JP2021053567A - ポリイミド膜の製造方法及び金属張積層板の製造方法 - Google Patents

ポリイミド膜の製造方法及び金属張積層板の製造方法 Download PDF

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Toshihiro Morimoto
敏弘 森本
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智典 安藤
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Abstract

【課題】 熱イミド化によってポリイミド膜を形成する際に、発泡を効果的に抑制できるポリイミド膜の製造方法を提供する。【解決手段】 基材上にポリアミド酸溶液を塗布することによって形成した塗布膜を熱処理してポリイミド膜を形成するポリイミド膜の製造方法であって、塗布膜中に含まれる溶媒量を10重量%以下まで低減させるとともに、塗布膜中に含まれるポリアミド酸のイミド化率が40%以上95%未満の範囲内となるまで熱処理を行う第1の熱処理工程を含む。第1の熱処理工程における熱処理は赤外線照射によって行ってもよく、第1の熱処理工程における熱処理容器中の雰囲気温度をT1、溶媒の発火点をTFとしたとき、TF×0.6<T1<TF×0.9に調節して熱処理を行う。【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリイミド膜の製造方法及び金属張積層板の製造方法に関する。
ポリイミドは、高い絶縁性、寸法安定性、易成形性、軽量等の特徴を有するために、回路基板などの材料として電子、電気機器や電子部品に広く用いられている。ポリイミドは、一般に、フィルム状(ポリイミドフィルム)や、任意の基材に積層された層状(ポリイミド層)などの形態で用いられる。なお、本発明では、ポリイミドフィルムやポリイミド層などの薄膜状の形態を総称して「ポリイミド膜」と記すことがある。ポリイミド膜の形成方法として、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の樹脂溶液を基材上に塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥、イミド化することによってポリイミド膜を得る方法(いわゆるキャスト法)が知られている。イミド化の方法として、熱イミド化、化学イミド化などが知られているが、ポリイミド膜の厚みや物性の制御がしやすい熱イミド化が好ましく用いられている。
熱イミド化の場合、ポリアミド酸の塗布膜に対して、120℃〜140℃程度の温度で熱処理を行って溶媒を除去する乾燥処理と、200℃を超える温度で熱処理を行ってイミド化させる硬化処理を順次行っていた。塗布膜に対する熱処理の方法として、主としてイミド化を目的とするものであるが、塗布膜の厚み方向での均一な加熱が可能な赤外線(IR)照射を利用することが提案されている(例えば、特許文献1〜3)。
しかし、塗布膜中の溶媒残存量が多い状態でイミド化のため高温での熱処理を行うと、発泡が生じることがあった。また、複数のポリイミド層が積層されたポリイミド膜を形成する場合には、一層目の塗布膜を乾燥させた後、その上に、さらに2層目以降のポリアミド酸の樹脂溶液を塗布して乾燥させる工程を繰り返した後、複数の塗布膜を一括して熱処理してイミド化することが行われる。この場合、下層に含まれる残存溶媒によって上層との境界に発泡が生じることがある。
発泡が生じると、ポリイミド膜の外観だけでなく、絶縁性や耐久性なども損なわれることから、歩留まりを低下させる原因となるため、ポリイミド膜の製造において、その対策が望まれていた。
特許第5781236号公報 WO2018/012609 特許第5536202号公報
従って、本発明の目的は、熱イミド化によってポリイミド膜を形成する際に、発泡を効果的に抑制できるポリイミド膜の製造方法を提供することである。
本発明者らは、鋭意研究の結果、乾燥処理後の残存溶媒量を従来の製造プロセスに比べて低減しておくことによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明のポリイミド膜の製造方法は、基材上にポリアミド酸溶液を塗布することによって形成した塗布膜を熱処理してポリイミド膜を形成するポリイミド膜の製造方法であって、
前記塗布膜中に含まれる溶媒量を10重量%以下まで低減させるとともに、塗布膜中に含まれるポリアミド酸のイミド化率が40%以上95%未満の範囲内となるまで熱処理を行う第1の熱処理工程を含むことを特徴とする。
本発明のポリイミド膜の製造方法は、前記第1の熱処理工程において、前記塗布膜中に含まれる溶媒量を0.3重量%以下まで低減させてもよい。
本発明のポリイミド膜の製造方法は、前記第1の熱処理工程において、イミド化率が50%以上90%以下の範囲内となるまで熱処理を行ってもよい。
本発明のポリイミド膜の製造方法は、前記塗布膜の厚みが、イミド化後の厚みとして2〜6μmの範囲内であってもよい。
本発明のポリイミド膜の製造方法は、前記第1の熱処理工程における熱処理を赤外線照射によって行うとともに、第1の熱処理工程における熱処理容器中の雰囲気温度をT、溶媒の発火点をTとしたとき、
×0.6<T<T×0.9
に調節して熱処理を行ってもよい。
本発明のポリイミド膜の製造方法は、前記赤外線照射と加熱気体による送風を併用し、加熱気体の温度をT、溶媒の沸点をTとしたとき、
−50℃<T<T
に調節して熱処理を行ってもよい。
本発明のポリイミド膜の製造方法は、前記ポリアミド酸が、酸無水物成分とジアミン成分とを反応させて得られるものであってもよい。この場合、前記酸無水物成分の全量に対してビフェニルテトラカルボン酸二無水物を40モル%以上含有してもよく、
前記ジアミン成分の全量に対して下記の一般式(B1)〜(B7)で表されるジアミン化合物から選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物を70モル%以上含有してもよい。
Figure 2021053567
式(B1)〜(B7)において、Rは独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、連結基Aは−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO−、−COO、−CH−、−C(CH−、NH−若しくは−CONH−から選ばれる2価の基を示し、nは独立に0〜4の整数を示す。ただし、式(B3)中から式(B2)と重複するものは除き、式(B5)中から式(B4)と重複するものは除くものとする。
本発明のポリイミド膜の製造方法は、前記熱処理として、前記第1の熱処理工程の後に、ポリアミド酸のイミド化を完結させる第2の熱処理工程をさらに含んでもよい。この場合、支持基材にポリアミド酸溶液を塗布することによって塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、前記第1の熱処理工程と、を複数回繰り返した後、前記第2の熱処理工程を行ってもよい。
本発明の金属張積層板の製造方法は、金属層と、該金属層に積層されたポリイミド膜と、を有する金属張積層板の製造方法であって、前記ポリイミド膜を、上記いずれかのポリイミド膜の製造方法により形成することを特徴とする。
本発明によれば、乾燥処理後の残存溶媒量を従来の製造プロセスに比べて低減しておくことによって、ポリイミド膜を形成する際の発泡を効果的に抑制できる。そのため、歩留まりの向上と、製品の信頼性の向上が図られ、ポリイミド膜の製造プロセスの効率化が実現できる。従って、本発明方法は、特に、工業的規模のポリイミド膜の製造プロセスにおいて有用であり、利用価値が高い。
本発明の一実施の形態に係るポリイミド膜の製造方法は、
(1)支持基材にポリアミド酸溶液を塗布することによって塗布膜を形成する塗布膜形成工程、
(2)塗布膜に対し熱処理を行って乾燥させる第1の熱処理工程、
(3)乾燥後の塗布膜に対し熱処理を行ってポリアミド酸をイミド化してポリイミド膜を形成する第2の熱処理工程、
を含むことができる。
本実施の形態の方法によって得られるポリイミド膜は、単層でもよいし、複数層からなるものでもよい。複数のポリイミド層が積層されたポリイミド膜を形成する場合は、第2の熱処理工程の前に、塗布膜形成工程と第1の熱処理工程を繰り返し実施することができる。すなわち、支持基材に、ポリアミド酸溶液を塗布し、乾燥することを複数回繰り返し、複数の塗布膜を積層した状態としてから、第2の熱処理工程を実施し、複数の塗布膜中のポリアミド酸を一括してイミド化することが好ましい。
以下、各工程について、詳細に説明する。
[塗布膜形成工程]
塗布膜形成工程では、支持基材にポリアミド酸溶液を塗布することによって塗布膜を形成する。
支持基材としては、例えば、銅箔などの金属箔、ガラス板、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルムなどの樹脂シート等を用いることができる。
ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸は、例えば、原料モノマーである酸二無水物とジアミン化合物をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0〜100℃の範囲内の温度で30分〜24時間撹拌し重合反応させることによって得られる。
原料モノマーとしては、特に制限はなく、一般にポリアミド酸(ポリイミド)の合成に用いられる酸二無水物とジアミン化合物を使用することができる。ポリアミド酸の重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、2−ブタノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。また、有機溶媒の使用量としては特に制限されるものではないが、重合反応によって得られるポリアミド酸溶液の濃度が5〜30重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
合成されたポリアミド酸は、通常、反応溶媒溶液として使用することができるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。これらの中のいずれも、ポリアミド酸溶液として用いることができる。また、ポリアミド酸溶液としては、市販されているものを使用してもよい。
ポリアミド酸溶液中には、必要に応じてフィラーを含有してもよい。好ましいフィラーとしては、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
ポリアミド酸溶液を支持基材上に塗布する方法としては特に制限されず、例えばコンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターを用いることが好ましい。
ポリアミド酸溶液の粘度は、例えば500cps〜100,000cpsの範囲内とすることが好ましい。この範囲を外れると、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。
塗布膜形成工程における塗布膜の厚みは、最終的に得られるポリイミド膜の膜厚に応じて適宜設定できるため特に限定する趣旨ではないが、イミド化後の厚み(ここでは、支持基材に接するポリイミド層の厚み)として、好ましくは2〜6μmの範囲内、より好ましくは2〜4μmの範囲内となるように塗布することがよい。このような薄膜であれば、次の第1の熱処理工程において目標となる溶媒残存量まで短時間で乾燥が可能となるため、高スループットでポリイミド膜の製造が可能になる。
[第1の熱処理工程]
第1の熱処理工程では、塗布膜に対し熱処理を行って塗布膜を乾燥させる。本工程は、塗布膜中に含まれる溶媒量を10重量%以下まで低減させる。塗布膜中に含まれる溶媒量を10重量%以下まで低下させておくことによって、少なくとも単層のポリイミド膜の形成においては発泡を効果的に抑制できる。
さらに、本工程では、原料モノマー組成に応じて、塗布膜中に含まれる溶媒量を1重量%以下まで低減させることが好ましく、0.3重量%以下まで低減させることがより好ましい。溶媒量を1重量%以下まで下げることによって、複数の塗布膜を積層する場合でも、発泡をほぼ完全に抑制できる。
また、第1の熱処理工程では、イミド化率が40%以上95%未満の範囲内となるまで熱処理を行う。本工程でポリアミド酸を完全に硬化させないことによって、第2の熱処理工程での物性制御の余地を残すことができる。つまり、本工程でイミド化を完結させないことによって、第2の熱処理工程でポリイミド膜の配向性、リタデーション、熱膨張係数(CTE)などの物性を所望の状態に調節できるため、一工程で塗布膜の乾燥からポリアミド酸のイミド化の完結まで実施する場合に比べて有利となる。かかる観点から、第1の熱処理工程では、イミド化率を50%以上90%以下の範囲内に調節することが好ましく、60%以上90%以下の範囲内に調節することがより好ましい。ここで、イミド化率は、フーリエ変換赤外分光光度計を用い、一回反射ATR法にて樹脂層の赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1009cm−1のベンゼン環炭素水素結合を基準とし、1778cm−1のイミド基由来の吸光度から算出することができる。イミド化率は、ポリアミド酸に対し、120℃から360℃までの段階的な熱処理を10分間かけて行ったときの360℃で熱処理後のイミド化率を基準とし、このときのイミド化率を100%とする。
第1の熱処理工程における加熱手段としては、塗布膜を所定温度まで加熱できるものであれば特に制限はないが、省スペースであり、短時間で厚み方向にむらなく加熱が可能な赤外線(IR)照射による加熱が好ましい。使用する赤外線の最大放射エネルギー波長は、塗布膜中に含まれるN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)やN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの有機溶媒の吸収波長である3〜8μm程度が好ましい。
また、赤外線(IR)照射によって熱処理を行う場合、第1の熱処理工程における熱処理容器中の雰囲気温度をT、溶媒の発火点をTとしたとき、
×0.6<T<T×0.9
の範囲内に調節して熱処理を行うことが好ましい。雰囲気温度Tが上記範囲内であるとき、安全かつ短時間で効果的に熱エネルギーを供給できる。例えば、有機溶媒がN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)である場合は、発火点Tが490℃であるため、294℃を超え441℃未満の雰囲気温度の範囲となるように加熱することが好ましい。また、有機溶媒がN−メチル−2−ピロリドン(NMP)である場合は、発火点Tが245℃であるため、147℃を超え221℃未満の雰囲気温度の範囲となるように加熱することが好ましい。
なお、本明細書において「熱処理温度」や「加熱温度」は、特に断りのない限り、熱処理容器中の雰囲気温度を意味する。
第1の熱処理工程では、加熱手段である赤外線照射に、送風を併用することが好ましい。送風による攪拌効果によって熱処理容器中の雰囲気を均一化し、塗布膜の加熱温度を均一化する効果が得られる。
また、送風は、加熱気体により行うことが好ましい。この場合、加熱気体の温度をT、溶媒の沸点をTとしたとき、
−50℃<T<T
に調節して熱処理を行うことがより好ましい。例えば、有機溶媒がN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)である場合は、沸点Tが166℃であることから、116℃を超え166℃未満の温度範囲の加熱気体を送風することが好ましい。また、有機溶媒がN−メチル−2−ピロリドン(NMP)である場合は、沸点Tが202℃であることから、152℃を超え202℃未満の温度範囲の加熱気体を送風することが好ましい。
加熱気体の温度Tを溶媒の沸点Tよりも50℃以内低い温度に設定することによって、熱処理の初期(昇温段階)においては、塗布膜の温度上昇をアシストする作用が奏される。また、熱処理容器内の雰囲気温度が上昇し、溶媒の揮散が進んだ段階では、熱処理容器内の雰囲気の攪拌・置換効果に加え、赤外線照射によって上昇し過ぎた雰囲気温度を下げる温度調節作用が奏される。これらの作用によって、より短時間で高精度の温度管理による熱処理が実現する。
なお、加熱気体としては、加熱空気や、加熱した窒素ガスなどの不活性ガスを用いることが好ましい。
以上のように、第1の熱処理工程では、塗布膜中の溶媒残存量を出来るだけ低減させておくことによって複数の塗布膜を積層する場合の発泡を効果的に抑制するとともに、ポリアミド酸を完全に硬化させないことによって、後の工程での物性制御の余地を残しておくことにより、発泡の抑制とポリイミド膜の物性制御との両立を図ることができる。
[第2の熱処理工程]
第2の熱処理工程は、乾燥後の塗布膜に対し熱処理を行ってポリアミド酸をイミド化してポリイミド膜を形成する。本工程では、ポリアミド酸のイミド化を完結させる。ポリアミド酸のイミド化を完結させる条件は、特に制限されず、例えば80〜400℃の範囲内の温度条件で3〜10分間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。ここで、イミド化の完結は、ポリアミド酸に対し、120℃から360℃までの段階的な熱処理を10分間かけて行ったときの360℃で熱処理後のイミド化率を基準とし、このときのイミド化率を100%(完結)とする。なお、イミド化率は、上述の方法で測定、算出される値である。
本工程における熱処理の方法は、所望の温度まで塗布膜を加熱できるものであればよく、例えば熱風加熱、赤外線(IR)照射による加熱などを好ましく利用できる。
本工程では、熱処理によってイミド化を完結させるとともに、熱処理の温度、時間などの条件を細かく設定することによって、例えば、ポリイミド膜の配向性、リタデーション、熱膨張係数(CTE)などの物性を、その使用目的に応じて所望の状態に調節できる。それに対して、1回目の熱処理工程でイミド化を完結させてしまった場合には、2回目の熱処理工程を実施しても物性制御の自由度が小さく、所望の物性を持つポリイミド膜が得られない。
本工程では、支持基材上でポリアミド酸のイミド化を完結させることが好ましい。ポリアミド酸の塗布膜が支持基材に固定された状態でイミド化されるので、形成されるポリイミド膜の伸縮変化を抑制して、ポリイミド膜の厚みや寸法精度を維持することができる。
従来のポリイミド膜の製造プロセスでは、塗布膜の乾燥処理での溶媒残存量とイミド化率との関係について考慮されていなかった。そのため、例えば、イミド化率のみを指標とする場合は、発泡抑制の観点で不十分な乾燥状態(溶媒残存量)であったり、溶媒残存量のみを指標とする場合は、イミド化が進行し過ぎてしまい、後に続くイミド化処理で物性制御の自由度が小さくなって所望の物性を得ることが困難になったりしていた。
本発明者らは、ある溶媒残存量のときのイミド化率が、ポリアミド酸の原料モノマー組成によって大きく異なるとの知見に基づき、
(i)原料モノマー組成により、後の工程での物性制御の自由度の観点で最適なイミド化率となる溶媒残存量の範囲があること、
(ii)原料モノマー組成にかかわらず、後の工程での物性制御の自由度の観点で概ね許容可能なイミド化率となる溶媒残存量の範囲があること、
を見出した。
このように、本発明は、塗布膜中の溶媒残存量を従来の製造プロセスよりも低く設定して発泡の低減(好ましくは、複数の塗布膜を積層する場合の発泡の完全な抑制)を実現としつつ、後の工程での物性制御を可能としたものである。
なお、第1の熱処理工程と第2の熱処理工程を区別せず、一工程の熱処理で塗布膜の乾燥からポリアミド酸のイミド化の完結まで行おうとすると、上記のとおり、ポリイミド膜の物性制御が困難になるとともに、溶媒を多量に含んだ塗布膜を常温からイミド化温度まで加熱することになるため、ポリイミド膜の面内及び厚み方向で温度分布が生じ、ポリイミド膜の厚みの均一化や物性の均一化が困難となる。また、一工程の熱処理で塗布膜の乾燥からポリアミド酸のイミド化完結まで行うと、ポリイミド膜を多層構造とする場合に、すでにイミド化されたポリイミド膜の上に塗布膜を形成することになるため、層間の接着性が得られにくくなる。
上記のとおり、第1の熱処理工程では、原料モノマー組成に応じて、塗布膜中に含まれる溶媒量を1重量%以下まで低減させることが好ましく、0.3重量%以下まで低減させることがより好ましい。ここで、特定の原料モノマー組成については、塗布膜中に含まれる溶媒量を1重量%以下、例えば0重量%まで低減させても、イミド化が完結しないものがある。そのような原料モノマー組成は、特に本発明方法への適合性が高いと考えられる。その代表例である原料モノマー組成Xについて説明する。
組成Xは、酸無水物成分の全量に対してビフェニルテトラカルボン酸二無水物を40モル%以上、好ましくは40モル%以上100モル%の範囲内、より好ましくは50モル%以上100モル%の範囲内で含有し、ジアミン成分の全量に対して下記の一般式(B1)〜(B7)で表されるジアミン化合物から選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物を70モル%以上、好ましくは、70〜100モル%の範囲内で含有する。この組成Xは、塗布膜中の残存溶媒量が0重量%になっても、イミド化率が60〜90%程度までしか進行せず、イミド化が完結しない。その理由は未だ明らかではないが、組成Xは、剛直な分子構造によって秩序構造を形成しやすいビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、高い屈曲性を有する分子構造を持つジアミン化合物を、いずれも豊富に含有しているため、イミド化反応の進行速度が遅くなるものと推測される。そのため、組成Xは、第2の熱処理工程での物性制御の自由度が非常に大きく、しかも、複数の塗布膜を積層する場合でも発泡をほぼ完全に抑制できることから、本発明方法への適合性が極めて高いモノマー組成である。
Figure 2021053567
式(B1)〜(B7)において、Rは独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、連結基Aは−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO−、−COO、−CH−、−C(CH−、NH−若しくは−CONH−から選ばれる2価の基を示し、nは独立に0〜4の整数を示す。ただし、式(B3)中から式(B2)と重複するものは除き、式(B5)中から式(B4)と重複するものは除くものとする。
酸無水物成分の全量に対してビフェニルテトラカルボン酸二無水物が40モル%未満であると、上記作用効果が発揮されない。ここで、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、例えば3,3',4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。
モノマー組成Xは、上記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物以外の酸無水物を含むこともできる。その他の酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、2,2',3,3'-、2,3,3',4'-又は3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物等が挙げられる。
ジアミン成分の全量に対して、一般式(B1)〜(B7)で表されるジアミン化合物から選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物が70モル%未満であると、上記作用効果が得られない。
式(B1)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B1)」と記すことがある)は、2つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B1)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。
ジアミン(B1)としては、例えば、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、(3,3’-ビスアミノ)ジフェニルアミン等を挙げることができる。
式(B2)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B2)」と記すことがある)は、3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B2)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。
ジアミン(B2)としては、例えば1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、3-[3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン等を挙げることができる。
式(B3)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B3)」と記すことがある)は、3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B3)は、1つのベンゼン環に直結した、2つの2価の連結基Aが互いにメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。
式(B3)で表されるジアミンとしては、例えば1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4'-[2-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[4-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[5-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン等を挙げることができる。
式(B4)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B4)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B4)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。
式(B4)で表されるジアミンとしては、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4'-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド等を挙げることができる。
式(B5)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B5)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B5)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結した、2つの2価の連結基Aが互いにメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。
ジアミン(B5)としては、4-[3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]フェノキシ]アニリン、4,4’-[オキシビス(3,1-フェニレンオキシ)]ビスアニリン等を挙げることができる。
式(B6)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B6)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B6)は、少なくとも2つのエーテル結合を有することで高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。
式(B6)で表されるジアミンとしては、例えば、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン(BAPK)等を挙げることができる。
式(B7)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B7)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B7)は、ジフェニル骨格の両側に、それぞれ屈曲性の高い2価の連結基Aを有するため、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。
式(B7)で表されるジアミンとしては、例えば、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル等を挙げることができる。
モノマー組成Xは、上記ジアミン(B1)〜ジアミン(B7)以外のジアミン化合物として、ポリイミドの原料モノマーとして用いられるジアミン化合物を含むことができる。好ましいジアミン化合物として、例えば、パラフェニレンジアミン(PDA)、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−TB)、2,2’−n−プロピル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−NPB)、2’−メトキシ−4,4’−ジアミノベンズアニリド(MABA)、4,4‘−ジアミノベンズアニリド(DABA)等を挙げることができる。
[金属張積層板]
本実施の形態の金属張積層板は、絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に設けられている金属層と、を備えており、絶縁樹脂層の一部分又は全部が、上記実施の形態の製造方法によって得られるポリイミド膜であればよい。絶縁樹脂層と金属層との接着性を高めるために、絶縁樹脂層における金属層に接する層は、熱可塑性ポリイミド層であることがよい。
金属層の材質としては、特に制限はないが、例えば、銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。この中でも、特に銅又は銅合金が好ましい。なお、後述する回路基板における配線層の材質も金属層と同様である。
金属層の厚みは特に限定されるものではないが、例えば銅箔に代表される金属箔を用いる場合、好ましくは35μm以下であり、より好ましくは5〜25μmの範囲内がよい。生産安定性及びハンドリング性の観点から金属箔の厚みの下限値は5μmとすることが好ましい。なお、銅箔を用いる場合は、圧延銅箔でも電解銅箔でもよい。また、銅箔としては、市販されている銅箔を用いることができる。
また、金属箔は、例えば、防錆処理や、接着力の向上を目的として、例えばサイディング、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤等による表面処理を施しておいてもよい。
[回路基板]
上記実施の形態の金属張積層板は、主にFPCなどの回路基板材料として有用である。すなわち、金属張積層板の金属層を常法によってパターン状に加工して配線層を形成することによって、回路基板を製造できる。
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
[粘度の測定]
粘度の測定は、E型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV−II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%〜90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから2分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
[重量平均分子量の測定]
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー株式会社製、商品名;HLC−8220GPC)により測定した。標準物質としてポリスチレンを用い、展開溶媒にはN,N−ジメチルアセトアミドを用いた。
[イミド化率の測定]
イミド化率は、フーリエ変換赤外分光光度計を用い、一回反射ATR法にて樹脂層の赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1009cm−1のベンゼン環炭素水素結合を基準とし、1778cm−1のイミド基由来の吸光度から算出することができる。ここでは、ポリアミド酸に対し、120℃から360℃までの段階的な熱処理を10分間かけて行い、360℃で熱処理後のイミド化率を100%とする。
[塗布膜の溶媒量の測定]
示差熱熱重量同時測定装置(セイコーインスツル社製、商品名;SSC/5200)を用い、一定の昇温速度で30℃から450℃まで昇温させ塗布膜の重量減少を測定した。塗布膜中に含まれる溶媒量は、100℃から400℃までの重量減少の割合を百分率で表した値である。
[ガラス転移温度(Tg)の測定]
ガラス転移温度は、5mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、動的粘弾性測定装置(DMA:ユー・ビー・エム社製、商品名;E4000F)を用いて、30℃から400℃まで昇温速度4℃/分、周波数11Hzで測定を行い、弾性率変化(tanδ)が最大となる温度をガラス転移温度とした。なお、DMAを用いて測定された30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、ガラス転移温度+30℃以内に貯蔵弾性率が3.0×10Pa未満を示すものを「熱可塑性」とし、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、ガラス転移温度+30℃までの間貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上を示すものを「非熱可塑性」とした。
[熱膨張係数(CTE)の測定]
厚み25μm、3mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、サーモメカニカルアナライザー(Bruker社製、商品名;4000SA)を用い、5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から300℃まで昇温させ、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、250℃から100℃までの平均熱膨張係数(熱膨張係数)を求めた。
実施例及び参考例に用いた略号は、以下の化合物を示す。
BPDA:3,3',4,4'‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
m‐TB:2,2'‐ジメチル‐4,4'‐ジアミノビフェニル
TPE−R:1,3-ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン
DMAc:N,N‐ジメチルアセトアミド(沸点;165℃、発火点;490℃)
NMP:N−メチル−2−ピロリドン(沸点;204℃、発火点;270℃)
(合成例1)
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、0.5715gのm−TB(0.0027モル)、14.958gのTPE−R(0.0512モル)及び170gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、3.489gのPMDA(0.0160モル)及び10.982gのBPDA(0.0373モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液aを得た。ポリアミド酸溶液aの溶液粘度は6,700cps、重量平均分子量は163,400であった。得られたポリアミド酸のイミド化後のポリイミドは熱可塑性であった。
(合成例2)
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、16.064gのTPE−R(0.0550モル)及び170gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、5.933gのPMDA(0.0272モル)及び8.003gのBPDA(0.0272モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液bを得た。ポリアミド酸溶液bの溶液粘度は7,400cpsであった。得られたポリアミド酸のイミド化後のポリイミドは熱可塑性であった。
(合成例3)
窒素気流下で、1000mlのセパラブルフラスコに、75.149gのm−TB(0.3534モル)、850gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、74.851gのPMDA(0.3428モル)を添加した後、室温で4時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液cを得た。得られたポリアミド酸溶液cの粘度は22,700cpsであった。得られたポリアミド酸のイミド化後のポリイミドは非熱可塑性であった。また、得られたポリイミドフィルム(厚み;25μm)のCTEは6.4ppm/Kであった。
(合成例4)
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、0.5715gのm−TB(0.0027モル)、14.958gのTPE−R(0.0512モル)及び170gのNMPを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、3.489gのPMDA(0.0160モル)及び10.982gのBPDA(0.0373モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液dを得た。ポリアミド酸溶液dの溶液粘度は6,700cps、重量平均分子量は163,400であった。
(合成例5)
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、16.064gのTPE−R(0.0550モル)及び170gのNMPを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、5.933gのPMDA(0.0272モル)及び8.003gのBPDA(0.0272モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液eを得た。ポリアミド酸溶液eの溶液粘度は7,400cpsであった。
[実施例1]
厚み12μmの銅箔上に、ポリアミド酸溶液aを硬化後の厚みが3μmとなるように均一に塗布した後、条件1(最大放射エネルギー波長;3〜7μm、雰囲気温度;240℃)の赤外線照射及び炉内供給熱風温度が120℃の熱風の送風によって120℃から240℃まで、30秒間、段階的に昇温させて溶媒の除去を行って塗布膜1を形成した。このときの塗布膜1のイミド化率は80%、溶媒量は0重量%であり、塗布膜1の発泡は確認されなかった。
次に、塗布膜1の上に、ポリアミド酸溶液cを硬化後の厚みが25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で3分間加熱乾燥して溶媒を除去した。その後、130℃から360℃まで段階的に昇温させてイミド化を行い、2層のポリイミド層を形成することによって、金属張積層板1を調製したが、発泡は確認されなかった。調製した金属張積層板1の樹脂面に粘着テープを貼り、垂直方向に瞬間的に引き剥がしによる剥離試験を行ったが、ポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
[実施例2]
厚み12μmの銅箔上に、ポリアミド酸溶液dを硬化後の厚みが3μmとなるように均一に塗布した後、条件2(最大放射エネルギー波長;3〜7μm、雰囲気温度;200℃)の赤外線照射及び炉内供給熱風温度が180℃の熱風の送風によって180℃から200℃まで、30秒間、段階的に昇温させて溶媒の除去を行って塗布膜2を形成した。このとき塗布膜2のイミド化率は80%、溶媒量は0重量%であり、塗布膜2の発泡は確認されなかった。
実施例1と同様にして、塗布膜2の上にポリアミド酸溶液cを塗布し、乾燥後、イミド化して2層のポリイミド層を形成することで、金属張積層板2を調製したが、発泡は確認されなかった。また、剥離試験によるポリイミド層の層間の剥離も見られなかった。
[実施例3]
ポリアミド酸溶液aの硬化後の厚みを10μmとしたこと以外、実施例1と同様にして、塗布膜3を形成した。このときの塗布膜3のイミド化率は40%、溶媒量は10重量%であり、塗布膜3の発泡は確認されなかった。
実施例1と同様にして、塗布膜3の上にポリアミド酸溶液cを塗布し、乾燥後、イミド化して2層のポリイミド層を形成することで、金属張積層板3を調製したところ、発泡が確認された。
[実施例4]
赤外線照射の条件を条件3(最大放射エネルギー波長;3〜7μm、雰囲気温度;180℃)とし、炉内供給熱風温度が120℃の熱風の送風によって120℃から180℃まで、30秒間、段階的に昇温させて溶媒の除去を行ったこと以外、実施例1と同様にして、塗布膜4を形成した。このときの塗布膜4のイミド化率は45%、溶媒量は5重量%であり、塗布膜4の発泡は確認されなかった。
実施例1と同様にして、塗布膜4の上にポリアミド酸溶液cを塗布し、乾燥後、イミド化して2層のポリイミド層を形成することで、金属張積層板4を調製したところ、発泡が確認された。
[実施例5]
赤外線照射の条件を条件1とし、炉内供給熱風温度が80℃の熱風の送風によって80℃から240℃まで、30秒間、段階的に昇温させて溶媒の除去を行ったこと以外、実施例1と同様にして、塗布膜5を形成した。このときの塗布膜5のイミド化率は45%、溶媒量は4重量%であり、塗布膜5の発泡は確認されなかった。
実施例1と同様にして、塗布膜5の上にポリアミド酸溶液cを塗布し、乾燥後、イミド化して2層のポリイミド層を形成することで、金属張積層板5を調製したところ、発泡が確認された。
比較例1
赤外線照射の条件を条件1とし、炉内供給熱風温度が180℃の熱風の送風によって180℃から240℃まで、30秒間、段階的に昇温させて溶媒の除去を行ったこと以外、実施例1と同様にして、塗布膜を形成した。このときの塗布膜のイミド化率は95%、溶媒量は4重量%であり、塗布膜に皮膜が形成され、発泡も確認された。
[実施例6]
ポリアミド酸溶液bを使用したこと以外、実施例1と同様にして、塗布膜6を形成した。このときの塗布膜6のイミド化率は85%、溶媒量は0重量%であり、塗布膜6の発泡は確認されなかった。
実施例1と同様にして、塗布膜6の上にポリアミド酸溶液cを塗布し、乾燥後、イミド化して2層のポリイミド層を形成することで、金属張積層板6を調製したが、発泡は確認されなかった。また、剥離試験によるポリイミド層の層間の剥離も見られなかった。
[実施例7]
ポリアミド酸溶液eを使用し、赤外線照射の条件を条件2とし、炉内供給熱風温度が180℃の熱風の送風によって180℃から200℃まで、30秒間、段階的に昇温させて溶媒の除去を行ったこと以外、実施例1と同様にして、塗布膜7を形成した。このときの塗布膜7のイミド化率は85%、溶媒量は0重量%であり、塗布膜7の発泡は確認されなかった。
実施例1と同様にして、塗布膜7の上にポリアミド酸溶液cを塗布し、乾燥後、イミド化して2層のポリイミド層を形成することで、金属張積層板7を調製したが、発泡は確認されなかった。また、剥離試験によるポリイミド層の層間の剥離も見られなかった。
[実施例8]
ポリアミド酸溶液bを使用し、ポリアミド酸溶液bの硬化後の厚みを10μmとしたこと以外、実施例1と同様にして、塗布膜8を形成した。このときの塗布膜8のイミド化率は40%、溶媒量は8重量%であり、塗布膜8の発泡は確認されなかった。
実施例1と同様にして、塗布膜8の上にポリアミド酸溶液cを塗布し、乾燥後、イミド化して2層のポリイミド層を形成することで、金属張積層板8を調製したところ、発泡が確認された。
[実施例9]
ポリアミド酸溶液bを使用し、赤外線照射の条件を条件3とし、炉内供給熱風温度が120℃の熱風の送風によって120℃から180℃まで、30秒間、段階的に昇温させて溶媒の除去を行ったこと以外、実施例1と同様にして、塗布膜9を形成した。このときの塗布膜9のイミド化率は45%、溶媒量は4重量%であり、塗布膜9の発泡は確認されなかった。
実施例1と同様にして、塗布膜9の上にポリアミド酸溶液cを塗布し、乾燥後、イミド化して2層のポリイミド層を形成することで、金属張積層板9を調製したところ、発泡が確認された。
[実施例10]
ポリアミド酸溶液bを使用し、赤外線照射の条件を条件1とし、炉内供給熱風温度が80℃の熱風の送風によって80℃から240℃まで、30秒間、段階的に昇温させて溶媒の除去を行ったこと以外、実施例1と同様にして、塗布膜10を形成した。このときの塗布膜10のイミド化率は45%、溶媒量は3重量%であり、塗布膜10の発泡は確認されなかった。
実施例1と同様にして、塗布膜10の上にポリアミド酸溶液cを塗布し、乾燥後、イミド化して2層のポリイミド層を形成することで、金属張積層板10を調製したところ、発泡が確認された。
比較例2
ポリアミド酸溶液bを使用し、赤外線照射の条件を条件1とし、炉内供給熱風温度が180℃の熱風の送風によって180℃から240℃まで、30秒間、段階的に昇温させて溶媒の除去を行ったこと以外、実施例1と同様にして、塗布膜を形成した。このときの塗布膜のイミド化率は95%、溶媒量は0重量%であり、塗布膜の皮膜が形成され、発泡も確認された。
以上の実施例等から、イミド化を完結させることなく塗布膜中の残存溶媒量を0重量%まで低減した実施例1、2では、銅箔に接するポリイミド層の形成だけでなく、その上にポリイミド層を積層した場合でも、発泡が完全に抑制されていた。
一方、塗布膜中の残存溶媒量を4〜10重量%まで低減した実施例3〜5では、銅箔に接するポリイミド層の形成においては発泡が抑制されたが、その上にポリイミド層を積層した場合に、発泡が発生した。
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。

Claims (10)

  1. 基材上にポリアミド酸溶液を塗布することによって形成した塗布膜を熱処理してポリイミド膜を形成するポリイミド膜の製造方法であって、
    前記塗布膜中に含まれる溶媒量を10重量%以下まで低減させるとともに、塗布膜中に含まれるポリアミド酸のイミド化率が40%以上95%未満の範囲内となるまで熱処理を行う第1の熱処理工程、
    を含むことを特徴とするポリイミド膜の製造方法。
  2. 前記第1の熱処理工程において、前記塗布膜中に含まれる溶媒量を0.3重量%以下まで低減させる請求項1に記載のポリイミド膜の製造方法。
  3. 前記第1の熱処理工程において、イミド化率が50%以上90%以下の範囲内となるまで熱処理を行う請求項1又は2に記載のポリイミド膜の製造方法。
  4. 前記塗布膜の厚みが、イミド化後の厚みとして2〜6μmの範囲内である請求項1から3のいずれか1項に記載のポリイミド膜の製造方法。
  5. 前記第1の熱処理工程における熱処理を赤外線照射によって行うとともに、第1の熱処理工程における熱処理容器中の雰囲気温度をT、溶媒の発火点をTとしたとき、
    ×0.6<T<T×0.9
    に調節して熱処理を行う請求項1から4のいずれか1項に記載のポリイミド膜の製造方法。
  6. 前記赤外線照射と加熱気体による送風を併用し、加熱気体の温度をT、溶媒の沸点をTとしたとき、
    −50℃<T<T
    に調節して熱処理を行う請求項5に記載のポリイミド膜の製造方法。
  7. 前記ポリアミド酸が、酸無水物成分とジアミン成分とを反応させて得られるものであり、
    前記酸無水物成分の全量に対してビフェニルテトラカルボン酸二無水物を40モル%以上含有し、
    前記ジアミン成分の全量に対して下記の一般式(B1)〜(B7)で表されるジアミン化合物から選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物を70モル%以上含有するものである請求項1から6のいずれか1項に記載のポリイミド膜の製造方法。
    Figure 2021053567
    [式(B1)〜(B7)において、Rは独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、連結基Aは−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO−、−COO、−CH−、−C(CH−、NH−若しくは−CONH−から選ばれる2価の基を示し、nは独立に0〜4の整数を示す。ただし、式(B3)中から式(B2)と重複するものは除き、式(B5)中から式(B4)と重複するものは除くものとする。]
  8. 前記熱処理として、前記第1の熱処理工程の後に、ポリアミド酸のイミド化を完結させる第2の熱処理工程をさらに含む請求項1から7のいずれか1項に記載のポリイミド膜の製造方法。
  9. 支持基材にポリアミド酸溶液を塗布することによって塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、
    前記第1の熱処理工程と、
    を複数回繰り返した後、前記第2の熱処理工程を行う請求項8に記載のポリイミド膜の製造方法。
  10. 金属層と、該金属層に積層されたポリイミド膜と、を有する金属張積層板の製造方法であって、
    前記ポリイミド膜を、請求項1から8のいずれか1項に記載のポリイミド膜の製造方法により形成することを特徴とする金属張積層板の製造方法。

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