JP2021054716A - 赤外線透過ガラス - Google Patents
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Abstract
【課題】赤外線透過率に優れ、赤外線センサー用途に好適なガラスを提供する。【解決手段】モル%で、Ge 34〜80%、Te 0〜66%(ただし0%を含まない)、S 0〜66%(ただし0%を含まない)、Ga+Sn+Ag+Cu+Bi+Sb 0〜50%、及びF+Cl+Br+I 0〜50%を含有することを特徴とする赤外線透過ガラス。【選択図】なし
Description
本発明は、赤外線センサー等に使用される赤外線透過ガラスに関する。
車載ナイトビジョンやセキュリティシステム等には、夜間の生体検知に用いられる赤外線センサーを備えている。赤外線センサーは、生体から発せられる波長約8〜14μmの赤外線を感知するため、センサー部の前には当該波長範囲の赤外線を透過するフィルターやレンズ等の光学素子が設けられる。
上記のような光学素子用の材料として、GeやZnSeが挙げられる。これらは結晶体であるため加工性に劣り、非球面レンズ等の複雑な形状に加工することが困難である。そのため量産しにくく、また赤外線センサーの小型化も困難であるという問題がある。
そこで、波長約8〜14μmの赤外線を透過し、加工が比較的容易なガラス質の材料として、カルコゲナイドガラスが提案されている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1に記載のガラスは、波長10μm以上で赤外線透過率が顕著に低下しているため、特に生体から発せられる赤外線に対する感度に劣り、赤外線センサーが十分に機能しないおそれがある。
以上に鑑み、本発明は、赤外線透過率に優れ、赤外線センサー用途に好適なガラスを提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、特定組成を有するカルコゲナイドガラスにより、前記課題を解決できることを見出した。
即ち、本発明の赤外線透過ガラスは、モル%で、Ge 34〜80%、Te 0〜66%(ただし0%を含まない)、S 0〜66%(ただし0%を含まない)、Ga+Sn+Ag+Cu+Bi+Sb 0〜50%、及びF+Cl+Br+I 0〜50%を含有することを特徴とする。なお、本明細書において、「○+○+・・・」は該当する各成分の含有量の合量を意味する。
本発明の赤外線透過ガラスは、Cd、Tl及びPbを実質的に含有しないことが好ましい。
本発明の赤外線透過ガラスは、厚み2mmでの赤外吸収端波長が20μm以上であることが好ましい。なお本発明において、「赤外吸収端波長」とは、波長8μm以上の赤外域において光透過率が0.5%となる波長をいう。
本発明の光学素子は、上記の赤外線透過ガラスを用いたことを特徴とする。
本発明の赤外線センサーは、上記の光学素子を用いたことを特徴とする。
本発明によれば、赤外線透過率に優れ、赤外線センサー用途に好適なガラスを提供することが可能となる。
本発明の赤外線透過ガラスは、モル%で、Ge 34〜80%、Te 0〜66%(ただし0%を含まない)、S 0〜66%(ただし0%を含まない)、Ga+Sn+Ag+Cu+Bi+Sb 0〜50%、及びF+Cl+Br+I 0〜50%を含有することを特徴とする。このようにガラス組成を規定した理由を以下に説明する。なお、以下の各成分の含有量の説明において、特に断りのない限り、「%」は「モル%」を意味する。
Geはガラス骨格を形成するための必須成分である。本発明の赤外線透過ガラスはGeを比較的多く含有することにより、熱的安定性(ガラス化の安定性)を高めている。Geの含有量は34〜80%であり、35〜70%であることが好ましく、36〜60%であることがより好ましく、36〜50%であることがさらに好ましい。Geの含有量が少なすぎると、ガラス化しにくくなる。一方、Geの含有量が多すぎると、Ge系結晶が析出して赤外線が透過しにくくなるとともに、原料コストが高くなる傾向がある。
カルコゲン元素であるTeはガラス骨格を形成する必須成分である。Teの含有量は0〜66%であり(ただし0%を含まない)、10〜65%であることが好ましく、20〜65%であることがより好ましい。Teの含有量が少なすぎると、ガラス化しにくくなる。一方、Teの含有量が多すぎると、Te系結晶が析出してガラス化しにくくなり、結果として赤外線が透過しにくくなる。
同じく、カルコゲン化物元素であるSは熱的安定性を高める必須成分である。Sの含有量は0〜66%(ただし0%を含まない)であり、1〜60%であることが好ましく、2〜50%であることがより好ましく、3〜40%であることがさらに好ましい。Sの含有量が少なすぎると、ガラス化しにくくなる。一方、Sの含有量が多すぎると、赤外吸収端波長が短波長側にシフトし、赤外透過特性が低下しやすくなる。
Ga、Sn、Ag、Cu、Bi、Sbは赤外線透過特性を低下させることなく、ガラスの熱的安定性を高める成分である。Ga+Sn+Ag+Cu+Bi+Sbの含有量は0〜50%であり、1〜40%であることが好ましく、2〜30%であることがより好ましく、3〜25%であることがさらに好ましく、5〜20%であることが特に好ましい。Ga+Sn+Ag+Cu+Bi+Sbの含有量が少なすぎる、あるいは多すぎると、ガラス化しにくくなる。なお、Ga、Sn、Ag、Cu、Bi、Sbの各成分の含有量は、各々0〜50%であり、0〜50%(ただし0%を含まない)であることが好ましく、1〜40%であることがより好ましく、2〜30%であることがさらに好ましく、3〜25%であることが特に好ましく、5〜20%であることが最も好ましい。なかでもガラスの熱的安定性を高める効果が特に大きいという点で、Ag、SnまたはCuを使用することが好ましい。
F、Cl、Br、Iもガラスの熱的安定性を高める成分である。F、Cl、Br、Iの含有量は0〜50%であり、1〜40%であることが好ましく、1〜30%であることがより好ましく、1〜25%であることがさらに好ましく、1〜20%であることが特に好ましい。F+Cl+Br+Iの含有量が多すぎると、ガラス化しにくくなるとともに、耐候性が低下しやすくなる。なお、F、Cl、Br、Iの各成分の含有量は、各々0〜50%であり、1〜40%であることが好ましく、1〜30%であることがより好ましく、1〜25%であることがさらに好ましく、1〜20%であることが特に好ましい。なかでも元素原料を使用可能であり、ガラス安定性を高める効果が特に大きいという点で、Iを使用することが好ましい。
本発明の赤外線透過ガラスには、上記成分以外にも、下記の成分を含有させることができる。
Zn、In、Pはガラス化範囲を広げ、ガラスの熱的安定性を高める成分である。その含有量はそれぞれ0〜20%であることが好ましく、0.5〜10%であることがより好ましい。これらの成分の含有量が多すぎると、ガラス化しにくくなる。
Se、Asはガラス化範囲を広げ、ガラスの熱的安定性を高める成分である。その含有量はそれぞれ0〜10%であることが好ましく、0.5〜5%であることがより好ましい。ただし、これらの物質は毒性を有するため、環境や人体への影響を低減する観点からは含有しないことが好ましい。
なお、本発明の赤外線透過ガラスは有毒物質であるCd、Tl及びPbを実質的に含有しないことが好ましい。このようにすれば、環境面への影響を最小限に抑えることができる。ここで、「実質的に含有しない」とは、意図的に原料中に含有させないという意味であり、不純物レベルの混入を排除するものではない。客観的には、各成分の含有量が0.1%未満を指す。
本発明の赤外線透過ガラスは波長約8〜18μmにおける赤外線透過率に優れる。赤外線透過率を評価するための指標として、赤外吸収端波長が挙げられる。赤外吸収端波長が大きいほど、赤外線透過性に優れると判断できる。本発明の赤外透過ガラスの厚み2mmでの赤外吸収端波長は20μm以上であることが好ましく、21μm以上であることがより好ましい。
本発明の赤外線透過ガラスは、例えば以下のようにして作製することができる。まず、所望の組成となるように原料を調合する。加熱しながら真空排気を行った石英ガラスアンプルに原料を入れ、真空排気を行いながら酸素バーナーで封管する。封管された石英ガラスアンプルを650〜1000℃程度で6〜12時間保持した後、室温まで急冷することにより本発明の赤外線透過ガラスが得られる。
原料としては、元素原料(Ge、Te、S、Ag、I等)を用いてもよく、化合物原料(GeTe4、GeS2、AgI等)を用いても良い。また、これらを併用することも可能である。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1〜3は本発明の実施例及び比較例をそれぞれ示している。
各試料は次のようにして調製した。表1〜3に記載のガラス組成となるように、原料を混合し、原料バッチを得た。純水で洗浄した石英ガラスアンプルを加熱しながら真空排気した後、原料バッチを入れ、真空排気を行いながら酸素バーナーで石英ガラスアンプルを封管した。
封管された石英ガラスアンプルを溶融炉内で10〜20℃/時間の速度で650〜1000℃まで昇温後、6〜12時間保持した。保持時間中、2時間ごとに石英ガラスアンプルの上下を反転し、溶融物を攪拌した。その後、石英ガラスアンプルを溶融炉から取り出し、室温まで急冷することにより試料を得た。
得られた試料についてX線回折を行い、その回折スペクトルからガラス化しているかどうかを確認した。表中には、ガラス化しているものは「○」、ガラス化していないものは「×」として表記した。また、各試料につき厚み2mmでの光透過率を測定し、赤外吸収端波長を測定した。
表1、2に示すように、実施例1〜14の試料はガラス化しており、赤外吸収端波長が24.1〜24.4μmであり、波長8〜18μm付近の赤外領域において良好な光透過率を示していた。
一方、比較例1〜4の試料はガラス化しておらず、波長2〜24μmの範囲で光透過率がほぼ0%であった。
本発明の赤外線透過ガラスは、赤外線センサーのセンサー部を保護するためのカバー部材や、センサー部に赤外光を集光させるためのレンズ等の光学素子として好適である。
Claims (4)
- モル%で、Ge 37〜70%、Te 20〜50%、S 10〜40%、Ga+Sn+Ag+Cu+Bi+Sb 0〜30%、及びF+Cl+Br+I 0〜30%を含有するカルコゲナイドガラスからなることを特徴とする光学素子。
- 前記カルコゲナイドガラスが、Cd、Tl及びPbを実質的に含有しないことを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
- 前記カルコゲナイドガラスが、厚み2mmでの赤外吸収端波長が20μm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学素子。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の光学素子を用いたことを特徴とする赤外線センサー。
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泉谷徹郎, 光学ガラスとレーザガラス, JPN6020003209, 24 March 1998 (1998-03-24), JP, pages 182 - 183, ISSN: 0004683063 * |
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