〔伝送システム〕
図1は、本発明による一実施形態の送信サーバ6、送信装置2,3及び受信装置5を備える伝送システム1の概略構成を示すブロック図である。図1に示す伝送システム1は、送信装置2,3、受信装置5、1台又は複数台の送信サーバ6、及び、複数台の送信サーバ6を構成するときに設けられる負荷分散装置7を備える。
送信装置2は、デジタル放送に係る送信データに対し誤り訂正符号化処理を施して誤り訂正符号パリティを付与することにより符号化データを生成し、その符号化データを所定の変調方式でデジタル変調して変調波信号を生成し、送信アンテナ2aを介して放送衛星4を含む衛星放送伝送路経由で、デジタル放送に係る電波を放射する装置である。例えば、送信装置2は、高度広帯域衛星デジタル放送の送信装置とすることができる。また、送信装置2は、順次生成した符号化データを誤り訂正符号フレームとして管理して、同期信号として機能するフレーム番号又は時刻情報を付与して、例えばローカルエリアネットワーク経由で、1台又は複数台の送信サーバ6に送信する機能を有する。
送信装置3は、デジタル放送に係る送信データに対し誤り訂正符号化処理を施して誤り訂正符号パリティを付与することにより符号化データを生成し、その符号化データを所定の変調方式でデジタル変調して変調波信号を生成し、送信アンテナ3aを介して地上放送伝送路経由で、デジタル放送に係る電波を放射する装置である。例えば、送信装置3は、現行又は次世代の地上デジタル放送の送信装置とすることができる。また、送信装置3は、順次生成した符号化データを誤り訂正符号フレームとして管理して、同期信号として機能するフレーム番号又は時刻情報を付与して、例えばローカルエリアネットワーク経由で、1台又は複数台の送信サーバ6に送信する機能を有する。
受信装置5は、受信アンテナ5aを介して送信装置2から電波放射された変調波信号を受信して復調し、誤り訂正符号の符号長を構成する誤り訂正符号フレームを再構成し送信装置2における誤り訂正符号化処理に対応する復号処理を行って受信データを生成し再生可能とする機能、及び、受信アンテナ5bを介して送信装置3から電波放射された変調波信号を受信して復調し、誤り訂正符号の符号長を構成する誤り訂正符号フレームを再構成し送信装置3における誤り訂正符号化処理に対応する復号処理を行って受信データを生成し再生可能とする機能を有する装置である。
また、受信装置5は、送信装置2(又は送信装置3)から得られた符号化データについて誤り訂正復号の可否を判定し、復号できると判定したときはそのまま復号して受信データを生成し、符号化データのビット誤りが訂正できず復号できないと判定した場合には対応する符号化データの再送を要求するIPパケット形式の再送要求パケットを生成し、この再送要求パケットに、下り回線(送信側から受信側へ向かう回線)で計測したIP網8のパケット消失率情報を含めて、IP網8を経て、送信サーバ6に向けて送信する機能を有する。ここで、受信装置5は、送信サーバ6に対する再送要求の応答として受信したIPパケット列の符号化データパケットについて、パケット消失率を逐次計測する機能を有する。さらに、受信装置5は、当該再送要求パケットに応じて送信サーバ6から再送された符号化データ(送信サーバ6側でパケット消失率情報に応じて、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率以上であり、尚且つ当該IP綱8のパケット消失を訂正可能とする範囲内で最も高い符号化率により再構成される符号化データ)を格納するIPパケット列の符号化データパケットを受信して、送信サーバ6側のインターリーブ処理の逆処理を行って、再送要求に応じて再送された符号化データを再構成して抽出し復号処理に用いるよう尤度変換を行い、所定時間内に当該復号処理により復号できるまで、対応する符号化データの再送の要求を繰り返す機能を有する。尚、受信装置5は、所定時間内に当該復号処理により再送要求した符号化データを復号できないときは、ビット誤りを含む状態のまま受信データを生成する。
1台又は複数台の送信サーバ6の各々は、デジタル放送に係る誤り訂正符号を利用して符号化した符号化データをデジタル変調し放送伝送路を介して受信装置5に送信する送信装置2(又は送信装置3)から当該符号化データの所定時間分を保存し、受信装置5から再送要求された符号化データについて、受信装置5から得られるパケット消失率情報に応じて符号化データを再構成し、インターリーブ処理を施したIPパケット列の符号化データパケットを生成し、IP網8を介して受信装置5に送信可能とするコンピュータとして構成される。
即ち、送信サーバ6は、送信装置2(又は送信装置3)で生成された符号化データを例えばローカルエリアネットワーク経由で順次入力し、誤り訂正符号の符号長を構成する誤り訂正符号フレームのフレーム番号又は時刻情報に基づく同期信号により時系列に管理して所定時間分を更新しながら保存する機能、IP網8を経て、受信装置5にて送信装置2(又は送信装置3)で利用した誤り訂正符号を用いて符号化データのビット誤りが訂正できないと判定されたときに当該パケット消失率情報とともに当該符号化データに関する再送要求パケットを受信し、当該受信装置5に向けて当該パケット消失率情報に応じて、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率以上であり、尚且つ当該IP綱8のパケット消失を訂正可能とする範囲内で最も高い符号化率で符号化データを再構成し、その再送要求に係る同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つ符号化データを構成する誤り訂正符号フレームを先頭として連続する同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つmフレームの誤り訂正符号フレームを当該再送要求に係る同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つ符号化データと同一の符号化率で形成してインターリーブフレームを構築し、当該インターリーブフレームをmフレームの誤り訂正符号フレームに対して直交する方向にインターリーブ処理を施してIPパケット列の符号化データパケットを生成し、IP網8を経て当該受信装置5に向けて送信する機能を有する。尚、本実施形態では、受信装置5側において、送信サーバ6との往復回線のテスト通信による推定又はユーザ設定によりパケット消失率を定めるのではなく、上述したように、下り回線(送信側から受信側へ向かう回線)のパケット消失率を計測するようにしている。このため、受信装置5が送信サーバ6に向けて送信する再送要求パケットに含まれるパケット消失率情報には、パケット消失率を計測できないときにパケット消失率不明である旨を示すこともある。そこで、送信サーバ6は、パケット消失率不明である旨を示すパケット消失率情報を受信装置5から受信したときは、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率でIPパケット列の符号化データパケットを生成する。
尚、図1に例示する伝送システム1では、送信装置2及び送信装置3を備えるとして説明したが、送信装置2と送信装置3のいずれか一方のみとしてもよい。図1に例示する伝送システム1では、送信装置2(又は送信装置3)と送信サーバ6とを別体として説明したが、送信装置2(又は送信装置3)が送信サーバ6を備える形態とし、1台又は複数台の送信装置2(又は送信装置3)として、ローカルエリアネットワークで接続する代わりに、単純な信号ケーブルで接続する構成としてもよい。
負荷分散装置7は、複数台の送信サーバ6を構成するときに、当該複数台の送信サーバ6とIP網8との間に設けられ、IP網8を経て多くの受信装置5から再送要求パケットを受信した場合に、複数台の送信サーバ6の各処理負荷を分散させ、再送要求に係る符号化データパケットを分割送信する装置である。図1に示す伝送システムでは、予めユーザ登録された複数台の受信装置5を対象とし、負荷分散装置7を介在させることで、ユーザ登録数が多くなる場合でも送信サーバ6を追加するだけでよいものとなる。ただし、予め許容するユーザ登録数に対応した送信サーバ6を個別に配設するときは、負荷分散装置7の設置を省略し、送信サーバ6とIP網8とを直接的に接続する形態としてもよい。
以下、より具体的に、送信装置2(又は送信装置3)、送信サーバ6、受信装置5について順に説明する。
〔送信装置〕
図2は、本発明による一実施形態の送信サーバ6及び送信装置2(又は送信装置3)の概略構成を示すブロック図である。尚、図2に示す送信装置2(又は送信装置3)は、本発明に係る主要な構成要素のみを図示しており、エネルギー(電力)拡散処理等のその他の構成要素の説明は省略する。
送信装置2及び送信装置3は、それぞれの放送伝送路(衛星放送伝送路又は地上放送伝送路)に適した誤り訂正符号化処理及び変調方式が採用されるが、図2に示すように、誤り訂正符号化部21、及び変調部22を備えるとして包括して説明する。
誤り訂正符号化部21は、デジタル放送に係る送信データに対し誤り訂正符号化処理を施して誤り訂正符号パリティを付与することにより符号化データを生成し、変調部22に出力する符号化器である。また、誤り訂正符号化部21は、順次生成した符号化データを誤り訂正符号フレームとして管理して、同期信号として機能するフレーム番号又は時刻情報を付与して、例えばローカルエリアネットワーク経由で送信サーバ6に送信する機能を有する。
変調部22は、誤り訂正符号化部21から得られる符号化データを所定の変調方式でデジタル変調して変調波信号を生成し、放送伝送路経由でデジタル放送に係る電波を放射する。
デジタル放送に係る送信データは、例えば地上放送伝送路を経由して送信するときはARIB STD-B31に記載され地上デジタル放送で使用されるMPEG2-TSとすることができ、例えば衛星放送伝送路を経由して送信するときはARIB STD-B44に記載され高度広帯域衛星デジタル放送で使用されるTLV(Type Length Value)形式のデータとすることができる。
尚、現行の地上デジタル放送では、内符号として畳み込み符号、外符号としてリードソロモン符号が連接した連接符号で誤り訂正符号化処理が行われる。次世代の地上デジタル放送では、内符号としてLDPC符号、外符号としてBCH(Bose-Chaudhuri-Hocquenghem)符号が連接した連接符号で誤り訂正符号化処理を行うことが検討されている。また、高度広帯域衛星デジタル放送では、内符号としてLDPC符号、外符号としてBCH符号が連接した連接符号で誤り訂正符号化処理が行われる。以下の説明では、主に、内符号としてLDPC符号、外符号としてBCH符号が連接した連接符号で誤り訂正符号化処理が行われる伝送システム1について説明する。そして、以下の説明における一実施例の伝送システム1において、LDPC符号をブロック符号として用いるときは、「LDPC符号化率」を単に「符号化率」とも称する。
〔送信サーバ〕
図2に示す送信サーバ6は、デジタル放送に係る誤り訂正符号を利用して符号化した符号化データをデジタル変調し放送伝送路を介して受信装置5に送信する送信装置2(又は送信装置3)から当該符号化データの所定時間分を保存し、受信装置5から再送要求された符号化データについて、受信装置5から得られるパケット消失率情報に応じて符号化データを再構成し、該符号化データを含むIPパケット列の符号化データパケットを生成し、IP網8を介して受信装置5に送信可能とするコンピュータとして構成され、保存部61、IPパケット生成部62、再送要求処理部63、符号化率適応変更部64、符号化率決定部65、及び消失訂正性能テーブル格納部66を備える。
保存部61は、送信装置2(又は送信装置3)で生成された符号化データ(放送伝送路で用いるブロック符号化済みの信号)を例えばローカルエリアネットワーク経由で、同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を基に順次入力し、その符号化データを構成する誤り訂正符号フレームを、同期信号(フレーム番号又は時刻情報)で時系列に管理して所定時間分を更新しながら保存する機能部である。尚、送信装置2(又は送信装置3)から得られる符号化データには、放送伝送路で用いるデジタル放送内の制御信号であるTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)信号にて識別されるフレーム番号又は時刻情報が同期信号として付されている。例えば、保存部61は、放送伝送路を用いるデータ伝送方式において、誤り訂正符号フレーム単位の符号化データに併せて伝送されるTMCC信号内に含まれる時刻情報(主信号内にも時刻情報を埋め込むこともある。)も受信することで、送信装置2(又は送信装置3)から逐次得られる誤り訂正符号フレーム単位の符号化データを、時刻情報に関連付けたフレーム番号を同期信号とし、その同期信号で管理することができる。また、保存部61により同期信号(フレーム番号又は時刻情報)で時系列に管理する符号化データは、デジタル放送中に受信する間、送信サーバ6からIP網8経由で通知する形態としてもよい。即ち、図1に示す伝送システム1において、TMCC信号又は主信号内に含まれる時刻情報やフレーム番号を同期信号として利用することで、送信装置2,3、受信装置5、1台又は複数台の送信サーバ6、及び、複数台の送信サーバ6を構成するときに設けられる負荷分散装置7の同期を確保することができる。
IPパケット生成部62は、受信装置5からの再送要求に係る符号化データを格納するIPパケット列の符号化データパケットを生成し、IP網8を経て当該受信装置5に向けて送信する機能部である。この符号化データパケットは、受信装置5にて送信装置2(又は送信装置3)で利用した誤り訂正符号を用いて符号化データのビット誤りが訂正できないと判定されたときに生成される。尚、図6を参照して詳細は後述するが、IPパケット生成部62は、インターリーブ処理に係る各インターリーブフレームを受信装置5側で識別可能とするための識別ヘッダと、符号化データパケットを構成する複数のIPパケットに対するシーケンス番号を付与した上で、再送要求に係る符号化データのビットが所定値以上離れるようにする所定規則に基づいて、各誤り訂正符号フレームを縦断するようにビットの並び替えを行うインターリーブ処理を実行するインターリーブ部621を有する。
再送要求処理部63は、受信装置5からIP網8を経て再送要求パケットを受信したときに、当該再送要求パケットに格納されるパケット消失率情報と、再送要求に係る誤り訂正符号フレームの符号化データを示す再送要求情報とを抽出する。そして、再送要求処理部63は、今回受信したパケット消失率情報を符号化率決定部65に通知するとともに、再送要求情報を基に保存部61から再送要求に係る符号化データの所在を探索して該符号化データを構成する誤り訂正符号フレームを先頭として連続する同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つmフレーム分の誤り訂正符号フレームを読み出し、符号化率適応変更部64に出力させるよう保存部61を制御する。
符号化率決定部65は、受信装置5から得られるIP綱8のパケット消失率情報を基に、消失訂正性能テーブル格納部66に格納されている第1消失訂正性能テーブル(表1に例示)及び第2消失訂正性能テーブル(表2に例示)を参照し、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率以上であり、尚且つ当該IP綱8のパケット消失を訂正可能とする範囲内で最も高い符号化率(パリティビットが一番少なくなる符号化率)を決定し、符号化率適応変更部64を制御する。尚、本例の第1及び第2消失訂正性能テーブルは、説明の便宜上2つのテーブルとして説明するが、1つのテーブルとして構成できるため、特に区別を要しないときは、第1及び第2消失訂正性能テーブルを包括して単に「消失訂正性能テーブル」と称する。そして、表1及び表2に示す「消失訂正性能テーブル」は、事前に計算機シミュレーションで求めた符号化率1/2,3/5,2/3,3/4,4/5,5/6,7/8,9/10、及び符号化率110/120,111/120,112/120,113/120,114/120,115/120,116/120,117/120ごとのエラーフリー達成可能な最大パケット消失率(以下、「所要パケット消失率」とも称する。)を示している。これにより、符号化率決定部65は、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率を変更せずに再送する場合や変更して再送する場合のいずれにおいても、再送するビット数を可能な限り少なくする符号化率を選定して符号化率適応変更部64を制御することができる。そして、符号化率適応変更部64は、符号化率決定部64による符号化率の決定に基づいて放送伝送路で伝送された符号化データのブロック符号の符号化率を変更して再送するか否かを判別することができる。尚、符号化率決定部65は、パケット消失率不明である旨を示すパケット消失率情報を受信装置5から受信したときは、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率を選定する。
ところで、通常、デジタル放送では選択可能な符号化率について複種類が予め規定されている。例えばARIB STD-B44ではブロック符号であるLDPC符号のうち、41/120(≒1/3)、49/120(≒2/5)、61/120(≒1/2)、73/120(≒3/5)、81/120(≒2/3)、89/120(≒3/4)、93/120(≒7/9)、97/120(≒4/5)、101/120(≒5/6)、105/120(≒7/8)、及び、109/120(≒9/10)の11種類の符号化率が規定されているが、本実施形態の伝送システム1では、これらの符号化率のうち表1に示す第1消失訂正性能テーブルにおける8種類の符号化率のみが放送伝送路で使用される例を示している。一方で、IP網8経由のデータ再送に関しては、送信サーバ6及び受信装置5は表1及び表2に示す第1及び第2消失訂正性能テーブルにおける16種類の符号化率を扱う例としている。従って、当該11種類の符号化率の全てが放送伝送路で使用されるときは、それに応じた11種類の符号化率に対応する所要パケット消失率を規定した消失訂正性能テーブルを用いるか、もしくは、表1に示す消失訂正性能テーブルにおいて、符号化率1/3,2/5,7/9については他の符号化率における所要パケット消失率を基に推定適用する形態としてもよい。
即ち、本実施形態の送信サーバ6において(受信装置5においても同様)、パケット消失率情報は、デジタル放送で予め想定されているビット誤り率よりも低い状態を示すパケット消失率を示すことが許容されている。そして、符号化率決定部65は、誤り訂正符号の符号化率として、デジタル衛星放送で使用される第1の符号化率1/2,3/5,2/3,3/4,4/5,5/6,7/8,9/10に加え、新たにIP網8経由のデータ再送用に設計した符号化率9/10よりも高い第2の符号化率を複数種類使用する(例えば表2に示す符号化率110/120,111/120,112/120,113/120,114/120,115/120,116/120,117/120)。
これは、IP綱8としてインターネット回線を用いる場合、パケット消失率がその回線の使用状況により大きく変動することや、クローズドネットワーク網での帯域保証制御を用いてIP伝送する場合などでは、パケット消失率を低く抑えることができるためである。特に、本実施形態の例のように、IP網8ではパケット消失率が、符号化率9/10で訂正できる範囲より小さい範囲で変動する時間が長いことも想定される。そこで、IP網8用の誤り訂正符号の符号化率に9/10より高いものを複数用意しておくことで、再送する符号化データのパリティビットをより少なくして、効率的にパケット消失を訂正することができる。
従って、符号化率決定部65は、表1及び表2に示すパケット消失率情報を基に、送信装置2(又は送信装置3)で用いる誤り訂正符号化方式と同一の符号化方式に基づき、送信装置2(又は送信装置3)で利用可能とする複数種の第1の符号化率と、その複数種の第1の符号化率における最高符号化率よりも高い送信装置2(又は送信装置3)でサポート外の複数種の第2の符号化率とからなる所定種類数の符号化率のうち、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率以上であり、尚且つIP綱8のパケット消失を訂正可能とする範囲内で最も高い符号化率を決定する。
例えば、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率Fbが1/2であったとする。このとき、受信装置5から再送要求パケットで得られるIP綱8のパケット消失率情報が40%であった場合には、符号化率決定部65は消失訂正性能テーブルを参照して、40%のパケット消失率を持つIP綱8においてエラーフリー伝送可能な所要パケット消失率は1/2のみであるため、IP綱8経由で再送する際の符号化率Fiを1/2に決定する。一方、受信装置5から再送要求パケットで得られるIP綱8のパケット消失率情報が25%であった場合には、符号化率決定部65は消失訂正性能テーブルから、25%のパケット消失率を持つIP綱8においてエラーフリー伝送可能な所要パケット消失率は1/2,3/5,2/3,3/4が消失訂正性能テーブルから参照されるが、IP綱8の回線逼迫を抑え伝送効率を向上するため、パリティビットが一番少なくなる最も高い符号化率として、IP綱8経由で再送する際の符号化率Fiを3/4に決定する。
符号化率適応変更部64は、符号化率決定部65により決定された符号化率に従って、送信装置2(又は送信装置3)で生成された符号化データの符号化率を変更する場合と変更しない場合の切り替えを行う切替部641,642と、該符号化率を変更する場合に、その決定された符号化率に変更する誤り訂正符号化処理を行う誤り訂正符号化部643と、を備える。
より具体的には、切替部641,642は、保存部61から読み出した再送要求に係る符号化データ(放送伝送路で伝送した符号化データ)について符号化率を変更せずに再送するときは、そのままIPパケット生成部62に出力し、符号化率を変更して再送するときは、誤り訂正符号化部643により符号化率を変更し再構成した符号化データをIPパケット生成部62に出力するように切り替えを行う機能部である。
例えば、放送伝送路経由の伝送とIP綱8経由の伝送の符号化率が同じ(例えばFi=Fb=1/2)であるときは、符号化率適応変更部64は、保存部61から読み出される送信装置2(又は送信装置3)で伝送した該当する誤り訂正符号フレームの符号化データを、そのままIPパケット生成部62へ出力する。
一方、符号化率適応変更部64は、放送伝送路経由の伝送から符号化率を変更した符号化データを再送するときには、誤り訂正符号化部643により符号化率を変更する。
誤り訂正符号化部643は、保存部61から読み出した再送要求に係る符号化データ(放送伝送路で伝送した符号化データ)について、まず、その再送要求に係る符号化データ内の所定のパリティを除く情報ビットのみを抽出する。続いて、誤り訂正符号化部643は、変更する符号化率に応じて、送信サーバ6及び受信装置5間で既知のビット(全て“0”又は“1”のビット、或いは“0”と“1”の規則的なビットパターン)からなるパディングビットを送受間で既知とする挿入位置に付加する。そして、誤り訂正符号化部643は、このパディングビットを付加した当該所定の情報ビットに対して、送信装置2(又は送信装置3)における誤り訂正符号化部21で用いる誤り訂正符号化方式と同一の符号化方式に基づき、且つ放送に係る送信装置2(又は送信装置3)で利用可能とする放送伝送路で伝送した符号化率とは異なる符号化率で誤り訂正符号化処理を行う。最終的には、誤り訂正符号化部643は、放送伝送路で伝送した符号化データについて符号化率を変更したブロック符号のパリティを、送信装置2(又は送信装置3)で生成された符号化データに付加されていたパリティから置き換えて当該情報ビットに付加し、且つパディングビットを除去した再送用の符号化データを生成する。符号化率適応変更部64の誤り訂正符号化部643による符号化率変更時の符号化データの生成法については、図4及び図5を参照して後述する。
例えば、放送伝送路経由の伝送とIP綱8経由の伝送の符号化率が異なる(Fb<Fi)ときは、符号化率適応変更部64は、保存部61から読み出される送信装置2(又は送信装置3)で伝送した該当する誤り訂正符号フレームの符号化データのうち情報ビットのみを抽出し、送受間で既知とするパディングビットを送受間で既知とする挿入位置に付加して、符号化率Fiとするブロック符号のパリティを付加してから、当該パディングビットを除去した再送用の符号化データを生成し、IPパケット生成部62へ出力する。より具体的には、放送伝送路経由の伝送時の符号長が44880ビットであるとき、符号化率Fb=1/2から符号化率Fb=3/4に変更して再送するときは、22814ビットの情報ビット(符号化率Fb=1/2に対応する主信号22440ビット)に送受間で既知とするパディングビットを付加(例えば、全て0でパディング)した誤り訂正符号化処理によってパリティビット(10472ビット)を生成して付加し、そのパディングビットを除去したフレーム長33286ビットの誤り訂正符号フレームを再送用に再構成する。
また、符号化率適応変更部64は、再送要求に係る符号化データを構成する誤り訂正符号フレームを先頭として連続する同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つmフレーム分の誤り訂正符号フレームについて、当該再送要求に係る符号化データの符号化率と同一の符号化率で(誤り訂正符号化部643により当該再送要求に係る符号化データについて符号化率を変更しているときは連続する他の誤り訂正符号フレームも同一の符号化率変更処理を施して)、IPパケット生成部62に出力する。
そして、符号化率適応変更部64における誤り訂正符号化部643は、表1に示す複数種の第1の符号化率のうち最低符号化率(本例では、1/2)以外の符号化率(本例では、3/5,2/3,3/4,4/5,5/6,7/8,9/10)と、表2に示す複数種の第2の符号化率(本例では、110/120,111/120,112/120,113/120,114/120,115/120,116/120,117/120)の各符号化率に応じた符号化データを生成するLDPC符号化器を有する。
誤り訂正符号化部643が有するLDPC符号化器は、本例では、誤り訂正符号を含む伝送方式はARIB STD-B44(ISDB-S3)に準拠したものとし、内符号として符号化率に応じた符号長を有するLDPC符号、外符号として固定長のBCH符号が連接した連接符号の誤り訂正符号フレームを形成する。
より具体的に、誤り訂正符号化部643が有するLDPC符号化器は、符号化率3/5,2/3,3/4,4/5,5/6,7/8,9/10については、誤り訂正符号を含む伝送方式はARIB STD-B44(ISDB-S3)に規定されるように、44880ビットからなる符号長で符号化率毎に予め定めた検査行列初期値テーブルを初期値として、ISDB-S3準拠して、符号化率110/120に応じた情報長に対応する部分行列の1の要素を、列方向に374列ごとの周期で配置して構成した検査行列を用いてLDPC符号化を行う。
一方、誤り訂正符号化部643が有する符号化器は、符号化率110/120,111/120,112/120,113/120,114/120,115/120,116/120,117/120については、それぞれ上述した表1乃至表8に示す検査行列初期値テーブルを用いるものとし、同じく、44880ビットからなる符号長で符号化率毎に予め定めた検査行列初期値テーブルを初期値として、符号化率110/120に応じた情報長に対応する部分行列の1の要素を、列方向に374列ごとの周期で配置して構成した検査行列を用いてLDPC符号化を行う。
そして、IPパケット生成部62は、インターリーブ部621により、mフレーム分の誤り訂正符号フレームを用いてインターリーブフレームを構成し、mフレーム分の誤り訂正符号フレームを縦断(直交)する方向にインターリーブ処理してIPパケット列(符号化データパケット)を生成し、符号化率を変更したときはその旨を示す通知として符号化率変更通知パケットを生成して送信後、当該符号化データパケットを受信装置5に向けて送信する。
例えば、放送伝送路経由の伝送時の符号長が44880ビットであるとき、インターリーブ部621は、放送伝送路経由の伝送とIP綱8経由の再送の符号化率が同じ(例えばFi=Fb)であれば、符号化率適応変更部64から得られる誤り訂正符号フレームのフレーム長は44880ビットとなり、IP綱8経由の再送時も放送伝送路経由の伝送と同じ符号長44880ビットに対して、1~44880のシーケンス番号を付けたIPパケットを44880パケット生成し、送出順番をインターリーブして出力する。また、インターリーブ部621は、放送伝送路経由の伝送とIP綱8経由の伝送の符号化率が異なり(Fb<Fi)、例えばIP綱8経由の再送の符号化率Fi=3/4の時には、符号化率適応変更部64から得られる誤り訂正符号フレームのフレーム長は33286ビットとなり、1~33286のシーケンス番号を付けたIPパケットを33286パケット生成し、送出順番をインターリーブして出力する。
(再送要求パケットに係る制御フロー)
図3は、本発明による一実施形態の送信サーバ6と受信装置5との間の再送要求パケットに係る制御フローを示すフローチャートである。
まず、送信サーバ6は、保存部61により、放送伝送路で伝送した符号化率Fbの符号化データについて所定時間分を更新しながら保存する(ステップS50)。放送伝送路で伝送した符号化データは、誤り訂正符号化済みのデータであり、ARIB STD-B44に記載されるLDPC符号などのブロック符号の誤り訂正符号フレームで構成される。
受信装置5は、放送伝送路で伝送されたデジタル放送を受信して復調し、符号化データのビット誤りが訂正できるか否かを試みる。伝送環境がよく、誤りなく受信できた場合や、白色雑音等の影響が誤り訂正符号により復号できる範囲であった場合、そのまま誤り訂正復号した受信データを再生可能に出力する。降雨減衰が起きるなど伝送環境が悪く、放送伝送路経由で受信した符号化データのビット誤りが訂正できない場合、受信装置5は、IP網8を通じて該当する符号化データについて再送要求パケットを生成し、送信サーバ6に再送要求を行う(ステップS51)。この再送要求パケットには、上述したように、再送要求情報、及び、パケット消失率情報が含まれる。
そこで、送信サーバ6は、再送要求処理部63により、受信装置5から再送要求パケットを受信すると(ステップS52)、再送要求パケットから、再送要求情報及びパケット消失率情報を抽出し、今回受信したパケット消失率情報を符号化率決定部65に通知するとともに、再送要求情報を基に保存部61から再送要求に係る符号化データの所在を探索してその符号化データを先頭とする連続するmフレーム分の誤り訂正符号フレームの符号化データを読み出して符号化率適応変更部64に出力させるよう保存部61を制御する(ステップS53)。
続いて、送信サーバ6は、符号化率決定部65により、パケット消失率情報を基に、消失訂正性能テーブル(表1及び表2に例示)を参照し、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率Fb以上であり、尚且つ当該IP綱8のパケット消失を訂正可能とする範囲内で最も高い符号化率Fiを決定する(ステップS54)。
そして、送信サーバ6は、符号化率決定部65の制御によってより決定した符号化率Fiと、符号化率適応変更部64における送信装置2(又は送信装置3)で生成された符号化データの符号化率Fbとの比較で、当該符号化率Fbを変更する場合と変更しない場合の切り替えを行い(ステップS55)、符号化率Fbを異なる符号化率に変更せずに再送するときは(ステップS55:No;Fb=Fi)、ステップS57に移行し、符号化率Fbを異なる符号化率に変更して再送するときは(ステップS55:Yes;Fb<Fi)、ステップS58に移行する。
符号化率適応変更部64は、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率Fbを変更して再送するときは(ステップS55:Yes;Fb<Fi)、今回受信した再送要求情報を基に保存部61から探索して読み出された再送要求に係る誤り訂正符号フレームの符号化データ(パリティビット付きの情報ビット)について、その情報ビットと送受間で既知のパディングビットを用いて異なる符号化率Fiに変更して符号化し、パディングビットを除去した誤り訂正符号フレームの符号化データを再構成してIPパケット生成部62へ出力する(ステップS56)。
一方、符号化率適応変更部64は、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率Fbを変更せずに再送するときは(ステップS55:No;Fb=Fi)、今回受信した再送要求情報を基に保存部61から探索して読み出された再送要求に係る誤り訂正符号フレームの符号化データ(パリティビット付きの情報ビット)を、そのままIPパケット生成部62へ出力する(ステップS57)。即ち、符号化率適応変更部64は、符号化率Fbを変更せずに再送するときは、放送伝送路で伝送した符号化データをそのままIPパケット生成部62へ出力する。
符号化率適応変更部64は、再送要求に係る符号化データを構成する誤り訂正符号フレームを先頭として連続する同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つmフレーム分の誤り訂正符号フレームについても、当該再送要求に係る符号化データの符号化率と同一の符号化率で(誤り訂正符号化部643により当該再送要求に係る符号化データについて符号化率を変更しているときは他の誤り訂正符号フレームも同一の符号化率変更処理を施して)、IPパケット生成部62に出力する。
最終的に、送信サーバ6は、IPパケット生成部62により、mフレーム分の誤り訂正符号フレームを用いてインターリーブフレームを構成し、mフレーム分の誤り訂正符号フレームを縦断(直交)する方向にインターリーブ処理してIPパケット列(符号化データパケット)を生成し、符号化率を変更したときはその旨を示す通知として符号化率変更通知パケットを生成して送信後、当該符号化データパケットを受信装置5に向けて送信する(ステップS58)。尚、送信サーバ6は、符号化率情報を含めて、符号化データパケットを構成し、受信装置5に向けて送信する形態とすることもできる。本例では、符号化データパケットの伝送効率を高めるために、受信装置5に対し、符号化率を変更したときに、その旨を示す通知として符号化率変更通知パケットを事前通知する形態としている。
また、送信サーバ6は、符号化率変更通知パケットの送信を複数回行う構成としてもよいし、或いは、符号化率変更通知パケットの受信確認応答を得る構成とし、受信装置5から受信確認応答を受信するまで、符号化率変更通知パケットの送信を繰り返し行う構成としてもよい。尚、IP網8経由で伝送する符号化データの符号化率が放送伝送路で伝送する符号化データの符号化率と同一の場合、受信装置5は放送伝送路での符号化率の情報のみ把握できていればよいため、送信サーバ6は、符号化率変更通知パケットの事前通知を省略してもよいが、符号化率変更の有無に関わらず、符号化データパケットの再送の度に、符号化率変更通知パケットの送信を行ってもよい。
(符号化率変更時の符号化データの生成法)
図4を参照して、符号化率変更時の符号化データを生成する例を説明する。図4(a)乃至図4(d)は、それぞれ本発明による一実施形態の送信サーバ6における符号化率適応変更部64による符号化率変更時の符号化データの生成法を概念的に示す図である。
まず、図4(a)には、放送伝送路で伝送した符号化データを示すブロック符号の誤り訂正符号フレームの構成を概念的に示している。
尚、放送伝送路で伝送する符号化データの符号化率の情報については、通常、デジタル放送内の伝送制御信号であるTMCC信号で伝送されるが、送信サーバ6からIP網8経由で、事前通知する構成としてもよい。また、上述したように、再送要求に応じて再送する符号化データの符号化率の情報については、送信サーバ6は、IPパケット生成部62により、符号化率を変更したときはその旨を示す通知として符号化率変更通知パケットを生成して送信後、又は符号化率情報を含めて、符号化データパケットを受信装置5に向けて送信する。ここで、IP網8経由で伝送する符号化データの符号化率が放送伝送路で伝送する符号化データの符号化率と同一の場合、受信装置5は放送伝送路での符号化率の情報のみ把握できていればよいため、送信サーバ6は、符号化率変更通知パケットの事前通知を省略できる。
図4(a)に示すように、放送伝送路で伝送した符号長Nビットのブロック符号における符号化データの符号化率をFbとすると、その符号化データの情報ビット(即ち、ブロック符号における主信号)はN×Fbビット、パリティはN×(1-Fb)ビットで構成される。通常、放送伝送路でブロック符号を用いる場合、放送伝送路で扱いやすいよう符号化率によらず誤り訂正符号フレームの符号長のビット数は一定であることが多い。例えばARIB STD-B44ではブロック符号であるLDPC符号の符号長Nは、LDPC符号化率に依らずN=44880ビットで一定である。ここで、IP網8経由で再送する符号化データの符号化率をFiとすると、符号化率Fiのパリティは、符号化率Fbから変更する場合にも、N×Fbビットの情報ビット(即ち、ブロック符号における主信号)を用いたまま符号長Nビットのブロック符号とすればよいため、送信装置2(又は送信装置3)で利用可能とする所定種類数の符号化率のうち、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率以上となる範囲内であればよい。
そこで、受信装置5から再送要求パケットを受信した送信サーバ6は、再送要求処理部63により、再送要求パケットに含まれるパケット消失率情報を抽出して符号化率決定部65に通知する。符号化率決定部65は、そのパケット消失率情報を基に、消失訂正性能テーブル(表1及び表2に例示)を参照して、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率以上であり、尚且つ当該IP綱8のパケット消失を訂正可能とする範囲内で最も高い符号化率(パリティビットが一番少なくなる符号化率)を決定し、符号化率適応変更部64を制御する。
符号化率適応変更部64は、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率のまま変更なしとするとき(Fb=Fi)、保存部61から読み出される図4(a)に示す再送要求に係る符号長Nビットの符号化データを、そのままIPパケット生成部62に出力する。
一方、符号化率適応変更部64は、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率Fbから異なる符号化率Fiに変更するときは(Fb<Fi)、まずは、保存部61から読み出される図4(a)に示す再送要求に係る符号長Nビットの符号化データのうちN×Fbビットの情報ビットのみを抽出する(図4(b)参照)。
続いて、符号化率適応変更部64は、誤り訂正符号化部643により、保存部61から読み出したN×Fbビットの情報ビットに、送受間で既知の値(例えば、全て0のビット)でN×(Fi-Fb)ビット分をパディングビットとして送受間で既知とする挿入位置に付加し、この情報ビットとパディングビットに対して符号化率Fiとなる誤り訂正符号化処理を施して、N×(1-Fi)ビットのパリティを生成する(図4(c)参照)。例えば、誤り訂正符号化部643は、符号化率Fiとして、N×Fbビットの情報ビットを用いながら、符号化率Fbから送信装置2(又は送信装置3)で利用可能とする異なる符号化率Fiへと変更する。
そして、誤り訂正符号化部643は、パディングビットを除去して、N×Fbビットの情報ビットにN×(1-Fi)ビットのパリティを付加した再送用の符号化データを再構成し、IPパケット生成部62に出力する(図4(d)参照)。この再構成された再送用の符号化データのフレーム長は、元の符号長Nビットよりも短くなるため、符号長Nビット分の符号化データを受信装置5に再送する場合よりも伝送効率が高くなる。
(一実施例の符号化率変更時の符号化データの生成法)
上述したように、通常、デジタル放送では選択可能な符号化率について複種類が予め規定されているが、ここでは、本伝送システム1で利用するものとして、表1及び表2に示す予め定めた8種類のLDPC符号化率とし、この8種類のLDPC符号化率に関して、例えばARIB STD-B44で規定されている検査行列及びその検査行列を形成するための検査行列初期値テーブルをそのまま利用できる。そこで、より具体的な実施例として、図5を参照して、ARIB STD-B44に準拠する表1及び表2に示すLDPC符号化率の種類数の範囲内で、符号化率変更時の符号化データの生成する例を説明する。
図5(a)乃至図5(d)に示す例は、送信サーバ6は、高度広帯域衛星デジタル放送として、2018年12月から放送が始まった変調方式が16APSK、LDPC符号化率が61/120(≒1/2)である高度広帯域衛星デジタル放送の符号化データを受信して保存部61に保持し、受信装置5から電波受信状況が悪化した場合にIP網8経由で再送要求された符号化データについて、その符号化率を109/120(≒9/10)に変更して再送する例である。
図5(a)に示すように、ここでは、放送伝送路で伝送した符号長N=44880ビットのLDPC符号における符号化データの符号化率をFb=61/120(≒1/2)とする。尚、ARIB STD-B44では、1誤り訂正符号フレームは、LDPC符号化率によらず一定の符号長44880ビットであり、集合分割法に基づくスロット単位で構成されるため、LDPC符号の符号化対象となる情報ビットは、“スロットヘッダ”、“主信号(伝送対象のデータ)”、“BCH符号パリティ”、及び“スタッフビット”が、電力拡散されたものとなっており、LDPC符号のパリティが付加されて1誤り訂正符号フレームが構成される。そして、送信サーバ6における保存部61には、図5(a)に示す1誤り訂正符号フレーム単位の符号化データが、同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を付して時系列に管理されて所定時間分を更新しながら保存される。LDPC符号化率61/120(≒1/2)におけるLDPC符号パリティは、44880×(1-61/120)=22066ビットで構成される。
そこで、受信装置5から再送要求パケットを受信した送信サーバ6は、再送要求処理部63により、再送要求パケットに含まれるパケット消失率情報を抽出して符号化率決定部65に通知し、符号化率決定部65は、そのパケット消失率情報を基に、消失訂正性能テーブル(表1及び表2に例示)を参照して、IP網8経由の再送に伝送効率の観点で最適な符号化率を決定し、符号化率適応変更部64を制御する。
符号化率適応変更部64は、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率のまま変更なしとするとき(Fb=Fi)、保存部61から読み出される図5(a)に示す再送要求に係る符号長Nビットの符号化データを、そのままIPパケット生成部62に出力する。
一方、符号化率適応変更部64は、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率Fb=61/120(≒1/2)から異なる符号化率Fi=109/120(≒9/10)に変更するときは(Fb<Fi)、まずは、保存部61から読み出される図5(a)に示す再送要求に係る符号長N=44880ビットの符号化データのうちN×Fb=22814ビットのLDPC符号の符号化対象となる情報ビット(即ち、電力拡散済みのBCH符号化ビット)のみを抽出する(図5(b)参照)。
続いて、符号化率適応変更部64は、誤り訂正符号化部643により、保存部61から読み出した22814ビットの情報ビット(即ち、電力拡散済みのBCH符号化ビット)に、送受間で既知の値(例えば、全て0のビット)でN×(Fi-Fb)=17952ビット分をパディングビットとして送受間で既知とする挿入位置に付加し、この情報ビットとパディングビットに対して符号化率Fi=109/120(≒9/10)となる誤り訂正符号化処理を施して、N×(1-Fi)=4114ビットのパリティを生成する(図5(c)参照)。
そして、誤り訂正符号化部643は、パディングビットを除去して、22814ビットの情報ビットに4114ビットのパリティを付加した再送用の符号化データ(26928ビット)を再構成し、IPパケット生成部62に出力する(図5(d)参照)。この再構成された再送用の符号化データのフレーム長26928ビットは、元の符号長44880ビットよりも短くなるため、符号長44880ビット分の符号化データを受信装置5に再送する場合よりも伝送効率が高くなる。
このようにして、送信サーバ6は、再送要求パケットを受信すると、再送要求パケットに含まれるパケット消失率情報を基に、再送要求に係る符号化データの符号化率を適応的に変更して、mフレーム分の誤り訂正符号フレームのインターリーブ処理を経て符号化データパケットを生成し、受信装置5に向けて送信する。
(符号化データパケットの生成法)
送信サーバ6は、IP網8を通じて受信装置5へ再送要求された符号化データを送信する際に、IP綱8で生じるバースト的なパケット消失にも高い訂正性能を達成するため、IPパケット生成部62により、図6を参照して後述するn×mのインターリーブフレームを構築し、識別ヘッダ、シーケンス番号、及びIPヘッダを付けたIPパケット列を生成し、シーケンス番号に従いIPパケットの送出順番をインターリーブして符号化データパケットとして受信装置5に向けて送信するのが好適である。
より具体的に、図6を参照して、送信サーバ6におけるIPパケット生成部62のIPパケットの生成法について説明する。図6(a)乃至(d)は、それぞれ本発明による一実施形態の送信サーバ6におけるIPパケット生成部62のIPパケットの生成法に関する説明図である。
まず、IPパケット生成部62は、符号化率適応変更部64から、それぞれ同一の符号化率Fiにより符号長nビットで構成される、再送要求に係る同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つ符号化データを構成する誤り訂正符号フレームを先頭として連続する同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つmフレーム分の誤り訂正符号フレームを入力し、n×mインターリーブフレームを構成する。尚、mは、固定値であるが外部から可変設定することができ、送受間で共有する値となっている。また、符号化率Fiの符号長nビットが放送伝送路で用いられた符号化率Fbの符号長Nビットから変更されていないときn=Nであり、符号化率Fbの符号長Nビットから変更されているときn<Nである。
そこで、IPパケット生成部62は、再送要求に係る符号化データとしての誤り訂正符号フレームを含むmフレームの誤り訂正符号フレームを縦方向に並べるようにして記憶部(図示略)に一時記憶する(図6(a)参照)。
続いて、IPパケット生成部62は、インターリーブ部621により、mフレームの誤り訂正符号フレームに各ビットを先頭から読み出し、生成するIPパケットのヘッダを除いたパケット長としてmビットのIPペイロードをnパケット分、生成する(図6(b)参照)。即ち、各誤り訂正符号フレームの1~nビットのうち、それぞれの同一ビット目を1ビットずつ集めmビットとしたものをIPペイロードとする。
続いて、IPパケット生成部62は、インターリーブ部621により、生成したnパケット分のIPペイロードに、インターリーブ処理に係る各インターリーブフレームを受信装置5側で識別可能とするための識別ヘッダと、各誤り訂正符号フレームにおいて何番目のビットを表すのかを特定するシーケンス番号と、IPヘッダを符号化データパケットのヘッダとして付加して、nパケット分のIPパケットを生成する(図6(c)参照)。尚、本例では、分かりやすくシーケンス番号を1~nとして表しているが、各IPパケットを受信装置5にとって誤り訂正符号フレームのどのビットを示すものであれるかを識別可能な表現形態であれば任意である。
また、図6(b)に示すように複数の誤り訂正符号フレームから生成されたnパケット分のIPペイロードで、1つのインターリーブフレームが構成される。そこで、IPパケット生成部62は、或るインターリーブフレームに対し付加する識別ヘッダに例えばID=“1”を割り当てるとすると、次のインターリーブフレームに対し付加する識別ヘッダにはID=“2”を、その次のインターリーブフレームに対し付加する識別ヘッダにはID=“3”をインクリメントしながら割り当てるようにして、識別ヘッダの値で、属するインターリーブフレームを識別できるようにする。従って、図6(c)に示すように、識別ヘッダは、1つのインターリーブフレーム内で同じ値を持つように付加される。このため、受信装置5側では、識別ヘッダを参照すれば、受信した符号化データパケットのIPペイロードが、どのインターリーブフレームに属するものであるかを識別できるようになる。
続いて、IPパケット生成部62は、インターリーブ部621により、生成したnパケット分のIPパケットを、シーケンス番号に従いIP網8への送出順番を所定規則に基づいてインターリーブして(例えばシーケンス番号の昇順で送出してもよいし、送受間で定めた別のシーケンス番号の送出順序でもよい。)、符号化データパケットとして受信装置5に向けて送信する。
尚、本実施形態におけるIPパケット生成部62は、再送要求に係る符号化データとしての誤り訂正符号フレームを含むm(mは1以上の整数)個の誤り訂正符号フレームが必要であり、換言すればインターリーブ部621はmフレーム分の誤り訂正符号フレームが揃うまでインターリーブ処理を実行することはできない。このためタイムロスが問題となる場合には、再送要求に係るnビットの誤り訂正符号フレームのうちシーケンス番号として所定ビット数分n1(<n)のみを、m(mは1以上の整数)個の誤り訂正符号フレームから抽出して、対応するシーケンス番号を保持したIPパケットの全体数を減らしてもよい。そして、m,nは、固定値であるが外部から可変設定することができるものとすることで、各IPパケットのパケット長の調整を行うことができる。
また、それぞれの誤り訂正符号フレームから1ビットずつ集めることでIPパケットを生成したが、それぞれの誤り訂正符号フレームから複数ビット集めることも可能である。逆に2フレーム分の誤り訂正符号フレームを1フレーム分として扱うことや、mビットのパケットを2n個生成することも可能である。こうして生成したnパケット分のIPペイロードを1つのインターリーブフレームとし、各インターリーブフレームを受信装置5側で識別可能とするための識別ヘッダと、個々のIPペイロードを識別するためのシーケンス番号を付与する。即ち、IP網8におけるパケットロスを予め想定して、これを緩和することができるように、誤り訂正符号フレームの各ビットの送出順を並び替える形態であれば、その他のインターリーブ技法を適用することが可能である。一般的にインターリーブ処理の対象とする期間(信号長)を長くすればするほどバースト的なパケットロスに強くなるため、伝送システム1全体で許容可能な期間内で最適なインターリーブ処理を実行するよう、インターリーブ部621を構成する。
〔受信装置〕
図7は、本発明による一実施形態の受信装置5の概略構成を示すブロック図である。受信装置5は、復調部51、誤り訂正復号部52、再送要求パケット生成部53、及びIPパケット受信部54を備える。
復調部51は、放送伝送路(衛星放送伝送路又は地上放送伝送路)経由で送信装置2(又は送信装置3)から電波放射された変調波信号を受信して復調し、この復調処理で得られる符号化データを誤り訂正復号部52に出力する。
誤り訂正復号部52は、誤り訂正符号の復号処理の事前に、復調部51から得られる符号化データの各ビットの対数尤度比(LLR:Log-likelihood ratio)を算出し、この事前対数尤度比(事前LLR)を用いて、誤り訂正符号の符号長を構成する誤り訂正符号フレームを再構成し、送信装置2(又は送信装置3)における誤り訂正符号化処理に対応する復号処理を行って受信データを生成し再生可能に外部出力する復号器である。
尚、誤り訂正復号部52は、上述した送信装置2(或いは送信装置3)で利用可能とする複数種の第1の符号化率(表1参照)と、送信サーバ6のみで利用可能とする複数種の第2の符号化率(表2参照)の各符号化率に応じた符号化データを復号するLDPC復号器を有する。即ち、この誤り訂正復号部52が有するLDPC復号器は、送信サーバ6における符号化率適応変更部65が有するLDPC符号化器によりLDPC符号化処理を施して符号化データを、上述した表1乃至表8に示す検査行列初期値テーブルに基づく検査行列を用いてLDPC復号する手段を備えている。
ここで、誤り訂正復号部52は、誤り訂正符号フレームを構成する符号化データについて誤り訂正復号の可否を判定する機能を有し、復号できると判定したときはそのまま復号して受信データを生成し、符号化データのビット誤りが訂正できず復号できないと判定した場合には、当該誤り訂正符号フレームを構成する符号化データについての再送要求情報を再送要求パケット生成部53に出力する。尚、放送伝送路を用いるデータ伝送方式において、受信装置5が復調部51経由で逐次受信して得られる誤り訂正符号フレーム単位の符号化データは、併せて伝送されるTMCC信号又は主信号に含まれる時刻情報を基に識別することができ、送信サーバ6と同様に同期信号(フレーム番号又は時刻情報)で管理することもできるため、同期信号として、この再送要求情報は再送要求する誤り訂正符号フレームを識別可能とする時刻情報を含むものとするか、又はそのフレーム番号も含むものとすればよい。
そして、誤り訂正復号部52は、再送要求パケット生成部53による当該再送要求パケットの送信に応じて送信サーバ6からIPパケット受信部54経由で受信した符号化データパケットから、再送要求に係る符号化データを抽出して、その符号化データの誤り訂正符号フレームの復号に必要な尤度比の置き換えに関する変換を行って、放送伝送路で受信した符号化データに対する補完を行う機能を有する。
そして、誤り訂正復号部52は、符号化データのビット誤りが訂正できず復号できないと判定した放送伝送路で受信した符号化データについて、IP網8経由で取得した符号化データを用いて、所定時間内に誤り訂正符号の復号処理により復号できるまで、IP網8経由での符号化データの再送要求を繰り返すように構成される。尚、誤り訂正復号部52は、所定時間内に当該復号処理により復号できないときは、ビット誤りを含む状態のまま受信データを生成する。
また、本例では、送信サーバ6が、再送する符号化データの符号化率を変更したときはその旨を示す通知として符号化率変更通知パケットを生成して送信後、符号化データパケットを受信装置5に向けて送信する。このため、誤り訂正復号部52は、符号化率の変更通知の有無を基にIP網8経由で得られた符号化データの符号化率が放送受信時と異なるか否かを判定し、符号化率に応じて適宜パディングビットを追加し、復号に必要な尤度比の置き換えに関する変換を行って、放送伝送路で受信した符号化データに対する補完を行う。
再送要求パケット生成部53は、誤り訂正復号部52により符号化データのビット誤りが訂正できず復号できないと判定したときに、その符号化データの再送を送信サーバ6に対して要求するために、当該符号化データを再送要求する旨を示す再送要求情報と、IPパケット受信部54におけるパケット消失率測定部542から得られるパケット消失率情報とを含むIPパケット形式の再送要求パケットを生成し、IP網8を経て、送信サーバ6に向けて送信する機能部である。
IPパケット受信部54は、送信サーバ6から、当該再送要求パケットに応じて再送された符号化データを格納するIPパケット列の符号化データパケットを受信して、当該再送要求に係る符号化データを取得し、誤り訂正復号部52に出力する機能部である。尚、IPパケット受信部54は、識別ヘッダとシーケンス番号を利用し、送信サーバ6側のインターリーブ部621の逆処理を行って、再送要求に応じて再送された符号化データを再構成するデインターリーブ部541と、受信した符号化データパケットの各IPパケットに付されているシーケンス番号を基に下り回線(送信側から受信側へ向かう回線)のパケット消失率を計測するパケット消失率測定部542と、を有する。
パケット消失率測定部542は、受信した符号化データパケットの各IPパケットに付されているシーケンス番号を基に下り回線(送信側から受信側へ向かう回線)のパケット消失率を逐次計測して保持し、再送要求パケット生成部53が再送要求パケットを生成する度に通知する機能部である。
(実施例:高度広帯域衛星デジタル放送の受信装置における受信制御フロー)
図8は、本発明による一実施形態の受信装置5における一実施例の受信制御フローを示すフローチャートである。ここで、受信装置5は、送信装置2と送信装置3のいずれからの信号受信であっても同様に動作することから、代表して、高度広帯域衛星デジタル放送に準じた衛星デジタル放送の受信を例に、送信装置2から電波放射された変調波信号を受信して復調・復号する受信装置5の受信制御フローを説明する。
まず、受信装置5は、復調部51により、衛星デジタル放送の放送伝送路経由で送信装置2から電波放射された変調波信号を受信して復調し、この復調処理で得られる符号化データを誤り訂正復号部52に出力する(ステップS1)。
続いて、受信装置5は、誤り訂正復号部52により、送信装置2における誤り訂正符号化処理に対応する復号処理を実行するため、まず、尤度テーブルから符号化データの各ビットの事前LLRを算出し、誤り訂正符号フレームを再構成する(ステップS2)。高度広帯域衛星デジタル放送は、符号化データの1フレーム分のビット数が44880ビットであり、誤り訂正符号化処理として、LDPC符号を内符号として利用し、BCH符号を外符号として利用するため、尤度テーブルを用いてビットが“0”である確からしさ、及びビットが“1”である確からしさを示す事前対数尤度比を算出する。
上述したように、誤り訂正復号部52は、上述した送信装置2(或いは送信装置3)で利用可能とする複数種の第1の符号化率(表1参照)と、送信サーバ6のみで利用可能とする複数種の第2の符号化率(表2参照)の各符号化率に応じた符号化データを復号する。
続いて、受信装置5は、誤り訂正復号部52により、対数尤度比によるsum-productアルゴリズムを利用したLDPC復号を実施後(ステップS3)、電力逆拡散処理を経て、BCH符号の復号処理を実施する(ステップS4)。ARIB STD-B44では外符号のBCH符号の復号処理の際にビット誤りのエラーを訂正しきれず、エラーフリーにならなかった場合、データをヌルパケットに置き換える、エラーありのフラグを付けるなどの処理を規定している。
そこで、誤り訂正復号部52は、送信装置2から得られた符号化データについて誤り訂正復号の可否を判定(具体的には、BCH符号の復号処理でビット誤りのエラーが訂正しきれなかった、もしくは復号でエラーは訂正できたが所定のBCHエラー数となったか否かを判定)する(ステップS5)。即ち、本実施例では、LDPC符号の訂正能力が不確定であること、またBCH符号の訂正能力が確定的であることに着目し、LDPC符号と連接するBCH符号のエラーフリーの有無を利用して、Hybrid ARQにおける効率的な再送要求を実現するものとしている。
ここで、誤り訂正復号部52は、送信装置2から得られた符号化データについて誤り訂正復号の可否を判定した結果、復号できると判定したときはそのまま復号して受信データを再生可能に生成し(ステップS5:No)、この場合、送信装置2から電波放射された変調波信号の受信を継続する。
一方、誤り訂正復号部52は、放送伝送路経由の送信装置2から得られた符号化データのビット誤りが訂正できず復号できないと判定した場合(BCH符号の復号処理でビット誤りのエラーが訂正しきれなかった、もしくは復号でエラーは訂正できたが所定のBCHエラー数となったと判定した場合)には(ステップS5:Yes)、その復号対象の符号化データについての再送要求情報を生成し、再送要求パケット生成部53に出力して当該符号化データの再送要求を示す再送要求パケットを生成するよう指示する。
再送要求パケット生成部53は、誤り訂正復号部52からの指示に応じて、復号対象の符号化データについて、その再送を要求する旨を示す再送要求情報と、IPパケット受信部54におけるパケット消失率測定部542から得られるパケット消失率情報とを含むIPパケット形式の再送要求パケットを生成し、IP網8を経て、送信サーバ6に向けて送信する(ステップS6)。
そこで、送信サーバ6は、受信装置5から再送要求された符号化データについて、受信装置5から得られるパケット消失率情報を基に、消失訂正性能テーブル(表1及び表2に例示)を参照し、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率以上であり、尚且つ当該IP綱8のパケット消失を訂正可能とする範囲内で最も高い符号化率で符号化データを再構成する。また、送信サーバ6は、その再送要求に係る同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つ符号化データを構成する誤り訂正符号フレームを先頭として連続する同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つmフレームの誤り訂正符号フレームを当該再送要求に係る同期信号(フレーム番号又は時刻情報)を持つ符号化データと同一の符号化率で形成してインターリーブフレームを構築し、当該インターリーブフレームをmフレームの誤り訂正符号フレームに対して直交する方向にインターリーブ処理を施してIPパケット列の符号化データパケットを生成し、IP網8を介して受信装置5に送信する。また、送信サーバ6は、符号化率を変更したときはその旨を示す通知として符号化率変更通知パケットを生成して送信後、当該符号化データパケットを送信する。
受信装置5は、IPパケット受信部54により、送信サーバ6から、当該再送要求パケットに応じて再送された復号対象の符号化データを含むmフレーム分の誤り訂正符号フレームの符号化データパケット(IPパケット列)を受信する(ステップS7)。
また、送信サーバ6は、符号化率を変更したときはその旨を示す通知として符号化率変更通知パケットを生成して送信後、当該符号化データパケットを送信する。このため、受信装置5は、IPパケット受信部54及び誤り訂正復号部52により、IP網8経由で得られた符号化データの符号化率が放送受信時と異なるか否かを判定することができる。
そして、IPパケット受信部54は、デインターリーブ部541により、IPパケットに付与される識別ヘッダとシーケンス番号を利用し、送信サーバ6側のインターリーブ部621の逆処理を行って、再送要求に応じて再送された符号化データを再構成して、誤り訂正復号部52に出力する(ステップS8)。
誤り訂正復号部52は、IP網8経由で得られた符号化データの符号化率が放送受信時と異なる場合には、符号化率が変更された誤り訂正符号フレームを復元するために、符号化率に応じた送受間で既知とするパディングビットを送受間で既知とする挿入位置に追加する(ステップS9)。一方、IP網8経由で得られた符号化データの符号化率が放送受信時と同じである場合には、パディングビットを追加する必要はない。
続いて、誤り訂正復号部52は、再送要求パケット生成部53による当該再送要求パケットの送信に応じて送信サーバ6からIPパケット受信部54経由で受信した符号化データパケットから、再送要求に係る符号化データを抽出して、その符号化データの誤り訂正符号フレームの復号に必要な尤度比の置き換えに関する変換を行って、放送伝送路で受信した符号化データに対する補完を行う(ステップS10)。IP網8は消失通信路を想定して、誤り訂正復号部52は、IP網8経由で受信できた符号化データについては正しいビットの値を確定し、IP網8の途中の通信路でパケットロス等により消失したパケットについては正しいビットの値が不明とする。より具体的には、誤り訂正復号部52は、ブロック符号の誤り訂正復号器として構成され対数尤度比を用いた復号を実施するため、IP網8経由で取得した符号化データについて、ビットの値が0である場合の対数尤度比を+∞(“0”である確からしさとして最大値)、ビットの値が1である場合の対数尤度比を-∞(“1”である確からしさとして最大値)、仮にパケットロスが生じて非達ビットが生じているときは、対数尤度比を0に置き換える。
そして、誤り訂正復号部52は、IP網8経由で伝送された符号化率に対応する検査行列でLDPC復号した後、電力逆拡散、及びBCH復号を実施して、送信装置2から得られた符号化データのビット誤りについて所定時間内で誤り訂正符号の復号処理により復号できるまで、当該符号化データの再送の要求を繰り返し(ステップS3乃至S10)、復号できた符号化データを基に受信データを生成した後、現在の受信経路がIP網8経由であるときは、放送伝送路経由の受信に受信経路を切り替え、時系列上、次の符号化データについての復調・復号処理へと移行する。ここで、誤り訂正復号部52は、BCH符号の復号処理のビット誤りのエラーがなくなるまで繰り返し再送要求を行うことで、受信データを完全に復元する構成とすることもできるが、所定時間内として制限を設けることで無限ループ処理を回避するのが好適である。尚、誤り訂正復号部52は、所定時間内に当該復号処理により復号できないときは、ビット誤りを含む状態のまま受信データを生成し、放送伝送路経由の受信に受信経路を切り替える。
ところで、再送要求パケットは、IPパケット形式で一般的に用いられる非達通知パケットを利用でき、符号化データパケットは、その非達通知パケットの応答として再送を行うものとして構成される。このため、誤り訂正復号部52では、復調部51から得られる符号化データに対して再送により得られた符号化データを置き換えて、再度、復号を実施することができ、所定時間内で受信データを復元できるまで繰り返し再送要求を行うことで、再生可能に出力することができる。
(パケット消失率の測定及び通知)
図9は、本発明による一実施形態の受信装置5における一実施例のパケット消失率の測定及び通知を説明する図である。まず、図9に示すように、受信装置5は、IPパケット受信部54により、送信サーバ6から送信されたIPパケット列の符号化データパケットを受信すると、デインターリーブ部541の機能により、IPパケット列の符号化データパケットのデインターリーブを行うために、各IPパケットに付されているシーケンス番号を基に並び替えを行って、n×mのインターリーブフレームの再構成を試みる。このとき、消失したパケット数LのIPパケットがあった場合、(n―L)×mのインターリーブフレームが構成される(ステップS21)。例えば、シーケンス番号2,n-1のIPパケットが消失していた場合、消失したパケット数L(この場合はL=2)となる。
そして、IPパケット受信部54は、パケット消失率測定部542の機能により、シーケンス番号をもとに消失したパケット数をカウントし、下り回線のパケット消失率εを算出する(ステップS22)。尚、パケット消失率εは、ε=L/n×100[%]で表される。
そして、パケット消失率測定部542は、IPパケット受信部54により符号化データパケットを受信する度に、自動的にパケット消失率εを再送要求パケット生成部53へ通知する(ステップS23)。尚、図8に示す制御フローでは、誤り訂正復号部52による所定期間の復号可否判定で復号対象の符号化データに関する再送要求を繰り返す例を説明したが、本実施形態では、所定期間内でパケット消失率測定部542から通知されるパケット消失率がIPパケットの消失がなくなった旨を示すまで、再送要求パケット生成部53により復号対象の符号化データに関する再送要求を繰り返すようにしてもよい。
また、パケット消失率測定部542は、例えば受信装置5における送信サーバ6に対する通信開始直後の再送要求時など、パケット消失率を計測できないときにはパケット消失率不明である旨を再送要求パケット生成部53へ通知する。この通知を受けた再送要求パケット生成部53は、再送要求情報とともに、パケット消失率不明である旨を示すパケット消失率情報を送信サーバ6に向けて送信する。パケット消失率不明である旨を示すパケット消失率情報を受信装置5から受信した送信サーバ6は、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率でIPパケット列の符号化データパケットを生成し、受信装置5に向けてIP網8経由で送信する。
また、例えば、符号長n=44880の符号化データに関するIPパケット列がL=11220パケットの消失がある場合、この時のパケット消失率は11220/44880×100=25%である。この場合、再送要求パケット生成部53は、再送要求情報とともに、パケット消失率25%を示すパケット消失率情報を送信サーバ6に向けて送信する。パケット消失率25%を示すパケット消失率情報を受信した送信サーバ6は、上述したように、そのパケット消失率25%を基に表1及び表2に示す消失訂正性能テーブルを参照して再送する符号化データの符号化率を決定する。そして、送信サーバ6は、符号化率の変更時には、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率を変更した符号化データに関するIPパケット列の符号化データパケットを生成し、受信装置5に向けてIP網8経由で送信する。
本実施形態の伝送システム1によれば、放送受信だけでは防げないデータの損失について、IP網8を経て受信装置5側から送信サーバ6側へ再送要求を実施し、送信サーバ6側からデータ再送を可能とすることで、受信装置5側でデータを補完することができる。特に、IP網8を経て送信サーバ6側が再送するデータをデジタル放送のブロック符号における符号化データとし、尚且つ、この符号化データをIP網8のパケット消失率に応じて再送するビット数を可能な限り少なくする符号化率に可変制御することで、再送要求回数を削減可能とし、更に、IP網8経由の伝送効率を向上させることができる。また、放送受信による誤り訂正符号とIP網8経由の伝送で利用する誤り訂正符号の双方を放送規格で規格された誤り訂正符号の符号形式と同一にすることで、受信装置5側では1つの誤り訂正復号器を用意するだけで実現でき、設備規模を小さくできる。
特に、本実施形態の伝送システム1において、送信サーバ6に対し受信装置5から再送要求された符号化データは、シーケンス番号を付与したIPパケット列の符号化データパケットとして送信サーバ6から受信装置5に再送するため、受信装置5は、受信したIPパケットのシーケンス番号を基に下り回線(送信側から受信側へ向かう回線)のパケット消失率を計測する。そして、送信サーバ6は、そのパケット消失率を基に、再送する符号化データの符号化率を可変制御する。このため、本実施形態の伝送システム1によれば、送信サーバ6及び受信装置5間の往復回線のテスト通信による推定又はユーザ設定により定めたパケット消失率を用いる場合よりも、適切に再送する符号化データの符号化率を選択することが可能となり、IP綱8経由の伝送効率をより向上させることができる。
特に、本実施形態によれば、送信サーバ6は、受信装置5から取得したIP網8のパケット消失率が、デジタル放送で予め想定されているビット誤り率よりも低い状態を示すときは、IP網8用に設計した高符号化率の誤り訂正符号を用いて受信装置5に向けてデータ再送することで、受信装置5に対して冗長なパリティビットを伝送することなくパケット消失を訂正させることができるようになる。
(符号化率に応じたパディングビットの挿入位置の可変制御)
上述した図4及び図5に示す例では、送信サーバ6における符号化率適応変更部64の誤り訂正符号化部643は、符号化率変更時の誤り訂正符号フレームにおけるパディングビットの挿入位置として、情報ビット(実施例では電力拡散済BCH符号化ビット)とパリティビットとの間としているが、符号化率によっては、LDPC符号の検査行列の特性から、その情報ビットの前後に振り分けて配置すると、誤り訂正符号の訂正性能をより引き出すことが可能であることが分かった。
そこで、本実施形態では、符号化率適応変更部64の誤り訂正符号化部643は、LDPC符号の符号化率毎に、誤り訂正符号フレームにおけるパディングビットの挿入位置を定めて送受間(送信サーバ6及び受信装置5間)で共有することで、LDPC符号の訂正性能を落とすことなく符号化率を変更する。
より具体的な例を、図10及び図11に示している。図10は、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率Fb=1/2から3/5~9/10に変更する、符号化率に応じたパディングビットの挿入位置を示す図であり、図11は、その対応表である。
即ち、図10及び図11には、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率Fb=1/2から、符号化率Fi=3/5,2/3,3/4,4/5,5/6,7/8,9/10に変更してIP網8経由で符号化データを再送する際のパディングビットの挿入位置を示している。尚、図10に示す例では、挿入するパディングビットは全て0としている。そして、パディングビットの挿入位置として、情報ビットiの前段に割り当てる前段パディングビットPd_fと、情報ビットiの後段に割り当てる後段パディングビットPd_rを設定し、符号化率Fi毎にどのように振り分けるかを定めている。
また、図12は、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率Fb=1/2から変更する110/120~117/120の符号化率に応じたパディングビットの挿入位置を示す図であり、図13は、その対応表である。
即ち、図12及び図13には、放送伝送路で伝送した符号化データの符号化率Fb=1/2から、符号化率Fi=110/120,111/120,112/120,113/120,114/120,115/120,116/120,117/120に変更してIP網8経由で符号化データを再送する際のパディングビットの挿入位置を示している。尚、図12に示す例では、挿入するパディングビットは全て0としている。そして、パディングビットの挿入位置として、情報ビットiの前段に割り当てる前段パディングビットPd_fと、情報ビットiの後段に割り当てる後段パディングビットPd_rを設定し、符号化率Fi毎にどのように振り分けるかを定めている。
尚、図10乃至図13では、符号化率Fb=1/2から別の符号化率Fiに変更するときのビット数を示しているが、他の符号化率Fb(例えば3/5)から、別の符号化率Fiに変更するときも、前段パディングビットPd_f及び後段パディングビットPd_rの振り分け方法は同様であり、更に前段パディングビットPd_fのビット数も符号化率毎の固定値として、符号化率に応じて後段パディングビットPd_rのビット数を調節すればよい。
ただし、図10乃至図13に示す例は、符号化率Fb=1/2から別の符号化率Fiに変更するときを基準に消失訂正性能の優れたパディングビットの挿入位置を求めた例であることから、符号化率Fbから別の符号化率Fiに変更するときの全ての組み合わせで、前段パディングビットPd_f及び後段パディングビットPd_rの振り分け方法、及び前段パディングビットPd_fの符号化率毎の固定値とするビット数を更に最適化して定めてもよい。
(パディング位置のパターンによる消失訂正性能の評価法)
ここで、図14乃至図16を参照して、符号化率Fb=1/2から別の符号化率Fiに変更するときを基準に消失訂正性能の優れたパディングビットの挿入位置を求めるシミュレーションについて説明する。図14は、本発明に係るパディングビットのパディング位置のパターンによる消失訂正性能の評価法を例示する図である。また、図15及び図16は、本発明に係るパディングビットのパディング位置のパターンによる消失訂正性能の評価として、それぞれ符号化率1/2から3/4に変更する際の特性、及び符号化率1/2から110/120に変更する際の特性を示す図である。
図14に示すように、まず、所定数のパディング位置のパターンを用意する(ステップS31)。ここでは、図12に示すように、符号化率1/2から3/4に変更する場合のP0-P28の29通りのパディング位置のパターンを示している。
即ち、シミュレーション条件は、情報ビットi=22814ビット、全体のパディングビットPd(Pd_f+Pd_r)=10472ビット、パリティビットp=11594ビットとし、そのパディングビットPdを374ビット単位に区切り、誤り訂正符号フレーム(LDPCフレーム)の先頭に位置する前段パディングビットPd_f、情報ビットの後に位置する後段パディングビットPd_rについて配置する位置を調整した。
そして、情報ビットi=22814ビット、前段パディングビットPd_f=0ビット、後段パディングビットPd_r=10472ビット、パリティビットp=11594ビットの順に配置したケースをP0、前段パディングビットPd_f=374ビット、情報ビットi=22814ビット、後段パディングビットPd_r=10098ビット、パリティビットp=11594ビットの順に配置したケースをP1と定義し、同様にP28まで定義する。
次に、各パディング位置P0-P28のパターン毎に、パディングビット(前段パディングビットPd_f及び後段パディングビットPd_r)を変更しながら、インターリーブフレームを構成し、インターリーブした符号化データパケットの伝送を、バースト消失伝送路を模擬してビット誤り率(BER)を計算し、BERを低減できる位置を求めるシミュレーションを実行する(ステップS32)。尚、模擬したバースト消失伝送路は、パケット消失率を可変させ、設定したパケット消失率に応じたパケット数を8パケット単位で消失させするものとした。また、送受信間でインターリーブ/デインターリーブを施す伝送を模擬することで、連続的なパケット消失をランダム化した。
シミュレーションでは、各パディング位置P0-P28のパターン毎に、デインターリーブ後にパディングビットを挿入し、誤り訂正復号により消失訂正できるまで同パターンでの再送を行うことを想定して繰り返し、その消失訂正後のビット誤り率(BER)を測定した。
図15には、符号化率1/2から3/4に変更する場合のパケット消失率30%に設定したときの各パディング位置P=P0-P28のパターンのBER計算結果を示している。図15において、P2のとき最もBERが小さくなったため、符号化率1/2から3/4に変更する場合の消失訂正性能を引き出すことが可能なパディング位置はパターンP2と決定した。同様の計算を他の符号化率に対しても行い、図10及び図11に示すように、パディングビットの挿入位置を符号化率ごとに決定した。
また、符号化率110/120,111/120,112/120,113/120,114/120,115/120,116/120,117/120についても同様にシミュレーションを実施し、訂正性能を引き出すことが可能なパディング位置を計算した。図16には、符号化率1/2から符号化率110/120の場合のパケット消失率11.6%に設定したときの各パディング位置P=P0-P49のパターンのBER計算結果を示している。符号化率110/120~117/120の場合は、図16に例示するように、訂正性能を引き出すことが可能なパディング位置が周期的に表れる結果となり、その中でも最もBERが低減できる位置を求めた。図16において、P17のとき最もBERが小さくなったため、符号化率1/2から符号化率110/120の場合の消失訂正性能を引き出すことが可能なパディング位置はパターンP17と決定した。同様の計算を他の符号化率に対しても行い、図12及び図13に示すパディング位置を符号化率ごとに決定した。
このようにして、符号化率Fb=1/2から別の符号化率Fiに変更するときを基準に消失訂正性能の優れたパディングビットの挿入位置を求めることができ、更には、符号化率Fbから別の符号化率Fiに変更するときの全ての組み合わせで、前段パディングビットPd_f及び後段パディングビットPd_rの振り分け方法、及び前段パディングビットPd_fの固定値のビット数を最適化して定めることもできる。
そして、図15及び図16に例示する評価結果からも理解されるように、送信サーバ6における符号化率適応変更部64の誤り訂正符号化部643は、符号化率変更時の誤り訂正符号フレームにおけるパディングビットの挿入位置として、符号化率に応じて情報ビットの前後に振り分けて配置することにより、誤り訂正符号の訂正性能をより引き出すことが可能となる。
〔変形例の受信装置〕
上述した図7に示す一実施形態の受信装置5は、パケット消失率を計測する好適例を説明したが、図17に示す変形例の受信装置5のように、送信サーバ6及び受信装置5間の往復回線のテスト通信による推定又はユーザ設定により定めたパケット消失率を設定する構成とする場合でも、図10乃至図16を参照して説明した「符号化率に応じてパディングビットの挿入位置を可変制御」することができる。
図17は、本発明による変形例の受信装置5の概略構成を示すブロック図である。受信装置5は、復調部51、誤り訂正復号部52、再送要求パケット生成部53、IPパケット受信部54、及びパケット消失率設定部55を備える。尚、図7に示す受信装置5と同様の構成要素には同一の参照番号を付している。
図17に示す変形例の受信装置5は、復調部51、及び誤り訂正復号部52については、図7に示すものと同様に動作するため更なる説明は省略するが、IPパケット受信部54に図7に示すパケット消失率測定部542を設けていない代わりに、パケット消失率情報を設定するパケット消失率設定部55を備えている点で相違している。
IPパケット受信部54は、送信サーバ6から、当該再送要求パケットに応じて再送された符号化データを格納するIPパケット列の符号化データパケットを受信して、当該再送要求に係る符号化データを取得し、誤り訂正復号部52に出力する機能部である。尚、IPパケット受信部54は、識別ヘッダとシーケンス番号を利用し、送信サーバ6側のインターリーブ部621の逆処理を行って、再送要求に応じて再送された符号化データを再構成するデインターリーブ部541を有する。
パケット消失率設定部55は、送信サーバ6とのテスト通信を試みて、送信サーバ6との通信に係る遅延と、送信サーバ6との通信に係るパケットロスの発生量のうちいずれか一方、又は双方を所定期間単位で予め計測して、逐次、その通信回線の遅延とパケットロスの発生量のうちいずれか一方、又は双方を基にパケット消失率を推定するか、或いはユーザによる指定により事前にパケット消失率を決定してパケット消失率情報として再送要求パケット生成部53に設定する機能部である。
尚、通信回線の遅延は、受信装置5から送信サーバ6に向けて送信した再送要求パケットの送信時刻と、これに対応して送信サーバ6から再送された符号化データパケットの受信時刻との時間差で推定される伝送遅延を示すものであり、伝送遅延が大きいほどパケット消失率が大きくなる傾向にあることを利用して、伝送遅延と本発明に係るパケット消失率とを予め対応付けた変換テーブル(図示略)を保持することで、本発明に係るパケット消失率を推定することができる。
また、パケットロスの発生量は、再送要求パケットの送信時刻から所定時間経過しても送信サーバ6から対応する符号化データパケットの受信ができなかった場合にパケットロスが生じたとみなし、所定期間単位の通信実績を基に計測したものであり、このパケットロスの発生量から直接的にパケット消失率を算出することもできるし、上記の送信サーバ6との通信に係る伝送遅延も考量して、パケットロスの発生量及び伝送遅延と、本発明に係るパケット消失率とを予め対応付けた変換テーブル(図示略)を保持することで、本発明に係るパケット消失率を推定することができる。
即ち、図17に示す変形例の受信装置5においても、送信サーバ6に対し再送要求パケットで再送要求情報とともにパケット消失率情報を送信することができる。そして、図17に示す変形例の受信装置5においても、誤り訂正復号部52は、図7に示す受信装置5と同様に動作するため、送信サーバ6からの再送により得られた符号化データの符号化率が放送受信時と異なる場合には、符号化率に応じた送受間で既知とするパディングビットを送受間で既知とする挿入位置に追加することができる。
従って、図17に示す変形例の受信装置5においても、上述した送信サーバ6とともに、図10乃至図16を参照して説明した「符号化率に応じてパディングビットの挿入位置を可変制御」を行うものとすることができる。
上述した実施例に関して、送信サーバ6として機能するコンピュータの各手段を機能させるためのプログラムを好適に用いることができる。また、受信装置5として機能するコンピュータの各手段を機能させるためのプログラムを好適に用いることができる。具体的には、各手段を制御するための制御部をコンピュータ内の中央演算処理装置(CPU)で構成でき、且つ、各手段を動作させるのに必要となるプログラムを適宜記憶する記憶部を少なくとも1つのメモリで構成させることができる。即ち、そのようなコンピュータに、CPUによって該プログラムを実行させることにより、上述した各手段の有する機能を実現させることができる。更に、各手段の有する機能を実現させるためのプログラムを、前述の記憶部(メモリ)の所定の領域に格納させることができる。そのような記憶部は、装置内部のRAM又はROMなどで構成させることができ、或いは又、外部記憶装置(例えば、ハードディスク)で構成させることもできる。また、そのようなプログラムは、コンピュータで利用されるOS上のソフトウェア(ROM又は外部記憶装置に格納される)の一部で構成させることができる。更に、そのようなコンピュータに、各手段として機能させるためのプログラムは、コンピュータが読取り可能な記録媒体に記録することができる。また、上述した各手段をハードウェア又はソフトウェアの一部として構成させ、各々を組み合わせて実現させることもできる。
上述した一実施形態の実施例、応用例、変形例については代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換することができることは当業者に明らかである。例えば、送信サーバ6は、送信装置2(又は送信装置3)から直接的に符号化データを入力する例を説明したが、中継放送等では、送信装置2(又は送信装置3)から一旦、受信機により変調波を受信して復調し、この復調して得られる符号化データを入力する形態としてもよい。従って、本発明は、上述の実施例によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。