図1A〜図13を参照しながら、実施例による処理装置について説明する。実施例による処理装置は、カメラと共に共通の筐体に収容された撮影装置を構成している。この撮影装置は、表示装置と共に電車に搭載される。本実施例では、移動体を電車の車両とした場合を例に挙げて説明する。電車の車両は、不特定の複数の乗客を乗せて運行される乗り物の一例である。この例において、車両内の人物は、電車の乗客であるものとする。
図1A及び図1Bは、それぞれの実施例による処理装置が収容された撮影装置及び表示装置が搭載された電車の一つの車両の内部を側面から見た図、及び一つの車両の内部の平面的なレイアウトを示す図である。車両の車体20の進行方向に対して左右両側の側面に、複数のドア21が配置されている。ドア21の上の壁面(幕板と呼ばれる。)に、表示装置(車両用デジタルサイネージといってもよい。)22及び箱状の撮影装置23が取り付けられている。撮影装置23は、例えば表示装置22の左右いずれかの側に取り付けられている。
本実施例では、車両の両側の側面の各々に3つのドア21が配置されている。表示装置22は、全てのドア21の上の幕板に取り付けられている。表示装置22は車両内の所定の位置に配置されるが、車両内の乗客がその表示する画像を見やすい位置に配置されるようにするとよい。例えば、車両の床の位置を基準として一般的な人物の身長よりも高い位置に配置されるようにするとよい。表示装置22は、液晶表示装置、有機EL表示装置、又はその他の表示素子を有する表示装置とするとよい。表示装置22は、車両の壁面に設置されるものに限られず、例えば、車両内に配置したデジタルサイネージ、電子ペーパー化された吊り広告、又はその他の表示装置により実現されてもよい。
撮影装置23は、進行方向に関して同じ位置に配置されている左右のドア21の一方の上の幕板に取り付けられている。車両の右側の壁面(図1Bにおいて上側の側面)においては、奇数番目のドア21の上に撮影装置23が取り付けられている。車両の左側の壁面(図1Bにおいて下側の壁面)においては、偶数番目のドア21の上に撮影装置23が取り付けられている。これら複数の撮影装置23によって、車両内のほぼ全域を撮影することができる。
図2Aは、実施例による処理装置が収容された撮影装置23の斜視図であり、図2Bは、カバーを取り外した状態の撮影装置23の斜視図である。図3A、図3B、図3C、図3D、図3E、図3Fは、それぞれ撮影装置23の上面図、左側面図、正面図、右側面図、下面図、及び背面図である。
支持部31とカバー32とが撮影装置23の筐体を構成する。撮影装置23の筐体内には、カメラ35及び記録部本体34が収容されている。記録部本体34は、支持部31の正面側において支持部31に固定されている。記録部本体34は、支持部31の正面側のほぼ下半分を覆う。カメラ35は、支持部31の正面側であって記録部本体34の上方に位置する。カメラ35は、記録部本体34を介して支持部31に支持されている。記録部本体34内に、処理装置の電子回路基板等が収容されている。支持部31は、車両の壁面に固定される。カバー32は、支持部31の正面側からカメラ35及び記録部本体34を覆う。
支持部31は、例えば金属で形成されている。カバー32は、支持部31に支持されてカメラ35を覆う。カバー32は正面側に透光性を有する領域を有している。カバー32がカメラ35の撮影の妨げにならないからである。透光性を有する領域は、例えば、カバー32の開口部に透明の部材(例えば、樹脂又はガラス)が設けられた領域である。カバー32の他の部分は、例えばアルミダイカストで形成されている。カメラ35は透光性を有する領域を通して撮影を行う。カバー32は、トルクスネジ33により支持部31に取り付けられる。カバー32の上方を向く面は、前方に向かって下がるように傾斜している。
カメラ35は、撮影し、撮影した画像を示す画像データを生成する。カメラ35は、例えば、CCD、CMOS又はその他の撮影素子、及び撮影素子の位置に集光するレンズを含む。カメラ35は、動画像を撮影する機能を有するが、静止画像を撮影する機能を有するとよい。カメラ35は、なるべく広い範囲を撮影するために広角レンズを有するカメラを用いるとよい。1つのカメラで車両内の全域を撮影できない場合には、複数のカメラを配置して、車両内に死角が生じないようにするとよい。車両内に複数の表示装置22が配置されている場合には、表示装置22ごとにカメラ35を少なくとも1台ずつ配置するとよい。1台のカメラ35でより広い範囲を撮影する必要がある場合には、半天球カメラや全天球カメラ等の360度カメラを用いるとよい。
なお、車両内に配置されたカメラ35が自分の方を向いていると、乗客は常に監視されているような不安な気持ちになる可能性がある。カメラ35を筐体内に収めると、車両の乗客はカメラ35の向きを認識しにくくなり、乗客にこのような不安を与えにくくなる。
カメラ35は、姿勢調整機構36を介して記録部本体34に支持されている。姿勢調整機構36は、撮影装置23の筐体に対してカメラ35のレンズの向きを変化させて固定する機構である。姿勢調整機構36により、筐体を電車の壁面等に固定した状態で、カメラ35の向きを調整することができる。
一般にカメラの姿勢の振り角の最大値を大きくするためには、カメラを収容する筐体を大きくしなければならない。逆に、カメラの姿勢の振り角の最大値が小さすぎると、電車両内に筐体を固定した状態で、所望の範囲をカメラの画角内に収めることができない場合が生じ得る。このため、車両内での通常の使用方法であれば、±10度の範囲内でカメラ35の方向を変化させることができればよいと考えられる。
姿勢調整機構36は中間支持部材36Aを含む。中間支持部材36AはここではL字状である。撮影装置23を正面から見たときの左右方向に延びる中間支持部材36Aの一方の辺は、記録部本体34の上面に沿う板状の部分である。中間支持部材36Aの一方の辺は、撮影装置23を正面から見たときの左右方向に延び、撮影装置23の筐体及び記録部本体34に対して回転可能に支持されている。中間支持部材36Aの他方の辺は、撮影装置23を正面から見たときの左側に位置し、カメラ35の左側面に沿う板状の部分である。カメラ35は、中間支持部材36Aの他方の辺に対して回転可能に支持されている。撮影装置23の筐体及び記録部本体34に対する中間支持部材36Aの回転軸36Bと、中間支持部材36Aに対するカメラ35の回転軸36Cとは、相互に交差(本実施例では、直交)する。回転軸36Bは、記録部本体34から直上に向けて延びている。回転軸36Cは、中間支持部材36Aの他方の辺を貫通している。回転軸36B、36Cの回転角度は、複数(例えば3つ)の目盛り位置の間で変化し、各目盛り位置において固定可能である。このように、カメラ35は記録部本体34に対して二軸の回転軸を有し、相互に交差する二方向に回転可能である。本実施例では、回転軸36Bを鉛直方向(すなわち、上下方向)とし、回転軸36Cを水平方向(すなわち、左右方向)としている。このようにすれば、カメラ35は水平方向と鉛直方向とに関して、姿勢を調整することができる。
カメラ35が筐体に対して基準の姿勢から何度回転しているかを目視で確認できるように、中間支持部材36A又は筐体に目盛りが付されるとよい。目盛りは、例えば5度刻みで付しておくとよい。筐体に対するカメラ35の姿勢は、例えば、撮影装置23を取り付ける車両の種類や取付場所ごとに共通である場合がある。この共通の姿勢が予め分かっている場合には、工場出荷時にカメラ35の姿勢を最適位置に調整しておくとよい。このようにすれば、現場でのカメラ35の姿勢の調整作業が不要になり、現場での作業効率を高めることが可能になる。
図4は、実施例による処理装置40のブロック図である。処理装置40は、中央処理ユニット(例えばCPU。以下「CPU」として説明する。)41、リーダライタ42、記憶装置43、及び画像データ出力端子44を含む。記憶装置43に、CPU41が実行するプログラムが格納されている。CPU41は、このプログラムを実行することにより、処理装置40の種々の機能を実現する制御手段として機能する。記憶装置43は、演算処理のワークエリアとして用いられる主記憶装置、及びハードディスク装置で例示される補助記憶装置などを含む。
リーダライタ42は、CPU41の制御の下、リーダライタ42に装着されたSDカードへの画像データ等の読み書きを行うSDカードリーダライタである。リーダライタ42に、カメラ35で撮影された画像を記録するSDカードが装着される。SDカードは、外部記憶媒体あるいはリムーバブルメディアの一例である。CPU41は画像データ出力端子44から画像信号を出力する。作業者は、撮影装置23を車両の壁面に取り付けるときに、画像データ出力端子44にモニタを接続してカメラ35の撮影範囲を確認することができる。
画像データ出力端子44は、画像データを出力する端子で、例えばNTSC出力端子である。作業者は、画像データ出力端子44に画像モニタ装置を接続し、現在の画像を確認しながらカメラ35の姿勢を調整することができる。現在の画像の確認を容易にするために、画像データ出力端子44は、撮影装置23を車両の壁面等に固定した状態で、処理装置40の前面になる箇所に設けるとよい。撮影装置23の稼働中も画像を見ることができるようにするために、ケーブルを筐体の上方に引き出し、車両に設けられた画像信号用のケーブルに接続するとよい。
カメラ35で撮影された画像を示す画像データが処理装置40に入力される。処理装置40は、この画像データに基づいて、表示装置22に表示させるコンテンツを選択する。処理装置40は、選択したコンテンツを特定する情報(以下「コンテンツ種別情報」という。)を表示装置22に出力する。表示装置22は、処理装置40から入力されたコンテンツ識別情報により特定される映像コンテンツを表示する。なお、映像コンテンツは表示装置22に記憶されているものとするが、記憶装置43又はそのほかの記憶装置に記憶されていてもよい。後者の場合、処理装置40はコンテンツのデータを表示装置22に出力するとよい。
処理装置40は、例えば、カメラ35を配置している車両と同一の車両内に配置するとよい。カメラ35と処理装置40とを同一の筐体に収容し、1つの機器とするとよい。例えば、車両の所有者(本実施例では、鉄道事業者)によって表示装置22が既に車両に設置されている場合、カメラ35と処理装置40とを一体化した機器を車両に後付するとよい。また、表示装置22と処理装置40とを同一の筐体に収容し、1つの機器としてもよい。例えば、車両の所有者によってカメラ35が既に車両に設置されている場合、表示装置22と処理装置40とを一体化した機器を車両に後付けするとよい。
次に、本実施例の動作を説明する。なお、制御の実行主体として「処理装置40は」と表現した箇所は、「CPU41は」と読み替えられてもよい。
[A.乗客の属性に基づくコンテンツ選択機能]
次に図5を参照して、処理装置40及び表示装置22の機能の一つとして乗客の属性に基づくコンテンツ選択機能について説明する。
図5は、乗客の属性に基づくコンテンツ選択機能を示すフローチャートである。電車が駅を出発したことを処理装置40が検知するごとに、図5に示した処理が実行される。電車が駅を出発することの検知の方法は問わないが、例えば、処理装置40は、カメラ35で撮影された画像に基づいて車両の乗降ドアの開閉を検知することにより、車両が停車場に到着し、停車場を出発したことを検知するとよい。電車が駅を出発すると、まず処理装置40はカメラ35から画像データを取得する(ステップSA1)。
処理装置40は、取得した画像データについて画像解析を行い、乗客の属性を判別する(ステップSA2)。画像解析は、例えばニューラルネットワークの技術を用いた技術など公知の画像解析技術を用いるとよい。乗客の属性は、例えば性別及び年齢を含む。処理装置40は、乗客の年齢として、例えば、0歳以上10歳未満、10歳以上20歳未満、20歳以上30歳未満、30歳以上40歳未満、40歳以上50歳未満、50歳以上60歳未満、60歳以上70歳未満、70歳以上の8つの年齢グループに区分する。処理装置40は、年齢グループごとに男女別の人数を計数する。処理装置40は、合計で16個の年齢別及び性別のグループごとの乗客の人数を計数する。
処理装置40は、年齢別及び性別のグループごとの乗客の人数の分布に応じて、例えば記憶装置43に予め登録されている複数のコマーシャルのコンテンツから表示すべき1又は複数のコンテンツを選択する(ステップSA3)。処理装置40は、例えば、最も人数が多いグループの年代及び性別の人が興味を惹きそうな複数のコンテンツを選択する。処理装置40は、選択したコンテンツの識別情報を表示装置22に通知する(ステップSA4)。
処理装置40は、ここでは、予め登録されているコンテンツから選択された複数のコンテンツの映像を、表示装置22の表示画面に順番に表示させる。このように、処理装置40は、現在の乗客の属性に応じて表示装置22に表示させるコンテンツを動的に変えさせる機能を有する。
処理装置40が表示装置22に表示させるコンテンツは、動画や静止画等の映像コンテンツとするとよい。特に、企業の商品やサービスを紹介するコマーシャル映像、企業自体を紹介する会社紹介映像、求人情報、乗客に注意を喚起させる情報等を表示装置22に表示させるとよい。また、処理装置40は、予め準備されている複数のコンテンツから、画像に写り込んでいる複数の乗客が興味を示すと思われるコンテンツを選択して表示装置22に表示させるとよい。処理装置40は、画像に写り込んでいる複数の乗客の属性のうち多数を占める乗客の属性に応じて、コンテンツを選択するとよい。なお、乗客の属性は、性別及び年齢に限られず、服装その他の属性を採用してもよい。
処理装置40は、駅を出発するごとに乗客の属性を判別するため、駅で乗客が入れ替わった後の新たな乗客の属性に基づいて、コンテンツを選択することができる。このため、処理装置40は、現時点の乗客の属性に応じて訴求効果の高いコンテンツを表示させることができる。
処理装置40は、車両の停車場間(本実施例では、駅間)の走行区間ごとにコンテンツを選択し、その走行区間を走行している期間に、その走行区間に対応して選択されたコンテンツを表示装置22に表示させるとよい。このようにすれば、停車場で車両の乗客が入れ替わっても、現時点の乗客に応じて好ましいコンテンツを表示装置22に表示させることができる。
[B.乗客の属性に基づくコンテンツ選択機能の変形例]
(B−1)処理装置40は、属性ごとの乗客の人数比に応じて、表示装置22に表示させるコンテンツの種類の時間配分を調整するとよい。処理装置40は、例えば、ある属性を有する乗客の割合が多いほど、その属性に応じて選択されるコンテンツの表示時間を長くするとよい。
処理装置40は、例えば、乗客の中で女性が多数を占める場合には、表示装置22に表示させるコンテンツとして女性向けのコマーシャル、例えば化粧品や女性向け雑誌等のコマーシャルを選択するとよい。乗客の中で高齢者が多数を占める場合には、表示装置22に表示させるコンテンツとして高齢者向けのコマーシャル、例えば杖や介護用品等のコマーシャルを選択するとよい。処理装置40は、乗客の中でネクタイを締めている乗客が多数を占める場合には、表示装置22に表示させるコンテンツとして経済関連のコマーシャルを選択するとよい。処理装置40は、乗客の年齢等から、ゲーム好きの乗客が多いと判断される場合には、表示装置22に表示させるコンテンツとしてゲームのコマーシャルを選択するとよい。乗客の中で本を読んでいる乗客が多い場合には、表示装置22に表示させるコンテンツとして本のコマーシャルを選択するとよい。処理装置40は、乗客の中でスマートフォンを操作している乗客が多い場合には、表示装置22に表示させるコンテンツとしてスマートフォンのアプリのコマーシャル、アプリ制作会社の求人広告等を選択するとよい。
処理装置40が乗客の属性に基づくコンテンツ選択機能によって、多くの乗客の興味を惹きそうなコンテンツの映像を表示装置22に表示させることにより、コンテンツの提供事業者にとっては、コンテンツの訴求効果を高めることができる。また、多くの乗客は、興味のあるコンテンツを見ることができる。
(B−2)処理装置40は、乗客の中に特定の属性の乗客が含まれている場合には、選択対象となる複数のコンテンツから特定のコンテンツを除外するとよい。処理装置40は、例えば、乗客の中に女性が多くても、男性の比率がある一定の比率以上である場合には、表示装置22に表示させるコンテンツの候補から女性用の下着のコマーシャルを除外するとよい。処理装置40は、逆に、乗客の中で女性の比率がある一定の比率以上である場合には、表示装置22に表示させるコンテンツの候補から男性用の下着のコマーシャルを除外するとよい。
(B−3)処理装置40は、電車が駅を出発した時点のみならず、コンテンツごとに、そのコンテンツの表示が終了する前に画像を解析して、表示装置22に視線を向けている乗客の属性を判別するとよい。
(B−4)処理装置40は、表示装置22に視線を向けている乗客の属性に基づいて、表示すべきコンテンツを選択するとよい。表示装置22に視線を向けている乗客は、画像に写り込んでいる乗客の視線を解析することにより検知するとよい。処理装置40は、カメラ35で撮影された画像から乗客の顔を抽出し、表示装置22の位置と、乗客の顔の向きとの関係から、表示装置22に視線を向けている乗客を検知するとよい。又は、処理装置40は、カメラ35で撮影された画像に、公知の視線検出技術を適用して、表示装置22に視線を向けている乗客を検知するとよい。表示装置22の位置は、予め処理装置40に登録しておくとよい。このようにすれば、例えば、実際に表示装置22を見ている乗客が興味を持ちそうなコンテンツを表示装置22に表示させることができる。その結果、コンテンツの訴求効果をより高めることができる。
コンテンツを見ている乗客の数に関する情報は、コンテンツの提供者である企業等や、コンテンツの制作者にとって、新たなコンテンツ制作のための有益な情報になる。見ている乗客の人数が多いコンテンツほど、乗客の興味を惹き、訴求効果が高いコンテンツであるといえる。コンテンツを見ている乗客の数に関する情報は、例えば、全乗客数に対するコンテンツを見ている乗客の数の割合とするとよい。コンテンツを見ている乗客の数に関する情報として絶対数ではなく割合とすることにより、乗客数が多いときに得られた情報と少ないときに得られた情報との比較結果が有意なものとなる。
[C.乗客の動作に基づくコンテンツ選択機能]
次に図6を参照して、処理装置40及び表示装置22の機能の一つとして乗客の動作に基づくコンテンツ選択機能について説明する。
図6は、乗客の動作に基づくコンテンツ選択機能を示すフローチャートである。処理装置40は、例えば一定の時間刻み幅、例えば10秒ごとに周期的に図6に示した処理が実行される。処理装置40は、カメラ35で撮影された動画像を解析することによりに各乗客の動作を検知する(ステップSB1)。処理装置40は、各乗客の動作が、所定のパターンの動作に当てはまるか否かを判定する(ステップSB2)。所定のパターンの動作は、ここでは、痴漢、スリ等の所定の犯罪が行われているときのパターンを示す。乗客の動作が所定のパターンの動作に当てはまる場合には(ステップSB2;Y)、処理装置40は、表示装置22に、所定のコンテンツを選択して表示するように指令を出す(ステップSB3)。ここでのコンテンツは犯罪防止用のコンテンツで、この指令には、現在行われていると疑われる犯罪の種類が含まれる。この指令を受けた表示装置22は、コンテンツを表示する。表示装置22は、犯罪の種類に応じた犯罪防止用のコンテンツを表示する。例えば、痴漢に該当する動作を検知した場合には、「痴漢は犯罪です。」、「痴漢に注意」という文字情報や、痴漢を抑止するための画像を表示する。また、スリに該当する動作を検知した場合には、「スリに注意」という文字情報や、スリを抑止するための画像を表示する。表示装置22に表示された犯罪防止用のコンテンツは、犯罪行為を辞めさせる動機づけとなる。また、犯罪行為が写っている動画像は、犯罪捜査において被疑者特定の有効な手掛かりとなる。
[D.コンテンツ選択機能の変形例]
(D−1)カメラ35は、パン・チルト機能、及びズーム機能を有するとよい。処理装置40は、所定のパターンの動作を検知した場合、その動作を検知した箇所にパン・チルトし、ズームして、その箇所の画像を表示装置22に表示させるとよい。例えば、カメラ35は、痴漢行為、スリ行為、置引き行為等の犯罪行為を検知したら、犯罪行為が行われていると疑われる箇所にパン・チルトし、ズームして、その箇所の画像を表示装置22に表示させるとよい。また、機械的にパン・チルトを行う代わりに、犯罪行為が行われていると疑われる箇所の画像を拡大して表示装置22に表示させるとよい。
(D−2)処理装置40は,カメラ35で撮影された画像に加えて、車両内に配置したマイク(音声検知手段)で拾った音声情報に基づいて、コンテンツの選択を行うとよい。例えば、マイクで拾った会話中のキーワードに基づいて、そのキーワードに関連付けられたコンテンツを表示装置22に表示させるようにするとよい。
(D−3)処理装置40は、現時点で表示装置22に視線を向けている乗客の属性に基づいて、次に表示すべきコンテンツを選択する機能を有するとよい。処理装置40は、例えば、現時点で表示装置22を見ている乗客が興味を持ちそうなコンテンツを、次に表示装置22に表示させるとよい。乗客の属性と、その属性の乗客が興味を有すると思われるコンテンツの種別を、予め処理装置40に記憶させておくとよい。この機能によってコンテンツが表示装置22に表示されることより、現時点でコンテンツを見ている乗客が継続して次のコンテンツを見る可能性が高くなり、乗客に対するコンテンツの訴求効果を高めることができる。処理装置40は、コンテンツを見ている乗客が複数人の場合には、多数決によって次に表示すべきコンテンツを選択するとよい。
[E.コンテンツを評価する基礎となる情報を取得する機能及びコンテンツを評価する機能]
次に図7を参照して、表示装置22に表示されているコンテンツを評価するための基礎となる情報(以下「評価情報」という。)を取得する機能について説明する。コンテンツは、ここではコマーシャルであるが、それ以外のコンテンツでもよい。
図7は、表示装置22に表示されているコンテンツの評価情報の取得、及びコンテンツを評価する機能を示すフローチャートである。処理装置40は、例えば一定の時間刻み幅、例えば10秒ごとに周期的に、図7に示した処理を実行する。処理装置40は、カメラ35で撮影された画像を解析することにより乗客の視線を検知し、表示装置22に視線を向けている乗客の人数を計数する(ステップSC1)。ステップSC1は、コンテンツの評価情報を取得する処理の一例である。処理装置40は、画像解析を行う元の画像が撮影されたときに表示装置22に表示されていたコンテンツの種別と、表示装置22に視線を向けている乗客の人数に関する情報とを関連付けて、記憶装置43又はリーダライタ42に装着されているSDカードに記録する(ステップSC2)。乗客の人数に関する情報として、例えば全乗客数に対する表示装置22を見ている乗客の割合とするとよい。
処理装置40は、コンテンツの種別と、表示装置22を見ていた乗客の人数とに基づいて、コンテンツの評価を行う(ステップSC3)。コンテンツの評価は、例えば、評価情報に基づいて、車両内の乗客のコンテンツの興味又は関心の度合いの指標となるパラメータ(以下「評価値」という。)を算出する処理とするとよい。評価値は、例えば、コンテンツの視聴率とすることができる。なお、映像コンテンツが音声情報を伴わない場合でも、ここでは「視聴率」という用語を用いることとする。例えば、評価対象のコンテンツが表示されている期間の視聴率の平均値、又は最大値等を評価値として採用するとよい。
コンテンツの評価値は、車両内の乗客のうちコンテンツを所定時間以上見た乗客の人数の割合とするとよい。コンテンツの評価値は、評価の基礎となる画像に写り込んでいる乗客のうち、コンテンツを所定時間以上見た乗客の人数の割合とするとよい。又は、コンテンツの評価値は、コンテンツを見ている乗客の人数と見ている時間との積(以下「視聴量」という。」)とするとよい。例えば、2人が15秒間、3人が30秒間コンテンツを見ている場合、評価値は、2×15+3×30=120人秒である。又は、コンテンツの評価値は、評価の基礎となる画像に写り込んでいる乗客の全員が、評価対象のコンテンツが表示されている全期間、当該コンテンツを見ていると仮定した場合の視聴量に対する実際の視聴量の割合とするとよい。
以上のように、処理装置40は、電車版視聴率チェッカーとして利用することができる。表示装置22を見ていた乗客の人数が多い場合には、その時に表示されていたコンテンツに高い評価を与えることができる。この評価結果は、新たなコンテンツ制作のための有益な情報となる。
[F.コンテンツを評価する基礎となる情報を取得する機能及びコンテンツを評価する機能の変形例]
(F−1)処理装置40は、表示装置22に視線を向けている乗客の人数に代えて又は組み合わせて、表示装置22のどの箇所を見ているかという情報を評価情報として取得し、記録するとよい。処理装置40は、例えば、カメラ35で撮影された画像、表示装置22に表示されているコンテンツを識別する情報、及び評価情報を関連付けて記録する機能を有するとよい。このようにすれば、記録された情報に基づいて、コンテンツをより詳細に評価し、訴求効果の高いコンテンツの制作に活かすことができる。コンテンツを評価する基礎となる情報に、例えばコンテンツを見ている乗客の数、属性、コンテンツの映像内のどの部分を見ているかという情報、及びコンテンツを見ているときの車両の位置情報等を含めるとよい。
(F−2)処理装置40は、コンテンツを識別する情報と、評価情報とをSDカードに記憶させるとよい。SDカードに記録された内容を読み取るパソコン等の外部機器により、コンテンツをより詳細に評価することができる。
なお、処理装置40は、乗客が見ている箇所は、乗客の視線を検知し、表示装置22の表示画面の位置と、視線との位置関係から決定することができる。この評価情報から、表示装置22に表示されている映像コンテンツのどの箇所を見ている乗客が多いかという情報が得られる。この情報により、コンテンツをより詳細に評価することができる。この評価結果は、訴求力の高いコンテンツを製作するための有益な情報となる。このように、評価基礎は、例えば、コンテンツを見ている乗客の数、コンテンツを見ている時間、コンテンツを見ている乗客の属性等を含めるとよい。
(F−3)処理装置40は、表示装置22に視線を向けている乗客の人数に関する情報、及び表示装置22のどの箇所を見ているかという情報に加えて、表示装置22を見ている乗客を特定する情報を評価情報として取得し、記録するとよい。この情報から、どのような乗客がどのようなコンテンツをよく見ているかという情報が得られる。この情報は、より訴求効果の高いコンテンツの制作に役立てることができる。
(F−4)処理装置40は、表示装置22に視線を向けている乗客の数の時間的な変化を、表示装置22に表示されているコンテンツの変化、及び車両の走行している位置の変化とともにも表示画面に表示する機能を有するとよい。コンテンツの映像内の位置ごとに、その位置を見ている乗客の数の時間的変化を表示する機能を処理装置40が有すると、さらによい。この情報により、乗客がコンテンツを見るのを止めた原因を分析することができる。コンテンツを見るのを止めた原因が、例えば、車両が停車場に近づいて乗客が降車の準備を始めたためなのか、コンテンツが切り替わったためなのかを知ることができる。外的要因がないのに、コンテンツを見る乗客の数が減った場合には、そのコンテンツに興味を有する乗客の数が減ったことを意味する。
(F−5)処理装置40は、表示装置22に視線を向けている乗客の車両内における位置を記録する機能を有するとよい。記録された情報に基づいて、車両内のどの位置に乗車している乗客がよくコンテンツを見ているか知ることができる。この情報は、コンテンツを表示する表示装置22の好ましい設置場所を検討するための有益な情報になる。
(F−6)処理装置40は、どの時間帯に、電車がどの位置(例えば駅間)を走行中に、どの車両で、どのような属性の乗客がどのコンテンツ(例えばコマーシャル)をよく見ていたかを分析するために必要な情報を取得する機能を有するとよい。処理装置40は、この分析結果に基づいて、表示すべきコンテンツの最適化を図ることが可能になる。
(F−7)処理装置40は、表示装置22に表示されているコンテンツに加えて、電車の中吊り広告を見ている乗客についても、同様の分析を行うことができる情報を取得する機能を有するとよい。
例えば、表示装置22に広告を表示させる処理装置(例えばコンピュータ)と、撮影装置23の処理装置とを通信可能に接続しておく。表示装置22の処理装置が、各広告の表示開始時に広告識別情報(以下「広告ID」という。)を示す信号を、撮影装置23の処理装置に出力し、撮影装置23の処理装置は、カメラ35で撮影された画像(この変形例において以下「カメラ画像」という。)のデータに関連付けて、当該広告IDの広告の表示開始時刻と終了時刻とがわかるように記録する。例えば、ある広告IDを受信してから次の別の広告IDを受信するまで、当該ある広告IDの映像コンテンツを表示装置22に表示中であるとして、広告IDをカメラ画像に関連付けて記録するとよい。また例えば、表示装置22に表示中の映像コンテンツの画像信号を撮影装置23の処理装置に入力し、この処理装置が、カメラ画像のデータと共に、映像コンテンツの映像データを記録するとよい。
表示装置22に表示中の映像コンテンツの映像データをカメラ画像と共に記録する方法として、カメラ画像と時間を合わせて再生可能なように、カメラ画像と映像コンテンツとに時刻情報を付して記録するとよい。また、表示装置22に表示中の映像コンテンツの映像データをカメラ画像と共に記録する方法として、カメラの画像に、表示装置22に表示中の映像コンテンツを重畳して(例えばワイプのように入れて)記録するようにするとよい。
処理装置40は、広告を見ていた乗客がいる期間の画像のみを後から抽出して記録したり、閲覧したりできるように記録するとよい。例えば、フラグなど、広告を見ている乗客がいる期間の画像を特定する情報を記録しておくとよい。広告ではなく、「次は〇〇駅」等の案内を表示しているときは広告IDに代えて、告知情報(案内情報ともいう。)を表示中であった旨の情報、望ましくは告知情報ごとに固有の告知情報IDを記録するとよい。どの駅間の、どの列車の何号車のどの位置かも特定できるように記録しておくとよい。
(F−8)処理装置40は、評価情報に加えて、その時に表示装置22に表示されている映像コンテンツを画像データとして記録するとよい。この情報により、多くの乗客が映像コンテンツ内の何を見ているのかを容易に把握することができる。
(F−9)処理装置40は、乗客が視線を向けている表示装置22内の位置を検知し、表示装置22に表示されているコンテンツの映像と、その位置とを関連付けて記録する機能を有するとよい。
このようにすれば、記録された情報に基づいて、乗客が映像コンテンツ内のどの位置に視線を向けているかを知ることができる。例えば、コンテンツの映像内の商品を見ているのか、出演しているタレントを見ているのか、という情報を取得することができる。この情報に基づいて、コンテンツのより詳細な評価を行うことができる。例えば、この情報は、商品の訴求力の高いコンテンツを制作するための有益な情報として利用することができる。記録された情報から、具体的な映像コンテンツ内の注目位置や、当該映像コンテンツ内で、どの位置に乗車しているどのような乗客がどの時点で映像コンテンツ内のどの位置を見ていたかを容易に分析できるように、必要な情報を記録しておくとよい。
記録された情報を読み出した装置、例えばビューワをインストールしたパソコンは、コンテンツの映像を、その映像が車両内の表示装置22に表示されているときの種々の情報、例えばコンテンツを見ている乗客の数、時刻、車両が走行している場所、コンテンツを見ている乗客の属性等の情報と共に同時に表示画面に表示させる機能を有するとよい。これにより、どのようなコンテンツをどのような乗客がよく見ているか直感的に把握することができる。
(F−10)記録された情報を読み出した装置は、広告等の映像コンテンツに視線を向けている乗客を、他の乗客の表示態様とは異なる表示態様で表示するとよい。例えば、映像コンテンツを見ている乗客の顔の位置を検出して、その乗客の顔を赤色の丸記号で囲んで表示するとよい。複数人が映像コンテンツを見ている場合には、複数人の顔を異なる色の丸記号で囲んで表示するとよい。
記録された情報を読み出した装置は、視線が向けられている映像コンテンツについても、視線が向けられている位置を明示して(例えば、赤色の丸記号を付して)表示するとよい。明示の方法として赤色の記号を用いる場合について説明すると、複数人が見ている場合には、コンテンツの映像内の視線が向けられている位置に表示する丸記号と、その位置を見ている乗客の顔を囲む丸記号とを同じ色にするとよい。このように表示すれば、丸記号を付された乗客が、コンテンツの映像内のどこを見ていたのか、例えばタレントを見ていたのか商品を見ていたのかといったコンテンツの映像への注意(アテンションともいう。)がどこに向けられていたのか容易に分析することができる。異なる色の複数の丸記号が商品に近い位置に表示されている状況であれば、商品への注目度が大きいと判断できる。異なる色の複数の丸記号がタレントに近い位置に表示されている状況であれば、タレントへの注目度が大きいと判断できる。また、コンテンツの映像内の注目位置の時間的な推移を容易に分析することができる。なお、コンテンツの映像に視線を向けている乗客をターゲットとしたコンテンツを次に表示するようにするとよい。
(F−11)処理装置40は、乗客の乗降状況と、映像コンテンツとの関連を分析するために必要な情報を記録する機能を有するとよい。この機能により記録された情報に基づいて、ドアの開閉などの乗客の乗降の状態と映像コンテンツとの関係を解析することができる。
(F−12)処理装置40は、乗降中は、カメラ画像と共に広告IDを記録する処理、及び乗客の視線を検知する処理の少なくとも一方の処理を行わないようにしてもよい。又は、処理装置40は、これらの処理の少なくとも1つの処理を実行するとともに、乗降中の期間であることを特定するための情報を記録するとよい。例えば、ドアの開閉の検知、駅到着及び駅出発アナウンスの検知、ドアが開いていることを知らせる案内情報が表示装置22に表示されていることの検知に基づいて、現時点が乗降中の期間であることを処理装置40が判定するとよい。処理装置40は、乗降中であると判定した期間を特定可能に、広告IDとともに記録するとよい。
(F−13)処理装置40は、コンテンツの映像と、車両内の画像とを並べて表示画面に表示させ、車両の乗客と、その乗客が見ているコンテンツの映像内の位置との対応付けができるように表示させる機能を有するとよい。例えば、車両の乗客の顔の位置と、その乗客が見ているコンテンツの映像内の場所とに、同じ色のマークを表示するとよい。これにより、どの乗客がコンテンツの映像内のどの部分を見ているかを直感的に把握することができる。
処理装置40は、コンテンツの映像を表示している際に、この映像内の、複数の乗客がそれぞれ見ている箇所にマークを表示させるとよい。多くの乗客が見ている箇所において、マークの分布密度が高くなるため、コンテンツの映像内のどの部分がより乗客の興味を惹き付けたかを知ることができる。
(F−14)処理装置40は、表示装置22が複数の表示画面を有する場合、乗客がどの表示画面を見ているのかを検知し、検知結果を記録する機能を有するとよい。この機能により記録された情報に基づいて、乗客が複数の表示画面のうちどの表示画面を見ているのかを容易に分析することができる。1つのカメラ35で撮影される範囲の乗客が複数の表示画面を見ることができる場合、複数の表示画面の各々について、1つの表示画面が配置されている場合と同様の処理を行うとよい。例えば、1つのドアの上に2つの表示画面が配置されており、その横に1つのカメラ35が配置されている場合、そのカメラ35でどちらの表示画面をどの乗客が見ていたかを表す情報を記録するとよい。
処理装置40が1つのコンテンツが複数の表示画面に跨って表示されている場合、乗客がどの表示画面を見ているかを検知する機能を備えるとよい。この機能により得られた情報は、複数の画面に1つのコンテンツを表示させるときに訴求効果の高い表示手法を見出すための有益な情報になる。
(F−15)処理装置40は、評価情報として、さらに、コンテンツを表示している現時点の時刻、車両の位置、乗客が乗車してきた時刻や停車場の情報、及びコンテンツを見ている乗客の属性の少なくともいずれかを取得するとよい。コンテンツの評価の基礎にこれらの情報を含めることにより、コンテンツのより詳細な評価を行うことが可能になる。
処理装置40は、例えば、いつ、乗客が表示装置22を見始めたかという情報を得ることができる。例えば、乗客がコンテンツを見始めた時点が、車両に乗車してから何分経過した時点か、乗車してから何駅通過した時点かという情報を取得することができる。例えば、乗車直後はスマートフォンを操作していたが、2駅通過後にコンテンツを見始めたというような情報を得ることができる。どのような属性の乗客が、どのような種別のコンテンツを見ていたかという情報を得ることができる。コンテンツを見ている乗客の属性には、例えば性別、年齢、表情(例えば、笑っているか怒っているか)等を含めるとよい。これらの情報は、例えば一定の時間刻み幅(例えば1秒間)ごとに取得するとよい。これらの情報は、必ずしもリアルタイムに取得する必要はないため、カメラ35で撮影された画像を画像データとして記録媒体に記録しておき、記録媒体に記録された画像データを読み出してこれらの情報を取得するとよい。
また、処理装置40がカメラ35で撮影された画像に基づいて車両内の人数と乗客の視線とを検知する機能を有することで、表示装置22に視線を向けている乗客の視線の方向、及び表示装置22の表示画面の設置場所の情報から、乗客が表示装置22の画面内のどの部分を見ているかという情報を取得することができる。カメラ35で撮影された画像が取得された時刻に表示装置22に表示されていた映像コンテンツと、表示画面内において乗客が視線を向けていた位置とに基づいて、映像コンテンツ内のどの位置に視線を向けているかを知ることができる。例えば、映像コンテンツ内の商品を見ているのか、出演しているタレントを見ているのか、という情報を取得することができる。この情報に基づいて、コンテンツのより詳細な評価を行うことができる。例えば、この情報は、商品の訴求力の高いコンテンツを制作するための有益な情報として利用することができる。
[G.画像処理を施して記録する機能]
次に図8を参照して、画像処理を施して記録する機能について説明する。
図8は、画像処理を施して記録する機能を示すフローチャートである。処理装置40は、電源がオンにされてからオフにされるまでの期間、図8に示した処理を繰り返し実行する。処理装置40は、カメラ35で撮影された動画像を取得する(ステップSD1)。その後、処理装置40は、動画像内の指定された領域に画像処理を施した動画像を、リーダライタ42に装着されているSDカードに記録する。
画像処理を施す所定の領域は、予め記憶装置43に記憶されていてもよい。処理装置40は、記憶装置43から画像処理を施す領域を特定する情報を読み出して、動画像に画像処理を施す(ステップSD2)。画像処理を施す領域として乗客の顔が写り込んでいる領域が指定されている場合には、処理装置40は、動画像から乗客の顔を検知し、その顔の部分にぼかしを入れる。画像処理を施す領域として動画像の画面内の特定の領域が指定されている場合には、指定された特定の領域をクリッピングする。
画像中の乗客の顔にぼかしを入れて記録することにより、プライバシーの侵害を問われる危険性が低くなる。また、指定された特定の領域をクリッピングすることにより、画像データのデータ量を削減することができる。例えば、クリッピングする領域として、乗客が写り込まない天井等の領域を指定しておくとよい。これにより、データ量を削減しても、乗客に関する必要な情報量は確保することができる。乗客の顔に施す所定の画像処理は、乗客の顔の視認又は認識を妨げる画像処理とするとよく、ぼかしやクリッピング処理のほか、低解像度化等の処理としてもよい
車両内のカメラ35で撮影された画像は、個人のプライバシーを侵害する恐れがあるため、一般の人がアクセスできないように厳重に保管することが望ましい。指定された領域の視認又は認識を妨げる画像処理を施して、記録媒体に記録する機能を用いて、個人の特定ができないような画像処理を施すと、個人のプライバシーの侵害となる可能性の高い情報が記録媒体に記録されなくなる。
「指定された領域」として、例えば乗客の顔が写っている領域とするとよい。指定された領域の視認又は認識を妨げる画像処理として、例えばクリッピング、ぼかし、低解像度化等の処理を採用するとよい。又は、画像に写っている乗客の特定はできないが、性別及び年齢はわかるように、顔を抽象化して記録するとよい。
「指定された領域」として、乗客が写り込まない領域とするとよい。例えば、車両の天井部分や壁部分を指定するとよい。この領域にクリッピング、ぼかし、低解像度化等の処理を施すと、乗客に関する情報量を低下させることなく、画像のデータ量を削減することができる。
カメラは、通常の乗客の目線よりも高い場所に設置される場合が多い。この場合、画像に写り込んだ乗客を著しく羞恥させ、又は画像に写り込んだ乗客に不安を覚えさせるような箇所、例えば通常の衣服で隠されている下着又は身体が写り込んでいる場合、その箇所を指定して、その領域に上記画像処理を施すとよい。
[H.画像処理を施して画像データを出力する機能]
次に図9A及び図9Bを参照して、画像処理を施して画像データを出力する機能について説明する。
図9Aは、カメラ35で撮影された動画像を記録する機能を示すフローチャートである。処理装置40は、電源がオンにされてからオフにされるまでの期間、図9Aに示した処理を常時実行する。処理装置40はカメラ35で撮影された動画像を取得する(ステップSE1)。その後、取得した動画像を、リーダライタ42に装着されているSDカードに記録する。
図9Bは、画像データを出力する機能を示すフローチャートである。ステップSE2(図9A)で動画像が記録されたSDカードを装着したパソコン等の情報端末が、図9Bに示した処理を実行する。情報端末の処理装置は、画像データの出力コマンドを受け付ける機能、出力する動画像に画像処理を施すか否かの指令を受け付ける機能、及び画像処理を施すべき対象を特定する指令を受け付ける機能を有する。操作者が情報端末に画像データの出力コマンドを入力すると、情報端末の処理装置は図9Bの処理を実行する。情報端末の処理装置のハードウェア構成については図示を省略するが、一般的なパーソナルコンピュータの構成と同様でよい。すなわち、情報端末の処理装置は、CPUで例示される演算処理装置、メモリ、操作装置、外部記憶媒体用インタフェース、通信モジュール、補助記憶装置を有する。メモリは、演算処理のワークエリアとして用いられる。操作装置は、ユーザの操作を受け付ける。操作装置として、例えばキーボード、ポインティングデバイス等が用いられる。外部記憶媒体用インタフェースは、SDカードなどの外部記憶媒体を装着するためのものである。通信モジュールは、外部装置と通信(例えば、有線又は無線)するためのものである。補助記憶装置には、例えばハードディスク装置が用いられ、プログラム、ビューワ、その他のデータが記憶される。演算処理装置は、メモリにプログラム及びその他のデータを読み出し、そのプログラムに従って各種演算処理を行う。
情報端末の処理装置は、入力された指令に基づいて、出力する画像データに画像処理を施すか否かを判定する(ステップSE5)。画像処理を施す場合には(ステップSE5;Y)、SDカードから画像データを読み出し、画像処理を施す(ステップSE6)。乗客の顔に施す所定の画像処理は、乗客の顔の視認又は認識を妨げる画像処理とするとよい。その後、画像処理が施された画像データを出力する(ステップSE7)。画像処理を施さない場合には(ステップSE5;N)、SDカードから読みだした画像データをそのまま出力する(ステップSE7)。画像データの出力は、他のSDカードへの書き込み、有線LAN、無線LAN等の通信ネットワークを介した他の機器への送信等により行われる。
画像処理を施す対象を、乗客の顔が写り込んでいる領域として画像処理を施した画像データは、プライバシーを侵害する恐れが少ない。画像処理を施していない画像データは、車両内で発生した犯罪や、乗客の間で発生したトラブル等の事件解決のための有益な情報になる。例えば、顔認証技術を用いて指名手配犯や被疑者を探索することができる。
[I.画像処理を施して画像データを出力する機能の変形例]
(I−1)処理装置40は、カメラ35で撮影された画像を記録装置に記録する機能と、記録装置に記録された画像を読み出し、乗客の顔に所定の画像処理を施した画像のデータ、又は前記所定の画像処理を施していない画像のデータを選択的に出力する機能とを備えるとよい。
カメラ35で撮影された画像を記録装置に記録することにより、記録された画像は、車両内で発生した犯罪等の事件の解決のために警察等の公的な捜査機関が有効に利用することが可能になる。乗客の顔に所定の画像処理を施した画像のデータを出力することにより、個人のプライバシー侵害の恐れの少ない画像を提供することができる。画像処理を施していない画像のデータは、車両内で発生した事件解決のための有益な情報となる。例えば、車両内で発生した痴漢、スリ、置引き等の犯罪の解決のための有益な情報となる。
乗客の顔に施す所定の画像処理として、乗客の顔の視認又は認識を妨げる画像処理とするとよく、例えば顔の部分の画像から個人を特定することができないような処理とするとよい。例えば、クリッピング処理、ぼかしの挿入、低解像度化等の処理を行うとよい。
画像のデータを出力する機能として、画像出力端子からの画像データの出力のほか、無線LANを経由した画像データの出力、外部記憶媒体等の外部記憶媒体への画像データの書き込み等の機能を備えるとよい。画像出力端子から画像データを出力する場合には、上記所定の画像処理を施すとよい。無線LAN経由で画像データを出力する場合には、送信先の属性によって所定の画像処理を施すか否かを指定できるようにするとよい。例えば、情報の守秘性が守られると考えられる警察等の捜査機関が送信先である場合には、所定の画像処理を施さないようにするとよい。処理装置は、画像処理を施さないで送信する送信先の一覧を登録する機能を有するとよい。
(I−2)(I−1)に関し、画像内の画像処理を施す対象物や範囲を指定する機能を、処理装置40が有するとよい。例えば、画像処理を行う対象物として、乗客の顔等を指定できるようにするとよい。画像処理を施す範囲として、例えば、画像の画面内の特定の領域や全域を指定できるようにするとよい。
(I−3)処理装置40が外部記憶媒体に画像処理を施さないで画像データを記録する場合、記録された画像データの読み出しにパスワードが必要となる形式で記録するとよい。又は外部記憶媒体に画像処理を施さないで画像データを記録する場合には、外部記憶媒体を特殊な形式でフォーマットし、一般的な読み出しアプリでは外部記憶媒体の画像データを読み出すことができないようにするとよい。これにより、画像データが不特定の人に読み出されてしまう事態の発生が抑制される。
処理装置40は、一般的なフォーマット形式でフォーマットされた外部記憶媒体に、パスワード無しで画像データを記録する場合には、自動的に所定の画像処理を施すようにするとよい。これにより、個人のプライバシーを保護することができる。
カメラ35で撮影された画像を記録する記録装置として、例えば外部記憶媒体及びそのリーダライタとするとよい。外部記憶媒体に記録された画像をパソコン等の端末で再生するビューワを提供するとよい。
[J.乗客の移動経路検知機能]
次に、乗客の移動経路検知機能について説明する。
情報端末の処理装置は、SDカードに記録された画像に写り込んでいる乗客から特定の乗客を指定させる機能を有する。特定の乗客が指定されたことを情報端末の処理装置が検知すると、情報端末の処理装置は、SDカードから読み出した画像データの画像解析を行い、指定された特定の乗客を検索する。特定の乗客を検知すると、動画像の時間を進めてその乗客の車両内及び車両間の移動経路を検知する。検知された移動経路を、情報端末の表示画面に画像として表示する。処理装置は、カメラ35で撮影された画像に基づいて、前記車両に乗車した乗客ごとに、乗車してから降車するまでの前記車両内での移動経路を検知し、乗車地点の情報、前記車両内での移動経路の検知結果、及び降車地点の情報を記録する機能を、さらに備えている。
この機能により、電車の特定の乗客がどの駅で乗車し、車両内及び車両間をどのように移動し、どの位置に立ち、又はどの席に座り、どの駅で降車したかという情報を得ることができる。複数の車両を含む電車の各車両にカメラ35を配置し、車両ごとに上記情報を記録するとよい。さらに、カメラ35で撮影された画像を表示し、画像から特定の乗客を指定させる機能を処理装置が有するとよい。特定の乗客が指定されたら、指定された乗客の乗車時点から降車時点までの車両内及び車両間の移動の経路を検知し、表示する機能を処理装置が有するとよい。この情報は、車両数、電車の運行計画等の立案、駅のホームの設計等に有効に利用することができる。さらに、車両ごとの混雑率に大きなばらつきがあるような場合、乗客の車両内の移動経路から、乗客を比較的空いている車両に誘導する方策立案の有益な情報として利用可能である。
[K.車両内の表示装置22にカメラ35で撮影した画像を表示させる機能]
次に、車両内の表示装置22にカメラ35で撮影した画像を表示させる機能について説明する。
処理装置40は、表示装置22にコンテンツを表示させる処理に代えて又は組み合わせて、表示装置22に、カメラ35で撮影されている画像又はこれを加工した画像を表示させる機能を有する。また、処理装置40は、カメラ35で撮影されている画像をそのまま表示させるか、加工した画像を表示させるか、加工する場合にはどのような加工を施すかという指令(例えばコマンド)を操作者に求め、入力させる機能を有する。
処理装置40は、カメラ35で撮影されている画像をそのまま表示させる指令を受けている場合は、カメラ35で撮影されている画像をほぼリアルタイムに表示装置22に表示させる。処理装置40は、カメラ35で撮影されている画像を加工して表示させる指令を受けている場合は、カメラ35で撮影されている画像に指令されている加工を施して、ほぼリアルタイムに表示装置22に表示させる。
電車の乗客は、電車両内のカメラ35で自分がどのように撮影されているのか不安になる。実際に撮影されている画像を電車両内の表示装置22に表示させると、乗客は自分がどのように撮影されているかを確認することができ、不安が和らぐ。実際に撮影された画像を加工した画像を表示させると、そのまま表示させる場合と比べて、種々の付加的な効果を得ることができる。
カメラ35で撮影された画像を表示させる表示装置22は、そのカメラ35の近傍に配置された表示装置22とするとよい。特に、カメラ35で写る範囲の乗客が見ることができる位置の表示装置22に表示させるとよい。
画像の加工として、乗客以外の領域(背景)を電車両内の画像ではなく、他の画像に置き換える加工とするとよい。特に、現実では起こりえないような状況を表示装置22の画面上に表示させるとよい。例えば、コイが泳いでいる池を上から撮影した画像を背景として採用すると、この池の上に乗客が立っているような状況が仮想的に再現される。これにより、自分が撮影されているという乗客の不安な気持ちが軽減されることが期待される。さらに、乗客の中に子供がいる場合、子供が興味を示し、喜びそうな画像を、表示装置22の画面内の子供の傍に表示させるとよい。例えば、人気のキャラクターのアニメ画像を、表示画面内の子供の傍に表示させるとよい。これにより、子供を楽しい気分にさせることができる。
電車両内のカメラ35で撮影された画像と、予め準備されている映像コンテンツとを、例えば一定の周期で、交互に表示させるとよい。これにより、1つの表示装置22で、電車両内の画像と映像コンテンツとを表示することができる。
変形例として、各車両に対応した表示装置22を乗務員室に設置し、乗務員がリアルタイムで車両内の乗客の様子を確認できるようにするとよい。乗務員は、車両ごとの混雑の程度を容易に把握することができる。混雑の程度を把握して、比較的空いている車両を乗客に案内するアナウンスを流すことができる。
車両内の網棚等に忘れ物がある場合、乗務員は画像を見ることによって忘れ物の有無を容易に確認することができる。これにより、駅において忘れ物を回収する時間を短縮することができる。
[L.電車両内の荷物盗難抑止機能]
次に図10A及び図10Bを参照して、電車両内の荷物盗難抑止機能について説明する。荷物盗難抑止機能は、カメラ35で撮影された画像における荷物置場を訪れた乗客の特徴に基づいて、ロック機構をロック状態及びアンロック状態のいずれかにする機能である。
図10A及び図10Bは、それぞれ電車両内の荷物置場に設けられているロック機構のアンロック状態及びロック状態における斜視図である。ロック機構は、2本のバー55、56を含む。アンロック状態(図10A)では、2本のバー55、56の間に隙間が設けられている。このため、一方のバー55をスーツケース等の荷物50の把手51に通すことができる。ロック状態(図10B)では、2本のバー55、56によって閉じたループが形成されることにより、荷物50の把手51をバー55、56から取り外すことができなくなる。荷物置場は、車両内のカメラ35の画角内に配置されている。このため、荷物50の持ち主がロック機構を操作しているときに、荷物の持ち主はカメラ35で撮影される。
荷物50を荷物置場に置こうとする持ち主は、バー55を荷物50の把手51に通した後、バー55、56を操作して閉ループ状態にする。ロック機構は、バー55、56が閉ループ状態にされたことを検知すると、ロック状態に遷移する。処理装置40は、ロック機構がロック状態に遷移したことを検知する機能を有する。
処理装置40は、ロック機構がロックされたことを検知すると、カメラ35で撮影された画像を解析することによって荷物置場に荷物50を置いた乗客を検知し、その乗客を顔認識技術により特定し、荷物50が置かれた保管場所と、荷物を置いた乗客(持ち主)を特定する情報とを関連付けて記憶する。
処理装置40は、カメラ35で撮影された画像を解析し、荷物の保管場所の近傍にいる乗客の顔認証を行う。処理装置40は、保管場所の近傍に、その保管場所に関連付けられた乗客がいることを検知すると、その保管場所のロック機構をアンロックする。これにより、荷物の持ち主は、自分の荷物を保管場所から取り出すことができる。
荷物50の持ち主が保管場所の近傍に検知されない場合には、処理装置40は、ロック機構をロック状態のままに維持する。このため、荷物の盗難を抑止することができる。荷物置場に荷物を置いた乗客は、ロック機構の鍵を携帯する必要がないため、鍵の紛失等を心配する必要がない。また、乗客は、鍵による開閉の操作を行う必要がないため、利便性が高まる。
図11A及び図11Bは、それぞれ電車両内の荷物置場に設けられている他のロック機構の正面図及び平面図である。荷物置場が、仕切板61によって複数の保管場所60に仕切られている。保管場所60ごとにスイングドア62が設けられている。アンロック状態では、スイングドア62が自由に開閉することがき、ロック状態では、スイングドア62が閉じた状態を維持し、開くことができなくなる。保管場所60ごとにロックボタン63が設けられている。
荷物50の持ち主は、スイングドア62を開いて荷物50を保管場所60に格納しロックボタン63を押す。処理装置40は、ロックボタン63が押されたことを検知する機能を有する。ロックボタン63が押されたことを検知すると、処理装置40は、その保管場所60の前にいる乗客を顔認証技術によって特定する。処理装置40は、荷物50が置かれた保管場所と、特定した乗客(持ち主)を特定する情報とを関連付けて記憶する。ロックをした後、処理装置40は、保管場所の近傍に荷物の持ち主がいることを検知すると、その保管場所のロック機構をアンロックする。図11A及び図11Bに示したロック機構を用いても、図10A及び図10Bに示したロック機構を採用した場合と同様の効果が得られる。
ロック機構をアンロックした後、一定の時間が経過しても荷物が保管場所から取り出されない場合、処理装置40は、再度ロックする機能を有するとよい。荷物の持ち主が保管場所の前を通り過ぎただけで、荷物の持ち主を検知してアンロックされた場合、処理装置40が再度アンロックするため、荷物を安全に保管することができる。
この機能により、荷物の盗難が起きにくくなる。荷物置場は、電車両内のどの場所でもよいが、客室内に設けられてもよいし、デッキに設けられてもよい。荷物置場は、乗客が車両内の座席にすわったときに、乗客から目が届かない場所に設けるとよい。乗客の目が届かない場所に荷物を置いても盗難の防止効果が得られるため、上記機能による効果が一層高まる。また、座席から離れた位置に荷物置場を設けることにより、車両内の座席、荷物置場、出入り口等のレイアウトの自由度が高まる。
荷物置場に荷物を置いた乗客は、ロック機構の鍵を携帯する必要がないため、鍵の紛失等を心配する必要がない。また、乗客は、鍵による開閉の操作を行う必要がないため、利便性が高まる。
[M.電車両内の荷物盗難抑止機能の変形例]
(M−1)荷物置場は、車室内の空間でもよい。荷物置場は、新幹線などの車両の最後部の座席のその後方の壁との間の空間でもよい。処理装置40は、車両内の座席のうち特定の座席を利用する乗客を、荷物の持ち主として上述した処理を行うとよい。処理装置40は、車両の最後部の座席を利用する乗客を、荷物の持ち主と判別するとよい。
(M−2)ロック機構の構成は前述のものに限られないが、必ずしもロッカーや金庫のように荷物を密閉された空間に格納して第三者が荷物を取り出せないようにする機構としないようにするとよい。例えば、荷物の持ち主や第三者が荷物置場に置かれた荷物を視認することができるが、荷物置場から荷物を容易に取り出すことができないような機構をロック機構として採用するとよい。例えば、荷物(例えばスーツケース)の把手に通すバーを荷物置場に備え付けるとよい。バーを荷物の把手に通してバーをロックすると、把手をバーから取り外せなくなるようなロック機構を設けるとよい。その他に、通路と荷物の保管場所との間にスイングドアを設け、ロック状態ではスイングドアが開かないような機構をロック機構として採用するとよい。保管場所の上方が開放されていて、スイングドアの上方を通して荷物を取り出すことは可能であるが、荷物の盗難を抑止する効果は期待できる。
(M−3)処理装置40は、荷物の持ち主が荷物を荷物置場に置いてロック機構をロックすると、処理装置40は、ロックされたことを検出し、その時に荷物置場の該当の荷物の前に立っている乗客の画像から、荷物と持ち主とを対応付けて記憶するとよい。荷物の持ち主の特定は、例えば顔認証技術を用いるとよい。ロック状態のときに、人が荷物の保管場所の前に立つと、処理装置40が、その人の画像に基づいて、保管場所の前に立っている乗客が保管中の荷物の持ち主か否かを判定し、保管中の荷物の持ち主である場合には、ロック機構をアンロックするとよい。
(M−4)処理装置40は、保管場所の前に立っている乗客のうち、特定の場所、例えばカメラ35の設置場所に視線を向けた乗客を検知し、その乗客が荷物の持ち主か否かを判定する機能を有するとよい。又は、カメラ35で撮影された画像を解析することによって、荷物の保管場所の前に立っている持ち主が荷物の取り出しの動作を開始したことを検知したら、ロック機構をアンロックする機能を処理装置40が有するとよい。この機能により、荷物の持ち主が荷物の取り出し以外の目的で保管場所の前を通り過ぎるような場合に、間違ってアンロックされてしまう事態の発生を回避することができる。
(M−5)処理装置40は、保管場所に報知装置を設け、ロック機構がロック状態からアンロック状態に切り替わった時点、及びアンロック状態からロック状態に切り替わった時点に、報知装置で荷物の持ち主にロック機構がロックされたこと、及びアンロックされたことを知らせる機能を有するとさらによい。報知装置として、例えば荷物の持ち主が視覚又は聴覚によって状態の切り替えに気付くことができるような装置、例えばLED等の発光装置、スピーカ等の発音装置等を用いるとよい。これにより、荷物の持ち主は、荷物の保管場所に荷物を置いたときにロック機構がロックされたことを確認することができる。また、荷物の取り出し前に、ロック機構がアンロックされたことを確認することができる。
(M−6)処理装置40は、ロック機構をアンロックした後、一定の時間が経過しても荷物が保管場所から取り出されない場合、再度ロックする機能を有するとよい。荷物の持ち主が保管場所の前を通り過ぎただけで、荷物の持ち主を検知してアンロックされた場合、再度アンロックすることにより、荷物を安全に保管することができる。
[N.駅の表示装置にコンテンツを表示させる機能]
次に図12A及び図12Bを参照して、駅の表示装置にコンテンツを表示させる機能について説明する。
図12A及び図12Bは、線路上の電車70と、駅のホーム71に設置されている駅用表示装置72及び乗客75の列を示す概略図である。電車70が、連結された6両の車両を含む。電車70は、複数の駅を順番に経由し、複数の駅の各々において複数の車両がそれぞれホーム71の規定の停止位置に停止するように運行される。
駅のホーム71の各車両のドアの停止位置ごとに、駅用表示装置72が設置されている。ドアの停止位置に並ぶ乗客が、この駅用表示装置72に表示されている映像コンテンツを見ることができる。駅用表示装置72の処理装置73が、各停止位置の駅用表示装置72に表示させるコンテンツを選択する。
電車70の各車両に撮影装置23が搭載されている。撮影装置23の処理装置が、カメラ35で撮影された画像を解析することにより、乗客の人数を計数して車両ごとの混雑率を算出する機能を有する。撮影装置23の処理装置は、算出した車両ごとの混雑率に関する情報を駅に設置された処理装置73に送信する。この送信には、無線伝送路を含む公衆回線、専用回線等を利用する。混雑率は、例えば「空き」、「普通」、「混雑」、及び「満員」の4段階に区分されている。
駅の処理装置73は、受信した車両ごとの混雑率を示す情報に基づいて、複数のコンテンツから、停止位置に対応して配置された駅用表示装置72に表示させるコンテンツを停止位置ごとに選択する機能を有する。処理装置73は、比較的混んでいる車両の停止位置から比較的空いている車両の停止位置に移動したいと乗客に思わせるようなコンテンツ、すなわち乗客の興味を惹きやすいコンテンツを表示させる。
図12Aは、選択したコンテンツを表示する前の乗客75の列の一例を示し、図12Bは、選択したコンテンツを表示しているときの乗客75の列の一例を示す。乗客75が、興味を惹くコンテンツが表示されている停止位置に移動することにより、比較的空いている車両の停止位置に並ぶ乗客75の列が長くなっている。これにより、例えばエスカレータ付近の特定の車両だけ混雑し、先頭や最後尾の車両は空いているといったことがなくなり、車両間の混雑率の平準化を図ることができる。
変形例として、駅の処理装置73は、各停止位置の駅用表示装置72に、当該車両の混雑レベルを表示させるとともに、他の車両の混雑レベルを表示させるとよい。
撮影装置23は、車両ごとの混み具合を表す情報をサーバに転送する機能を有するとよい。サーバは、乗客がスマートフォン等の携帯情報端末を用いて混雑具合を表す情報にリアルタイムにアクセスすることができる機能を有するとよい。さらに、サーバは、過去の混雑具合を表す情報を提供する機能を有するとよい。電車の利用者は、過去の混雑具合を参考にして、通勤時間帯や利用車両を決定することができる。
駅用表示装置72に表示させるコンテンツを適切に選択することにより、比較的空いている車両に対応する停止位置に、乗客を誘導することが可能になる。これにより、混雑率の平準化を図ることが可能になる。複数の車両を含む列車として、例えば電車、モノレール、リニアモーターカー等が挙げられる。
例えば、停車場(ここでは駅)を出発するごとに、各車両内に配置されたカメラ35で撮影された画像に基づいて処理装置が混雑率を算出するとよい。車両に搭載された処理装置が混雑率を求め、その結果を、次の停車駅に設置された駅用表示装置72に無線通信で送信し、駅用表示装置72の処理装置が、受信した混雑率に応じたコンテンツを表示させるとよい。例えば、停車位置ごとの駅用表示装置72に、その位置に停止する車両の混雑率、混雑のレベル等を表す情報を、数字、色、図形等で表示させるとよい。
次に到着する電車等の空いている車両が停止する位置に配置された駅用表示装置72に、乗客の興味を惹きやすいコンテンツを表示させることによって、相対的に空いている車両が停止する位置に乗客を誘導するとよい。例えば、次の電車等を待っている乗客に子供が多い場合には、乗客の興味を惹きやすいコンテンツとして、子供が興味を惹きやすい人気キャラクターの画像を用いるとよい。混雑している車両が停止する位置の駅用表示装置72には、退屈なコマーシャル映像を表示させ、空いている車両が停止する位置の駅用表示装置72には、人気アイドルが出演しているコマーシャル映像を表示させる機能を、処理装置が有するとよい。
処理装置は、駅のホームに並んでいる乗客を撮影した画像に基づいて、乗客の人数、属性、荷物を持っているか否か等を解析し、解析結果に基づいて駅用表示装置72に表示させるコンテンツを変える機能を有するとよい。例えば、混雑している車両が停止する位置に並んでいる乗客の属性に基づいて、乗客が興味を持ちそうなコンテンツを選択し、混雑している車両の停止位置の駅用表示装置72に、乗客が興味を持ちそうなコンテンツが〇〇両目の停止位置の駅用表示装置72に表示されていることを通知するメッセージを表示させるとよい。これにより、乗客を空いている車両の停止位置に誘導する効果を高めることができる。又は、混雑している車両の停止位置の駅用表示装置72に、物語性のある短い映像を表示させ、「続きは、〇〇両目の停止位置の駅用表示装置72に表示されます。」といったメッセージを表示させる機能を処理装置が有するとよい。これにより、混雑している車両の停止位置から、他の停止位置に乗客を誘導することができる。
路線バスのバス停に表示装置を配置し、混雑したバスがバス停に停車し、次のバスが比較的空いている場合には、次のバスが空いていることを乗客に知らせ、次のバスを待つように乗客に動機づけるコンテンツを表示装置に表示させる機能を処理装置が有するとよい。例えば、次のバスが来るまでの予定時間、次のバスの空席の数、次のバスの車両内の表示装置に表示されるコンテンツをバス停で待っている乗客に通知する機能を処理装置が有するとよい。次のバスでは、バス停で待っている乗客が興味を惹きそうなコンテンツを表示させるとよい。例えば、バス停で待っている乗客に中学生や高校生が多い場合には、次のバスの表示装置に試験の予想問題と解答が表示されますというようなメッセージを、バス停の表示装置に表示させるとよい。
[O.撮影装置23の他の構成例]
(O−1)図13は、他の構成例による撮影装置23(図2A、図2B)のカバーを取り外した状態の斜視図である。以下、図2A及び図2Bに示した撮影装置23との相違点について中心に説明する。
撮影装置23の筐体には、開口部37が設けられている。本構成例では、記録部本体34の側面に開口部37が設けられている。開口部37は、リーダライタ42への外部記憶媒体の装着、及びリーダライタ42からの外部記憶媒体の取り出し時に外部記憶媒体が通過する部分である。記録部本体34内に配置されているリーダライタ42(図4)に、開口部37を通してSDカードを装着する。回転式蓋38が記録部本体34に回転可能に取り付けられている。回転式蓋38を回転させることにより、開口部37を塞いだ状態と、開口部37を開放した状態とを実現する。
SDカードの抜き差し方向は、記録部本体34に収容されている回路基板に対して平行である。この回路基板は、撮影装置23を電車の壁面に取り付けた状態で壁面に対してほぼ平行になる。このため、SDカードの抜き差し方向も電車の壁面に対して平行になる。SDカードには、カードを識別するためのラベルが貼付される。SDカードを記録部本体34から取り出したときに、ラベル面が正面を向くように、リーダライタ42が配置されている。
回転式蓋38の回転軸は、開口部37の開口面に対して平行(例えば、SDカードを抜き差しするときのSDカードに対して垂直)であり、電車の壁面に対して平行な面内で蓋が回転する。筐体を車両の壁面に取り付けた状態で、回転式蓋38の回転軸が壁面に対して平行になるようにするとよい。このような構造にすると、回転式蓋38が車両の壁面に対して垂直な面内で回転することになるため、筐体の横に回転式蓋38を回転させるためのスペースを確保する必要がなくなる。回転式蓋38は、開口部37を塞いだ状態で、トルクスネジで固定される。
記録部本体34の下部に画像データ出力端子44が配置されている。画像データ出力端子44は、記録部本体34の正面からケーブルを抜き差しできる姿勢で支持部31に取り付けられている。
回転式蓋38の開閉と連動して、撮影装置23の電源のオンオフを行う連動スイッチ46が設けられている。回転式蓋38が閉じられた状態で連動スイッチ46がオンになり、回転式蓋38が開かれた状態で連動スイッチ46がオフになる。
記録部本体34から上方に向かって電源ケーブル45が引き出されている。電源ケーブル45は、支持部31に設けられた開口、及び電車の壁面に設けられた開口を通って、車両の壁面の裏側に取り付けられている電源アダプタに接続されている。この電源アダプタから撮影装置23に電源を供給するとよい。電車によって、壁面内に予め配線されている電源ケーブルの電圧や、直流交流の別が異なっている。予め配線されている電源ケーブルで供給される電源種別を、電源アダプタによって、撮影装置23用の電源種別に変換するとよい。これにより、撮影装置23用の電源として既存の電源ケーブルを利用することができ、新たに電源ケーブルを配線する必要がなくなる。
SDカードを撮影装置23から取り出すには、カバー32(図2A)を支持部31から外し、さらに記録部本体34の回転式蓋38を回転させて開口部37を開放しなければならない。このように、カバー32と回転式蓋38とで二重の盗難対策が施されているため、SDカードの盗難防止効果が高まる。開口部37を塞ぐ蓋が回転式であるため、蓋の落下を防止することができる。回転式蓋38は、一般的なプラスドライバ、マイナスドライバ等では取り外しができない特殊ネジ、例えばトルクスネジ等で固定するようにするとよい。このようにすれば、さらに盗難防止効果を高めることができる。
リーダライタ42と電車の壁面との関係を上述のように設定することにより、SDカードをリーダライタ42から取り出した直後に、容易にSDカードのラベルを視認することができる。
SDカードに通電した状態でSDカードを取り外す行為は、SDカードの故障の原因になる。回転式蓋38を開くと連動スイッチ46がオフになり、撮影装置23の電源がオフになるため、SDカードに通電された状態でSDカードがリーダライタ42から取り外される危険性がなくなる。
(O−2)回転式蓋38の回転軸を、開口部37の開口面に対して平行にし、ヒンジを介して蓋をケースに取り付けて回転式蓋38を開閉するようにするとよい。回転式蓋38に代えて、スライド式の蓋を採用することも可能である。
(O−3)SDカードの抜き差し方向は、処理装置40の機能を実現する電子回路部品が実装された回路基板に対して平行な方向とするとよい。SDカードには、SDカードを識別するためのラベルを貼付するとよい。筐体を車両の壁面に取り付けた状態で、SDカードをリーダライタ42から取り出したときに、ラベル面が正面を向くようにするとよい。これにより、SDカードをリーダライタ42から取り出した直後に、容易にラベルを視認することができる。
(O−4)撮影装置23及び処理装置40に、電気二重層キャパシタ等の短時間動作用の電源を搭載するとよい。処理装置40は、連動スイッチ46がオフにされたことを検知すると、短時間動作用の電源から電源の供給を受けて、SDカードに対する終了処理を行う機能を有するとよい。このようにすれば、SDカードへの書き込み処理が中途半端な段階で終了してしまい、新たな書き込みができなくなってしまう事態の発生を抑制することができる。SDカードに対する終了処理は、例えば2〜3秒程度で終了する。従って、短時間動作用の電源は、処理装置40をこの程度の時間動作させることができる容量を有するとよい。
(O−5)筐体の支持部31及びカバー32には、不燃性又は難燃性材料を用いるとよい。例えば、支持部31には金属を用いるとよい。カバー32のカメラレンズ正面部分には透明樹脂を用い、他の部分には金属、例えばアルミダイカストを用いるとよい。筐体内にGPS用のアンテナや無線LAN用のアンテナを配置する場合には、アンテナの近傍の部分は非金属、例えば樹脂にするとよい。GPS情報は、処理装置40のリアルタイムクロックの時刻補正に用いるとよい。
(O−6)バックアップ用電池及び短時間動作用の電源を実装する基板を、メイン基板から取り外し可能に搭載するとよい。これにより、バックアップ用電池及び短時間動作用の電源を、撮影装置23の設置事業者、例えば鉄道会社等のユーザが容易に交換することができるようになる。バックアップ用電池及び短時間動作用の電源を実装する基板に、交換した時期に関する情報、例えば年月又は年月日等を明示する領域を設けるとよい。このような領域として、例えば交換した時期が印刷されたシールを貼り付ける領域、手書き文字を記入することができる領域等とするとよい。バックアップ用電池及び短時間動作用の電源を実装する基板を交換した時期を基板に記しておくことにより、次の交換時期を容易に知ることができる。なお、バックアップ用電池と短時間動作用の電源とを共通の基板に実装する構造以外に、バックアップ用電池と短時間動作用の電源とを別々の基板に実装するとよい。この構造にすると、バックアップ用電池及び短時間動作用の電源の一方のみを容易に交換することが可能になる。
(O−7)筐体を車両の壁面に取り付けた状態で、カバー32の下方が開放された構造とするとよい。バックアップ用電池及び短時間動作用の電源を実装する基板を、カバー32の開放部分を通して交換することができる位置に配置するとよい。カバー32に開放部分を設けることは、放熱の観点からも有効である。バックアップ用電池及び短時間動作用の電源は、処理装置40の主な発熱部品よりも下方に配置するとよい。これにより、バックアップ用電池及び短時間動作用の電源の熱による劣化を抑制することができる。
(O−8)筐体を車両の壁面に取り付けた状態で上方を向くカバー32の側面は、前方に向かって下がるように傾斜した形状にするとよい。これにより、車両の乗客がカバー32の上方の側面に手を掛けにくくなる。
(O−9)カバー32は、支持部31にネジ止めして固定するとよい。このネジは、完全に緩めてもカバーから落下しない落下防止構造を設けるとよい。例えば、ネジをカバーの貫通孔に通した状態で、ネジに抜け防止用のナイロンワッシャ等を嵌めて、ネジの頭部とワッシャとでカバーを挟むようにするとよい。
[P.SDカードに記録された動画像を再生する機能]
次に、SDカードに記録された動画像を再生する画像再生装置について説明する。画像再生装置のハードウェア構成については図示を省略するが、一般的なパーソナルコンピュータと同様でよい。すなわち、画像再生装置は、CPUで例示される演算処理装置、メモリ、操作装置、外部記憶媒体用インタフェース、通信モジュール、補助記憶装置を有するとよい。メモリは、画像再生処理実行の際のワークエリアとして用いられる。操作装置は、ユーザの操作を受け付ける。操作装置として、例えばキーボード、ポインティングデバイス等を用いるとよい。通信モジュールは、外部装置と通信(例えば有線又は無線)を行う。補助記憶装置は、例えばハードディスク装置等を含み、プログラム、ビューワ、その他のデータを記憶する。演算処理装置は、メモリにビューワ、その他の必要なプログラムを読み出し、そのプログラムに従って各種演算処理を行う。
この画像再生装置は、電車の複数の車両にそれぞれ取り付けられたカメラ35で撮影され、SDカードに記録された動画像のデータを読み込んで記憶装置に格納する機能を有する。このとき、画像再生装置は、SDカードに記録されたカメラ35の識別情報を、動画像データに関連付けておく。画像再生装置は、カメラ35の識別情報から、列車名、車両番号、車両内におけるカメラ35の位置情報等を取得する機能を有する。画像再生装置は、カメラ35の識別情報と、そのカメラ35が搭載されている電車に関する情報とを含むデータベースを検索してこれらの情報を取得する機能を有する。
画像再生装置は、電車の複数の車両の連結の構成、及び車両内のカメラ35の取り付け位置に関する情報を表示画面に表示させ、表示画面に表示された情報から特定のカメラ35を選択させる機能を有する。操作者の操作によって1つのカメラ35が選択されると、画像再生装置は、選択されたカメラ35で撮影された画像を表示画面に表示させる機能を有する。
この機能により、確認したい動画像を撮影したカメラ35を容易に指定し、再生することができる。
[Q.センサの検知結果とカメラ35で撮影された動画像との連動機能]
次に、センサの検知結果とカメラ35で撮影された動画像との連動機能について説明する。
電車の車両に、3軸加速度センサ、ジャイロセンサ、温度センサ、ガスセンサ等の種々のセンサが取り付けられている。撮影装置23の処理装置は、カメラ35で撮影された画像のデータと関連付けて、センサ検知情報をSDカードに記録する機能を有する。
画像再生装置は、SDカードに記録された画像とセンサ検知情報とを関連付けて表示画面に表示させる機能を有する。例えば、車両に設置されたセンサが3軸加速度センサ又はジャイロセンサであり、画像再生装置は、これらのセンサの検知結果と動画像とを同期させて同時に表示画面に表示させる。これにより、車両にどのような加速度が加わると、車両内の乗客がどのような挙動を示すかという情報が得られる。特に、1つの車両の異なる箇所にそれぞれ3軸加速度センサ又はジャイロセンサを取り付けるとよい。これらのセンサの検知結果から車両の挙動を解析することができる。車両の挙動から、線路状態の異常、車両状態の異常、運転の異常等を把握することができる。カメラ35で撮影された画像から、車両にどのような加速度が加わると、車両内の乗客がどのような挙動を示すかという情報が得られる。また、センサ検知結果から得られた車両の挙動を運行シミュレータ等で再現して、乗客が受けた衝撃と同等の衝撃を運転手に体験させることができる。運転手は、通常は、先頭車両の運転席の挙動しか体感することができない。運転手が、自分の運転操作が車両の挙動にどのように反映されたか、乗客がどのように感じたかを体験することは、運転手にとって、快適な乗り心地が得られるような運転を行う動機付けとなる。
例えば、車両に設置されたセンサが温度センサであり、画像再生装置は、温度センサの検知結果と、カメラ35で撮影された画像とを同期させて、同時に表示画面に表示させる。これにより、温度の変動と、ドアの開閉、シェードの上げ下ろし、乗客の増減等との関連を知ることができる。この情報は、車両内をより快適な温度に保つための方策を見つけ出す有益な情報となる。
例えば、車両に設置するセンサに温度センサを含めるとよい。温度センサの検知結果と、カメラ35で撮影された画像とに基づいて、温度の変動と、ドアの開閉、シェードの上げ下ろし、乗客の増減等との関連を知ることができる。この情報は、車両内をより快適な温度に保つための方策を見つけ出す有益な情報となる。
例えば、温度センサの検知結果は、直ちに電車の乗務員が見ることができるように乗務員室に表示させるとよい。乗務員は、車両内温度に基づいて、シェードの開閉を促すアナウンスを行うか否か、空調装置の設定温度の変更を行うか否か等の判断を行うことができる。ドアの開閉状態と温度変化とに基づいて、温度変化の原因がドアの開閉に起因するものか否かを判断することができる。
例えば、車両に設置されたセンサがサーマルカメラであり、画像再生装置は、カメラ35で撮影された画像と、サーマルカメラによって得られた温度分布とを対比させることにより、高熱であった乗客を割り出す機能を有する。さらに、画像再生装置は、サーマルカメラの検知結果に基づいて、例えば高熱の乗客がどのような移動経路で車両内を移動したかを探索する機能を有する。この情報は、例えば危険なウイルスの感染者の移動経路探索のための重要な手掛かりとなる。サーマルカメラの検知結果に基づいて、例えば高熱の乗客がどのような移動経路で車両内を移動したかを探索することができる。カメラ35で撮影された画像と、サーマルカメラによって得られた温度分布とを対比させることにより、高熱であった乗客を割り出すことができる。この情報は、例えば危険なウイルスの感染者の移動経路探索のための重要な手掛かりとなる。
例えば、車両に設置するセンサにガスセンサを含めるとよい。ガスセンサの検知結果に基づいて、危険なガスを検知することができる。危険なガスを検知したら、処理装置は直ちに乗務員室に警報を鳴らすようにするとよい。乗務員がこの警報に気付くと、被害が大きくなる前に適切な対応をとることが可能になる。
画像再生装置の操作者は、自分の見たい画像を撮影したカメラ35を容易に選択することができる。画像再生装置の機能は、例えばパソコン等の情報端末、及びこの情報端末にインストールしたビューワ等のアプリで実現するとよい。カメラ35で撮影された画像のデータの取得は、例えばSDカード等の外部記憶媒体、無線LAN等の通信ネットワークを介して行うとよい。画像のデータを外部記憶媒体に記録する情報に、車両内におけるカメラ35の設置場所を示す情報、カメラ35の機器ID等を記録するとよい。
ビューワに、カメラ35の機器IDと、そのカメラ35が設置されている車両を識別する情報、例えば「のぞみ100号の7号車」という情報とを対応付けて記憶する機能を持たせるとよい。ビューワがインストールされた端末に、複数の外部記憶媒体に記録されている画像データを取り込んでおき、ビューワが任意の画像データにアクセスできる機能を有するとよい。ビューワの操作者が、車両を指定する操作を行うと、ビューワは、指定された車両に設置されている複数のカメラ35の設置場所を、表示画面に表示させるとよい。例えば、車両を平面図として表示し、この平面図内のカメラ35の設置場所に、カメラ35を表すマークを表示するとよい。
ビューワの操作者が、表示されている複数のカメラ35から1つのカメラ35を選択すると、そのカメラ35で撮影された画像を表示画面に表示させる機能をビューワが有するとよい。画像の中に、その画像が取得された時刻情報、車両識別情報、車両内におけるカメラ35の位置情報を文字又は図形で埋め込んで表示させるとよい。この表示中の画像を、1つの動画ファイルとして保存する機能を、ビューワが備えるとさらによい。この動画ファイルは、一般的な動画再生装置を用いて再生することができるため、種々の用途、例えば社員教育等に利用することができる。
ビューワは、車両内の乗客の画像から乗客の骨格解析を行い、ボーン(骨格ともいう。)表示する機能を有するとよい。ボーン表示から、乗客の態勢を認識しやすくなる。例えば、吊革につかまっているか、バーにつかまっているか、何にもつかまっていないか等の種々の態勢を認識しやすくなる。これにより、好ましい吊革の位置や高さ、好ましいバーの位置や向き等についての知見を得ることができる。
また、カメラ35で撮影された画像と、センサ検知情報とを関連づけることにより、カメラ35で撮影された画像のみ、又はセンサで取得されたセンサ検知情報のみでは得られない情報を得ることができる。センサ検知情報は、時系列に記録するとよい。カメラ35は、車両の複数の個となるドアの近傍にそれぞれ配置するとよい。また、複数のカメラ35を、右側のドア近傍と左側のドア近傍とに、平面視においてジグザグに配置するとよい。
[R.サーバとの通信機能]
次に、電車に搭載された撮影装置23と外部のサーバとの通信機能について説明する。
撮影装置23が親の機能を持ち、サーバが子の機能を有する。すなわち、撮影装置23から通信を開始し、サーバからは通信を開始することはできない。撮影装置23は、カメラ35で撮影された動画像をSDカードに記録するとともに、サーバに動画像データを常時送信する機能(以下「常時送信機能」という。)を有する。
さらに、撮影装置23は、SDカードへの記録ができなくなった非常時や、サーバから動画像データのアップロード指示を受信した場合等の特定の時にのみ、サーバに動画像データを送信する機能(以下「特定時送信機能」という。)を有する。撮影装置23は、常時送信機能と特定時送信機能のうち、一方の機能を有効にし、他方の機能を無効にしておく機能を有する。
変形例として、撮影装置23が子の機能を持ち、タブレット端末が親の機能を有するとよい。撮影装置23は、カメラ35で撮影された動画像をSDカードに常時記録し、通信に関しては接続開始要求の待機状態を維持する。タブレット端末から接続開始要求を受信すると、撮影装置23とタブレット端末との間で通信が可能となる。タブレット端末から動画像データの送信要求を受けると、撮影装置23はSDカードから動画像データを読み出してタブレット端末に送信する。タブレット端末の操作者は、撮影装置23からSDカードを取り外すことなく、SDカードに正常に動画像が記録されているか否かを確認することができる。
[S.その他の変形例]
(S−1)移動体には、不特定の複数の乗客を乗せて運行される乗り物、例えば、電車やバス等、不特定の一人又は少数の乗客を乗せて運行される乗り物、例えばタクシーやハイヤー等、不特定の複数の乗客を乗せてビル内で昇降するエレベータ等が含まれる。特に、一定の期間は乗客が入れ替わらず同一の乗客がカメラで撮影され、ある時間が経過すると乗客が入れ替わり、乗客の属性が変化するような移動体にカメラを配置するとよい。例えば、駅やバス停等の複数の停車場を順番に経由して運行される移動体、例えば電車やバス等にカメラを配置するとよい。駅やバス停で移動体の乗客が入れ替わると、画像に基づいたコンテンツの選択を再度実行するとよい。評価情報の取得は、乗客の入れ替わりとは無関係に、例えば一定の時間刻み幅で継続的に実行するとよい。また、移動体は、特定多数又は特定少数の乗客が乗る移動体でもよい。なお、移動体が電車である場合には、停車場は駅に相当し、移動体が路線バスである場合には、停車場は停留所に相当し、移動体がエレベータであれば停車場は各階に相当する。
(S−2)実施例では外部記憶媒体をSDカードとして説明したが、外部記憶媒体がSDカード以外の外部記憶媒体(例えばUSBメモリ)でもよい。外部記憶媒体は、クラウドコンピューティング環境により実現される記憶媒体や、その他の処理装置外に設けられる記憶媒体でもよい。
(S−3)上述した実施形態で説明した処理装置の一部の機能をカメラ側の処理装置で実現し、残りの機能を表示装置側の処理装置で実現するとよい。例えば、カメラで撮影した画像を解析する機能をカメラ側の処理装置で実現し、画像の解析結果に基づいてコンテンツを選択する機能を表示装置側の処理装置で実現するとよい。この場合、画像の解析結果を、カメラ側の処理装置から表示装置側の処理装置に転送するとよい。解析結果には、乗客の属性と、その属性を有する乗客の比率に関する情報を含めるとよい。この場合、表示装置側の処理装置は、乗客の属性等に基づいて複数のコンテンツから少なくとも1つのコンテンツを選択するとよい。これらの情報に代えて、表示すべきコンテンツの種別に関する情報を、カメラ側の処理装置から表示装置側の処理装置に転送するとよい。この場合、表示装置側の処理装置は、コンテンツの種別に関する情報に応じたコンテンツを選択するとよい。
(S−4)上述した実施形態で説明した処理装置の機能の一部又は全部を、外部のサーバで実現してもよい。この場合、カメラで撮影された画像を、通信網を介してサーバに送信するとよい。通信網は、インターネットで例示される公衆の通信網とするとよい。通信網は、有線、無線又はこれらの組み合わせのいずれとしてもよい。サーバは、例えばカメラで撮影された画像に基づいて、表示装置に表示されているコンテンツを評価する基礎となる情報を取得するとよい。
本発明の範囲は,明細書に明示的に説明された構成や限定されるものではなく,本明細書に開示される本発明の様々な側面の組み合わせをも,その範囲に含むものである。本発明のうち,特許を受けようとする構成を,添付の特許請求の範囲に特定したが,現在の処は特許請求の範囲に特定されていない構成であっても,本明細書に開示される構成を,将来的に特許請求の範囲とする意思を有する。
本願発明は上述した実施の形態に記載の構成に限定されない。上述した各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と,発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素又は発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正又は分割出願等において権利取得する意思を有する。
また、意匠登録出願への変更により、全体意匠又は部分意匠について権利取得する意思を有する。図面は本装置の全体を実線で描画しているが、全体意匠のみならず当該装置の一部の部分に対して請求する部分意匠も包含した図面である。例えば当該装置の一部の部材を部分意匠とすることはもちろんのこと、部材と関係なく当該装置の一部の部分を部分意匠として包含した図面である。当該装置の一部の部分としては、装置の一部の部材としても良いし、その部材の部分としても良い。全体意匠はもちろんのこと、図面の実線部分のうち任意の部分を破線部分とした部分意匠を、権利化する意思を有する。また、装置の筐体の内部のモジュール・部材・部品等についても、図面に表示されているものは、いずれも独立して取引の対象となるものであって、同様に、意匠登録出願への変更を行って権利化を行う意思を有するものである。