JP2021038655A - 木質耐火部材 - Google Patents
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Abstract
Description
木質構造部材の耐火性を確保することを目的として、荷重支持部に対して耐火被覆する耐火構造が多数開発されている。なお、耐火構造には、火災終了時においても荷重支持部が炭化しないことが求められている。
例えば、特許文献1には、木材で構成された荷重支持層と、荷重支持部の外側に配置された不燃材からなる耐火被覆層と、その耐火被覆層の外側に木材からなる燃え代層が配置された燃え止まり機能を備えた木質集成柱、または木質集成梁が開示されている。耐火被覆層は、例えばモルタル板、石膏ボード、或いは、難燃薬剤を含浸させた不燃材であって、かつ断熱性能を備えた板材で構成されている。
また、特許文献2には、断熱性能と耐火性能を備えた木造外壁構造が開示されている。枠組壁工法による木造建物に用いられる外張り断熱耐火構造は、構造用面材の外側に、断熱材、防水紙、アルミニウム箔層、及びラスモルタル層が順に配置されている。
上記の特許文献1、2では、不燃材同士や断熱材同士の目地部分に隙間があると、その隙間が熱の通り道となる。そのため、耐火被覆層を形成する際は、高精度に加工された板材を貼り付けるか、または板材同士の目地部分の隙間を確実に塞ぐ必要があり、手間と費用がかかる。
また、特許文献3には、合成耐火梁を対象とした耐火被覆構造であり、鉄骨梁の表面に巻付け方式、または吹付け方式により耐火被覆材を被覆する方法が開示されている。具体的には、鉄骨梁を湿式耐火材で覆う耐火被覆構造であって、湿式耐火材に含まれる水分が鉄骨梁側に浸透していっても、鉄骨梁の構造特性が変化することはなく、低コストにて鉄骨梁の耐火被覆構造を実現できる。
しかしながら、木造柱を吹き付け方式や巻き立て方式によって湿式耐火材で覆う場合、板材同士の目地部分については隙間なく覆うことは可能である反面、木材側に湿式耐火材に含まれる水分が浸透していくと、木材腐朽の原因になるとともに、構造性能が低下するという、課題があった。
前記課題を解決するために、本発明は、荷重支持部と、前記荷重支持部の周囲に被覆された耐火被覆層と、前記耐火被覆層の外側に周設された仕上げ木材層とを備える木質耐火部材である。本発明の第1の木質耐火部材は、前記耐火被覆層が湿式耐火被覆材からなり、前記荷重支持部と前記耐火被覆層との間、および、前記耐火被覆層と前記仕上げ木材層との間に、水分遮断塗膜または水分遮断シートからなる水分遮断層が形成されていることを特徴とする。
かかる木質耐火部材によれば、耐火被覆層が水分遮断層により挟まれているため、耐火被覆層の水分が荷重支持部や仕上げ木材層へ浸透することが防止されている。そのため、水分による強度低下や変色等が生じることがなく、構造性能および耐火性能を確保することができる。
また、木質耐火部材では、前記仕上げ木材層の材端部には、前記荷重支持部と前記仕上げ木材層との間に設けられた前記耐火被覆層が連続して形成され、当該耐火被覆層が露出するように形成するのが望ましい。
このようにすれば、荷重支持部の材端部に耐火被覆層が形成されているため、木質耐火部材と接する建物部位を介して、仕上げ木材層に延焼することを防止できる。また、仕上げ木材層に比べて圧縮剛性が低い耐火被覆層が仕上げ木材層の材端部に設けられていることで、地震時に木質耐火部材に大変形が生じた場合であっても、耐火被覆層の露出部分で変位が吸収されるために、木質耐火部材と建物部位との当接部における破損を防止することができる。
本発明の第一の実施形態を図1、2に示すとともに、第二の実施形態を図4、5に示し、第三の実施形態を図7に示す。また、木質耐火部材の断面設計例を図6に示す。
以下、添付図面を参照して、本発明による木質耐火部材の実施形態について説明する。
第一の実施形態の木質耐火部材1は、建物の柱を構成する部材(木質耐火柱)であって、図1(a)に示すように、断面視正方形を呈している。なお、木質耐火部材1の断面形状は限定されるものではなく、例えば、矩形状や円形状であってもよい。
木質耐火部材1は、荷重支持部2と、耐火被覆層3と、仕上げ木材層4と、水分遮断層5とを備えている。耐火被覆層3は、吹き付け方式による湿式耐火被覆材(ロックウールやセラミック系耐火被覆材)である。
本明細書でいう湿式耐火被覆材とは、ロックウールとセメント、水を主成分とする吹付けロックウール、または白セメント、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムを主成分とする吹付けセラミック系耐火被覆材である。吹付けロックウールは、重量比において、ロックウール:セメント:水が6:4:8の割合で練り混ぜられた耐火被覆材であり、水分割合は44%である。吹付けセラミック系耐火被覆材は、吸熱効果の高い水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、セメントを主成分としており、ロックウールなどの断熱タイプより薄層にて優れた耐火性能を実現している。
本実施形態の仕上げ木材層4は、図1(a)に示すように、4枚の仕上げ板材41を、互いの端部同士を接合することにより、断面視枠状に形成されている。仕上げ木材層4の角部では、一方の仕上げ板材41の端面が他方の仕上げ板材41の板面に当接した状態で、他方の仕上げ板材41を貫通した木ビス42を介して接合されている。なお、仕上げ板材41同士の接合方法は限定されるものではなく、例えば、接着剤により接着してもよいし、釘を利用して接合してもよい。本実施形態の仕上げ板材61には、厚さ10mmのスギ板を使用する。なお、仕上げ板材41を構成する材料はスギ板に限定さえるものではない。また、仕上げ木材層4の層厚および仕上げ板材41の板厚は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
水分遮断層5は、例えば、水分遮断塗膜(例えば、キシラデコールコンゾラン(商品名)等)や水分遮断シート(例えば、エア・ドライ(登録商標)等)を配設することにより形成されている。なお、水分遮断層5を構成する材料は、水分の浸透を遮断することが可能なものであれば、限定されるものではなく、例えば防水紙であってもよい。
第一実施形態の木質耐火部材1では、吹き付け方式による湿式耐火被覆材(例えば、吹付けロックウール)により耐火被覆層3が形成されている。湿式耐火被覆材は、水分量が40%程と一般的な木質部材よりも大きい。木質部材の含水率は、例えば、桧の柱の含水率は18%前後、桧フローリング材で15%前後、杉の柱で20〜30%、杉フローリング材で15〜22%程度である。そのため、第一実施形態の木質耐火部材1では、荷重支持部2と耐火被覆層3との間、及び耐火被覆層3と仕上げ木材層4との間に、水分遮断塗膜または水分遮断シートからなる水分遮断層5を設置して、荷重支持部2や仕上げ木材層4側への水分の浸透を阻止し、構造性能と耐火性能を確保する。
まず、図2(a)に示すように、集成材からなる荷重支持部2の外面に、水分遮断シート51を貼着することにより水分遮断層5を形成する。水分遮断シート51は、固定ピン52で荷重支持部2の表面に固定する。水分遮断シート51は、荷重支持部2に巻き付けた後、両端部を重ね合わせ、当該重合部を固定ピン52で固定する。なお、水分遮断シート51は、荷重支持部2の表面に接着してもよく、その固定方法は限定されるものではない。また、水分遮断層5の形成方法は限定されるものではなく、例えば、荷重支持部2の表面に水分遮断塗膜を塗着することにより形成してもよい。
次に、図2(b)に示すように、水分遮断層5の外面に、ロックウールからなるシート状の耐火被覆材31を巻き付けることにより、耐火被覆層3を形成する。このとき、耐火被覆層3の層厚は、柱端部で大きくなるようにする。本実施形態では、所定の厚みを有した耐火被覆材31を一重に巻き付ける。なお、耐火被覆層3は、耐火被覆材31を多重に巻き付けることにより形成してもよい。耐火被覆材31は、両端部を互いに重ね合わせた状態で、固定ピン32により荷重支持部2に固定する。本実施形態の耐火被覆材31の端部には段差が形成されているので、端部同士を重ね合わせても耐火被覆層3の厚さが変化することはない。なお、耐火被覆材31の端部の段差は必要に応じて形成すればよい。
続いて、図2(c)に示すように、耐火被覆層3の外面に仕上げ板材41を設置して、仕上げ木材層4を形成する。このとき、各仕上げ板材41の耐火被覆層3との当接面(耐火被覆層3の内側面および耐火被覆層3の上下端面)には、予め水分遮断層5を形成しておく。なお、水分遮断層5は、仕上げ板材4に水分遮断塗膜を塗着することにより形成してもよいし、水分遮断シートを貼着することにより形成してもよい。また、水分遮断層5が取り付けられた仕上げ板材41は、接着剤を用いて耐火被覆層3に接着するか、固定ピンにより荷重支持部に固定する。
仕上げ板材41の固定に使用する固定ピンは、ピン本体部とワッシャー部で構成される。ワッシャー部は溶融亜鉛めっき鋼板で形成され、ピン本体部は冷間圧造炭素鋼線材で形成される。また、仕上げ木材層4に設けられるワッシャー部の上面には、木材用化粧充填材を設けることで、仕上げ木材層4の木材の持つ質感を確保されている。
また、木質耐火部材1は、工場において荷重支持部2の外面に水分遮断塗膜または水分遮断シートからなる水分遮断層5を設けた木質部材を製作したものを建設現場に搬入し、床スラブ上または柱頭部上に建て込んだ後、その外側に耐火被覆層3、水分遮断層5、仕上げ木材層4を形成する。または、仕上げ木材層4まで工場において形成した木質耐火部材1を建設現場に搬入して、所定位置に建て込み、柱梁架構を構築しても良い。このように木質耐火部材1は、一部の層、または全ての構成層を工場で製作することで、水分遮断層5や耐火被覆層3を容易に隙間なく形成することができる。
本計算例では、図3に示す定常伝熱モデルにおいて、火災温度(木質耐火部材1の外気側の温度)が1000℃の場合について、加重支持部2の外側面(表面)温度T1、耐火被覆層3の表面(耐火被覆層3と仕上げ木材層4との間の面)温度T2、及び、仕上げ木材層4の表面温度T3について、仕上げ木材層4と耐火被覆層3の其々の層厚さと熱伝導率、及び外気の対流熱伝導率を用いて、推定した。
耐火被覆層3および仕上げ材層4の層厚は、図3に示すようにそれぞれdr=40mmおよびds=10mmとする。また、耐火被覆層3および仕上げ材層4の熱伝導率は、それぞれλr=0.047W/(m・k)、λs=0.087W/(m・k)とする。さらに、対流熱伝導率は、α=10W/(m2・k)とする。
ここで、層厚と熱伝導率の関係は下式のように表される。
1/α:dr/λr:ds/λs:1/α
=1/10:0.04/0.047:0.01/0.087:1/10
=0.1:0.85:0.12:0.1
となり、木質耐火部材の総熱抵抗値は下式のように表される。
R=0.1+0.85+0.12+0.1=1.17
となる。
次に、熱抵抗値Rを利用して、荷重支持部2の外側面T1(耐火被覆層3の背面温度T1)、耐火被覆層3の表面温度T2、および仕上げ材層4の表面温度T3を推定する。
T1=0.1/1.17×(1000-20)=114.7(℃)
T2=(0.1+0.85)/1.17×(1000-20)=795.7(℃)
T3=(0.1+0.85+0.12)/1.17×(1000-20)=896.2(℃)
以上、本実施形態の木質耐火部材1によれば、火災時等において、木質耐火部材1の外気の温度が1000℃にまで上昇した場合であっても、耐火被覆層3を鉄骨材にて2時間耐火性能が実証されている湿式耐火被覆材の層厚さを40mmとすることで、荷重支持部2の表面では115℃程度となり、木材の炭化開始温度260℃を下回った。したがって、木質耐火部材1として、火災時の延焼現象を定常伝熱モデルで推定すると、木製の荷重支持部の外側に、外部側に水分が浸透しないように水分遮断層5に挟み込まれた所定の層厚さを有する湿式耐火被覆材を配置することで、荷重支持部2の燃焼や炭化を防止できることが確認できた。
また、火災時には仕上げ木材層4が外側表面から燃焼し、炭化が進むが、仕上げ木材層4と荷重支持部2との間に耐火被覆層3が設けられているため、荷重支持部2の燃焼および炭化を防止することができる。そのため、耐火性能を備えた木質耐火部材1を構築することができ、ひいては、建築基準法を満足する耐火構造を実現することが可能となる。また、仕上げ材層4は、炭化後に脱落するため、燃焼が荷重支持部2に燃え移ることが防止されている。そのため、火災が発生した場合であっても、構造部材としての機能を維持することができる。
耐火被覆層3は、湿式耐火被覆材からなるため、容易に形成することができ、かつ、多様な耐火性能(1時間耐火や2時間耐火等)を容易に確保することができる。さらに、湿式耐火被覆材を隙間なく設けることで、耐火被覆層3に熱の通り道が形成されることもない。また、目地処理に要する手間も省略することができる。
また、木質耐火部材1は、材端部(柱端部)において耐火被覆層3が露出するように形成しているため、木質耐火部材1と接する建物部位が燃焼したとしても、仕上げ木材層4に延焼することを防止することができる。また、仕上げ木材層4に比べて圧縮剛性が低い耐火被覆層3を材端部に設けているため、地震時に木質耐火部材1に大変形が生じた場合であっても、耐火被覆層3の露出部分が変位を吸収することで、木質耐火部材1と建物部位との当接部における破損を防止することができる。
第二の実施形態の木質耐火部材1は、建物の床スラブを支持する梁を構成する部材(木質耐火梁)であって、図4に示すように、断面視矩形状を呈している。なお、木質耐火部材1の断面形状は限定されるものではなく、例えば、正方形状や円形状であってもよい。なお、第二の実施形態では、第一の実施形態と異なる構成や、木質耐火部材1の形成方法、及びその作用効果について記載し、共通点の記載は省略した。
木質耐火部材1は、荷重支持部2と、耐火被覆層3と、仕上げ木材層4と、水分遮断層5とを備えている。
耐火被覆層3は、荷重支持部2の外面を被覆している。本実施形態の耐火被覆層3は、荷重支持部2の左右の側面および底面に、ロックウールを吹き付けることにより、所定の厚さを有して形成されている。すなわち、耐火被覆層3は、荷重支持部2の外面を覆う部材であって、構造部材ではない。なお、耐火被覆層3は、荷重支持部2の全周囲を覆っていてもよい。
水分遮断層5は、耐火被覆層3の内面および外面に配設されている。すなわち、本実施形態の木質耐火部材1は、荷重支持部2と耐火被覆層3との間、および、耐火被覆層3と仕上げ木材層4との間に、水分遮断層5がそれぞれ形成されている。また、木質耐火部材(木質耐火梁)1では、木質耐火柱の材端部と同様、荷重支持部2が接続される柱、壁と仕上げ木材層4の材端部との間に、荷重支持部2と仕上げ木材層4との間に設けられた耐火被覆層3が連続して設けられている。
まず、図5(a)に示すように、集成材からなる荷重支持部2の外面(側面および底面)に、水分遮断塗膜を塗着して、水分遮断層5を形成する。なお、水分遮断層5の形成方法は限定されるものではなく、例えば、水分遮断シートを荷重支持部2の外面に貼着することにより形成してもよい。
次に、図5(b)に示すように、水分遮断層5の外面に、ロックウール、セメント、水等を混ぜることにより形成された吹き付け材を吹き付けることにより、耐火被覆層3を形成する。このとき、耐火被覆層3は、柱端部での層厚が厚くなるように、吹き付ける。
耐火被覆層3に所定の強度が発現したら、図5(c)に示すように、耐火被覆層3の外面に仕上げ板材41を設置して、仕上げ木材層4を形成する。このとき、各仕上げ板材41の耐火被覆層3との当接面(耐火被覆層3の内側面および耐火被覆層3の上下端面)には、予め水分遮断層5を形成しておく。なお、水分遮断層5は、仕上げ板材4に水分遮断塗膜を塗着することにより形成してもよいし、水分遮断シートを貼着することにより形成してもよい。また、水分遮断層5の形成方法は限定されるものではなく、例えば、耐火被覆層3の外面に水分遮断シートを貼着することにより形成してもよい。また、仕上げ板材41は、接着剤を用いて耐火被覆層3に接着する方法と、固定ピンにより荷重支持部2に固定する方法がある。
図6に、2時間耐火が必要な中低層事務所ビルの1階柱を対象とした木質耐火部材1の断面設計例(実施例1、実施例2)を示す。
図6(a)は実施例1であり、柱が梁と剛接合された柱梁架構において、柱断面が700mm×700mmの正方形状の場合で、荷重支持部2が600mm×600mmである。実施例1では、荷重支持部2はカラマツ材で形成し、当該荷重支持部2から外側に向って、水分遮断層5、耐火被覆層3、水分遮断層5および仕上げ木材層4を順に積層した。耐火被覆層3は、厚さ40mmのロックウール層を荷重支持部2の外側面に形成した。仕上げ木材層4は、厚さ10mmの平板を枠状に組み合わせることにより形成した。
また、図6(b)は実施例2であり、柱断面が1300mm×600mmの長方形状で、荷重支持部2が1200mm×300mmである。耐火被覆層3および仕上げ木材層4は、実施例1と同様の厚さを確保した。
荷重支持部2を形成するカラマツ材は、日本では北海道から本州北部にかけて分布する針葉樹であり、乾燥時の比重は0.53程度で、其々の強度特性として、圧縮強度は45N/mm2、引張強度は85N/mm2、せん断強度8N/mm2程度である。また、カラマツ材と圧縮強度が同等のコンクリートと比較した場合、木材であるカラマツ材は、芯材の有無や乾燥状態で強度のバラツキがあるものの、コンクリートに比べて、引張強度、せん断強度ともに約10倍を上回る強度特性を示す構造材である。よって、実施例1、及び実施例2によるカラマツ材を荷重支持部に用いた木質構造部材1は、圧縮強度が45N/mm2程度のコンクリート柱に相当する鉛直荷重程度まで負担できる。
第三実施形態の木質耐火部材1(木質耐火柱や木質耐火梁)は、図7(a)〜(c)に示すように、荷重支持部2と、巻き付け方式の乾式耐火被覆材で形成される耐火被覆層3と、仕上げ木材層4と、で形成される。乾式耐火被覆材は、例えば、ニチアス株式会社製で鋼管に巻き付けるタイプの耐火被覆材マキベエ(登録商標)である。本実施形態と、第一、第二実施形態の木質耐火部材1との相違点は、耐火被覆層3を構成する耐火被覆材、及び水分遮断層5の有無の2点である。他の荷重支持部2と耐火被覆層3等の接合方法等は、前述の各実施形態と同様である。本実施形態の耐火被覆層3は、巻き付け方式の乾式耐火被覆材で形成されるが、第一、第二実施形態では湿式耐火被覆材(ロックウールやセラミック系耐火被覆材)である。
巻き付け方式による乾式耐火被覆材によって耐火被覆層3を形成することで、耐火被覆材同士を継ぎ目なく、施工性良く設置することができる。また、耐火被覆層3は、短時間に、所定の層厚さを容易に形成することができ、かつ、本発明の木質耐火部材を用いた建物部位ごとに要求される多様な耐火性能(1時間耐火や2時間耐火等)を容易に確保することができる。本実施形態では、所定の厚みを有したシート状の耐火被覆材33を一重に巻き付ける。なお、耐火被覆層3は、耐火被覆材33を多重に巻き付けることにより形成してもよい。耐火被覆材33は、両端部を互いに重ね合わせた状態で、固定ピン32により荷重支持部2に固定する。本実施形態の耐火被覆材33の端部では、各耐火被覆材の厚さを部分的に薄くすることで、端部同士を重ね合わせても耐火被覆層3に段差が生じないようにした。また、固定ピン32は、図7(c)に示すように、仕上げ木材層の外表面より耐火被覆材を挟み込むように荷重支持部に向かって設けてもよい。
また、本実施形態では、荷重支持部2と耐火被覆層3との間、または耐火被覆層3と仕上げ木材層4との間に水分遮断層5は設置されないが、第一、第二実施形態では其々、水分遮断層5は設置される。また、木質耐火部材1は、工場において荷重支持部2の外側に、耐火被覆層3、仕上げ木材層4が形成された工場製品であり、建設現場に搬入した後、所定位置に建て込んで、柱梁架構が構築される。詳細には、荷重支持部2の外周面に、シート状の乾式耐火被覆材を巻き付け方式で取り付けて、その乾式耐火被覆材の外側に、仕上げ木材層4を設置した後、仕上げ木材層4の外表面より固定ピンを挿入し、耐火被覆層3を貫通させ、荷重支持部2に固定する。または、耐火被覆層3と荷重支持部2との間、または耐火被覆層3と仕上げ木材層4との間を接着材で接着し、木質耐火部材1を形成する。このように木質耐火部材1を全て工場で製作することで、荷重支持部2の外側に、耐火被覆層3と仕上げ木材層4を高い品質管理の元で一体化させることができるとともに、短時間で大量生産が可能となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
前記各実施形態では、柱または梁について説明したが、木質構造部材1の用途は限定されるものではない。
前記実施形態では、仕上げ板材41として平板を使用したが、仕上げ板材41は平板に限定されるものではない。例えば、断面視コ字状の成形木材や断面視L字状の成形木材を組み合わせることにより仕上げ木材層4を形成してもよい。
また、耐火被覆層3を構成する材料は、板状部材であってもよい。
2 荷重支持部
3 耐火被覆層
4 仕上げ木材層
5 水分遮断層
Claims (3)
- 荷重支持部と、前記荷重支持部の周囲に被覆された耐火被覆層と、前記耐火被覆層の外側に周設された仕上げ木材層と、を備える木質耐火部材であって、
前記耐火被覆層が湿式耐火被覆材からなり、
前記荷重支持部と前記耐火被覆層との間、および、前記耐火被覆層と前記仕上げ木材層との間に、水分遮断塗膜または水分遮断シートからなる水分遮断層が形成されていることを特徴とする、木質耐火部材。 - 荷重支持部と、前記荷重支持部の周囲に被覆された耐火被覆層と、前記耐火被覆層の外側に周設された仕上げ木材層と、を備える木質耐火部材であって、
前記耐火被覆層が巻き付け方式による乾式耐火被覆材からなり、
前記耐火被覆層および前記仕上げ木材層が、工場において前記荷重支持部の外側に形成されていることを特徴とする、木質耐火部材。 - 前記仕上げ木材層の材端部には、前記荷重支持部と前記仕上げ木材層との間に設けられた前記耐火被覆層が連続して形成され、当該耐火被覆層が露出していることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の木質耐火部材。
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