JP2021050632A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】スロットルバルブを通過して吸い込まれる空気量を精度よく推定する。【解決手段】装置100は、吸気量センサの脈動領域を判定する脈動判定部43と、吸気圧縮機の下流から上流へ吸気が還流される還流状態を判定する還流判定部44と、圧縮機のサージ領域を判定するサージ判定部45と、スロットルバルブを通過してシリンダ内に吸入される空気量を算出する空気量算出部41とを備える。空気量算出部41は、脈動領域、還流状態、サージ領域でないと判定されると吸気量センサの検出値に基づいて空気量を算出し、脈動領域または還流状態またはサージ領域であり過給圧に対する吸気圧の圧力比が所定値以下のとき、検出スロットル開度と検出過給圧と検出吸気圧とに基づいて空気量を算出し、脈動領域または還流状態またはサージ領域であり圧力比が所定値より大きいとき、検出吸気圧と予め設定された特性とに基づいて空気量を算出する。【選択図】図4

Description

本発明は、スロットルバルブを介して吸い込まれる吸気量を算出する機能を有する内燃機関の制御装置に関する。
この種の装置として、従来、スロットルバルブの周囲に形成される空気通路を絞り部とみなし、絞り部を通過する流体の流量を表す計算式に基づいてシリンダ内に吸入される吸入空気量を推定するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。また、吸気通路に圧縮機と圧縮機の下流側から上流側に吸気を還流する還流通路とが設けられ、吸気が還流されないときは、圧縮機の上流に配置されたエアフローメータによる検出値に基づいて吸入空気量を推定する一方、吸気が還流されるときは、エアフローメータによる検出値を用いず、計算式に基づいて吸入空気量を推定するようにした装置が知られている(例えば特許文献2参照)。
特開2006−37911号公報 特開2009−97490号公報
しかしながら、上記特許文献1記載の装置で用いられる計算式は、スロットルバルブの周囲が絞り部として機能することを前提とする。このため、スロットルバルブの全開時等、スロットルバルブの上下流に圧力差がなく、スロットルバルブの周囲が絞り部として機能していない場合に、スロットルバルブを通過してシリンダ内に吸入される空気量を精度よく推定することが難しい。
本発明の一態様は、吸気通路に配置された圧縮機と、圧縮機の下流側から上流側へ吸気を還流する還流通路と、圧縮機の下流側に配置されたスロットルバルブと、スロットルバルブの上流側と下流側との圧力差に応じて還流通路を開閉する開閉バルブと、を有する内燃機関の制御装置である。内燃機関の制御装置は、圧縮機の上流側の吸気通路に配置された流量検出器と、スロットルバルブの開度を検出する開度検出器と、圧縮機とスロットルバルブとの間の吸気通路に配置された第1圧力検出器と、スロットルバルブの下流側の前記吸気通路に配置された第2圧力検出器と、開度検出器により検出された開度と、内燃機関の運転状態に応じて予め設定された特性と、に基づいて、流量検出器に脈動現象が生じ得る脈動領域であるか否かを判定する脈動判定部と、第1圧力検出器により検出された圧力と第2圧力検出器により検出された圧力とに基づいて、開閉バルブが開放された還流状態であるか否かを判定する還流判定部と、流量検出器により検出された吸気流量と、第1圧力検出器により検出された圧力と、予め設定された特性と、に基づいて、圧縮機にサージ現象が生じ得るサージ領域であるか否かを判定するサージ判定部と、脈動判定部と、還流判定部と、サージ判定部との判定結果に基づいて、スロットルバルブを通過して内燃機関のシリンダ内に吸入される空気量を算出する空気量算出部と、を備える。空気量算出部は、脈動判定部により脈動領域でないと判定され、かつ、還流判定部により還流状態でないと判定され、かつ、サージ判定部によりサージ領域でないと判定されると、流量検出器により検出された吸気流量に基づいて、スロットルバルブを通過する空気量を算出し、算出されたスロットルバルブを通過する空気量に基づいて、内燃機関のシリンダ内に吸入される空気量を算出し、脈動判定部により脈動領域であると判定され、または、還流判定部により還流状態であると判定され、または、サージ判定部によりサージ領域であると判定され、かつ、第1圧力検出器により検出された圧力に対する第2圧力検出器により検出された圧力の比である圧力比が所定値以下のとき、開度検出器により検出された開度と、第1圧力検出器により検出された圧力と、第2圧力検出器により検出された圧力と、に基づいて、スロットルバルブを通過する空気量を算出し、算出されたスロットルバルブを通過する空気量に基づいて、内燃機関のシリンダ内に吸入される空気量を算出し、脈動判定部により脈動領域であると判定され、または、還流判定部により還流状態であると判定され、または、サージ判定部によりサージ領域であると判定され、かつ、圧力比が所定値より大きいとき、第2圧力検出器により検出された圧力と、予め設定された特性と、に基づいて、スロットルバルブを通過して内燃機関のシリンダ内に吸入される空気量を算出する。
本発明によれば、スロットルバルブの全開時にもスロットルバルブを通過してシリンダ内に吸入される空気量を精度よく推定することができる。
本発明の実施形態に係る内燃機関の制御装置が適用されるエンジンおよびその周辺の構成を概略的に示す図。 図1の開閉バルブの開弁特性の一例を示す図。 図1のエンジンの内部の要部構成を概略的に示す図。 本発明の実施形態に係る内燃機関の制御装置の要部構成を概略的に示すブロック図。 図1のコンプレッサのサージ領域について説明するための図。 図1の吸気通路における吸気の脈動領域について説明するための図。 図1のスロットルバルブの上下流の圧力比と流量関数との関係を示す図。 図1のスロットルバルブの上下流の圧力比と通過空気量の算出誤差との関係を示す図。 図1のスロットル用アクチュエータの応答遅れ特性を示す図。 図4の空気量算出部により算出される吸入空気量を制限する上限空気量について説明するための図。 図4の空気量算出部による算出方法を切り換えたときの検出空燃比の変化について説明するための図。 図4の空気量算出部による算出方法を徐々に切り換えたときの検出空燃比の変化について説明するための図。 本発明の実施形態に係る内燃機関の制御装置により実行される処理の一例を示すフローチャート。
以下、図1〜図12を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る内燃機関の制御装置は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関(エンジン)に適用される。
図1は、本発明の実施形態に係る内燃機関の制御装置が適用されるエンジン1およびその周辺の構成を概略的に示す図である。エンジン1は、不図示の車両に搭載され、複数の気筒(例えば4気筒)を有する火花点火式の4サイクルエンジンである。図1に示すように、エンジン1には、エンジン1に吸い込まれる吸入空気(吸気)が通過する吸気通路2と、エンジン1で燃焼した排気ガスが通過する排気通路3とが接続される。
排気通路3には、排気により回転駆動するタービン4aが設けられる。吸気通路2には、タービン4aと同軸に設けられて、エアクリーナ(不図示)を介して吸入された吸気を圧送するコンプレッサ4bが設けられる。タービン4aとコンプレッサ4bとは、ターボチャージャ4を構成する。コンプレッサ4bの上流および下流の吸気通路2には、コンプレッサ4bの下流側から上流側へ吸気を還流する還流通路5が設けられ、還流通路5には、還流通路5を開閉する開閉バルブ6が設けられる。
コンプレッサ4bの下流側の吸気通路2には、還流通路5の入口の上流側に、吸気を冷却するインタクーラ7が設けられる。また、還流通路5の入口の下流側に、吸気量を調整するスロットルバルブ8と、スロットルバルブ8を通過した吸気を複数の気筒に分配する吸気マニホルド9とが設けられる。スロットルバルブ8は、例えばバタフライ弁により構成され、スロットルバルブ8の開度は、電気信号により作動するスロットル用アクチュエータ8aの駆動によって変更される。スロットルバルブ8には、スロットルバルブ8の開度を検出するスロットル開度センサ8bが設けられる。スロットル開度センサ8bは、例えばポテンショメータにより構成される。スロットル用アクチュエータ8aの動作はコントローラ40(図4)により制御される。
コンプレッサ4bの上流側には、その上流側における吸気量QAを検出する吸気量センサ10と、コンプレッサ4bにより圧縮される前の吸気の圧力(大気圧)P1を検出する大気圧センサ11とが設けられる。インタクーラ7とスロットルバルブ8との間には、コンプレッサ4bにより圧縮された後の吸気の圧力(過給圧)P2を検出する過給圧センサ12が設けられる。吸気マニホルド9には、吸気マニホルド9内の吸気の圧力(以下、吸気圧)P3を検出する吸気圧センサ13が設けられる。
吸気量センサ10は、例えば熱線式エアフローメータにより構成される。大気圧センサ11、過給圧センサ12および吸気圧センサ13は、例えば半導体圧力センサにより構成される。なお、図示は省略するが、コンプレッサ4bの上流側には、吸気の温度(大気温)を検出する大気温センサも設けられる。
還流通路5は、隔壁50により区画された、コンプレッサ4bの上流側の吸気通路2に連通する上流側通路51と、コンプレッサ4bの下流側の吸気通路2に連通する下流側通路52とを有する。還流通路5の開閉バルブ6は、隔壁50に面して配置され、還流通路5の壁面の一部を構成するダイアフラム60と、ダイアフラム60により画定される圧力室61とを有する。
ダイアフラム60は、可撓性の薄板により構成され、所定のセット荷重Fsetで還流通路5を閉鎖する。圧力室61は、通路62を介して吸気マニホルド9に接続され、圧力室61には吸気圧P3が供給され、ダイアフラム60の圧力室61側には吸気圧P3が作用する。これによりダイアフラム60は、ダイアフラム60の有効面積をAdとして、(Fset+P3×Ad)の力で還流通路5を閉鎖する方向に押圧される。
ダイアフラム60の還流通路5側は、一部が連通孔63を介して上流側通路51の壁面の一部を構成し、残部が連通孔64を介して下流側通路52の壁面の一部を構成する。したがって、ダイアフラム60の還流通路5側には、連通孔63を介して大気圧P1が作用し、連通孔64を介して過給圧P2が作用する。これによりダイアフラム60は、連通孔63の開口面積をAvとして、{P1×Av+P2×(Ad−Av)}の力で還流通路5を開放する方向に押圧される。
このような開閉バルブ6の構成により、還流通路5を開放する方向にダイアフラム60を押圧する力{P1×Av+P2×(Ad−Av)}が閉鎖する方向に押圧する力(Fset+P3×Ad)を上回ると、開閉バルブ6が開放された開放状態となる。より具体的には、図1に破線で示すように、ダイアフラム60が還流通路5の隔壁50から離間する方向に撓むことで、連通孔63,64が互いに接続され、開閉バルブ6が開放された開放状態となる。
図2は、このような開閉バルブ6の開弁特性の一例を示す図である。図2に示すように、開閉バルブ6は、過給圧P2と吸気圧P3との差圧が所定の閾値以下のときに閉鎖され、閾値を超えると開放される。このような過給圧P2と吸気圧P3との差圧の閾値は、過給圧P2が大きくなるほど大きい値として予め設定されるとともに、開閉バルブ6の初期公差や耐久劣化、圧力センサ11〜13による検出精度等を考慮して較正される。
図1に示すように、排気通路3には、エンジン1の複数の気筒から排出された排気ガスを集合する排気マニホルド14と、排気マニホルド14の下流で空燃比を検出するLAFセンサ15とが設けられる。なお、図示は省略するが、排気通路3には、排気通路3を通過する排気ガスの温度を検出する排気温センサ、排気ガスの圧力を検出する排気圧センサなどが設けられる。
図3は、エンジン1の内部の要部構成を概略的に示す図である。図3に示すように、エンジン1は、複数のシリンダ(気筒)16が形成されるシリンダブロック17と、シリンダブロック17の上部を覆うシリンダヘッド18とを有する。シリンダヘッド18には、吸気通路2に連通する吸気ポート19と、排気通路3に連通する排気ポート20とが設けられる。吸気ポート19には吸気ポート19を開閉する吸気バルブ21が設けられ、排気ポート20には排気ポート20を開閉する排気バルブ22が設けられる。吸気バルブ21と排気バルブ22とは動弁機構23により開閉駆動される。
各シリンダ16には、シリンダ16内を摺動可能にピストン24が配置され、ピストン24に面して燃焼室25が形成される。エンジン1には、燃焼室25に臨むようにインジェクタ26が設けられ、インジェクタ26から燃焼室25に燃料が噴射される。なお、インジェクタ26を、燃料を燃焼室25に噴射する直噴式として構成するのではなく、吸気ポート19に燃料を噴射するポート噴射式として構成してもよい。さらにエンジン1には点火プラグ27が設けられ、燃焼室25内の燃料と空気の混合気は、点火プラグ27により点火される。燃焼室25内で混合気が燃焼(爆発)すると、シリンダ16の内壁に沿ってピストン24が往復動し、コンロッド28を介してクランクシャフト29が回転する。インジェクタ26の動作(噴射時期、噴射時間)および点火プラグ27の動作(点火時期)はコントローラ40(図4)により制御される。
動弁機構23は、吸気カムシャフト30と排気カムシャフト31とを有する。吸気カムシャフト30は、各気筒(シリンダ16)にそれぞれ対応した吸気カム30aを一体に有し、排気カムシャフト31は、各気筒にそれぞれ対応した排気カム31aを一体に有する。吸気カムシャフト30と排気カムシャフト31とは、不図示のタイミングベルトを介してクランクシャフト29に連結され、クランクシャフト29が2回転する度にそれぞれ1回転する。吸気バルブ21は、吸気カムシャフト30の回転により、不図示の吸気ロッカーアームを介して、吸気カム30aのプロファイルに応じた所定のタイミングで開閉する。排気バルブ22は、排気カムシャフト31の回転により、不図示の排気ロッカーアームを介して、排気カム31aのプロファイルに応じた所定のタイミングで開閉する。
動弁機構23はさらに、クランクシャフト29に対する吸気カム30aおよび排気カム31aの相対的な位相(カム位相)をそれぞれ変更するカム位相可変機構32,33を有する。カム位相可変機構32,33は、それぞれ吸気カムシャフト30と排気カムシャフト31の一端部に設けられる。カム位相可変機構32,33の構成は互いに同一であり、代表して吸気用のカム位相可変機構32の構成を説明する。詳細な図示は省略するが、カム位相可変機構32は、吸気カムシャフト30を回転可能に収容するとともに、進角室と遅角室とを画成する回転可能な円筒形状のハウジングを有し、ハウジングの外周面に、クランクシャフト29を経由するタイミングベルトが巻回される。
進角室と遅角室とには、例えば制御弁の駆動に応じた油圧ポンプからの油圧が供給され、制御弁の駆動を制御することで、吸気カム30aのカム位相を無段階に進角側または遅角側に変更することができ、これにより、吸気バルブ21の開閉タイミングを変更できる。すなわち、進角室に油圧が供給されると、吸気カムシャフト30がハウジングに対し一方向に相対回転し、吸気バルブ21の開閉タイミングが進角側に変化する。一方、遅角室に油圧が供給されると、吸気カムシャフト30がハウジングに対し反対方向に相対回転し、吸気バルブ21の開閉タイミングが遅角側に変化する。
カム位相可変機構32,33は、既燃ガスである排気の一部を燃焼室25内に還流する際の内部排気還流量、つまり内部EGRガス量を調整するように動作する。すなわち、カム位相可変機構32,33により吸気バルブ21および排気バルブ22の開閉タイミングを変更することで、吸気バルブ21と排気バルブ22の開弁期間が重なるバルブオーバーラップ量を変更し、これにより内部EGRガス量が調整される。カム位相可変機構32,33の動作はコントローラ40(図4)により制御される。
なお、図示は省略するが、エンジン1にはクランクシャフト29の回転角およびエンジン回転数を検出するクランク角センサ、吸気カム30aおよび排気カム31aのカム位相をそれぞれ検出するカム角センサ、エンジン1の冷却水の温度(エンジン水温)を検出する水温センサなども設けられる。
図4は、本実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、装置)100の要部構成を概略的に示すブロック図である。図4に示すように、装置100は、コントローラ40と、コントローラ40にそれぞれ通信可能に接続されたセンサ群70と、アクチュエータ群80とを主に有する。センサ群70には、上記した各種のセンサ8b,10〜13,15等、エンジン1の運転状態を検出する各種センサが含まれる。アクチュエータ群80には、上記したスロットル用アクチュエータ8a、インジェクタ26、点火プラグ27、カム位相可変機構32,33等が含まれる。なお、図示は省略するが、コントローラ40にはさらに、車両に搭載された各種センサや他のコントローラ(変速機ECU等)等が接続され、アクセル開度や車速等、車両の運転状態を示す各種パラメータの検出値や指令値等が入力される。
コントローラ40は、CPU,ROM,RAM、その他の周辺回路などを有するコンピュータを含んで構成される電子制御ユニット(ECU)により構成される。コントローラ40は、機能的構成として、スロットルバルブ8を通過してシリンダ16内に吸入される空気量を算出する空気量算出部41、インジェクタ26による燃料噴射を制御する燃料噴射制御部42等を有する。空気量算出部41および燃料噴射制御部42による演算は、クランク角センサからの信号に基づいて、エンジン1の燃焼サイクルに同期して実行される。
空気量算出部41は、吸気量センサ10により検出されたコンプレッサ4bの上流の吸気量QA(例えば、単位時間当たりの質量流量)等に基づいて、スロットルバルブ8を通過する通過空気量QB(例えば、単位時間当たりの質量流量)を算出する。また、算出された通過空気量QBに基づいて、エンジン1のシリンダ16内に吸入される吸入空気量QC(例えば、単位時間当たりの質量流量)を算出する。具体的には、吸気マニホルド9の容積をVI、シリンダ16の容積をVC、充填効率をη、重み付け係数をw、前回の燃焼サイクルで算出された吸入空気量をQCzとして、次式(i),(ii)により吸入空気量QCを算出する。
w=ηVC/VI ・・・(i)
c=wQB+(1−w)QCz ・・・(ii)
なお、シリンダ16の充填効率ηは、エンジン回転数、カム位相、吸気圧P3、吸気温(大気温)、エンジン水温等の各種パラメータの影響を受ける。このため、シリンダ16内に吸入される吸入空気量QCは、各種パラメータ(例えば、エンジン回転数、カム位相、吸気圧P3)の領域毎に予め設定された複数の特性に基づいて算出され、各種パラメータ(例えば、吸気温、エンジン水温)に応じて補正される。
燃料噴射制御部42は、空気量算出部41により算出された吸入空気量QCに基づいて、シリンダ16内の空燃比が適切な値となるようにインジェクタ26によるシリンダ16内への燃料の供給を制御する。また、LAFセンサ15により検出された空燃比に基づいて燃料噴射量を補正するフィードバック制御を行う。
ところで、図1に示すように、吸気量センサ10とスロットルバルブ8との間の吸気通路2にはコンプレッサ4bが設けられる。例えば、コンプレッサ4bによる吸気の圧送中にスロットルバルブ8が閉じられる等してコンプレッサ4bの入口側に対する出口側の圧力比が過大になると、コンプレッサ4bが空転して内部の吸気量および吸気圧が周期的に変動するサージ現象が生じる。このようなコンプレッサ4bのサージ領域では、コンプレッサ4bの上流側の吸気量センサ10に吸気が逆流して吸気量センサ10の検出値が不正確になるため、吸気量センサ10の検出値に基づいて空気量を算出することができない。
図5は、コンプレッサ4bにサージ現象が生じ得るサージ領域について説明するための図であり、コンプレッサ4bに流入する吸気量QA(例えば、質量流量を体積流量に換算した値)に対する、コンプレッサ4bが空転せずに圧縮可能な最大圧力比を示す。図5に示すように、大気圧P1に対する過給圧P2の圧力比P2/P1が所定値を超えると、コンプレッサ4bにサージ現象が生じ得るサージ領域となる。このような最大圧力比は、吸気量QAが大きくなるほど大きい値に予め設定される。
また、図1に示すように、吸気量センサ10とスロットルバルブ8との間の吸気通路2には還流通路5が設けられ、開閉バルブ6が開放されるとコンプレッサ4bの下流側から上流側に吸気の一部が還流される。このような還流状態では、コンプレッサ4bの上下流で流量が一致しなくなるとともに、還流された吸気が吸気量センサ10に逆流して吸気量センサ10の検出値が不正確になるため、吸気量センサ10の検出値に基づいて通過空気量QBを算出することができない。
また、エンジン1の運転状態が低速高負荷の脈動領域では、吸気通路2において吸気が大きく脈動し、吸気量センサ10に吸気が逆流して検出値が不正確になるため、吸気量センサ10の検出値に基づいて通過空気量QBを算出することができない。
図6は、吸気量センサ10に脈動現象が生じ得る脈動領域について説明するための図であり、エンジン回転数ごとの、スロットルバルブ8の開度THに対する脈動振幅率を示す。図6において実線は、吸気バルブ21の閉弁タイミングに相当するIVC角度がθ1(例えば、49度)の場合を示し、破線は、IVC角度がθ2(例えば、94度)の場合を示す。図6に示すように、開度THが大きい高負荷ほど脈動の大きさを表す脈動振幅率が大きくなり、開度THが所定値を超えると、吸気量センサ10に吸気が逆流し、吸気量センサ10に脈動現象が生じ得る脈動領域となる。図6に示すように、脈動領域に至る開度THは、エンジン回転数およびIVC角度に応じて変化する。このような開度THの閾値は、エンジン回転数およびIVC角度に応じて予め実験等により設定される。
このようなサージ領域や還流状態、脈動領域では、空気量算出部41は、吸気量センサ10の検出値を用いずに空気量を算出する必要がある。このようなサージ領域、還流状態または脈動領域における通過空気量QBは、一般に、スロットルバルブ8の上流の過給圧P2に対する下流の吸気圧P3の圧力比P3/P2に応じて変化する流量関数F、スロットルバルブ8の開度THに応じて変化する流量係数Cdおよび開口面積A、大気圧P1、大気温TA、気体定数R、比熱比κを用いて、次式(iii)により算出される。
Figure 2021050632
しかしながら、式(iii)は、スロットルバルブ8の上下流に圧力差があり、周囲が絞り部として機能することを前提とする。このため、例えばスロットル全開時等、スロットルバルブ8の上下流に圧力差がなく、周囲が絞り部として機能していない場合には、通過空気量QBを正確に算出することができない。
図7は、スロットルバルブ8の上下流の圧力比P3/P2と流量関数Fとの関係を示す図であり、図8は、圧力比P3/P2と、式(iii)により算出された通過空気量QBの算出誤差との関係を示す図である。図7に示すように、スロットルバルブ8の上下流の圧力差がなくなり、圧力比P3/P2が1に近づくと、流量関数Fの値は急激に減少する。このとき、図8に示すように、圧力比P3/P2が所定値R1(例えば、約0.92)を超えて1に近付くと、式(iii)による通過空気量QBの算出誤差が許容範囲(例えば、±10%)を超えて急激に増大する。
そこで、本実施形態では、サージ領域、還流状態または脈動領域における空気量の算出方法をスロットルバルブ8の上下流の圧力差に応じて切り換え、スロットルバルブ8の全開時にも空気量を精度よく推定できるよう、以下のように装置100を構成する。
図4に示すように、コントローラ40は、機能的構成としてさらに、脈動判定部43と、還流判定部44と、サージ判定部45と、開度推定部46と、圧力推定部47と、補正量算出部48とを有する。
脈動判定部43は、スロットル開度センサ8bにより検出されたスロットルバルブ8の開度THと、エンジン1の運転状態に応じて予め設定された特性とに基づいて、吸気量センサ10に吸気が逆流する脈動領域であるか否かを判定する。すなわち、図6に示すように、スロットルバルブ8の開度THがエンジン回転数およびIVC角度に応じて予め設定された閾値を超えているか否かを判定する。
還流判定部44は、過給圧センサ12により検出された過給圧P2と吸気圧センサ13により検出された吸気圧P3とに基づいて、開閉バルブ6が開放された還流状態であるか否かを判定する。すなわち、図2に示すように、過給圧P2と吸気圧P3との差圧が過給圧P2に応じて予め設定された閾値を超えているか否かを判定する。なお、過給圧P2が大気圧センサ11により検出された大気圧P1以下で、過給圧P2が大気圧P1と同等の圧力として安定している場合は、開閉バルブ6が開放された状態であっても還流が発生しないため、還流状態ではないと判定する。特に車両の減速直後には、圧力センサ11〜13の検出精度等によっては、このように過給圧P2が安定した状態を判定できず、誤って還流状態であると判定されて空燃比を適切に制御できなくなることがある。したがって、例えば、タイマを設定することで、還流状態であると判定される還流判定の継続時間を所定時間内に制限することが好ましい。
サージ判定部45は、吸気量センサ10により検出された吸気量QAと、過給圧センサ12により検出された過給圧P2と、予め設定された特性とに基づいて、コンプレッサ4bのサージ領域であるか否かを判定する。すなわち、図5に示すように、大気圧P1に対する過給圧P2の圧力比P2/P1が吸気量QAに応じて予め設定された最大圧力比を超えているか否かを判定する。
空気量算出部41は、脈動判定部43と還流判定部44とサージ判定部との判定結果に基づいて、通過空気量QBおよび吸入空気量QCを算出する。すなわち、脈動領域でなく、かつ、還流状態でなく、かつ、サージ領域でないと判定されると、吸気量センサ10により検出された吸気量QAに基づいて通過空気量QBを算出し、式(i),(ii)により吸入空気量QCを算出する。
一方、脈動領域または還流状態またはサージ領域であると判定されると、吸気量センサ10の検出値を用いずに空気量を算出する。この場合、脈動領域または還流状態またはサージ領域であると判定され、かつ、スロットルバルブ8の上下流の圧力比P3/P2が所定値R1以下のときは、式(iii)を用いて通過空気量QBを算出し、式(i),(ii)により吸入空気量QCを算出する。すなわち、スロットル開度センサ8bにより検出されたスロットルバルブ8の開度THと、過給圧センサ12により検出された過給圧P2と、吸気圧センサ13により検出された吸気圧P3とに基づいて、式(iii)により通過空気量QBを算出する。
脈動領域または還流状態またはサージ領域であると判定され、かつ、スロットルバルブ8の上下流の圧力比P3/P2が所定値R1より大きいときは、吸気圧センサ13により検出された吸気圧P3と予め設定された特性とに基づいて空気量を算出する。すなわち、エンジン回転数、カム位相、吸気圧P3等の各種パラメータに基づいて予め設定された複数の特性から、吸気圧センサ13により検出された吸気圧P3に対応する吸入空気量Qcを算出する。
空気量算出部41により算出される空気量は、吸気通路2内の各部を吸気が一定の流速で通過し、吸気量センサ10を通過する吸気がそのままスロットルバルブ8を通過するエンジン1の定常運転状態における値として算出される。したがって、吸気通路2内の各部で流速が経時的に変化するエンジン1の過渡運転状態では、空気量算出部41により算出される空気量を補正(過渡補正)する必要がある。
開度推定部46は、スロットル開度センサ8bにより検出されたスロットルバルブ8の開度THと、コントローラ40(図4)からスロットル用アクチュエータ8aに指令される目標開度TH0と、スロットル用アクチュエータ8aの応答遅れ特性と、に基づいて、所定時間Δt後のスロットルバルブ8の推定開度TH<^>を算出する。所定時間Δtは、例えば、エンジン1の燃焼サイクル(吸入行程)よりも十分短い微小な時間である。すなわち、エンジン回転数にかかわらず過渡状態の吸入空気量の変化を表現できるよう、高回転時の吸入行程よりも十分短い固定値に設定される。
図9は、スロットル用アクチュエータ8aの応答遅れ特性を示す図であり、スロットルバルブ8の目標開度TH0を破線、検出された開度THを実線、所定時間Δt後の推定開度TH<^>を一点鎖線でそれぞれ示す。図9に示すように、スロットルバルブ8の開度THは、所定のスロットル遅れ時間TdTHだけ遅れて目標開度TH0に追従する。従って、所定時間Δt後の推定開度TH<^>は、次式(iv)により算出される。
TH<^>=TH+(TH0−TH)Δt/TdTH ・・・(iv)
圧力推定部47は、大気圧、エンジン回転数、カム位相等の各種パラメータに応じて予め設定された特性に基づいて所定時間Δt後の推定過給圧P2<^>および推定吸気圧P3<^>を算出する。
補正量算出部48は、空気量算出部41により算出された空気量を補正するための補正量を算出する。具体的には、先ず、スロットル開度センサ8bにより検出された開度THと、過給圧センサ12により検出された過給圧P2と、吸気圧センサ13により検出された吸気圧P3とに基づいて、スロットルバルブ8を通過する第1空気量Q1を算出する。また、開度推定部46により算出された推定開度TH<^>と、圧力推定部47により算出された推定過給圧P2<^>および推定吸気圧P3<^>とに基づいて、所定時間Δt後にスロットルバルブ8を通過する第2空気量Q2を算出する。次いで、第1空気量Q1と第2空気量Q2との差を補正量(Q2−Q1)として算出する。
エンジン1の運転状態が過渡状態の場合、空気量算出部41は、脈動判定部43と還流判定部44とサージ判定部との判定結果に基づいて算出した定常状態の空気量に、補正量算出部48により算出された補正量を加算することで過渡補正を行う。
なお、空気量算出部41は、式(iii)により空気量QB,QCを算出するとき、算出された吸入空気量QCが所定の上限空気量Qmaxを超えると、吸入空気量QCを上限空気量Qmaxに制限する。これは、空気量の算出方法を切り換えるときに切り換え段差が発生することを防止するためである。上限空気量Qmaxは、通常、エンジン回転数、カム位相、吸気圧P3等の各種パラメータに基づいて予め設定された複数の特性から算出される吸入空気量Qcに設定される。このような上限空気量Qmaxに、補正量算出部48により算出された補正量を加算することで、過渡補正後の吸入空気量QCが不適切に制限されることを防止することができる。
図10は、上限空気量Qmaxについて説明するための図であり、空気量算出部41により算出された吸入空気量QCの一例を示す。図10において、時刻t2までは、脈動領域または還流状態またはサージ領域であると判定され、かつ、スロットルバルブ8の上下流の圧力比P3/P2が所定値R1以下であり、式(iii)を用いて空気量QB,QCが算出される。時刻t2以降は、脈動領域または還流状態またはサージ領域であると判定され、かつ、スロットルバルブ8の上下流の圧力比P3/P2が所定値R1より大きく、吸気圧P3と予め設定された特性とに基づいて空気量QCが算出される。したがって、時刻t2までの吸入空気量QCのみが上限空気量Qmaxに制限される。
図10に示すように、過渡補正前の式(iii)に基づく吸入空気量QCと吸気圧に基づく吸入空気量QCとの間に差がある場合でも、通常の上限空気量Qmaxにより式(iii)に基づく吸入空気量QCを制限することで時刻t2で切り換え段差が発生することがない。しかしながら、過渡補正量を考慮しない通常の上限空気量Qmaxによって過渡補正後の吸入空気量QCを制限すると、時刻t1〜t2において過渡補正後の吸入空気量QCが上限空気量Qmaxに制限される。この場合、時刻t2において空気量の算出方法を切り換えるときに、上限空気量Qmaxと過渡補正後の吸入空気量QCとの間で切り換え段差が発生する。一方、過渡補正量を考慮した上限空気量Qmaxによって過渡補正後の吸入空気量QCを制限すると、過渡補正後の吸入空気量QCが不適切に制限されることがなく、時刻t2において切り換え段差が発生することがない。
さらに、空気量算出部41は、図10の時刻t2のように空気量の算出方法を切り換えるとき、LAFセンサ15の応答性を考慮して、徐々に切り換えを行う。この点について説明すると、燃料噴射制御部42は、空気量算出部41により算出された吸入空気量QCに基づいてインジェクタ26による燃料噴射量を決定するとともに、LAFセンサ15により検出された空燃比に基づいて燃料噴射量を補正する。
この場合、インジェクタ26から噴射された燃料がシリンダ16から排出されてLAFセンサ15に到達するまでには、所定の遅れ時間が生じる。このような遅れ時間は、エンジン回転数が低回転ほど、あるいは排気流量(体積流量)が小さいほど長くなる。エンジン1の排気流量は、例えばエンジン回転数および排気温センサ、排気圧センサ等の検出値に基づいて算出することができる。
また、LAFセンサ15の検出値は、所定の応答遅れ(一次応答遅れ)をもって実際の空燃比に追従する。このようなLAFセンサ15の応答性は、高負荷ほど高くなる。エンジン1の負荷は、例えばアクセル開度等の検出値に基づく要求負荷として算出することができる。
図11A,11Bは、空気量算出部41による算出方法を切り換えたときの検出空燃比の変化について説明するための図であり、図10の時刻t2付近の吸入空気量QCの算出値および算出誤差、実際の空燃比および検出空燃比の経時的な変化の一例を示す。図11Aの例では、空気量の算出方法が瞬間的に切り換えられ、図11Bの例では、徐々に切り換えられる。
図11A,11Bの例では、時刻t2以前で式(iii)を用いて吸入空気量QCを算出するときの算出誤差が高く、式(iii)を用いて算出された値と、吸気圧P3と予め設定された特性とに基づいて算出された値とが乖離している。このような状態で、図11Aに示すように、算出誤差が低い予め設定された特性を用いる算出方法に切り換えられると、切り換え段差が発生し、LAFセンサ15により検出される空燃比が実際の空燃比から乖離する(時刻t2)。このように空気量の算出方法の切り換えにより切り換え段差が発生すると、LAFセンサ15の検出値が実際の空燃比に追従するまでの期間、燃料噴射制御部42による空燃比フィードバック制御が適切に行われなくなり、燃焼性能が悪化する。
一方、図11Bの例では、LAFセンサ15の応答性を考慮して、時刻t2からt3にかけて徐々に切り換えが行われる。この場合、空気量の算出方法の瞬間的な切り換えによる切り換え段差が発生せず、LAFセンサ15の検出値が実際の空燃比に追従できるため、燃料噴射制御部42による空燃比フィードバック制御を適切に行うことができる。
図12は、予めメモリに記憶されたプログラムに従いコントローラ40により実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、別途の判定処理によりエンジン1の運転状態が定常状態であると判定されると開始され、所定時間毎に繰り返される。
先ずステップS1で、センサ群70からの入力値およびアクチュエータ群80への出力値を読み込む。次いでステップS2で、吸気量センサ10、大気圧センサ11および過給圧センサ12の検出値に基づいてコンプレッサ4bのサージ領域であるか否かを判定する。ステップS2で肯定されるとステップS6に進み、否定されるとステップS3に進む。ステップS3では、過給圧センサ12および吸気圧センサ13の検出値に基づいて開閉バルブ6が開放された還流状態であるか否かを判定する。ステップS3で肯定されるとステップS6に進み、否定されるとステップS4に進む。ステップS4では、スロットル開度センサ8bの検出値等に基づいて吸気量センサ10の脈動領域であるか否かを判定する。ステップS4で肯定されるとステップS6に進み、否定されるとステップS5に進む。ステップS5では、吸気量センサ10により検出された吸気量QAに基づいて通過空気量QBを算出し、式(i),(ii)により吸入空気量QCを算出する。
ステップS6では、スロットルバルブ8の上下流の圧力比P3/P2が所定値R1以下であるか否かを判定する。ステップS6で肯定されるとステップS7に進み、否定されるとステップS8に進む。ステップS7では、式(iii)を用いて通過空気量QBを算出し、式(i),(ii)により吸入空気量QCを算出する。ステップS8では、吸気圧センサ13およびクランク角センサ、カム角センサ等の検出値に基づいて吸入空気量Qcを算出する。
このようにサージ領域や還流状態、脈動領域を判定して空気量の算出に吸気量センサ10の検出値を用いるか否かを切り換えるため、吸気の逆流により不正確となった検出値を用いることがなく、空気量の算出精度を向上することができる(ステップS1〜S8)。また、スロットルバルブ8の上下流の圧力差に応じて空気量の算出方法を切り換えるため、スロットルバルブ8の全開時にも空気量を精度よく推定することができる(ステップS6〜S8)。
本発明の実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)装置100は、吸気通路2に配置されたコンプレッサ4bと、コンプレッサ4bの下流側から上流側へ吸気を還流する還流通路5と、コンプレッサ4bの下流側に配置されたスロットルバルブ8と、スロットルバルブ8の上流側と下流側との圧力差に応じて還流通路5を開閉する開閉バルブ6とを有するエンジン1の制御装置である(図1)。
装置100は、コンプレッサ4bの上流側の吸気通路2に配置された吸気量センサ10と、スロットルバルブ8の開度THを検出するスロットル開度センサ8bと、コンプレッサ4bとスロットルバルブ8との間の吸気通路2に配置された過給圧センサ12と、スロットルバルブ8の下流側の吸気通路2に配置された吸気圧センサ13と、スロットル開度センサ8bにより検出された開度THと、エンジン1の運転状態に応じて予め設定された特性と、に基づいて、吸気量センサ10に脈動現象が生じ得る脈動領域であるか否かを判定する脈動判定部43と、過給圧センサ12により検出された過給圧P2と吸気圧センサ13により検出された吸気圧P3とに基づいて、開閉バルブ6が開放された還流状態であるか否かを判定する還流判定部44と、吸気量センサ10により検出された吸気量QAと、過給圧センサ12により検出された過給圧P2と、予め設定された特性と、に基づいて、コンプレッサ4bにサージ現象が生じ得るサージ領域であるか否かを判定するサージ判定部45と、脈動判定部43と還流判定部44とサージ判定部との判定結果に基づいて、スロットルバルブ8を通過してエンジン1のシリンダ16内に吸入される空気量を算出する空気量算出部41とを備える(図4)。
空気量算出部41は、脈動判定部43により脈動領域でないと判定され、かつ、還流判定部44により還流状態でないと判定され、かつ、サージ判定部45によりサージ領域でないと判定されると、吸気量センサ10により検出された吸気量QAに基づいてスロットルバルブ8を通過する通過空気量QBを算出し、算出された通過空気量QBに基づいて、エンジン1のシリンダ16内に吸入される吸入空気量QCを算出する。
また、空気量算出部41は、脈動判定部43により脈動領域であると判定され、または、還流判定部44により還流状態であると判定され、または、サージ判定部45によりサージ領域であると判定され、かつ、過給圧センサ12により検出された過給圧P2に対する吸気圧センサ13により検出された吸気圧P3の比である圧力比P3/P2が所定値R1以下のとき、スロットル開度センサ8bにより検出された開度THと、過給圧センサ12により検出された過給圧P2と、吸気圧センサ13により検出された吸気圧P3と、に基づいて通過空気量QBを算出し、算出された通過空気量QBに基づいて、吸入空気量QCを算出する。
また、空気量算出部41は、脈動判定部43により脈動領域であると判定され、または、還流判定部44により還流状態であると判定され、または、サージ判定部45によりサージ領域であると判定され、かつ、圧力比P3/P2が所定値R1より大きいとき、吸気圧センサ13により検出された吸気圧P3と、予め設定された特性と、に基づいて、吸入空気量QCを算出する。
すなわち、サージ領域や還流状態、脈動領域を判定して空気量の算出に吸気量センサ10の検出値を用いるか否かを切り換えるため、吸気の逆流により不正確となった検出値を用いることがなく、空気量の算出精度を向上することができる。また、スロットルバルブ8の上下流の圧力差に応じて空気量の算出方法を切り換えるため、スロットルバルブ8の全開時にも空気量を精度よく推定することができる。
(2)装置100は、スロットルバルブ8の開度を指令するコントローラ40と、スロットル開度センサ8bにより検出された開度THと、コントローラ40により指令された目標開度TH0と、予め設定された特性と、に基づいて、所定時間Δt後のスロットルバルブ8の推定開度TH<^>を算出する開度推定部46と、エンジン1の運転状態を表すエンジン回転数、カム位相等の各種パラメータを検出するクランク角センサ、カム角センサ等の各種センサと、各種センサにより検出された各種パラメータに応じて予め設定された特性に基づいて、所定時間Δt後のスロットルバルブ8の上流および下流の推定過給圧P2<^>および推定吸気圧P3<^>を算出する圧力推定部47と、空気量算出部41により算出された通過空気量QBを補正するための補正量を算出する補正量算出部48とをさらに備える(図4)。
補正量算出部48は、スロットル開度センサ8bにより検出された開度THと、過給圧センサ12により検出された過給圧P2と、吸気圧センサ13により検出された吸気圧P3と、に基づいて、スロットルバルブ8を通過する第1空気量Q1を算出し、開度推定部46により算出された推定開度TH<^>と、圧力推定部47により算出された推定過給圧P2<^>および推定吸気圧P3<^>と、に基づいて、所定時間Δt後にスロットルバルブ8を通過する第2空気量Q2を算出し、さらに第1空気量Q1と第2空気量Q2との差を補正量(Q2−Q1)として算出する。これにより、空気量算出部41により算出される定常状態の空気量を、必要に応じて過渡補正することができる。
(3)空気量算出部41は、算出された吸入空気量QCが所定の上限空気量Qmaxを超えると、吸入空気量QCを上限空気量Qmaxに制限する。上限空気量Qmaxは、吸気圧センサ13により検出された吸気圧P3と予め設定された特性とに基づいて算出された吸入空気量Qcと、補正量算出部48により算出された補正量(Q2−Q1)と、の和である。これにより、式(iii)のような一般式による空気量の算出誤差を制限するとともに、過渡補正後の吸入空気量QCが不適切に制限されることを防止することができ、空気量の算出方法を切り換えるときの切り換え段差を抑制することができる。
(4)空気量算出部41は、脈動判定部43により脈動領域であると判定され、または、還流判定部44により還流状態であると判定され、または、サージ判定部45によりサージ領域であると判定され、かつ、圧力比P3/P2が所定値R1以下の状態から、圧力比P3/P2が所定値R1を超えると、エンジン1の排気流量、回転数および要求負荷のいずれかに基づいて、スロットル開度センサ8bにより検出された開度THと過給圧センサ12により検出された過給圧P2と吸気圧センサ13により検出された吸気圧P3とに基づいて算出された吸入空気量QCを、吸気圧センサ13により検出された吸気圧P3と予め設定された特性とに基づいて算出された吸入空気量QCに徐々に変化させる。
これにより、空気量の算出方法の瞬間的な切り換えによる切り換え段差が抑制され、LAFセンサ15の検出値が実際の空燃比に追従できるため、燃料噴射制御部42による空燃比フィードバック制御を適切に行うことができる。
(5)装置100は、空気量算出部41により算出されたシリンダ16内に吸入空気量QCに基づいてシリンダ16内への燃料の噴射を制御する燃料噴射制御部42をさらに備える(図4)。これにより、スロットルバルブ8の上下流の圧力差にかかわらず通過空気量QB、吸入空気量QCを精度よく算出することで、エンジン1の燃料噴射制御を適切に行うことができる。
上記実施形態は種々の形態に変形することができる。以下、変形例について説明する。上記実施形態では、図1、図2においてエンジン1の本体および補機を具体的に示したが、これらは例示であって、内燃機関の制御装置が適用される内燃機関はこのようなものに限らない。例えば、排気通路から吸気通路への排気の還流(外部EGR)を行うEGR通路およびEGRバルブが設けられてもよい。この場合は、吸入空気量QCが外部EGRガス量に応じて補正される。
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の一つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
1 エンジン、2 吸気通路、3 排気通路、4b コンプレッサ、5 還流通路、6 開閉バルブ、8 スロットルバルブ、8a スロットル用アクチュエータ、8b スロットル開度センサ、9 吸気マニホルド、10 吸気量センサ、11 大気圧センサ、12 過給圧センサ、13 吸気圧センサ、16 シリンダ、26 インジェクタ、40 コントローラ、41 空気量算出部、42 燃料噴射制御部、43 脈動判定部、44 還流判定部、45 サージ判定部、46 開度推定部、47 圧力推定部、48 補正量算出部

Claims (5)

  1. 吸気通路に配置された圧縮機と、前記圧縮機の下流側から上流側へ吸気を還流する還流通路と、前記圧縮機の下流側に配置されたスロットルバルブと、前記スロットルバルブの上流側と下流側との圧力差に応じて前記還流通路を開閉する開閉バルブと、を有する内燃機関の制御装置であって、
    前記圧縮機の上流側の前記吸気通路に配置された流量検出器と、
    前記スロットルバルブの開度を検出する開度検出器と、
    前記圧縮機と前記スロットルバルブとの間の前記吸気通路に配置された第1圧力検出器と、
    前記スロットルバルブの下流側の前記吸気通路に配置された第2圧力検出器と、
    前記開度検出器により検出された開度と、前記内燃機関の運転状態に応じて予め設定された特性と、に基づいて、前記流量検出器に脈動現象が生じ得る脈動領域であるか否かを判定する脈動判定部と、
    前記第1圧力検出器により検出された圧力と前記第2圧力検出器により検出された圧力とに基づいて、前記開閉バルブが開放された還流状態であるか否かを判定する還流判定部と、
    前記流量検出器により検出された吸気流量と、前記第1圧力検出器により検出された圧力と、予め設定された特性と、に基づいて、前記圧縮機にサージ現象が生じ得るサージ領域であるか否かを判定するサージ判定部と、
    前記脈動判定部と、前記還流判定部と、前記サージ判定部との判定結果に基づいて、前記スロットルバルブを通過して前記内燃機関のシリンダ内に吸入される空気量を算出する空気量算出部と、を備え、
    前記空気量算出部は、
    前記脈動判定部により脈動領域でないと判定され、かつ、前記還流判定部により還流状態でないと判定され、かつ、前記サージ判定部によりサージ領域でないと判定されると、前記流量検出器により検出された吸気流量に基づいて、前記スロットルバルブを通過する空気量を算出し、算出された前記スロットルバルブを通過する空気量に基づいて、前記内燃機関のシリンダ内に吸入される空気量を算出し、
    前記脈動判定部により脈動領域であると判定され、または、前記還流判定部により還流状態であると判定され、または、前記サージ判定部によりサージ領域であると判定され、かつ、前記第1圧力検出器により検出された圧力に対する前記第2圧力検出器により検出された圧力の比である圧力比が所定値以下のとき、前記開度検出器により検出された開度と、前記第1圧力検出器により検出された圧力と、前記第2圧力検出器により検出された圧力と、に基づいて、前記スロットルバルブを通過する空気量を算出し、算出された前記スロットルバルブを通過する空気量に基づいて、前記内燃機関のシリンダ内に吸入される空気量を算出し、
    前記脈動判定部により脈動領域であると判定され、または、前記還流判定部により還流状態であると判定され、または、前記サージ判定部によりサージ領域であると判定され、かつ、前記圧力比が前記所定値より大きいとき、前記第2圧力検出器により検出された圧力と、予め設定された特性と、に基づいて、前記スロットルバルブを通過して前記内燃機関のシリンダ内に吸入される空気量を算出することを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
    前記スロットルバルブの開度を指令する開度指令部と、
    前記開度検出器により検出された開度と、前記開度指令部により指令された開度と、予め設定された特性と、に基づいて、所定時間後の前記スロットルバルブの開度を算出する開度算出部と、
    前記内燃機関の運転状態を表す物理量を検出する物理量検出部と、
    前記物理量検出部により検出された物理量に応じて予め設定された特性に基づいて、前記所定時間後の前記スロットルバルブの上流および下流の圧力を算出する圧力算出部と、
    前記空気量算出部により算出された前記スロットルバルブを通過する空気量を補正するための補正量を算出する補正量算出部と、をさらに備え、
    前記補正量算出部は、前記開度検出器により検出された開度と、前記第1圧力検出器により検出された圧力と、前記第2圧力検出器により検出された圧力と、に基づいて、前記スロットルバルブを通過する第1空気量を算出し、前記開度算出部により算出された開度と、前記圧力算出部により算出された圧力と、に基づいて、前記所定時間後に前記スロットルバルブを通過する第2空気量を算出し、さらに前記第1空気量と前記第2空気量との差を前記補正量として算出することを特徴とする内燃機関の制御装置。
  3. 請求項2に記載の内燃機関の制御装置において、
    前記空気量算出部は、算出された空気量が所定の上限空気量を超えると、前記内燃機関のシリンダ内に吸入される空気量を前記上限空気量に制限し、
    前記上限空気量は、前記第2圧力検出器により検出された圧力と予め設定された特性とに基づいて算出された前記内燃機関のシリンダ内に吸入される空気量と、前記補正量算出部により算出された補正量と、の和であることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置において、
    前記空気量算出部は、前記脈動判定部により脈動領域であると判定され、または、前記還流判定部により還流状態であると判定され、または、前記サージ判定部によりサージ領域であると判定され、かつ、前記圧力比が前記所定値以下の状態から、前記圧力比が前記所定値を超えると、前記内燃機関の排気流量、回転数および要求負荷のいずれかに基づいて、前記開度検出器により検出された開度と前記第1圧力検出器により検出された圧力と前記第2圧力検出器により検出された圧力とに基づいて算出された空気量を、前記第2圧力検出器により検出された圧力と予め設定された特性とに基づいて算出された空気量に徐々に変化させることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置において、
    前記空気量算出部により算出された前記内燃機関のシリンダ内に吸入される空気量に基づいて、前記シリンダ内への燃料の供給を制御する燃料供給制御部をさらに備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
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