以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係る占有マップ作成方法、及び、占有マップ作成装置について説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る占有マップ作成方法を実行する運転支援システムの概略構成図である。
運転支援システム100は、ドライバによる車両の運転を支援することを目的として、車両に搭載されるシステムである。運転支援システム100は、オドメトリ計測部11と、測距センサ12と、測距データ蓄積部13と、短期蓄積測距データ14と、長期蓄積測距データ15と、占有グリッドマップ生成部16と、短期占有グリッドマップ17と、長期占有グリッドマップ18と、非占有グリッドマップ生成部19と、短期非占有グリッドマップ20と、長期非占有グリッドマップ21と、評価部22と、出力部23と、を有する。
これらの構成のうち、測距データ蓄積部13、短期蓄積測距データ14、長期蓄積測距データ15、占有グリッドマップ生成部16、短期占有グリッドマップ17、長期占有グリッドマップ18、非占有グリッドマップ生成部19、短期非占有グリッドマップ20、長期非占有グリッドマップ21、評価部22、及び、出力部23は、グリッドマップ作成装置10として一体に構成されている。グリッドマップ作成装置10において、測距データ蓄積部13〜出力部23の構成は、同一のマイクロコンピュータにおいて構成されてもよいし、異なるマイクロコンピュータにより構成されてもよい。また、オドメトリ計測部11、及び、測距センサ12は、グリッドマップ作成装置10とは別体のセンサとして設けられている。
以下では、運転支援システム100の各構成の詳細について説明する。
オドメトリ計測部11は、走行する車両に関するオドメトリ情報を取得すると、そのオドメトリ情報を測距データ蓄積部13へと出力する。オドメトリ情報とは、車両の走行情報であり、走行軌跡の作成等に用いられる。オドメトリ情報として、例えば、車両の旋回角や速度などが含まれる。
測距センサ12は、車両の周囲にある物体の車両からの距離及び方向、すなわち車両に対する物体位置を測定するセンサであり、取得した測距データを、測距データ蓄積部13へと出力する。測距センサ12は、レーザレーダ(LiDAR)に限らず、ステレオカメラなどであってもよい。測距センサ12は、構造物や移動物体などの障害物が設けられた路面までの車両に対する相対距離及び方向を計測できるセンサであれば、センサの種類は限定されない。そのため、測距データとしての位置は、車両を中心とする車両座標系で示される。
測距データ蓄積部13は、オドメトリ計測部11により取得された車両のオドメトリ情報と、測距センサ12により取得された測距データとの入力を受け付ける。そして、測距データ蓄積部13は、これらの入力に応じて、車両座標系で観測された測距データ(すなわち車両座標系での物体位置)をオドメトリ座標系における物体位置に変換する。
測距データ蓄積部13は、所定期間におけるオドメトリ座標系の測距データを蓄積することで、短期蓄積測距データ14及び長期蓄積測距データ15を作成する。長期蓄積測距データ15には、現在から所定の第1時間だけ前までの期間における測距データが記録される。短期蓄積測距データ14には、現在から所定の第1時間だけ前までの期間における測距データが記録される。なお、第2時間は、第1時間よりも短いものとする。なお、短期蓄積測距データ14及び長期蓄積測距データ15は、測距データの蓄積開始時における車両の位置を中心とする絶対座標系により示される。
占有グリッドマップ生成部16は、短期蓄積測距データ14を重畳して所定の2次元領域における短期占有グリッドマップ17を作成する。同時に、占有グリッドマップ生成部16は、長期蓄積測距データ15に蓄積された測距データを重畳して、長期占有グリッドマップ18を作成する。そして、占有グリッドマップ生成部16は、作成した短期占有グリッドマップ17及び長期占有グリッドマップ18を、非占有グリッドマップ生成部19へと送信する。
なお、占有グリッドマップ生成部16により生成される占有グリッドマップ(短期占有グリッドマップ17及び長期占有グリッドマップ18)は、車両の周囲における2次元の所定領域を格子(グリッド)状に区切り、これらのグリッドにおける物体の存在を離散的に示したものである。すなわち、占有グリッドマップとは、構造物や移動物体などの障害物が存在する路面において、所定領域における障害物の存在が離散化されたグリッドの集合として表現されたものである。この占有グリッドマップにおいては、それぞれのグリッドが、障害物により占有された占有グリッド、又は、障害物により占有されていない非占有グリッドとして示される。
占有グリッドマップとしては、XYの直交座標系での離散値や、r−θの極座標系での離散値を示すものなどが知られている。本実施形態において占有グリッドマップ生成部16により生成される占有グリッドマップは、XYの直交座標系で示されるものである。なお、この占有グリッドマップの詳細については、後に図4を用いて説明する。
非占有グリッドマップ生成部19は、入力される短期占有グリッドマップ17及び長期占有グリッドマップ18のそれぞれに対して、後述のレイトレーシング処理を行うことにより、非占有グリッドと判断できるグリッドを特定する。そして、非占有グリッドマップ生成部19は、非占有グリッドを示す短期非占有グリッドマップ20及び長期非占有グリッドマップ21を生成し、評価部22に出力する。なお、レイトレーシング処理の詳細については、後述の図5のステップS17において説明する。
評価部22には、占有グリッドマップ生成部16により生成される長期占有グリッドマップ18と、非占有グリッドマップ生成部19により生成される短期非占有グリッドマップ20とが入力される。評価部22は、長期占有グリッドマップ18における占有グリッドのうち、短期非占有グリッドマップ20において非占有グリッドとして示されるグリッドを、非占有グリッドと評価する。
最終的に、評価部22は、長期占有グリッドマップ18において、長期占有グリッドマップ18における占有グリッドのうち、非占有グリッドと評価されたグリッドを非占有グリッドに変更したものを、最終グリッドマップとして出力部23に出力する。このようにして、長期占有グリッドマップ18において、移動物体の過去の存在に起因する占有グリッドを消去できるので、最終グリッドマップにおいて占有グリッドの判定精度を向上させることができる。
出力部23は、評価部22により生成されたグリッドマップを、運転支援システム100外にある自動走行システムなどへと出力する。例えば、自動走行システムは、受信したグリッドマップを用いて、障害物を避けるように車両の走行を支援する。
なお、長期非占有グリッドマップ21は、短期非占有グリッドマップ20と同様の処理で生成可能であるが、評価部22における処理に用いられない。そのため、長期非占有グリッドマップ21の生成を省略してもよい。
ここで、測距センサ12による測距データの取得制御の概要について説明する。
図2は、測距センサ12による測距データの取得制御を示す説明図である。この図には、xyz軸を有する3次元空間の中を、車両200が走行する状況が示されている。なお、走行方向がx軸で、車幅方向がy軸で、高さ方向がz軸に相当する。
測距センサ12は、所定の周期で、xy平面において矩形状の所定領域において複数の測定点を設定し、これらの測定点までの距離を測定する。この図においては、時刻t−1、t、t+1、t+2の4回のタイミングで、距離を測定する。そして、測距センサ12は、この測定結果を用いて測距データを生成する。測距データには、車両200を基準とする相対座標系において、3次元の所定領域での任意の点の物体の有無が示される。そのため、測距データを用いることで、構造物や移動物体などの障害物を含む路面の高さを知ることができる。
この図によれば、時刻t−1における測距データには、走行方向を前方とした場合における、左後方にある円柱状の障害物の高さ情報が含まれる。時刻tにおける測距データには、左前方にある直方体の障害物の高さ情報が含まれる。また、時刻t+1における測距データには、右前方にある円柱状の障害物の高さ情報が含まれる。このように、測距データによって、路面に存在する構造物についてのxy平面における位置、及び、z方向の高さが示されることになる。
なお、測距データは、測距データ蓄積部13によって、座標系が変換される。詳細には、測距データ蓄積部13は、オドメトリ計測部11から入力されるオドメトリ情報を用いて、それぞれの測定タイミング(t−1〜t+2)における車両200の位置を、オドメトリ座標を用いて求める。そして、測距データ蓄積部13は、測距センサ12により取得された測距データに対して、車両200を基準とする相対座標系からオドメトリ座標で示された所定の場所を基準とする絶対座標系への変換を行う。
最終的に、測距データ蓄積部13は、絶対座標系に変換された複数の測距データを用いて、測距データが蓄積された短期蓄積測距データ14と長期蓄積測距データ15を生成する。そして、占有グリッドマップ生成部16は、短期蓄積測距データ14と長期蓄積測距データ15のそれぞれを用いて、短期占有グリッドマップ17及び長期占有グリッドマップ18を生成する。
以下では、図3を用いて、測距データから占有グリッドマップ(短期占有グリッドマップ17及び長期占有グリッドマップ18)を生成する方法を説明し、図4を用いて、評価部22から出力される最終グリッドマップの一例について説明する。
図3は、測距データから占有グリッドマップを生成する方法の説明図である。
上述のように、測距センサ12は、測距センサ12の周囲の所定領域において複数の測定点xjを設定し、これらの複数の測定点xjまでの距離を取得して、測距データを求める。測距データには、1つの測定点xjに対応して、所定の3次元領域における任意の点のそれぞれにおいて、測定点xjを平均(分布の中心)とした共分散Σの正規分布が示される。なお、共分散Σは、物体の存在確率と対応するものである。すなわち、1つの測定点xjに対して、その測定点xjにおいてピークとなるような、3次元領域における共分散Σの正規分布(ガウス分布)が得られる。これは、測定点xjのそれぞれが、自身においてピークとする正規分布を定義しており、3次元空間の任意の点における共分散Σの分布値に影響を与えることを意味する。
そこで、全ての測定点xjと対応する共分散Σの正規分布を用いて、2次元平面(xy平面)である路面に設けられるグリッドxiのそれぞれについて、z方向(高さ方向)の共分散Σの総和を算出する。これにより、xy面内のグリッドxiに存在する構造物のz方向における高さに応じた占有値を求めることができる。なお、占有値の算出においては、測距センサ12から測定点xjまでの距離rj、及び、測定点xjにおけるxy平面からの高さhjが、重み付けとして共分散Σの分布値に乗ざれる。
測距センサ12から測定点xjまでの距離rjが遠くなるほど、測定点xjの分布が疎になる。そこで、共分散Σの分布値に対して、測定点xjまでの距離rjを乗じて重み付けをすることにより、得られる占有値において、測定点xjの正規分布の影響を大きくできる。これにより、測定点xjの分布が疎になることを補償できる。
測定点xjに対する測定においては、路面において反射されるレーザーが用いられる。しかしながら、高さのある測定点xjに対する測定においては、路面の反射特性によっては正しい分布値よりも小さな値となるおそれがある。そこで、共分散Σの分布値に対して、測定点xjの高さhjを乗じて重み付けをすることにより、測定点xjの高さに起因する正規分布の不正確さを補償できる。
したがって、任意のグリッドxiにおける占有値Ciは、次式のように示すことができる。ただし、N(・;xj,Σ)はj番目の測距データの測定点xjを平均(分布の中心)とする共分散Σの正規分布を示すものである。また、xiは、グリッドの位置をxy平面において車両を基準とした相対座標で示したものである。iは、相対座標の位置を示すインデックスである。
なお、占有グリッドマップにおいては、それぞれのグリッドにおける占有値Ciに対して、一定の閾値より大きいか否かを判定する2値化処理を行われ、各グリッドにおける障害物の占有又は非占有の状態が示される。なお、2値化処理が行われず、占有グリッドマップが占有値Ciの連続値で表現されてもよい。
測距データの表現形式としては、上述のような測距センサ12からの距離を測定した測定点を3次元空間に分布させるポイントクラウド形式に限られない。ステレオカメラからの出力結果のように、測距センサ12から測定点までの距離分布を2次元平面に投影した距離画像として表現するものであってもよい。
図4は、最終的に生成される最終グリッドマップの一例を示す図である。例えば、車両200を中心として、走行方向における前後、及び、車幅方向における左右が所定長の2次元の矩形領域として、この矩形領域を格子状に区切りグリッドを構成する。なお、占有グリッドマップ(短期占有グリッドマップ17及び長期占有グリッドマップ18)、及び、非占有グリッドマップ(短期非占有グリッドマップ20及び長期非占有グリッドマップ21のそれぞれ)も、同様の形状で作成される。
この図によれば、矩形領域は、車両200を中心として、前方80mから後方10mまで(+80m〜−10m)、及び、左右20m(−20m〜+20m)の範囲であるものとする。また、矩形領域において、10〜20cm四方のグリッドが構成される。このような2次元の占有グリッドマップは、進行方向において前方が長い矩形であるため、車両の前方における障害物の占有状態がより多く示されることになる。
このような最終グリッドマップの作成方法の概要は、以下のとおりである。
まず、最終グリッドマップにおいては、短期占有グリッドマップ17、及び、長期占有グリッドマップ18が生成され、その後、短期占有グリッドマップ17を用いて短期非占有グリッドマップ20が生成される。
ここで、長期占有グリッドマップ18においては、長期間蓄積された複数の測距データが用いられる。そのため、一時的に測距データが取得できない場合があっても、他の測距データを補完的に使用できるので、各グリッドにおける障害物の占有状態の判定精度の向上を図ることができる。
しかしながら、長期間蓄積された測距データを用いてしまうと、比較的古い測距データに示される移動物体63の過去の占有領域が、現在においては車両200の走行の妨げにならないのにも関わらず、占有グリッドと判定されるおそれがある。そこで、長期占有グリッドマップ18における占有グリッドのうち、比較的新しい測距データを用いて生成される短期非占有グリッドマップ20において非占有グリッドと示されるグリッドについては、障害物により占有されていないと判断し、非占有グリッドに変更する。
このように、長期占有グリッドマップ18において占有グリッドとして示されていたとしても、短期非占有グリッドマップ20において非占有グリッドと示されている場合には、移動物体が過去に占有されていたグリッドのように、現在における車両200の走行の妨げとならないため、非占有グリッドとして判断できる。このようにして、占有領域の判定精度の向上を図ることができる。以下、図5を用いて、最終グリッドマップ生成制御の詳細について説明する。
図5は、運転支援システム100による最終グリッドマップ生成制御のフローチャートである。運転支援システム100のグリッドマップ作成装置10は、この図に示されたグリッドマップ生成制御の一連の処理を所定のタイミングで繰り返し行うようにプログラムされている。なお、以下においては、説明の明確化のために、図1におけるグリッドマップ作成装置10において所定の機能を実現するブロックが、それぞれの処理を行うものとして説明する。なお、グリッドマップ作成装置10が、一連の処理を行ってもよい。
評価グリッドマップ生成制御は、ステップS10としてまとめて示され、ステップS11〜S14からなる測距データの重畳制御と、ステップS15としてまとめて示され、ステップS16〜S18からなる評価制御との2つの主要な処理を含む。
まず、ステップS10の測距データの重畳制御について説明する。
ステップS11において、測距データ蓄積部13は、測距センサ12により取得される測距データを受信する。上述のように、測距データには、車両200の周囲の所定領域におけるグリッドxiにおける障害物の占有値Ciが、車両座標系で示されている。
ステップS12において、測距データ蓄積部13は、測距センサ12からの測距データ、及び、オドメトリ計測部11からのオドメトリ情報を取得する。そして、測距データ蓄積部13は、測距データに対して、オドメトリ情報を用いて車両座標系から絶対座標系への変換を行う。
上述のように、測距データは、車両200の位置をゼロ点として示されているため、測距データの取得タイミングに応じてゼロ点が変化する相対座標系となる。オドメトリ座標は、例えば、走行開始時などの特定のタイミングにおける車両200の位置をゼロ点とした絶対座標系となる。そこで、オドメトリ情報を用いることで、取得された測距データについて、相対座標系から絶対座標系への変換をすることができる。
ステップS13において、測距データ蓄積部13は、さらに、オドメトリ座標に変換した測距データを時間バッファへと記録する。
ここで、時間バッファとは、所定長の要素を複数記録するメモリ領域であり、一般に配列と称される。この例においては、時間バッファは、所定の個数の測距データを記録することができるように構成されている。また、この時間バッファにおいては、あるタイミングにおいて取得される測距データは、時間バッファの配列を構成する1つの要素として記録され、時間バッファの全体に、所定期間における測距データが記録される。
より詳細には、測距データ蓄積部13は、測距センサ12から新たな測距データを受信した場合には、時間バッファの最終要素として新たな測距データを追加するとともに、時間バッファの先頭要素である最も古い測距データを消去する。このようにすることで、時間バッファは、記憶される測距データの数が一定に保持されるため、現在から過去に向かって所定の時間長の測距データを記憶することになる。また、このように新たな要素の追加とともに、最も古い要素が削除されるメモリ構造は、リングバッファと称される。
本実施形態においては、2つの独立する時間バッファとして、短期時間バッファ及び長期時間バッファが設けられている。例えば、短期時間バッファは、5個(5ステップ)の測距データを蓄積でき、長期時間バッファは、50個(50ステップ)の測距データを蓄積できるものとする。
測距データ蓄積部13による測距データの蓄積量、すなわち、時間バッファの配列の要素数は、車速に応じて変更してもよい。一例として、車速が低速になるほど、時間バッファの配列の要素数を大きく変更してもよい。このようにすることで、車両がグリッドマップの生成対象の走行環境を通り過ぎる前に、測距データが時間バッファから消去されることを防止できる。
他の一例として、車速が高速になるほど、時間バッファの要素数を小さく変更してもよい。このようにすることで、車両が既に走行環境を通り過ぎた場合には、通り過ぎた走行環境を示す不要な測距データが消去されやすくなるので、占有グリッドマップ生成制御における計算負荷の低減や、測距データを蓄積するメモリ使用量の低減などを図ることができる。
さらに、車両が停止している間は、測距データ蓄積部13による測距データの蓄積を中断してもよい。停車中に測距範囲に移動物体63が進入した場合などには、新たに測距センサ12の死角となる領域が生じてしまう。このような場合において測距データの蓄積を中断することにより、死角領域における障害物の占有状態を示す測距データが、停車中における測距データの上書きにより消去されることを防止することができる。なお、測距データ蓄積部13による測距データの蓄積の中断に替えて、測距センサ12による測距データの取得を停止してもよい。
ステップS14においては、測距データ蓄積部13は、短期時間バッファと長期時間バッファのそれぞれについて、配列の各要素に記録された絶対座標系の測距データを重畳する。測距データ蓄積部13は、短期時間バッファを用いて、過去の比較的短い時間前から現在までの時間の測距データに基づく短期蓄積測距データ14を生成するとともに、長期時間バッファを用いて、過去の比較的長時間前から現在までの時間の測距データに基づく長期蓄積測距データ15を生成する。
ここで、時間バッファ(短期時間バッファ及び長期時間バッファ)に記憶された測距データは、ステップS13においてオドメトリ座標に変換されているため、それらのゼロ点は等しい。そのため、時間バッファに記録された測距データを座標をあわせて重畳することにより、同じゼロ点を基準とした3次元空間における共分散Σの分布値を示す蓄積測距データ(短期蓄積測距データ14及び長期蓄積測距データ15)を生成することができる。このようにして、複数の測距データが用いられるので、1回の測定により得られる測距データからでは得られない高密度の蓄積測距データを生成することができる。
次に、ステップS15の評価制御について説明する。
ステップS16において、占有グリッドマップ生成部16は、短期蓄積測距データ14に示される3次元空間における共分散Σの正規分布を、高さ方向の分布値を路面に対して投影させて、各グリッドxiにおける占有値Ciを算出する。そして、占有グリッドマップ生成部16は、その占有値Ciに対して二値化処理を行うことで、2次元の短期占有グリッドマップ17を生成する。
同様に、占有グリッドマップ生成部16は、長期蓄積測距データ15を用いて、長期占有グリッドマップ18を生成する。短期占有グリッドマップ17、及び、長期占有グリッドマップ18には、それぞれのグリッドが、障害物の占有の有無に応じて、占有グリッド又は非占有グリッドとして示されている。
ステップS17において、非占有グリッドマップ生成部19は、ステップS16で検出された短期占有グリッドマップ17および長期占有グリッドマップ18のそれぞれに対してレイトレーシング処理を行い、短期非占有グリッドマップ20および長期非占有グリッドマップ21を生成する。
なお、レイトレーシング処理においては、占有グリッドマップ(短期占有グリッドマップ17および長期占有グリッドマップ18)において、測距センサ12を中心とした周方向の360°の領域において、測距センサ12を起点とする仮想的な光路であるレイ(視線)を、順次回転投影させる。そして、非占有グリッドマップ生成部19は、レイの投影路のそれぞれにおいて、占有グリッドの有無を判定する。
レイの投影路に占有グリッドが存在する場合には、測距センサ12からその占有グリッドまでの間には障害物が存在しないので、測距センサ12とその占有グリッドとの間にあるグリッドは、障害物の占有がない非占有グリッドとして判断される。なお、その占有グリッドから測距センサ12とは反対側へと向かう側にあるグリッドは、障害物によって測距センサ12の死覚となるため、不明グリッドと判断される。
このようにして、占有グリッドマップ(短期占有グリッドマップ17及び長期占有グリッドマップ18)に対してレイトレーシング処理を行うことで、非占有グリッドの領域を判断する。そして、非占有グリッドマップ生成部19は、このように判断された非占有グリッド及び不明グリッドが含まれる非占有グリッドマップ(短期非占有グリッドマップ20及び長期非占有グリッドマップ21)を生成する。
ステップS18において、評価部22は、それぞれのグリッドについて、長期占有グリッドマップ18における占有状態について、短期非占有グリッドマップ20における非占有状態を用いて評価する。詳細には、評価部22は、長期占有グリッドマップ18における占有グリッドのうち、短期非占有グリッドマップ20において非占有グリッドとなるグリッドについては、非占有グリッドであると判断する。そして、評価部22は、長期占有グリッドマップ18における当該グリッドを非占有グリッドに変更したものを、最終グリッドマップとして出力部23へ出力する。
これにより、長期占有グリッドマップ18の占有グリッドのうち、移動物体63が過去に存在していた占有グリッドが、非占有グリッドに変更される。そのため、長期占有グリッドマップ18において比較的古い測距データに示された移動物体63の過去の占有領域の影響を抑制できるので、より精度よく占有グリッドを判定して、最終グリッドマップを生成することができる。
このような最終グリッドマップ生成制御を経て、最終グリッドマップが生成される。以下では、図6〜9を用いて、最終グリッドマップ生成制御の詳細について、具体例を用いて説明する。
図6は、最終グリッドマップの生成対象となる領域の一例を示す図である。
車両200には測距センサ12が搭載されており、図上方へと向かって、障害物61によって囲まれた走行可能領域62を走行する。また、走行可能領域62の車両200の前方において、移動物体63が図中央から右上方へと移動しているものとする。この図には、移動物体63の移動中に測距データが8回取得されており、この図において、それぞれの測距データにより取得される8つの移動物体63が示されている。なお、以下においては、これらの連続する8つの測距データについては、時系列に1〜8番目の測距データと示し、これらの1〜8番目の測距データに示される移動物体63のそれぞれについて、1〜8番目の移動物体63と示すものとする。
図7は、占有グリッドマップ生成部16により生成される短期占有グリッドマップ17、及び、長期占有グリッドマップ18を示す図である。この図において、図7(a)には短期占有グリッドマップ17が、図7(b)には長期占有グリッドマップ18が示されている。
これらの図において、障害物により占有されるグリッドは、右上がりのハッチングが付された占有グリッドとして示され、それ以外のグリッドは、ハッチングが付されていない非占有グリッドとして示される。また、これらの図においては、説明の便宜上、車両200が示されている。
短期占有グリッドマップ17の生成には、比較的短期間の測距データが用いられ、詳細には、8つの測距データのうちの7、8番目の測距データが用いられる。なお、1〜6番目の測距データに示される移動物体63については、説明のため、点線で示されている。このように7、8番目の測距データが用いて生成される短期占有グリッドマップ17には、障害物61の壁面61Aに加えて、移動軌跡における7、8番目の2つの移動物体63の壁面63Aが、占有グリッドとして示される。一方、壁面61A、63A以外の領域は、非占有グリッドとして示される。
これに対し、長期占有グリッドマップ18の生成には、比較的長期間の測距データ、すなわち、8つの全ての測距データが用いられる。長期占有グリッドマップ18においては、短期占有グリッドマップ17と同様に、壁面61A、63Aの領域は占有グリッドとなり、壁面61A、63A以外の領域は非占有グリッドとなる。
図8は、レイトレーシング処理により得られる短期非占有グリッドマップ20および長期非占有グリッドマップ21を示す図である。図8(a)は、短期非占有グリッドマップ20を示し、図8(b)は、長期非占有グリッドマップ21を示す。
これらの図において、障害物に占有される占有グリッドには右上がりハッチングが付されており、障害物に占有されていない非占有グリッドは、ドットのハッチングが付されている。なお、ハッチングが付されていない領域は、障害物の占有状態が不明な不明グリッドである。
図8(a)に示されるように、非占有グリッドマップ生成部19は、短期占有グリッドマップ17において、測距センサ12を中心とした360°の2次元領域において、仮想的に、測距センサ12からレイ81を回転させながら投影する。
そして、レイ81の投影先において、壁面61A、63Aのような占有グリッドが存在する場合には、測距センサ12からそれらの占有グリッドまでの間は、非占有グリッド82であると判断する。一方、レイ81の投影先において、壁面61A、63Aに対して測距センサ12とは反対側の領域は、不明グリッド83であると判断する。
このようにレイトレーシング処理を行うことにより、障害物が存在しない非占有グリッド82や、障害物の存在が不明な不明グリッド83などが示された短期非占有グリッドマップ20が生成される。なお、短期非占有グリッドマップ20には、短期占有グリッドマップ17に示された占有グリッドについても記録される。
同様に、図8(b)に示されるように、長期占有グリッドマップ18に対してレイトレーシング処理を行うことにより、長期非占有グリッドマップ21が生成される。長期占有グリッドマップ18においては、移動物体63の壁面63Aの死角となる不明グリッド83は、図8(a)に示される短期占有グリッドマップ17における不明グリッド83よりも、広い範囲に分布することになる。
図9は、ステップS18の評価処理を経て得られる最終グリッドマップを示す図である。最終グリッドマップにおいては、占有グリッドには右上がりハッチングが付されており、非占有グリッドは、ドットのハッチングが付されている。なお、ハッチングが付されていない領域は、不明グリッドである。
図7(b)の長期占有グリッドマップ18における右上がりのハッチングが付された障害物の存在する占有グリッドのうち、図8(a)の短期非占有グリッドマップ20においてドットのハッチングの付された非占有グリッドの領域は、非占有グリッドとして評価される。具体的には、1〜6番目の移動物体63の6つの壁面63Aが存在する部分は、長期占有グリッドマップ18においては占有グリッドであるが、短期非占有グリッドマップ20においては非占有グリッドであるため、非占有グリッドとして記録される。
このようにすることで、1〜6番目の移動物体63の6つの壁面63Aのように、長期占有グリッドマップ18において移動物体63の過去の占有状態に起因する占有グリッドは、非占有グリッドとして判断される。そのため、現在においては車両200の走行の妨げとならない非占有グリッドを精度よく判定することができるので、障害物の占有状態をより適切に示したグリッドマップを生成することができる。
第1実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
第1実施形態の占有グリッドマップの作成方法によれば、所定の周期で、車両200の周囲の路面において測距データを取得する。測距データには、路面に複数設定された測定点の位置及びそれらの測定点までの距離が示されている。その後、過去の第1時間だけ前から現在までの期間における複数の測距データを用いて長期占有グリッドマップ18を生成するとともに、過去の第1時間よりも短い第2時間だけ前から現在までの期間における複数の測距占有データを用いて短期非占有グリッドマップ20を生成する。そして、長期占有グリッドマップ18における占有領域のうち、短期非占有グリッドマップ20において非占有グリッドとなる領域を、非占有グリッド領域に変更する。
このような構成において、長期占有グリッドマップ18においては、長期間蓄積された複数の測距データが用いられる。そのため、一時的に測距データが取得できない場合があっても、他の測距データを補完的に使用できるため、各グリッドにおける障害物の占有状態の判定精度の向上を図ることができる。
しかしながら、長期間蓄積された測距データを用いてしまうと、比較的古い測距データに示される移動物体63の過去の占有領域が、現在においては車両200の走行の妨げにならないのにも関わらず、占有グリッドと判定されるおそれがある。そこで、長期占有グリッドマップ18における占有グリッドのうち、比較的新しい測距データを用いて生成される短期非占有グリッドマップ20において非占有グリッドと示されるグリッドについては、障害物により占有されていないと判断し、非占有グリッドとして記録する。
このように、長期占有グリッドマップ18に対して、短期非占有グリッドマップ20を用いた評価を行うことにより、移動物体63が過去に占有されていたグリッドのように、現在における車両200の走行の妨げとならないグリッドを、非占有グリッドとして判断できる。このようにして、占有グリッドマップに示される障害物の占有状態の判定精度の向上を図ることができる。
第1実施形態の占有グリッドマップの作成方法によれば、車速が低速になるほど、蓄積測距データ(短期蓄積測距データ14及び長期蓄積測距データ15)に蓄積されるデータ量、すなわち、占有グリッドマップの生成に用いられる測距データの蓄積時間(第1時間、及び、第2時間)を長くする。車速が低速である場合には、単位時間あたりに蓄積測距データに蓄積される測距データが示す走行環境の範囲は狭くなる。そこで、蓄積時間を長くすることにより、車両200がグリッドマップの生成対象の走行環境を通り過ぎる前に、測距データが時間バッファから消去されることを防止できる。
一方、車速が高速になるほど、蓄積測距データの蓄積時間を短くする。車速が高速である場合には、単位時間あたりに蓄積測距データに蓄積される測距データが示す走行環境の範囲は広くなる。そこで、蓄積時間を短くすることで、車両200が既に走行環境を通り過ぎた場合には、通り過ぎた走行環境を示す不要な測距データが消去されやすくなる。そのため、占有グリッドマップ生成制御における計算負荷の低減や、測距データの蓄積に用いられるメモリ使用量の低減などを図ることができる。
第1実施形態の占有グリッドマップの作成方法によれば、車両が停止している間は、測距データ蓄積部13による測距データの蓄積を中断してもよい。停車中に測距範囲に移動物体63が進入した場合などには、新たに測距センサ12の死角となる領域が生じてしまう。そこで、停車中には測距データの蓄積を中断することにより、死角領域における障害物の占有状態を示す測距データが、停車中における測距データにより上書きされて消去されることを防止することができる。
(第2実施形態)
第1実施形態においては、3次元空間における共分散の正規分布を示す測距データを、3次元空間において重畳した(S14)後に、それらの重畳された測距データに示される共分散Σの正規分布を、高さ方向の分布値を路面に対して投影することで、2次元の占有グリッドマップを生成した(S16)。本実施形態においては、他の占有グリッドマップの作成方法として、測距データのそれぞれを用いて、共分散Σの正規分布を高さ方向の分布値を路面に対して投影して生成した2次元のサブグリッドマップを生成した後に、それらのサブグリッドマップを2次元平面上において重畳させることで、占有グリッドマップを生成する例について説明する。
図10は、第2実施形態に係る評価グリッドマップ生成制御のフローチャートである。
この図によれば、図5に示された第1実施形態のグリッドマップ生成制御と比較すると、ステップS14、及び、S16に替えて、ステップS21、及び、S22の処理が追加されている。
ステップS21においては、測距データ蓄積部13は、短期時間バッファに記録された1つの測距データについて、共分散Σの正規分布を高さ方向の分布値を路面に対して投影する。そして、測距データ蓄積部13は、各グリッドxiにおけるz軸方向の総和である占有値Ciを算出し、その占有値Ciに対して二値化処理を行うことで、短期サブグリッドマップを生成する。
このように、測距データ蓄積部13は、短期時間バッファに記録されている測距データのそれぞれについて、測距データが示す領域における障害物の占有状態を示す短期サブグリッドマップを生成する。同様に、測距データ蓄積部13は、長期時間バッファに記録された測距データのそれぞれを用いて、長期サブグリッドマップを生成する。
ステップS22においては、占有グリッドマップ生成部16は、測距データ蓄積部13により生成された短期サブグリッドマップのそれぞれに示される占有状態を、2次元平面においてグリッド毎に重畳することで、短期占有グリッドマップ17を生成する。
ここで、短期サブグリッドマップのそれぞれにおいては、同じグリッドについて示される占有状態が異なり、ある短期サブグリッドマップでは占有グリッドとなり、他の短期サブグリッドマップでは非占有グリッドとなることがある。そこで、あるグリッドにおける障害物の占有状況は、短期占有グリッドマップ17の生成に用いられる短期サブグリッドマップの全数のうち、当該グリッドが占有部分として示されている短期サブグリッドマップの数が占める割合が、所定の閾値(第1割合)を上回る場合に、占有部分と判断される。このようにして、グリッド毎の障害物の占有状態が求められる。
同様に、占有グリッドマップ生成部16は、長期サブグリッドマップのそれぞれに示される占有状態を、グリッド毎に重畳することで、長期占有グリッドマップ18を生成する。そして、あるグリッドにおける障害物の占有状況は、長期占有グリッドマップ18の生成に用いられる長期サブグリッドマップの全数のうち、当該グリッドが占有部分として示されている長期サブグリッドマップの数が占める割合(第2割合)が、所定の閾値を上回る場合に、占有部分と判断され、グリッド毎の障害物の占有状態が求められる。
このようにして、複数の短期サブグリッドマップ及び長期サブグリッドマップのそれぞれを用いて、短期占有グリッドマップ17及び長期占有グリッドマップ18が生成される。
ここで、短期占有グリッドマップ17及び長期占有グリッドマップ18が生成される場合において、あるグリッドが占有グリッドであるとの判断に用いる、サブグリッドマップの割合の閾値は、短期占有グリッドマップ17の生成において用いられる閾値(第1割合)のほうが、長期占有グリッドマップ18の生成において用いられる閾値(第2割合)よりも小さい。
そのため、短期占有グリッドマップ17においては、長期占有グリッドマップ18よりも、各グリッドが占有グリッドと判定されやすい。したがって、短期占有グリッドマップ17に基づいて生成される短期非占有グリッドマップ20においては、非占有グリッドが比較的少なくなる。これは、サブグリッドマップにおいて非占有グリッドと示されたグリッドが、より高い割合で非占有グリッドと示されるためであり、非占有グリッドの判定精度を向上させることができる。
このように、評価部22は、長期占有グリッドマップ18に示される占有グリッドのうち、短期非占有グリッドマップ20において、高い精度で非占有グリッドと判定されたグリッドについて、非占有グリッドに変更して記録するので、占有状態の誤判定を抑制することができる。
第2実施形態の占有グリッドマップの作成方法によれば、長期占有グリッドマップ18の生成において、全ての長期サブグリッドマップのうちの第1割合を上回る長期サブグリッドマップにおいて、障害物に占有されていると示される領域を、占有領域として記録する。
一方、短期占有グリッドマップ17の生成において、全ての短期サブグリッドマップのうちの第1割合よりも小さな第2割合を上回る短期サブグリッドマップにおいて、障害物に占有されていると示されるグリッドを、占有グリッドとして記録する。そのため、短期占有グリッドマップ17においては、長期占有グリッドマップ18と比較すると、判定閾値が比較的低いので、占有グリッドが比較的多くなる一方で、非占有グリッドが比較的少なくなる。
これは、短期占有グリッドマップ17においては、全ての短期サブグリッドマップのうち比較的高い割合で非占有グリッドと示されたグリッドが、非占有グリッドとして示されることを意味する。そのため、短期占有グリッドマップ17に基づいて生成される短期非占有グリッドマップ20においては、非占有グリッドの判定精度を向上させることができる。
その結果、評価部22は、長期占有グリッドマップ18に示される占有グリッドのうち、精度よく検出された非占有グリッドと判定されるグリッドについて、非占有グリッドに変更して記録するので、障害物の占有状態の判定精度のさらなる向上を図ることができる。
(第3実施形態)
第1及び第2実施形態においては、移動物体63の存在に起因する占有グリッドの消去を評価部22において行ったがこれに限らない。第3実施形態においては、さらに、高速で移動する移動物体の位置情報を検出するセンサを備え、その検出した位置情報に示される占有グリッドを消去する例について説明する。
図11は、第3実施形態に係る運転支援システム100の概略構成図である。
この図によれば、図1に示された第1実施形態の運転支援システム100と比較すると、測距データ蓄積部13には、移動物体検出部30により検出された高速で移動する移動物体の位置情報をもとに、測距データフィルタ部31においてフィルタ処理された測距データが入力される。
移動物体検出部30は、車両の周囲に存在し、高速で移動する移動物体の位置情報を検出し、その検出した移動物体の位置情報を、測距データフィルタ部31へ出力する。例えば、移動物体検出部30は、カメラを含む画像処理部であって、撮影された時系列の画像を解析することで、高速で移動する移動物体の位置を検出する。
測距データフィルタ部31には、測距センサ12により取得された測距データと、移動物体検出部30により取得された移動物体の位置情報が入力される。測距データフィルタ部31は、測距センサ12により取得された測距データから、移動物体検出部30により検出された移動物体が存在する領域における測距データを消去し、消去した測距データを、測距データ蓄積部13へと出力する。
図12は、本実施形態に係る占有グリッドマップ生成制御のフローチャートである。
この図によれば、図5に示された第1実施形態の占有グリッドマップ生成制御と比較すると、ステップS11の後段に、ステップS30の処置が追加されている。
ステップS30においては、測距データフィルタ部31は、測距センサ12から取得された測距データと、移動物体検出部30により検出される移動物体の位置との対応付けを行う。移動物体は路面を一時的に占有するが、車両の進行中に他の領域に移動する可能性がある。そこで、測距データフィルタ部31は、対応付けの結果に基づいて、移動物体検出部30により検出された移動物体の存在する位置の測距データを消去する。そして、移動物体の存在する位置が消去された測距データが、測距データ蓄積部13へと出力される。
第3実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
第3実施形態の占有グリッドマップの作成方法によれば、測距センサ12から得られた測距データに対して、測距データフィルタ部31を用いて、移動物体検出部30により検出された移動物体を示すデータをあらかじめ除去する。
移動物体検出部30においては、所定の周期で取得した物体の位置の変化に基づいて、その物体が移動物体であるか否かを判定することで、移動物体を検出する。そのため、移動物体検出部30は、比較的高速で移動する移動物体の検出精度は高いが、物体の移動開始時のような、比較的低速で移動する移動物体の検出精度は低い。
ここで、高速での移動物体については、車両の周囲に留まる可能性が低く、車両の走行の妨げとなるおそれは少ない。そこで、移動物体検出部30により検出した高速の移動物体については、予め、測距データから削除することで、占有グリッドマップの生成処理における計算負荷の低減や、測距データの蓄積に伴う記憶領域の使用量の低減が可能になる。一方、低速での移動物体については、第1及び第2実施形態と同様に、長期占有グリッドマップに対して短期非占有グリッドマップを用いた評価を行うことにより、車両の進行の妨げとならなに占有グリッドを非占有グリッドと評価することができる。
このように、移動物体検出部30を併用することで、高速での移動物体の処理に必要なリソースを抑制しながら、占有グリッドの判定精度の向上を図ることができる。
(第4実施形態)
第3実施形態においては、移動物体検出部30を用いて移動物体の存在に起因する占有グリッドの消去を行う例について説明したがこれに限らない。第4実施形態においては、さらに、別の方法により、移動物体の存在に起因する占有グリッドの消去を行う例について説明する。
図13は、第4実施形態に係る運転支援システム100の概略構成図である。
この図によれば、図11に示された第2実施形態の運転支援システム100と比較すると、短期蓄積測距データ14及び長期蓄積測距データ15に対してフィルタ処理を行う、蓄積測距データフィルタ部40が設けられている。
蓄積測距データフィルタ部40は、移動物体検出部30により取得される移動物体の検出位置を用いて、短期蓄積測距データ14及び長期蓄積測距データ15において、移動物体に起因するグリッドの消去を行う。
図14は、本実施形態に係る占有グリッドマップ生成制御のフローチャートである。
この図によれば、図12に示された第2実施形態の占有グリッドマップ制御と比較すると、ステップS13の後段に、さらにステップS40の処理が追加されている。
ステップS40においては、蓄積測距データフィルタ部40は、移動物体検出部30により取得される移動物体の検出位置と、短期蓄積測距データ14及び長期蓄積測距データ15におけるグリッドとの対比を行う。そして、蓄積測距データフィルタ部40は、短期蓄積測距データ14及び長期蓄積測距データ15において、移動物体検出部30により取得される移動物体の検出位置におけるグリッドの情報を消去する。このようにして、短期蓄積測距データ14及び長期蓄積測距データ15に対するフィルタリング処理を行うことができる。
このようにしても、測距センサ12により取得される測距データから移動物体と対応する測距データをあらかじめ取り除くことができるので、占有グリッドマップの生成処理における計算負荷の低減や、測距データを蓄積するメモリ使用量の低減を図ることができる。
第4実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
例えば、ある時刻において一時的に移動物体検出部30による移動物体の検出ができず、測距データフィルタ部31による移動物体を示すデータの除去が行えず、移動物体に対応する測距データが残ってしまうことがある。このような場合であっても、別の時刻において移動物体の検出が成功した時に、蓄積された測距データから移動物体に対応した測距データを取り除くことができる。
このように、ある時刻の移動物体検出部30による移動物体の検出結果に基づいて、他の時刻の測距データにおける当該移動物体に対応した測距データを削除することができるので、占有グリッドマップの生成処理における計算負荷や、測距データの蓄積に伴う記憶領域の使用量を、さらに低減することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。