JP2021043923A - 対象を評価する方法、及び対象を評価する装置 - Google Patents

対象を評価する方法、及び対象を評価する装置 Download PDF

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Abstract

【課題】対象の使用感をより適切に評価できる方法を提供する。【解決手段】対象の評価方法が、対象に対する支払意志額及び前記対象の使用感を意識させながら、前記対象を使用している時の被験者の大脳血流量の変化を測定し、前記大脳血流量の変化に基づいて、前記対象の使用感及び/又は前記対象に対する支払意志額を評価することを含む。【選択図】図1

Description

本発明は、対象を評価する方法、及び対象を評価する装置に関する。
ある対象を使用する際に使用者が感じる感覚(すなわち使用感)を客観的に評価しようという試みが、様々な分野で行われている。
例えば、特許文献1には、スティック状化粧品の使用感を評価する方法が記載されている。特許文献1に記載の方法では、スティック状化粧品を平面に押し付けて、回転運動する際に生じるトルクを測定し、その時間依存性を所定の数式を用いて波形解析することにより得られる値に基づいて、スティック状化粧品の使用感を評価する。当該方法は、所定の数式を用いて波形解析により得られる値と官能評価値との相関を見出し、その相関を利用したものである。
このように、官能評価値に相関し得る対象固有の物性を求め、その相関を利用して、物性から官能評価の推定を行うことで、対象を使用した時の使用感を評価することが知られている。
しかしながら、使用者は、対象の使用時に、意識的に又は無意識的に使用感以外のことを思考している場合が多い。特に、使用者は、使う価値があるかどうか、購入する価値があるかどうか、対象に対していくら払ってもよいか等、対象の価格に関連することについて思考している場合が多く、そのような思考は、使用者が感じる使用感の官能評価にも影響を及し得る。そして、そのような使用感以外についての思考の強さには比較的大きな個人差があると考えられる。そうすると、使用感の評価において、物性と官能評価値との相関に基づく従来の評価手法は、詳細な分析をしたい場合等には十分でない可能性がある。また、上記のような使用者の思考傾向に鑑みると、対象の使用感以外の評価、例えば対象に対する支払意志額の評価の場合にも、同様のことが言える。
特開2016−75619号公報
上記の点に鑑みて、本発明の一形態は、対象の使用感等をより適切に評価できる方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の一形態による対象を評価する方法は、対象に対する支払意志額及び前記対象の使用感を意識させながら、前記対象を使用している時の被験者の大脳血流量の変化を測定し、前記大脳血流量の変化に基づいて、前記対象の使用感及び/又は対象に対する支払意志額を評価する。
本発明の一形態によれば、対象の使用感等をより適切に評価できる方法が提供される。
本発明の一形態による方法を実施するための装置の模式図である。 被験者の頭部に、光トポグラフィ装置のプローブユニットを装着した状態を右側及び左側から見た図である。 被験者の頭部に、光トポグラフィ装置のプローブユニットを装着した状態を示す模式図である。 本発明の一形態による方法の具体例を示すフロー図である。 実施例1において被験者からデータを取得する際のスケジュールを示す図である。 光トポグラフィ装置のチャネルと脳の部位との対応を示す図である。 例1の結果を示す図である。 例1の結果を明確化した図である。 例2の結果を示す図である。 例2の結果を明確化した図である。 例2aの結果を示す図である。 チャネル18についてのやわらかさ判定値と塗布時の脳活性量との関係を示す図である。 チャネル18についてのやわらかさ判定値と塗布時の脳活性量との関係を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<使用感の評価方法>
本発明の一形態は、対象に対する支払意志額及び対象の使用感を意識させながら、対象を使用している時の被験者の脳活動の変化を大脳血流量の変化として測定し、大脳血流量の変化に基づいて、対象の使用感及び/又は対象に対する支払意志額を評価する対象の評価方法である。本形態により、対象の使用感及び/又は対象に対する支払意志額をより適切に評価することができる。
本形態において評価される「対象」は、使用感を生じさせるものであれば特に限定されない。「対象」は、形のある物であってもよいし、使用者が受けるサービスであってもよい。「対象」が物である場合の具体例としては、化粧品、例えば、ファンデーション、口紅、チーク、アイシャドー、アイブロー、アイライナー、マスカラ等のメーキャップ化粧品、洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、美容液等の基礎化粧品が挙げられる。また、パーソナルケア製品(衛生日用品)、例えば、ハンドクリーム、ボディクリーム(ボディローション)、ネイル製品、ネイルケア製品、ボディーシャンプー、石鹸、歯磨剤等の口腔ケア製品、フレグランスや香料等が挙げられる。また、「対象」は、道具であってもよく、メーキャップ用のブラシ(パウダーブラシ、チークブラシ、マスカラブラシ等)、ヘアブラシ、スポンジ、パフ等の化粧器具、歯ブラシ等のパーソナルケア用道具、コットン、ティッシュやウェットティッシュ等の紙製日用品、美顔器具、ツボ押し器具等の健康・美容器具等であってもよい。さらに、「対象」は、食料品、飲料品、嗜好品等であってもよい。さらに、「対象」がサービスである場合には、具体例としては、メーキャップ、エステティック、マッサージ、指圧、ボディケア、ハンドケア、フットケア、ネイルケア等が挙げられる。
また、本形態における「被験者が対象を使用している時」は、被験者が対象を使用している時間の少なくとも一部の時間にわたって連続する時間とすることができる。すなわち、評価の基礎となる脳血流量の測定データは、被験者が対象の使用を開始した時点から終了した時点までの所定の時間にわたって測定されたデータであってよいし、上記所定の時間の一部の時間にわたる測定データであってもよい。
また、対象の「使用」とは、例えば、対象が化粧品等の、体表に塗布して使用する剤(体表塗布剤という場合がある)である場合には、被験者が対象を自らの若しくは他人の体表に塗布すること、又は対象が被験者の体表に塗布されることを指す。また、対象が化粧用具であれば、化粧用具で実際に化粧品等を塗布することを、対象が食料品である場合には食料品を食べることを指す。なお、対象がサービスである場合、例えばメーキャップである場合には、メーキャップ施術が施されることを指す。
対象の使用は、その対象が使用される一般的な方式で行われるか、又は被験者がその対象を通常使用するような方式で行われることが好ましい。例えば、化粧品は、一般的には鏡を見ながら使用されることが多いので、評価される対象が化粧品である場合には、被験者に鏡を見ながら化粧品を塗布させてもよい。また、被験者が化粧品を通常個室で使用する場合には、測定において、被験者に個室内で化粧品を塗布させてもよい。これにより、対象に対する心身の反応(脳の反応)のより正確なデータを取得することができ、対象の評価をより適切に行うことができる。
対象の「使用感」とは、被験者が対象を使用することで被験者に生じる感覚である。この「使用感」は、人の五感の1以上で感じられる感覚であってよい。本形態によれば、特に、被験者が触覚を通して感じられる感覚を含めた感覚を好適に評価することができる。「使用感」は、例えば「対象」が化粧品である場合、特に体表塗布剤である場合には、対象のやわらかさ、なめらかさ、伸ばしやすさ、付きやすさ、さっぱり感、しっとり感、きしみのなさ、肌へのなじみ、べたつき、浸透感、みずみずしい、つや、つるつるさ等が挙げられる。このような使用感は、対象に固有の特性ではなく、人が感じる主観的な感覚である。
対象に対する「支払意志額」は、対象に対して払ってもよい金額、すなわち支払意志額(willingness to pay(WTP)、最高支払意志額ともいう)である。個人が対象を購入するかしないかは、その対象の価格が、その個人が考える支払意志額を超えるか超えないかに基づき判断される。支払意志額は、単なる価格評価と異なり、個人が実際に買いたいという気持ちが価格に置き換えられた、対象に対する価値付けであり、その個人自身の嗜好、体験、経済的状況等にも依存する。支払意志額は、対象の総合的な金銭的評価の基準ともいえるため、支払意志額は、商品開発の方向性の決定や商品価格設定等を行う上での重要な指標となり得る。
<評価装置の概略>
図1に、本発明の一形態による方法を実施するための評価装置を模式的に示す。図1には、例として、機能的近赤外分光分析法(fNIRS)を用いた評価装置100を示している。評価装置100は、評価装置本体10と、この評価装置本体10に接続されたプローブユニット12とを主たる構成として備えている。
機能的近赤外線分光法(fNIRS)は、近赤外光を、光ファイバを通じて頭皮上から照射し、頭皮・頭蓋骨等を透過して大脳で反射してきた光を再び頭皮上で電気信号に変えて検出する方法である。大脳での反射光の強さは、血液中のヘモグロビンによる光の散乱度合いに依存するので、検出される電気信号から、ヘモグロビンの濃度の変化を求めることができる。一方、脳のある部位が活動すると、その部位での血流量、すなわちヘモグロビンの量が増大することが知られている。よって、NIRSを用いて、ヘモグロビン濃度の変化として大脳血流量の変化を測定することによって、脳の活動の強さ(脳賦活量の大きさ)を測定することができる。
近赤外光は、一般に600〜1,800nm程度の波長の光を指すが、生体内を透過しやすいことから、本形態の方法における大脳血流量の変化の測定においては、600〜950nm程度の波長の光を用いると好ましい。
プローブユニット12は、図1に示すような被験者SBの頭部に装着可能なキャップの形態や、前額部に載せるヘッドマウントホルダの形態等とすることができる。プローブユニット12は着脱が容易であり、また脳血流量の測定中に、被験者は身体を動かすこともできる。よって、脳血流量の測定時に、被験者に、通常行っているような使用方法で対象を使用させることができるので、より正確な脳血流量データを取得することができる。
図2Aに、プローブユニット12を被験者の頭部に装着した状態を頭部の左側及び右側から見た模式図を示す。プローブユニット12には、複数の検出プローブ121及び照射プローブ122が交互に配置され、複数のチャネル(計測点)125が検出プローブ121と照射プローブ122との間に形成されている。このプローブユニット12により、大脳表面の血流量の変化を異なる複数の部位で測定することができる。プローブユニット12の検出プローブ121及び照射プローブ122はそれぞれ光ファイバ13(図1)を介して、評価装置本体10に接続されている。
プローブユニット12(図1及び図2A)で検出された電気信号は、光ファイバ13を介して評価装置本体10に送信される。評価装置本体10においては、電気信号が上述のヘモグロビン濃度(正確には濃度と光路長の積)に変換される。評価装置本体10では、このヘモグロビン濃度の経時的な変化を、脳血流量の変化として取得することができる。ヘモグロビンの濃度としては、酸素化ヘモグロビン(oxygenated hemoglobin、Oxy−Hbとも呼ぶ)の濃度、又は脱酸素化ヘモグロビン(deoxygenated hemoglobin、Deoxy−Hbとも呼ぶ)の濃度(いずれも単位はmM×mm(濃度×光路長)、或いは任意単位(a.u.))、或いはこれらの両方を利用することができる。このうち、酸素化ヘモグロビンの濃度は、脳賦活状態を示す血流量変化の感度が高いことから、本形態による方法における測定においては、酸素化ヘモグロビン(Oxy−Hb)の濃度を利用して行うことが好ましい。
評価装置本体10は、プローブユニット12から取得された電気信号を解析する解析手段、対象を評価する評価手段、解析データや後述のデータベースのデータを記憶する記憶手段等を備えていてよい。
評価装置100は、表示部14、指示部16、及び入力部18をさらに備えていてよい。これらの表示部14、指示部16、及び入力部18はいずれも、評価装置本体10に接続されている。
表示部14は、電気信号の変換によって得られた大脳血流量の変化のデータを表示したり、そのデータに基づいて形成された画像(例えば、光トポグラフィ画像)を表示したりすることができる。
指示部16は、評価装置本体10に接続されており、対象の使用を開始及び終了させる指示や、対象の支払意志額に関する質問及び対象の使用感に関する質問(後に詳述)、並びにそのような質問に回答する指示を被験者に提示することができる。指示部16は、例えば、図1に示すように試験者の前方に設置されている画面であってよく、この画面に画像(文字を含む)によって、被験者への指示を表示することができる。指示部16は、画像でなく、音声による指示を発することのできるスピーカー等であってもよいし、画像及び音声の両方による指示を提示できるものであってもよい。
入力部18には、被験者が、質問に対する回答、例えば、対象に対する支払意志額に関する質問及び対象の使用感に関する質問に対する回答を入力することができる。また、支払意志額及び使用感以外の情報、例えば被験者の対象に対する自由な感想や、被験者の個人情報等を被験者自身で入力することもできる。入力部18は、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力インターフェースであってよい。また、マイク等の音声入力デバイス、視線入力デバイス等であってもよい。
上述の評価装置本体10、プローブユニット12、及び表示部14を含むユニットとしては、株式会社日立製作所製の光トポグラフィ装置「ETGシリーズ」等や、株式会社島津製作所製の脳機能イメージング装置「LABNIRS」等を用いることができる。
なお、本形態における大脳血流量の変化を測定する方法は、機能的近赤外分光分析法(fNIRS)に限定されない。大脳血流量の変化の測定は、例えば、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)、陽電子放射断層撮像法(PET)、単一光子放射断層撮影法(SPECT)等によっても行うことができる。また、脳波(EEG)、脳磁図(MEG)を利用してもよい。但し、機能的近赤外分光分析法(fNIRS)による測定は、他の方法による測定と比べて、装置が比較的コンパクトとなり装置の移動も容易なため測定場所に関する制限が少ないことから好ましい。さらに、機能的近赤外分光分析法(fNIRS)による測定は、被験者に対する身体的拘束性が低いため、被験者への身体的及び/又は精神的な負担が少ない。また、被験者の身体の姿勢や動きに加えられる制限が少ないことから、対象の使用が被験者の身体の動きを伴う場合であっても、被験者に実際に対象の使用をさせながら脳血流量の変化を測定することができる。そのため、より実際の状況に近い、より自然な状態でデータを取得することができ、評価の精度を上げることができる。
<大脳血流量の変化の測定>
本形態では、大脳血流量という心身の反応を測定し、その測定値を利用して評価を行う。そのため、対象の物性等のみを測定してその測定値に基づき対象の評価を行う従来評価方法では難しかった人の感覚までを適切に推定、評価することができる。また、官能評価等では、被験者が対象を使用している時と回答をする時との間に時間のギャップがあるため、対象に対する印象が変化して評価値が修正されてしまう可能性があるが、本形態による方法では、対象の使用時のリアルタイムでの心身の反応(脳の反応)を測定できるので、被験者の無意識的な反応をも含む反応に基づく忠実なデータを取得することができる。
また、本形態の方法における大脳血流量の変化の測定は、被験者が対象を使用している時に行うが、その際、被験者に、対象に対する支払意志額及び対象の使用感を意識又は思考させるようにする。別言すれば、被験者に、対象に対する支払意志額及び対象の使用感の両方に注意を向けさせるようにする。
人が実際の日常生活で何らかの対象を使用する場合、対象の使用中に意識的に又は無意識的に様々なことを思考すると考えられる。そのような思考内容のうち主なものの1つは、対象の使用により感じられる感覚であると考えられる。また、主な思考内容の別の1つは、対象の値段やコストパフォーマンス、対象を使い続けたいか若しくは購入してもよいかといった対象の価値付けであると考えられる。
よって、対象の使用感を評価するために、大脳血流量の変化を測定する際に、対象の使用感のみに注意を向けさせるようにしても、被験者は、対象の使用中には、対象の価格、特に支払意志額について意識的に又は無意識に思考する傾向があると考えられる。そして、そのような思考の傾向には個人差がある。すなわち、使用感についての思考に伴う支払意志額についての思考の強さには、被験者によるばらつきがあると考えられる。そのため、求められる相関関係が、詳細な分析を行うためには十分でなかったり、相関関係を求めるために多くの被験者のデータが必要となったりする場合がある。これに対し、本形態によれば、対象の使用感及び対象に対する支払意志額を意識させ、被験者の思考状態をできるだけ同じにして大脳血流量の変化の測定を行うことができる。よって、本形態によれば、より客観的なデータを取得することができ、対象の使用感を適切に評価できる。
同様に、支払意志額を評価するために、大脳血流量の変化を測定する際に、被験者に支払意志額のみに注意を向けるようにしたとしても、被験者は、対象の使用中には使用感について意識的に又は無意識に思考する傾向があると考えられる。そして、そのような思考の傾向には個人差がある。すなわち、支払意志額についての思考に伴う使用感についての思考の強さには、被験者によるばらつきがあると考えられる。そのため、求められる相関関係が、詳細な分析を行うためには十分でなかったり、相関関係を求めるために多くの被験者のデータが必要となったりする場合がある。これに対し、本形態によれば、対象の使用感及び対象に対する支払意志額を意識させて、被験者の思考状態をできるだけ同じにして大脳血流量の変化の測定を行うことができる。よって、本形態によれば、より客観的なデータを取得することができ、対象に対する支払意志額を適切に評価できる。
対象に対する支払意志額及び対象の使用感を被験者に意識又は思考させるには、例えば、被験者に、支払意志額及び使用感を考えさせる課題を被験者に提供する。より具体的には、対象の使用前に、対象に対する支払意志額に関する質問(第1質問と呼ぶ場合がある)、及び対象の使用感に関する質問(第2質問と呼ぶ場合がある)に回答することを、被験者に予め認識させるようにする。そして、対象を使用させた後、被験者に実際に第1質問及び第2質問を実際に問い、実際に回答させることが好ましい。第1質問及び第2質問は、対象を使用している間に(対象の使用中に)問うこともできるが、質問の文字を読むことや、文章や文字自体に被験者の注意が過度に向けられる場合があり、対象を使用している間の、対象に対する脳の反応を適切に測定できない場合があるため、対象を使用させた後に質問をすることが好ましい。
第1質問は、対象に対する支払意志額を判定してもらうための質問で、例えば「この対象に払ってもよい最大金額はいくらですか?」等の問いとすることができる。第1質問への回答は、任意の金額を回答させる方式であっても、予め設定された金額カテゴリーから選択させる方式であってもよい。
また、第2質問は、対象の使用感を判定してもうらための質問で、使用感が「やわらかさ」であれば、例えば「この対象のやわらかさを評価して下さい」等といった問いであってよい。使用感は、上述のように、被験者が対象を使用することで被験者に生じる感覚であるので、被験者に予め最適な使用感(最適使用感と呼ぶ)を見出しておいてもらい、評価すべき対象の使用感が、最適使用感からどの程度離れているかで回答してもらうことができる。例えば、最適使用感を基準としたスケールの範囲を決めておき、その範囲内で、使用感を回答させることができる。
上記の第1質問及び第2質問は、例えば指示部16に同時に表示して回答させてもよいし、順に表示して順次回答させてもよい。後者の場合、質問の順序は問わない。
測定において血流量の変化が測定される大脳の部位は、好ましくは前頭葉及び側頭葉における少なくとも一部の領域、より好ましくは前頭葉及び側頭葉の前方部分における少なくとも一部の領域、さらに好ましくは上前頭回(SFG)、特に右上前頭回、中前頭回(MFG)、下前頭回(IFG)、側頭回(TG)のうち少なくとも1つの領域とすることができる。上前頭回(SFG)及び中前頭回(MFG)においては、背外側前頭前野(DLPFC、ブロードマンエリア9及び46)、特に右背外側前頭前野の領域が好ましい。血流量の変化が測定される部位は1か所であってもよいし、複数の部位の血流量の変化を測定し、該当する脳部位のエリアとしてそのデータを解析して、評価にて、使用感及び/又は支払意志額を評価してもよい。
なお、特に、対象の使用感を評価する場合には、血流量の変化が測定される大脳の部位は、下前頭回(IFG)、特に右下前頭回、中前頭回(MFG)、上前頭回(SFG)、及び側頭回(TG)のうち少なくとも1つ以上の領域の部位であってよい。また、対象に対する支払意志額を評価する場合には、血流量の変化が測定される大脳の部位は、中前頭回、好ましくは背外側前頭前野(DLPFC)、より好ましくは右背外側前頭前野における部位であってよい。よって、脳血流量の変化として、中前頭回、好ましくは背外側前頭前野(DLPFC)、より好ましくは右背外側前頭前野における脳賦活量を測定することで、そのような測定値に基づき、対象の使用感及び対象に対する支払意志額の両方の評価が可能となる。
なお、プローブユニット12の各チャネル(図2A)の、大脳の部位への対応付けには、国際10−20基準点を媒介としてプローブユニットのチャネルをMNI(モントリオール神経学研究所)標準脳座標系にレジストレーションする、確率的レジストレーション法(Singh,et.al,"Spatial registration of multichannel multi-subject fNIRS data to MNI space without MRI",NeuroImage 2005,842-851等に記載)等を用いることができる。また、バルーンインフレーション法、凸包法等の公知の方法による投影を利用することもできる。
<評価>
本形態では、測定で測定された大脳血流量の変化に基づき、評価対象の使用感及び/又は評価対象に対する支払意志額(WTP)を評価することができる。評価は、図1に示す評価装置本体10で行うことができる。
評価装置本体10では、上述のように、プローブユニット12から取得された電気信号が変換され、大脳血流量の変化がヘモグロビン濃度の経時的変化として測定され、記録され得る。評価においては、この測定されたヘモグロビン濃度を、例えば、一般線形モデル(General Linear Model(GLM))を用いて、脳血流動態反応関数(Hemodynamic response function(HRF))によって解析することができる。より具体的には、血流動態反応関数(HRF)と矩形関数等との畳み込みにより得られたモデル化関数に基づいて、パラメータ(β値等)を推定することができ、これを脳の賦活量の指標として用いることができる。なお、測定された大脳血流量の変化の解析モデルは、上記のものに限定されない。
本発明者らは、被験者に対象の使用感及び対象に対する支払意志額を意識させて、被験者が対象を使用している時に測定した脳賦活量と、被験者が回答する対象の使用感との間に、有意な相関があることを見出した。また、被験者に対象の使用感及び対象に対する支払意志額を意識させて、被験者が対象を使用している時に測定した脳賦活量と、被験者が回答する対象に対する支払意志額との間に、有意な相関があることを見出した。このような相関に基づき、対象の使用感及び/又は対象に対する支払意志額を、比較したり推定したりすることができる。脳賦活量としては、対象の使用時のβ値を用いることが好ましい。
使用感を評価する場合、評価の際には、予め構築しておいたデータベースを用いて、対象の使用感を推定することができる。データベースは、例えば、複数の被験者に対して、所定の対象を用いて上述と同様の実験を行い、脳賦活量(β値)のデータと、対象の使用感の被験者の回答データを収集して、両者の相関関係を記録しておく。相関関係は、収集されたデータから相関係数を求め、その相関係数として記録しておいてもよい。
よって、特定の対象について被験者又は被験者群が感じる使用感を推定したい場合には、被験者又は被験者群に対し、データベースに予め記録されたデータを取得した際の条件と同じ条件で、大脳血流量の測定実験を行い、その結果を上記データベースと照合することによって、対象の使用感を推定することができる。
ここで、脳賦活量(β値)と対象の使用感との間の相関係数(例えば、スピアマンの相関係数等)を求める場合、支払意志額(WTP)の影響を取り除いた相関係数を求めることができる。その場合、相関係数は、偏相関係数又は半偏相関係数(部分相関係数又は片偏相関係数)とすることができる。これにより、脳賦活量と対象の使用感との相関をより正確に求めることができる。
条件(対象の構成、販売方法等)を変更して対象の使用感が向上したとしても、その条件が使用感の評価向上に直接的な影響を与えている場合もあれば、変更した条件の影響によって別の要因が変更され、その別の要因が使用感の評価に大きな影響を与えていることもある。そのため、その別の要因の影響を把握すること、或いはその別の要因の影響を除いて使用感の評価を行うことは、変更する条件と使用感との関係を分析する上で重要となる。ここで、対象が、使用者により購入される製品であれば、上記の別の要因としては、対象の価格に関する使用者の印象又は判断となる場合が多い。そして、そのような価格に関する使用者の印象又は判断は、支払意志額として適切に表すことができると考えられる。よって、脳の反応から支払意志額に影響された部分を除いて、脳賦活量と使用感との相関関係を調べることで、商品開発やマーケティングに役立てることができる。
また、使用感の評価の場合と同様に、支払意志額を評価する場合にも、評価の際には、予め構築しておいたデータベースを用いて、対象に対する支払意志額を推定することもできる。データベースは、例えば、複数の被験者に対して、所定の対象を用いて上述と同様の実験を行い、脳賦活量(β値)のデータと、対象に対する支払意志額の被験者の回答データとを収集して、両者の相関関係を記録しておく。相関関係は、収集されたデータから相関係数を求め、その相関係数として記録しておいてもよい。
よって、特定の対象に対する被験者又は被験者群が考える支払意志額を推定したい場合には、被験者又は被験者群に対し、データベースに予め記録されたデータを取得した際の条件と同じ条件で、大脳血流量の測定実験を行い、その結果を上記データベースと照合することによって、対象に対する支払意志額を推定することができる。
脳賦活量(β値)と対象に対する支払意志額との間の相関係数を求める場合にも、使用感の評価の場合と同様に、使用感の影響を取り除いた相関係数、例えば、偏相関係数又は半偏相関係数(部分相関係数)を求めることができる。これにより、脳賦活量と対象に対する支払意志額との相関をより正確に求めることができる。
条件(対象の構成、販売方法等)を変更して対象に対する支払意志額が向上したとしても、その条件が支払意志額の評価向上に直接的な影響を与えている場合もあれば、変更した条件の影響によって別の要因が変更され、その別の要因が使用感の評価に大きな影響を与えていることもある。そのため、その別の要因の影響を把握すること、或いはその別の要因の影響を除いて支払意志額の評価を行うことは、変更する条件と支払意志額との関係を分析する上で重要となる。対象が使用者によって実際に使用されるものであれば、上記の別の要因としては、使用者が感じる対象の使用感となる場合が多い。よって、脳の反応から使用感に影響された部分を除いて、脳賦活量と支払意志額との相関関係を調べることで、商品開発やマーケティングに役立てることができる。
図3に、本形態による方法の一例として、データベースを利用した場合の、対象の使用感及び対称に対する支払意志額の評価のフロー図を示す。
なお、本形態により使用感及び支払意志額の両方を適切に評価することができれば、両評価を合せて、製品開発やマーケティング等に役立てることができる。
(実験例)
年齢25〜35歳の30名の女性被験者に、色(モデレートレッド)は同じだが硬さが異なる6種の口紅L1〜L6を実際に使用してもらい、その際の大脳血流量の変化を測定した。L1〜L6口紅の硬さは、硬度計測器(レオメータ)(不動工業社製)の測定によると、針入硬度5〜134の範囲のものであった。また、被験者の口紅の使用頻度は週に5回以上であり、被験者は、口紅の日常的な又はほぼ日常的な使用者であった。
大脳血流量の測定は、光トポグラフィ装置(株式会社日立製作所製「ETG−4000」)を用いて行った。まず、被験者の頭部に、検出プローブ及び照射プローブが交互に配置されたプローブユニットを装着した(図1)。上記光トポグラフィ装置において、検出プローブ及び照射プローブは、3行×11列で計33個配置され、検出プローブと照射プローブとの間に配置されたチャネル(計測点)の数は52であった(図)。上下左右に隣り合う検出プローブと照射プローブとの間隔は3cmであった。プローブユニットは、最下行の端から6番目の検出プローブ又は照射プローブ(チャネル5とチャネル6との間の検出プローブ又は照射プローブ)の位置がFpzとほぼ一致し、最下行の検出プローブ及び照射プローブ並びにチャネルが、T3−Fpz−T4を結ぶ線、すなわち上下方向の中央が水平方向の基準線(Horizontal reference curve)Hにほぼ一致するように、被験者の頭部に装着した(図2A)。なお、上記のFpz、T3、及びT4は、国際10−20法による頭部における位置である。
そして、図4に示すようなタイムスケジュールに従って、被験者には、各施行で1つの口紅を使用してもらった。各施行で使用される口紅は、口紅L1〜L6からランダムに被験者に渡した。また、被験者への指示は、被験者の目の前に置かれたディスプレイ(図1)を通じて行った。
本例では、各被験者に対し、図4に示すようなセッションの測定を行った。図4に示すように、1ブロックは、安静期、除去期、及び連続した2つの試行(第1試行及び第2試行)を含んでいた。安静期では、被験者は30秒間安静にして座り、除去期では、化粧料除去用エマルジョンを含浸させたコットンを用いて唇に付いている口紅又は汚れを拭き取った。
第1試行は、被験者に1つの口紅を手渡した後、口紅を唇の左右どちらの側に塗るかについての指示(指示1)をディスプレイに表示し、被験者が指示を読み、口紅を塗る準備ができたところでキーボードのキーを押すことで開始された。ディスプレイにはホワイトブランクの画面を映し、12秒間ベースライン測定を行った。その後、被験者は口紅を、唇の左右のうち指示のあった側に塗り、30秒後に塗布を終了する指示を被験者に与えた。そして、準備が出来たらキーボードのエンターキーを押し、口紅に対する「WTP」、及び口紅の使用感として「やわらかさ」を考えるよう指示(指示2)をディスプレイに表示した。被験者がWTPを考えている間、ディスプレイにはホワイトブランクの画面を映した。5秒後、被験者は、考えた「WTP」の値をキーボードにより入力するとともに、「やわらかさ」を無段階スケールで入力し、エンターキーを押した。このように、1試行において被験者は、1つの口紅を唇の左右のうち一方側に塗り、その口紅について「WTP」及び「やわらかさ」に関して回答した。第2試行では、別の口紅を、唇の左右のうち、第1試行で塗られなかった側に塗布し、同様に「WTP」及び「やわらかさ」を思考し、入力した。
本例での画面又は音声による指示は、Psychology Software Tools社のE−Prime(登録商標)を用いて行った。
上述のような、それぞれ2回の試行を含むブロックを3回行うことで、L1〜L6の6種の口紅の全てについて、脳血流量の測定を行った。なお、最初のセッションの前には、被験者が測定に馴れるよう、口紅を実際に塗らずに1ブロックの練習を行った。
被験者には、「WTP」は、「その口紅に払ってもよい金額」として考えてもらった。また、「やわらかさ」の判定においては、被験者に予め決めておいてもらった、ちょうどよいと感じられる「最適やわらかさ」を基準とし、この「最適やわらかさ」からどの程度の開きがあったかを−50〜+50のスケールで判定してもらった。
なお、実験前(図4のタイムスケジュールを開始する前)には、被験者には実験手順の説明をし、説明を理解していることを確認した。具体的には、被験者に、使用される口紅に対する「WTP」及び使用される口紅の「やわらかさ」を口紅の塗布後に問い、そのような問いに対して被験者が答えるという時間を設ける旨を予め伝えておき、了承してもらった。これにより、被験者が塗布を行っている間、口紅対するWTP及び口紅の「やわらかさ」を被験者に意識させることができる。
本実施例では、大脳血流量の測定は、セッションの開始から終了まで連続して行った。測定においては、大脳血流量の経時的な変化を、酸素化ヘモグロビン(Oxy−Hb)の濃度(単位:mM×mm、或いはa.u.)の信号として、チャネルごとに取得した。この際に使用された近赤外光の波長は695nm及び830nmであり、サンプリングレートは10Hzであった。
大脳血流量の変化の測定後、3Dデジタイザー(POLHEMUS社製「Patriot(商標)」)を用いて、位置計測を行った。3Dデジタイザーによって計測したデータから確率的レジストレーション法を用いて、計測点のデータをMNI(モントリオール神経学研究所)標準脳座標系に投影した。上記投影に基づき、各チャネルが脳のどの部位に対応するかが特定された。図5に、脳表面上で特定された各チャネルの位置を示す。
得られたOxy−Hb濃度の時系列データを、一般線形モデル(General Linear Model(GLM))を用いて、脳血流動態反応関数(Hemodynamic response function(HRF))により解析した。解析には、MATLAB2007b(Mathworks社製)を用いた。脳血流動態反応関数(HRF)は、式(1)のように表される。
Figure 2021043923
式(1)中、τは、最初のピーク遅延であり、本実施例では6秒とした。τは、第2のピーク遅延であり、16秒とした。Aは、第1ピークと第2ピークとの振幅比であり、6とした。
上式(1)の脳血流動態反応関数(HRF)h(τ,t)を、矩形関数N(τ,t)に、式(2)に示すように畳み込み積分して、モデル関数f(τ,t)を作成した。
Figure 2021043923
得られたモデル関数f(τ,t)を用いて、一般線形モデル(General Linear Model(GLM))による解析を行った。解析においては、モデル関数f(τ,t)、その一次導関数及び二次導関数、並びに定数項をリグレッサーとした。そして、Oxy−Hb濃度の信号を上記リグレッサーに回帰させることによって、被験者ごとに、各チャネルについて、塗布時、「WTP」及び「やわらかさ」の思考時、及び「WTP」及び「やわらかさ」の入力時のβ値をそれぞれ算出した。
β値は、口紅L1〜L6に対してそれぞれ算出した。算出されたβ値のうち、口紅L1〜L6にそれぞれ対応する塗布時のβ値であるβA1〜βA6と、口紅L1〜L6それぞれについて入力された「WTP」であるW〜Wとに基づき、被験者ごとに、スピアマン(Spearman)の順位相関係数rβWを計算した。さらに、上記βA1〜βA6と、口紅L1〜L6それぞれについて選択入力された「やわらかさ」S〜Sとに基づき、同様に被験者ごとにrSβ、また「WTP」W〜Wと「やわらかさ」S〜Sとに基づき、被験者ごとにrSWを計算した。
(例1)
各チャネルについて、被験者ごとに得られた相関係数rβW、rSβ、SWに基づき、次式に従い、半偏相関係数rSβ|Wを求めた。この半偏相関係数rSβ|Wは、「やわらかさ」Sと、β(塗布時の脳賦活量)からW(WTP)の影響を除いた成分との相関係数といえる。
Figure 2021043923
得られた半偏相関係数rSβ|Wは、式(4)に示すようなフィッシャーのZ変換(Fischer's z transformation)を用いてZ値に変換した。被験者ごとに求められたZ値より、各チャネルについて、全被験者のZ値の算術平均を求め、ゼロに対する1標本t検定を行った。
Figure 2021043923
結果を、図6、図7、及び表1に示す。図6は、上記検定の各チャネルの結果を脳画像上に表示した図である。さらに図7は、図6に示されたチャネルのうち、特に有意な相関があったチャネルを残して図示した図である。また、特に有意な相関があったチャネルのデータの詳細を、表1に示す。表1には、上記チャネルのそれぞれにおける、半偏相関係数rSβ|Wの被験者全員での平均、Z値の被験者全員での平均、標準偏差、標準誤差、p値、及びt値、及びdf(自由度)を示す。
Figure 2021043923
図6、図7、及び表1より、「やわらかさ」判定値(S)と、塗布時の脳賦活量(β)からW(WTP)の影響を除いた成分との間では、チャネル4、7、8、11、14、18、19、21、39において、個人内での有意な相関があることが分かった。
図6及び図7より、また必要に応じて図5を参照すると、チャネル4、7、8は、下前頭回(IFG)、特に右下前頭回に対応し、チャネル4、14、18、19は、中前頭回(MFG)に対応し、チャネル39は上前頭回(SFG)に対応し、チャネル11、21は側頭回(TG)に対応するチャネル(計測点)であることが分かる。また、チャネル18は、特に背外側前頭前野(DLPFC)に対応する。このことから、被験者が口紅を塗布している時の下前頭回、中前頭回、及び上前頭回、並びに側頭回の少なくとも一以上の領域の少なくとも一部における脳賦活量(β)であってWTPの判定値(W)の影響を除いた成分と、被験者が感じる「やわらかさ」判定値(S)との相関係数が、有意に正であることが分かった。よって、このような相関関係を用い、対象を使用している時に被験者の脳血流量の変化を測定することで、「やわらかさ」等の対象の使用感を適切に評価することができる。
(例2)
各チャネルについて、被験者ごとに得られた相関係数rβW、rSβ、SWに基づき、上式(3)と同様の式(5)に従い、半偏相関係数rWβ|Sを求めた。この半偏相関係数rWβ|Sは、「WTP」の入力値Wと、β(塗布時の脳賦活量)からS(「やわらかさ」の判定値)の影響を除いた成分との相関係数といえる。
Figure 2021043923
例1と同様に、得られた半偏相関係数rWβ|Sを、式(4)を用いてZ値に変換した。被験者ごとに求められたZ値より、各チャネルについて、全被験者のZ値の算術平均を求め、ゼロに対する1標本t検定を行った。
結果を、図8、図9、及び表1に示す。図8は、上記検定の各チャネルの結果を脳画像上に表示した図である。さらに図9は、図8に示されたチャネルのうち、特に有意な相関があったチャネルを残して図示した図である。また、特に有意な相関があったチャネルのデータの詳細を、表2に示す。表2には、上記チャネルのそれぞれにおける、半偏相関係数rSβ|Wの被験者全員での平均、Z値の被験者全員での平均、標準偏差、標準誤差、p値、及びt値、及びdf(自由度)を示す。
図8、図9、及び表2より、WTP値(W)と、塗布時の脳賦活量(β)から「やわらかさ」評価値(S)の影響を除いた成分との間では、チャネル18において、個人内での有意な相関があることが分かった。
Figure 2021043923
図8及び図9より、また必要に応じて図5を参照すると、チャネル18は、中前頭回、特に右背外側前頭前野(RH‐DLPFC)に対応するチャネル(計測点)であることが分かる。このことから、被験者が口紅を塗布している時の中前頭回、特に右背外側前頭前野(RH‐DLPFC)における脳賦活量(β)であって「やわらかさ」の判定値(S)の影響を除いた成分と、WTP値(W)との相関係数が、特に有意に正であることが分かった。よって、このような相関関係を用い、対象を使用している時に被験者の脳血流量の変化を測定することで、WTPを適切に評価することができる。
(例2a)
各チャネルについて、被験者ごとに得られた相関係数rβWを、式(4)を用いてZ値に変換した。この相関係数rβWは、S(「やわらかさ」の判定値)の影響を除かない場合の相関係数といえる。被験者ごとに求められたZ値より、各チャネルについて、全被験者のZ値の算術平均を求め、ゼロに対する1標本t検定を行った。
図10に、各チャネルの結果を脳画像上に表示した図を示す。上述の例2の結果(図8)を、本例2aの結果(図10)と比べると、S(「やわらかさ」の判定値)の影響を除いた例2(図8)では、チャネル18における相関が特に有意であったことが明確になっている。
なお、例1及び例2より、チャネル18においては、WTP値(W)と塗布時の脳賦活量(β)との間、及び被験者が感じる「やわらかさ」判定値(S)と塗布時の脳賦活量(β)との間の両方で、個人内での有意な相関が得られることが分かった。よって、チャネル18における脳賦活量データを用いることで、すなわち、中前頭回、特に右背外側前頭前野(RH‐DLPFC)における測定データを用いることで、対象の使用感及び対象に対する支払意志額の両方の評価を行うことができる。図11に、一被験者についてのチャネル18における「やわらかさ」の判定値Sとβとの、支払意志額の影響を除いた関係をグラフで示す。また、図12に、図11のデータを得た同じ被験者についてのチャネル18におけるWTPとβとの、「やわらかさ」判定値の影響を除いた関係をグラフで示す。図11及び図12のいずれにおいても相関が示されている。
10 評価装置本体
12 プローブユニット
14 表示部
16 指示部
18 入力部
100 評価装置
121 検出プローブ
122 照射プローブ
125 チャネル(計測点)
H 水平方向基準線
M 鏡
SB 被験者

Claims (13)

  1. 対象に対する支払意志額及び前記対象の使用感を意識させながら、前記対象を使用している時の被験者の大脳血流量の変化を測定し、
    前記大脳血流量の変化に基づいて、前記対象の使用感及び/又は対象に対する支払意志額を評価する、対象の評価方法。
  2. 前記対象の使用前に、前記対象に対する支払意志額に関する第1質問及び前記対象の使用感に関する第2質問に回答することを前記被験者に認識させる、請求項1に記載の対象の評価方法。
  3. 前記使用感は触感を含む、請求項1又は2に記載の対象の評価方法。
  4. 前記測定された大脳血流量の変化を、大脳血流量の変化と使用感との相関に関する情報が格納されたデータベースと照合することによって、
    前記対象の使用感及び/又は前記対象に対する支払意志額を推定する、請求項1から3のいずれか一項に記載の対象の評価方法。
  5. 前記大脳血流量の変化の測定は、近赤外線分光法(NIRS)を用いて行う、請求項1から4のいずれか一項に記載の対象の評価方法。
  6. 前記対象は化粧料である、請求項1から5のいずれか一項に記載の対象の評価方法。
  7. 前記大脳血流量の変化は、前頭葉及び側頭葉における少なくとも一部の領域における脳血流の変化である、請求項1から4のいずれか一項に記載の対象の評価方法。
  8. 前記大脳血流量の変化に基づき、前記対象の使用感を評価する、請求項1から5のいずれか一項に記載の対象の評価方法。
  9. 前記大脳血流量の変化は、下前頭回(IFG)、中前頭回(MFG)、及び前頭極の1以上における血流量の変化である、請求項8に記載の対象の評価方法。
  10. 前記大脳血流量の変化と前記使用感との相関は、前記支払意志額の影響を取り除いた半偏相関又は偏相関である、請求項8又は9に記載の対象の評価方法。
  11. 前記大脳血流量の変化に基づき、対象に対する支払意志額を評価する、請求項1から7のいずれか一項に記載の対象の評価方法。
  12. 前記大脳血流量の変化は、中前頭回(MFG)における血流量の変化であり、
    前記大脳血流量の変化に基づき、前記対象に対する支払意志額を評価する、請求項11に記載の対象の評価方法。
  13. 前記大脳血流量の変化と前記支払意志額との相関は、前記使用感の影響を取り除いた半偏相関又は偏相関である、請求項11又は12に記載の対象の評価方法。
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