〔伝送システム〕
図1は、本発明による一実施形態の送信サーバ6Bを有する再送装置6S,6T、送信装置2,3及び受信装置5を備える伝送システム1の概略構成を示すブロック図である。図1に示す伝送システム1は、送信装置2,3、受信装置5、1台又は複数台の送信サーバ6Bを有する再送装置6S,6T、及び、複数台の送信サーバ6Bを構成するときに設けられる負荷分散装置7を備える。
送信装置2は、デジタル放送に係る送信データに対し誤り訂正符号化処理を施して誤り訂正符号パリティを付与することにより符号化データを生成し、その符号化データを所定の変調方式でデジタル変調して変調波信号を生成し、送信アンテナ2aを介して放送衛星4を含む衛星放送伝送路経由で、デジタル放送に係る電波を放射する装置である。例えば、送信装置2は、高度広帯域衛星デジタル放送の送信装置とすることができる。
送信装置3は、デジタル放送に係る送信データに対し誤り訂正符号化処理を施して誤り訂正符号パリティを付与することにより符号化データを生成し、その符号化データを所定の変調方式でデジタル変調して変調波信号を生成し、送信アンテナ3aを介して地上放送伝送路経由で、デジタル放送に係る電波を放射する装置である。例えば、送信装置3は、現行又は次世代の地上デジタル放送の送信装置とすることができる。
受信装置5は、受信アンテナ5aを介して送信装置2から電波放射された変調波信号を受信して復調し、誤り訂正符号の符号長を構成する誤り訂正フレームを再構成し送信装置2における誤り訂正符号化処理に対応する復号処理を行って受信データを生成し再生可能とする機能、及び、受信アンテナ5bを介して送信装置3から電波放射された変調波信号を受信して復調し、誤り訂正符号の符号長を構成する誤り訂正フレームを再構成し送信装置3における誤り訂正符号化処理に対応する復号処理を行って受信データを生成し再生可能とする機能を有する装置である。
また、受信装置5は、送信装置2(又は送信装置3)から得られた符号化データについて誤り訂正復号の可否を判定し、復号できると判定したときはそのまま復号して受信データを生成し、符号化データのビット誤りが訂正できず復号できないと判定した場合には対応する符号化データの再送を要求するIPパケット形式の再送要求パケットを生成し、この再送要求パケットに通信品質情報を含めて、IP網8を経て、送信装置2からの変調波信号を中継受信する再送装置6S(又は送信装置3からの変調波信号を中継受信する再送装置6T)における送信サーバ6Bに向けて送信する機能を有する。さらに、受信装置5は、当該再送要求パケットに応じて送信サーバ6Bから再送要求に応じて再送された符号化データ(送信サーバ6B側で通信品質情報に応じて放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率以上となる範囲内で適応的に符号化率を変更して再構成され、且つインターリーブ処理が施されている。)を格納するIPパケット形式の符号化データパケットを受信して、送信サーバ6B側のインターリーブ処理の逆処理を行って、再送要求に応じて再送された符号化データを再構成して抽出し復号処理に用いるよう符号化率に応じた補完を行い、所定時間内に当該復号処理により復号できるまで、対応する符号化データの再送の要求を繰り返す機能を有する。尚、受信装置5は、所定時間内に当該復号処理により復号できないときは、ビット誤りを含む状態のまま受信データを生成する。
再送装置6Sは、受信アンテナ6aを介して送信装置2からの変調波信号を中継受信して復調し、復号処理を経てパリティ付きの誤り訂正フレームを構成する符号化データを再構成して出力する放送受信装置6Aと、この放送受信装置6Aからパリティ付きの誤り訂正フレームを構成する符号化データを順次入力し、誤り訂正フレームのフレーム番号により時系列に管理して所定時間分を更新しながら保存し、受信装置5からの再送要求に応じて、該当する符号化データを、IP網8を経て受信装置5に再送する1台又は複数台の送信サーバ6Bと、を備える。
再送装置6Tは、受信アンテナ6bを介して送信装置3からの変調波信号を中継受信して復調し、復号処理を経てパリティ付きの誤り訂正フレームを構成する符号化データを再構成して出力する放送受信装置6Aと、この放送受信装置6Aからパリティ付きの誤り訂正フレームを構成する符号化データを順次入力し、誤り訂正フレームのフレーム番号により時系列に管理して所定時間分を更新しながら保存し、受信装置5からの再送要求に応じて、該当する符号化データを、IP網8を経て受信装置5に再送する1台又は複数台の送信サーバ6Bと、を備える。
尚、送信装置2及び送信装置3の各は、それぞれの放送伝送路で使用する符号化変調長方式として、異なる種類数の誤り訂正符号の符号化率、及び異なる種類数の変調方式を採用することができる。このため、送信装置2及び送信装置3の各から、それぞれの変調波信号を中継受信する再送装置6S及び再送装置6Tの各についても、異なる種類数の誤り訂正符号の符号化率、及び異なる種類数の変調方式を採用することになる。ただし、再送装置6S及び再送装置6Tの各は、基本構成として、信号処理として同様に機能する放送受信装置6A及び送信サーバ6Bを備えるため、同様な構成要素には同一の参照番号を付している。
再送装置6S(又は再送装置6T)において、1台又は複数台の送信サーバ6Bの各は、放送受信装置6Aからパリティ付きの符号化データを入力して、当該符号化データの所定時間分を保存し、受信装置5から再送要求された符号化データについて、通信品質情報に応じて放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率以上となる範囲内で適応的に符号化率を変更して再構成し、且つインターリーブ処理を施した上で、IP網8を介して受信装置5に送信可能とするコンピュータとして構成される。尚、再送装置6S(又は再送装置6T)についても、放送受信装置6A及び送信サーバ6Bを備えるコンピュータとして構成することができる。
即ち、送信サーバ6Bは、送信装置2(又は送信装置3)で生成された符号化データを、当該放送伝送路経由で中継受信して復調及び復号する放送受信装置6Aから順次入力し、誤り訂正符号の符号長を構成する誤り訂正フレームのフレーム番号により時系列に管理して所定時間分を更新しながら保存する機能、IP網8を経て、受信装置5にて送信装置2(又は送信装置3)で利用した誤り訂正符号を用いて符号化データのビット誤りが訂正できなかったときに通信品質情報とともに当該符号化データに関する再送要求パケットを受信し、当該受信装置5に向けて通信品質情報に応じて放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率以上となる範囲内で適応的に符号化率を変更して該符号化データの再送を行うよう制御する機能、及び、該符号化データについてインターリーブ処理を施して格納するIPパケット形式の符号化データパケットを生成し、IP網8を経て当該受信装置5に向けて送信する機能を有する。
負荷分散装置7は、複数台の送信サーバ6Bを構成するときに、当該複数台の送信サーバ6BとIP網8との間に設けられ、IP網8を経て多くの受信装置5から再送要求パケットを受信した場合に、複数台の送信サーバ6Bの各処理負荷を分散させ、再送要求に係る符号化データパケットを分割送信する装置である。図1に示す伝送システムでは、予めユーザ登録された複数台の受信装置5を対象とし、負荷分散装置7を介在させることで、ユーザ登録数が多くなる場合でも送信サーバ6Bを追加するだけでよいものとなる。ただし、予め許容するユーザ登録数に対応した送信サーバ6Bを個別に配設するときは、負荷分散装置7の設置を省略し、送信サーバ6BとIP網8とを直接的に接続する形態としてもよい。また、負荷分散装置7は、再送装置6S及び再送装置6Tに共通に設けてもよいし、再送装置6Sにおける複数台の送信サーバ6Bに対して1台以上、或いは再送装置6Tにおける複数台の送信サーバ6Bに対して1台以上、設けてもよい。
以下、より具体的に、送信装置2(又は送信装置3)、再送装置6S(又は再送装置6T)、受信装置5について順に説明する。
〔送信装置〕
図2は、本発明による一実施形態の再送装置6S(又は再送装置6T)に係る送信装置2(又は送信装置3)の概略構成を示すブロック図である。尚、図2に示す送信装置2(又は送信装置3)は、本発明に係る主要な構成要素のみを図示しており、エネルギー(電力)拡散処理等のその他の構成要素の説明は省略する。
送信装置2及び送信装置3は、それぞれの放送伝送路(衛星放送伝送路又は地上放送伝送路)に適した誤り訂正符号化処理及び変調方式が採用されるが、図2に示すように、誤り訂正符号化部21、及び変調部22を備えるとして包括して説明する。
誤り訂正符号化部21は、デジタル放送に係る送信データに対し誤り訂正符号化処理を施して誤り訂正符号パリティを付与することにより符号化データを生成し、変調部22に出力する符号化器である。
変調部22は、誤り訂正符号化部21から得られる符号化データを所定の変調方式でデジタル変調して変調波信号を生成し、放送伝送路経由でデジタル放送に係る電波を放射する。
デジタル放送に係る送信データは、例えば地上放送伝送路を経由して送信するときはARIB STD−B31に記載され地上デジタル放送で使用されるMPEG2−TSとすることができ、例えば衛星放送伝送路を経由して送信するときはARIB STD−B44に記載され高度広帯域衛星デジタル放送で使用されるTLV(Type Length Value)形式のデータとすることができる。
尚、現行の地上デジタル放送では、内符号として畳み込み符号、外符号としてリードソロモン符号が連接した連接符号で誤り訂正符号化処理が行われる。次世代の地上デジタル放送では、内符号としてLDPC符号、外符号としてBCH(Bose-Chaudhuri-Hocquenghem)符号が連接した連接符号で誤り訂正符号化処理を行うことが検討されている。また、高度広帯域衛星デジタル放送では、内符号としてLDPC符号、外符号としてBCH符号が連接した連接符号で誤り訂正符号化処理が行われる。
〔再送装置〕
図3は、本発明による一実施形態の送信サーバ6Bを有する再送装置6S(又は再送装置6T)の概略構成を示すブロック図である。図3に示す再送装置6S(又は再送装置6T)は、放送受信装置6A及び送信サーバ6Bを備える。
(放送受信装置)
放送受信装置6Aは、変調波信号を中継受信するための復調部66及び誤り訂正復号部67を備える。尚、図3に示す放送受信装置6Aは、本発明に係る主要な構成要素のみを図示しており、エネルギー(電力)拡散処理等のその他の構成要素の説明は省略する。
復調部66は、放送伝送路(衛星放送伝送路又は地上放送伝送路)経由で送信装置2(又は送信装置3)から電波放射された変調波信号を受信して復調し、この復調処理で得られる符号化データを誤り訂正復号部67に出力する。
誤り訂正復号部67は、誤り訂正符号の復号処理の事前に、復調部66から得られる符号化データの各ビットの対数尤度比(LLR:Log-likelihood ratio)を算出し、この事前対数尤度比(事前LLR)を用いて、誤り訂正符号の符号長を構成する誤り訂正フレームを構成し、送信装置2(又は送信装置3)における誤り訂正符号化処理に対応する復号処理を行う。この誤り訂正復号部67は、パリティ付きの誤り訂正フレームを構成する符号化データを再構成する復号処理を行って、送信サーバ6Bに出力する。
即ち、放送受信装置6Aは、送信装置2(又は送信装置3)から放送伝送路(衛星放送伝送路又は地上放送伝送路)経由で受信装置5に向けて伝送した符号化データ(当該送信装置で生成された符号化データ)を、デジタル変調された変調波信号の中継受信により誤り訂正フレーム毎に復元して、送信サーバ6Bに出力する。
(送信サーバ)
送信サーバ6Bは、放送受信装置6Aから、デジタル放送に係る誤り訂正符号を利用して符号化した符号化データを誤り訂正フレーム毎に順次入力し、所定時間分を更新しながら保存し、該符号化データのうち受信装置5から再送要求された符号化データについて、通信品質情報に応じて放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率以上となる範囲内で適応的に符号化率を変更して再構成し、且つインターリーブ処理を施した上で、IP網8を介して受信装置5に送信可能とするコンピュータとして構成され、保存部61、IPパケット生成部62、再送要求処理部63、符号化率適応変更部64、及び通信品質管理部65を備える。
保存部61は、放送受信装置6Aから、デジタル放送に係る誤り訂正符号を利用して符号化した符号化データを誤り訂正フレーム毎に順次入力し、誤り訂正符号の符号長を構成する誤り訂正フレームのフレーム番号により時系列に管理して所定時間分を更新しながら保存する機能部である。尚、保存部61は、放送伝送路を用いるデータ伝送方式において、誤り訂正フレーム単位の符号化データに併せて伝送されるTMCC信号内に含まれる時刻情報(主信号内にも時刻情報を埋め込むこともある。)も受信することで、放送受信装置6Aから逐次得られる誤り訂正フレーム単位の符号化データを、時刻情報に関連付けたフレーム番号で管理することができる。即ち、図1に示す伝送システム1において、TMCC信号又は主信号内に含まれる時刻情報を同期信号として利用することで、送信装置2,3、受信装置5、1台又は複数台の送信サーバ6Bを有する再送装置6S,6T、及び、複数台の送信サーバ6Bを構成するときに設けられる負荷分散装置7の同期を確保することができる。
IPパケット生成部62は、受信装置5からの再送要求に係る符号化データを格納するIPパケット形式の符号化データパケットを生成し、IP網8を経て当該受信装置5に向けて送信する機能部である。この符号化データパケットは、受信装置5にて送信装置2(又は送信装置3)で利用した誤り訂正符号を用いて符号化データのビット誤りが訂正できなかったときに生成される。尚、図6及び図7を参照して詳細は後述するが、IPパケット生成部62は、インターリーブ処理に係る各インターリーブフレームを受信装置5側で識別可能とするための識別ヘッダと、符号化データパケットを構成する複数のIPパケットに対するシーケンス番号を付与した上で、再送要求に係る符号化データのビットが所定値以上離れるようにする所定規則に基づいて、各誤り訂正フレームを縦断するようにビットの並び替えを行うインターリーブ処理を実行するインターリーブ部621を有する。
再送要求処理部63は、受信装置5からIP網8を経て再送要求パケットを受信したときに、当該再送要求パケットに格納される通信品質情報と、再送要求に係る誤り訂正フレームの符号化データを示す再送要求情報とを抽出する。
そして、再送要求処理部63は、今回受信した通信品質情報を基に、通信品質管理部65において管理する予め定められた符号化率変更基準に従って、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率を変更して再送するか否かを判定する。そして、再送要求処理部63は、その判定結果に応じて、今回受信した再送要求情報を基に、保存部61から再送要求に係る符号化データの所在を探索して読み出し、適応的に当該読み出した符号化データの符号化率を変更して再構成し、IPパケット生成部62に出力するよう、保存部61及び符号化率適応変更部64を制御する。この再送要求処理部63に係る制御例については、図4を参照して後述する。
符号化率適応変更部64は、再送要求処理部63によって制御され、送信装置2(又は送信装置3)で生成された符号化データの符号化率を変更する場合と変更しない場合の切り替えを行う切替部641,642と、該符号化率を変更する場合に、送信装置2(又は送信装置3)で用いる誤り訂正符号化方式と同一の符号化方式に基づき、且つ送信装置2(又は送信装置3)で利用可能とする所定種類数の符号化率のうち、放送伝送路で伝送した当該送信装置で生成された符号化データの符号化率以上となる範囲内で符号化率を変更する誤り訂正符号化処理を行う誤り訂正符号化部643と、を備える。
より具体的には、切替部641,642は、保存部61から読み出した再送要求に係る符号化データ(放送伝送路で伝送した符号化データ)について符号化率を変更せずに再送するときは、そのままIPパケット生成部62に出力し、符号化率を変更して再送するときは、誤り訂正符号化部643により符号化率を変更し再構成した符号化データをIPパケット生成部62に出力するように切り替えを行う機能部である。
誤り訂正符号化部643は、再送要求に係る符号化データ(放送伝送路で伝送した符号化データ)について符号化率を変更して再送するときに、保存部61から当該符号化データ内の所定のパリティを除く情報ビット(即ち、ブロック符号における主信号)のみを読み出す。続いて、誤り訂正符号化部643は、変更する符号化率に応じて、送信サーバ6B及び受信装置5間で既知のビット(全て“0”又は“1”のビット、或いは“0”と“1”の規則的なビットパターン)からなるパディングビットを付加する。そして、誤り訂正符号化部643は、このパディングビットを付加した当該所定の情報ビットに対して、送信装置2(又は送信装置3)における誤り訂正符号化部21で用いる誤り訂正符号化方式と同一の符号化方式に基づき、且つ放送に係る送信装置2(又は送信装置3)で利用可能とする放送伝送路で伝送した符号化率とは異なる符号化率で誤り訂正符号化処理を行う。最終的には、誤り訂正符号化部643は、放送伝送路で伝送した符号化データについて符号化率を変更したブロック符号のパリティを、送信装置2(又は送信装置3)で生成された符号化データに付加されていたパリティから置き換えて当該情報ビットに付加し、且つパディングビットを除去した再送用の符号化データを生成する。符号化率適応変更部64の誤り訂正符号化部643による符号化率変更時の符号化データの生成法については、図4を参照して後述する。
通信品質管理部65は、再送要求処理部63によって制御され、受信装置5から受信した再送要求パケットに格納される通信品質情報に応じた符号化率を決定するのに用いる予め定められた符号化率変更基準を情報として保持して管理する機能部である。尚、符号化率変更基準については、幾つかの例を挙げて後述する。また、この通信品質情報は、受信装置5によって生成され、通信回線の遅延情報とパケットロス率情報のうちいずれか一方、又は双方を含む。
通信回線の遅延情報は、受信装置5から送信サーバ6Bに向けて送信した再送要求パケットの送信時刻と、これに対応して送信サーバ6Bから再送された符号化データパケットの受信時刻との時間差で推定される伝送遅延を示す情報である。
パケットロス率情報は、再送要求パケットの送信時刻から所定時間経過しても送信サーバ6Bから対応する符号化データパケットの受信ができなかった場合にパケットロスが生じたとみなし、所定期間単位の送信サーバ6Bとの通信実績を基に計測したパケットロス率を示す情報である。
(再送要求パケットに係る制御フロー)
図4は、本発明による一実施形態の送信サーバ6Bと受信装置5との間の再送要求パケットに係る制御フローを示すフローチャートである。
まず、送信サーバ6Bは、保存部61により、放送受信装置6Aから得られる放送伝送路で伝送した符号化データについて所定時間分を更新しながら保存する(ステップS50)。放送伝送路で伝送した符号化データは、誤り訂正符号化済みのデータであり、ARIB STD−B44に記載されるLDPC符号などのブロック符号の誤り訂正フレームで構成される。
受信装置5は、放送伝送路で伝送されたデジタル放送を受信して復調し、符号化データのビット誤りが訂正できるか否かを試みる。伝送環境がよく、誤りなく受信できた場合や、白色雑音等の影響が誤り訂正符号により復号できる範囲であった場合、そのまま誤り訂正復号した受信データを再生可能に出力する。降雨減衰が起きるなど伝送環境が悪く、放送伝送路経由で受信した符号化データのビット誤りが訂正できない場合、受信装置5は、IP網8を通じて該当する符号化データについて再送要求パケットを生成し、送信サーバ6Bに再送要求を行う(ステップS51)。この再送要求パケットには、上述したように、再送要求情報、及び、通信品質情報が含まれる。
そこで、送信サーバ6Bは、再送要求処理部63により、受信装置5から再送要求パケットを受信すると(ステップS52)、再送要求パケットから、再送要求情報及び通信品質情報を抽出する(ステップS53)。
続いて、再送要求処理部63は、今回受信した通信品質情報を基に、通信品質管理部65において管理する予め定められた符号化率変更基準に従って、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率を変更して再送するか否かを判定する(ステップS54)。尚、符号化率変更基準については、幾つかの例を挙げて後述する。
そして、再送要求処理部63は、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率を変更せずに再送すると判定したとき(ステップS54:No)、今回受信した再送要求情報を基に、保存部61から再送要求に係る符号化データの所在を探索して読み出し、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率と同じ符号化率で再送するよう、保存部61及び符号化率適応変更部64を制御する(ステップS55)。
一方、再送要求処理部63は、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率を変更して再送すると判定したとき(ステップS54:Yes)、今回受信した再送要求情報を基に、保存部61から再送要求に係る符号化データの所在を探索して、当該符号化データ内の所定のパリティを除く情報ビット(即ち、ブロック符号における主信号)のみを読み出す。そして、再送要求処理部63は、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率以上となる範囲内で、当該情報ビットを用いて受信装置5側で既知とするパディングビットを付加し、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率から符号化率を変更したブロック符号のパリティを付加した後、パディングビットを除去した再送用の符号化データを生成するよう、保存部61及び符号化率適応変更部64を制御する(ステップS56)。
最終的に、送信サーバ6Bは、IPパケット生成部62により、符号化率を変更したときはその旨を示す通知として符号化率変更通知パケットを生成して送信後、符号化データパケットを受信装置5に向けて送信する(ステップS57)。尚、送信サーバ6Bは、符号化率情報を含めて、符号化データパケットを構成し、受信装置5に向けて送信する形態とすることもできる。ただし、本例では、符号化データパケットの伝送効率を高めるために、受信装置5に対し、符号化率を変更したときはその旨を示す通知として符号化率変更通知パケットを事前通知する形態としている。
また、送信サーバ6Bは、符号化率変更通知パケットの送信を複数回行う構成としてもよいし、或いは、符号化率変更通知パケットの受信確認応答を得る構成とし、受信装置5から受信確認応答を受信するまで、符号化率変更通知パケットの送信を繰り返し行う構成としてもよい。更に、IP網8経由で伝送する符号化データの符号化率が放送伝送路で伝送する符号化データの符号化率と同一の場合、受信装置5は放送伝送路での符号化率の情報のみ把握できていればよいため、送信サーバ6Bは、符号化率変更通知パケットの事前通知を省略してもよい。
ここで、受信装置5から取得した通信品質情報には、通信回線の遅延情報とパケットロス率情報のうちいずれか一方、又は双方を含まれており、これらの情報を基に、どの符号化率に変更するかについては、通信品質管理部65にて管理する予め定められた符号化率変更基準に従って行う。
符号化率変更基準は、送信装置2(又は送信装置3)における誤り訂正符号化部21で用いる誤り訂正符号化方式と同一の符号化方式に基づき、且つ放送に係る送信装置2(又は送信装置3)で利用可能とする所定種類数の符号化率のうち、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率以上となる範囲内で、符号化率を変更するように定めている。尚、放送伝送路に係る符号化データの符号化率が既に最高値のときは符号化率の変更はない点に留意する。
例えば、符号化率変更基準として、以下の(1)乃至(9)のいずれかとすることができる。
(1)遅延のみ考量して、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値未満のときは、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率のまま再送するものとし、受信装置5から得られた遅延が当該予め定めたデフォルト値以上のときは、任意の遅延に応じて定められた多段階の符号化率のうち、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率以上となる範囲内で該当する遅延に対応する符号化率に変更する。
(2)パケットロス率のみ考量して、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値以上のときは、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率のまま再送するものとし、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値未満のときは、任意のパケットロス率に応じて定められた多段階の符号化率のうち、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率以上となる範囲内で該当するパケットロス率に対応する符号化率に変更する。
(3)遅延とパケットロス率の双方を考量して、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値未満、或いは、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値以上のときは、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率のまま再送するものとし、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値以上、且つ、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値未満のときは、任意のパケットロス率に応じて定められた多段階の符号化率のうち、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率以上となる範囲内で該当するパケットロス率に対応する符号化率に変更する。
(4)遅延のみ考量して、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値未満のときは、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率のまま再送するものとし、受信装置5から得られた遅延が当該予め定めたデフォルト値以上のときは、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率以上となる範囲内で所定段(例えば1段)高い符号化率に変更する。
(5)パケットロス率のみ考量して、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値以上のときは、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率のまま再送するものとし、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値未満のときは、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率以上となる範囲内で所定段(例えば1段)高い符号化率に変更する。
(6)遅延とパケットロス率の双方を考量して、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値未満、或いは、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値以上のときは、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率のまま再送するものとし、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値以上、且つ、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値未満のときは、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率以上となる範囲内で所定段(例えば1段)高い符号化率に変更する。
(7)遅延のみ考量して、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値未満のときは、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率のまま再送するものとし、受信装置5から得られた遅延が当該予め定めたデフォルト値以上のときは、放送伝送路で伝送した符号化データに係る送信装置2(又は送信装置3)で利用可能とする最高値の符号化率に変更する。
(8)パケットロス率のみ考量して、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値以上のときは、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率のまま再送するものとし、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値未満のときは、放送伝送路で伝送した符号化データに係る送信装置2(又は送信装置3)で利用可能とする最高値の符号化率に変更する。
(9)遅延とパケットロス率の双方を考量して、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値未満、或いは、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値以上のときは、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率のまま再送するものとし、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値以上、且つ、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値未満のときは、放送伝送路で伝送した符号化データに係る送信装置2(又は送信装置3)で利用可能とする最高値の符号化率に変更する。
(符号化率変更時の符号化データの生成法)
図5を参照して、再送要求処理部63が上述に例示した符号化率変更基準に従い、保存部61及び符号化率適応変更部64を制御して、符号化率変更時の符号化データを生成する例を説明する。図5(a)乃至図5(d)は、それぞれ本発明による一実施形態の送信サーバ6Bにおける符号化率適応変更部64による符号化率変更時の符号化データの生成法を示す図である。
まず、図5(a)は、放送伝送路で伝送した符号化データを示すブロック符号の誤り訂正フレームの構成を示す図である。通常、デジタル放送では選択可能な符号化率について複種類が予め規定されている。例えばARIB STD−B44ではブロック符号であるLDPC符号のうち、41/120(≒1/3)、49/120(≒2/5)、61/120(≒1/2)、73/120(≒3/5)、81/120(≒2/3)、89/120(≒3/4)、93/120(≒7/9)、97/120(≒4/5)、101/120(≒5/6)、105/120(≒7/8)、及び、109/120(≒9/10)の11種類の符号化率が規定されている。
尚、放送伝送路で伝送する符号化データの符号化率の情報については、通常、デジタル放送内の伝送制御信号であるTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)信号で伝送されるが、送信サーバ6BからIP網8経由で、事前通知する構成としてもよい。また、上述したように、再送要求に応じて再送する符号化データの符号化率の情報については、送信サーバ6Bは、IPパケット生成部62により、符号化率を変更したときはその旨を示す通知として符号化率変更通知パケットを生成して送信後、又は符号化率情報を含めて、符号化データパケットを受信装置5に向けて送信する。ここで、IP網8経由で伝送する符号化データの符号化率が放送伝送路で伝送する符号化データの符号化率と同一の場合、受信装置5は放送伝送路での符号化率の情報のみ把握できていればよいため、送信サーバ6Bは、符号化率変更通知パケットの事前通知を省略してもよい。
図5(a)に示す誤り訂正フレームを構成する符号化データは、放送受信装置6Aによって受信し復元されて送信サーバ6Bに入力されるため、送信サーバ6Bは、放送伝送路で伝送した符号化データとして管理することができる。
図5(a)に示すように、放送伝送路で伝送した符号長nビットのブロック符号における符号化データの符号化率をFbとすると、その符号化データの情報ビット(即ち、ブロック符号における主信号)はn×Fbビット、パリティはn×(1−Fb)ビットで構成される。通常、放送伝送路でブロック符号を用いる場合、放送伝送路で扱いやすいよう符号化率によらず誤り訂正フレームの符号長のビット数は一定であることが多い。例えばARIB STD−B44ではブロック符号であるLDPC符号の符号長nは、LDPC符号化率に依らずn=44880ビットで一定である。ここで、IP網8経由で再送する符号化データの符号化率をFiとすると、符号化率Fiのパリティは、符号化率Fbから変更する場合にも、n×Fbビットの情報ビット(即ち、ブロック符号における主信号)を用いたまま符号長nビットのブロック符号とすればよいため、送信装置2(又は送信装置3)で利用可能とする所定種類数の符号化率のうち、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率以上となる範囲内であればよい。
そこで、受信装置5から再送要求パケットを受信した送信サーバ6Bは、再送要求処理部63により、再送要求パケットに含まれる通信品質情報を抽出し、その通信品質情報を基に、通信品質管理部65にて管理される符号化率変更基準を参照して符号化率を変更するか否かを判定する。
例えば上記(9)の符号化率変更基準に従うとすると、再送要求処理部63は、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値未満、或いは、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値以上のときは、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率のまま変更なしと判断し(Fb=Fi)、図5(a)に示す再送要求に係る符号長nビットの符号化データを、保存部61から読み出して、そのままIPパケット生成部62に出力するよう符号化率適応変更部64を制御する。
一方、再送要求処理部63は、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値以上、且つ、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値未満のとき、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率Fbから符号化率Fiに変更すると判断し(Fb<Fi)、まずは、図5(a)に示す再送要求に係る符号長nビットの符号化データのうちn×Fbビットの情報ビット(即ち、ブロック符号における主信号)のみを、保存部61から読み出させる(図5(b)参照)。
続いて、再送要求処理部63は、符号化率適応変更部64を制御して、誤り訂正符号化部643により、保存部61から読み出したn×Fbビットの情報ビット(即ち、ブロック符号における主信号)に、送受間で既知の値(例えば、全て0のビット)でn×(Fi−Fb)ビット分をパディングビットとして付加し、この情報ビットとパディングビットに対して符号化率Fiとなる誤り訂正符号化処理を施して、n×(1−Fi)ビットのパリティを生成する(図5(c)参照)。例えば、誤り訂正符号化部643は、符号化率Fiとして、n×Fbビットの情報ビット(即ち、ブロック符号における主信号)を用いながら、符号化率Fbから送信装置2(又は送信装置3)で利用可能とする最高値の符号化率へと変更する。
そして、誤り訂正符号化部643は、パディングビットを除去して、n×Fbビットの情報ビットにn×(1−Fi)ビットのパリティを付加した再送用の符号化データを再構成し、IPパケット生成部62に出力する(図5(d)参照)。この再構成された再送用の符号化データのフレーム長は、元の符号長nビットよりも短くなるため、符号長nビット分の符号化データを受信装置5に再送する場合よりも伝送効率が高くなる。
このようにして、送信サーバ6Bは、再送要求パケットを受信すると、再送要求パケットに含まれる通信品質情報を基に、再送要求に係る符号化データの符号化率を適応的に変更して符号化データパケットを生成し、受信装置5に向けて送信する。
(IPパケットの生成法)
ここで、本実施形態の伝送システム1では、デジタル放送に係るHybrid ARQを実現する際に、当該再送要求に対するデータ再送として通信と連携し、且つ誤り訂正に係る符号化器及び復号器を通信とデジタル放送とで共通化した場合でも、デジタル放送の誤り訂正符号によるデータ補償の確度をより高めるために、IPパケットの生成法に工夫を設けている。即ち、IPパケットの生成法の工夫によりIP網8での消失通信路のふるまいをデジタル放送での白色雑音のふるまいに近づけることで、デジタル放送に係るHybrid ARQにおける誤り訂正能力の向上を図るものとしている。
より具体的に、図6を参照して、送信サーバ6BにおけるIPパケット生成部62のIPパケットの生成法について説明する。図6(a)乃至(d)は、それぞれ本発明による一実施形態の送信サーバ6BにおけるIPパケット生成部62のIPパケットの生成法に関する説明図である。
まず、送信サーバ6Bにおける保存部61は、送信装置2(又は送信装置3)で生成された符号化データを、当該放送伝送路経由で中継受信して復調及び復号する放送受信装置6Aから順次入力し、誤り訂正フレームのフレーム番号により時系列に管理して所定時間分を更新しながら保存している。誤り訂正フレームのフレーム長はnビットとする(図6(a)参照)。保存部61は、再送要求に係るフレーム番号を持つ誤り訂正フレームを先頭として連続するフレーム番号を持つmフレームの誤り訂正フレームをIPパケット生成部62に出力する。尚、mは、固定値であるが外部から可変設定することができるものとなっている。
そこで、IPパケット生成部62は、再送要求に係る符号化データとしての誤り訂正フレームを含むmフレームの誤り訂正フレームを縦方向に並べるようにして記憶部(図示略)に一時記憶する(図6(a)参照)。
続いて、IPパケット生成部62は、mフレームの誤り訂正フレームに各ビットを先頭から読み出し、生成するIPパケットのヘッダを除いたパケット長としてmビットのIPペイロードをnパケット分、生成する(図6(b)参照)。即ち、各誤り訂正フレームの1〜nビットのうち、それぞれの同一ビット目を1ビットずつ集めmビットとしたものをIPペイロードとする。
続いて、IPパケット生成部62は、生成したnパケット分のIPペイロードに、インターリーブ処理に係る各インターリーブフレームを受信装置5側で識別可能とするための識別ヘッダと、デジタル放送の誤り訂正フレームにおいて何番目のビットを表すのか特定できるシーケンス番号と、IPヘッダを符号化データパケットのヘッダとして付加して、nパケット分のIPパケットを生成する(図6(c)参照)。尚、本例では、分かりやすくシーケンス番号を1〜nとして表しているが、各IPパケットを受信装置5にとって誤り訂正フレームのどのビットを示すものであれるかを識別可能な表現形態であれば任意である。
また、図6(b)に示すように複数の誤り訂正フレームから生成されたnパケット分のIPペイロードで、1つのインターリーブフレームが構成される。そこで、IPパケット生成部62は、或るインターリーブフレームに対し付加する識別ヘッダに例えばID=“1”を割り当てるとすると、次のインターリーブフレームに対し付加する識別ヘッダにはID=“2”を、その次のインターリーブフレームに対し付加する識別ヘッダにはID=“3”をインクリメントしながら割り当てるようにして、識別ヘッダの値で、属するインターリーブフレームを識別できるようにする。従って、図6(c)に示すように、識別ヘッダは、1つのインターリーブフレーム内で同じ値を持つように付加される。このため、受信装置5側では、識別ヘッダを参照すれば、受信した符号化データパケットのIPペイロードが、どのインターリーブフレームに属するものであるかを識別できるようになる。
続いて、IPパケット生成部62は、インターリーブ部621を機能させ、生成したnパケット分のIPパケットを、IP網8への送出順として所定規則に基づいたビットの並び替えを行うインターリーブ処理を実行する(図6(d)参照)。
(インターリーブ処理)
図7は、本実施形態におけるIPパケット生成部621におけるインターリーブ部621のインターリーブ処理に関する説明図である。
受信装置5は、後述するが、デインターリーブ541により、識別ヘッダとシーケンス番号を利用し、送信サーバ6B側のインターリーブ部621の逆処理を行って、再送要求に応じて再送された符号化データを再構成する。
尚、本実施形態におけるIPパケット生成部621は、再送要求に係る符号化データとしての誤り訂正フレームを含むm(mは1以上の整数)個の誤り訂正フレームが必要であり、換言すればインターリーブ部621はmフレーム分の誤り訂正フレームが揃うまでインターリーブ処理を実行することはできない。このためタイムロスが問題となる場合には、再送要求パケット生成部53は、送信サーバ6Bに向けて、再送要求に係る符号化データとしての誤り訂正フレームを識別可能とし、且つその誤り訂正フレームにおいて何番目のビットを表すのか特定できるシーケンス番号を指定する再送要求パケットを送信するようにする。そこで、送信サーバ6Bは、再送要求に係るnビットの誤り訂正フレームのうちシーケンス番号が示すビット数分n1(<n)のみを、m(mは1以上の整数)個の誤り訂正フレームから抽出して、対応するシーケンス番号を保持したIPパケットを生成し、インターリーブ部621によりそのIPパケットの送出順を並び替えるようにしてもよい。そして、m,nは、固定値であるが外部から可変設定することができるものとすることで、各IPパケットのパケット長の調整を行うことができる。
また、それぞれの誤り訂正フレームから1ビットずつ集めることでIPパケットを生成したが、それぞれの誤り訂正フレームから複数ビット集めることも可能である。逆に2フレーム分の誤り訂正フレームを1フレーム分として扱うことや、mビットのパケットを2n個生成することも可能である。こうして生成したnパケット分のIPペイロードを1つのインターリーブフレームとし、各インターリーブフレームを受信装置5側で識別可能とするための識別ヘッダと、個々のIPペイロードを識別するためのシーケンス番号を付与する。即ち、IP網8におけるパケットロスを予め想定して、これを緩和することができるように、誤り訂正フレームの各ビットの送出順を並び替える形態であれば、その他のインターリーブ技法を適用することが可能である。一般的にインターリーブ処理の対象とする期間(信号長)を長くすればするほどバースト的なパケットロスに強くなるため、伝送システム1全体で許容可能な期間内で最適なインターリーブ処理を実行するよう、インターリーブ部621を構成する。
〔受信装置〕
図8は、本発明による一実施形態の受信装置5の概略構成を示すブロック図である。受信装置5は、復調部51、誤り訂正復号部52、再送要求パケット生成部53、IPパケット受信部54、切替部55、及び通信品質計測部56を備える。
復調部51は、放送伝送路(衛星放送伝送路又は地上放送伝送路)経由で送信装置2(又は送信装置3)から電波放射された変調波信号を受信して復調し、この復調処理で得られる符号化データを、切替部55を介して誤り訂正復号部52に出力する。
誤り訂正復号部52は、誤り訂正符号の復号処理の事前に、復調部51から得られる符号化データの各ビットの対数尤度比(LLR)を算出し、この事前対数尤度比(事前LLR)を用いて、誤り訂正符号の符号長を構成する誤り訂正フレームを再構成し、送信装置2(又は送信装置3)における誤り訂正符号化処理に対応する復号処理を行って受信データを生成し再生可能に外部出力する復号器である。
ここで、誤り訂正復号部52は、復号可否判定部521、及び符号化データ補完部522を有する。
復号可否判定部521は、誤り訂正フレームを構成する符号化データについて誤り訂正復号の可否を判定し、復号できると判定したときはそのまま復号して受信データを生成し、符号化データのビット誤りが訂正できず復号できないと判定した場合には、当該誤り訂正フレームを構成する符号化データについての再送要求情報を再送要求パケット生成部53に出力する。尚、放送伝送路を用いるデータ伝送方式において、受信装置5が復調部51経由で逐次受信して得られる誤り訂正フレーム単位の符号化データは、併せて伝送されるTMCC信号又は主信号に含まれる時刻情報を基に識別することができ、送信サーバ6Bと同様にフレーム番号で管理することもできるため、この再送要求情報は再送要求する誤り訂正フレームを識別可能とする時刻情報を含むものとするか、又はそのフレーム番号も含むものとすればよい。
符号化データ補完部522は、再送要求パケット生成部53による当該再送要求パケットの送信に応じて送信サーバ6Bから受信した符号化データパケットから、再送要求に係る符号化データを抽出して、当該誤り訂正フレームにおける符号化データの復号処理に用いるよう補完する機能部である。
そして、誤り訂正復号部52は、符号化データ補完部522の機能により、当該誤り訂正フレームにおける符号化データについてIP網8経由で取得した符号化データを補完して、所定時間内に誤り訂正符号の復号処理により復号できるまで、当該誤り訂正フレームにおける選択した符号化データの再送の要求を繰り返すように構成される。尚、誤り訂正復号部52は、所定時間内に当該復号処理により復号できないときは、ビット誤りを含む状態のまま受信データを生成する。
また、本例では、送信サーバ6Bが、再送する符号化データの符号化率を変更したときはその旨を示す通知として符号化率変更通知パケットを生成して送信後、符号化データパケットを受信装置5に向けて送信する。このため、誤り訂正復号部52は、符号化データ補完部522の機能により、符号化率の変更通知の有無を基にIP網8経由で得られた符号化データの符号化率が放送受信時と異なるか否かを判定し、符号化率に応じて適宜パディングビットを追加し、復号に必要な尤度比の置き換えに関する補完処理を行う。
再送要求パケット生成部53は、復号可否判定部521により復号できないと判定したときに、当該誤り訂正フレームにおける符号化データの再送を送信サーバ6Bに対して要求するために、当該符号化データを再送要求する旨を示す再送要求情報と、通信品質計測部56から得られる通信品質情報とを含むIPパケット形式の再送要求パケットを生成し、IP網8を経て、送信サーバ6Bに向けて送信する機能部である。
IPパケット受信部54は、当該再送要求パケットに応じて送信サーバ6Bから、再送された符号化データを格納するIPパケット形式の符号化データパケットを受信して、当該再送要求に係る符号化データを取得し、切替部55を介して誤り訂正復号部52に出力する機能部である。尚、IPパケット受信部54は、識別ヘッダとシーケンス番号を利用し、送信サーバ6B側のインターリーブ部621の逆処理を行って、再送要求に応じて再送された符号化データを再構成するデインターリーブ部541を有する。
切替部55は、誤り訂正復号部52による受信経路切替信号によって、符号化データの受信経路が切替制御される。即ち、切替部55は、主として放送伝送路経由で伝送され復調部51により復調して得られる符号化データを誤り訂正復号部52に入力するように作動する。ただし、誤り訂正復号部52における復号可否判定部521により放送伝送路経由で得られる符号化データを復号できないと判定したときに、切替部55は、誤り訂正復号部52による受信経路切替信号により制御されて、所定時間内に誤り訂正符号の復号処理により復号できるまで、IP網8経由で再送されIPパケット受信部54から得られる符号化データを誤り訂正復号部52に入力する。また、誤り訂正復号部52は、受信経路切替信号により、当該所定時間内に誤り訂正符号の復号処理により復号できた時点で、又は当該所定時間を経過後に、放送伝送路経由で得られる符号化データを誤り訂正復号部52に入力するように切替部55を切替制御する。
通信品質計測部56は、送信サーバ6Bとの通信に係る遅延と、送信サーバ6Bとの通信に係るパケットロスの発生量に基づくパケットロス率のうちいずれか一方、又は双方を所定期間単位で計測して更新保持するとともに、逐次、その通信回線の遅延情報とパケットロス率情報のうちいずれか一方、又は双方を含む通信品質情報を再送要求パケット生成部53に出力する機能部である。
上述したように、通信回線の遅延情報は、受信装置5から送信サーバ6Bに向けて送信した再送要求パケットの送信時刻と、これに対応して送信サーバ6Bから再送された符号化データパケットの受信時刻との時間差で推定される伝送遅延を示す情報である。
また、パケットロス率情報は、再送要求パケットの送信時刻から所定時間経過しても送信サーバ6Bから対応する符号化データパケットの受信ができなかった場合にパケットロスが生じたとみなし、所定期間単位の通信実績を基に計測したパケットロス率を示す情報である。
(受信装置における受信制御フロー)
図9は、本発明による一実施形態の受信装置5における受信制御フローを示すフローチャートである。
まず、受信装置5は、復調部51により、放送伝送路(衛星放送伝送路又は地上放送伝送路)経由で送信装置2(又は送信装置3)から電波放射された変調波信号を受信して復調し、この復調処理で得られる符号化データを、切替部55を介して誤り訂正復号部52に出力する(ステップS1)。尚、切替部55は、上述したように、誤り訂正復号部52によって受信経路が制御される。
続いて、受信装置5は、誤り訂正復号部52により、復調処理で得られた符号化データの各ビットの事前LLRを算出して誤り訂正フレームを再構成し、送信装置2(又は送信装置3)における誤り訂正符号化処理に対応する復号処理を実行する(ステップS2)。
ここで、誤り訂正復号部52は、復号可否判定部521により、送信装置2(又は送信装置3)から得られた符号化データについて誤り訂正復号の可否を判定し(ステップS3)、復号できると判定したときはそのまま復号して受信データを再生可能に生成し(ステップS3:No)、現在の受信経路がIP網8経由でないので(ステップS9:No)、そのまま放送受信する受信経路として切替部55の設定を維持して、時系列上、次の符号化データについての復調・復号処理へと移行する。即ち、誤り訂正復号部52は、送信装置2(又は送信装置3)から得られた符号化データについて復号を試みて、ビット誤りがない場合や、ビット誤りが訂正可能な範囲であった場合に、そのまま復号して受信データを再生可能に生成する。
一方、誤り訂正復号部52は、復号可否判定部521により、誤り訂正フレームを構成する符号化データを復号できないと判定した場合には、当該誤り訂正フレームを構成する符号化データについての再送要求情報を生成し、再送要求パケット生成部53に出力して当該符号化データの再送要求を示す再送要求パケットを生成するよう指示する(ステップS3:Yes)。また、復号可否判定部521は、切替部55を制御して、IP網8経由で符号化データを誤り訂正復号部52に入力する受信経路に切り替えを行う。
再送要求パケット生成部53は、復号可否判定部521により復号できないと判定したときに、当該誤り訂正フレームにおける符号化データの再送を送信サーバ6Bに対して要求するために、当該再送要求情報と、通信品質計測部56から得られる通信品質情報とを含むIPパケット形式の再送要求パケットを生成し、IP網8を経て、送信サーバ6Bに向けて送信する(ステップS4)。ここで、通信品質情報には、通信回線の遅延情報とパケットロス率情報のうちいずれか一方、又は双方を含まれている。
そこで、送信サーバ6Bは、受信装置5から再送要求パケットを受信した場合、再送要求パケットから、再送要求情報及び通信品質情報を抽出し、通信品質情報を基に、予め定められた符号化率変更基準に従って、符号化率を変更するか否か、変更する場合にはどの符号化率に変更するかを決定する。上述したように、符号化率変更基準は、送信側の誤り訂正符号化部21で用いる誤り訂正符号化方式と同一の符号化方式に基づき、且つ放送に係る送信装置2で利用可能とする所定種類数の符号化率のうち、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率以上となる範囲内で、符号化率を変更するように定めている。
そして、送信サーバ6Bは、その再送要求情報を基に、該当する誤り訂正フレームの再送要求に係る符号化データを保存部61から読み出して、適応的に符号化率を変更した符号化データパケットを生成し、IP網8を経て当該受信装置5に向けて送信する。送信サーバ6Bによる符号化率変更の例や、送信サーバ6Bによるインターリーブ処理を伴うIPパケット形式の再送要求パケットの生成法の例については、実施例として後述する。
受信装置5は、送信サーバ6Bに向けて再送要求パケットの送信後、IPパケット受信部54により、当該再送要求パケットに応じて送信サーバ6Bから再送要求に応じて再送された符号化データを格納するIPパケット形式の符号化データパケットをIP網8経由で受信して、デインターリーブ部541により、送信サーバ6B側のインターリーブ部621によるインターリーブ処理の逆処理を行って、再送要求に応じて再送された符号化データを再構成して抽出し、切替部55を介して誤り訂正復号部52に出力する(ステップS5)。
本例では、送信サーバ6Bは、IPパケット生成部62により、符号化率を変更したときはその旨を示す通知として符号化率変更通知パケットを生成して送信後、符号化データパケットを受信装置5に向けて送信する。このため、受信装置5は、誤り訂正復号部52における符号化データ補完部522により、IP網8経由で得られた符号化データの符号化率が放送受信時と異なるか否かを判定することができる(ステップS6)。
符号化データ補完部522は、IP網8経由で得られた符号化データの符号化率が放送受信時と異なる場合(ステップS6:Yes)、図4(c)に示す符号化率が変更された誤り訂正フレームを復元するために、符号化率に応じた送受間で既知とするパディングビットを追加する(ステップS7)。
一方、符号化データ補完部522は、IP網8経由で得られた符号化データの符号化率が放送受信時と同じである場合(ステップS6:No)、パディングビットを追加する必要はない。
続いて、符号化データ補完部522は、IP網8経由で取得した符号化データを、当該誤り訂正フレームにおける符号化データの復号処理に用いるよう補完する(ステップS8)。より具体的には、誤り訂正復号部52は、ブロック符号の誤り訂正復号器として構成され対数尤度比を用いた復号を実施するため、符号化データ補完部522により、IP網8経由で取得した符号化データについて、ビットの値が0である場合の対数尤度比を+∞(“0”である確からしさとして最大値)、ビットの値が1である場合の対数尤度比を−∞(“1”である確からしさとして最大値)、仮にパケットロスが生じて非達ビットが生じているときは、対数尤度比を0に置き換えることにより補完する。
そして、誤り訂正復号部52は、所定時間内で誤り訂正符号の復号処理により復号できるまで、当該符号化データの再送の要求を繰り返し(ステップS2乃至S8)、復号できた符号化データを基に受信データを生成した後、現在の受信経路がIP網8経由であるときは(ステップS9:Yes)、放送伝送路経由の受信に受信経路を切り替えるよう切替部55の切替制御を行い(ステップS10)、時系列上、次の符号化データについての復調・復号処理へと移行する。尚、誤り訂正復号部52は、所定時間内に当該復号処理により復号できないときは、ビット誤りを含む状態のまま受信データを生成し、ステップS9に移行して、切替部55を制御し、放送伝送路経由の受信に受信経路を切り替える。
ところで、再送要求パケットは、IPパケット形式で一般的に用いられる非達通知パケットを利用でき、符号化データパケットは、その非達通知パケットの応答として再送を行うものとして構成される。このため、誤り訂正復号部52では、復調部51から得られる符号化データに対して再送により得られた符号化データを置き換えて、再度、復号を実施することができ、所定時間内で受信データを復元できるまで繰り返し再送要求を行うことで、再生可能に出力することができる。
このように、図1に示す伝送システム1では、降雨による減衰やフェージングなどにより、誤り訂正符号によるデータ復元が不可能なほど伝送条件が悪化した場合、受信装置5はIP網8を通じて送信サーバ6Bに該当する符号化データの再送を要求する。送信サーバ6Bは、送信装置2(又は送信装置3)により放送伝送路を経て送信したときと同じ誤り訂正符号の符号化器(即ち、誤り訂正符号化部21)により符号化した符号化データについて、通信品質情報に応じて適応的に符号化率を変更し、インターリーブ処理を施した上で、IP網8経由で受信装置5に伝送する。
受信装置5は、電波により受信したときと同じ誤り訂正符号の復号器(即ち、誤り訂正復号部52)により、復号できなかった符号化データに対してIP網8経由でデインターリーブ処理を施した上で取得した符号ビットを補完して再度の復号を試みて受信データを復元する。電波経由で消失したデータが多いときや、IP網8も消失通信路と考えられ、一部のデータが消失するときでも、受信装置5は、所定時間内で受信データを復元できるまで繰り返し再送要求を行うことで、再生可能に出力することができる。
特に、IP網8を経て送信サーバ6Bが再送するデータをデジタル放送のブロック符号における符号化データとし、尚且つ、この符号化データをIP網8の通信品質に応じた符号化率に可変制御することで、再送要求回数を削減可能とし、更に、IP網8経由の伝送効率を向上させることができる。また、放送による誤り訂正符号とIP網8経由の伝送で利用する誤り訂正符号を同一の規格された符号とすることで、受信装置5では1つの誤り訂正復号器を用意するだけで実現でき、設備規模を小さくできる。更に、再送する符号化データパケットに関するバースト的なパケットロスに対する耐性を強化することができる。
〈実施例〉
以下、伝送システム1を高度広帯域衛星デジタル放送用に構成した、より具体的な一実施例を説明する。
図10は、本発明による一実施例の送信サーバ6Bを有する再送装置6S、送信装置2及び受信装置5を備える伝送システム1の概略構成を示すブロック図である。尚、同様な構成要素には、同一の参照番号を付して説明する。
図10に示す一実施例の伝送システム1は、ARIB STD−B44に記載される高度広帯域衛星デジタル放送を例にした実施例であり、本発明による一実施形態の1台の送信サーバ6Bを有する再送装置6S、送信装置2及び受信装置5を備える。ここでは、1台の送信サーバ6Bとし、負荷分散装置7の設置は省略しているが、上述したように、複数台の送信サーバ6Bとし、負荷分散装置7を経由してIP網8と接続する形態としてもよい。
図10に例示する送信装置2は、上述した図2と同様に構成され、デジタル放送に係る送信データに対し誤り訂正符号化処理を施して誤り訂正符号パリティ(LDPCパリティ及びBCHパリティ)を付与することにより符号化データを生成し、その符号化データを所定の変調方式でデジタル変調して変調波信号を生成し、送信アンテナ2aを介して放送衛星4を含む高度広帯域衛星デジタル放送の放送伝送路経由で、デジタル放送に係る電波を放射する。高度広帯域衛星デジタル放送は、符号化データの1フレーム分のビット数が44880ビットであり、誤り訂正符号化処理として、LDPC符号を内符号として利用し、BCH符号を外符号として利用する。
図10に例示する受信装置5は、上述した図8と同様に構成され、受信アンテナ5aを介して送信装置2から電波放射された変調波信号を受信して復調し、送信装置2における誤り訂正符号化処理に対応する復号処理を行って受信データを生成し再生可能とする。
また、受信装置5は、送信装置2から得られた符号化データについて誤り訂正復号の可否を判定し、復号できると判定したときはそのまま復号して受信データを生成し、符号化データのビット誤りが訂正できず復号できないと判定した場合には対応する符号化データの再送を要求するIPパケット形式の再送要求パケットを生成し、この再送要求パケットに通信品質情報を含めて、IP網8を経て、送信サーバ6Bに向けて送信する機能を有する。さらに、受信装置5は、当該再送要求パケットに応じて送信サーバ6Bから再送要求に応じて再送された符号化データ(送信サーバ6B側で通信品質情報に応じて放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率以上となる範囲内で適応的に符号化率を変更して再構成され、且つインターリーブ処理が施されている。)を格納するIPパケット形式の符号化データパケットを受信して、送信サーバ6B側のインターリーブ処理の逆処理を行って、再送要求に応じて再送された符号化データを再構成して抽出し復号処理に用いるよう符号化率に応じた補完を行い、所定時間内に当該復号処理により復号できるまで、対応する符号化データの再送の要求を繰り返す機能を有する。尚、受信装置5は、所定時間内に当該復号処理により復号できないときは、ビット誤りを含む状態のまま受信データを生成する。
再送装置6Sは、上述した図3と同様に構成され、受信アンテナ6aを介して送信装置2からの変調波信号を中継受信して復調し、復号処理を経てパリティ付きの誤り訂正フレームを構成する符号化データを再構成して出力する放送受信装置6Aと、この放送受信装置6Aからパリティ付きの誤り訂正フレームを構成する符号化データを順次入力し、誤り訂正フレームのフレーム番号により時系列に管理して所定時間分を更新しながら保存し、受信装置5からの再送要求に応じて、該当する符号化データを、IP網8を経て受信装置5に再送する送信サーバ6Bと、を備える。
従って、本実施例において、送信装置2はデジタル放送に係る送信データに高度広帯域衛星デジタル放送の誤り訂正符号化処理を施した上で変調波信号を生成し、送信アンテナ2aを介して放送衛星4を経て送信する。受信装置5はまず受信アンテナ5aから受信した高度広帯域衛星デジタル放送の変調波信号を復調し、誤り訂正復号処理で受信データを復元するよう試みる。受信装置5は、伝送環境がよく誤りなく受信できた場合や、白色雑音等の影響が誤り訂正符号により復号できる範囲であった場合、そのまま符号化データから受信データを復元して再生可能にする。受信装置5は、降雨減衰が起きるなど伝送環境が悪く、誤り訂正符号では復号できないほど符号化データが劣化した場合、IP網8を通じて該当する符号化データについて再送装置6Sにおける送信サーバ6Bに対し再送要求を行う。
受信装置5からIP網8を通じて送信サーバ6Bに再送要求があった場合、送信サーバ6Bは誤り訂正符号化処理後の符号化データの符号化率を通信品質情報に応じて可変制御し、インターリーブ処理を施した上で、IP網8経由で受信装置5に再送する。受信装置5は、IP網8経由で送信サーバ6Bから得られた符号化データについてデインターリーブ処理を施して再構成し、補完した符号化データを生成して誤り訂正復号処理を実行し、受信データを復元して再生可能にする。
(実施例:高度広帯域衛星デジタル放送の受信装置における受信制御フロー)
図11は、図10に示す一実施例の高度広帯域衛星デジタル放送の受信装置5における受信制御フローを示すフローチャートである。尚、図9と同様なステップ番号には同一の番号を付している。
まず、受信装置5は、復調部51により、高度広帯域衛星デジタル放送の放送伝送路経由で送信装置2から電波放射された変調波信号を受信して復調し、この復調処理で得られる符号化データを、切替部55を介して誤り訂正復号部52に出力する(ステップS1)。尚、切替部55は、上述したように、誤り訂正復号部52によって受信経路が制御される。
続いて、受信装置5は、誤り訂正復号部52により、送信装置2における誤り訂正符号化処理に対応する復号処理を実行するため、まず、尤度テーブルから符号化データの各ビットの事前LLRを算出し、誤り訂正フレームを再構成する(ステップS2A)。高度広帯域衛星デジタル放送は、符号化データの1フレーム分のビット数が44880ビットであり、誤り訂正符号化処理として、LDPC符号を内符号として利用し、BCH符号を外符号として利用するため、尤度テーブルを用いてビットが“0”である確からしさ、及びビットが“1”である確からしさを示す事前対数尤度比を算出する。
続いて、受信装置5は、誤り訂正復号部52により、対数尤度比によるsum-productアルゴリズムを利用したLDPC復号を実施後(ステップS2B)、電力逆拡散処理を経て、BCH符号の復号処理を実施する(ステップS2C)。ARIB STD−B44では外符号のBCH符号の復号処理の際にビット誤りのエラーを訂正しきれず、エラーフリーにならなかった場合、データをヌルパケットに置き換える、エラーありのフラグを付けるなどの処理を規定している。
そこで、誤り訂正復号部52は、復号可否判定部521により、送信装置2から得られた符号化データについて誤り訂正復号の可否を判定するため、BCH符号の復号処理でビット誤りのエラーが訂正しきれなかった、もしくは復号でエラーは訂正できたが所定のBCHエラー数となったか否かを判定する(ステップS3’)。即ち、本実施例では、LDPC符号の訂正能力が不確定であること、またBCH符号の訂正能力が確定的であることに着目し、LDPC符号と連接するBCH符号のエラーフリーの有無を利用して、Hybrid ARQにおける効率的な再送要求を実現するものとしている。
ここで、誤り訂正復号部52は、復号可否判定部521により、送信装置2から得られた符号化データについて誤り訂正復号の可否を判定した結果、復号できると判定したときはそのまま復号して受信データを再生可能に生成し(ステップS3’:No)、現在の受信経路がIP網8経由でないので(ステップS9:No)、そのまま放送受信する受信経路として切替部55の設定を維持して、時系列上、次の符号化データについての復調・復号処理へと移行する。
一方、誤り訂正復号部52は、復号可否判定部521により、誤り訂正フレームを構成する符号化データを復号できないと判定した場合には、当該誤り訂正フレームを構成する符号化データについての再送要求情報を生成し、再送要求パケット生成部53に出力して当該符号化データの再送要求を示す再送要求パケットを生成するよう指示する(ステップS3’:Yes)。即ち、誤り訂正復号部52は、伝送条件の悪化などの理由で、符号化データから受信データを復元できなかった場合、ARQにより送信サーバ6Bに向けて再送要求を行うよう再送要求パケット生成部53に指示する。また、復号可否判定部521は、切替部55を制御して、IP網8経由で符号化データを誤り訂正復号部52に入力する受信経路に切り替えを行う。
復号可否判定部521からの指示に応じて、再送要求パケット生成部53は、復号可否判定部521により復号できないと判定した符号化データについて、その再送を要求する旨を示す再送要求情報と、通信品質計測部56から得られる通信品質情報とを含むIPパケット形式の再送要求パケットを生成し、IP網8を経て、送信サーバ6Bに向けて送信する(ステップS4)。ここで、通信品質情報には、通信回線の遅延情報とパケットロス率情報のうちいずれか一方、又は双方を含まれている。
そこで、送信サーバ6Bは、受信装置5から再送要求パケットを受信した場合、再送要求パケットから、再送要求情報及び通信品質情報を抽出し、通信品質情報を基に、予め定められた符号化率変更基準に従って、符号化率を変更するか否か、変更する場合にはどの符号化率に変更するかを決定する。上述したように、符号化率変更基準は、送信側の誤り訂正符号化部21で用いる誤り訂正符号化方式と同一の符号化方式に基づき、且つ放送に係る送信装置2で利用可能とする所定種類数の符号化率のうち、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率以上となる範囲内で、符号化率を変更するように定めている。
そして、送信サーバ6Bは、その再送要求情報を基に、該当する誤り訂正フレームの再送要求に係る符号化データを保存部61から読み出して、適応的に符号化率を変更した符号化データパケットを生成し、IP網8を経て当該受信装置5に向けて送信する。送信サーバ6Bによる符号化率変更の例や、送信サーバ6Bによるインターリーブ処理を伴うIPパケット形式の再送要求パケットの生成法の例については、図12乃至図17を参照して後述する。
受信装置5は、送信サーバ6Bに向けて再送要求パケットの送信後、IPパケット受信部54により、当該再送要求パケットに応じて送信サーバ6Bから再送要求に応じて再送された符号化データを格納するIPパケット形式の符号化データパケットをIP網8経由で受信して、デインターリーブ部541により、送信サーバ6B側のインターリーブ部621によるインターリーブ処理の逆処理を行って、再送要求に応じて再送された符号化データを再構成して抽出し、切替部55を介して誤り訂正復号部52に出力する(ステップS5)。
本例では、送信サーバ6Bは、IPパケット生成部62により、符号化率を変更したときはその旨を示す通知として符号化率変更通知パケットを生成して送信後、符号化データパケットを受信装置5に向けて送信する。このため、受信装置5は、誤り訂正復号部52における符号化データ補完部522により、IP網8経由で得られた符号化データの符号化率が放送受信時と異なるか否かを判定することができる(ステップS6)。
符号化データ補完部522は、IP網8経由で得られた符号化データの符号化率が放送受信時と異なる場合(ステップS6:Yes)、符号化率が変更された誤り訂正フレームを復元するために、符号化率に応じた送受間で既知とするパディングビットを追加する(ステップS7)。
一方、符号化データ補完部522は、IP網8経由で得られた符号化データの符号化率が放送受信時と同じである場合(ステップS6:No)、パディングビットを追加する必要はない。
続いて、符号化データ補完部522は、IP網8経由で取得した符号化データを、当該誤り訂正フレームにおける符号化データの復号処理に用いるよう補完する(ステップS8’)。IP網8は消失通信路を想定して、誤り訂正復号部52は、IP網8経由で受信できた符号化データについては正しいビットの値を確定し、IP網8の途中の通信路でパケットロス等により消失したパケットについては正しいビットの値が不明とする。より具体的には、誤り訂正復号部52は、ブロック符号の誤り訂正復号器として構成され対数尤度比を用いた復号を実施するため、符号化データ補完部522により、IP網8経由で取得した符号化データについて、ビットの値が0である場合の対数尤度比を+∞(“0”である確からしさとして最大値)、ビットの値が1である場合の対数尤度比を−∞(“1”である確からしさとして最大値)、仮にパケットロスが生じて非達ビットが生じているときは、対数尤度比を0に置き換えることにより補完する。
そして、誤り訂正復号部52は、所定時間内で誤り訂正符号の復号処理により復号できるまで、当該符号化データの再送の要求を繰り返し(ステップS2乃至S8’)、復号できた符号化データを基に受信データを生成した後、現在の受信経路がIP網8経由であるときは(ステップS9:Yes)、放送伝送路経由の受信に受信経路を切り替えるよう切替部55の切替制御を行い(ステップS10)、時系列上、次の符号化データについての復調・復号処理へと移行する。ここで、誤り訂正復号部52は、BCH符号の復号処理のビット誤りのエラーがなくなるまで繰り返し再送要求を行うことで、受信データを完全に復元する構成とすることもできるが、所定時間内として制限を設けることで無限ループ処理を回避するのが好適である。尚、誤り訂正復号部52は、所定時間内に当該復号処理により復号できないときは、ビット誤りを含む状態のまま受信データを生成し、切替部55を制御して、放送伝送路経由の受信に受信経路を切り替える。
ところで、再送要求パケットは、IPパケット形式で一般的に用いられる非達通知パケットを利用でき、符号化データパケットは、その非達通知パケットの応答として再送を行うものとして構成される。このため、誤り訂正復号部52では、復調部51から得られる符号化データに対して再送により得られた符号化データを置き換えて、再度、復号を実施することができ、所定時間内で受信データを復元できるまで繰り返し再送要求を行うことで、再生可能に出力することができる。
(実施例:LDPC符号化率を変更なく再送する時のIPパケットの生成法)
図12(a)乃至図12(d)は、それぞれ図10に示す本実施例の送信サーバ6Bにおける符号化データのLDPC符号化率を変更なく再送する時のIPパケット生成部62のIPパケットの生成法に関する説明図である。まず、送信サーバ6Bにおける保存部61は、送信装置2で生成された符号化データを、衛星放送伝送路経由で中継受信して復調及び復号する放送受信装置6Aから順次入力し、誤り訂正フレームのフレーム番号により時系列に管理して所定時間分を更新しながら保存している。誤り訂正フレームのフレーム長はn=44880ビットとする(図12(a)参照)。保存部61は、再送要求に係るフレーム番号を持つ誤り訂正フレームを先頭として連続するフレーム番号を持つm=8000フレームの誤り訂正フレームをIPパケット生成部62に出力する。
図12では、IPパケットのIPヘッダを除いたパケット長を1000バイトとした場合を例示している。実際には想定されるIP網のMTU(Maximum Transmission Unit)を超えない範囲で任意にパケット長を決めてよい。高度広帯域衛星デジタル放送ではLDPC符号及びBCH符号のパリティまで含めたフレーム長はLDPC符号の符号化率によらず44880ビット(=5610バイト)であり、送信サーバ6BにおけるIPパケット生成部62は、LDPC符号化率を変更なく符号化データを再送する時は、インターリーブ部621により、この44880ビットの誤り訂正フレームを用いてインターリーブ処理を行う。
そこで、IPパケット生成部62は、再送要求に係る符号化データとしての誤り訂正フレームを含む8000フレームの誤り訂正フレームを縦方向に並べるようにして記憶部(図示略)に一時記憶する(図12(a)参照)。
続いて、IPパケット生成部62は、8000フレームの誤り訂正フレームに各ビットを先頭から読み出し、生成するIPパケットのヘッダを除いたパケット長として8000ビットのIPペイロードを44880パケット分、生成する(図12(b)参照)。即ち、各誤り訂正フレームの1〜44880ビットのうち、それぞれの同一ビット目を1ビットずつ集め8000ビットとしたものをIPペイロードとする。
続いて、IPパケット生成部62は、生成した44880パケット分のIPペイロードに、インターリーブ処理に係る各インターリーブフレームを受信装置5側で識別可能とするための識別ヘッダと、デジタル放送の誤り訂正フレームにおいて何番目のビットを表すのか特定できるシーケンス番号と、IPヘッダを符号化データパケットのヘッダとして付加して、44880パケット分のIPパケットを生成する(図12(c)参照)。尚、本例では、分かりやすくシーケンス番号を1〜44880として表しているが、各IPパケットを受信装置5にとって誤り訂正フレームのどのビットを示すものであれるかを識別可能な表現形態であれば任意である。
続いて、IPパケット生成部62は、インターリーブ部621を機能させ、生成した44880パケット分のIPパケットを、IP網8への送出順として所定規則に基づいたビットの並び替えを行うインターリーブ処理を実行する(図12(d)参照)。
尚、IP網がIPv4、IPv6のどちらを用いるのかなどによりヘッダ長は変わるが、IPパケット生成部62は伝送環境に合わせたIPヘッダを付与することで該当の誤り訂正フレームを示す符号化データパケットをIPパケット形式で受信装置5に再送することができる。
(実施例:LDPC符号化率を変更なく再送する時のインターリーブ処理)
図13は、図12に示す本実施例のIPパケット生成部621におけるインターリーブ部621のインターリーブ処理に関する説明図である。
図13には、隣接するシーケンス番号のパケットが211(=44880の平方根以下の最大の整数)ビット以上離れるようデータ再送に係る符号化データのビット送出順を並べ替えるインターリーブ処理を用いたIPパケットの生成法を示している。送信サーバ6Bにおけるインターリーブ部621は、L=213(=44880/211以上の最小の整数)とし、N=148(=44880−212×211)として、211×213の縦方向にシーケンス番号を並べ、横方向にシーケンス番号を抜き出し、該当のシーケンス番号を持つIPパケットをIP網8に送出することで、隣接するシーケンス番号のIPパケットは必ず211以上離れた状態でIP網8に送出できる。従って、受信装置5は、IP網8にてパケットロスが連続してバースト的に発生した場合でも、211ビット以上離れたビットが消失した程度で符号化データを取得できる。
受信装置5は、デインターリーブ541により、識別ヘッダとシーケンス番号を利用し、送信サーバ6B側のインターリーブ部621の逆処理を行って、再送要求に応じて再送された符号化データを再構成する。
尚、本実施形態におけるIPパケット生成部621は、再送要求に係る符号化データとしての誤り訂正フレームを含むm=8000個の誤り訂正フレームが必要であり、換言すればインターリーブ部621は8000フレーム分の誤り訂正フレームが揃うまでインターリーブ処理を実行することはできない。このためタイムロスが問題となる場合には、再送要求パケット生成部53は、送信サーバ6Bに向けて、再送要求に係る符号化データとしての誤り訂正フレームを識別可能とし、且つその誤り訂正フレームにおいて何番目のビットを表すのか特定できるシーケンス番号を指定する再送要求パケットを送信するようにして、送信サーバ6Bは、再送要求に係るn=44880ビットの誤り訂正フレームのうちシーケンス番号が示すビット数分n1(<44880)のみを、8000個の誤り訂正フレームから抽出して、対応するシーケンス番号を保持したIPパケットを生成し、インターリーブ部621によりそのIPパケットの送出順を並び替えるようにしてもよい。そして、m,nは、固定値であるが外部から可変設定することができるものとすることで、各IPパケットのパケット長の調整を行うことができる。
また、それぞれの誤り訂正フレームから1ビットずつ集めることでIPパケットを生成したが、それぞれの誤り訂正フレームから複数ビット集めることも可能である。逆に16000フレーム分の誤り訂正フレームを1フレーム分として扱うことや、8000ビットのパケットを89760個生成することも可能である。即ち、IP網8におけるパケットロスを予め想定して、これを緩和することができるように、誤り訂正フレームの各ビットの送出順を並び替える形態であれば、その他のインターリーブ技法を適用することが可能である。一般的にインターリーブ処理の対象とする期間(信号長)を長くすればするほどバースト的なパケットロスに強くなるため、伝送システム1全体で許容可能な期間内で最適なインターリーブ処理を実行するよう、インターリーブ部621を構成する。
(実施例:LDPC符号化率を変更して再送する時の符号化データの生成法)
図14を参照して、送信サーバ6Bにおける再送要求処理部63により、ARIB STD−B44に準拠するLDPC符号化率の種類数の範囲内で、本例では上記(9)の符号化率変更基準に従い、保存部61及び符号化率適応変更部64を制御して、符号化率変更時の符号化データの生成する例を説明する。
図14(a)乃至図14(d)に示す例は、送信サーバ6Bは、高度広帯域衛星デジタル放送として、2018年12月から放送が始まった変調方式が16APSK、LDPC符号化率が93/120(≒7/9)である高度広帯域衛星デジタル放送の符号化データを受信して保存部61に保持し、受信装置5から電波受信状況が悪化した場合にIP網8経由で再送要求された符号化データについて、その符号化率を109/120(≒9/10)に変更して再送する例である。
図14(a)に示すように、ここでは、放送伝送路で伝送した符号長n=44880ビットのLDPC符号における符号化データの符号化率をFb=93/120(≒7/9)とする。尚、ARIB STD−B44では、1誤り訂正フレームは、LDPC符号化率によらず一定の符号長44880ビットであり、集合分割法に基づくスロット単位で構成されるため、LDPC符号の符号化対象となる情報ビットは、“スロットヘッダ”、“主信号(伝送対象のデータ)”、“BCH符号パリティ”、及び“スタッフビット”が、電力拡散されたものとなっており、LDPC符号のパリティが付加されて1誤り訂正フレームが構成される。そして、送信サーバ6Bにおける保存部61には、図14(a)に示す1誤り訂正フレーム単位の符号化データが、フレーム番号を付して時系列に管理されて所定時間分を更新しながら保存される。LDPC符号化率93/120(≒7/9)におけるLDPC符号パリティは、44880×(1−93/120)=10098ビットで構成される。
そこで、受信装置5から再送要求パケットを受信した送信サーバ6Bは、再送要求処理部63により、再送要求パケットに含まれる通信品質情報を抽出し、その通信品質情報に含まれる遅延とパケットロス率の各情報を基に、通信品質管理部65にて管理される符号化率変更基準を参照して符号化率を変更するか否かを判定する。
上記(9)の符号化率変更基準に従うとすると、再送要求処理部63は、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値未満、或いは、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値以上のときは、放送伝送路で伝送した符号化データのLDPC符号化率93/120(≒7/9)のまま変更なしと判断し、図14(a)に示す再送要求に係る符号長nビットの符号化データを、保存部61から読み出して、そのままIPパケット生成部62に出力するよう符号化率適応変更部64を制御する。
一方、再送要求処理部63は、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値以上、且つ、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値未満のとき、放送伝送路で伝送した符号化データのLDPC符号化率Fb=93/120(≒7/9)から、LDPC符号化率Fi=109/120(≒9/10)に変更すると判断し(Fb<Fi)、まずは、図12(a)に示す再送要求に係る符号長44880ビットの符号化データのうちn×Fb=34782ビットのLDPC符号の符号化対象となる情報ビット(即ち、電力拡散済みのBCH符号化ビット)のみを、保存部61から読み出させる(図14(b)参照)。
続いて、誤り訂正符号化部643は、符号化率適応変更部64を制御して、誤り訂正符号化部643により、保存部61から読み出した34782ビットの情報ビット(即ち、電力拡散済みのBCH符号化ビット)に、送受間で既知の値(例えば、全て0のビット)でn×(Fi−Fb)=5984ビット分をパディングビットとして付加し、この情報ビットとパディングビットに対して符号化率Fi=109/120(≒9/10)となるLDPC符号化処理を施して、n×(1−Fi)=4114ビットのパリティを生成する(図14(c)参照)。
そして、誤り訂正符号化部643は、パディングビットを除去して、34782ビットの情報ビットに4114ビットのパリティを付加した再送用の符号化データ(38896ビット)を再構成し、IPパケット生成部62に出力する(図14(d)参照)。この再構成された再送用の符号化データのフレーム長38896ビットは、元の符号長44880ビットよりも短くなるため、符号長44880ビット分の符号化データを受信装置5に再送する場合よりも伝送効率が高くなる。
このようにして、本実施例の送信サーバ6Bは、再送要求パケットを受信すると、再送要求パケットに含まれる通信品質情報を基に、再送要求に係る符号化データのLDPC符号化率を適応的に変更して符号化データパケットを生成し、受信装置5に向けて送信する。
(実施例:LDPC符号化率を変更して再送する時のIPパケットの生成法)
図15(a)乃至図15(d)は、それぞれ図10に示す本実施例の送信サーバ6Bにおける符号化データのLDPC符号化率を変更して再送する時のIPパケット生成部62のIPパケットの生成法に関する説明図である。ここでは、インターリーブ処理の対象とする誤り訂正フレームが、図14に示す例のように、符号化率Fi=109/120(≒9/10)となるパリティを付加した再送用の符号化データ(38896ビット)からなる例に説明する。
即ち、符号化率適応変更部64における誤り訂正符号化部643からIPパケット生成部62に入力される誤り訂正フレームのフレーム長はn=38896ビットとなっている(図15(a)参照)。
図15においても、IPパケットのIPヘッダを除いたパケット長を1000バイトとした場合を例示している。実際には想定されるIP網のMTU(Maximum Transmission Unit)を超えない範囲で任意にパケット長を決めてよい。送信サーバ6BにおけるIPパケット生成部62は、LDPC符号化率を変更して符号化データを再送する時は、インターリーブ部621により、そのLDPC符号化率の変更に応じて放送伝送路経由のときよりも短い誤り訂正フレーム(本例では、38896ビット)を用いてインターリーブ処理を行う。
そこで、IPパケット生成部62は、再送要求に係る符号化データとしての誤り訂正フレームを含む8000フレームの誤り訂正フレームを縦方向に並べるようにして記憶部(図示略)に一時記憶する(図15(a)参照)。
続いて、IPパケット生成部62は、8000フレームの誤り訂正フレームに各ビットを先頭から読み出し、生成するIPパケットのヘッダを除いたパケット長として8000ビットのIPペイロードを38896パケット分、生成する(図15(b)参照)。即ち、各誤り訂正フレームの1〜38896ビットのうち、それぞれの同一ビット目を1ビットずつ集め8000ビットとしたものをIPペイロードとする。
続いて、IPパケット生成部62は、生成した38896パケット分のIPペイロードに、インターリーブ処理に係る各インターリーブフレームを受信装置5側で識別可能とするための識別ヘッダと、デジタル放送の誤り訂正フレームにおいて何番目のビットを表すのか特定できるシーケンス番号と、IPヘッダを符号化データパケットのヘッダとして付加して、38896パケット分のIPパケットを生成する(図15(c)参照)。尚、本例では、分かりやすくシーケンス番号を1〜38896として表しているが、各IPパケットを受信装置5にとって誤り訂正フレームのどのビットを示すものであれるかを識別可能な表現形態であれば任意である。
続いて、IPパケット生成部62は、インターリーブ部621を機能させ、生成した38896パケット分のIPパケットを、IP網8への送出順として所定規則に基づいたビットの並び替えを行うインターリーブ処理を実行する(図15(d)参照)。
尚、IP網がIPv4、IPv6のどちらを用いるのかなどによりヘッダ長は変わるが、IPパケット生成部62は伝送環境に合わせたIPヘッダを付与することで該当の誤り訂正フレームを示す符号化データパケットをIPパケット形式で受信装置5に再送することができる。
(実施例:LDPC符号化率を変更して再送する時のインターリーブ処理)
図16は、図15に示す本実施例のIPパケット生成部621におけるインターリーブ部621のインターリーブ処理に関する説明図である。
図16には、隣接するシーケンス番号のパケットが197(=38896の平方根以下の最大の整数)ビット以上離れるようデータ再送に係る符号化データのビット送出順を並べ替えるインターリーブ処理を用いたIPパケットの生成法を示している。送信サーバ6Bにおけるインターリーブ部621は、L=198(=38896/197以上の最小の整数)とし、N=87(=38896−197×197)として、197×198の縦方向にシーケンス番号を並べ、横方向にシーケンス番号を抜き出し、該当のシーケンス番号を持つIPパケットをIP網8に送出することで、隣接するシーケンス番号のIPパケットは必ず197以上離れた状態でIP網8に送出できる。従って、受信装置5は、IP網8にてパケットロスが連続してバースト的に発生した場合でも、197ビット以上離れたビットが消失した程度で符号化データを取得できる。
受信装置5は、デインターリーブ541により、識別ヘッダとシーケンス番号を利用し、送信サーバ6B側のインターリーブ部621の逆処理を行って、再送要求に応じて再送された符号化データを再構成する。
尚、本実施形態におけるIPパケット生成部621は、再送要求に係る符号化データとしての誤り訂正フレームを含むm=8000個の誤り訂正フレームが必要であり、換言すればインターリーブ部621は8000フレーム分の誤り訂正フレームが揃うまでインターリーブ処理を実行することはできない。このためタイムロスが問題となる場合には、再送要求パケット生成部53は、送信サーバ6Bに向けて、再送要求に係る符号化データとしての誤り訂正フレームを識別可能とし、且つその誤り訂正フレームにおいて何番目のビットを表すのか特定できるシーケンス番号を指定する再送要求パケットを送信するようにして、送信サーバ6Bは、再送要求に係るn=38896ビットの誤り訂正フレームのうちシーケンス番号が示すビット数分n1(<38896)のみを、8000個の誤り訂正フレームから抽出して、対応するシーケンス番号を保持したIPパケットを生成し、インターリーブ部621によりそのIPパケットの送出順を並び替えるようにしてもよい。そして、m,nは、固定値であるが外部から可変設定することができるものとすることで、各IPパケットのパケット長の調整を行うことができる。
また、それぞれの誤り訂正フレームから1ビットずつ集めることでIPパケットを生成したが、それぞれの誤り訂正フレームから複数ビット集めることも可能である。逆に16000フレーム分の誤り訂正フレームを1フレーム分として扱うことや、8000ビットのパケットを77792個生成することも可能である。即ち、IP網8におけるパケットロスを予め想定して、これを緩和することができるように、誤り訂正フレームの各ビットの送出順を並び替える形態であれば、その他のインターリーブ技法を適用することが可能である。一般的にインターリーブ処理の対象とする期間(信号長)を長くすればするほどバースト的なパケットロスに強くなるため、伝送システム1全体で許容可能な期間内で最適なインターリーブ処理を実行するよう、インターリーブ部621を構成する。
(応用例:LDPC符号の符号化率の変更、且つBCH符号の訂正能力の変更)
符号化率適応変更部64における誤り訂正符号化部643は、再送要求に係る符号化データ(放送伝送路で伝送した符号化データ)について符号化率を変更して再送するときに、LDPC符号の符号化率を変更するだけでなく、BCH符号の訂正能力も12ビットから23ビットに強化するよう変更して、符号化データを再構成してもよい。
図17(a)乃至図17(e)は、それぞれ本発明による応用例の送信サーバ6Bにおける符号化率適応変更部64による符号化率変更時の符号化データの生成法を示す図である。尚、図17は、図14に示す例と対比可能に、送信サーバ6Bにおける再送要求処理部63により、ARIB STD−B44に準拠するLDPC符号化率の種類数の範囲内で、本例では上記(9)の符号化率変更基準に従い、保存部61及び符号化率適応変更部64を制御して、LDPC符号化率を93/120(≒7/9)から109/120(≒9/10)に変更して符号化データの生成する例を示している。
まず、図17(a)は、図14(a)と同様に、放送伝送路で伝送した符号長n=44880ビットのLDPC符号における符号化データの符号化率をFb=93/120(≒7/9)として示している。上述したように、ARIB STD−B44では、1誤り訂正フレームは、LDPC符号化率によらず一定の符号長44880ビットであり、集合分割法に基づくスロット単位で構成されるため、LDPC符号の符号化対象となる情報ビットは、“スロットヘッダ”、“主信号(伝送対象のデータ)”、“BCH符号パリティ”、及び“スタッフビット”が、電力拡散されたものとなっており、LDPC符号のパリティが付加されて1誤り訂正フレームが構成される。そして、送信サーバ6Bにおける保存部61には、図17(a)に示す1誤り訂正フレーム単位の符号化データが、フレーム番号を付して時系列に管理されて所定時間分を更新しながら保存される。LDPC符号化率93/120(≒7/9)におけるLDPC符号パリティは、44880×(1−93/120)=10098ビットで構成される。
そこで、受信装置5から再送要求パケットを受信した送信サーバ6Bは、上述した図14を参照して説明した実施例と同様に、再送要求処理部63により、再送要求パケットに含まれる通信品質情報を抽出し、その通信品質情報に含まれる遅延とパケットロス率の各情報を基に、通信品質管理部65にて管理される符号化率変更基準を参照して符号化率を変更するか否かを判定する。
上記(9)の符号化率変更基準に従うとすると、再送要求処理部63は、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値未満、或いは、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値以上のときは、放送伝送路で伝送した符号化データのLDPC符号化率93/120(≒7/9)のまま変更なしと判断し、図17(a)に示す再送要求に係る符号長nビットの符号化データを、保存部61から読み出して、そのままIPパケット生成部62に出力するよう符号化率適応変更部64を制御する。
一方、再送要求処理部63は、受信装置5から得られた遅延が予め定めたデフォルト値以上、且つ、受信装置5から得られたパケットロス率が予め定めたデフォルト値未満のとき、放送伝送路で伝送した符号化データのLDPC符号化率Fb=93/120(≒7/9)から、LDPC符号化率Fi=109/120(≒9/10)に変更すると判断し(Fb<Fi)、まずは、図17(a)に示す再送要求に係る符号長44880ビットの符号化データのうちn×Fb=34782ビットのLDPC符号の符号化対象となる情報ビット(即ち、電力拡散済みのBCH符号化ビット)のみを、保存部61から読み出させる(図17(b)参照)。
続いて、本応用例では、再送要求処理部63は、符号化率適応変更部64を制御して、誤り訂正符号化部643により、保存部61から読み出した34782ビットの情報ビット(即ち、電力拡散済みのBCH符号化ビット)について、一旦、電力逆拡散処理を施して、“スロットヘッダ”、“主信号(伝送対象のデータ)”、“12ビット訂正能力のBCH符号パリティ”、及び“スタッフビット”のビット配列に復元し、その“スロットヘッダ”を削除して、その削除したビット領域分をBCH符号パリティに割り当てる(図17(c)参照)。従って、全体の情報ビット長を変えることなく、“主信号(伝送対象のデータ)”、“23ビット訂正能力のBCH符号パリティ”、及び“スタッフビット”のビット配列になる。これにより、ARIB STD−B44に記載される12ビット訂正用のBCH符号から、LDPC符号化率の変更後の誤り訂正フレームのフレーム長を維持したまま、23ビット訂正用のBCH符号へと訂正能力を強化する構成とすることができる(23ビットの訂正能力を持つBCH符号については、例えば「鈴木陽一,橋本明記,松崎敬文,田中祥次,木村武史,土田健一,“LDPC符号とBCH符号の連接符号を適用する集合分割8PSK符号化変調の性能改善,”電子情報通信学会論文誌B, V0l.97, no.8, PP.648-659, 2014月8月1日」参照)。
続いて、誤り訂正符号化部643は、図17(c)に示す“信号(伝送対象のデータ)”、“23ビット訂正能力のBCH符号パリティ”、及び“スタッフビット”のビット配列の情報ビットに対してサイドの電力拡散処理を施した後、上述した図9を参照して説明した実施例と同様に、送受間で既知の値(例えば、全て0のビット)でn×(Fi−Fb)=5984ビット分をパディングビットとして付加し、この情報ビットとパディングビットに対して符号化率Fi=109/120(≒9/10)となるLDPC符号化処理を施して、n×(1−Fi)=4114ビットのパリティを生成する(図17(d)参照)。
そして、誤り訂正符号化部643は、パディングビットを除去して、34782ビットの情報ビットに4114ビットのパリティを付加した再送用の符号化データ(38896ビット)を再構成し、IPパケット生成部62に出力する(図17(e)参照)。この再構成された再送用の符号化データのフレーム長38896ビットは、元の符号長44880ビットよりも短くなるため、符号長44880ビット分の符号化データを受信装置5に再送する場合よりも伝送効率が高くなる。
また、BCH符号の訂正能力を向上させることで、IP網8でのパケットロス耐性を向上させることができる。このBCH符号の変更についてはLDPC符号化率の変更時は必ずBCH符号の訂正能力も変更するとして送受間で予め定めておくか、或いは、遅延とパケットロス率のいずれか一方又は双方に応じてBCH符号の訂正能力を切り替えるように、随意定めたBCH符号の訂正能力変更の基準を上述した符号化率変更基準に加えて、符号化率変更の通知と同時に、再送する符号化データの送信前に、受信装置5へ事前通知するようにしてもよい。
このようにして、本応用例の送信サーバ6Bは、再送要求パケットを受信すると、再送要求パケットに含まれる通信品質情報を基に、再送要求に係る符号化データのLDPC符号化率とBCH符号の訂正能力を適応的に変更して符号化データパケットを生成し、受信装置5に向けて送信する構成とすることもできる。
以上のように、本実施形態の伝送システム1によれば、放送受信だけでは防げないデータの損失について、IP網8を経て受信装置5側から送信サーバ6B側へ再送要求を実施し、送信サーバ6B側からデータ再送を可能とすることで、受信装置5側でデータを補完することができる。特に、IP網8を経て送信サーバ6Bが再送するデータをデジタル放送のブロック符号における符号化データとし、尚且つ、この符号化データをIP網8の通信品質に応じた符号化率に可変制御することで、再送要求回数を削減可能とし、更に、IP網経由の伝送効率を向上させることができる。また、放送受信による誤り訂正符号とIP網経由の伝送で利用する誤り訂正符号を同一の規格された符号とすることで、受信装置5では1つの誤り訂正復号器を用意するだけで実現でき、設備規模を小さくできる。更に、再送する符号化データパケットに関するバースト的なパケットロスに対する耐性を強化することができる。
(変形例)
図18は、本発明による変形例の受信装置5の概略構成を示すブロック図である。図18において、図8に示すものと同様な構成要素には、同一の参照番号を付している。図12に示す変形例の受信装置5は、図8に示すものと比較して、受信品質計測部57を更に備え、切替部55が、誤り訂正符号化部52からの第1受信経路切替信号と、受信品質計測部57からの第2受信経路切替信号によって、受信経路が切り替えられるように制御される点で相違しており、その他の構成は同様である。
切替部55は、上述した実施形態と同様に、主として放送伝送路経由で伝送され復調部51により復調して得られる符号化データを誤り訂正復号部52に入力するように作動する。ただし、誤り訂正復号部52における復号可否判定部521により放送伝送路経由で得られる符号化データを復号できないと判定したときに、切替部55は、誤り訂正復号部52による第1受信経路切替信号により制御されて、所定時間内に誤り訂正符号の復号処理により復号できるまで、IP網8経由で再送されIPパケット受信部54から得られる符号化データを誤り訂正復号部52に入力する。
また、本変形例における切替部55は、一旦、受信経路がIP網8経由に切替制御されると、受信品質計測部57から第2受信経路切替信号により制御されない限り、IP網8経由の受信経路を維持して、符号化データについての再送要求後も継続して、IP網8経由で再送要求した符号化データに続く次の符号化データを受信するように作動する。
受信品質計測部57は、受信した変調波信号についての受信品質(例えば、MER(Modulation Error Ratio))を計測し、受信品質が所定値以上であるか否かを判定して、切替部55及び誤り訂正復号部52を制御する。
より具体的には、受信品質計測部57は、受信した変調波信号についての受信品質が所定値以上であり、且つ切替部55の受信経路がIP網8経由になっているときに、第2受信経路切替信号により、放送伝送路経由で得られる符号化データを誤り訂正復号部52に入力するように切替部55を切替制御する。
また、受信品質計測部57は、受信した変調波信号についての受信品質が所定値未満であり、且つ切替部55の受信経路がIP網8経由になっているときに、切替部55の受信経路をIP網8経由としたままとするべく切替部55の切替制御は行わずに、継続指示信号により、誤り訂正復号部52に対し符号化データについての再送要求後も継続して、IP網8経由で次の符号化データを再送要求して取得するよう指示する。
(変形例の受信装置における受信制御フロー)
図19は、本発明による変形例の受信装置5における受信制御フローを示すフローチャートである。尚、図9と同様なステップ番号には同一の番号を付している。
図19に示すステップS1乃至S8までは、図9に示すステップS1乃至S8までと同様であり、更なる説明は省略する。
即ち、本変形例の受信装置5においても、放送伝送路経由で伝送され復調部51により復調して得られる符号化データを、切替部55を介して誤り訂正復号部52に入力し、誤り訂正復号部52における復号可否判定部521により放送伝送路経由で得られる符号化データを復号できないと判定したときに、切替部55を切替制御してIP網8経由で符号化データを再送要求して取得し、所定時間内に誤り訂正符号の復号処理により復号できるまで、当該符号化データの再送の要求を繰り返す(ステップS1乃至S8)。
そして、本変形例の受信装置5は、誤り訂正復号部52により、復号できた符号化データを基に受信データを生成した後、現在の受信経路がIP網8経由でなく放送受信する受信経路であれば(ステップS9:No)、そのまま放送受信する受信経路として切替部55の設定を維持して、時系列上、次の符号化データについての復調・復号処理へと移行する。
一方、本変形例の受信装置5は、誤り訂正復号部52により、復号できた符号化データを基に受信データを生成した後、現在の受信経路がIP網8経由であるときは(ステップS9:Yes)、受信品質計測部57により、受信した変調波信号についての受信品質が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS10A)。
受信品質計測部57は、受信した変調波信号についての受信品質が所定値以上であり、且つ切替部55の受信経路がIP網8経由になっているときに(ステップS10A:Yes)、第2受信経路切替信号により、放送伝送路経由で得られる符号化データを誤り訂正復号部52に入力するように切替部55を切替制御し、時系列上、次の符号化データについての復調・復号処理へと移行する(ステップS10B)。
ただし、受信品質計測部57は、受信品質が所定値未満であり、且つ切替部55の受信経路がIP網8経由になっているときに(ステップS10A:No)、切替部55の受信経路をIP網8経由としたままとするべく切替部55の切替制御は行わずに、継続指示信号により、誤り訂正復号部52に対し符号化データについての再送要求後も継続してIP網8経由で符号化データを再送要求して取得するよう指示し(ステップS10C)、ステップS4に移行して、以後、同様に動作する。尚、誤り訂正復号部52は、所定時間内に当該復号処理により復号できないときは、ビット誤りを含む状態のまま受信データを生成し、ステップS9に移行する。
従って、図18及び図19に示す本変形例の受信装置5は、一旦、受信経路をIP網8経由に切り替えると、受信した変調波信号についての受信品質が所定値未満であれば、今後誤り訂正復号処理によりビット誤りを訂正しきれないほど受信状況が悪化することが継続すると予測して、受信品質が所定値以上となるまで、誤り訂正復号部52による符号対象の符号化データについてIP網8経由で符号化データを再送要求して取得する。
従って、本変形例の受信装置5を備える伝送システム1においても、上述した実施形態の利点を全て包含し、これに加えて、受信した変調波信号についての受信品質を考慮した動作となるため、安定したデジタルデータの受信が可能となる。
上述した実施例に関して、再送装置6S,6T、或いは送信サーバ6Bとして機能するコンピュータの各手段を機能させるためのプログラムを好適に用いることができる。また、受信装置5として機能するコンピュータの各手段を機能させるためのプログラムを好適に用いることができる。具体的には、各手段を制御するための制御部をコンピュータ内の中央演算処理装置(CPU)で構成でき、且つ、各手段を動作させるのに必要となるプログラムを適宜記憶する記憶部を少なくとも1つのメモリで構成させることができる。即ち、そのようなコンピュータに、CPUによって該プログラムを実行させることにより、上述した各手段の有する機能を実現させることができる。更に、各手段の有する機能を実現させるためのプログラムを、前述の記憶部(メモリ)の所定の領域に格納させることができる。そのような記憶部は、装置内部のRAM又はROMなどで構成させることができ、或いは又、外部記憶装置(例えば、ハードディスク)で構成させることもできる。また、そのようなプログラムは、コンピュータで利用されるOS上のソフトウェア(ROM又は外部記憶装置に格納される)の一部で構成させることができる。更に、そのようなコンピュータに、各手段として機能させるためのプログラムは、コンピュータが読取り可能な記録媒体に記録することができる。また、上述した各手段をハードウェア又はソフトウェアの一部として構成させ、各を組み合わせて実現させることもできる。
上述した一実施形態の実施例、応用例、変形例については代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換することができることは当業者に明らかである。例えば、送信サーバ6Bは、放送受信装置6Aから符号化データを入力する例を説明したが、送信装置2(又は送信装置3)から直接的に符号化データを入力する形態としてもよい。従って、本発明は、上述の実施例によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。