以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
(複眼撮像装置の構成)
図1〜図6を参照して、一実施形態による複眼撮像装置100の構成について説明する。以下の説明では、上下方向をZ方向とする。Z方向のうち、上方向をZ1方向とし、下方向をZ2方向とする。また、Z方向に直交する面内で、互いに直交する2方向をそれぞれX方向およびY方向とする。X方向のうち、一方側をX1方向とし、他方側をX2方向とする。また、Y方向のうち、一方側をY1方向とし、他方側をY2方向とする。なお、図1に示す例では、光軸方向がZ方向となるように複眼撮像装置100を図示している。光軸方向とは、後述するレンズ1(図2参照)の光軸A(図3参照)が延びる方向であるとともに、後述するイメージセンサ6の撮像面に対して垂直な方向である。
図1および図2に示すように、複眼撮像装置100は、複数のレンズ1と、レンズ保持部2と、フィルタ保持部3と、絞り部4と、位置調整部5と、イメージセンサ6と、センサ基台部7と、センサ基板8とを備えている。複眼撮像装置100は、単一のイメージセンサ6に対して、複数のレンズ1(複数の個眼)の各々による複数の像(複数の個眼像)を一度に結像させる装置である。これにより、複眼撮像装置100は、単一のイメージセンサ6により、複数のレンズ1の各々による複数の画像を一度に形成可能に構成されている。また、複眼撮像装置100は、互いに同じ視点の複数の画像を一度に形成可能に構成されている。たとえば、複眼撮像装置100は、互いに分光特性が異なる互いに同じ視点の複数の画像を一度に形成可能である。これにより、被写体の分光特性に関する様々な情報を一度の撮像により取得可能である。
複数のレンズ1は、絞り部4を通過した光を結像させるために設けられている。複数のレンズ1の各々は、レンズ保持部2によって保持されている。本実施形態では、4つのレンズ1がレンズ保持部2によって保持されている。複数のレンズ1は、ガラス製、または、樹脂製の単眼レンズを含む。
レンズ保持部2は、複数のレンズ1を保持するように構成されている。レンズ保持部2は、レンズ孔20の各々において、複数のレンズ1を個別に保持している。
フィルタ保持部3は、複数のレンズ1の各々に対応するフィルタを保持するように構成されている。フィルタ保持部3は、フィルタ上面位置決め孔30を有するフィルタ上面位置決め部3aと、フィルタ孔31を有するフィルタ挿通部3bと、フィルタ下面位置決め孔32を有するフィルタ下面位置決め部3cとを備える。本実施形態では、フィルタ保持部3は、4つのフィルタを保持するように構成されている。フィルタは、偏光用のフィルタ、分光用のフィルタ(バンドパスフィルタ、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ)、減光用のフィルタ(ND(Neutral Density)フィルタ)などの光学フィルタである。
絞り部4は、複数のレンズ1の各々に入射する光量を調整するように構成されている。また、絞り部4は、収差補正、焦点深度調整などの結像性能を向上させるために設けられている。
位置調整部5は、イメージセンサ6とレンズ保持部2との間に設けられている。位置調整部5は、光軸方向(Z方向)におけるレンズ保持部2の位置を調整するように構成されている。位置調整部5は、光軸方向(Z方向)における厚みが互いに異なる少なくとも2種類の薄板9を積層することにより構成されている。また、位置調整部5を構成する薄板9には、センサ挿通孔50が設けられている。
イメージセンサ6は、複数のレンズ1の各々により結像される複数の画像を形成するように構成されている。イメージセンサ6は、たとえば、CMOS(Complementrary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサなどの半導体イメージセンサである。イメージセンサ6は、光軸方向(Z方向)から見て、略矩形形状を有している。イメージセンサ6は、センサ基板8に設けられている。
センサ基台部7は、イメージセンサ6の周囲を取り囲むように構成されている。
センサ基板8は、イメージセンサ6からの信号を伝送するための回路が形成された基板である。
複眼撮像装置100は、Z2方向側から順に、センサ基板8、センサ基台部7、位置調整部5、レンズ保持部2、絞り部4、フィルタ保持部3を積層することにより構成される。
(複眼撮像装置の各部の取り付けに関する構成)
次に、図2を参照して、複眼撮像装置100の各部の取り付けに関する構成について説明する。
センサ基板8は、イメージセンサ6を保持している。また、センサ基板8には、センサ基台部7を第1固定ねじによって固定するための第1固定ねじ孔を有している。本実施形態では、センサ基板8は、第1固定ねじ孔70a、第1固定ねじ孔70b、第1固定ねじ孔70c、および、第1固定ねじ孔70dの4つの第1固定ねじ孔を有している。第1固定ねじ孔70a、第1固定ねじ孔70b、第1固定ねじ孔70c、および、第1固定ねじ孔70dには、それぞれ、第1固定ねじ60a、第1固定ねじ60b、第1固定ねじ60c、および、第1固定ねじ60dが係合する。
センサ基台部7は、センサ基板8に取り付けられている。センサ基台部7は、第1固定ねじが挿通する第1固定ねじ挿通孔が設けられている。第1固定ねじ挿通孔は、いわゆる、バカ孔である。本実施形態では、センサ基台部7は、第1固定ねじ挿通孔71a、第1固定ねじ挿通孔71b、第1固定ねじ挿通孔71c、および、第1固定ねじ挿通孔71dの4つの第1固定ねじ挿通孔を有している。第1固定ねじ挿通孔71a〜第1固定ねじ挿通孔71dは、それぞれ、第1固定ねじ60a〜第1固定ねじ60dが挿通される。センサ基台部7は、第1固定ねじ挿通孔71a〜第1固定ねじ挿通孔71dに挿通された第1固定ねじ60a〜第1固定ねじ60dが、第1固定ねじ孔70a〜第1固定ねじ孔70dに係合することによって、センサ基板8に固定されている。
また、センサ基台部7は、イメージセンサ6が挿通されるセンサ挿通孔50を有している。また、センサ基台部7は、レンズ保持部2および位置調整部5を第2固定ねじによって固定するための第2固定ねじ孔を有している。本実施形態では、センサ基台部7は、第2固定ねじ孔72a、第2固定ねじ孔72b、第2固定ねじ孔72c、および、第2固定ねじ孔72dの4つの第2固定ねじ孔を有している。第2固定ねじ孔72a、第2固定ねじ孔72b、第2固定ねじ孔72c、および、第2固定ねじ孔72dには、それぞれ、第2固定ねじ61a、第2固定ねじ61b、第2固定ねじ61c、および、第2ねじ61dが係合する。
レンズ保持部2は、位置調整部5を介して、センサ基台部7に取り付けられている。レンズ保持部2および位置調整部5は、第2固定ねじが挿通する第2固定ねじ挿通孔を有している。第2固定ねじ挿通孔は、いわゆるバカ孔である。本実施形態では、レンズ保持部2および位置調整部5は、第2固定ねじ挿通孔73a、第2固定ねじ挿通孔73b、第2固定ねじ挿通孔73c、および、第2固定ねじ挿通孔73dの4つの第2固定ねじ挿通孔を有している。第2固定ねじ挿通孔73a〜第2固定ねじ挿通孔73dは、それぞれ、第2固定ねじ61a〜第2固定ねじ61dが挿通される。レンズ保持部2および位置調整部5は、第2固定ねじ挿通孔73a〜第2固定ねじ挿通孔73dに挿通された第2固定ねじ61a〜第2固定ねじ61dが、第2固定ねじ孔72a〜第2固定ねじ孔72dに係合することにより、センサ基台部7に固定される。
また、レンズ保持部2および位置調整部5には、センサ基台部7をセンサ基板8に取り付ける際の第1固定ねじのねじ頭部の直径よりも大きい直径を有する第1固定ねじ除け孔が設けられている。具体的には、レンズ保持部2および位置調整部5は、第1固定ねじ除け孔74aおよび第1固定ねじ除け孔74bを有している。第1固定ねじ除け孔74aは、第1固定ねじ60aを除けるための孔である。また、第1固定ねじ除け孔74bは、第1固定ねじ60dを除けるための孔である。
また、レンズ保持部2は、第3固定ねじと係合する第3固定ねじ孔と、第4固定ねじと係合する第4固定ねじ孔とを有している。本実施形態では、レンズ保持部2は、第3固定ねじ孔75a、第3固定ねじ孔75b、第3固定ねじ孔75c、および、第3固定ねじ孔75dの4つの第3固定ねじ孔を有している。第3固定ねじ孔75a、第3固定ねじ孔75b、第3固定ねじ孔75c、および、第3固定ねじ孔75dには、それぞれ、第3固定ねじ62a、第3固定ねじ62b、第3固定ねじ62c、および、第3固定ねじ62dが係合する。なお、第3固定ねじ、および、第3固定ねじ孔は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1ねじ部材」、および、「第1固定ねじ孔」の一例である。
また、本実施形態では、レンズ保持部2は、第4固定ねじ孔76a、第4固定ねじ孔76b、第4固定ねじ孔76c、および、第4固定ねじ孔76dの4つの第2固定ねじ孔を有している。第4固定ねじ孔76a、第4固定ねじ孔76b、第4固定ねじ孔76c、および、第4固定ねじ孔76dには、それぞれ、第4固定ねじ63a、第4固定ねじ63b、第4固定ねじ63c、および、第4固定ねじ63dが係合する。なお、第4固定ねじ、および、第4固定ねじ孔は、それぞれ、特許請求の範囲の「第2ねじ部材」、および、「第2ねじ孔」の一例である。
絞り部4には、第3固定ねじが挿通可能な第3固定ねじ挿通孔が設けられている。第3固定ねじ挿通孔は、いわゆる、バカ孔である。本実施形態では、絞り部4は、第3固定ねじ挿通孔77a、第3固定ねじ挿通孔77b、第3固定ねじ挿通孔77c、および、第3固定ねじ挿通孔77dの4つの第4固定ねじ挿通孔を有している。第3固定ねじ挿通孔77a、第3固定ねじ挿通孔77b、第3固定ねじ挿通孔77c、および、第3固定ねじ挿通孔77dには、それぞれ、第3固定ねじ62a、第3固定ねじ62b、第3固定ねじ62c、および、第3固定ねじ62dが挿通される。
絞り部4は、第3固定ねじによってレンズ保持部2に固定されている。具体的には、絞り部4は、第3固定ねじ挿通孔77a〜第3固定ねじ挿通孔77dに挿通された第3固定ねじ62a〜第3固定ねじ62dが第3固定ねじ孔75a〜第3固定ねじ孔75dに係合することによって、レンズ保持部2に固定されている。
また、本実施形態では、絞り部4は、第4固定ねじ挿通孔78a、第4固定ねじ挿通孔78b、第4固定ねじ挿通孔78c、および、第4固定ねじ挿通孔78dの4つの第4固定ねじ挿通孔を有している。第4固定ねじ挿通孔78a、第4固定ねじ挿通孔78b、第4固定ねじ挿通孔78c、および、第4固定ねじ挿通孔78dには、それぞれ、第4固定ねじ63a、第4固定ねじ63b、第4固定ねじ63c、および、第4固定ねじ63dが挿通される。絞り部4は、第4固定ねじによってレンズ保持部2に固定されている。具体的には、絞り部4は、第4固定ねじ挿通孔78a〜第4固定ねじ挿通孔78dに挿通された第4固定ねじ63a〜第4固定ねじ63dが第4固定ねじ孔76a〜第4固定ねじ孔76dに係合することによって、レンズ保持部2に固定されている。すなわち、本実施形態では、絞り部4は、第3固定ねじおよび第4固定ねじによって、レンズ保持部2に固定されている。なお、第3固定ねじ挿通孔は、特許請求の範囲の「第2ねじ挿通孔」の一例である。
フィルタ保持部3は、光軸方向において、絞り部4の外側からレンズ保持部2に固定されている。具体的には、フィルタ保持部3には、第4固定ねじが挿通可能な第4固定ねじ挿通孔が設けられている。本実施形態では、フィルタ保持部3は、第4固定ねじ挿通孔78a〜第4固定ねじ挿通孔78dの4つの第4固定ねじ挿通孔を有している。第4固定ねじ挿通孔78a〜第4固定ねじ挿通孔78dには、それぞれ、第4固定ねじ63a〜第4固定ねじ63dが挿通される。
本実施形態では、フィルタ保持部3は、第4固定ねじによってレンズ保持部2に固定されている。本実施形態では、フィルタ保持部3は、第4固定ねじ挿通孔78a〜第4固定ねじ挿通孔78dに挿通された第4固定ねじ63a〜第4固定ねじ63dが第4固定ねじ孔76a〜第4固定ねじ孔76dに係合することによって、レンズ保持部2に固定されている。なお、第4固定ねじ挿通孔は、特許請求の範囲の「第1ねじ挿通孔」の一例である。
また、本実施形態では、フィルタ保持部3には、第3固定ねじ挿通孔77a〜第3固定ねじ挿通孔77dの4つの第4固定ねじ挿通孔に対応する位置に、第3固定ねじのねじ頭部分の直径よりも大きい直径を有する第3固定ねじ除け孔79a、第3固定ねじ除け孔79b、第3固定ねじ除け孔79c、および、第3固定ねじ除け孔79dが設けられている。これにより、絞り部4を介してフィルタ保持部3をレンズ保持部2に固定する際に、第3固定ねじがフィルタ保持部3および絞り部4に干渉することを防止することができる。
図3は、フィルタ保持部3、絞り部4、および、レンズ保持部2の断面を図示している。図3に示す例では、フィルタ保持部3、絞り部4、および、レンズ保持部2の断面の各々に、互いに異なるハッチングを付して図示している。また、図3においては、フィルタ保持部3、絞り部4、および、レンズ保持部2の各々が薄板9を積層して形成されていることをイメージしやすくするため、薄板9によって形成される層の境界部分を破線で図示している。
本実施形態では、レンズ保持部2は、複数の孔部を有するとともに、レンズ1の光軸方向(Z方向)に積層された複数の薄板9が互いに接合されることにより一体形成されている。薄板9は、金属製の板状部材に複数の孔部を設けることにより形成される。薄板9は、板状形状を有するステンレス鋼材を含む。薄板9の厚みは、たとえば、数十〜百μmである。好ましくは、薄板9の厚みは、20μm〜100μmである。本実施形態では、薄板9は、厚みが20μm、30μm、および、100μmの3種類の薄板9を含む。また、レンズ保持部2は、積層された複数の薄板9が拡散接合によって接合されることにより一体形成されている。
本実施形態では、フィルタ保持部3は、積層された薄板9が拡散接合によって接合されることにより、一体形成されている。また、本実施形態では、絞り部4は、光軸方向(Z方向)に積層された複数の薄板9を拡散接合によって接合されることにより一体形成されている。センサ基台部7は、積層された複数の薄板9を拡散接合によって接合されることにより一体形成されている。
図4は、複眼撮像装置100の光路10を説明するための模式的な断面図である。図4では、複眼撮像装置100のうち、フィルタ保持部3、絞り部4、および、レンズ保持部2の断面図を、模式的に図示している。また、図4に示すフィルタ保持部3、絞り部4、および、レンズ保持部2の各々には、図3に示すフィルタ保持部3、絞り部4、および、レンズ保持部2の各々と同様のハッチングを付して図示している。
図4に示す例は、4つのレンズ1の各々に対応する光路10(光路10a、光路10b、光路10c、および、光路10d)を説明するために、便宜上、各光路10a〜光路10dを横並びに図示している。また、図4に示す例では、光路10aに設けられるフィルタは、光路10b〜光路10dの各々において設けられるフィルタと異なる種類のフィルタである。光路10aに設けられるフィルタは、たとえば、可視光を透過するフィルタである。また、光路10b〜光路10dの各々に設けられるフィルタは、たとえば、近赤外光を透過するフィルタである。なお、光路10b〜光路10dの各々に設けられるフィルタは、互いに異なる波長帯域の近赤外光を透過するフィルタであってもよいし、互いに同じ波長帯域の近赤外光を透過するフィルタであってもよい。
図4に示すように、複数の孔部は、レンズ孔20と、レンズ位置決め孔21と、隔壁構成孔22と、フィルタ上面位置決め孔30と、フィルタ孔31と、フィルタ下面位置決め孔32と、絞り孔40とを含む。
レンズ孔20は、複数のレンズ1の各々が挿通されるように構成されている。具体的には、薄板9には、4つのレンズ孔20が設けられており、4つのレンズ孔20の各々に、レンズ1が1つずつ挿通される。
また、レンズ位置決め孔21は、レンズ1の位置を決定するように構成されている。具体的には、レンズ位置決め孔21は、レンズ1の直径よりも小さい直径を有している。したがって、レンズ1は、レンズ位置決め孔21を通過することができない。そのため、レンズ1は、レンズ位置決め孔21が設けられた薄板9が積層された位置において、光軸方向における位置が決定される。また、隔壁構成孔22は、複数のレンズ1の各々と、イメージセンサ6との間の光路10を形成するとともに各光路10において光が干渉することを抑制するための隔壁11(図3参照)を構成する。
本実施形態では、レンズ保持部2は、レンズ孔20を有する薄板9と、レンズ位置決め孔21を有する薄板9と、隔壁構成孔22を有する薄板9とが組み合わされて積層されることにより形成されている。具体的には、レンズ保持部2は、レンズ位置決め孔21を有する薄板9と、レンズ孔20を有する薄板9とを積層する順序、または、レンズ位置決め孔21を有する薄板9の厚みを調整することにより、複数のレンズ1の各々の下端位置を調整するように構成されている。
なお、本実施形態では、レンズ保持部2のうち、隔壁構成孔22のみが設けられた薄板9が積層された部分を、第1部分2aとする。また、レンズ保持部2のうち、レンズ位置決め孔21と、隔壁構成孔22とが設けられた薄板9が積層された部分を、第2部分2bとする。また、レンズ保持部2のうち、レンズ孔20と、レンズ位置決め孔21とが設けられた薄板9が積層された部分を、第3部分2cとする。また、レンズ保持部2のうち、レンズ孔20と隔壁構成孔22とが設けられた薄板9が積層された部分を、第4部分2dとする。また、レンズ保持部2のうち、レンズ孔20のみが設けられた薄板9が積層された部分を、第5部分2eとする。
フィルタ上面位置決め孔30は、フィルタの上面位置を決定するように構成されている。フィルタ孔31は、フィルタが挿通されるように構成されている。フィルタ下面位置決め孔32は、フィルタの下面位置を決定するように構成されている。フィルタ上面位置決め孔30およびフィルタ下面位置決め孔32の各々は、フィルタの直径よりも小さい直径を有している。したがって、フィルタは、フィルタ上面位置決め孔30および、フィルタ下面位置決め孔32を通過することができない。そのため、フィルタ上面位置決め孔30が設けられた薄板9が積層された位置において、フィルタの上面位置が決定される。また、フィルタ下面位置決め孔32が設けられた薄板9が積層された位置において、フィルタの下面位置が決定される。
本実施形態では、フィルタ保持部3は、フィルタ上面位置決め孔30を有する薄板9と、フィルタ孔31を有する薄板9と、フィルタ下面位置決め孔32を有する薄板9とが組み合わされて積層されることにより形成されている。なお、フィルタ保持部3のうち、フィルタ上面位置決め孔30のみが設けられた薄板9が積層された部分が、フィルタ上面位置決め部3aである。また、フィルタ保持部3のうち、フィルタ孔31のみが設けられた薄板9が積層された部分が、フィルタ挿通部3bである。また、フィルタ保持部3のうち、フィルタ下面位置決め孔32のみが設けられた薄板9が積層された部分が、フィルタ下面位置決め部3cである。
絞り孔40は、複数のレンズ1の各々に入射する光量を調整するように構成されている。本実施形態では、絞り部4は、少なくとも、絞り孔40が設けられた薄板9が積層されることにより形成されている。なお、本実施形態では、絞り部4のうち、絞り孔40とレンズ孔20とが設けられた薄板9が積層された部分を、第1部分4aとする。また、絞り部4のうち、隔壁構成孔22とレンズ孔20とが設けられた薄板9が積層された部分を、第2部分4bとする。また、絞り部4のうち、隔壁構成孔22と絞り孔40とが設けられた部分を、第3部分4cとする。
図4に示すように、複数の孔部の各々は、レンズ保持部2と、フィルタ保持部3と、絞り部4とが光軸方向において積層されることにより、複数のレンズ1の各々に対応する光路10を形成するように構成されている。
また、本実施形態では、フィルタの種類(透過波長帯域)を異ならせているため、フィルタが透過する光の波長に応じて、レンズ1を設ける位置を異ならせている。すなわち、レンズ位置決め孔21を有する薄板9を積層する順序を調整することにより、光軸方向におけるレンズ1の下端部の位置を調整している。
次に、図5および図6を参照して、薄板9の構成、および、薄板9に設けられる切り欠きおよび面取りについて説明する。
図5に示すように、薄板9は、光軸方向(Z方向)から見て、略矩形形状を有している。また、薄板9の外周縁には、切り欠きが設けられている。切り欠きは、複数の孔部の種類に応じて大きさおよび個数を異ならせて設けられる。
図5に示す例では、薄板9は、第1切り欠き12a、第2切り欠き12b、第3切り欠き12c、第4きりかき12d、および、第5切り欠き12eを有している。また、図6に示す例では、薄板9は、第1切り欠き12aを有しておらず、第2切り欠き12b〜第5切り欠き12eを有している。また、図5および図6に示す例では、薄板9は、第1面取り13a、第2面取り13b、および、第3面取り13cが設けられている。
図5および図6に示す例では、薄板9に複数の絞り孔40が設けられている。図5に示す例では、互いに直径が等しい4つの絞り孔40が設けられている。一方、図6に示す例では、3つの絞り孔40と、絞り孔40とは直径が異なる1つの隔壁構成孔22とが設けられている。
したがって、積層された薄板9を拡散接合によって接合されることにより一体形成されるレンズ保持部2、フィルタ保持部3、および、絞り部4の各々は、Z方向から見て略矩形形状を有している。また、レンズ保持部2、フィルタ保持部3、および、絞り部4の各々は、外周縁において、複数の孔部の種類に応じて大きさおよび個数を異ならせて薄板9に設けられた複数の孔部の種類を識別するための切り欠きが設けられる。
薄板9に設けられる切り欠きは、孔部の種類に応じて大きさおよび個数が異なる。図5および図6に示す例では、絞り孔40が設けられている位置に対応する外周縁上の位置に、切り欠きが設けられる。すなわち、図5に示す例では、4つの絞り孔40の直径がすべて等しいため、大きさの等しい第1切り欠き12a、第2切り欠き12b、第3切り欠き12c、および、第4切り欠き12dが薄板9の外周上に設けられている。なお、切り欠きの大きさとは、深さ80ではなく、幅81である。すなわち、X方向側の辺に設けられている切り欠きは、Y方向における長さが切り欠きの大きさである。また、Y方向側の辺に設けられている切り欠きは、X方向における長さが切り欠きの大きさである。
一方、図6に示す例では、4つの孔部のうち、1つは隔壁構成孔22であり、他の3つは絞り孔40である。図6に示す例では、隔壁構成孔22に対応する位置には切り欠きが設けられていない。これにより、図5に示す薄板9に設けられている複数の孔部の種類と、図6に示す薄板9に設けられている複数の孔部の種類とを識別することができる。
また、切り欠きは、薄板9の厚みに応じて、薄板9の外周縁に設けられる。具体的には、薄板9の厚みに応じて、第5切り欠き12eが設けられる。薄板9の厚みが2種類の場合、第5切り欠き12eの有無によって厚みを識別可能にしてもよい。
また、本実施形態では、薄板9の外周縁には、薄板9の表裏を識別するために、大きさを異ならせて設けられた面取りが設けられている。また、薄板9に設けられた面取りによって、薄板9の面内における向きを識別することができる。図5および図6に示す例では、薄板9の左下(X1方向側かつY1方向側)の角部には、第1面取り13aが設けられている。また、薄板9の左上(X1方向側かつY2方向側)の角部には、第2面取り13bが設けられている。また、薄板9の右上(X2方向側かつY2方向側)の角部には、第3面取り13cが設けられている。第1面取り13aと、第2面取り13bとは、互いに大きさが等しい面取りである。また、第1面取り13a(第2面取り13b)と、第3面取り13cとは、互いに大きさが異なる面取りである。具体的には、第3面取り13cは、第1面取り13a(第2面取り13b)よりも、大きい面取りである。なお、薄板9の右下(X2方向側かつY1方向側)の角部には、面取りは設けられていない。
図5および図6に示す例では、絞り部4を構成する薄板9について説明を行ったが、レンズ保持部2およびフィルタ保持部3においても、同様に複数の孔部の種類および個数に応じて、切り欠きが設けられている。
また、フィルタ保持部3を構成する薄板9には、フィルタ上面位置決め孔30、フィルタ孔31、および、フィルタ下面位置決め孔32に応じて、位置および大きさを異ならせた切り欠きが設けられている。
レンズ保持部2、フィルタ保持部3、および、絞り部4の各々は、薄板9を積層して形成される。したがって、レンズ保持部2を構成する薄板9には、レンズ孔20、レンズ位置決め孔21、および、隔壁構成孔22に応じて、位置および大きさを異ならせた切り欠きが設けられている。
また、レンズ保持部2、フィルタ保持部3、および、絞り部4の各々は、外周縁において、薄板9の表裏を識別するために、大きさを異ならせて設けられた面取りが設けられている。なお、面取りに関しては、レンズ保持部2、フィルタ保持部3、および、絞り部4のいずれにおいても、薄板9の同様の位置において、薄板9の厚みに応じた大きさで設けられている。
図5および図6に示すように、薄板9の中央付近には、光路10(図3参照)を形成するための孔部(絞り孔40)が設けられている。また、薄板9の外周付近には、第3固定ねじ挿通孔、および、第4固定ねじ挿通孔が設けられている。すなわち、薄板9に設けられる複数の孔部には、光路10を形成するための孔と、複眼撮像装置100を組み立てる際に固定ねじが挿通される孔とが含まれる。
(本実施形態による眼撮像装置の効果)
本実施形態による複眼撮像装置100では、以下のような効果を得ることができる。
本実施形態では、上記のように、複眼撮像装置100は、複数のレンズ1と、複数のレンズ1を保持するレンズ保持部2と、複数のレンズ1の各々により結像される複数の画像を形成するイメージセンサ62と、を備え、レンズ保持部2は、複数の孔部を有するとともに、レンズ1の光軸方向に積層された複数の薄板9が互いに接合されることにより一体形成されている。これにより、複数の孔部を有する薄板9を積層することによりレンズ保持部2が形成されるので、レンズ保持部2に形成された孔部によってレンズ1を保持することができる。ここで、薄板9に対して孔部を形成する場合、たとえば、半導体製造プロセスなどにおいて用いられる微細加工技術を採用することができるので、高い位置精度および寸法精度で孔部を形成することが可能である。そして、複数の薄板9を積層し、互いに接合することによりレンズ保持部2を形成するので、積層方向(すなわち、レンズ1の光軸方向)におけるレンズ保持部2の位置精度を薄板9の厚みと同等の高い精度にすることができる。その結果、レンズ1を保持する孔(レンズ孔20およびレンズ位置決め孔21)の位置精度および寸法精度と、光軸方向におけるレンズ1の位置精度とについて、小型のレンズ1を用いる場合でも、小型のレンズ1に必要な位置精度でレンズ1を配置することが可能な複眼撮像装置100を提供することができる。
また、本実施形態では、上記のように、レンズ保持部2は、積層された複数の薄板9が拡散接合によって接合されることにより一体形成されている。これにより、拡散接合によって薄板9が一塊の剛体のように一体化されるので、複数の薄板9を接着剤によって接合する構成と比較して、薄板9同士の節後強度を向上させることができる。これにより、レンズ保持部2の強度を向上させることができる。その結果、たとえば、フィルタなどをねじによって固定するためのねじ孔などをレンズ保持部2に形成することができる。また、拡散接合によって薄板9が一体化されるので、接着剤などの介在物を薄板9の間に存在させることなく薄板9を接合することができる。その結果、接合後の薄板9の積層方向(光軸方向)における寸法精度を向上させることができる。
また、本実施形態では、上記のように、複数のレンズ1の各々に対応するフィルタを保持するフィルタ保持部3と、複数のレンズ1の各々に入射する光量を調整する絞り部4と、をさらに備え、少なくとも、フィルタ保持部3は、積層された複数の薄板9が拡散接合によって接合されることにより一体形成されている。これにより、レンズ保持部2のみならず、フィルタ保持部3の加工精度も向上させることができる。その結果、小型のレンズ1に必要とされる加工精度のフィルタ保持部3を形成することができる。
また、本実施形態では、上記のように、複数の孔部の各々は、レンズ保持部2と、フィルタ保持部3と、絞り部4とが光軸方向において積層されることにより、複数のレンズ1の各々に対応する光路10を形成するように構成されている。これにより、レンズ保持部2、フィルタ保持部3、および、絞り部4を小型化した場合でも、複数の孔部によって形成される光路10を、精度よく形成することができる。その結果、複眼撮像装置100を小型化するために、小さいレンズ1を用いる場合でも、各レンズ1に対応する光路10を精度よく形成することができる。
また、本実施形態では、上記のように、複数の孔部は、少なくとも、複数のレンズ1の各々が挿通されるレンズ孔20と、レンズ1の位置を決定するレンズ位置決め孔21と、複数のレンズ1の各々とイメージセンサ6との間の光路10を形成するとともに各光路10において光が干渉することを抑制するための隔壁11を構成するための隔壁構成孔22とを含み、レンズ保持部2は、レンズ孔20を有する薄板9と、レンズ位置決め孔21を有する薄板9と、隔壁構成孔22を有する薄板9とが組み合わされて積層されることにより形成されている。これにより、レンズ位置決め孔21を含む薄板9を積層する位置に応じて、レンズ1の位置を調整することができる。また、たとえば、入射する光の波長が同一の場合に、複数のレンズ1の各々の下端位置を異ならせることにより、異なる焦点距離で結像させた画像を取得することができる。
また、本実施形態では、上記のように、レンズ保持部2は、レンズ位置決め孔21を有する薄板9と、レンズ孔20を有する薄板9とを積層する順序、または、レンズ位置決め孔21を有する薄板9の厚みを調整することにより、複数のレンズ1の各々の下端位置を調整するように構成されている。これにより、複数のレンズ1の光軸方向における位置を、レンズ1ごとに調整することができる。その結果、たとえば、複数のレンズ1の各々に入射する光の波長が異なる場合に、入射する光の波長に応じてレンズ1の下端位置を調整することにより、入射する光の屈折率の違いによって生じる色収差を、容易に補正することができる。
また、本実施形態では、上記のように、複数の孔部は、フィルタの上面位置を決定するフィルタ上面位置決め孔30と、フィルタが挿通されるフィルタ孔31と、フィルタの下面位置を決めるフィルタ下面位置決め孔32と、をさらに含み、フィルタ保持部3は、フィルタ上面位置決め孔30を有する薄板9と、フィルタ孔31を有する薄板9と、フィルタ下面位置決め孔32を有する薄板9とが組み合わされて積層されることにより形成されている。これにより、フィルタの光軸方向における大きさに基づいてフィルタ孔31を有する薄板9の枚数を調整することにより、所望のフィルタを保持することができる。また、フィルタ下面位置決め孔32を有する薄板9の位置を調整することにより、複数のレンズ1のレンズ1各々に対応したフィルタを、光軸方向における適切な位置において保持することができる。その結果、フィルタの選択の自由度を向上させることができる。また、フィルタ上面位置決め孔30を有する薄板9の位置を調整することにより、複数のレンズ1の各々に設けたフィルタの厚みを異ならせることができる。その結果、フィルタの選択の自由度を、より向上させることができる。
また、本実施形態では、上記のように、複数の孔部は、複数のレンズ1の各々に入射する光量を調整する絞り孔40をさらに含み、絞り部4は、少なくとも、絞り孔40が設けられた薄板9が積層されることにより形成されている。これにより、位置精度および寸法精度が高い絞り孔40が形成された薄板9を積層することにより絞り部4が構成されるので、小型のレンズ1に必要な加工精度および必要な強度の絞り部4を形成することができる。また、絞り孔40が設けられた薄板9を積層する位置を調整することにより、絞り部4の光軸方向における位置を調整することができる。その結果、レンズ1の選択の自由度を向上させることができる。
また、本実施形態では、上記のように、レンズ保持部2、フィルタ保持部3、および、絞り部4の各々は、外周縁において、複数の孔部の種類に応じて大きさおよび個数を異ならせて薄板9に設けられた複数の孔部の種類を識別するための切り欠き、および、薄板9の表裏を識別するために、大きさを異ならせて設けられた面取りのうち、少なくともどちらか一方が設けられている。これにより、切り欠きを確認することによって、複数の薄板9を積層する際に、誤った種類の薄板9を積層することを抑制することができる。また、一体形成された後において、レンズ保持部2、フィルタ保持部3、および、絞り部4の外周縁に設けられた切り欠きを確認することにより、レンズ保持部2、フィルタ保持部3、および、絞り部4の種類を把握することができる。また、薄板9を積層する際に、面取りの大きさを確認することにより、薄板9の表裏が誤った状態で薄板9を積層することを抑制することができる。
また、本実施形態では、上記のように、光軸方向における厚みが互いに異なる少なくとも2種類の薄板9を積層することにより構成されており、イメージセンサ6とレンズ保持部2との間に設けられ、光軸方向におけるレンズ保持部2の位置を調整するための位置調整部5をさらに備える。これにより、薄板9の厚み分によるレンズ保持部2の位置調整のみならず、2種類の薄板9の厚みの差の値によっても、レンズ保持部2の、光軸方向における位置調整を行うことができる。その結果、厚みが1種類の薄板9を積層して位置調整部5を形成する構成と比較して、レンズ保持部2のより高精度な位置の調整を行うことができる。また、位置調整部5によって、イメージセンサ6に対するレンズ保持部2の平行性を維持したまま、レンズ保持部2の光軸方向(Z方向)の位置調整を行うことができる。
また、本実施形態では、上記のように、フィルタ保持部3は、光軸方向において、絞り部4の外側からレンズ保持部2に固定されており、フィルタ保持部3には、第3固定ねじが挿通可能な第3固定ねじ挿通孔が設けられており、絞り部4には、第4固定ねじが挿通可能な第4固定ねじ挿通孔が設けられており、レンズ保持部2は、第3固定ねじと係合する第3固定ねじ孔と、第4固定ねじと係合する第4固定ねじ孔とを有しており、フィルタ保持部3は、第3固定ねじによってレンズ保持部2に固定されており、絞り部4は、第4固定ねじによってレンズ保持部2に固定されている。これにより、フィルタ保持部3と絞り部4とが一体形成されている構成とは異なり、フィルタ保持部3、および、絞り部4の組み合わせを様々に変更して、レンズ保持部2に固定することができる。その結果、ユーザが所望する組み合わせのフィルタ保持部3および絞り部4をレンズ保持部2に固定することが可能となるので、ユーザの利便性を向上させることができる。
(複眼撮像装置の製造工程)
次に、図7〜図9を参照して、複眼撮像装置100の製造工程、フィルタ保持部3の製造工程、絞り部4の製造工程、および、レンズ保持部2の製造工程について説明する。
まず、図7を参照して、複眼撮像装置100の製造工程について説明する。
次に、ステップS1において、フォトエッチングによって、薄板9に対して複数の孔部を形成する。ステップS1の工程においては、薄板9の種類に応じて、フィルタ上面位置決め孔30、フィルタ孔31、フィルタ下面位置決め孔32、絞り孔40、レンズ孔20、レンズ位置決め孔21、隔壁構成孔22、センサ挿通孔50を形成する。また、ステップS1の工程においては、薄板9の種類に応じて、第1固定ねじ挿通孔〜第4固定ねじ挿通孔、第1固定ねじ除け孔、および、第3固定ねじ除け孔を形成する。
また、ステップS1の工程においては、複数の孔部の形成とともに、薄板9の外形の形成が行われる。具体的には、フォトエッチングによって、薄板9の外形を形成する。ステップS1の工程においては、フィルタ保持部3用の薄板9の外形、絞り部4用の薄板9の外形、レンズ保持部2用の薄板9の外形、位置調整部5用の薄板9の外形、および、センサ基台部7用の薄板9の外形を形成する。
次に、ステップS2において、フィルタ保持部3を一体形成する。フィルタ保持部3を一体形成する工程の詳細については、後述する。
次に、ステップS3において、絞り部4を一体形成する。絞り部4を一体形成する工程の詳細については、後述する。
次に、ステップS4において、レンズ保持部2を一体形成する。レンズ保持部2を一体形成する工程の詳細については、後述する。
次に、ステップS5において、センサ基台部7を一体形成する。具体的には、センサ挿通孔50が形成された複数の薄板9を積層し、拡散接合によって一体化する。また、ステップS5の工程において、一体形成後のセンサ基台部7に対して、第2固定ねじ孔が形成される。
次に、ステップS6において、位置調整部5を構成する。具体的には、位置調整部5は、センサ挿通孔50が形成され、厚みの異なる複数の薄板9を積層することにより構成される。ステップS6の工程では、互いに倍数の関係にない厚みを有する薄板9が積層される。ステップS6の工程では、たとえば、20μmの厚みを有する薄板9と、30μmの厚みを有する薄板9とが、組み合わせて積層される。この2種類の厚みを有する薄板9を、枚数を変更して組み合わせることにより、20μm、30μm、40μm(20μmの厚みを有する薄板9を2枚組み合わせた後の厚み)、50μm(20μmの厚みを有する薄板9と30μmの厚みを有する薄板9とを組み合わせた後の厚み)、60μm(30μmの厚みを有する薄板9を2枚組み合わせた後の厚み)といった、薄板9の厚みよりも高精度(この場合、10μm)でレンズ保持部2の位置調整を行うことができる。なお、本実施形態では、位置調整部5は、拡散接合によって一体化しない。すなわち、位置調整部5は、薄板9を積層する種類を変更することにより、レンズ保持部2の位置を再調整することが可能なように構成されている。
次に、ステップS7において、フィルタ保持部3を、光軸方向において、絞り部4の外側からレンズ保持部2に固定する。
次に、ステップS8において、レンズ保持部2を、位置調整部5を介してセンサ基台部7に固定する。
次に、ステップS9において、レンズ1の焦点調整を行う。具体的には、位置調整部5を構成する薄板9の組み合わせを変更することにより、レンズ1の焦点調整を行う。互いに異なる厚みを有する2種類の薄板9を組み合わせて積層することにより、薄板9の厚みの差分の精度で、レンズ1の焦点調整を行うことができる。その後、処理は、終了する。
なお、ステップS2〜ステップS6において、複数の薄板9を積層する際には、面取りによって薄板9の表裏が誤っていないかを確認するとともに、切り欠きによって、積層する薄板9の種類が誤っていないかを確認する。また、複数の薄板9を積層する際には、X方向およびY方向の位置を制限する。これにより、複数の薄板9に位置ずれが生じることを抑制することができる。
また、ステップS2〜ステップS6の工程は、どの順序で行われてもよい。すなわち、フィルタ保持部3、絞り部4、レンズ保持部2、センサ基台部7、および、位置調整部5は、どのような順序で形成されてもよい。また、ステップS2〜ステップS6の工程は、並行して行われてもよい。
また、ステップS7の工程と、ステップS8の工程とは、順序が入れ替わってもよい。すなわち、レンズ保持部2を、位置調整部5を介してセンサ基台部7に固定した後、フィルタ保持部3を、光軸方向において、絞り部4の外側からレンズ保持部2に固定してもよい。
次に、図4および図8を参照して、フィルタ保持部3を形成する工程について説明する。
ステップS20において、フィルタ上面位置決め孔30、フィルタ孔31、および、フィルタ下面位置決め孔32が形成された複数の薄板9を光軸方向に積層する。
本実施形態では、フィルタ保持部3(図4参照)のうち、フィルタ下面位置決め部3c(図4参照)においては、フィルタ下面位置決め孔32のみが設けられた薄板9を積層する。次に、フィルタ挿通部3b(図4参照)においては、フィルタ孔31のみが設けられた薄板9を積層する。次に、フィルタ上面位置決め部3a(図4参照)においては、フィルタ上面位置決め孔30のみが設けられた薄板9を積層する。
次に、ステップS21において、光軸方向に積層された複数の薄板9を拡散接合することにより、複数のレンズ1の各々に設けられるフィルタを保持するフィルタ保持部3を一体形成する。その後、工程は、ステップS3へ進む。
次に、図4および図9を参照して、絞り部4を形成する工程について説明する。
ステップS30において、絞り孔40が形成された複数の薄板9を、光軸方向に積層する。
絞り部4(図4参照)のうち、第1部分4a(図4参照)においては、絞り孔40と、レンズ孔20とが設けられた薄板9を積層する。次に、第2部分4b(図4参照)においては、隔壁構成孔22とレンズ孔20とが設けられた薄板9を積層する。次に、第3部分4c(図4参照)においては、隔壁構成孔22と絞り孔40とが設けられた薄板9を積層する。
次に、ステップS31において、光軸方向に積層された複数の薄板9を拡散接合することにより、複数のレンズ1の各々に入射する光量を調整する絞り部4を一体形成する。その後、工程は、ステップS4へ進む。
次に、図4および図10を参照して、レンズ保持部2を形成する工程について説明する。
ステップS40において、レンズ孔20、レンズ位置決め孔21、および、隔壁構成孔22が形成された複数の薄板9を積層する。具体的には、ステップS40の工程では、レンズ孔20を有する薄板9と、レンズ位置決め孔21を有する薄板9と、隔壁構成孔22を有する薄板9とを組み合わせて積層する。より具体的には、ステップS40の工程では、レンズ位置決め孔21を有する薄板9と、レンズ孔20を有する薄板9とを積層する順序、または、レンズ位置決め孔21を有する薄板9の厚みを調整することにより、複数のレンズ1の下端位置を調整する。
本実施形態では、レンズ保持部2(図4参照)のうち、第1部分2a(図4参照)においては、隔壁構成孔22のみが設けられた薄板9を積層する。次に、第2部分2b(図4参照)においては、レンズ位置決め孔21と、隔壁構成孔22とが設けられた薄板9を積層する。次に、第3部分2c(図4参照)においては、レンズ孔20と隔壁構成孔22とが設けられた薄板9を積層する。次に、第4部分2d(図4参照)においては、レンズ孔20とレンズ位置決め孔21とが設けられた薄板9を積層する。次に、第5部分2e(図4参照)においては、レンズ孔20が設けられた薄板9を積層する。
次に、ステップS41において、光軸方向に積層された複数の薄板9を拡散接合によって接合することにより、レンズ保持部2を一体形成する。
次に、ステップS42において、一体形成後のレンズ保持部2に対して、第3固定ねじ孔、および、第4固定ねじ孔を形成する。その後、工程は、ステップS5へ進む。
(本実施形態による複眼撮像装置の製造方法の効果)
本実施形態による複眼撮像装置100の製造方法では、以下のような効果を得ることができる。
本実施形態では、上記のように、複眼撮像装置100の製造方法は、複数のレンズ1を有し、複数のレンズ1の各々により結像される複数の画像をイメージセンサ6によって形成する複眼撮像装置100の製造方法であって、フォトエッチングによって、薄板9に対して複数の孔部を形成する工程と、複数の孔部が形成された薄板9を、レンズ1の光軸方向に積層し、接合することにより、複数のレンズ1を保持するレンズ保持部2を一体形成する工程と、レンズ保持部2と、イメージセンサ6の撮像面との位置関係を固定する工程とを含む。これにより、複数の孔部をフォトエッチングによって形成することにより、複数の薄板9に形成される複数の孔部の位置精度および寸法精度を向上させることができる。そして、複数の薄板9を積層し、互いに接合するので、積層方向(すなわち、レンズ1の光軸方向)における位置精度を薄板9の厚みと同等の精度にしたレンズ保持部2を一体形成することができる。その結果、小型のレンズ1を用いる場合でも、小型のレンズ1に必要な位置精度でレンズ1を配置することが可能な複眼撮像装置100の製造方法を提供することができる。
また、本実施形態では、上記のように、薄板9に対して複数の孔部を形成する工程において、複数の孔部の形成とともに、薄板9の外形の形成が行われる。これにより、複数の孔部のみならず、薄板9の外形形状の加工精度を向上させることが可能となるので、より加工精度を向上させた複眼撮像装置100の製造方法を提供することができる。
また、本実施形態では、上記のように、レンズ保持部2を一体形成する工程は、拡散接合によって複数の薄板9を接合する工程を含む。これにより拡散接合によって薄板9が一体化されるので、複数の薄板9を接着剤によって接合する構成と比較して、薄板9同士の接合強度を向上させることができる。これにより、レンズ保持部2の強度を向上させることができる。その結果、たとえば、フィルタなどをねじによって固定するためのねじ孔などを形成することが可能なレンズ保持部2を提供することができる。また、拡散接合によって薄板9が一体化されるので、接着剤などの介在物を薄板9の間に存在させることなく薄板9を接合することができる。その結果、接合後の薄板9の積層方向(光軸方向)における寸法精度を向上させたレンズ保持部2を提供することができる。
また、本実施形態では、上記のように、複数の孔部が形成された複数の薄板9を光軸方向に積層し、拡散接合することにより、複数のレンズ1の各々に設けられるフィルタを保持するフィルタ保持部3を一体形成する工程と、フィルタ保持部3を、光軸方向において、複数のレンズ1の各々に入射する光量を調整する絞り部4の外側からレンズ保持部2に固定する工程と、をさらに含む。これにより、薄板9の加工精度を維持したまま、フィルタ保持部3を一体形成することができる。その結果、フィルタ保持部3を小型化した場合でも、加工精度を向上させたフィルタ保持部3を提供することができる。
また、本実施形態では、上記のように、薄板9に形成される複数の孔部は、複数のレンズ1の各々が挿通されるレンズ孔20と、レンズ1の位置を決定するレンズ位置決め孔21と、複数のレンズ1の各々と、イメージセンサ6との間の光路10を形成するとともに各光路10において光が干渉することを抑制するための隔壁11を構成するための隔壁構成孔22とを含み、レンズ保持部2を一体形成する工程は、レンズ孔20を有する薄板9と、レンズ位置決め孔21を有する薄板9と、隔壁構成孔22を有する薄板9とを組み合わせて積層する工程を含む。これにより、レンズ位置決め孔21を有する薄板9を積層する位置を調整することにより、レンズ1の位置を調整することが可能なレンズ保持部2を提供することができる。
また、本実施形態では、上記のように、レンズ保持部2を一体形成する工程は、レンズ位置決め孔21を有する薄板9と、レンズ孔20を有する薄板9とを積層する順序、または、レンズ位置決め孔21を有する薄板9の厚みを調整することにより、複数のレンズ1の下端位置を調整する工程を含む。これにより、複数のレンズ1の光軸方向における位置を、レンズ1ごとに調整することができる。その結果、たとえば、複数のレンズ1の各々に入射する光の波長が異なる場合に、入射する光の波長に応じてレンズ1の下端位置を調整することにより、入射する光の屈折率の違いによって生じる色収差を、容易に補正することが可能なレンズ保持部2を提供することができる。
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記実施形態では、フィルタ保持部3が異なる種類のフィルタを含む構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、フィルタ保持部3が保持するフィルタの種類は、互いに等しくてもよい。各光路10において設けられるフィルタの種類が互いに場合、各レンズ1に入射する光の波長が等しくなる。そのため、図11に示す第1変形例のように、各レンズ1の下端部の位置を、すべて等しくすればよい。すなわち、薄板9に設けられるレンズ孔20、レンズ位置決め孔21、および、隔壁構成孔22の組み合わせは、薄板9が設けられる層ごとに、等しくなる。
また、上記実施形態では、1つの光路10において、1つのフィルタを設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、本発明では、図12に示す第2変形例のように、1つの光路10において、複数のフィルタを設けてもよい。
また、上記実施形態では、フィルタ保持部3が、光軸方向における厚みが等しいフィルタを用いる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、本発明では、フィルタ保持部3は、光軸方向における厚みが異なるフィルタを保持するように構成されていてもよい。その場合、フィルタの厚みに応じて、フィルタ保持部3を形成する薄板9において、フィルタ孔31およびフィルタ下面位置決め孔32の組み合わせを設定すればよい。
また、上記実施形態では、複眼撮像装置100が、互いに同じ視点の複数の画像を一度に形成可能に構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複眼撮像装置100が、互いに異なる視点の複数の画像を一度に形成可能に構成されていてもよい。
また、上記実施形態では、複眼撮像装置100が、4つのレンズ1を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複眼撮像装置100が、4つ以外の数のレンズ1を備えていてもよい。たとえば、複眼撮像装置100は、6つのレンズ1を備えていてもよい。
また、上記実施形態では、センサ基台部7が、同一の厚みを有する薄板9を積層することにより形成される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、センサ基台部7は、互いに異なる厚みを有する薄板9を積層することにより構成されていてもよい。
また、上記実施形態では、位置調整部5が、異なる厚みを有する薄板9を積層することにより構成される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、本発明では、位置調整部5は、互いに厚みが等しい薄板9を積層することにより構成されていてもよい。
また、上記実施形態では、位置調整部5が、薄板9を接合することなく、積層することのみで構成される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、位置調整部5は、積層された薄板9を拡散接合することにより、一体形成してもよい。しかしながら、位置調整部5を拡散接合によって一体化した場合、位置調整部5によってレンズ保持部2とイメージセンサ6との間の距離を調整するためには、位置調整部5自体を取り換える必要がある。したがって、位置調整部5は、拡散接合によって一体化しないほうが好ましい。
また、上記実施形態では、絞り部4が、積層された複数の薄板9により形成される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、複数のレンズ1の下端部の位置が互いに等しい場合、絞り部4は、1枚の薄板9によって構成されていてもよい。
また、上記実施形態では、絞り部4が、積層された複数の薄板9を拡散接合することにより一体形成される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、絞り部4は、接着剤による接合など、拡散接合以外の手法によって接合されていてもよい。
また、上記実施形態では、フィルタ上面位置決め部3aが、複数の薄板9を積層することにより形成される構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、本発明では、フィルタ上面位置決め部3aは、1枚の薄板9によって構成されていてもよい。
また、上記実施形態では、位置調整部5が、互いに異なる厚みを有する薄板9が積層されることにより形成される構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、位置調整部5は、互いに等しい厚みを有する薄板9が積層されることにより形成されていてもよい。たとえば、位置調整部5は、20μmの厚みを有する薄板9が積層されることにより形成されていてもよい。
また、上記実施形態では、位置調整部5が、互いに倍数の関係にない厚みを有する薄板9が積層されることにより形成される構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、位置調整部5は、互いに倍数の関係にある厚みを有する薄板9が積層されることにより構成されていてもよい。たとえば、位置調整部5は、20μmの厚みを有する薄板9と、40μmの厚みを有する薄板9とが積層されることにより形成されていてもよい。
また、上記実施形態では、薄板9が、切り欠きおよび面取りの両方を有する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、本発明では、薄板9は、切り欠きおよび面取りを有していなくてもよい。しかしながら、薄板9が切り欠きおよび面取りを有していない場合、組み立て時において薄板9の種類および表裏を識別することが困難になる。また、組み立て後において、薄板9の種類および積層順序が正しいか否かを識別することが困難になる。したがって、薄板9は、切り欠きおよび面取りを有していることが好ましい。
また、上記実施形態では、レンズ保持部2、フィルタ保持部3、および、絞り部4の各々が、光軸方向からみて略矩形形状を有する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、レンズ保持部2、フィルタ保持部3、および、絞り部4の各々は、円形形状を有していてもよい。レンズ保持部2、フィルタ保持部3、および、絞り部4の各々が円形形状を有している場合、たとえば、対称軸を明確にするために、切り欠きを設ければよい。
また、上記実施形態では、絞り部4が、第3固定ねじおよび第4固定ねじによって、レンズ保持部2に固定される例を示したが、本発明はれに限られない。たとえば、絞り部4は、第3固定ねじおよび第4固定ねじのどちらかによってレンズ保持部2に固定されていてもよい。
また、上記実施形態では、フォトエッチングによって薄板9に複数の孔部を形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。薄板9の面内において、必要な位置精度および寸法精度によって孔部を形成することが可能であれば、孔部を形成する手法は問わない。たとえば、レーザ加工によって孔部を形成してもよい。