JP2021034249A - 電気化学セル、電気化学反応セルスタック - Google Patents

電気化学セル、電気化学反応セルスタック Download PDF

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Abstract

【課題】電気化学セルの性能を向上させる。
【解決手段】電気化学セルは、固体酸化物を含む電解質層と、電解質層の第1の方向の一方側に配置された空気極と、電解質層の第1の方向の他方側に配置された燃料極であって、Niを含む金属と、イオン伝導性酸化物とを含む燃料極とを備える。電気化学セルは、第1の方向に平行な少なくとも1つの断面において、燃料極における電解質層との界面からの距離が10μmまでの領域である特定領域について、特定領域の面積に対するイオン伝導性酸化物の面積の割合である気孔面積率をSa%とし、特定領域の面積に対する特定領域に存在する各気孔の面積の合計の割合である気孔面積率をSb%とし、特定領域における単位面積あたりの気孔の個数をN個/μmとしたとき、式(1):Sa≧30と、式(2):Sb/N≦54とを満たす。
【選択図】図12

Description

本明細書によって開示される技術は、電気化学セルに関する。
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の種類の1つとして、固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という。)が知られている。SOFCの構成単位である燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という。)は、固体酸化物を含む電解質層と、電解質層に対して所定の方向(以下、「第1の方向」という。)の一方側に配置された空気極と、電解質層に対して第1の方向の他方側に配置された燃料極とを備える。
単セルを構成する燃料極として、電子伝導性物質とイオン伝導性酸化物とを含む多孔質な層(以下、「活性層」という。)を有する燃料極が用いられることがある。具体的には、電子伝導性物質として、Ni(ニッケル)を含む金属が用いられ、イオン伝導性酸化物として、例えば、酸素イオン伝導性を有するイオン伝導性酸化物であるYSZ(イットリア安定化ジルコニア)が用いられることがある。活性層は、主として、電解質層から活性層に供給される酸素イオンと、燃料極に面する燃料室に供給される燃料ガスに含まれる水素等とを反応させて、電子と水蒸気とを生成する機能を発揮する。
さらに、上記のSOFCは逆向きに通電することにより固体酸化物形電気分解セル(以下、「SOEC」という。)として用いることが可能であり、再生可能エネルギーの導入過程で課題となっている余剰電力などを用いて水蒸気を水素に変換する形態の蓄エネルギー技術として用いられることも知られている。この場合には、活性層は、主として、燃料極に面する燃料室に供給される燃料ガスに含まれる水蒸気を反応させて、活性層から電解質層に供給される酸素イオンと水素とを生成する機能を発揮する。
特開2019−091584号公報
上記の構成であるSOFCにおいては、燃料極に存在する金属(Niを含む金属。以下、単に「金属」という。)が凝集し、これにより電気化学セルの性能が低下することがある。
燃料極に存在するイオン伝導性酸化物は、燃料極に存在する金属(Niを含む金属)の移動を抑制する障害物として機能する。イオン伝導性酸化物の断面積が大きいほど、イオン伝導性酸化物は、より効果的に金属の移動を抑制する。イオン伝導性酸化物がこのように障害物として機能することにより、金属の凝集は抑制され、ひいては単セルの性能の低下は抑制される。従って、上記の構成であるSOFCにおいては、第1の方向に平行な断面において、燃料極に存在する各イオン伝導性酸化物の断面積の合計が大きいほど、金属の凝集は抑制され、これにより単セルの性能劣化を抑制することができる。
しかしながら、燃料極に存在する各イオン伝導性酸化物の断面積の合計を大きくするだけでは、単セルの性能劣化を十分に抑制することができない、という課題がある。
なお、このような課題は、酸素分圧が高い条件下ほど、Niの凝集が進行しやすいことが知られているが、SOECの構成単位である電解単セルでは、燃料極側に水蒸気が供給されるため、高酸素分圧となりやすく、Niの凝集が進みやすいことから、より大きな課題となる。なお、本明細書では、燃料電池単セルと電解単セルとをまとめて電気化学セルと呼ぶ。
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本明細書に開示される電気化学セルは、固体酸化物を含む電解質層と、電解質層の第1の方向の一方側に配置された空気極と、電解質層の第1の方向の他方側に配置された燃料極であって、Niを含む金属(以下、単に「金属」という。)と、イオン伝導性酸化物とを含む燃料極と、を備える電気化学セルであって、第1の方向に平行な少なくとも1つの断面において、燃料極における電解質層との界面からの距離が10μmまでの領域である特定領域について、特定領域の面積に対する各イオン伝導性酸化物の面積の合計の割合である面積率をSa%とし、特定領域の面積に対する特定領域に存在する各気孔の面積の合計の割合である気孔面積率をSb%とし、特定領域における単位面積あたりの気孔の個数をN個/μmとしたとき、式(1):Sa≧30と、式(2):Sb/N≦54と、を満たす。本願発明者は、上記の式(1)および式(2)を満たすと、電気化学セルの性能の低下を抑制することができることを新たに見出した。上記構成により当該効果が得られる理由は、必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。
上記の式(1)または式(2)を満たさない電気化学セルにおいては、燃料極に存在する上記金属(以下、単に「金属」という。)が凝集し、これにより電気化学セルの性能が低下することがある。
イオン伝導性酸化物は、金属の移動を抑制する障害物として機能する。イオン伝導性酸化物の断面積が大きいほど、イオン伝導性酸化物は、より効果的に金属の移動を抑制する。イオン伝導性酸化物がこのように障害物として機能することにより、金属の凝集は抑制され、ひいては電気化学セルの性能の低下は抑制される。従って、Sa(特定領域の面積に対する各イオン伝導性酸化物の面積の合計の割合)が大きいほど、金属の凝集は抑制され、ひいては電気化学セルの性能の低下は抑制される。
また、燃料極の気孔の断面積の合計が小さいほど、金属の凝集は抑制され、ひいては電気化学セルの性能の低下は抑制される。従って、Sb(特定領域の面積に対する特定領域に存在する各気孔の面積の合計の割合である気孔面積率)の値が小さいほど、金属の凝集は抑制され、ひいては電気化学セルの性能の低下は抑制される。また、N(燃料極の特定領域における単位面積あたりの気孔の個数)の値が小さいほど、気孔の断面積(特に、ガスの流れ方向に直交する方向の幅)が大きい蓋然性が高い。気孔の断面積が大きいほど、金属が移動しやすいので、金属の凝集は生じやすい。そのため、電気化学セルの性能の低下は生じやすい。従って、Nの値が大きいほど、金属の凝集は抑制され、電気化学セルの性能の低下は抑制されやすい。
本願発明者は、Sbに加えて、Nを考慮した指標Sb/Nに注目し、Saの値が比較的大きく、かつSb/Nの値が比較的小さい構成を採用すれば、電気化学セルの性能の低下を抑制することができることを新たに見出したのである。
(2)上記電気化学セルにおいて、特定領域における気孔の平均径Dは、0.50μm以下である構成としてもよい。本電気化学セルによれば、特定領域における気孔の平均径Dが十分小さいことにより、金属の凝集をより効果的に抑制することができ、電気化学セルの性能の低下をより効果的に抑制することができる。
(3)上記電気化学セルにおいて、特定領域において単位面積あたりの前記金属と前記イオン伝導性酸化物と前記気孔が交わる三相界面の個数をn個/μmとしたとき、式(3):n/N≦2.8を満たす構成としてもよい。本電気化学セルによれば、当該(3):n/N≦2.8を満たす。本願発明者は、上記の式(3):n/N≦2.8を満たすと、電気化学セルの性能の低下をより効果的に抑制することができることを新たに見出した。上記構成により当該効果が得られる理由は、必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。
金属の平均径が大きいほど、電極反応場として機能する上記三相界面の個数が少なくなり、金属(金属の粒子)の表面積は小さくなるため、気相に曝される金属の面積が小さくなり、金属の表面拡散が起こりにくくなることから、金属の凝集は抑制され、電気化学セルの性能の低下は抑制されやすい。従って、n(特定領域における単位面積あたりの三相界面の個数)の値が小さいほど、金属の凝集は抑制され、電気化学セルの性能の低下は抑制されやすい。また、上述した通り、N(特定領域における単位面積あたりの気孔の個数)が大きいほど、金属の凝集は生じやすく、そのため、電気化学セルの性能の低下は生じやすい。本願発明者は、nに加えて、Nを考慮した指標n/Nに注目し、このn/Nの値が比較的小さい構成を採用すれば、電気化学セルの性能の低下をより効果的に抑制することができることを新たに見出したのである。
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電気化学セル(燃料電池単セルまたは電解単セル)、複数の電気化学セルを備える電気化学反応セルスタック(燃料電池スタックまたは電解セルスタック)、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図である。 図1のII−IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図である。 図1のIII−IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。 図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図である。 図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。 単セル110の一部分(図5のX1部)のYZ断面構成を拡大して示す説明図である。 燃料極116の活性層320の詳細構成(図6のX2部のYZ断面構成)を拡大して示す説明図である。 本実施形態の燃料電池スタック100の構成と同様の構成である電解セルスタック100AのXZ断面構成を示す説明図である。 図8に示す電解セルスタック100AのYZ断面構成を示す説明図である。 図8に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの電解セル単位102AのXZ断面構成を示す説明図である。 図9に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの電解セル単位102AのYZ断面構成を示す説明図である。 性能評価結果を示す説明図である。
A.実施形態:
A−1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1のII−IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1のIII−IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図4以降についても同様である。
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)発電単位102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、エンドプレート104,106)のZ軸方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿通されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、図2および図3に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。図1および図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102に供給するガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
また、図1および図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス導入マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、図2に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、図3に示すように、燃料ガス導入マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス導入マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
(発電単位102の構成)
図4は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図5は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
図4および図5に示すように、発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ軸方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿通される連通孔108に対応する孔が形成されている。
インターコネクタ150は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(図2および図3参照)。
単セル110は、電解質層112と、電解質層112の上側に配置された空気極(カソード)114と、電解質層112の下側に配置された燃料極(アノード)116と、電解質層112と空気極114との間に配置される中間層180とを備える。なお、上側は、特許請求の範囲における第1の方向の一方側に相当し、下側は、特許請求の範囲における第1の方向の他方側に相当する。本実施形態では、燃料極116の厚さ(上下方向のサイズ)が空気極114や電解質層112の厚さより厚く、燃料極116が単セル110を構成する他の層を支持している。すなわち、本実施形態の単セル110は、燃料極支持型の単セルである。
電解質層112は、Z軸方向視で略矩形の平板形状部材であり、緻密な(気孔率が低い)層である。電解質層112は、例えばYSZ(イットリア安定化ジルコニア)等の固体酸化物を含んでいる。このように、本実施形態の単セル110は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
空気極114は、Z軸方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、多孔質な(電解質層112より気孔率が高い)層である。空気極114は、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄))により形成されている。
燃料極116は、Z軸方向視で電解質層112と略同一の大きさの略矩形の平板形状部材であり、多孔質な(電解質層112より気孔率が高い)層である。図6は、単セル110の一部分(図5のX1部)のYZ断面構成を拡大して示す説明図である。図6に示すように、燃料極116は、燃料極116における下側の表面を構成する支持層310と、支持層310と電解質層112との間に配置された活性層320とを備える。本実施形態では、活性層320は電解質層112に隣接しており、支持層310は活性層320に隣接している。
活性層320は、主として、電解質層112から供給される酸素イオンと燃料ガスFGに含まれる水素等とを反応させて、電子と水蒸気とを生成する機能を発揮する。活性層320は、電子伝導性物質であるNiと、酸素イオン伝導性を有する物質であるイオン伝導性酸化物(例えば、YSZ)とを含んでいる。活性層320の厚さは、例えば10μm〜40μmである。支持層310は、主として、活性層320と電解質層112と空気極114とを支持する機能を発揮する。支持層310の厚さは、例えば200μm〜1000μmである。本実施形態では、支持層310も、電子伝導性物質であるNiと、酸素イオン伝導性を有する物質であるイオン伝導性酸化物(例えば、YSZ)とを含んでいる。
中間層180は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、SDC、GDC、LDC(ランタンドープセリア)、YDC(イットリウムドープセリア)等のイオン伝導性を有する固体酸化物により形成されている。中間層180は、燃料電池スタック100の運転動作時のような高温条件下において、空気極114に含まれるSrと電解質層112に含まれる遷移元素(例えば、Zr)とが反応して高抵抗層(例えばSrZrO)が形成されることを抑制する反応防止層として機能する。なお、中間層180は、イオン伝導性を有するため、空気極114において酸化剤ガスOGに含まれる酸素分子のイオン化反応により生成された酸化物イオンを電解質層112へと移動させる機能も有する。
図4および図5に示すように、セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。
空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス導入マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102におけるインターコネクタ対向部146は、下側のエンドプレート106に接触している。燃料極側集電体144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)との電気的接続が良好に維持される。
空気極側集電体134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、複数の略四角柱状の集電体要素から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102における空気極側集電体134は、上側のエンドプレート104に接触している。空気極側集電体134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ150(またはエンドプレート104)とを電気的に接続する。なお、空気極側集電体134とインターコネクタ150とが一体の部材として構成されていてもよい。また、空気極側集電体134が導電性のコートによって覆われていてもよく、また、空気極114と空気極側集電体134との間に両者を接合する導電性の接合層が介在していてもよい。
A−2.燃料電池スタック100の動作:
図2および図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、図3および図5に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、図2および図4に示すように、酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、図3および図5に示すように、燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
A−3.燃料極116の活性層320の詳細構成:
次に、燃料極116の活性層320の構成について、さらに詳細に説明する。図7は、燃料極116の活性層320の詳細構成を示す説明図である。図7には、活性層320の一部分(図6のX2部)のYZ断面構成が拡大して示されている。
上述したように、燃料極116の活性層320は、電子伝導性物質であるNiと、酸素イオン伝導性を有するイオン伝導性酸化物であるYSZとを含んでいる。図7には、活性層320に含まれる電子伝導性物質の粒子としてのNi粒子Pnと、酸素イオン伝導性物質の粒子としてのYSZ粒子Pyと、気孔POと、Ni粒子PnとYSZ粒子Pyと気孔POとが交わる三相界面Iとが模式的に示されている。図6には、燃料極116における電解質層112との界面からの距離が10μmである位置Baが示されている。
本実施形態の燃料電池スタック100は、図7(または図5、または図6)に示す断面において、燃料極116における電解質層112との界面からの距離が10μmまでの領域である特定領域SAについて、特定領域SAの面積に対する各イオン伝導性酸化物(本実施形態では、YSZ粒子Py)の面積の合計の割合である面積率をSa(以下、単に「特定領域SAのイオン伝導性酸化物の面積率Sa」ともいう。)%とし、特定領域SAの面積に対する特定領域SAに存在する各気孔の面積の合計の割合(以下、「特定領域SAの気孔面積率」ともいう。)をSb%とし、特定領域SAにおける単位面積あたりの気孔の個数をN個/μmとしたとき、式(1):Sa≧30と、式(2):Sb/N≦54とを満たしている。なお、本実施形態では、図7(または図5、または図6)に示す断面は、特許請求の範囲における「第1の方向に平行な少なくとも1つの断面」に相当する。
本実施形態の燃料電池スタック100では、特定領域SAにおける気孔の平均径Dは、0.50μm以下である。
本実施形態の燃料電池スタック100は、特定領域SAにおいて単位面積あたりの三相界面(Ni粒子PnとYSZ粒子Pyと気孔POとが交わる三相界面)Iの個数をn個/μmとしたとき、式(3):n/N≦2.8を満たしている。
A−4.燃料電池スタック100の製造方法:
本実施形態における燃料電池スタック100の製造方法は、例えば以下の通りである。
(燃料極支持層用グリーンシートの作製)
NiO粉末とYSZ粉末との混合粉末に対して、造孔材である有機ビーズと、ブチラール樹脂と、可塑剤であるDOPと、分散剤と、トルエンとエタノールとの混合溶剤とを加え、ボールミルにて混合してスラリーを調製する。有機ビーズは、例えば、ポリメタクリル酸メチルやポリスチレンなどの高分子により形成された球状粒子である。得られたスラリーをドクターブレード法により薄膜化して、所定の厚さ(例えば200μm〜300μm)の燃料極支持層用グリーンシートを作製する。なお、燃料極支持層用グリーンシートを作製する際のNiO粉末とYSZ粉末との混合比率は、その性能を満足する限りにおいて適宜設定されればよい。
(燃料極活性層用グリーンシートの作製)
NiO粉末とYSZ粉末との混合粉末に対して、ブチラール樹脂と、可塑剤であるDOPと、分散剤と、トルエンとエタノールとの混合溶剤とを加え、ボールミルにて混合してスラリーを調製する。なお、上述した燃料極支持層用グリーンシートの作製方法と同様に、スラリーの調整の際に、造孔材としての有機ビーズを加えてもよい。得られたスラリーをドクターブレード法により薄膜化して、所定の厚さ(例えば10μm〜40μm)の燃料極活性層用グリーンシートを作製する。なお、燃料極活性層用グリーンシートを作製する際のNiO粉末とYSZ粉末との混合比率は、その性能を満足する限りにおいて適宜設定されればよい。
(電解質層用グリーンシートの作製)
YSZ粉末に対して、ブチラール樹脂と、可塑剤であるDOPと、分散剤と、トルエンとエタノールとの混合溶剤とを加え、ボールミルにて混合してスラリーを調整する。得られたスラリーをドクターブレード法により薄膜化して、所定の厚さ(例えば10μm)の電解質層用グリーンシートを作製する。
(電解質層112と燃料極116との積層体の作製)
燃料極支持層用グリーンシートと燃料極活性層用グリーンシートと電解質層用グリーンシートとを貼り付けて所定の温度(例えば約280℃)で脱脂する。さらに、脱脂後のグリーンシートの積層体を所定の温度(例えば約1350℃)で焼成する。これにより、電解質層112と燃料極116(活性層320および支持層310)との積層体を得る。
(中間層180の形成)
GDC粉末に、有機バインダとしてのポリビニルアルコールと、有機溶媒としてのブチルカルビトールとを加えて混合し、粘度を調整して中間層用ペーストを調製する。調整された中間層用ペーストを、上述した電解質層112と燃料極116との積層体における電解質層112側の表面に例えばスクリーン印刷によって塗布し、例えば1200℃にて焼成を行う。これにより、中間層180が形成される。
(空気極114の形成)
LSCF粉末と、有機バインダとしてのポリビニルアルコールと、有機溶媒としてのブチルカルビトールとを混合し、粘度を調整して、空気極用ペーストを調製する。調整された空気極用ペーストを、上述した中間層180と電解質層112と燃料極116との積層体における中間層180の表面に、例えばスクリーン印刷によって塗布して乾燥させ、空気極用ペーストが塗布された積層体を所定の焼成温度(例えば1100℃)で焼成する。これにより空気極114が形成され、燃料極116と電解質層112と空気極114とを備える単セル110が作製される。
上述した方法に従い複数の単セル110を作製した後、組み立て工程(例えば、各単セル110にセパレータ120等の他の部材を取り付ける工程、複数の単セル110を積層する工程、ボルト22により締結する工程等)を行う。以上により、燃料電池スタック100の製造が完了する。なお、その後、燃料電池スタック100を発電運転可能な状態とするため、燃料極116の活性層320を還元する(すなわち、活性層320に含まれるNiOをNiに還元する)還元工程が実行される。還元工程は、例えば、燃料極116を、所定の温度の水素雰囲気に所定の時間だけ晒すことにより実現される。なお、還元工程に利用される還元ガスは、水素に限定されず、メタンガス等の他のガスでもよい。以上により、発電運転可能な状態の燃料電池スタック100の製造が完了する。
A−5.特定領域SAの各特性の調整方法:
上述した方法に従い燃料電池スタック100を製造する際に、燃料電池スタック100を構成する燃料極116の特定領域SA(図7に示す断面において、燃料極116における電解質層112との界面からの距離が10μmまでの領域)の各特性を、例えば以下のように調整することができる。なお、特定領域SAの各特性の特定方法は、後述の「A−7.特定領域SAの各特性の特定方法」において説明する。
(特定領域SAのイオン伝導性酸化物の面積率Sa)
特定領域SAのイオン伝導性酸化物(本実施形態では、YSZ粒子Py)の面積率(特定領域SAの面積に対する各イオン伝導性酸化物の面積の合計の割合)Saの調整は、例えば、燃料極活性層用グリーンシートを作製するためのスラリーを調製する際に、YSZ粒子Pyの添加量を調整することにより、実現することができる。具体的には、燃料極活性層用グリーンシートを作製するためのスラリーを調製する際に、YSZ粒子Pyの添加量を多くするほど、特定領域SAのイオン伝導性酸化物の面積率Saは大きくなる。
(特定領域SAの気孔面積率Sb)
燃料極116の特定領域SAにおける気孔面積率(特定領域SAの面積に対する特定領域SAに存在する各気孔の面積の合計の割合)Sbの調整は、上記
YSZ粒子Pyの添加量を調整することにより増減するが、更なるパラメータとして、例えば、燃料極活性層用グリーンシートを作製するためのスラリーを調製する際に、造孔材の添加量を調整することにより、実現することができる。具体的には、燃料極活性層用グリーンシートを作製するためのスラリーを調製する際に、造孔材の添加量を多くするほど、特定領域SAの気孔面積率Sは高くなる。
(特定領域SAにおける単位面積あたりの気孔の個数N)
特定領域SAにおける単位面積あたりの気孔の個数Nの調整は、上記のYSZ粒子Pyの添加量、造孔材の添加量により増減するが、更なるパラメータと
して、例えば、燃料極活性層用グリーンシートを作製するためのスラリーを調製する際に、造孔材の粒子径を調整することにより、実現することができる。具体的には、燃料極活性層用グリーンシートを作製するためのスラリーを調製する際に、造孔材の粒子径を小さくするほど、特定領域SAにおける単位面積あたりの気孔の個数Nは多くなる。
(特定領域SAにおける気孔の平均径D)
特定領域SAにおける気孔の平均径Dの調整は、上記のYSZ粒子Pyの添加量、造孔材の添加量や粒子径により増減するが、更なるパラメータとして、例えば、燃料極活性層用グリーンシートを作製するためのスラリーを調製する際に、Ni粒子PnとYSZ粒子Pyとの混合比率をを調整することにより、実現することができる。具体的には、燃料極活性層用グリーンシートを作製するためのスラリーを調製する際に、YSZ粒子Pyの存在比率に対するNi粒子Pnの存在比率を大きくするほど、特定領域SAにおける気孔の平均径Dは大きくなる。
特定領域SAにおける単位面積あたりの三相界面(Ni粒子PnとYSZ粒子Pyと気孔POとが交わる三相界面)Iの個数nの調整は、上記のYSZ粒子Pyの添加量、造孔材の添加量や粒子径、Ni粒子PnとYSZ粒子Pyの存在比率により増減するが、更なるパラメータとして、例えば、燃料極活性層用グリーンシートを作製するためのスラリーを調製する際に、Ni粒子Pnの粒径を調整することにより、実現することができる。具体的には、燃料極活性層用グリーンシートを作製するためのスラリーを調製する際に、上記のNi粒子Pnの粒径を小さくするほど、特定領域SAにおける単位面積あたりの三相界面Iの個数nは多くなる。
A−6.SOECへの適用:
上記では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFC(固体酸化物形の燃料電池)を対象とした適用例(燃料電池スタック100)について説明したが、上述した燃料電池スタック100に係る発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行うSOEC(固体酸化物形電解セル)の構成単位である電解単セルや、複数の電解単セルを備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。以下、当該発明をSOECに適用した例(電解セルスタック100A)について説明する。
A−6−1.電解セルスタック100Aの構成:
まず、電解セルスタック100Aの構成について説明する。図8は、上述した燃料電池スタック100の構成と同様の構成である電解セルスタック100AのXZ断面構成を示す説明図である。図9は、図8に示す電解セルスタック100AのYZ断面構成を示す説明図である。図10は、図8に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの電解セル単位102AのXZ断面構成を示す説明図である。図11は、図9に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの電解セル単位102AのYZ断面構成を示す説明図である。
電解セルスタック100Aの構成は、概略的には上述した燃料電池スタック100と同様の構成である。また、電解セルスタックの基本的な構成は、例えば特開2016−81813号公報に記載されているように公知である。従って、基本的には、上述した本実施形態の「燃料電池スタック100」を「電解セルスタック100A」と読み替え、「発電単位102」を「電解セル単位102A」と読み替え、「単セル110」を「電解単セル110A」と読み替えればよい。さらに、「酸化剤ガス供給連通孔132」を「酸素排出連通孔132」と読み替え、「燃料ガス供給連通孔142」を「水素排出連通孔142」と読み替え、「燃料ガス排出連通孔143」を「水蒸気供給連通孔143」と読み替え、「酸化剤ガス導入マニホールド161」を「酸素排出マニホールド161」と読み替え、「燃料ガス導入マニホールド171」を「水素排出マニホールド171」と読み替え、「燃料ガス排出マニホールド172」を「水蒸気導入マニホールド172」と読み替えればよい。
ただし、電解セルスタック100Aの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極(水素極)116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気WVが供給されるなど、電解セルスタック100Aの動作は燃料電池スタック100の動作とは部分的には異なる。電解セルスタック100Aの動作が燃料電池スタック100の動作とは異なる点については、後述する。以下では、上述した燃料電池スタック100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
上述した電解単セル110Aは、以下のように燃料電池スタック100と同様の構成を備えている。すなわち、電解単セル110Aは、固体酸化物を含む電解質層112と、電解質層112の上側(上下方向の一方側)に配置された空気極114と、電解質層112の下側(上下方向の他方側)に配置された燃料極116であって、Niとイオン伝導性酸化物とを含む燃料極116と、を備えている。電解単セル110Aは、上下方向に平行な少なくとも1つの断面において、燃料極116における電解質層112との界面からの距離が10μmまでの領域である特定領域SAについて、特定領域SAの面積に対する各イオン伝導性酸化物(本実施形態では、YSZ粒子Py)の面積の合計の割合である面積率をSa%とし、特定領域SAの面積に対する特定領域SAに存在する各気孔の面積の合計の割合である気孔面積率をSb%とし、特定領域SAにおける単位面積あたりの気孔の個数をN個/μmとしたとき、式(1):Sa≧30と、式(2):Sb/N≦54とを満たしている。
さらに、電解単セル110Aにおいては、特定領域SAにおける気孔の平均径Dは、0.50μm以下である。
さらに、電解単セル110Aにおいては、特定領域SAにおいて単位面積あたりのNiとイオン伝導性酸化物と気孔とが交わる三相界面の個数をn個/μmとしたとき、式(3):n/N≦2.8を満たしている。
A−6−2.電解セルスタック100Aの動作:
図9および図11に示すように、水蒸気導入マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して水蒸気WVが供給されると、水蒸気WVは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して水蒸気導入マニホールド172に供給され、水蒸気導入マニホールド172から各電解セル単位102Aの水蒸気供給連通孔143を介して、燃料室176に供給される。
各電解セル単位102Aの燃料室176に水蒸気WVが供給され、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると、電解単セル110Aにおいて水蒸気WVの電気化学反応による電解が行われる。この電解反応は吸熱反応である。この電解反応により、水蒸気WVは、水素Hと酸化物イオンに分解される。水素Hは、水素排出連通孔142から燃料室176の外部に排出され、酸化物イオンは、電解質層112を通って空気極114に移動し、空気極114で酸化物イオンから電子が分離されて酸素Oとなる。酸素Oは、空気極114、空気室166を経て、酸素排出連通孔132から空気室166の外部に排出される。
各電解セル単位102Aの燃料室176から排出された水素Hは、図9および図11に示すように、水素排出連通孔142を介して水素排出マニホールド171に排出され、さらに水素排出マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して電解セルスタック100Aの外部に排出される。これにより、各電解セル単位102Aにおいて生成された水素Hが取り出される。また、各電解セル単位102Aの空気室166から排出された酸素Oは、図8および図10に示すように、酸素排出連通孔132を介して酸素排出マニホールド161に排出され、さらに酸素排出マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して電解セルスタック100Aの外部に排出される。
なお、上記の電解セルスタック100Aにおいて、電解セルスタック100Aの温度の制御等のために、空気ARを電解セルスタック100Aの内部に供給するようにしてもよい。以下、上述した本実施形態の「酸化剤ガス排出連通孔133」を「空気供給連通孔133」と読み替え、「酸化剤ガス排出マニホールド162」を「空気導入マニホールド162」と読み替えて、空気ARの流れについて説明する。図8および図10に示すように、空気導入マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して空気ARが供給されると、空気ARは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して空気導入マニホールド162に供給され、空気導入マニホールド162から各電解セル単位102Aの空気供給連通孔133を介して、空気室166に供給される。空気室166に供給された空気ARは、空気極114で生成される酸素Oとともに酸素排出連通孔132や酸素排出マニホールド161等を経て、電解セルスタック100Aの外部に排出される。このように空気室166に供給される空気ARにより、電解セルスタック100Aの温度の制御等がなされる。
A−7.性能評価:
次に、本実施形態の性能評価について説明する。本実施形態の性能評価の結果は、SOFCの場合とSOECの場合とで概ね同じ傾向となるが、SOECの場合の方が燃料極116内におけるガスの拡散性による性能(電極反応に関わる性能)の変化がより顕著に現れる傾向にあるため、以下では、上述した燃料電池スタック100と同様の構成をSOECに適用した例である電解セルスタック100Aにおける性能評価について説明する。
上述した各特性が互いに異なる複数の電解単セル110Aのサンプルを作製し、該サンプルを用いて性能評価を行った。図12は、性能評価結果を示す説明図である。
A−7−1.各サンプルについて:
図12に示すように、本性能評価には、電解単セル110Aの11個のサンプル(サンプルS1〜S11)が用いられた。各サンプルは、上述した電解単セル110Aの製造方法に従い作製された。本性能評価に用いた電解セルスタック100Aは、各サンプルの電圧が個別に引き出せるよう、電圧端子が各層に形成されている。また、各サンプルは、互いに、燃料極116の特定領域SA(図7に示す断面において、燃料極116における電解質層112との界面からの距離が10μmまでの領域)について、イオン伝導性酸化物の面積率Sa(%)と、気孔面積率Sb(%)と、単位面積あたりの気孔の個数N(個/μm)と、単位面積あたりの三相界面Iの個数n(個/μm)と、S/Nの値と、気孔の平均径D(μm),n/Nの値とが異なっている。上述したように、「イオン伝導性酸化物の面積率」とは、特定領域SAの面積に対する特定領域SAに存在する各イオン伝導性酸化物の面積の合計の割合である。また、上述したように、「気孔面積率Sb」は、特定領域SAの面積に対する特定領域SAに存在する各気孔の面積の合計の割合であり、「三相界面I」は、Ni(電子伝導性物質)とYSZ(イオン伝導性酸化物)と気孔とが交わる三相界面である。
A−7−2.評価項目および評価方法:
本性能評価では、電解セルスタック100Aの運転の際における性能の劣化速度を評価した。具体的には、各サンプルの電解単セル110Aを用いた電解セルスタック100Aについて、所定量の水素を生成するために、約700℃で燃料極(水素極)116に水蒸気WVを供給し、電流密度が1.2A/cmで空気極114と燃料極116との両電極間に電圧を1000時間継続して印可した際の電圧降下を測定し、測定された当該電圧降下の値に基づいて評価した(当該電圧降下の値が低いほど性能の劣化速度が遅く、そのため優れているという評価である)。
A−7−3.評価結果:
図12に示すように、サンプルS10では、測定された上記電圧降下の値が「223(mV/kh(1000時間))」と最も大きく、評価結果から得られた耐久性が最も低かった。サンプルS10の評価結果から得られた耐久性が低くなった理由は、必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。すなわち、特定領域SAのイオン伝導性酸化物の面積率Saが高いほどNiの凝集が生じにくくなると考えられ(その理由については後述する)、特定領域SAのイオン伝導性酸化物の面積率Saが「29(%)」と比較的低くなっており、Niの凝集が生じやすい傾向にあり、そのため、電解セルスタック100Aの性能が低下したものと考えられる。また、サンプルS11では、測定された上記電圧降下の値が「145(mV/kh(1000時間))」とサンプルS10に次いで高く、評価結果から得られた耐久性がサンプルS10に次いで低かった。サンプルS11の評価結果から得られた耐久性が低くなった理由は、必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。すなわち、Sb/Nの値が低いほどNiの凝集が生じにくくなると考えられ(その理由については後述する)、Sb/Nの値が「57.38」と比較的高くなっており、Niの凝集が生じやすい傾向にあり、そのため、電解セルスタック100Aの性能が低下したものと考えられる。
一方、サンプルS1〜S9では、測定された上記電圧降下の値が比較的低く、評価結果から得られた耐久性が比較的高かった。サンプルS1〜S9の評価結果から得られた耐久性がサンプルS10,S11の評価結果より高くなった理由は、必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。すなわち、サンプルS1〜S9のように、特定領域SAのイオン伝導性酸化物の面積率Saが30%以上と比較的高いと、Niの凝集が生じにくい傾向にあり、そのため、電解セルスタック100Aの耐久性が向上したものと考えられる。また、サンプルS1〜S9のように、Sb/Nの値が54以下と比較的低いと、Niの凝集が生じにくい傾向にあり、そのため、電解セルスタック100Aの耐久性が向上したものと考えられる。
特定領域SAのイオン伝導性酸化物の面積率Saが高いほど、Niの凝集が生じにくくなる理由は、必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。イオン伝導性酸化物は、Niの移動を抑制する障害物として機能する。イオン伝導性酸化物の断面積が大きいほど、イオン伝導性酸化物は、より効果的にNiの移動を抑制する。イオン伝導性酸化物がこのように障害物として機能することにより、Niの凝集は抑制される。従って、Sa(特定領域の面積に対する各イオン伝導性酸化物の面積の合計の割合)が大きいほど、Niの凝集は抑制される。
また、Sb/Nの値が低いほどNiの凝集が生じにくくなる理由は、必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。燃料極116の気孔の断面積の合計が小さいほど、Niの凝集は抑制される。従って、Sb(特定領域SAの面積に対する特定領域SAに存在する各気孔の面積の合計の割合である気孔面積率)の値が小さいほど、Niの凝集は抑制される。また、N(特定領域SAにおける単位面積あたりの気孔の個数)の値が小さいほど、気孔の断面積(特に、ガスの流れ方向に直交する方向の幅)が大きい蓋然性が高い。気孔の断面積が大きいほど、Niが移動しやすいので、Niの凝集は生じやすい。従って、Nの値が大きいほど、Niの凝集は抑制されやすい。
以上の結果から、電解単セル110Aの耐久性の向上のためには、特定領域SAのイオン伝導性酸化物の面積率Saが30%以上であり、かつ、Sb/Nの値が54以下であることが好ましいと言える。
また、特定領域SAのイオン伝導性酸化物の面積率Saが30%以上であり、かつ、Sb/Nの値が54以下であったサンプルS1〜S9の内、サンプルS2,S3では評価結果から得られた耐久性が比較的低い評価であった一方、サンプルS1,S4〜9では評価結果から得られた耐久性が比較的高かった。サンプルS3では、気孔の平均径Dが0.50μmより大きい一方、S1,S4〜9では、気孔の平均径Dが0.50μm以下である。サンプルS3のように、気孔の平均径Dが過度に大きいと、Niの凝集が生じやすい傾向にあり、そのため、電解単セル110Aの耐久性が低下したものと考えられる。また、サンプルS2では、n/Nの値が2.8より大きい一方、サンプルS1,S4〜9では、n/Nの値が2.8以下である。n/Nの値が大きいほどNiの凝集が生じやすい傾向にあり(その理由については後述する)、サンプルS7のように、n/Nの値が大きいと、Niの凝集が生じやすい傾向にあり、電解セルスタック100Aの耐久性が低下するものと考えられる。これに対し、S1,S4〜9のように、気孔の平均径Dが0.50μm以下と十分に小さいと、Niの凝集を抑制することができ、これにより電解単セル110Aの耐久性を向上させることができるものと考えられる。また、サンプルS1,S4〜9のように、n/Nの値が2.8以下と十分に小さいと、Niの凝集を抑制することができ、電解単セル110Aの耐久性を向上させることができるものと考えられる。
n/Nの値が大きいほどNiの凝集が生じやすい理由は、必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。Niの平均径Dが大きいほど、上記三相界面Iの個数が少なくなり、Ni(Niの粒子)の表面積は小さくなるため、気相に曝されるNiの面積が小さくなり、Niの表面拡散が起こりにくくなることから、Niの凝集は抑制されやすい。従って、n(特定領域SAにおける単位面積あたりの三相界面Iの個数)の値が小さいほど、Niの凝集は抑制されやすい。また、上述した通り、N(特定領域SAにおける単位面積あたりの気孔の個数)が大きいほど、Niの凝集は生じやすい。
以上の結果から、電解単セル110Aの耐久性の向上のためには、気孔の平均径Dが0.50μm以下であることが好ましいと言え、また、n/Nの値が2.8以下であることも好ましいと言える。
A−8.特定領域SAの各特性の特定方法:
燃料極116の特定領域SA(燃料極116における電解質層112との界面からの距離が10μmまでの領域)の各特性(Sa、Sb/N、気孔の平均径D、n/N)の特定方法は、以下の通りである。まず、単セル110における上下方向に平行な断面(ただし燃料極116(活性層320)を含む断面)を任意に設定し、該断面における任意の位置(ただし燃料極116の特定領域SAを含む位置)で、活性層320が写ったFIB−SEM(加速電圧1.5kV)におけるSEM画像(例えば5000倍)を得る。
上記SEM画像において、電解質層112と活性層320との境界B1は、電解質層112と活性層320との構成物質の相違や視認等に基づき特定することができる。また、上記SEM画像において、活性層320と支持層310との境界B2は、活性層320と支持層310とのNiの含有率、Niの平均粒径や気孔率の相違等に基づき特定することができる。
上記SEM画像において、電子伝導性物質の粒子(本実施形態ではNi粒子Pn)とイオン伝導性物質の粒子(本実施形態ではYSZ粒子Py)との識別は、例えば、SEM画像における明暗差を利用して実現することができる。具体的には、SEM画像を解析することにより、SEM画像を明度に応じた3つの領域に分類することができる。明度に応じた3つの領域から、Ni粒子Pnの領域とYSZ粒子Pyの領域とを識別する手法としては、SEM−EDSを用いるとよい。SEM−EDSによって元素が特定できるため、上記SEM画像から、Ni粒子Pnの領域とYSZ粒子Pyの領域とを識別することができる。また、明度に応じた3つの領域の内の残りの領域を、気孔POの領域として識別することができる。
上記SEM画像において、特定領域SA(燃料極116における電解質層112との界面からの距離が10μmまでの領域)の面積を特定すると共に、特定領域SAに存在する各YSZ粒子Pyの面積を特定し、特定領域SAの面積に対する各イオン伝導性酸化物(本実施形態では、YSZ粒子Py)の面積の合計の割合を算出することにより、特定領域SAのイオン伝導性酸化物の面積率(特定領域SAの面積に対する各イオン伝導性酸化物の面積の合計の割合)Saを特定する。また、特定領域SAに存在する各気孔POの面積を特定し、特定領域SAの面積に対する各気孔POの面積の合計の割合を算出することにより、特定領域SAの気孔面積率(特定領域SAの面積に対する特定領域SAに存在する各気孔POの面積の合計の割合)Sbを特定する。上記SEM画像において、気孔の総数を画像解析ソフトによりカウントし、特定領域SAの面積を該個数で除すことにより、N(特定領域SAにおける単位面積あたりの気孔の個数)を特定することができる。このとき、Nが100以上となるように特定領域SAの範囲を設定するとデータの信頼性の観点で望ましい。SbをNで除すことにより、Sb/Nの値を特定することができる。
気孔の平均径Dについては、インターセプト法を用いて算出することができる。上記SEM画像において、各気孔POが略球形状であると仮定し、当該SEM画像における特定領域SA上に引いた線が各気孔POを横切る長さの平均値を1.5倍することによって、各気孔POの平均径Dを算出することにより、当該平均径Dを特定することができる。
上記SEM画像において、三相界面Iの数を画像解析ソフトによりカウントすることにより、n(特定領域SAにおける単位面積あたりの三相界面Iの個数)を特定することができる。このとき、nが100以上となるように特定領域SAの範囲を設定するとデータの信頼性の観点で望ましい。
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上記実施形態における単セル110(または、電解単セル110A。以下、同様)または燃料電池スタック100(または、電解セルスタック100A。以下、同様)の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、電解質層112に含まれる固体酸化物は、YSZであるが、YSZに換えて、YSZ以外の物質(例えば、ScSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、LSGM(LaSrGaMgO系ペロブスカイト酸化物))であってもよい。
また、上記実施形態では、燃料極116は、活性層320と支持層310との二層構成であるとしているが、燃料極116は、活性層320および支持層310以外の他の層を含むとしてもよい。また、燃料極116は、支持層310を備えていなくてもよい。
上記実施形態では、燃料極116の活性層320に含まれる電子伝導性物質は、Niであるが、Niに換えて、NiとNi以外の金属とを含む金属(例えば、NiとCoとを含む合金など)であってもよい。また、上記実施形態では、燃料極116の活性層320に含まれるイオン伝導性酸化物は、酸素イオン伝導性を有する物質であるYSZであるが、YSZに換えて、YSZ以外の酸素イオン伝導性を有する物質であってもよい。燃料極116の活性層320に含まれるイオン伝導性酸化物は、酸素イオン以外のイオン(例えば、プロトン)の伝導性を有する物質であってもよい。
燃料電池スタック100は、電解質層112における図7に示す断面以外の断面であって、上下方向(Z軸方向)に平行な断面(以下、「別の断面」という。)において、上記の式(1):Sa≧30と、式(2):Sb/N≦54とを満たす構成であってもよい。この構成においても、式(1):Sa≧30と、式(2):Sb/N≦54とを満たすことにより、上述した理由と同様の理由から、Niの凝集を抑制することができ、これにより燃料電池スタック100の性能が向上させることができる。さらに、別の断面において、特定領域SAにおける気孔の平均径Dは、0.50μm以下である構成であってもよい。この構成においても、当該平均径Dが0.50μm以下であることにより、上述した理由と同様の理由から、Niの凝集を抑制することができ、これにより燃料電池スタック100の性能を向上させることができる。さらに、別の断面において、上記の式(3):n/N≦2.8を満たす構成であってもよい。この構成においても、n/N≦2.8を満たすことにより、上述した理由と同様の理由から、Niの凝集を抑制することができ、燃料電池スタック100の性能を向上させることができる。これらの構成においては、別の断面は、特許請求の範囲における「第1の方向に平行な少なくとも1つの断面」に相当する。
上記実施形態では、燃料電池スタック100は、式(1):Sa≧30と、式(2):Sb/N≦54とを満たしている。耐久性等を考慮すると、Saの値は、37以上であることがより好ましい。また、同時に単セル110の耐久性の確保等を考慮すると、Saの値は、50以下であることが好ましい。耐久性等を考慮すると、Sb/Nの値は、40以下であることがより好ましい。また、同時に単セル110の耐久性の確保等を考慮すると、Sb/Nの値は、5以上であることが好ましい。
上記実施形態では、燃料電池スタック100は、特定領域SAにおける気孔の平均径Dが0.50μm以下である。耐久性等を考慮すると、平均径Dは、0.45μm以下であることがより好ましい。また、同時に単セル110の耐久性の確保等を考慮すると、平均径Dは、0.2μm以上であることが好ましい。
上記実施形態では、燃料電池スタック100は、上記の式(3):n/N≦2.8を満たしている。耐久性等を考慮すると、n/Nの値は、2.4以下であることがより好ましい。また、同時に単セル110の耐久性の確保等を考慮すると、n/Nの値は、1.5以上であることが好ましい。
上記実施形態において、電解質層112と空気極114との間に中間層180が配置されず、電解質層112と空気極114とが直接接続されていてもよい。
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる単セル110の個数は、あくまで一例であり、単セル110の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。なお、上記実施形態において、必ずしも燃料電池スタック100に含まれるすべての単セル110について、上記の式(1):Sa≧30と、式(2):Sb/N≦54とを満たしている必要はなく、燃料電池スタック100に含まれる少なくとも1つの単セル110について該条件が満たされれば、金属の凝集を抑制することができ、これにより燃料電池スタック100の性能を向上させることができると言える。
また、上記実施形態では、燃料電池スタック100は複数の平板形の単セル110が積層された構成であるが、本発明は、他の構成、例えば国際公開第2012/165409号に記載されているように、複数の略円筒形の燃料電池単セルが直列に接続された構成にも同様に適用可能である。
22:ボルト 22A:ボルト 22B:ボルト 22D:ボルト 22E:ボルト 24:ナット 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 100:燃料電池スタック 100A:電解セルスタック 102:発電単位 102A:電解セル単位 104:エンドプレート 106:エンドプレート 108:連通孔 110:単セル 110A:電解単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 120:セパレータ 130:空気極側フレーム 132:酸化剤ガス供給連通孔 133:酸化剤ガス排出連通孔 134:空気極側集電体 140:燃料極側フレーム 142:燃料ガス供給連通孔 143:燃料ガス排出連通孔 144:燃料極側集電体 149:スペーサー 150:インターコネクタ 161:酸化剤ガス導入マニホールド 162:酸化剤ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料ガス導入マニホールド 172:燃料ガス排出マニホールド 176:燃料室 180:中間層

Claims (4)

  1. 固体酸化物を含む電解質層と、
    前記電解質層の第1の方向の一方側に配置された空気極と、
    前記電解質層の前記第1の方向の他方側に配置された燃料極であって、Niを含む金属と、イオン伝導性酸化物とを含む燃料極と、を備える電気化学セルであって、
    前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面において、前記燃料極における前記電解質層との界面からの距離が10μmまでの領域である特定領域について、前記特定領域の面積に対する各前記イオン伝導性酸化物の面積の合計の割合である面積率をSa%とし、前記特定領域の面積に対する前記特定領域に存在する各気孔の面積の合計の割合である気孔面積率をSb%とし、前記特定領域における単位面積あたりの前記気孔の個数をN個/μmとしたとき、式(1):Sa≧30と、式(2):Sb/N≦54と、を満たす、
    ことを特徴とする電気化学セル。
  2. 請求項1に記載の電気化学セルにおいて、
    前記特定領域における前記気孔の平均径Dは、0.50μm以下である、
    ことを特徴とする電気化学セル。
  3. 請求項1または請求項2に記載の電気化学セルにおいて、
    前記特定領域において単位面積あたりの前記金属と前記イオン伝導性酸化物と前記気孔が交わる三相界面の個数をn個/μmとしたとき、式(3):n/N≦2.8を満たす、
    ことを特徴とする電気化学セル。
  4. 複数の電気化学セルを備える電気化学反応セルスタックにおいて、
    前記複数の電気化学セルの少なくとも1つは、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電気化学セルであることを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
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