JP2021038890A - 車両用空調装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車室内の空調と冷却対象物の冷却を行う際に、空調能力の維持を図ると共に、冷却対象物の冷却効率の低下を最小限に抑制できる車両用空調装置を提供する。【解決手段】車両用空調装置1は、冷凍サイクル装置10と、空調用電磁弁14a及び電池用電磁弁14bと、切替制御部50aと、冷却用流量制御部50bと、最小開度決定部50cとを有している。冷凍サイクル装置10は、圧縮機11と、空調用蒸発器16と、右側電池用蒸発器19a及び左側電池用蒸発器19bと、右側電池用膨張弁18a及び左側電池用膨張弁18bとを有している。最小開度決定部50cは、ステップS414において、右側電池用膨張弁18a及び左側電池用膨張弁18bの最小開度を決定する。最小開度決定部50cは、空調冷却サイクルにおける最小開度を、冷却単独サイクルにおける最小開度よりも小さな値に決定する。【選択図】図14

Description

本発明は、車室内の空調と、車両に搭載された冷却対象物の冷却を行う車両用空調装置に関する。
従来、車両用空調装置に関する技術として、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1の空調用回路は、エバポレータと冷媒冷却材熱交換部を並列に配置している。従って、特許文献1によれば、エバポレータを用いた冷房と、冷媒冷却材熱交換部及びバッテリ冷却回路を介したバッテリの冷却を実現することができる。
この回路構成にて冷房とバッテリの冷却を並行して行うと、バッテリの冷却の影響によって、冷房側の吸熱量が低下してしまう。この為、特許文献1では、冷房とバッテリの冷却を行う場合、空調負荷が高いほどバッテリを介した冷却水の循環量を低減して、空調能力の低下を抑制している。
特開2014−235897号公報
しかしながら、特許文献1の構成のように、冷却水の循環量を低減したとしても、冷媒冷却材熱交換部の温度が高いと、大量の冷媒がバッテリ冷却側にとられ、空調側のエバポレータに対する冷媒量が不足がちになってしまう。これにより、空調と冷却対象物であるバッテリの冷却を行う場合には、吹出温度の上昇による快適性の低下や、車室内の除湿量の低下が生じることが想定される。
又、冷媒には冷凍機油が含まれており、冷媒流量が低下すると、冷凍機油の滞留が発生する場合がある。冷凍機油の滞留が発生すると、圧縮機の動作に影響を及ぼし、空調能力にも影響が及ぶことが想定される。
本開示は、これらの点に鑑みてなされており、車室内の空調と冷却対象物の冷却を行う際に、空調能力の維持を図ると共に、冷却対象物の冷却効率の低下を最小限に抑制できる車両用空調装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の車両用空調装置は、冷凍サイクル装置(10)と、切替部(14a、14b)と、切替制御部(50a)と、冷却用流量制御部(50b)と、最小開度決定部(50c)とを有している。
冷凍サイクル装置は、圧縮機(11)と、空調用蒸発部(16)と、冷却用蒸発部(19a、19b)と、冷却用流量調整部(18a、18b)とを有している。圧縮機は、冷凍機油が混入された冷媒を圧縮して吐出する。空調用蒸発部は、車室内へ送風される空調用送風空気を冷却する為に冷媒を蒸発させる。
冷却用蒸発部は、冷媒の流れに関して空調用蒸発部に並列に接続され、冷却対象物(70)を冷却する為に冷媒を蒸発させる。冷却用流量調整部は、冷却用蒸発部へ流入する冷媒の流量を調整する。
切替部は、空調用蒸発部及び冷却用蒸発部へ冷媒を流入させる空調冷却サイクルと、空調用蒸発部へ冷媒を流入させることを禁止すると共に冷却用蒸発部へ冷媒を流入させる冷却単独サイクルとを切り替える。切替制御部は、切替部による空調冷却サイクルと冷却単独サイクルとの切り替えを制御する。冷却用流量制御部は、冷却用流量調整部の作動を制御する。
最小開度決定部は、冷却用流量調整部における絞り開度の下限値である最小開度を決定する。最小開度決定部は、空調冷却サイクルにおける最小開度を、冷却単独サイクルにおける最小開度よりも小さな値に決定する。
これによれば、空調冷却サイクルにおける冷却用流量調整部における絞り開度の最小開度は、最小開度決定部によって、冷却単独サイクルの最小開度よりも小さな値に決定される。空調冷却サイクルでは、空調用蒸発部を介した冷媒経路と、冷却用蒸発部を介した冷媒経路が存在する為、空調用蒸発部を介した冷媒経路によって、冷凍機油を圧縮機に戻すことができる。
従って、冷却用流量調整部の絞り開度における最小開度を冷却単独サイクルの最小開度よりも小さくして、可能な限り絞ることができ、空調冷却サイクルにおける空調用蒸発部を通過する冷媒量の減少を抑制することができる。即ち、車両用空調装置は、空調冷却サイクルにおける空調用蒸発部の温度上昇を抑制して、空調能力を維持すると共に、冷却用蒸発部における冷却対象物の冷却効率の低下を抑制することができる。
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
一実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。 一実施形態の車両用空調装置の電気制御部を示すブロック図である。 一実施形態の車両用空調装置の自動空調制御の制御処理を示すフローチャートである。 一実施形態の車両用空調装置の制御処理における空調用送風機の風量を決定する制御特性図である。 一実施形態の車両用空調装置の制御処理の一部を示すフローチャートである。 一実施形態の車両用空調装置の制御処理における水加熱ヒータの作動状態を決定する制御特性図である。 一実施形態の車両用空調装置の制御処理における目標熱媒体温度を決定する制御特性図である。 一実施形態の車両用空調装置の制御処理の別の一部を示すフローチャートである。 一実施形態の車両用空調装置の制御処理の別の一部を示すフローチャートである。 一実施形態の車両用空調装置の制御処理の別の一部を示すフローチャートである。 一実施形態の車両用空調装置の制御処理の別の一部を示すフローチャートである。 一実施形態の車両用空調装置の制御処理における空調電池要件を示す図表である。 一実施形態の車両用空調装置の制御処理の別の一部を示すフローチャートである。 一実施形態の車両用空調装置の制御処理の別の一部を示すフローチャートである。 一実施形態の車両用空調装置の制御処理における電池冷却作動の可否を示す図表である。 一実施形態の車両用空調装置の制御処理における蒸発器温度判定値f2を決定する制御特性図である。 一実施形態の車両用空調装置の制御処理における補正値β1を示す図表である。 一実施形態の車両用空調装置の制御処理におけるヒステリシスβ2を示す図表である。 一実施形態の車両用空調装置の制御処理における内気温判定値f1を決定する制御特性図である。 一実施形態の車両用空調装置の制御処理における補正値α1を示す図表である。 一実施形態の車両用空調装置の制御処理における経過時間判定値f3を決定する制御特性図である。 一実施形態の車両用空調装置の制御処理における基準経過時間TIMERを示す図表である。 一実施形態の車両用空調装置の制御処理における制限時間LTopを決定するため制御特性図である。 一実施形態の車両用空調装置の制御処理における制限時間LTopを決定するため制御特性図である。 一実施形態の車両用空調装置の制御処理における右側オイル回収用開度ODOR、左側オイル回収用開度ODOLの決定に関する図表である。 一実施形態の車両用空調装置の制御処理における外気ファンの稼働率を決定する制御特性図である。 一実施形態の車両用空調装置の冷凍サイクル装置における冷媒回路の切替を示す図表である。
以下、図面を用いて、本発明に係る車両用空調装置1の一実施形態を説明する。本実施形態の車両用空調装置1は、車両走行用の駆動力を電動モータから得る電気自動車に搭載されている。本実施形態の車両用空調装置1は、電気自動車において、空調対象空間である車室内の空調を行うとともに、冷却対象物であるバッテリ70を冷却する冷却機能付きの車両用空調装置である。
バッテリ70は、電動モータ等の車載機器へ供給される電力を蓄える二次電池である。バッテリ70は、複数の電池セルを電気的に直列的あるいは並列的に接続することによって形成された組電池である。
電池セルは、充放電可能な二次電池である。本実施形態では、電池セルとして、リチウムイオン電池を採用している。それぞれの電池セルは、扁平な直方体形状に形成されている。それぞれの電池セルは、平坦面同士が対向するように積層配置されて一体化されている。このため、バッテリ70全体としても略直方体形状に形成されている。
この種のバッテリ70は、低温になると出力が低下しやすく、高温になると劣化が進行しやすい。このため、バッテリ70の温度は、バッテリ70が充分な充放電性能を発揮することのできる適切な温度範囲内(本実施形態では、15℃以上、かつ、55℃以下)に維持されている必要がある。
さらに、複数の電池セルを電気的に接続することによって形成されたバッテリ70は、いずれかの電池セルの性能が低下してしまうと、組電池全体としての性能が低下してしまう。このため、バッテリ70を冷却する際には、全ての電池セルを均等に冷却することが望ましい。
本実施形態の車両用空調装置1は、図1に示す冷凍サイクル装置10、熱媒体回路20、室内空調ユニット30、電池パック40、および図2に示す空調制御装置50等を備えている。
まず、冷凍サイクル装置10について説明する。冷凍サイクル装置10は、車両用空調装置1において、車室内へ送風される空調用送風空気、およびバッテリ70に吹き付けられる冷却用送風空気を冷却する。冷凍サイクル装置10は、冷媒回路として、電池単独サイクル、空調単独サイクル、空調電池サイクルを切り替えることができる。
空調単独サイクルは、冷却用送風空気を冷却することなく空調用送風空気を冷却する際に切り替えられる冷媒回路である。より詳細には、空調単独サイクルは、後述する右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19bへ冷媒を流入させることなく、後述する空調用蒸発器16へ冷媒を流入させる冷媒回路である。
電池単独サイクルは、空調用送風空気を冷却することなく冷却用送風空気を冷却する際に切り替えられる冷媒回路である。より詳細には、電池単独サイクルは、空調用蒸発器16へ冷媒を流入させることなく、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19bへ冷媒を流入させる冷媒回路である。電池単独サイクルは冷却単独サイクルの一例である。
空調電池サイクルは、空調用送風空気および冷却用送風空気の双方を冷却する際等に切り替えられる冷媒回路である。より詳細には、空調電池サイクルは、空調用蒸発器16へ冷媒を流入させるとともに、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19bへ冷媒を流入させる冷媒回路である。
冷凍サイクル装置10では、冷媒として、HFO系冷媒(具体的には、R1234yf)を採用している。冷凍サイクル装置10は、高圧側の冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成する。冷媒には、圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されている。本実施形態では、冷凍機油として、液相冷媒に相溶性を有するPAGオイル(ポリアルキレングリコールオイル)を採用している。冷凍機油の一部は、冷媒とともにサイクルを循環している。
圧縮機11は、冷凍サイクル装置10において、冷媒を吸入し、圧縮して吐出する。圧縮機11は、車両の前方側の駆動装置室に配置されている。駆動装置室は、車両走行用の駆動力の発生あるいは調整のために用いられる機器(例えば、電動モータ)等の少なくとも一部が配置される空間を形成している。
圧縮機11は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機11は、空調制御装置50から出力された制御信号によって、回転数(すなわち、冷媒吐出能力)が制御される。
圧縮機11の吐出口には、凝縮器12の冷媒入口側が接続されている。凝縮器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と外気ファン12aから送風された外気とを熱交換させる。凝縮器12は、冷媒の有する熱を外気へ放熱させて、冷媒を凝縮させる凝縮用の熱交換部である。凝縮器12は、駆動装置室の前方側に配置されている。凝縮器12は、放熱部の一例である。
外気ファン12aは、凝縮器12へ向けて外気を送風する電動送風機である。外気ファン12aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、送風能力)が制御される。外気ファン12aは送風ファンの一例である。外気ファン12aは、凝縮器12へ外気を送ることができれば、吸込方式のファンを採用してもよいし、吹出方式のファンを採用してもよい。
凝縮器12の冷媒出口側には、レシーバ12bが接続されている。レシーバ12bは、凝縮器12から流出した冷媒の気液を分離して、分離された液相冷媒の一部を下流側に流出させるとともに、残余の液相冷媒をサイクルの余剰冷媒として蓄える受液部である。本実施形態の凝縮器12とレシーバ12bは、一体的に形成されている。
レシーバ12bの出口には、レシーバ12bから流出した冷媒の流れを分岐する分岐部13aの流入口側が接続されている。分岐部13aは、互いに連通する3つの流入出口を有する三方継手である。分岐部13aでは、3つの流入出口のうちの1つを流入口として用い、残りの2つを流出口として用いている。
分岐部13aの一方の流出口には、空調用電磁弁14aを介して、空調用膨張弁15の入口側が接続されている。分岐部13aの他方の流出口には、電池用電磁弁14bを介して、電池側分岐部13cの流入口側が接続されている。
空調用電磁弁14aは、分岐部13aの一方の流出口から空調用膨張弁15の入口へ至る冷媒通路を開閉する空調用開閉部である。空調用電磁弁14aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、開閉作動が制御される。冷凍サイクル装置10では、空調用電磁弁14aが冷媒通路を開閉することによって、冷媒回路を切り替えることができる。従って、空調用電磁弁14aは、冷媒回路の切替部である。
空調用膨張弁15は、分岐部13aの一方の流出口から流出した冷媒を低圧冷媒となるまで減圧させる空調用減圧部である。さらに、空調用膨張弁15は、空調用蒸発器16へ流入する冷媒流量を調整する空調用流量調整部である。
本実施形態では、空調用膨張弁15として、機械的機構で構成された温度式膨張弁を採用している。より具体的には、空調用膨張弁15は、空調用蒸発器16の出口側冷媒の温度および圧力に応じて変形する変形部材(具体的には、ダイヤフラム)を有する感温部と、変形部材の変形に応じて変位して絞り開度を変化させる弁体部とを有している。
これにより、空調用膨張弁15では、空調用蒸発器16の出口側の冷媒の過熱度が予め定めた基準過熱度(本実施形態では、5℃)に近づくように、絞り開度を変化させる。ここで、機械的機構とは、電力の供給を必要とすることなく、流体圧力による荷重や弾性部材による荷重等によって作動する機構を意味している。
空調用膨張弁15の出口には、空調用蒸発器16の冷媒入口側が接続されている。空調用蒸発器16は、空調用膨張弁15にて減圧された低圧冷媒と空調用送風空気とを熱交換させる。空調用蒸発器16は、空調用送風空気を冷却するために低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる空調用蒸発部である。空調用蒸発器16は、室内空調ユニット30の空調用ケーシング31内に配置されている。
空調用蒸発器16の出口には、逆止弁17を介して、合流部13bの一方の流入口側が接続されている。逆止弁17は、空調用蒸発器16の出口側から合流部13bの一方の流入口側へ冷媒が流れることを許容し、合流部13bの一方の流入口側から空調用蒸発器16の出口側へ冷媒が流れることを禁止する。
合流部13bは、分岐部13aと同様の三方継手である。合流部13bでは、3つの流入出口のうちの2つを流入口として用い、残りの1つを流出口として用いている。合流部13bの流出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
また、電池用電磁弁14bは、分岐部13aの他方の流出口から電池側分岐部13cの流入口へ至る冷媒通路を開閉する冷却用開閉部である。電池用電磁弁14bの基本的構成は、空調用電磁弁14aと同様である。冷凍サイクル装置10では、電池用電磁弁14bが冷媒通路を開閉することによって、冷媒回路を切り替えることができる。従って、電池用電磁弁14bは、空調用電磁弁14aとともに、冷媒回路の切替部である。
電池側分岐部13cは、分岐部13aと同様の構成の三方継手である。電池側分岐部13cの一方の流出口には、右側電池用膨張弁18aの入口側が接続されている。電池側分岐部13cの他方の流出口には、左側電池用膨張弁18bの入口側が接続されている。
右側電池用膨張弁18aは、電池側分岐部13cの一方の流出口から流出した冷媒を低圧冷媒となるまで減圧させる冷却用減圧部である。さらに、右側電池用膨張弁18aは、右側電池用蒸発器19aへ流入する冷媒流量を調整する冷却用流量調整部である。
本実施形態では、右側電池用膨張弁18aとして、電気的機構で構成された電気式膨張弁を採用している。より具体的には、右側電池用膨張弁18aは、絞り開度を変化させる弁体部と、弁体部を変位させる電動アクチュエータ(具体的には、ステッピングモータ)を有している。
右側電池用膨張弁18aは、空調制御装置50から出力される制御パルスによって、その作動が制御される。さらに、右側電池用膨張弁18aは、絞り開度を全閉とすることで、冷媒通路を閉塞する全閉機能を有している。ここで、電気的機構とは、電力が供給されることによって作動する機構を意味している。
右側電池用膨張弁18aの出口には、右側電池用蒸発器19aの冷媒入口側が接続されている。右側電池用蒸発器19aは、右側電池用膨張弁18aにて減圧された低圧冷媒と熱交換部を通過する冷却用送風空気とを熱交換させる。右側電池用蒸発器19aは、バッテリ70を冷却するために低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることによって、冷却用送風空気を冷却する冷却用蒸発部である。
左側電池用膨張弁18bは、電池側分岐部13cの他方の流出口から流出した冷媒を低圧冷媒となるまで減圧させる冷却用減圧部である。さらに、左側電池用膨張弁18bは、左側電池用蒸発器19bへ流入する冷媒流量を調整する冷却用流量調整部である。左側電池用膨張弁18bの基本的構成は、右側電池用膨張弁18aと同様である。
左側電池用膨張弁18bの出口には、左側電池用蒸発器19bの冷媒入口側が接続されている。左側電池用蒸発器19bは、左側電池用膨張弁18bにて減圧された低圧冷媒と熱交換部を通過する冷却用送風空気とを熱交換させる。左側電池用蒸発器19bは、バッテリ70を冷却するために低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることによって、冷却用送風空気を冷却する冷却用蒸発部である。
従って、本実施形態の冷却用蒸発部は、複数設けられている。複数の冷却用蒸発部は、冷媒流れに対して相互に並列的に接続されている。また、冷却用流量調整部は、複数の冷却用蒸発部と同数設けられている。それぞれの冷却用流量調整部は、それぞれの冷却用蒸発部の冷媒流れ上流側に配置されて、それぞれの冷却用蒸発部へ流入する冷媒流量を個別に調整できるようになっている。
右側電池用蒸発器19aの出口には、電池側合流部13dの一方の流入口側が接続されている。左側電池用蒸発器19bの出口には、電池側合流部13dの他方の流入口側が接続されている。電池側合流部13dは、合流部13bと同様の構成の三方継手である。電池側合流部13dの流出口には、合流部13bの他方の流入口側が接続されている。
上述した右側電池用膨張弁18a、左側電池用膨張弁18b、右側電池用蒸発器19a、左側電池用蒸発器19b、および電池側合流部13dは、電池パック40の電池用ケーシング41内に配置されている。
ここで、空調用蒸発器16、右側電池用蒸発器19a、および左側電池用蒸発器19bの詳細構成について説明する。冷凍サイクル装置10では、空調用蒸発部(すなわち、空調用蒸発器16)と冷却用蒸発部(すなわち、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19b)が、冷媒の流れに対して並列的に接続されている。さらに、空調用蒸発器16、右側電池用蒸発器19a、および左側電池用蒸発器19bとして、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器を採用している。
タンクアンドチューブ型の熱交換器は、複数の冷媒チューブと一対のタンクとを有している。冷媒チューブは、内部に冷媒を流通させる金属製の管である。複数の冷媒チューブは、間隔を空けて所定方向に積層配置されている。隣り合う冷媒チューブ同士の間には、冷媒と熱交換する空気を流通させる空気通路が形成される。
タンクは、複数の冷媒チューブの積層方向に延びる金属製の有底筒状部材である。一対のタンクは、それぞれ複数の冷媒チューブの両端部に接続されている。タンクの内部には、複数の冷媒チューブへ冷媒を分配する分配空間、および複数の冷媒チューブから流出した冷媒を集合させる集合空間が形成されている。
これにより、各冷媒チューブを流通する冷媒と空気通路を流通する空気とを熱交換させる熱交換コア部が形成されている。空気通路には、冷媒と空気との熱交換を促進させる熱交換フィンが配置されている。従って、タンクアンドチューブ型の熱交換器における冷媒と空気との熱交換面積は、空気の流れ方向から見たときの熱交換コア部の正面面積(換言すると、投影面積)と熱交換フィンの表面積の合計値によって定義することができる。
そして、本実施形態では、空調用蒸発器16として、その熱交換面積が、右側電池用蒸発器19aの熱交換面積と左側電池用蒸発器19bの熱交換面積の合計値よりも大きいものを採用している。さらに、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19bについては、熱交換面積が同等のものを採用している。
バッテリ70を冷却するための右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19bの必要冷却能力(換言すれば必要熱交換能力)の合計は、空調用蒸発器16で空調用送風空気を冷却するための必要冷却能力よりも小さい。
次に、熱媒体回路20について説明する。熱媒体回路20は、空調用送風空気と熱交換させる熱媒体を循環させる回路である。熱媒体回路20では、熱媒体として、エチレングリコール水溶液を採用している。熱媒体回路20は、水ポンプ21、水加熱ヒータ22、ヒータコア23、およびリザーブタンク24を有している。
水ポンプ21は、水加熱ヒータ22へ向けて熱媒体を圧送する。水ポンプ21は、インペラ(すなわち、羽根車)を電動モータで回転駆動する電動式の羽根車ポンプである。水ポンプ21は、駆動装置室に配置されている。水ポンプ21は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、回転数(圧送能力)が制御される。
水加熱ヒータ22は、水ポンプ21から圧送された熱媒体を加熱する熱媒体加熱部である。水加熱ヒータ22は、PTC素子(すなわち、正特性サーミスタ)を有するPTCヒータである。水加熱ヒータ22は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、発熱量が制御される。
水加熱ヒータ22の下流側には、ヒータコア23の熱媒体入口側が接続されている。ヒータコア23は、水加熱ヒータ22にて加熱された熱媒体と空調用送風空気を熱交換させる。ヒータコア23は、熱媒体の有する熱を空調用送風空気に放熱させて、空調用送風空気を加熱する加熱用の熱交換部である。ヒータコア23は、室内空調ユニット30の空調用ケーシング31内に配置されている。
ヒータコア23の熱媒体出口には、リザーブタンク24の入口側が接続されている。リザーブタンク24は、熱媒体回路20で余剰となっている熱媒体を貯留する貯留部である。熱媒体回路20では、リザーブタンク24を配置することで、熱媒体回路20を循環する熱媒体の液量低下を抑制している。リザーブタンク24は、熱媒体回路20内の熱媒体の量が不足した際に熱媒体を補給するための供給口を有している。
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内の空調のために適切な温度に調整された空調用送風空気を、車室内の適切な箇所へ吹き出すためのユニットである。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されている。
室内空調ユニット30は、空調用送風空気の空気通路を形成する空調用ケーシング31内に、空調用送風機32、空調用蒸発器16、ヒータコア23等を収容したものである。空調用ケーシング31は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。空調用ケーシング31内には、内部に空調用送風空気が流れる空気通路が形成されている。
空調用ケーシング31の送風空気流れ最上流側には、内外気切替装置33が配置されている。内外気切替装置33は、空調用ケーシング31内へ導入される内気(すなわち、車室内空気)および外気(すなわち、車室外空気)の導入割合を調整する。内外気切替装置33は、空調用ケーシング31内に配置された空調用蒸発器16へ流入する空調用送風空気中の外気の割合である外気率を調整する内外気調整部である。
より具体的には、内外気切替装置33には、空調用ケーシング31内へ内気を導入させる内気導入口33a、および外気を導入させる外気導入口33bが形成されている。内外気切替装置33の内部には、内気導入口33aおよび外気導入口33bの開口面積を連続的に調整する内外気切替ドア33cが配置されている。
従って、内外気切替装置33では、内外気切替ドア33cを変位させることによって、空調用ケーシング31内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合(すなわち、外気率)を調整する。内外気切替ドア33cは、内外気切替装置用の電動アクチュエータ33eによって駆動される。内外気切替装置用の電動アクチュエータ33eは、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
内外気切替装置33の送風空気流れ下流側には、空調用送風機32が配置されている。空調用送風機32は、内外気切替装置33を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する。空調用送風機32は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機である。空調用送風機32は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、送風能力)が制御される。空調用送風機32は空調用送風部の一例である。
空調用送風機32の送風空気流れ下流側には、空調用蒸発器16とヒータコア23が、送風空気流れに対して、この順に配置されている。つまり、空調用蒸発器16は、ヒータコア23よりも、送風空気流れ上流側に配置されている。
空調用ケーシング31内には、空調用蒸発器16通過後の空調用送風空気を、ヒータコア23を迂回させて流す冷風バイパス通路35が設けられている。空調用ケーシング31内の空調用蒸発器16の送風空気流れ下流側であって、かつ、ヒータコア23の送風空気流れ上流側には、エアミックスドア34が配置されている。
エアミックスドア34は、空調用蒸発器16通過後の空調用送風空気のうち、ヒータコア23側を通過させる風量と冷風バイパス通路35を通過させる風量との風量割合を調整する風量割合調整部である。エアミックスドア34は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ34aによって駆動される。エアミックスドア用の電動アクチュエータ34aは、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
空調用ケーシング31内のヒータコア23および冷風バイパス通路35の送風空気流れ下流側には、混合空間36が形成されている。混合空間36は、ヒータコア23にて加熱された空調用送風空気と冷風バイパス通路35を通過して加熱されていない空調用送風空気とを混合させる空間である。
空調用ケーシング31の送風空気流れ下流部には、混合空間36にて混合されて温度調整された空調用送風空気を、車室内へ吹き出すための開口穴が配置されている。
開口穴としては、フェイス開口穴37a、フット開口穴37b、およびデフロスタ開口穴37cが設けられている。フェイス開口穴37aは、乗員の上半身側に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴37bは、乗員の足元側に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴37cは、フロント窓ガラス内面側に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
フェイス開口穴37a、フット開口穴37b、およびデフロスタ開口穴37cは、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
従って、エアミックスドア34が、ヒータコア23を通過させる風量と冷風バイパス通路35を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間36にて混合される空調風の温度が調整される。そして、各吹出口から車室内へ吹き出される空調用送風空気(すなわち、空調風)の温度が調整される。
また、フェイス開口穴37a、フット開口穴37b、およびデフロスタ開口穴37cの送風空気流れ上流側には、フェイスドア38a、フットドア38b、およびデフロスタドア38cが配置されている。フェイスドア38aは、フェイス開口穴37aの開口面積を調整する。フットドア38bは、フット開口穴37bの開口面積を調整する。デフロスタドア38cは、フロスタ開口穴の開口面積を調整する。
フェイスドア38a、フットドア38b、およびデフロスタドア38cは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替部を形成している。フェイスドア38a、フットドア38b、およびデフロスタドア38cは、リンク機構等を介して、吹出口モードドア用の電動アクチュエータ38dによって連動して回転操作される。吹出口モードドア用の電動アクチュエータ38dは、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
吹出口モード切替部によって切り替えられる吹出口モードとしては、具体的に、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード等がある。
フェイスモードは、フェイス吹出口を全開としてフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。バイレベルモードは、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。フットモードは、フット吹出口を全開とするとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出す吹出口モードである。
さらに、乗員が操作パネル60に設けられた吹出口モード切の切替スイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタモードに切り替えることもできる。デフロスタモードは、デフロスタ吹出口を全開としてデフロスタ吹出口からフロント窓ガラス内面に空気を吹き出す吹出口モードである。
次に、電池パック40について説明する。電池パック40は、バッテリ70を冷却可能に収容するパッケージである。
電池パック40は、車室の床下に配置されている。電池パック40は、冷却用送風空気の空気通路を形成する電池用ケーシング41の内に、冷却用送風機42、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19b等を収容したものである。電池用ケーシング41は、電気的絶縁処理および断熱処理が施された金属製の密閉ケースである。
電池用ケーシング41内には、冷却用空間43、右側空気通路44a、左側空気通路44b、電池用空間45が形成されている。電池用空間45は、バッテリ70を収容する空間である。冷却用空間43は、冷却用送風機42、右側電池用蒸発器19a、左側電池用蒸発器19b等が収容される空間である。
電池用空間45および冷却用空間43は、互いに連通している。冷却用送風機42は、電池用空間45から吸い込んだ冷却用送風空気を、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19bの双方へ向けて送風する電動送風機である。冷却用送風機42の基本的構成は、空調用送風機32と同様である。冷却用送風機42は、冷却用送風部の一例である。本実施形態では、冷却用送風機42として、最大送風能力が空調用送風機32の最大送風能力よりも小さいものが採用されている。
右側空気通路44aは、右側電池用蒸発器19aを通過した冷却用送風空気を流通させる空気通路である。右側空気通路44aは、右側電池用蒸発器19aを通過した冷却用送風空気をバッテリ70の積層方向から見たときに、バッテリ70の右側へ導く。換言すると、右側空気通路44aは、冷却用送風空気を複数の電池セルの一方の端面側へ導く。
左側空気通路44bは、左側電池用蒸発器19bを通過した冷却用送風空気を流通させる空気通路である。左側空気通路44bは、左側電池用蒸発器19bを通過した冷却用送風空気をバッテリ70の積層方向から見たときに、バッテリ70の左側へ導く。換言すると、左側空気通路44bは、冷却用送風空気を複数の電池セルの他方の端面側へ導く。
また、本実施形態の車両用空調装置1は、ステアリングヒータ91、シート送風装置92、シートヒータ93、および膝輻射ヒータ94を備えている。ステアリングヒータ91、シート送風装置92、シートヒータ93、および膝輻射ヒータ94は、車室内の暖房の行う際に乗員の暖房感を向上させる暖房補助装置である。暖房補助装置は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
より具体的には、ステアリングヒータ91は、電気ヒータでステアリングを加熱するステアリング加熱部である。シート送風装置92、座席の内側から乗員に向けて空気を送風するシート送風部である。シートヒータ93は、電気ヒータで乗員が着座する座席の表面を加熱するシート加熱部である。膝輻射ヒータ94は、熱源光を乗員の膝に向けて照射する膝用加熱部である。
次に、図2を用いて、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。空調制御装置50は、ROM内に記憶された制御プログラムに基づいて、各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。
空調制御装置50の入力側には、各種センサ群が接続されている。各種のセンサ群は、内気センサ51、外気センサ52、日射センサ53、高圧冷媒圧力センサ54、空調用蒸発器温度センサ55、右側冷却用蒸発器温度センサ56a、左側冷却用蒸発器温度センサ56bを含んでいる。更に、各種のセンサ群には、冷却用蒸発器圧力センサ57、水温センサ58、電池温度センサ59、湿度センサ59a等が含まれている。
内気センサ51は、車室内温度である内気温Trを検出する内気温度検出部である。外気センサ52は、外気温Tamを検出する外気温度検出部である。日射センサ53は、車室内の日射量Tsを検出する日射量検出部である。
高圧冷媒圧力センサ54は、高圧側の冷媒圧力Phを検出する高圧冷媒圧力検出部である。本実施形態の高圧冷媒圧力センサ54は、レシーバ12bから流出した冷媒の圧力を検出している。
空調用蒸発器温度センサ55は、空調用蒸発器16の温度である空調用蒸発器温度TEを検出する空調用蒸発部温度検出部である。本実施形態の空調用蒸発器温度センサ55では、空調用蒸発器16の熱交換フィン温度を検出している。このため、空調用蒸発器温度TEは、空調用蒸発器16から吹き出される空調用送風空気の温度と同等の値となる。
右側冷却用蒸発器温度センサ56aは、右側電池用蒸発器19aから流出した冷媒の温度である右側冷却用蒸発器温度TEBRを検出する冷却用蒸発部温度検出部である。本実施形態の右側冷却用蒸発器温度センサ56aでは、右側電池用蒸発器19aの出口から電池側合流部13dへ至る冷媒配管の温度を検出している。
左側冷却用蒸発器温度センサ56bは、左側電池用蒸発器19bから流出した冷媒の温度である左側冷却用蒸発器温度TEBLを検出する冷却用蒸発部温度検出部である。本実施形態の左側冷却用蒸発器温度センサ56bでは、左側電池用蒸発器19bの出口から電池側合流部13dへ至る冷媒配管の温度を検出している。
冷却用蒸発器圧力センサ57は、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19bから流出した冷媒の圧力である冷却用蒸発器圧力PEBを検出する冷却用蒸発部圧力検出部である。水温センサ58は、水加熱ヒータ22の出口側の熱媒体温度TWを検出する熱媒体温度検出部である。
電池温度センサ59は、電池温度TB(すなわち、バッテリ70の温度)を検出する電池温度検出部である。本実施形態の電池温度センサ59は、複数の温度センサを有し、バッテリ70の複数の箇所の温度を検出している。このため、空調制御装置50では、バッテリ70の各部の温度差を検出することもできる。さらに、電池温度TBとしては、複数の温度センサの検出値の平均値を採用している。
湿度センサ59aは、車室内のフロント窓ガラス近傍の相対湿度である窓近傍湿度RHWを検出する湿度検出部である。
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60が接続されている。空調制御装置50には、操作パネル60に設けられた各種スイッチの操作信号が入力される。
操作パネル60に設けられた操作スイッチは、具体的に、エアコンスイッチ60a、オートスイッチ60b、吸込口モードの切替スイッチ60c、吹出口モードの切替スイッチ60dを含んでいる。更に、操作スイッチには、風量設定スイッチ60e、エコノミースイッチ60f、温度設定スイッチ60g等が含まれている。
エアコンスイッチ60aは、乗員の操作によって空調用蒸発器16にて空調用送風空気の冷却を行うことを要求する空調用冷却要求部である。オートスイッチ60bは、乗員の操作によって車両用空調装置1の自動空調制御を設定あるいは解除する自動制御設定部である。
吸込口モードの切替スイッチ60cは、乗員の操作によって吸込口モードを切り替える吸込口モード設定部である。吹出口モードの切替スイッチ60dは、乗員の操作によって吹出口モードを切り替える吹出口モード設定部である。
風量設定スイッチ60eは、空調用送風機32の送風量を手動設定するための風量設定部である。温度設定スイッチ60gは、乗員の操作によって車室内目標温度Tsetを設定する目標温度設定部である。エコノミースイッチ60fは、乗員の操作によって冷凍サイクル装置10の省動力化を要求する省動力化要求部である。
また、空調制御装置50は、その他の車両用制御装置80に電気的に接続されている。その他の車両用制御装置80としては、車両走行用の駆動力を出力する電動モータの作動を制御する駆動力制御装置等が該当する。
空調制御装置50と車両用制御装置80は、互いに通信可能に接続されている。従って、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、車両用制御装置80が、空調制御装置50に入力された電池温度TBを用いて、車両走行用の電動モータの出力を変化させることができる。
なお、空調制御装置50は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものである。空調制御装置50において、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)は、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成する。
例えば、空調制御装置50のうち、切替部である空調用電磁弁14a及び電池用電磁弁14bの作動を制御する構成が、切替制御部50aである。又、空調制御装置50のうち、右側電池用膨張弁18a及び左側電池用膨張弁18bの作動を制御する構成が、冷却用流量制御部50bである。
そして、空調制御装置50のうち、右側電池用膨張弁18a及び左側電池用膨張弁18bにおける絞り開度の下限値である最小開度を決定する構成が、最小開度決定部50cとなる。又、空調制御装置50のうち、冷却用蒸発部(即ち、右側電池用蒸発器19a及び左側電池用蒸発器19b)の内部に滞留している冷凍機油の循環を促すオイル回収制御を行う構成が、オイル回収制御部50dである。
空調制御装置50のうち、オイル回収制御における圧縮機11の冷媒吐出能力の下限値を決定する構成は、下限値決定部50eである。そして、空調制御装置50のうち、圧縮機11の冷媒吐出能力の上限値を決定する構成が、上限値決定部50fである。更に、空調制御装置50のうち、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する構成は、冷媒吐出能力制御部50gである。
又、空調制御装置50のうち、内外気調整部である内外気切替装置33用の電動アクチュエータ33eの作動を制御する構成は、内外気制御部50hである。そして、空調制御装置50のうち、送風ファンである外気ファン12aの作動を制御する構成は、ファン制御部50iである。
次に、図3〜図27を用いて、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動を説明する。図3は、本実施形態の車両用空調装置1のメインルーチンとしての制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両システムが起動している状態で、オートスイッチ60bが投入(ON)されるとスタートする。各図のフローチャートに記載された各制御ステップは、空調制御装置50が有する各種の機能実現部である。
まず、図3のステップS1では、空調制御装置50の記憶回路によって構成されるフラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータ(具体的には、ステッピングモータ)の初期位置合わせ等のイニシャライズが行われる。
なお、ステップS1のイニシャライズでは、フラグや演算値のうち、前回の車両用空調装置の停止時や車両システム終了時に記憶された値が読み出されるものもある。また、電池冷却作動可否の初期値が設定される。電池冷却作動可否の初期値は「電池冷却作動許可」、「電池冷却作動禁止」のいずれであってもよい。
次に、ステップS2では、操作パネル60の操作信号等を読み込んでステップS3へ進む。続くステップS3では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述したセンサ群の検出信号を読み込む。さらに、ステップS3では、車両用制御装置80の入力側に接続されたセンサ群の検出信号、および車両用制御装置80から出力された制御信号を、車両用制御装置80から読み込む。
次に、ステップS4では、下記数式F1を用いて、車室内へ吹き出される送風空気の目標温度としての目標吹出温度TAOを算出する。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
Tsetは、温度設定スイッチ60gによって設定された車室内目標温度である。Trは、内気センサ51によって検出された内気温である。Tamは、外気センサ52によって検出された外気温である。Tsは、日射センサ53によって検出された日射量である。また、Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
次に、ステップS5では、空調用電磁弁14aの開閉状態を決定する。ステップS5では、ステップS2で読み込まれたエアコンスイッチ60aの操作信号に基づいて、空調用蒸発器16にて空調用送風空気の冷却を行うことが要求されている際に、空調用電磁弁14aを開く。
次に、ステップS6では、空調用送風機32によって送風される空調用送風空気の送風量、および冷却用送風機42によって送風される冷却用送風空気の送風量を決定する。
空調用送風機32の送風量については、目標吹出温度TAOに基づいて決定する。具体的には、図4の制御特性図に示すように、目標吹出温度TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)では、空調用送風機32へ印加する空調用ブロワ電圧を最大値(MAX)とし、空調用送風機32の送風量を最大風量とする。
目標吹出温度TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、目標吹出温度TAOの上昇に応じて空調用ブロワ電圧を低下させて、空調用送風機32の送風量を低下させる。目標吹出温度TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、目標吹出温度TAOの低下に応じて空調用ブロワ電圧を低下させて、空調用送風機32の送風量を低下させる。
目標吹出温度TAOが所定の中間温度域内に入ると、空調用ブロワ電圧を最小値(min)として、空調用送風機32の送風量を最小風量とする。
また、冷却用送風機42の送風量については、目標吹出温度TAOや電池温度TBによらず、冷却用送風機42へ印加する冷却用ブロワ電圧を予め定めた基準電圧として、冷却用送風機42の送風量を基準風量とする。冷却用送風機42の基準風量は、空調用送風機32の最小風量以下に設定されている。
この為、冷却用送風機42の送風量は、空調用送風機32の送風量よりも少なくなる。換言すると、冷却用蒸発部にて低圧冷媒と熱交換する冷却用送風空気の風量(本実施形態では、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19bにて熱交換する合計風量)は、空調用蒸発部にて低圧冷媒と熱交換する空調用送風空気の風量よりも少なくなる。
次に、ステップS7では、吸込口モードを決定する。ステップS7の詳細については、図5を用いて説明する。
まず、ステップS71では、電池温度TBが予め定めた基準許容温度KTBmax(本実施形態では、49℃)より高くなっているか否かが判定される。ステップS71にて、電池温度TBが基準許容温度KTBmaxより高くなっていると判定された場合は、ステップS72へ進む。ステップS71にて、電池温度TBが基準許容温度KTBmaxより高くなっていないと判定された場合は、ステップS76へ進む。
ここで、基準許容温度KTBmaxは、電池温度TBが基準許容温度KTBmaxより高くなっている際には、バッテリ70の劣化を抑制するために、バッテリ70の冷却を行う必要がある温度に設定されている。
ステップS72では、外気温Tamが予め定めた基準防曇温度KTamd(本実施形態では、15℃)以下となっているか否かが判定される。ステップS72にて、外気温Tamが基準防曇温度KTamdより低くなっていると判定された場合は、ステップS73へ進む。ステップS72にて、外気温Tamが基準防曇温度KTamd以下になっていないと判定された場合は、ステップS76へ進む。
ここで、基準防曇温度KTamdは、外気温Tamが基準防曇温度KTamd(本実施形態では、15℃)以下となっている際には、フロント窓ガラスに窓曇りが生じ易い温度に設定されている。
ステップS73では、空調用蒸発器温度TEが後述するステップS11にて決定された目標空調用蒸発器温度TEOより高くなっているか否かが判定される。ステップS73にて、空調用蒸発器温度TEが目標空調用蒸発器温度TEOより高くなっていると判定された場合は、ステップS74へ進む。ステップS73にて、空調用蒸発器温度TEが目標空調用蒸発器温度TEOより高くなっていないと判定された場合は、ステップS76へ進む。
ここで、空調用蒸発器温度TEが目標空調用蒸発器温度TEOよりも高くなっている際には、空調用蒸発器16にて空調用送風空気が充分に冷却されておらず、空調用送風空気の除湿が不充分になりやすい。
ステップS74では、後述するステップS14にて決定される電池冷却作動が許可されているか否かが判定される。ステップS74にて、電池冷却作動が許可されていると判定された場合は、ステップS75へ進む。ステップS74にて、電池冷却作動が許可されていないと判定された場合は、ステップS76へ進む。
従って、ステップS75へ進む場合は、バッテリ70の冷却を行う必要があり、フロント窓ガラスに窓曇りが生じ易く、空調用送風空気の除湿が不充分になっているにも関わらず、電池冷却作動が許可されていると判定された場合である。
そこで、ステップS75では、外気率が100%となるように、内外気切替装置用の電動アクチュエータ33eへ出力される制御信号が決定されて、ステップS8へ進む。外気率を100%とすることで、車室内の換気を行うことができ、窓ガラス内面の窓曇りを抑制することができる。
ステップS76では、外気温Tamが予め定めた基準高温側外気温KTamh(本実施形態では、35℃)より高くなっているか否かが判定される。ステップS76にて、外気温Tamが基準高温側外気温KTamhより高くなっていると判定された場合は、ステップS79へ進む。ステップS76にて、外気温Tamが基準高温側外気温KTamhより高くなっていないと判定された場合は、ステップS77へ進む。
ステップS77では、冷媒回路が空調電池サイクルに切り替えられているか否かが判定される。ステップS77にて、冷媒回路が空調電池サイクルに切り替えられていると判定された場合は、ステップS79へ進む。ステップS77にて、冷媒回路が空調電池サイクルに切り替えられていないと判定された場合は、ステップS78へ進む。
ステップS78では、図5のステップS78に記載された制御特性図に示すように、内外気切替装置用の電動アクチュエータ33eへ出力される制御信号が決定されて、ステップS8へ進む。ステップS78では、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、外気率を増加させるように、内外気切替装置用の電動アクチュエータ33eへ出力される制御信号が決定される。
ステップS79では、外気率が0%となるように、内外気切替装置用の電動アクチュエータ33eへ出力される制御信号が決定されて、ステップS8へ進む。
これによれば、外気温が高い状態において、比較的低温となっている内気を空調用蒸発器16へ多く導入して、空調用蒸発器16前の温度を下げることができ、空調用送風空気の温度を早期に目標値に下げることができる。つまり、車両用空調装置1は、空調能力に対してバッテリ70の冷却が及ぼす影響を低減することができる。
又、空調電池サイクルに切り替えられている場合に、比較的低温となっている内気を空調用蒸発器16へ導入して、空調用蒸発器16から吹き出される空調用送風空気の温度上昇を緩和することができる。即ち、車両用空調装置1は、バッテリ70の冷却を開始した場合の空調フィーリングの悪化を抑制することができる。
次に、ステップS8では、吹出口モードを決定する。吹出口モードは、目標吹出温度TAOに基づいて決定される。具体的には、目標吹出温度TAOが低温域から高温域へ上昇するに伴って、フェイスモード、バイレベルモード、フットモードの順で切り替える。従って、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択され易くなる。
また、乗員が吹出口モードの切替スイッチ60dをマニュアル操作して、吹出口モードを変化させた際には、ステップS8で決定された吹出口モードよりも、乗員の操作が優先される。この場合、吹出口モードドア用の電動アクチュエータ38dへ出力される制御信号は、マニュアル操作に基づく内容に決定される。
次に、ステップS9では、水加熱ヒータ22の通電状態が決定される。ステップS9の詳細については、図6、図7を用いて説明する。
ステップS9では、図6の制御特性図に示すように、目標熱媒体温度TWOから熱媒体温度TWを減算した温度差ΔTW(ΔTW=TWO−TW)に基づいて、水加熱ヒータ22の作動を制御する。具体的には、温度差ΔTWが増加過程にある時は、温度差ΔTWが基準上限温度差KΔTW1(本実施形態では、3℃)以上となった際に、水加熱ヒータ22へ非通電から通電(図6では、ON)へ切り替えることを決定する。
温度差ΔTWが減少過程にある時は、温度差ΔTWが基準下限温度差KΔTW2(本実施形態では、0℃)以上となった際に、水加熱ヒータ22への通電から非通電(図6では、OFF)へ切り替えることを決定する。基準上限温度差KΔTW1と基準下限温度差KΔTW2との差は、制御ハンチングを防止するためのヒステリシス幅である。
また、目標熱媒体温度TWOは、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して決定される。本実施形態では、図7の制御特性図に示すように、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、目標熱媒体温度TWOを上昇させるように決定する。
次に、ステップS10では、水ポンプ21の作動状態を決定する。ステップS10の詳細については、図8を用いて説明する。
まず、ステップS101では、熱媒体温度TWが空調用蒸発器温度TEよりも高くなっているか否かを判定する。ステップS101にて、熱媒体温度TWが空調用蒸発器温度TEよりも高くなっていると判定された場合は、ステップS102へ進む。ステップS101にて、熱媒体温度TWが空調用蒸発器温度TEよりも高くなっていないと判定された場合は、ステップS104へ進む。
ステップS102では、空調用送風機32が作動しているか否かが判定される。ステップS102にて、空調用送風機32が作動していると判定された場合は、ステップS103へ進む。ステップS102にて、空調用送風機32が作動していないと判定された場合は、ステップS104へ進む。
ステップS103では、水ポンプ21を作動させることを決定して、ステップS11へ進む。ステップS104では、水ポンプ21を停止させることを決定して、ステップS11へ進む。
次に、ステップS11では、下記数式F2を用いて、エアミックスドア34の目標開度SWを算定する。
SW=(TAO−TE)/(TW−TE)×100(%)…(F2)
空調用蒸発器温度TEは、空調用蒸発器温度センサ55によって検出された空調用蒸発器温度である。熱媒体温度TWは、水温センサ58によって検出された熱媒体温度である。
数式F2において、SW=0%になると、エアミックスドア34は、最大冷房位置に変位する。つまり、エアミックスドア34は、冷風バイパス通路35を全開とし、ヒータコア23側の空気通路を全閉とする位置に変位する。
また、数式F2において、SW=100%になると、エアミックスドア34は最大暖房位置に変位する。つまり、エアミックスドア34は、冷風バイパス通路35を全閉とし、ヒータコア23側の空気通路を全開とする位置に変位する。
本実施形態では、ステップS9にて説明したように、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、目標熱媒体温度TWOを上昇させるように決定している。さらに、目標熱媒体温度TWOは、熱媒体温度TWが目標熱媒体温度TWOへ上昇した際に、目標開度SWが概ね100%となるように決定されている。
これによれば、乗員が、温度設定スイッチ60gをマニュアル操作して車室内目標温度Tsetを低下させた際等に、目標開度SWを低下させることによって、車室内へ吹き出される空調風の温度を速やかに低下させることができる。
次に、ステップS12では、目標空調用蒸発器温度TEOおよび目標冷却用蒸発器温度TEOBを決定する。ステップS12の詳細については、図9を用いて説明する。
まず、ステップS201では、第1仮目標空調用蒸発器温度f(TAO)が決定される。具体的には、ステップS201では、図9のステップS201に記載された制御特性図に示すように、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、第1仮目標空調用蒸発器温度f(TAO)を上昇させるように決定して、ステップS202へ進む。
ステップS202では、第2仮目標空調用蒸発器温度f(外気温)が決定される。具体的には、ステップS202では、図9のステップS202に記載された制御特性図に示すように、外気温Tamの上昇に伴って、第2仮目標空調用蒸発器温度f(外気温)を上昇させるように決定して、ステップS203へ進む。
ステップS203では、第1仮目標空調用蒸発器温度f(TAO)および第2仮目標空調用蒸発器温度f(外気温)のうち、小さい方の値を目標空調用蒸発器温度TEOに決定して、ステップS204へ進む。
ステップS204では、目標冷却用蒸発器温度TEOBが決定される。具体的には、ステップS204では、図9のステップS204に記載された制御特性図に示すように、外気温Tamの上昇に伴って、目標冷却用蒸発器温度TEOBを上昇させるように決定して、ステップS13へ進む。
次に、ステップS13では、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、圧縮機11の回転数)を決定する。ステップS13における圧縮機回転数の決定は、図3のメインルーチンが繰り返される制御周期τ毎に行われるものではなく、所定の制御間隔(本実施形態では1秒)毎に行われる。ステップS13の詳細については、図10、図11を用いて説明する。
まず、ステップS301では、冷媒回路に応じた圧縮機11の回転数に関する回転数変化量Δf_Cを決定して、ステップS302へ進む。
具体的には、ステップS301では、冷媒回路が電池単独サイクルに切り替えられている際には、ステップS204にて決定された目標冷却用蒸発器温度TEOBから冷却用蒸発部の代表温度を減算した温度偏差Enを算出する。さらに、今回算出された温度偏差Enから前回算出された温度偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(Edot=En−(En−1))を算出する。
そして、温度偏差Enと偏差変化率Edotとを用いて、予め空調制御装置50に記憶された電池単独サイクル用のメンバシップ関数およびルールに基づくファジー推論によって、前回の圧縮機回転数に対する回転数変化量Δf_Cを求める。
ここで、本実施形態では、冷却用蒸発部の代表温度として、右側冷却用蒸発器温度TEBRと左側冷却用蒸発器温度TEBLとの平均値あるいはいずれか一方を採用している。このため、代表温度と実際の冷却用蒸発部の温度との間には誤差が生じてしまう可能性がある。ところが、冷却用蒸発部では冷却用送風空気を冷却しているので、ある程度の誤差が生じていても、電池の冷却や乗員の空調フィーリングに影響を及ぼしにくい。
また、冷媒回路が空調単独サイクルあるいは空調電池サイクルに切り替えられている際には、ステップS203にて決定された目標空調用蒸発器温度TEOから空調用蒸発器温度TEを減算した温度偏差Enを算出する。さらに、今回算出された温度偏差Enから前回算出された温度偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(Edot=En−(En−1))を算出する。
そして、温度偏差Enと偏差変化率Edotとを用いて、予め空調制御装置50に記憶された空調単独サイクル或いは空調電池サイクル用のメンバシップ関数及びルールに基づくファジー推論によって、前回の圧縮機回転数に対する回転数変化量Δf_Cを求める。
冷媒回路が空調単独サイクルあるいは空調電池サイクルに切り替えられている際には、回転数変化量Δf_Cを決定するために、空調用蒸発器温度TEをフィードバックすることができる。これによれば、空調電池サイクルでバッテリ70の冷却を行う際に、車室内の快適性及び防曇性を確保することができ、車両の走行安全を確保しつつ、バッテリ70の冷却を行うことができる。
又、空調用蒸発器温度TEは、空調用蒸発器16から吹き出される空調用送風空気の温度と同等の値なので、オーバーシュート等を招くことなく、空調用蒸発器温度TEを適切に調整することができる。
ステップS302では、圧縮機11の回転数の上限値に対する上限値補正量f(電池温度)を決定して、ステップS303へ進む。
ここで、冷媒回路が空調単独サイクルに切り替えられている際には、冷却用蒸発部(すなわち、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19b)へ冷媒を流入させる必要がない。従って、冷媒回路が空調単独サイクルに切り替えられている際には、圧縮機11に所定値以上の効率を発揮させつつ、振動および騒音を抑制できるように、圧縮機11の回転数の上限値を決定することが望ましい。
これに対して、冷媒回路が空調電池サイクルに切り替えられている際には、空調用蒸発器16へ冷媒を流入させるだけでなく、冷却用蒸発部へも冷媒を流入させなければならない。このため、空調単独サイクルと同様に圧縮機11の回転数の上限値を決定すると、空調用蒸発器16へ流入する冷媒流量が減少して、空調用送風空気を所望の温度に冷却することができなくなってしまう可能性がある。
このため、冷媒回路が空調電池サイクルに切り替えられている際には、空調用送風空気および冷却用送風空気の双方を、適切な温度に冷却することができるように、圧縮機11の回転数の上限値を決定する必要がある。換言すると、冷媒回路が空調電池サイクルに切り替えられている際には、空調単独サイクルに切り替えられている際よりも、圧縮機11の回転数の上限値を増加させる必要がある。
そこで、ステップS302では、図10のステップS302に記載された制御特性図に示すように、電池温度TBの上昇に伴って、上限値補正量f(電池温度)を増加させるように決定する。さらに、ステップS302では、車速の低下に伴って、上限値補正量f(電池温度)を減少させるように決定する。これは、車速の低下に伴って、バッテリ70の発熱量が低下するからである。
さらに、電池温度TBの上昇に伴って、上限値補正量f(電池温度)を増加させることで、空調用蒸発器温度TEを速やかに目標空調用蒸発器温度TEOに近づけることができる。従って、後述するステップS404にて説明するように、電池冷却作動が許可されやすくなる。その結果、バッテリ70の温度上昇を抑制することができる。
ステップS303では、冷媒回路と車速に応じて、空調電池要件に基づく圧縮機11の回転数の上限値(以下、空調電池要件上限値と記載する。)を決定して、ステップS304へ進む。従って、ステップS303は、圧縮機11の冷媒吐出能力の上限値を決定する上限値決定部である。
具体的には、ステップS303では、図12の図表に示すように、冷媒回路が電池単独サイクルに切り替えられている際には、車速によらず、電池温度TBの上昇に伴って、空調電池要件上限値を増加させるように決定する。これは、電池温度TBが高くなるに伴って、バッテリ70の発熱量が多くなり、バッテリ70の冷却に必要な冷媒流量が増加するからである。
先ず、冷媒回路が空調単独サイクルに切り替えられている際であって、車速が予め定めた基準車速(本実施形態では、25km/h)以下になっている際の空調電池要件上限値について説明する。この場合には、予め定められた第1基準上限値(本実施形態では、3500rpm)に、ステップS302で決定された上限値補正量f(電池温度)を加えた値を空調電池要件上限値に決定する。
次に、冷媒回路が空調単独サイクルに切り替えられている際であって、車速が基準車速よりも高くなっている際には、第2基準上限値(本実施形態では、5000rpm)に上限値補正量f(電池温度)を加えた値を空調電池要件上限値に決定する。
また、冷媒回路が空調電池サイクルに切り替えられている際には、空調電池要件上限値は、冷媒回路が空調単独サイクルに切り替えられている際の上限値よりも大きな値に決定される。
より具体的には、冷媒岐路が空調電池サイクルに切り替えられている際であって、車速が基準速度以下になっている際には、第3基準上限値(本実施形態では、4500rpm)に上限値補正量f(電池温度)を加えた値を空調電池要件上限値に決定する。ここで、第3基準上限値は、上述した第1基準上限値に対して、予め定められた加算値(本実施形態では、1000rpm)を加算した値である。
また、冷媒回路が空調電池サイクルに切り替えられている際であって、車速が基準車速より高くなっている際には、第4基準上限値(本実施形態では、6000rpm)に上限値補正量f(電池温度)を加えた値を空調電池要件上限値に決定する。ここで、第4基準上限値は、上述した第2基準上限値に対して、予め定められた加算値(本実施形態では、1000rpm)を加えた値である。
つまり、ステップS303において、電池単独サイクル、空調単独サイクル、空調電池サイクルの各サイクルでの圧縮機11の回転数の上限値は、電池単独サイクル、空調単独サイクル、空調電池サイクルの順に大きくなる。
これにより、空調電池サイクル時に圧縮機11の回転数の上限値を高くできるので、電池冷却に必要な冷媒を確保できる。この結果、冷凍サイクル流の冷媒密度を上げて、冷媒に溶け込んでいる冷凍機油を圧縮機11へ戻しやすくすることで、右側電池用膨張弁18a及び左側電池用膨張弁18bの最小開度を、さらに絞ることが可能となる。
従って、車両用空調装置1は、空調冷却サイクルにおける右側電池用蒸発器19a及び左側電池用蒸発器19bの温度上昇を抑制して、空調能力を維持すると共に、バッテリ70の冷却効率の低下を抑制することができる。
ステップS304では、圧縮機11の騒音や振動を抑制するための圧縮機11の回転数の上限値(以下、NV要件上限値と記載する。)を決定して、ステップS305へ進む。具体的には、ステップS304では、車速が基準車速以下になっている際には、第1NV上限値(本実施形態では、5200rpm)に決定される。車速が基準車速より高くなっている際には、第2NV上限値(本実施形態では、8600rpm)に決定される。
ここで、車速の低下に伴ってロードノイズも小さくなるので、乗員が圧縮機11の騒音や振動を感じやすくなる。そこで、本実施形態では、第1NV上限値を第2NV上限値よりも低い値に設定している。
ステップS305では、ステップS303で決定された空調電池要件上限値とNV要件上限値とのうち小さい方の値を、圧縮機11の回転数の上限値に決定して、ステップS306へ進む。
すなわち、ステップS305では、電池温度TBが高くなって空調電池要件上限値が高くなっても、圧縮機11の回転数の上限値がNV要件上限値以下になるようにしている。これにより、車両用空調装置1は、車室内の空調及びバッテリ70の冷却に関する要求に応えると同時に、圧縮機11の騒音や振動に関する要求にも対応した適切な圧縮機11の回転数の上限値に決定することができる。ここで、ステップS302〜ステップS305の処理を実行する空調制御装置50は、上限値決定部50fである。
ステップS306では、オイル回収制御を実行するために必要な圧縮機11の回転数の下限値(以下、オイル回収用下限値と記載する。)を決定して、ステップS307へ進む。従って、ステップS306は、圧縮機11の冷媒吐出能力の下限値を決定する下限値決定部50eである。ステップS306では、オイル回収用下限値を、オイル回収制御が実行されていない通常運転時の下限値よりも高い値に決定する。
さらに、ステップS306では、図10のステップS306に記載された制御特性図に示すように、外気温Tamの低下に伴って、オイル回収用下限値を上昇させるように決定する。
これは、外気温Tamの低下に伴って、サイクルを循環させる循環冷媒流量が低下するので、空調用蒸発器16、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19b内等に冷凍機油が滞留しやすくなるからである。そこで、外気温Tamの低下に伴って、オイル回収用下限値を上昇させて、冷凍機油を空調用蒸発器16、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19bから圧縮機11へ戻しやすくしている。
オイル回収用下限値を上昇させて、冷凍機油を圧縮機11へ戻しやすくすることで、右側電池用膨張弁18a及び左側電池用膨張弁18bの最小開度を、さらに絞ることが可能となる。これにより、空調冷却サイクルにおける空調用蒸発器16の温度上昇を抑制して、空調能力を維持すると共に、バッテリ70の冷却効率の低下を抑制できる。
さらに、ステップS306では、冷媒回路が空調電池サイクルに切り替えられている際には、冷媒回路が空調単独サイクルあるいは電池単独サイクルに切り替えられている際よりもオイル回収用下限値を上昇させる。これは、空調電池サイクルでは、空調単独サイクルおよび電池単独サイクルよりも冷媒の流通する冷媒経路が増加するので、冷凍機油を圧縮機11へ戻すために必要な循環冷媒流量が増加するからである。
ステップS307では、バッテリ70の冷却を開始する際の圧縮機11の回転数補正度合(以下、かさ上げレベルという。)を決定して、ステップS308へ進む。かさ上げレベルは、圧縮機11の回転数補正度合の「高」「中」「低」を判定するために用いられる制御フラグである。
ステップS307では、図11のステップS307に記載された制御特性図に示すように、空調用蒸発器温度TEから目標空調用蒸発器温度TEOを減算した判定値(空調用蒸発器温度TE−目標空調用蒸発器温度TEO)を用いて、かさ上げレベルを決定する。
判定値が増加過程にある時は、判定値が第2判定値(本実施形態では、−0.5℃)以上となった際に、かさ上げレベルを「低」から「中」へ切り替える。さらに、判定値が第4判定値(本実施形態では、3℃)以上となった際に、かさ上げレベルを「中」から「高」へ切り替える。
判定値が減少過程にある時は、判定値が第3判定値(本実施形態では、2℃)以下となった際に、かさ上げレベルを「高」から「中」へ切り替える。さらに、判定値が第1判定値(本実施形態では、−1℃)以下となった際に、かさ上げレベルを「中」から「低」へ切り替える。第1判定値と第2判定値との差、および第3判定値と第4判定値との差は、制御ハンチングを防止するためのヒステリシス幅である。
従って、ステップS307では、空調用蒸発器温度TEから目標空調用蒸発器温度TEOを減算した判定値(空調用蒸発器温度TE−目標空調用蒸発器温度TEO)の増加に伴って、かさ上げレベルを「低」「中」「高」の順に変化させる。これは、空調用蒸発器温度TEが高くなるに伴って、バッテリ70の冷却を開始した際の空調用蒸発器温度TEの温度変動が大きくなるからである。
ステップS308では、ステップS307にて決定されたかさ上げレベルに基づいて、ステップS301で決定された回転数変化量Δf_Cを変更して、ステップS309へ進む。より具体的には、ステップS308における回転数変化量Δf_Cの変更は、ステップS306で決定された今回の圧縮機11の回転数の上限値が、前回の圧縮機11の回転数の上限値よりも1000rpm以上増加している際に行われる。
今回の圧縮機11の回転数の上限値が、前回の圧縮機11の回転数の上限値よりも1000rpm以上増加している際であって、ステップS307にて決定されたかさ上げレベルが「低」の場合は、回転数変化量Δf_Cを変更しない。従って、回転数変化量Δf_Cは、ステップS301で決定された値に維持される。
また、今回の圧縮機11の回転数の上限値が、前回の圧縮機11の回転数の上限値よりも1000rpm以上増加している際であって、ステップS307にて決定されたかさ上げレベルが「中」の場合は、回転数変化量Δf_Cを500rpmに変更する。本実施形態のメンバシップ関数およびルールによれば、回転数変化量Δf_Cを500rpmに変更することで、回転数変化量Δf_Cを確実に増加させることができる。
また、今回の圧縮機11の回転数の上限値が、前回の圧縮機11の回転数の上限値よりも1000rpm以上増加している際であって、ステップS307にて決定されたかさ上げレベルが「高」の場合は、回転数変化量Δf_Cを2000rpmに変更する。その他の場合は、回転数変化量Δf_Cを変更しない。
従って、ステップS308では、かさ上げレベルが「低」、「中」、「高」の順で高くなるに伴って、バッテリ70の冷却を開始する際の圧縮機11の回転数を急増させることができる。
ステップS309では、回転数変化量Δf_Cの上限値である上限変化量f(冷媒圧力)を決定して、ステップS310へ進む。具体的には、ステップS309では、図11のステップS309に記載された制御特性図に示すように、高圧側の冷媒圧力Phの上昇に伴って、上限変化量f(冷媒圧力)を低下させるように決定する。これにより、高圧側の冷媒圧力が異常上昇してしまうことが抑制される。
具体的には、高圧側の冷媒圧力Phが基準圧力(本実施形態では3.0MPa)よりも高い場合、回転数変化量Δf_Cの上限値を低下させるように決定する。基準圧力は、冷媒配管の耐久性が悪化するおそれのある圧力である。
ステップS310では、今回の圧縮機11の回転数を決定して、ステップS14へ進む。具体的には、ステップS310では、ステップS308にて決定された回転数変化量Δf_CおよびステップS309にて決定された上限変化量f(冷媒圧力)のうち、小さい方の値を前回の圧縮機11の回転数に加算する。これにより第1仮圧縮機回転数を求める。
そして、第1仮圧縮機回転数およびステップS305にて決定された圧縮機11の回転数の上限値のうち小さい方の値を第2仮圧縮機回転数とする。第2仮圧縮機回転数とステップS306にて決定されたオイル回収用下限値のうち、大きい方の値を今回の圧縮機11の回転数に決定する。
次に、ステップS14では、電池用電磁弁14b、右側電池用膨張弁18aおよび左側電池用膨張弁18bの作動状態を決定する。ステップS14における右側電池用膨張弁18aおよび左側電池用膨張弁18bの絞り開度の決定は、図3のメインルーチンが繰り返される制御周期τ毎に行われるものではなく、所定の制御間隔(本実施形態では2秒)毎に行われる。ステップS14の詳細については、図13〜図25を用いて説明する。
まず、図13に示すステップS401では、電池温度TBが予め定めた基準電池冷却温度KTB1(本実施形態では、35℃)より高くなっているか否かを判定する。ステップS401にて、電池温度TBが基準電池冷却温度KTB1より高くなっていると判定された場合は、ステップS402へ進む。ステップS401にて、電池温度TBが基準電池冷却温度KTB1より高くなっていないと判定された場合は、ステップS406へ進む。
基準電池冷却温度KTB1は、電池温度TBが基準電池冷却温度KTB1より高くなっている際には、バッテリ70の冷却を行うことが望ましいと判断される温度に設定されている。従って、基準電池冷却温度KTB1は、ステップS71で説明した基準許容温度KTBmaxよりも低い温度に設定されている。基準電池冷却温度KTB1は、基準対象物冷却温度の一例である。
ステップS406では、電池用電磁弁14bを閉じることが決定されて、ステップS15へ進む。これは、電池温度TBが基準電池冷却温度KTB1以下になっている際には、バッテリ70の冷却を必要としないからである。これにより、冷却用蒸発部に冷媒が供給されることはなく、バッテリ70の冷却は行われない。
ステップS402では、乗員によって車室内の空調を行うことが要求されているか否かを判定する。具体的には、ステップS402では、エアコンスイッチ60aが投入(ON)されている場合、あるいは、風量設定スイッチ60eによって空調用送風機32に送風能力を発揮させている場合に、乗員によって車室内の空調を行うことが要求されていると判定する。
ステップS402にて、乗員によって車室内の空調を行うことが要求されていないと判定された場合は、ステップS403へ進む。乗員によって車室内の空調を行うことが要求されていない場合は、車室内の空調への影響を考慮することなく電池冷却を実行することができる。そこで、ステップS403では、電池冷却作動が許可されて、ステップS405へ進む。
電池冷却作動が許可されたこと、あるいは、電池冷却作動が禁止されたことは、専用の制御フラグに記憶される。このことは他の制御ステップにおいても同様である。
ステップS402にて、乗員によって車室内の空調を行うことが要求されていると判定された場合は、ステップS404へ進む。乗員によって車室内の空調を行うことが要求されている場合は、車室内の空調が実行されている。従って、電池冷却を実行すると、冷却用蒸発部へ流入する冷媒流量が増加した際に、空調用蒸発器16へ流入する冷媒流量が低下して、空調用送風空気の温度や湿度が上昇してしまうおそれがある。
すなわち、車室内の空調が実行されている際に、同時に電池冷却を実行すると乗員の空調フィーリングが悪化してしまうおそれがある。そこで、ステップS404では、図15の図表に示すように、電池冷却作動の可否(すなわち、許可あるいは禁止)を決定して、ステップS405へ進む。
ステップS404における電池冷却作動の可否の決定では、乗員が吹出口モードの切替スイッチ60dを操作したことによって、デフロスタモードに切り替えているか否かを判定する。デフロスタモードに切り替えられている場合には、車両の環境条件が、フロント窓ガラスに窓曇りを生じ易い条件になっているか否か、すなわち防曇要求が高いか低いかを判定する。
本実施形態では、外気温Tamが基準防曇温度KTamd(本実施形態では、15℃)以下となっている場合は、窓曇りを生じ易く、防曇要求が高いと判定する。また、外気温Tamが基準防曇温度KTamdより高くなっている場合は、窓曇りを生じ難く、防曇要求が低いと判定する。
そして、外気温Tamが基準防曇温度KTamd以下となっており、防曇要求が高いと判定された場合は、空調用送風空気の温度が窓曇りを防止できる程度まで低くなっているか否か、すなわち防曇能力の有無を判定する。
具体的には、空調用蒸発器温度TEが目標空調用蒸発器温度TEO以下となっている場合は、空調用蒸発器16にて空調用送風空気が充分に冷却されており、空調用送風空気の充分な除湿がなされていると判定する。従って、空調用蒸発器温度TEが目標空調用蒸発器温度TEO以下となっている場合は、充分な防曇能力が有ると判定されて、電池冷却作動が許可される。目標空調用蒸発器温度TEOは、必要な除湿能力を確保できる空調用蒸発器温度である。
また、空調用蒸発器温度TEが目標空調用蒸発器温度TEOより高くなっている場合は、空調用蒸発器16にて空調用送風空気が充分に冷却されておらず、空調用送風空気の充分な除湿がなされていないと判定する。従って、空調用蒸発器温度TEが目標空調用蒸発器温度TEOより高くなっている場合は、充分な防曇能力が無いと判定されて、電池冷却作動が禁止される。
但し、空調用蒸発器温度TEが目標空調用蒸発器温度TEOより高くなっていても、電池温度TBが基準許容温度KTBmax(本実施形態では、49℃)より高くなっている場合は、電池冷却作動が許可される。基準許容温度KTBmaxは、バッテリ70の寿命が顕著に低下する電池温度である。
一方、外気温Tamが基準防曇温度KTamdより高くなっており、防曇要求が低いと判定された場合は、急激な窓曇りの可能性は低い。そこで、この場合は、蒸発器温度判定値f2(蒸発器温度)を用いて、防曇能力が有るか否かを判定する。蒸発器温度判定値f2(蒸発器温度)は、空調用蒸発器温度TEの「高」「低」を判定するために用いられる制御フラグである。
蒸発器温度判定値f2(蒸発器温度)では、実際の空調用蒸発器温度TEを用いて判定する場合に対して、防曇能力が有ると判定されやすくなっている。
具体的には、図16に示すように、空調用蒸発器温度TEが下降過程にある時は、空調用蒸発器温度TEが、目標空調用蒸発器温度TEOに補正値β1を加算した値以下となった際に、蒸発器温度判定値f2(蒸発器温度)が「低」となる。蒸発器温度判定値f2(蒸発器温度)が「低」となっている場合は、空調用蒸発器温度TEが低く、防曇能力が有ると判定される。その結果、電池冷却作動が許可される。
また、空調用蒸発器温度TEが上昇過程にある時は、空調用蒸発器温度TEが、目標空調用蒸発器温度TEOに補正値β1およびヒステリシスβ2を加算した値以上となった際に、蒸発器温度判定値f2(蒸発器温度)が「高」となる。蒸発器温度判定値f2(蒸発器温度)が「高」となっている場合は、空調用蒸発器温度TEが高く防曇能力が無いと判定される。その結果、電池冷却作動が禁止される。
但し、蒸発器温度判定値f2(蒸発器温度)が「高」になっていても、電池温度TBが基準許容温度KTBmax(本実施形態では、49℃)より高くなっている場合は、電池冷却作動が許可される。図16において、ヒステリシスβ2は、制御ハンチングを防止するためのヒステリシス幅となる。
補正値β1は、図17に示すように、電池温度TBの上昇に伴って、大きな値に決定される。従って、電池温度TBの上昇に伴って、防曇能力が有ると判定されやすくなる。これは、電池温度TBに伴って、バッテリ70の劣化が進行しやすくなるので、車室内の快適性の確保に対して電池冷却を優先するためである。
ヒステリシスβ2は、図18に示すように、空調用蒸発器温度TEの上昇に伴って、大きな値に決定される。空調用蒸発器温度TEが高くなると、空調用蒸発器16へ流入する空調用送風空気の温度(いわゆる、吸い込み温度)の変動によって、空調用蒸発器温度TEが変動しやすい。そこで、空調用蒸発器温度TEの上昇に伴って、ヒステリシスβ2を大きくすることによって、制御ハンチングを抑制している。
また、デフロスタモードに切り替えられていない場合も、デフロスタモードに切り替えられている場合と同様に、防曇要求が高いか低いかを判定する。そして、外気温Tamが基準防曇温度KTamd以下となっており、防曇要求が高いと判定された場合は、デフロスタモードに切り替えられている場合と同様に、防曇能力の有無を判定する。
具体的には、空調用蒸発器温度TEが目標空調用蒸発器温度TEO以下となっている際には、空調用送風空気の温度が窓曇りを防止できる程度まで低くなっており、充分な防曇能力が有ると判定する。従って、電池冷却作動が許可される。
また、空調用蒸発器温度TEが目標空調用蒸発器温度TEOより高くなっている際には、空調用送風空気の温度が窓曇りを防止できる程度まで低くなっておらず、充分な防曇能力が無いと判定する。従って、電池冷却作動が禁止される。但し、電池温度TBが基準許容温度KTBmax以上となっている際には、電池冷却作動が許可される。
一方、外気温Tamが基準防曇温度KTamdより高くなっており、防曇要求が低いと判定された場合は、車室内の快適性に基づいて、電池冷却作動の許可あるいは禁止を決定する。快適性を判定するためには、内気温判定値f1(電池温度)および蒸発器温度判定値f2(蒸発器温度)が用いられる。内気温判定値f1(電池温度)は、内気温Trの「高」「低」を判定するために用いられる制御フラグである。
具体的には、図19に示すように、内気温Trが下降過程にある時は、内気温Trが、予め定めた基準内気温KTr(本実施形態では、30℃)に補正値α1を加算した値以下となった際に、内気温判定値f1(電池温度)が「高」から「低」となる。内気温判定値f1(電池温度)が「低」となっている場合は、内気温Trが低く、車室内の快適性が高いと判定される。
また、内気温Trが上昇過程にある時は、内気温Trが、基準内気温KTrに補正値α1およびヒステリシスα2(本実施形態では、2℃)を加算した値以上となった際に、内気温判定値f1(電池温度)が「低」から「高」となる。内気温判定値f1(電池温度)が「高」となっている場合は、内気温Trが高く、車室内の快適性が低いと判定される。
補正値α1は、図20に示すように、電池温度TBの上昇に伴って、大きな値に決定される。従って、電池温度TBの上昇に伴って、快適性が高いと判定されやすくなる。これは、電池温度TBに伴って、バッテリ70の劣化が進行しやすくなるので、車室内の快適性の確保に対して電池冷却を優先するためである。
さらに、蒸発器温度判定値f2(蒸発器温度)を用いて、車室内の快適性が判定される。この判定は、実質的に、デフロスタモードに切り替えられている際に行われる防曇能力の有無の判定と同様である。
具体的には、蒸発器温度判定値f2(蒸発器温度)が「低」となっている場合は、空調用蒸発器温度TEが低く、車室内の快適性が高いと判定される。また、蒸発器温度判定値f2(蒸発器温度)が「高」となっている場合は、空調用蒸発器温度TEが高く、車室内の快適性が低いと判定される。
従って、目標空調用蒸発器温度TEOに補正値β1を加算した値は、乗員の快適性を推定する際に用いられる基準蒸発部温度である。空調用蒸発器温度TEが基準蒸発部温度TEO+β1よりも低い場合、車室内の不快感が許容範囲内に抑えられると推定できる。
そして、内気温判定値f1(電池温度)を用いた快適性の判定および蒸発器温度判定値f2(蒸発器温度)を用いた快適性の判定の双方で、快適性が高いと判定された場合は、電池冷却作動が許可される。
また、内気温判定値f1(電池温度)を用いた快適性の判定および蒸発器温度判定値f2(蒸発器温度)を用いた快適性の判定の少なくとも一方で、快適性が低いと判定された場合は、経過時間判定値f3(電池温度)に基づいて、電池冷却作動の許可あるいは禁止を決定する。
具体的には、図21に示すように、車両システムの起動からの経過時間が基準経過時間TIMER以上となっている場合には、経過時間判定値f3(電池温度)は許可となり、電池冷却作動が許可される。また、車両システムの起動からの経過時間が基準経過時間TIMERを超えていない場合は、経過時間判定値f3(電池温度)は禁止となり、電池冷却作動が禁止される。
基準経過時間TIMERは、バッテリ70の出力を推定する際に用いられる時間である。車両システムの起動からの経過時間が基準経過時間TIMER以上になると、バッテリ70の出力が低下する可能性が高まると推定できる。
これにより、乗員が窓を開けている場合等のように、長時間に亘って電池冷却作動が許可されない場合であっても、車両システムの起動からの経過時間によって、確実に、電池冷却作動を許可することができる。
さらに、基準経過時間TIMERは、図22に示すように、電池温度TBの上昇に伴って短い時間に設定される。従って、電池温度TBの上昇に伴って、短時間で電池冷却を許可することができ、バッテリ70の劣化を効果的に抑制することができる。
図13のステップS405では、電池冷却作動が許可されているか否かが判定される。ステップS405にて、電池冷却作動が許可されていない(すなわち、電池冷却作動が禁止されている)と判定された場合は、ステップS406へ進む。ステップS405にて、電池冷却作動が許可されていると判定された場合は、ステップS407へ進む。ステップS407では、電池用電磁弁14bを開くことが決定されて、ステップS408へ進む。
ここで、ステップS407にて、電池用電磁弁14bを開くことが決定されることによって、空調単独サイクルから空調電池サイクルへ切り替えられた場合について検討する。
この場合の冷凍サイクル装置10では、冷却用蒸発部へ流入する冷媒流量が急増し、冷却用蒸発部に並列的に接続された空調用蒸発器16へ流入する冷媒流量が急減してしまう可能性がある。その結果、空調用蒸発器16における空調用送風空気の冷却が不充分になってしまう可能性がある。
そこで、本実施形態では、以下の制御ステップにて、冷却用蒸発部へ流入する冷媒の流量を時間経過に伴って徐々に増加させる徐変制御を実行する。
まず、ステップS408では、ステップS407にて電池用電磁弁14bを開くことによって、電池用電磁弁14bが閉じた状態から開いた状態に変化するか否かが判定される。ステップS408にて、電池用電磁弁14bが閉じた状態から開いた状態に変化すると判定された場合は、ステップS409へ進む。
ステップS409では、ステップS407にて電池用電磁弁14bを開くことが決定されたことによって、冷媒回路が空調単独サイクルから空調電池サイクルへ切り替えられたか否かが判定される。ステップS409にて、冷媒回路が空調単独サイクルから空調電池サイクルへ切り替えられたと判定された場合は、ステップS410へ進む。
ステップS410では、空調電池サイクルへの切り替えと共に開始される徐変制御が実行される時間(以下、制限時間LTopという。)が決定されて、ステップS411へ進む。ステップS410では、制限時間LTopは、図23に示す制御特性図に従って決定される。従って、ステップS410は、制限時間決定部である。
制限時間LTopについては、外気温Tamの上昇に伴って、制限時間LTopが長くなるように決定する。これは、外気温Tamの上昇に伴って、凝縮器12における高圧冷媒の放熱量が減少して、冷却用蒸発部の温度を低下させるために要する時間が長くなるからである。また、外気温Tamの低下に伴って、冷却用蒸発部の温度が不必要に低下してしまう可能性が高くなるからである。
ステップS411では、徐変制御時の冷却用流量調整部(すなわち、右側電池用膨張弁18aおよび左側電池用膨張弁18b)の最大絞り開度(以下、制限開度LDopという。)が決定されて、ステップS412へ進む。ステップS411では、図24の制御特性図に示すように、徐変制御時における制限開度LDopを決定する。従って、ステップS411は、制限開度決定部である。
制限開度LDopは、冷却用流量調整部の全開時(つまり、100%)に対する開度比率で定義される。
制限開度LDopについては、外気温Tamの上昇に伴って、制限開度LDopが大きくなるように決定する。これは、外気温Tamの上昇に伴って、凝縮器12における高圧冷媒の放熱量が減少して、冷却用蒸発部の温度を低下させるために要する時間が長くなるからである。また、外気温Tamの低下に伴って、冷却用蒸発部の温度が不必要に低下してしまう可能性が高くなるからである。
ステップS412では、徐変制御時の冷却用流量調整部の絞り開度ODopを決定して、ステップS414へ進む。ステップS412では、電池用電磁弁14bが閉じた状態から開いた状態に変化したと判定されてからの切替経過時間Topに応じて、絞り開度ODopを変化させる。
具体的には、ステップS412では、単位時間当たりの絞り開度ODopの増加量が予め定めた基準増加量(本実施形態では、1秒当たりの増加量が最大開度の0.1%)となるように、冷却用流量調整部の絞り開度ODopを増加させる。
そして、切替経過時間Topが制限時間LTopに達する前に、絞り開度ODopが制限開度LDopに到達した場合は、切替経過時間Topが制限時間LTopに達する迄、絞り開度ODopが制限開度LDopに維持される。また、切替経過時間Topが、制限時間LTopに達した場合は、絞り開度ODopによらず、徐変制御を終了する。すなわち、制限開度LDopを100%とする。
一方、ステップS408にて、電池用電磁弁14bが閉じた状態から開いた状態に変化していないと判定された場合は、ステップS413へ進む。また、ステップS409にて、冷媒回路が空調単独サイクルから空調電池サイクルへ切り替えられていないと判定された場合は、ステップS413へ進む。ステップS413へ進んだ場合は、徐変制御を実行する必要がないので、制限開度LDopを100%とする。
図14に示すステップS414においては、オイル回収制御時における右側電池用膨張弁18a及び左側電池用膨張弁18bの絞り開度の最小開度(以下、オイル回収用基本開度ODOBという。)が決定されて、ステップS415へ進む。ステップS414を実行する空調制御装置50は、最小開度決定部50cの一例である。
本実施形態では、オイル回収制御時における右側電池用膨張弁18aのオイル回収用基本開度ODOBを右側オイル回収用基本開度ODOBRという。又、オイル回収制御時における左側電池用膨張弁18bのオイル回収用基本開度ODOBを左側オイル回収用基本開度ODOBLという。
ここで、本実施形態のように、冷媒に冷凍機油が混入されている冷凍サイクル装置では、冷媒回路内に冷凍機油が滞留してしまうことがある。特に、液相冷媒を蒸発させる空調用蒸発器16、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19b内には、冷凍機油が滞留しやすい。このような冷凍機油の滞留は、空調用蒸発器16、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19bの熱交換性能を低下させてしまう。
そこで、本実施形態の車両用空調装置1では、冷凍サイクル装置10の空調用蒸発器16、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19b内等に滞留した冷凍機油を圧縮機11へ戻すためのオイル回収制御を実行する。
具体的には、車両用空調装置1では、圧縮機11の冷媒吐出能力の下限値及び、右側電池用膨張弁18a及び左側電池用膨張弁18bの絞り開度の下限値を制御することにより、或る程度の冷凍機油が圧縮機11に戻る冷媒流量を確保している。
ステップS414内の図表に示すように、冷凍サイクル装置10における冷媒回路の回路構成に応じて、右側オイル回収用基本開度ODOBR及び左側オイル回収用基本開度ODOBLを決定する。
冷凍サイクル装置10の冷媒回路が電池単独サイクルである場合、右側オイル回収用基本開度ODOBR及び左側オイル回収用基本開度ODOBLを、予め定められた絞り開度(本実施形態では、2%)に決定する。
電池単独サイクルの場合のオイル回収用基本開度ODOB(すなわち、2%)は、右側電池用蒸発器19a及び左側電池用蒸発器19b側から圧縮機11へ戻す為に必要な最小開度として実験により定められた数値である。
そして、冷凍サイクル装置10の冷媒回路が空調電池サイクルである場合、右側電池用膨張弁18a及び左側電池用膨張弁18bのオイル回収用基本開度ODOBを、電池単独サイクルである場合に比べて小さな絞り開度(本実施形態では、0%)に決定する。
上述したように、空調電池サイクルの場合、冷却用蒸発部(すなわち、右側電池用蒸発器19a及び左側電池用蒸発器19b)を介した冷媒の循環と共に、空調電池サイクルの場合、空調用蒸発器16を介した冷媒の循環も並行して行われる。この為、冷却用蒸発部を介する冷媒流量が少ない場合であっても、空調用蒸発器16を介した冷媒の流れによって、冷凍機油を圧縮機11に戻すことができる。
従って、冷凍サイクル装置10が空調電池サイクルである場合、右側電池用膨張弁18a及び左側電池用膨張弁18bの最小開度を、電池単独サイクルよりも可能な限り小さくすることができる。
つまり、車両用空調装置1によれば、冷却用流量調整部の最小開度を可能な限り小さくすることで、車室内空調とバッテリ70の冷却を並行して行う場合の空調用蒸発器16に対する冷媒流量の減少を抑制することができる。これにより、車両用空調装置1は、空調用蒸発器16の温度上昇による空調フィーリングの悪化と、バッテリ70の冷却に関する効率の低下をできるだけ小さく抑制することができる。
ステップS415では、オイル回収用基本開度ODOBをベースに用いてオイル回収用開度を決定して、ステップS416に進む。右側電池用膨張弁18aのオイル回収用開度は、右側オイル回収用基本開度ODOBRをベースとして決定される。左側電池用膨張弁18bのオイル回収用開度は、左側オイル回収用基本開度ODOBLをベースとして決定される。
ここで、オイル回収用基本開度を最小開度とした運転を行う場合でも、長時間にわたって運転を継続すると、冷凍サイクル装置10の冷媒回路の内、冷媒流速の遅くなるところで冷凍機油が滞留してしまうことが考えられる。
この為、冷凍サイクル装置10に滞留した冷凍機油の循環を促す実行期間TOEであるか否かによって、右側電池用膨張弁18a及び左側電池用膨張弁18bのオイル回収用開度を、異なる絞り開度に決定する。
具体的に、右側オイル回収用開度ODORは、実行期間TOEである場合、右側オイル回収用基本開度ODOBRに対し、予め定められた開度補正値ODC(本実施形態では、5%)を加算した絞り開度に決定される。一方、実行期間TOEではない場合、右側オイル回収用開度ODORは、ステップS414で定められた右側オイル回収用基本開度ODOBRに決定される。
又、左側オイル回収用開度ODOLは、実行期間TOEである場合、左側オイル回収用基本開度ODOBLに対して、上述した開度補正値ODCを加算した絞り開度に決定される。一方、実行期間TOEではない場合、左側オイル回収用開度ODOLは、ステップS414で定められた左側オイル回収用基本開度ODOBLに決定される。
つまり、右側電池用膨張弁18a及び左側電池用膨張弁18bのオイル回収用開度は、実行期間TOEである場合には、実行期間TOEでない場合よりも大きな絞り開度に決定される。
ここで、本実施形態におけるオイル回収用制御の実行期間TOEは、予め定められた長さ(本実施形態では、40秒)であり、車両システムの起動時からの経過時間を用いて定められた実行条件を満たした場合に開始される。
本実施形態の実行条件の一つは、車両システムの起動時であることである。図25に示すように、右側電池用膨張弁18a及び左側電池用膨張弁18bは、車両システムの起動と同時に、実行期間TOEになっている。
従って、車両システムの起動から実行期間TOEを経過するまでの間、右側オイル回収用開度ODOR及び左側オイル回収用開度ODOLは、それぞれのオイル回収用基本開度よりも大きくなる。これにより、右側電池用蒸発器19a及び左側電池用蒸発器19bに対する冷媒流量を一時的に増大させることができるので、車両システムの起動前の時点で滞留していた冷凍機油を押し出して、冷凍機油を回収することができる。
そして、本実施形態の実行条件の他の一つは、直前の実行期間TOEの終了から予め定められた基準期間Tstd(本実施形態では、3時間)を経過したことである。但し、図25に示すように、右側電池用膨張弁18aおよび左側電池用膨張弁18bの何れか一方が実行期間TOEに移行する場合は、何れか他方の実行期間TOEの開始を待機するように定められている。
図25に示す例は、右側電池用膨張弁18a側にて、基準期間Tstdが経過して実行期間TOEが開始された状態で、左側電池用膨張弁18b側の基準期間Tstdを経過した場合を示している。
この場合、左側電池用膨張弁18b側では、右側電池用膨張弁18aの実行期間TOEの終了を待機する為に待機期間TOWを設けて、実行期間TOEへの移行を待機する。そして、右側電池用膨張弁18a側の実行期間TOEの終了と共に、左側電池用膨張弁18b側の待機期間TOWを終了すると、左側電池用膨張弁18b側の実行期間TOEが開始される。
これにより、車両用空調装置1は、右側電池用膨張弁18aおよび左側電池用膨張弁18bについて、実行期間TOEの間、オイル回収用基本開度よりも大きな絞り開度にすることで、基準期間Tstdの間に滞留した冷凍機油を押し出して回収できる。周期的に実行期間TOEによる冷凍機油の回収が行われる為、基準期間Tstdの間における右側電池用膨張弁18a及び左側電池用膨張弁18bのオイル回収用基本開度ODOBを可能な限り小さく絞ることができる。
これにより、車両用空調装置1は、空調用蒸発器16に対する冷媒流量の減少を抑制することができるので、空調用蒸発器16の温度上昇による空調フィーリングの悪化と、バッテリ70の冷却に関する効率の低下をできるだけ小さく抑制することができる。
図25に示すように、右側電池用膨張弁18a及び左側電池用膨張弁18bの何れか一方の絞り開度を大きく開く為、両者を大きく開く場合に比べて、空調用蒸発器16に対する冷媒流量の低下を小さく抑えることができる。これにより、車両用空調装置1は、空調フィーリングや防曇性の低下を抑えつつ、冷凍機油の回収を行うことができる。
更に、右側電池用膨張弁18a及び左側電池用膨張弁18bについて、何れも基準期間Tstdを経過した場合、何れか一方の実行期間TOEを開始すると、何れか他方側の実行期間TOEは、何れか一方側の実行期間TOEの終了した後に開始する。換言すると、右側電池用膨張弁18a側及び左側電池用膨張弁18b側が基準期間Tstdの経過に係る実行条件を満たした場合、最小開度よりも大きな開度で開く電池用膨張弁は、何れか一方を先行して大きな開度で開き、その後に他方側に切り替えられる。
これにより、車両用空調装置1は、空調フィーリングの悪化を抑制しつつ、複数の冷却用蒸発部(すなわち、右側電池用蒸発器19a及び左側電池用蒸発器19b)の一つを含む全ての冷媒経路について、冷凍機油を回収することができる。
ステップS416では、右側電池用膨張弁18aの右側絞り開度ODRを決定して、ステップS417へ進む。右側絞り開度ODRは、右側電池用蒸発器19aの出口側の冷媒の右側過熱度SHBRが、予め定めた目標冷却側過熱度SHBO(本実施形態では、10℃)に近づくように決定される。目標冷却側過熱度SHBOは目標値の一例である。
具体的には、ステップS416では、右側絞り開度ODRの右側変化量fR(右側過熱度)を決定する。本実施形態では、図14のステップS416に記載された制御特性図に示すように、右側過熱度SHBRから目標冷却側過熱度SHBO(本実施形態では、10℃))を減算した値の増加に伴って、右側変化量fR(右側過熱度)を増加させるように決定する。
次に、前回の右側絞り開度ODRに右側変化量fR(右側過熱度)を加えた値、並びに、ステップS412にて決定された徐変制御中の制限開度LDopのうち、小さい方の値を右側仮絞り開度ODRpとする。
更に、上述のように決定した右側仮絞り開度ODRp、並びに、ステップS415で決定された右側オイル回収用開度ODORのうち、大きい方の値を右側絞り開度ODRに決定する。
ステップS417では、左側電池用膨張弁18bの左側絞り開度ODLを決定して、ステップS15へ進む。左側絞り開度ODLは、基本的に右側絞り開度ODRと同等の値に決定される。つまり、左側絞り開度ODLは、右側絞り開度ODRの決定に同期して、右側絞り開度ODRと同等の増減量となるように決定される。
但し、左側電池用蒸発器19bの出口側の冷媒の左側過熱度SHBLと右側過熱度SHBRが乖離した際には、左側電池用膨張弁18bの絞り開度を補正する。具体的には、ステップS417では、図14のステップS417に記載された制御特性図に示すように、左側過熱度SHBLから右側過熱度SHBRを減算した値の増加に伴って、左側補正量を増加させるように決定する。
但し、左側過熱度SHBLから右側過熱度SHBRを減算した値が一定値以下(本実施形態では、−5以上かつ+5以下)である場合、左側補正量を0にする。右側過熱度SHBRおよび左側過熱度SHBLは、右側冷却用蒸発器温度TEBR、左側冷却用蒸発器温度TEBLおよび冷却用蒸発器圧力PEBから導出される。
これにより、右側電池用蒸発器19aと左側電池用蒸発器19bとの過熱度の差があっても、バッテリ70の冷却が不均一にならない程度であれば右側電池用膨張弁18aの目標開度と左側電池用膨張弁18bの目標開度とを同一にする。
本実施形態の冷却用蒸発部は、右側電池用蒸発器19a及び左側電池用蒸発器19bが冷媒の流れに対して並列に接続されている。この為、一方の電池用蒸発器の過熱度を調整しようとして一方側の電池用膨張弁の絞り開度を変化させると、他方側の電池用蒸発器に対する冷媒流量が変化してしまい、他方側の電池用蒸発器の過熱度も変動してしまうことが考えられる。
そして、他方側の電池用蒸発器の過熱度が変化すると、同様に、他方側の電池用膨張弁の絞り開度が調整され、一方側の電池用蒸発器に対する冷媒流量が変化して、一方側の電池用蒸発器の過熱度が変化してしまう。このような制御ハンチングが生じることで、右側電池用蒸発器19a及び左側電池用蒸発器19bの温度が全く安定しなくなることが想定される。
ステップS417では、バッテリ70の冷却が不均一にならない程度であれば右側電池用膨張弁18aの目標開度と左側電池用膨張弁18bの目標開度とを同じにすることで、右側電池用蒸発器19a及び左側電池用蒸発器19bを安定して制御することができる。
続いて、前回の右側絞り開度ODRに右側変化量fR(右側過熱度)及び左側補正量を加えた値、並びに、ステップS412にて決定された徐変制御中の絞り開度ODopのうち、小さい方の値を左側仮絞り開度ODLpとする。
そして、上述のように決定された左側仮絞り開度ODLp、並びに、ステップS415で決定された左側オイル回収用開度ODOLのうち、大きい方の値を左側絞り開度ODLに決定する。
次に、ステップS15では、外気ファン12aの稼働率(すなわち、外気の送風量)を決定する。外気ファン12aの送風量については、高圧側の冷媒圧力Phに基づいて決定する。具体的には、図26の制御特性図に示すように、冷媒圧力Phの上昇に伴って、外気ファン12aの稼働率を上昇させて、送風量を増加させる。
これにより、凝縮器12にて高圧冷媒から外気へ放熱される放熱量を増大させることができるので、冷凍サイクル装置10の低圧側における吸熱量を増大させることができる。この結果、車両用空調装置1は、空調用蒸発部、冷却用蒸発部における冷却能力を充分に確保することができる。
次に、ステップS16では、上述のステップS5〜S15で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種制御対象機器に対して、制御信号および制御電圧が出力される。次に、ステップS17では、制御周期τ(本実施形態では、250ms)の間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻る。
以上のように構成された車両用空調装置1では、図27の図表に示すように冷凍サイクル装置10の冷媒回路が切り替えられる。
具体的には、エアコンスイッチ60aが投入されておらず、ステップS14にて電池冷却作動が許可されている場合は、基本的に電池単独サイクルに切り替えられる。なお、エアコンスイッチ60aが投入されておらず、電池冷却作動が禁止されている場合は、圧縮機11を停止させるので、いずれの冷媒回路に切り替えられていてもよい。
また、エアコンスイッチ60aが投入されており、電池冷却作動が許可されている場合は、空調電池サイクルに切り替えられる。エアコンスイッチ60aが投入されており、電池冷却作動が禁止されている場合は、基本的に空調単独サイクルに切り替えられる。
そして、本実施形態の車両用空調装置1によれば、冷凍サイクル装置10の冷媒回路を切り替えることによって、複数の運転モードを実現することができる。
先ず、冷凍サイクル装置10が空調単独サイクルに切り替えられている際には、空調用蒸発部へ冷媒を流入させるとともに冷却用蒸発部へ冷媒を流入させることを禁止する空調モードの運転が実行される。
空調モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、凝縮器12へ流入する。凝縮器12へ流入した高圧冷媒は、外気ファン12aから送風された外気と熱交換して凝縮する。凝縮器12にて凝縮した冷媒は、レシーバ12bにて気液分離される。
レシーバ12bから流出した液相冷媒は、電池用電磁弁14bが閉じているので、分岐部13aおよび空調用電磁弁14aを介して空調用膨張弁15へ流入して減圧される。空調用膨張弁15にて減圧された低圧冷媒は、空調用蒸発器16へ流入する。
空調用蒸発器16へ流入した冷媒は、空調用送風機32から送風された空調用送風空気と熱交換して蒸発する。これにより、空調用送風空気が冷却される。空調用蒸発器16から流出した冷媒は、逆止弁17および合流部13bを介して圧縮機11へ吸入され、再び圧縮される。
空調モードの熱媒体回路20では、水ポンプ21から圧送された熱媒体が、水加熱ヒータ22にて加熱される。水加熱ヒータ22によって加熱された熱媒体は、ヒータコア23へ流入する。ヒータコア23へ流入した熱媒体は、空調用蒸発器16にて冷却された空調用送風空気と熱交換する。これにより、空調用送風空気が再加熱される。
ヒータコア23から流出した熱媒体は、リザーブタンク24を介して、水ポンプ21に吸入され、再び圧送される。
空調モードの室内空調ユニット30では、内外気切替装置33から流入した空気が空調用送風機32へ吸入される。空調用送風機32から送風された空調用送風空気は、空調用蒸発器16へ流入して冷却される。空調用蒸発器16にて冷却された空調用送風空気の一部は、エアミックスドア34の開度に応じてヒータコア23にて再加熱される。
ヒータコア23にて加熱された空調用送風空気と冷風バイパス通路35を通過した空調用送風空気は、混合空間36にて混合されて目標吹出温度TAOに近づく。そして、混合空間36にて適切な温度に調整された空調用送風空気が、吹出口モードに応じて、車室内の適切な場所へ吹き出される。これにより、車室内の快適な空調が実現される。
また、冷凍サイクル装置10が電池単独サイクルに切り替えられている際には、空調用蒸発部へ冷媒を流入させることを禁止するとともに冷却用蒸発部へ冷媒を流入させる冷却モードの運転が実行される。
冷却モードの冷凍サイクル装置10では、空調単独サイクルと同様に、凝縮器12にて凝縮した冷媒が、レシーバ12bにて気液分離される。レシーバ12bから流出した液相冷媒は、空調用電磁弁14aが閉じているので、分岐部13aおよび電池用電磁弁14bを介して電池側分岐部13cへ流入する。
電池側分岐部13cの一方の流出口から流出した冷媒は、右側電池用膨張弁18aへ流入して減圧される。右側電池用膨張弁18aにて減圧された低圧冷媒は、右側電池用蒸発器19aへ流入する。
右側電池用蒸発器19aへ流入した冷媒は、冷却用送風機42から送風された冷却用送風空気と熱交換して蒸発する。これにより、冷却用送風空気が冷却される。右側電池用蒸発器19aから流出した冷媒は、電池側合流部13dおよび合流部13bを介して圧縮機11へ吸入され、再び圧縮される。
電池側分岐部13cの他方の流出口から流出した冷媒は、左側電池用膨張弁18bへ流入して減圧される。左側電池用膨張弁18bにて減圧された低圧冷媒は、左側電池用蒸発器19bへ流入する。
左側電池用蒸発器19bへ流入した冷媒は、冷却用送風機42から送風された冷却用送風空気と熱交換して蒸発する。これにより、冷却用送風空気が冷却される。左側電池用蒸発器19bから流出した冷媒は、電池側合流部13dおよび合流部13bを介して圧縮機11へ吸入され、再び圧縮される。
冷却モードの電池パック40では、電池用空間45内の空気が冷却用送風機42へ吸入される。冷却用送風機42から送風された冷却用送風空気は、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19bへ流入して冷却される。
右側電池用蒸発器19aにて冷却された冷却用送風空気は、右側空気通路44aを介して電池用空間45へ導かれ、バッテリ70の右側に吹き付けられる。これにより、複数の電池セルの一方の端面が冷却される。左側電池用蒸発器19bにて冷却された冷却用送風空気は、左側空気通路44bを介して電池用空間45へ導かれ、バッテリ70の左側に吹き付けられる。これにより、複数の電池セルの他方の端面が冷却される。
また、冷凍サイクル装置10が空調電池サイクルに切り替えられている際には、空調用蒸発部へ冷媒を流入させるとともに冷却用蒸発部へ冷媒を流入させる空調冷却モードの運転が実行される。
空調冷却モードの冷凍サイクル装置10では、空調単独サイクルおよび電池単独サイクルと同様に、凝縮器12にて凝縮した冷媒が、レシーバ12bにて気液分離される。レシーバ12bから流出した液相冷媒は、分岐部13aへ流入する。
分岐部13aの一方の流出口から流出した冷媒は、空調単独サイクルに切り替えられている際と同様に、空調用電磁弁14aを介して空調用膨張弁15へ流入する。そして、空調単独サイクルに切り替えられている際と同様に、空調用蒸発器16にて空調用送風空気が冷却される。
分岐部13aの他方の流出口から流出した冷媒は、電池単独サイクルに切り替えられている際と同様に、電池用電磁弁14bを介して電池側分岐部13cへ流入する。そして、電池単独サイクルに切り替えられている際と同様に、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19bにて冷却用送風空気が冷却される。
空調冷却モードの熱媒体回路20および室内空調ユニット30では、空調単独サイクルに切り替えられている際と同様に作動する。従って、冷凍サイクル装置10の冷媒回路が空調電池サイクルに切り替えられている際にも、適切に温度調整された空調用送風空気が、車室内の適切な箇所に吹き出され、車室内の快適な空調が実現される。
空調冷却モードの電池パック40では、各構成機器が電池単独サイクルに切り替えられている際と同様に作動する。従って、冷凍サイクル装置10の冷媒回路が空調電池サイクルに切り替えられている際にも、バッテリ70を冷却することができる。
以上説明したように、本実施形態の車両用空調装置1では、ステップS414にて、冷却用流量調整部(右側電池用膨張弁18a及び左側電池用膨張弁18b)のオイル回収用基本開度ODOBを、空調電池サイクルの方が電池単独サイクルよりも小さく決定する。
空調電池サイクルでは、空調用蒸発器16を介した冷媒経路と、冷却用蒸発部(右側電池用蒸発器19a及び左側電池用蒸発器19b)を介した冷媒経路が存在する為、空調用蒸発部を介した冷媒経路によって、冷凍機油を圧縮機に戻すことができる。
従って、空調電池サイクルの場合は、冷却用流量調整部の最小開度を、電池単独サイクルの場合よりも小さくして可能な限り絞ることができ、空調電池サイクルにおける空調用蒸発器16に対する冷媒流量の減少を抑制できる。即ち、車両用空調装置1は、空調冷却サイクルにおける空調用蒸発器16の温度上昇を抑制して、空調能力を維持すると共に、冷却用蒸発部におけるバッテリ70の冷却効率の低下を抑制できる。
図25に示すように、本実施形態の車両用空調装置1では、オイル回収制御として、予め定められた基準期間Tstdの経過毎に、冷却用流量調整部の絞り開度を、最小開度であるオイル回収用基本開度ODOBよりも大きな開度で開く。
これにより、オイル回収制御によれば、基準期間Tstdの経過毎に、冷却用蒸発部に流入する冷媒流量を増大させることができ、基準期間Tstdの間に滞留した冷凍機油を圧縮機へ戻すことができる。この結果、基準期間Tstdの間における冷却用流量調整部の絞り開度を可能な限り小さく絞ることができるので、車両用空調装置1は、空調用蒸発器16に対する冷媒流量の減少を抑制することができる。
本実施形態の車両用空調装置1では、複数の冷却用蒸発部(例えば、右側電池用蒸発器19a、左側電池用蒸発器19b)及び、複数の冷却用流量調整部(例えば、右側電池用膨張弁18a、左側電池用膨張弁18b)が、冷媒流れに対して並列に接続されている。そして、基準期間Tstdが経過すると、オイル回収制御として、複数の冷却用流量調整部の一つが最小開度であるオイル回収用基本開度ODOBよりも大きな開度で開く。
これにより、複数の冷却用流量調整部を対象にする場合に比べて、空調用蒸発器16に対する冷媒流量の低下を小さく抑えることができる。従って、車両用空調装置1は、空調フィーリングや防曇性の低下を抑えつつ、冷凍機油の回収を行うことができる。
図25に示すように、オイル回収制御において、オイル回収用基本開度ODOBよりも大きな開度で開く冷却用流量調整部は、複数の冷却用流量調整部の間で時間経過に伴って変更される。
これにより、車両用空調装置1は、空調フィーリングの悪化を抑制しつつ、複数の冷却用蒸発部(すなわち、右側電池用蒸発器19a及び左側電池用蒸発器19b)の一つを含む全ての冷媒経路について、冷凍機油を回収することができる。
そして、本実施形態の車両用空調装置1では、ステップS306において、圧縮機11の冷媒吐出能力に関するオイル回収用下限値を、外気温Tamの低下に伴って上昇させるように決定している。
外気温Tamの低下に伴って、サイクルを循環させる循環冷媒流量が低下して、冷媒回路の内部等に冷凍機油が滞留しやすくなる為、オイル回収用下限値を外気温Tamの低下に伴って上昇させることで、冷凍機油を圧縮機11へ戻しやすくしている。そして、冷凍機油を圧縮機11へ戻しやすくすることで、冷却用流量調整部の最小開度をさらに絞ることができる為、空調冷却サイクルにおける空調用蒸発器16の温度上昇を抑制して、空調能力を維持すると共に、バッテリ70の冷却効率の低下を抑制できる。
又、ステップS306の制御特性図に示すように、本実施形態の車両用空調装置1は、冷媒回路が空調電池サイクルに切り替えられている際には、空調単独サイクルあるいは電池単独サイクルに切り替えられている際よりもオイル回収用下限値を上昇させる。
これは、空調電池サイクルでは、空調単独サイクルおよび電池単独サイクルよりも冷媒の流通する冷媒経路が増加するので、冷凍機油を圧縮機11へ戻すために必要な循環冷媒流量が増加するからである。つまり、車両用空調装置1は、冷媒経路の構成に応じた適切なオイル回収用下限値を採用して、圧縮機11の動作を制御することができる。
そして、本実施形態の車両用空調装置1は、ステップS305において、電池温度TBが高くなって空調電池要件上限値が高くなっても、圧縮機11の回転数の上限値がNV要件上限値よりも高くならないように決定している。
これにより、車両用空調装置1は、車室内の空調及びバッテリ70の冷却に関する要求に応えると同時に、圧縮機11の騒音や振動に関する要求にも対応した適切な圧縮機11の回転数の上限値に決定することができる。
又、本実施形態の車両用空調装置1は、ステップS13で説明したように、ステップS404でバッテリ70の冷却を許可した場合、電池用電磁弁14bがバッテリ70の冷却作動を開始する前に圧縮機11の冷媒吐出能力の上限値を高くする。
これによれば、空調用蒸発器16の温度を極力下げてからバッテリ70の冷却を開始できるので、バッテリ70の冷却を開始したときに空調用蒸発器16の温度が上がることを極力抑制できる。又、圧縮機11の冷媒吐出能力の上限値を高くすることで、サイクル中の冷媒密度を上げて、冷凍機油を循環させやすくすることができる。これにより、冷却用流量調整部の最小開度が小さくても、圧縮機11の焼きつきを抑制しながら、サイクルを作動させることができる。
そして、本実施形態の車両用空調装置1は、ステップS301にて、空調電池サイクルの場合における圧縮機の冷媒吐出能力を、空調用蒸発器16の空調用蒸発器温度TEと、目標空調用蒸発器温度TEOの差を用いたフィードバック制御手法を用いて決定する。
これにより、空調電池サイクルの場合でも、バッテリ70の冷却と、車室内の快適性及び防曇性を確保できる圧縮機11の冷媒吐出能力を実現することができ、車両の走行安全と、バッテリ70の冷却を両立させることができる。
また、本実施形態の車両用空調装置1では、冷却用蒸発部が、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19bとして、冷媒の流れに対して並列に複数設けられている。これによれば、冷却用蒸発部を電池パック40の冷却用空間43を有効に利用して配置することができる。すなわち、冷却用蒸発部を、バッテリ70を効果的に冷却できるように配置することができる。
また、本実施形態の車両用空調装置1では、冷却用流量調整部が、右側電池用膨張弁18aおよび左側電池用膨張弁18bとして、複数設けられている。そして、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19bへ流入させる冷媒流量を個別に調整できるようになっている。これによれば、複数の冷却用蒸発部における冷媒蒸発温度を個別に調整することができ、バッテリ70の効果的な冷却を実現することができる。
そして、ステップS417の制御特性図に示すように、左側電池用蒸発器19bの左側過熱度SHBLから右側電池用蒸発器19aの右側過熱度SHBRを減算した値が基準範囲内の場合、左側補正量を0にする。つまり、右側電池用蒸発器19aと左側電池用蒸発器19bとの過熱度の差があっても、バッテリ70の冷却が不均一にならない程度であれば右側電池用膨張弁18aの目標開度と左側電池用膨張弁18bの目標開度とを同じにする。
本実施形態の車両用空調装置1では、右側電池用膨張弁18a及び左側電池用膨張弁18bと、右側電池用蒸発器19a及び左側電池用蒸発器19bは、冷媒の流れに対して並列に接続されている。この為、一方の冷却用流量調整部にて、一方の冷却用蒸発部の過熱度を調整しようとすると、他方の冷却用蒸発部の過熱度が変化してしまう。
ステップS417にて、バッテリ70の冷却が不均一にならない程度であれば右側電池用膨張弁18aの目標開度と左側電池用膨張弁18bの目標開度とを同じにすることで、右側電池用蒸発器19a及び左側電池用蒸発器19bの制御の安定性を実現している。
本実施形態の車両用空調装置1は、ステップS77にて空調電池サイクルに切り替えられていると判定された場合、外気率を0%に決定して内外気切替装置33の作動を制御する。この結果、空調電池サイクルの運転開始に先立って、空調用蒸発器16に供給される内気率は100%に増加する。
これによれば、バッテリ70の冷却を開始する前に、空調用蒸発器16に導入される空気の温度を極力低下させることができるので、バッテリ70の冷却作動を開始したときに空調用蒸発器16の温度が上がることを極力抑制できる。
本実施形態の車両用空調装置1は、ステップS76にて外気温Tamが基準高温側外気温KTamhよりも高いと判定された場合、外気率を0%に決定して内外気切替装置33の作動を制御する。つまり、空調用蒸発器16に導入される外気の量が減少するように、内外気切替装置33の作動が制御される。
これにより、空調用蒸発器16に導入される空気の温度を極力低下させることができるので、空調用送風空気の温度をできるだけ早期に目標値まで下げることができ、バッテリ70の冷却が空調に及ぼす影響を抑制することができる。
そして、本実施形態の車両用空調装置1では、ステップS15にて説明したように、高圧側の冷媒圧力Phの上昇に伴って、外気ファン12aの稼働率を上昇させて、凝縮器12に対する送風量を増加させている。
これにより、凝縮器12にて高圧冷媒から外気へ放熱される放熱量を増大させることができるので、冷凍サイクル装置10の低圧側における吸熱量を増大させることができる。この結果、車両用空調装置1は、空調用蒸発部、冷却用蒸発部における冷却能力を充分に確保することができる。
又、本実施形態の車両用空調装置1では、冷却用送風部である冷却用送風機42の送風量は、空調用送風部である空調用送風機32の送風量よりも少なくなるように定められている。
これによれば、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19bにて冷却用送風空気を冷却するために冷媒を蒸発させても、空調用蒸発器16における空調用送風空気の冷却に影響を与えにくくすることができる。
そして、本実施形態の車両用空調装置1では、空調用蒸発器16における熱交換面積が、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19bにおける熱交換面積の合算値よりも大きくなっている。これによれば、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19bへ流入させる冷媒流量が少なくなるので、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19bにて発揮される冷却能力を安定化させやすい。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
冷凍サイクル装置10は、上述の実施形態に開示された構成に限定されない。例えば、電池用電磁弁14bを廃止して、右側電池用膨張弁18aおよび左側電池用膨張弁18bの有する全閉機能によって、分岐部13aの他方の流出口から電池側分岐部13cの流入口へ至る冷媒通路を開閉してもよい。この場合は、右側電池用膨張弁18aおよび左側電池用膨張弁18bの作動に充分な応答性が確保されていることが望ましい。
また、上述の実施形態では、例えば、右側電池用膨張弁18aの絞り開度を予め定めた空調制御装置50に記憶された制御特性図に基づいて作動させた例を説明したが、これに限定されない。例えば、右側過熱度SHBRから目標冷却側過熱度SHBOを減算した過熱度差に基づいてフィードバック制御手法を用いて、右側電池用膨張弁18aの絞り開度を変化させてもよい。
また、上述の実施形態では、冷却用蒸発部として、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19bの2つを採用した例を説明したが、冷却用蒸発部の数量は限定されない。
また、上述の実施形態では、バッテリ70を冷却する際に、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19bの双方へ同時に冷媒を流入させる例を説明したが、これに限定されない。例えば、低外気温時等には、右側電池用蒸発器19aおよび左側電池用蒸発器19bに交互に冷媒を流入させてバッテリ70を冷却するようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、冷凍サイクル装置10の冷媒としてR1234yfを採用した例を説明したが、冷媒はこれに限定されない。例えば、R134a、R600a、R410A、R404A、R32、R407C等を採用してもよい。または、これらのうち複数の冷媒を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。
また、熱媒体回路20は、上述の実施形態に開示された構成に限定されない。例えば、上述の実施形態では、熱媒体として、エチレングリコール水溶液を採用した例を説明したが、これに限定されない。熱媒体として、ジメチルポリシロキサン、あるいはナノ流体等を含む溶液、不凍液、アルコール等を含む水系の液冷媒、オイル等を含む液媒体等を採用してもよい。
また、電池パック40は、上述の実施形態に開示された構成に限定されない。上述の実施形態では、電池パック40の電池用ケーシング41内で、冷却用蒸発部にて冷却された冷却用送風空気を循環させることによって、バッテリ70を冷却する例を説明したがこれに限定されない。
例えば、冷却用流量調整部から流出した低圧冷媒と低温側熱媒体とを熱交換させて、低温側熱媒体を冷却する冷媒−熱媒体熱交換器を設ける。そして、冷媒−熱媒体熱交換器にて冷却された低温側熱媒体を、バッテリ70に接触するように形成された冷却水通路へ流入させてバッテリ70を冷却してもよい。
また、上述の実施形態では、冷却対象物としてバッテリ70を冷却する例を説明したが、冷却対象物はこれに限定されない。冷却対象物として、例えば、インバータ、モータジェネレータ、電力制御ユニット(いわゆる、PCU)、先進運転支援システム(いわゆる、ADAS)用の制御装置等のように作動時に発熱する車載機器を採用してもよい。
また、空調制御装置50は、上述の実施形態に開示された構成に限定されない。例えば、電池温度センサ59は、車両用制御装置80に接続されていてもよい。そして、空調制御装置50が、車両用制御装置80に入力された電池温度TBを読み込んで、各種制御に用いるようになっていてもよい。
また、空調制御装置50による制御は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。例えば、上述のステップS412では、基準増加量として、1秒当たりの増加量が最大開度の0.1%を採用した例を説明したが、これに限定されない。空調用蒸発器16へ流入する冷媒の急減を抑制することができれば、0.1%以下としてもよい。
また、本実施形態におけるオイル回収制御は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。上述の実施形態にて例示したオイル回収用基本開度ODOBや、開度補正値ODCの数値を適宜変更することも可能である。
例えば、空調電池サイクルの場合の開度補正値ODCと、電池単独サイクルの場合の開度補正値ODCを、異なる数値にすることも可能である。又、実行期間TOEや基準期間Tstdの長さに関しても、車両が走行する環境(例えば、仕向地等)に応じて、適宜変更することができる。
10 冷凍サイクル装置
11 圧縮機
14a、14b 切替部(空調用電磁弁、電池用電磁弁)
16 空調用蒸発部(空調用蒸発器)
18a、18b 冷却用流量調整部(右側電池用膨張弁、左側電池用膨張弁)
19a、19b 冷却用蒸発部(右側電池用蒸発器、左側電池用蒸発器)
50 空調制御装置
50c 最小開度決定部

Claims (17)

  1. 冷凍機油が混入された冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)と、車室内へ送風される空調用送風空気を冷却する為に前記冷媒を蒸発させる空調用蒸発部(16)と、前記冷媒の流れに関して前記空調用蒸発部に並列に接続され、冷却対象物(70)を冷却する為に前記冷媒を蒸発させる冷却用蒸発部(19a、19b)と、前記冷却用蒸発部へ流入する前記冷媒の流量を調整する冷却用流量調整部(18a、18b)と、を有する冷凍サイクル装置(10)と、
    前記空調用蒸発部及び前記冷却用蒸発部へ前記冷媒を流入させる空調冷却サイクルと、前記空調用蒸発部へ前記冷媒を流入させることを禁止すると共に前記冷却用蒸発部へ前記冷媒を流入させる冷却単独サイクルとを切り替える切替部(14a、14b)と、
    前記切替部による前記空調冷却サイクルと前記冷却単独サイクルとの切り替えを制御する切替制御部(50a)と、
    前記冷却用流量調整部の作動を制御する冷却用流量制御部(50b)と、
    前記冷却用流量調整部における絞り開度の下限値である最小開度を決定する最小開度決定部(50c)と、を備え、
    前記最小開度決定部は、前記空調冷却サイクルにおける前記最小開度を、前記冷却単独サイクルにおける前記最小開度よりも小さな値に決定する車両用空調装置。
  2. 前記冷却用蒸発部の内部に滞留している前記冷凍機油の循環を促すオイル回収制御を行うオイル回収制御部(50d)を有し、
    前記オイル回収制御部は、予め定められた基準期間(Tstd)の経過毎に、前記冷却用流量調整部の絞り開度を、前記最小開度よりも大きな開度で開く請求項1に記載の車両用空調装置。
  3. 前記冷却用蒸発部(19a、19b)は、前記冷媒の流れに関して相互に並列となるように複数設けられると共に、
    前記冷却用流量調整部(18a、18b)は、それぞれの前記冷却用蒸発部へ流入させる前記冷媒の流量を調整できるように複数設けられており、
    前記オイル回収制御部(50d)は、前記基準期間が経過した際に、複数の前記冷却用流量調整部の内の一つの絞り開度を、前記最小開度よりも大きな開度で開く請求項2に記載の車両用空調装置。
  4. 前記オイル回収制御部(50d)は、前記最小開度よりも大きな開度で開く前記冷却用流量調整部を、複数の前記冷却用流量調整部(18a、18b)の間で時間経過に伴って変更する請求項3に記載の車両用空調装置。
  5. 前記冷却用蒸発部の内部に滞留している前記冷凍機油の循環を促すオイル回収制御における前記圧縮機の冷媒吐出能力の下限値を決定する下限値決定部(50e)と、を有し、
    前記下限値決定部は、外気温(Tam)の低下に伴って前記下限値を上昇させる請求項1ないし4の何れか1つに記載の車両用空調装置。
  6. 前記下限値決定部は、前記空調冷却サイクルにおける前記下限値を、前記冷却単独サイクルにおける前記下限値よりも大きな値に決定する請求項5に記載の車両用空調装置。
  7. 前記圧縮機の冷媒吐出能力の上限値を決定する上限値決定部(50f)を有し、
    前記上限値決定部は、前記冷却対象物の温度(TB)が予め定められた基準対象物冷却温度(KTB1)を超えている場合、前記上限値を、前記圧縮機(11)の騒音及び振動を抑制する為のNV要件上限値以下に決定する請求項1ないし6の何れか1つに記載の車両用空調装置。
  8. 前記圧縮機の冷媒吐出能力の上限値を決定する上限値決定部(50f)を有し、
    前記上限値決定部は、前記空調冷却サイクルでの運転を開始する際に、前記空調用蒸発部における前記冷媒の流量の減少が抑制されるように、前記上限値を予め大きく決定する請求項1ないし7の何れか1つに記載の車両用空調装置。
  9. 前記圧縮機の冷媒吐出能力を制御する冷媒吐出能力制御部(50g)を有し、
    前記冷媒吐出能力制御部は、前記空調冷却サイクルでの運転に関し、前記空調用蒸発部の空調用蒸発部温度(TE)と、予め定められた目標空調用蒸発器温度(TEO)との差を用いたフィードバック制御を行う請求項1ないし8の何れか1つに記載の車両用空調装置。
  10. 前記冷却用蒸発部(19a、19b)は、前記冷媒の流れに関して相互に並列となるように複数設けられている請求項1ないし9の何れか1つに記載の車両用空調装置。
  11. 前記冷却用流量調整部(18a、18b)は、それぞれの前記冷却用蒸発部(19a、19b)へ流入させる前記冷媒の流量を個別に調整できるように複数設けられている請求項10に記載の車両用空調装置。
  12. 前記冷却用流量制御部(50b)は、複数の前記冷却用流量調整部(18a、18b)にて、複数の前記冷却用蒸発部(19a、19b)に流入する前記冷媒の流量をそれぞれ制御する際に、前記冷却用蒸発部における過熱度が予め定められた目標値になるように制御し、
    複数の前記冷却用蒸発部における過熱度の差(SHBL−SHBR)が一定値以下である場合、複数の前記冷却用流量調整部の絞り開度を同一にする請求項11に記載の車両用空調装置。
  13. 前記空調用蒸発部に導入される内気と外気の導入割合を調整する内外気調整部(33)と、
    前記内外気調整部の作動を制御する内外気制御部(50h)と、を有し、
    前記内外気制御部は、前記空調冷却サイクルでの運転を開始する際に、前記空調用蒸発部に導入される前記外気の割合が減少するように前記内外気調整部を制御する請求項1ないし12の何れか1つに記載の車両用空調装置。
  14. 前記空調用蒸発部に導入される内気と外気の導入割合を調整する内外気調整部(33)と、
    前記内外気調整部の作動を制御する内外気制御部(50h)と、を有し、
    前記内外気制御部は、外気温(Tam)が予め定められた基準高温側外気温(KTamh)よりも高い場合、前記空調用蒸発部に導入される前記外気の割合が減少するように前記内外気調整部を制御する請求項1ないし13の何れか1つに記載の車両用空調装置。
  15. 前記圧縮機で圧縮された高圧冷媒の熱を放熱させる放熱部(12)と、
    前記放熱部に対して送風する送風ファン(12a)と、
    前記送風ファンの作動を制御するファン制御部(50i)と、を有し、
    前記ファン制御部は、前記高圧冷媒の圧力の上昇に伴って、前記送風ファンの稼働率を上げる請求項1ないし14の何れか1つに記載の車両用空調装置。
  16. 前記空調用蒸発部(16)に送風する空調用送風部(32)と、
    前記冷却用蒸発部(19a、19b)に送風する冷却用送風部(42)と、を有し、
    前記冷却用送風部の送風量は、前記空調用送風部の送風量よりも少ない請求項1ないし15の何れか1つに記載の車両用空調装置。
  17. 前記空調用蒸発部(16)における前記冷媒と空調用送風空気との熱交換面積は、前記冷却用蒸発部(19a、19b)における前記冷媒と前記冷却用蒸発部を通過する冷却用送風空気との熱交換面積よりも大きくなっている請求項1ないし16の何れか1つに記載の車両用空調装置。
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