JP2021041351A - 籾摺りロール - Google Patents

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勇喜 阿部
Yuki Abe
勇喜 阿部
岩崎 成彰
Shigeaki Iwasaki
成彰 岩崎
坂中 宏行
Hiroyuki Sakanaka
宏行 坂中
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Abstract

【課題】 製造時にしん材部とゴム層との間に隙間が生じにくく、生産性に優れる籾摺りロールを提供する。【解決手段】 円筒状のしん材部と、前記しん材部の外周面に積層されたゴム層とを備えた籾摺りロールであって、前記ゴム層は、ポリオール成分、イソシアネート成分及び架橋剤を含有する熱硬化性ウレタン組成物の硬化物からなり、前記しん材部の外周面には、周方向に設けられた複数の凸部が幅方向に並設され、前記複数の凸部のうち、幅方向両端側に設けられた各凸部は、それぞれ前記しん材部の幅方向の端部からの距離が4mm以下であり、前記複数の凸部は、隣接する凸部同士の距離が2〜5mmである、籾摺りロール。【選択図】 図1

Description

本発明は、籾摺りロールに関する。
農業用脱穀機には籾摺りロールが取り付けられている。この籾摺りロールは、2個の籾摺りロールを一対とし、籾摺りロール同士が所定の間隔を有するように配置して使用する。このように配置された一対の籾摺りロールは、各籾摺りロールを異なる周速度で回転させつつ、籾摺りロール同士の隙間に籾米(籾殻が付いた米、以下、籾ともいう)を投入することにより、籾殻を脱ぷし、籾殻と玄米とに分離することができる。
籾摺りロールとしては、円筒状のしん材部とその周囲に設けられたゴム層とからなる籾摺りロールが使用されており、上記ゴム層には、例えば熱硬化性ウレタン組成物の硬化物が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
特許第5707522号公報
熱硬化性ウレタン組成物の硬化物からなるゴム層を備えた籾摺りロールの製造は、例えば、下記の方法によって行う。
まず、ダイキャスト等により金属製で円筒状のしん材部を作製し、このしん材部を円筒形の金型内に載置する。その後、しん材部の外周面と金型の内壁面との間隙に、未硬化の熱硬化性ウレタン組成物を注型し、所定の条件で硬化させてゴム層を形成する。その後、ゴム層の外観を所定形状に研削する。このような工程を経ることにより、籾摺りロールを製造することができる。
上記の方法で籾摺りロールを製造した場合、熱硬化性ウレタン組成物の硬化時に、熱硬化性ウレタン組成物がしん材部の外周面と密着した状態で硬化せず、硬化後、しん材部とゴム層との間に隙間が生じていることがあった。しん材部とゴム層との間に隙間が生じた籾摺りロールは、製品として販売することができず、不良品として破棄せざるを得なかった。
このような隙間が発生する理由は、熱硬化性ウレタン組成物が硬化時に収縮する(硬化収縮)性質を有しているためと考えている。未硬化の熱硬化性ウレタン組成物を金型内に注型した後、熱硬化性ウレタン組成物を加熱硬化させた場合、しん材部との界面付近にある熱硬化性ウレタン組成物は、硬化工程で生じる変形(収縮)によって、しん材部の外周面と密着した状態が壊されることがあり、その結果、硬化後のしん材部とゴム層との間に隙間が生じていることがあると考えている。
また、しん材部とゴム層との間における隙間の発生は、しん材部の幅方向の端部付近で発生しやすい傾向にあった。
このような点から、ゴム層が熱硬化性ウレタン組成物の硬化物で構成された籾摺りロールは、生産性に劣るという課題があった。
本発明者らは、このような課題を解決すべく鋭意検討を行い、しん材部の外周面に所定の形状の凸部を設けることで、製造時にしん材部とゴム層との間に隙間が発生することを抑制できることを見出し、本発明を完成した。
(1)本発明の籾摺りロールは、円筒状のしん材部と、上記しん材部の外周面に積層されたゴム層とを備えた籾摺りロールであって、
上記ゴム層は、ポリオール成分、イソシアネート成分及び架橋剤を含有する熱硬化性ウレタン組成物の硬化物からなり、
上記しん材部の外周面には、周方向に設けられた複数の凸部が幅方向に並設され、
上記複数の凸部のうち、幅方向両端側に設けられた各凸部は、それぞれ上記しん材部の幅方向の端部からの距離が4mm以下であり、
上記複数の凸部は、隣接する凸部同士の距離が2〜5mmである。
上記籾摺りロールによれば、円筒状のしん材部の外周面に複数の凸部が所定の間隔で設けられており、かつ上記凸部がしん材部の外周面の幅方向両端部の近傍に設けられている。
そのため、未硬化の熱硬化性ウレタン組成物を硬化させて上記ゴム層を形成した際に、しん材部の外周面とゴム層との間に隙間が生じにくく、上記籾摺りロールは高い生産性で製造することができる。
上述したように、しん材部の外周面とゴム層との間における隙間の発生は、熱硬化性ウレタン組成物の硬化工程において、熱硬化性ウレタン組成物としん材部の外周面とが密着した状態が、硬化時に生じる変形(収縮)によって壊されることに原因があると考えている。
これに対して、本発明の籾摺りロールは、しん材部の外周面が複数の凸部を備えているため、硬化時におけるしん材部との界面付近にある熱硬化性ウレタン組成物の移動量が、しん材部の外周面が平坦な場合に比べると小さい。そのため、熱硬化性ウレタン組成物の硬化は、しん材部の外周面と密着した状態が維持されたまま進行しやすく、本発明の籾摺りロールでは、製造時にしん材部の外周面とゴム層との間に隙間が発生しにくくなっていると考えている。
また、上述した通り、しん材部とゴム層との間における隙間の発生は、しん材部の幅方向の端部付近で発生しやすい傾向にあるのに対し、上記籾摺りロールは、しん材部の外周面の幅方向両端部の近傍にも凸部を備えているため、上記隙間の発生を抑制し易くなっている。
(2)上記籾摺りロールにおいて、上記しん材部の幅方向両端側に設けられた各凸部は、それぞれ上記しん材部の幅方向の端部からの距離が2mm以下であることが好ましい。
この場合、籾摺りロールの幅方向の端部における隙間の発生を抑制するのにより適している。そのため、不良品の発生率がより抑えられ、生産性がより高められる。
(3)上記籾摺りロールにおいて、上記凸部の高さは、0.2〜0.5mmであることが好ましい。
この場合、しん材部の外周面とゴム層との間における隙間がより発生しにくい。そのため、不良品の発生率がより抑えられ、生産性がより高められる。
(4)上記籾摺りロールにおいて、上記凸部の表面は、断面形状において円弧のみで構成されていることが好ましい。
しん材部の外周面とゴム層との間に隙間が発生する原因としては、未硬化の熱硬化性ウレタン組成物が硬化時に収縮すること以外にも、未硬化の熱硬化性ウレタン組成物を注型した後、硬化させてゴム層を形成する際に、しん材部と熱硬化性ウレタン組成物との間(特に、隣接する凸部同士の間におけるしん材部と熱硬化性ウレタン組成物との間)に空気が残留し、この状態のまま熱硬化性ウレタン組成物の硬化が進行することが考えられる。このような空気残りは、しん材部の外周面に凸部を設けた際に発生しやすく、しん材部の外周面が平坦な場合は、ほとんど発生しない現象である。
一方、上記凸部が上述した形状を有している場合、しん材部の外周面に凸部が設けられていても、注型後、しん材部の外周面と熱硬化性ウレタン組成物との間に空気が残留しにくい。そのため、両者の間に空気の入り込んだ状態のまま熱硬化性ウレタン組成物の硬化が進行し、しん材部の外周面とゴム層との間に隙間が生じてしまうことが更に発生しにくい。
本発明の籾摺りロールは、製造時にしん材部とゴム層との間に隙間が生じにくく、生産性に優れる。
(a)は本発明の籾摺りロールの一実施形態を模式的に示す斜視図であり、(b)は(a)に示した籾摺りロールのA−A線断面図である。 (a)は図1(a)に示した籾摺りロールを構成するしん材部の斜視図であり、(b)は(a)に示したしん材部のB−B線断面図である。 (a)は図2(a)に示したしん材部の部分拡大図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。 籾摺りロールの製造方法を説明するための模式図である。 籾摺りロールの使用方法を説明するための模式図である。
以下、本発明の実施形態に係る籾摺りロールついて、図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1(a)は、本実施形態に係る籾摺りロールを模式的に示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示した籾摺りロールのA−A線断面図である。図2(a)は、図1(a)に示した籾摺りロールを構成するしん材部の斜視図であり、(b)は(a)に示したしん材部のB−B線断面図である。図3(a)は図2(a)に示したしん材部の部分拡大図であり、図3(b)は(a)の部分拡大図である。
本実施形態の籾摺りロール10は、図1(a)及び(b)に示すように、しん材部11とゴム層12とからなる。ゴム層12は、しん材部11の外周面に積層されている。
ゴム層12は、厚さ(図1(b)中、Tで示す)の均一な部材であり、ポリオール成分、イソシアネート成分及び架橋剤を含有する熱硬化性ウレタン組成物の硬化物からなる。
しん材部11は、円筒状を有し、筒内に籾摺りロール10を籾摺機に取り付けるための取付用フランジ11aが設けられた金属製の部材である。
図2(a)及び(b)に示すように、しん材部11の外周面11bには周方向に形成された複数の凸部111(111A、111B、111Cなど)が幅方向(図2(b)中、左右方向)に並設されている。
各凸部111A、111B、111Cのそれぞれは、しん材部11の外周面において、周方向全体にわたって設けられている。よって、各凸部111A、111B、111Cの形状は円環状である。
また、しん材部11の外周面11bにおいて、凸部111同士に挟まれた底部112は、いずれも半径(しん材部11の中心軸からの距離)が一定の平坦面である。
複数の凸部111のうち、しん材部11の幅方向両端側に設けられた凸部(例えば、図2(b)における凸部111A)は、しん材部11の幅方向の端部からの距離P0が4mm以下である。
この場合、凸部111は、しん材部11外周面の幅方向の端部近傍に設けられていることになる。そのため、籾摺りロール10のゴム層12を形成する際に、しん材部11の外周面とゴム層12との間に隙間が生じにくく、籾摺りロール10は高い生産性で製造することができる。
上記隙間は、特に籾摺りロールの幅方向の端部で発生しやすい傾向にあるため、籾摺りロール10では、凸部111をしん材部11外周面の幅方向両端部の近傍に設けるべく、距離P0を4mm以下としている。
上記の距離P0は、上記隙間がより生じにくくなる点から、2mm以下が好ましい。
また、距離P0は0mmであっても良い。即ち、凸部111の位置がしん材部11外周面の幅方向の端部と重なっていても良い。
本発明の実施形態において、凸部111Aとしん材部11の幅方向の端部との距離P0とは、凸部111Aの最も高い位置としん材部11の端部とのしん材部11の幅方向における距離をいう。また、凸部111Aの断面形状が上面の平坦な形状の場合(例えば、凸部の断面形状が台形の場合など)には、凸部の最も高い位置であって、しん材部11の端部に最近接する位置と、しん材部11の端部とのしん材部11の幅方向における距離を上記の距離P0とする。
複数の凸部111において、互いに隣接する凸部同士(例えば、凸部111Aと凸部111B、凸部111Bと凸部111Cなど)の距離P1は、2〜5mmである。
距離P1がこの範囲にあると、しん材部との界面付近にある熱硬化性ウレタン組成物が硬化時に変形(移動)しにくく、しん材部の外周面と密着した状態で硬化が進行し、しん材部とゴム層との間に隙間が生じることを抑制することができる。
一方、凸部111同士の距離P1が2mm未満では、未硬化の熱硬化性ウレタン組成物を注型した際に凸部同士の間に空気が残り易くなり、空気が残ったまま、熱硬化性ウレタン組成物の硬化が進行すると、しん材部とゴム層との間に隙間が生じやすい。
また、距離P1が5mmを超えると、硬化時にしん材部との界面付近にある熱硬化性ウレタン組成物の変形(移動)を抑制できず、硬化収縮によるしん材部とゴム層との間における隙間の発生を回避しにくい。
互いに隣接する凸部同士の距離P1は、上記範囲内にあれば、全て同一であっても良いし、異なっていても良い。
本発明の実施形態において、互いに隣接する凸部同士の距離P1とは、各凸部の最も高い位置同士のしん材部11の幅方向における距離をいう。また、凸部の断面形状が上面の平坦な形状の場合(例えば、凸部の断面形状が台形の場合など)には、各凸部の最も高い位置であって、かつ相手方の凸部と最近接する位置同士のしん材部11の幅方向における距離を上記の距離P1とする。
しん材部11に設けられた複数の凸部111の高さHは、0.2〜0.5mmが好ましい。
凸部111の高さHが0.2mm未満では、しん材部との界面付近にある熱硬化性ウレタン組成物の変形(移動)を抑制する性能が乏しく、硬化収縮によってしん材部とゴム層との間に隙間が生じることを回避する効果に劣る。一方、高さHが0.5mmを超えると未硬化の熱硬化性ウレタン組成物を注型した際に凸部同士の間に空気が残りやすく、空気が残った状態で熱硬化性ウレタン組成物の硬化が進行すると、しん材部とゴム層との間に隙間が生じやすくなる。
本発明の実施形態において、凸部の高さHとは、しん材部の外周面における底部の半径(しん材部の中心軸からの距離)と、当該凸部の最も高い位置の半径との差をいう。
このとき、上記底部の半径としては、しん材部の幅方向両端側において、最も外側に位置する各底部の半径の平均値を採用する。
しん材部11に設けられた複数の凸部111の表面は、断面形状において円弧のみで構成されている(図3(a)及び(b)参照)。
本実施形態において、凸部111の断面形状とは、しん材部11を、当該しん材部11の中心軸(図2(b)中、1点鎖線参照)通る幅方向に沿った面で切断した際に観察される形状である。
凸部111の表面が、断面形状において円弧のみで構成されていると、籾摺りロールの製造時において、未硬化の熱硬化性ウレタン組成物を注型した際に、しん材部と熱硬化性ウレタン組成物との間に空気が残りにくく(空気が抜けやすく)、しん材部と熱硬化性ウレタン組成物との間に空気が残った状態で硬化が進行することを避けやすい。そのため、しん材部の外周面とゴム層との間に隙間が生じることを回避するのに更に適している。
一方、凸部111の表面が、断面形状において直線を含んで構成されていると、空気が残りやすい箇所が発生しやすく、しん材部と熱硬化性ウレタン組成物との間に空気が入り込んだ状態で硬化が進行しやすい。
図3(b)に示すように、凸部111の表面が、断面形状において円弧のみで構成されている場合、当該円弧は、半径の異なる2種類の円弧113、114で構成されていることが好ましい。
この場合、凸部111の頂部を構成する円弧113の半径R1は、0.25〜1.00mmが好ましく0.35〜0.80mmがより好ましい。また、凸部111の基底部を構成する円弧113の半径R2は、0.10〜0.60mmが好ましく0.15〜0.40mmがより好ましい。
しん材部11の外観形状やサイズは、外周面に所定の凸部が設けられる以外は特に限定されず、例えば、籾摺りロールを取り付ける籾摺機の仕様や、JIS規格(JIS B 9214:もみすり用ゴムロール)に合わせて適宜設定すれば良い。なお、本発明のゴム層は、JIS B 9214に規定されるゴム部に相当する。
(その他の実施形態)
しん材部11に設けられた複数の凸部111の上面は、断面形状において円弧のみで構成されていることが好ましいものの、これに限定されない。上記凸部は、断面形状が、例えば、台形状や矩形状等であっても良い。
しん材部11では、複数の凸部111が幅方向において等間隔に設けられているが、本発明の実施形態において複数の凸部は必ずしも等間隔で設けられていなくても良い。
しん材部11では、複数の凸部111が全て同じ寸法を有しているが、本発明の実施形態において複数の凸部の形状・寸法は、全て同一である必要はなく、形状・寸法の異なる凸部が混在していても良い。
次に、本発明の実施形態に係る籾摺りロールの材質等について説明する。
上記しん材部の材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレス、鉄、モリブデン、チタン等が挙げられる。
これらのなかでは、アルミニウム又は鉄が好ましい。上述した形状の凸部を有するしん材部を金型鋳造法で作製するのに適している。
上記ゴム層は、ポリオール成分、イソシアネート成分及び架橋剤を含有する熱硬化性ウレタン組成物の硬化物からなる。
上記ポリオール成分としては、例えば、ポリエステルポリオールが挙げられる。ポリエステルポリオールを用いると、極性の高いポリエステルポリオール基によって発現する高い分子間力により、耐摩耗性に優れたゴム層を形成することができる。
上記ポリオール成分としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等も挙げられる。
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、ジカルボン酸とグリコールとを常法に従って反応させることにより得たもの等が挙げられる。
上記ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、それらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
これらのなかではアジピン酸が好ましく、グリコールや架橋剤として1,4−ブタンジオールを用いる場合にはアジピン酸が特に好ましい。アジピン酸のC原子配列は、1,4−ブタンジオールと同じ4連配列であるため、配向結晶性に優れ、結晶化構造を有することにより強固な分子間力を発現する。また、アジピン酸は安価であるため、経済的にも優れる。
上記ジカルボン酸は単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。
上記グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリエチレングリコール等の脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、p−キシレンジオール等の芳香族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。
上記グリコールとしては、脂肪族グリコールが好ましく、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールが更に好ましい。適度な硬さのゴム層を形成するのに適しており、かつ、安価である。
ジカルボン酸及びグリコールの反応物であるポリエステルポリオールは、線状構造であるが、3価以上のエステル形成成分を用いた分枝状ポリエステルであっても良い。
上記グリコールは単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。
上記ポリエステルポリオールとしては、特に、ポリエチレンアジペート系ポリエステルポリオール、ポリブチレンアジペート系ポリエステルポリオール、及び、ポリエチレンブチレンアジペート系ポリエステルポリオールが好ましい。適度な硬さのゴム層を形成するのに適した分子構造を有しており、かつ、安価である。
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
上記ポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、触媒の存在下で低分子量グリコールを開始剤としてε−カプロラクトンを開環付加させることにより得られるものが挙げられる。
上記ポリオール成分の数平均分子量は、1000〜3000が好ましい。数平均分子量が1000未満では、上記ゴム層が剛性の高すぎるものとなることがある。一方、数平均分子量が3000を超えると、上記ゴム層が柔軟すぎるものとなることがある。
上記数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)測定によるポリスチレン換算の測定値である。
上記ポリオール成分としては、数平均分子量の異なるポリオール成分を併用しても良い。
上記イソシアネート成分としては、例えば、フェニレンジイソシアネート(PPDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートとの混合物、4,4’−トリジンジイソシアネート(TODI)、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香族ジイソシアネート;シクロペンタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。
また、本明細書では、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、及び、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートとの混合物、を総称してMDIともいう。
これらのなかでは、MDI、TDIが好ましく、MDIがより好ましい。
上記TDI(トリレンジイソシアネート)としては従来公知のTDIを用いることができる。上記TDIにおいて、2,4−TDIと2,6−TDIとの配合比(2,4−TDI/2,6−TDI)は特に限定されないが、65/35〜100/0(重量比)が好ましい。上記TDIとしては、例えば、T−80(2,4−TDI/2,6−TDI=80/20)、T−100(2,4−TDI/2,6−TDI=100/0)、T−65(2,4−TDI/2,6−TDI=65/35)等を用いることができる。
上記TDIとしては各種市販品を使用することもできる。
上記MDIは特に限定されるものではなく、その分子量分布の広狭を問わず用いることができる。上記MDIは、ピュアMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)、ポリメリックMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートとの混合物)が好ましい。
上記MDIとしては各種市販品を使用することもできる。
上記熱硬化性ウレタン組成物におけるイソシアネート基含有率は、3.5〜10.0重量%が好ましい。
上記イソシアネート基含有率が、3.5重量%未満では上記ゴム層の耐摩耗性が低下してしまうことがある。一方、上記イソシアネート基含有率が10.0重量%を超えると、上記ゴム層の硬度が高くなりすぎ、籾摺りロールのゴム層として適さないことがある。また、イソシアネート基含有率が10.0重量%を超える熱硬化性ウレタン組成物は反応性が高いため、攪拌時間や注型時間の確保が難しく、手注型によってゴム層を形成するのに適していない。
上記イソシアネート基含有率(重量%)とは、熱硬化性ウレタン組成物に使用する架橋剤を除いた完全プレポリマー(全てのイソシアネート成分、全てのポリオール成分の合計量)中に含まれるイソシアネート基の重量割合をいう。
上記架橋剤としては、例えば、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン(BHEB)、TMP(トリメチロールプロパン)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン、4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)(MOCA)、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン、水等が挙げられる。
これらは単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。
上記熱硬化性ウレタン組成物としては、
(1)ポリエステルポリオールをポリオール成分とし、架橋剤として、1,4−BDとBHEBとを併用した熱硬化性ウレタン組成物、及び
(2)ポリエステルポリオールをポリオール成分とし、架橋剤として、1,4−BDとBHEBとTMPとを併用した熱硬化性ウレタン組成物、が好ましい。
(1)の場合は、上記ゴム層の耐摩耗性を向上させるのに適している。また、架橋剤として、1,4−BD及びBHEBを含む熱硬化性ウレタン組成物は、ポットライフが比較的長く、手注型でも成形することができる。
(2)の場合は、上記ゴム層の耐摩耗性を更に向上させることができる。
上記熱硬化性ウレタン組成物は、更にシリコーンオイルを含有しても良い。
シリコーンオイルを配合することにより、上記熱硬化性ウレタン組成物の硬化物の耐摩耗性がより向上する。
また、上記熱硬化性ウレタン組成物にシリコーンオイルを配合した場合、上記硬化物からなるゴム層の耐水性もより向上する。
上記シリコーンオイルとしては特に限定されず、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、これらのシリコーンオイルの側鎖及び/又は末端に有機基を導入した変性シリコーンオイル(例えば、シラノール基末端変性シリコーンオイルなど)等が挙げられる。
これらのなかでは、ジメチルシリコーンオイルが好ましい。ジメチルシリコーンオイルは、ポリウレタン分子中に分散しやすく、熱硬化性ウレタン組成物の硬化物を均質にするのに適している。
上記シリコーンオイルは、25℃での動粘度が10〜3000mm/sであることが好ましい。上記熱硬化性ウレタン組成物の硬化物の耐摩耗性を更に向上させるとともに、上記硬化物の耐水性を長期間に渡って向上させるのに適しているからである。
上記熱硬化性ウレタン組成物がシリコーンオイルを含有する場合、上記シリコーンオイルの含有量は、ポリオール成分、イソシアネート成分及び架橋剤の合計量に対して、0重量%を超え、0.5重量%以下が好ましい。
上記シリコーンオイルの含有量が0.5重量%を超えると、ゴム層の動摩擦係数が低くなり、脱ぷ率が低くなる場合がある。
上記シリコーンオイルの含有量は、耐摩耗性及び耐水性の向上により適している点から0.3重量%以上が好ましい。
上記熱硬化性ウレタン組成物は、更に、鎖延長剤、架橋促進剤や架橋遅延剤等の反応助剤、加水分解防止剤、無機繊維や無機フィラー等の補強材、着色剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、防黴剤、難燃剤、充填剤(増量剤)等の各種添加剤などを必要に応じて含有していても良い。
上記ゴム層を構成する硬化物は、20℃におけるJIS A硬さが85以上であることが好ましい。上記JIS A硬さが85未満では、上記ゴム層が柔らかすぎるため、耐摩耗性が低下することがある。
上記JIS A硬さは、88以上がより好ましく、90以上が更に好ましい。
一方、上記ゴム層の20℃におけるJIS A硬さは、99未満が好ましい。99を超えると、籾摺り時に米が破損し、いわゆる砕米の発生率が増加するおそれがある。
上記硬化物のJIS A硬さの計測は、籾摺りロール自体を測定サンプル(試験片)とし、籾摺りロールのゴム層の端面E(図1(b)参照)における厚さ方向中央部付近を測定部位とし、JIS K 7312に基づいた手法で行う。
具体的には、JIS K 7312の7.硬さ試験において試験片を変更し、測定温度20℃で行う。
上記ゴム層は、DIN摩耗減量が、40〜100mmであることが好ましい。
上記DIN摩耗減量が40mm未満では、籾摺り時に砕米の発生率が高くなることがあり、一方、100mmを超えると、耐久性が不充分となる。
上記DIN摩耗減量は、JIS K 6264のDIN摩耗試験に準拠して測定すれば良い。
上記DIN摩耗減量は、40〜85mmがより好ましい。
上記籾摺りロールは、上記しん材部と上記ゴム層との密着性をより向上させるべく、両者の間にプライマー層及び/又は接着剤層が形成されていても良い。
上記接着剤層の形成は、例えば、フェノール系接着剤等を用いて行うことができる。
上記プライマー層の形成は、例えば、ウレタン系、ポリエステル系、シラン系、ポリアミド系、フェノール系のプライマーや、シランカップリング剤等を用いて行うことができる。
上記籾摺りロールは、断面(使用時の回転軸に垂直な断面)の真円度が0.5mm以下であることが好ましい。上記真円度が0.5mmを超えると、使用時にロール間の間隔のバラツキが大きくなり、脱ぷ率が低下したり、砕米の発生率が増加したりすることがある。
上記籾摺りロールは、例えば、下記(1)〜(3)の工程を経て製造することができる。
(1)しん材部を作製する。
上記しん材部は、例えば、金型鋳造法等により作製することができる。ここでは、上記しん材部の外周面の凸部を設けるための凹部を有する金型を使用して成型すれば良い。従って、しん材部の外周面に設けられた複数の凸部は、それぞれしん材部の本体に一体成形することができる。
上記凸部を形成する方法は上述した方法に限定されない。上記凸部は、例えば、外周面が平坦面であるしん材部を作製した後、当該しん材部の外周面に切削加工を施すことによって形成しても良い。
その後、必要に応じて、しん材部の外周面に接着剤層及び/又はプライマー層を形成する。
(2)次に、上記しん材部の周囲にゴム層を形成する。
図4は、籾摺りロールの製造方法を説明するための模式図である。
本工程では、図4に示すように、円筒形の金型20を準備し、この金型20内にしん材部11を載置する。その後、しん材部11の外周面11bと金型20の内壁面21との間隙に、未硬化の熱硬化性ウレタン組成物22を注入する。このとき、金型20を少し傾けて、金型20の内壁面21を沿うように未硬化の熱硬化性ウレタン組成物22を注型することが好ましい。未硬化の熱硬化性ウレタン組成物22としん材部11の外周面11bとの間に空気が残留した状態となることを避けるためである。
その後、金型20内で、未硬化の熱硬化性ウレタン組成物22を所定の条件で硬化させる。このとき、硬化条件としては、例えば、110〜150℃で、30〜180分間保持する条件等を採用すれば良い。更に、金型20から取り出した後には、100〜130℃で6〜72時間保持する条件で、後架橋を行っても良い。
(3)室温まで冷却後、しん材部の外周面にゴムが積層された籾摺りロールを取り出す。
その後、必要に応じて、ゴム層の外観形状を所定の形状にするための研削加工を施す。
また、籾摺りロールの幅寸法を調整するために、必要に応じて、籾摺りロールの幅方向における一方側又は両側を籾摺りロールの径方向に沿って切断する切断加工を施す。
この場合、しん材部とゴム層とを同時に切断することが好ましい。これにより、しん材部の端面とゴム層の端面とを揃えることができる。
しん材部及びゴム層の端部を同時に切断する場合、当該切断は、例えば、旋盤などの工作機械で行えば良い。
上述したしん材部及びゴム層の端部を同時に切断する工程を含む籾摺りロールの製造方法について、もう少し詳しく説明する。
既に説明した通り、しん材部とゴム層との間での隙間の発生は、籾摺りロールの幅方向の両端部近傍で生じやすい。
また、上記の隙間は、幅方向の両端部近傍でのみ生じることもある。上記の隙間が幅方向の両端部近傍でのみ生じた場合、たとえその隙間が微小な隙間であったとしても、隙間が生じた籾摺りロールは販売することができない。
一方、微小な隙間が籾摺りロールの幅方向の両端部近傍でのみ生じた場合は、隙間が生じた端部を切断加工で除去することにより、切断加工後の籾摺りロールは、しん材部とゴム層との間に隙間がなく、所定の品質を備えた籾摺りロールとして使用することができる。
従って、上述した切断加工を行うことにより、籾摺りロールの生産性を高めることができる。
上記切断加工を行う籾摺りロールの製造方法としては、下記(a)〜(c)の工程を含む籾摺りロールの製造方法が好ましい。
(a)完成品より大きい幅寸法を有するしん材部前駆体を準備する工程、
(b)上記しん材部前駆体の外周面に熱硬化性ウレタン組成物の硬化物からなるゴム層前駆体を積層し、籾摺りロール前駆体を作製する工程、
(c)籾摺りロール前駆体の幅方向における一方側又は両側の端部を切断する工程であって、しん材部前駆体とゴム層前駆体とを同時に切断する工程。
上記(a)〜(c)の工程を含む籾摺りロールの製造方法によれば、熱硬化性ウレタン組成物の硬化時に籾摺りロールの幅方向の端側近傍にのみ上記の隙間が生じた場合に、上記(c)の工程を行うことで、隙間が生じた部分を除去することができる。
また、この(a)〜(c)の工程を含む籾摺りロールの製造方法では、しん材部とゴム層の端面が揃った籾摺りロールを製造することができる。
更に、上述した(a)〜(c)の工程を含む籾摺りロールの製造方法は、しん材部前駆体として、周方向に設けられた複数の凸部が幅方向に並設された外周面を有するしん材部前駆体を採用した場合だけでなく、外周面が平坦面であるしん材部前駆体を用いた場合にも採用することができる。しん材部の幅方向の両端側近傍にのみ隙間が生じる現象は、外周面に複数の凸部を有するしん材部前駆体を用いる場合だけでなく、外周面が平坦面であるしん材部前駆体を用いる場合にも生じる現象だからである。
次に、上記籾摺りロールの使用方法について説明する。
図5は、本発明の実施形態に係る籾摺りロールの使用方法を説明するための模式図である。
上記籾摺りロールは、2個の籾摺りロールを1組にして、公知のゴムロール式の籾摺機に取り付けて使用する。
即ち、図5に示すように、一対の籾摺りロール10A、10Bを所定の間隔Lを有するように平行に取り付け、籾摺りロール10A、10Bのそれぞれを互いに逆方向に、かつ、異なる回転速度(籾摺りロール10Aの回転速度Va≠籾摺りロール10Bの回転速度Vb)で回転させる。そして、この状態で籾摺りロール10A、10B同士の間に籾米1を投入すると、籾摺りロール10Aと籾摺りロール10Bとの周速差により籾米1から籾殻が脱ぷされることとなる。
上記籾摺りロールの使用時における、籾摺りロール10Aと籾摺りロール10Bとの隙間の距離Lや、籾摺りロール10A及び籾摺りロール10Bのそれぞれの回転速度(周速度)Va、Vbは特に限定されず、籾摺機の仕様、投入する籾米の種類や乾燥率、処理速度、脱ぷ率等の各種条件に応じて適宜設定すれば良い。
10、10A、10B 籾摺りロール
11 しん材部
11a 取付用フランジ
11b 外周面
12 ゴム層
111、111A、111B、111C 凸部
20 金型
22 熱硬化性ウレタン組成物

Claims (4)

  1. 円筒状のしん材部と、前記しん材部の外周面に積層されたゴム層とを備えた籾摺りロールであって、
    前記ゴム層は、ポリオール成分、イソシアネート成分及び架橋剤を含有する熱硬化性ウレタン組成物の硬化物からなり、
    前記しん材部の外周面には、周方向に設けられた複数の凸部が幅方向に並設され、
    前記複数の凸部のうち、幅方向両端側に設けられた各凸部は、それぞれ前記しん材部の幅方向の端部からの距離が4mm以下であり、
    前記複数の凸部は、隣接する凸部同士の距離が2〜5mmである、籾摺りロール。
  2. 前記しん材部の幅方向両端側に設けられた各凸部は、それぞれ前記しん材部の幅方向の端部からの距離が2mm以下である、請求項1に記載の籾摺りロール。
  3. 前記凸部の高さは、0.2〜0.5mmである、請求項1又は2に記載の籾摺りロール。
  4. 前記凸部の表面は、断面形状において円弧のみで構成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の籾摺りロール。
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