JP2021055218A - 不織布及びフィルタ - Google Patents

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Abstract

【課題】平均繊維径が小さくかつ5倍繊維の割合が少ない不織布、及び該不織布を用いたフィルタを提供する。【解決手段】樹脂組成物から形成された繊維を含む不織布であって、前記繊維は、伸長歪み速度2.5×102(1/秒)、160℃の条件で測定した一軸伸長粘度が、430Pa・s〜1200Pa・sであり、せん断歪み速度2.5×102(1/秒)、160℃の条件で測定したせん断粘度(Pa・s)に対する、前記一軸伸長粘度(Pa・s)の割合が35〜65であり、前記繊維の数平均分子量Mnに対するz平均分子量Mzの比〔Mz/Mn〕が20以上である、不織布。【選択図】なし

Description

本発明は、不織布及びフィルタに関する。
メルトブロー法により製造された不織布(以下、「メルトブロー不織布」又は「メルトブローン不織布」ともいう。)は、一般的なスパンボンド不織布と比べて、不織布を構成する繊維を細化できることから、柔軟性、均一性、及び緻密性に優れている。このためメルトブローン不織布は、単独で、又は他の不織布等と積層して、液体フィルタ、エアフィルタ等のフィルタ、衛生材、メディカル材、農業用被覆材、土木材、建材、油吸着材、自動車材、電子材料、セパレータ、衣類、包装材、吸音材などに用いられている。
不織布を構成する繊維としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂の繊維が知られている。
一般的に、フィルタは、液体、気体等の中に存在する微粒子を捕集し、該液体、気体等から微粒子を取り除く目的で使用されている。フィルタの粒子を捕集する効率は、フィルタを構成する不織布の繊維の平均繊維径が小さいと優れる傾向にあることが知られている。また、微粒子の粒子径が小さいほど、捕集効率が低下することが知られている。
平均繊維径が小さい不織布としては、例えば、ポリエチレンとポリエチレンワックスとを含む樹脂組成物をメルトブロー法で成形して得られる不織布が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
また、ポリエチレンとポリエチレンワックスとを含む樹脂組成物をメルトブロー法で成形して得られる不織布を、ポリエステルとエチレン系重合体とから形成される複合繊維からなるスパンボンド不織布と積層した不織布積層体が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
国際公開第2000/22219号 国際公開第2015/093451号 国際公開第2012/111724号
特許文献1〜特許文献3に記載された不織布をフィルタとして用いた場合、捕集効率の更なる向上が求められる場合があることがわかった。
また、平均繊維径が同じである不織布をフィルタとして用いても粒子の捕集効率が異なる場合があることがわかった。さらに、繊維径が平均繊維径の5倍以上である繊維(以下、「5倍繊維」ともいう。)の割合が多いと、粒子の捕集効率に劣る場合があることがわかった。
そこで、本発明では、平均繊維径が小さくかつ5倍繊維の割合が少ない不織布、及び該不織布を用いたフィルタを提供することを課題とする。
前記課題を解決するための手段は、以下の実施形態を含む。
<1>
樹脂組成物から形成された繊維を含む不織布であって、前記繊維は、伸長歪み速度2.5×10(1/秒)、160℃の条件で測定した一軸伸長粘度が、430Pa・s〜1200Pa・sであり、せん断歪み速度2.5×10(1/秒)、160℃の条件で測定したせん断粘度(Pa・s)に対する、前記一軸伸長粘度(Pa・s)の割合が35〜65であり、前記繊維の数平均分子量Mnに対するz平均分子量Mzの比〔Mz/Mn〕が20以上である、不織布。
<2>
前記繊維の重量平均分子量Mwに対するz平均分子量Mzの比〔Mz/Mw〕が6.8以上である、<1>に記載の不織布。
<3>
前記繊維の数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比〔Mw/Mn〕が3.5以上である、<1>又は<2>に記載の不織布。
<4>
前記繊維は、繊維径が平均繊維径(Da)の5倍以上である繊維の割合が20質量%以下である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の不織布。
<5>
前記繊維の平均繊維径(Da)は2.7μm以下である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の不織布。
<6>
前記平均繊維径の標準偏差(Dd)を前記平均繊維径(Da)で除して100倍した値(CV値)が50〜110である、<4>又は<5>に記載の不織布。
<7>
メルトブローン不織布である、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の不織布。
<8>
前記せん断粘度は、10Pa・s〜20Pa・sである、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の不織布。
<9>
前記樹脂組成物は、190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.10g/10分〜10g/10分であるプロピレン系重合体Aと、190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が30g/10分〜5000g/10分であるプロピレン系重合体Bと、重量平均分子量Mwが2500〜35000であるプロピレン系重合体Cと、を含む、<1>〜<8>のいずれか1つに記載の不織布。
<10>
前記プロピレン系重合体Aの含有率は、前記樹脂組成物の全質量に対して1質量%〜40質量%であり、前記プロピレン系重合体Bの含有率は、前記樹脂組成物の全質量に対して40質量%〜98質量%であり、前記プロピレン系重合体Cの含有率は、前記樹脂組成物の全質量に対して1質量%〜50質量%である、<9>に記載の不織布。
<11>
<1>〜<10>のいずれか1つに記載の不織布を含むフィルタ。
本発明によれば、平均繊維径が小さくかつ5倍繊維の割合が少ない不織布、及び該不織布を用いたフィルタを提供することができる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する該複数の物質の合計量を意味する。
《不織布》
本開示の不織布は、樹脂組成物から形成された繊維を含む不織布であって、
前記繊維は、伸長歪み速度2.5×10(1/秒)、160℃の条件で測定した一軸伸長粘度が、430Pa・s〜1200Pa・sであり、せん断歪み速度2.5×10(1/秒)、160℃の条件で測定したせん断粘度(Pa・s)に対する、前記一軸伸長粘度(Pa・s)の割合が35〜65であり、前記繊維の数平均分子量Mnに対するz平均分子量Mzの比〔Mz/Mn〕が20以上である。
本開示の不織布に用いられる繊維は、伸長歪み速度2.5×10(1/秒)、160℃の条件で測定した一軸伸長粘度が、430Pa・s〜1200Pa・sである。
伸長歪み速度2.5×10(1/秒)、160℃の条件で測定される一軸伸長粘度が、430Pa・s以上であると、5倍繊維の割合を少なくでき、粒子を捕集する効率(以下、「捕集効率」ともいう。)を向上させることができる。また、一軸伸長粘度が1200Pa・s以下であると、平均繊維径を小さくでき、捕集効率を向上させることができる。
伸長歪み速度とは、溶融した繊維が一軸方向に変形したときの速度を表す。
上記観点から一軸伸長粘度としては、好ましくは450Pa・s〜1200Pa・sであり、より好ましくは500Pa・s〜1000Pa・sであり、更に好ましくは500Pa・s〜800Pa・sである。
本開示において、繊維の一軸伸長粘度は、用いるポリプロピレン系樹脂等の樹脂の種類及び量などを調整することにより、上記範囲とすることができる。例えば後述のPPA、PPB及びPPCそれぞれの一軸伸長粘度に対応させて、樹脂組成物中におけるPPA、PPB及びPPCそれぞれの含有率を調整することにより上記範囲とすることができる。
せん断歪み速度2.5×10(1/秒)、160℃の条件で測定されるせん断粘度としては、平均繊維径をより小さくする観点から、10Pa・s〜100Pa・sであることが好ましく、10Pa・s〜20Pa・sであることがより好ましい。
せん断歪み速度とは、溶融した繊維が三次元変形したときの平均速度を表す。
本開示において、繊維のせん断粘度は、用いるポリプロピレン系樹脂等の樹脂の種類及び量などを調整することにより、上記範囲とすることができる。例えば後述のPPA、PPBおよびPPCそれぞれのせん断粘度に対応させて、樹脂組成物中におけるPPA、PPB及びPPCそれぞれの含有率を調整することにより上記範囲とすることができる。
本開示の不織布は、樹脂組成物から形成される繊維を含み、該繊維が、せん断歪み速度2.5×10(1/秒)、160℃の条件で測定したせん断粘度(Pa・s)に対する、伸長歪み速度2.5×10(1/秒)、160℃の条件で測定した一軸伸長粘度(Pa・s)の比(一軸伸長粘度/せん断粘度)が35〜65であるため、5倍繊維が少なく、かつ、平均繊維径が小さい。そのため、かかる不織布は、5倍繊維が少なく、かつ、平均繊維径が小さくなり、粒子の捕集効率に優れる。
なお、繊維の一軸伸長粘度及びせん断粘度は、繊維を形成する前の樹脂組成物の一軸伸長粘度及びせん断粘度と同じである。
上記観点から、一軸伸長粘度/せん断粘度としては、35〜50であることが好ましく、35〜45であることがより好ましい。
本開示において、一軸伸長粘度/せん断粘度は、例えば後述のPPAとして一軸伸長粘度が高いポリオレフィンを用い、かつ、後述のPPCとしてせん断粘度が低いポリオレフィンを用い、後述のPPA、PPBおよびPPCのそれぞれの一軸伸長粘度およびせん断粘度から含有率を調整することにより上記範囲とすることができる。
一軸伸長粘度(ηe)及びせん断粘度(η)は、キャピラリーレオメーター(製品名;キャピログラフ1D PMD−C、(株)東洋精機製作所製)を用いて、繊維又は後述の樹脂組成物を下記条件で測定及び計算して求めることができる。
[測定条件]
測定機器:キャピログラフ1D PMD−C ((株)東洋精機製作所製)
キャピラリー内径Φ:0.2[mm]
測定温度:160℃
キャピラリー長さ/キャピラリー内径(L/D):0.25及び10
ピストン速度:2.5×10(1/秒)
せん断粘度(η)(Pa・s)は、上記L/Dが10のときの値から、下記式で算出される。
Figure 2021055218

式中、τ(Pa)は見かけのせん断応力を表し、γドット(Pa)(γの上部にドット(・)が記された記号;以下、単に「γ」ともいう。)は、せん断歪み速度を表す。
見かけのせん断応力τ(Pa)は、ピストン荷重p(Pa)とキャピラリー内径D(mm)、キャピラリー長さL(mm)からτ=pD/π4Lで表され、せん断応力γ(Pa)は、体積流量Q(mm/s)を用いてγ=32Q/πDで表される。
一軸伸長粘度(ηe)は、上記L/Dが10のときの値および上記L/Dが0.25のときの値から、Cogswell法により下記式を用いて算出される。
Cogswell法は、例えば、「Cogswell, F. N. "Stretching flow instabilities at the exits of extrusion dies." Journal of Non-Newtonian Fluid Mechanics 2.1 (1977): 37-47 」の記載を参照することができる。
Figure 2021055218

式中、nは、パワーロー指数を表し、γドット(γの上部にドット(・)が記された記号;以下、単に「γ」ともいう。)は、せん断歪み速度を表し、ΔP はキャピラリー長が0のときにダイで生じる圧力損失の2乗を表し、Baglay補正により求めることができる。
Bagleyのキャピラリー長の補正については、例えば、「Bagley, E. B. "The separation of elastic and viscous effects in polymer flow." Transactions of the Society of Rheology 5.1 (1961): 355-368.」を参照することができる。
本開示の不織布に用いられる繊維の数平均分子量Mnに対するz平均分子量Mzの比〔Mz/Mn〕が20以上である。
該比〔Mz/Mn〕が20以上であると、5倍繊維の割合が少なくなる傾向にあり、捕集効率を向上させることができる。
上記観点から、比〔Mz/Mn〕としては、好ましくは24以上であり、より好ましくは27以上である。また、上記比〔Mz/Mn〕の上限値は、特に限定されるものではないが、平均繊維径が小さい繊維を得る観点から、50以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましい。
ここで、平均分子量について説明する。一般的に用いられる平均分子量には、例えば数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、z平均分子量Mz等がある。数平均分子量Mnは、低分子量から高分子量までを均一に反映した平均分子量であり、重量平均分子量Mwは高分子量の存在を強く反映した平均分子量である。また、z平均分子量Mzは、重量平均分子量Mwよりもさらに高分子量の存在を強く反映した平均分子量である。
本開示の不織布に用いられる繊維の重量平均分子量Mwに対するz平均分子量Mzの比〔Mz/Mw〕としては、6.8以上であることが好ましく、7.5以上であることがより好ましく、8.0以上であることが更に好ましい。
また、該比〔Mz/Mw〕としては、30.0以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることが更に好ましい。
上記比〔Mz/Mw〕が、上記範囲内であると、平均繊維径が小さくかつ5倍繊維の割合が少なくなる傾向にあるため好ましい。
上記観点から、繊維の〔Mz/Mw〕は、6.8〜30.0であることが好ましく、7.5〜15であることがより好ましく、8.0〜10であることが更に好ましい。
本開示の不織布に用いられる繊維の数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比〔Mw/Mn〕としては、3.5以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、5以上であることが更に好ましい。
また、該比〔Mw/Mn〕としては、20.0以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることが更に好ましい。
上記比〔Mw/Mn〕が、上記範囲内であると、平均繊維径が小さくかつ5倍繊維の割合が少なくなる傾向にあるため好ましい。
上記観点から、繊維の〔Mw/Mn〕は、3.5〜20.0であることが好ましく、4〜15であることがより好ましく、5〜10であることが更に好ましい。
本開示において、繊維の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、及びz平均分子量Mzは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって、後述記載の方法で測定することができる。
本開示の不織布に含まれる繊維の平均繊維径(Da)は、捕集効率を向上させる観点から、2.7μm以下であることが好ましく、2.2μm以下であることがより好ましく、1.7μm以下であることが更に好ましい。
また、本開示の不織布をフィルタとして適用したときの強度を保持する観点から、平均繊維径(Da)としては、0.3μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、0.8μm以上であることが更に好ましい。
上記平均繊維径(Da)は、電子顕微鏡(型番;S−3500N、(株)日立製作所製)を用いて、不織布の表面を、倍率1000倍の写真を撮影し、撮影された写真から、任意に繊維100本(n=100)を選び、選択した繊維の直径(幅)を測定し、その算術平均値を平均繊維径として求めることができる。
また、平均繊維径の標準偏差(Dd)は、上記平均繊維径(Da)を用いて求めることができる。
捕集効率を向上させる観点から、不織布に含まれる繊維において、繊維径が平均繊維径(Da)の5倍以上である繊維(以下、「5倍繊維」ともいう。)の割合は、20%以下であることが好ましく、17%以下であることがより好ましく、14%以下が更に好ましい。
5倍繊維は、不織布を電子顕微鏡(型番;S−3500N、(株)日立製作所製)を用いて観察し、繊維の直径を測定することで、確認することができる。
また、5倍繊維の割合は、電子顕微鏡を用いて、不織布の表面を、倍率1000倍で撮影し、撮影された写真から任意に繊維100本(n=100)を選び、選択した繊維の直径を測定し、下記の式より求めた値を示す。
5倍繊維の割合(%)=繊維径が平均繊維径の5倍以上である繊維の本数/測定した繊維の全本数(n=100)×100
捕集効率を向上させる観点から、不織布に含まれる繊維において、平均繊維径の標準偏差(Dd)を前記平均繊維径(Da)で除して100倍した値(「CV値」ともいう。)は、110以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、90以下であることが更に好ましい。同様の観点から、CV値は、50以上であることが好ましく、60以上であることがより好ましく、70以上であることが更に好ましい。
また、同様の観点から、CV値としては、50〜110であることが好ましく、60〜100であることがより好ましく、70〜90であることが更に好ましい。
<樹脂組成物>
本開示の不織布に用いられる繊維は、樹脂組成物から形成される。
樹脂組成物は、公知の樹脂を含み、樹脂の種類は目的等に応じて適宜選択することができる。樹脂組成物は、平均繊維径を小さくして捕集効率を向上させる観点から、190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.10g/10分〜10g/10分であるプロピレン系重合体A(以下、「PPA」ともいう。)と、190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が30g/10分〜5000g/10分であるプロピレン系重合体B(以下、「PPB」ともいう。)と、重量平均分子量Mwが2500〜35000であるプロピレン系重合体C(以下、「PPC」ともいう。)と、を含むことが好ましい。
なお、本開示において、樹脂組成物を構成する各樹脂のメルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238に準拠し、荷重2.16kg、190℃の条件で測定して得た値をいう。
樹脂組成物は、平均繊維径を小さくしかつ5倍繊維の割合が少なくさせて捕集効率を向上させる観点から、プロピレン系重合体Aの含有率は、前記樹脂組成物の全質量に対して1質量%〜40質量%であり、前記プロピレン系重合体Bの含有率は、前記樹脂組成物の全質量に対して40質量%〜98質量%であり、前記プロピレン系重合体Cの含有率は、前記樹脂組成物の全質量に対して1質量%〜50質量%であることが好ましい。
同様の観点から、プロピレン系重合体Aの含有率は、前記樹脂組成物の全質量に対して3質量%〜30質量%であり、前記プロピレン系重合体Bの含有率は、前記樹脂組成物の全質量に対して45質量%〜94質量%であり、前記プロピレン系重合体Cの含有率は、前記樹脂組成物の全質量に対して3質量%〜40質量%であることがより好ましい。
(プロピレン系重合体A)
PPAの、190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)は、平均繊維径の細さ、紡糸性等の観点から、0.10g/10分〜10g/10分であることが好ましく、0.5g/10分〜8g/10分であることがより好ましく、1g/10分〜5g/10分であることが更に好ましい。
PPAとしては、特に制限はなく、プロピレンの単独重合体であってもよく、プロピレンとα−オレフィンとの共重合体であってもよい。
なお、PPAは、樹脂組成物中に含まれる他の樹脂との相溶性の観点から、重合により生じる分岐鎖は少ないほど好ましい。
共重合するα−オレフィンは、炭素数が2以上のα−オレフィンであることが好ましく、炭素数が2又は4〜8のα−オレフィンであることがより好ましい。
このようなα−オレフィンとして、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
PPAの重量平均分子量(Mw)としては、10万以上であることが好ましく、12万以上であることがより好ましく、15万以上であることが更に好ましい。
また、PPAの重量平均分子量(Mw)としては、100万以下であることが好ましく、50万以下であることがより好ましく、30万以下であることがさらに好ましい。
PPAの重量平均分子量(Mw)が上記範囲内であると、平均繊維径が小さくかつ5倍繊維の割合が少なくなる傾向にあるため好ましい。
上記観点から、PPAの重量平均分子量(Mw)は、10万〜100万であることが好ましく、12万〜50万であることがより好ましく、15万〜30万であることが更に好ましい。
なお、本開示において、樹脂組成物を構成する各樹脂の平均分子量、すなわち、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及びz平均分子量(Mz)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、下記の装置及び条件で測定したポリスチレン換算の平均分子量をいう。
[GPC測定装置]
カラム :TOSO GMHHR−H(S)HT(東ソー(株)製)
検出器 :液体クロマトグラム用RI検出器 WATERS 150C(ウォーターズ社製)
[測定条件]
溶媒 :1,2,4−トリクロロベンゼン
測定温度 :145℃
流速 :1.0ml/分
試料濃度 :2.2mg/ml
注入量 :160μl
検量線 :Universal Calibration
解析プログラム:HT−GPC(Ver.1.0)
PPAの密度は特に限定されるものではなく、例えば、0.870g/cm〜0.980g/cmであってもよく、好ましくは0.900g/cm〜0.980g/cmであり、より好ましくは0.920g/cm〜0.975g/cmであり、更に好ましくは0.940g/cm〜0.970g/cmである。
PPAの密度が0.870g/cm以上であると、得られる不織布の、耐久性、耐熱性、強度、及び経時での安定性がより向上する傾向がある。他方、PPAの密度が0.980g/cm以下であると、得られる不織布の、ヒートシール性及び柔軟性がより向上する傾向がある。
なお、本開示において、樹脂組成物を構成する各樹脂の密度(g/cm)は、190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)測定時に得られるストランドを、120℃で1時間熱処理し、1時間かけて室温(25℃)まで徐冷した後、JIS K7112:1999に準拠し密度勾配管で測定して得た値をいう。
PPAの含有率は、平均繊維径を小さくしかつ5倍繊維の割合が少なくして捕集効率を向上させる観点から、樹脂組成物の全質量に対して、1質量%〜40質量%であることが好ましく、3質量%〜30質量%であることがより好ましく、3質量%〜25質量%であることが更に好ましい。
また、PPAは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
(プロピレン系重合体B)
PPBの、190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)は、平均繊維径の細さ、紡糸性等の観点から、30g/10分〜5000g/10分であることが好ましく、60g/10分〜4000g/10分であることがより好ましく、100g/10分〜3000g/10分であることが更に好ましい。
PPBとしては、特に制限はなく、プロピレンの単独重合体であってもよく、プロピレンとα−オレフィンとの共重合体であってもよい。共重合するα−オレフィンの例は、上述のとおりである。
なお、PPBは、樹脂組成物中に含まれる他の樹脂との相溶性の観点から、重合により生じる分岐鎖は少ないほど好ましい。
PPBの重量平均分子量(Mw)としては、3.5万超えであることが好ましく、4万以上であることがより好ましく、4.5万以上であることが更に好ましい。
また、PPBの重量平均分子量(Mw)としては、8万以下であることが好ましく、7万以下であることがより好ましく、6.5万以下であることがさらに好ましい。
PPBの重量平均分子量(Mw)が上記範囲内であると、平均繊維径が小さくなる傾向にあり、かつ、紡糸性がより向上する傾向にあるため好ましい。
上記観点から、PPBの重量平均分子量(Mw)は、3.5万超〜8万であることが好ましく、4万〜7万であることがより好ましく、4.5万〜6.5万であることが更に好ましい。
PPBの密度は特に限定されるものではなく、例えば、0.870g/cm〜0.980g/cmであってもよく、好ましくは0.900g/cm〜0.980g/cmであり、より好ましくは0.920g/cm〜0.975g/cmであり、更に好ましくは0.940g/cm〜0.970g/cmである。
PPBの密度が0.870g/cm以上であると、得られる不織布の、耐久性、耐熱性、強度、及び経時での安定性がより向上する傾向がある。他方、PPBの密度が0.980g/cm以下であると、得られる不織布の、ヒートシール性及び柔軟性がより向上する傾向がある
PPBの含有率は、平均繊維径を小さくして捕集効率を向上させる観点から、樹脂組成物の全質量に対して、40質量%〜98質量%であることが好ましく、45質量%〜94質量%であることがより好ましく、45質量%〜90質量%質量%であることが更に好ましい。
また、PPBは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
(プロピレン系重合体C)
PPCは、重量平均分子量Mwが2500〜35000であることが好ましく、4000〜30000であることがより好ましく、5000〜15000であることが更に好ましく、5000〜10000であることが特に好ましい。上記範囲内であると、紡糸中の繊維切れが起こりづらく紡糸性が高いままで、平均繊維径を小さくできる傾向にあるため好ましい。
PPCは、比較的分子量が低いため、ワックス状の重合体であってもよい。
PPCは、プロピレンの単独重合体であっても、プロピレンとα−オレフィンとの共重合体であってもよい。共重合するα−オレフィンの例は上述のとおりである。PPCは、
PPA、及びPPBとの相溶性に優れる観点から、プロピレンの含有率が70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、プロピレン単独重合体であることが特に好ましい。なお、相溶性に優れると紡糸性が高くなり、平均繊維径がより小さくなる傾向にある。
また、PPCは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
PPCは、軟化点が、90℃を超えることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。
PPCの軟化点が90℃を超えると、熱処理時又は使用時における耐熱安定性をより向上させることができ、結果としてフィルタ性能がより向上する傾向にある。PPCの軟化点の上限は特に制限されず、例えば、145℃が挙げられる。
本開示において、PPCの軟化点は、JIS K2207:2006に従って測定して得た値をいう。
PPCの密度は特に限定されず、例えば、0.890g/cm〜0.980g/cmであってもよく、好ましくは0.910g/cm〜0.980g/cmであり、より好ましくは0.920g/cm〜0.980g/cmであり、さらに好ましくは0.940g/cm〜0.980g/cmである。
PPCの密度が上記範囲にあると、PPCと、PPA、及びPPBとの混練性に優れ、且つ、紡糸性及び経時での安定性に優れる傾向にある。
樹脂組成物の全質量に対するPPCの含有率は、1質量%〜50質量%であることが好ましく、3質量%〜40質量%であることがより好ましく、5質量%〜30質量%であることが更に好ましい。
PPCの含有率が上記範囲の場合は、平均繊維径が小さくかつ比表面積が大きくなる傾向がある。また、紡糸性、繊維強度、粒子の捕集効率、及び濾過流量のバランスに優れる傾向にある。
樹脂組成物は、ポリエチレン(PE)、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルケトン(PEEK)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、超高分子量ポリエチレン等のポリプロピレン以外の熱可塑性樹脂を1種以上含んでいてもよい。
樹脂組成物は、酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、ブロッキング防止剤、滑剤、顔料、柔軟剤、親水剤、助剤、撥水剤、フィラー、抗菌剤等の公知の添加剤を含んでいてもよい。
本開示の不織布は、本開示の不織布を積層した積層不織布として用いてもよく、他の不織布と積層した積層不織布として用いてもよい。他の不織布としては、特に制限はなく、例えば、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、湿式不織布、スパンレース不織布、乾式不織布、乾式パルプ不織布、エアレイド不織布、ウォータージェット不織布、フラッシュ紡糸不織布、開繊不織布、ニードルパンチ不織布等、種々公知の短繊維不織布及び長繊維不織布(例えば長繊維セルロース不織布)が挙げられる。
本開示の不織布が後述するメルトブローン法で製造された不織布(以下、「メルトブローン不織布」ともいう。)である場合、不織布は溶媒成分を含まないことが好ましい。溶媒成分とは、繊維を構成する樹脂組成物を溶解可能な有機溶媒成分を意味する。溶媒成分としては、ジメチルホルムアミド(DMF)などが挙げられる。
溶媒成分を含まないとは、ヘッドスペースガスクロマトグラフ法によって検出限界以下であることを意味する。
本開示の不織布の繊維は、メルトブローン不織布であることが好ましい。具体的には、繊維同士が自己融着した交絡点を有することが好ましい。自己融着した交絡点とは、繊維を構成する樹脂組成物が融着することで繊維同士が結合した枝分かれ部位を意味し、繊維同士がバインダ樹脂を介して接着してできた交絡点とは区別される。
自己融着した交絡点は、例えば、メルトブローン法による繊維状プロピレン系重合体の細化の過程で形成される。
本開示の不織布の繊維同士が自己融着による交絡点を有する場合、繊維同士を接着させるための接着成分を用いなくともよい。例えば、繊維同士が自己融着による交絡点を有するメルトブローン不織布の場合には、繊維を構成する樹脂組成物以外の樹脂成分を含有しなくてもよい。
不織布の比表面積は、捕集効率をより向上させる観点から、2.0m/g〜20.0m/gであることが好ましく、3.0m/g〜15.0m/gであることがより好ましく、3.5m/g〜10.0m/gであることが更に好ましい。
不織布の比表面積は、JIS Z8830:2013に準拠して求めた値である。
不織布の平均繊維径と比表面積とを上記範囲内にすることで、フィルタとして用いると捕集効率により優れる。
本開示の不織布の平均孔径は10.0μm以下であることが好ましく、3.0μm以下であることがより好ましく、2.5μm以下であることが更に好ましい。
また、不織布の平均孔径は0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。平均孔径が0.01μm以上であると、不織布をフィルタに用いた場合に、圧損が抑えられ、流量を維持できる傾向にある。
本開示の不織布の最大孔径は、20.0μm以下であることが好ましく、10.0μm以下であることがより好ましく、5.0μm以下であることが更に好ましい。
また、不織布の最小孔径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。
本開示の不織布の孔径(平均孔径、最大孔径及び最小孔径)は、バブルポイント法により測定することができる。具体的には、JIS Z8703:1983(試験場所の標準状態)に準拠し、温度20±2℃、湿度65±2%の恒温室内で、不織布の試験片にフッ素系不活性液体(例えば、3M社製、商品名:フロリナート)を含浸させ、キャピラリー・フロー・ポロメーター(例えば、Porous materials,Inc社製、製品名:CFP−1200AE)で孔径を測定する。
本開示の不織布の目付は、用途により適宜設定することができ、通常、1g/m〜200g/mであり、2g/m〜150g/mの範囲にあることが好ましい。フィルタ用途に用いる場合には、フィルタの強度と粒子の捕集効率の観点から、5g/m〜50g/mであることが好ましく、5g/m〜30g/mであることがより好ましい。上記の不織布の目付は、本開示の不織布単層の値である。
本開示の不織布の空隙率は、通常40%以上であり、40%〜98%の範囲にあることが好ましく、60%〜95%の範囲にあることがより好ましい。
本開示の不織布がエンボス加工されている場合には、不織布の空隙率は、エンボス点を除く箇所における空隙率を意味する。
また、本開示の不織布のうち、40%以上の空隙率を有する部位の占める体積が90%以上であることが好ましく、ほぼ全ての部位で40%以上の空隙率を有することがより好ましい。本開示の不織布をフィルタに用いる場合には、エンボス加工されていないか、又はほとんど全ての領域でエンボス加工されていないことが好ましい。
エンボス加工されていない場合には、フィルタに流体を通過させたときの圧力損失が抑えられ、かつ、フィルタ流路長が長くなるためフィルタリング性能が向上する傾向にある。
なお、本開示の不織布が他の不織布に積層されている場合に、他の不織布はエンボス加工されていてもよい。
不織布の通気度は、好ましくは3cm/cm/s〜30cm/cm/sであり、より好ましくは5cm/cm/s〜20cm/cm/sであり、更に好ましくは8cm/cm/s〜12cm/cm/sである。
<不織布の製造方法>
本開示の不織布の製造方法は特に制限されず、エアスルー法、スパンボンド法、ニードルパンチ法、メルトブローン法、カード法、熱融着法、水流交絡法、溶剤接着法等の公知の方法を適用することができる。
これらの中でも、軽量性、均一性、強度、柔軟性及びバリア性の総合的な性能に優れる不織布が得られる観点から、不織布の製造方法としては、メルトブローン法又はスパンボンド法であることが好ましく、メルトブローン法であることがより好ましい。特にメルトブローン法であると、平均繊維径が小さく捕集効率がより向上する傾向にある。
スパンボンド不織布を製造する際の一般的な方法としては、樹脂組成物を、押出機を用い溶融し、溶融した組成物を、複数の紡糸口金を有するスパンボンド不織布成形機を用いて溶融紡糸し、紡糸により形成された長繊維を必要に応じて冷却し延伸させた後、スパンボンド不織布成形機の捕集面上に堆積させ、エンボスロールで加熱加圧処理する方法が挙げられる。
冷却と延伸の方法は、例えば、特公昭48−28386号公報に開示された溶融紡糸された長繊維が大気中で冷却されながら延伸されることで製造される開放式スパンボンド法と、例えば、特許第3442896号公報に開示された密閉式スパンボンド法が広く知られている。
メルトブローン不織布は、例えば、以下の工程を有する製造方法を挙げることができる。
1)メルトブローン法により、溶融した樹脂組成物(例えば、直鎖ポリプロピレンと長鎖分岐ポリプロピレンとの混合物である)を紡糸口金から加熱ガスと共に吐出して、繊維状に形成する工程
2)繊維状の樹脂組成物を、ウェブ状に捕集する工程
メルトブローン法とは、メルトブローン不織布の製造におけるフリース形成法の一つである。溶融した樹脂組成物を、紡糸口金から繊維状に吐出させるときに、溶融状態の吐出物に両側面から加熱圧縮ガスをあてるとともに、加熱圧縮ガスを随伴させることで吐出物の径を小さくすることができる。
メルトブローン法は、具体的には、例えば、原料となる樹脂組成物を、押出機などを用いて溶融する。溶融した樹脂組成物は、押出機の先端に接続された紡糸口金に導入され、紡糸口金の紡糸ノズルから、繊維状に吐出される。吐出された繊維状の溶融した樹脂組成物を高温ガス(例えば、空気)で牽引することにより、繊維状の溶融した樹脂組成物が細化される。
吐出された繊維状の溶融した樹脂組成物は、高温ガスに牽引されることで、通常1.4μm以下、好ましくは1.0μm以下の直径にまで細化される。好ましくは、高温ガスによる限界まで繊維状の溶融した樹脂組成物を細化する。
細化した繊維状の溶融した樹脂組成物に、高電圧を印加して、更に細化してもよい。高電圧を印加すると、電場の引力により繊維状の溶融した樹脂組成物が捕集側に引っ張られて細化する。印加する電圧は特に制限されず、1kV〜300kVであってもよい。
また、繊維状の溶融した樹脂組成物に、熱線を照射して、さらに細化してもよい。熱線を照射することで細化し、流動性の低下した繊維状の樹脂組成物を再溶融することができる。また、熱線を照射することで、繊維状の樹脂組成物の溶融粘度をより下げることもできる。そのため、分子量の大きいプロピレン系重合体を紡糸原料としても、十分に細化された繊維を得ることができ、高強度のメルトブローン不織布が得られうる。
熱線とは、波長0.7μm〜1000μmの電磁波を意味し、特に波長0.7μm〜2.5μmである近赤外線を意味する。熱線の強度や照射量は特に制限されず、繊維状溶融プロピレン系重合体が再溶融されればよい。例えば、1V〜200V、好ましくは1V〜20Vの近赤外線ランプ又は近赤外線ヒータを用いることができる。
繊維状の溶融した樹脂組成物は、ウェブ状に捕集される。一般には、捕集器(コレクター)に捕集されて堆積される。これにより、メルトブローン不織布が製造される。コレクターの例には、多孔ベルト、多孔ドラムなどが含まれる。また、コレクターは空気捕集部を有していてもよく、これにより繊維の捕集を促進してもよい。
コレクター上に予め設けた所望の基材上に、繊維をウェブ状に捕集してもよい。予め設けておく基材の例には、メルトブローン不織布、スパンボンド不織布、ニードルパンチング及びスパンレース不織布などの他の不織布、並びに織物、編物、紙などが含まれる。これにより、高性能フィルタ、ワイパーなどで使用するメルトブローン不織布積層体を得ることもできる。
<メルトブローン不織布の製造装置>
本開示のメルトブローン不織布を製造するための製造装置は、本開示のメルトブローン不織布を製造することができれば特に限定されない。
メルトブローン不織布の製造装置としては、例えば、
1)樹脂組成物を溶融して搬送する押出機と、
2)押出機から搬送された溶融した樹脂組成物を、繊維状に吐出する紡糸口金と、
3)紡糸口金の下部に、高温ガスを噴射するガスノズルと、
4)紡糸口金から吐出された繊維状の溶融した樹脂組成物をウェブ状に捕集する捕集器と、
を具備する製造装置を挙げることができる。
押出機は、特に限定されず、一軸押出機であっても多軸押出機であってもよい。ホッパーから投入された固体の樹脂組成物が、圧縮部で溶融される。
紡糸口金は、押出機の先端に配置されている。紡糸口金は、通常複数の紡糸ノズルを具備しており、例えば、複数の紡糸ノズルが列状に配列している。紡糸ノズルの直径は、0.01mm〜0.70mmであることが好ましい。溶融した樹脂組成物が、押出機によって紡糸口金にまで搬送され、紡糸ノズルに導入される。紡糸ノズルの開口部から繊維状の溶融した樹脂組成物が吐出される。溶融した樹脂組成物の吐出圧力は、通常0.01kg/cm〜200kg/cmの範囲であり、10kg/cm〜30kg/cmの範囲であることが好ましい。これより吐出量を高めて、大量生産を実現する。紡糸ノズルの直径および吐出圧力は、求める不織布の物性に応じて適宜選択すればよい。
ガスノズルは、紡糸口金の下部、より具体的には紡糸ノズルの開口部付近に、高温ガスを噴射する。噴射ガスは、空気でありうる。ガスノズルを紡糸ノズルの開口部の近傍に設けて、ノズル開口からの吐出直後の樹脂組成物に、高温ガスを噴射することが好ましい。
噴射するガスの速度(吐出風量)は特に限定されず、4Nm/分/m〜30Nm/分/mであってもよい。噴射するガスの温度は、通常5℃〜400℃以下であり、好ましくは250℃〜350℃の範囲である。噴射するガスの種類は特に限定されず、圧縮空気を用いてもよい。噴出するガスの速度および温度は、求める不織布の物性に応じて適宜選択すればよい。
メルトブローン不織布の製造装置は、紡糸口金から吐出された繊維状の溶融した樹脂組成物に電圧を印加する電圧付与手段を、さらに具備してもよい。
また、紡糸口金から吐出された繊維状の溶融した樹脂組成物に熱線を照射する熱線照射手段を、さらに具備してもよい。
ウェブ状に捕集する捕集器(コレクター)は特に限定されず、例えば、多孔ベルトに繊維を捕集すればよい。多孔ベルトのメッシュ幅は5メッシュ〜200メッシュであることが好ましい。さらに、多孔ベルトの繊維捕集面の裏側に空気捕集部を設けて、捕集を容易にしてもよい。捕集器の捕集面から、紡糸ノズルのノズル開口部までの距離は、3cm〜100cmであることが好ましい。
<用途>
本開示の不織布は、例えば、ガスフィルタ(エアフィルタ)、液体フィルタ等のフィルタとして用いてもよい。
本開示の不織布をフィルタとして用いると、5倍繊維の割合が少なく、かつ、平均繊維径が小さいため、捕集効率に優れる。
本開示の不織布がメルトブローン不織布である場合、メルトブローン不織布が、1)溶媒成分を含まず、2)繊維同士を接着させるための接着剤成分を含まず、3)エンボス加工が施されていない、これら1)〜3)の少なくとも一つを満たす場合には、不純物の含有量が低減される。そのため、このような不織布は、清浄性とフィルタリング性能が高く、高性能フィルタとして好適に用いられる。
液体用フィルタは、不織布の単層からなってもよく、又は不織布の2層以上の積層体からなってもよい。液体用フィルタとして、2層以上の不織布の積層体を用いる場合は、2層以上の不織布を単に重ねてもよい。
また、液体用フィルタは、目的及び適用する液体に応じて、不織布に、他の不織布を組み合わせてもよい。また、液体用フィルタの強度を強めるために、スパンボンド不織布を用いてもよく、スパンボンド不織布と網状物などとを積層してもよい。
液体フィルタは、例えば、孔径を小さく制御したり空隙率を調整したりするためにフラットロール間ないしクラウンロール間にクリアランスを設けた一対のフラットロールを用いてカレンダー処理を行ってもよく、クリアランス無しで一定圧力をかけられるロールを用いてカレンダー処理を行ってもよい。フラットロール間のクリアランスは、不織布の厚さに応じて、適宜変更して、不織布の繊維間にある空隙がなくならようにすることが必要である。
カレンダー処理の際に、加熱処理を行う場合、ロール表面温度が樹脂組成物から形成された繊維の融点より15℃以上低い温度の範囲で熱圧接することが望ましい。ロール表面温度が樹脂組成物から形成された樹脂の融点より15℃以上低い場合は、メルトブローン不織布の表面のフィルム化が抑えられ、フィルタ性能の低下が抑制される傾向にある。ロール表面温度は、例えば、10℃〜150℃が好ましく、15℃〜100℃がより好ましく、20℃〜50℃が更に好ましい。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
プロピレン系重合体BとしてAchieve 6936G2(製品名)(ExxonMobil社製、重量平均分子量:5.5万のプロピレン系重合体、MFR;1550)50.0質量部と、高分子量側ポリプロピレン(すなわち、プロピレン系重合体A)として、F113G(製品名)直鎖ポリプロピレン(MFR;3g/10分、(株)プライムポリマー製)20.0質量部、低分子量側ポリプロピレン(すなわち、プロピレン系重合体C)としてNP055(Mw;7700、三井化学(株)製)30.0質量部とを溶融及び混合し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のMw/Mn、Mz/Mw、Mz/Mn、せん断粘度、及び一軸伸長粘度を表1に示す。
上記で得られた樹脂組成物をダイに供給し、設定温度230℃の、ノズルの直径が0.12mmであるダイスから、ノズル単孔あたり12.5mg/分で、ノズルの両側から吹き出す加熱エアー(280℃、7.5Nm/分/m)と供に吐き出しメルトブローン不織布を得た。
得られたメルトブローン不織布における、繊維径が平均繊維径の5倍以上である繊維の割合(5倍繊維径割合)、及び、平均繊維径の標準偏差(Dd)の平均繊維径(Da)に対する割合(Dd/Da)を表1に示す。
なお、平均繊維径(Da)、及び5倍繊維径割合は既述の方法で測定し、算出した。
ここで、得られた不織布における繊維のMw/Mn、Mz/Mw、及びMz/Mnの値は、上記の紡糸温度を考慮すると、本開示の樹脂組成物がほとんど熱分解しない温度(すなわち、300℃未満)で紡糸されているため、樹脂組成物のそれらの値と同一とみなされる。
(実施例2及び実施例3並びに比較例1〜比較例4)
実施例1において、表1に示す樹脂組成物の組成の割合に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、メルトブローン不織布を得た。得られた樹脂組成物及びメルトブローン不織布の物性値を表1に示す。
(比較例5)
プロピレン系重合体BとしてAchieve 6936G2(製品名)(ExxonMobil社製、重量平均分子量:5.5万のプロピレン系重合体、MFR;1550)20.0質量部と、VistamaxxTM6202(製品名)(ポリプロピレン・エチレンランダム共重合体(MFR;20g/10分、ExxonMobil社製))40.0質量部、低分子量側ポリプロピレン(すなわち、プロピレン系重合体C)としてNP055(Mw;7700、三井化学(株)製)40.0質量部とを溶融及び混合し、樹脂組成物を得た。
Figure 2021055218
表1から明らかなように、実施例のメルトブローン不織布では、比較例のメルトブローン不織布に比べて、5倍繊維径の割合が少なく、かつ、平均繊維径が小さい。また、繊維径分布、すなわち、平均繊維径/平均繊維径の標準偏差が小さい。
このため、実施例のメルトブローン不織布をフィルタとして用いた際に粒子の捕集効率に優れることが分かる。

Claims (11)

  1. 樹脂組成物から形成された繊維を含む不織布であって、
    前記繊維は、伸長歪み速度2.5×10(1/秒)、160℃の条件で測定した一軸伸長粘度が、430Pa・s〜1200Pa・sであり、せん断歪み速度2.5×10(1/秒)、160℃の条件で測定したせん断粘度(Pa・s)に対する、前記一軸伸長粘度(Pa・s)の割合が35〜65であり、前記繊維の数平均分子量Mnに対するz平均分子量Mzの比〔Mz/Mn〕が20以上である、不織布。
  2. 前記繊維の重量平均分子量Mwに対するz平均分子量Mzの比〔Mz/Mw〕が6.8以上である、請求項1に記載の不織布。
  3. 前記繊維の数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比〔Mw/Mn〕が3.5以上である、請求項1又は請求項2に記載の不織布。
  4. 前記繊維は、繊維径が平均繊維径(Da)の5倍以上である繊維の割合が20質量%以下である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の不織布。
  5. 前記繊維の平均繊維径(Da)は2.7μm以下である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の不織布。
  6. 前記平均繊維径の標準偏差(Dd)を前記平均繊維径(Da)で除して100倍した値(CV値)が50〜110である、請求項4又は請求項5に記載の不織布。
  7. メルトブローン不織布である、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の不織布。
  8. 前記せん断粘度は、10Pa・s〜20Pa・sである、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の不織布。
  9. 前記樹脂組成物は、190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.10g/10分〜10g/10分であるプロピレン系重合体Aと、190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が30g/10分〜5000g/10分であるプロピレン系重合体Bと、重量平均分子量Mwが2500〜35000であるプロピレン系重合体Cと、を含む、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の不織布。
  10. 前記プロピレン系重合体Aの含有率は、前記樹脂組成物の全質量に対して1質量%〜40質量%であり、前記プロピレン系重合体Bの含有率は、前記樹脂組成物の全質量に対して40質量%〜98質量%であり、前記プロピレン系重合体Cの含有率は、前記樹脂組成物の全質量に対して1質量%〜50質量%である、請求項9に記載の不織布。
  11. 請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の不織布を含むフィルタ。
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