JP2021051970A - 防錆プレート - Google Patents
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Abstract
【課題】十分な防錆性能を実現できる防錆プレートと、その製造方法の技術の提供。【解決手段】燃料電池スタックにおいて、セパレータと、ターミナルとの間に配置される防錆プレートであって、チタン製の基材と、基材の表面のうち、燃料電池スタックにおいて冷却水に接触する領域の、少なくとも一部に設けられた酸化スズ膜と、を有し、酸化スズ膜の展開面積比が、0.28から0.38である。【選択図】図2
Description
本開示は、燃料電池に使用される防錆プレートに関する。
燃料電池のセパレータが金属製である場合、高電位側の数セルの冷却水マニホールドで腐食が発生することがある。例えばセパレータがステンレス系である場合、低電位側で冷却水に起因するOHイオンが発生し、高電位側の冷却水マニホールドでFeイオンが析出する。OHイオンとFeイオンが高電位側の冷却水マニホールドで結合することにより、腐食物であるFe(OH)2が生成すると考えられる。腐食が進行すると、燃料電池セルの樹脂シートのシールの信頼が損なわれるおそれがあった。特許文献1には、高電位側の冷却水マニホールドで生じる腐食を抑制する防錆プレートが提示されている。
特許文献1の技術では、防錆プレートの冷却水マニホールドと接する部位に、防錆プレートの部材よりも高い酸化反応活性を有するルテニウムのめっき処理がなされている。これにより、ルテニウムのめっき処理がなされていない場合よりも確実に、防錆プレートの表面上で酸化反応活性を起こすことができる。この結果、セパレータで発生する腐食が抑制される。
しかしながら、ルテニウムは高価であるため、防錆プレートの製造コストが上昇する。
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
本開示の一形態によれば、防錆プレートが提供される。この防錆プレートは、燃料電池スタックにおいて、セパレータと、ターミナルとの間に配置される防錆プレートであって、チタン製の基材と、前記基材の表面のうち、燃料電池スタックにおいて冷却水に接触する領域の、少なくとも一部に設けられた酸化スズ膜と、を有し、前記酸化スズ膜の展開面積比が、0.28から0.38である。この形態の防錆プレートにおいては、防錆プレートの表面に、酸化スズを用いた膜を形成する。酸化スズを、ルテニウムを用いる場合と比べて、安価に入手することができる。また、防錆プレートの表面の、酸化スズ膜の展開面積比が0.28から0.38であることで、酸化スズ膜の展開面積比が0.28から0.38の間でない防錆プレートと比べて、セパレータ間を流れる冷却水と、酸化スズ膜との間で発生する酸化反応量が多くなる。酸化スズ膜が冷却水との間で酸化反応を起こすことにより、セパレータで生じる酸化反応を抑制することができる。これにより、セパレータの表面で生じる腐食を抑制することができる。
上記形態の防錆プレートの製造方法において、濃度が10mol/L以下である硝酸を含有するスズ水溶液に、前記チタン製の基材を浸漬した状態で、陰極電解を行う工程を、備え、前記陰極電解の電位が、−0.43V以上かつ−0.05V以下であり、0.043lnX(mM)−0.35≦E(V)≦0.043lnX(mM)−0.25が成立することを特徴としてもよい。ここで、Xは硝酸イオン濃度を示す。また、lnは、自然対数を示す。この形態の防錆プレートの製造方法によれば、従来から酸化スズ膜を成膜するために行われていたスパッタ法と比較して、低エネルギーで酸化スズ膜を防錆プレートに成膜することができる。これにより、スパッタ法と比較して、酸化スズ膜を有する防錆プレートを安価に製造することができる。
なお、本開示は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、防錆プレートを備える燃料電池等の態様で実現することが可能である。
A.実施例の構成:
図1は、本開示の一実施形態における、燃料電池スタック10の概略構成図である。図2は、図1に示す燃料電池スタック10の、部分断面図である。燃料電池スタック10は、セル積層体100と、冷却水マニホールド111と、燃料ガスマニホールド112と、酸化剤ガスマニホールド113と、正極ターミナル200と、負極ターミナル210と、防錆プレート300を有する。
図1は、本開示の一実施形態における、燃料電池スタック10の概略構成図である。図2は、図1に示す燃料電池スタック10の、部分断面図である。燃料電池スタック10は、セル積層体100と、冷却水マニホールド111と、燃料ガスマニホールド112と、酸化剤ガスマニホールド113と、正極ターミナル200と、負極ターミナル210と、防錆プレート300を有する。
図2に示すように、セル積層体100は、複数の単セルを積層した構造を有している。各単セルは、膜電極接合体101と、膜電極接合体101を挟持するセパレータ102とを備える。セル積層体100は、片側を正極ターミナル200に、他方の側を負極ターミナル210により、Y軸の方向に支持される(図1参照)。また、セル積層体100は、ターミナルに支持された状態で、図示しない絶縁板と、図示しないエンドプレートにより、Y軸の方向に支持される。
膜電極接合体101は、固体高分子材料、例えばフッ素系樹脂により形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜である電解質膜101Aを有している。電解質膜101Aは、電解質膜101Aの一方側にアノード電極101Aaと、電解質膜101Aの他方側にカソード電極101Abを有する。アノード電極101Aaは、アノード側の電極反応が進行する反応場であり、電解質膜101Aとの接触面の近辺に電極反応を促進する触媒を含んでいる。カソード電極101Abは、カソード側の電極反応が進行する反応場であり、アノード電極101Aaと同様に、電解質膜101Aとの接触面の近辺に触媒を含んでいる。
セパレータ102は、メタルセパレータ102aと樹脂フレーム102bを有している。メタルセパレータ102aは、反応ガスである酸化剤ガスと燃料ガスを、膜電極接合体101に運搬する流路を形成する。メタルセパレータ102aの材料としては、ステンレス鋼や、チタンが用いられる。
樹脂フレーム102bは、メタルセパレータ102aと接することにより、アノード側の燃料ガス流路、および、カソード側の酸化剤ガス流路のシールを確保する。樹脂フレーム102bは、メタルセパレータ102a上に配されている。メタルセパレータ102aと樹脂フレーム102bは、メタルセパレータ102aと樹脂フレーム102bのセット2組が、樹脂フレーム102b同士が向かい合うように、積層されている。樹脂フレーム102bとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の樹脂からなる絶縁性のフィルム状の部材を用いることができる。
冷却水マニホールド111は、セパレータ102を冷却するための冷媒水を供給、及び排出する。冷却水マニホールド111は、セル積層体100の冷却水流路111aと連通する(図2参照)。燃料ガスマニホールド112は、反応ガスである燃料ガスを供給、及び排出する。燃料ガスマニホールド112は、図示しない燃料ガス流路と連通している。酸化剤ガスマニホールド113は、反応ガスである酸化剤ガスを供給、及び排出する。酸化剤ガスマニホールド113は、図示しない酸化剤ガス流路と連通している。本実施形態では、正極ターミナル200と防錆プレート300には、冷却水マニホールド111と燃料ガスマニホールド112と酸化剤ガスマニホールド113は形成されていない。また、冷却水マニホールド111内の冷却水は、防錆プレート300に接触する。
正極ターミナル200と負極ターミナル210は、セル積層体100の各セルが発電した電力を集電する。正極ターミナル200と負極ターミナル210は、図示しない集電端子から集電した電力を、昇圧回路やインバータなどの必要な回路を介して、外部の負荷へと出力する。燃料電池スタック10の発電時において、正極ターミナル200は、負極ターミナル210と比べて高電位となる。
防錆プレート300は、酸化反応を防錆プレート自身の表面で起こすことで、高電位側に位置するメタルセパレータ102aで発生しやすい腐食を防止することができる。防錆プレート300は、メタルセパレータ102aと、正極ターミナル200との間に配置される。防錆プレート300は、セル積層体100の冷却水マニホールド111を流れる冷却水に接するように設けられている。防錆プレート300は、セル積層体100のうち、正極セパレータと、メタルセパレータ102aのうち、少なくとも高電位側のメタルセパレータ102aのうち一つと導通するように設けられている。防錆プレート300は、チタン製の基材310と、酸化スズ膜320を有している。
酸化スズ膜320は、チタン製の基材310の表面のうち、冷却水と接触する領域の、少なくとも一部に設けられている。本実施形態においては、酸化スズ膜320は、チタン製の基材310の、冷却水と接触する領域の全体に成膜されている(図2参照)。
酸化スズ膜320が、冷却水と酸化反応を起こすことにより、冷却水とメタルセパレータ102aの間で起こる酸化反応を抑制する。この結果、メタルセパレータ102aで発生する腐食を防止することができる。
酸化スズ膜320は、界面の展開面積比が、0.28から0.38であるように成膜される。
ここで、展開面積比について説明する。展開面積比とは、定義領域の展開面積、つまり表面積が、定義領域の面積に対してどれだけ増大しているかを表す指標である。酸化スズ膜320が完全に平坦な面の場合、酸化スズ膜320の界面の展開面積比(Sdr)は0となる。界面の展開面積比は、ISO25178で定義されている。界面の展開面積比は、式(1)にて表される。
図3は、酸化スズ膜320の界面の展開面積比と、腐食電流の関係を説明した図である。腐食の発生率は腐食電流により示されるため、腐食電流の値が大きければ腐食の発生率が高いことを意味する。腐食電流は、防錆プレート300に接する単セルに取り付けた電流計を用いて計測した。酸化スズ膜320の界面の展開面積比は、以下のように測定した。まずレーザー顕微鏡を用いて、酸化スズ膜320の表面を観察し、高さのマッピングデータを取得する。次に、得られた高さのマッピングデータから、レーザー顕微鏡付属の解析ソフトを用いて界面の展開面積比を算出する。
酸化スズ膜320の界面の展開面積比が0.28よりも小さいと、酸化スズ膜320と冷却水との接触量が少なくなる。その結果、酸化スズ膜320と冷却水との間の酸化反応量が少なくなる。酸化スズ膜320と冷却水との界面で発生する酸化反応量が小さくなると、メタルセパレータ102aと冷却水との間で酸化反応が進行し、メタルセパレータ102aで腐食が発生する。その結果、腐食電流値が大きくなる(図3参照)。本実施形態の防錆プレート300においては、酸化スズ膜320の界面の展開面積比が0.28よりも大きいため、酸化スズ膜320の界面の展開面積比が0.28よりも小さい場合と比べて、酸化スズ膜320と冷却水との界面で発生する酸化反応量が大きくなる。そのため、メタルセパレータ102aにおける腐食の発生を抑制できる。
また、酸化スズ膜320の界面の展開面積比が0.38よりも大きい場合、酸化スズ膜320の凸部間の幅が小さくなる。この場合、冷却水と酸化スズ膜320の凸部との摩擦により、酸化スズ膜320の凸部がチタン製の基材310から剥がれ落ち、冷却水に脱落する可能性がある。それにより、酸化スズ膜320と冷却水との接触面積が小さくなるため、酸化スズ膜320の酸化反応量が小さくなる。この結果、冷却水とメタルセパレータ102aとの間で酸化反応が進行するため、メタルセパレータ102aで腐食が発生する。また、酸化スズ膜320の凸部が冷却水に脱落すると、冷却水流路111aに酸化スズ膜320の凸部が堆積し、冷却水の冷却性能が低下する懸念がある。本実施形態の防錆プレート300においては、酸化スズ膜320の界面の展開面積比が0.38よりも小さいため、酸化スズ膜320のチタン製の基材310からの脱落を防止することができる。
B.防錆プレートの製造方法:
図4は、防錆プレート製造処理の工程の一例を表すフローチャートである。まず、ステップS10において、濃度が10mol/L以下である硝酸を含有するスズ水溶液中に厚さ0.1mmのチタン薄板を浸漬する。硝酸イオン濃度が10mol/Lよりも大きいと、不溶性の二酸化スズ水和物が生成することが経験的に知られている。よって、硝酸イオン濃度は10mol/L以下とする。本実施形態においては、硝酸イオン濃度は10mmol/Lとする。
図4は、防錆プレート製造処理の工程の一例を表すフローチャートである。まず、ステップS10において、濃度が10mol/L以下である硝酸を含有するスズ水溶液中に厚さ0.1mmのチタン薄板を浸漬する。硝酸イオン濃度が10mol/Lよりも大きいと、不溶性の二酸化スズ水和物が生成することが経験的に知られている。よって、硝酸イオン濃度は10mol/L以下とする。本実施形態においては、硝酸イオン濃度は10mmol/Lとする。
次に、ステップS20において、陰極電解処理を行う。本実施形態における陰極電解処理では、陰極側にチタン薄板を接続し、陽極側は白金をスズ水溶液に浸漬してポテンショスタットに接続する。
硝酸を含有するスズ水溶液中では、硝酸還元反応によりOHイオンが生成する。次に、スズイオンがOHイオンと反応することにより、酸化スズと水が生成する。陰極電解処理の場合、酸化還元反応に必要な電子は、外部電源により供給される。陰極電解処理の場合、スズ水溶液に浸漬したチタン薄板の表面だけで硝酸還元反応が進行するため、酸化スズ生成反応もチタン薄板の表面のみで進行する。そのため、酸化還元反応に必要な電子を還元剤により供給する場合と比べて、原料であるスズの歩留まりが良くなる。酸化還元反応に必要な電子を、水溶液中に共存させた還元剤により供給する場合、硝酸還元反応がスズ水溶液中の全体で進行する。この場合、酸化スズ生成反応もスズ水溶液中の全体で進行するため、スズ水溶液に浸漬したチタン薄板の表面以外でもスズイオンが酸化スズへと変化して消費される。この結果、原料であるスズの歩留まりが悪くなる。
図5は、陰極電解処理における、電位と酸化スズ膜320の界面の展開面積比との関係を説明した図である。図5に示すように、酸化スズ膜320の界面の展開面積比は、電位により調整できる。
図6は、スズ水溶液中の硝酸イオン濃度と電位との関係を説明した図である。本実施形態における陰極電解処理では、電位が−0.43V以上かつ−0.05V以下であり、かつ「0.043lnX(mM)−0.35≦E(V)≦0.043lnX(mM)−0.25」が成立する。mMとは、mmol/Lを意味する。また、Xは硝酸イオン濃度である。lnは、自然対数を示す。図6において、0.043lnX(mM)−0.25Vを、点線Aで表す。また、0.043lnX(mM)−0.35Vを、点線Bで表す。本実施形態の陰極電解処理における電位は、−0.2Vである(図6の点P参照)。
陰極電解処理の電位が−0.43Vよりも小さい場合、スズ水溶液中のスズイオンが金属スズに変化し、酸化スズ生成反応が進行しない。また、負電位では水溶液中の水から水素ガスが発生することが知られている。陰極電解処理の電位が−0.05Vよりも大きい場合、水素ガスが発生しないので、水溶液中のOHイオンが相対的に増加しない。よって、酸化スズ生成反応が進行しづらくなる。また、電位の絶対値が小さく、電位の制御が困難となる。陰極電解処理の電位が−0.43V以上かつ−0.05V以下である場合には、スズ水溶液中のスズイオンが金属スズに変化せず、酸化スズ生成反応が進行するまた、水素ガスが発生すると水溶液中のOHイオンが相対的に増加し、酸化スズ生成反応が進行しやすくなる。よって、電位は−0.43V以上かつ−0.05V以下が好ましい。
「0.043lnX(mM)−0.35≦E(V)≦0.043lnX(mM)−0.25」であることは、硝酸イオン濃度が高いほど、電位差を小さくする必要があることを意味する。硝酸イオン濃度が高いほうが、硝酸還元反応で生じるOHイオンが多くなる。その結果、酸化スズ生成反応が進行し易くなり、過電圧が下がるため、陰極電解処理の絶対値が小さくても酸化スズ未析出部が発生するのを抑制できるためである。
また、「0.043lnX(mM)−0.35≦E(V)≦0.043lnX(mM)−0.25」は、硝酸イオン濃度が低いほど、電位差を大きくする必要があることを意味する。硝酸イオン濃度が低いほうが、硝酸還元反応で生じるOHイオンが少なくなる。その結果、酸化スズ生成反応が進行しづらくなるため、酸化スズの析出速度が遅くなり、酸化スズ膜320が凹凸化しやすくなる。この場合、酸化スズ膜320の界面の展開面積比が大きくなるため、セパレータ102間を流れる冷却水と、酸化スズ膜320との間で発生する酸化反応量が多くなる。この結果、メタルセパレータ102aの表面で生じる腐食を抑制することができる。
陰極電解処理の電位が、スズ水溶液中の硝酸イオン濃度に対して−0.43V以上かつ−0.05V以下であり、かつ「0.043lnX(mM)−0.35V」よりも小さい場合、陰極電解処理の電位の絶対値が大きくなるため、電位差が大きくなる。そのため、酸化スズ生成反応の反応速度が速くなり、酸化スズの析出速度が速くなる。この場合は、酸化スズがチタン薄板の表面で平滑化するため、酸化スズ膜320の界面の展開面積比が小さくなる。よって、この場合は、酸化スズ膜320の成膜には適さない。
陰極電解処理の電位が、−0.43V以上かつ−0.05V以下であり、スズ水溶液中の硝酸イオン濃度に対して「0.043lnX(mM)−0.25V」よりも大きい場合、陰極電解処理の電位の絶対値が小さくなる。この場合、チタン薄板の表面の一部の電位が、酸化スズ生成反応に必要な過電圧を超えなくなる。その結果、チタン薄板の表面上に酸化スズ未析出部が発生し、酸化スズ膜320と冷却水との接触量が少なくなる。よって、この場合は、酸化スズ膜320の成膜には適さない。
陰極電解処理の電位が、スズ水溶液中の硝酸イオン濃度に対して−0.43V以上かつ−0.05V以下であり、かつ「0.043lnX(mM)−0.35≦E(V)≦0.043lnX(mM)−0.25」である場合、陰極電解処理の電位の絶対値が小さくなり、電位差が小さくなる。そのため、酸化スズ生成反応の反応速度が遅くなる。この場合、酸化スズがチタン薄板の表面で凹凸化するため、酸化スズ膜320の界面の展開面積比が大きくなる。これにより、セパレータ102間を流れる冷却水と、酸化スズ膜320との間で発生する酸化反応量が多くなる。よって、この場合は、酸化スズ膜320の成膜に適する。
以上で説明した本実施形態の防錆プレート300によれば、界面の展開面積比が0.28から0.38である酸化スズ膜320を備えることで、防錆プレート300として十分な効果を発揮できる防錆プレート300を提供する。また、濃度が10mol/L以下である硝酸を含有するスズ水溶液にチタン薄板を浸漬し、−0.43V以上かつ−0.05V以下であり、0.043lnX(mM)−0.35≦E(V)≦0.043lnX(mM)−0.25を満たす電位で陰極電解処理を行うことで、従来から酸化スズ膜320を成膜するために行われていたスパッタ法と比較して、低エネルギーで酸化スズ膜320を防錆プレート300に成膜することができる。これにより、スパッタ法と比較して、酸化スズ膜320を有する防錆プレート300を安価に製造することができる。
陰極電解処理のことを、陰極電解ともよぶ。また、チタン製の基材310のことを、チタン薄板や、基材ともよぶ。
C.他の実施形態:
C1)上記実施形態では、酸化スズ膜320は、チタン製の基材310の、冷却水と接触する領域の全体に成膜されている。しかし、例えば、酸化スズ膜は、チタン製の基材の、冷却水マニホールドと対面する箇所に成膜されていてもよい。また、酸化スズ膜320は、チタン製の基材の、表面の全体に成膜されていてもよい。
C1)上記実施形態では、酸化スズ膜320は、チタン製の基材310の、冷却水と接触する領域の全体に成膜されている。しかし、例えば、酸化スズ膜は、チタン製の基材の、冷却水マニホールドと対面する箇所に成膜されていてもよい。また、酸化スズ膜320は、チタン製の基材の、表面の全体に成膜されていてもよい。
C2)上記実施形態では、陰極電解処理における硝酸イオン濃度は10mmol/Lであり、電位は、−0.2Vである。しかし、例えば硝酸イオン濃度は100mmol/Lであり、電位は−0.15Vであってもよい。
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
10…燃料電池スタック、100…セル積層体、101…膜電極接合体、101A…電解質膜、101Aa…アノード電極、101Ab…カソード電極、102…セパレータ、102a…メタルセパレータ、102b…樹脂フレーム、111…冷却水マニホールド、111a…冷却水流路、112…燃料ガスマニホールド、113…酸化剤ガスマニホールド、200…正極ターミナル、210…負極ターミナル、300…防錆プレート、310…チタン製の基材、320…酸化スズ膜
Claims (2)
- 燃料電池スタックにおいて、セパレータと、ターミナルとの間に配置される防錆プレートであって、
チタン製の基材と、前記基材の表面のうち、燃料電池スタックにおいて冷却水に接触する領域の、少なくとも一部に設けられた酸化スズ膜と、を有し、
前記酸化スズ膜の展開面積比が、0.28から0.38である、
防錆プレート。 - 請求項1に記載の防錆プレートの製造方法であって、
濃度が10mol/L以下である硝酸を含有するスズ水溶液に、前記チタン製の基材を浸漬した状態で、陰極電解を行う工程を、備え、
前記陰極電解の電位が、−0.43V以上かつ−0.05V以下であり、0.043lnX(mM)−0.35≦E(V)≦0.043lnX(mM)−0.25が成立することを特徴とする、
防錆プレートの製造方法。
ここで、Xは硝酸イオン濃度を示す。また、lnは、自然対数を示す。
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