JP2021041566A - 積層体の製造方法 - Google Patents

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八木 啓介
Keisuke Yagi
啓介 八木
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Abstract

【課題】耐アルカリ性および高温下における層間接着性に優れる積層体、耐アルカリ性および高温下における層間接着性に優れる積層体の製造方法の提供。【解決手段】テトラフルオロエチレンに基づく単位とプロピレンに基づく単位とを有する共重合体またはテトラフルオロエチレンに基づく単位とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位とを有する共重合体からなる含フッ素弾性重合体と架橋剤と架橋助剤とを含む第1の組成物の層と、非フッ素弾性重合体と架橋剤と、任意で架橋助剤とを含む第2の組成物の層の間に溶媒を塗布して未架橋積層体を製造し、次いで、第1の組成物および第2の組成物を架橋させて、第1の組成物の架橋物からなる第1の層と第2の組成物の架橋物からなる第2の層とを有する積層体を製造する方法であり、溶媒と含フッ素弾性重合体とのSP値の差の絶対値が0〜1.5である、積層体の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、積層体の製造方法に関する。
フッ素ゴムは、耐熱性、耐薬品性、耐油性、耐候性等に優れるため、汎用ゴムを適用できない過酷な環境下での用途に適している。
フッ素ゴムとしては、例えば、フッ化ビニリデンに基づく単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく単位とを有する共重合体の架橋物(FKM)、テトラフルオロエチレンに基づく単位とプロピレンに基づく単位とを有する共重合体の架橋物(FEPM)、テトラフルオロエチレンに基づく単位とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位とを有する共重合体の架橋物(FFKM)等が知られている。
一般にフッ素ゴムは高価であるため、フッ素ゴムと非フッ素ゴムとを積層した積層体が提案されている(特許文献1)。特許文献1は、フッ素ゴムとトリアジンチオールの第4級アンモニウム塩誘導体とからなる加硫性ゴム組成物と、フッ素ゴム以外の加硫性ゴム組成物とを加硫接着したゴム積層体を開示している。
特開平5−320453号公報
しかしながら、特許文献1の実施例に記載のゴム積層体は、FKMと非フッ素ゴムとのゴム積層体であり、耐アルカリ性が不十分である。そのため、特許文献1の実施例に記載のゴム積層体は、自動車用の燃料用ゴムホース等の高アルカリ下の使用環境での用途に適していない。
一般にFEPM、FFKM等のフッ素ゴムは、FKMに比べて、耐アルカリ性に優れる。ところが、本発明者は、耐アルカリ性を向上させるために、FEPMまたはFFKMと非フッ素ゴムとを積層した積層体は、各層の間の接着性、すなわち層間接着性が低下し、150℃程度の高温下で各層の界面ではく離が生じる場合があることを知見した。
本発明は、耐アルカリ性および高温下における層間接着性に優れる積層体、耐アルカリ性および高温下における層間接着性に優れる積層体の製造方法を提供する。
本発明は、下記の態様を有する。
[1] テトラフルオロエチレンに基づく単位とプロピレンに基づく単位とを有する共重合体またはテトラフルオロエチレンに基づく単位とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位とを有する共重合体からなる含フッ素弾性重合体と架橋剤と架橋助剤とを含む第1の組成物の層と、非フッ素弾性重合体と架橋剤と、任意で架橋助剤とを含む第2の組成物の層の間に溶媒を塗布して未架橋積層体を製造し、次いで、
前記第1の組成物および前記第2の組成物を架橋させて、前記第1の組成物の架橋物からなる第1の層と前記第2の組成物の架橋物からなる第2の層とを有する積層体を製造する方法であり、
前記溶媒と前記含フッ素弾性重合体とのSP値の差の絶対値が0〜1.5である、積層体の製造方法。
[2] 前記溶媒と前記非フッ素弾性重合体とのSP値の差の絶対値が0〜2.0である、[1]に記載の積層体の製造方法。
[3] 前記第2の組成物がさらに架橋助剤を含み、前記第1の組成物と第2の組成物とが共通の架橋助剤を含む、[1]または[2]に記載の積層体の製造方法。
[4] 前記第1の組成物に含まれる含フッ素弾性重合体のSP値と前記第2の組成物に含まれる非フッ素弾性重合体のSP値の差の絶対値が0〜2である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
[5] 前記第1の組成物の下記式3で計算される架橋度が5〜150であり、
前記第2の組成物の架橋度が5〜300である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
架橋度=MH−ML ・・・式3
ただし、MHは、架橋特性測定器(RPA)で架橋試験を行ったときの、トルクの最大値である。
[6] 前記第1の組成物および前記第2の組成物における架橋剤が、いずれも有機過酸化物である、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
本発明によれば、耐アルカリ性および高温下における層間接着性に優れる積層体が得られる。
本明細書における以下の用語の意味は以下の通りである。
「単量体」とは、重合性不飽和結合を有する化合物を意味する。重合性不飽和結合としては、炭素原子間の二重結合、三重結合が例示される。
「単量体に基づく単位」とは、単量体1分子が重合することで直接形成される原子団と、該原子団の一部を化学変換することで得られる原子団との総称である。「単量体に基づく単位」を「単量体単位」とも記す。具体的な単量体に基づく単位は、具体的な単量体の名称または略称に「単位」を付して記載することもある。例えば、テトラフルオロエチレンを「TFE」と略称し、テトラフルオロエチレンに基づく単位を「TFE単位」とも記す。
「貯蔵せん断弾性率G’」は、ASTM D5289およびD6204に従い、温度100℃、振幅0.5度、振動数50回/分で測定される値である。
「エーテル性酸素原子」とは、炭素−炭素原子間に1個存在する酸素原子である。
本発明の積層体の製造方法は、後述する第1の組成物の層と、後述する第2の組成物の層の間に溶媒を塗布して未架橋積層体を製造し、次いで、第1の組成物および第2の組成物を架橋させて、第1の層と第2の層とを有する積層体を製造する方法である。ここで、第1の層は第1の組成物の架橋物からなり、第2の層は第2の組成物の架橋物からなる。
本発明の積層体の製造方法においては、第1の組成物が後述するTFE単位とプロピレンに基づく単位とを有する共重合体(以下、共重合体1とも記す。)またはTFE単位とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(以下、PAVEとも記す。)に基づく単位を有する共重合体(以下、共重合体2とも記す。)からなる含フッ素弾性重合体と架橋剤と架橋助剤とを含み、第2の組成物が後述する非フッ素弾性重合体と架橋剤とを含み、架橋助剤を任意で含む。
また、前記溶媒と前記含フッ素弾性重合体のSP値の差の絶対値は0〜1.5であり、0〜1.3であることがより好ましく、0〜1.0であることがさらに好ましい。なお、SP値の差の絶対値が0の場合は、溶媒と含フッ素弾性重合体のSP値の差がないことを示す。
溶媒と含フッ素弾性重合体のSP値の差の絶対値が0〜1.5であることは、溶媒と含フッ素弾性重合体のSP値の差がないまたは小さいことを示し、SP値の差がないまたは小さい場合、含フッ素弾性重合体の溶媒に対する溶解性が優れる。含フッ素弾性重合体の溶解性に優れる溶媒を用いるとき、含フッ素弾性重合体を含む第1の組成物と第2の組成物との界面において、第1の組成物と第2の組成物の相溶性が良好になり、前記第1の組成物の架橋物からなる第1の層と前記第2の組成物の架橋物からなる第2の層が一次結合を形成しやすくなり、本発明の積層体が層間接着性に優れるものと考えられる。
ただし、SP値はFedorsの方法により推算される溶解度パラメータδ[cal/cm1/2である。Fedorsの方法は、R.F.Fedors,Polym.Eng.Sci.,14(2),147(1974)に記載されており、求める化合物の構造式において、原子および原子団の蒸発エネルギーとモル体積のデータよりSP値を推算する方法である。
さらに、溶媒と非フッ素弾性重合体のSP値の差の絶対値は0〜2.0であることが好ましく、0〜1.8であることがより好ましく、0〜1.6であることがさらに好ましい。なお、SP値の差の絶対値が0の場合は、溶媒と非フッ素弾性重合体のSP値の差がないことを示す。
溶媒と含フッ素弾性重合体とのSP値の差の絶対値が0〜2.0であることは、溶媒と非フッ素弾性重合体のSP値の差がないまたは小さいことを示し、SP値の差がないまたは小さい場合、非フッ素弾性重合体の溶媒に対する溶解性が優れる。非フッ素弾性重合体の溶解性に優れる溶媒を用いるとき、第1の組成物と非フッ素弾性重合体を含む第2の組成物の界面において、第1の組成物と第2の組成物の相溶性がより良好になり、前記第1の組成物の架橋物からなる第1の層と前記第2の組成物の架橋物からなる第2の層が一次結合を形成しやすくなる。その結果、本発明の積層体はさらに層間接着性に優れる。
溶媒としては、積層体中に残存しにくいものがよく、具体的には有機溶媒が例示される。有機溶媒としては、SP値が7.0〜11であることが好ましく、7.2〜10.5であることがより好ましい。
溶媒の具体例としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、エタノール、酢酸、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸エチル、酢酸ブチル、n−ブチルアセテート、酢酸イソアミル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、炭酸プロピレン、プロピレングリセロールモノメチルエーテル(PM)、プロピレングリセロールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、トルエン、フルオロベンゼン、p−フルオロアニソール、2,2,2−トリフルオロエタノール、パーフルオロn−ペンタン、パーフルオロn−ヘキサンが挙げられる。
溶媒は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。2種類以上の溶媒を用いる場合は、2種類以上の溶媒を混合して用いてもよく、2種類以上の溶媒を1種類ずつ塗布してもよい。
溶媒を第1の組成物の層と第2の組成物の層の間に塗布する方法は、特に限定されない。具体例としては、ディッピング、スピンコート、スプレー、はけ塗り、ロールコート等の方法が挙げられる。
溶媒を第1の組成物のみに塗布した後、溶媒が塗布された第1の組成物と溶媒が塗布されていない第2の組成物を積層してもよい。また、溶媒を第2の組成物のみに塗布した後、溶媒が塗布されていない第1の組成物と溶媒が塗布されている第2の組成物を積層してもよい。
溶媒を第1の組成物および第2の組成物に塗布した後、溶媒が塗布された第1の組成物と溶媒が塗布された第2の組成物を積層してもよい。
前記溶媒は、積層体中に残存しないことが好ましい。前記溶媒は、後述する架橋を行なう際に除去されてもよく、架橋の前に除去されてもよい。架橋の前に除去される際には、減圧乾燥されることが好ましい。
本発明の積層体の製造方法では、第1の組成物の層および第2の組成物の層を未架橋の状態で溶媒を介して積層して未架橋積層体とした後に架橋を行う。これにより、第1の組成物の層と第2の組成物の層の各層内で架橋構造が形成されるとともに、第1の組成物の層および第2の組成物の層の層間でも架橋構造が形成される。溶媒を用いることにより、第1の組成物の層および第2の組成物の層の層間での架橋が進むため、得られる積層体の第1の層と第2の層との高温下における層間接着性がさらに優れる。
第1の組成物および第2の組成物のいずれにおいても、架橋剤として有機過酸化物を配合することが好ましい。これにより、本発明の積層体の製造方法で得られる積層体の第1の層と第2の層との高温下における層間接着性がさらに優れる。
未架橋積層体中の第1の組成物および第2の組成物を架橋させる方法としては、加熱する方法、紫外線を照射する方法が例示される。未架橋積層体中から前記溶媒を除去しやすい点から、加熱する方法が好ましい。加熱する方法の具体例としては、加熱プレス架橋、スチーム架橋、熱風架橋が例示される。
また、複数の段階に分けて架橋させることもできる。例えば、100〜400℃で数秒〜24時間の条件で加熱して一次架橋を行った後、100〜300℃で30分間〜48時間の条件で加熱して二次架橋を行う方法を採用できる。二次架橋は必須ではないが、二次架橋を行うことにより、架橋物の機械特性、圧縮永久歪、その他の特性をさらに安定化したり、さらに向上させたりできる。
本発明の積層体の製造方法では、第1の組成物の層と第2の組成物の層は、溶媒の除去後には直接接していることが好ましい。ただし、第1の組成物の層と第2の組成物の層との架橋を阻害しない範囲で、接着性を向上するために、層間に接着性の薄層を積層してもよい。
接着性の薄層は、接着性の薄層の元となる物質を前記溶媒に溶かし、第1の組成物の層と第2の組成物の層の間に塗布したのち、溶媒を蒸発させることによって作られる。
接着性の薄層の元となる物質としては、シランカップリング剤が好ましく、具体例としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが例示される。
第1の層と第2の層との高温下における層間接着性がさらに優れる積層体を得るための好ましい製造方法としては、以下の方法が挙げられる。
(1)架橋速度差の調整
(2)架橋開始時間の調整
(3)架橋助剤の調整
(4)重合体のSP値の調整
(5)組成物の架橋度の調整
(6)重合体の粘度の調整
(1)架橋速度差の調整
本発明の積層体の製造方法においては、下記式2で計算される第1の組成物と第2の組成物との架橋速度差の絶対値が好ましくは0.03以下であり、より好ましくは0.02以下である。なお、架橋速度差の絶対値の下限値は0である。
第1の組成物と第2の組成物との架橋速度差の絶対値が0.03以下であると、第1の組成物と第2の組成物の架橋が近い速度で進行し、第1の層と第2の層が一次結合を形成しやすいと考えられるため、本発明の製造方法によって得られる積層体の高温下における層間接着性が優れる。
架橋速度差=[1/(t90A−t2A)−1/(t90B−t2B)]×(t90A−t90B) ・・・式2
ただし、t2Aは、粘弾性測定機(アルファーテクノロジーズ社製、RPA−2000)を用いて架橋試験を行ったときに、試験開始時を基点として、第1の組成物のトルクがトルクの最小値に達するのに要する時間であり、t90Aは第1の組成物のトルクがトルクの最大値の90%に達するのに要する時間であり、t2Bは第2の組成物のトルクがトルクの最小値に達するのに要する時間であり、t90Bは第2の組成物のトルクがトルクの最大値の90%に達するのに要する時間である。
本発明の積層体の製造方法において、前記式2で計算される架橋速度差の絶対値を所定の範囲内にするための手段は特に限定されない。具体的な手段としては、第1の組成物と第2の組成物の間で、架橋助剤の種類および含有量を適宜調整する、後述する酸化防止剤を第1の組成物および第2の組成物の少なくとも一方に含有させる手段が例示される。他にも、第1の組成物と第2の組成物の間で、架橋剤、その他の添加剤の種類および含有量を適宜調整してもよい。
(2)架橋開始時間の調整
本発明の積層体の製造方法においては、t2Aとt2Bの差の絶対値は、0〜5.0が好ましく、0〜4.0minがより好ましく、0〜3.5minが更に好ましい。
前記t2Aは第1の組成物の架橋開始時間とみなしうる時間であり、前記t2Bは第2の組成物の架橋開始時間とみなしうる時間であることより、前記t2Aとt2Bの差の絶対値は、第1の組成物と第2の組成物の架橋開始時間の差であるとも言える。すなわち、t2Aとt2Bの差の絶対値が0〜5.0minの範囲内であると、第1の組成物と第2の組成物の架橋開始時間が近く、一方の組成物の架橋が先に進行するということが起きにくいと考えられる。これにより、第1の層と第2の層が一次結合を形成しやすいと考えられるため、積層体の第1の層と第2の層との高温下における層間接着性がさらに優れる。
本発明の積層体の製造方法において、t2Aとt2Bの差の絶対値を所定の範囲内にするための手段は特に限定されない。具体的な手段としては、第1の組成物と第2の組成物の間で、架橋助剤の種類および含有量を適宜調整する、上述した酸化防止剤を第1の組成物および第2の組成物の少なくとも一方に含有させる手段が例示される。他にも、第1の組成物と第2の組成物の間で、架橋剤、その他の添加剤の種類および含有量を適宜調整してもよい。
(3)架橋助剤の調整
本発明の積層体の製造方法においては、第2の組成物が架橋助剤を含み、第1の組成物と第2の組成物とが共通の架橋助剤を含むことが好ましい。第2の組成物が架橋助剤を含み、第1の組成物と第2の組成物とが共通の架橋助剤を含む場合、共通の架橋助剤が共通の架橋剤に反応するため、第1の組成物と第2の組成物との界面における架橋反応が進行しやすいと考えられる。
(4)重合体のSP値の調整
本発明の積層体の製造方法においては、第1の組成物に含まれる含フッ素弾性重合体のSP値と第2の組成物に含まれる非フッ素弾性重合体のSP値の差の絶対値は、0〜5
[cal/cm1/2が好ましく、0〜2[cal/cm1/2がさらに好ましい。含フッ素弾性重合体のSP値と非フッ素弾性重合体のSP値の差の絶対値が0〜5[cal/cm1/2の範囲内であると、含フッ素弾性重合体と非フッ素弾性重合体との相溶性が良好であり、前記含フッ素弾性重合体を含む第1の組成物と前記非フッ素弾性重合体を含む第2の組成物から製造された積層体における第1の層と第2の層が一次結合を形成しやすいと考えられるため、積層体の第1の層と第2の層との層間接着性がさらに優れる。
ただし、SP値はFedorsの方法により推算される溶解度パラメータδ[cal/cm1/2である。Fedorsの方法は、R.F.Fedors,Polym.Eng.Sci.,14(2),147(1974)に記載されており、求める化合物の構造式において、原子および原子団の蒸発エネルギーとモル体積のデータよりSP値を推算する方法である。
(5)組成物の架橋度の調整
本発明の積層体の製造方法において、第1の組成物の架橋度は、好ましくは5〜150、より好ましくは10〜100である。
また、第2の組成物の架橋度は、好ましくは5〜300であり、より好ましくは10〜210である。
なお、架橋度は、下式3で定義される。
架橋度=MH−ML ・・・式3
ただし、MHは、架橋特性測定器(RPA)で架橋試験を行ったときの、トルクの最大値であり、MLはトルクの最小値である。本明細書に記載の架橋度は、架橋特性測定器(RPA)であるゴム加工解析装置(アルファーテクノロジーズ社製、RPA−2000)を用いて測定された。
架橋度は、架橋可能な組成物の架橋反応性の目安となり、架橋度の値が大きいほど、架橋点が多く、架橋反応性に優れることを示す。架橋反応性が高い組成物を積層する場合、高温下における層間接着性に優れる。
第1の組成物の架橋度が5以上であると架橋反応性に優れるため、高温下における層間接着性に優れた積層体を作ることができ、150以下であると加工性に優れる。
第2の組成物の架橋度が5以上であると架橋反応性に優れるため、高温下における層間接着性に優れた積層体を作ることができ、300以下であると加工性に優れる。
本発明の積層体の製造方法においては、第1の組成物の架橋度と第2の組成物の架橋度の差の絶対値は、0〜200が好ましく、0〜150がさらに好ましい。第1の組成物の架橋度と第2の組成物の架橋度の差の絶対値が0〜200の範囲内であると、第1の層と第2の層が一次結合を形成しやすいと考えられるため、積層体の第1の層と第2の層との高温下における層間接着性がさらに優れる。
(6)重合体の粘度の調整
本発明の積層体の製造方法において、第1の組成物に含まれる含フッ素弾性重合体のムーニー粘度は、10〜300が好ましく、30〜200がより好ましい。
また、前記第2の組成物に含まれる非フッ素弾性重合体のムーニー粘度は、5〜120が好ましく、10〜110がより好ましく、20〜70がさらに好ましい。
第1の組成物に含まれる含フッ素弾性重合体のムーニー粘度が10以上であると加工性に優れる。ムーニー粘度が300以下であると、含フッ素弾性重合体が界面において非フッ素弾性重合体と混合しやすく、第1の層と第2の層が一次結合を形成しやすいと考えられるため、高温下における層間接着性に優れる。
前記第2の組成物に含まれる非フッ素弾性重合体のムーニー粘度が5以上であると加工性に優れる。120以下であると、非フッ素弾性重合体が界面において含フッ素弾性重合体と混合しやすく、第1の層と第2の層が一次結合を形成しやすいと考えられるため、高温下における層間接着性に優れる。
なお、含フッ素弾性重合体のムーニー粘度は、ムーニービスコメータ(島津製作所社製、SMV−201)を用いて、JIS K6300−1:2013に準じて、直径38.1mm、厚さ5.54mmのL型ローターを用い、100℃で予熱時間を1分間、ローター回転時間を4分間に設定して測定される値である。
本発明の積層体の製造方法においては、第1の組成物に含まれる含フッ素弾性重合体のムーニー粘度と第2の組成物に含まれる非フッ素弾性重合体のムーニー粘度の差の絶対値は、0〜200が好ましい。第1の組成物に含まれる含フッ素弾性重合体のムーニー粘度と第2の組成物に含まれる非フッ素弾性重合体のムーニー粘度の差の絶対値が0〜200の範囲内であると、界面において含フッ素弾性重合体と非フッ素弾性重合体と混合しやすく、第1の層と第2の層が一次結合を形成しやすいと考えられるため、積層体の第1の層と第2の層との高温下における層間接着性がさらに優れる。
(第1の組成物)
第1の組成物は、テトラフルオロエチレンに基づく単位とプロピレンに基づく単位とを有する共重合体(共重合体1)またはテトラフルオロエチレンに基づく単位とPAVEに基づく単位とを有する共重合体(共重合体2)からなる含フッ素弾性重合体と架橋剤と架橋助剤とを含む。第1の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を含んでもよい。
第1の組成物の架橋物は、ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPとも記す。)に基づく単位とフッ化ビニリデン(以下、VdFとも記す。)に基づく単位とを有する共重合体の架橋物、すなわちFKMに比べ耐アルカリ性および耐スチーム性に優れる。
(共重合体1)
共重合体1は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて他の単量体単位をさらに有していてもよい。
共重合体1における他の単量体単位としては、二個以上の重合性不飽和結合を有する単量体(以下、DVE)に基づく単位や、PAVEに基づく単位などが例示される。
PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(以下、PMVEとも記す。)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(以下、PEVEとも記す)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(以下、PPVEとも記す)などが挙げられる。
その他、HEP,VdF、ヨウ素原子を有する単量体に基づく単位を有していてもよい。
共重合体1としては、下記X1〜X8のいずれかの組み合わせの単位からなる共重合体が好ましい。これらの共重合体はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
共重合体1の架橋反応性が優れ、さらに架橋物の機械的物性、耐熱性、耐薬品性(耐アルカリ性等)、耐油性および耐候性がさらに優れることから、X1、X2、X4、X5、X6、X8がより好ましく、X1、X5、X8がさらに好ましく、X8が特に好ましい。
X1:TFE単位と、プロピレン単位(以下、P単位とも記す。)との組み合わせ。
X2:TFE単位と、P単位と、VdF単位との組み合わせ。
X3:TFE単位と、P単位と、PPVE単位との組み合わせ。
X4:TFE単位と、P単位と、PMVE単位との組み合わせ。
X5:TFE単位と、P単位と、化合物2単位の組み合わせ。
X6:TFE単位と、P単位と、化合物2単位と、VdF単位との組み合わせ。
X7:TFE単位と、P単位と、化合物2単位と、PPVE単位との組み合わせ。
X8:TFE単位と、P単位と、化合物2単位と、PMVE単位との組み合わせ。
X1〜X8の各共重合体を構成する各単位のモル比または割合は、下記の数値範囲内であることが好ましい。X1〜X8の各共重合体を構成する各単位のモル比または割合が下記の数値範囲内であると、共重合体の架橋反応性がさらに優れ、架橋物の機械的物性、耐熱性、耐薬品性(耐アルカリ性等)、耐油性および耐候性がさらに優れる。
X1:X1を構成する全単位の合計に対し、TFE単位の割合が40〜60モル%、P単位の割合が40〜60モル%。
X2:X2を構成する全単位の合計に対し、TFE単位の割合が40〜59モル%、P単位の割合が40〜59モル%、VdF単位の割合が1〜10モル%。
X3:X3を構成する全単位の合計に対し、TFE単位の割合が30〜60モル%、P単位の割合が10〜40モル%、PPVE単位の割合が10〜40モル%。
X4:X4を構成する全単位の合計に対し、TFE単位の割合が30〜60モル%、P単位の割合が10〜40モル%、PMVE単位の割合が10〜40モル%。
X5:X5を構成する全単位の合計に対し、TFE単位の割合が40〜59.99モル%、P単位の割合が40〜59.99モル%、化合物2単位の割合が0.01〜3モル%。
X6:X6を構成する全単位の合計に対し、TFE単位の割合が40〜58.99モル%、P単位の割合が40〜58.99モル%、化合物2単位の割合が0.01〜3モル%、VdF単位の割合が1〜10モル%。
X7:X7を構成する全単位の合計に対し、TFE単位の割合が30〜60モル%、P単位の割合が10〜40モル%、化合物2単位の割合が0.01〜3モル%、PPVE単位の割合が10〜40モル%。
X8:X8を構成する全単位の合計に対し、TFE単位の割合が30〜60モル%、P単位の割合が10〜40モル%、化合物2単位の割合が0.01〜3モル%、PMVE単位の割合が10〜40モル%。
共重合体1がTFE単位とP単位とからなる2元系共重合体である場合、TFE単位とP単位とのモル比[TFE単位/P単位]は、30/70〜99/1が好ましく、30/70〜70/30がより好ましく、40/60〜60/40がさらに好ましい。TFE単位とP単位とのモル比が、前記範囲内であると、架橋物の機械的物性、耐熱性、耐薬品性(耐アルカリ性等)、耐油性および耐候性がさらに優れる。
TFE単位の割合とP単位の割合との合計は、共重合体1を構成する全単位の合計に対し、99モル%以上が好ましい。
(共重合体2)
共重合体2が有するPAVE単位としては、PMVE、PEVE、PPVE、CF=CF−O−CFCFCFCFに基づく単位が例示される。生産性が向上する点から、PMVE、PEVE、PPVEに基づく単位が好ましい。
また、共重合体2は、CF=CF−OCFCF−OCF−OCF−OCF−OCF−OCF(以下、C9PEVEとも記す。)、 CF=CF−OCFCF−OCF−OCF−OCF(以下、C7PEVEとも記す。)、 CF=CF−OCFCF−OCFCF−OCFCF(以下、EEAVEとも記す。)、 CF=CF−OCFCF−OCFCF−OCFCF−OCFCF(以下、EEEAVEとも記す。)、CF=CF−OCF−OCF、CF=CF−OCF−OCFCF、CF=CF−O(CFCF(CF)O)CFCFCF、CF=CF−OCF−OCF−OCFなどのパーフルオロ(オキサアルキルビニルエーテル)(以下、POAVEとも記す。)に基づく単位やDVEに基づく単位を有していてもよい。DVEはパーフルオロ化合物であることが好ましい。
共重合体2における他の単量体としては、フッ素原子およびフッ素原子以外のハロゲン原子を有する単量体(ブロモトリフルオロエチレン、ヨードトリフルオロエチレン等)、フッ素原子およびニトリル基を有する単量体(CF=CFO(CFCN、パーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)等)が例示される。
TFE単位の割合は、共重合体2を構成する全単位の合計に対し、35〜75モル%が好ましく、40〜75モル%がより好ましく、50〜75モル%がさらに好ましい。
PAVE単位の割合は、共重合体2を構成する全単位の合計に対し、25〜65モル%が好ましく、25〜57モル%がより好ましく、25〜40モル%がさらに好ましい。
POAVE単位を含む場合、その割合は、共重合体2を構成する全単位の合計に対し、3〜57モル%が好ましく、5〜40モル%がより好ましく、8〜30モル%がさらに好ましい。
DVE単位を含む場合、その割合は、共重合体2を構成する全単位の合計に対し、0.01〜1モル%が好ましく、0.05〜0.5モル%がより好ましく、0.05〜0.3モル%がさらに好ましい。
共重合体2における他の単量体に基づく単位の割合は、共重合体2を構成する全単位の合計に対し、0〜5モル%が好ましく、0〜3モル%がより好ましく、0〜2モル%がさらに好ましい。
TFE単位、PAVE単位、POAVE単位、DVE単位および共重合体2における他の単量体に基づく単位の割合が前記範囲内であれば、第1の組成物の架橋物のゴム物性を維持しつつ、低温特性、耐アルカリ性および高温下における層間接着性がさらに優れる。
共重合体2は、架橋性がさらに優れる点から、ヨウ素原子をさらに有することが好ましい。ヨウ素原子は、共重合体2の高分子鎖の末端に結合していることが好ましい。
(共重合体の製造方法)
共重合体1は、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下で、TFEとプロピレンとを含む単量体成分を重合させることによって製造できる。共重合体1を製造するための単量体成分は、必要に応じて、PAVE、DVEおよび他の単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。共重合体1は、例えば、国際公開第2009/119202号、国際公開第2010/053056号等に開示されている方法によって製造できる。
共重合体2は、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下で、TFEとPAVEとを含む単量体成分を重合させることによって製造できる。共重合体2を製造するための単量体成分は、必要に応じて、POAVE、DVE、他の単量体を含んでいてもよい。共重合体2は、例えば、国際公開第2010/082633号等に開示されている方法によって製造できる。
(第1の組成物に含まれる成分)
第1の組成物は、含フッ素弾性重合体ととともに、添加剤として、架橋剤と架橋助剤とを含む。また、さらに酸化防止剤を含むことが好ましい。第1の組成物は、また、本発明における含フッ素弾性重合体以外の重合体や上記添加剤以外の成分を含んでもよい。
架橋剤としては、有機過酸化物、ポリオール、アミン、トリアジン、イミダゾール、アニリン、アンモニウム塩が例示される。これらの中でも、生産性、耐熱性、耐薬品性に優れる点から、有機過酸化物が好ましい。
有機過酸化物としては、ジベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジ(tert−ブチル)パーオキシド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンが例示される。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
第1の組成物が架橋剤として有機過酸化物を含む場合、有機過酸化物の含有量は、共重合体1または共重合体2の100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。有機過酸化物の含有量が前記範囲内であると、第1の層と第2の層との高温下における層間接着性がさらに優れる。
架橋助剤としては、1分子内に2個以上の不飽和結合を有する化合物が例示される。架橋助剤の具体例としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ビスマレイミド、エチレングリコールジメタアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、ジビニルベンゼンが例示される。これらの中でもトリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートが好ましい。
第1の組成物における架橋助剤の含有量は、共重合体1または共重合体2の100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜7質量部がより好ましい。架橋助剤の含有量が前記範囲内であると、第1の組成物の架橋物の硬度、耐熱性等の物性が優れる。
本発明の積層体の製造方法においては、第1の組成物および第2の組成物の少なくとも一方が、酸化防止剤を含むことが好ましい。これにより、フッ素ゴムのゴム物性である引張強さおよび切断時伸び等が、実用上充分に維持されている積層体を製造しやすくなる。
酸化防止剤としては、フェノール性水酸基を有する化合物が好ましい。
フェノール性水酸基を有する化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールAF、フェノール、クレゾール、p−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、o−フェニルフェノール、アリルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸エチルが例示される。これらの中でも、o−フェニルフェノールがより好ましい。
第1の組成物が酸化防止剤を含む場合、酸化防止剤の含有量は後述の共重合体1または共重合体2の100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましく、0.01〜3質量部がより好ましく、0.01〜2質量部がさらに好ましい。
本発明において、第1の組成物にアミン、イミン等の窒素含有化合物を配合することも好ましい。第1の組成物に窒素含有化合物を配合することにより、第1の層と第2の層との高温下における層間接着性をさらに向上させることができる。
窒素含有化合物の具体例としては、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジフェニルアミン、ピペリジン、モルホリン、ピリジン、ベンゾトリアゾール、p−ジメチルアミノピリジンが例示される。
第1の組成物における窒素含有化合物の配合量は、共重合体1の100質量部に対して、0.01〜2質量部が好ましく、0.05〜1質量部がより好ましい。
他の成分としては、共重合体1および共重合体2以外の含フッ素弾性重合体、上記以外の添加剤が例示される。
前記以外の添加剤としては、充填剤、加工助剤、分散助剤、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、接着助剤、架橋促進剤が例示される。
充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、石英微粉末、ケイソウ土、亜鉛華、塩基性炭酸マグネシウム、活性炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、タルク、雲母粉末、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、アスベスト、グラファイト、ワラストナイト、二硫化モリブデン、炭素繊維、アラミド繊維、各種ウィスカー、ガラス繊維が例示される。
加工助剤としては、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸アミド、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸グリセリド等の脂肪酸誘導体、リン酸誘導体、天然ワックス、合成ワックスが例示される。
分散助剤としては、高級脂肪酸およびその金属アミン塩が例示される。
可塑剤としては、フタル酸誘導体、アジピン酸誘導体、セバシン酸誘導体が例示される。
軟化剤としては、潤滑油、プロセスオイル、コールタール、ヒマシ油が例示される。
老化防止剤としては、フェニレンジアミン、ヒンダードアミン、フォスフェート、キノリン、クレゾール、ジチオカルバメート金属塩が例示される。
接着助剤としては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤が例示される。
架橋促進剤としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化鉛等の2価金属の酸化物や、グアニジン構造を有する化合物が例示される。
その他に、着色剤、紫外線吸収剤、難燃剤、耐油性向上剤、発泡剤、スコーチ防止剤、粘着付与剤、滑剤等を必要に応じて配合できる。
第1の組成物が共重合体2を含み、金属酸化物をさらに含む場合、架橋反応が速やかにかつ確実に進行しやすくなる。
金属酸化物の含有量は、共重合体2の100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜6質量部がより好ましい。金属酸化物の含有量が前記範囲内であると、第1の組成物の架橋物の硬度が優れる。
第1の組成物は、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー、押し出し機等の混練装置を用いる混練方法によって、共重合体1または共重合体2と架橋剤と架橋助剤と、必要に応じて他の成分とを混合することにより、調製できる。
(第2の組成物)
第2の組成物は、非フッ素弾性重合体ととともに、添加剤として、架橋剤を含み、任意で架橋助剤を含む。第2の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の添加剤を含んでもよい。
非フッ素弾性重合体は、フッ素原子を含まない架橋ゴム(非フッ素ゴム)の原料となり得る弾性重合体であれば、特に限定されない。非フッ素弾性重合体は、有機過酸化物により架橋できることが好ましい。なお、前記のように、非フッ素弾性重合体のムーニー粘度は、5〜120が好ましく、10〜110がより好ましく、20〜70がさらに好ましい。
非フッ素ゴムとしては、JISK6297:2005に記載のフッ素原子を含まないゴムが例示される。具体的には、アクリルゴム(ACM)、エチレンアクリルゴム(AEM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレン酢酸ビニルゴム(EVM)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレンゴム(CPE)が例示される。シリコーンゴムとしては、ジメチルシリコーンゴム(MQ)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PMQ)が例示される。これらは1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてよい。
市販のACMの原料である弾性重合体としては、Nipol(登録商標)AR31(日本ゼオン社製)等が挙げられる。
市販のAEMの原料である弾性重合体としては、VAMAC(登録商標)DP、VAMAC(登録商標)G(Chemours社製)等が挙げられる。
市販のEVMの原料である弾性重合体としては、デンカER(登録商標)5300、デンカER(登録商標)8401(デンカ社製)等が挙げられる。
市販のEPDMの原料である弾性重合体としては、エスプレン(登録商標)EPDM等(住友化学社製)が挙げられる。
市販のシリコーンゴムの原料である弾性重合体としてはKE971TU(信越シリコーン社製)、KE951U(信越シリコーン社製)等が挙げられる。
第2の組成物における架橋剤については、第1の組成物における架橋剤と同様の架橋剤が例示される。
第2の組成物が架橋剤として有機過酸化物を含む場合、有機過酸化物の含有量は、非フッ素弾性重合体の100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜6質量部がより好ましい。有機過酸化物の含有量が前記範囲内であると、第1の層と第2の層との高温下における層間接着性がさらに優れる。
第2の組成物が架橋助剤を含む場合、第2の組成物における架橋助剤については、第1の組成物における架橋助剤と同様の架橋助剤が例示される。
第2の組成物が架橋助剤を含む場合、第2の組成物における架橋助剤の含有量は、非フッ素弾性重合体の100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。架橋助剤の含有量が前記範囲内であると、第1の層と第2の層との高温下における層間接着性がさらに優れる。
前記のように、第2の組成物は、第1の組成物と同様に、酸化防止剤を含むことが好ましい。第2の組成物に含まれる酸化防止剤については、第1の組成物における酸化防止剤と同様の酸化防止剤が例示される。第2の組成物に含まれる酸化防止剤は、第1の組成物に含まれる酸化防止剤と同一の酸化防止剤であってもよく、異なる酸化防止剤であってもよい。
第2の組成物が酸化防止剤を含む場合、酸化防止剤の含有量は後述の非フッ素弾性重合体の100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましく、0.01〜3質量部がより好ましく、0.01〜2質量部がさらに好ましい。
本発明において、第2の組成物にアミン、イミン等の窒素含有化合物を配合することも好ましい。第2の組成物に窒素含有化合物を配合することにより、第1の層と第2の層との高温下における層間接着性をさらに向上させることができる。窒素含有化合物としては、第1の組成物における窒素含有化合物と同様の窒素含有化合物が例示される。
第2の組成物における窒素含有化合物の配合量は、非フッ素弾性重合体の100質量部に対して0.01〜2質量部が好ましく、0.05〜1質量部がより好ましい。
第2の組成物における添加剤については、第1の組成物における添加剤と同様の添加剤が例示される。
また、第2の組成物は、非フッ素弾性重合体に対して相対的に少量の含フッ素弾性重合体を含有していてもよい。含フッ素弾性重合体としては、第1の組成物に含まれる共重合体1や共重合体2に限られず、他の含フッ素弾性重合体であってもよい。第2の組成物が少量の含フッ素弾性重合体を含む場合、第1の組成物の層と第2の組成物の層との界面における親和性が向上するとともに、第1の組成物の層と第2の組成物の層との界面における架橋反応が進行しやすくなると考えられる。
第2の組成物が含フッ素弾性重合体を含有する場合、第2の組成物における非フッ素弾性重合体と含フッ素弾性重合体の合計量に対する含フッ素弾性重合体の含有量は、30質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
第2の組成物は、第1の組成物と同様の混練装置を用いる混練方法によって、非フッ素弾性重合体と架橋剤と、必要に応じて架橋助剤と添加剤とを混合することにより、調製できる。
(作用機序)
以上説明した本発明の積層体の製造方法にあっては、第1の組成物がTFE単位とP単位とを有する共重合体またはTFE単位とPAVE単位とを有する共重合体を含むため、耐アルカリ性に優れる積層体を製造できる。また、第1の組成物と第2の組成物の間に含フッ素弾性重合体とのSP値の差の絶対値が0〜1.5[cal/cm1/2である溶媒を塗布することで、高温下における層間接着性に優れる積層体を製造できる。
<用途>
本発明の積層体は、高温下ではく離しないため、高温下で使用される部品として好適である。
本発明の積層体は、例えばホースに好適である。本発明の積層体で構成されたホース(以下、積層ゴムホースと記す。)は第1の層および第2の層以外の他の層を有してもよい。なお本明細書においてホースとチューブは区別せずに「ホース」と称する。
積層ゴムホースにおいて、第1の層を最内層とすることにより、内面が耐熱性、耐薬品性、耐油性、耐候性、耐アルカリ性および耐スチーム性を有する積層ゴムホースが得られる。また、第1の層を最外層とすることにより、外面が耐熱性、耐薬品性、耐油性、耐候性、耐アルカリ性および耐スチーム性を有する積層ゴムホースが得られる。
積層ゴムホースの用途としては、自動車、船舶、航空機等の輸送機器用、液晶装置用、半導体装置用、食品製造装置用、分析機器用、化学プラント機器用、原子力プラント機器用のゴムホースが例示される。
具体例としては、ターボチャージャー用ホース、PCVホース、オイルリターンホース、排気ガスホース、EGRホース、オイルホース、滅菌用ホース、殺菌用ホース、フューエルホース、耐油性ゴムホース、耐燃焼ガス性ゴムホース、耐ブレーキ油性ゴムホース、耐薬品性ゴムホース、耐フロン性ゴムホース、耐熱エアーゴムホース、ガスヒートポンプ用ゴムホース、油圧ブレーキホース、エンジンオイルホース、ラジエーターホース、バキュームホース、エバポホース、ATFホース、水配管用ホース、スチーム配管用ホースが例示される。
また、積層ゴムホースは、液体、特にオイル、クーラント(LLC)に対する耐性にも優れており、オイル配管やクーラント液配管等に適している。
さらに、積層ゴムホースは、強塩基性の化合物に対する耐性にも優れているので、
強塩基性であるAdblue(登録商標)等の尿素水溶液が用いられる尿素SCRシステムの部材にも使用される。
積層ゴムホースの製造方法は、特に制限されない。例えば、第1の組成物と第2の組成物とを筒状に共押し出しして未架橋積層体を得て、未架橋積層体を架橋することにより積層ゴムホースが得られる。
または、第1または第2の組成物を筒状に押出成形した後、その表面に第2または第1の組成物を押出成形して未架橋積層体を得て、これを架橋することにより、内層が第1または第2の層からなり外層が第2または第1の層からなる積層ゴムホースが得られる。
積層ゴムホースは、内層が第1または第2の層からなり外層が第2または第1の層からなる2層ゴムホースのほかに、前記内層と外層の他に第1または第2の層からなる層を有する多層ゴムホース、前記外層の表面上に補強繊維層を有する3層ゴムホース等の多層ゴムホースであってもよい。また、第1の層と第2の層の間に、接着剤等の接着性の薄層、熱可塑性樹脂からなる層、金属薄膜を有してもよい。積層ゴムホースの補強繊維としては、パラアラミド繊維、メタアラミド繊維が例示される。市販品としては、テクノーラ(帝人社製)、ノーメックス(Chemours社製)等が挙げられる。
本発明の積層体における第1の組成物からなる第1の層および第2の組成物の架橋物からなる第2の層の厚さは、特に制限されない。
例えば、本発明の積層体を自動車用積層ゴムホースとして用いる場合、第1の組成物の架橋物からなる第1の層の厚さは、0.1〜100mmが好ましく、0.15〜50mmがより好ましく、0.2〜30mmが特に好ましい。第2の組成物の架橋物からなる第2の層の厚さは、0.1〜100mmが好ましく、0.15〜50mmがより好ましく、0.2〜30mmが特に好ましい。
例えば、本発明の積層体をプラント用積層ゴムホースとして用いる場合、第1の組成物の架橋物からなる第1の層の厚さは、0.2〜200mmが好ましく、0.2〜100mmがより好ましく、0.2〜20mmが特に好ましい。第2の組成物の架橋物からなる第2の層の厚さは、0.2 〜200mmが好ましく、0.2〜100mmがより好ましく、0.2〜50mmが特に好ましい。
本発明の積層体は、例えば、ゴムロールとして使用できる。
ゴムロールの用途としては、例えば、フィルム用ゴムロール、製紙用ゴムロール、合板用ゴムロール、鉄鋼用ゴムロールが挙げられる。
本発明の積層体を工業用の積層ゴムロールとして用いる場合、第1の組成物の架橋物からなる第1の層の厚さは、0.1〜20000mmが好ましく、0.15〜10000mmがより好ましく、0.2〜1000mmが特に好ましい。第2の組成物の架橋物からなる第2の層の厚さは、0.1〜20000mmが好ましく、0.15〜10000mmがより好ましく、0.1〜1000mmが特に好ましい。
本発明の積層体における上記第1の層と上記第2の層の合計の厚さに対する上記第1の層の厚さの割合は、10〜90%が好ましく、25〜75%がより好ましい。
本発明の積層体は、例えば、シール材として使用できる。
シール材としては、例えば、Oリング、Vリング、ガスケット、パッキンが挙げられる。
例えば、本発明の積層体をシール材として用いる場合、第1の組成物の架橋物からなる第1の層の厚さは、0.1〜100mmが好ましく、0.15〜50mmがより好ましく、0.2〜30mmが特に好ましい。第2の組成物の架橋物からなる第2の層の厚さは、0.1〜100mmが好ましく、0.15〜50mmがより好ましく、0.2〜30mmが特に好ましい。
本発明の積層体は、例えば、電線被覆材として使用できる。
本発明の被覆電線において、芯線の外周に形成される電線被覆材は、芯線と直接接して形成されたものだけでなく、芯線の間に他の層を介して間接的に外周に形成されたものであってもよい。具体的には、本発明の被覆電線は、本発明の積層体を電線被覆材として導体である導体や芯線を直接被覆した絶縁電線だけでなく、外層として本発明の積層体を電線被覆材とした電線、例えばシースを有するケーブルやワイヤーハーネスのようなものも含む。ケーブルとしては、センサーケーブル、パワーケーブルなどが挙げられる。
導体としては、特に限定されず、銅、銅合金、アルミニウムおよびアルミニウム合金、スズメッキ、銀メッキ、ニッケルメッキ等の各種メッキ線、より線、超電導体、半導体素子リード用メッキ線などが挙げられる。
本願発明の積層体を電線被覆材として用いる場合、第1の組成物の架橋物からなる第1の層の厚さは、0.1〜10mmが好ましく、0.15〜5mmがより好ましく、0.2〜3mmが特に好ましい。第2の組成物の架橋物からなる第2の層の厚さは、0.1〜10mmが好ましく、0.15〜5mmがより好ましく、0.2〜3mmが特に好ましい。
本発明の積層体は、上記の他、例えば、ベルト、防振ゴム、ダイヤフラムにも使用できる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されない。なお、例1〜16は実施例であり、例17〜19は比較例である。
<測定方法>
(共重合体1および共重合体2の共重合組成)
各共重合体1および共重合体2を構成する各単位の割合(モル%)は、19F−核磁気共鳴(NMR)分析、フッ素含有量分析、赤外吸収スペクトル分析により求めた。
(共重合体1および共重合体2のヨウ素含有量)
共重合体1および共重合体2のヨウ素含有量は、自動試料燃焼装置イオンクロマトグラフ用前処理装置(三菱ケミカルアナリテック社製、AQF−100型)とイオンクロマトグラフを組み合わせた装置で定量した。
(共重合体1および共重合体2の貯蔵せん断弾性率G’)
ゴム加工解析装置(アルファーテクノロジーズ社製、RPA−2000)を用いて、ASTM D5289およびD6204に従い、温度100℃、振幅0.5度、振動数50回/分で測定した。
(共重合体1、共重合体2、非フッ素弾性重合体のムーニー粘度)
ムーニービスコメータ(島津製作所社製、SMV−201)を用いて、JIS K6300−1:2013に準じて、直径38.1mm、厚さ5.54mmのL型ローターを用い、100℃で予熱時間を1分間、ローター回転時間を4分間に設定して測定した。
(共重合体1、共重合体2、非フッ素弾性重合体のSP値)
SPの測定方法は上述の通りである。
(第1の組成物および第2の組成物の架橋度)
ゴム加工解析装置(アルファーテクノロジーズ社製、RPA−2000)を用いたときの、トルクの最大値をMHとし、トルクの最小値をMLとした。架橋度は、MHからMLを引いた値(MH−ML)によって示される。
(第1の組成物及び第2の組成物のt90A、t2A、t90B、t2B
ゴム加工解析装置(アルファーテクノロジーズ社製、RPA−2000)を用いて、架橋試験を行ったときの、第1の組成物のトルクがトルクの最小値から上昇し始めるのに要した時間をt2Aとし、第1の組成物のトルクがトルクの最大値の90%に達するのに要した時間をt90Aとし、第2の組成物のトルクがトルクの最小値から上昇し始めるのに要した時間をt2Bとし、第2の組成物のトルクがトルクの最大値の90%に達するのに要した時間をt90Bとした。
<各成分>
共重合体1―A:共重合体1、TFE単位とP単位とを有する共重合体、共重合体1―Aを構成する全単位の合計に対しTFE単位の割合が56モル%、P単位の割合が44モル%、G’=280kPa、ムーニー粘度=91、SP値=8.8[cal/cm1/2、共重合体の全質量に対してヨウ素原子を0.4質量%含有する。
共重合体1−B:共重合体1、TFE単位とC3DVE単位とP単位とを有する共重合体、共重合体1−Bを構成する全単位の合計に対しTFE単位の割合が56モル%、P単位の割合が43.8モル%、C3DVE単位の割合が0.2モル%、G’=330kPa、ムーニー粘度=99、SP値=8.8[cal/cm1/2、共重合体の全質量に対してヨウ素原子を0.5質量%含有する。
共重合体2−A:共重合体2、TFE単位とPMVE単位とを有する共重合体、共重合体Dを構成する全単位の合計に対しTFE単位の割合が69モル%、PMVE単位の割合が31モル%、G’=550kPa、ムーニー粘度=180、SP値=8.8[cal/cm1/2、共重合体の全質量に対してヨウ素原子を0.15質量%含有する。
共重合体2−B:共重合体2、TFE単位とPMVE単位とC3DVE単位とを有する共重合体、共重合体Dを構成する全単位の合計に対しTFE単位の割合が66モル%、PMVE単位の割合が34モル%、G’=480kPa、ムーニー粘度=80、SP値=8.8[cal/cm1/2、共重合体の全質量に対してヨウ素原子を0.02質量%含有する。
なお、共重合体1―Aは国際公開第2009/119202号、共重合体1−Bは国際公開第2017/057512号、共重合体2−Aと共重合体2−Bは国際公開第2010/082633号に開示されている方法によって製造できる。
非フッ素弾性重合体A:AEMの原料、VAMAC(登録商標)DP、Chemours社製、ムーニー粘度=20、SP値=9.3[cal/cm1/2
非フッ素弾性重合体B:ACMの原料、Nipol(登録商標)AR31、日本ゼオン社製。ムーニー粘度=41、SP値=9.8[cal/cm1/2
非フッ素弾性重合体C:AEMの原料、デンカER(登録商標)5300、デンカ社製社製。ムーニー粘度=46、SP値=9.5[cal/cm1/2
非フッ素弾性重合体D:シリコーンゴムの原料、KE951U、信越シリコーン社製、ムーニー粘度=17、SP値=7.3[cal/cm1/2
非フッ素弾性重合体E:EPDMの原料、エスプレン(登録商標)E 501A、住友化学社製、ムーニー粘度=43、SP値=7.9[cal/cm1/2
架橋剤A:有機過酸化物、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン)、ルペロックス(登録商標)F40P−SP2(Arkema社製)
架橋剤B:有機過酸化物、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、パーカードックス14(製品名)、化薬アクゾ社製
架橋剤C:有機過酸化物、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、パーヘキサ(登録商標)25B、日油社製
架橋剤D:有機過酸化物、C−8(製品名)、信越化学工業社製
架橋剤E:有機過酸化物、ビス(α,α−ジメチルベンジル)パーオキシド、パークミル(登録商標)D、日油社製
架橋助剤A:トリアリルイソシアヌレート、1,3,5−トリアリルイソシアヌレート、TAIC(製品名)、三菱ケミカル社製
架橋助剤B:トリアリルイソシアヌレート、1,3,5−トリアリルイソシアヌレート、TAIC WH−60(製品名)、三菱ケミカル社製
酸化防止剤:o−フェニルフェノール、富士フィルム和光純薬社製
カーボンブラックA:THENMAX N−990(製品名)、Canarb Limited社製
カーボンブラックB:FEF、旭#60(製品名)、旭カーボン社製
加工助剤A:脂肪酸誘導体、ステアリン酸カルシウム、富士フィルム和光純薬社製
加工助剤B:高級脂肪酸、ステアリン酸、富士フィルム和光純薬社製
加工助剤C:脂肪酸誘導体、エマスター510P(製品名)、理研ビタミン社製
加工助剤D:窒素含有化合物、リポミン18D(製品名)、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製
加工助剤E:リン酸誘導体、フォスファノール RL−210(製品名)、東邦化学工業社製
加工助剤F:オレイン酸グリセリド、リケマールXO−100(製品名)、理研ビタミン社製。
老化防止剤:ヒンダートアミン、ノクラックCD(製品名)、大内新興化学工業社製
充填剤:シリカ、AEROSIL 8200(製品名)、日本エアロジル社製
架橋促進剤:酸化亜鉛、正同化学社製
<第1の組成物および第2の組成物の調製>
表1、表2に示す質量比の配合で、2本ロールを用い、各配合剤とを均一に混練して第1の組成物P1〜P8と、第2の組成物Q1〜Q6を各々調製した。各組成物のMH−ML、t90A、t2A、t90B、t2Bを上記の方法で測定した。その結果を表1、表2に示す。なお、表1〜表2において、「RPA条件」は、ゴム加工解析装置(アルファーテクノロジーズ社製、RPA−2000)を用いてMH−MLを測定したときの架橋条件を示す。例えば、「170℃×12min」は、170℃で12分間、第1の組成物または第2の組成物を架橋させたことを意味する。
Figure 2021041566
Figure 2021041566
<例1〜19>
例1〜19における第1の組成物と第2の組成物との組み合わせを表3に示す。
表3に示した第1の組成物と第2の組成物を組み合わせて積層体を製造した。具体的には、第1の組成物および第2の組成物をそれぞれ長さ125mm×幅30mm×厚み1.1mmの寸法に成形して、第1の組成物を50℃の熱板の上に乗せ、第2の組成物を積層する予定の面にはけ塗りで溶媒を塗布し、表面につやが残っている状態で、溶媒を塗布した面に第2の組成物を張り合わせて、未架橋積層体を製造した。この時の第1の組成物と第2の組成物の組み合わせは、表3に示した組み合わせである。続いて、70℃で5分間の条件で予備プレス成形を行いその後、145℃で60分間の条件でスチーム架橋を行い、長さ120mm×幅25mm×厚み2mmの、第1の組成物の架橋物からなる第1の層と第2の組成物の架橋物からなる第2の層とを有する例1〜19の積層体を得た。この時、長さ60mm×幅30mmの離型フィルムを第1の組成物の層と第2の組成物の層の間に挟み、積層体の長さ方向の半分を接着されていない把持部とした。
例1〜19の積層体の把持部をT型はく離試験機(JIS K6854−3:1999)にセットし、毎分50mmの速度で積層体を150℃の温度下で引き剥がし、第1の層と第2の層との層間のはく離状態を目視で観察し、高温下における層間接着性を評価した。界面がはく離せずに、材料破断している積層体の高温下における層間接着性を◎と判定し、界面の一部がはく離しているが、一部が材料破断している積層体の高温下における層間接着性を○と判定し、界面がはく離している積層体の高温下における層間接着性を×と判定した。評価結果を表3に示す。なお、T型はく離試験において、はく離面が材料破断している場合は層間接着性が良好であり、界面がはく離している場合は層間接着性が低いことを意味する。
Figure 2021041566
例1〜16の積層体は、溶媒と含フッ素弾性重合体とのSP値の差の絶対値が0〜1.5であるため、高温下における層間接着性が見られた。
溶媒と含フッ素弾性重合体とのSP値の差の絶対値が0〜1.3である例1〜15の積層体は、高温下における層間接着性により優れていた。
例17〜19の積層体は溶媒と含フッ素弾性重合体とのSP値の差の絶対値が1.5より大きいため、高温下における層間接着性に劣っていた。
本発明の積層体の製造方法で得られる積層体および本発明の積層体は、ホース以外に、O−リング、シート、ガスケット、オイルシール、ダイヤフラム、V−リング等の材料に適する。また、耐熱性耐薬品性シール材、耐熱性耐油性シール材、電線被覆材、半導体装置用シール材、耐蝕性ゴム塗料、耐ウレア系グリース用シール材、ゴム塗料、カレンダーシート、スポンジ、ゴムロール、石油掘削用部材、放熱シート、溶液架橋体、ゴムスポンジベアリングシール(耐ウレアグリース等)、ライニング(耐薬品)、自動車用絶縁シート、内視鏡用パッキン(耐アミン)、モーノポンプ、蛇腹ホース(カレンダーシートの加工物)、給湯器パッキンまたは弁、防舷材(海洋土木、船舶)、繊維および不織布(防護服等)、基盤シール材、ゴム手袋、ボタンスイッチ、フードコンテナ用パッキン、水筒用パッキンの用途が例示される。

Claims (6)

  1. テトラフルオロエチレンに基づく単位とプロピレンに基づく単位とを有する共重合体またはテトラフルオロエチレンに基づく単位とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位とを有する共重合体からなる含フッ素弾性重合体と架橋剤と架橋助剤とを含む第1の組成物の層と、非フッ素弾性重合体と架橋剤と、任意で架橋助剤とを含む第2の組成物の層の間に溶媒を塗布して未架橋積層体を製造し、次いで、
    前記第1の組成物および前記第2の組成物を架橋させて、前記第1の組成物の架橋物からなる第1の層と前記第2の組成物の架橋物からなる第2の層とを有する積層体を製造する方法であり、
    前記溶媒と前記含フッ素弾性重合体とのSP値の差の絶対値が0〜1.5である、積層体の製造方法。
  2. 前記溶媒と前記非フッ素弾性重合体とのSP値の差の絶対値が0〜2.0である、請求項1に記載の積層体の製造方法。
  3. 前記第2の組成物がさらに架橋助剤を含み、前記第1の組成物と第2の組成物とが共通の架橋助剤を含む、請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
  4. 前記第1の組成物に含まれる含フッ素弾性重合体のSP値と前記第2の組成物に含まれる非フッ素弾性重合体のSP値の差の絶対値が0〜2である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
  5. 前記第1の組成物の下記式3で計算される架橋度が5〜150であり、
    前記第2の組成物の架橋度が5〜300である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
    架橋度=MH−ML ・・・式3
    ただし、MHは、架橋特性測定器(RPA)で架橋試験を行ったときの、トルクの最大値である。
  6. 前記第1の組成物および前記第2の組成物における架橋剤が、いずれも有機過酸化物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
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