JP2021050136A - 非水系電解液二次電池及び蓄電デバイス - Google Patents

非水系電解液二次電池及び蓄電デバイス Download PDF

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Abstract

【課題】入出力特性及び耐久性に優れる蓄電デバイス等を与え得る新規なリチウム塩及びその混合物、並びにこれらを用いた非水系電解液及び蓄電デバイス等を提供する。【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種以上含むことを特徴とする非水系電解液、及びこれを用いた蓄電デバイス。LiBFn(NCO)4−n・・・(1)(式中、nは0以上3以下の整数を表す。)【選択図】図1

Description

本発明は、新規構造のリチウム塩及びその混合物、並びにこれらを用いた非水系電解液及び蓄電デバイスに関し、詳しくは、一般式LiBF(NCO)4−nで表されるリチウム塩及びその混合物、並びにこれらを用いた非水系電解液及び蓄電デバイスに関する。
携帯電話、ノートパソコン等のいわゆる民生用の電源から自動車用等の駆動用車載電源や定置用大型電源等の広範な用途において、リチウム二次電池や電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等の非水系電解液を用いた蓄電デバイスが実用化されている。しかしながら、近年の蓄電デバイスに対する高性能化の要求はますます高くなっている。例えばリチウム二次電池においては、入出力特性、充放電レート特性、インピーダンス特性、サイクル特性、保存特性、連続充電特性、安全性等の諸特性を高い水準で達成することが求められている。
これまで、リチウム二次電池の諸特性を改善するための手段として、正極や負極の活物質や、非水系電解液を始めとする様々な電池の構成要素について、数多くの技術が検討されている。
例えば、特許文献1には、環状カルボン酸エステルと、炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する環状炭酸エステルと、炭素−炭素不飽和結合を有しない環状炭酸エステルからなる非水溶媒、並びにその非水溶媒に溶解させた溶質からなる非水電解液が開示されている。この特許文献1では、溶質にLiPFとLiBFの双方を用いると、LiPFやLiBFを単独で用いた場合に比べて、サイクル特性が向上することが示されている。
また、非特許文献1には、LiPFを電解質塩として非水系溶媒中に溶解させ、さらにリチウムビス(オキサラート)ボレート(LiBOB)を添加した非水系電解液では、LiBOBを添加していない非水系電解液に比べて、高温サイクル時の容量維持率が向上することが示されている。
また、非特許文献2には、リチウムビス(オキサラート)ボレートが非水系電解液二次電池の負極表面上で形成する皮膜の構造について言及されている。非特許文献2によると、リチウムオキサラート塩は、形式的負電荷を持つ原子と、それに結合した配位子(すなわちオキサラート骨格)との結合が、電気化学的還元により開列し、さらに他の分子と再結合することが報告されている。
特開2005−101003号公報
Journal of Power Sources, 174, 852-855 (2007). Wu et al., Electrochemical and Solid-State Lett. 6, A144 (2003).
上記のように近年の非水系電解液を用いた蓄電デバイスの高性能化への要求が高まる中、さらなる電池性能の向上、すなわち、初期入出力特性、充放電レート特性、インピーダンス特性、サイクルや保存や連続充電といった耐久時の容量維持率や、耐久後の入出力維持率の向上等が要求されている。
しかしながら、特許文献1や非特許文献1に記載されている電解液を用いた非水電解液電池では、初期入出力特性や、耐久時の容量維持率、耐久後の入出力特性等の諸特性が、未だ十分とは言い難かった。
このような理由については現在のところ完全に解明されている訳ではないが、以下のとおり推測される。すなわち、LiBFやLiBOBといった、アニオン骨格中にホウ素を含有する化合物では、負極上で前記化合物が還元分解されることで形成される皮膜の存在により、溶媒や電解質塩の分解反応が抑制されて、サイクル時の容量維持率が向上する傾向にある。それと同時に、前記負極皮膜はリチウムイオンの挿入脱離反応の抵抗成分となるため、サイクル後の入出力特性が悪化する傾向にある。すなわち、これらはトレードオフの関係にあり、この特性背反からの脱却が希求されている。
本発明は、かかる背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、入出力特性及び耐久性に優れる蓄電デバイス等を与え得る新規なリチウム塩及びその混合物、並びにこれらを用いた非水系電解液及び蓄電デバイス等を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、新規構造のリチウム塩を創出し、これを含有する非水系電解液を調製し、さらにこの非水系電解液を各種蓄電デバイスに用いることで、上述したトレードオフの関係を脱却し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、例えば以下〔1〕〜〔10〕に示す具体的態様等を提供する。
〔1〕
下記一般式(1)で表される化合物。
LiBF(NCO)4−n ・・・(1)
(式中、nは0以上3以下の整数を表す。)
〔2〕
下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種以上含む
ことを特徴とする非水系電解液。
LiBF(NCO)4−n ・・・(1)
(式中、nは0以上4以下の整数を表す。)
〔3〕
フルオロリン酸リチウム塩、上記一般式(1)に記載の化合物以外のホウ素含有リチウム塩、スルホン酸リチウム塩、及びイミドリチウム塩よりなる群から選ばれる少なくとも一種をさらに含むことを特徴とする
上記〔2〕に記載の非水系電解液。
〔4〕
炭素−炭素不飽和結合及びフッ素原子の少なくとも一方を含有する環状カーボネートをさらに含有することを特徴とする
上記〔2〕又は〔3〕に記載の非水系電解液。
〔5〕
上記〔2〕乃至〔4〕のいずれか一項に記載の非水系電解液を含む
蓄電デバイス。
〔6〕
下記一般式(1)で表される化合物を2種以上含有し、且つ、イソシアナト置換数4−nの平均値mが0.1〜3.9である
ことを特徴とする混合物。
LiBF(NCO)4−n ・・・(1)
(式中、nは0以上4以下の整数を表す。)
〔7〕
下記一般式(1)で表され、且つ、イソシアナト置換数4−nの平均値mが0.1〜3.9であるリチウム塩混合物を少なくとも含む
ことを特徴とする非水系電解液。
LiBF(NCO)4−n ・・・(1)
(式中、nは0以上4以下の整数を表す。)
〔8〕
フルオロリン酸リチウム塩、上記一般式(1)に記載の化合物以外のホウ素含有リチウム塩、スルホン酸リチウム塩、及びイミドリチウム塩よりなる群から選ばれる少なくとも一種をさらに含むことを特徴とする
上記〔7〕に記載の非水系電解液。
〔9〕
炭素−炭素不飽和結合及びフッ素原子の少なくとも一方を含有するカーボネートをさらに含有することを特徴とする
上記〔7〕又は〔8〕に記載の非水系電解液。
〔10〕
上記〔7〕乃至〔9〕のいずれか一項に記載の非水系電解液を含む
蓄電デバイス。
本発明者は、初期入出力特性、及びサイクル後の入出力特性等の諸特性に優れる非水系電解液を開発するべく、リチウム電池等の負極皮膜の形成機構や素反応速度に注目し、様々な化合物とその組み合わせの作用効果について種々の検討を実施した。
その結果、新規構造のリチウム塩、すなわち上記一般式(1)で表される化合物を創出し、これを非水系電解液の電解質塩として用いて、入出力特性及び耐久性に優れる蓄電デバイス等を実現する技術を構築した。
蓄電デバイスにおける電解液の役割は、電極反応に関与するイオン種を対極に高速に輸送し、電極表面上にてスムースに電気化学反応させることにある。故に電解質塩には、通常は溶媒中に溶解しやすい構造であって、溶媒中でイオン解離を促進することが要求される。さらに電極反応に寄与しないイオン種には、蓄電デバイスの動作電圧の範囲内で電気分解しない耐電圧性が要求される。他方、最近報告されている電解質塩には、電極表面において積極的に電気分解させ、その分解物の機能により電極上でさらなる副反応を抑制することで、蓄電デバイスの耐久性を向上させる試みも報告されている。
例えば、非特許文献2に記載されているように、LiBOBは、電気化学的還元により形式的負電荷を持つ原子とそれに結合した配位子(すなわちオキサラート骨格)との結合が、開裂し、さらに他の分子と再結合を繰り返すことにより、負極表面上に熱的・化学的に安定な皮膜を形成する。これが溶媒等の副反応を抑制することにより、電池の耐久性が向上する。但し、上記過程は電気化学的還元をトリガとして起こることから、電池本来の充放電過程に与える影響が無視できない。また、本過程にて形成されるLiBOBの初期被膜は柔軟性に欠ける構造のイオン性に乏しい分子が表面を覆うことで効果を発現する機
構であることから、副作用としてリチウムイオン透過性が低くなり、故に初期出力が低下する欠点があった。
本発明者らは、上記反応を鑑み、オキサラート骨格に置き換わる官能基を探索した。その結果、官能基としてイソシアナト(NCO)構造を選択することにより、入出力特性と耐久性の双方が共に向上することを見出した。NCO基は電子吸引基であり、4級ホウ素化合物構造の負電荷を適切に分散させることで、溶媒中への溶解性を向上させることができる。また、NCO基は塩基反応による付加反応が可能であり、このようにして形成される強固な皮膜によって、負極と溶媒との反応が抑えられる。故にNCO基を有するホウ素含有アニオンは、例えば炭素負極表面の官能基への付加反応による負極保護、還元されたNCO基を有するホウ素含有アニオンと還元されていないNCO基を有するホウ素含有アニオンとの分子間反応による皮膜形成による負極保護等に関与し、これらが相まった結果、耐久性が向上されていると推定される。これらの反応は、電気化学的作用なしに進行するため、電池本来の充放電過程に与える影響を考慮しなくてよい。
さらに、上記反応は4級ホウ素アニオン構造を維持したまま進行する。そして、上記反応は、反応活性を有する表面官能基を直接保護するため、表面を単に覆うだけの保護皮膜とは異なり、リチウムイオンの透過性に与える影響が少ない。すなわち、4級ホウ素アニオン構造の結合により形成される皮膜は、薄く均一な構造であり、4級ホウ素アニオン構造が維持されていることにより、イオン伝導性に優れる等の利点がある。これらのことから、NCO基を有するホウ素含有アニオンによる保護作用は、入出力特性の向上に寄与していると考えられる。
ここで、上記NCO基を有するホウ素含有アニオン構造中にさらにフッ素原子が導入されていれば、フッ素原子はNCO基よりも電子吸引性が高く、4級ホウ素化合物の負電荷をさらに非局在化させることができるため、負極表面でのリチウムイオン透過性がさらに向上し、高い入出力特性を与えることができる。
本発明によれば、一般式LiBF(NCO)4−nで表される新規構造のリチウム塩及びその混合物を提供することができる。そして、これらを非水系電解液の電解質塩として用いることで、入出力特性及び耐久性に優れる蓄電デバイス等を実現することができる。
実施例のリチウム塩の19F−NMR測定結果を示すチャートである。 実施例のリチウム塩の11B−NMR測定結果を示すチャートである。 実施例のリチウム塩のESI−MS測定結果を示すチャートである。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。なお、本明細書において、例えば「1〜100」との数値範囲の表記は、その下限値「1」及び上限値「100」の双方を包含するものとする。また、他の数値範囲の表記も同様である。
<1.新規構造のリチウム塩>
本実施形態のリチウム塩は、下記一般式(1)で表される新規構造を有する。この新規構造のリチウム塩は、n個のフッ素原子と(4−n)個のイソシアナト基とが導入されたボレート化合物である。
LiBF(NCO)4−n ・・・(1)
(式中、nは0以上3以下の整数を表す。)
下記一般式(1)で表されるリチウム化合物の合成方法としては、例えば下記1)〜3)の方法が挙げられるが、これらに特に限定されない。
1)LiOCNとBF又はBFと単品では低沸点かつ不活性な溶媒との錯体(BF/EtO等)を反応させる方法。
2)LiBFnX4−n(XはF以外のハロゲン原子、nは0以上3以下の整数)と、4−n個のMOCNとを反応させ、MXを析出させる方法。(MはAg等MXが水・非水溶媒共に難溶性な塩となるカチオン種)
3)LiBF4とSi−NCO化合物とを反応させ、LiBFn(NCO)4−nとSi−F化合物を生成させる反応。
これらのなかでも、例えばnが3となるように調整する場合は、混合するだけでよい上記1)の方法が最も簡便で好ましい。また、nが0となるように調整する場合は、確実に反応が進行する上記3)の方法が好ましい。さらに、nの平均値が1又は2となるように調整する場合は、上記3)の方法を用いることもできるが、適当なハロゲン混合原料の入手が難しい可能性があるため上記2)の方法を用いることが好ましい。
上記合成法に用いられる各種原料は、市販のものをそのまま用いても精製して用いても、或いは、他の化合物から製造して用いてもよい。また、その純度についても、特に限定されないが、原料由来の不純物が残存することにより、電池等の性能が悪化することが懸念されるため、より高純度であることが好ましく、好ましくは99質量%以上であることが好ましい。
また、各原料の仕込み比は、所望するnに見合った比率から大きく外れないことが好ましい。なお、一般式(1)で表される化合物が、nの値が異なる複数の化合物の混合物として得られる場合、その混合物のイソシアナト置換数(4−n)の平均値mは、各原料の仕込み比等を調整することにより、例えば0.1〜3.9の範囲内に制御することができる。操作が簡便である等の理由から、上記1)の方法ではイソシアナト置換数の平均値mが2.5〜3.5の混合物を得ることが好ましく、上記2)の方法ではイソシアナト置換数の平均値mが0〜3.5の混合物を得ることが好ましく、上記3)の方法ではイソシアナト置換数の平均値mが0.1〜3.8の混合物を得ることが好ましい。
いずれの場合においても、反応を均一にする等の観点から、溶媒を用いることが好ましい。溶媒としては、各種原料と反応する溶媒(例えば、水・アルコール等のプロトン性溶媒等)を除けば、特に限定はされないが、生成したLiBF(NCO)4−nの溶解性が極端に低くないものは、安定して反応させられることから好ましい。
好ましい溶媒としては、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル等の鎖状炭酸エステル;酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル等の鎖状カルボン酸エステル;メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、エタンスルホン酸メチル等の鎖状スルホン酸エステル;アセトニトリル、プロピオニトリル等の鎖状ニトリル;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル等の鎖状エーテル;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル;等が挙げられる。
これらの中でも、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル等の鎖状炭酸エステル;酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル等の鎖状カルボン酸エステル;アセトニトリル、プロピオニトリル等の鎖状ニトリル;が好ましく、さらにはその入手の容易性
から、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、酢酸エチル、アセトニトリルが好ましい。これらの溶媒は単独で用いても組み合わせて用いてもよいが、操作を複雑にしない為に単独で用いることが好ましい。
また、溶媒の原料に対する比率は、特に限定されないが、好ましくは体積比100倍以下、さらに好ましくは50倍以下、さらに好ましくは25倍以下である。また、好ましくは体積比2倍以上、さらに好ましくは3倍以上、さらに好ましくは5倍以上である。上記範囲内にあると、製造の効率に優れ、不溶性原料の攪拌を阻害する等の問題が発生し難くなる傾向にある。
また、本実施形態の反応工程を開始する際の温度は、特に限定されないが、好ましくは100℃以下、さらに好ましくは80℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。また、反応を行う際の温度は、特に限定されないが、好ましくは−20℃以上、さらに好ましくは−10℃以上、さらに好ましくは0℃以上である。本実施形態の反応工程を開始する際の温度が上記範囲内にあると、溶媒の揮発や予測されざる副反応の発生等の問題が生じ難く、反応速度の低下等の問題が抑制される傾向にある。
原料の反応系への投入の順序は、特に限定はされないが、LiOCN等の溶媒に不溶な原料を用いる場合は、予め投入し、溶媒にて懸濁しておいた方が好ましい。また投入する原料は溶媒に希釈してなくとも、希釈されていてもよいが、溶媒に可溶性の固体を後から投入する場合は、溶媒に希釈して投入することが好ましい。
後から投入される原料の投入に操作に費やされる時間は、特に限定されないが、好ましくは10時間以下、さらに好ましくは5時間以下、さらに好ましくは1時間以下である。また、本実施形態の反応における投入の時間は、特に限定されないが、好ましくは1分以上、さらに好ましくは5分以上、さらに好ましくは10分以上である。本実施形態の反応工程における投入の時間が上記範囲内にあることで、製造効率に優れる傾向にある。
本実施形態の反応工程における投入時の温度は、特に限定されないが、好ましくは開始時の温度+20℃以下、さらに好ましくは+10℃以下、さらに好ましくは+5℃以下である。本実施形態の反応における投入時の温度は、特に限定されないが、好ましくは開始時の温度−20℃以上、より好ましくは−10℃以上、さらに好ましくは−5℃以上であり、開始時の温度前後に保つことが特に好ましい。本実施形態の反応工程における投入時の温度が上記範囲内にあると、溶媒の揮発や予測されざる副反応の発生等の問題や反応速度の低下等の問題が生じ難くなる傾向にある。
また、投入後に熟成工程を経ることが好ましい。前記熟成工程での熟成中の温度は、特に限定されないが、反応時の温度に対して+100℃以下が好ましく、さらに+80℃以下が好ましく、さらに+50℃以下が好ましい。また、熟成時の温度は、特に限定されないが、反応時の温度に対して+5℃以上が好ましく、さらに+10℃以上が好ましく、さらに+20℃以上が好ましい。熟成工程での熟成中の温度が上記範囲であると、溶媒の揮発や予測されざる副反応の発生等の問題や反応速度の低下等の問題が生じ難くなる傾向にある。
上記熟成工程の時間は、特に限定されないが、好ましくは20時間以下、さらに好ましくは10時間以下、さらに好ましくは5時間以下である。また、本実施形態の反応における反応の時間は、特に限定されないが、好ましくは1分以上、さらに好ましくは10分以上、さらに好ましくは30分以上である。熟成工程の時間が上記範囲内であると、製造の効率が良好となり、熟成の効果を十分に得ることができる傾向にある。
反応系の雰囲気は、特に制限されないが、原料や生成物の水分による分解を抑制する観点から、外気を遮断した雰囲気下で混合を行うことが好ましく、乾燥空気又は、窒素雰囲気やアルゴン雰囲気等の不活性雰囲気下で混合を行うことがより好ましい。これら気体は反応工程開始時に設備内に導入した後に密閉されてもよいし、連続的に装置内に供給・排出してもよい。
<2.非水系電解液>
<2−1.LiBF(NCO)4−nで表されるリチウム塩>
本実施形態の非水系電解液は、上記一般式(1)で表されるリチウム塩を少なくとも1種以上含む。この中でも、入出力特性を向上させる観点では、LiBFNCOとLiBF(NCO)とLiBF(NCO)が好ましく、LiBFNCOとLiBF(NC
O)がより好ましく、LiBFNCOがさらに好ましい。また、耐久性を向上させる
観点では、LiBF(NCO)とLiBF(NCO)とLiB(NCO)が好ましく、LiBF(NCO)とLiB(NCO)がより好ましく、LiB(NCO)がさらに好ましい。また、入出力特性と耐久性を両立させる観点では、LiBFNCOとLiBF(NCO)とLiBF(NCO)が好ましく、LiBFNCOとLiBF(NCO)がより好ましく、LiBF(NCO)がさらに好ましい。本実施形態の非水系電解液は、上記一般式(1)で表されるリチウム塩を複数種、含有していてもよい。
非水系電解液中におけるLiBF(NCO)4−nの総含有量は、特に制限されないが、通常0.01質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%であり、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、また通常10質量%以下であり、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは6質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。上記濃度の範囲内であると、イオン導電率が最適化される傾向にあると共に、蓄電デバイスに用いた際に適切に電極表面皮膜が形成され、入出力特性と耐久性のバランスが良好な状態となりやすい傾向にある。
なお、LiBF(NCO)4−nを含有する非水系電解液は、非水系溶媒中にLiBF(NCO)4−nを溶解させて調製してもよく、また非水系溶媒中でLiBF(NCO)4−nを合成することで得られる溶液そのもの(非水系電解液)を用いてもよい。すなわち、LiBF(NCO)4−nを含有する反応液をそのまま非水系電解液として用いることも好ましい。この際、非水系電解液を用いた蓄電デバイス中にて、LiBF(NCO)4−nが生成されるものも含まれることとする。
<2−2.その他の電解質塩>
本実施形態における非水系電解液は、電解質塩としてLiBFNCO(4−n)を含有しているが、これとは別の電解質塩(以下、「他の電解質塩」と略記する場合がある。)を1種以上さらに含有していてもよい。本実施形態における他の電解質塩としては、この用途に用いることが知られているものであれば特に制限はなく、任意のものを用いることができる。他の電解質塩の具体的には、例えば以下のものが挙げられる。
LiBF、LiClO、LiAlF、LiSbF、LiTaF、LiWF等の無機リチウム塩;
LiPF、LiPOF、LiPO等のLiPF以外のフルオロリン酸リチウム塩類;
LiWOF等のタングステン酸リチウム塩類;
HCOLi、CHCOLi、CHFCOLi、CHFCOLi、CFCOLi、CFCHCOLi、CFCFCOLi、CFCFCFCOLi、CFCFCFCFCOLi等のカルボン酸リチウム塩類;
FSOLi、CHSOLi、CHFSOLi、CHFSOLi、CF
SOLi、CFCFSOLi、CFCFCFSOLi、CFCFCFCFSOLi等のスルホン酸リチウム塩類;
LiN(FCO、LiN(FCO)(FSO)、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiN(CFSO)(CSO)等のリチウムイミド塩類;
LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSO等のリチウムメチド塩類;
リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、リチウムトリス(オキサラト)フォスフェート等のリチウムオキサラート塩類;
その他、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CFSO、LiPF(CSO、LiBFCF、LiBF、LiBF、LiBF(CF、LiBF(C、LiBF(CFSO、LiBF(CSO等の含フッ素有機リチウム塩類;等が挙げられる。
これらの中でも、高温保存試験やサイクル試験等の耐久試験後の入出力特性や充放電レート充放電特性、インピーダンス特性の向上効果をさらに高める点からは、無機リチウム塩類、フルオロリン酸リチウム塩類、スルホン酸リチウム塩類、リチウムイミド塩類、リチウムオキサラート塩類等が好ましい。
とりわけ、LiPF、LiBF、LiSbF、LiTaF、LiPOF、LiPO、FSOLi、CFSOLi、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSO、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、リチウムトリス(オキサラト)フォスフェート等が入出力特性やハイレート充放電特性、インピーダンス特性、高温保存特性、サイクル特性等を向上させる効果がある点から特に好ましい。
非水系電解液中のこれらの他の電解質塩の総含有量は、特に制限されないが、通常8質量%以上、好ましくは8.5質量%以上、より好ましくは9質量%以上である。また、その上限は、通常18質量%以下、好ましくは17質量%以下、より好ましくは16質量%以下である。他の電解質塩の総濃度が上記範囲内であると、電気伝導率が電池動作に適正となる傾向にある。
また、その他の電解質塩は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて及び任意の比率で用いてもよい。2種以上を併用する場合の好ましい例としては、LiPFとLiBF、LiPFとLiPO、LiPFとFSOLi、LiPFとLiN(FSO、LiPFとLiN(CFSO、LiPFとリチウムビス(オキサラト)ボレート、LiPFとリチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、LiPFとリチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、LiPFとLiBFとLiPO、LiPFとLiBFとFSOLi、LiPFとLiPOとFSOLi、LiPFとLiPOとリチウムビス(オキサラト)ボレート、LiPFとLiPOとリチウムジフルオロビス(オキサラト)フォ
スフェート、LiPFとLiPOとLiN(FSO、LiPFとLiPOとLiN(CFSO、LiPFとFSOLiとリチウムビス(オキサラト)ボレート、LiPFとFSOLiとリチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェートの併用であり、これらの併用は入出力特性や高温保存特性、サイクル特性を向上させる効果がある。この場合、LiPFの含有量は、好ましくは7質量%以上、より好ましくは7.5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上、好ましくは16質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは14質量%以下である。また、LiBF、LiPO、FSOLi、LiN(FSOLiN(CFSO、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェートの含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。LiPFの含有量が上記好ましい範囲内であると、非水電解液中の総イオン含有量と電解液の粘性が適度なバランスとなる傾向にあり、イオン伝導度を過度に低下することなく電池内部インピーダンスが低くなり、LiPFの配合による入出力特性やサイクル特性、保存特性の向上効果がさらに発現され易くなる傾向にある。
ここで、オキソフルオロリン酸塩を電解液中に含有させる場合の電解液の調製は、公知の手法で行えばよく、特に限定されない。例えば、別途公知の手法で合成したオキソフルオロリン酸塩を、LiPFを含む電解液に添加する方法や、後述する活物質や極板等の電池構成要素中に水を共存させておき、LiPFを含む電解液を用いて電池を組み立てる際に系中でオキソフルオロリン酸塩を発生させる方法等が挙げられる。本実施形態においては、いずれの手法を用いてもよい。
上記の非水系電解液、及び非水系電解液電池中におけるオキソフルオロリン酸塩の含有量を測定する手法としては、特に制限されず、公知の手法であれば任意に用いることができる。具体的には、イオンクロマトグラフィーや、19F核磁気共鳴分光法(以下、「NMR」と称する場合がある。)等が挙げられる。
<2−3.非水溶媒>
本実施形態の非水系電解液は、一般的な非水系電解液と同様、通常はその主成分として、上述した電解質塩を溶解する非水溶媒を含有する。ここで用いる非水溶媒について特に制限はなく、公知の有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、飽和環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル、環状カルボン酸エステル、エーテル系化合物、スルホン系化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせ及び比率で用いることができる。
<2−3−1.飽和環状カーボネート>
飽和環状カーボネートとしては、例えば炭素数2〜4のアルキレン基を有するものが挙げられる
具体的には、炭素数2〜4の飽和環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートが、リチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から好ましい。飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
飽和環状カーボネートの含有量は、特に制限されないが、1種を単独で用いる場合の含有量の下限は、非水溶媒100体積%中、通常3体積%以上、好ましくは5体積%以上である。この範囲とすることで、非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下
が回避され、リチウム電池等の大電流放電特性、負極に対する安定性、サイクル特性が良好な範囲になる傾向にある。また上限は、通常90体積%以下、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。この範囲とすることで、非水系電解液の粘度が適切な範囲となり、イオン伝導度の低下が抑制され、ひいてはリチウム電池等の入出力特性がさらに向上され、サイクル特性や保存特性といった耐久性がさらに向上する傾向にある。
また、飽和環状カーボネートを2種類以上の任意の組み合わせで用いることもできる。好ましい組合せの一つは、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートに組み合わせである。この場合のエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの体積比は、99:1〜40:60が好ましく、より好ましくは95:5〜50:50である。さらに、非水溶媒全体に対するプロピレンカーボネートの含有量の下限は、通常1体積%以上、好ましくは2体積%以上、より好ましくは3体積%以上である。また、その上限は、通常30体積%以下、好ましくは25体積%以下、より好ましくは20体積%以下である。この範囲内でプロピレンカーボネートを含有すると、低温特性がさらに向上する傾向にある。
<2−3−2.鎖状カーボネート>
鎖状カーボネートとしては、例えば炭素数3〜7のものが好ましい。
具体的には、炭素数3〜7の鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n−プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、n−ブチルメチルカーボネート、イソブチルメチルカーボネート、t−ブチルメチルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート、n−ブチルエチルカーボネート、イソブチルエチルカーボネート、t−ブチルエチルカーボネート等が挙げられる。
これらの中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n−プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネートが好ましく、特に好ましくはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートである。
また、フッ素原子を有する鎖状カーボネート類(以下、「フッ素化鎖状カーボネート」と略記する場合がある。)も好適に用いることができる。フッ素化鎖状カーボネートが有するフッ素原子の数は、1以上であれば特に制限されないが、通常6以下であり、好ましくは4以下である。フッ素化鎖状カーボネートが複数のフッ素原子を有する場合、それらは互いに同一の炭素に結合していてもよく、異なる炭素に結合していてもよい。フッ素化鎖状カーボネートとしては、フッ素化ジメチルカーボネート誘導体、フッ素化エチルメチルカーボネート誘導体、フッ素化ジエチルカーボネート誘導体等が挙げられる。
フッ素化ジメチルカーボネート誘導体としては、フルオロメチルメチルカーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、トリフルオロメチルメチルカーボネート、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロ)メチルカーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート等が挙げられる。
フッ素化エチルメチルカーボネート誘導体としては、2−フルオロエチルメチルカーボネート、エチルフルオロメチルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルメチルカーボネート、2−フルオロエチルフルオロメチルカーボネート、エチルジフルオロメチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルフルオロメチルカーボネート、2−フルオロエチルジフルオロメチルカーボネート、エ
チルトリフルオロメチルカーボネート等が挙げられる。
フッ素化ジエチルカーボネート誘導体としては、エチル−(2−フルオロエチル)カーボネート、エチル−(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2−フルオロエチル)カーボネート、エチル−(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、2,2−ジフルオロエチル−2’−フルオロエチルカーボネート、ビス(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、2,2,2−トリフルオロエチル−2’−フルオロエチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチル−2’,2’−ジフルオロエチルカーボネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。
鎖状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
鎖状カーボネートの含有量は、特に限定されないが、非水溶媒100体積%中、通常15体積%以上であり、好ましくは20体積%以上、より好ましくは25体積%以上である。また、通常90体積%以下、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。鎖状カーボネートの含有量を上記範囲とすることによって、非水系電解液の粘度が適切な範囲なり、イオン伝導度の低下が抑制され、ひいてはリチウム電池等の入出力特性や充放電レート特性が良好な範囲となる傾向にある。また、非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下が回避され易く、リチウム電池等の入出力特性や充放電レート特性が良好な範囲となる傾向にある。
さらに、特定の鎖状カーボネートに対して、エチレンカーボネートを特定の含有量で組み合わせることにより、電池性能を著しく向上させることもできる。例えば、特定の鎖状カーボネートとしてジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを選択した場合、エチレンカーボネートの含有量は、特に限定されないが、通常15体積%以上、好ましくは20体積%、また通常45体積%以下、好ましくは40体積%以下であり、ジメチルカーボネートの含有量は、特に限定されないが、通常20体積%以上、好ましくは30体積%以上、また通常50体積%以下、好ましくは45体積%以下であり、エチルメチルカーボネートの含有量は、特に限定されないが、通常20体積%以上、好ましくは30体積%以上、また通常50体積%以下、好ましくは45体積%以下である。含有量を上記範囲内とすることで、電解質の低温析出温度を低下させながら、非水系電解液の粘度も低下させてイオン伝導度を向上させることができ、低温でも高い入出力特性が得られ易い傾向にある。
<2−3−3.鎖状カルボン酸エステル>
鎖状カルボン酸エステルとしては、例えばその構造式中の全炭素数が3〜7のものが挙げられる。
具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−t−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸−n−ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸−t−ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸−n−プロピル、酪酸イソプロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸−n−プロピル、イソ酪酸イソプロピル等が挙げられる。
これらの中でも、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸−n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル、酪酸エチル等が、粘度低下によるイオン伝導度の向上、及びサイクルや保存といった耐久時の電池膨れの抑制の観点から好ましい。
鎖状カルボン酸エステルの含有量は、特に制限されないが、非水溶媒100体積%中、通常0.5体積%以上、好ましくは1体積%以上であり、また通常80体積%以下、好ましくは70体積%以下である。鎖状カルボン酸エステルの含有量を前記範囲とすると、非水系電解液の電気伝導率が改善され、リチウム電池等の入出力特性や充放電レート特性が向上する傾向にある。また、負極抵抗の増大が抑制され、リチウム電池等の入出力特性や充放電レート特性が良好な範囲となる傾向にある。
なお、鎖状カルボン酸エステルを用いる場合は、好ましくは環状カーボネートとの併用であり、さらに好ましくは環状カーボネートと鎖状カーボネートの併用である。
例えば、環状カーボネートと鎖状カルボン酸エステルを併用する場合、環状カーボネートの含有量は、特に制限されないが、通常15体積%以上、好ましくは20体積%、また通常45体積%以下、好ましくは40体積%以下であり、鎖状カルボン酸エステルの含有量は、特に限定されないが、通常20体積%以上、好ましくは30体積%以上、また通常55体積%以下、好ましくは50体積%以下である。また、環状カーボネートと鎖状カーボネートと鎖状カルボン酸エステルを併用する場合、環状カーボネートの含有量は、特に制限されないが、通常15体積%以上、好ましくは20体積%、また通常45体積%以下、好ましくは40体積%以下であり、鎖状カーボネートの含有量は、特に限定されないが、通常25体積%以上、好ましくは30体積%以上、また通常84体積%以下、好ましくは80体積%以下である。含有量を上記範囲内とすることで、電解質の低温析出温度を低下させながら、非水系電解液の粘度も低下させてイオン伝導度を向上させることがき、低温でもさらに高い入出力特性が得られ易い傾向にあり、また電池膨れが抑制される傾向にある。
<2−3−4.環状カルボン酸エステル>
環状カルボン酸エステルとしては、例えばその構造式中の全炭素原子数が3〜12のものが挙げられる。
具体的には、ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン、ガンマカプロラクトン、イプシロンカプロラクトン等が挙げられる。これらの中でも、ガンマブチロラクトンがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から特に好ましい。
環状カルボン酸エステルの含有量は、特に制限されないが、非水溶媒100体積%中、通常3体積%以上、好ましくは5体積%以上であり、また通常60体積%以下、好ましくは50体積%以下である。環状カルボン酸エステルの含有量を前記範囲とすると、非水系電解液の電気伝導率が改善され、リチウム電池等の入出力特性や充放電レート特性が向上する傾向にある。また非水系電解液の粘度が適切な範囲となり、電気伝導率の低下が回避され、負極抵抗の増大が抑制され、リチウム電池等の入出力特性や充放電レート特性が良好な範囲となる傾向にある。
<2−3−5.エーテル系化合物>
エーテル系化合物としては、炭素数3〜10の鎖状エーテル、及び炭素数3〜6の環状エーテルが好ましい。
炭素数3〜10の鎖状エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジ(2−フルオロエチル)エーテル、ジ(2,2−ジフルオロエチル)エーテル、ジ(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、エチル(2−フルオロエチル)エーテル、エチル(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、エチル(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、(2−フルオ
ロエチル)(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、エチル−n−プロピルエーテル、エチル(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、2−フルオロエチル−n−プロピルエーテル、(2−フルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、2,2,2−トリフルオロエチル−n−プロピルエーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−n−プロピルエーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ−n−プロピルエーテル、(n−プロピル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジメトキシメタン、メトキシエトキシメタン、メトキシ(2−フルオロエトキシ)メタン、メトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタンメトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジエトキシメタン、エトキシ(2−フルオロエトキシ)メタン、エトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、エトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(2−フルオロエトキシ)メタン、(2−フルオロエトキシ)(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、(2−フルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタンジ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、(2,2,2−トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジメトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メトキシ(2−フルオロエトキシ)エタン、メトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、メトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジエトキシエタン、エトキシ(2−フルオロエトキシ)エタン、エトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、エトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2−フルオロエトキシ)エタン、(2−フルオロエトキシ)(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、(2−フルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エ
タン、(2,2,2−トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
炭素数3〜6の環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、2−メチル−1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等、及びこれらのフッ素化化合物が挙げられる。
これらの中でも、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタン、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルが、リチウムイオンへの溶媒和能力が高く、イオン解離性を向上させる点で好ましい。特に好ましくは、粘性が低く、高いイオン伝導度を与えることから、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタンである。
エーテル系化合物の含有量は、特に制限されず、非水溶媒100体積%中、通常0.5体積%以上、好ましくは1体積%以上、より好ましくは2体積%以上、また、通常30体積%以下、好ましくは25体積%以下、より好ましくは20体積%以下である。エーテル系化合物の含有量が前記好ましい範囲内であれば、鎖状エーテルのリチウムイオン解離度の向上と粘度低下に由来するイオン伝導度の向上効果を確保しやすい。また、負極活物質が炭素質材料の場合、鎖状エーテルがリチウムイオンと共に共挿入される現象を抑制できることから、入出力特性や充放電レート特性が適正な範囲となる傾向にある。
<2−3−6.スルホン系化合物>
スルホン系化合物としては、例えば炭素数3〜6の環状スルホン、及び炭素数2〜6の鎖状スルホンが好ましい。1分子中のスルホニル基の数は、1又は2であることが好ましい。
環状スルホンとしては、モノスルホン化合物であるトリメチレンスルホン類、テトラメチレンスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類;ジスルホン化合物であるトリメチレンジスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類等が挙げられる。これらの中でも、誘電率と粘性の観点から、テトラメチレンスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類がより好ましく、テトラメチレンスルホン類(スルホラン類)が特に好ましい。
スルホラン類としては、スルホラン及び/又はスルホラン誘導体(以下、スルホランも含めて「スルホラン類」と略記する場合がある。)が好ましい。スルホラン誘導体としては、スルホラン環を構成する炭素原子上に結合した水素原子の1以上がフッ素原子やアルキル基で置換されたものが好ましい。
具体的には、2−メチルスルホラン、3−メチルスルホラン、2−フルオロスルホラン、3−フルオロスルホラン、2,2−ジフルオロスルホラン、2,3−ジフルオロスルホラン、2,4−ジフルオロスルホラン、2,5−ジフルオロスルホラン、3,4−ジフルオロスルホラン、2−フルオロ−3−メチルスルホラン、2−フルオロ−2−メチルスルホラン、3−フルオロ−3−メチルスルホラン、3−フルオロ−2−メチルスルホラン、4−フルオロ−3−メチルスルホラン、4−フルオロ−2−メチルスルホラン、5−フルオロ−3−メチルスルホラン、5−フルオロ−2−メチルスルホラン、2−フルオロメチルスルホラン、3−フルオロメチルスルホラン、2−ジフルオロメチルスルホラン、3−
ジフルオロメチルスルホラン、2−トリフルオロメチルスルホラン、3−トリフルオロメチルスルホラン、2−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、3−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、5−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン等が、イオン伝導度が高く、高い入出力特性が得られ易い点で好ましい。
また、鎖状スルホンとしては、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n−プロピルメチルスルホン、n−プロピルエチルスルホン、ジ−n−プロピルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、イソプロピルエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、n−ブチルメチルスルホン、n−ブチルエチルスルホン、t−ブチルメチルスルホン、t−ブチルエチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、パーフルオロエチルメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、ジ(トリフルオロエチル)スルホン、パーフルオロジエチルスルホン、フルオロメチル−n−プロピルスルホン、ジフルオロメチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロメチル−n−プロピルスルホン、フルオロメチルイソプロピルスルホン、ジフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロエチルイソプロピルスルホン、ペンタフルオロエチル−n−プロピルスルホン、ペンタフルオロエチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロエチル−t−ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル−n−ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル−t−ブチルスルホン等が挙げられる。
これらの中でも、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n−プロピルメチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、n−ブチルメチルスルホン、t−ブチルメチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、トリフルオロメチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロエチル−t−ブチルスルホン、トリフルオロメチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロメチル−t−ブチルスルホン等が、イオン伝導度が高く、高い入出力特性が得られ易い点で好ましい。
スルホン系化合物の含有量は、特に制限されないが、非水溶媒100体積%中、通常0.3体積%以上、好ましくは0.5体積%以上、より好ましくは1体積%以上であり、また、通常40体積%以下、好ましくは35体積%以下、より好ましくは30体積%以下である。スルホン系化合物の含有量が前記範囲内であれば、サイクル特性や保存特性等の耐久性の向上効果が得られ易く、また、非水系電解液の粘度が適切な範囲となり、電気伝導率の低下が回避され易く、リチウム電池等の入出力特性や充放電レート特性が適正な範囲となる傾向にある。
<2−4.助剤>
本実施形態の非水系電解液は、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素化不飽和環状カーボネート、環状スルホン酸エステル化合物、シアノ基を有する化合物、ジイソシアナト化合物、カルボン酸無水物、過充電防止剤、これら以外の助剤等を含ん
でいてもよい。
<2−4−1.炭素−炭素不飽和結合及びフッ素原子のうち少なくとも一方を含有する環状カーボネート>
本実施形態の非水系電解液は、さらに、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート(以下、「不飽和環状カーボネート」と略記する場合がある。)、及びフッ素原子を含有する環状カーボネートのうち少なくとも一方を含有していてもよい。
炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネートとしては、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネートであれば、特に制限はなく、任意の炭素−炭素不飽和結合を有するカーボネートを用いることができる。なお、芳香環を有する置換基を有する環状カーボネートも、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネートに包含されることとする。不飽和環状カーボネートの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート類、芳香環又は炭素−炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類、フェニルカーボネート類、ビニルカーボネート類、アリルカーボネート類等が挙げられる。
ビニレンカーボネート類としては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート等が挙げられる。
芳香環又は炭素−炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類の具体例としては、ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、4,5−ジフェニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、4,5−ジエチニルエチレンカーボネート等が挙げられる。
これらの中でも、ビニレンカーボネート類、芳香環又は炭素−炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネートが好ましく、特に、ビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネートが、安定な界面保護皮膜を形成し易いので、より好適に用いられる。
不飽和環状カーボネートの分子量は、特に制限されず、任意である。不飽和環状カーボネートの分子量は、通常50以上、好ましくは80以上であり、また通常250以下、好ましくは150以下である。この範囲内であれば、非水系電解液に対する不飽和環状カーボネートの溶解性が確保され易い傾向にある。
不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。また、不飽和環状カーボネートの含有量は、特に制限されず、任意である。不飽和環状カーボネートの含有量は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、また、通常10質量%以下であり、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。上記範囲内であれば、高温保存特性やサイクル特性等の向上効果が十分に発現され易い傾向にある。
フッ素原子を有する環状カーボネート(以下、「フッ素化環状カーボネート」と略記する場合がある。)としては、フッ素原子を有する環状カーボネートであれば、特に制限は
ない。
フッ素化環状カーボネートとしては、炭素原子数2〜6のアルキレン基を有する環状カーボネートの誘導体が挙げられ、例えばエチレンカーボネート誘導体で挙げられる。エチレンカーボネート誘導体としては、例えば、エチレンカーボネート又はアルキル基(例えば、炭素原子数1〜4個のアルキル基)で置換されたエチレンカーボネートのフッ素化物が挙げられ、その中でもフッ素原子が1〜8個のものが好ましい。
具体的には、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(ジフルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(トリフルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−4−フルオロエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−5−フルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5,5−ジメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。
これらの中でも、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート及び4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種が、高イオン伝導性を与え、かつ好適に界面保護皮膜を形成し易い傾向にあるため、より好ましい。
フッ素化環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。フッ素化環状カーボネートの含有量は、特に制限されず、任意であるが、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、通常85質量%以下であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。
なお、フッ素化環状カーボネートは、該非水系電解液の主たる溶媒として用いても、副たる溶媒として用いてもよい。主たる溶媒として用いる場合のフッ素化環状カーボネートの含有量は、非水系電解液100質量%中、通常8質量%以上であり、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは12質量%以上であり、また、通常85質量%以下であり、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは75質量%以下である。この範囲内であれば、サイクル特性向上効果が十分に発現され易く、また、放電容量維持率の低下が抑制され易い傾向にある。また、副たる溶媒として用いる場合のフッ素化環状カーボネートの含有量は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、通常8質量%以下であり、好ましくは6質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下である。この範囲内であれば、サイクル特性や高温保存特性の向上効果が十分に発現され易い傾向にある。
<2−4−2.フッ素化不飽和環状カーボネート>
フッ素化環状カーボネートとして、不飽和結合とフッ素原子とを有する環状カーボネート(以下、「フッ素化不飽和環状カーボネート」と略記する場合がある。)を用いることができる。フッ素化不飽和環状カーボネートは、特に制限されない。中でもフッ素原子が1個又は2個のものが好ましい。フッ素化不飽和環状カーボネートの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
フッ素化不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート誘導体、芳香環又は炭素−炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート誘導体等が挙げられる。
ビニレンカーボネート誘導体としては、4−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルビニレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート等が挙げられる。
芳香環又は炭素−炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート誘導体としては、4−フルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート等が挙げられる。
フッ素化不飽和環状カーボネートの分子量は、特に制限されず、任意である。フッ素化不飽和環状カーボネートの分子量は、通常50以上、好ましくは80以上であり、また、通常250以下、好ましくは150以下である。この範囲内であれば、非水系電解液に対するフッ素化環状カーボネートの溶解性が確保され易い傾向にある。
フッ素化不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。また、フッ素化不飽和環状カーボネートの配合量は、特に制限されず、任意である。フッ素化不飽和環状カーボネートの含有量は、非水系電解液100質量%中、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、また、通常5質量%以下、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。この範囲内であれば、サイクル特性向上効果が十分に発現され易い傾向にある。
<2−4−3.環状スルホン酸エステル化合物>
環状スルホン酸エステル化合物としては、特にその種類は限定されないが、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。環状スルホン酸エステル化合物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
Figure 2021050136
(一般式(2)中、R及びRは各々独立して、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群から選ばれる原子で構成された有機基を表し、RとRは互いに−O−SO−とともに不飽和結合を含んでいてもよい。)
ここで、R及びRは、好ましくは炭素原子、水素原子、酸素原子、硫黄原子からなる原子で構成された有機基であることが好ましく、その中でも炭素数1〜3の炭化水素基
、−O−SO−を有する有機基であることが好ましい。
環状スルホン酸エステル化合物の分子量は、特に制限されず、任意である。環状スルホン酸エステル化合物の分子量は、通常100以上、好ましくは110以上であり、また、通常250以下、好ましくは220以下である。この範囲内であれば、非水系電解液に対する環状スルホン酸エステル化合物の溶解性が確保され易い傾向にある。
上記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、
1,3−プロパンスルトン、1−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、2−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、3−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、1−メチル−1,3−プロパンスルトン、2−メチル−1,3−プロパンスルトン、3−メチル−1,3−プロパンスルトン、1−プロペン−1,3−スルトン、2−プロペン−1,3−スルトン、1−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、2−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、3−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、1−フルオロ−2−プロペン−1,3−スルトン、2−フルオロ−2−プロペン−1,3−スルトン、3−フルオロ−2−プロペン−1,3−スルトン、1−メチル−1−プロペン−1,3−スルトン、2−メチル−1−プロペン−1,3−スルトン、3−メチル−1−プロペン−1,3−スルトン、1−メチル−2−プロペン−1,3−スルトン、2−メチル−2−プロペン−1,3−スルトン、3−メチル−2−プロペン−1,3−スルトン、1,4−ブタンスルトン、1−フルオロ−1,4−ブタンスルトン、2−フルオロ−1,4−ブタンスルトン、3−フルオロ−1,4−ブタンスルトン、4−フルオロ−1,4−ブタンスルトン、1−メチル−1,4−ブタンスルトン、2−メチル−1,4−ブタンスルトン、3−メチル−1,4−ブタンスルトン、4−メチル−1,4−ブタンスルトン、1−ブテン−1,4−スルトン、2−ブテン−1,4−スルトン、3−ブテン−1,4−スルトン、1−フルオロ−1−ブテン−1,4−スルトン、2−フルオロ−1−ブテン−1,4−スルトン、3−フルオロ−1−ブテン−1,4−スルトン、4−フルオロ−1−ブテン−1,4−スルトン、1−フルオロ−2−ブテン−1,4−スルトン、2−フルオロ−2−ブテン−1,4−スルトン、3−フルオロ−2−ブテン−1,4−スルトン、4−フルオロ−2−ブテン−1,4−スルトン、1−フルオロ−3−ブテン−1,4−スルトン、2−フルオロ−3−ブテン−1,4−スルトン、3−フルオロ−3−ブテン−1,4−スルトン、4−フルオロ−3−ブテン−1,4−スルトン、1−メチル−1−ブテン−1,4−スルトン、2−メチル−1−ブテン−1,4−スルトン、3−メチル−1−ブテン−1,4−スルトン、4−メチル−1−ブテン−1,4−スルトン、1−メチル−2−ブテン−1,4−スルトン、2−メチル−2−ブテン−1,4−スルトン、3−メチル−2−ブテン−1,4−スルトン、4−メチル−2−ブテン−1,4−スルトン、1−メチル−3−ブテン−1,4−スルトン、2−メチル−3−ブテン−1,4−スルトン、3−メチル−3−ブテン−1,4−スルトン、4−メチル−3−ブテン−1,4−スルトン、1,5−ペンタンスルトン、1−フルオロ−1,5−ペンタンスルトン、2−フルオロ−1,5−ペンタンスルトン、3−フルオロ−1,5−ペンタンスルトン、4−フルオロ−1,5−ペンタンスルトン、5−フルオロ−1,5−ペンタンスルトン、1−メチル−1,5−ペンタンスルトン、2−メチル−1,5−ペンタンスルトン、3−メチル−1,5−ペンタンスルトン、4−メチル−1,5−ペンタンスルトン、5−メチル−1,5−ペンタンスルトン、1−ペンテン−1,5−スルトン、2−ペンテン−1,5−スルトン、3−ペンテン−1,5−スルトン、4−ペンテン−1,5−スルトン、1−フルオロ−1−ペンテン−1,5−スルトン、2−フルオロ−1−ペンテン−1,5−スルトン、3−フルオロ−1−ペンテン−1,5−スルトン、4−フルオロ−1−ペンテン−1,5−スルトン、5−フルオロ−1−ペンテン−1,5−スルトン、1−フルオロ−2−ペンテン−1,5−スルトン、2−フルオロ−2−ペンテン−1,5−スルトン、3−フルオロ−2−ペンテン−1,5−スルトン、4−フルオロ−2−ペンテン−1,5−スルトン、5−フルオロ−2−ペンテン−1,5−スルトン、1−フルオロ−3−ペンテン−1,5−スルトン、2
−フルオロ−3−ペンテン−1,5−スルトン、3−フルオロ−3−ペンテン−1,5−スルトン、4−フルオロ−3−ペンテン−1,5−スルトン、5−フルオロ−3−ペンテン−1,5−スルトン、1−フルオロ−4−ペンテン−1,5−スルトン、2−フルオロ−4−ペンテン−1,5−スルトン、3−フルオロ−4−ペンテン−1,5−スルトン、4−フルオロ−4−ペンテン−1,5−スルトン、5−フルオロ−4−ペンテン−1,5−スルトン、1−メチル−1−ペンテン−1,5−スルトン、2−メチル−1−ペンテン−1,5−スルトン、3−メチル−1−ペンテン−1,5−スルトン、4−メチル−1−ペンテン−1,5−スルトン、5−メチル−1−ペンテン−1,5−スルトン、1−メチル−2−ペンテン−1,5−スルトン、2−メチル−2−ペンテン−1,5−スルトン、3−メチル−2−ペンテン−1,5−スルトン、4−メチル−2−ペンテン−1,5−スルトン、5−メチル−2−ペンテン−1,5−スルトン、1−メチル−3−ペンテン−1,5−スルトン、2−メチル−3−ペンテン−1,5−スルトン、3−メチル−3−ペンテン−1,5−スルトン、4−メチル−3−ペンテン−1,5−スルトン、5−メチル−3−ペンテン−1,5−スルトン、1−メチル−4−ペンテン−1,5−スルトン、2−メチル−4−ペンテン−1,5−スルトン、3−メチル−4−ペンテン−1,5−スルトン、4−メチル−4−ペンテン−1,5−スルトン、5−メチル−4−ペンテン−1,5−スルトン、1,2−オキサチオラン−2,2−ジオキシド−4−イル−アセテート、1,2−オキサチオラン−2,2−ジオキシド−4−イル−プロピオネート、5−メチル−1,2−オキサチオラン−2,2−ジオキシド−4−オン−2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−1,2−オキサチオラン−2,2−ジオキシド−4−オン−2,2−ジオキシド等のスルトン化合物;
メチレンスルフェート、エチレンスルフェート、プロピレンスルフェート等のスルフェート化合物;
メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネート等のジスルホネート化合物;
1,2,3−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、3H−1,2,3−オキサチアゾール−2,2−ジオキシド、5H−1,2,3−オキサチアゾール−2,2−ジオキシド、1,2,4−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、4−メチル−1,2,4−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、3H−1,2,4−オキサチアゾール−2,2−ジオキシド、5H−1,2,4−オキサチアゾール−2,2−ジオキシド、1,2,5−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、5−メチル−1,2,5−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、3H−1,2,5−オキサチアゾール−2,2−ジオキシド、5H−1,2,5−オキサチアゾール−2,2−ジオキシド、1,2,3−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、5,6−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、1,2,4−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、4−メチル−1,2,4−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、5,6−ジヒドロ−1,2,4−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、3,6−ジヒドロ−1,2,4−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、3,4−ジヒドロ−1,2,4−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、1,2,5−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、5−メチル−1,2,5−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、5,6−ジヒドロ−1,2,5−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、3,6−ジヒドロ−1,2,5−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、3,4−ジヒドロ−1,2,5−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、1,2,6−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、6−メチル−1,2,6−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、5,6−ジヒドロ−1,2,6−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、3,4−ジヒドロ−1,2,6−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、5,6−ジヒドロ−1,2,6−オ
キサチアジン−2,2−ジオキシド等の含窒素化合物;
1,2,3−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアホスラン−2,2,3−トリオキシド、3−メトキシ−1,2,3−オキサチアホスラン−2,2,3−トリオキシド、1,2,4−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、4−メチル−1,2,4−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、4−メチル−1,2,4−オキサチアホスラン−2,2,4−トリオキシド、4−メトキシ−1,2,4−オキサチアホスラン−2,2,4−トリオキシド、1,2,5−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、5−メチル−1,2,5−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、5−メチル−1,2,5−オキサチアホスラン−2,2,5−トリオキシド、5−メトキシ−1,2,5−オキサチアホスラン−2,2,5−トリオキシド、1,2,3−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、3−メトキシ−1,2,3−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、1,2,4−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、4−メチル−1,2,4−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、4−メチル−1,2,4−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、4−メチル−1,5,2,4−ジオキサチアホスフィナン−2,4−ジオキシド、4−メトキシ−1,5,2,4−ジオキサチアホスフィナン−2,4−ジオキシド、3−メトキシ−1,2,4−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、1,2,5−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、5−メチル−1,2,5−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、5−メチル−1,2,5−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、5−メトキシ−1,2,5−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、1,2,6−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、6−メチル−1,2,6−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、6−メチル−1,2,6−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、6−メトキシ−1,2,6−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド等の含リン化合物;
等が挙げられる。
これらのうち、
1,3−プロパンスルトン、1−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、2−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、3−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、1−プロペン−1,3−スルトン、1−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、2−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、3−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、1,4−ブタンスルトン、メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネートが保存特性向上の点から好ましく、1,3−プロパンスルトン、1−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、2−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、3−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、1−プロペン−1,3−スルトンがより好ましい。
環状スルホン酸エステル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。本実施形態の非水系電解液全体に対する環状スルホン酸エステル化合物の含有量は、特に制限されず、任意である。本実施形態の非水系電解液に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下の濃度で含有させる。上記範囲内であれば、サイクル特性、高温保存特性等が十分に向上され易く、かつ電池膨れも低下する傾向にある。
<2−4−4.シアノ基を有する化合物>
シアノ基を有する化合物としては、分子内にシアノ基を有している化合物であれば特にその種類は限定されないが、下記一般式(3)で表される化合物がより好ましい。シアノ基を有する化合物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
Figure 2021050136
(一般式(3)中、Tは、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群から選ばれる原子で構成された有機基を表し、Uは置換基を有してもよい炭素数1〜10のV価の有機基である。Vは1以上の整数であり、Vが2以上の場合は、Tは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
シアノ基を有する化合物の分子量は、特に制限されず、任意である。シアノ基を有する化合物の分子量は、通常40以上であり、好ましくは45以上、より好ましくは50以上であり、また、通常200以下、好ましくは180以下、より好ましくは170以下である。この範囲内であれば、非水系電解液に対するシアノ基を有する化合物の溶解性が確保され易い傾向にある。
上記一般式(3)で表される化合物の具体例としては、例えば、
アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、ラウロニトリル2−メチルブチロニトリル、トリメチルアセトニトリル、ヘキサンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトノニトリル、3−メチルクロトノニトリル、2−メチル−2−ブテン二トリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−2−ペンテンニトリル、3−メチル−2−ペンテンニトリル、2−ヘキセンニトリル、フルオロアセトニトリル、ジフルオロアセトニトリル、トリフルオロアセトニトリル、2−フルオロプロピオニトリル、3−フルオロプロピオニトリル、2,2−ジフルオロプロピオニトリル、2,3−ジフルオロプロピオニトリル、3,3−ジフルオロプロピオニトリル、2,2,3−トリフルオロプロピオニトリル、3,3,3−トリフルオロプロピオニトリル、3,3’−オキシジプロピオニトリル、3,3’−チオジプロピオニトリル、1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリル、ペンタフルオロプロピオニトリル等のシアノ基を1つ有する化合物;
マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、メチルマロノニトリル、エチルマロノニトリル、イソプロピルマロノニトリル、tert−ブチルマロノニトリル、メチルスクシノニトリル、2,2−ジメチルスクシノニトリル、2,3−ジメチルスクシノニトリル、トリメチルスクシノニトリル、テトラメチルスクシノニトリル、3,3’−(エチレンジオキシ)ジプロピオニトリル、3,3’−(エチレンジチオ)ジプロピオニトリル等のシアノ基を2つ有する化合物;
1,2,3−トリス(2−シアノエトキシ)プロパン、トリス(2−シアノエチル)アミン等のシアノ基を3つ有する化合物;
メチルシアネート、エチルシアネート、プロピルシアネート、ブチルシアネート、ペン
チルシアネート、ヘキシルシアネート、ヘプチルシアネート等のシアネート化合物;
メチルチオシアネート、エチルチオシアネート、プロピルチオシアネート、ブチルチオシアネート、ペンチルチオシアネート、ヘキシルチオシアネート、ヘプチルチオシアネート、メタンスルホニルシアニド、エタンスルホニルシアニド、プロパンスルホニルシアニド、ブタンスルホニルシアニド、ペンタンスルホニルシアニド、ヘキサンスルホニルシアニド、ヘプタンスルホニルシアニド、メチルスルフロシアニダート、エチルスルフロシアニダート、プロピルスルフロシアニダート、ブチルスルフロシアニダート、ペンチルスルフロシアニダート、ヘキシルスルフロシアニダート、ヘプチルスルフロシアニダート等の含硫黄化合物;
シアノジメチルホスフィン、シアノジメチルホスフィンオキシド、シアノメチルホスフィン酸メチル、シアノメチル亜ホスフィン酸メチル、ジメチルホスフィン酸シアニド、ジメチル亜ホスフィン酸シアニド、シアノホスホン酸ジメチル、シアノ亜ホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸シアノメチル、メチル亜ホスホン酸シアノメチル、リン酸シアノジメチル亜リン酸シアノジメチル等の含リン化合物;
等が挙げられる。
これらのうち、
アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、ラウロニトリル、クロトノニトリル、3‐メチルクロトノニトリル、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリルが保存特性向上の点から好ましく、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル等のシアノ基を2つ有する化合物がより好ましい。
シアノ基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。本実施形態の非水系電解液全体に対するシアノ基を有する化合物の含有量は、特に制限されず、任意である。本実施形態の非水系電解液に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下の濃度で含有させる。上記範囲内であるば、入出力特性や充放電レート特性、サイクル特性、高温保存特性等の向上効果が発現されやすい傾向にある。
<1−4−5.ジイソシアナト化合物>
ジイソシアネート化合物としては、分子内に、窒素原子をイソシアナト基にのみ有し、また、イソシアナト基を2つ有していて、下記一般式(4)で表される化合物が好ましい。
Figure 2021050136
上記一般式(4)において、Xは環状構造を含み、かつ炭素数1以上15以下の有機基である。Xの炭素数は、通常2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、また通常14以下、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。
上記一般式(4)中、Xは、炭素数4〜6のシクロアルキレン基或いは芳香族炭化水素基を1つ以上有する、炭素数4〜15の有機基であることが特に好ましい。このとき、シクロアルキレン基上の水素原子はメチル基又はエチル基で置換されていてもよい。上記環状構造を有するジイソシアネート化合物は、立体的に嵩高いため分子であるため、正極上での副反応が起こりにくく、その結果サイクル特性並びに高温保存特性を向上させ得る。ここで、シクロアルキレン基或いは芳香族炭化水素基に結合する基の結合部位は特段限定されず、メタ位、パラ位、オルト位のいずれであってもよいが、メタ位又はパラ位が、皮膜間架橋距離が適切となることでリチウムイオン伝導性に有利となり、抵抗を低下させ易い傾向にあるため好ましい。また、シクロアルキレン基の中でも、ジイソシアネート化合物自体が副反応を起こし難い観点で、シクロペンチレン基又はシクロへキシレン基が好ましく、分子運動性の影響により抵抗を低下させ易いことから、シクロへキシレン基がより好ましい。
また、シクロアルキレン基或いは芳香族炭化水素基とイソシアネート基との間には炭素数1〜3のアルキレン基を有していることが好ましい。アルキレン基を有することで立体的に嵩高くなるため、正極上での副反応が起こり難くなる傾向にある。さらにアルキレン基の炭素数が1〜3であれば、全分子量に対するイソシアネート基の占有割合を比較的に大きく保つことができるため、一般式(4)で表される化合物の配合効果が顕著に発現され易い傾向にある。
上記一般式(4)で表されるジイソシアネート化合物の分子量は特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、通常80以上であり、好ましくは115以上、より好ましくは170以上であり、また、通常300以下であり、好ましくは230以下である。この範囲内であれば、非水系電解液に対するジイソシアネート化合物の溶解性が確保され易い傾向にある。
ジイソシアネート化合物の具体例としては、例えば、
1,2−ジイソシアナトシクロペンタン、1,3−ジイソシアナトシクロペンタン、1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,2−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−2,2’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−3,3’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、等のシクロアルカン環含有ジイソシアネート類;
1,2−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレン−2,3−ジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,5−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、トリレン−3,4−ジイソシアネート、トリレン−3,5−ジイソシアネート、1,2−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、2,4−ジイソシアナトビフェニル、2,6−ジイソシアナトビフェニル、2,2’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジイソシアナトビフェニル、4,4’−ジイソシアナト−2−メチルビフェニル、4,4’−ジイソシアナト−3−メチルビフェニル、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、4,4’−ジイソシアナト−2−メチルジフェニルメタン、4,4’−ジイソシアナト−3−メチルジフェニルメタン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、1,5−ジイソシアナトナフタレン、1,8−ジイソシアナトナフタレン、2,3−ジイソシアナトナフタレン、1,5−ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン、1,8−ビ
ス(イソシアナトメチル)ナフタレン、2,3−ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン等の芳香環含有ジイソシアネート類;
等が挙げられる。
これらの中でも、1,2−ジイソシアナトシクロペンタン、1,3−ジイソシアナトシクロペンタン、1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,2−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,2−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,2−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、2,4−ジイソシアナトビフェニル、2,6−ジイソシアナトビフェニルが、負極上により緻密な複合的な皮膜が形成され易く、その結果、電池耐久性が向上する傾向にあるため、好ましい。
これらの中でも、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,2−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼンが、その分子の対称性から負極上にリチウムイオン伝導性に有利な皮膜が形成され易く、その結果、電池特性がさらに向上さる傾向にあるため、より好ましい。
また、上述したジイソシアネート化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
ジイソシアネート化合物の含有量は、特に制限されず、任意であるが、本実施形態の非水系電解液に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、また、通常5質量%以下、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。ジイソシアネート化合物の含有量が上記範囲内であると、サイクル、保存等の耐久性が向上する傾向にある。
なお、ジイソシアネート化合物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。また、市販品を用いてもよい。
<2−4−6.カルボン酸無水物>
カルボン酸無水物としては、下記一般式(5)で表される化合物が好ましい。カルボン酸無水物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
Figure 2021050136
(一般式(5)中、R,Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい、炭素数1以上15以下の炭化水素基を表す。R,Rは、互いに結合して、環状構造を形成していてもよい。)
,Rは、一価の炭化水素基であれば、その種類は特に制限されない。例えば、脂
肪族炭化水素基であっても芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合したものであってもよい。脂肪族炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和結合(炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合)を含んでいてもよい。また、脂肪族炭化水素基は、鎖状であっても環状であってもよく、鎖状の場合は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。さらには、鎖状と環状とが結合したものであってもよい。なお、R及びRは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、R,Rが互いに結合して環状構造を形成する場合、R及びRが互いに結合して構成された炭化水素基は二価である。二価の炭化水素基の種類は特に制限されない。すなわち、脂肪族基でも芳香族基でもよく、脂肪族基と芳香族基とが結合したものでもよい。脂肪族基の場合、飽和基でも不飽和基でもよい。また、鎖状基でも環状基でもよく、鎖状基の場合は直鎖状基でも分岐鎖状基でもよい。さらには鎖状基と環状基とが結合したものでもよい。
また、R,Rの炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基の種類は、特に制限されない。その具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子が挙げられ、その中でも好ましくはフッ素原子である。また、ハロゲン原子以外の置換基として、エステル基、シアノ基、カルボニル基、エーテル基等の官能基を有する置換基等も挙げられ、その中もも好ましくはシアノ基、カルボニル基である。R,Rの炭化水素基は、これらの置換基を一つのみ有していてもよく、二つ以上有していてもよい。二つ以上の置換基を有する場合、それらの置換基は同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
,Rの各々の炭化水素基の炭素数は、通常1以上であり、また通常15以下、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは9以下である。RとRとが互いに結合して二価の炭化水素基を形成している場合は、その二価の炭化水素基の炭素数が、通常2以上であり、また通常15以下、好ましくは13以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。なお、R,Rの炭化水素基が炭素原子を含有する置換基を有する場合は、その置換基も含めたR,R全体の炭素数が上記範囲を満たしていることが好ましい。
次いで、上記一般式(5)で表わされるカルボン酸無水物の具体例について説明する。なお、以下の例示において「類縁体」とは、例示される酸無水物の構造の一部を、別の構造に置き換えることにより得られるカルボン酸無水物を意味し、例えば複数のカルボン酸無水物からなる二量体、三量体及び四量体等、又は、置換基の炭素数が同じではあるが分岐鎖を有する等構造異性のもの、置換基がカルボン酸無水物に結合する部位が異なるもの等が挙げられる。
まず、R,Rが同一であるカルボン酸無水物の具体例を以下に挙げる。
,Rが鎖状アルキル基であるカルボン酸無水物の具体例としては、無水酢酸、プロピオン酸無水物、ブタン酸無水物、2−メチルプロピオン酸無水物、2,2−ジメチルプロピオン酸無水物、2−メチルブタン酸無水物、3−メチルブタン酸無水物、2,2−ジメチルブタン酸無水物、2,3−ジメチルブタン酸無水物、3,3−ジメチルブタン酸無水物、2,2,3−トリメチルブタン酸無水物、2,3,3−トリメチルブタン酸無水物、2,2,3,3−テトラメチルブタン酸無水物、2−エチルブタン酸無水物等、及びそれらの類縁体等が挙げられる。
,Rが環状アルキル基であるカルボン酸無水物の具体例としては、シクロプロパンカルボン酸無水物、シクロペンタンカルボン酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水
物等、及びそれらの類縁体等が挙げられる。
,Rがアルケニル基であるカルボン酸無水物の具体例としては、アクリル酸無水物、2−メチルアクリル酸無水物、3−メチルアクリル酸無水物、2,3−ジメチルアクリル酸無水物、3,3−ジメチルアクリル酸無水物、2,3,3−トリメチルアクリル酸無水物、2−フェニルアクリル酸無水物、3−フェニルアクリル酸無水物、2,3−ジフェニルアクリル酸無水物、3,3−ジフェニルアクリル酸無水物、3−ブテン酸無水物、2−メチル−3−ブテン酸無水物、2,2−ジメチル−3−ブテン酸無水物、3−メチル−3−ブテン酸無水物、2−メチル−3−メチル−3−ブテン酸無水物、2,2−ジメチル−3−メチル−3−ブテン酸無水物、3−ペンテン酸無水物、4−ペンテン酸無水物、2−シクロペンテンカルボン酸無水物、3−シクロペンテンカルボン酸無水物、4−シクロペンテンカルボン酸無水物等、及びそれらの類縁体等が挙げられる。
,Rがアルキニル基であるカルボン酸無水物の具体例としては、プロピン酸無水物、3−フェニルプロピン酸無水物、2−ブチン酸無水物、2−ペンチン酸無水物、3−ブチン酸無水物、3−ペンチン酸無水物、4−ペンチン酸無水物等、及びそれらの類縁体等が挙げられる。
,Rがアリール基であるカルボン酸無水物の具体例としては、安息香酸無水物、4−メチル安息香酸無水物、4−エチル安息香酸無水物、4−tert−ブチル安息香酸無水物、2−メチル安息香酸無水物、2,4,6−トリメチル安息香酸無水物、1−ナフタレンカルボン酸無水物、2−ナフタレンカルボン酸無水物等、及びそれらの類縁体等が挙げられる。
また、R,Rがハロゲン原子で置換されたカルボン酸無水物の例として、主にフッ素原子で置換されたカルボン酸無水物の例を以下に挙げるが、これらのフッ素原子の一部又は全部を塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子に置換して得られるカルボン酸無水物も、例示化合物に含まれるものとする。
,Rがハロゲン原子で置換された鎖状アルキル基であるカルボン酸無水物の例としては、フルオロ酢酸無水物、ジフルオロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、2−フルオロプロピオン酸無水物、2,2−ジフルオロプロピオン酸無水物、2,3−ジフルオロプロピオン酸無水物、2,2,3−トリフルオロプロピオン酸無水物、2,3,3−トリフルオロプロピオン酸無水物、2,2,3,3−テトラプロピオン酸無水物、2,3,3,3−テトラプロピオン酸無水物、3−フルオロプロピオン酸無水物、3,3−ジフルオロプロピオン酸無水物、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸無水物、パーフルオロプロピオン酸無水物等、及びそれらの類縁体等が挙げられる。
,Rがハロゲン原子で置換された環状アルキル基であるカルボン酸無水物の例としては、2−フルオロシクロペンタンカルボン酸無水物、3−フルオロシクロペンタンカルボン酸無水物、4−フルオロシクロペンタンカルボン酸無水物等、及びそれらの類縁体等が挙げられる
,Rがハロゲン原子で置換されたアルケニル基であるカルボン酸無水物の例としては、2−フルオロアクリル酸無水物、3−フルオロアクリル酸無水物、2,3−ジフルオロアクリル酸無水物、3,3−ジフルオロアクリル酸無水物、2,3,3−トリフルオロアクリル酸無水物、2−(トリフルオロメチル)アクリル酸無水物、3−( トリフル
オロメチル)アクリル酸無水物、2,3−ビス(トリフルオロメチル)アクリル酸無水物、2,3,3−トリス(トリフルオロメチル)アクリル酸無水物、2−(4−フルオロフェニル)アクリル酸無水物、3−(4−フルオロフェニル)アクリル酸無水物、2,3−
ビス(4−フルオロフェニル)アクリル酸無水物、3,3−ビス(4−フルオロフェニル)アクリル酸無水物、2−フルオロ−3−ブテン酸無水物、2,2−ジフルオロ−3−ブテン酸無水物、3−フルオロ−2−ブテン酸無水物、4−フルオロ−3−ブテン酸無水物、3,4−ジフルオロ−3−ブテン酸無水物、3,3,4−トリフルオロ−3−ブテン酸無水物等、及びそれらの類縁体等が挙げられる。
,Rがハロゲン原子で置換されたアルキニル基であるカルボン酸無水物の例としては、3−フルオロ−2−プロピン酸無水物、3−(4−フルオロフェニル)−2−プロピン酸無水物、3−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)−2−プロピン酸無水物、4−フルオロ−2−ブチン酸無水物、4,4−ジフルオロ−2−ブチン酸無水物、4,4,4−トリフルオロ−2−ブチン酸無水物等、及びそれらの類縁体等が挙げられる。
,Rがハロゲン原子で置換されたアリール基であるカルボン酸無水物の例としては、4−フルオロ安息香酸無水物、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ安息香酸無水物、4−トリフルオロメチル安息香酸無水物等、及びそれらの類縁体等が挙げられる。
,Rがエステル、ニトリル、ケトン、エーテル等の官能基を有する置換基を有しているカルボン酸無水物の例としては、メトキシギ酸無水物、エトキシギ酸無水物、メチルシュウ酸無水物、エチルシュウ酸無水物、2−シアノ酢酸無水物、2−オキソプロピオン酸無水物、3−オキソブタン酸無水物、4−アセチル安息香酸無水物、メトキシ酢酸無水物、4−メトキシ安息香酸無水物等、及びそれらの類縁体等が挙げられる。
続いて、R,Rが互いに異なるカルボン酸無水物の具体例を以下に挙げる。
,Rとしては上に挙げた例、及びそれらの類縁体の全ての組み合わせが考えられるが、以下に代表的な例を挙げる。
鎖状アルキル基同士の組み合わせの例としては、酢酸プロピオン酸無水物、酢酸ブタン酸無水物、ブタン酸プロピオン酸無水物、酢酸2−メチルプロピオン酸無水物、
等が挙げられる。
鎖状アルキル基と環状アルキル基の組み合わせの例としては、酢酸シクロペンタン酸無水物、酢酸シクロヘキサン酸無水物、シクロペンタン酸プロピオン酸無水物、等が挙げられる。
鎖状アルキル基とアルケニル基の組み合わせの例としては、酢酸アクリル酸無水物、酢酸3−メチルアクリル酸無水物、酢酸3−ブテン酸無水物、アクリル酸プロピオン酸無水物、等が挙げられる。
鎖状アルキル基とアルキニル基の組み合わせの例としては、酢酸プロピン酸無水物、酢酸2−ブチン酸無水物、酢酸3−ブチン酸無水物、酢酸3−フェニルプロピン酸無水物、プロピオン酸プロピン酸無水物、等が挙げられる。
鎖状アルキル基とアリール基の組み合わせの例としては、酢酸安息香酸無水物、酢酸4−メチル安息香酸無水物、酢酸1−ナフタレンカルボン酸無水物、安息香酸プロピオン酸無水物、等が挙げられる。
鎖状アルキル基と官能基を有する炭化水素基の組み合わせの例としては、酢酸フルオロ酢酸無水物、酢酸トリフルオロ酢酸無水物、酢酸4−フルオロ安息香酸無水物、フルオロ
酢酸プロピオン酸無水物、酢酸アルキルシュウ酸無水物、酢酸2−シアノ酢酸無水物、酢酸2−オキソプロピオン酸無水物、酢酸メトキシ酢酸無水物、メトキシ酢酸プロピオン酸無水物、等が挙げられる。
環状アルキル基同士の組み合わせの例としては、シクロペンタン酸シクロヘキサン酸無水物、等が挙げられる。
環状アルキル基とアルケニル基の組み合わせの例としては、アクリル酸シクロペンタン酸無水物、3−メチルアクリル酸シクロペンタン酸無水物、3−ブテン酸シクロペンタン酸無水物、アクリル酸シクロヘキサン酸無水物、等が挙げられる。
環状アルキル基とアルキニル基の組み合わせの例としては、プロピン酸シクロペンタン酸無水物、2−ブチン酸シクロペンタン酸無水物、プロピン酸シクロヘキサン酸無水物、等が挙げられる。
環状アルキル基とアリール基の組み合わせの例としては、安息香酸シクロペンタン酸無水物、4−メチル安息香酸シクロペンタン酸無水物、安息香酸シクロヘキサン酸無水物、等が挙げられる。
環状アルキル基と官能基を有する炭化水素基の組み合わせの例としては、フルオロ酢酸シクロペンタン酸無水物、シクロペンタン酸トリフルオロ酢酸無水物、シクロペンタン酸2−シアノ酢酸無水物、シクロペンタン酸メトキシ酢酸無水物、シクロヘキサン酸フルオロ酢酸無水物、等が挙げられる。
アルケニル基同士の組み合わせの例としては、アクリル酸2−メチルアクリル酸無水物、アクリル酸3−メチルアクリル酸無水物、アクリル酸3−ブテン酸無水物、2−メチルアクリル酸3−メチルアクリル酸無水物、等が挙げられる。
アルケニル基とアルキニル基の組み合わせの例としては、アクリル酸プロピン酸無水物、アクリル酸2−ブチン酸無水物、2−メチルアクリル酸プロピン酸無水物、等が挙げられる。
アルケニル基とアリール基の組み合わせの例としては、アクリル酸安息香酸無水物、アクリル酸4−メチル安息香酸無水物、2−メチルアクリル酸安息香酸無水物、等が挙げられる。
アルケニル基と官能基を有する炭化水素基の組み合わせの例としては、アクリル酸フルオロ酢酸無水物、アクリル酸トリフルオロ酢酸無水物、アクリル酸2−シアノ酢酸無水物、アクリル酸メトキシ酢酸無水物、2−メチルアクリル酸フルオロ酢酸無水物、等が挙げられる。
アルキニル基同士の組み合わせの例としては、プロピン酸2−ブチン酸無水物、プロピン酸3−ブチン酸無水物、2−ブチン酸3−ブチン酸無水物、等が挙げられる。
アルキニル基とアリール基の組み合わせの例としては、安息香酸プロピン酸無水物、4−メチル安息香酸プロピン酸無水物、安息香酸2−ブチン酸無水物、等が挙げられる。
アルキニル基と官能基を有する炭化水素基の組み合わせの例としては、プロピン酸フルオロ酢酸無水物、プロピン酸トリフルオロ酢酸無水物、プロピン酸2−シアノ酢酸無水物、プロピン酸メトキシ酢酸無水物、2−ブチン酸フルオロ酢酸無水物、等が挙げられる。
アリール基同士の組み合わせの例としては、安息香酸4−メチル安息香酸無水物、安息香酸1−ナフタレンカルボン酸無水物、4−メチル安息香酸1−ナフタレンカルボン酸無水物、等が挙げられる。
アリール基と官能基を有する炭化水素基の組み合わせの例としては、安息香酸フルオロ酢酸無水物、安息香酸トリフルオロ酢酸無水物、安息香酸2−シアノ酢酸無水物、安息香酸メトキシ酢酸無水物、4−メチル安息香酸フルオロ酢酸無水物、等が挙げられる。
官能基を有する炭化水素基同士の組み合わせの例としては、フルオロ酢酸トリフルオロ酢酸無水物、フルオロ酢酸2−シアノ酢酸無水物、フルオロ酢酸メトキシ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸2−シアノ酢酸無水物、等が挙げられる。
上記の鎖状構造を形成しているカルボン酸無水物のうち好ましくは、
無水酢酸、プロピオン酸無水物、2−メチルプロピオン酸無水物、シクロペンタンカルボン酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水物等、アクリル酸無水物、2−メチルアクリル酸無水物、3−メチルアクリル酸無水物、2,3−ジメチルアクリル酸無水物、3,3−ジメチルアクリル酸無水物、3−ブテン酸無水物、2−メチル−3−ブテン酸無水物、プロピン酸無水物、2−ブチン酸無水物、安息香酸無水物、2−メチル安息香酸無水物、4−メチル安息香酸無水物、4−tert−ブチル安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸無水物、2−(トリフルオロメチル)アクリル酸無水物、2−(4−フルオロフェニル)アクリル酸無水物、4−フルオロ安息香酸無水物、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ安息香酸無水物、メトキシギ酸無水物、エトキシギ酸無水物、
であり、より好ましくは、
アクリル酸無水物、2−メチルアクリル酸無水物、3−メチルアクリル酸無水物、安息香酸無水物、2−メチル安息香酸無水物、4−メチル安息香酸無水物、4−tert−ブチル安息香酸無水物、4−フルオロ安息香酸無水物、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ安息香酸無水物、メトキシギ酸無水物、エトキシギ酸無水物である。
これらのカルボン酸無水物は、適切にリチウムオキサラート塩との結合を形成して耐久性に優れる皮膜を形成することで、特に耐久試験後の充放電レート特性、入出力特性、インピーダンス特性を向上させることができる観点で好ましい。
続いて、RとRとが互いに結合して環状構造を形成しているカルボン酸無水物の具体例を以下に挙げる。
まず、RとRとが互いに結合して5員環構造を形成しているカルボン酸無水物の具体例としては、無水コハク酸、4−メチルコハク酸無水物、4,4−ジメチルコハク酸無水物、4,5−ジメチルコハク酸無水物、4,4,5−トリメチルコハク酸無水物、4,4,5,5−テトラメチルコハク酸無水物、4−ビニルコハク酸無水物、4,5−ジビニルコハク酸無水物、4−フェニルコハク酸無水物、4,5−ジフェニルコハク酸無水物、4,4−ジフェニルコハク酸無水物、シトラコン酸無水物、無水マレイン酸、4−メチルマレイン酸無水物、4,5−ジメチルマレイン酸無水物、4−フェニルマレイン酸無水物、4,5−ジフェニルマレイン酸無水物、イタコン酸無水物、5−メチルイタコン酸無水物、5,5−ジメチルイタコン酸無水物、無水フタル酸、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物等、及びそれらの類縁体等が挙げられる。
とRとが互いに結合して6員環構造を形成しているカルボン酸無水物の具体例としては、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−シクロヘキセン−1,2−
ジカルボン酸無水物、グルタル酸無水物等、及びそれらの類縁体等が挙げられる。
とRとが互いに結合してその他の環状構造を形成しているカルボン酸無水物の具体例としては、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、ジグリコール酸無水物等、及びそれらの類縁体等が挙げられる。
とRとが互いに結合して環状構造を形成するとともに、ハロゲン原子で置換されたカルボン酸無水物の具体例としては、4−フルオロコハク酸無水物、4,4−ジフルオロコハク酸無水物、4,5−ジフルオロコハク酸無水物、4,4,5−トリフルオロコハク酸無水物、4,4,5,5−テトラフルオロコハク酸無水物、4−フルオロマレイン酸無水物、4,5−ジフルオロマレイン酸無水物、5−フルオロイタコン酸無水物、5,5−ジフルオロイタコン酸無水物等、及びそれらの類縁体等が挙げられる。
上記のRとRとが結合しているカルボン酸無水物のうち好ましくは、
無水コハク酸、4−メチルコハク酸無水物、4−ビニルコハク酸無水物、4−フェニルコハク酸無水物、シトラコン酸無水物、無水マレイン酸、4−メチルマレイン酸無水物、4−フェニルマレイン酸無水物、イタコン酸無水物、5−メチルイタコン酸無水物、グルタル酸無水物、無水フタル酸、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、4−フルオロコハク酸無水物、4−フルオロマレイン酸無水物、5−フルオロイタコン酸無水物、
であり、より好ましくは、
無水コハク酸、4−メチルコハク酸無水物、4−ビニルコハク酸無水物、シトラコン酸無水物、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、4−フルオロコハク酸無水物である。これらの化合物は、適切にリチウムオキサラート塩との結合を形成して耐久性に優れる皮膜を形成することで、特に耐久試験後の容量維持率が向上するために好ましい。
なお、カルボン酸無水物の分子量に制限はなく、任意であるが、通常90以上、好ましくは95以上であり、一方、通常300以下、好ましくは200以下である。カルボン酸無水物の分子量が上記範囲内であると、非水系電解液の粘度上昇が抑制され、かつ皮膜密度が適正化されて耐久性が適切に向上する傾向にある。
また、前記カルボン酸無水物の製造方法にも特に制限はなく、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。以上説明したカルボン酸無水物は、本実施形態の非水系電解液中に、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
また、本実施形態の非水系電解液に対するカルボン酸無水物の含有量は、特に限定されず、任意であるが、本実施形態の非水系電解液に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、また、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下の濃度で含有させることが望ましい。カルボン酸無水物の含有量が上記範囲内であると、サイクル特性向上効果が発現され易く、また反応性が好適となり電池特性が向上する傾向にある。
<2−4−7.過充電防止剤>
本実施形態の非水系電解液において、リチウム電池等が過充電等の状態になった際に電池の破裂・発火を効果的に抑制するために、過充電防止剤を用いることができる。
過充電防止剤としては、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン、ジフェニルシクロヘキサン、1,1,3−トリメチル−3−フェニルインダン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の上記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等;3−プロピルフェニルアセテート、2−エチルフェニルアセテート、ベンジルフェニルアセテート、メチルフェニルアセテート、ベンジルアセテート、フェネチルフェニルアセテート等の芳香族アセテート類;ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート等の芳香族カーボネート類が挙げられる。中でも、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン、ジフェニルシクロヘキサン、1,1,3−トリメチル−3−フェニルインダン、3−プロピルフェニルアセテート、2−エチルフェニルアセテート、ベンジルフェニルアセテート、メチルフェニルアセテート、ベンジルアセテート、フェネチルフェニルアセテート、ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネートが好ましい。これらは1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。2種以上併用する場合は、特に、シクロヘキシルベンゼンとt−ブチルベンゼン又はt−アミルベンゼンとの組み合わせ、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン等の酸素を含有しない芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種と、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の含酸素芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種とを併用するのが、過充電防止特性と高温保存特性のバランスの点から好ましい。
過充電防止剤の含有量は、特に制限されず、任意である。過充電防止剤の含有量は、非水系電解液100質量%中、通常0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、また、通常5質量%以下、好ましくは4.8質量%以下、より好ましくは4.5質量%以下である。この範囲内であれば、過充電防止剤の効果が十分に発現され易く、また、高温保存特性等の電池特性が向上する傾向にある。
<2−4−8.その他の助剤>
本実施形態の非水系電解液には、公知のその他の助剤を用いることができる。その他の助剤としては、
エリスリタンカーボネート、スピロ−ビス−ジメチレンカーボネート、メトキシエチル−メチルカーボネート等のカーボネート化合物;
メチル−2−プロピニルオギザレート、エチル−2−プロピニルオギザレート、ビス(2−プロピニル)オギザレート、2−プロピニルアセテート、2−プロピニルホルメート、2−プロピニルメタクリレート、ジ(2−プロピニル)グルタレート、メチル−2−プロピニルカーボネート、エチル−2−プロピニルカーボネート、ビス(2−プロピニル)カーボネート、2−ブチン−1,4−ジイル−ジメタンスルホネート、2−ブチン−1,4−ジイル−ジエタンスルホネート、2−ブチン−1,4−ジイル−ジホルメート、2−ブチン−1,4−ジイル−ジアセテート、2−ブチン−1,4−ジイル−ジプロピオネート、4−ヘキサジイン−1,6−ジイル−ジメタンスルホネート、2−プロピニル−メタンスルホネート、1−メチル−2−プロピニル−メタンスルホネート、1,1−ジメチル−2−プロピニル−メタンスルホネート、2−プロピニル−エタンスルホネート、2−プロピニル−ビニルスルホネート、2−プロピニル−2−(ジエトキシホスホリル)アセテート、1−メチル−2−プロピニル−2−(ジエトキシホスホリル)アセテート、1,1−ジメチル−2−プロピニル−2−(ジエトキシホスホリル)アセテート等の三重結合含
有化合物;
2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ジビニル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のスピロ化合物;
エチレンサルファイト、フルオロスルホン酸メチル、フルオロスルホン酸エチル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、ブスルファン、スルホレン、硫酸エチレン、硫酸ビニレン、ジフェニルスルホン、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド、メチル硫酸トリメチルシリル、エチル硫酸トリメチルシリル、2−プロピニル−トリメチルシリルスルフェート等の含硫黄化合物;
2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、2−イソシアナトエチルクロトネート、2−(2−イソシアナトエトキシ)エチルアクリレート、2−(2−イソシアナトエトキシ)エチルメタクリレート、2−(2−イソシアナトエトキシ)エチルクロトネート等のイソシアネート化合物;
1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びN−メチルスクシンイミド等の含窒素化合物;
ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物;
フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド、1,2−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ペンタフルオロフェニルメタンスルホネート、ペンタフルオロフェニルトリフルオロメタンスルホネート、酢酸ペンタフルオロフェニル、トリフルオロ酢酸ペンタフルオロフェニル、メチルペンタフルオロフェニルカーボネート等の含フッ素芳香族化合物;
ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、ホウ酸トリス(トリメトキシシリル)、リン酸トリス(トリメチルシリル)、リン酸トリス(トリメトキシシリル)、ジメトキシアルミノキシトリメトキシシラン、ジエトキシアルミノキシトリエトキシシラン、ジプロポキシアルミノキシトリエトキシシラン、ジブトキシアルミノキシトリメトキシシラン、ジブトキシアルミノキシトリエトキシシラン、チタンテトラキス(トリメチルシロキシド)、チタンテトラキス(トリエチルシロキシド)等のシラン化合物;
2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2−プロピニル、2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2−メチル、2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2−エチル、メタンスルホニルオキシ酢酸2−プロピニル、メタンスルホニルオキシ酢酸2−メチル、メタンスルホニルオキシ酢酸2−エチル等のエステル化合物;
リチウムエチルメチルオキシカルボニルホスホネート、リチウムエチルエチルオキシカルボニルホスホネート、リチウムエチル−2−プロピニルオキシカルボニルホスホネート、リチウムエチル−1−メチル−2−プロピニルオキシカルボニルホスホネート、リチウムエチル−1,1−ジメチル−2−プロピニルオキシカルボニルホスホネート、メチル硫酸リチウム、エチル硫酸リチウム等のリチウム塩;
等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。これらの助剤を添加することにより、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性が向上する傾向にある。
その他の助剤の含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。その他の助剤の含有量は、非水系電解液100質量%中、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、また、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。この範囲内であれば、その他助剤の含有効果が十分に発現され易く、高負荷放電特性等の電池特性が向上する傾向にある。
以上に記載してきた非水系電解液は、非水系電解液電池の内部に存在するものも含まれる。具体的には、リチウム塩や溶媒、助剤等の非水系電解液の構成要素を別途合成し、実
質的に単離されたものから非水系電解液を調製し、下記に記載する方法にて別途組み立てた電池内に注液して得た非水系電解液電池内の非水系電解液である場合や、本実施形態の非水系電解液の構成要素を個別に電池内に入れておき、電池内にて混合させることにより本実施形態の非水系電解液と同じ組成を得る場合、さらには、本実施形態の非水系電解液を構成する化合物を該非水系電解液電池内で発生させて、本実施形態の非水系電解液と同じ組成を得る場合も含まれるものとする。
<3.非水系電解液を用いた蓄電デバイス>
本実施形態の非水系電解液を用いた蓄電デバイスは、正極と、負極と、電解質として非水溶媒に上述した一般式LiBFn(NCO)4−nで表されるリチウム塩が溶解されている非水系電解液とを備えることを特徴とする。
本実施形態の非水系電解液を用いた蓄電デバイスは、非水系電解液二次電池としてのリチウム電池、多価カチオン電池、金属空気二次電池、後述するs−ブロック金属を用いた二次電池、リチウムイオンキャパシタであることが好ましく、リチウム電池とリチウムイオンキャパシタがより好ましく、リチウム電池がさらに好ましい。
なお、これらの蓄電デバイスに用いられる非水系電解液は、高分子やフィラー等で疑似的に固体化された、所謂ゲル電解質であることも好ましい。また、上述した一般式LiBFn(NCO)4−nで表されるリチウム塩は、固体電解質の電解質塩としても使用することができる。
<3−1.リチウム電池>
本実施形態の非水系電解液を用いたリチウム電池は、集電体及び該集電体上に設けられた正極活物質層を有する正極と、集電体及び該集電体上に設けられた負極活物質層を有しかつイオンを吸蔵及び放出し得る負極と、上述した本実施形態の非水系電解液とを備えるものである。なお、本実施形態におけるリチウム電池とは、リチウム一次電池とリチウム二次電池の総称である。
<3−1−1.電池構成>
本実施形態のリチウム電池は、上述した本実施形態の非水系電解液以外の構成については、従来公知のリチウム電池と同様である。通常は、本実施形態の非水系電解液が含浸されている多孔膜(セパレータ)を介して正極と負極とが積層され、これらがケース(外装体)に収納された形態を有する。したがって、本実施形態のリチウム電池の形状は、特に制限されるものではなく、任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等のいずれであってもよい。
<3−1−2.非水系電解液>
非水系電解液としては、上述の本実施形態の非水系電解液を用いる。なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、該非水系電解液に対し、その他の非水系電解液をさらに配合してもよい。
<3−1−3.負極>
負極は、集電体上に負極活物質層を有するものであり、負極活物質層は負極活物質を含有する。以下、負極活物質について述べる。
負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はない。その具体例としては、炭素質材料、金属合金系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
<3−1−3−1.炭素質材料>
負極活物質として用いられる炭素質材料としては、特に限定されないが、下記(ア)〜(エ)から選ばれるものが、初期不可逆容量、高電流密度充放電特性のバランスがよいため好ましい。また、(ア)〜(エ)の炭素質材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
(ア)天然黒鉛
(イ)人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質を400から3200℃の範囲で一回以上熱処理した炭素質材料
(ウ)負極活物質層が少なくとも2種類以上の異なる結晶性を有する炭素質から成り立ちかつ/又はその異なる結晶性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料
(エ)負極活物質層が少なくとも2種類以上の異なる配向性を有する炭素質から成り立ちかつ/又はその異なる配向性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料
上記(ア)の人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質の具体的な例としては、天然黒鉛、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、或いはこれらピッチを酸化処理したもの;ニードルコークス、ピッチコークス及びこれらを一部黒鉛化した炭素材;ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等の有機物の熱分解物;炭化可能な有機物、及びこれらの炭化物;炭化可能な有機物をベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n−へキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液及びこれらの炭化物;等が挙げられる。
<3−1−3−2.炭素質負極の構成、物性、調製方法>
その他、上記(ア)〜(エ)の炭素質材料はいずれも従来公知であり、その製造方法は当業者によく知られており、またこれらの市販品を購入することもできる。炭素質材料についての性質や炭素質材料を含有する負極電極及び電極化手法、集電体、リチウム電池については、次に示す(1)〜(13)のいずれか1項又は複数項を同時に満たしていることが望ましい。
(1)X線パラメータ
炭素質材料の学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が、通常0.335〜0.340nmであり、特に0.335〜0.338nm、とりわけ0.335〜0.337nmであるものが好ましい。また、学振法によるX線回折で求めた結晶子サイズ(Lc)は、通常1.0nm以上、好ましくは1.5nm以上、特に好ましくは2nm以上である。
(2)体積基準平均粒径
炭素質材料の体積基準平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径(メジアン径)が、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上がさらに好ましく、7μm以上が特に好ましく、また、通常100μm以下であり、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましく、25μm以下が特に好ましい。
体積基準平均粒径の測定は、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約10mL)に炭素質材料粉末を分散させて、レーザー回折・散乱式粒度分布計(堀場製作所社製LA−700)を用いて行なう。該測定で求められるメジアン径を、本発明の炭素質材料の体積基準平均粒径と定義する。
(3)ラマンR値、ラマン半値幅
炭素質材料のラマンR値は、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法を用いて測定
した値が、通常0.01以上であり、0.03以上が好ましく、0.1以上がさらに好ましく、また、通常1.5以下であり、1.2以下が好ましく、1以下がさらに好ましく、0.5以下が特に好ましい。
ラマンR値が上記範囲内にあると、粒子表面の結晶性が適度な範囲となり、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトの減少を抑制でき、充電受入性が低下し難くなる傾向にある。また、集電体に後述する負極形成材料(スラリー)を塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合には、リチウム電池等の負荷特性の低下を招き難くなる。さらに、効率の低下やガス発生の増加を招き難くなる。
また、炭素質材料の1580cm−1付近のラマン半値幅は特に制限されないが、通常10cm−1以上であり、15cm−1以上が好ましく、また、通常100cm−1以下であり、80cm−1以下が好ましく、60cm−1以下がさらに好ましく、40cm−1以下が特に好ましい。
ラマン半値幅が上記範囲内にあると、粒子表面の結晶性が適度な範囲となり、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトの減少を抑制でき、充電受入性が低下し難くなる。また、集電体に負極形成材料を塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合には、リチウム電池等の負荷特性の低下を招き難くなる。さらに、効率の低下やガス発生の増加を招き難くなる。
ラマンスペクトルの測定は、ラマン分光器(日本分光社製ラマン分光器)を用いて、試料を測定セル内へ自然落下させて充填し、セル内のサンプル表面にアルゴンイオンレーザー光を照射しながら、セルをレーザー光と垂直な面内で回転させることにより行なう。得られるラマンスペクトルについて、1580cm−1付近のピークPAの強度IAと、1360cm−1付近のピークPBの強度IBとを測定し、その強度比R(R=IB/IA)を算出する。該測定で算出されるラマンR値を、本明細書における炭素質材料のラマンR値と定義する。また、得られるラマンスペクトルの1580cm−1付近のピークPAの半値幅を測定し、これを本明細書における炭素質材料のラマン半値幅と定義する。
また、上記のラマン測定条件は、次の通りである。
・アルゴンイオンレーザー波長 :514.5nm
・試料上のレーザーパワー :15〜25mW
・分解能 :10〜20cm−1
・測定範囲 :1100cm−1〜1730cm−1
・ラマンR値、ラマン半値幅解析:バックグラウンド処理
・スムージング処理 :単純平均、コンボリューション5ポイント
(4)BET比表面積
炭素質材料のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値が、通常0.1m・g−1以上であり、0.7m・g−1以上が好ましく、1.0m・g−1以上がさらに好ましく、1.5m・g−1以上が特に好ましく、また、通常100m・g−1以下であり、25m・g−1以下が好ましく、15m・g−1以下がさらに好ましく、10m・g−1以下が特に好ましい。
BET比表面積の値が上記範囲内にあると、炭素質材料を負極活物質として用いた場合の充電時にリチウム等のカチオンの受け入れ性がよく、リチウム等が電極表面で析出し難くなり、リチウム電池等の安定性低下を回避し易い傾向にある。さらに、非水系電解液との反応性が抑制され、ガス発生が少なく、好ましいリチウム電池等が得られ易い傾向にある。
BET法による比表面積の測定は、表面積計(大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて、試料に対して窒素流通下350℃で15分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって行なう。該測定で求められる比表面積を、本明細書における炭素質材料のBET比表面積と定義する。
(5)円形度
炭素質材料の球形の程度として円形度を測定した場合、以下の範囲に収まることが好ましい。なお、円形度は、「円形度=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)」で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。
炭素質材料の粒径が3〜40μmの範囲にある粒子の円形度は1に近いほど望ましく、また、0.1以上が好ましく、中でも0.5以上がより好ましく、0.8以上がさらに好ましく、0.85以上が特に好ましく、0.9以上が最も好ましい。
リチウム電池等の高電流密度充放電特性は、円形度が大きいほど向上する。したがって、円形度が上記範囲を下回ると、負極活物質の充填性が低下し、粒子間の抵抗が増大して、短時間高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
炭素質材料の円形度の測定は、フロー式粒子像分析装置(シスメックス社製FPIA)を用いて行う。具体的には試料約0.2gを、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約50mL)に分散させ、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、検出範囲を0.6〜400μmに指定し、粒径が3〜40μmの範囲の粒子について測定する。該測定で求められる円形度を、本明細書における炭素質材料の円形度と定義する。
円形度を向上させる方法は、特に限定されないが、球形化処理を施して球形にしたものが、電極体にしたときの粒子間空隙の形状が整うので好ましい。球形化処理の例としては、せん断力、圧縮力を与えることによって機械的に球形に近づける方法、複数の微粒子をバインダー若しくは、粒子自身の有する付着力によって造粒する機械的・物理的処理方法等が挙げられる。
(6)タップ密度
炭素質材料のタップ密度は、特に限定されないが、通常0.1g・cm−3以上であり、0.5g・cm−3以上が好ましく、0.7g・cm−3以上がさらに好ましく、1g・cm−3以上が特に好ましく、また、2g・cm−3以下が好ましく、1.8g・cm−3以下がさらに好ましく、1.6g・cm−3以下が特に好ましい。
タップ密度が、上記範囲内であると、負極として用いた場合に充填密度を十分確保でき、高容量のリチウム電池等が得られ易い傾向にある。さらに、電極中の粒子間の空隙が少なくなり過ぎず、粒子間の導電性が確保されやすく、好ましい電池特性が得られ易い傾向にある。
タップ密度の測定は、以下の通り行う。試料を目開き300μmの篩を通過させて、20cmのタッピングセルに試料を落下させてセルの上端面まで試料を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、そのときの体積と試料の質量からタップ密度を算出する。該測定で算出されるタップ密度を、本明細書における炭素質材料のタップ密度として定義する。
(7)配向比
炭素質材料の配向比は、特に限定されないが、通常0.005以上であり、0.01以上が好ましく、0.015以上がより好ましく、また、通常0.67以下である。配向比が、上記範囲内にあると、より高い高密度充放電特性が得られ易い傾向にある。なお、上記範囲の上限は、炭素質材料の配向比の理論上限値である。
炭素質材料の配向比は、試料を加圧成型してからX線回折により測定することにより求める。具体的には、試料0.47gを直径17mmの成型機に充填し58.8MN・m−2で圧縮して得た成型体を、粘土を用いて測定用試料ホルダーの面と同一面になるようにセットしてX線回折を測定する。得られた炭素の(110)回折と(004)回折のピーク強度から、(110)回折ピーク強度/(004)回折ピーク強度で表わされる比を算出する。該測定で算出される配向比を、本明細書における炭素質材料の配向比と定義する。
X線回折測定条件は次の通りである。なお、「2θ」は回折角を示す。
・ターゲット:Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット :
発散スリット=0.5度
受光スリット=0.15mm
散乱スリット=0.5度
・測定範囲及びステップ角度/計測時間:
(110)面:75度≦2θ≦80度 1度/60秒
(004)面:52度≦2θ≦57度 1度/60秒
(8)アスペクト比(粉)
炭素質材料のアスペクト比は、特に限定されないが、通常1以上、また、通常10以下であり、8以下が好ましく、5以下がより好ましい。アスペクト比が、上記範囲を上回ると、極板化時にスジ引きや、均一な塗布面が得られず、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の下限は、炭素質材料のアスペクト比の理論下限値である。
炭素質材料のアスペクト比の測定は、炭素質材料の粒子を走査型電子顕微鏡で拡大観察して行う。具体的には厚さ50μm以下の金属の端面に固定した任意の50個の炭素質材料粒子を選択し、それぞれについて試料が固定されているステージを回転、傾斜させて、3次元的に観察した時の炭素質材料粒子の最長となる径Pと、それと直交する最短となる径Qを測定し、P/Qの平均値を求める。該測定で求められるアスペクト比(P/Q)を、本明細書における炭素質材料のアスペクト比と定義する。
(9)電極作製
負極の製造は、公知のいずれの方法を用いることができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリー状の負極形成材料とし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって、負極活物質層を形成することができる。
リチウム電池等の非水系電解液注液工程直前の段階での片面あたりの負極活物質層の厚さは、特に限定されないが、通常15μm以上であり、20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、また、通常150μm以下であり、120μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。負極活物質の厚さが、この範囲内にあると、集電体界面付近まで非水系電解液が浸透され易く、高電流密度充放電特性が向上する傾向にある。さらに、負極活物質に対する集電体の体積比が過度に大きくならないため、電池の容量を高
く維持し易い傾向にある。なお、負極活物質をロール成形してシート電極としてもよく、圧縮成形によりペレット電極としてもよい。
(10)集電体
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負極の集電体としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられるが、加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
また、集電体の形状は、集電体が金属材料の場合は、例えば、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは金属薄膜、より好ましくは銅箔であり、さらに好ましくは圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔がある。
また、銅箔の厚さが25μmよりも薄い場合、純銅よりも強度の高い銅合金(リン青銅、チタン銅、コルソン合金、Cu−Cr−Zr合金等)を用いることができる。
集電体の厚さは、特に限定されず、任意であるが、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、また、通常1mm以下であり、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。金属皮膜の厚さがこの範囲内にあると、強度を維持し易く変形が防止され、また、負極活物質の塗布性が向上する傾向にある。なお、集電体は、メッシュ状でもよい。
(11)集電体と負極活物質層の厚さの比
集電体と負極活物質層の厚さの比は、特に限定されないが、「(非水系電解液注液直前の片面の負極活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)」の値は、通常150以下、20以下が好ましく、10以下がより好ましく、また、通常0.1以上、0.4以上が好ましく、1以上がより好ましい。
集電体と負極活物質層の厚さの比が、上記範囲内にあると、高電流密度充放電時のジュール熱による発熱を抑制し易く、また、負極活物質に対する集電体の体積比が過度に大きくならないため、電池の容量を高く維持し易い傾向にある。
(12)電極密度
負極活物質を電極化した際の電極構造は特に限定されないが、集電体上に存在している負極活物質の密度は、1g・cm−3以上が好ましく、1.2g・cm−3以上がより好ましく、1.3g・cm−3以上がさらに好ましく、また、2.2g・cm−3以下が好ましく、2.1g・cm−3以下がより好ましく、2.0g・cm−3以下がさらに好ましく、1.9g・cm−3以下が特に好ましい。集電体上に存在している負極活物質の密度が、上記範囲内であると、負極活物質粒子が破壊され難く、リチウム電池等の初期不可逆容量の増加や、集電体/負極活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性の悪化が抑制される傾向にある。さらに、負極活物質間の導電性を確保することができ、電池抵抗を増大させずに、単位容積当たりの電池容量を稼ぐことができる。
(13)バインダー
負極活物質層を形成するためのスラリーは、特に限定されないが、通常、負極活物質に対して、溶媒にバインダー(結着剤)、増粘剤等を混合したものを加えて調製される。負極活物質を結着するバインダーとしては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。
具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
スラリーを形成するための溶媒としては、負極活物質、バインダー、並びに必要に応じて使用される増粘剤及び導電材を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
水系溶媒の例としては水、アルコール等が挙げられ、有機系溶媒の例としてはN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。
特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散剤等を含有させ、SBR等のラテックスを用いてスラリー化することが好ましい。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
負極活物質に対するバインダーの割合は、特に限定されないが、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、0.6質量%以上がさらに好ましく、また、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、8質量%以下が特に好ましい。負極活物質に対するバインダーの割合が、上記範囲内であれば、電池容量に寄与しないバインダーの割合が多くならないので、電池容量の低下を招き難くなる。さらに、負極電極の強度低下も招き難くなる。
特に、負極形成材料であるスラリーがSBRに代表されるゴム状高分子を主要成分として含有する場合には、負極活物質に対するバインダーの割合は、特に限定されないが、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がより好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
また、スラリーがポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分として含有する場合、負極活物質に対する割合は、特に限定されないが、通常1質量%以上であり、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、また、通常15質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。増粘剤としては、特に
制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
増粘剤を用いる場合、負極活物質に対する増粘剤の割合は、特に限定されないが、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がさらに好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。負極活物質に対する増粘剤の割合が、上記範囲内にあると、スラリーの塗布性が良好となる傾向にある。また、負極活物質層に占める負極活物質の割合も適度なものとなり、電池容量の低下や負極活物質間の抵抗増大が抑制される傾向にある。
<3−1−3−3.金属化合物系材料、及び金属化合物系材料を用いた負極の構成、物性、調製方法>
負極活物質として用いられる金属化合物系材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば、リチウム合金を形成する単体金属若しくは合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、珪化物、硫化物、燐化物等の化合物のいずれであっても特に限定はされない。このような金属化合物としては、Ag、Al、Ba、Bi、Cu、Ga、Ge、In、Ni、P、Pb、Sb、Si、Sn、Sr、Zn等の金属を含有する化合物が挙げられる。なかでも、リチウム合金を形成する単体金属若しくは合金であることが好ましく、13族又は14族の金属・半金属元素(すなわち炭素を除く。また以降では、金属及び半金属をまとめて「金属」と呼ぶ。)を含む材料あることがより好ましく、さらには、ケイ素(Si)、スズ(Sn)又は鉛(Pb)(以下、これら3種の元素を「特定金属元素」という場合がある。)の単体金属若しくはこれら原子を含む合金、又は、それらの金属(特定金属元素)の化合物であることが好ましい。ケイ素の単体金属、合金及び化合物、並びにスズの単体金属、合金及び化合物が特に好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
特定金属元素から選ばれる少なくとも1種の原子を有する負極活物質の例としては、いずれか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素からなる合金、1種又は2種以上の特定金属元素とその他の1種又は2種以上の金属元素とからなる合金、並びに、1種又は2種以上の特定金属元素を含有する化合物、又は、その化合物の酸化物・炭化物・窒化物・珪化物・硫化物・燐化物等の複合化合物が挙げられる。負極活物質としてこれらの金属単体、合金又は金属化合物を用いることで、リチウム電池等の高容量化が可能である。
また、これらの複合化合物が、金属単体、合金、又は非金属元素等の数種の元素と複雑に結合した化合物も例として挙げることができる。より具体的には、例えばケイ素やスズでは、これらの元素と負極として動作しない金属との合金を用いることができる。また例えばスズでは、スズとケイ素以外で負極として作用する金属と、さらに負極として動作しない金属と、非金属元素との組み合わせで5〜6種の元素を含むような複雑な化合物も用いることができる。
これらの負極活物質の中でも、リチウム電池等にしたときに単位質量当たりの容量が大きいことから、いずれか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素の合金、特定金属元素の酸化物や炭化物、窒化物等が好ましく、特に、単位質量当たりの容量及び環境負荷の観点から、ケイ素及び/又はスズの金属単体、合金、酸化物や炭化物、窒化物等が好ましく、ケイ素の金属単体、合金、酸化物や炭化物等が最も好ましい。
また、金属単体又は合金を用いるよりはリチウム電池等の単位質量当たりの容量には劣
るものの、サイクル特性に優れることから、ケイ素及び/又はスズを含有する以下の化合物も好ましい。
・ケイ素及び/又はスズと酸素との元素比が通常0.5以上であり、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下であり、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.1以下の「ケイ素及び/又はスズの酸化物」。
・ケイ素及び/又はスズと窒素との元素比が通常0.5以上であり、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下であり、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.1以下の「ケイ素及び/又はスズの窒化物」。
・ケイ素及び/又はスズと炭素との元素比が通常0.5以上であり、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下であり、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.1以下の「ケイ素及び/又はスズの炭化物」。
なお、上述の負極活物質は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
本実施形態のリチウム電池における負極は、公知のいずれの方法を用いて製造することが可能である。負極の製造方法としては、例えば、上述の負極活物質に結着剤や導電材等を加えたものをそのままロール成型してシート電極とする方法や、圧縮成形してペレット電極とする方法が挙げられるが、通常は負極用の集電体(以下「負極集電体」という場合がある。)上に塗布法、蒸着法、スパッタ法、メッキ法等の手法により、上述の負極活物質を含有する薄膜層(負極活物質層)を形成する方法が用いられる。この場合、上述の負極活物質に結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー状とし、これを負極集電体に塗布、乾燥した後にプレスして高密度化することにより、負極集電体上に負極活物質層を形成する。
負極集電体の材質としては、鋼、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス等が挙げられる。これらのうち、薄膜に加工し易いという点及びコストの点から、銅箔が好ましい。
負極集電体の厚さは、特に限定されないが、電池全体の容量を確保するとともに取扱性を担保する観点から、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。
なお、表面に形成される負極活物質層との結着効果を向上させるため、これら負極集電体の表面は、予め粗面化処理しておくことが好ましい。表面の粗面化方法としては、特に限定されず、公知の方法を適用可能である。例えば、ブラスト処理、粗面ロールによる圧延、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線等を備えたワイヤーブラシ等で集電体表面を研磨する機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法等が挙げられる。
負極活物質層を形成するためのスラリーは、通常は負極材に対して結着剤、増粘剤等を加えて作製される。なお、本明細書における「負極材」とは、負極活物質と導電材とを合わせた材料を指すものとする。
負極材中における負極活物質の含有量は、特に限定されないが、通常70質量%以上、特に75質量%以上が好ましく、また、通常97質量%以下、特に95質量%以下が好ましい。負極活物質の含有量が上記範囲内にあると、リチウム電池等の容量を確保し易く、また、負極の強度も確保し易い。なお、2以上の負極活物質を併用する場合には、負極活物質の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
負極に用いられる導電材としては、特に限定されないが、銅やニッケル等の金属材料;黒鉛、カーボンブラック等の炭素材料等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。特に、導電材として炭素材料を用いると、炭素材料が活物質としても作用するため好ましい。負極材中における導電材の含有量は、特に限定されないが、通常3質量%以上、特に5質量%以上が好ましく、また、通常30質量%以下、特に25質量%以下が好ましい。導電材の含有量が上記範囲内にあると、導電性を確保し易く、また、電池容量や強度も確保しやすい傾向にある。なお、2以上の導電材を併用する場合には、導電材の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
負極に用いられる結着剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液に対して安全な材料であれば、任意のものを使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン・ブタジエンゴム・イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。結着剤の含有量は、特に限定されないが、負極材100質量部に対して通常0.5質量部以上、特に1質量部以上が好ましく、また、通常10質量部以下、特に8質量部以下が好ましい。結着剤の含有量が上記範囲内であると、負極の強度を維持しやすく、また、電池容量や導電性を確保しやすい傾向にある。なお、2以上の結着剤を併用する場合には、結着剤の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
負極に用いられる増粘剤としては、特に限定されないが、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。増粘剤は必要に応じて使用すればよいが、使用する場合には、負極活物質層中における増粘剤の含有量が通常0.5質量%以上、5質量%以下の範囲で用いることが好ましい。
負極活物質層を形成するためのスラリーは、上記負極活物質に、必要に応じて導電材や結着剤、増粘剤を混合し、水系溶媒又は有機溶媒を分散媒として用いて調製することができる。水系溶媒としては、通常は水が用いられるが、エタノール等のアルコール類やN−メチルピロリドン等の環状アミド類等の水以外の溶媒を、水に対して30質量%以下程度の割合で併用することもできる。また、有機溶媒としては、通常、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類、アニソール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられ、これらの中でも、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類等が好ましい。なお、これらはいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
スラリーの粘度は、集電体上に塗布することが可能な粘度であれば、特に制限されない。塗布が可能な粘度となるように、スラリーの調製時に溶媒の使用量等を変えて、適宜調整すればよい。
得られたスラリーを上述の負極集電体上に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより、負極活物質層が形成される。塗布の手法は特に制限されず、それ自体既知の方法を用いることができる。乾燥の手法も特に制限されず、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等の公知の手法を用いることができる。
上記手法により負極活物質を電極化した際の電極構造は特には限定されないが、集電体上に存在している活物質の密度は、1g・cm−3以上が好ましく、1.2g・cm−3以上がさらに好ましく、1.3g・cm−3以上が特に好ましく、また、2.2g・cm−3以下が好ましく、2.1g・cm−3以下がより好ましく、2.0g・cm−3以下がさらに好ましく、1.9g・cm−3以下が特に好ましい。
集電体上に存在している負極活物質の密度が、上記範囲内であると、負極活物質粒子が破壊され難く、リチウム電池等の初期不可逆容量の増加や、集電体/活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性の悪化が抑制される傾向にある。さらに、負極活物質間の導電性確保することができ、電池抵抗が増大することなく、単位容積当たりの容量を稼ぐことができる。
<3−1−3−4.炭素質材料と金属化合物系材料を用いた負極の構成、物性、調製方法>
負極活物質として、金属化合物系材料と前記炭素質材料を含有してもよい。ここで、金属化合物系材料と炭素質材料を含有する負極活物質とは、リチウム合金を形成する単体金属若しくは合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、珪化物、硫化物等の化合物のいずれかと、炭素質材料が互いに独立した粒子の状態で混合されている混合物でもよいし、リチウム合金を形成する単体金属若しくは合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、珪化物、硫化物等の化合物が炭素質材料の表面又は内部に存在している複合体でもよい。本明細書において、複合体は、特に、金属化合物系材料及び炭素質材料を含んでいればよく、その性状及び形態は特に制限されないが、金属化合物系材料及び炭素質材料が物理的及び/又は化学的な結合によって一体化しているものが好ましい。より好ましい形態としては、金属化合物系材料及び炭素質材料が、少なくとも複合体表面及びバルク内部のいずれにも存在する程度に各々の固体成分が分散して存在している状態にあり、それらを物理的及び/又は化学的な結合によって一体化させるために、炭素質材料が存在しているような形態である。
このような形態は、走査電子顕微鏡による粒子表面観察、粒子を樹脂に包埋させて樹脂の薄片を作製し粒子断面を切り出した後、或いは粒子からなる塗布膜をクロスセクションポリッシャーによる塗布膜断面を作製し粒子断面を切り出した後、走査電子顕微鏡による粒子断面観察等の観察方法にて、観察が可能である。
金属化合物系材料と炭素質材料を含有する負極活物質に用いられる金属化合物系材料の含有割合は、特に限定されないが、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、特に好ましくは3質量%以上であり、また、通常99質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、よりさらに好ましくは25質量%以下、特に好ましくは15質量%以下、最も好ましくは10質量%以下である。この範囲内であると、十分な容量が得られ易い傾向にある。
金属化合物系材料と炭素質材料を含有する負極活物質に用いられる炭素質材料については、前記<3−1−3−2>に記載の要件を満たすことが好ましい。また、金属化合物系材料については、下記を満たすことが望ましい。
リチウム合金を形成する単体金属若しくは合金としては、従来公知のいずれのものも使用可能であるが、容量とサイクル寿命の点から、リチウム合金を形成する単体金属は、例えば、Fe、Co、Sb、Bi、Pb、Ni、Ag、Si、Sn、Al、Zr、Cr、P、S、V、Mn、Nb、Mo、Cu、Zn、Ge、In、Ti等からなる群から選ばれる金属又はその化合物が好ましい。また、リチウム合金を形成する合金としては、Si、S
n、As、Sb、Al、Zn及びWからなる群から選ばれる金属又はその化合物が好ましい。
リチウム合金を形成する単体金属若しくは合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、珪化物、硫化物等の化合物とは、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属珪化物、金属硫化物等が挙げられる。また、2種以上の金属からなる合金を使用してもよい。この中でも、Si又はSi化合物が高容量化の点で、好ましい。本明細書では、Si又はSi化合物を総称してSi化合物と呼ぶ。Si化合物としては、具体的には、一般式で表すと、SiOx,SiNx,SiCx、SiZxOy(Zは、C又はNである。)等が挙げられ、好ましくはSiOxである。なお、上記一般式中のxの値は特に限定されないが、通常、0≦x<2である。上記一般式SiOxは、二酸化Si(SiO)と金属Si(Si)とを原料として得られる。SiOxは、黒鉛と比較して理論容量が大きく、さらに非晶質Si或いはナノサイズのSi結晶は、リチウムイオン等のアルカリイオンの出入りがしやすく、高容量を得ることが可能となる。
SiOx中のxの値は特に限定されないが、通常、xは0≦x<2であり、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.4以上、さらに好ましくは0.6以上であり、また好ましくは1.8以下、より好ましくは1.6以下、さらに好ましくは1.4以下である。この範囲内であれば、高容量が確保され易く、それと同時に、Liと酸素との結合による不可逆容量が低減される傾向にある。
なお、金属化合物系材料が、リチウムと合金化可能な金属材料であることを確認するための手法としては、特に限定されないが、X線回折による金属粒子相の同定、電子顕微鏡による粒子構造の観察及び元素分析、蛍光X線による元素分析等が挙げられる。
金属化合物系材料と炭素質材料を含有する負極活物質に用いられる金属化合物系材料の平均粒子径(d50)は、特に限定されないが、サイクル寿命の観点から、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上であり、通常10μm以下、好ましくは9μm以下、より好ましくは8μm以下である。平均粒子径(d50)が前記範囲内であると、充放電に伴う体積膨張が低減され、充放電容量を維持しつつ、良好なサイクル特性の得ることができる。なお、本明細書において、金属化合物系材料の平均粒子径(d50)は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定方法等で求められる値を意味する。
金属化合物系材料と炭素質材料を含有する負極活物質に用いられる金属化合物系材料のBET法により比表面積は、特に限定されないが、通常0.5m/g以上、好ましくは1m/g以上、また、通常、60m/g以下、好ましくは40m/gである。Liと合金化可能な金属粒子のBET法による比表面積が前記範囲内であると、電池の充放電効率及び放電容量が高く、高速充放電においてリチウムの出し入れが速く、レート特性に優れるので好ましい。
金属化合物系材料と炭素質材料を含有する負極活物質に用いられる金属化合物系材料の含有酸素量は、特に制限はないが、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、また、通常8質量%以下、好ましくは5質量%以下である。粒子内の酸素分布状態は、表面近傍に存在、粒子内部に存在、粒子内一様に存在していてもかまわないが、特に表面近傍に存在していることが好ましい。金属化合物系材料の含有酸素量が前記範囲内であると、SiとOの強い結合により、充放電に伴う体積膨張が抑制され、サイクル特性に優れるので好ましい。
また、金属化合物系材料と炭素質材料を含有する負極活物質に用いられる金属化合物系
材料の負極作成については、前記<3−1−3−2>炭素質材料に記載のものを用いることができる。
<3−1−3−5.リチウム含有金属複合酸化物材料、及びリチウム含有金属複合酸化物材料を用いた負極の構成、物性、調製方法>
負極活物質として用いられるリチウム含有金属複合酸化物材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば特に限定はされないが、チタンを含むリチウム含有複合金属酸化物材料が好ましく、リチウムとチタンの複合酸化物(以下、「リチウムチタン複合酸化物」と略記する。)が特に好ましい。すなわち、スピネル構造を有するリチウムチタン複合酸化物を、リチウム電池用負極活物質に含有させて用いると、出力抵抗が大きく低減するので特に好ましい。
また、リチウムチタン複合酸化物のリチウムやチタンが、他の金属元素、例えば、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素で置換されているものも好ましい。
負極活物質として好ましいリチウムチタン複合酸化物としては、下記一般式(6)で表されるリチウムチタン複合酸化物が挙げられる。
LixTiyMzO (6)
[一般式(5)中、Mは、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表わす。また、一般式(6)中、0.7≦x≦1.5、1.5≦y≦2.3、0≦z≦1.6であることが、リチウムイオンのドープ・脱ドープの際の構造が安定であることから好ましい。]
上記の一般式(6)で表される組成の中でも、
(a)1.2≦x≦1.4、1.5≦y≦1.7、z=0
(b)0.9≦x≦1.1、1.9≦y≦2.1、z=0
(c)0.7≦x≦0.9、2.1≦y≦2.3、z=0
の構造が、電池性能のバランスが良好なため特に好ましい。
上記化合物の特に好ましい代表的な組成は、(a)ではLi4/3Ti5/3、(b)ではLiTi、(c)ではLi4/5Ti11/5である。また、z≠0の構造については、例えば、Li4/3Ti4/3Al1/3が好ましいものとして挙げられる。
本実施形態における負極活物質としてのリチウムチタン複合酸化物は、上記した要件に加えて、さらに、下記の(1)〜(13)に示した物性及び形状等の特徴の内、少なくとも1種を満たしていることが好ましく、2種以上を同時に満たすことが特に好ましい。
(1)BET比表面積
負極活物質として用いられるリチウムチタン複合酸化物のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値が、0.5m・g−1以上が好ましく、0.7m・g−1以上がより好ましく、1.0m・g−1以上がさらに好ましく、1.5m・g−1以上が特に好ましく、また、200m・g−1以下が好ましく、100m・g−1以下がより好ましく、50m・g−1以下がさらに好ましく、25m・g−1以下が特に好ましい。
BET比表面積が、上記範囲内であると、負極活物質の非水系電解液と接する反応面積が減少し難く、出力抵抗の増加が抑制される傾向にある。さらに、チタンを含有する金属
酸化物の結晶の表面や端面の部分の増加を抑え、これに起因する結晶の歪も生じ難くなるため、好ましいリチウム電池等が得られ易くなる。
リチウムチタン複合酸化物のBET法による比表面積の測定は、表面積計(大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて、試料に対して窒素流通下、350℃で15分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって行なう。該測定で求められる比表面積を、本明細書におけるリチウムチタン複合酸化物のBET比表面積と定義する。
(2)体積基準平均粒径
リチウムチタン複合酸化物の体積基準平均粒径(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径)は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径(メジアン径)で定義される。
リチウムチタン複合酸化物の体積基準平均粒径は、特に限定されないが、通常0.1μm以上であり、0.5μm以上が好ましく、0.7μm以上がより好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、25μm以下がさらに好ましい。
リチウムチタン複合酸化物の体積基準平均粒径の測定は、具体的には、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(10mL)にリチウムチタン複合酸化物粉末を分散させて、レーザー回折・散乱式粒度分布計(堀場製作所社製LA−700)を用いて行なう。該測定で求められるメジアン径を、本明細書における炭素質材料の体積基準平均粒径と定義する。
リチウムチタン複合酸化物の体積平均粒径が、上記範囲内であると、負極作製時のバインダー使用量を抑えることができ、結果的に電池容量の低下を防ぎ易くなる。また負極極板化時に、均一な塗面になりやすく、電池製作工程を効率的に行うことができる利点も生じる。
(3)平均一次粒子径
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合においては、リチウムチタン複合酸化物の平均一次粒子径は、特に限定されないが、通常0.01μm以上であり、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.2μm以上がさらに好ましく、また、通常2μm以下であり、1.6μm以下が好ましく、1.3μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。体積基準平均一次粒子径が、上記範囲内であると、球状の二次粒子を形成し易く、粉体充填性が向上し、比表面積を確保し易くなるため、出力特性等の電池性能の低下が抑制される傾向にある。
なお、リチウムチタン複合酸化物の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定される。具体的には、粒子が確認できる倍率、例えば10,000〜100,000倍の倍率の写真で、水平方向の直線に対する一次粒子の左右の境界線による切片の最長の値を、任意の50個の一次粒子について求め、平均値をとることにより平均一次粒子径が求められる。
(4)形状
リチウムチタン複合酸化物の粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等のいずれでもよいが、中でも一次粒子が凝集して二次粒子を形成しており、その二次粒子の形状が球状ないし楕円球状であるものが好ましい
通常、電気化学素子はその充放電に伴い、電極中の活物質が膨張収縮をするため、そのストレスによる負極活物質の破壊や導電パス切れ等の劣化がおきやすい。したがって、一次粒子のみの単一粒子の負極活物質よりも、一次粒子が凝集して二次粒子を形成したものの方が、膨張収縮のストレスを緩和できるため、劣化が生じ難い傾向にある。
また、板状等、軸配向性の粒子よりも、球状又は楕円球状の粒子の方が、電極の成形時の配向が少ないため、充放電時の電極の膨張収縮も少なく、また電極を作製する際の導電材との混合においても、均一に混合され易いため好ましい。
(5)タップ密度
リチウムチタン複合酸化物のタップ密度は、0.05g・cm−3以上が好ましく、0.1g・cm−3以上がより好ましく、0.2g・cm−3以上がさらに好ましく、0.4g・cm−3以上が特に好ましく、また、2.8g・cm−3以下がより好ましく、2.4g・cm−3以下がさらに好ましく、2g・cm−3以下が特に好ましい。リチウムチタン複合酸化物のタップ密度が、上記範囲内であると、負極として用いた場合に十分な充填密度を確保でき、また粒子間の接触面積を大きく確保できるため、粒子間の抵抗が増加し難く、リチウム電池等の出力抵抗の増加が抑制され易い傾向にある。また、電極中の粒子間の空隙も適度になり、非水系電解液の流路を確保できるため、出力抵抗の増加が抑制され易い傾向にある。
リチウムチタン複合酸化物のタップ密度の測定は、以下のようにして行う。試料を目開き300μmの篩を通過させて、20cmのタッピングセルに試料を落下させてセルの上端面まで試料を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、そのときの体積と試料の質量から密度を算出する。該測定で算出されるタップ密度を、本明細書におけるリチウムチタン複合酸化物のタップ密度として定義する。
(6)円形度
リチウムチタン複合酸化物の球形の程度として、円形度を測定した場合、以下の範囲に収まることが好ましい。円形度は、「円形度=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)」で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。
リチウムチタン複合酸化物の円形度は、1に近いほど好ましく、通常0.10以上であり、0.80以上が好ましく、0.85以上がより好ましく、0.90以上がさらに好ましい。高電流密度充放電特性は、円形度が大きいほどが向上する。したがって、円形度が上記範囲内であると、負極活物質の充填性が低下することなく、粒子間の抵抗の増大を抑制して、短時間高電流密度充放電特性の低下を抑制することができる。
リチウムチタン複合酸化物の円形度の測定は、フロー式粒子像分析装置(シスメックス社製FPIA)を用いて行なう。具体的には、試料約0.2gを、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約50mL)に分散させ、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、検出範囲を0.6〜400μmに指定し、粒径が3〜40μmの範囲の粒子について測定する。該測定で求められる円形度を、本明細書おけるリチウムチタン複合酸化物の円形度と定義する。
(7)アスペクト比
リチウムチタン複合酸化物のアスペクト比は、特に限定されないが、通常1以上、また
、通常5以下であり、4以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらに好ましい。アスペクト比が、上記範囲内であると、極板化時にスジ引きが発生し難くなり、均一な塗布面が得られ易いため、短時間高電流密度充放電特性の低下が抑制される傾向にある。なお、上記範囲の下限は、リチウムチタン複合酸化物のアスペクト比の理論下限値である。
リチウムチタン複合酸化物のアスペクト比の測定は、リチウムチタン複合酸化物の粒子を走査型電子顕微鏡で拡大観察して行なう。厚さ50μm以下の金属の端面に固定した任意の50個のリチウムチタン複合酸化物粒子を選択し、それぞれについて試料が固定されているステージを回転、傾斜させて、3次元的に観察した時の粒子の最長となる径P’と、それと直交する最短となる径Q’を測定し、P’/Q’の平均値を求める。該測定で求められるアスペクト比(P’/Q’)を、本明細書におけるリチウムチタン複合酸化物のアスペクト比と定義する。
(8)リチウムチタン複合酸化物の製造法
リチウムチタン複合酸化物の製造法としては、特には制限されないが、いくつかの方法が挙げられ、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。
例えば、酸化チタン等のチタン原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質とLiOH、LiCO、LiNO等のLi源を均一に混合し、高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
特に球状又は楕円球状の活物質を作成するには種々の方法が考えられる。一例として、酸化チタン等のチタン原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作成回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、LiCO、LiNO等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
また、別の例として、酸化チタン等のチタン原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これにLiOH、LiCO、LiNO等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
さらに別の方法として、酸化チタン等のチタン原料物質と、LiOH、LiCO、LiNO等のLi源と、必要に応じ他の元素の原料物質とを水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これを高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
また、以上挙げた各種の方法における工程中において、Ti以外の元素、例えば、Al、Mn、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、C、Si、Sn、Agを、チタンを含有する金属酸化物構造中及び/又はチタンを含有する酸化物に接する形で存在させることも可能である。これらの元素を前記の形態で存在させ、負極活物質中に含有させることで、リチウム電池等のの作動電圧、容量を制御することが可能である。
(9)電極作製
電極の製造は、公知のいずれの方法を用いることができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって製造することができる。
リチウム電池等における非水系電解液の注液工程直前の段階での片面あたりの負極活物質層の厚さは、特に限定されないが、通常15μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上であり、上限は150μm以下、好ましくは120μm以下、より好ましくは100μm以下である。上記の範囲内であると、非水系電解液を集電体界面付近まで浸透させ易いため、高電流密度充放電特性が高く維持され易い傾向にある。また、負極活物質に対する集電体の体積比を低く維持でき、電池容量を大きく維持し易い傾向にある。なお、負極活物質をロール成形してシート電極としてもよく、圧縮成形によりペレット電極としてもよい。
(10)集電体
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負極の集電体としては、具体的には、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられ、これらの中でも加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
また、集電体の形状は、特に限定されない。集電体が金属材料の場合は、例えば金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは銅(Cu)及び/又はアルミニウム(Al)を含有する金属箔膜であり、より好ましくは銅箔、アルミニウム箔であり、さらに好ましくは圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔である。
また、銅箔の厚さが25μmよりも薄い場合、純銅よりも強度の高い銅合金(リン青銅、チタン銅、コルソン合金、Cu−Cr−Zr合金等)を用いることができる。またアルミニウム箔は、その比重が軽いことから、集電体として用いた場合に、電池の質量を減少させることが可能であるため、好ましく用いることができる。
また、圧延銅箔は、銅結晶が圧延方向に並んでいるため、負極を密に丸めても、鋭角に丸めても割れ難いため、小型の円筒状電池に好適に用いることができる。
電解銅箔は、例えば、銅イオンが溶解された非水系電解液中に金属製のドラムを浸漬し、これを回転させながら電流を流すことにより、ドラムの表面に銅を析出させ、これを剥離して得ることができる。また、上記の圧延銅箔の表面に、電解法により銅を析出させていてもよい。銅箔の片面又は両面には、粗面化処理や表面処理(例えば、厚さが数nm〜1μm程度までのクロメート処理、Ti等の下地処理等)がなされていてもよい。
集電体の厚さは、特に限定されず、任意である。通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、また、通常1mm以下であり、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。集電体の厚さが、上記範囲内であると、強度が向上し、負極形成材料(スラリー)の塗布性が向上し、また、電極の形状安定性が高められる傾向にある。
(11)集電体と活物質層の厚さの比
集電体と活物質層の厚さの比は、特には限定されないが、「(非水系電解液注液直前の片面の活物質層の厚さ)/(集電体の厚さ)」の値が、通常150以下であり、20以下が好ましく、10以下がより好ましく、また、通常0.1以上であり、0.4以上が好ましく、1以上がより好ましい。
集電体と負極活性物質層の厚さの比が、上記範囲内であると、高電流密度充放電時のジュール熱による発熱が抑制される傾向にあり、また、負極活物質に対する集電体の体積比が過度に増加しないため、電池容量を高く維持し易い傾向にある。
(12)電極密度
負極活物質の電極化した際の電極構造は、特に限定されない。集電体上に存在している負極活物質の密度は、1g・cm−3以上が好ましく、1.2g・cm−3以上がより好ましく、1.3g・cm−3以上がさらに好ましく、1.5g・cm−3以上が特に好ましく、また、3g・cm−3以下が好ましく、2.5g・cm−3以下がより好ましく、2.2g・cm−3以下がさらに好ましく、2g・cm−3以下が特に好ましい。
集電体上に存在している活物質の密度が、上記範囲内にあると、集電体と負極活物質との結着性が維持され易いため、電極と負極活物質の乖離が抑制される傾向にある。また、負極活物質間の導電性を確保し易いため、電池抵抗の増大が抑制される傾向にある。
(13)バインダー・溶媒等
負極活物質層を形成するためのスラリーは、通常、負極活物質に対して、溶媒にバインダー(結着剤)、増粘剤等を混合したものを加えて調製される。負極活物質を結着するバインダーとしては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。
その具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
スラリーを形成するための溶媒としては、負極活物質、バインダー、必要に応じて使用される増粘剤及び導電材を、溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
水系溶媒の例としては水、アルコール等が挙げられ、有機系溶媒の例としてはN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジメチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメリルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。特に水系溶媒を用いる場合、上述の増粘剤に併せて分散剤等を加え、SBR等のラテックスを用いてスラリー化することが好ましい。なお、これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
負極活物質に対するバインダーの割合は、特に限定されないが、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がより好ましく、また、通常20質量%以下であり、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。負極活物質に対するバインダーの割合が、上記範囲内である
と、電池容量に寄与しないバインダー割合が過度に大きくならないので、電池容量を高く維持でき、また負極電極の強度を維持し易いため、電池作製工程上好ましい。
特に、負極形成材料であるスラリーがSBRに代表されるゴム状高分子を主要成分に含有する場合には、負極活物質に対するバインダーの割合は、特に限定されないが、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がより好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
また、負極形成材料であるスラリーがポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分に含有する場合には、負極活物質に対する割合は、特に限定されないが、通常1質量%以上であり、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、通常15質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。増粘剤としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
増粘剤を用いる場合には、負極活物質に対する増粘剤の割合は、特に限定されないが、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がより好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。負極活物質に対する増粘剤の割合が、上記範囲内であると、スラリーの塗布性が良好になる傾向にある。また、負極活性物質層に占める活物質の割合も適度なものとなり、電池容量の低下や負極活性物質間の抵抗増大が抑制される傾向にある。
<3−1−4.正極>
正極は、集電体上に正極活物質層を有するものであり、正極活物質層は正極活物質を含有する。以下、正極活物質について述べる。
<3−1−4−1.正極活物質>
以下に正極に使用される正極活物質について説明する。
(1)組成
正極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限はないが、例えば、リチウムと少なくとも1種の遷移金属を含有する物質が好ましい。具体例としては、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化合物、リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物、リチウム含有遷移金属ホウ酸化合物等が挙げられる。
リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましい。複合酸化物の具体例としては、LiCoO等のリチウム・コバルト複合酸化物、LiMnO、LiMn、LiMnO等のリチウム・マンガン複合酸化物、LiNiO等のリチウム・ニッケル複合酸化物等が挙げられる。また、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si等の他の金属で置換したもの等も挙げられる、その具体例としては、リチウム・コバルト・ニッケル複合酸化物、リチウム・コバルト・マンガン複合酸化物、リチウム・ニッケル・マンガン複合酸化物、リチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物等が挙げられる
置換されたものの具体例としては、例えば、Li1+aNi0.5Mn0.5、Li1+aNi0.8Co0.2、Li1+aNi0.85Co0.10Al0.05、Li1+aNi0.33Co0.33Mn0.33、Li1+aNi0.45Co0.45Mn0.1、Li1+aMn1.8Al0.2、Li1+aMn1.5Ni0.5、xLiMnO・(1−x)Li1+aMO(M=遷移金属)等が挙げられる(a=0<a≦3.0)。
リチウム含有遷移金属リン酸化合物は、LixMPO(M=周期表の第4周期の4族〜11族の遷移金属からなる群より選ばれた一種の元素、xは0<x<1.2)を基本組成として表すことができ、上記遷移金属(M)としては、V,Ti,Cr,Mg,Zn,Ca,Cd,Sr,Ba,Co,Ni,Fe,Mn及びCuからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であることが好ましく、Co,Ni,Fe,Mnからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であることがより好ましい。例えば、LiFePO、LiFe(PO、LiFeP等のリン酸鉄類、LiCoPO等のリン酸コバルト類、LiMnPO等のリン酸マンガン類、LiNiPO等のリン酸ニッケル類、これらのリチウム遷移金属リン酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Nb、Si等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
なお、上述の「LixMPO」とは、その組成式で表される組成のものだけでなく、結晶構造における遷移金属(M)のサイトの一部を他の元素で置換したものも含むことを意味する。さらに、当該化学量論組成のものだけでなく、一部の元素が欠損等した非化学量論組成のものも含むことを意味する。上記他元素置換を行う場合は、特に限定されないが、通常0.1mol%であり、好ましくは0.2mol%以上である。また、通常5mol%以下であり、好ましくは2.5mol%以下である。
上記正極活物質は、単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
(2)表面被覆
上記の正極活物質の表面に、主体となる正極活物質を構成する物質とは異なる組成の物質(以後、適宜「表面付着物質」という。)が付着したものを、本実施形態における正極活物質として用いることもできる。表面付着物質の例としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩等が挙げられる。
これら表面付着物質は、例えば、溶媒に溶解又は懸濁させて正極活物質に含浸添加させた後に乾燥する方法、表面付着物質前駆体を溶媒に溶解又は懸濁させて正極活物質に含浸添加させた後に加熱等により反応させる方法、正極活物質前駆体に添加して同時に焼成する方法等により、正極活物質表面に付着させることができる。なお、炭素を付着させる場合には、炭素質を、例えば、活性炭等の形で後から機械的に付着させる方法も用いることができる。
正極活物質の表面に付着している表面付着物質の質量は、特に限定されないが、正極活物質の質量と表面付着物質の質量の合計に対して、通常0.1ppm以上であり、1ppm以上が好ましく、10ppm以上がより好ましく、また、通常20質量%以下であり、
10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
表面付着物質により、正極活物質表面での非水系電解液の酸化反応を抑制することができ、電池寿命を向上させることができる。しかし、付着量が上記範囲内にあると、その効果を十分に発現させることができ、リチウム電池の抵抗の増加を抑制し易い傾向にある。
(3)形状
正極活物質粒子の形状は、特に限定されず、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等のいずれであってもよい。これらの中でも、一次粒子が凝集して二次粒子を形成しており、その二次粒子の形状が球状又は楕円球状であるものが好ましい。
通常、電気化学素子はその充放電に伴い、電極中の活物質が膨張収縮をするため、そのストレスによる正極活物質の破壊や導電パス切れ等の劣化がおきやすい。したがって、一次粒子のみの単一粒子の正極活物質よりも、一次粒子が凝集して二次粒子を形成したものである方が、膨張収縮のストレスを緩和できるため、劣化が生じ難い傾向にある。
また、板状等、軸配向性の粒子よりも、球状又は楕円球状の粒子の方が、電極の成形時の配向が少ないため、充放電時の電極の膨張収縮も少なく、また電極を作成する際の導電材との混合においても、均一に混合され易いため好ましい。
(4)タップ密度
正極活物質のタップ密度は、特に限定されないが、通常0.4g・cm−3以上であり、0.6g・cm−3以上が好ましく、0.8g・cm−3以上がさらに好ましく、1.0g・cm−3以上が特に好ましく、また、通常4.0g・cm−3以下であり、3.8g・cm−3以下が好ましい。
タップ密度の高い正極活物質を用いることにより、高密度の正極活物質層を形成することができる。したがって、正極活物質のタップ密度が上記範囲内にあると、正極活物質層形成時に必要な分散媒量が適度なものとなるため、導電材や結着剤の必要量も適量となる。このため、正極活物質層への正極活物質の充填率が制約されることなく、電池容量への影響も少なくなる。また、タップ密度は一般に大きいほど好ましく特に上限はないが、上記範囲を下回ると、正極活物質層内における非水系電解液を媒体としたリチウムイオンの拡散が律速となり、負荷特性が低下し易くなる場合がある。
タップ密度の測定は、目開き300μmの篩を通過させて、20cmのタッピングセルに試料を落下させてセル容積を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時の体積と試料の質量から密度を算出する。該測定で算出されるタップ密度を、本発明における正極活物質のタップ密度として定義する。
(5)メジアン径d50
正極活物質の粒子のメジアン径d50(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径)は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
正極活物質のメジアン径d50は、特に限定されないが、通常0.1μm以上であり、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、3μm以上がさらに好ましく、また、通常20μm以下であり、18μm以下が好ましく、16μm以下がより好ましく、15μm以下がさらに好ましい。メジアン径d50が、上記範囲内であると、高嵩密度
品が得られ易い傾向にあり、また、粒子内のリチウムの拡散が短時間となり、電池特性が低下し難くなる傾向にある。また、リチウム電池等の正極作製時、すなわち活物質と導電材やバインダー等を溶媒でスラリー化し、薄膜状に塗布する際には、スジ引き等も生じ難くなる傾向にある。
なお、異なるメジアン径d50をもつ正極活物質を2種類以上、任意の比率で混合することで、正極作製時の充填性をさらに向上させることもできる。
正極活物質のメジアン径d50は、例えば0.1質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒として用い、粒度分布計(例えば堀場製作所社製LA−920)を用いて、正極活物質の分散液に対して5分間の超音波分散処理後に、測定屈折率1.24に設定して測定することができる。
(6)平均一次粒子径
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合、正極活物質の平均一次粒子径は、特に限定されないが、通常0.03μm以上であり、0.05μm以上が好ましく、0.08μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましく、また、通常5μm以下であり、4μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましい。上記範囲内であると、球状の二次粒子を形成し易くなり、粉体充填性が適度なものとなる傾向にあり、また、比表面積を十分確保できるため、出力特性や充放電の可逆性等の電池性能の低下が抑制され易い傾向がある。
なお、正極活物質の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定される。具体的には、10,000倍の倍率の写真で、水平方向の直線に対する一次粒子の左右の境界線による切片の最長の値を、任意の50個の一次粒子について求め、これらの平均値をとることにより求められる。
(7)BET比表面積
正極活物質のBET比表面積は、特に限定されないが、BET法を用いて測定した比表面積の値が、通常0.1m・g−1以上であり、0.2m・g−1以上が好ましく、0.3m・g−1以上がより好ましく、また、通常50m・g−1以下であり、40m・g−1以下が好ましく、30m・g−1以下がより好ましい。BET比表面積の値が、上記範囲内にあると、電池性能の低下が抑制される傾向にあり、また、十分なタップ密度が確保され、正極活物質層形成時の塗布性が良好となる傾向にある。
BET比表面積は、表面積計(例えば、大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて測定する。具体的には、試料に対して窒素流通下150℃で30分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって比表面積を測定する。該測定で求められる比表面積を、本実施形態における正極活物質のBET比表面積と定義する。
(8)正極活物質の製造法
正極活物質の製造法は、特に制限されず、各種公知の製造方法を適用することができる。好ましくは、いくつかの方法が挙げられるが、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。
特に球状ないし楕円球状の活物質を作製するには種々の方法が考えられるが、例えばその1例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状
の前駆体を作製回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、LiCO、LiNO等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
また、別の方法の例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これにLiOH、LiCO、LiNO等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
さらに別の方法の例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、LiOH、LiCO、LiNO等のLi源と、必要に応じ他の元素の原料物質とを水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これを高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
<3−1−4−2.電極構造と作製法>
以下に、本実施形態に使用される正極の構成及びその作製法について説明する。
(1)正極の作製法
正極は、正極活物質粒子と結着剤とを含有する正極活物質層を、集電体上に形成して作製される。正極活物質を用いる正極の製造は、公知のいずれの方法で作製することができる。例えば、正極活物質と結着剤、並びに必要に応じて導電材及び増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを集電体に圧着するか、又はこれらの材料を液体媒体に溶解又は分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を集電体上に形成させることにより、正極を得ることができる。
正極活物質層中の正極活物質の含有量は、特に限定されないが、好ましくは80質量%以上、より好ましくは82質量%以上、さらに好ましくは84質量%以上である。また、その上限は、特に限定されないが、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。上記範囲内にあると、電池容量が十分に確保され易く、また、正極の強度も確保され易い傾向にある。なお、正極活物質粉体は、1種を単独で用いてもよく、異なる組成又は異なる粉体物性の2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
(2)導電材
導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック等のカーボンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素質材料等が挙げられる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
正極活物質層中の導電材の含有量は、特に限定されないが、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、また、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。含有量が上記範囲内にあると、導電性が十分に確保され易く、また、電池容量が十分に確保され易い傾向にある。
(3)結着剤
正極活物質層の製造に用いる結着剤は、非水系電解液や電極製造時用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に限定されない。
塗布法の場合は、結着剤は、電極製造時に用いる液体媒体に対して溶解又は分散される材料であればよい。具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
正極活物質層中の結着剤の割合は、特に限定されないが、通常0.1質量%以上であり、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、また、通常50質量%以下であり、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。結着剤の割合が上記範囲内であると、正活性物質を十分保持でき、正極の機械的強度が保たれ、サイクル特性、電池容量及び導電性の低下が抑制される傾向にある。
(4)液体媒体
スラリーを形成するための液体媒体としては、正極活物質、導電材、結着剤、並びに必要に応じて使用される増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
水系媒体の例としては、例えば、水、アルコールと水との混合媒等が挙げられる。有機系媒体の例としては、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;キノリン、ピリジン等の複素環化合物;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、アクリル酸メチル等のエステル類;ジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド等の非プロトン性極性溶媒等を挙げることができる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
(5)増粘剤
スラリーを形成するための液体媒体として水系媒体を用いる場合、増粘剤と、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のラテックスを用いてスラリー化するのが好ましい。増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。
増粘剤としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
増粘剤を使用する場合には、正極活物質に対する増粘剤の割合は、特に限定されないが、通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.6質量%以
上、また、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下が望ましい。上記範囲内にあると、スラリーの塗布性が良好となり、また、正極活物質層に占める活物質の割合を維持でき、電池容量の低下や正極活物質間の抵抗の増大が抑制される傾向にある。
(6)圧密化
集電体への上記スラリーの塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。正極活物質層の密度は、1g・cm−3以上が好ましく、1.5g・cm−3以上がより好ましく、2g・cm−3以上がさらに好ましく、また、4g・cm−3以下が好ましく、3.5g・cm−3以下がより好ましく、3g・cm−3以下がさらに好ましい。
正極活物質層の密度が上記範囲内にあると、集電体/活物質界面付近への非水系電解液の浸透性が低下し難く、高電流密度での充放電特性の低下が抑制される傾向にある。また、活物質間の導電性が低下し難くなり、電池抵抗が増大し難くなる傾向にある。
(7)集電体
正極集電体の材質は、特に制限されず、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料が挙げられる。これらの中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
集電体の形状も特に制限されない。例えば金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素質材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属薄膜が好ましい。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成されていてもよい。
集電体の厚さは、任意であり、特に限定されないが、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、また、通常1mm以下であり、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。上記範囲内であると、集電体として必要な強度を十分確保することができ、また、取り扱い性も良好になる傾向にある。
集電体と正極活物質層の厚さの比は、特には限定されないが、(電解液注液直前の片面の正極活物質層の厚さ)/(集電体の厚さ)の値は、通常20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下であり、下限は、通常0.5以上、好ましくは0.8以上、より好ましくは1以上の範囲である。この範囲内にあると、高電流密度充放電時のジュール熱による集電体の発熱を抑制でき、また、正極活物質に対する集電体の体積比が低減されて、電池容量の低下が抑制される傾向にある。
<3−1−5.セパレータ>
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この場合、本実施形態の非水系電解液は、このセパレータに含浸させて用いることができる。
セパレータの材料や形状については特に制限はなく、公知のものを任意に採用することができる。中でも、本実施形態の非水系電解液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いることが好ましく、保液性に優れた多孔性シート又は不織布状の形態の物等を用いることがより好ましい。
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン
等のポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルター等を用いることができる。これらの中でも、好ましくはガラスフィルター、ポリオレフィンであり、さらに好ましくはポリオレフィンである。これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
上記セパレータの厚さは任意であり、特に限定されないが、通常1μm以上であり、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。上記範囲内にあると、絶縁性や機械的強度の低下が抑制される傾向にあり、また、レート特性等の電池性能の低下が抑制されるとともに、リチウム電池全体としてのエネルギー密度の低下も抑制される傾向にある。
さらに、セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの空孔率は、任意であり、特に限定されないが、通常20%以上であり、35%以上が好ましく、45%以上がより好ましく、また、通常90%以下であり、85%以下が好ましく、75%以下がより好ましい。上記範囲内にあると、膜抵抗が大きくなり過ぎずレート特性の悪化が抑制される傾向にある。また、セパレータの機械的強度も適度に維持され、絶縁性の低下も抑制される傾向にある。
また、セパレータの平均孔径も、任意であり、特に限定されないが、通常0.5μm以下であり、0.2μm以下が好ましく、また、通常0.05μm以上である。上記範囲内にあると、短絡が生じ難くなり、膜抵抗も大きく過ぎず、レート特性の低下が抑制される傾向にある。
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物類、窒化アルミや窒化ケイ素等の窒化物類、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩類が挙げられる。これらは、通常、粒子形状若しくは繊維形状のものが用いられる。
セパレータの形態としては、例えば不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものがあるが、その形態は特に限定されない。薄膜形状のセパレータとしては、孔径が0.01〜1μm、厚さが5〜50μmのものが好適に用いられる。前記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製の結着剤を用いて前記無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることもできる。例えば、正極の両面に、90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を使用し、フッ素樹脂を結着剤として使用して、多孔層を形成させたものが挙げられる。
<3−1−6.電池設計>
[電極群]
電極群は、前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のもののいずれでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する。)は、特に限定されないが、通常40%以上であり、50%以上が好ましく、また、通常90%以下であり、80%以下が好ましい。電極群占有率が、上記範囲内にあると、電池容量及び空隙スペースを比較的に大きく維持でき、電池の高温化による部材の膨張や電解質の液成分の蒸気圧が高くなることに起因する内部圧力の上昇を抑制でき、電池としての充放電繰り返し性能や高温保存等の諸特性の低下が抑制される傾向にある。
[集電構造]
集電構造は特に限定されるものではないが、本実施形態の非水系電解液による放電特性の向上をより効果的に実現するには、配線部分や接合部分の抵抗を低減する構造にするこ
とが好ましい。この様に内部抵抗を低減させた場合、本実施形態の非水系電解液を使用した効果は特に良好に発揮される。
電極群が前述の積層構造のものでは、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。1枚の電極面積が大きくなる場合には、内部抵抗が大きくなるので、電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減させることが好ましい。電極群が前述の捲回構造のものでは、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
[外装ケース]
外装ケースの材質は、用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば特に限定されるものではない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)等が挙げられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
前記金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接等により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、若しくは、樹脂製ガスケットを介して前記金属類を用いてかしめ構造とするもの等が挙げられる。前記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、ラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を、前記樹脂層の間に介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
[保護素子]
前述の保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等が挙げられる。前記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、高出力の観点から、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない設計にすることがより好ましい。
[外装体]
本実施形態のリチウム電池は、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレータ等を外装体内に収納して構成される。この外装体に制限はなく、公知のものを任意に採用することができる。
具体的に、外装体の材質は任意であるが、通常は、例えばニッケルメッキを施した鉄、ステンレス、アルミニウム又はその合金、ニッケル、チタン等が用いられる。
また、外装体の形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等のいずれであってもよい。
<3−2.多価カチオン電池>
本実施形態の多価カチオン電池では、正極に酸化物材料等を用い、負極にマグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の金属や、これらの金属を含む化合物等を用いる。電解質には、負極の反応活物質種と同じ元素、すなわちマグネシウムイオンやカルシウムイオン、アルミニウムイオンを与えるように、マグネシウム塩やカルシウム塩、アルミニウム塩等を非水溶媒に溶解させた非水系電解液を用い、そこにLiBFNCO(4−n)を溶
解させることにより、多価カチオン電池用非水系電解液を調製することができる。
<3−3.金属空気電池>
本実施形態の金属空気電池では、負極に亜鉛、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム等の金属や、これらの金属を含む化合物等を用いる。正極活物質は酸素であるため、正極は多孔質のガス拡散電極を用いる。多孔質材料は炭素が好ましい。電解質には、負極活物質種と同じ元素、すなわちリチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム等を与えるように、リチウム塩やナトリウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、カルシウム塩等を非水溶媒に溶解させた非水系電解液を用い、そこにLiBFNCO(4−n)を溶解させることにより、金属空気電池用非水系電解液を調製することができる。
<3−4.上記以外のs−ブロック金属を用いた二次電池>
s−ブロック元素とは、第1族元素(水素、アルカリ金属)、第2族元素(ベリリウム、マグネシウム及びアルカリ土類金属)及びヘリウムのことであり、s−ブロック金属二次電池とは、前記s−ブロック金属を負極及び又は電解質に用いた二次電池を意味する。上記以外のs−ブロック金属二次電池は、具体的には、正極に硫黄を用いたリチウム硫黄電池やナトリウム硫黄電池、またナトリウムイオン電池等が挙げられる。
<3−5.リチウムイオンキャパシタ>
正極に電気二重層を形成できる材料を用い、負極にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な材料を用いる。正極材量としては活性炭が好ましい。また負極材料としては、炭素質材料が好ましい。非水系電解液には、LiBFNCO(4−n)を含有した非水系電解液を用いる。
以下、実施例及び参考例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[LiBF(NCO)4−n:nの平均値=3の調製]
・LiOCNの調製
1.53g(120mol)のLiSO・HOを5mlの純水に溶解し、得られた溶液を、1.62g(200mmol)のKOCNを5mlの純水に溶解した溶液と混合し、沈殿したKSOを濾別した。 30分ほど攪拌後、この水溶液に直接500mlのエタノールを加えて攪袢し、析出した塩を濾別した後、一旦この水を含むエタノール溶液から含水エタノールを留去し、45℃にて8時間ほど真空乾燥して、白色粉末を得た。この白色粉末を再度、500mlの乾燥エタノールに溶解し、不溶物を漉過後、エタノールを留去し及び45℃にて8時間ほど真空乾燥することにより、LiOCNを得た。
IC分析の結果、カチオン種は99%以上がLiであり、アニオン種はOCN以外検出されなかった。
・BF/EtO錯体との混合
PFAフラスコ中、10mlのアセトニトリルに、LiOCN49mg(10mmol)を懸濁させ、市販のBF/EtO錯体126mg(10mmol)をゆっくりと滴下した。攪拌を続けることで、沈殿物は大幅に減少した。不溶物を濾別後、溶媒等の軽沸物を留去したところ、白色粉末が得られた。
図1に、19F−NMR測定結果を示す。また、図2に、11B−NMR測定結果を示す。19F−NMR測定では、BF、BF(NCO)アニオンと、BF(NCO)
アニオンと推定されるB−F結合を持つアニオンのシグナルが観察され、さらに、低磁場側にB−F結合を持つ化合物が微量含まれていることを示唆するシグナルがわずかに観察された。11B−NMR測定結果からも、この結果が支持されている。
図3に、ESI−MS測定結果を示す。このESI−MS測定結果から、アニオン種として、BF、BF(NCO)、BF(NCO)、BF(NCO)、B(NCO)が検出されていることがわかる。
これらの結果及び19F−NMR積分比から、得られた白色粉末は、LiBF:LiBF(NCO):LiBF(NCO)≒20:40:20の比率で含み、さらにLiBF(NCO)とLiB(NCO)とを微量含むサンプルであることが示唆された。このサンプルを、リチウム塩Aとした。
[負極の作製]
炭素質材料98質量部に、増粘剤及びバインダーとして、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)1質量部及びスチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度50質量%)1質量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔に塗布して乾燥し、プレス機で圧延して、銅箔上に負極活物質層を設けた積層板を作製した。この積層板から、幅30mm及び長さ40mmのサイズの負極活物質層、並びに、幅5mm及び長さ9mmのサイズの未塗工部を有する形状の切片を切り出して、負極を得た。
[正極の作製]
正極活物質としてLi(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O(LNMC)90質量%と、導電材としてのアセチレンブラック5質量%と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で混合して、スラリー化した。得られたスラリーを、予め導電助剤を塗布した厚さ15μmのアルミ箔の片面に塗布して、乾燥し、プレス機にてロールプレスして、アルミ箔上に正極活物質層を設けた積層板を作製した。この積層板から、幅30mm及び長さ40mmのサイズの正極活物質層、並びに、幅5mm、長さ9mmのサイズの未塗工部を有する形状の切片を切り出して、正極を得た。
[電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比30:30:40)に、乾燥したLiPFを1mol/Lの割合となるように溶解して基本電解液を調製した。この基本電解液に、上記リチウム塩Aを非水系電解液全量に対して0.5質量%含有させることで、実施例1の非水系電解液を調製した。
[リチウム二次電池の製造]
上記の正極、負極、及びポリエチレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正極と負極の端子を突設させながら挿入した後、上記非水系電解液を袋内に注入し、真空封止を行い、4.2Vで満充電状態となる実施例1のシート状リチウム二次電池を作製した。
[慣らし運転]
リチウム二次電池を、電極間の密着性を高めるためにガラス板で挟んだ状態で、25℃において、0.2Cに相当する定電流で4.2Vまで充電した後、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。これを2サイクル行って電池を安定させ、3サイクル目は、0.2
Cの定電流で4.2Vまで充電後、4.2Vの定電圧で電流値が0.05Cになるまで充電を実施し、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。これを2サイクル行って慣らし運転を完了させた。
[初期−30℃出力特性の評価]
初期放電容量の評価が終了した電池を、25℃にて、0.2Cの定電流で初期放電容量の半分の容量となるよう充電した。これを−30℃において各々0.5C、1.0C、1.5C、2.0C、2.5Cで放電させ、その10秒時の電圧を測定した。電流−電圧直線より3.0Vにおける電流値を求め、3.0×(3.0Vにおける電流値)を出力(W)とした。比較例1の初期出力を100としたときの相対値(%)を表1に示す。
[初期−30℃入力特性の評価]
初期放電容量の評価が終了した電池を、25℃にて、0.2Cの定電流で初期放電容量の半分の容量となるよう充電した。これを−30℃において各々0.5C、1.0C、1.5C、2.0C、2.5Cで充電させ、その10秒時の電圧を測定した。電流−電圧直線より4.2Vにおける電流値を求め、4.2×(4.2Vにおける電流値)を出力(W)とした。比較例1の初期入力を100としたときの相対値(%)を表1に示す。
[サイクル特性の評価]
初期放電容量の評価が試験の終了した電池のうち、初期出力及び初期入力がともに80%を超えている電池を対象に、2.0Cの定電流で4.2Vまで充電後、2Cの定電流で3.0Vまで放電した。これを60℃で500サイクル実施した。〔(500サイクル目の放電容量)÷(1サイクル目の放電容量)〕×100からサイクル放電容量維持率(%)を求めた。比較例1を100.0としたときの相対値(%)を表1に示す。
[サイクル後−30℃出力特性の評価]
初期放電容量の評価が終了した電池を、25℃にて、0.2Cの定電流で初期放電容量の半分の容量となるよう充電した。これを−30℃において各々0.5C、1.0C、1.5C、2.0C、2.5Cで放電させ、その10秒時の電圧を測定した。電流−電圧直線より3.0Vにおける電流値を求め、3.0×(3.0Vにおける電流値)を出力(W)とした。比較例1の初期出力を100としたときの相対値(%)を表1に示す。
[サイクル後−30℃入力の評価]
サイクル試験の評価が終了した電池を、25℃にて、0.2Cの定電流で初期放電容量の半分の容量となるよう充電した。これを−30℃において各々0.5C、1.0C、1.5C、2.0C、2.5Cで充電させ、その10秒時の電圧を測定した。電流−電圧直線より4.2Vにおける電流値を求め、4.2×(4.2Vにおける電流値)を入力(W)とした。比較例1の初期入力を100としたときの相対値(%)を表1に示す。
(比較例1)
実施例1の非水系電解液に代えて、上述した基本電解液を用いること以外は、実施例1と同様にして、比較例1のシート状リチウム二次電池を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1の非水系電解液に代えて、上述した基本電解液にLiBFを非水系電解液全量に対して0.5質量%含有させた非水系電解液を用いること以外は、実施例1と同様にして、比較例2のシート状リチウム二次電池を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例1の非水系電解液に代えて、上述した基本電解液にリチウム(オキサラト)ボレート(LiBOB)を0.5質量%含有させた非水系電解液を用いること以外は、実施例1と同様にして、比較例3のシート状リチウム二次電池を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2021050136
表1から明らかなように、本発明のリチウム塩Aを含む実施例1は、リチウム塩Aを含まない比較例1及び比較例2よりも、初期出力、初期入力、サイクル後出力、サイクル後入力、及びサイクル容量維持率の全ての項目において優れることが分かる。特に、リチウム塩Aを含有させた非水系電解液は、リチウム塩Aと同様にアニオン構造中にホウ素原子を含有するリチウム塩と比較しても上記各特性に優れることから、本発明のリチウム塩及びこれを用いた非水系電解液の有用性が示された。
以上詳述したとおり、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明は、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本発明のリチウム塩は、リチウム電池等の蓄電デバイスのサイクル容量維持率や、サイクル後の入出力特性を改善することのできる電解質用途一般において、広く且つ有効に利用可能である。また、本発明の非水系電解液及びこれを用いたリチウム電池等の蓄電デバイスは、公知の各種の用途に用いることが可能である。具体例としては、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、バイク、原動機付自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、ストロボ、カメラ、家庭用バックアップ電源、事業所用バックアップ電源、負荷平準化用電源、自然エネルギー貯蔵電源、リチウムイオンキャパシタ等が挙げられる。

Claims (10)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物。
    LiBF(NCO)4−n ・・・(1)
    (式中、nは0以上3以下の整数を表す。)
  2. 下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種以上含む
    ことを特徴とする非水系電解液。
    LiBF(NCO)4−n ・・・(1)
    (式中、nは0以上3以下の整数を表す。)
  3. フルオロリン酸リチウム塩、上記一般式(1)に記載の化合物以外のホウ素含有リチウム塩、スルホン酸リチウム塩、及びイミドリチウム塩よりなる群から選ばれる少なくとも一種をさらに含むことを特徴とする
    請求項2に記載の非水系電解液。
  4. 炭素−炭素不飽和結合及びフッ素原子の少なくとも一方を含有する環状カーボネートをさらに含有することを特徴とする
    請求項2又は3に記載の非水系電解液。
  5. 請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載の非水系電解液を含む
    蓄電デバイス。
  6. 下記一般式(1)で表される化合物を2種以上含有し、且つ、イソシアナト置換数4−nの平均値mが0.1〜3.9である
    ことを特徴とするリチウム塩混合物。
    LiBF(NCO)4−n ・・・(1)
    (式中、nは0以上4以下の整数を表す。)
  7. 下記一般式(1)で表され、且つ、イソシアナト置換数4−nの平均値mが0.1〜3.9であるリチウム塩混合物を少なくとも含む
    ことを特徴とする非水系電解液。
    LiBF(NCO)4−n ・・・(1)
    (式中、nは0以上4以下の整数を表す。)
  8. フルオロリン酸リチウム塩、上記一般式(1)に記載の化合物以外のホウ素含有リチウム塩、スルホン酸リチウム塩、及びイミドリチウム塩よりなる群から選ばれる少なくとも一種をさらに含むことを特徴とする
    請求項7に記載の非水系電解液。
  9. 炭素−炭素不飽和結合及びフッ素原子の少なくとも一方を含有するカーボネートをさらに含有することを特徴とする
    請求項7又は8に記載の非水系電解液。
  10. 請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載の非水系電解液を含む
    蓄電デバイス。
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