JP2021055142A - 銀被覆金属粉末およびその製造方法並びに導電性塗料 - Google Patents

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Abstract

【課題】導電フィラーとして使用したときに導電膜の導電性の経時変化を抑制する性能の高い銀被覆金属粉末を得る。【解決手段】銅含有量が80質量%以上である金属コア粒子と、その金属コア粒子を被覆する銀の被覆層とを有する金属粒子の粉末であって、前記粉末のタッピングにより平らにした面について、色差計により正反射光除去モードで測定されるCIE 1976 L*a*b*色空間におけるL*、a*の値と、前記粉末のレーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50(μm)とで表される下記(1)式のA値が4.0以上である、銀被覆金属粉末。A=L*/a*/(D50^1.45) …(1)【選択図】なし

Description

本発明は、銅粒子または銅合金粒子の表面に金属銀がコーティングされている金属粒子で構成される銀被覆金属粉末、およびその製造方法に関する。また、上記の銀被覆金属粉末を導電フィラーとして用いた導電性塗料に関する。
従来、印刷法などにより電子部品の電極や配線を形成するために、導電性の金属粉末と、溶剤、樹脂、分散剤などの非導電性物質を混合して作製された導電性塗料が使用されている。導電性塗料にはペースト状のもの(導電性ペースト)や液状のもの(導電性インク)などがあり、用途に応じて適切な性状のものが選択される。導電性塗料に含有される金属粉末は導電性を担う「導電フィラー」として機能する。その導電フィラーに用いられる代表的な金属粉末として、銀粉および銅粉が挙げられる。銀粉は導電性や耐酸化性に優れる反面、コストが高い、マイグレーションを起こしやすいなどの問題を有している。逆に銅粉は導電性やコストに優れ、マイグレーションを起こしにくい反面、耐酸化性が悪いという問題を有している。
そこで銀粉および銅粉のメリットを享受しようと、銀被覆銅粉の製造技術が開発されている。
例えば特許文献1には、酸性溶液(pH2〜5)中に銅粉を分散させ、その銅粉分散液にキレート化剤を加えて銅粉スラリーを作製した後に緩衝剤を添加してpHを約4に調整し、前記銅粉スラリーに銀イオン溶液を連続的に添加することで置換反応により銅粉表面へ銀層を形成する銀被覆銅粉の製造方法が開示されている。
また特許文献2には、銅または銅合金の粉末を銀含有層により被覆した後、還元性雰囲気下で60〜160℃で0.5〜50時間加熱して表面改質を行う銀被覆銅粉の製造方法が開示されている。
特開2004−52044号公報 特開2016−176093号公報
特許文献1の技術によれば、大気雰囲気中に放置しても導電性の経時変化が少ない銀コート銅粉が得られるという。しかし、特許文献1に示されるようにpH約4の銅粉スラリーに銀イオン溶液を添加して銀被覆反応を実施すると、銅の酸化物が生じて銀被覆銅粉の導電性に悪影響を及ぼすおそれがある。銅のpH−電位図において、pH4では酸化銅が生成しうるからである。
特許文献2の技術によれば、粒子同士の凝集や焼結が生じにくく、かつ導電性ペーストに使用した場合にその導電性ペーストの「粘度」の経時的な増大を抑制することができる銀被覆金属粉末が提供可能となった。しかし、導電膜の「導電性」の経時変化(信頼性)を改善することについては注力されていない。近年の電子部品の小型化、高性能化などの要求から、細線化、薄膜化した導電膜に対応するためには、導電性についての信頼性に関する更なる改善が望まれる。
本発明は、導電フィラーとして使用したときに導電性の高い導電膜を形成可能で、かつその導電膜の導電性の経時変化を抑制する性能の高い銀被覆金属粉末、およびそれを用いた導電塗料を提供しようというものである。
上記目的を達成するため、本明細書では以下の発明を開示する。
[1]銅含有量が80質量%以上である金属コア粒子と、その金属コア粒子を被覆する銀の被覆層とを有する金属粒子の粉末であって、
前記粉末のタッピングにより平らにした面について、色差計により正反射光除去モードで測定されるCIE 1976 L*a*b*色空間におけるL*、a*の値と、前記粉末のレーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50(μm)とで表される下記(1)式のA値が4.0以上である、銀被覆金属粉末。
A=L*/a*/(D50^1.45) …(1)
[2]前記D50が0.1〜10.0μmである上記[1]に記載の銀被覆金属粉末。
[3]下記(2)式で定義されるB値が0.5〜2.5である粒度分布を有する上記[1]または[2]に記載の銀被覆金属粉末。
B=(D90−D10)/D50 …(2)
ここで、D10、D50およびD90はそれぞれ、レーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積10%粒子径D10(μm)、累積50%粒子径D50(μm)および累積90%粒子径D90(μm)を意味する。
[4]粉末に占める銀の質量割合が2.0〜30.0%である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の銀被覆金属粉末。
[5]粉末に占める銀の質量割合が5.0〜15.0%である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の銀被覆金属粉末。
[6]キレート剤を含む水溶液と、銅含有量が80質量%以上である金属粒子の粉末を混合し、液のpHが2.3〜3.2である前記金属粒子のスラリーを作る工程(スラリー化工程)、
前記スラリー中に銀イオンを導入し、スラリーの液のpHを2.3〜3.2に維持しながら金属粒子の表面に金属銀の被覆層を形成させる工程(銀被覆工程)、
を有する、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の銀被覆金属粉末の製造方法。
[7]キレート剤を含む水溶液と、銅含有量が80質量%以上である金属粒子の粉末を混合し、液のpHが2.3〜3.2である前記金属粒子のスラリーを作る工程(スラリー化工程)、
前記スラリーを15〜70℃で10分以上保持することにより、スラリー中の金属粒子の表面を洗浄する工程(洗浄工程)、
前記洗浄工程後のスラリー中に銀イオンを導入し、スラリーの液のpHを2.3〜3.2に維持しながら金属粒子の表面に金属銀の被覆層を形成させる工程(銀被覆工程)、
を有する、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の銀被覆金属粉末の製造方法。
[8]上記[1]〜[5]のいずれかに記載の銀被覆金属粉末を導電フィラーに用いた導電性塗料。
上記(1)式において、記号「^」はべき乗を意味する。
本発明によれば、金属コアの銅または銅合金の露出が少ない、均一性の高い銀被覆層を有する銀被覆金属粉末が提供可能となった。この銀被覆金属粉末を導電性塗料の導電フィラーとして使用すると、導電性に優れ、かつその経時変化の少ない導電膜を形成することができる。
[金属コア粒子]
本発明の銀被覆金属粉末は、銅または銅合金からなる金属粒子の表面に銀の被覆層を形成してなる銀被覆金属粒子の集合体である。本明細書では、この銀被覆金属粒子のうち前記の「銅または銅合金からなる金属粒子」に由来する部分を「金属コア」と呼ぶ。また、前記の「銅または銅合金からなる金属粒子」を、銀被覆金属粒子と区別する意味で、特に「金属コア粒子」と呼ぶことがあり、前記金属コア粒子の集合体である粉末を「金属コア粉末」と呼ぶことがある。
金属コア粉末としては、銅含有量が80質量%以上である金属粉末を適用する。銅含有量が少なすぎると体積抵抗率の上昇に伴って導電性が低くなり、導電性に優れる導電膜を形成するうえでは不利となる。銅含有量は90質量%以上とすることがより好ましい。不純物元素含有量が例えば0.1質量%以下の「銅粉」を適用してもよい。前記不可避不純物元素の例としては、鉄、ナトリウム、カリウム、カルシウム、パラジウム、マグネシウム、酸素、炭素、窒素、リン、ケイ素、塩素などが挙げられる。「銅合金粉末」を適用する場合は、代表的な合金系として銅−亜鉛系合金、銅−ニッケル系合金、銅−ニッケル−亜鉛系合金などを挙げることができる。ただし、本発明の効果を阻害しない限り、これら以外の銅合金系を採用することができる。
銅−亜鉛系合金の場合、例えば、銅:80.0〜95.5質量%より好ましくは88.0〜98.5質量%、残部が亜鉛および不可避的不純物である組成を採用することができる。銅−ニッケル系合金の場合、例えば、銅:80.0〜95.5質量%より好ましくは88.0〜98.5質量%、残部がニッケルおよび不可避的不純物である組成を採用することができる。銅−ニッケル−亜鉛系合金の場合、例えば、銅:80.0〜95.5質量%より好ましくは88.0〜97.5質量%、ニッケル:0.1〜10.0質量%、残部が亜鉛および不可避的不純物である組成を採用することができる。これらいずれの銅合金系の場合であっても、本発明の効果を阻害しない範囲で、ニッケルあるいは亜鉛以外の元素を含有させることができる。
金属コア粒子の形状は、略球状粒子、鱗片状(フレーク状)粒子、樹枝状粒子など、用途に応じて選択可能である。金属コア粒子の粉末の平均粒子径については、例えばレーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50が0.05〜15.0μmのものを使用すればよい。銀被覆金属粉末の平均粒子径を所定範囲(例えばD50が0.1〜10.0μmの範囲など)に調整したい場合は、所望の銀被覆量に応じて、適切な平均粒子径(例えばD50が0.08〜9.9μmの範囲など)を有する金属コア粒子の粉末を選択すればよい。
[銀被覆層]
本発明の銀被覆金属粉末においては、金属コア粒子の表面に銀被覆層が形成されている。この銀被覆層は実質的に銀からなるが、製造工程や原料に由来する不可避不純物を含みうる。また、金属コア粒子の構成元素が銀被覆層へと拡散した結果、銀被覆層がこれらの元素を含んでいる場合もありうる。
銀被覆層は金属コア粒子の表面全体に形成されている必要はなく、後述するようにA値が所定値以上となるように金属コア粒子の表面を被覆していればよい。そのような被覆は、後述の製造方法に従えば、銀被覆金属粉末に占める銀の質量割合が1.0%以上の範囲において実現しやすい。より安定して良好な導電性を確保する観点からは、銀被覆金属粉末に占める銀の質量割合は2.0%以上であることが好ましく、5.0%以上であることがより好ましく、7.0%以上であることが更に好ましい。過剰な銀被覆はコスト増を招く要因となる。銀被覆金属粉末に占める銀の質量割合は30.0%以下とすることが好ましく、20.0%以下とすることがより好ましく、15.0%以下に管理してもよい。
[A値]
銀被覆金属粉末を構成する粒子(銀被覆金属粒子)の金属コアの露出程度を表す指標として、本発明では下記(1)式により定まるA値を採用する。
A=L*/a*/(D50^1.45) …(1)
ここで、L*およびa*はそれぞれ、CIE 1976 L*a*b*色空間における明度L*および緑−赤方向の色度a*を意味する。D50は銀被覆金属粉末のレーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50(μm)である。
L*およびa*の測定は、試料粉末を円筒容器に入れてタッピングにより平らにした面について、色差計により正反射光除去モード(SCEモード)で行う。
銀被覆金属粒子の金属コアの露出が大きいほど明度L*は小さくなる。しかし、発明者らの検討によれば、金属コアの露出が比較的少ない銀被覆金属粒子などでは、L*だけでは高い精度で金属コアの露出の程度を対比することが難しくなる。そこで詳細に検討を進めた結果、明度L*を緑−赤方向の色度a*で除した「L*/a*」の値をパラメータに用いることが、銅含有量80質量%以上の銅または銅合金の金属コアの露出程度を評価する上で極めて有効であることがわかった。更に、L*/a*値に及ぼす粒子径の影響をも考慮する必要がある。発明者らは、銀被覆量(質量%)が同等レベルにあり、平均粒子径が相違する種々の銀被覆金属粉末について、L*/a*値をD50(μm)のべき乗で除した値の変動係数CV値を調べた。D50(μm)のべき乗「D50^X」において、Xの値を1から増大させていったとき、「L*/a*/(D50^X)」の値の変動係数CV値は、Xが1.45付近で最小となる傾向が見られた。そこで、平均粒子径が異なる銀被覆金属粉末についても同じ基準で金属コアの露出程度を精度良く比較することができる指標として、「L*/a*」をD50でノルマライズした「L*/a*/(D50^1.45)」を採用することとした。これによって定まる値が(1)式のA値である。A値が高い銀被覆金属粉末は、金属コアの露出が少なく、かつ金属コア粒子の表面に存在している銀被覆層についても均一性が高いと評価される。
発明者らの研究によれば、金属コア粒子として銅含有量が80質量%以上の銅または銅合金を適用する場合、上記のA値が4.0以上である銀被覆金属粉末は、金属コアの露出が極めて少なく、かつ銀被覆層の均一性も高いことから、その粉末を導電フィラーとして使用した導電膜において初期抵抗を顕著に低下させ、かつ「導電性の経時変化」を抑制する高い効果を発揮する。導電膜の導電性の観点からは、A値は4.1以上であることがより効果的である。A値の上限については特に規定しないが、例えば8.0以下の範囲で十分であり、コスト的には例えば6.5以下の範囲に抑えることが有利となる。
[銀被覆金属粉末のD50
本発明の銀被覆金属粉末の粒子サイズに関しては、導電性塗料に使用した場合の細線描画や薄い導電膜を形成する観点から、レーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50が0.1〜10.0μmの範囲にあることが好ましい。D50が0.8〜8.0μmであることがより好ましく、1.2〜6.0μmであることがさらに好ましい。
[B値]
下記(2)式で定義されるB値は、銀被覆金属粉末の粒度分布のシャープさを表す指標である。
B=(D90−D10)/D50 …(2)
ここで、D10、D50およびD90はそれぞれ、レーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積10%粒子径D10(μm)、累積50%粒子径D50(μm)および累積90%粒子径D90(μm)を意味する。
B値が小さいほどシャープな粒度分布を有していると判断される。粉末の充填性やハンドリングの容易さの点から、平均粒子径に応じて適度なシャープさの粒度分布を有していることが有利となる。種々検討の結果、B値は0.5〜2.5の範囲にあることがより好ましい。
[BET比表面積]
本発明の銀被覆金属粉末のBET1点法により測定した比表面積は、良好な導電性を発揮させる観点から、0.08〜1.50m2/gであることが好ましく、0.10〜1.00m2/gであることがより好ましく、0.15〜0.80m2/gであることが更に好ましい。
[タップ密度]
本発明の銀被覆金属粉末のタップ密度は、粉末の充填密度を高めて良好な導電性を発揮させる観点から、3.0〜8.5g/cm3であることが好ましく、4.0〜7.0g/cm3であることがより好ましい。
[酸素含有量]
本発明の銀被覆金属粉末の酸素含有量は、導電性の観点から、0.40質量%以下であることが好ましく、0.05〜0.20質量%であることがより好ましい。
[炭素含有量]
本発明の銀被覆金属粉末の炭素含有量は、0.40質量%以下であることが好ましく、0.005〜0.10質量%であることがより好ましい。
[耐酸化性]
銀被覆金属粉末の耐酸化性を示す指標として、下記(3)式で表されるTG変化率(%)を採用することができる。
TG変化率(%)=100×(W1−W0)/W0 …(3)
ここで、W0は加熱試験前の試料粉末の重量(g)、W1は所定温度まで昇温した時点の試料粉末の重量(g)である。加熱試験は、試料粉末の重量をモニターしながら、その試料粉末の温度を大気雰囲気中で室温(25℃)から650℃まで空気を通気しながら5℃/min昇温速度で上昇させる方法で行う。このときの重量変化曲線において、所定温度(例えば200℃または300℃)に到達したときの重量をW1(g)として読み取り、上記(3)式によりその温度までのTG変化率(%)を求める。
銅含有量80質量%以上の金属コアを有する銀被覆金属粉末において、200℃までのTG変化率が0.7%以下かつ300℃までのTG変化率が5.0%以下であるものは導電フィラーとして十分な耐酸化性を有すると判断され、200℃までのTG変化率が0.5%以下かつ300℃までのTG変化率が3.5%以下であるものは一層優れた耐酸化性を有すると判断される。
[製造方法]
本発明の銀被覆金属粉末は、例えば以下の工程を経る製造方法により製造することができる。
[スラリー化工程]
キレート剤を含む水溶液と、銅含有量が80質量%以上である金属粒子の粉末を混合し、液のpHが2.3〜3.2、より好ましくはpH2.3〜2.7である前記金属粒子のスラリーを作る。液のpHを上記の範囲としておくことにより、金属粒子の粉末がスラリー中でよく分散し、また後の銀被覆工程において銀被覆反応(置換めっき反応)が穏やかに進行する。その結果、同じ銀被覆量でも、より均一性の高い銀被覆層を形成させることが可能となる。混合には撹拌機を使用することができる。
なお、本明細書でいうpHは、JIS Z8802:2011に基づき、pH標準液によるゼロ校正およびスパン校正を行ったうえで、ガラス電極を用いて測定される25℃におけるpHである。
キレート剤は、金属コア粒子表面の酸化膜を除去する機能を発揮して銀被覆が良好になされるようにする機能を有する。またキレート剤は、銀被覆反応(置換めっき反応)において金属粉末から溶出した銅イオンを錯体化で捕捉することによって、銅イオンの金属コア粒子上での再析出のような、銀被覆反応の進行の妨害反応を抑制する。ここでは酸性水溶液に溶解するキレート剤を使用する。キレート剤の具体例としては、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸及びこれらの塩が挙げられる。これらは1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお前記塩の例としてはアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が挙げられ、これらの具体例としてはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩が挙げられる。
液状媒体(スラリー中の固体物質である金属コア粒子を除いた部分)に占めるキレート剤の含有量は例えば0.02〜0.5mol/Lの範囲で調整すればよい。スラリー中に占める金属コア粒子の質量割合は例えば5〜30%の範囲で調整すればよい。スラリー中にはpH調整剤・緩衝剤として機能する物質を含有させることができる。そのような物質として、例えばマロン酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、フタル酸およびそれらの塩が挙げられる。これらは1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらは銀被覆反応時のpHの変化(特にアルカリ性側への変動)を防止するための緩衝剤としても機能する。なお前記塩の例としてはアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が挙げられ、これらの具体例としてはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩が挙げられる。
[洗浄工程]
必要に応じて、前記スラリーを15〜70℃で(すなわち、スラリー自体の温度を15〜70℃として)10分以上保持することにより、スラリー中の金属粒子の表面を酸性環境下で洗浄することができる。保持中は、非酸化性ガス(窒素やアルゴンなど)をスラリー中に吹き込むことが望ましい。このガス吹き込みにより、液中の酸素量を低減させる効果、および適度な撹拌力で粒子の分散状態を確保する効果が得られる。保持中の液のpHは2.3〜3.2に維持することが望ましく、2.3〜2.7に維持することがより望ましい。キレート剤を含む酸性溶液中で金属コア粒子を保持することにより、金属コア粒子表面の酸化物の除去効果が向上して活性な金属が粒子表面に露出し、銀の被覆をより均一に行う上で効果的である。A値が高く導電性に優れた銀被覆金属粉末を得るためには、保持時間を90分以上とすることがより好ましい。あまり長時間の保持は不経済となるので、洗浄工程を実施する場合は保持時間を例えば180分以下の範囲で設定することが好ましい。
[銀被覆工程]
前記のスラリー(前記洗浄工程を実施した場合は洗浄工程後のスラリー)の中に銀イオンを導入し、スラリーの液のpHを2.3〜3.2、より好ましくは2.3〜2.7に維持しながら金属粒子の表面に金属銀の被覆層を形成させる。液のpHが2.3を下回ると銀被覆反応(置換めっき反応)の進行が遅くなる。pHが2.3より低下しても、pH調整剤の添加等によりpHを上昇させれば反応速度は回復する。しかし、反応中のpHの変動は均一性の高い銀被覆層を形成させる上でマイナス要因となる。また、pHが低すぎるとキレート剤−銅イオンの錯体安定性が低下して銅イオンの再析出が起こる懸念があり、導電性の高い銀被覆金属粉末を得る上でマイナス要因となる。一方、液のpHが3.2を超えると反応液中での金属コア粒子の分散性が低下し、置換反応の進行速度が高まることにより均一性の高い銀被覆層を安定して形成させることが難しくなる。したがって、ここでは液のpHを2.3〜3.2に維持したまま反応を進行させる手法を採用する。液のpHを2.3〜2.7に維持して反応を進行させることがより好ましい。この銀被覆反応において、液の電位は特に限定されるものではないが、通常0〜1.0V(対標準電極電位)である。
スラリー中への銀イオンの導入は、予め銀化合物が溶解している銀イオン含有液を作製しておき、それをスラリー中に添加する方法で行うことが望ましい。銀イオン含有液は、一挙に全量を添加してもよいし、連続的または断続的に添加してもよい。銀イオン含有液を作製するための銀イオン源としては銀塩(例えば硝酸銀、塩化銀、ヨウ化銀、シュウ化銀、炭酸銀)が挙げられ、水溶性が高いことやコストの点から硝酸銀が好ましい。スラリー中への銀イオンの導入量は、目的とする金属粉末の銀被覆量に応じて調整する。通常、銀としての質量換算で、金属コア粉末100質量部に対して0.1〜100質量部の範囲で調整可能であり、例えば8〜50質量部の範囲で調整することが好ましい。
また、銀イオン含有液には、キレート剤を添加してもよい。キレート剤は銀の錯体を作り、銀被覆反応の反応速度を低下させ、銀被覆反応を穏やかに進行させる作用を発揮する。このキレート剤としては、スラリー化工程に使用するものと同種のものを使用することができる。キレート剤の使用量は、銀1molに対して例えば0.5〜4molの範囲で設定すればよい。
反応中の液温は15〜70℃に維持することが好ましい。また、スラリー中に非酸化性ガス(窒素やアルゴンなど)を吹き込みながら反応を進行させることが好ましい。このガス吹き込みにより、液中の酸素量を低減させる効果、および適度な撹拌力で粒子の分散状態を確保する効果が得られる。銀被覆反応の終期の把握については、スラリーの表面近傍の液をスポイトで分取し、分取した液をフィルター濾過して得られた濾液にヨウ化カリウム等のハロゲン化物を添加した際に、銀のハロゲン化物の生成反応が起こらなくなった時点をもって、銀被覆反応が終了したとみなすことができる。
銀被覆工程を終えたスラリーを固液分離して固形分を回収し、回収された固形分を水洗したのち乾燥させ、必要に応じて解砕処理を施すことにより、本発明の銀被覆金属粉末を得ることができる。
[導電性塗料]
上記のようにして得られた銀被覆金属粉末は、導電性ペーストや導電性インクなどの「導電性塗料」を構築するための導電フィラーとして好適である。導電性塗料の作製方法は公知の手法を利用することができる。例えば導電性ペーストの場合、比較的高温で焼成して溶剤や樹脂成分を分解、揮発させて、導電フィラーの粒子同士を焼結させることにより導通を得る「焼結型導電性ペースト」と、比較的低温で加熱して樹脂成分を硬化させ、硬化時の樹脂の収縮を利用して導電フィラー粒子同士を接触させることにより導通を得る「樹脂硬化型導電性ペースト」がある。本発明の銀被覆金属粉末は、上記いずれのタイプの導電性ペーストにも用いることができる。
本発明の銀被覆金属粉末を導電フィラーに用いる導電性塗料においては、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて本発明の銀被覆金属粉末以外の金属粉末を含有させることができる。それらの金属粉末としては銅粉、銀粉、アルミニウム粉、ニッケル粉、亜鉛粉、錫粉、ビスマス粉などが挙げられる。リン粉を添加することも可能である。リン粉も便宜上金属粉末として扱うとすると、導電性塗料に占める、本発明の銀被覆金属粉末とそれ以外の金属粉末の合計含有量は、例えば導電性ペーストの場合、50〜98質量%の範囲とすることができる。
導電性塗料は、溶剤や樹脂を含有することが通常である。溶剤や樹脂はそれぞれ、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の種々のものを1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
溶剤としては、例えば、テキサノール(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール2−メチルプロパノアート)、ターピネオール、カルビトールアセテート(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)、エチレングリコール、ジブチルアセテートやジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の極性溶剤が挙げられる。導電性塗料に占める溶剤の合計含有量は、例えば導電性ペーストの場合、0.5〜49質量%であることが好ましく、1〜28質量%であることがより好ましい。
焼結型導電性ペーストに使用する樹脂としては、例えば、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ロジン、フェノキシ樹脂、ポリアセタール樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。導電性塗料に占めるこれらの樹脂の合計含有量は、0.5〜40質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましい。
樹脂硬化型導電性ペーストに使用する樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂や、(メタ)アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの光硬化性樹脂が挙げられる。導電性塗料に占めるこれらの硬化性樹脂の合計含有量は、0.5〜40質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましい。加熱により樹脂を硬化させる場合は、硬化を促進するために、熱重合開始剤や、ポリアミン、酸無水物、三ハロゲン化ホウ素化合物、三ハロゲン化ホウ素化合物のアミン錯塩などの硬化剤を添加してもよい。光重合させる場合は光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤としては、通常、光ラジカル発生剤や光カチオン重合開始剤が用いられる。また、光増感剤を添加することもできる。
導電性塗料には、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記以外の物質を含有させてもよい。例えば、必要に応じて、界面活性剤、分散剤、安定化剤、可塑剤や、金属酸化物粉末などの添加剤を添加することができる。
導電性塗料の作製方法は、特に限定されるものではなく、公知の手法が適用できる。例えば、混練脱泡機、らいかい機、万能撹拌機、ニーダーなどを用いて塗料の構成成分(原料)を予備混練した後、3本ロールで本混練することによって調製することができる。必要に応じて、その後、溶剤を添加して粘度調整を行ってもよい。
[実施例1]
(金属コア粉末の作製)
銅ボールを大気雰囲気中において1500℃に加熱して溶解した溶湯をタンディッシュ下部から落下させながら、水アトマイズ装置により大気雰囲気中において高圧水を吹き付けて急冷凝固させ、得られたスラリーを固液分離し、固形物を水洗し、乾燥し、解砕、分級して銅粉末を得た。ここでは、この銅粉末を金属コア粉末として使用する。この銅粉末の粒度分布を後述の測定方法により調べたところ、体積基準の累積50%粒子径D50は2.5μmであった。
(銀被覆金属粉末の作製)
キレート剤としてヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸170.2gとpH調整剤・緩衝剤として酒石酸386.3gを純水1939gに溶解させた。この溶液の液温を25℃に調整し、撹拌しながら350gの銅粉末(上記の金属コア粉末)を加えることで銅粉末のスラリーを作製した。このスラリーのpHをpH計(東亜DKK ポータブルpH計 HM−31P)で測定したところ、pHは2.5であった。この時点のpHを「反応前pH」として表1に示してある(以下の各例において同じ)。
上記のスラリーに窒素ガスを吹き込みながら25℃で120分間保持することにより、銅粉末粒子の表面をpH2.5の酸性環境下で洗浄した。
銀イオン含有液として、硝酸銀61.2gを純水618gに溶解させた硝酸銀水溶液を用意した。この銀イオン含有液を、上記の洗浄を終えたスラリーに30分間かけて連続添加し、置換反応を進行させた。反応中、前記の窒素ガス吹き込みを継続した。反応中の液温は概ね25℃に維持した。置換反応の終了は、反応液の表面近傍をスポイトで分取し、分取した液をフィルター濾過して得られた濾液にヨウ化カリウムを添加し、ヨウ化銀(AgI)の沈殿が生成しないことをもって判断した。置換反応終了後の反応液のpHは2.4であった。この時点のpHを「反応後pH」として表1に示してある(以下の各例において同じ)。置換反応が終了した反応液を濾過し、回収された固形分を水洗し、乾燥、解砕することによって、銀被覆金属粉末を得た。
得られた銀被覆金属粉末について以下の調査を行った。
(銀の質量割合)
質量既知の銀被覆金属粉末(試料粉末)を硝酸で溶解した後、塩酸を添加して塩化銀(AgCl)の沈殿を生成させ、その沈殿物を乾燥させ、得られた乾燥物の質量を測定して、乾燥物(AgCl)中の銀の質量を算出した。その銀の質量と前記試料粉末の質量の比を銀の質量割合(%)とした。
(BET比表面積)
BET比表面積測定器(ユアサアイオニクス株式会社製の4ソーブUS)を使用して、測定器内に105℃で20分間窒素ガスを流して脱気した後、窒素とヘリウムの混合ガス(N2:30体積%、He:70体積%)を流しながら、BET1点法により測定した。
(タップ密度)
特開2007−263860号公報に記載された方法と同様に、銀被覆金属粉末(試料粉末)を内径6mm×高さ11.9mmの有底円筒形のダイに容積の80%まで充填して試料粉末層を形成し、この試料粉末層の上面に0.160N/m2の圧力を均一に加えて、この圧力で試料粉末がこれ以上密に充填されなくなるまで試料粉末を圧縮した後、試料粉末層の高さを測定し、この試料粉末層の高さの測定値と、充填された試料粉末の質量とから、試料粉末の密度を求め、これをタップ密度とした。
(酸素含有量)
酸素・窒素分析装置(LECO社製のTC−436型)により測定した。
(炭素含有量)
炭素・硫黄分析装置(株式会社堀場製作所製のEMIA−22V)により測定した。
(粒度分布)
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(SYMPATEC社製のへロス粒度分布測定装置、HELOS & RODOS(気流式の分散モジュール))を使用して、分散圧5barで体積基準の累積10%粒子径D10(μm)、累積50%粒子径D50(μm)および累積90%粒子径D90(μm)を求めた。
これらの測定値を下記(2)式に代入することにより、粒度分布のシャープさを表す指標であるB値を算出した。
B=(D90−D10)/D50 …(2)
(L*、a*、b*)
銀被覆金属粉末(試料粉末)5gを秤量して直径30mmの丸セルに入れ、10回タッピングすることにより平らにした粉体の表面を形成し、その表面について、色差計(日本電色工業株式会社製のSpectro Color Meter SQ2000)により正反射光除去モード(SCEモード)にて、CIE 1976 L*a*b*色空間におけるL*、a*、b*の値を測定した。
これらの測定値と上述のD50(μm)を下記(1)式に代入することにより、銀被覆金属粉末を構成する粒子(銀被覆金属粒子)の金属コアの露出程度を表す指標であるA値を算出した。
A=L*/a*/(D50^1.45) …(1)
(TG変化率)
示差熱熱重量同時測定装置(SIIナノテクノロジー株式会社のEXATERTG/DTA6300型)により加熱時の重量増加率を求めた。具体的には、20mgの銀被覆金属粉末(試料粉末)を試料容器(アルミナオープン型試料容器φ5.2mm、高さ2.5mm)に入れ、その容器を前記測定装置のホルダにセットし、測定装置内に流量200mL/minで空気を流しながら、室温(25℃)から昇温速度5℃/minで650℃まで昇温して大気雰囲気中での重量変化曲線を得た。この重量変化曲線において、所定温度(200℃または300℃)に到達したときの重量をW1(g)として読み取り、下記(3)式によりその温度までのTG変化率(%)とした。ここでは200℃までのTG変化率と300℃までのTG変化率を求めた。
TG変化率(%)=100×(W1−W0)/W0 …(3)
ここで、W0は加熱試験前の試料粉末の重量(g)、W1は所定温度まで昇温した時点の試料粉末の重量(g)である。
(導電性塗料の作製)
銀被覆金属粉末(試料粉末)93gと、熱硬化性樹脂であるビスフェノールF型エポキシ樹脂(株式会社ADEKA製のアデカレジンEP−4901E)8.2gと、三フッ化ホウ素モノエチルアミン0.41gと、溶剤であるブチルカルビトールアセテート2.5gと、オレイン酸0.1gとを混練脱泡機で混合した後、三本ロールを5回パスして均一に分散させることによってペースト状の導電性塗料(導電性ペースト)を得た。
(導電膜の作製)
上記の導電性塗料(導電性ペースト)をスクリーン印刷法によって線幅500μm、線長37.5mmのパターンを持つ厚さ20μmのスクリーン版でアルミナ基板上に印刷した後、大気中において200℃で40分間焼成して硬化させることによって導電膜を得た。
(導電膜の導電性評価)
得られた導電膜について、導電膜形成直後の体積抵抗率(以下「初期抵抗」という。)、および導電膜を大気雰囲気中150℃で7日間保持した後の体積抵抗率(以下「加熱保持試験後の抵抗」という。)を求めた。導電膜の体積抵抗率は、導電膜のライン抵抗をデジタルマルチメーター(エーディーシー社製のAD7451A)により測定し、膜厚を表面粗さ形状測定機(株式会社東京精密製のサーフコム1500DX型)により測定して、下記(4)式により算出した。
体積抵抗率(Ω・cm)=ライン抵抗(Ω)×膜厚(cm)×線幅(cm)/線長(cm) …(4)
また、導電膜の抵抗増加率を下記(4)式により求めた。
抵抗増加率(%)=100×(R1−R0)/R0 …(4)
ここで、R0は上記の初期抵抗(Ω・cm)、R1は上記の加熱保持試験後の抵抗(Ω・cm)である。
以上の結果を表1に示す(以下の各例において同じ)。
[実施例2]
銀被覆金属粉末の作製において、置換反応時に添加する銀イオン含有液として、実施例1で用意した硝酸銀水溶液中にヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸150.7gと純水1101gを追加したものを使用した。それ以外は実施例1と同様の条件として実験を行った。
[実施例3]
銀被覆金属粉末の作製において、銅粉末粒子表面の洗浄時間を120分から30分に変更した以外は実施例1と同様の条件にて実験を行った。
[比較例1]
(銀被覆金属粉末の作製)
キレート剤としてエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム50質量%溶液112.6gとpH緩衝剤として炭酸アンモニウム129.2gを純水1939gに溶解させた。この溶液の液温を25℃に調整し、撹拌しながら350gの銅粉末(上記の金属コア粉末)を加えることで銅粉末のスラリーを作製した。このスラリーのpHは8.6であった。
上記のスラリーに窒素ガスを吹き込みながら25℃で30分間保持することにより、銅粉末粒子の表面をpH8.6のアルカリ性環境下で洗浄した。
銀イオン含有液として、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム50質量%水溶液735gと炭酸アンモニウム175gとを純水1317gに溶解させた溶液に、硝酸銀61.2gを添加して溶解させた水溶液を用意した。この銀イオン含有液を、上記の洗浄を終えたスラリーに10分間かけて連続添加し、置換反応を進行させた。反応中、前記の窒素ガス吹き込みを継続した。反応中の液温は概ね25℃に維持した。置換反応終了時期の判断方法は実施例1と同様である。置換反応終了後の反応液のpHは8.8であった。置換反応が終了した反応液を濾過し、回収された固形分を水洗し、乾燥、解砕することによって、銀被覆金属粉末を得た。
このようにして得られた銀被覆金属粉末を用いて、実施例1と同様の条件にて実験を行った。
[比較例2]
銀被覆金属粉末の作製において、銅粉末のスラリーを作製する際に添加するヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸の量を170.2gから85.1gに変更した以外は実施例1と同様の条件にて実験を行った。
[比較例3]
銀被覆金属粉末の作製において、銅粉末のスラリーを作製する際に添加する酒石酸の量を386.3gから772.5gに変更した以外は実施例1と同様の条件にて実験を行った。
Figure 2021055142
表1中には、参考のため金属コア粉末についても一部の測定項目の結果を示してある。
本発明に従う実施例の銀被覆金属粉末はいずれも、A値が高く、それらの銀被覆金属粉末を導電フィラーに用いた導電膜は、従来の方法で得られた銀被覆金属粉末を用いた比較例1の導電膜と比べ、初期抵抗および加熱保持試験前後の抵抗増加率が顕著に低減した。
比較例1は、銀被覆層をpH8.6〜8.8という高いpH域で形成させた従来例であり、A値が低い銀被覆金属粉末が得られた。その結果、導電膜の初期抵抗および加熱保持試験前後の抵抗増加率は、上記実施例より大幅に劣っていた。
比較例2、3は、銀被覆金属粉末の製造条件を振って、A値を低下させたものである。比較例1(従来例)に対する、導電膜初期抵抗および抵抗増加率の改善効果は、A値が本発明規定範囲にある上記実施例と比べ、小さかった。

Claims (8)

  1. 銅含有量が80質量%以上である金属コア粒子と、その金属コア粒子を被覆する銀の被覆層とを有する金属粒子の粉末であって、
    前記粉末のタッピングにより平らにした面について、色差計により正反射光除去モードで測定されるCIE 1976 L*a*b*色空間におけるL*、a*の値と、前記粉末のレーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50(μm)とで表される下記(1)式のA値が4.0以上である、銀被覆金属粉末。
    A=L*/a*/(D50^1.45) …(1)
  2. 前記D50が0.1〜10.0μmである請求項1に記載の銀被覆金属粉末。
  3. 下記(2)式で定義されるB値が0.5〜2.5である粒度分布を有する請求項1または2に記載の銀被覆金属粉末。
    B=(D90−D10)/D50 …(2)
    ここで、D10、D50およびD90はそれぞれ、レーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積10%粒子径D10(μm)、累積50%粒子径D50(μm)および累積90%粒子径D90(μm)を意味する。
  4. 粉末に占める銀の質量割合が2.0〜30.0%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の銀被覆金属粉末。
  5. 粉末に占める銀の質量割合が5.0〜15.0%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の銀被覆金属粉末。
  6. キレート剤を含む水溶液と、銅含有量が80質量%以上である金属粒子の粉末を混合し、液のpHが2.3〜3.2である前記金属粒子のスラリーを作る工程(スラリー化工程)、
    前記スラリー中に銀イオンを導入し、スラリーの液のpHを2.3〜3.2に維持しながら金属粒子の表面に金属銀の被覆層を形成させる工程(銀被覆工程)、
    を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の銀被覆金属粉末の製造方法。
  7. キレート剤を含む水溶液と、銅含有量が80質量%以上である金属粒子の粉末を混合し、液のpHが2.3〜3.2である前記金属粒子のスラリーを作る工程(スラリー化工程)、
    前記スラリーを15〜70℃で10分以上保持することにより、スラリー中の金属粒子の表面を洗浄する工程(洗浄工程)、
    前記洗浄工程後のスラリー中に銀イオンを導入し、スラリーの液のpHを2.3〜3.2に維持しながら金属粒子の表面に金属銀の被覆層を形成させる工程(銀被覆工程)、
    を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の銀被覆金属粉末の製造方法。
  8. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の銀被覆金属粉末を導電フィラーに用いた導電性塗料。
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