JP7165187B2 - 化粧品を評価する方法、及び化粧品を評価する装置 - Google Patents

化粧品を評価する方法、及び化粧品を評価する装置 Download PDF

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Description

本発明は、化粧品を評価する方法、及び化粧品を評価する装置に関する。
物やサービスを評価する上での重要な指標として、支払意志額が知られている。支払意志額とは、物やサービスに対して消費者が支払ってもよいと考える額を意味し、物やサービスに対する消費者の価値付けを具体化したものであり、製品開発やマーケティング等に利用されている。
近年、支払意志額の決定と脳の活動との関係性についての研究が進められている。例えば、非特許文献1には、空腹の状況においた被験者に様々な食品の画像を提示して値付けをさせた時の脳の活動(脳血流動態)を、機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)を用いてスキャンすることによって、脳の活動と支払意志額との相関を調べた研究が記載されている。
Plassmann,et.al,"Orbitofrontal Cortex Encodes Willingness to Pay in Everyday Economic Transactions",The Journal of Neuroscience, 2007,27(37):9984-9988
非特許文献1では、食品のカラー画像を被験者に見せて食品の値付けをさせ、脳活動を測定している。しかしながら、このような手法では、被験者が得る主たる情報は視覚的なものに限られるため、脳活動と支払意志額との相関が適切に得られない可能性がある。
上記の点に鑑みて、本発明の一形態は、物又はサービスに対する支払意志額をより適切に評価できる、物又はサービスを評価する方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の一形態による化粧品を評価する方法は、化粧品を被験者自身に塗布している時の当該被験者の大脳血流量の変化を、近赤外線分光法(NIRS)を用いて測定する測定ステップと、前記大脳血流量の変化に基づいて、予め求めておいた大脳血流量の変化と支払意志額との相関を用いて、前記化粧品に対する支払意志額を推定し、評価する評価ステップとを含む。
本発明の一形態によれば、物又はサービスに対する支払意志額をより適切に評価できる、物又はサービスを評価する方法が提供される。
本発明の一形態による方法の実施を模式的に示す図である。 被験者の頭部に、光トポグラフィ装置のプローブを装着した状態を右側及び左側から見た図である。 被験者の頭部に、光トポグラフィ装置のプローブを装着した状態を示す模式図である。 本発明の一形態による方法の具体例を示すフロー図である。 本発明の一形態による方法の具体例を示すフロー図である。 実施例1において被験者からデータを取得する際のスケジュールを示す図である。 光トポグラフィ装置のチャンネルと、脳の部位との対応を示す図である。 実施例1における全被験者のデータに基づく脳活動とWTPとの相関をチャンネルごとに示す図である。 実施例1におけるHF群の被験者のデータに基づく脳活動とWTPとの相関をチャンネルごとに示す図である。 実施例1における、HF群及びLF群の各群についての、チャンネル38及び39における脳活動とWTPとの相関を示す図である。 図9の結果を示すグラフである。 実施例2の実験スケジュールを示す図である。 実施例2における、チャンネル38についての各口紅の塗布時の脳活動を示す図である。 実施例3における、チャンネル39についての各口紅の塗布時の脳活動を示す図である。
<物又はサービスを評価する方法>
個人が物又はサービスを購入する際、多くの場合、その物又はサービスを実際に利用した経験を踏まえて購入するか否かを判断する。また、個人が物又はサービスを新たに購入する際にも、その物又はサービスを試しに利用した上で購入の判断をすることが多い。ここで、個人が物又はサービスを実際に利用している時には、視覚のみならず、触覚、嗅覚、味覚、聴覚、身体感覚等を通じて様々な情報を受容する。よって、個人が物又はサービスを購入する際の、その物又はサービスに対する支払意志額(willingness to pay(WTP)、最高支払意志額ともいう)の判定は、上記の様々な情報に基づき行われると考えられる。そうなると、被験者に単に物又はサービスの画像を見せて脳活動を測定する従来の方法では、脳活動(脳の活性度合い)と支払意志額との相関が適切に得られない可能性がある。
また、従来のようにfMRI等を用いる場合には、装置内で被験者が動くと脳の活動を正確に測定することができない。さらに、fMRI装置内の空間は狭いこと、強い磁場により装置内に金属を持ち込むことができない等の制約も多いので、多くの物又はサービスは、そもそも被験者に近付けることすら困難である。このため、従来の方法では、被験者が物やサービスを実際に利用している際の脳の活動を測定し、その脳活動と支払意志額との相関を求めることは困難である。
これに対し、本発明の一形態による物又はサービスを評価する方法では、物又はサービスの利用時の被験者の大脳血流量の変化を、近赤外線分光法(NIRS)を用いて測定する測定ステップと、前記大脳血流量の変化に基づいて、前記物又はサービスに対する支払意志額を評価する評価ステップとを含む。本形態では、NIRSを用いることにより、制約の多いfMRI等では不可能であった物又はサービスの実際の利用時の脳血流量の測定が可能となる。これにより、脳の活動と支払意志額との関係をより適切に求めることができ、物又はサービスに対する支払意志額をより適切に評価することができる。
また、従来、物又はサービスに対する支払意志額を評価する場合に、アンケート等により官能テストを行うこともある。しかし、通常の官能テストでは、物又はサービスの利用後に評価を行うので、物又はサービスの利用時と評価時とで時間間隔がある。そのため、その時間間隔の間に、使用した物又はサービスに対する印象が変化し、評価値が修正されてしまう可能性がある。これに対し、本形態による方法では、物又はサービスの利用時のリアルタイムでの心身の反応(脳の反応)を測定することができるので、心身の反応に基づく忠実なデータを取得することができる。
図1に、本形態の実施を模式的に示す。本形態による方法では、物又はサービスを評価する装置100を用いることができる。物又はサービスを評価する装置100は、評価装置本体10と、この評価装置本体10に接続されたプローブ12とを主たる構成として備えている。
<測定ステップ>
測定ステップでは、物又はサービスの利用時の被験者の大脳血流量の変化を、近赤外線分光法(NIRS)を用いて測定する。近赤外線分光法(NIRS)は、近赤外光を、光ファイバを通じて頭皮上から照射し、頭皮・頭蓋骨等を透過して大脳で反射してきた光を再び頭皮上で電気信号に変えて検出する方法である。大脳での反射光の強さは、血液中のヘモグロビンによる光の散乱度合いに依存するので、検出される電気信号から、ヘモグロビンの濃度の変化を求めることができる。一方、脳のある部位が活動すると、その部位での血流量、すなわちヘモグロビンの量が増大することが知られている。よって、NIRSを用いて、ヘモグロビン濃度の変化として大脳血流量の変化を測定することによって、脳の活動の強さを測定することができる。
近赤外光は、一般に600~1,800nm程度の波長の光を指すが、生体内を透過しやすいことから、本形態の方法における大脳血流量の変化の測定においては、600~950nm程度の波長の光を用いると好ましい。
測定ステップは、図1に示す評価装置本体10及びプローブ12を含む測定手段によって行うことができる。プローブ12は、図1に示すように、被験者Sの頭部に装着可能なキャップの形態であってよい。このため、プローブ12は着脱が容易であり、また大脳血流量の測定中に、被験者は身体を動かすこともできる。そのため、視覚のみならず、身体の動きに伴う身体感覚等を通して情報を受容している状況下での被験者の脳の血流量の変化を測定することができる。よって、本形態による方法は、その利用が身体の動きを伴う物又はサービスの評価に好適に用いることができる。また、NIRSを用いることで、fMRI計測のように装置に身体を拘束されて身体の自由が奪われることや、仰臥姿勢を強いられること、計測中の騒音に暴露されること、大掛かりな装置の内部に入ったりすること等の必要がないので、被験者のストレスも軽減される。そのため、脳活動の測定による適切なデータを取得することができる。
図2Aに、プローブ12を被験者の頭部に装着した状態を頭部の左側及び右側から見た模式図を示す。プローブ12には、複数の送光器121及び受光器122が交互に配置され、複数のチャンネル(計測点)125が送光器121と受光器122との間に形成されている。このプローブ12により、大脳表面の異なる複数の部位における血流量の変化を測定することができる。プローブ12の送光器121及び受光器122はそれぞれ光ファイバ13(図1)を介して、評価装置本体10に接続されている。
プローブ12で検出された電気信号は、光ファイバ13を介して評価装置本体10に送信される。評価装置本体10においては、電気信号が上述のヘモグロビン濃度(正確には濃度と光路長の積)に変換される。評価装置本体10では、このヘモグロビン濃度の経時的な変化を、脳血流量の変化として取得することができる。ヘモグロビンの濃度としては、酸素化ヘモグロビン(oxygenated hemoglobin、Oxy-Hbとも呼ぶ)の濃度、又は脱酸素化ヘモグロビン(deoxygenated hemoglobin、Deoxy-Hbとも呼ぶ)の濃度(いずれも単位はmM×mm(濃度×光路長)、或いは任意単位(a.u.))、或いはこれらの両方を利用することができる。このうち、酸素化ヘモグロビンの濃度は、脳活動状態を示す血流量変化の感度が高いことから、本形態による方法における測定においては、酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb)の濃度を利用して行うことが好ましい。
測定ステップで測定される大脳血流量の変化のデータは、被験者が物又はサービスを実際に利用している時間の少なくとも一部の時間にわたり測定されたデータであってよい。よって、評価の基礎となる測定データは、被験者が物又はサービスの利用を開始した時点から終了した時点までの所定の時間にわたって測定されたデータであってもよいし、上記所定の時間の一部の時間にわたる測定データとすることもできる。
物又はサービスを評価する装置100は、さらに、表示部14、指示部16、及び入力部18を備えていてよい。これらの表示部14、指示部16、及び入力部18はいずれも、評価装置本体10に接続されている。
表示部14は、電気信号の変換によって得られた大脳血流量の変化のデータを表示したり、そのデータに基づいて形成された画像(例えば、光トポグラフィ画像)を表示したりすることができる。
指示部16は、評価装置本体10に接続されており、物又はサービスの利用を開始又は終了させる指示や、後述のように物又はサービスに対する支払意志額を推定させる指示等を、被験者に提示することができる。指示部16は、例えば、図1に示すように試験者の前方に設置されている画面であってよく、この画面に画像(文字を含む)によって、被験者への指示を表示することができる。指示部16は、画像でなく、音声による指示を発することのできるスピーカー等であってもよいし、画像及び音声の両方による指示を提示できるものであってもよい。
また、入力部18は、後述のように、被験者が物又はサービスに対する支払意志額を入力することができる。また、支払意志額以外の情報、例えば被験者の物又はサービスに関する自由な感想や個人情報等を被験者自身で入力することもできる。
上述の評価装置本体10、プローブ12、及び表示部14を含むユニットとしては、株式会社日立製作所製の光トポグラフィ装置「ETGシリーズ」等や、株式会社島津製作所製の脳機能イメージング装置「LABNIRS」等を用いることができる。
本形態による方法において評価される「物」及び「サービス」は特に限定されない。例えば、評価される「物」は、化粧品、パーソナルケア製品(衛生日用品)等であってよい。化粧品の具体例としては、ファンデーション、口紅、チーク、アイシャドー、アイブロー、アイライナー、マスカラ等のメーキャップ化粧品、洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、美容液等の基礎化粧品、フレグランスや香料等が挙げられる。パーソナルケア製品の具体例としては、ハンドクリーム、ボディクリーム(ボディローション)、ネイル製品、ネイルケア製品、歯ブラシ、歯磨剤等の口腔ケア製品、メーキャップ用のブラシ(パウダーブラシ、チークブラシ等)、コットン、ティッシュやウェットティッシュ等の紙製品等が挙げられる。また、「物」は、スポンジ、パフ、ヘアブラシ、マスカラブラシ等の化粧器具、美顔器具、ツボ押し器具等の健康・美容器具等であってもよく、嗜好品、食料品、飲料品、鉛筆やペン等の筆記用具、開閉動作が必要なボトルや収容容器等であってもよい。また、評価される「サービス」の例としては、メーキャップ、エステティック、マッサージ、指圧、ボディケア、ハンドケア、フットケア、ネイルケア等が挙げられる。なお、本形態による方法において評価対象とされる「物又はサービス」(評価対象)は、具体的な実体のある商品を意味し、複数の異なる種類の物又はサービスを含む概念を意味するものではない。
本形態において、物の利用時とは、例えば、物が化粧品である場合には、化粧品を実際に塗布している時を指し、物が食料品である場合には、食料品を食べている時を指す。また、サービスの利用時とは、例えば、サービスがメーキャップである場合には、メーキャップ施術が施されている時を指す。このように、物又はサービスを実際に利用する場合には大抵、被験者が自ら身体を動かしたり、また外部の力によって被験者の身体の一部が動かされたりするが、本形態では、上述のようにNIRSを用いているため、被験者の自然な動きを阻害することなく、物又はサービスの実際の利用時の大脳血流量の変化を容易に、また安定して測定することができる。
測定ステップにおける物又はサービスの利用は、その物又はサービスが属する種が利用される一般的な方式で行われるか、又は被験者がその物又はサービスが属する種を通常利用するような方式で行われることが好ましい。例えば、化粧品は、一般的には鏡を見ながら使用されることが多いので、評価される物又はサービスが化粧品である場合には、被験者に鏡を見ながら化粧品を塗布させてもよい。また、被験者が化粧品を通常個室で使用する場合には、測定ステップにおいて、被験者に個室内で化粧品を塗布させてもよい。これにより、物又はサービスに対する心身の反応(脳の反応)のより正確なデータを取得することができ、物又はサービスの評価をより適切に行うことができる。
本形態による方法は、物を化粧品とし、物又はサービスの利用が、前記被験者が自らに前記化粧品を塗布することを含む場合に、好適に用いることができる。化粧品のような身体に塗布して使用する商品は、その使い心地(塗布している触感及び塗布されている触感を含む)が、支払意志額に比較的大きな影響を与える。よって、商品の画像を見て測定された脳活動の測定データではなく、実際に商品を利用している際の脳活動の測定データを用いる本形態の方法を用いることで、身体に塗布して使用する商品の評価をより適切に行うことができる。
本形態による方法は、対象物を1度利用するだけでその時の脳反応の違いにより、対象物の評価を適切に行うことができるため、日常生活の使用状態により近い状況で対象物の評価ができる。また、対象物の繰り返しの提示による反応の馴化も起こりにくく、より適切に評価ができる。従来の、商品の画像を見たり触れたりして測定される脳活動の測定は、その脳反応が極めて過小であるために、繰り返し画像を提示するか、繰り返し対象物を触れるかをして、その反応の測定データを加算して評価する。そのため、被験者の負担も大きく、繰り返し提示することにより、その刺激に対する反応が小さくなるという馴化の問題がある。
本形態の方法は、測定ステップの前、物又はサービスの利用後に、被験者が物又はサービスに対する支払意志額を推定するように被験者に指示することを含んでいてよい。この指示は、具体的には、利用した物又はサービスに対して「支払ってもよい金額」を問うことを、被験者に試験前に予め通知することであってよい。これにより、測定ステップにおいて、被験者には、物又はサービスに対する支払意志額を推定することを予め認識してもらう。被験者は、物又はサービスの利用中に、自らが支払意志額を決めることに意識を集中させることができるので、利用時のリアルタイムでの脳の反応(脳の活動の変化)をより適切に測定することができる。
上記の指示には、特定の観点の示唆を含めることもできる。例えば、評価対象が化粧品である場合、肌に塗布した際の「なめらかさ」に着目するよう被験者に示唆することができる。このように特定の観点を強調しながら支払意志額の推定を指示した後に測定ステップを行い、続いて後述の評価ステップを行う。そして、この測定及び評価を、同じ物又はサービスに対して、強調する観点を変更して行い、支払意志額の大小を判定することができる。この判定に基づき、商品の販売の際に、支払意志額が最も高いと評価された観点を強調した販売促進活動等のキャンペーンを展開することもできる。
測定ステップにおいて血流量の変化が測定される大脳の部位は、前頭葉や側頭葉の脳の前方部分及び頭頂葉や後頭葉の脳の後方部分の少なくとも一部を含む領域に位置する部位であることが好ましい。前頭眼窩野(OFC)、背外側前頭前野(DLPFC)、前頭極、上側頭回、下前頭弁蓋部、及び下前頭三角部等の脳の前頭及び側頭部分の少なくとも一部の領域に位置する部位であるとより好ましい。特に、背外側前頭前野(DLPFC)に含まれる部位の血流量の変化を測定することが好ましく、右側背外側前頭前野における血流量の変化を測定することがより好ましい。また、血流量の変化が測定される部位は1か所であってもよいし、複数の部位の血流量の変化を測定し、該当する脳部位のエリアとしてそのデータを解析して、評価ステップにて、支払意志額を評価してもよい。
なお、プローブ12の各チャンネルの、大脳の部位への対応付けには、国際10-20基準点を媒介としてプローブのチャンネルをMNI(モントリオール神経学研究所)標準脳座標系にレジストレーションする、確率的レジストレーション法(Singh,et.al,"Spatial registration of multichannel multi-subject fNIRS data to MNI space without MRI",NeuroImage 2005,842-851等に記載)等を用いることができる。また、バルーンインフレーション法、凸包法等の公知の方法による投影を利用することもできる。
測定ステップにおいては、被験者を、所定の基準に基づき、複数の被験者から選出することもできる。この所定の基準は、例えば、被験者の、物又はサービスが属する所定の種の利用の頻度、利用の経験、年齢、性別、職業、地域等であってよい。特に、被験者は、評価しようとする物又はサービスが属する所定の種の利用の頻度又は経験に基づき選出されると好ましい。ここで「評価しようとする物又はサービスが属する所定の種」とは、基本的な機能を同じくする物又はサービスが含まれる概念であってよい。例えば、評価される物が、具体的な1つのファンデーション商品であった場合、その商品が属する「ファンデーション」という商品種が、「評価しようとする物又はサービスが属する所定の種」に相当する。よって、例えば、特定のファンデーション商品を評価する場合には、評価に適した被験者を、一般にいう「ファンデーション」という商品種の利用の頻度又は経験に基づいて選出することができる。
さらに、本発明者らは、ある商品種の利用の頻度又は経験が多い被験者と、利用の頻度又は経験が少ない被験者とでは、その商品種の物を順次に評価する際に、大脳血流量の変化と支払意志額との相関の強さが異なることを見出した。よって、特定の物又はサービスを評価しようとする場合、その物又はサービスの属する商品種の利用の頻度又は経験の多い被験者を選出することが好ましい。例えば、特定のファンデーション商品を評価したい場合、ファンデーションという商品種の使用頻度が高い被験者を選出することが好ましい。これにより、脳活動の変化と支払意志額とのさらに適切な相関を取得でき、物又はサービスの評価をより適切に行うことができる。さらに、複数被験者の結果を統合して、より頑健な評価を行なうこともできる。
被験者を選出するための基準となる利用の頻度または経験は、評価しようとする物又はサービスによって異なり、特に限定されない。また、評価しようとする物又はサービスの利用者の一般的な利用の頻度または経験、物又はサービスを販売する上でターゲットとなる購入者層の、その物又はサービスの属する種の利用の頻度または経験によっても異なる。例えば、評価しようとする物又はサービスの利用者の一般的な利用の頻度または経験が毎日であれば、物又はサービスの属する商品種を毎日使うか否かを、被験者の選出基準とすることができる。また、評価しようとする物又はサービスの利用者の一般的な利用の頻度または経験が週1回であれば、物又はサービスの属する商品種を週1回以上利用するか否かを、被験者の選出基準とすることができる。例えば、評価対象が化粧品商品であれば、その化粧品が属する商品種を毎日使用するか否かを選出基準としてもよい。また、評価対象である化粧品商品を販売する上でターゲットとなる購入者層の、その物又はサービスの属する種の利用の頻度または経験が、1週間のうち6日以上、又は5日以上であれば、物又はサービスの属する商品種を1週間のうち6日以上、又は5日以上使用するか選出基準とすることができる。
本形態の方法では、物又はサービスの属する商品種の利用の頻度または経験の平均に関するデータを取得し、その平均を超える頻度で利用するかどうかを被験者の選出基準とすることもできる。例えば、本形態による方法を物又はサービスの価格設定に用いる場合、評価しようとする物又はサービスを販売する上でターゲットとなる購入者層の、その物又はサービスの属する商品種の利用の頻度または経験の平均値を求め、その平均値を超える頻度で物又はサービスの属する商品種を利用するかどうかを被験者の選出基準とすることができる。
上記の選出においては、複数の被験者の、評価しようとする物又はサービスが属する所定の種の利用の頻度または経験に関する情報を取得し、その情報に基づいて、複数の被験者を2以上の群に分けて、利用の頻度または経験の多い方の群の被験者を適合被験者として選出してもよい。例えば、評価対象が化粧品商品である場合、ランダムに採用した複数の被験者に、その化粧品(その化粧品商品が属する種)の利用の頻度または経験に関する情報を取得し、一定の利用の頻度または経験を超えるか否かの基準に基づき、複数の被験者を2つの群に分け、利用の頻度または経験の多い群の被験者を、適合した被験者として選出することができる。
<評価ステップ>
評価ステップでは、測定ステップで測定された大脳血流量の変化に基づき、評価対象である物又はサービスに対する支払意志額(WTP)を評価する。この評価は、図1に示す評価装置本体10で行うことができる。評価装置本体10は、プローブ12から取得された電気信号を解析する解析手段、物又はサービスを評価する評価手段、解析データや後述のデータベースのデータを記憶する記憶手段等を備えていてよい。
本形態では、物又はサービスに対する支払意志額を評価することにより、物又はサービスを評価する。支払意志額は、物又はサービスに対して支払ってもよいと考える最高金額である。そして、個人が物又はサービスを購入するかしないかは、その物又はサービスの価格が、その個人が考える支払意志額を超えるか超えないかに基づき判断される。支払意志額は、単なる価格評価と異なり、個人が実際に買いたいという気持ちが価格に置き換えられた、価値づけであり、その個人自身の嗜好、体験、経済的状況等にも依存する、物又はサービスの総合的な金銭的評価の基準といえる。よって、支払意志額は、物又はサービスをより的確に評価することのできる指標であり、商品開発の方向性の決定や商品価格設定等に有用である。
測定ステップでは、上述のように、プローブ12から取得された電気信号が評価装置本体10にて変換され、大脳血流量の変化がヘモグロビン濃度の経時的変化として測定され得る。評価ステップでは、この測定されたヘモグロビン濃度を、例えば、一般線形モデル(General Linear Model(GLM))を用いて、脳血流動態反応関数(Hemodynamic response function(HRF))によって解析することができる。また、測定された大脳血流量の変化は、別の解析モデルを用いて解析してもよい。
評価ステップにおける支払意志額の評価は、同種であるが異なる2以上の物又はサービスに対する支払意志額の大小を判定することであってよい。例えば、測定ステップを、2以上の物又はサービス(対象品)について行い、2以上の物又はサービスのそれぞれについて大脳血流量の変化のデータを取得し、この2以上の物又はサービスについてのデータを比較して、大脳血流量の変化が大きい方の物又はサービスに対する支払意志額が大きいと判定することができる。図3に、評価ステップにおいて、2以上の物又はサービスに対する支払意志額の大小の判定を行う形態のフロー図を示す。
また、評価ステップでは、予め構築しておいたデータベースを用いて、支払意志額が未知のである特定の物又はサービス(対象品)に対する支払意志額を推定することもできる。すなわち、評価ステップにおいて、測定ステップで測定された大脳血流量の変化を、大脳血流量の変化と支払意志額との相関に関する情報が格納されたデータベースと照合することによって、物又はサービスに対する支払意志額を推定することができる。図4に、評価ステップにおいて、特定の物又はサービスに対する支払意志額を推定する形態のフロー図を示す。
評価ステップでデータベースを用いる場合、データベースは、物又はサービスが属する所定の種についての、被験者の大脳血流量の変化と支払意志額との関係に関するデータを含むものであってよい。より具体的には、同種の2以上の物又はサービスについてのデータを含むものであってよい。このようなデータベースを構築するには、物又はサービスの利用時の大脳血流量の変化を、近赤外線分光法(NIRS)を用いてそれぞれ測定し、被験者に物又はサービスについての支払意志額を推定させ、上記測定及び推定を、上記所定の種に属する2以上の物又はサービスについて行い、2以上の物又はサービスについてそれぞれ測定された大脳血流量の変化と支払意志額との相関に関するデータを得る。例えば被験者1人につき2以上の異なるファンデーション商品について、被験者の大脳血流の変化を測定し、支払意志額の推定をさせ、その相関を求めておくことで、ファンデーションという商品種についてのデータベースを構築しておけば、未知のファンデーション商品の支払意志額の推定に用いることができる。データベースを構築する場合の大脳血流の変化の測定は、上述の測定ステップと同様に行うことができる。
また、測定ステップの前、物又はサービスの利用後に、被験者が物又はサービスに対する支払意志額を推定するように被験者に指示し、被験者に支払意志額を推定することを認識させることが好ましい。この指示は、評価装置本体10に接続された指示部16(図1)によって行うことができる。
データベースを構築するために必要な、同種の物又はサービスの数は2以上であればよいが、3以上、5以上、6以上、又は10以上であると好ましい。
さらに、上記のような2以上の物又はサービスについてそれぞれ測定された大脳血流量の変化と支払意志額との関係に関するデータを、複数の被験者について取得しておいてもよい。この場合、複数の被験者の数は、3人以上、5人以上、10人以上、15人以上、30人以上、又は50人以上とすることができる。
また、データベースの構築においては、複数の被験者の、所定の種の利用の頻度または経験に関する情報を取得し、複数の被験者から、物又はサービスが属する所定の種の利用の頻度または経験に基づき、適合した被験者を選出することができる。そして、適合した被験者のデータを用いてデータベースを構築してもよい。上述のように、物又はサービスの所定の種の利用の頻度又は経験が多い被験者では、利用の頻度又は経験の少ない被験者に比べ、複数種の物又はサービスを順次に評価する際に、大脳血流量の変化と支払意志額との間でより強い相関がある。よって、評価しようとする物又はサービスの属する種の利用の頻度または経験が多い被験者を選出することによって、大脳血流量の変化と支払意志額との相関についてのより適切なデータを得ることができ、これにより、適切なデータベースを構築することができる。
<物又はサービスを評価する装置>
本発明の一形態は、物又はサービスの利用時の被験者の大脳血流量の変化を、近赤外線分光法(NIRS)を用いて測定する測定手段と、前記大脳血流量の変化に基づいて、前記物又はサービスについての支払意志額を評価する評価手段とを含む、物又はサービスを評価する装置であってよい。本形態の装置を使用することによって、物又はサービスに対する支払意志額をより適切に評価でき、物又はサービスを評価することができる。
(実施例1)
年齢20~22歳の30名の女性の被験者に、6種の異なるファンデーションF1~F6を実際に使用してもらい、その際の大脳血流量の変化を測定した。被験者30名には、測定開始前にファンデーションの使用頻度を尋ね、使用頻度が週7日である、すなわち毎日使用している被験者の群(HF群)と、使用頻度が週6日以下である被験者の群(LF群)とに群分けした。各群に属する被験者の数はそれぞれ15名であった。
大脳血流量の測定は、光トポグラフィ装置(株式会社日立製作所製「ETG-4000」)を用いて行った。まず、被験者の頭部に、送光器21及び受光器22が交互に配置されたプローブを装着した(図2A及び図2B)。送光器21及び受光器22は、3行×11列、計33個配置されている。また、上記光トポグラフィ装置において、送光器21と受光器22との間に配置されたチャンネル(計測点)の数は52であった。上下に隣り合う送光器21と受光器22とは3cm間隔で配置されている。プローブは、最下行の端から6番目の送光器又は受光器の位置(チャンネル5とチャンネル6との間の位置)がFpzとほぼ一致し、且つ最下行のチャンネル(或いは、送光器又は受光器)が、T3-Fpz-T4を結ぶ線、すなわち上下方向の中央が水平方向の基準線(Horizontal reference curve)Hにほぼ一致するように、被験者の頭部に装着した(図2A及び図2B)。なお、上記Fpz、T3、及びT4は、国際10-20法による頭部における位置である。
次に、図5に示すようなタイムスケジュールに従って、被験者にファンデーションF1~F6を、1つのファンデーションにつき0.03g程スポンジにとって使用してもらい、さらに各ファンデーションに対する支払意志額(WTP)を推定してもらった。安静、ファンデーションの除去(メーク落とし、洗顔、ふき取り等を含む)後、2つのタスクを含む1ブロックの作業を行ってもらった。1つのタスクのスケジュールもサブブロックとして図5に示す。被験者は、各タスクにおいて、1つのファンデーションの塗布及びWTPの推定を行った。なお、各タスクにおいてファンデーションは片方の頬に塗布することとし、2つのタスクの終了ごとにファンデーションの除去を行った。また、被験者の前には鏡Mを設置し、被験者は鏡Mで塗布の状態を確認しながらファンデーションの塗布を行った。
図5に示すように、各タスクでは、測定開始から10秒間の安静後、1つのファンデーションを片方の頬に塗布する(30秒間)。そして、WTPの推定に関する指示を受けた後、WTPの推定を行い(5秒間)、その推定されたWTPを入力装置に入力する。指示は、スケジュールに従って、被験者の前に設置された指示画面に表示した。WTPは、被験者には「そのファンデーションに払ってもよい金額」として推定してもらった。
測定においては、大脳血流量の経時的な変化を、酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb)の濃度(単位:mM×mm、或いはa.u.)の信号として、チャンネルごとに取得した。この際に使用された近赤外光の波長は695nm及び830nmであり、サンプリングレートは10Hzであった。
大脳血流量の変化の測定後、3Dデジタイザー(POLHEMUS社製「Patriot(商標)」)を用いて、位置計測を行った。3Dデジタイザーによって計測したデータから確率的レジストレーション法を用いて、計測点のデータをMNI(モントリオール神経学研究所)標準脳座標系に投影した。上記投影に基づき、各チャンネルが脳のどの部位に対応するかが特定された。図6に、脳表面上で特定された各チャンネルの位置を示す。
得られたOxy-Hb濃度の時系列データを、一般線形モデル(General Linear Model(GLM))を用いて、脳血流動態反応関数(Hemodynamic response function(HRF))により解析した。解析には、MATLAB2007b(Mathworks社製)を用いた。脳血流動態反応関数(HRF)は、式(1)のように表される。
Figure 0007165187000001
式(1)中、τは、最初のピーク遅延であり、本実施例では6秒とした。τは、第2のピーク遅延であり、16秒とした。Aは、第1ピークと第2ピークとの振幅比であり、6とした。
上式(1)の脳血流動態反応関数(HRF)h(τ,t)を、矩形関数N(τ,t)に、式(2)に示すように畳み込み積分して、モデル関数f(τ,t)を作成した。
Figure 0007165187000002
得られたモデル関数f(τ,t)を用いて、一般線形モデル(General Linear Model(GLM))による解析を行った。解析においては、モデル関数f(τ,t)、その一次導関数及び二次導関数、並びに定数項をリグレッサーとした。そして、Oxy-Hb濃度の信号を上記リグレッサーに回帰させることによって、被験者ごとに、各チャンネルについて、塗布時、WTP評価時、及びWTP入力時のβ値をそれぞれ算出した。
β値は、ファンデーションF1~F6に対してそれぞれ算出した。算出されたβ値のうち、ファンデーションF1~F6にそれぞれ対応する塗布時のβ値であるβA1~βA6と、WTP~WTPとに基づき、被験者ごとに、スピアマン(Spearman)の順位相関係数rを計算した。
さらに、得られた被験者ごとの順位相関係数rを、式(3)に示すように、フィッシャーのZ変換(Fischer's z transformation)にてZ値に変換した。これにより、チャンネルn(n=1~52)について、被験者N(N=1~30)の順位相関係数rn,N、及びZ値Zn,Nを得た。なお、被験者1~30のうち、被験者1~15はHF群に属し、被験者16~30はLF群に属する。
Figure 0007165187000003
全被験者1~30の被験者ごとのZ値をチャンネルごとに平均し、チャンネルnについてのZ値の平均ZnavT(n=1~52)を得た。例えば、チャンネル1について、全被験者のZ値であるZ1,1、Z1,2、・・・、及びZ1,30の算術平均をとり、Z1avTを得た。チャンネル2については、Z2,1、Z2,2、・・・、及びZ2,30の算術平均をとり、Z2avTを得た。このようにして得られた、各チャンネルについての全被験者のZ値の平均Z1avT、Z2avT、・・・、Z52avTのそれぞれに基づき、各チャンネルについて0に対する1標本t検定を行った。また、各チャンネルについてのZ値の平均Z1avT、Z2avT、・・・、Z52avTを、式(4)に示すフィッシャーのZ変換にて相関係数rに変換し、r1avT、r2avT、・・・、r52avTを得た。
Figure 0007165187000004
図7に、全被験者についての、チャンネルnについてのZ値の平均ZnavT、tスコア、p値、及び相関係数rnavTを示す。図7より、チャンネル48、39、38、37、34、7において、塗布時の脳活動(β値)とWTPとの間の相関を被験者ごとに調べたところ、比較的強い相関があることが分かった。とりわけ、チャンネル39においては、強い有意な相関があることが分かった。
また、HF群及びLF群の各群のうち、利用の頻度または経験の多い方のHF群に属する被験者1~15について、被験者ごとのZ値をチャンネルごとに平均し、チャンネルnについてのZ値の平均ZnavH(n=1~52)を得た。例えば、チャンネル1について、HF群の被験者のZ値であるZ1,1、Z1,2、・・・、及びZ1,15の算術平均をとり、Z1avHを得た。チャンネル2については、Z2,1、Z2,2、・・・、及びZ2,15の算術平均をとり、Z2avHを得た。各チャンネルについての全被験者のZ値の平均Z1avH、Z2avH、・・・、Z52avHのそれぞれに基づき、各チャンネルについて0に対する1標本t検定を行った。また、各チャンネルにおけるZ値の平均値を、上式(4)にて相関係数rに変換し、r1avH、r2avH、・・・、r52avHを得た。
図8に、HF群の被験者についての、チャンネルごとのZ値の平均ZnavH、tスコア、p値、及び相関係数rnavHを示す。図8より、チャンネル39、7、21、30、34,48において、塗布時の脳活動(β値)とWTPとの間の相関を被験者ごとに調べたところ、比較的強い相関があることが分かった。特に、チャンネル39において、中程度に高く且つ有意に正の相関があることが分かった。HF群で見られた相関は、30名の全被験者に関して得られた結果(図7)に比べて、より強く有意であることも分かった。
また、チャンネル38及び39に着目し、被験者N(N=1~30)についての、チャンネル38についてのZ値Z38,Nと、チャンネル39についてのZ値Z39,Nとを平均し、チャンネル38及び39のZ値の平均Z38&39,Nを求めた。このようにして得られたZ38&39,Nのうち、HF群の被験者1~15のチャンネル38及び39のZ値の平均Z38&39,1、Z38&39,2、・・・、及びZ38&39,15の算術平均をとり、チャンネル38及び39についてのHF群の被験者の平均Z38&39avTを求めた。同様に、LF群の被験者16~30のチャンネル38及び39のZ値の平均Z38&39,16、Z38&39,17、・・・、及びZ38&39,30の算術平均をとり、チャンネル38及び39についてのLF群の被験者の平均Z38&39avLを求めた。Z38&39avHとZ38&39avLとの差を比較するため、2標本t検定を行った。なお、Z38&39avHとZ38&39avLは、上式(4)にてそれぞれ相関係数rに変換し、r38&39avH及びr38&39avLも得た。結果を図9、10に示す。
チャンネル38及び39は、図6に示すように、背外側前頭前野(DLPFC)に対応する計測点である。このことから、被験者がファンデーションを塗布している時の背外側前頭前野(DLPFC)における脳活動と支払意志額との相関係数が中程度に高く且つ有意に正であることが分かる。
(実施例2)
年齢25~35歳の25名の白人女性の被験者に、6種の異なる口紅L1~L6を実際に使用してもらい、その際の大脳血流量の変化を測定した。全被験者の口紅の使用頻度は、週に少なくとも5日であった。
口紅L1~L6は以下のようにして選定した。選定母体の口紅群として、3つの品質レベル(高品質、中品質、低品質)の口紅をそれぞれ6色、つまり合計18の口紅を準備した。そして、各被験者に、3つ品質レベルそれぞれについて、最も好む色の口紅と4番目に好む口紅との2つの口紅を選択させた。以下、前者を「好みの口紅」、後者を「あまり好みでない口紅」と呼ぶ場合がある。
大脳血流量の測定は、実施例1で用いた装置を用いて実施例1と同様にして行った。実験中、被験者は顎を顎用支持台の上に載せていたが、被験者の拘束はしなかった。また、被験者への指示は、被験者の目の前に置かれたディスプレイ(図1)を通じて行った。
本例では、被験者1人につき2セッションの測定を行った。図11に、本例のタイムスケジュールの概略を示す。図11に示すように、1ブロックは、安静期、除去期、及び連続した2つの試行(第1試行及び第2試行)を含んでいた。安静期では、被験者は30秒間安静にして座り、除去期では、化粧料除去用エマルジョンを含浸させたコットンを用いて唇に付いている口紅又は汚れを拭き取った。
第1試行は、被験者に1つの口紅を手渡した後、口紅を唇の左右どちらの側に塗るかについての指示(指示1)をディスプレイに表示し、被験者が指示を読み、口紅を塗る準備ができたところでキーボードのキーを押すことで開始された。ディスプレイにはホワイトブランクの画面を映し、10秒間ベースライン測定が行われた。その後、被験者は口紅を指示のあった側に塗り、30秒後に塗布を終了する指示を被験者に与えた。そして、準備が出来たらキーボードのエンターキーを押し、WTPを推定する指示(指示2)をディスプレイに表示した。WTPの推定中、ディスプレイにはホワイトブランクの画面を映した。5秒後、被験者は、推定したWTPの値をキーボードにより入力し、エンターキーを押した。このように、1試行において被験者は、1つの口紅を唇の一方側に塗り、その口紅についてのWTPを推定した。第2試行も別の口紅を用いて行ったが、口紅は、唇の、第1試行で塗られなかった側に塗った。
本例での画面又は音声による指示は、Psychology Software Tools社のE-Prime(登録商標)を用いて行った。
上述のような、それぞれ2回の試行を含むブロックを3回行うことで、L1~L6の6種の口紅の全てについて、脳血流量の測定を行った。なお、最初のセッションの前には、被験者が測定に馴れるよう、口紅を実際に塗らずに1ブロックの練習を行った。
実施例1と同様にデータ処理し、被験者ごと及びチャンネルごとに、各口紅L1~L6の塗布時、評価時等におけるβ値を求めた。このうち、塗布時のβ値(βA1~βA6)について、反復測定分散分析を用いて、被験者内要因として色(好みの色、及びあまり好みでない色)、品質(高、中、低)の各要因、並びに交互作用の有意性を、チャンネル38及び39のそれぞれについて検討した。チャンネル38について、色要因の主効果(F(1,24)=2.117,p=0.159,η=0.081)、品質要因の主効果(F(2,48)=0.180,p=0.836,η=0.007)、及び交互作用((F(2,48)=0.288,p=0.751,η=0.012)はいずれも有意と判定されなかった。同様に、チャンネル39についても、色要因の主効果(F(1,24)=0.404,p=0.531,η=0.017)、品質要因の主効果(F(2,48)=1.451,p=0.244,η=0.057)、及び交互作用(F(2,48)=2.144,p=0.128,η=0.082)はいずれも有意と判定されなかった。
このように、チャンネル38、39に対応する右背外側前頭前野(RH-DLPFC)(図6)における脳活動は、6つの口紅間で有意な差がなかったといえる。よって、口紅のように色の好み、品質等の要因は、本例に基づく物品の支払意志額評価には影響しないことが分かった。図12及び図13に、チャンネル38及び39のそれぞれについて、各口紅の塗布時の脳活動をβ値で示す。
また、得られたデータに基づき、実施例1と同様に、被験者ごと及びチャネルごとに、各口紅L1~L6の塗布時のβ値(βA1~βA6)と、支払意志額(WTP~WTP)との相関を、スピアマン(Spearman)の順位相関係数rとして求めた。さらに、得られた被験者ごとの順位相関係数rを、フィッシャーのZ変換(式(3))にてZ値に変換した。被験者ごとに求められたZ値より、チャンネルnについて全被験者のZ値の平均(ZnavT)を求め、ゼロに対する1標本t検定を行った。
チャンネル38についてのZ値の平均Z38avTは0.239(SEM=0.091)であり、ゼロに対して有意に高かった(t(24)=2.504,p=0.025,d=0.646)。よって、チャンネル38に対応する脳の部位を含む右側背外側前頭前野(DLPFC)の脳血流量は、WTPを評価するための指標として、とりわけ好適に利用することができる。一方、チャンネル39についてのZ値の平均Z39avTは0.043(0.093)であり、チャンネル38よりt値が小さかった(t(24)=0.456,p=0.651,d=0.092)。
なお、上記チャンネル以外にも、WTPとβ値との間に比較的高い相関が見られたチャンネルがあった。実施例1と同様に、チャンネルn(n=1~52)についてのZ値の平均Z1avT、Z2avT、・・・、Z52avTを、フィッシャーのZ変換(式(4))にて相関係数rに変換し、r1avT、r2avT、・・・、r52avTを得たとき、rnavTはチャンネル3、28、35、45、48、51では0.2以上であり、特にチャンネル35、48、51では0.3以上であった。また、チャンネル12、17においては、rnavTは-0.2以下となっていた。
このように、本形態による評価方法は、ファンデーション(実施例1)、口紅(実施例2)といった化粧品に好適に利用することができる。
本出願は、2018年3月16日に日本国特許庁に出願された特願2018-050023号に基づく優先権を主張するものであり、その全内容は参照をもってここに援用される。
10 評価装置本体
12 プローブ
14 表示部
16 指示部
18 入力部
100 評価装置
121 送光器
122 受光器
125 チャンネル(計測点)
H 水平方向基準線
M 鏡
S 被験者

Claims (7)

  1. 化粧品を被験者自身に塗布している時の当該被験者の大脳血流量の変化を、近赤外線分光法(NIRS)を用いて測定する測定ステップと、
    前記大脳血流量の変化に基づいて、予め求めておいた大脳血流量の変化と支払意志額との相関を用いて、前記化粧品に対する支払意志額を推定し、評価する評価ステップと
    を含む、化粧品を評価する方法。
  2. 前記測定ステップの前に、前記化粧品の塗布後に前記被験者が前記化粧品に対する支払意志額を推定するように前記被験者に指示することを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記大脳血流量の変化は、脳の前方部分における脳血流の変化である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記大脳血流量の変化は、背外側前頭前野(DLPFC)における脳血流量の変化である、請求項1に記載の方法。
  5. 前記測定ステップにおいて、
    前記化粧品が属する所定の種の利用の頻度又は経験に基づき、複数の被験者から前記被験者を選出する、請求項1に記載の方法。
  6. 前記評価ステップにおいて、
    前記測定ステップで測定された大脳血流量の変化を、大脳血流量の変化と支払推定額との前記相関に関する情報が格納されたデータベースと照合することによって、前記化粧品に対する支払意志額を推定する、請求項1に記載の方法。
  7. 化粧品を被験者自身に塗布している時の被験者の大脳血流量の変化を、近赤外線分光法(NIRS)を用いて測定する測定手段と、
    前記大脳血流量の変化に基づいて、予め求めておいた大脳血流量の変化と支払意志額との相関を用いて、前記化粧品についての支払意志額を推定し、評価する評価手段と
    を含む、化粧品を評価する装置。
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