中飛程を測定する。水中飛程は、ビームが水中を進むと仮定した場合に、水中へ入射してから停止するまでの間に進む距離として定義される。第2のビームは患者50中を通過する間にエネルギーを失う。そのため、飛程モニタ63によって測定される水中飛程は患者50へ入射する前の第2のビームの水中飛程よりも患者50の厚さ分だけ小さな値となる。
飛程モニタ63により測定される第2のビームの水中飛程は、以下の説明では第2のビームの残飛程と称される。飛程モニタ63には、ビームから与えられたエネルギーの量に応じて発光するシンチレータや、進行方向に多層構造を持つ電離箱が用いられてよい。
測定装置60が測定した第2のビームの位置や残飛程の情報は制御装置70へ出力される。制御装置70は第2のビームの位置や残飛程の情報から患者50の体内における第1のビームの停止位置を求める。第2のビームの残飛程の測定結果には患者50内の臓器の移動等が原因で生じた実効的な厚さの変化に関する情報が含まれる。第2のビームの残飛程の情報を第1のビームの停止位置の算出に用いることで、第1のビームの停止位置がより正確に求められる。
制御装置70は、第1のビームの停止位置の算出結果に基づいてシンクロトロン20から第1のビームおよび第2のビームを取り出す状態を制御し、患部51へビームを照射する。例えば、制御装置70には、患者50の体内における第1のビームの進行方向の停止位置に対し、予め目標値と許容範囲が記憶されてよい。
制御装置70は、第1のビームの停止位置が許容範囲から逸脱した場合にシンクロトロン20からのビーム取り出しを停止する処理を実行してよい。これによって、無駄なビームを患者50に照射してしまうことが避けられる。また、制御装置70は、第1のビームの停止位置が目標値に近付くか、あるいは一致するように、シンクロトロン20から取り出される第1ビームおよび第2ビームのエネルギー等、第1ビームおよび第2ビームの照射状態を制御してもよい。
この処理では、治療中に患者50の生理現象等により患部51の位置または形状が変化した場合であってもその変化が検出され、第1のビームの停止位置が許容範囲内にある場合に、ビームが患者50に照射される。そのため照射野が高精度に形成される。
なお、照射野形成装置40で用いられる照射法はスキャニング照射法に限られず、様々な公知の照射法が用いられてよい。照射野形成装置40は患者50の周囲を回転し所望の方向から患者50へビームを照射する回転ガントリー上に設けられてもよい。また、高エネルギービーム輸送系30における上流側の四極電磁石32、偏向電磁石31および下流側の四極電磁石32は必須の構成要素ではなく、シンクロトロン20から取り出されたビームが照射野形成装置40に直接入射されてもよい。
制御装置70は、周回ビームの取り出しが完了した後、偏向電磁石22の励磁量、四極電磁石23の励磁量、加速周波数の設定値をシンクロトロン20へのビーム入射時の値に変更し、次のビーム照射に備える。本実施形態に係る粒子線治療装置100では、治療計画装置(図示省略)が予め定めたビームの照射が完了するまで、ビームの入射、加速、取り出しおよび照射が繰り返される。制御装置70は、治療計画装置が定めた治療計画に従って、粒子線治療装置100の各構成機器を制御する。
第1のビームおよび第2のビームを患者50に照射する詳細な動作が図2を参照して説明される。図2には、本実施形態に係る粒子線治療装置100のうち、シンクロトロン20よりも上流側の部分である入射器102の構成が模式的に示されている。低エネルギービーム輸送系10中を進むビームが、図2中の斜線で塗りつぶされた楕円によって模式的に表されている。
本実施形態では患者50へ照射される第1のビームは6価の炭素イオン(C6+)により構成され、第2のビームは2価のヘリウムイオン(He2+)によって構成される。また、第1イオン源1から取り出された直後の第1のビームは主として4価の炭素イオン(C4+)により構成されている。
本実施形態では、第1イオン源1が主としてC4+により構成される第1のビームを生成する。第1ライナック2は第1イオン源1が生成したC4+のビームをシンクロトロン20への入射に適したエネルギー、例えば核子あたり4MeVに達するまで加速する。第2イオン源3は主としてHe2+により構成される第2のビームを生成する。第2ライナック4は第2のビームをシンクロトロン20への入射に適したエネルギーに達するまで加速する。
第1ライナック2から取り出された第1のビームと第2ライナック4から取り出された第2のビームは核子あたりのエネルギーが大凡等しく、質量電荷比が異なる状態となっている。したがって、第1のビームと第2のビームが同一の偏向電磁石11により偏向される場合、第1のビームと第2のビームは異なる偏向を受ける。第2のビームが偏向する量と第1のビームが偏向する量との関係は、第2のビームを構成するイオン粒子の質量電荷比と、第1のビームを構成するイオン粒子の質量電荷比に依存する。
第1のビームがC4+によって構成され、第2のビームがHe2+によって構成され、偏向電磁石11中のビーム軌道上における磁場積分値が等しい場合、第2のビームが偏向する量(角度)は第1のビームが偏向する量の1.5倍となる。
偏向電磁石11は、第1のビームおよび第2のビームを偏向し、2種類のビームを略同一の軌道上に合流させる。前述のように第1のビームと第2のビームとでは偏向電磁石11により偏向する量が異なる。そのため、本実施形態では、第1のビームおよび第2のビームが異なる位置および方向から偏向電磁石11へ入射される。これによって、第1のビームおよび第2のビームが略同一の軌道上に合流し、第1のビームの軌道と第2のビームの軌道が併せられる。
本実施形態では、第1のビームの偏向電磁石11に対する入射角度θと、第2のビームの偏向電磁石11に対する入射角度θとの間には、(数1)の関係がある。ここで、入射角度θは、偏向電磁石11へ入射する前の第1のビームの軌道と合流後のビームの軌道とがなす角度として定義される。入射角度θは、偏向電磁石11へ入射する前の第2のビームの軌道と合流後のビームの軌道とがなす角度として定義される。
Figure 2021065413
また、第1のビームの偏向電磁石11に対する入射位置xと、第2のビームの偏向電磁石11に対する入射位置xとの間には、(数2)の関係がある。ここで、第1のビームの入射位置は、第1のビームが偏向電磁石11へ入射する位置と、第1のビームおよび第2のビームの合流後のビームの軌道が含まれる合流直線90との間の距離xによって表される。
また、第2のビームの入射位置は、第2のビームが偏向電磁石11へ入射する位置と合流直線90との間の距離xによって表される。ここで、第2のビームの入射位置は、第2のビームが偏向電磁石11へ入射する位置と、第1のビームおよび第2のビームの合流後のビーム軌道が含まれる合流直線90との間の距離xによって表される。
Figure 2021065413
このように、粒子線治療装置100では、第1のビームおよび第2のビームの偏向電磁石11に対する入射角度および入射位置が、第1のビームを構成するイオン粒子の質量電荷比と、第2のビームを構成するイオン粒子の質量電荷比に基づいて定められている。すなわち、第1のビームを構成するイオン粒子の質量電荷比が、第2のビームを構成するイオン粒子との質量電荷比のa倍である場合には、θ=a・θおよびx=a・xが成立する。
粒子線治療装置100では、この関係に基づいて、(数1)および(数2)を満たすように第1イオン源1、第1ライナック2、第2イオン源3、第2ライナック4および偏向電磁石11が配置されている。
第1のビームと第2のビームは合流後に偏向電磁石11とシンクロトロン20との間に設けられた荷電変換膜14へ入射する。荷電変換膜14は第1のビームを構成するC4+から電子を剥ぎ取り、C4+をC6+に変化させる。一方で、第2のビームを構成するHe2+は既に総ての電子が剥ぎ取られている状態であるため、荷電変換膜14を通過しても第2のビームを構成するイオン粒子の価数は変化しない。
これにより、荷電変換膜14通過後のビームは、質量電荷比が等しい2種類のビーム、すなわちC6+から構成されるビームと、He2+から構成されるビームが混合されたものとなる。シンクロトロン20へ入射する第1のビームと第2のビームは、軌道が略同一であり、エネルギーが略同一であり、さらに質量電荷比が等しいため、第1のビームと第2のビームがシンクロトロン20で共に加速される。
一般に、C4+はC6+に比べて発生割合が高い。したがって、第1イオン源1からは、C6+に比べて一定時間内により多くのC4+が取り出される。粒子線治療装置100では、C4+から構成される第1のビームと、He2+から構成されるビームとが併せられ、荷電変換膜14によって2種類のビームの質量電荷比が揃えられた上でシンクロトロン20によって加速される。したがって、第1イオン源1が発生するC4+の量を十分な量とすることで、患者50に照射される第1のビームの量が向上する。
また、治療計画では、患部51に照射される第1のビームの量が定められている。粒子線治療では、患部51に照射されるビーム量が十分となるまで複数回に亘って患部51に第1のビームが照射される。粒子線治療装置100によれば、予め定められた量の第1のビームを患部51に照射するための照射回数が削減され、治療に要する時間が短縮される。
上記では、第1のビームと第2のビームを共に患者50へ照射する実施形態が示された。第1のビームと第2のビームは個別に患者50に照射されてもよい。すなわち、第1のビームが第1ライナック2およびシンクロトロン20によって加速され、第1のビームが患者50に照射される処理と、第2のビームが第2ライナック4およびシンクロトロン20によって加速され、第2のビームが患者50に照射される処理とが、個別に実行されてよい。
例えば、第1イオン源1および第1ライナック2を動作させ、第2イオン源3および第2ライナック4を停止することで、第1のビームのみを加速し、第1のビームのみによる放射線治療が行われてもよい。
同様に、第2イオン源3および第2ライナック4を動作させ、第1イオン源1および第1ライナック2を停止することで、第2のビームのみを加速し、第2のビームのみによる放射線治療が行われてもよい。この場合、シンクロトロン20の運転条件は、第2のビームのみがシンクロトロン20へ入射される状態とされ、第2のビームが患部51で停止するように、シンクロトロン20から取り出される第2のビームのエネルギーが調整される。
上記では第1のビームが炭素イオンによって構成され、第2のビームがヘリウムイオンによって構成される実施形態が示された。第1のビームを構成するイオン粒子と、第2のビームを構成するイオン粒子の組み合わせは、炭素イオンおよびヘリウムイオンの組み合わせに限定されない。各イオン源から取り出されたビームの質量電荷比が異なり、荷電変換膜14通過後の質量電荷比が等しくなるような2種類のイオンの組み合わせによって、第1のビームおよび第2のビームが構成されてよい。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る粒子線治療装置が図3および図4を参照して説明される。第2実施形態に係る粒子線治療装置は、図1における低エネルギービーム輸送系10が、図3に示されている低エネルギービーム輸送系80に置き換えられたものである
低エネルギービーム輸送系80の構成は、図2に示される低エネルギービーム輸送系10の構成に対し、第1ライナック2と偏向電磁石11との間に、エネルギー調整器としてのデバンチャ15が設けられている点が異なる。デバンチャ15には第1ライナック2へ印加される高周波電圧と等しい周波数の進行方向の高周波電圧が印加されている。デバンチャ15は、第1のビームがデバンチャ15に到着したタイミングに応じて第1のビームを加速あるいは減速する。デバンチャ15が第1のビームを加速あるいは減速する量は、デバンチャ15へ印加する高周波電圧の位相および振幅を調整することにより制御される。
第2実施形態に係る粒子線治療装置の動作が以下に説明される。粒子線治療装置では、第1のビームおよび第2のビームが、第1のビームおよび第2のビームに対して個別に設けられた第1ライナック2および第2ライナック4によって加速される。そのため、第1ライナック2の出口における第1のビームのエネルギーと第2ライナック4の出口における第2のビームのエネルギーが異なることがある。
エネルギーが異なる第1のビームと第2のビームを共にシンクロトロン20へ入射した場合、2種類のビームのうちいずれか一方の軌道がシンクロトロン20内において理想的な軌道から外れてしまう可能性がある。この場合、シンクロトロン20に入射したビームの量に対する、シンクロトロン20から取り出されるビームの量の比率として定義される入射効率が低下する可能性がある。
すなわち、シンクロトロン20の運転条件を第1のビームの入射に適した値に調整した場合、第2のビームの入射効率が低下する可能性がある。この場合、十分な量の第2のビームが患者50に照射されず、患者50を貫通した第2のビームの位置や残飛程の測定が困難になる可能性がある。ここで、シンクロトロン20の運転条件には、偏向電磁石22の励磁量や加速周波数等がある。
一方、シンクロトロン20の運転条件を第2のビームの入射に適した値に調整した場合、第1のビームの入射効率が低下する可能性がある。この場合、十分な量の第1のビームが患者50に照射されず、治療計画に従うために照射回数を増加させる必要が生じ、治療に要する時間が長くなってしまう可能性がある。
本実施形態に係る粒子線治療装置では、第1のビームを加速する第1ライナック2と偏向電磁石11との間にデバンチャ15が設けられている。デバンチャ15は、シンクロトロン20へ入射する第1のビームのエネルギーおよび第2のビームのエネルギーが近付くように、あるいは一致するように第1のビームを加速あるいは減速する。これによって、第1のビームと第2のビームの両方が、シンクロトロン20から高い入射効率で取り出される。
第1のビームのエネルギーをデバンチャ15を用いて第2のビームのエネルギーに近付けるか、あるいは一致させるため、デバンチャ15に高周波電圧を印加しない状態における第1のビームのエネルギーと第2のビームのエネルギーの差が測定される。このエネルギー差を測定する手法としては次のようなものが考えられる。
例えば、荷電変換膜14よりも下流側で偏向電磁石によってビームを偏向し、第1のビームが偏向する量と第2のビームが偏向する量との差をビームプロファイルモニタ等を用いて測定する手法が考えられる。しかし、この測定手法では低エネルギービーム輸送系10中に追加の偏向電磁石とビームプロファイルモニタを設ける必要があるため、粒子線治療装置が大型となる。
そこで本実施形態では、シンクロトロン20における第1のビームのエネルギーE1と、シンクロトロン20における第2のビームのエネルギーE2がシンクロトロン20を用いて測定される。そして、エネルギーE2からエネルギーE1を減算して求められるエネルギー差ΔE=E2―E1に応じて求められた電圧が、デバンチャ15に印加される。以下の説明では、シンクロトロン20を用いて各ビームのエネルギーの測定を行う方法は、シンクロトロン測定法と称される。
シンクロトロン測定法において制御装置70が実行する処理が以下に説明される。第1のビームのエネルギーを求めるため、制御装置70は、第2イオン源3および第2ライナック4の動作を停止し、第1イオン源1および第1ライナック2を動作させる。これによってシンクロトロン20には第1のビームのみが入射される。一方、第2のビームのエネルギーを求めるため、制御装置70は、第1イオン源1および第1ライナック2の動作を停止し、第2イオン源3および第2ライナック4を動作させる。これによってシンクロトロン20には第2のビームのみが入射される。
第1のビームのエネルギーおよび第2のビームのエネルギーのそれぞれの測定において、制御装置70は、シンクロトロン20中を周回するビームが高周波捕獲されるように、偏向電磁石22の励磁量を制御する。ビームが高周波捕獲されており、周回ビームの水平位置がシンクロトロン20の中心軌道と一致する場合、シンクロトロン20の設計上の周長C、加速周波数f、ハーモニックナンバーhおよび周回ビーム粒子の速度vとの間には(数3)で示される関係がある。
Figure 2021065413
周長C、加速周波数f、ハーモニックナンバーhおよび周回ビーム粒子の速度vのうち、周長Cおよびハーモニックナンバーhは予め定められた数値であり、制御装置70には、周長Cおよびハーモニックナンバーhが記憶されていてよい。制御装置70は加速周波数fを測定し、(数3)に基づいて周回ビーム粒子の速度vを求める。
制御装置70は、直接的に加速周波数を求める代わりに、偏向電磁石22が励磁している磁界の大きさ等、加速周波数を導き出すことができるその他の物理量を測定し、周回ビーム粒子の速度vを測定してもよい。制御装置70は、(数4)に従って、周回ビーム粒子の速度vの光速cに対する比率βを求める。
Figure 2021065413
制御装置70は、(数5)に基づいて、第1のビームおよび第2のビームのそれぞれについてエネルギーを求める。ただし、Eはビーム粒子の静止質量エネルギーであり、第1のビームおよび第2のビームのイオン粒子が定まっているため、各ビームについて既知の値である。
Figure 2021065413
(数5)は、エネルギーEと、静止質量エネルギーEとの間に(数6)の関係があることから導かれる数式である。
Figure 2021065413
なお、制御装置70は、(数3)〜(数5)に基づいて求められた、エネルギーEと加速周波数fとの関係を表すその他の数式に基づいてエネルギーEを求めてもよい。制御装置70は、例えば、(数5)に(数4)を代入してβを消去した式、あるいは、(数5)に(数4)を代入してβを消去し、さらに、(数3)を代入してvを消去した式等に基づいてエネルギーEを求めてもよい。シンクロトロン測定法によれば、大型な装置によらず各ビームのエネルギーが測定される。
シンクロトロン測定法を用いてデバンチャ15を制御する処理が、以下に説明される。図4には、デバンチャ15に印加される高周波電圧を調整する処理のフローチャートが示されている。第1のビームのエネルギーを求めるため、制御装置70は、第2イオン源3および第2ライナック4を停止する一方で第1イオン源1および第1ライナック2を動作させる。これによって、シンクロトロン20へ第1のビームのみが入射される(S1)。
制御装置70は、偏向電磁石22の励磁量を、高周波捕獲後の周回ビーム電荷量が最大となる値、または所定の閾値を超える値に設定する(S2)。なお、シンクロトロン20の加速周波数は高周波捕獲後の水平方向のビームの位置が中心軌道と一致するような偏向電磁石22の励磁量に基づいて設定される。
制御装置70は、シンクロトロン測定法に従って、シンクロトロン20の加速周波数から第1のビームのエネルギーE1を算出する(S3)。高周波捕獲後の周回ビーム電荷量が最大となる状態、または所定の閾値を超える状態は、シンクロトロン20の運転条件が第1のビームに対応した値に設定されている状態である。ここで、シンクロトロン20の運転状態には、偏向電磁石22の励磁量およびビームの加速周波数等がある。
第2のビームのエネルギーを求める際には、制御装置70は、第1イオン源1および第1ライナック2を停止する一方で第2イオン源3および第2ライナック4を動作させる。これによって、シンクロトロン20へ第2のビームのみが入射される(S4)。制御装置70は、偏向電磁石22の励磁量を、高周波捕獲後の周回ビーム電荷量が最大となる値、または所定の閾値を超える値に設定する(S5)。制御装置70は、上記のシンクロトロン測定法に従って、シンクロトロン20の加速周波数から第2のビームのエネルギーE2を算出する(S6)。
制御装置70は、第2のビームのエネルギーE2から、第1のビームのエネルギーE1を減算し、エネルギー差ΔEを算出する(S7)。制御装置70は、(数8)に従って、デバンチャ15に対する交流の印加電圧の振幅Vを求める(S8)。ここで、Aは第1のビームを構成するイオン粒子の価数、Zは第1のビームを構成するイオン粒子の核子数、eは、第1のビームを構成するイオン粒子の素電荷eである。
Figure 2021065413
制御装置70は、ステップS6で求められた振幅Vを有し、振幅が最大となる時に第1のビームがデバンチャ15を通過する位相を有する交流電圧をデバンチャ15に印加する(S9)。これによってデバンチャ15を通過する第1のビームは、エネルギーがΔEだけ増加するように加速され、第1のビームのエネルギーと第2のビームのエネルギーが近付くか、あるいは一致する。
制御装置70は、デバンチャ15の印加電圧の振幅Vを(数8)で求まる値よりも大きな値に設定し、印加電圧の大きさが最大値より小さくなる時に第1のビームがデバンチャ15を通過するように、印加電圧の位相を設定してもよい。これによって、デバンチャ15を用いて第1のビームのエネルギーを補正する効果に加え、第1のビームのエネルギーの分散が低減され、第1のビームのシンクロトロン20への入射効率が高められる。
シンクロトロン測定法を用いてデバンチャ15を制御する処理は、次の(i)〜(v)の事項に基づく方法に基づいている。(i)第2の荷電粒子ビームを第2ライナック4へ入射しない状態とし、第1のビームを第1ライナック2およびシンクロトロン20で加速した状態で、シンクロトロン20における第1のビームの加速状態量を求めること。(ii)第1のビームの加速状態量に基づいて、シンクロトロン20における第1のビームのエネルギーE1(第1のエネルギー)を求めること。
(iii)第1のビームを第1ライナック2へ入射しない状態とし、第2のビームを第2ライナック4およびシンクロトロン20で加速した状態で、シンクロトロン20における第2のビームの加速状態量を求めること。(iv)第2のビームの加速状態量に基づいて、シンクロトロン20における第2のビームのエネルギーE2(第2のエネルギー)を求めること。(v)エネルギーE1およびE2の差異に基づいて、第1のビームまたは第2のビームに対して設けられたデバンチャ15を制御して、第1のビームのエネルギーまたは第2のビームのエネルギーを調整すること。
ここで加速状態量は、加速周波数の他、および加速周波数を導くことができるその他の物理量として定義される。制御装置70における記憶媒体としての記憶デバイス74には、上記(i)〜(v)の事項に基づく方法に従った処理を実行するためのプログラムが記憶される。
本実施形態に係る粒子線治療装置では第1ライナック2と偏向電磁石11との間にデバンチャ15が設けられ、第1のビームのエネルギーが第2のビームのエネルギーに近付くか、あるいは一致するように第1のビームがデバンチャ15により加速あるいは減速される。そのため、シンクロトロン20への第1のビームの入射効率と第2のビームの入射効率が向上し、治療に要する時間が短縮される。
上記では第1ライナック2と偏向電磁石11との間にデバンチャ15が設けられた実施形態が示された。デバンチャ15は第2ライナック4と偏向電磁石11との間に設けられてもよい。この場合、デバンチャ15は第2のビームを減速あるいは加速し、第2のビームのエネルギーを第1のビームに近付け、あるいは一致させる。
デバンチャ15は、偏向電磁石11とシンクロトロン20との間のビーム軌道上に設けられてもよい。この場合、デバンチャ15は第1のビームと第2のビームの両方を加速あるいは減速する。制御装置70は、第1ライナック2に印加する高周波電圧の位相と、第2ライナック4に印加する高周波電圧の位相との差が、例えば180°異なるように第1ライナック2および第2ライナック4の高周波源(図示省略)を制御する。第1ライナック2の出口から偏向電磁石11の出口までの距離と第2ライナック4の出口から偏向電磁石11の出口までの距離は略同一とされる。
偏向電磁石11で合流した第1のビームおよび第2のビームは、進行方向に沿って交互に並んだ状態となる。制御装置70は、第1のビームがデバンチャ15を通過する際に印加電圧が最大または最小となり、第2のビームがデバンチャ15を通過する際に印加電圧が最小または最大となるように、デバンチャ15に印加する高周波電圧の位相を制御する。
これによって、デバンチャ15に対する印加電圧の振幅の2倍に相当するエネルギーの差が1台のデバンチャ15によって補正される。したがって、第1のビームと第2のビームのエネルギーが略同一である条件の下で、デバンチャ15に印加される高周波電圧の振幅が抑制され、デバンチャ15の電源が小型となる。
上記では、第1のビームおよび第2のビームのエネルギーの差異に応じて、デバンチャ15を制御する実施形態が示された。制御装置70は、各ビームのエネルギーの代わりに運動量に基づく制御を実行してもよい。この場合、(数9)に示される関係に基づいて、エネルギーEの代わりに運動量pを用いる式に(数5)〜(数8)が書き換えられた式が用いられる。
Figure 2021065413
本実施形態に係る粒子線治療装置では第1の実施形態に係る粒子線治療装置100と同様、第1のビームを構成するイオンと、第2のビームを構成するイオンの組み合わせは、炭素イオンおよびヘリウムイオンの組み合わせに限定されない。各イオン源から取り出されたビームの質量電荷比が異なり、荷電変換膜14通過後の質量電荷比が等しくなるような2種類のイオンの組み合わせによって、第1のビームおよび第2のビームを構成してよい。
上記では、第1ライナック2によって加速された第1のビームの軌道と第2ライナック4によって加速された第2のビームの軌道とを併せる偏向器として、偏向電磁石11を用いた実施形態が示された。偏向器としては、静電偏向器が用いられてよい。静電偏向器は、表面が対向する一対の電極を備えている。一対の電極に電圧を印加することで、一方の電極から他方の電極に向かう電場が発生する。一対の電極の間を通過するビームは、電場によって偏向する。
上記では、第1のビームを構成するイオン粒子の価電子の数と、第2のビームを構成するイオン粒子の価電子の数との関係を調整する荷電変換器として、荷電変換膜14を用いた実施形態が示された。荷電変換器としては、レーザ発生器が用いられてよい。レーザ発生器は、ビームにレーザを照射して、イオン粒子の価電子を原子核から離脱させる。例えば荷電粒子がC4+である場合、レーザ発生器はC4+から2価の電子を離脱させて、C6+を生成する。
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形、応用が可能なものである。上述した各実施形態は本発明を分かり易く説明するためのものであり、本発明は、必ずしも説明した総ての構成を備えるものに限定されない。
1 第1イオン源、2 第1ライナック(第1の加速器)、3 第2イオン源、4 第2ライナック(第2の加速器)、10,80 低エネルギービーム輸送系、11 偏向電磁石(偏向器)、13,22 偏向電磁石、12,23,31,32 四極電磁石、14 荷電変換膜(荷電変換器)、15 デバンチャ、20 シンクロトロン(第3の加速器)、21 入射用インフレクタ、24 六極電磁石、25 高周波加速空胴、26 取り出し用高周波電圧印加装置、27 静電デフレクタ、28 セプタム電磁石、30 高エネルギービーム輸送系、40 照射野形成装置、50 患者、51 患部、60 測定装置、61 線量モニタ、62 ビーム位置モニタ、63 飛程モニタ、70 制御装置、72 プロセッサ、74 記憶デバイス、90 合流直線、100 粒子線治療装置、102 入射器。

Claims (14)

  1. 第1の荷電粒子ビームを加速する第1の加速器と、
    前記第1の荷電粒子ビームとは質量電荷比が異なる第2の荷電粒子ビームを加速する第2の加速器と、
    前記第1の加速器によって加速された前記第1の荷電粒子ビームの軌道と前記第2の加速器によって加速された前記第2の荷電粒子ビームの軌道とを併せる偏向器と、
    前記偏向器によって導かれた前記第1の荷電粒子ビームおよび前記第2の荷電粒子ビームを加速する第3の加速器と、を備えることを特徴とする粒子線治療装置。
  2. 請求項1に記載の粒子線治療装置であって、
    前記偏向器の下流側、かつ前記第3の加速器の上流側に設けられた荷電変換器を備え、
    前記荷電変換器は、
    前記第1の荷電粒子ビームを構成するイオン粒子の価電子の数と、前記第2の荷電粒子ビームを構成するイオン粒子の価電子の数との関係を調整するように構成されていることを特徴とする粒子線治療装置。
  3. 請求項2に記載の粒子線治療装置であって、前記第1の荷電粒子ビームが炭素イオンにより構成され、前記第2の荷電粒子ビームがヘリウムイオンにより構成され、
    前記第1の加速器は、4価の炭素イオンにより構成される前記第1の荷電粒子ビームを加速し、
    前記荷電変換器は、前記第1の荷電粒子ビームを構成する4価の炭素イオンを6価の炭素イオンに変換することを特徴とする粒子線治療装置。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の粒子線治療装置であって、
    前記第1の荷電粒子ビームおよび前記第2の荷電粒子ビームの前記偏向器に対する入射角度および入射位置が、前記第1の荷電粒子ビームについての質量電荷比と、前記第2の荷電粒子ビームについての質量電荷比とに基づいて定められていることを特徴とする粒子線治療装置。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の粒子線治療装置であって、
    前記第1の荷電粒子ビームは患者の体内で停止し、
    前記第2の荷電粒子ビームは前記患者の体を貫通し、
    前記粒子線治療装置は、
    前記患者を貫通した前記第2の荷電粒子ビームの状態量を測定する測定装置と、
    前記第1の荷電粒子ビームの停止位置を前記状態量の測定結果に基づいて求めるプロセッサと、
    を備えることを特徴とする粒子線治療装置。
  6. 請求項5に記載の粒子線治療装置であって、
    前記第1の荷電粒子ビームおよび前記第2の荷電粒子ビームの前記患者への照射状態が、前記第1の荷電粒子ビームの停止位置を求めた結果に基づいて制御されることを特徴とする粒子線治療装置。
  7. 請求項6に記載の粒子線治療装置であって、前記第1の荷電粒子ビームの停止位置が許容範囲外である場合に、前記第3の加速器からの荷電粒子ビームの取り出しが停止されることを特徴とする粒子線治療装置。
  8. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の粒子線治療装置であって、
    前記第1の荷電粒子ビームは前記患者の体内で停止し、
    前記第2の荷電粒子ビームは前記患者の体を貫通し、
    前記測定装置は、
    前記測定装置へ入射する前記第2の荷電粒子ビームの量を測定する線量モニタ、前記測定装置へ入射する前記第2の荷電粒子ビームの位置を測定するビーム位置モニタ、および前記患者を貫通した前記第2の荷電粒子ビームが予め定められた物体に入射してから停止するまでに進む距離を測定する飛程モニタのうち、少なくとも1つを備えることを特徴とする粒子線治療装置。
  9. 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の粒子線治療装置であって、
    前記第1の加速器と前記第3の加速器との間、あるいは前記第2の加速器と前記第3の加速器との間に、荷電粒子ビームのエネルギーを調整するエネルギー調整器が設けられていることを特徴とする粒子線治療装置。
  10. 請求項9に記載の粒子線治療装置であって、
    前記エネルギー調整器は、
    前記第3の加速器へ入射する前記第1の荷電粒子ビームのエネルギーと、前記第3の加速器へ入射する前記第2の荷電粒子ビームのエネルギーとを近付けあるいは一致させるように、前記第1の荷電粒子ビームまたは前記第2の荷電粒子ビームを、加速または減速することを特徴とする粒子線治療装置。
  11. 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の粒子線治療装置であって、
    前記偏向器と前記第3の加速器との間に、荷電粒子ビームのエネルギーを調整するエネルギー調整器が設けられていることを特徴とする粒子線治療装置。
  12. 請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の粒子線治療装置であって、
    前記第3の加速器がシンクロトロンであり、前記第1の荷電粒子ビームおよび前記第2の荷電粒子ビームの前記シンクロトロンにおけるエネルギーを前記シンクロトロンの加速状態量に基づいて測定することを特徴とする粒子線治療装置。
  13. 請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の粒子線治療装置であって、
    前記第1の荷電粒子ビームが前記第1の加速器および前記第3の加速器によって加速され、前記第1の荷電粒子ビームが前記患者に照射される処理と、前記第2の荷電粒子ビームが前記第2の加速器および前記第3の加速器によって加速され、前記第2の荷電粒子ビームが前記患者に照射される処理とが、個別に実行されることを特徴とする粒子線治療装置。
  14. 第1の荷電粒子ビームを加速する第1の加速器と、
    前記第1の荷電粒子ビームとは質量電荷比が異なる第2の荷電粒子ビームを加速する第2の加速器と、
    前記第1の加速器および前記第2の加速器の下流側に設けられ、前記第1の荷電粒子ビームおよび前記第2の荷電粒子ビームのうちの少なくとも一方を加速する第3の加速器と、を備える粒子線治療装置を用いて、前記第1の荷電粒子ビームのエネルギーまたは前記第2の荷電粒子ビームのエネルギーを調整するエネルギー調整方法において、
    前記第2の荷電粒子ビームを前記第2の加速器へ入射しない状態とし、前記第1の荷電粒子ビームを前記第1の加速器および前記第3の加速器で加速した状態で、前記第3の加速器における前記第1の荷電粒子ビームの加速状態量を求め、前記第1の荷電粒子ビームの加速状態量に基づいて、前記第3の加速器における前記第1の荷電粒子ビームのエネルギーである第1のエネルギーを求め、
    前記第1の荷電粒子ビームを前記第1の加速器へ入射しない状態とし、前記第2の荷電粒子ビームを前記第2の加速器および前記第3の加速器で加速した状態で、前記第3の加速器における前記第2の荷電粒子ビームの加速状態量を求め、前記第2の荷電粒子ビームの加速状態量に基づいて、前記第3の加速器における前記第2の荷電粒子ビームのエネルギーである第2のエネルギーを求め、
    前記第1のエネルギーおよび前記第2のエネルギーの差異に基づいて、前記第1荷電粒子ビームまたは前記第2荷電粒子ビームに対して設けられたエネルギー調整器を制御して、前記第1の荷電粒子ビームのエネルギーまたは前記第2の荷電粒子ビームのエネルギーを調整することを特徴とするエネルギー調整方法。
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